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  • 特表-官能化オレフィンオリゴマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】官能化オレフィンオリゴマー
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/584 20060101AFI20230111BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 133/56 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/93 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/94 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/88 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/40 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/42 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 129/92 20060101ALI20230111BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20230111BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20230111BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20230111BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20230111BHJP
   C10N 10/08 20060101ALN20230111BHJP
   C10N 10/14 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C09K8/584
C10M133/16
C10M133/56
C10M129/93
C10M129/94
C10M129/88
C10M129/10
C10M135/10
C10M129/40
C10M129/42
C10M129/92
C10M169/04
C10N10:02
C10N10:04
C10N10:12
C10N10:08
C10N10:14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524921
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 IB2020058091
(87)【国際公開番号】W WO2021084330
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/929,026
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、カーティス ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ギブス、アンドリュー アール.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、アンドリュー エム.
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB15C
4H104BB18C
4H104BB19C
4H104BB31A
4H104BC03C
4H104BC05C
4H104BC06C
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BG06C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA04
4H104FA06
4H104FA07
(57)【要約】
本開示は、炭化水素を含む油層の処理方法を提供する。その方法は、その油層に、界面活性剤組成物を導入することを伴う。その界面活性剤組成物は、アルファオレフィンスルホン酸塩または異性化オレフィンスルホン酸塩を含む。そのアルファオレフィンスルホン酸塩または異性化オレフィンスルホン酸塩は、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をスルホン化することによって合成されたものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含む油層の処理方法であって、
前記油層に、界面活性剤組成物を導入することを含み、
前記界面活性剤組成物が、アルファオレフィンスルホン酸塩または内部オレフィンスルホン酸塩を含み、前記アルファオレフィンスルホン酸塩または前記内部オレフィンスルホン酸塩が、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をスルホン化することによって合成されたものである前記方法。
【請求項2】
前記i)オリゴマー化する工程により、C12~C70オリゴマーを少なくとも50wt%有するオリゴマーが生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記i)オリゴマー化する工程により、C16~C40オリゴマーを少なくとも50wt%有するオリゴマーが生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、
補助界面活性剤、共溶媒、塩基、石油増進回収法用の流体または坑井の改善用の流体
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記補助界面活性剤が、2級アルカンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、アルコキシル化アルコール硫酸塩、アルコキシル化アルコールカルボン酸塩及びグリセロールスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、重質アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキル芳香族スルホン酸塩、非イオン性アルコキシル化アルコールまたはアルキルアリールジスルホン酸塩、ならびにこれらの混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記共溶媒が、水、アルコールまたはグリコールである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が、炭酸塩、水酸化物、重炭酸塩、アンモニウムまたはアミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
石油増進回収のための界面活性剤であって、前記界面活性剤が、
アルファオレフィンスルホン酸塩または内部オレフィンスルホン酸塩を含み、前記アルファオレフィンスルホン酸塩またはその異性化オレフィンスルホン酸塩が、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をスルホン化することによって合成されたものである、
前記界面活性剤。
【請求項10】
前記i)オリゴマー化する工程により、C12~C70オリゴマーを少なくとも50wt%有するオリゴマーが生成される、請求項9に記載の界面活性剤。
【請求項11】
前記i)オリゴマー化する工程により、C16~C40オリゴマーを少なくとも50wt%有するオリゴマーが生成される、請求項9に記載の界面活性剤。
【請求項12】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項9に記載の界面活性剤。
【請求項13】
補助界面活性剤、共溶媒、塩基、石油増進回収法用の流体または坑井の改善用の流体
をさらに含む、請求項9に記載の界面活性剤。
【請求項14】
前記補助界面活性剤が、2級アルカンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、アルコキシル化アルコール硫酸塩、アルコキシル化アルコールカルボン酸塩及びグリセロールスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、重質アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキル芳香族スルホン酸塩、非イオン性アルコキシル化アルコールまたはアルキルアリールジスルホン酸塩、ならびにこれらの混合物を含む、請求項13に記載の界面活性剤。
【請求項15】
前記共溶媒が、水、アルコールまたはグリコールである、請求項13に記載の界面活性剤。
【請求項16】
前記塩基が、炭酸塩、水酸化物、重炭酸塩、アンモニウムまたはアミンである、請求項13に記載の界面活性剤。
【請求項17】
基油と、
i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)前記オリゴマー化物をエチレン性飽和カルボン酸基で官能化することによって合成されたスクシンイミド分散剤と、
を含む潤滑油組成物。
【請求項18】
前記エチレン性飽和カルボン酸基が、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、マレイン酸もしくは無水物、フマル酸またはイタコン酸である、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記ii)官能化する工程により、アルキル置換無水コハク酸が形成される、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)前記オリゴマー化物をエチレン性飽和カルボン酸基で官能化することによって合成されたスクシンイミド分散剤
を含む分散剤組成物。
【請求項22】
前記エチレン性飽和カルボン酸基が、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、マレイン酸もしくは無水物、フマル酸またはイタコン酸である、請求項21に記載の分散剤。
【請求項23】
前記ii)官能化により、アルキル置換無水コハク酸が形成される、請求項21に記載の分散剤。
【請求項24】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項21に記載の分散剤。
【請求項25】
基油と、
i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)ヒドロキシ芳香族化合物を前記オリゴマー化物でアルキル化することによって合成された清浄剤添加剤と、
を含む潤滑油組成物。
【請求項26】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロールまたはクレゾールである、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
前記清浄剤添加剤が、金属と塩を形成する、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
前記金属が、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Co、Mn、Zr、BaまたはBである、請求項27に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)ヒドロキシ芳香族化合物を前記オリゴマー化物でアルキル化することによって合成された清浄剤添加剤
を含む清浄剤組成物。
【請求項31】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロールまたはクレゾールである、請求項30に記載の清浄剤組成物。
【請求項32】
前記清浄剤添加剤が、金属と塩を形成する、請求項30に記載の清浄剤組成物。
【請求項33】
前記金属が、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Co、Mn、Zr、BaまたはBである、請求項30に記載の清浄剤組成物。
【請求項34】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項30に記載の清浄剤組成物。
【請求項35】
i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)前記オリゴマー化物をアルコールに変換することによって合成されたアルコールエーテル硫酸塩またはアルコールエーテルカルボン酸塩
を含む界面活性剤組成物。
【請求項36】
前記モノマーが、プロピレン及びイソブチレンの1つ以上を含む、請求項35に記載の界面活性剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、官能化オレフィンオリゴマー、及びその官能化オレフィンオリゴマーを含む組成物を用いる商業用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンオリゴマー及びその誘導体(例えば水素添加オレフィンオリゴマー)は、界面活性剤、潤滑油及び添加剤を含む多種多様な商品を製造する際の最終生成物または中間体である。所定の用途に用いる具体的なオレフィンオリゴマーは典型的には、そのオレフィンオリゴマーの物理的特性及び/または機械的特性によって決まる。これらの特性は、そのオレフィンオリゴマーを生成する目的で使用する具体的な方法と、そのオレフィンオリゴマーを生成した際の反応条件によってカスタマイズできる。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、炭化水素を含む油層の処理方法であって、その油層に、アルファオレフィンスルホン酸塩または内部オレフィンスルホン酸塩を含む界面活性剤組成物を導入することを含み、そのアルファオレフィンスルホン酸塩または内部オレフィンスルホン酸塩が、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をスルホン化することによって合成されたものである方法を提供する。
【0004】
別の態様では、石油増進回収の際の界面活性剤であって、その界面活性剤が、アルファオレフィンスルホン酸塩または内部オレフィンスルホン酸塩を含み、そのアルファオレフィンスルホン酸塩または内部オレフィンスルホン酸塩が、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をスルホン化することによって合成されたものである界面活性剤を提供する。
【0005】
さらに別の態様では、基油と、C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をエチレン性飽和カルボン酸基で官能化することによって合成されたスクシンイミド分散剤とを含む潤滑油組成物を提供する。
【0006】
さらに別の態様では、C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をエチレン性飽和カルボン酸基で官能化することによって合成されたスクシンイミド分散剤を含む分散剤組成物を提供する。
【0007】
さらに別のさらなる態様では、基油と、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)ヒドロキシ芳香族化合物をそのオリゴマー化物でアルキル化することによって合成された清浄剤添加剤とを含む潤滑油組成物を提供する。
【0008】
さらに別のさらなる追加の態様では、i)C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)ヒドロキシ芳香族化合物をそのオリゴマー化物でアルキル化することによって合成された清浄剤添加剤を含む清浄剤組成物を提供する。
【0009】
さらに別のさらなる追加の別の態様では、C~Cモノオレフィンを含むモノマーをオリゴマー化して、オリゴマー化物を形成し、ii)そのオリゴマー化物をアルコールに変換することによって合成されたアルコールエーテル硫酸塩またはアルコールエーテルカルボン酸塩を含む界面活性剤組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例6で調製したスルホン酸ナトリウム組成物のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、官能化オレフィンオリゴマーと、様々な商業用途におけるその使用法を提供する。その官能化オレフィンオリゴマーの少なくともいくつかは、化学的石油増進回収(CEOR)の際の界面活性剤として使用できるので、重要である。CEORでは典型的には、アニオン性界面活性剤を採用し、そのアニオン性界面活性剤としては、アルキル芳香族スルホン酸塩(AAS)、アルファオレフィンスルホン酸塩(AOS)、内部オレフィンスルホン酸塩(IOS)、アルコール硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩またはアルコールエーテル硫酸塩(AES)、及びアルキルエーテルカルボン酸塩またはアルコールエーテルカルボン酸塩(AEC)が挙げられるが、これらに限らない。いくつかのオレフィンオリゴマーは、油添加剤、潤滑油、防曇剤または湿潤剤、及び接着促進剤としても使用できる。オレフィンオリゴマーは、可塑剤、石鹸、清浄剤、布地柔軟剤、帯電防止剤及びその他の多くの用途としても使用できる。
【0012】
モノマー
官能化オレフィンオリゴマーは、オレフィンモノマーをオリゴマー化して、オレフィンオリゴマーを形成し、そのオリゴマー化物を官能化することによって作製できる。
【0013】
~Cモノオレフィンを含むか、そのモノオレフィンから本質的になるか、またはそのモノオレフィンからなる広範なモノマーをオリゴマー化できる。適切なモノマーとしては、内部オレフィン、アルファオレフィン、三置換オレフィン、これらのいずれかの混合物などが挙げられる。さらに、アルファオレフィンは、通常のアルファオレフィン(「直鎖アルファオレフィン」という場合もある)を含むか、または通常のアルファオレフィンから本質的になることができる。
【0014】
概して、そのモノマーは、C~Cモノオレフィン、C~CモノオレフィンまたはC~Cモノオレフィンを含むことができる(またはそのモノオレフィンから本質的になるか、もしくはそのモノオレフィンからなることができる)。別の実施形態では、そのモノマーは、Cオレフィン、あるいはCモノオレフィン、あるいはCモノオレフィン、あるいはCモノオレフィンを含むことができる(またはそのモノオレフィンから本質的になるか、もしくはそのモノオレフィンからなることができる)。したがって、炭素原子の数がそれぞれ異なるオレフィンの混合物を使用することもできるし、または大部分において、炭素原子の数が1つであるオレフィンをモノマーとして使用することもできる。
【0015】
そのモノマーは、本明細書に記載されているいずれかのオレフィン、または本明細書に記載されているオレフィンを組み合わせたものを少なくとも50wt.%、少なくとも55wt.%、少なくとも60wt.%、少なくとも65wt.%、少なくとも70wt.%、少なくとも75wt.%、少なくとも80wt.%、少なくとも85wt.%、少なくとも90wt.%または少なくとも95wt.%含むことができる。これに加えてまたはこれの代わりに、そのモノマーは、本明細書に記載されているいずれかのオレフィン、または本明細書に記載されているオレフィンを組み合わせたものを最大で100wt.%、99wt.%、98wt.%、97wt.%または96wt.%含むことができる。概して、その重量パーセントは、本明細書に開示されているいずれかの最小重量パーセントから、本明細書に開示されているいずれかの最大重量パーセントの範囲内であることができる。すなわち、モノマーの重量パーセントの非限定的な範囲としては、本明細書に記載されているいずれかのオレフィン、または本明細書に記載されているオレフィンの混合物の50~100wt.%、55~99wt.%、60~98wt.%、65~97wt.%、70~96wt.%、75~100wt.%、80~100wt.%または80~98wt.%という範囲を挙げることができる。
【0016】
そのオレフィンは、環状もしくは非環状、及び/または直鎖もしくは分岐鎖のものであることができる。例えば、そのモノマーは、非環状オレフィンを含むか、非環状オレフィンから本質的になるか、または非環状オレフィンからなることができ、これに加えてまたはこれの代わりに、そのモノマーは、直鎖オレフィンを含むか、直鎖オレフィンから本質的になるか、または直鎖オレフィンからなることができる。
【0017】
そのモノマーは、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンまたはこれらをいずれかに組み合わせたもの、あるいはプロピレン、あるいは1-ブテン、あるいはイソブチレンを含むことができる(またはこれらから本質的になるか、もしくはこれらからなることができる)。したがって、炭素原子の数がそれぞれ異なるオレフィンの混合物を使用することもできるし、または大部分において、炭素原子の数が1つであるオレフィンをモノマーとして使用することもできる。
【0018】
本発明のオリゴマー化反応は概して、C~Cモノオレフィンを含むモノマー及び触媒を反応部に導入することと、その反応部において、そのモノマーをオリゴマー化して、オレフィンオリゴマーを形成することを伴う。概ね、いずれの適切な触媒も使用できる。適切な触媒としては、イオン液体触媒、リン酸、ゼオライト、メソポーラスアルミノシリケートまたはチーグラー・ナッタ触媒が挙げられるが、これらに限らない。使用できる触媒は、さらに存在する。イオン液体触媒に関するさらに詳細な考察は、米国特許第9938473号に見ることができ、この特許は、参照により、本明細書に援用される。リン酸触媒に関するさらに詳細な説明は、U.S.2,592,428、U.S.2,814,655、U.S.3,887,634及びU.S.8,183,192に見ることができ、これらの特許は、参照により、本明細書に援用される。ゼオライト触媒に関するさらに詳細な考察は、U.S.4,547,612に見ることができ、この特許は、参照により、本明細書に援用される。メソポーラスアルミノシリケート触媒に関するさらに詳細な考察は、WO201120968に見ることができ、この特許は、参照により、本明細書に援用される。チーグラー・ナッタ触媒に関するさらに詳細な考察は、EP638593に見ることができ、この特許は、参照により、本明細書に援用される。オレフィンをオリゴマー化する様々な方法が、Skupinska,J.Chem.Rev.1991,91,613-648に記載されており、この文献は、参照により、本明細書に援用される。
【0019】
オレフィンオリゴマー生成物
本発明のオレフィンオリゴマーは、ダイマー、トリマー及び/またはテトラマー以上のオリゴマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、そのオレフィンオリゴマーは、(i)ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー及び/またはデカマーを少なくとも75wt%、80wt%、85wt%、90wt%または95wt%、(ii)トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー及び/またはデカマーを少なくとも50wt%、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、80wt%、85wt%または90wt%、(iii)ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー及び/またはヘプタマーを少なくとも75wt%、80wt%、85wt%、90wt%または95wt%、(iv)トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー及び/またはヘプタマーを少なくとも50wt%、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、80wt%、85wt%または90wt%、(v)ダイマー、トリマー、テトラマー及び/またはペンタマーを少なくとも30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%または60wt%、(vi)トリマー、テトラマー及び/またはペンタマーを少なくとも25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%または50wt%、(vii)ダイマー、トリマー及び/またはテトラマーを少なくとも25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%または60wt%、(viii)トリマー及び/またはテトラマーを少なくとも20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%または50wt%、あるいは(ix)これらをいずれかに組み合わせたものを含むことができる。
【0020】
追加の実施形態または代替的な実施形態では、そのオレフィンオリゴマーは、トリマー、テトラマー及びペンタマーを合わせて少なくとも35wt%、45wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%または65wt%含むことができ、この代わりにまたはこれに加えて、トリマー、テトラマー及びペンタマーを最大で合わせて100wt%、95wt%、90wt%または85wt%含むことができる。いくつかの実施形態では、そのオレフィンオリゴマーは、トリマー、テトラマー及びペンタマーを合わせて35wt%~100wt%、40wt%~95wt%、45wt%~90wt%、40wt%~85wt%、50wt%~90wt%または50wt%~85wt%含むことができる。
【0021】
そのオレフィンオリゴマーは、ダイマーを40wt%未満、30wt%未満、25wt%未満、20wt%未満、18wt%未満、16wt%未満、14wt%未満、12wt%未満または10wt%未満含むことができる。これに加えてまたはこれの代わりに、そのオレフィンオリゴマーは、モノマー単位を7つ以上含むオリゴマーを30wt%未満、25wt%未満、20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、8wt%未満、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満または2wt%未満含むことができる。
【0022】
いくつかの態様では、そのオレフィンオリゴマーは、C12~C70(例えば、C12~C40、C12~C30、C12~C20、C14~C70、C14~C40、14~C30、C14~C20、C16~C70、C16~C40、16~C30、C16~C24、C20~C70、C20~C40、C20~C30またはC20~C24)オリゴマーを少なくとも50wt%、60wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%または95wt%含むことができる。いくつかの態様では、そのオレフィンオリゴマーは、C70超のオリゴマーを30wt%未満、25wt%未満、20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、8wt%未満、6wt%未満、5wt.%未満、4wt%未満、3wt%未満または2wt%未満含むことができる。本明細書に開示されているオリゴマー(複数可)のwt%は、オレフィンオリゴマーの総重量に対するものである。
【0023】
そのオレフィンオリゴマーは、プロピレンオリゴマーであることができる(すなわち、そのオレフィンオリゴマーの繰り返し単位は、実質的にすべてプロピレン単位であることができる)。例えば、そのオリゴマーの繰り返し単位は、プロピレン単位を少なくとも約90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%または少なくとも99mol%含むことができる。
【0024】
そのオレフィンオリゴマーは、イソブチレンオリゴマーであることができる(すなわち、そのオレフィンオリゴマーの繰り返し単位は、実質的にすべてイソブチレン単位であることができる)。例えば、そのオリゴマーの繰り返し単位は、イソブチレン単位を少なくとも75mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%または少なくとも99mol%含むことができる。
【0025】
そのオレフィンオリゴマーは、数平均分子量(M)が、150~10,000g/molの範囲であることができる。例えば、そのオレフィンオリゴマーのMは、少なくとも150g/mol、250g/mol、325g/mol、400g/mol、500g/mol、600g/mol、650g/mol、700g/molまたは750g/molであることができる。これに加えてまたはこれの代わりに、最大Mは、10,000g/mol、7500g/mol、6000g/mol、5000g/mol、4000g/mol、3000g/mol、2500g/molまたは2000g/molであることができる。概して、そのオレフィンオリゴマーのMは、本明細書に開示されているいずれかの最小Mから、本明細書に開示されているいずれかの最大Mの範囲であることができる。
【0026】
そのオレフィンオリゴマーは、粘度指数(ASTM D2270)が少なくとも80であることができる。例えば、そのオレフィンオリゴマーの粘度指数は、少なくとも85、90、95、100または110であることができる。これに加えてまたはこれの代わりに、最大粘度指数は、200、175、150、140、135、130、125または120であることができる。概して、そのオレフィンオリゴマーの粘度指数は、本明細書に開示されているいずれかの最小粘度指数から、本明細書に開示されているいずれかの最大粘度指数の範囲であることができる。
【0027】
そのオレフィンオリゴマーは、100℃における動粘度(ASTM D445)が、いずれかの適切な値、例えば1.5~50mm/sの範囲であることができる。例えば、そのオレフィンオリゴマーまたは水素添加オレフィンオリゴマーは、100℃における動粘度が、少なくとも2mm/s、3mm/s、4mm/sまたは6mm/sであることができる。これに加えてまたはこれの代わりに、そのオリゴマーの100℃における最大動粘度は、50mm/s、20mm/s、14mm/s、12mm/s、10mm/sまたは8mm/sであることができる。概して、そのオレフィンオリゴマーの100℃における動粘度は、本明細書に開示されているいずれかの最小動粘度から、本明細書に開示されているいずれかの最大動粘度の範囲であることができる。
【0028】
そのオレフィンオリゴマーの流動点(ASTM D97)は、-5℃~-60℃の範囲内であることができる。例えば、そのオレフィンオリゴマーの最小流動点は、-60℃、-50℃、-45℃、-40℃または-35℃であることができる。これに加えてまたはこれの代わりに、その最大流動点は、-5℃、-8℃、-10℃、-15℃または-20℃であることができる。概して、そのオレフィンオリゴマーの流動点は、本明細書に開示されているいずれかの最小流動点温度から、本明細書に開示されているいずれかの最大流動点温度の範囲であることができる。
【0029】
官能化オレフィンオリゴマー
ヘテロ原子で官能化されたオリゴマー
本発明のオレフィンオリゴマーは、触媒を用いて、または触媒を用いずに、ヘテロ原子を含む基と、そのオレフィンオリゴマーとを反応させることによって官能化してもよい。これらの反応としては、ヒドロキシル化、ヒドロシリル化、オゾン分解、ヒドロホルミル化、ヒドロアミノ化、スルホン化、ハロゲン化、ヒドロハロゲン化、ヒドロホウ素化、エポキシ化、極性ジエンを用いるディールス・アルダー反応、極性芳香族化合物(例えばヒドロキシ芳香族化合物)を用いるフリーデル・クラフツ反応、及びフリーラジカル生成剤(例えば過酸化物)のような活性化剤を用いるマレイン化が挙げられる。
【0030】
ヘテロ原子を含む例示的な基としては、アルコール、アミン、アルデヒド、ヒドロキシ芳香族化合物、スルホン酸塩、酸及び無水物が挙げられる。
【0031】
ヘテロ原子で官能化された、その得られるオリゴマーにおける官能基の数は、1鎖あたり0.60~1.2個の官能基(例えば、1鎖あたり0.75~1.1個の官能基)という範囲であることができる。1鎖あたりの官能基の数は、いずれかの従来の方法(例えばH NMR分光法)によって求めることができる。
【0032】
清浄剤用アルコール
本発明のオレフィンオリゴマーを官能化して、アルキルエーテル硫酸塩(またはアルコールエーテル硫酸塩)(AES)、アルキルエーテルカルボン酸塩(またはアルコールエーテルカルボン酸塩)(AEC)及びアルキル硫酸塩(AS)のような清浄剤用アルコールを調製できる。清浄剤用アルコール及びその誘導体は、洗濯洗剤及び食器用洗剤、ならびに他の家庭用クリーナー及びシャンプー用の界面活性剤を製造する際に、原料として広く用いられている。これらのオリゴマーは、化粧品及び衛生用品の業界においても広く用いられている。
【0033】
アルコールは、オレフィンオリゴマーから調製でき、高分子量ポリエーテルを調製するための供給原料として使用できる。ポリエーテルはその後、AES及びAECに変換できる。これらの組成物は、化学的EOR用途用の界面活性剤として使用できる。これらの化合物の詳細な説明は、C.Neginらの文献(Petroleum 2017,3,197-211)及び米国特許第9,745,259号に見ることができ、これらの文献の関連する部分は、参照により、本明細書に援用される。
【0034】
従来のプロセスでは、オレフィンオリゴマーは、オキソ合成を介して、1級アルコールに変換できる。例えば、そのアルコールは、酸化エチレンとの反応によって、様々な非イオン性エトキシレートを形成でき、そのエトキシレートはそれ自体、界面活性剤として機能させてもよいし、またはさらに誘導体化させてもよい。そのエトキシレートの硫酸化から、アルコールエーテル硫酸塩を誘導できる。あるいは、そのアルコールを直接硫酸化して、アルキル硫酸塩(AS)を生成させてもよい。
【0035】
オレフィンスルホン酸塩
オレフィンスルホン酸塩界面活性剤(例えば、アルファオレフィンスルホン酸塩及び内部オレフィンスルホン酸塩)は、好ましい洗浄力、硬水との高い親和性、ならびに良好な湿潤特性及び発泡特性を有する。商業用途としては、シャンプー、軽質液体洗剤、バブルバス、重質液体洗剤、重質粉末洗剤及び乳化重合が挙げられる。特に、C14~C16アルファオレフィンスルホン酸塩(AOS)ブレンドは、液体ハンドソープで用いられる場合が多い。オレフィンスルホン酸塩は、その良好な洗浄力、発砲特性及び湿潤特性から、化学的EOR用途及び家庭用洗剤において、界面活性剤として利用できる。
【0036】
オレフィンオリゴマーは、AOS界面活性剤を製造する際の前駆体であることができる。オレフィンオリゴマーは、そのオリゴマーとスルホン化試薬との反応によって官能化して、オレフィンスルホン酸中間体をもたらしてよく、そして、その中間体を中和して、オレフィンスルホン酸塩をもたらすことができる。
【0037】
内部オレフィンスルホン酸塩(IOS)では、スルホン化反応は、その鎖沿いのいずれの位置でも行うことができる。その二重結合がランダムに分布しているからである。IOSは、内部オレフィンのスルホン化によって作製できる。
【0038】
オレフィンオリゴマーのスルホン化は、いずれかの既知の方法によって行ってよい。例えば、まず、オレフィンオリゴマーを連続薄膜式反応器内でスルホン化して、アルケンスルホン酸とスルトン(環状スルホン酸エステル)との混合物を作製できる。
【0039】
スルホン化は、クロロスルホン酸、スルファミン酸及び硫酸/発煙硫酸を用いることによって行うこともできる。
【0040】
連続プロセスまたはバッチプロセスにおいて、当業者に既知のいずれかの方法によって、オレフィンスルホン酸の中和を行って、オレフィンスルホン酸塩を作製してよい。典型的には、オレフィンスルホン酸を、一価カチオン(例えば、ナトリウム、またはアンモニウムもしくは置換アンモニウムイオンのようなアルカリ金属)の供給源で中和してから、高温で加水分解して、残りのスルトンをアルケンスルホン酸塩及びヒドロキシスルホン酸塩に変換する。これにより、オレフィンスルホン酸塩の水溶液が得られる。固体の無水生成物が望ましい場合には、その生成物は、水の代わりに、イソプロパノール中のその溶液を中和及び加水分解することによって得ることができる。任意に、その中和したオレフィンスルホン酸塩を追加の塩基または苛性物質でさらに加水分解してもよい。
【0041】
その界面活性剤組成物は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及びアミン化合物の炭酸塩、水酸化物、重炭酸塩のような水性塩基も含んでよい。
【0042】
油層の種類に応じて、アルカリをその界面活性剤組成物とともに含めてもよい。一実施形態では、用いるアルカリは、周期表のIA族の金属のアルカリ金属の塩基性塩(アルカリ金属の水酸化物、ホウ酸塩、炭酸塩または重炭酸塩など)である。例えば、アルカリとしては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、EDTA四ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは四ホウ酸ナトリウムを挙げてよい。アルカリの使用により、その界面活性剤が高pH環境で維持され、それにより、その界面活性剤の安定性を延長させるか、または界面活性剤の吸着を最小限に抑えることができる。アルカリは、界面活性剤を硬度から保護することもできる。
【0043】
その界面活性剤組成物は、補助界面活性剤、ポリマー、キレーター、共溶媒、還元剤/脱酸素剤及び殺生物剤のような追加の添加剤も含んでよい。この組み合わせた組成物は、スラグと称する場合が多い。
【0044】
適切な共溶媒は、イソプロピルアルコール、エタノール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、sec-アミルアルコール、n-ヘキシルアルコール、sec-ヘキシルアルコールなどのような低級炭素鎖アルコール、アルコールエーテル、ポリアルキレンアルコールエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコールエーテルもしくはいずれかの他の一般的な有機共溶媒、またはいずれかの2つ以上の共溶媒を組み合わせたものから選択してよい。場合によっては、その共溶媒は、水であってよい。
【0045】
特に、ポリマーを用いて、石油増進回収のために、スラグを油層に注入するときに、スラグの流動性を制御してよい。適切なポリマーとしては、キサンタンガム及びスクレログルカンのようなバイオポリマー、ならびに加水分解されていないかまたは部分的に加水分解された水溶性ポリアクリルアミド(HPAMまたはPHPA)及び疎水性変性関連ポリマーのような合成ポリマーが挙げられるが、これらに限らない。ポリアクリルアミド(PAM)と、AMPSという商標で販売されている2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(さらに一般的には、アクリルアミドターシャルブチルスルホン酸、すなわちATBSとしても知られている)(及び/またはナトリウム塩)とN-ビニルピロリドン(NVP)の一方または両方とのコポリマーも含まれる。
【0046】
キレーターを加えて、多価カチオンとの錯体を形成して、その界面活性剤組成物中の水を軟化してよい。キレーターの例としては、アルカリとしても使用できるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)が挙げられる。キレート剤を用いて、硬質ブラインを処理してよい。キレート剤の量は、界面活性剤溶液における二価イオンの量に基づき選択してよい。
【0047】
亜ジチオン酸ナトリウムのような還元剤/脱酸素剤を加えて、混合物中のあらゆる酸素を除去し、あらゆる遊離鉄を還元してFe2+にしてよい。その鉄イオンを用いて、ポリマー分子を切断して粘性化能力を低下または喪失させる反応から、合成ポリマーを保護できる。還元環境は、界面活性剤の吸着も低減できる。
【0048】
殺生物剤を加えて、危険で致命的なHSを生成させることによって、設備内での有機物(藻類)の成長を防ぎ、油層を「腐らせる」硫酸塩還元菌(SRB)の成長を阻止することができるとともに、殺生物剤を用いて、バイオポリマーの糖のような構造を栄養として、それにより、流動性を制御不能とする生物から、バイオポリマーを保護することもできる。殺生物剤としては、アルデヒド及び4級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0049】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物
本明細書に記載されているオレフィンオリゴマーは、そのオレフィンオリゴマーでヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化することによって官能化して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を形成してよい。アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその塩は、潤滑油用添加剤として有用である。
【0050】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、当該技術分野において周知である、アルキル化の方法によって調製される。アルキル化してよい有用なヒドロキシ芳香族化合物としては、ヒドロキシル基を1~4個、好ましくは1~3個有する単環のモノヒドロキシ芳香族炭化水素及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が挙げられる。適切なヒドロキシ芳香族化合物としては、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾールなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
そのオレフィンオリゴマーによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化は概して、アルキル化触媒の存在下で行う。有用なアルキル化触媒としては、ルイス酸、固体酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び酸性モレキュラーシーブ触媒が挙げられる。適切なルイス酸としては、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、ならびに三フッ化ホウ素錯体(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、三フッ化ホウ素-フェノール及び三フッ化ホウ素-リン酸)が挙げられる。適切な固体酸としては、スルホン化された酸性イオン交換樹脂タイプの触媒(AMBERLYST(登録商標)-36(Dow Chemical Company)など)、粘土触媒(例えば、CelaClear F-24X、Engineered Clays Corp)、またはゼオライト材が挙げられる。
【0052】
緩和の反応条件は、使用する触媒の種類によって決まり、アルキルヒドロキシ芳香族生成物に高度に変換させるいずれかの適切な反応条件一式を採用できる。典型的には、アルキル化反応の反応温度は、15℃~200℃(例えば85℃~135℃)の範囲となる。反応圧力は概して、大気圧となるが、さらに高い圧力またはさらに低い圧力を用いてもよい。そのアルキル化プロセスは、バッチ式、連続式または半連続式で行うことができる。ヒドロキシ芳香族化合物とオレフィンオリゴマーとのモル比は、10:1~0.5:1(例えば5:1~3:1)の範囲であってよい。
【0053】
そのアルキル化反応は、ニートで、またはそのヒドロキシ芳香族化合物とオレフィン混合物との反応に対して不活性である溶媒の存在下で行ってよい。
【0054】
その反応が終了したら、従来の技法を用いて、所望のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を単離できる。
【0055】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基は典型的には、ヒドロキシ芳香族化合物に、そのヒドロキシル基に対して主にオルト位及びパラ位で結合している。そのアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、オルト異性体を1~99%と、パラ異性体を99~1%(例えば、オルト異性体を5~70%と、パラ異性体を95~30%)含んでよい。
【0056】
アルキルフェノールの金属塩(すなわち石炭酸塩)は、有用な種類の清浄剤である。これらの清浄剤は、アルカリ土類金属の水酸化物または酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、BaO、Ba(OH)、MgO、Mg(OH))をアルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールと反応させることによって作製できる。非硫化アルキルフェノールを使用する場合には、硫化生成物は、当該技術分野において周知な方法によって得てよい。これらの方法としては、アルキルフェノールと硫化剤(例えば、硫黄元素、二塩化硫黄のようなハロゲン化硫黄など)との混合物を加熱してから、その硫化アルキルフェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることが挙げられる。
【0057】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の金属塩も、清浄剤として有用である。アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸は典型的には、アルキル置換フェノキシドのカルボキシル化によって、例えばコルベ・シュミットプロセスによって調製される。
【0058】
適切な金属の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属が挙げられる。例としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Co、Mn、Zr、Ba及びBが挙げられる。
【0059】
多くの清浄剤組成物は過塩基性であり、過剰の金属化合物(例えば、金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物)を酸性ガス(例えば二酸化炭素)と反応させることによって得られる大量の金属塩基を含む。有用な清浄剤は、中性であることも、中程度に過塩基化されていることも、または高度に過塩基化されていることもできる。過塩基化するプロセスは、当業者に知られている。
【0060】
清浄剤の塩基性は、全塩基価(TBN)として表してよい。全塩基価は、その過塩基性物質の塩基をすべて中和するのに必要な酸の量である。TBNは、ASTM D2896または同等の手順を用いて測定してよい。本発明の清浄剤は、TBNが低くてもよいし(すなわち、TBNが50mg KOH/g未満)、TBNが中程度であってもよいし(すなわち、TBNが50~150mg KOH/g)、またはTBNが高くてもよい(すなわち、TBNが150mg KOH/g超(150~500mg KOH/g以上など))。
【0061】
エチレン性不飽和カルボン酸物質をグラフトしたオレフィンオリゴマー
本明細書に記載されているオレフィンオリゴマーは、そのオリゴマーをエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体と反応させることによって官能化してもよい。
【0062】
そのエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、完全にエステル化されていても、部分的にエステル化されていても、またはそれらの混合物であってもよい酸、またはその無水物もしくは誘導体であってよい。部分的にエステル化されている場合には、他の官能基としては、酸、塩またはそれらの混合物が挙げられる。適切な塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの混合物が挙げられる。
【0063】
エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体の適切な例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、マレイン酸もしくは無水物、フマル酸、イタコン酸もしくは無水物、これらの混合物、またはこれらの置換同等物が挙げられる。
【0064】
オレフィンオリゴマーをエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体で官能化するのは、いずれかの適切な方法によって行うことができる。例えば、そのエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、塩素の使用を伴うプロセスによって、または熱「エン」プロセスもしくはフリーラジカルプロセスによって、オレフィンオリゴマーにグラフトしてよい。
【0065】
そのオリゴマーと反応すると、そのエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体の二重結合が飽和化する。したがって、例えば、そのオレフィンオリゴマーと反応したマレイン酸無水物は、アルキル置換無水コハク酸になる。
【0066】
続いて、そのアルキル置換無水コハク酸を供給原料として用いて、スクシンイミド分散剤を作製できる。スクシンイミド分散剤は、重要なエンジンパーツを清浄に保ち、エンジンの寿命を延ばし、適切な排出と、良好な燃費を維持するのを助ける。添加剤としてのスクシンイミドは、ディーゼルエンジン油調合物において、すすを促進する、エンジンのアブレッシブ摩耗に対する防御作用をもたらすこともできる。スクシンイミドは、優れたすす分散性をもたらすとともに、油の粘度指数向上剤として機能することもできる。
【0067】
ひいては、官能化オレフィンオリゴマーは、誘導体化化合物で誘導体化できる。その誘導体化化合物は、求核置換、マンニッヒ塩基縮合などのような手段によって、その官能化オリゴマーの官能基と反応できる。例示的な誘導体化化合物としては、アミン、ヒドロキシルを含む化合物、金属塩、無水物を含む化合物、及びハロゲン化アセチルを含む化合物が挙げられる。その誘導体化化合物は、求核基を1つ以上含むことができる。誘導体化オリゴマーは、官能化オリゴマー(すなわち、カルボン酸/無水物またはエステルで置換されたオリゴマー)を求核剤(すなわち、アミン、アルコール(ポリオール、アミノアルコールを含む)、反応性金属化合物など)と接触させることによって作製できる。
【0068】
官能化オリゴマーと反応させるための求核剤として有用なアミン化合物としては、炭素原子を合計で約2~60個(例えば3~20)個と、窒素原子を約1~12個(例えば3~9個)有するモノアミン及びポリアミンが挙げられる。適切なポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、エーテル基を含む脂肪族ポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンが挙げられ、例えば、JEFFAMINE(登録商標)という名称で(Huntsman International LLC,USAから)入手可能である。
【0069】
例示的なポリアミンは、HN-(R’NH)-Hという式を有するポリアミンであって、式中、R’が、炭素原子を2個または3個有する、直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、xが、1~9であるポリアミンである(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及び重質ポリアミン(Dow Chemical Companyから入手可能な重質ポリアミンXなど))。
【0070】
その官能化オリゴマー及び/または誘導体化オリゴマーには、分散剤、粘度指数向上剤または多官能性粘度指数向上剤として機能できる潤滑油用添加剤としての用途がある。
【0071】
分散剤としての用途がある官能化オリゴマー及び/または誘導体化オリゴマーは典型的には、数平均分子量(M)が10,000g/mol以下であり、典型的には、500~10,000g/mol、750~5000g/molまたは1000~3000g/molの範囲であることができる。
【0072】
本明細書に記載されている官能化オリゴマー及び/または誘導体化オリゴマーは、他の添加剤(例えば、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、さび止め剤、粘度調整剤、流動点降下剤、消泡剤など)と組み合わせて、潤滑油用添加剤パッケージ、潤滑油などを含む多くの用途用の組成物を形成してもよい。
【0073】
これらの添加剤を含む組成物は典型的には、基油中に、それらの通常の付随機能をもたらすのに有効である量でブレンドされる。このような添加剤の典型的な量は、下記の表1に示されている。下記の表中の重量の量、及び本明細書で言及されているその他の量は、活性成分(その成分の非希釈剤部分である)の量に対するものである。下に示されている重量パーセント(wt.%)は、潤滑油組成物の総重量に対するものである。
【0074】
潤滑油
本開示のオレフィンオリゴマーは、潤滑油中の添加剤のうち、燃焼機関において望ましくない着火現象を防止または低減するための添加剤(例えば、分散剤、清浄剤など)として有用である場合がある。その添加剤は、このような形で用いる場合には通常、潤滑油組成物中に、その潤滑油組成物の総重量に対して0.001~10wt.%(0.01~5wt.%、0.2~4wt.%、0.5~3wt.%、1~2wt.%などが挙げられるが、これらに限らない)の範囲の濃度で存在する。他の水素化物ドナーがその潤滑油組成物に存在する場合には、少なめの量の添加剤を用いてもよい。
【0075】
基油として使用する油は、所望の最終用途及び完成油中の添加剤に応じて選択またはブレンドして、所望のグレードのエンジンオイル、例えば、Society of Automotive Engineers(SAE)Viscosity Gradeが0W、0W-8、0W-16、0W-20、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30または15W-40である潤滑油組成物にする。
【0076】
潤滑粘度の油(「基材」または「基油」という場合もある)は、潤滑油の主な液体構成要素であり、その中に、添加剤と、場合によっては他の油をブレンドして、例えば、最終的な潤滑油(または潤滑油組成物)を作製する。濃縮物を作製するとともに、その濃縮物から潤滑油組成物を作製するのに有用である基油は、天然の潤滑油(植物油、動物性油または鉱油)及び合成潤滑油、ならびにそれらの混合物から選択してよい。
【0077】
本開示における基材及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(“API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils,”December 2016)に見られる定義と同じである。グループIの基材は、表E-1に定められている試験方法を使用した場合に、飽和分が90%未満であり、及び/または硫黄分が0.03%超であり、粘度指数が80以上、120未満である。グループIIの基材は、表E-1に定められている試験方法を使用した場合に、飽和分が90%以上であり、硫黄分が0.03%以下であり、粘度指数が80以上、120未満である。グループIIIの基材は、表E-1に定められている試験方法を使用した場合に、飽和分が90%以上であり、硫黄分が0.03%以下であり、粘度指数が120以上である。グループIVの基材は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVの基材には、グループI、II、IIIまたはIVに含まれない他のすべての基材が含まれる。
【0078】
天然の油としては、動物性油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、ならびに鉱油が挙げられる。好ましい熱酸化安定性を有する動物性油及び植物油を使用できる。天然の油の中では、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油源、例えば、原油がパラフィン系であるか、ナフテン系であるか、またはパラフィン系とナフテン系の混合であるかが大きく異なる。石炭またはシェールに由来する油も有用である。天然の油も、その生産及び精製に用いる方法、例えば、その蒸留範囲、及び直留、分解、水素化精製または溶剤抽出するかが異なる。
【0079】
合成油としては、炭化水素油が挙げられる。炭化水素油としては、重合オレフィン及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)のような油が挙げられる。ポリアルファオレフィン(PAO)油の基材は、一般的に用いられている合成炭化水素油である。例として、C~C14オレフィン、例えば、Cオレフィン、C10オレフィン、C12オレフィン、C14オレフィンまたはそれらの混合物に由来するPAOを用いてよい。
【0080】
基油としての使用に有用な他の流体としては、高性能な特徴をもたらすために、好ましくは触媒で処理されているか、または合成されている非従来的または非慣習的な基材が挙げられる。
【0081】
非従来的または非慣習的な基材/基油としては、1つ以上のガストゥリキッド(GTL)材に由来する基材(複数可)の混合物、天然のワックスもしくはワックス質原料に由来する異性化/水素化脱ろう基材(複数可)、鉱油及び非鉱油ワックス質原料(スラックワックス、天然ワックスなど)、及びワックス質原料(ガスオイル、ワックス質燃料の水素化分解ボトム留分、ワックス質ラフィネート、水素化分解物、熱分解物など)、もしくはその他の鉱物、鉱油、または非石油系油に由来するワックス質物質(石炭液化油もしくはシェールオイルから得られるワックス質物質など)、ならびにこのような基材の混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0082】
本開示の潤滑油組成物で用いる基油は、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV及びグループVの油に対応する各種油、ならびにそれらの混合物のうちのいずれかであり、好ましくは、APIのグループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、より好ましくは、優れた揮発性、安定性、粘度特徴及び清浄特徴から、グループIII~グループVの基油である。
【0083】
典型的には、その基油は、100℃における動粘度(ASTM D445)が、2.5~20mm/s(例えば、3~12mm/s、4~10mm/sまたは4.5~8mm/s)の範囲となる。
【0084】
本発明の潤滑油組成物には、補助的な機能を付与するための従来の潤滑油用添加剤も含めて、これらの添加剤が分散または溶解している完成潤滑油組成物をもたらしてもよい。例えば、その潤滑油組成物は、酸化防止剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、清浄剤(金属系清浄剤など)、さび止め剤、曇り除去剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤、腐食抑制剤、着色剤、極圧剤など、及びこれらの混合物とブレンドできる。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順によって、本発明の潤滑油組成物を調製する際に用いることができる。
【0085】
上記の添加剤のそれぞれは、使用するときには、機能的に有効な量で使用して、所望の特性を潤滑油に付与する。すなわち、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合には、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、所望の分散特性を潤滑油に付与するのに十分な量となる。概して、これらの添加剤のそれぞれの濃度は、使用するときには、別段の定めのない限り、約0.001~約20wt.%(約0.01~約10wt.%など)の範囲であってよい。
【表1】
【実施例
【0086】
下記の例示的な実施例は、非限定的なものであることが意図されている。
【0087】
実施例1
粗プロピレンオリゴマーの蒸留
オートクレーブ反応器で、生成物を10ガロン生成させるのに十分な時間、プロピレンのオリゴマー化を行った。洗浄及び乾燥後、生成物及びn-ヘプタンを含む炭化水素相を減圧蒸留して、n-ヘプタンを除去し、ストリッピングされたオリゴマー生成物を得た。その後、突出型充填物が充填された蒸留カラム(36”×2”)を用いて、ストリッピングされたオリゴマー生成物を減圧蒸留し(約1.5トール)、蒸留生成物10画分を回収した。各画分において、GC及びFIMSによって炭素数分布を、H NMRによって異性化レベルを解析した。結果は、表2にまとめられている。分岐指数は、メチレン基(-CH2-)、メチニル基(-CH-)及びメチル基(-CH3)のプロトンの合計に対する、メチル基(CH3)のプロトンの整数値の比率(%)として定義できる。

【表2】
【0088】
実施例2
プロピレンオリゴマーからのアルキルフェノールの調製
実施例1の蒸留画分を合わせたものから、以下の3つの異なるアルキルフェノールを別々に調製した。
(1)画分1~2に由来するアルキルフェノール1
(2)画分4~6に由来するアルキルフェノール2
(3)画分6~8に由来するアルキルフェノール3
【0089】
下記の一般的手順を用いて、この3つのアルキルフェノールのそれぞれを調製した。メカニカルスターラー及び熱電対を取り付けた3Lの3つ口丸底フラスコに、以下のプロピレンオリゴマー画分を入れた。
(1)アルキルフェノール1:画分1及び2をそれぞれ約335g(合計約2.5モル)
(2)アルキルフェノール2:画分4、5及び6をそれぞれ約250g(合計約2.0モル)
(3)アルキルフェノール3:画分6、7及び8をそれぞれ約250g(合計約1.7モル)
【0090】
オリゴマー画分を加えた後、スターラーを動かし、フラスコにフェノールを1kg入れた。その反応混合物を60℃まで加熱してから、AMBERLYST(登録商標)-36イオン交換樹脂(酸形態、116℃~120℃で48~72時間乾燥済み)を200~250g加えた。そのフラスコにエアコンデンサーを取り付け、窒素通気下で維持した。その反応をGLPCによってモニタリングし、プロピレンオリゴマーのさらなる減少が観察されなくなったら、反応終了とみなした(アルキルフェノール1では約6日、アルキルフェノール2では約3日、アルキルフェノール3では約4日)。その反応混合物を放冷し、真空ろ過を行って、触媒を除去した。過剰なフェノールを減圧蒸留によって除去した。それらのアルキルフェノールの特性は、表3にまとめられている。
【表3】
【0091】
分極移動による無ひずみシグナル増感(DEPT)NMRを行って、アルキルフェノール1~3のヒドロ芳香族環に結合しているベンジル炭素原子に隣接するCH炭素原子の総量を求めた。そのヒドロキシ芳香族環に結合しているベンジル炭素原子に隣接するCH炭素原子は、13C NMRスペクトルにおいて、約49~51ppmに現れると解釈されている。この化学シフトは、プロピレンオリゴマーアルキルフェノールのCH炭素原子の中でも独特である。この解釈は、CHEMDRAW(登録商標)Ultra(Perkin Elmer)を用いて求めた。結果は、表4にまとめられている。

【表4】
【0092】
その結果から、アルキルフェノール1~3におけるCH炭素原子の99%超が、ヒドロキシ芳香族環に結合しているベンジル炭素原子に隣接していないことが示されている。
【0093】
実施例3
アルキルフェノールカルボン酸の合成
ディーンスターク管を取り付けた4Lの3つ口丸底フラスコに、実施例8のアルキルフェノール2(1411g)、キシレン(706g)、45%KOH水溶液(365g)及び消泡剤(0.2g)を入れた。その混合物を減圧状態(450mm Hg)において6時間、135℃で加熱し、その間、キシレン及び水を連続的に蒸留しながら、ディーンスターク管を介して、キシレンをその混合物に戻した。その混合物を窒素下で、周囲温度まで放冷した。続いて、その混合物を圧力容器に入れ、140℃まで加熱し、その反応器をCOで加圧した(3バール)。4時間後、その反応器を減圧し、その反応混合物を周囲温度まで放冷した。
【0094】
上で作製したカルボン酸カリウム塩(1100g)を丸底フラスコに加えた後、キシレン(602g)を加え、その混合物を80℃まで加熱した。HSOの10%水溶液(887g)をその混合物にゆっくり加え、その混合物を70℃で30分維持した。その混合物を分液漏斗に移し、2時間静置した。分離後、キシレン中にカルボン酸を含む上層を回収した。
【0095】
電位差法によって測定したところ、そのカルボン酸の酸性度は14.4mg KOH/gであり、キシレン含有率は60.2wt%であった。
【0096】
実施例4
過塩基性カルボン酸塩清浄剤の調製
反応器に、消石灰(60.3g)、メタノール(72.3g)及びキシレン(125g)を入れた。実施例3のカルボン酸(2200g)をその反応器に加え、その温度を40℃に維持した。続いて、酢酸/ギ酸の50/50混合物(5.7g)を加えた。30℃まで冷却後、CO(12.8g)をその反応器にゆっくり導入しながら、温度を30℃から40℃に上昇させた。続いて、その温度を128℃まで上昇させ、その間、メタノール、水及び一部のキシレンを留去する。基油(175.3g)を加えてから、得られた混合物を遠心分離し、未反応の石灰及びその他の固体を除去した。その後、その混合物を真空下、170℃で加熱して、キシレンを除去し、過塩基性カルボン酸塩清浄剤を得た。
【0097】
その過塩基性カルボン酸塩清浄剤の特性は、2.88%のCa、TBN=81mg KOH/g及び100℃における動粘度=20.6mm/sであった。
【0098】
実施例5
過塩基性フェネート清浄剤の調製
4Lの3つ口丸底フラスコに、実施例8(881.6g)のアルキルフェノール1、130Nの基油(357.9g)、アルキルアリールスルホン酸(39.7g)及び消泡剤(0.2g)を入れた。その混合物を25分かけて110℃まで昇温させ、温めながら、消石灰(304g)を加えた。続いて、硫黄(90.2g)を加え、その反応温度を20分かけて150℃まで上昇させた。硫黄を加えた後、反応器の圧力を680mm Hgまで低下させた。硫化中に生成された硫化水素ガスを2本の苛性ソーダバブラーによって捕集した。続いて、エチレングリコール(46.6g)を45分かけて加え、その混合物を170℃まで加熱した。30分の期間にわたり、2-エチルヘキサノール(393.6g)を加え、その反応物を162℃まで冷却した。その混合物を170℃まで加熱し、追加のエチレングリコール(76.4g)を1時間かけて加えた。エチレングリコールを加えた後、圧力を720mm Hgまで上昇させ、その反応条件を20分維持した。温度を170℃に維持しながら、圧力を760mm Hgまで上昇させた。続いて、CO(9g)を30分かけて加えた。そして、エチレングリコール(63.4g)を加え、COの速度を0.8g/分まで上昇させた。COを約96g加えたら、炭酸塩化を停止した。続いて、溶媒を215℃及び30mm Hgで1時間蒸留した。80mm HgにおけるNパージで、温度を1時間かけて220℃まで上昇させた。その生成物をCELITE(登録商標)珪藻土で、165℃で真空ろ過し、ろ過した過塩基性フェネートを空気下で4時間かけて、5L/h/kgの生成物で、150℃で脱気した。
【0099】
その過塩基性フェネート清浄剤の特性は、10.5wt%のCa、3.15wt%のS、TBN=293mg KOH/g、100℃における動粘度=574mm2/sであった。
【0100】
実施例6
オレフィンスルホン酸塩の調製
下記の条件下で、SO/空気を用いて、ステンレス鋼製のウォータージャケット付き流下膜式管型反応器(内径約0.19”×長さ約60”)内で、実施例1のプロピレンオリゴマー蒸留画分3をスルホン化した。
プロピレンオリゴマー送り温度=30℃
反応器温度=40℃
空気流速=200L/時
メイクアップエア流速=11L/時
SO流速=16L/時
SOからSOへの変換率=87%
プロピレンオリゴマー送り速度=2.9g/分
【0101】
得られたスルホン酸の特性は、4.28wt%のHSO及び35.18wt%のスルホン酸であった(シクロヘキシルアミン滴定)。そのスルホン酸を65℃で30分消化させて、3.99wt%のHSO及び30.03wt%のスルホン酸という特性を有する消化スルホン酸を得た。
【0102】
50wt%NaOH水溶液(33.2g)を、撹拌しながら、分割して、25℃~51℃で30分かけて加えることによって、その消化スルホン酸(222.3g)を中和した。得られたスルホン酸ナトリウムは、ハイアミン滴定により、27.35wt%活性であり、pH=10.4(水溶液中で約1wt.%)であることが明らかになった。ESI質量スペクトルにより、そのスルホン酸ナトリウム組成物中の主要構成要素のm/z電荷比が373であることが示された(図1を参照されたい)。
図1
【国際調査報告】