(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】動力工具及び動力工具のための2速歯車組立体
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B25B21/00 520Z
B25B21/00 B
B25B21/00 520A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022524202
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020079086
(87)【国際公開番号】W WO2021083680
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ホールバーグ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レンブロム ヨーアン
(57)【要約】
本明細書は、入力軸及び出力軸と、2速動力変速装置(T)とを備える動力工具に関し、2速動力変速装置は、遊星歯車(4)と、該遊星歯車を介して又は通り越してトルクを導くためのギアシフト組立体とを備え、ギアシフト組立体は、駆動部材(2)と、被駆動部材(1)と、第1の位置で駆動部材(2)と被駆動部材(1)とを相互結合し、第2の位置で遊星歯車(4)と駆動部材(1)とを相互結合するよう配置された軸方向に移動可能な継手スリーブ(6)とを備える。リニアアクチュエータ(13、14)は、継手スリーブを第1の位置と第2の位置との間で変位させるために配置された直線的に移動可能なプッシュバー(13)を備える。また、本明細書は、このような電動工具のための2速動力変速装置における方法及び2速動力変速装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(H)と、
入力軸(IS)と、
出力軸と、
2速動力変速装置(T)と、
を備える動力工具であって、
前記2速動力変速装置は、遊星歯車(4)と、高トルク/低速駆動モードでは前記遊星歯車(4)を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは前記遊星歯車(4)を通り越してトルクを導くための2速ギアシフト組立体とを備え、
前記ギアシフト組立体は、
前記入力軸に駆動結合された駆動部材(2)と、
前記出力軸に駆動結合された被駆動部材(1)と、
第1の位置で前記駆動部材(2)と前記被駆動部材(1)とを相互結合し、第2の位置で前記遊星歯車(4)と前記被駆動部材(1)とを相互結合するように配置された、軸方向に移動可能な継手スリーブ(6)と、
前記継手スリーブを前記第1の位置と前記第2の位置との間で変位させるように配置されたリニアアクチュエータ(13、14)と、
を備え、
前記リニアアクチュエータは、前記継手スリーブを前記第1の位置と前記第2の位置との間で変位させるために配置された直線的に移動可能なプッシュバー(13)を備える、動力工具。
【請求項2】
前記ギアシフト組立体は、前記継手スリーブと前記リニアアクチュエータとの間に配置された継手組立体をさらに備え、前記継手組立体は、前記スリーブに回転可能に結合された第1の要素(8)を備え、前記第1の要素の回転は、前記プッシュバーの回転から独立しており、前記プッシュバーは、前記第1の要素を軸方向に押すように配置されている、請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記継手スリーブは、前記遊星歯車に対して同心円状に配置され、前記プッシュバーは、前記スリーブの中心にある位置で前記第1の要素に係合するようになっている、請求項2に記載の動力工具。
【請求項4】
前記第1の要素は、前記スリーブ内に少なくとも部分的に配置されたボールである、請求項3に記載の動力工具。
【請求項5】
第1の軸方向に作用するばね手段(3)は、前記継手スリーブを、前記継手スリーブの前記第1の位置に向かって付勢するために配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項6】
前記第1の位置及び第2の位置は、第1の端部位置及び第2の端部位置であり、前記継手スリーブは、その間で連続的に移動可能であり、前記第1の端部位置と第2の端部位置との間の任意の位置に位置決めすることができる、請求項1から5のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項7】
前記被駆動部材は、前記継手スリーブの対応する合同の第1の部分と係合するようになっている第1の係合部(1b)を備え、
前記遊星歯車は、前記継手スリーブの対応する合同の第2の部分に係合するようになっている第2の係合部(41b)を含む遊星歯車キャリア(41)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項8】
前記第1の係合部及び第2の係合部の少なくとも一方は、多角形の断面を有する、請求項7に記載の動力工具。
【請求項9】
前記入力軸と前記駆動部材との間に配置された傘歯車をさらに備え、前記駆動部材は、前記傘歯車を介して前記入力軸に結合するようになっている、請求項1から8のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項10】
前記リニアアクチュエータは、固体ステータハウジング、コイル組立体、及び多極磁気プッシュロッドを含むリニアDCサーボモータである、請求項1から9のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項11】
前記リニアアクチュエータは、前記プッシュバーの位置を感知するように構成された少なくとも1つの内部位置センサを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項12】
前記遊星歯車は、第1の遊星歯車段、請求項1から11のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の動力工具のための2速動力変速装置であって、前記変速装置は、遊星歯車と、高トルク/低速駆動モードでは前記遊星歯車を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは前記遊星歯車を通り越してトルクを導くための2速ギアシフト組立体とを備え、前記ギアシフト組立体は、
前記入力軸に駆動結合された駆動部材と、
前記出力軸に駆動結合された被駆動部材と、
第1の位置で前記駆動部材と前記被駆動部材とを相互結合し、第2の位置で前記遊星歯車キャリアと前記被駆動部材とを相互結合するように配置された継手スリーブと、
前記継手スリーブを前記第1の位置と前記第2の位置との間で変位させるよう配置されたリニアアクチュエータと、
を備え、
前記リニアアクチュエータは、前記継手スリーブを前記第1の位置と前記第2の位置との間で変位させるように配置された直線的に移動可能なプッシュバー(13)を備えるリニアアクチュエータである、2速動力変速装置。
【請求項14】
遊星歯車(4)と、継手スリーブ及び前記継手スリーブを変位させるよう配置されたリニアアクチュエータを用いて、高トルク/低速駆動モードでは前記遊星歯車(4)を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは前記遊星歯車(4)を通り越してトルクを導くため2速ギアシフト組立体とを備える動力工具を制御する方法であって、
前記継手スリーブが第1の位置で前記遊星歯車を介してトルクを導くように配置されている低トルク/高速駆動モードの動作で前記動力工具を動作させるステップと、
ぴったりした締結に到達したことを特定するステップと、
前記リニアアクチュエータを用いて前記継手スリーブを第1の方向の軸方向移動によって前方に変位させて、前記第2の位置に到達させるステップと、
前記継手スリーブが前記遊星歯車を介してトルクを導く前記第2の位置に配置される高トルク/低速駆動モードの動作で前記動力工具を動作させるステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記第2の位置に到達させるステップは、前記継手スリーブが前記遊星歯車と係合しない場合に、
前記リニアアクチュエータの第2の反対方向への軸方向移動によって、前記継手スリーブを後方に変位させるステップと、
前記遊星歯車を回転させるステップと、
前記リニアアクチュエータの前記第1の方向への軸方向移動によって前記継手スリーブを前方に変位させて、前記第2の位置に到達させるステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、動力工具に関し、より詳細には、2速歯車組立体を備える動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で様々なタイプの動力工具が使用されることが知られており、一般的なものは、ネジ又はボルトを締結するために使用される締付工具である。
【0003】
現場で様々な設計上の課題を引き起こすことが知られている1つの問題点は、作業条件と期待される出力に対する要求が、例えば典型的な作業工程の異なる部分で必要とされる速度とトルクに関して、使用中に大きく変化する傾向があることである。これは、例えば、ネジ又はナットの締結の初期段階、すなわちいわゆるランダウンでは、必要なトルクは低いが、回転速度は作業に要する時間を短縮するために理想的には高い必要があり、一方で、実際の締結段階、すなわち接合部の実際の締結では、必要なトルクが高い上記の締結工具の場合に当てはまる。
【0004】
しかしながら、このようなタイプの変化する要件が課せられる動力工具は、所望のトルクレベルを提供できるように、例えば直列に連結された1又は2以上の遊星歯車段などの1又は2以上の動力変速装置を含むことが知られている。
【0005】
しかし、実際の締結に必要な高いトルクレベルを達成するためにそのような動力変速装置を使用すると、提供される回転速度がそれに応じて低下するため、ランダウン中にも望ましくない低い回転速度につながる。これは、特に、大きなネジを非常に高いトルク値で締結するようになっている動力工具の分野において重大な問題となり、一般に、所望の高いトルクを提供することによって非常に低い回転数が生じ、その結果、通常、ランダウン段階が不合理に遅くなる。
【0006】
従って、これらの問題のいくつかを軽減するために、2速動力変速装置、すなわち、ランダウン中に高い回転速度を使用し、実際の締結時に必要な場合にのみ高トルク/低速モードを使用するように、歯車ユニットを通る力の流れを変更することができる動力変速装置を使用する試みが行われている。
【0007】
しかしながら、そのような動力変速装置に関連する多くの問題が残っている。例えば、1つの既知の問題は、変速操作の実際の進行の制御の欠如、すなわち変速が実際に正しく行われたか否かが分からないことである。このような歯車要素の実際の現在位置に対する正確な制御の欠如は、歯車及び継手の破壊につながる可能性がある。
【0008】
同期リング又は嵩張るセンサを含む複雑な機構を伴い、このため設計が複雑で、一般に大きなスペースを必要とする解決策が提案されている。従って、動力工具用2速歯車ユニットの分野では、改善の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、改善された2速変速装置を有する動力工具を提供することが望ましいであろう。特に、変速を制御するための改善された可能性を提供する変速装置を提供することが望ましいであろう。これらの問題点の1又は2以上をより良く解決するために、独立請求項に定義されるように、締結工具のための歯車ユニット、そのような歯車ユニットを備える動力工具、及びそのような動力工具を制御するための方法が提供される。好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、2速動力変速装置を備える動力工具が提供され、この動力工具は、ハウジングと、入力軸と、出力軸と、2速動力変速装置とを備え、2速動力変速装置は、遊星歯車と、高トルク/低速駆動モードでは遊星歯車を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは遊星歯車を通り越してトルクを導くための2速ギアシフト組立体とを備える。ギアシフト組立体は、入力軸に駆動結合された駆動部材と、出力軸に駆動結合された被駆動部材と、第1の位置で駆動部材と被駆動部材とを相互結合し、第2の位置で遊星歯車と被駆動部材とを相互結合するように配置された軸方向に移動可能な継手スリーブと、軸方向に移動可能な継手スリーブを第1の位置と第2の位置と間で変位するように配置されたリニアアクチュエータとを備え、リニアアクチュエータは、第1の位置と第2の位置との間で継手スリーブを変位させるために配置された直線的に移動可能なプッシュバーを備える。
【0011】
第1の態様によれば、2速変速装置は、高トルク/低速駆動モードでは遊星歯車段を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは遊星歯車を通り越してトルクを導くギアシフト機構を組み込んだ設計によって、上述の問題点に対する発明的解決を提供し、変速を正確に制御する可能性の向上は、リニアアクチュエータによって変位される継手スリーブの利用によって提供される。
【0012】
詳細には、リニアアクチュエータが継手スリーブを変位させるように配置されているので、リニアアクチュエータの位置に基づいて、それぞれの動作モードでの係合(又はその欠如)を決定することができる。従って、この設計は、ギアシフトの精密かつ正確な制御をもたらすこができる2速動力変速装置を巧妙に提供する。
【0013】
1つの実施形態によれば、動力工具は、モータと、この工具から供給されるトルクを監視するための手段とをさらに備える。工具から供給されるトルクを監視するための手段は、例えば、トルク変換器のようなセンサを備えることができる。他の例は、モータ電流又はモータの性能に関連する他の内部提供データを監視するようになっている回路を含む。また、動力工具は、動力工具及び動力工具を制御するように動作する外部制御装置を含むシステムの一部を形成することができる。
【0014】
このような動力工具に関して、1つの実施形態によれば、モータは、電気モータである。工具は、例えば、スクリュードライバ、ナットランナ、ドリル及びグラインダからなる群から選択される手持ち式電動工具とすることができる。しかしながら、当業者は、固定式工具又は固定式工具と共に使用するために、構造のわずかな修正のみが必要であろうことを理解する。いくつかの実施形態において、動力工具は、バッテリ式電動工具とすることができる。1つの実施形態では、動力工具は、例えば2400から8000Nmの範囲のより高い締結トルクを提供する工具である。
【0015】
1つの実施形態によれば、ギアシフト組立体は、継手スリーブとリニアアクチュエータの間に配置された継手組立体をさらに備え、継手組立体は、スリーブに回転可能に結合された第1の要素と、プッシュバーに並進可能に結合された第2の要素とを備え、第1の要素の回転は第2の要素の回転から独立しており、第2の要素は、第1の要素を軸方向に押すよう配置されている。これにより、スリーブ、従ってモータの回転は、リニアアクチュエータに影響を与えず、スリーブの軸方向位置の調整は、回転とは独立して行うことができる。第2の要素は、プッシュバーの一部を形成することができる。
【0016】
1つの実施形態では、ギアシフト組立体は、継手スリーブとリニアアクチュエータとを結合する(すなわち、リンク又は接続する)ように配置された継手組立体をさらに備え、継手組立体は、スリーブに回転可能に結合された第1の要素と、プッシュバーに並進可能に結合された第2の要素とを備え、第1の要素の回転は、第2の要素の回転から独立しており、第2の要素は、第1の要素を軸方向へ押すように配置されている。これにより、スリーブ、従ってモータの回転は、リニアアクチュエータに影響を与えず、スリーブの軸方向位置の調整は、回転とは独立して行うことができる。第2の要素は、プッシュバーの一部を形成すること及び/又はプッシュバーによって形成することができる。
【0017】
1つの実施形態によれば、継手スリーブは、遊星歯車に対して同心円状に配置され、第2の要素は、スリーブの中心にある位置で第1の要素と係合するようになっている。この配置は、コンパクトでスペースを取らない設計を提供する。さらに、このような設計は、必要とされる軸受の配置をさらに単純化する。
【0018】
1つの実施形態によれば、第1の要素は、スリーブ内に少なくとも部分的に配置されたボールであり、ボールを押すように配置された第2の要素は、プッシュバーによって形成されている。これにより、プッシュバーの端部は、スリーブを変位させるために回転バーに当接することができる。ボールは、例えば、リニアアクチュエータに面するスリーブの端部に、例えば圧入等によって配置することができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、ギアシフト組立体は、継手スリーブとリニアアクチュエータとの間に配置された継手組立体をさらに備え、継手組立体は、スリーブに回転可能に結合された第1の要素を備え、第1の要素の回転は、プッシュバーの回転とは独立しており、プッシュバーは、第1の要素を軸方向へ押すために配置されている。これにより、スリーブ、従ってモータの回転は、リニアアクチュエータに影響を与えず、スリーブの軸方向位置の調整は、回転とは独立して行うことができる。1つの実施形態では、継手スリーブは遊星歯車に対して同心円状に配置され、プッシュバーは、スリーブの中心にある位置で第1の要素に係合するようになっている。1つの実施形態において、第1の要素は、スリーブ内に少なくとも部分的に配置されたボールである。
【0020】
1つの実施形態において、継手組立体は、プッシュバーに並進的に結合され、第1の要素と係合するようになっている第2の要素をさらに備え、第1の要素の回転はプッシュバーの回転とは独立しており、プッシュバーは、第2の要素を押すことによって第1の要素を軸方向へ押すように配置されている。
【0021】
1つの実施形態によれば、第1の軸方向に作用するばね手段は、継手スリーブの第1の位置に向かって継手スリーブを付勢するために配置されている。例としては、例えばハウジングの適切な部分に当接するように配置され、スリーブの第2の端部に作用する圧縮ばねが挙げられる。
【0022】
1つの実施形態によれば、第1の位置及び第2の位置は、それぞれ第1の端部位置及び第2の端部位置であり、継手スリーブはその間を連続的に移動可能であり、第1の端部位置と第2の端部位置との間の任意の位置に位置決めすることができる。換言すると、リニアアクチュエータのプッシュバーは、第1の端部位置と第2の端部位置との間の任意の位置に位置決めすることができる。好ましくは、プッシュバーの位置は、全区間にわたって監視することができる。
【0023】
1つの実施形態によれば、被駆動部材は、継手スリーブの対応する合同の第1の部分と係合するようになっている第1の係合部を備え、遊星歯車は、継手スリーブの対応する合同の第2の部分と係合するようになっている第2の係合部を含む遊星歯車キャリアを備える。例えば、1つの実施形態によれば、第1及び第2の係合部の少なくとも一方は、例えば正方形又は六角形の断面を含む多角形の形状を有する。
【0024】
1つの実施形態によれば、遊星歯車は、第1の遊星歯車段である。1つの実施形態によれば、動力工具は、前段歯車ユニット又は第2段歯車ユニットをさらに備える。このような実施形態において、発明性のある変速装置は、変速装置の被駆動部材が前段歯車に係合するように、すなわち前段歯車を介して出力軸に駆動結合されるように、モータと、前段歯車ユニット又は第2段歯車ユニットとの間に配置することができる。これは、このような工具のための前段歯車ユニットが、交換可能な前段歯車ユニットとすることができ、2速変速装置が工具内に又は工具上に残っている間に、所望のトルクに応じて前段歯車ニットを交換できる点で好都合である。
【0025】
1つの実施形態によれば、動力工具は、入力軸と駆動部材との間に配置された傘歯車をさらに備え、駆動部材は、傘歯車を介して入力軸に結合する。これは、傘歯車での伝達機構の方向転換に起因して、上述の中心に置かれたプッシュロッドをより容易に実現できる設計が達成できる点で好都合である。
【0026】
1つの実施形態によれば、リニアアクチュエータは、リニアモータである。例えば、固体ステータハウジングと、コイル組立体と、多極磁気プッシュロッドとを備えるDCサーボモータである。
【0027】
1つの実施形態によれば、リニアモータは、プッシュバーの位置を感知するように構成された少なくとも1つの内部位置センサを備える。例としては、内部ホールセンサが挙げられる。これにより、プッシュロッドの位置は、連続的に特定して監視することができる。1つの実施形態において、リニアモータは、例えばプッシュロッドの動きを監視及び制御するとともに、例えば動力工具を制御するように構成された外部制御ユニットと通信するように構成された制御ユニットをさらに備える。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、上述した実施形態のいずれかによる動力工具のための2速動力変速装置が提供され、この変速装置は、遊星歯車と、高トルク/低速駆動モードでは遊星歯車を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは遊星歯車を通り越してトルクを導くための2速ギアシフト組立体とを備える。ギアシフト組立体は、入力軸に駆動結合された駆動部材と、出力軸に駆動結合された被駆動部材と、第1の位置で駆動部材と被駆動部材とを相互結合し、第2の位置で遊星歯車キャリアと被駆動部材とを相互結合するように配置された継手スリーブと、継手スリーブを第1の位置と第2の位置との間で変位させるように配置されたリニアアクチュエータとを備え、リニアアクチュエータは第1の位置と第2の位置との間で継手スリーブを付勢するよう配置された直線的に移動可能なプッシュバーを備えるリニアアクチュエータである。
【0029】
本発明の第2の態様の範囲内で考えられる変速装置の目的、利点及び特徴は、本発明の第1の態様で言及した上記の検討によって容易に理解される。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、遊星歯車と、継手スリーブ及びこの継手スリーブを変位させるよう配置されたリニアアクチュエータを用いて、高トルク/低速駆動モードでは遊星歯車を介して、又は低トルク/高速駆動モードでは遊星歯車を通り越してトルクを導くため2速ギアシフト組立体とを備える動力工具を制御する方法であって、本方法は、継手スリーブが第1の位置で遊星歯車を介してトルクを導くように配置されている低トルク/高速駆動モードの動作で動力工具を動作させるステップと、ぴったりした締結に到達したことを特定するステップと、リニアアクチュエータを用いて継手スリーブを第1の方向の軸方向移動によって前方に変位させて、第2の位置に到達させるステップと、継手スリーブが遊星歯車を介してトルクを導く第2の位置に配置される高トルク/低速駆動モードの動作で動力工具を動作させるステップと、を含む。
【0031】
1つの実施形態によれば、本方法は、上述のいずれかの実施形態による2速変速装置を備える動力工具における方法であり、継手スリーブが駆動部材と被駆動部材とを相互結合する第1の位置に配置されている低トルク/高速駆動モードの動作で工具を動作させるステップと、ぴったりした締結に到達したことを特定するステップと、リニアアクチュエータを用いて継手スリーブを第1の方向の軸方向移動によって前方に変位させて、第2の位置に到達させるステップと、継手スリーブが遊星歯車キャリアと被駆動部材とを相互結合する第2の位置に配置されている高トルク/低速駆動モードの動作で動力工具を動作させるステップと、を含む。
【0032】
すなわち、換言すると、ランダウン(すなわち低トルク/高速モード)の開始時には、プッシュバー及び従って継手スリーブは、継手スリーブが駆動部材と出力軸とを結合する第1の位置すなわち後方位置にある。ランダウンは、ぴったりした締結に到達した場合に終了し、これは例えば電流制限閾値の通過によって特定される。完全を期すために、「ぴったりした締結」は、ランダウン段階が実際の締結段階に移行する点である。これらの締結状態は、例えば外部の制御装置によって監視することができる。この後、リニアモータにランダウン終了の信号が送られ、プッシュバー、従って継手スリーブが第2の位置に向かって前進する変位が開始される。継手スリーブが遊星歯車に係合すると、すなわち第2の位置に位置付けられると、低速歯車が所定の位置にあることを示す信号は、例えば外部制御装置に送ることができる。ここで、最終的な実際の締結段階(すなわち、高トルク/低速)を開始することができる。
【0033】
1つの実施形態によれば、第2の位置に到達させるステップは、継手スリーブが遊星歯車と係合しない場合に、リニアアクチュエータの第2の反対方向への軸方向移動によって、後方に変位させるステップと、遊星歯車を回転させるステップと、継手スリーブを第1の方向への軸方向移動によって前方に変位させて第2の位置に到達させるステップと、を含む。
【0034】
1つの実施形態によれば、この方法は、上述のいずれかの実施形態による2速変速装置を備える動力工具における方法であり、第2の位置に到達させるステップは、継手スリーブが遊星歯車キャリアに係合しない場合に、リニアモータの第2の逆方向への軸方向移動により後方へ変位させるステップと、駆動部材を回転させるステップと、継手スリーブをリニアモータによる第1の方向への軸方向移動により前方に動かして第2の位置に到達させるステップとをさらに含む。
【0035】
すなわち、例えばスリーブの断面と係合する遊星歯車の対応する表面との間の回転不適合に起因して、プッシュバーが前方又は第1の位置に到達できなかった場合、軸方向移動の方向が逆転され、プッシュバーが小さな距離だけ後退し、場合によっては同時に、モータは、遊星歯車キャリアを回転させて継手スリーブが係合する新しい位置を可能にする。これによって、変速装置の各駆動モードの間の変更を容易にすることができる。
【0036】
1つの実施形態では、この方法は、目標トルクに達したことを特定するステップと、リニアモータによって継手スリーブを第2の方向に軸方向移動で後方に変位させて第1の位置に戻すステップと、をさらに含むことができる。すなわち、トルクは、例えばトルク変換器によって監視することができ、所望のトルクに達すると、リニアモータは、信号を受け取り、再び高速/低トルクモードに関与するように戻る。この継手スリーブの移動は、上述のように継手スリーブが適切に係合するのを助けるために、モータの回転に続くこと、又は同時に組み合わせることができる。
【0037】
本発明の第3の態様の範囲内で考えられる方法の目的、利点及び特徴は、本発明の第2の態様で言及した上記の検討によって容易に理解される。
【0038】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、図面及び添付の請求項を検討すると明らかになるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明する以外の実施形態を作り出すことができることを理解する。
【0039】
本発明は、添付図面を参照して、以下の例示的な実施形態の例示的かつ非限定的な詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】1つの実施形態による2速動力変速装置を備える例示的な動力工具の断面図である。
【
図2】1つの実施形態による例示的な変速装置の構成要素の一部を示す第1の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
全ての図は概略的なものであり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、本発明を明瞭にするために必要な部分のみを示しており、他の部分は省略されるか又は単に示唆される場合がある。
【0042】
図1は、一実施形態による例示的な動力工具の一部を示す断面図であり、この場合、手持ち式締結工具である。締結工具は、ハウジングH、入力軸IS、駆動部材2に傘歯車20を介して結合されたモータ、出力軸1、及び入力軸と出力軸との間に配置された2速変速装置Tを備える。さらに、締結工具は、モータの回転速度を制御するように動作する外部制御ユニット(この工具の機能を説明する際に以下でより詳細に説明される)に接続される。
【0043】
図1に示す実施形態の2速動力変速装置1は、高トルク/低速駆動モードでは遊星歯車4を介して入力軸ISから出力軸1へ又は低トルク/高速駆動モードでは遊星歯車4を通り越してトルクを導くための、遊星歯車4及びギアシフト組立体を備える。
図1には、低トルク/高速駆動モードの変速装置が示されている。
【0044】
遊星歯車4は、ハウジングHに固定された内歯車(又は歯車リム)及び遊星歯車キャリア41を備える。変速装置組立体は、図示の実施形態では傘歯車20の一部を形成する駆動部材2と、出力軸1に駆動結合された被駆動部材1とを備える。
【0045】
継手スリーブ6は、スリーブが駆動部材2と被駆動部材1とを相互結合する、すなわち
図1に示される低トルク/高速モードの第1の位置と、遊星歯車4、より詳細には遊星歯車キャリア4aと被駆動部材1とを相互結合する第2の位置との間で軸方向に移動可能である。
【0046】
リニアアクチュエータ13、14は、継手スリーブを第1位置と第2位置との間で変位させるために用いられ、より詳細には、図示の実施形態では、リニアDCサーボモータは、固体ステータハウジング14、コイル組立体、及び継手スリーブを第1の位置から第2の位置に押すように配置された直線的に移動可能な多極磁気プッシュロッド13を備える。リニアモータは、バー13の位置を感知するように構成された内部ホールセンサと、内部制御ユニット又は制御基板15とをさらに備える。圧縮ばね3は、継手スリーブ6を第1の位置に向かって付勢するように配置されている。
【0047】
図示された実施形態では、プッシュバーは、継手スリーブ6とリニアモータ13、14との間に配置された継手組立体の第2の要素12に係合する。しかしながら、図示された実施形態における第2の要素12は、プッシュバーの一部を形成する。この継手組立体は、第1の端部6aでスリーブ6内に配置され、従って継手スリーブ6と共に回転するボール8の形態の第1の要素8をさらに備える。スリーブ6の回転は、リニアモータのプッシュバー13の回転(従って、プッシュバー13の一部を形成する第2の要素12の回転)から独立している。ボール8は、継手スリーブ6の端部6aに適合する適切なサイズを有し、プッシュバー13は、スリーブの中心にある位置で(すなわち、第2の要素12を介して)ボールに係合する(すなわち、押す)ように配置されている。
【0048】
以下、継手スリーブ6と、被駆動部材1との間(第1のモードの場合)、及び遊星歯車キャリア41との間(第2のモードの場合)の係合は、スリーブ6、遊星歯車キャリア41、駆動部材2、及び被駆動部材1を斜視図で示す
図2を参照して説明する。
【0049】
図1及び
図2から分かるように、被駆動部材1は、第1の端部1aにおいて軸受50によって支持され、第2の端部1bにおいて第1の係合部1bを備える。同様に、遊星歯車キャリア41は、第2の係合部41bを備える。これらの係合部1b及び41bは、継手スリーブ6の対応する第1の部分6a及び第2の部分6bと係合するようになっており、それぞれの相互作用面は合同の形状、図示の実施形態では六角形状を有する。
【0050】
動作時、図示された実施形態の動力工具は、この工具を制御するように動作する外部制御ユニット(図示せず)を備えるシステムの一部を形成する。
【0051】
継手スリーブ6は、最初に、ランダウン、すなわち低トルク/高速モードを実行するために第1の位置に向かって付勢される。従って、プッシュバー13も同様に、継手スリーブ6が駆動部材と出力軸1とを結合する後位置にある(
図1)。
【0052】
ランダウンは、きっちりした締結に達したときに終了し、図示の実施形態では、これは、電流制限閾値を通過した場合に外部制御ユニットによって特定される。リニアモータがランダウン完了の信号を受け取ると、プッシュバー13、従って継手スリーブ6の第2の位置に向かう前方への変位が開始される。
【0053】
プッシュバー13の位置、従って継手スリーブ6の位置は、内部ホールセンサによって監視され、継手スリーブが遊星歯車に係合したとき、すなわち第2の位置に到達したときを決定することができるようになっている。信号は外部制御装置に送られ、最終的な実際の締結段階(すなわち、高トルク/低速モード)が開始される。しかしながら、継手スリーブ6及び遊星歯車キャリアのそれぞれの六角形の合同断面6aが正しく整列せず、スリーブ6が遊星歯車キャリア41に係合しない場合、リニアモータは逆方向(すなわち後方)への直線運動を生じさせる。その後、前進運動が繰り返されるが、係合を容易にするための新しい位置を可能にするために、モータ及び従ってキャリア41の同時の低速回転と組み合わされる。当業者は、前進運動及び回転は、同様に連続したステップとして実行できることを理解する。
【0054】
最終的な締結の間、トルクはトルク変換器(図示せず)によって監視され、所望のトルクに達すると、リニアモータ13,14は信号を受け取り、プッシュバー13は、後方に移動してスリーブ6が再び高速/低トルクモードに係合できるようにする。継手スリーブ6のこの移動は、上記のように継手スリーブが適切に係合するのを容易にするために、モータの同時回転と組み合わせることができる。
【0055】
本発明は、図面及び上記の説明で詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、例証的又は例示的であり、制限的ではないと考える必要があり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、特許請求の範囲に定義された範囲内で多くの修正、変形及び変更が考えられることを理解する。加えて、開示された実施形態に対する変形は、図面、開示内容及び請求項の検討から、請求された発明を実施する当業者によって理解され、達成され得る。特許請求の範囲において、単語「備える(comprising)」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合せを好都合に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0056】
1 被駆動部材
2 駆動部材
4 遊星歯車
6 継手スリーブ
13 プッシュバー
13、14 リニアアクチュエータ
T 2速動力変速装置
【国際調査報告】