(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】締結工具用ソケット
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B25B21/02 A
B25B21/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022524203
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020079082
(87)【国際公開番号】W WO2021083679
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】レンブロム ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】クロトブリクスト アダム
(57)【要約】
本明細書は、第1の本体部分(10)及び第2の本体部分(20)を含むソケットユニットに関し、第1の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分(10a)及びねじ接合部との係合に適する前端部分(20b)のうちの一方を備え、第2の本体部分はその他方を備える。第2の本体部分は、少なくとも一部が第1の本体部分内に配置され、他方がねじ接合部と係合する場合に第1の本体部分と第2の本体部分のうちの一方が、所定の許容角度範囲にわたって回転できるように第1の本体部分と第2の本体部分との間の相対的回転が許容される。また、本明細書は、対応する方法、電動工具、及びコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結作業を行うように構成される電動工具用のソケットユニット(1)であって、
第1の本体部分(10)と、
第2の本体部分(20)と、
を備え、
前記第1の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分(10a)及びねじ接合部との係合に適している前端部分のうちの一方を備え、前記第2の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための前記後端部分及びねじ接合部との係合に適している前記前端部分(20b)のうちの他方を備え、
前記第2の本体部分は、少なくとも部分的に前記第1の本体部分内に配置され、
前記第1の本体部分及び前記第2の本体部分の他方が前記ねじ接合部に係合する場合に、前記第1の本体部分及び前記第2の本体部分の一方が、所定の許容角度範囲で回転できるように、前記第1の本体部分と前記第2の本体部分との相対的回転が許容される、ソケット。
【請求項2】
前記第1の本体部分は、管状の本体部分であり、前記本体部分の第1の端部に配置された開放空洞(11)を備え、前記第2の本体部分は、少なくとも一部が前記開放空洞内に配置される、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記第1の本体部分は、第1の端面(12)を備え、前記第2の本体部分は、第2の端面(22)を備え、前記第1及び第2の端面は共通の平面にある、請求項1又は2に記載のソケット。
【請求項4】
前記第1の本体部分は、前記相対的回転を制限する機械的停止部を提供するために、前記第2の本体部分が備える対応する係合手段(23a,23b)と係合するように構成される係合手段(13a,13b)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項5】
前記第1の本体部分は、第1の肩部を形成する半径方向内向きに突出する第1の半径方向突出部(13a;13b)を備え、前記第2の本体部分は、半径方向外向きに突出する第2の肩部を形成する第2の半径方向突出部(23a;23b)を備え、前記第1及び第2の肩部は、前記第1及び第2の本体部分の間の相対的回転を停止させるために係合することができる、請求項1から4のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項6】
前記第2の本体部分は、半径方向外向きに突出する2つの突出部(23a;23b)を有する実質的に円筒状の第1の端部セクション(24)を備える、請求項5に記載のソケット。
【請求項7】
前記第2の本体部分は、前記第1の端部本体部分及び半径方向外向きに突出する前記2つの突出部の半径方向延長部に等しい直径を有する実質的に円筒状の第2の端部セクション(25)を備える、請求項6に記載のソケット。
【請求項8】
前記第1の本体部分の前記開放空洞は、円筒内面(11a)を備え、前記内面は、半径方向内向きに突出する2つの突出部(13a;13b)を備える、請求項5から7のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項9】
前記第1の肩部は、前記半径方向に延びる実質的に平坦な係合面(16)を備え、前記第2の肩部は、前記半径方向に延びる第2の実質的に平坦な係合面(26)を備え、前記第1及び第2の係合面は、前記平坦な係合面に沿って接触し、それによって前記相対的回転を制限する前記機械的停止部を提供することができる、請求項5から8のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項10】
前記第1の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分(10a)を備え、前記第2の本体部分は、ねじ接合部との係合に適する前端部分(20b)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項11】
前記第2の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分(10a)を備え、前記第1の本体部分は、ねじ接合部手との係合に適する前端部分(20b)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項12】
前記相対的回転の前記許容範囲は、50から120度、好ましくは90から110度である、請求項1から11のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項13】
ねじ接合部を締結するためにトルクがパルスで与えられる締結作業を行うための手持ち式電動工具における方法であって、前記手持ち式電動工具は出力軸を備え、
-前記出力軸に締結方向の第1のトルクパルスを提供するステップと、
-前記出力軸を所定の角度間隔にわたって前記締結方向と反対の方向に回転させるステップと、
-前記出力軸に前記締結方向の第2のトルクパルスを提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
ねじ接合部を締結するためにトルクがパルスで与えられ宇締結作業を行うための手持ち式電動工具であって、前記電動工具は、出力シャフトを備え、請求項1から12のいずれか一項に記載のソケットと係合するように構成され、
-前記出力軸に締結方向の第1のトルクパルスを提供し、
-前記出力軸を所定の角度間隔にわたって前記締結方向と反対の方向に回転させ、
-前記出力軸に前記締結方向の第2のトルクパルスを提供する、
ように動作可能である、手持ち式電動工具。
【請求項15】
電動工具で実行されると、前記電動工具に請求項13に記載の方法を実行させるコンピュータプログラムをその上に格納したコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にパルス締結に関し、より詳細には、直接駆動式電動工具を用いて行うパルス締結に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業者が感じる反力トルクを小さくするために、接合部にトルクが繰り返しパルスで与えられるパルス締結が知られている。例えば、出力軸に断続的にエネルギーを伝達してトルクパルスを与えるように配置されたインパルスユニットを含む、いわゆるインパルス工具が知られている。他の例では、電気パルス工具の内部に収容されたモータが出力軸にパルス状にトルクを与える直接駆動式電動工具をパルス締結に利用することもできる。
【0003】
この場合、パルスは、例えばモータと出力軸との間のギアボックス内に存在する固有の遊びの範囲内でモータを加速することによって提供され、出力軸と出力軸に配置されたソケットの受け構造との間で支配的な遊びをさらに含む場合もある。これにより、工具に回転エネルギーが蓄積され、遊びがなくなったときにトルクパルスとしてねじに伝達することができる。しかしながら、機能が弱まる前に利用できる遊びの量は非常に限られているので、このような方策を用いて得られる運動エネルギー量は制限される。
【0004】
従って、これらの問題のいくつかを軽減するために、このような工具に専用のいわゆる遊びユニットを設け、より大きな遊びでモータを加速できるようにする試みがなされてきた。これにより、工具に蓄積され、トルクパルスとしてねじに伝達することができる回転エネルギー量は、ある程度は増大させることができる。
【0005】
しかしながら、例えば、このようなユニットに対応するために、既存の工具を改造及び再設計する必要があり、結果として、複数の工具が必要になる可能性があるという問題が依然として残されている。言うまでもなく、このようなユニットは、もちろん工具の複雑性及びサイズを増加させる。従って、パルス締結、より詳細には直接駆動式工具を使用するパルス締結の分野における改良の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、繰り返しトルクパルスでより多くのエネルギー/トルクを与えることができる直接駆動式工具を用いてパルス締結を提供することが望ましいであろう。より詳細には、工具のサイズ及び複雑さを大幅に増加させないような解決策を提供することが望ましいであろう。これらの問題の1又は2以上に良好に対処するために、独立請求項に定義されるソケット、手持ち式電動工具における方法、及び手持ち式電動工具が提供される。好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、締結作業を行うように構成される電動工具のためのソケットユニットが提供される。ソケットユニットは、第1の本体部分及び第2の本体部分を備え、第1の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分及びねじ接合部との係合に適している前端部分のうちの一方を備え、第2の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分及びねじ接合部との係合に適している前端部分のうちの他方を備える。第2の本体部分は、少なくとも部分的に第1の本体部分内に配置され、第1の本体部分と第2の本体部分との他方がねじ接合部に係合する場合に、第1及び第2の本体部分の一方が、所定の許容角度範囲にわたって回転できるように、第1の本体部分と第2の本体部分との間の相対的回転が許容される。
【0008】
第1の態様によれば、ソケットユニット(又はソケット-これらの用語は本明細書を通じて互換的に使用される)は、ソケットユニット内に比較的大きくかつ明確に定められた角度遊びを提供するツーピース設計によって、上記の問題に対する発明的な解決策を提供する。これは、各々がねじ接合部と工具の出力軸のそれぞれの1つに係合する2つの本体部分の間の相対的回転を可能にすることによって行われる。これにより、例えば従来の設計で利用された上記のギアボックス等に存在する遊びと比較してはるかに大きな遊びが、電動工具を変更することなく、ソケットの単純な交換だけで好都合で柔軟な方法で提供され、そのようなソケットは、多かれ少なかれ交換する必要がある消耗部品である。さらに、ソケットに遊びがあるため、振動レベルだけでなく、作業者に影響を与える反動トルクも著しく減少し、従って、作業環境も向上する。当業者は、所定の角度間隔が所定の時間間隔と同様に表わすことができることを認識する。
【0009】
従って、独立請求項1によるソケットは、各トルクパルスで伝達されるエネルギーを巧妙に増加させ、同時に作業者の作業環境を向上させる。
【0010】
しかしながら、初期停止フェーズの間、ソケットの両部品は、少なくともいくつかの実施形態において、ギャップ(又は遊び)が閉じられると一緒に回転して、標準的なソケットの機能性を提供することになる。従って、相対的回転は、締結されるねじ接合部がぴったりとした状態に達するか、少なくともそれに近い状態になり、ソケットと係合する部品の回転が妨げられる場合に、特に重要であり利用されると説明することができる。
【0011】
第2の本体部分は、第1の本体部分内に少なくとも部分的に配置される、すなわち、第2の本体部分は、第1の本体部分の内部に少なくとも部分的に設けられる、部分的に囲まれる、取り囲まれる、又はそれによって覆われる。第2の本体部分は、例えば、管状要素によって定められた空間内に少なくとも部分的に配置することができる。
【0012】
工具の出力軸に結合するための後端部分及びねじ接合部との係合に適する前端部分は、六角形、四角形又は同様のものなど、何らかの適切なデザインを有する係合手段を備えることができる。例えば、ソケットは、その後端部分に電動工具の出力軸の四角形状の端部を受け入れることが意図された四角形断面の凹部を有し、前端部分に、締結されることになるねじ接合部の種類、例えば六角形状に適合するように構成される内部断面形状を有することができる。例としては、四角形の雌又は雄の入力及び出力、及び六角形の雄又は雌の入力及び出力の何らかの組み合わせを挙げることができ、当業者は、例えばトルクス(登録商標)などの六角形とは別の何らかの他の形状を利用できることも理解する。
【0013】
1つの実施形態によれば、第1の本体部分は、管状の本体部分であり、本体部分の第1の端部に配置された開放空洞を備え、第2の本体部分は、開放空洞内に少なくとも部分的に配置される。例えば、1つの実施形態において、開放空洞は、円筒形状とすることができる。
【0014】
1つの実施形態によれば、第1の部分は、第1の端面を備え、第2の本体部分は、第2の端面を備え、第1及び第2の端面は、共通の平面上にある。従って、このような実施形態では、第2の本体部分は、上記の空洞によって境界付けされた空間内に完全に配置することができる、すなわち、第1の本体部分によって完全に取り囲むことができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、第1の本体部分は、相対的回転を制限する機械的停止部を提供するために、第2の本体部分が備える対応する係合手段と係合するように構成される係合手段を備える。例としては、対応する溝と係合する突出部、及び対応する突出部と係合する突出部が挙げられる。
【0016】
1つの実施形態によれば、第1の本体部分は、第1の肩部を形成する半径方向内向きに突出する第1の半径方向突出部を備え、第2の本体部分は、第2の肩部を形成する半径方向外向きに突出する第2の半径方向突出部を備え、第1及び第2の肩部は、第1及び第2の本体部分の間の相対的回転を停止させるために係合できる。これにより、相対的回転の所定の許容角度範囲の大きさを決定することができる。さらに、上述したように、初期停止フェーズにおいて、肩部が係合する場合にギャップ(又は遊び)が閉じられ、停止中に標準的なソケットの機能性が提供されることになる。
【0017】
1つの実施形態によれば、第2の本体部分は、半径方向外向きに突出する2つの突出部を有する実質的に円筒状の第1の端部本体セクションを備える。これら2つの突出部は、例えば、突出部が対応する構造体に衝突する前に、約180°の最大相対的回転を可能にするように配置することができる。実際の角度範囲は、肩部の設計にも依存し、許容される角度範囲を減少させるために、より大きな角度にわたって広がるより広い肩部を利用することができる。
【0018】
1つの実施形態によれば、第2の本体部分は、半径方向外向きに突出する3つの突出部を有する実質的に円筒状の第1の端部本体セクションを備える。当業者は、それぞれの本体部分の何らかの他の数の突出部が、本明細書の範囲内で想定できることを認識する。
【0019】
1つの実施形態によれば、第2の本体部分は、第1の端部本体部分及び半径方向外向きに突出する2つの突出部の全半径方向延長部に等しい直径を有する実質的に円筒状の第2の端部セクションを含む。さらに好ましくは、直径は、第1の本体部分に形成された空洞の内径に適合される。さらに、第2の本体部分の全長は、第2の本体部分が空洞内に完全に収まるように、空洞の軸方向長さ(すなわち深さ)と等しいか又はそれよりも小さくすることができる。
【0020】
1つの実施形態によれば、第1の本体部分の開放空洞は、円筒内面を備え、この内面は、半径方向内向きに突出する2つの突出部を備える。これによって、第2の本体部分は、内向きに突出する突出部によって端点が定められる角度間隔にわたって空洞内で回転することができる。当業者は、何らかの他の数の突出部が本明細書の範囲内で想定できることを認識する。
【0021】
1つの実施形態によれば、第1の肩部は、半径方向に延びる実質的に平坦な係合面を備え、第2の肩部は、半径方向に延びる第2の実質的に平坦な係合面を備え、第1及び第2の係合面は、平坦な係合面に沿って接触し、それによって相対的回転を制限する機械的停止部を提供することができる。これにより、好都合な効率的な衝突を達成することができ、エネルギー伝達を可能な限り効率的にすることができる。
【0022】
1つの実施形態では、半径方向の突出部は、本体部分の軸方向長さの25から75%、例えば、第2の本体部分の軸方向長さの約半分に沿って延びる。1つの実施形態では、第2の半径方向突出部は、本体部分の軸方向長さの25から75%、例えば、開放空洞の軸方向長さの約半分に沿って延びる。
【0023】
1つの実施形態によれば、ソケットは、第1及び第2の本体部分を回転可能に連結するピンをさらに備える。このようなピンは、第1及び第2の本体部分に形成されたそれぞれの穴を貫通して延びることができる。他の実施形態では、第1及び第2の本体部分は、互いに回転可能に支持し、摺動接触で回転する。いくつかの実施形態では、ソケットは、第1及び第2の本体部分を一緒に保持するように配置された他の要素を含むことができ、例としては、第1及び第2の本体部分のそれぞれの2つの隣接する合同面の間に配置されたスナップリングが挙げられる。このようなスナップリングは、1つの実施形態では、第1又は第2の本体部分に形成された肩部、又は棚部(ledge)上に配置することができる。
【0024】
1つの実施形態によれば、第1の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分を備え、第2の本体部分は、ねじ接合部との係合に適する前端部分を備える。このような実施形態において、第1の本体部分は、第2の本体部分がねじ接合部と係合して回転を妨げられる場合に、すなわち締結プロセスがぴったりとした状態に達したか又はそれに近い状態にある場合に、所定の許容角度範囲にわたって回転することができる。相対的な第1の本体部分は、この実施形態では、前端部分に形成された開放空洞を備え、この中に第2本体部分の一部又は全部を配置することができる。後者の場合、第1及び第2の本体部分のそれぞれの前面は、共通の平面に置くことができ、この平面は、ナット又はボルトが着座する際にワークピースの表面と一致することができる。
【0025】
1つの実施形態によれば、第2の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分を備え、第1の本体部分は、ねじ接合部との係合に適する前端部分を備える。このような実施形態において、第2の本体部分は、第2の本体部分の回転が妨げられる場合に、すなわち、ねじ接合部と係合して、締結プロセスがぴったりとした状態に達したか又はそれに近い状態にある場合に、所定の許容角度範囲にわたって回転することができる。第2の本体部分の相対的回転は、例えば、第1の本体部分に形成された空洞内で、この場合、第1の本体部分の上部又は後部で起こり得る。
【0026】
1つの実施形態によれば、相対的回転の許容範囲は、50から120度、好ましくは90から110度である。これより小さい値又は大きい値は、用途に応じて、その範囲内で想定することができる。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、ねじ接合部を締結するためにトルクがパルスで与えられる締結作業を行うための手持ち式電動工具における方法が提供され、手持ち式電動パルス工具は、出力軸を備え、この方法は、出力軸に締結方向の第1のトルクパルスを提供するステップと、所定の角度間隔(これはまた所定の時間間隔として表されることがある)にわたって締結方向と反対の方向に出力軸を回転させるステップと、出力軸に締結方向の第2のトルクパルスを提供するステップと、を含む。
【0028】
1つの実施形態によれば、ねじ接合部を締結するパルスでトルクが与えられる締結作業を行うための手持ち式電動工具における方法が提供され、手持ち式電動パルス工具は、出力軸を備え、請求項のいずれかに記載のソケットが工具の出力軸上に配置されてねじ接合部に係合し、この方法は、出力軸上に締結方向の第1のトルクパルスを提供するステップと、第2の本体部分がねじ接合部と係合した状態で第1の本体部分が第2の本体部分に対して回転するように締結方向と反対の方向に出力軸を回転させるステップと、ねじ接合部と係合して配置された第2の本体部分に衝突する前に第1の本体部分が所定の許容角度範囲にわたって加速するように、出力軸に締結方向の第2のトルクパルスを提供するステップとを含む。これにより、本発明のソケットによって提供される追加的な大きくかつ良好に定められた遊びを十分に利用することができ、標準的なパルス方策を用いる場合と比較して、かなり大きな慣性に基づくパルスを接合部に提供することができる。逆方向の回転、すなわち逆動の大きさ又は長さは、使用されるソケットによって提供される相対運動に関する角度範囲に適合させることができる。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、ねじ接合部を締結するためにトルクがパルスで与えられる締結作業を行うための手持ち電動工具が提供され、手持ち電動工具は、出力軸を備え、上記の実施形態のいずれかによるソケットと係合するように構成され、手持ち電動工具は、出力軸に締結方向の第1のトルクパルスを提供し、出力軸を所定の角度間隔にわたって締結方向と反対の方向に回転させ、出力軸に締結方向の第2のトルクパルスを提供するように動作可能である。バッテリ駆動式工具とすることができる工具は、電気モータと、電気モータを制御するように構成されたプロセッサとをさらに備え、プロセッサによって実行可能な命令を含むメモリをさらに備えることができる。従って、ソフトウェア命令がプロセッサによって実行されると、電動工具は、上記したステップを実行するように動作可能である。この工具は、直接駆動式電動工具とすることができる。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、電動工具で実行されると、電動工具に上記の実施形態のいずれかによる方法を実行させるコンピュータ可読コードを含むコンピュータプログラムをその上に格納したコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0031】
本発明の第3及び第4の態様の範囲内で考えられる電動工具及び記憶媒体の目的、利点及び特徴は、本発明の第1及び第2の態様に言及する上記の検討によって容易に理解される。
【0032】
本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、図面及び添付の請求項を検討するときに明らかになるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明する以外の実施形態を作り出すことができることを理解できる。
本発明は、以下の例示的かつ非限定的な実施形態の詳細な説明において、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1の実施形態による例示的なソケットユニットの縦断面図である。
【
図2】例示的なソケットユニットの横断面図である。
【
図3】第1の実施形態によるソケットユニットの第1の本体部分の斜視図である。
【
図4】第2の実施形態によるソケットユニットの第2の本体部分の斜視図である。
【
図5】第2の実施形態によるソケットユニットが備えるスナップリングの斜視図である。
【
図6】本開示の例示的な実施形態によるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
全ての図は概略的なものであり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、本発明を明瞭にするために必要な部分のみを示しており、他の部分は省略されるか又は単に示唆される場合がある。
【0035】
第1の実施形態による締結工具と共に使用するための、第1の実施形態による例示的なソケットユニット1が、
図1に縦断面図で示されている。ソケットユニット1は、第1の本体部分10及び第2の本体部分20を備える。図示の実施形態では、第1の本体部分は、電動工具の出力軸に結合するための後端部分10aを備え、一方で、第2の本体部分20は、ねじ接合部との係合に適する前端部分20bを備える。
【0036】
第1の本体部分10は、さらに、第2の本体部分20が配置される前端部分10bに配置された開放空洞11を含む管状体として説明することができる。開放空洞は、管状体10に広がる境界壁の上端部で境界が定められる。さらに、第1の本体部分10は、第1の端面12を備え、第2の本体部分20は、第2の端面22を備え、これらは共通の平面上にある。その結果として、第2の本体部分20が空洞11内に完全に配置されるように、空洞11の軸方向長さは、第2の本体部分の軸方向長さと等しい。
【0037】
さらに、第2の本体部分20は、第1の本体部分と第2の本体部分との間の相対的回転が許容されるように空洞内に配置される。これにより、第1の本体部分10は、例えば、第2の本体部分20がねじ接合部とぴったりとした又はそれに近い状態で係合している場合でも所定の許容角度範囲にわたって回転することができ、それによって第2の本体部分10の何らかの回転が妨げられる。図示の実施形態では、ソケットユニットは、第1及び第2の本体部分10、20を回転可能に連結するピン30、例えばニードルローラ30を備えるが、他の実施形態では、第2の本体部分20は、開放空洞11の端部を形成する境界壁14に対して単に回転可能に支えることができる。図示の実施形態では、相対的回転の許容範囲は、約100°である。第1及び第2の本体部分10、20をさらに共に保持するために、保持要素40が設けられ、図示された実施形態では、スナップリング40(
図5に示される)である。
【0038】
この相対的回転を制限するために、
図2の断面図で示される、第2の本体部分20が備える対応する係合手段23a、23bと係合するように構成される、第1の本体部分10上の係合手段13a、13bによって、機械的停止機能が実現される。
【0039】
これらの係合手段は、本実施形態では、半径方向の突出部又は肩部とし実現される。第1の本体部分10では、2つの半径方向の突出部又は肩部13a、13bは、半径方向内向きに突出し、第2の本体部分20では、2つの対応する半径方向の突出部23a、23bは、半径方向外向きに突出する肩部を形成し、
図3及び4に示されるように、第1及び第2の肩部は、第1及び第2の本体部分の間の相対的回転を停止させるために係合できるようになっている。
【0040】
例えば、
図3及び
図4から分かるように、第1の本体部分10の肩部13a;13bは、開放空洞11の円筒内面11a上に形成され、開放空洞11の軸方向長さの約半分に沿って延びるのに対し、第2の本体部分は、2つの肩部23a、23bが配置された実質的に円筒状の端部セクションを備える。第1の本体部分と同様に、肩部23a、23bは、第2の本体部分の長さの約半分に相当する、円筒状の端部の軸方向の長さに沿って延びる。さらに、肩部の各々は、半径方向に延びる実質的に平坦な係合面16、26を備え、肩部は、係合時にこの係合面に沿って接触する。
【0041】
実施形態によるソケットユニットは、好都合には、パルス締結を実行する、すなわち、モータが出力軸にパルス状のトルクを与える方策を実行する直接駆動式電動締結工具と共に使用することができる。より詳細には、本発明のさらなる態様を構成する工具は、出力軸に配置された本発明によるソケットユニットを有する場合、
図5に示すような方法を実行するように動作可能であり、本方法は、出力軸に締結方向の第1のトルクパルスを提供するステップ(S10)と、第2の本体部分20がねじ接合部に係合している状態で第1の本体部分10が第2の本体部分20に対して回転するように、出力軸を所定の角度間隔又は時間間隔にわたって締結方向と反対の方向に回転させステップ(S20)と、第1の本体部分10が、ねじ接合部と係合して配置された第2の本体部分20に衝突する前に所定の許容角度範囲にわたって加速するように、出力軸に締結方向の第2のトルクを提供するステップ(S30)とを含み、従って、トルクパルスが接合部に伝達される。
【0042】
本発明は、図面及び上記の説明で詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、例示的又は例示的であり、制限的ではないと考える必要があり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、特許請求の範囲に定義された範囲内で多くの修正、変形及び変更が考えられることを理解する。加えて、開示された実施形態に対する変形は、図面、開示内容及び請求項の検討から、請求された発明を実施する当業者によって理解され、達成され得る。特許請求の範囲において、単語「備える(comprising)」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合せを好都合に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0043】
1 ソケットユニット
10 第1の本体部分
10a 後端部分
10b 前端部分
11 開放空洞
11a 円筒内面
12 第1の端面
14 境界壁
20 第2の本体部分
20b 前端部分
22 第2の端面
30 ピン
【国際調査報告】