IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンギウス ダイアグノスティクス コーポレーションの特許一覧

特表2023-501164生体サンプルの定量化のための側方流動アッセイシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】生体サンプルの定量化のための側方流動アッセイシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230111BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 541Z
G01N33/53 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524961
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020057636
(87)【国際公開番号】W WO2021086900
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/927,910
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522169070
【氏名又は名称】サンギウス ダイアグノスティクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ロウレス パトリック
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、ウマ科の被験体から収集された全血、血漿及び/又は血清中のインスリン濃度の定量的又は半定量的決定を提供する単一の側方流動アッセイを使用して、ウマ科被検体におけるインスリン抵抗性、インスリン調節不全、高インスリン血症及びウマ科被検体にウマ科メタボリック症候群(EMS)を試験するための装置及び方法である。側方流動アッセイ試験装置は、対象分析物に特異的に結合するように構成された標識及び薬剤を備えるように構成されてもよい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホールピペットと、
化学試薬溶液であって、追跡バッファ又はランニングバッファである化学試薬溶液と、
側方流動アッセイ試験装置と、
1つ以上のポートを含み、生体サンプル、前記化学試薬又はそれらの混合物を受け入れるように構成されたシステムハウジングと、
光源及び光検出器を備えるリーダと、
データアナライザと、
を備える、側方流動アッセイ試験システム。
【請求項2】
前記側方流動アッセイ試験装置が、対象分析物に特異的に結合するように構成された標識及び薬剤を備えるように構成される、請求項1に記載の側方流動アッセイ試験システム。
【請求項3】
前記側方流動アッセイ装置が試験片である、請求項1又は2に記載の側方流動アッセイ試験システム。
【請求項4】
前記試験片が、サンプルパッド、血液フィルタ、コンジュゲートパッド、ニトロセルロースパッド、ウィックパッドの少なくとも1つ、インスリン抗体、金ナノ粒子、及び検出剤を備える、請求項3に記載の側方流動アッセイ試験システム。
【請求項5】
前記試験片が、カセット又はカートリッジと呼ばれるシステムハウジングに収容される、請求項3又は4に記載の側方流動アッセイ試験システム。
【請求項6】
ウマ科の哺乳動物における疾患又は状態を試験する方法であって、
前記ウマ科の動物から流体サンプルを取得するステップと、
前記流体サンプルを前記化学試薬溶液と混合して試験サンプルを形成するステップと、
前記試験サンプルを、請求項1~4のいずれか一項に記載の側方流動アッセイ試験システムに接触させるステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記側方流動アッセイが、前記流体サンプル中のインスリンと前記試験片中の少なくとも1つのインスリン抗体とを結合させることが可能である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記流体サンプル中のインスリンの定量的又は半定量的濃度を決定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウマ科の動物のインスリン調節障害(ID)、インスリン抵抗性(IR)、高インスリン血症又はウマ科メタボリック症候群(EMS)を診断するステップをさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記側方流動アッセイ試験片が、可視化チャート、較正済電子リーダ、及び外部較正済電子リーダのうちの少なくとも1つによって読み取られるように構成される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのインスリン抗体が金ナノ粒子にコンジュゲートされる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
サンプル受容ゾーンと対向ゾーンを有し、上層と下層を含む複数のサンドイッチ層からなる本体を含み、それによって、サンプル流体がサンプル受容端から対向端に向かってコンジュゲートパッドを介して流れることを可能にする、側方流動アッセイ試験装置であって、前記コンジュゲートパッドが金ナノ粒子にコンジュゲートされたインスリン抗体を備える、側方流動アッセイ試験装置。
【請求項13】
前記インスリン抗体がインスリン抗体E2E3である、請求項12に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項14】
捕捉抗体をさらに備える、請求項12又は13に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項15】
前記捕捉抗体が抗体2D11である、請求項14に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項16】
前記複数のサンドイッチ層がニトロセルロース膜を備える、請求項12~15のいずれか一項に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項17】
前記複数のサンドイッチ層が血液フィルタパッドを備える、請求項16に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項18】
前記血液フィルタパッドが、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、綿繊維、又はそれらの組合せからなる、請求項17に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項19】
前記血液フィルタパッドが、約300μm~約500μmの厚さを有する、請求項17又は18に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項20】
前記側方流動アッセイ試験装置が、コンジュゲートパッド、ウィックパッド、検出領域、制御領域、制御剤、及び検出剤のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項12に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項21】
追跡バッファと事前混合された全血サンプルを受けるように構成された流路と、
前記流路にカップリングされたサンプル受容ゾーンであって、前記流路が前記サンプル受容ゾーンの直下に血液フィルタパッドを備える、サンプル受容ゾーンと、
前記サンプル受容ゾーンの下流で前記流路にカップリングされ、捕捉抗体を備える捕捉ゾーンと、
金ナノ粒子とコンジュゲートされたインスリン検出抗体を検出するように構成され、前記捕捉ゾーンにカップリングされた制御ゾーンと、
を備える、側方流動アッセイ試験装置。
【請求項22】
前記インスリン検出抗体がインスリン抗体E2E3である、請求項21に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項23】
前記捕捉抗体が抗体2D11である、請求項21又は22に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項24】
前記血液フィルタパッドが、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、綿繊維、又はそれらの組合せからなる、請求項21~23のいずれか一項に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項25】
前記血液フィルタパッドが、約300μm~約500μmの厚さを有する、請求項24に記載の側方流動アッセイ試験装置。
【請求項26】
液体組成物中のインスリンを検出する方法であって、
請求項12~20のいずれか一項に記載の側方流動アッセイ試験装置を提供するステップと、
前記液体組成物を追跡バッファと接触させて試験サンプルを形成させるステップと、
前記試験サンプルを前記側方流動アッセイ試験装置の受容ゾーンに接触させるステップと、
前記液体組成物が前記サンプル受容ゾーンから前記対向ゾーンに移動することを可能にするステップと、
前記捕捉領域において信号を検出するステップであって、前記捕捉領域におけるインスリンの不存在は、試験ライン又は試験バンドが存在しないことよって示されるステップと、
を含む、方法。
【請求項27】
前記液体組成物のフローレートが約30秒/cm~約40秒/cmである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
全血サンプル中のインスリンを検出する方法であって、
請求項21~25のいずれか一項に記載の側方流動アッセイ試験装置を提供するステップと、
前記全血サンプルを追跡バッファと接触させて試験サンプルを形成するステップと、
前記試験サンプルを側方流動アッセイ試験装置の受容ゾーンと接触させるステップと、
液体組成物が前記サンプル受容ゾーンから前記捕捉ゾーンに移動することを可能にするステップと、
前記捕捉ゾーン上の信号を検出するステップであって、インスリンの存在が前記捕捉ゾーン内の試験ライン信号又は試験バンドによって示される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項29】
前記液体組成物のフローレートが約30秒/cm~約40秒/cmである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本特許出願は、2019年10月30日に出願された米国仮出願第62/927,910号に対する優先権の利益を主張する。上記出願の全内容は、あらゆる目的で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、側方流動アッセイシステム、試験装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
側方流動アッセイは、信頼性が高く、安価で、携帯可能で、迅速かつ簡便な診断試験を提供することができる。しかしながら、従来からの側方流動アッセイでは、特に、感度が低く、再現性に乏しいなど、性能上の限界がある。側方流動アッセイは、試験品に1ミリリットル当たり1ナノグラム以上の範囲で含まれる1つ以上の分析物の定量に日常的に使用されている。しかしながら、側方流動アッセイは、1ミリリットル当たり1ナノグラム又は1,000ピコグラムの濃度で試験品中に存在する分析物を再現性よく定量できることは非常にまれである。この性能上の限界にもかかわらず、多くの分析物、特にホルモンがあり、これらは、低濃度(1,000ピコグラム以下)で試験品に存在し、強い生理学的影響を及ぼすため、異常な濃度は健康リスクや病状を示すものとして、医療従事者にとって特に興味深いものとなっている。
【0004】
全血は、血清及び血漿の調製に必要な労力や設備を必要とせず、容易かつ迅速に入手できるため、ポイントオブケア環境における診断用試験品として望ましいものである。しかしながら、全血検体には内因性物質が含まれ、アッセイの1つ以上の成分に干渉し、診断アッセイ性能に悪影響を与えることがある。したがって、全血を用いる側方流動アッセイは、アッセイに干渉する可能性のある物質が、真の分析物信号から差し引くことができる「バックグラウンド」信号として、又は干渉物質の除去を、例えば、干渉物質を選択的に除去する血液フィルタパッド又はサンプルパッドによる濾過を介して行うことによって、しかし、サンプルマトリックス中の分析物には有意に影響しない方法で考慮されるように、設計されねばならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、現在の技術及び方法論の限界を克服し、解釈の誤りを受けにくく、分析物が低濃度で存在する場合に定量結果を得ることができ、再現性があり、多重化でき、全血が迅速な診断に利用できる唯一の試験品のこともあるポイントオブケアのシナリオに適用できる側方流動アッセイ診断装置及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、側方流動アッセイ試験システムが提供される。側方流動アッセイ試験システムは、ホールピペットと、追跡バッファ又はランニングバッファと呼ばれる化学試薬溶液と、側方流動アッセイ試験装置と、1つ以上のポートを含む試験装置ハウジングと、光源及び光検出器を含むリーダと、データアナライザと、を備える。
【0007】
一実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、対象分析物に特異的に結合するように構成された標識及び薬剤を備えるように構成される。
【0008】
一実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、試験片を備えるように構成され、試験片は、サンプルパッド、血液フィルタパッド、コンジュゲートパッド、ニトロセルロース膜、ウィックパッド(wick pad)、インスリン抗体、金ナノ粒子、及び検出剤のうちの少なくとも1つをさらに備える。
【0009】
一実施形態では、ポートは、生体サンプル若しくは化学試薬溶液(「ランニングバッファ」又は「追跡バッファ」)、又はその混合物が試験片に適用される試験装置ハウジング内の開口部である。
【0010】
一実施形態では、前記試験片が、カセット又はカートリッジと呼ばれるシステムハウジングに収容される。
【0011】
別の態様では、ウマにおけるメタボリック症候群又は疾患の試験方法が提供される。本方法は、ウマ科の哺乳動物から流体試料を取得するステップと、流体サンプルを化学試薬溶液と混合して試験試料を形成するステップと、生体流体サンプルを側方流動アッセイ試験装置と接触させるステップと、を含む。
【0012】
一実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、ウマ科の動物からの生体流体サンプル中のインスリンを試験片中の少なくとも1つのインスリン抗体と結合させることができる。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1つのインスリン抗体は、金ナノ粒子に直接又は間接的に結合される。金ナノ粒子へのインスリン抗体の間接的な結合の場合、そのような結合は、ビオチン化インスリン抗体及びビオチン結合タンパク質(ストレプトアビジンを含むがこれに限定されない)で被覆された金ナノ粒子を含むことができるが、これらに限定されない。
【0014】
一実施形態では、本方法は、ウマ科の哺乳動物からの生体流体サンプル中のインスリンの定量的又は半定量的な濃度を決定するステップをさらに含む。
【0015】
一実施形態では、本方法は、ウマ科の動物におけるインスリン調節不全(ID)、インスリン抵抗性(IR)、高インスリン血症又はウマ科メタボリック症候群(EMS)を診断するステップをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、可視化チャート、較正済み電子リーダ、及び外部較正済電子リーダのうちの少なくとも1つによって読み取られるように構成される。
【0017】
一実施形態では、本方法は、食事、運動、栄養補助食品、及び医薬品、又はそれらの組合せを通じて、ウマ科のインスリン調節障害(ID)、インスリン抵抗性(IR)、高インスリン血症、ウマ科メタボリック症候群(EMS)又は下垂体中隔機能障害(PPID)を治療するステップをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験片は、可視化チャート、較正済み電子リーダ、及び外部較正済電子リーダのうちの少なくとも1つによって読み取られるように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのインスリン抗体が、金ナノ粒子にコンジュゲートされている。
【0019】
いくつかの実施形態は、側方流動アッセイ試験装置を提供し、この側方流動アッセイ試験装置は、サンプル受容ゾーンと対向ゾーンを有し、上層と下層を含む複数のサンドイッチ層からなる本体を含み、それによって、サンプル流体がサンプル受容端から対向端に向かってコンジュゲートパッドを介して流れることを可能し、このコンジュゲートパッドは、金ナノ粒子にコンジュゲートされたインスリン抗体を備える。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、インスリン抗体E2E3である。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、捕捉抗体をさらに含む。いくつかの実施形態では、捕捉抗体は、抗体2D11である。いくつかの実施形態では、複数のサンドイッチ層は、ニトロセルロース膜を備える。いくつかの実施形態では、複数のサンドイッチ層は、血液フィルタパッドを備える。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、綿繊維、又はそれらの組合せを備える。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、約300μm~約500μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、コンジュゲートパッド、ウィックパッド、検出領域、制御領域、制御剤、及び検出剤のうちの少なくとも1つをさらに備える。
【0020】
いくつかの実施形態は、側方流動アッセイ試験装置を含み、これは、追跡バッファと事前混合された全血サンプルを受けるように構成された流路と、流路にカップリングされたサンプル受容ゾーンであって、流路がサンプル受容ゾーンの直下に血液フィルタパッドを備える、サンプル受容ゾーンと、サンプル受容ゾーンの下流で前記流路にカップリングされ、標的分析物を固定化することができる捕捉抗体を備える捕捉ゾーンであって、標的分析物は、以前に金ナノ粒子とコンジュゲートしている検出抗体によって結合された、捕捉ゾーンと、以前にインスリン分子に結合していない金ナノ粒子結合インスリン検出抗体を検出するように構成された捕捉ゾーンにカップリングされた制御ゾーンと、を備える。いくつかの実施形態では、インスリン検出抗体は、インスリン抗体E2E3である。いくつかの実施形態では、インスリン捕捉抗体は、抗体2D11である。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、綿繊維、又はそれらの組合せを備える。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、約300μm~約500μmの厚さを有する。
【0021】
いくつかの実施形態は、液体組成物中のインスリンを検出するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の側方流動アッセイ試験装置を提供するステップと、液体組成物を追跡バッファと接触させて試験サンプルを形成させるステップと、試験サンプルを側方流動アッセイ試験装置の受容ゾーンに接触させるステップと、液体組成物がサンプル受容ゾーンから対向ゾーンに移動することを可能にするステップと、を含み、液体組成物のインスリンの不存在は、試験片の捕捉領域に試験ライン又は試験バンドが存在しないことによって示される。いくつかの実施形態では、液体組成物のフローレートは、約30秒/cm~約40秒/cmである。
【0022】
いくつかの実施形態は、全血中のインスリンを検出するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の側方流動アッセイ試験装置を提供するステップと、全血サンプルを追跡バッファと接触させて試験サンプルを形成するステップと、試験サンプルを側方流動アッセイ試験装置の受容ゾーンと接触させるステップと、液体組成物が前記サンプル受容ゾーンから前記捕捉ゾーンに移動することを可能にするステップと、捕捉ゾーン上の信号を検出するステップと、を含み、インスリンの存在が捕捉ゾーン内の試験ライン信号又は試験バンドによって示される。いくつかの実施形態では、液体組成物のフローレートは、約30秒/cm~約40秒/cmである。
【0023】
任意の実施形態は、その全部又は一部を、他の任意の実施形態又は態様と独立して組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】サンプルポート及び覗き窓を有する側方流動アッセイシステムハウジングの上面図の一実施形態を示す。
図1B】特定された複数の層又は構成要素を有する側方流動アッセイ試験片の断面の実施形態を示す。
図2A】ストレプトアビジン被覆金ナノ粒子及びビオチン化検出抗体を示す。
図2B】ストレプトアビジン被覆金ナノ粒子にコンジュゲートされたビオチン化検出抗体を示す。
図2C】ストレプトアビジン被覆金ナノ粒子にコンジュゲートされたビオチン化検出抗体によって結合されたインスリン分子を示す。
図2D】捕捉領域又は試験ラインで形成され、インスリン捕捉抗体と、ストレプトアビジン被覆金ナノ粒子にコンジュゲートされたビオチン化検出抗体との両方によって結合されたインスリン分子を含むサンドイッチを示す。
図3A】捕捉抗体及び検出器抗体としてそれぞれ異なるインスリン抗体クローンを用いた、インスリン陽性[10ng/mL(288μU/mL)]及びインスリン陰性(0ng/mL)ウマ科血漿サンプルからのウマ科インスリン側方流動アッセイ試験線強度(ミリボルト)の比較表を示す。
図3B】インスリン陽性及びインスリン陰性のウマ科血漿サンプルに対して実施したウマ科インスリン側方流動アッセイの画像を示す。
図4】4つの異なる側方流動アッセイ検出抗体コンジュゲーションプロトコルを用いた15のウマ科血漿サンプルについてのインスリン側方流動アッセイとコーネル(Cornell)放射免疫アッセイの相関関係のグラフ表示である。
図5】追跡バッファの組成が、側方流動アッセイの信号とウマ科血漿インスリン濃度との相関に及ぼす影響のグラフ表示である。
図6A】異なるサンプル若しくは血液フィルタパッド、又はそれらの組合せを有するウマ科インスリン側方流動アッセイ試験片の画像を示す。
図6B】2つの異なるサンプル又は血液フィルタパッドを使用したウマ科インスリン側方流動アッセイのグラフによる比較である。
図7】ウマ科血漿サンプル中のインスリンの濃度上昇に伴って、試験ライン強度の増加(左から右へ)を表示する、ウマ科インスリン側方流動アッセイの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
サンプル中に含まれる対象分析物の検出を改善するための側方流動アッセイシステム、試験装置、及び方法が本明細書に記載される。
【0026】
(定義)
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、当技術分野の慣行による1以上の標準偏差の範囲内を意味することができる。あるいは、「約」は、最大20%まで、最大10%まで、又は最大5%までの範囲を意味することができる。特定の実施形態では、「約」は、最大5%までの範囲を意味することができる。本明細書及び特許請求の範囲において特定の値が提供される場合、「約」の意味は、その特定の値について許容誤差範囲内であると仮定されるべきである。
【0028】
本明細書において、「分析物」とは、一般に、検出される物質を意味する。例えば、分析物には、抗原性物質、ハプテン、抗体、及びそれらの組合せを含んでもよい。分析物には、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬剤(治療目的で投与されるものも、違法目的で投与されるものも含む)、薬剤中間体又は副産物、細菌、ウイルス粒子、及び上記物質の代謝物又は抗体を含むが、これらに限定されるものではない。一部の分析物の具体例としては、フェリチン、クレアチニンキナーゼMB(CK-MB)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ジゴキシン、フェニトイン、フェノバルビトール、カルバマゼピン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、テオフィリン;バルプロ酸;キニジン;黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロゲステロン;C反応性タンパク質(CRP);リポカリン、IgE抗体;サイトカイン;インターフェロン誘導型GTP結合タンパク質(マイクソウイルス(インフルエンザウイルス)抵抗性1、MX1、MxA、IFI-78K、IFI78、MX、MXダイナミンのようなGTPase 1とも呼ばれる)、プロカルシトニン(PCT)、糖化ヘモグロビン(Gly Hb)、コルチゾール、ジギトキシン、N-アセチルプロカインアミド(NAPA)、プロカインアミド、風疹に対する抗体(風疹IgG、風疹IgMなど)、トキソプラズマ症に対する抗体(トキソプラズマ症IgG(Toxo-IgG)及びトキソプラズマ症IgM(Toxo-IgM)など)、テストステロン;サリチル酸塩;アセトアミノフェン;B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);B型肝炎コア抗原に対する抗体(抗BI型肝炎コア抗原IgG及びIgM(抗HBC)など);ヒト免疫不全ウイルス1及び2(HIV1及び2).ヒトT細胞白血病ウイルス1及び2(HTLV);B型肝炎e抗原(HBeAg);B型肝炎e抗原に対する抗体(Anti-HBe);インフルエンザウイルス;甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン(T4)、総トリヨードサイロニン(総T3)、遊離トリヨードサイロニン(遊離T3)、カルチノエンブリオニック抗原(CEA)、リポタンパク質、コレステロール、及びトリグリセリド、アルファフェトプロテイン(AFP)などがある。乱用薬物及び規制薬物には、アンフェタミン;メタンフェタミン;アモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール及びバルビタールなどのバルビツール酸塩;リブリウム及びバリウムなどのベンゾジアゼピン類;ハシシ、マリファナなどのカンナビノイド類;コカイン;フェンタニル;LSD;メタカロン;ヘロイン、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、メタドン、オキシコドン、オキシモルホン、アヘンなどのオピエート;フェンシクリジン;及びプロポキシフェンが含まれるが、これらに限定することを意図しない。追加の分析物が、生物学的又は環境的な対象物質の目的のために含まれてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「サンプル」は、インスリンを含み得る流体、インスリンを含み得る溶液、及びヒト又は動物の被検体から得られる生体サンプルを含むが、これらに限定されない。生体サンプルには、唾液、血清、血液、尿、又は呼気凝縮液を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、サンプルは新鮮なこともある。新鮮なサンプルは、被検体から得られたサンプルであって、サンプルが得られた後、数秒以内に、例えば、約1分~約3分未満で、本明細書に記載される方法によるインスリン検出に供されるものを含むが、これらに限定されないことが理解されよう。関連する実施形態では、サンプルは、サンプル領域に直接適用され、サンプルは、サンプル領域への適用の前に前処理及び/又は精製されることはない。特定の実施形態では、サンプルは、保存されたサンプルのこともある。保存されたサンプルは、本明細書に記載される方法によってサンプルをインスリン検出に供する前に、被検体から調製及び/又は入手され、例えば、冷蔵庫又は冷凍庫での保存に供されてもよいことが理解されよう。いくつかの実施形態では、サンプルは、異なる濃度のインスリンでスパイクされたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよい。特定の実施形態では、サンプルは、サンプル領域に適用され得るが、そのサンプルは、サンプルがサンプル領域への適用前に、いかなる処理(例えば、希釈、濾過、濃縮)にも供されない。特定の実施形態では、サンプルは、サンプル領域への適用前に、濃縮されてもよい。特定の実施形態において、サンプルは、サンプル領域への適用前に、追跡バッファ又はランニングバッファを含むが、これらに限定されない化学溶液で希釈又は混合されてもよい。特定の実施形態では、サンプルは、サンプル領域への適用前に、濾過されてもよい。サンプルが血液又は血液と追跡バッファ若しくはランニングバッファとの混合物である特定の実施形態では、側方流動アッセイ装置は、サンプル領域内又はサンプル領域に適用されるサンプル又は血液フィルタ膜をさらに含んでもよい。
【0030】
「特異的結合パートナー(又は結合パートナー)」という用語は、関与する分子の三次元構造に依存する特異的、非共有結合的相互作用によって相互作用する分子のペアのメンバを指す。特異的結合パートナーの典型的なペアには、抗原/抗体、ハプテン/抗体、ホルモン/受容体、核酸鎖/相補的核酸鎖、基質/酵素、阻害剤/酵素、糖鎖/レクチン、ビオチン/(ストレプト)アビジン、受容体/リガンド、及びウイルス/細胞受容体、又はそれらの様々な組合せが含まれる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「免疫グロブリン」又は「抗体」という用語は、特定の抗原と結合するタンパク質を指す。免疫グロブリン又は抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、及びヒト化抗体、Fab断片、F(ab’)2断片が含まれるが、これらに限定されず、以下のクラスの免疫グロブリン、すなわち、IgG、IgA、IgM、IgD、IbE、及び分泌型免疫グロブリン(sIg)が含まれる。免疫グロブリンは、一般に、2本の同一の重鎖と2本の軽鎖から構成される。しかしながら、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、単鎖抗体及び2鎖抗体も包含する。簡略化のため、本明細書を通じて、「標識抗体」又は「捕捉抗体」という用語を使用するが、本明細書で使用する抗体という用語は、全体としての抗体又はその任意の断片を指す。したがって、対象分析物を特異的に結合する標識抗体に言及する場合、この用語は、対象分析物を特異的に結合する標識抗体又はその断片を指すことが企図される。同様に、捕捉抗体に言及する場合、この用語は、対象分析物に特異的に結合する捕捉抗体又はその断片を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「補助的結合パートナー」は、分析物の特異的結合パートナーに結合する特異的結合パートナーである。例えば、補助的特異的結合パートナーは、別の抗体、例えばヤギ抗ヒト抗体に特異的な抗体を含んでもよい。本明細書に記載の側方流動装置は、「検出エリア」又は「検出ゾーン」を含んでもよく、これは、1つ以上の捕捉エリア又は捕捉ゾーンを含み、検出可能な信号が検出され得る領域であり得るエリアである。本明細書に記載の側方流動装置は、捕捉試薬が固定化される側方流動装置の領域である「捕捉エリア」を含むことができる。明細書に記載の側方流動装置は、1つ以上の捕捉エリアを含むことができる。場合によっては、異なる捕捉試薬が異なる捕捉エリアに固定化される(例えば、第一の捕捉エリアに第一の捕捉試薬及び第二の捕捉エリアに第二の捕捉試薬のように)。複数の捕捉エリアは、側方流動基板上で互いに対して任意の方向を有してもよい。例えば、第一の捕捉エリアは、流体の流れの経路に沿って第二の(又は他の)捕捉エリアに対して遠位又は近位にあり、逆もまた同様である。あるいは、第一の捕捉エリアと第二の(又は他の)捕捉エリアは、流体が捕捉エリアと同時に又はほぼ同時に接触するように、流体の流れの経路に垂直な軸に沿って整列されてもよい。
【0033】
本明細書において、「ウマ科メタボリック症候群」とは、インスリン調節障害、インスリン抵抗性、肥満及び/又は局所脂肪症の存在をいう。ウマ科メタボリック症候群の表現型は、また、脂質異常症、ジスアジポキン血症及び/又は高血圧を含んでもよい。本症候群は、関連する病態、例えば、蹄葉炎の発症リスクを高める医学的障害の組合せと表現することができる。ウマ科メタボリック症候群は、また、肝リピドーシス又は不妊症のような他の障害と関連することもある。
【0034】
本明細書で使用する場合、「下垂体中隔機能不全」は、高齢のウマ及びポニーによく見られる疾患である。視床下部ドーパミン作動性神経変性は、脳下垂体中葉における副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生の上昇をもたらし、副腎皮質機能亢進症に至る。臨床的徴候には、多毛症(長い、しばしばカールした毛が抜けない)、多飲症/多尿症、過度の発汗、体重減少、筋肉の消耗、局所的脂肪沈着、嗜眠、感染症(例えば副鼻腔炎及び/又は蹄葉炎)が含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ウマ科の動物(Equine animal)」は、用語「ウマ科(equine)」と互換的に使用されることがあり、ウマ属(Equus)の任意のメンバを包含する。ウマ属は、任意のウマ又はポニー、分類学的呼称Equus ferus及び/又はEquus caballus、及び/又は亜種Equus ferus caballusを包含する。
【0036】
(側方流動アッセイシステム)
いくつかの態様において、側方流動アッセイ試験システムは、側方流動アッセイ試験装置、システムハウジング、リーダ、データアナライザ、及びそれらの組合せを含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、流体サンプルが試験片に導入されるサンプルポート(サンプル受容ゾーンとも呼ばれる)を含んでもよい。別の実施形態では、サンプルは、スポイト又は他のアプリケータを用いたように、外部アプリケーションによってサンプルポートに導入されてもよい。サンプルは、サンプルポートに注いでも、あるいは搾り出してもよい。別の例では、サンプルポートは、試験片がサンプルを保持する容器に浸漬される場合のように、サンプルに直接浸されてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルポートは、インスリンプローブを備える。いくつかの実施形態では、インスリンプローブは、インスリンに特異的なアプタマーである。いくつかの実施形態では、試験片は、サンプルパッド、血液フィルタ、コンジュゲートパッド、ニトロセルロース膜、ウィックパッド、検出領域、制御領域、制御剤、インスリン抗体、ナノ粒子、及び検出剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
図1Aを参照すると、図1Aは、側方流動アッセイシステムのハウジング100の一実施形態を示し、これは、ハウジング114の上部分にあるサンプルポート112及び覗き窓110の位置を有する試験片150を含む。図1Bは、試験片150の詳細な断面図であり、試験片150の流路を構成する個々の構成要素又は層の構成を示している。一実施形態では、図1Aに示すように、サンプルポート112は、サンプルが側方流動アッセイに適用されるシステムハウジング114内の開口部であり、覗き窓110は、制御及び試験ラインの展開及び読み取りが行われるシステムハウジング114内の第二の開口部である。いくつかの実施形態では、図1Bに示すように、試験片150の第一の端部(図示のように右端)に位置する血液フィルタパッド又はサンプルパッド152がある。血液フィルタパッド又はサンプルパッド152は、対象分析物を特異的に結合する少なくとも1つのコンジュゲートを備えるコンジュゲートパッド154の上に位置する。コンジュゲートパッド154は、捕捉領域及び制御領域を備えるニトロセルロース膜156の上に位置する。ウィックパッド158は、ニトロセルロース膜156の反対側の端部(図示のように左端)で、ニトロセルロース膜156の上に位置する。裏打ちカード160は、互いに流体接触したままである試験片の層状構成要素を支持する。いくつかの実施形態では、2つの血液フィルタパッド又はサンプルパッド152又はそれらの組合せは、互いの上に配置されている。いくつかの実施形態では、コンジュゲートパッド154は、金ナノ粒子とコンジュゲートされたインスリン検出抗体を含む。いくつかの実施形態では、ビオチン化インスリン検出抗体は、ストレプトアビジンで被覆された金ナノ粒子にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ニトロセルロース膜154は、対象分析物及びその金ナノ粒子標識を固定するインスリン捕捉抗体を含む。
【0039】
本明細書に記載の側方流動アッセイ試験装置は、固体支持体又は基板を含むことができる。適切な固体支持体には、ニトロセルロース、反応トレイのウェルの壁、マルチウェルプレート、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、膜、及び微粒子(ラテックス粒子など)が含まれるが、これらに限定されない。標識コンジュゲートによるアクセスを可能にするのに十分な多孔性及び捕捉剤を固定化するのに適した表面親和性を有する任意の適切な多孔性材料は、本明細書に記載の側方流動装置において使用することができる。例えば、ニトロセルロースの多孔質構造は、多種多様な試薬、例えば、捕捉剤に対して優れた吸収及び吸着品質を有する。ナイロンは、同様の特性を有し、また好適である。多孔質構造は、水和状態でのゲル構造を有する材料と同様に有用である。
【0040】
固体支持体の表面は、薬剤(例えば、捕捉試薬)の支持体への共有結合を引き起こす化学的プロセスによって活性化され得る。本明細書に記載されるように、固体支持体は、コンジュゲートパッドを含んでもよい。薬剤(例えば、捕捉試薬)を固体支持体に固定化するために、多くの他の適切な方法を使用してもよく、それらの方法には、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有結合相互作用等を含むが、これらに限定されない。物理的な制約がある場合を除いて、固体支持体は、フィルム、シート、ストリップ、又はプレートのような任意の適切な形状で使用してもよく、あるいは、紙、ガラス、プラスチックフィルム、又は布のような適切な不活性担体の上に被覆してもよく、これに結合又は積層してもよい。
【0041】
有用な固体支持体のさらなる例には、天然高分子炭水化物及びそれらの合成的に修飾、架橋又は置換された誘導体、例えば寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換及び架橋グアーゴム、セルロースエステル、特に硝酸及びカルボン酸を有するセルロースエステル、混合セルロースエステル;タンパク質及び誘導体などの窒素を含む天然高分子(架橋又は修飾ゼラチンを含む);ラテックス及びゴムなどの天然炭化水素ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及びその部分加水分解誘導体を含むビニルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、上記重縮合物のコポリマー及びターポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン又はポリエポキシドなどのポリマーなどの適切な多孔質構造で調製される合成高分子;アルカリ土類金属及びマグネシウムの硫酸塩又は炭酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムを含む)、アルカリ及びアルカリ土類金属、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩などの多孔質無機材料;及びクレー、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲル又はガラスなどのアルミニウム又はケイ素の酸化物又は水和物(これらの材料は上記のポリマー材料と共にフィルタとして使用してもよい);及び既存の天然ポリマー上で合成ポリマーの重合を初期化することによって得られるグラフトコポリマーなどの上記のクラスの混合物又はコポリマーが含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、シート又はストリップの形態のニトロセルロースなどの多孔性固体支持体を含んでもよい。そのようなシート又はストリップの厚さは、例えば、約0.01~0.5mm、約0.02~0.45mm、約0.05~0.3mm、約0.075~0.25mm、約0.1~0.2mm、又は約0.11~0.15mmと幅広い範囲で変動してもよい。このようなシート又はストリップの孔径は、同様に広い範囲内で、例えば、約0.025~15μm、より具体的には約0.1~3μmで変動してもよい。しかしながら、孔径は、固体支持体の選択における制限因子となることを意図していない。固体支持体のフローレートは、適用可能な場合、同じく広い範囲内で、例えば、約12.5~90秒/cm(すなわち、50~300秒/4cm)、約22.5~62.5秒/cm(すなわち、90~250秒/4cm)、約25~62.5秒/cm(すなわち、100~250秒/4cm)、約37.5~62.5秒/cm(すなわち、150~250秒/4cm)、又は約50~62.5秒/cm(すなわち、200~250秒/4cm)で変動することができる。いくつかの実施形態では、フローレートは、約35秒/cm(すなわち、140秒/4cm)~約37.5秒/cm(すなわち、150秒/4cm)である。本明細書に記載されるデバイスの特定の実施形態では、フローレートは、約35秒/cm(すなわち、140秒/4cm)である。本明細書に記載されるデバイスの他の実施形態では、フローレートは、約37.5秒/cm(すなわち、150秒/4cm)である。
【0043】
いくつかの実施形態では、側方流動装置は、標識を含んでもよい。標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能な分析物、分析物アナログ、検出試薬、補助的結合パートナー又は特異的結合パートナーに結合した又は結合できる分子又は組成物を含む多くの異なる形態をとることができる。標識の例には、酵素、コロイド金粒子(金ナノ粒子とも呼ばれる)、着色ラテックス粒子、放射性同位体、補因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、タンパク質吸着銀粒子、タンパク質吸着鉄粒子、タンパク質吸着銅粒子、タンパク質吸着セレン粒子、タンパク質吸着硫黄粒子、タンパク質吸着テルル粒子、タンパク質吸着炭素粒子及びタンパク質共役型ダイサック(dye sac)が含まれる。化合物(例えば、検出試薬)の標識への付着は、キレートなどにおけるように、共有結合、吸着プロセス、疎水性及び/又は静電結合、又はこれらの結合及び相互作用の組合せによることができ、及び/又は連結基を含んでもよい。本明細書に記載の側方流動アッセイ及び装置は、標識の光学特性と同一又は類似の光学特性を有する成分を含む、交絡成分を除去するための分離膜を含む。例えば、ヘモグロビンが存在する赤血球は、金ナノ粒子と同様の光学特性を有する。したがって、いくつかの実施形態では、金ナノ粒子が信号の検出に使用される場合、本開示による分離膜を使用して、赤血球を分離することができる。同様に、銀、白金、銅、パラジウム、ルテニウム、レニウム、又は他の金属ナノ粒子は、特定の信号を発生させ、その検出は、本開示に従って、サンプルから交絡成分を除去することによって、同様に強化され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、インスリンペプチド抗体である。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、インスリン成長ホルモン抗体である。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、インスリン抗体2D11である。インスリン抗体2D11は、2D11-H5とも呼ばれ、高品質なモノクローナルインスリン抗体である。インスリン抗体2D11は、非共役抗インスリン抗体形態と、アガロース、HRP、PE、FITC及び複数のAlexa Fluor(登録商標)共役を含む複数の共役形態の抗インスリン抗体の両方として市販されている。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、E2E3である。インスリン抗体E2E3は、INS04とも呼ばれる。インスリン抗体E2E3は、マウスモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、抗FAMモノクローナル抗体ではない。
【0045】
他の実施形態では、コンジュゲートパッドはインスリン検出抗体を含み、ニトロセルロース膜はインスリン捕捉抗体を含む。いくつかの実施形態では、ここで図2Aを参照すると、金ナノ粒子(NP)がストレプトアビジン(SA)で被覆され、検出抗体(Y)がビオチン化される。いくつかの実施形態では、図2Bを参照すると、ビオチン化(Bi)検出抗体(Y)は、ストレプトアビジン(SA)被覆金ナノ粒子(NP)にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、図2Cを参照すると、インスリン分子(In)は、ビオチン化(Bi)検出抗体(Y)によって結合又は検出され、検出抗体(Y)は、ストレプトアビジン(SA)被覆金ナノ粒子(NP)にあらかじめコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、図2Dを参照すると、サンドイッチは、捕捉領域又は試験ラインの中に形成され、インスリン分子(In)を含み、インスリン分子(In)は、インスリン捕捉抗体(Y)と、ストレプトアビジン(SA)被覆金ナノ粒子(NP)にコンジュゲートされたビオチン化(Bi)インスリン検出抗体(Y)との両方によって結合されている。いくつかの実施形態では、流体サンプル又は液体組成物中のインスリン抗原は、コンジュゲートパッド中の金ナノ粒子標識検出抗体によって結合され、ニトロセルロース膜中の捕捉抗体によってさらに結合されて、サンドイッチを形成する。このサンドイッチは、金ナノ粒子標識インスリン検出抗体、インスリン抗原、及びインスリン捕捉抗体を含み、このサンドイッチは、側方流動アッセイの捕捉領域に固定化され、その後者は、試験ラインとしてシステムハウジングの覗き窓で明らかになる。いくつかの実施形態では、サンドイッチは、追跡バッファ又はランニングバッファの添加後に形成される。いくつかの実施形態では、分析物又は抗原は、インスリンを含む。いくつかの実施形態では、第一の結合パートナーは、インスリン検出抗体を含む。いくつかの実施形態では、インスリン検出抗体は、E2E3である。いくつかの実施形態では、インスリン検出抗体は、レポーター又はタグにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、レポーター又はタグは、ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、金ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、インスリン検出抗体は、ビオチン化される。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子は、ストレプトアビジンで被覆される。いくつかの実施形態では、ビオチン化検出抗体は、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を介して、ストレプトアビジン被覆金ナノ粒子に間接的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、検出抗体は、ナノ粒子レポーター又はタグに直接結合される。いくつかの実施形態では、捕捉抗体は、インスリン抗体である。いくつかの実施形態では、捕捉抗体は、インスリン抗体2D11である。いくつかの実施形態では、追跡バッファ又はランニングバッファは、試験ラインが展開される捕捉領域に付着した金ナノ粒子レポーターを有する検出抗体によって結合されたインスリンの流れを可能にするために添加される。いくつかの実施形態では、追跡バッファ又はランニングバッファは、サンプルポートに添加される前に、全血に添加される。いくつかの実施形態では、全血は、サンプルポートに添加される試験サンプルを形成するために、追跡バッファ又はランニングバッファと予め混合される。
【0046】
いくつかの実施形態では、血液フィルタは、全血フィルタリングのために構成される。いくつかの実施形態では、血液フィルタは、血液フィルタパッドである。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、ニトロセルロース膜である。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、血球を保持し、血清が迅速に流れることを可能にしながら、側方流動の用途において、全血サンプルから血漿を分離させる。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、綿繊維、又はそれらの組合せからなる。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、約300μm~約500μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、Cyctosep(登録商標)HV plus 1668である。いくつかの実施形態では、血液フィルタパッドは、タイプFR-1血液フィルタパッドである。
【0047】
いくつかの実施形態では、側方流動装置は、側方流動装置の通常の動作中に捕捉剤の動きが制限されるように固定化された捕捉剤を含んでもよい。例えば、固定化された捕捉剤の動きは、流体サンプルが側方流動装置に適用される前及び後に制限される。捕捉剤の固定化は、障壁、静電相互作用、水素結合、生体親和性、共有結合相互作用、又はそれらの組合せなどの物理的手段によって達成することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、標識コンジュゲート(又はそのような場合には1つ以上の標識コンジュゲート)は、物理的結合又は化学的結合によってコンジュゲートパッド上に一体化されてもよい。サンプルがサンプルリザーバに加えられた後、サンプルは標識コンジュゲートを可溶化し、標識コンジュゲートをコンジュゲートパッドに保持する結合を解放させる。標識コンジュゲートは、サンプル中に対象分析物が存在する場合、その対象分析物と結合し、複合体を形成する。
【0049】
いくつかの実施形態では、分離膜は、膜に対する成分のサイズ及び/又は親和性に基づいてサンプルの成分を分離し、一方で、対象の物体が膜を通過して流路を流れ、アッセイの検出ゾーンに至ることを可能にできる。一例として、本開示の分離膜によって、サンプルのより小さな成分の通過は可能になるが、サンプルのより大きな成分(交絡成分など)の通過は可能にしない。分離膜の特性は、流体サンプル中に典型的に存在すると予想されるより大きな交絡成分の通過を防止するように最適化することができる。別の例では、本開示の分離膜は、サンプルの成分(交絡成分など)に(特異的又は非特異的に)結合するが、サンプル中の対象物(対象分析物など)には結合しないアフィニティー剤を含む。さらなる例では、本開示の分離膜は、成分のサイズ及び親和性の両方の特性に基づいて、サンプル中の望ましくない成分を保持する。
【0050】
本開示の実施形態は、従来の測定システムの検出閾値付近の濃度で存在する特定の対象分析物の検出を妨害する成分を保持するように特別に選択及び設計された分離膜を含んでもよい(従来のシステムでは、信号が検出閾値以下のこともあり、偽陰性試験結果をもたらす可能性がある)。したがって、本開示の実施形態は、従来の測定システムの検出閾値を通常下回るであろう検出ゾーンでの信号の検出を改善することによって、側方流動装置の精度を向上させることができる。
【0051】
本開示の実施形態は、特定の標識コンジュゲートの検出を妨害する成分を保持するように特別に選択及び設計された分離膜を含んでもよい。一例のタイプの干渉は、交絡成分が、検出ゾーンに形成されたサンドイッチ構造における標識コンジュゲートの光学特性と実質的に同じ又は類似する光学特性を有する場合に生じる。一実施形態では、標識コンジュゲートは、金ナノ粒子を含み、これは、血液サンプル中の赤血球の光学的性質と類似の光学的性質を有する信号を発生させる。例えば、金ナノ粒子は、赤血球と同じ又は類似の光の波長で信号を発生させてもよい。本開示の実施形態は、赤血球の光学特性が検出ゾーンで生成される信号の検出に干渉しないように、分離膜で交絡成分を保持又は捕捉することによって、サンプル中の赤血球(これに限定しない)などの交絡成分からの干渉を低減又は除去する。
【0052】
いくつかの実施形態では、システムハウジングは、プラスチック、金属、又は複合材料を含む多種多様な材料のうちの任意の1つで作られてもよい。システムハウジングは、診断試験システムの構成要素のための保護筐体を形成する。システムハウジングは、また、リーダに対して試験片を機械的に登録するレセプタクルを画定する。レセプタクルは、多種多様の異なるタイプの試験片のうちの任意の1つを受け取るように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、システムハウジングは、ベンチ上、現場、住宅、又は家庭用、商業用、又は環境用の施設など、様々な環境において側方流動アッセイを実行する能力を可能にする携帯型装置である。
【0053】
本明細書に記載の側方流動アッセイ試験システムのいずれかのシステムハウジングは、トップハウジング又はベースハウジングも含め、例えば、ビニル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスルファン、ポリエステル、ウレタン、又はエポキシなどを含む任意の適切な材料で作られてもよい。ハウジングは、例えば、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、ブロー成形、押出成形、発泡成形、熱成形、鋳造、層堆積、又は印刷による方法を含む任意の適切な方法によって調製してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、リーダは、1つ以上の光電子構成要素を含んでもよい。1つ以上の光電子構成要素は、試験片の検出ゾーンの露出エリアを光学的に検査するためのものであってよく、検出ゾーン内の複数の捕捉ゾーンを検出することが可能である。いくつかの実施形態では、リーダは、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光検出器を含む。いくつかの実施形態では、光源は、半導体発光ダイオードを含んでもよく、光検出器は、半導体フォトダイオードを含んでもよい。試験片によって使用される標識の性質に応じて、光源は、特定の波長範囲内の光又は特定の偏光を有する光を放射するように設計されてもよい。例えば、標識が量子ドットなどの蛍光標識である場合、光源は、標識からの蛍光発光を誘発する波長範囲の光で試験片の捕捉ゾーンの露出エリアを照明するように設計されるであろう。同様に、光検出器は、捕捉ゾーンの露出エリアから光を選択的に捕捉するように設計されてもよい。例えば、標識が蛍光標識である場合、光検出器は、標識が発する蛍光の波長範囲内の光、又は特定の偏光の光で選択的に捕捉するように設計されるであろう。一方、標識が反射型標識の場合、光検出器は、光源が発する光の波長範囲内で選択的に光を検出するように設計される。このため、光検出器には、捕捉される光の波長範囲又は偏光軸を規定する1つ以上の光学フィルタが含まれることがある。標識からの信号は、目視観察又は発色基質からの色を検出する分光光度計、125Iの検出のためのガンマカウンタのような放射線を検出する放射線カウンタ、又は特定の波長の光の存在下で蛍光を検出する蛍光計を使用して、分析することができる。酵素結合アッセイが使用される場合、対象分析物の量の定量分析は、分光光度計を使用して実施することができる。本明細書に記載の側方流動アッセイは、所望により、自動化すること、又はロボットによって実施することができ、複数のサンプルからの信号を同時に検出することができる。さらに、複数の信号は、各対象分析物の標識が同じ又は異なる場合も含め、複数の対象分析物について検出することができる。いくつかの実施形態では、リーダは、カメラベースのリーダを含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、アッセイによって生成される信号は、反射率タイプの標識(金ナノ粒子標識及び異なる色のラテックス粒子などであるが、これらに限定されない)によって生成される光学信号の文脈であってよい。本開示の実施形態は、「光学」信号を参照して本明細書に記載されているが、本明細書に記載されるアッセイは、蛍光信号を生成する蛍光タイプのラテックスビーズ標識及びアッセイに関連する磁場の変化を示す信号を生成する磁気ナノ粒子標識を含むがこれらに限定されない、信号を生成するための標識に任意の適切な材料を使用できることが理解されるであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、データアナライザは、リーダによって得られる信号測定値を処理する。一般に、データアナライザは、デジタル電子回路、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェアを含む、任意のコンピューティング又は処理環境において実装され得る。いくつかの実施形態では、データアナライザは、プロセッサ(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、又はASIC)及びアナログ/デジタル変換器を含む。データアナライザは、診断試験システムのハウジング内部に組み込むことができる。他の実施形態では、データアナライザは、有線又は無線接続を介して診断試験システムと通信し得るコンピュータなどの別個の装置内に配置される。データアナライザは、データ解析又は結果確認のために、無線接続を介して外部ソースに結果を転送するための回路を含むこともできる。
【0057】
一般に、結果インジケータは、アッセイ試験の1つ以上の結果を示すための多種多様な異なる機構のうちの任意の1つを含むことができる。いくつかの実施態様では、結果インジケータは、例えば、アッセイ試験の完了を示すために作動する1つ以上のライト(例えば、発光ダイオード)を含む。他の実施態様では、結果インジケータは、アッセイ試験結果を提示するための英数字ディスプレイ(例えば、2文字又は3文字の発光ダイオードアレイ)を含む。
【0058】
本明細書に記載の試験システムは、リーダ、データアナライザ、及び結果インジケータを含む診断試験システムの能動構成要素に電力を供給する電源を含むことができる。電源は、例えば、交換可能な電池又は充電式電池によって実施され得る。他の実施形態では、診断試験システムは、外部ホスト装置(例えば、USBケーブルで接続されたコンピュータ)によって給電されてもよい。
【0059】
(側方流動アッセイ)
いくつかの態様において、被検体における疾患を試験する方法は、動物から流体サンプルを取得するステップと、流体サンプルを側方流動アッセイ試験システムに接触させるステップとを含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、被検体は、動物であっても、ヒトであってもよい。動物は、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ又はヤギなどの家畜であってもよい。動物は、イヌ又はネコのようなコンパニオンアニマルであってもよい。動物は、ウサギ、マウス、又はラットなどの実験動物であってもよい。他の実施形態では、動物は、ウマ科の哺乳動物である。
【0061】
いくつかの実施形態では、流体サンプルは、任意の適切なサンプル液体であってもよい。いくつかの実施形態では、液体サンプルは、全血、血清、血漿、尿サンプル、又は口腔液などの体液サンプルであり得る。そのような体液サンプルは、直接使用すること、あるいは使用前に処理、例えば、濃縮、精製、又は希釈することができる。他の実施形態では、液体サンプルは、ファージ、ウイルス、細菌細胞、真核細胞、真菌細胞、哺乳類細胞、培養細胞、細胞又は亜細胞構造、細胞凝集体、組織又は器官などの固体又は半固体の生体材料から得られる液体エキス、サスペンション又は溶液であり得る。特定の実施形態では、サンプル液体は、哺乳動物又はヒトのソースから得られるか、又はそれに由来するものである。さらに他の実施形態では、液体サンプルは、生物学的、法医学的、食品、生物兵器、又は環境的なソースに由来するサンプルである。他の実施形態では、サンプル液体は、臨床サンプル、例えば、ヒト又は動物の臨床サンプルである。さらに他の実施形態では、サンプル液体は、人工サンプル、例えば、品質管理又は較正目的の標準サンプルである。
【0062】
いくつかの実施形態では、本方法は、任意の適切なサンプル液体中の分析物の存在、不存在及び/又は量を検出するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本試験装置は、任意の適切なサンプル液体中に分析物が存在又は不存在を検出するために、すなわち、イエス又はノーの答えを提供するために使用される。他の実施形態では、本試験装置は、液体サンプル中の分析物の量を定量化又は半定量化するために使用される。いくつかの実施形態では、側方流動装置システムは、生物学的物質を検出し、同定し、場合によっては定量化することができる。生物学的物質には、原核細胞株、真核細胞株、哺乳類細胞株、微生物細胞株、昆虫細胞株、植物細胞株、混合細胞株、自然発生細胞株、又は合成工学的細胞株を含む生物によって生成される化学的又は生化学的化合物が含まれる。生物学的製剤には、タンパク質、多糖類、脂質、核酸などの巨大高分子と、一次代謝産物、二次代謝産物、天然物などの低分子とを含めることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の側方流動アッセイシステムは、サンプル中に存在する対象分析物に高感度であり、高濃度(μg/mLの10s~100s)及び低濃度(pg/mLの1s~10s)なども含む著しく異なる濃度で存在する1つ以上の対象分析物に対しても高感度である。「感度」とは、そのように正しく識別された実際の陽性の割合を指す(例えば、症状を有すると正しく識別された感染、潜伏、又は症候性の被験体の百分率)。感度は、真の陽性の数と偽陰性との数の合計で除したものとして計算されてもよい。
【0064】
例えば、本明細書に記載の側方流動アッセイの態様は、10μL~1000μLの間の量の生の未処理サンプルを側方流動アッセイシステムに接触させることを含む。一実施形態では、生の未処理サンプルは、全血サンプルである。
【0065】
いくつかの実施形態では、側方流動アッセイシステムは、複数の対象分析物の存在及び濃度を測定することができる。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイシステムは、単一の、希釈されていない、未処理のサンプル中の有意に異なる濃度を決定することができる。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイシステムは、単一の試験イベントを測定することができる。いくつかの実施形態では、単一の側方流動アッセイは、1つ以上の分析物を測定することができる。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイシステムは、サンプルを決して希釈することなく、異なる濃度でサンプル中に存在する複数の対象分析物の存在及び濃度を測定することができる。
【0066】
検体のタイプ及び検体が採取されるソースに応じて、検体は、側方流動アッセイシステムに適用するのに適した形式のサンプルを得るために処理、処置、又は準備されてもよい。検体のソースは、生物学的ソース、環境的ソース、又は対象分析物を含むことが疑われる他のソースであってもよい。本開示の実施形態は、側方流動装置を検体と接触させる前に、処理されていない検体中の対象分析物を検出することができる。非限定的な一例では、処理、処置、又は調製されていない検体が、本開示による側方流動装置に適用される。この例では、元のソースから得られた生の検体は、生の検体を本開示の側方流動装置に適用する前にサンプルに処理されない。本開示を通じて、側方流動装置に適用される「サンプル」に言及するが、そのようなサンプルは、従来のサンプル形式に処理又は調製されていない生の検体を含み得ることが理解されよう。
【0067】
非限定的な一例では、サンプルは、生物学的被検体を含むがこれに限定されないソースから直接得られたままの全ての成分を含む生のサンプルである。一実施形態では、生のサンプルは、任意の未修飾の採取血液サンプルであり、これは、本明細書では全血サンプルと呼ばれる。この非限定的な例では、本開示による分離膜は、成分の大きさに基づいて全血サンプルの成分を分離することが可能な血漿分離膜を含む。全血サンプルは、血漿分離膜に接触する。全血サンプル中の交絡成分、例えば、赤血球は、赤血球が大きすぎて血漿分離膜を通過できないため、血漿分離膜の上に保持されるか、又はその中に捕捉される。対象分析物を含み得る血漿は、血漿分離膜を通過し、本開示のアッセイ試験片上に流れる。
【0068】
いくつかの実施形態では、対象分析物が存在する場合、対象分析物を特異的に結合する標識及び抗体又はその断片を含む標識コンジュゲートに接触する。標識コンジュゲートは、今や対象分析物に結合しており、アッセイ試験片を通って検出ゾーンに流れ、そこで固定化捕捉剤が対象分析物に結合する。対象分析物が存在する場合、標識コンジュゲートと結合した対象分析物は、検出ゾーンで固定化された捕捉剤によって捕捉され、「サンドイッチ」構造を形成する。このサンドイッチ構造は、測定システムの検出閾値を超える信号を発生し、サンプル中に対象分析物が存在することを示し、場合によってはその量も示すことがある。対象分析物がサンプル中に存在しない場合、サンドイッチ構造は形成されず、信号は検出ゾーンで生成されず、対象分析物が存在しないことを示す。
【0069】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、生のサンプル中の対象分析物を検出するために側方流動アッセイを使用する方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載されるような側方流動アッセイを提供するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の側方流動装置に流体サンプルを適用するステップを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、側方流動装置にサンプルを適用するステップは、側方流動装置のサンプルポートにサンプルを適用することを含む。いくつかの実施形態では、サンプルポートでサンプルを適用することは、サンプルを側方流動アッセイに接触させることを含む。サンプルは、スポイト又は他のアプリケータを用いたように、外部アプリケーションによってサンプルをサンプルポートに導入することによって、側方流動アッセイに接触させてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルポートは、試験片がサンプルを保持する容器に浸漬される場合のように、サンプルに直接浸されてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは、サンプルリザーバに注がれ、滴下され、噴霧され、置かれ、又は他の方法で接触されてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、本方法は、流体サンプルをサンプルウェルの分離膜に通すことによって流体サンプルから微粒子を分離することを含み、対象分析物は分離膜を通過してアッセイ試験片に到達する。いくつかの実施形態では、微粒子には、例えば、赤血球、微粒子、細胞成分、又は細胞破片を含む交絡成分、又は装置を通るサンプルの流れを妨害する、又は装置の検出信号と干渉する他の成分が含まれる。分離膜は、サイズ、膜への親和性、又は所望される他の特性に基づいて、サンプルの成分を分離してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本方法は、標識コンジュゲートで対象分析物を標識するステップを含む。標識コンジュゲートは、対象分析物と標識とを特異的に結合する抗体を含んでもよい。標識コンジュゲートは、サンプルポートの下又は下流のコンジュゲートパッド(又は標識ゾーン)上に堆積させることができる。標識コンジュゲートは、サンプル中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するために使用することができる。オペレータがより多くの対象分析物の存在及び/又は量を決定することに関心がある場合、追加の標識コンジュゲートも装置に含まれることがある。したがって、装置は、第二の対象分析物と標識とを特異的に結合する第二の抗体を含む第二の標識コンジュゲートを含んでもよく、装置は、第三の対象分析物と標識とを特異的に結合する第三の抗体を含む第三の標識コンジュゲートも含んでもよく、分析される分析物の数に応じて、それ以上含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、本方法は、検出ゾーンにおいて、固定化捕捉剤に標識された対象分析物を結合させるステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、検出ゾーンにおいて固定化捕捉剤に結合した標識された対象分析物からの信号を検出するステップを含む。いくつかの実施形態では、バッファが添加される。いくつかの実施形態では、バッファ(HEPES、PBS、TRIS、又は任意の他の適切なバッファを含む追跡バッファなど)の添加により、結合した対象分析物を含むサンプルは、側方流動アッセイを通って検出ゾーンまで流体フロントに沿って流れる。検出ゾーンは、各複合体を捕捉するための捕捉ゾーンを含んでもよい(ここで、2つ以上の対象分析物が検出及び/又は定量される)。例えば、検出ゾーンは、第一の複合体を捕捉するための第一の捕捉ゾーン、第二の複合体を捕捉するための第二の捕捉ゾーン、及び第三の複合体を捕捉するための第三の捕捉ゾーンを含んでもよい。第一の捕捉ゾーンで第一の複合体が第一の捕捉剤に結合すると、標識からの第一の信号が検出される。第一の信号は、本明細書に記載されるような光学信号を含んでもよい。第一の信号は、第一の対象分析物の用量応答曲線上の値と比較されてもよく、サンプル中の第一の分析物の濃度が決定される。
【0074】
いくつかの実施形態では、サンプルは、環境ソース又は生物学的ソースを含むソースから取得される。いくつかの実施形態では、サンプルは、1つ以上の対象分析物を有することが疑われる。いくつかの実施形態では、サンプルは、いかなる対象分析物も有することが疑われない。いくつかの実施形態では、サンプルは、複数の分析物の不存在又は存在を確認するために取得され、分析される。いくつかの実施形態では、サンプルは、サンプル中の複数の分析物の量について取得され、分析される。いくつかの実施形態では、サンプル中に存在する1つ以上の分析物のうちの任意の1つの量は、健常な被検体に存在する正常値未満、健常な被検体に存在する正常値又はその前後、又は健常な被検体に存在する正常値以上である。いくつかの実施形態では、流体サンプルは、希釈されていない全血サンプル、希釈されていない静脈血サンプル、希釈されていない毛細管血サンプル、希釈されていない血清サンプル、又は希釈されていない血漿サンプルである。いくつかの実施形態では、流体サンプルは、10~100μLの量で適用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、検出された信号は、光学信号、蛍光信号、又は磁気信号である。いくつかの実施形態では、装置は、バッファポートをさらに備える。いくつかの実施形態では、本方法は、アッセイ試験片を通してバッファを対象分析物に流すステップをさらに含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、対象分析物は、高濃度で存在する。高濃度の分析物は、分析物の健康レベルを超える濃度を指すことができる。したがって、高濃度の分析物は、健康レベルよりも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、又はそれ以上高い分析物の濃度を含むことができる。いくつかの実施形態では、対象分析物には、本明細書に記載されるような分析物が含まれる。追加の分析物が、生物学的又は環境的な対象物質の目的のために含まれてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、被検体は、代謝性障害と診断される。代謝性障害は、インスリン抵抗性、高インスリン血症、及び/又はインスリン抵抗性及び/又は高インスリン血症に関連する臨床状態若しくは徴候であってもよい。代謝性障害又は臨床状態若しくは徴候は、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能異常、脂質異常症、ジスアジポキン血症、不顕性炎症、全身性炎症、脂肪組織も含む低悪性度の全身性炎症、肥満、局所脂肪症、蹄葉炎、血管機能障害、高血圧、肝リピドーシス、動脈硬化、副腎皮質機能亢進症、下垂体中隔機能障害及び/又はウマ科メタボリック症候群から選択される1つ以上の障害であってもよい。いくつかの実施形態では、ウマ科メタボリック症候群は、肥満及び/又は局所脂肪症と関連していることもある。
【0078】
いくつかの態様において、側方流動アッセイ試験システムは、ホールピペットと、化学試薬溶液であって、追跡バッファ又はランニングバッファである化学試薬溶液と、側方流動アッセイ試験装置と、1つ以上のポートを含み、生体サンプル、追跡バッファ、ランニングバッファ、又はそれらの混合物を受け入れるように構成されたシステムハウジングと、光源及び光検出器を備えるリーダと、データアナライザと、を備える。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、インスリン抗体を含む。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、インスリン抗体2D11である。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、E2E3である。いくつかの実施形態では、インスリン抗体は、アプタマーではない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験システムは、インスリンプローブを備えず、そのインスリンプローブは、ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、インスリンプローブは、抗FAMモノクローナル抗体ではない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、コンディショニングパッドを備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、複数のラミネート層を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、複数の窓枠層を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、特大の粒子を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、金ナノ粒子を備える。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子は、試験片に共有結合していない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、分析物-抗体複合体を解離させるための脱複合化領域を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、1つ以上の捕捉可能で検出可能な免疫複合体を形成するための1つ以上の免疫試薬を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、蛍光タグ又は蛍光標識を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、イムノクロマト標識を備えてない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、1つ以上のCRISPRエフェクターシステムを備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、論理回路を備えていない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、競合アッセイベースの側方流動装置でない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、ローリングサークル増幅ベースの側方流動装置ではない。いくつかの実施形態では、側方流動アッセイ試験装置は、リポソーム信号増幅ベースの側方流動装置ではない。
【実施例
【0079】
以下の実施例は、本開示の詳細を説明することを意図しており、それによっていかなる方法においても限定するものではない。
【0080】
(実施例1.ウマ科インスリンの直接(サンドイッチ)側方流動アッセイにおける抗体ペアリング研究。)
この実験(図3A)では、ウマ科インスリンの直接(サンドイッチ)側方流動アッセイで使用するための抗体の最良の組合せを同定するために、抗体ペアリング研究を実施した。この実験では、インスリン陽性[10ng/mL(288μU/mL)]及びインスリン陰性(0ng/mL)のウマ科血漿サンプルからのウマ科インスリン側方流動アッセイ試験ライン強度(ミリボルト)を、異なるインスリン抗体クローンを捕捉抗体及び検出器抗体としてそれぞれ利用し、比較した。抗体の各ペアの上段の数値は、インスリン陽性サンプルの側方流動アッセイ試験ライン強度をインスリン陰性サンプルの側方流動アッセイ試験ライン強度で除した「比率」を示す。下段の数値は、これらの同じ値の差である「差」を示す。「捕捉又は試験ライン抗体」は、側方流動アッセイ試験ラインの位置でニトロセルロース膜にストライプされた抗体を示し、「ベンダー、クローン番号」として表記される。「検出器抗体」は、金ナノ粒子検出器にコンジュゲートされた抗体を示し、これも「ベンダー、クローン番号」として表記される。「KPhos Rxnバッファ」とは、リン酸カリウム反応バッファ中で金ナノ粒子検出器にコンジュゲートされた検出器抗体を用いて実施したアッセイを意味し、「PBS Rxnバッファ」とは、リン酸緩衝生理食塩水反応バッファ中で金ナノ粒子検出器にコンジュゲートされた検出器抗体を用いて実施したアッセイを意味する。最終的に、提示されたデータに基づいて、クローンE2E3が検出器抗体として選択され、クローン2D11が捕捉又は試験ライン抗体として選択され、前述の抗体の使用から生じる大きな比率及び差は太字で表示される。比較表は、図3Aで見ることができる。
【0081】
図3Bは、図3Aに記載されたウマ科インスリン側方流動アッセイの画像のサンプルを示し、それぞれ検出器抗体(「Conj」)及び捕捉又は試験ライン抗体(「TL」)としてのインスリン抗体の異なる組合せについての、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)又はリン酸ナトリウム(「KPhos」)反応バッファのいずれかで金ナノ粒子検出器に結合された検出器抗体を用いたときの、インスリン陽性(10ng/mL(288μU/mL))及びインスリン陰性(0ng/mL)のウマ科血漿サンプルの試験ライン強度の違いを示している。
【0082】
(実施例2.金ナノ粒子への検出抗体コンジュゲーションプロトコルと、ウマ科インスリン側方流動アッセイとウマ科インスリン放射免疫アッセイとの相関関係に及びそれらの影響。)
フォローアップ研究では、ウマ科インスリンLFAとコーネル放射免疫アッセイ(RIA)との間に最も強い相関関係を提供する金ナノ粒子への検出抗体コンジュゲーションプロトコルを特定するために実験を実施した。)表1に示すのは、(1)コーネルRIAによって決定された15のサンプルのウマ科血漿インスリン濃度、及び様々な検出抗体(Mabtech E2E3)金ナノ粒子コンジュゲーションプロトコルから得られた対応するLFA試験ライン強度(ミリボルト(mV))で、(a)リン酸緩衝生理食塩水中のカルボキシル化金ナノ粒子への直接的な共有コンジュゲーション(「PBS制御」)、(b)リン酸ナトリウム中のカルボキシル化金ナノ粒子への直接共有コンジュゲーション(「NaPhos」)、(c)ポリエチレングリコール中及びウシ血清アルブミンブロックとの直接共有コンジュゲーション(「TQD」)、及び(d)とストレプトアビジン被覆金ナノ粒子に結合したビオチン化抗体(「Bi-SA」)を含むもの、(2)LFA(試験ラインのミリボルト値)のコーネルRIA(血漿インスリン濃度(μU/mL))との相関[決定係数(R)及びピアソン相関係数(「ピアソンのr」)]、及び(3)相関デ-タの信頼区間である。(注:コーネルRIAは、コーネル大学獣医学部(Cornell University College of Veterinary Medicine)アニマルヘルス診断センターによって実施された。)
【表1】
【0083】
図4は、15のウマ科血漿サンプルのセットについて、金ナノ粒子への4つの異なる検出抗体コンジュゲーションプロトコルから構築されたLFAで、ウマ科インスリンLFAとコーネルRIAの相関関係を示す。これらの実験から、抗体のビオチン化、次いで、ビオチン化抗体のストレプトアビジン被覆金ナノ粒子への結合を含む検出抗体(Mabtech E2E3)コンジュゲーションプロトコルは、コーネルRIAと最も強い相関と最も高い信頼区間とをもたらすことが実証された。したがって、この検出抗体コンジュゲーションプロトコルは、最終的なウマ科インスリン側方流動アッセイに使用された。Mabtechのインスリン抗体2D11は、すべてのアッセイで捕捉又は試験ライン抗体として使用された。
【0084】
(実施例3.追跡バッファの配合がウマ科インスリン側方流動アッセイとウマ科血漿インスリン濃度との相関に及ぼす影響。)
図5は、2つの異なる追跡バッファの配合が、ウマ科インスリン側方流動アッセイの信号とウマ科血漿インスリン濃度との相関に及ぼす影響を示す。側方流動試験片に適用する前に、ウマ科血漿サンプルを、質量比で1%のTween(登録商標)を含む1xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(10mg/mL)、又は1%のTweenに、質量比で10%のウシ子牛血清(BCS)、50μg/mLのMouse IgG及び15mM EDTAを追加した1xPBSのいずれかからなる追跡バッファを用いて事前に混合した。BCS、Mouse IgG及びEDTAを追跡バッファに追加することにより、側方流動アッセイの試験ラインの信号(「Lumos信号」)とウマ科血漿インスリン濃度との相関が有意に改善された。したがって、この追跡バッファの組成を最終的なウマ科インスリン側方流動アッセイに使用した。ウマ科血漿インスリン濃度は、Mercodia(登録商標)Equine Insulin Elisaで測定した。(注:エラーバーは、n=3での各血漿サンプルのウマ科インスリン側方流動アッセイ試験ライン信号の標準偏差を示す。)
【0085】
(実施例4.様々な血液フィルタパッドの全血ろ過能力とそのウマ科インスリン側方流動アッセイ感度への影響。)
本研究では、様々な血液フィルタパッドの全血ろ過能力を、ウマ科インスリン側方流動アッセイ感度に対する血液フィルタパッドの影響とともに調査した。図6Aは、ウマ科全血サンプルが適用された、異なる血液フィルタパッド又はその組合せを有するウマ科インスリン側方流動アッセイ試験片の画像を示す。異なる血液フィルタパッド又はその組合せを有する側方流動アッセイ試験片は、ニトロセルロース膜上への血液移動の程度が様々であり、これは、ニトロセルロース膜上の血液が電子リーダによるコントロール及び試験ライン強度の読み取りに影響を与える能力のために好ましくない。血液フィルタパッド1668とFR-1は、他の膜又は膜の組合せと比較して、ニトロセルロース膜上への全血の移動を著しく減少させる能力を示したので、これらの2つの血液フィルタパッドについて、側方流動アッセイの感度に対するその相対的な影響についてさらに分析した。[「1668」=Ahlstrom Cytostep(登録商標)1668、「Vivid GX」又は「GX」=Pall VividTM GX、「FR-1」=MDI Membrane Technologies FR-1。](注:2つの血液フィルタパッドの組合せは、上記で定義したパッドの間に「+」記号で示す。)
【0086】
図6Bは、2つの異なる血液フィルタパッドを使用したウマ科インスリン側方流動アッセイの結果の比較を示す。「Cube信号」は、写真電子リーダ(Cube Reader, Chembio Diagnostic Systems, Inc.)によって測定され、ウマ科血漿サンプルに対して行われた側方流動アッセイの試験ライン強度であり、結果は任意の単位で報告される。ウマ科血漿サンプルのインスリン濃度は、Mercodia(登録商標)Equine Insulin ELISAで測定し、単位は、ミリリットル当たりマイクロユニット(μU/mL)で報告されている。血漿インスリン濃度とCube信号の相関係数(決定係数=「R」)は、Ahlstrom Cytostep(登録商標)1668と、MDI Membrane Technologies FR-1血液フィルタパッドで実施したアッセイで、ほぼ同じだった(それぞれ0.9662と0.9661)。しかしながら、Ahlstrom Cytostep(登録商標)1668で実施したアッセイの感度は、MDI Membrane Technologies FR-1で行ったアッセイの感度よりも大きく、これは、1668のトレンドラインの勾配(=0.7065)が、FR-1のトレンドラインの勾配(=0.6175)と比較して大きいことから分かるとおりである。したがって、血液フィルタパッド1668が、最終的なウマ科インスリン側方流動アッセイで使用するために選択された。(注:エラーバーは、n=2での各血漿サンプルのウマ科インスリン側方流動アッセイ試験ライン信号の標準偏差を表す。)
【0087】
(実施例5.ウマ科インスリンの直接(サンドイッチ)側方流動アッセイの経験的性能の実証。)
図7は、ウマ科血漿サンプル中のインスリンの濃度の増加とともに増加する試験ライン強度(左から右)を示すウマ科インスリン側方流動アッセイの画像である。試験ライン強度(上)は、写真電子リーダ(Cube Reader, Chembio Diagnostic Systems, Inc.)で測定され、結果は任意の単位で報告された。ウマ科血漿インスリン濃度(下)は、Mercodia(登録商標)Equine Insulin ELISAによって以前に決定された。
【0088】
特定の態様が本明細書に記載されたが、これらの態様の多くの変形及び並べ替えも本開示の範囲内に入る。いくつかのメリット及び利点が言及されているが、本開示の範囲は、特定の利益、使用、又は目的に限定されることを意図していない。むしろ、本開示の態様は、異なる検出技術及び装置構成に広く適用されることを意図しており、その一部が、図面及び説明において例として示されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】