(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】芳香族リッチ留分油を加工するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C10G 65/12 20060101AFI20230111BHJP
C10G 69/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C10G65/12
C10G69/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525049
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2020125068
(87)【国際公開番号】W WO2021083302
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911054674.9
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911053864.9
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊清河
(72)【発明者】
【氏名】賈燕子
(72)【発明者】
【氏名】胡大為
(72)【発明者】
【氏名】牛傳峰
(72)【発明者】
【氏名】孫淑玲
(72)【発明者】
【氏名】戴立順
(72)【発明者】
【氏名】王振
(72)【発明者】
【氏名】戸安鵬
(72)【発明者】
【氏名】任亮
(72)【発明者】
【氏名】李大東
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA05
4H129CA11
4H129CA25
4H129CA27
4H129CA28
4H129CA29
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4H129KB03
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4H129MA01
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4H129MA12
4H129MB02B
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4H129MB20A
4H129MB20B
4H129NA02
4H129NA21
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA27
4H129NA31
4H129NA45
(57)【要約】
本発明は炭化水素油を加工する技術分野に関し、特に芳香族リッチ留分油を加工するための方法およびシステムに関する。当該方法およびシステムは、(1)芳香族リッチ留分油を水素飽和用の第5反応ユニットに導入し、続いて分留して、第1軽質成分および第1重質成分を提供すること;(2)脱油アスファルトと、第1重質成分を含む芳香族含有ストリームとを、水素溶解ユニットに導入し、水素と混合すること、および混合材料を水素化反応用の第1反応ユニットに導入すること、ここで、前記第1反応ユニットは液相水素化反応ユニットであり;(3)前記第1反応ユニットからの液相生成物を分留して、第2軽質成分および第2重質成分を提供すること;(41)前記第2軽質成分を反応用の第2反応ユニットに導入すること;(42)前記第2重質成分を反応用の遅延コークス化ユニットに導入すること;または前記第2重質成分を低硫黄船舶燃料油の成分として使用することを含む。本発明により提供される処理方法は、DOAの高価値利用を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2)脱油アスファルトと、第1重質成分を含む芳香族含有ストリームとを、水素溶解ユニットに導入し、水素と混合すること、および混合材料を水素化反応用の第1反応ユニットに導入すること、
ここで、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームは、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームによって形成される混合供給原料が400℃以下の温度で液体状態にあるような量比で使用され;
(3)前記第1反応ユニットからの液相生成物を分留して、第2軽質成分および第2重質成分を提供すること、
ここで、前記第2軽質成分および前記第2重質成分のための切断点は240-450℃であり;
(41)前記第2軽質成分を反応用の第2反応ユニットに導入し、ガソリン成分、ディーゼル成分およびBTX供給原料成分から選択される少なくとも1つの生成物を提供すること、
ここで、前記第2反応ユニットは水素分解ユニット、接触分解ユニット、およびディーゼル水素化品質向上ユニットからなる群から選択される少なくとも1つであり;ならびに
(42)前記第2重質成分を反応用の遅延コークス化ユニットに導入し、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油および低硫黄石油コークスからなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供すること;または前記第2重質成分を低硫黄船舶燃料油の成分として使用すること、を含むことを特徴とする、芳香族リッチ留分油を加工する方法。
【請求項2】
(1)芳香族リッチ留分油を水素飽和用の第5反応ユニットに導入し、続いて分留して、第1軽質成分および第1重質成分を提供し、ここで、前記第1軽質成分および前記第1重質成分は100~250℃の切断点を有し、かつ、前記第1重質成分中の芳香族の含有量は20重量%以上であり;ここで、前記第1重質成分は工程(2)における前記芳香族含有ストリームに含まれる前記第1重質成分として使用されること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、前記第1反応ユニットはミネラルリッチ前駆体材料および/または水素化触媒を含み、前記第1反応ユニットは液相水素化反応ユニットであり、前記ミネラルリッチ前駆体材料はV、Ni、Fe、CaおよびMgから選択される少なくとも1つの金属を吸着することができる材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(2)において、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームは、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームから形成される前記混合供給原料の100℃における粘度が400mm
2/s以下、より好ましくは200mm2/s以下、より好ましくは100mm
2/s以下となるような比率で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、前記芳香族含有ストリームが芳香族炭化水素および/または芳香族油をさらに含み、前記芳香族油はLCO、HCO、FGO、エチレンタール、コールタール、コーカーディーゼル、およびコーカーワックス油からなる群から選択される少なくとも1つであり;
好ましくは、前記芳香族炭化水素はベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、少なくとも1つのC
1-6アルキル基で置換されたナフタレン、および三環式または高級芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族リッチ留分油中の前記芳香族炭化水素の含有量が20重量%以上であり、好ましくは25重量%以上であり、好ましくは40重量%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(2)において、前記脱油アスファルトは重油供給原料を溶媒脱アスファルトユニット中で溶媒脱アスファルト方法に供することによって得られ;好ましくは、前記溶媒脱アスファルトユニットにおいて、前記脱油アスファルトの収率は50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらにより好ましくは30重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(2)において、前記芳香族含有ストリームは芳香族リッチ留分油であり、かつ、前記芳香族含有ストリームの量に対する前記脱油アスファルトの量の重量比率は、1:10~50:10、より好ましくは2:10~30:10、より好ましくは3:10~15:10である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(42)で得られた前記コーカーディーゼルおよび/またはコーカー軽油を水素飽和用の工程(1)の前記第1反応ユニットに再循環させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)において、第3反応ユニットは固定床反応器、移動床反応器および沸騰床反応器のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法;
好ましくは、前記第3反応ユニットは、反応温度が200~420℃、反応圧力が2~18MPa、液時空間速度が0.3~10h
-1、および油に対する水素の体積比が50~5000である条件下で運転される;
好ましくは、前記第3反応ユニットは、反応温度が220~400℃、反応圧力が2~15MPa、液時空間速度が0.3~5h
-1、および油に対する水素の体積比が50~40000である条件下で運転される。
【請求項11】
工程(2)において、前記第1反応ユニットは、反応温度が260~500℃、反応圧力が2.0~20.0MPa、前記第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.1:1~15:1、および液時空間速度が0.1~1.5h
-1である条件下で運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(2)において、ミネラルリッチ前駆体材料は強熱減量が3重量%以上であり、比表面積が80m
2/g以上であり、かつ、吸水量が0.9g/g以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(2)において、ミネラルリッチ前駆体材料は、担体と、前記担体に担持された活性成分元素と、を含み、ここで、前記担体は水酸化アルミニウム、アルミナおよびシリカからなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ、前記活性成分元素は第VIB族および第VIII族からなる群から選択される少なくとも1つの金属元素である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(2)において、反応物の流れの方向に従って、前記第1反応ユニットに第1ミネラルリッチ前駆体材料および第2ミネラルリッチ前駆体材料を連続的に装填し、かつ、前記第2ミネラルリッチ前駆体材料は前記第1ミネラルリッチ前駆体材料の強熱減量以上の強熱減量を有する、請求項13に記載の方法;
好ましくは、前記第1ミネラルリッチ前駆体材料は3~15重量%の強熱減量を有し、かつ、前記第2ミネラルリッチ前駆体材料は15重量%以上の強熱減量を有する;
好ましくは、前記第1ミネラルリッチ前駆体材料および第2ミネラルリッチ前駆体材料は5:95~95:5の体積比で装填される。
【請求項15】
工程(41)において、前記第2反応ユニットは水素分解ユニットであり、反応温度が360~420℃、反応圧力が10.0~18.0MPa、油に対する水素の体積比が600~2000、および液時空間速度が1.0~3.0h
-1である条件下で運転される;
好ましくは、前記水素分解ユニットには、少なくとも1つの水素化処理触媒および少なくとも1つの水素化分解触媒が装填される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(41)において、前記第2反応ユニットは接触分解ユニットであり、前記接触分解ユニットは流動接触分解ユニットであり;
好ましくは、前記流動接触分解ユニットは、反応温度が500~600℃、油に対する触媒の比が3~12、および滞留時間が0.6~6秒である条件下で運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(41)において、前記第2反応ユニットはディーゼル水素化品質向上ユニットであり、反応温度が330~420℃、反応圧力が5.0~18.0MPa、油に対する水素の体積比が500~2000、および液時空間速度が0.3~3.0h
-1である条件下で運転され、
好ましくは、前記ディーゼル水素化品質向上ユニットには、少なくとも1つのディーゼル水素化品質向上触媒が装填される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(42)において、前記第2重質成分は反応用の遅延コーキングユニットに導入されて、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油および低硫黄石油コークスから選択される少なくとも1つの生成物を提供し、前記遅延コーキングユニットは反応温度が440~520℃、および滞留時間が0.1~4時間である条件下で運転され;
好ましくは、工程(42)において、前記第2重質成分の前記硫黄の含有量は1.8重量%以下であり、前記第2重質成分は反応用の遅延コーキングユニットに導入されて、低硫黄石油コークスを提供し、より好ましくは、前記低硫黄石油コークスの前記硫黄の含有量は3重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(42)において、前記第2重質成分を低硫黄船舶用燃料油成分として使用し、かつ、前記低硫黄船舶用燃料油成分の前記硫黄の含有量が0.5重量%以下となるように前記条件が制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(11)重質原油を溶剤脱アスファルト処理用の前記溶剤脱アスファルトユニットに導入して、脱油アスファルトおよび脱アスファルト油を提供すること;
(12)水素化反応用の第4反応ユニットに前記脱アスファルト油を導入し、かつ前記第4反応ユニットで得られた液相流出物を反応用のDCCユニットに導入して、プロピレン、LCO、HCOおよびスラリー油を提供すること、ここで、前記第4反応ユニットは固定床反応ユニットであること;および
前記DCCユニットからのLCOおよび/またはHCOを含む前記芳香族リッチ留分油を工程(1)における前記芳香族リッチ留分油として使用すること、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
工程(42)で得られたコーカーディーゼル、および/または、コーカー軽油を水素飽和用の前記第3反応ユニットに再循環させる工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(12)において、前記第4反応ユニットは、反応温度が280~400℃、反応圧力が6.0~14.0MPa、油に対する水素の体積比が600~1200、および液時空間速度が0.3~2.0h
-1である条件下で運転され;
好ましくは、工程(12)において、前記第4反応ユニットに少なくとも2つの水素化触媒を装填し;
好ましくは、工程(12)において、前記水素化触媒は、水素化脱金属反応、水素化脱硫反応、および水素化脱炭反応からなる群から選択される少なくとも1つの反応を触媒することができる触媒であり;
好ましくは、工程(12)において、前記水素化触媒は、前記担体としてのアルミナと、活性成分元素としての第VIB族および/または第VIII族からの金属元素と、任意でP、Si、FおよびBから選択される少なくとも1つの補助元素と、を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第1軽質成分および第1重質成分を提供する、芳香族リッチ留分油上での水素飽和用および分留用の第3反応ユニット;
脱油アスファルトと、前記第3反応ユニットからの前記第1重質成分を含む芳香族含有ストリームとを、水素とその中で混合するための、前記第3反応ユニットと流体連通する水素溶解ユニット;
液相水素化反応ユニットであり、前記水素溶解ユニットからの混合材料の水素化反応をその中で実施するために使用される、前記水素溶解ユニットと流体連通する第1反応ユニット;
前記第1反応ユニットからの液相生成物をその中で分留するための、前記第1反応ユニットと流体連通する分離ユニット;
前記分離ユニット内で得られる前記第2軽質留分をその中で反応させるためのものであり、水素化分解ユニット、接触分解ユニット、およびディーゼル水素化品質向上ユニットからなる群から選択される少なくとも1つである、前記分離ユニットと流体連通する第2反応ユニット;
前記分離ユニットから得られる前記第2重質成分をその中で反応させるためのものであり、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油、および低硫黄石油コークスからなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供する、前記分離ユニットと流体連通する遅延コーキングユニット;および
前記分離ユニットから得られた前記第2重質留分を低硫黄船舶燃料油留分としてシステムから排出するためのものである、前記分離ユニットと流体連通する出口;を含む、芳香族リッチ留分油を加工するためのシステム。
【請求項24】
前記遅延コーキングユニットは前記水素溶解ユニットと流体連通しており、コーカー軽油および/または前記遅延コーキングユニットで得られたコーカー軽油を前記第1反応ユニットに再循環させる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記水素溶解ユニットと流体連通する溶剤脱アスファルトユニットをさらに含み、前記溶剤脱アスファルトユニットは、前記重油供給原料をその中で溶剤脱アスファルト化するため、および、前記溶剤脱アスファルト化後に得られた脱アスファルト化アスファルトを前記水素溶解ユニットに導入するために使用される、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記重質原油を、その中で溶剤脱アスファルト処理に供するために使用され、脱油アスファルトおよび脱アスファルト油を提供する、溶剤脱アスファルトユニット;
固定床反応ユニットであり、前記溶媒脱アスファルトユニットからの前記脱アスファルト油をその中で水素化反応するためのものである、前記溶媒脱アスファルトユニットと流体連通する第4反応ユニット;
前記第4反応ユニットから得られた液相流出物をその中で反応させるためのものであり、プロピレン、LCO、HCO及びスラリー油を提供する、前記第4反応ユニットと流体連通するDCCユニット;をさらに含み、
芳香族リッチ留分油として使用する目的で、LCOおよび/またはHCOを含む前記芳香族リッチ留分油を前記DCCユニットから前記第3反応ユニットに輸送するために、前記DCCユニットは前記第3反応ユニットと流体連通している、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は炭化水素油を加工する分野に関し、特に、芳香族リッチ留分油を加工するための方法およびシステムに関する。
【0002】
〔背景技術〕
残留油の高効率変換は、石油精製企業の核心である。固定床上での残留油水素化は残留油の非常に有効な変換のための重要な技術であり、良好な生成物品質、熟成方法などの特徴を有する。
【0003】
しかしながら、残留油中のアスファルテンおよび金属の高い含有量は、固定床上での残留油水素化の運転期間の制限因子である。
【0004】
この課題を解決するために、SINOPEC Research Institute of Petroleum Processing (RIPP)が開発した残留油のための溶剤脱アスファルト(脱金属化)、水素化処理接触分解複合方法技術(SHF)は、価値の低い真空残留油を最大限に利用し、かつ、走行時間を延長するクリーンな車両用燃料を製造する革新的な技術である。しかしながら、脱油アスファルテン(DOA)は軟化点が高いため、輸送および利用が困難であり、SHF技術の普及は限定的である。
【0005】
残留油の水素化-深接触分解(DCC)による、プロピレンリッチな生成物を製造する新しい組み合せ方法もまた、残留油中のアスファルテンおよび金属の影響によって制限されている。水素化された残留油の水素含有量は低く、残留油の水素化の運転期間は短く、DCCからのプロピレンの収率は低く、組み合わせ技術の経済的利益は限定的である。
【0006】
さらに、2020年には、硫黄留分が0.5重量%より高くない新低硫黄船舶燃料規格と硫黄留分が3.0重量%より高くない低硫黄石油コークス規格とが実施される予定である。低硫黄船燃料(低硫黄石油コークス)を安価に製造する技術も、現在緊急に解決すべき課題である。
【0007】
従って、DOAの低硫黄船舶燃料または低硫黄石油コークス生産のための材料への変換は、取り組む必要のある技術的課題である。
【0008】
〔発明の概要〕
本願発明の目的は、より低い水素分圧、より低い水素の油に対する比率およびより高い空間速度であっても、より良好な水素化処理結果および装置の長時間の安定運転を可能にする、芳香族リッチ留分油を加工するための新規な方法を提供することである。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、芳香族リッチ留分油を加工するための方法を提供する。この方法は:
(1)芳香族リッチ留分油を水素飽和用の第5反応ユニットに導入し、続いて分留して、第1軽質成分および第1重質成分を提供し、ここで、前記第1軽質成分および前記第1重質成分は100~250℃の切断点を有し、かつ、前記第1重質成分中の芳香族の含有量は20重量%以上であり;
(2)脱油アスファルトと、前記第1重質成分を含む芳香族含有ストリームとを、水素溶解ユニットに導入し、水素と混合すること、および混合材料を水素化反応用の第1反応ユニットに導入すること、前記第1反応ユニットはミネラルリッチ前駆体材料および/または水素化触媒を含み、前記第1反応ユニットは液相水素化反応ユニットであり、前記ミネラルリッチ前駆体材料はV、Ni、Fe、CaおよびMgから選択される少なくとも1つの金属を吸着することができる材料であり、ここで、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームは、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームによって形成される混合供給原料が400℃以下の温度で液体状態にあるような量比で使用され;
(3)第1反応ユニットからの液相生成物を分留して、第2軽質成分および第2重質成分を提供すること、ここで、前記第2軽質成分および前記第2重質成分のための切断点は240-450℃であり;
(41)前記第2軽質成分を反応用の第2反応ユニットに導入し、ガソリン成分、ディーゼル成分およびBTX供給原料成分から選択される少なくとも1つの生成物を提供すること、ここで、前記第2反応ユニットは水素分解ユニット、接触分解ユニット、およびディーゼル水素化品質向上ユニットからなる群から選択される少なくとも1つであり;ならびに
(42)前記第2重質成分を反応用の遅延コークス化ユニットに導入し、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油および低硫黄石油コークスからなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供すること;または前記第2重質成分を低硫黄船舶燃料油の成分として使用すること;を含む。
【0010】
本発明の第2態様は、芳香族リッチ留分油を加工するためのシステムを提供する:前記システムは、第1軽質成分および第1重質成分を提供する、芳香族リッチ留分油上での水素飽和用および分留用の第3反応ユニット;前記脱油アスファルトと、前記第3反応ユニットからの前記第1重質成分を含む前記芳香族含有ストリームとを、水素とその中で混合するための、前記第3反応ユニットと流体連通する水素溶解ユニット;液相水素化反応ユニットであり、前記水素溶解ユニットからの混合材料の水素化反応をその中で実施するために使用される、前記水素溶解ユニットと流体連通する第1反応ユニット;前記第1反応ユニットからの液相生成物をその中で分留するための、前記第1反応ユニットと流体連通する分離ユニット;前記分離ユニット内で得られる前記第2軽質留分をその中で反応させるためのものであり、水素化分解ユニット、接触分解ユニット、およびディーゼル水素化品質向上ユニットからなる群から選択される少なくとも1つである、前記分離ユニットと流体連通する第2反応ユニット;前記分離ユニットから得られる前記第2重質成分をその中で反応させるためのものであり、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油、および低硫黄石油コークスからなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供する、前記分離ユニットと流体連通する遅延コーキングユニット;前記分離ユニットから得られた前記第2重質留分を低硫黄船舶燃料油留分としてシステムから排出するためのものである、前記分離ユニットと流体連通する出口;を含む。
【0011】
本発明による芳香族リッチ留分油の加工方法を残留油の処理に使用する場合、この方法をより低い水素分圧、より低い水素-油比、およびより高い空間速度で実施しても、比較的良好な水素化処理効果および長期間の安定した装置の運転を得ることができる。
【0012】
本発明は、特に大気中の残留物および真空残留物の水素化変換に適している。特に、
高含有量の金属、高含有量の炭素残留物、高含有量の縮合環物質および高含有量の窒素を有する貧弱な残留油の水素化変換に適している。
【0013】
本願発明は、方法重油を効率的に変換することができ、かつ、ガソリンおよびBTX原料を製造することができる、脱油アスファルト(DOA)水素化処理のための方法、および、低硫黄船舶燃料および低硫黄石油コークスを柔軟に製造するためのシステムおよび方法を提供する。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の好ましい実施形態によって芳香族リッチ留分油を加工するためのフローチャートである。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施形態によって芳香族リッチ留分油を加工するためのフローチャートである。
【0016】
符号の説明
1 重油供給原料 2 溶剤脱アスファルトユニット
3 脱アスファルト油 4 脱油アスファルト
5 芳香族化合物 6 混合供給原料
7 第1反応ユニット 8 第2軽質成分
9 第2重質成分 10 第2反応ユニット
11 遅延コーキングユニット 12 BTX供給原料成分
13 ガソリン成分 14 ディーゼル成分
15 コーカーガソリン 16 コーカーディーゼル
17 コーカー蝋質油 18 低硫黄石油コークス
19 分離ユニット 20 芳香族リッチ留分油
21 第3反応ユニット 22 第1重質成分
23 水素溶解ユニット 24 第4反応ユニット
25 DCCユニット 26 プロピレン
27 LCO 28 HCO
29 スラリー油
〔実施形態〕
本明細書に開示される範囲の端点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値は、これらの範囲または値に近い値を包含すると理解されるべきである。数値範囲については、その端点と個々の点の値との間の各範囲、および各個々の点の値は、互いに組み合わせて、1つまたは複数の新しい数値範囲を与えてもよく、そのような新しい数値範囲は本明細書で具体的に開示されていると解釈されるべきである。
【0017】
上に述べたように、本発明の第1の態様は、芳香族リッチ留分油を加工する方法を提供する。当該方法は:
(1)芳香族リッチ留分油を水素飽和用の第5反応ユニットに導入し、続いて分留して、第1軽質成分および第1重質成分を提供し、ここで、前記第1軽質成分および前記第1重質成分は100~250℃の切断点を有し、かつ、前記第1重質成分中の芳香族の含有量は20重量%以上であり;
(2)脱油アスファルトと、前記第1重質成分を含む芳香族含有ストリームとを、水素溶解ユニットに導入し、水素と混合すること、および混合材料を水素化反応用の第1反応ユニットに導入すること、前記第1反応ユニットはミネラルリッチ前駆体材料および/または水素化触媒を含み、前記第1反応ユニットは液相水素化反応ユニットであり、前記ミネラルリッチ前駆体材料はV、Ni、Fe、CaおよびMgから選択される少なくとも1つの金属を吸着することができる材料であり、ここで、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームは、前記脱油アスファルトおよび前記芳香族含有ストリームによって形成される混合供給原料が400℃以下の温度で液体状態にあるような量比で使用され;
(3)第1反応ユニットからの液相生成物を分留して、第2軽質成分および第2重質成分を提供すること、ここで、前記第2軽質成分および前記第2重質成分のための切断点は240-450℃であり;
(41)前記第2軽質成分を反応用の第2反応ユニットに導入し、ガソリン成分、ディーゼル成分およびBTX供給原料成分から選択される少なくとも1つの生成物を提供すること、ここで、前記第2反応ユニットは水素分解ユニット、接触分解ユニット、およびディーゼル水素化品質向上ユニットからなる群から選択される少なくとも1つであり;ならびに
(42)前記第2重質成分を反応用の遅延コークス化ユニットに導入し、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油および低硫黄石油コークスからなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供すること;または前記第2重質成分を低硫黄船舶燃料油の成分として使用すること;を含む。
【0018】
好ましくは、脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームは、脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームから形成される混合供給原料が280℃以下の温度で液体状態にあるような量比で使用される。脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームは、脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームから形成される混合供給原料が100℃以下の温度で液体状態にあるような量比で使用される。
【0019】
好ましくは、第3反応ユニットにおいて実施される水素飽和反応は部分水素飽和であり、特に好ましくは第1軽質成分および第1重質成分は180℃の切断点を有する。
【0020】
好ましくは、本発明の水素溶解ユニットは、脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームによって形成される混合供給原料に対する水素の供給量の体積比(すなわち、水素の油に対する体積比)が30~200であり、より好ましくは50~150であり、運転温度が300~450℃であり、かつ、圧力が2~20MPaである条件下で運転される。
【0021】
本発明の方法によれば、水素溶解ユニットにおいて水素と混合した後に得られる混合材料を、上向き流動モードまたは下向き流動モードで第1反応ユニットに供給することができる。好ましくは、水素溶解ユニット中で水素と混合した後に得られる混合材料は、上向き流動モードで第1反応ユニット中に供給される。その結果、油中に溶解および分散した水素が集まって大きな気泡を形成し、反応中に逃げることが実質的に防止される。これにより、水素化反応に十分な水素源を提供することができ、より良好な水素化処理効果をもたらし、触媒のコーキング傾向をさらに低減し、触媒をより高い触媒活性に保ち、さらに触媒の耐用年数を延長し、装置の安定的な運転期間を延長する。
【0022】
第1軽質成分は、好ましくは接触分解ユニットに供給されて、低級オレフィンを生成する。低炭素オレフィンを製造するために接触分解ユニットに供給される第1軽質成分の具体的な運転条件は、本発明によっては特に限定されない。
【0023】
特に好ましくは、第2軽質成分および第2重質成分が350℃の切断点を有する。
【0024】
好ましくは、工程(2)において、脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームは、脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームから形成される混合供給原料の100℃における粘度が400mm2/s以下、より好ましくは200mm2/s以下、さらにより好ましくは100mm2/s以下となるような比率で使用される。
【0025】
工程(2)において、芳香族含有ストリームは、芳香族炭化水素および/または芳香族油をさらに含み、芳香族油はLCO、HCO、FGO(接触重質成分油)、エチレンタール、コールタール、コーカーディーゼル、およびコーカーワックス油からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
好ましくは、芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、多分岐ナフタレンおよび2より多い環を有する芳香族炭化水素、並びに好ましくは3つ以下の環を有する多環式芳香族炭化水素、またはそれらの混合物から選択される1つ以上である。特に好ましくは、芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、少なくとも1つのC1-6アルキル基で置換されたナフタレン、および三環式または高級芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0027】
より好ましくは、芳香族リッチ留分油中の芳香族炭化水素含有量が20重量%以上、好ましくは25重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。
【0028】
好ましくは、工程(2)において、脱油アスファルトは重油供給原料を溶剤脱アスファルトユニット中で溶媒脱アスファルト方法に供することによって得られる。
【0029】
好ましくは、溶剤脱アスファルトユニットにおいて、脱油アスファルトの収率は50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらにより好ましくは30重量%以下である。
【0030】
好ましい実施態様によれば、工程(2)において、芳香族含有ストリームは芳香族リッチ留分油であり、芳香族含有ストリームの量に対する脱油アスファルトの量の重量比は、1:10~50:10、より好ましくは2:10~30:10、より好ましくは3:10~15:10である。
【0031】
好ましくは、本発明の方法は、工程(42)で得られたコーカーディーゼル油および/またはコーカー軽油を、水素飽和のために工程(1)の第1反応ユニットに再循環させることをさらに含む。
【0032】
好ましくは、工程(1)において、第3反応ユニットは、固定床反応器、移動床反応器および沸騰床反応器のうちの少なくとも1つである。
【0033】
好ましくは、第3反応ユニットは、反応温度が200~420℃、反応圧力が2~18MPa、液時空間速度が0.3~10h-1、および油に対する水素の体積比が50~5000である条件下で運転される。さらに好ましくは、第3反応ユニットは、反応温度が220~400℃、反応圧力が2~15MPa、液時空間速度が0.3~5h-1、および油に対する水素の体積比が50~4000である条件下で運転される。
【0034】
当該第5変形例の第3反応ユニットについての好ましい実施形態を以下に示す。
【0035】
水素の存在下での芳香族リッチ留分油の部分水素飽和は、一般に、芳香族リッチ留分油のための部分水素飽和技術が固定床/沸騰床/移動床水素化処理技術である条件下で運転される。現在の工業的な固定床ディーゼルまたはワックス油水素化技術を例とすると、反応器または反応床層は、水素化精製触媒を少なくとも含む。芳香族リッチ留分油の部分的水素飽和に使用される水素化精製触媒は、好ましくは良好かつ適度な水素飽和活性を有し、これによりテトラリン様構造の水素供与能がより低いデカヒドロナフタレンまたはシクロアルカン構造へのさらなる飽和を回避する。これらの触媒としては、一般に、アルミナまたはモレキュラーシーブなどの多孔質耐火性無機酸化物を担体として使用し、第VIB族および/または第VIII族からの金属の酸化物または硫化物、例えばW、Mo、Co、Niなどを活性成分として使用し、例えばP、Si、F、Bなどの元素のような他の種々の補助剤が任意に添加され、例えば、RIPPによって開発されたRSシリーズの前処理触媒である。RSシリーズの触媒はNiMo触媒である。
【0036】
第1反応ユニットは、特に好ましくは残留油液相水素化反応器である。
【0037】
好ましくは、工程(2)において、第1反応ユニットは、反応温度が260~500℃、反応圧力が2.0~20.0MPa、第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.1:1~15:1、および液時空間速度が0.1~1.5h-1である条件下で運転される。液時体積空間速度および反応圧力は、処理される材料の性質、ならびに所望の変換および精製深度によって選択される。脱油アスファルトおよび芳香族含有ストリームによって形成される混合供給原料は、水素と混合された後に、触媒床層を上端から下に通過させて、第1反応ユニットの反応器の頂部から供給することができ;または触媒は、第1反応ユニットの反応器の底部から供給され、触媒床層を底部から頂部に通過する。
【0038】
好ましくは、工程(2)において、ミネラルリッチ前駆体材料は、担体と、前記担体に担持された活性成分元素と、を含む。ここで、担体は水酸化アルミニウム、アルミナおよびシリカからなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ、活性成分元素は第VIB族および第VIII族からなる群から選択される少なくとも1つの金属元素である。より好ましくは、ミネラルリッチ前駆体材料中の活性成分が第VIB族および第VIII族から選択される金属元素の酸化物および/または硫化物である。
【0039】
好ましくは、工程(2)において、ミネラルリッチ前駆体材料は強熱減量が3重量%以上であり、比表面積が80m2/g以上であり、かつ、吸水量が0.9g/g以上である。強熱減量とは、焼成前の重量と比較して600℃/2時間の焼成処理後のミネラルリッチ前駆体材料の重量が減少した割合をいう。吸水率とは、浸漬前の重量と比較して室温(例えば25℃)で30分間水への浸漬後のミネラルリッチ前駆体材料の重量が増加した割合をいう。
【0040】
好ましい実施形態によれば、工程(2)において、第1反応ユニットは反応物の流れ方向に続いて、第1ミネラルリッチ前駆体材料および第2ミネラルリッチ前駆体材料で連続的に充填される。第2ミネラルリッチ前駆体材料は第1ミネラルリッチ前駆体材料の強熱減量以上の強熱減量を有する。
【0041】
上述の好ましい実施形態によれば、さらに好ましくは、第1ミネラルリッチ前駆体材料は3~15重量%の強熱減量を有し、かつ、第2ミネラルリッチ前駆体材料は15重量%以上の強熱減量を有する。
【0042】
上述の好ましい実施形態によれば、さらに好ましくは、第1ミネラルリッチ前駆体材料および第2ミネラルリッチ前駆体材料は5:95~95:5の体積比で装填される。
【0043】
本発明の水素化触媒は異なる触媒の段階的な組み合わせであってもよく、好ましくは、水素化触媒は少なくとも水素化脱金属反応および水素化脱硫反応を触媒することができる。
【0044】
本発明によれば、水素化脱金属反応、水素化脱硫反応、水素化脱アスファルト反応、および水素化脱炭反応を触媒可能な特定の種類の触媒としては、特に限定されず、上述の反応を触媒可能であり、当該分野で従来から用いられている触媒を用いてもよい。
【0045】
本発明の水素化触媒は、例えば、担体として多孔質耐火性無機酸化物を使用することができ、活性成分として第VIB族および/または第VIII族の金属の酸化物または硫化物を使用することができ、さらに任意で補助剤を加えて使用することができる。
【0046】
好ましくは、第1反応ユニットを長期間運転した後、ミネラルリッチ前駆体材料をバナジウムリッチ材料に変換し、バナジウムリッチ材料中のバナジウム含有量を10重量%以上とし;特に好ましくは、鉱石リッチ(ore-rich)前駆体材料を20重量%以上のV含有量を有するバナジウムリッチ材料に変換し、そこから高価値のV2O5を直接的に精製することができる。
【0047】
本発明の第1反応ユニットの好ましい実施を以下に示す。
【0048】
本発明の第1反応ユニットに含まれる供給原料を水素化処理するための技術は、液相水素化処理技術である。反応器または反応床層はミネラルリッチ前駆体材料および/または水素化触媒を少なくとも含む。ミネラルリッチ前駆体材料は主に2つの部分によって構成される。2つの部分は、バナジウム含有有機化合物を油中に吸着する強力な能力を有する担体と、水素化活性機能を有する活性成分とである。担体は主として、シリカ、水酸化アルミニウム、または水酸化アルミニウム/アルミナの混合物を押し出し、成形し、さらに乾燥させることによって得られる。担体の表面は-OHに富む。この担体は、油中のバナジウム含有有機化合物に対して強い吸着能力を有する。この担体は、600℃で2時間焼成した後、強熱減量が5重量%以上である。活性成分は主に、W、Mo、Co、Niなどの第VIB族および/または第VIII族の金属の酸化物または硫化物を含む。
【0049】
上述の好ましい実施形態に関する水素化触媒は、一般に、重質残留水素化触媒である。重質残留水素化触媒は、重質残留の水素化脱金属、水素化脱硫、水素化脱炭などの機能を有する複合触媒を指す。これらの触媒には、一般に、担体としてアルミナなどの多孔質耐火性無機酸化物が使用され、活性成分として第VIB族および/または第VIII族からの金属、例えばW、Mo、Co、Niなどの酸化物または硫化物が使用され、P、Si、F、Bなどの元素のようなその他の様々な補助剤が任意に添加され、例えば、RIPPによって開発されたRDM、RCSシリーズの重金属、残留油の水素化脱金属触媒および脱硫触媒などである。現在、液相残油水素化技術では、複数の触媒を併用することが多い。本発明において、ミネラルリッチ前駆体材料、水素化脱金属脱硫触媒および水素化脱硫触媒が好ましく使用される。これらは一般に、供給原料がミネラルリッチ前駆体材料、水素化脱金属脱硫および水素化脱硫触媒と連続的に接触するような順序で装填される。もちろん、これらの触媒の混合物を装填する技術がある。
【0050】
好ましい実施形態によれば、工程(41)において、第2反応ユニットは水素分解ユニットであり、反応温度が360~420℃、反応圧力が10.0~18.0MPa、油に対する水素の体積比が600~2000、および液時空間速度が1.0~3.0h-1である条件下で操作される。
【0051】
好ましくは、水素化分解ユニットには少なくとも1つの水素化処理触媒および少なくとも1つの水素化分解触媒が装填される。
【0052】
好ましくは、水素化分解ユニットは固定床水素化分解ユニットである。
【0053】
第2反応ユニットが水素化分解ユニットである場合、本発明の第2反応ユニットについて好ましい実施形態が以下に提供される。
【0054】
工程(41)において、固定床水素化分解技術を用いて、第2軽質成分を反応用の第2反応ユニットに導入する。工業的な固定床によるワックス油の水素化分解の従来技術を例とすると、反応器または反応床層は少なくとも2つの水素化分解触媒、すなわち、前処理触媒および水素化分解触媒を含む。液相水素化処理とそれに続く分留から得られる材料は、金属、硫黄、および窒素の含有量が高く、炭素残留値が高いため、前処理触媒はその後に続く水素化分解触媒の活性を確保するために、脱金属活性が強く、脱硫活性および脱窒活性が良好であることが好ましい。水素化分解触媒は、好ましくは、良好な水素化分解活性および高いVGO転化率およびHDS活性を有する。これらの触媒には、一般にアルミナまたはモレキュラーシーブなどの多孔質耐火性無機酸化物を担体として使用し、例えばW、Mo、Co、Niなどの第VIB族および/または第VIII族の金属の酸化物または硫化物を活性成分として使用し、P、Si、F、Bなどの元素のような他の種々の補助剤を任意に添加し、例えば、RIPPによって開発されたRSシリーズの前処理触媒およびRHCシリーズの水素化分解触媒などである。RSシリーズ触媒はNiW触媒であり、RHCシリーズ触媒はNiMoモレキュラーシーブ触媒である。
【0055】
別の好ましい実施形態によれば、工程(41)において、第2反応ユニットは接触分解ユニットであり、接触分解ユニットは流動接触分解(FCC)ユニットである。
【0056】
別の好ましい実施形態によれば、第2軽質成分流動接触分解(FCC)技術、好ましくはRIPPによって開発されたLTAG技術に使用される技術および主にガソリン留分および液化ガスを生成する。
【0057】
好ましくは、流動接触分解装置は反応温度が500~600℃、油に対する触媒の比率が3~12、および滞留時間が0.6~6秒である条件下で運転される。
【0058】
本発明の油に対する触媒の比率は特に明記しない限り、油に対する触媒の重量比を示す。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、工程(41)において、第2反応ユニットはディーゼル水素化品質向上ユニットであり、反応温度が330~420℃、反応圧力が5.0~18.0MPa、油に対する水素の体積比が500~2000、および液時体積空間速度が0.3~3.0h-1である条件下で運転される。
【0060】
好ましくは、ディーゼル水素化品質向上ユニットに少なくとも1つのディーゼル水素化品質向上触媒が装填される。
【0061】
ディーゼル水素化品質向上触媒は、RIPPによって開発されたRSシリーズの前処理触媒およびRHC-100シリーズのディーゼル水素化分解触媒であってもよい。
【0062】
好ましい実施形態によれば、工程(42)において、第2重質成分は反応用の遅延コーキングユニットに導入され、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油および低硫黄石油コークスから選択される少なくとも1つの生成物を提供する。遅延コーキングユニットは、反応温度が440~520℃および滞留時間が0.1~4時間である条件下で運転される。
【0063】
別の好ましい実施形態によれば、工程(42)において、第2重質成分の硫黄含有量は1.8重量%以下であり、第2重質成分を反応用の遅延コーキングユニットに導入し、低硫黄石油コークスを提供する。より好ましくは、低硫黄石油コークスの硫黄含有量は3重量%以下である。
【0064】
好ましくは、工程(42)において、第2重質成分を低硫黄船舶用燃料油成分として使用し、低硫黄船舶用燃料油成分の硫黄含有量が0.5重量%以下となるように条件が制御される。
【0065】
本発明によれば、溶剤脱アスファルト処理の具体的な操作は特に限定されず、従来の溶剤脱アスファルト処理を用いることができる。溶剤脱アスファルト方法の運転パラメーターは本発明の実施例において例示されているが、これは当業者には本発明の限定として理解されるべきではない。
【0066】
本発明の方法は、雰囲気残留物および真空残留物の水素化変換に適している。特に、高含有量の金属(Ni+V>150μg/g、特にNi+V>200μg/g)、高含有量の炭素残渣(炭素残渣の重量留分>17%、特に炭素残渣の重量留分>20%)および高含有量の縮合環物質を有する貧弱な残留油の水素化変換に適している。
【0067】
上述のように、本発明の第2態様は、芳香族リッチ留分油を加工するためのシステムを提供する。前記システムは:第1軽質成分および第1重質成分を提供する、芳香族リッチ留分油上での水素飽和用および分留用の第3反応ユニット;前記脱油アスファルトと、前記第3反応ユニットからの前記第1重質成分を含む前記芳香族含有ストリームとを、水素とその中で混合するための、前記第3反応ユニットと流体連通する水素溶解ユニット;液相水素化反応ユニットであり、前記水素溶解ユニットからの混合材料の水素化反応をその中で実施するために使用される、前記水素溶解ユニットと流体連通する第1反応ユニット;前記第1反応ユニットからの液相生成物をその中で分留するための、前記第1反応ユニットと流体連通する分離ユニット;前記分離ユニット内で得られる前記第2軽質留分をその中で反応させるためのものであり、水素化分解ユニット、接触分解ユニット、およびディーゼル水素化品質向上ユニットからなる群から選択される少なくとも1つである、前記分離ユニットと流体連通する第2反応ユニット;前記分離ユニットから得られる前記第2重質成分をその中で反応させるためのものであり、コーカーガソリン、コーカーディーゼル、コーカーワックス油、および低硫黄石油コークスからなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供する、前記分離ユニットと流体連通する遅延コーキングユニット;および前記分離ユニットから得られた前記第2重質留分を低硫黄船舶燃料油留分としてシステムから排出するためのものである、前記分離ユニットと流体連通する出口;を含む。
【0068】
好ましくは、遅延コーキングユニットが水素溶解ユニットと流体連通しており、遅延コーキングユニットで得られたコーカー軽油および/またはコーカー軽油を第1反応ユニットに再循環させて戻す。
【0069】
好ましくは、前記システムは、水素溶解ユニットと流体連通する溶剤脱アスファルトユニットをさらに含む。溶剤脱アスファルトユニットは、重油供給原料をその中で溶剤脱アスファルト化するため、および、溶剤脱アスファルト化後に得られた脱アスファルト化アスファルトを水素溶解ユニットに導入するために使用される。
【0070】
好ましい実施形態によれば、本発明のシステムにおいて、第2反応ユニットは水素化分解ユニットである。
【0071】
別の好ましい実施形態によれば、本発明のシステムにおいて、第2反応ユニットは接触分解ユニットであり、接触分解ユニットは流動接触分解ユニットである。
【0072】
別の好ましい実施形態によれば、本発明のシステムにおいて、第2反応ユニットはディーゼル水素化品質向上ユニットである。
【0073】
本発明はまた、当該方法の第1変形を提供する。当該方法は:(11)溶剤脱アスファルト処理用の溶剤脱アスファルトユニットに重質原油を導入し、脱油アスファルトと脱アスファルト油を提供すること;(12)脱アスファルト油を水素化反応用の第4水素化ユニットに導入し、第4水素化ユニットで得られた液相流出液を反応用のDCCユニットに導入し、プロピレン、LCO、HCO及びスラリー油を提供することであり、ここで第4水素化ユニットは固定床水素化ユニットであり;(1)DCCユニットからのLCOおよび/またはHCOを含む芳香族リッチ留分油を工程(1)における芳香族リッチ留分油として使用すること、を含む。
【0074】
この第1の変形において、好ましくは、本発明の方法は、工程(42)で得られたコーカーディーゼル油および/またはコーカー軽油を水素飽和用の第3反応ユニットに再循環させることをさらに含む。
【0075】
好ましくは工程(12)において、第4反応ユニットは、反応温度が280~400℃、反応圧力が6.0~14.0MPa、油に対する水素の体積比が600~1200、および液時空間速度が0.3~2.0h-1である条件下で運転される。
【0076】
好ましくは、工程(12)において、第4反応ユニットに少なくとも2つの水素化触媒が装填される。より好ましくは、工程(12)において、水素化触媒は水素化脱金属反応、水素化脱硫反応、および水素化脱炭反応からなる群から選択される少なくとも1つの反応を触媒することができる触媒である。水素化触媒は、一般に、アルミナなどの多孔質耐火性無機酸化物上に担持される。特に好ましくは、工程(12)において、水素化触媒は、担体としてのアルミナと、活性成分元素としての第VIB族および/または第VIII族の金属元素とを含み、任意に、P、Si、FおよびBから選択される少なくとも1つの補助元素も含む。水素化触媒において、第VIB族および第VIII族の金属元素は、例えば、W、Mo、Co、Niなどであってもよい。水素化触媒において、活性成分は、上述の活性成分元素の酸化物および/または硫化物であってもよい。
【0077】
本発明の第4反応ユニットの好ましい実施形態を以下に示す:水素の存在下での脱アスファルト油(DAO)のための第3水素化ユニットの状態は、一般に以下の通りである:DAOの水素化処理技術が固定床水素化処理技術である。現在の工業的な固定床重油および残留油の水素化技術を例とすると、反応器または反応床層は少なくとも2つの水素化触媒を含む。重油および残留油の水素化触媒は、重油および残留油の両方に対して、水素化脱金属、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱炭などの機能を有する複合触媒を指す。これらの触媒には、一般に、担体としてアルミナなどの多孔質耐火性無機酸化物が使用され、活性成分として第VIB族および/または第VIII族の金属、例えばW、Mo、Co、Niなどの酸化物または硫化物が使用され、P、Si、F、Bなどの元素のようなその他の様々な補助剤が任意に添加され、例えばRIPPによって開発されたRDM、RCSシリーズの重金属、残留油の水素化脱金属触媒および脱硫触媒などである。現在の固定床残留油水素化技術において、複数の触媒が併用されることが多い。水素化脱金属触媒、水素化脱硫触媒および水素化脱窒触媒は、原油が水素化脱金属触媒、水素化脱硫触媒および水素化脱窒触媒と連続的に接触されるような一般的な装填順序で使用され、状況に応じて1つまたは2つの触媒が存在しないこともある。例えば、水素化脱金属触媒および水素化脱硫触媒のみが装填されるが、水素化脱窒素触媒は装填されない。もちろん、これらの触媒を混合物として装填する技術もある。
【0078】
本発明による芳香族リッチ留分油を加工する方法は、
図1および2を参照して以下にさらに詳細に記載される。
【0079】
図1に示されるように、芳香族リッチ留分油20は水素飽和用の第3反応ユニット21に供給され、続いて分留されて、第1軽質成分および第1重質成分22を提供する。重質油供給原料1は溶媒脱アスファルト処理のために溶媒脱アスファルトユニット2に供給され、脱油アスファルト4および脱アスファルト油3を提供する。脱油アスファルト4と、第1重質成分22を含む芳香族含有ストリームとは、混合供給原料6を形成するように混合され、これは水素溶解ユニット23において水素と混合される。得られた混合材料は水素化反応のために第1反応ユニット7に供給される。ここで、芳香族含有ストリームは好ましくは外部から芳香族炭化水素5も含み、第1反応ユニットは水素化脱金属反応、水素化脱硫反応、水素化脱アスファルト反応、および水素化脱炭反応から選択される少なくとも1つの反応を触媒することができるミネラルリッチ前駆体材料および水素化触媒を含む。第1反応ユニットは液相水素化反応ユニットである。第1反応ユニット7からの液相生成物は分留用の分離ユニット19に供給され、第2軽質成分8および第2重質成分9を提供する。第2軽質成分および第2重質成分は240~450℃の切断点を有する。第2軽質成分8は反応用の第2反応ユニット10に供給され、ガソリン成分13、BTX供給原料成分12およびディーゼル成分14から選択される少なくとも1つの生成物を提供する。第2反応ユニットは水素化分解ユニット、接触分解ユニットおよびディーゼル水素化品質向上ユニットから選択される少なくとも1つである。第2重質成分9は反応用の遅延コーキングユニット11に供給され、コーカーガソリン15、コーカーディーゼル16、コーカーワックス油17および低硫黄石油コークス18からなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供する。または、第2重質成分9は低硫黄船舶燃料油成分として使用される。
【0080】
図2に示すように、重油供給原料1を溶媒脱アスファルト処理用の溶媒脱アスファルトユニット2に供給し、脱油アスファルト4および脱アスファルト油3を提供する。脱アスファルト油3は水素化反応用の第4反応ユニット24に供給され、第4反応ユニット24で得られた液相流出物は反応用のDCCユニット25に供給され、プロピレン26、LCO27、HCO28および/またはスラリー油29を提供する。DCCユニットからのLCO27および/またはHCO28を含む芳香族リッチ留分油20を水素飽和用の第3反応ユニット21に供給し、続いて分留し、第1重質成分22および第1軽質成分を提供する;脱油アスファルト4と、第1重質成分22を含む芳香族含有ストリームとから形成された混合供給原料6を水素化反応用の第1反応ユニット7に供給し、芳香族含有ストリームはまた、好ましくは外側からの芳香族炭化水素5を含む。第1反応ユニット7は、ミネラルリッチ前駆体材料と、水素化脱金属反応、水素化脱硫反応、水素化脱アスファルト反応および水素化脱炭化反応から選択される少なくとも1つの反応を触媒することができる水素化触媒とを含む。第1反応ユニット7からの液相生成物は、分留用の分離ユニット19に供給されて、第2軽質成分8および第2重質成分9を提供する。第2軽質成分8を反応用の第2反応ユニット10に供給し、ガソリン成分13、BTX供給原料成分12、ディーゼル成分14からなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供する、または第2軽質成分8をDCCユニット25に再循環させて戻す。第2重質成分9を反応用の遅延コーキングユニット11に供給し、コーカーガソリン15、コーカーディーゼル16、コーカーワックス油17および低硫黄石油コークス18からなる群から選択される少なくとも1つの生成物を提供する。または、第2重質成分9を低硫黄船舶燃料油成分として使用する。
【0081】
本発明の技術は、重油を効率的に変換することを可能にし、ガソリンおよびBTX原料、並びに、低硫黄船舶燃料および低硫黄石油コークスを柔軟に製造するためのシステムおよび方法を製造することができる。
【0082】
従来技術と比較して、本発明は、残留油水素化、水素化分解、または接触分解等の方法の効果的な組み合わせを適用することが好ましい。その結果、価値の低いDOAを、低硫黄船舶燃料成分および低硫黄石油コークス原料に変換し、環境保全の要件を満たし、これにより、高効率、環境保全、および重質石油資源の総合的な利用を実現できる。
【0083】
加えて、本発明により提供される技術は、DOAが残留液相水素化反応器中で効率的に変換されることを可能にし、ガソリン留分およびBTX原料を生成することができ、低硫黄船舶燃料および低硫黄コークス生成物を製造するための原料を提供することができる。
【0084】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。以下の実施例は特に断らない限り、
図1に示す方法の流れを用いて行った。具体的に述べることがなければ、以下の実施例は、以下の一般的な特徴を有する:
以下の実施例の表I-3及び表II-4の結果は、特に断らない限り、100時間の装置の連続運転において25時間毎の試料採取試験から得られた結果の平均値であった。
【0085】
芳香族留分リッチ部分水素化の飽和実験を、中規模の固定床ディーゼル水素化処理装置で行い、反応器の全容積は200mLであった。以下の実施例において、芳香族リッチ留分油の部分水素飽和に使用した水素化触媒および材料は、RIPPによって開発されたRS-2100シリーズ水素化触媒であった。
【0086】
部分水素化飽和によって得られた液相ストリームを分留して、180℃の切断点を有する第1軽質成分および第1重質成分を得、ここで、第1重質成分およびDOAは混合供給原料を形成した。混合供給原料を中規模の重油液相水素化処理装置で水素化反応試験に供し、反応器の全容積は200mLであった。以下の実施例において、水素化触媒および第1反応ユニットで使用した材料は、RIPPが開発したRG-30B保護触媒、ならびに石油化学工学研究所(petrochemical engineering science research institute)が研究開発したミネラルリッチ前駆体材料1、ミネラルリッチ前駆体材料2、RDM-33B残油脱金属脱硫遷移触媒およびRCS-31脱硫触媒であった。反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料1、ミネラルリッチ前駆体材料2、水素化脱金属および脱硫触媒、ならびに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は、以下の通りであった:RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料1:ミネラルリッチ前駆体材料2:RDM-33B:RCS-31=6:30:30:14:20(V/V)。
【0087】
第2反応ユニットは固定床水素分解装置であり、使用した触媒は、RIPPによって開発されたRS-2100精製触媒、およびRHC-131水素分解触媒であった。固定床水素分解ユニットは、精製部の反応温度が370℃、分解部の反応温度が385℃、反応圧力が10MPa、液時体積空間速度が2.0h-1、および油に対する水素の体積比1200:1である条件下で運転した。
【0088】
[実施例A]
ミネラルリッチ前駆体材料1の調製:SINOPEC CATALYST CO., LTD.のCHANGLING DIVISIONによって製造されたRPB110シュードベーマイト(pseudoboehmite)2000gが使用され、うち1000gを550℃で2時間処理してアルミナ約700gが提供された。アルミナ約700g、及びもう一方のシュードベーマイト1000gを完全に混合した後、セスバニア(sesbania)粉末40gおよびクエン酸20gを添加し、脱イオン水2200gを添加した。その後、その混合物を混練し、ストリップ状に押出して成形し、300℃で3時間乾燥して約1730gの担体を得、これにMoおよびNiを含む溶液2100mLを添加して飽和含浸させた。ここで、溶液中のMo含有量は、MoO3として計算して5.5重量%であり、Ni含有量は、NiOとして計算して1.5重量%であった。30分間の含浸後に180℃で4時間処理して、ミネラルリッチ前駆体材料1を得、その特性を表I-6に示した。
【0089】
ミネラルリッチ前駆体材料2の調製:SINOPEC CATALYST CO., LTD.のCHANGLING DIVISIONによって製造されたRPB220シュードベーマイト2000gが使用され、セスバニア粉末30gおよびクエン酸30gを添加し、脱イオン水2400gを添加した。その後、その混合物を混練し、ストリップ状に押出して成形し、120℃で5時間乾燥させて約2040gの担体を得、これにMoおよびNiを含む溶液2200mLを加えて飽和含浸させた。ここで、溶液中のMo含有量は、MoO3として計算して7.5重量%、Ni含有量は、NiOとして計算して1.7重量%であった。30分間の含浸後、200℃で3時間処理して、ミネラルリッチ前駆体材料2を得、その特性を表I-6に示した。
【0090】
ミネラルリッチ前駆体材料3の調製:市販のシリカ2000gを使用し、セスバニア粉末30gおよび水酸化ナトリウム30gを添加し、脱イオン水2400gを添加した。その後、その混合物を混練し、成形のためにストリップ状に押出し、120℃で5時間乾燥させて担体を得、これにMoおよびNiを含む溶液2200mLを添加して飽和含浸させた。ここで、溶液中のMo含有量は、MoO3として計算して4.5重量%であり、Ni含有量は、NiOとして計算して1.0重量%であった。30分間の含浸後、200℃で3時間処理して、ミネラルリッチ前駆体材料3を得、その特性を表I-6に示した。
【0091】
[実施例I-1]
この実施例においては、上海石油化学のRLG工場由来のLCOを芳香族リッチ留分油として使用し、LCO水素化は、反応温度が290℃、反応圧力が4MPaの、液時体積空間速度が1h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下で運転した。
【0092】
LCOおよび第1重質成分1の特性を表I-1に示した。
【0093】
真空残渣由来のDOAを、1:10の重量比で第1重質成分1と混合し、混合供給原料の特性を表I-2に示した。
【0094】
まず、DOAと第1重質成分1との混合供給原料を、水素分解ユニット(脱油アスファルトと重質成分1とによって形成される混合供給原料に対する水素の供給量の体積比は100、水素分解ユニットの運転温度は320℃、圧力は10MPa)で水素と混合し、得られた混合材料を第1反応装置に供給した。第1反応ユニットは、反応温度が360℃、反応圧力が10MPa、液時体積空間速度が0.6h-1、第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で操作した。水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0095】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0096】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0097】
[実施例I-2]
上海石油化学の接触分解装置からのHCOをこの実施例の芳香族リッチ留分油として使用し、ここでHCO水素化は、反応温度が330℃、反応圧力が6MPa、液時体積空間速度が1h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下で運転した。
【0098】
HCOおよび第1重質成分2の特性を表I-1に示した。
【0099】
真空残渣由来のDOAを、5:10の重量比で第1重質成分2と混合し、混合供給原料の特性を表I-2に示した。
【0100】
まず、DOAと水素化HCOとの混合供給原料である第1重質成分2を水素分解ユニット(脱油アスファルトと第1重質成分2とによって形成される混合供給原料に対する水素の供給量の体積比は100、水素分解ユニットの運転温度は320℃、圧力は10MPa)で水素と混合し、得られた混合材料を第1反応装置に供給した。第1反応ユニットは、反応温度が380℃、反応圧力が10MPa、液時体積空間速度が0.6h-1、第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0101】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0102】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0103】
[実施例I-3]
本実施例では、芳香族リッチ留分油として実施例I-1と同様のLCOを用い、反応温度が320℃、反応圧力が6MPa、液時体積空間速度が1h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下でLCO水素化を行った。
【0104】
LCOおよび第1重質成分3の特性を表I-1に示した。LCO特性および第1重質物3の特性を表I-1に示した。
【0105】
DOAは真空残渣由来のものであり、10:10の重量比で第1重質成分3と混合され、混合供給原料の特性は表I-2に示した。
【0106】
まず、DOAと第1重質成分3との混合供給原料を、水素分解ユニット(脱油アスファルトと第1重質成分3とによって形成される混合供給原料に対する水素の供給量の体積比は100、水素分解ユニットの運転温度は320℃、圧力は8MPa)で水素と混合し、得られた混合材料を第1反応装置に供給した。第1反応ユニットは、反応温度が370℃、反応圧力が8MPa、液時体積空間速度が0.6h-1、第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0107】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0108】
第2重質成分を反応温度500℃で0.5時間コークス化反応に供し、2.7重量%の硫黄含有量を有する石油コークス(収率32重量%)を得た。
【0109】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0110】
[実施例I-4]
実施例I-4で使用した芳香族リッチ留分油は、中国のコールタールユニットからのコールタールであった。コールタールの水素化は、反応温度が300℃、反応圧力が10MPa、液時体積空間速度が0.8h-1、油に対する水素の体積比が800:1である条件下で行った。
【0111】
コールタールおよび第1重質成分4の特性を表I-1に示した。
【0112】
真空残渣由来のDOAを、15:10の重量比で第1重質成分4と混合し、混合供給原料の特性を表I-2に示した。
【0113】
まず、DOAと第1重質成分4との混合供給原料を、水素分解ユニット(脱油アスファルトと第1重質成分4とによって形成される混合材料に対する水素の供給量の体積比は100、水素分解ユニットの運転温度は320℃、圧力は12MPa)で水素と混合し、得られた混合材料を第1反応ユニットに供給した。第1反応ユニットは、反応温度が350℃、反応圧力が12MPa、液時体積空間速度が0.6h-1、第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が2:1である条件下で運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0114】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0115】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0116】
[実施例I-5]
以下の条件以外は、実施例I-3と同様の方法を使用した:
この実施例において、第1反応ユニットの水素化処理は395℃で運転した。
【0117】
他の状態は実施例I-3と同じであった。
【0118】
水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0119】
得られた第2重質成分の350℃以上での主な物理化学的特性を表I-3に示した。
【0120】
[実施例I-6]
実施例I-6のための重油液相水素化処理装置の供給原料、触媒の装填量および運転条件について、以下の事項以外は実施例I-1と同じであった:
実施例I-1と同様の混合供給原料を液相重油水素化に供した後、30日毎に反応温度を3℃上昇させ、水素化試験運転の360日後に運転を停止した。
【0121】
反応器に最初に装填されたミネラルリッチ前駆体材料1およびミネラルリッチ前駆体材料2は、反応後に、焙焼分析後にそれぞれ76重量%および71重量%のV含有量を有するVリッチ材料1およびVリッチ材料2となり、天然鉱石のV含有量よりも10倍以上高いV含有量を表し、したがって、高価値のV2O5を調製するための高品質材料であった。
【0122】
[実施例I-7]
小規模接触分解固定流動床試験装置において、実施例I-3から350℃未満で第2軽質成分について接触分解試験を行った。ここで、触媒は、SINOPEC CATALYST CO., LTD.CHANGLING DIVISION.によって製造された接触分解触媒MLC-500であった。流動触媒ユニットを反応温度が540℃、油に対する触媒の比率が6、滞留時間が2秒である条件下で運転した。
【0123】
その結果、収率42重量%の製品ガソリンが得られ、そのRONオクタン価は92であった。
【0124】
[実施例I-8]
本実施例において、得られた第2重質成分を遅延コーキングユニットに供給して反応させ、コーカーガソリン、コーカーディーゼルおよびコーカーワックス油を得たことを除いて、手順は実施例I-1の手順と同様であった。
【0125】
遅延コーキングユニットは、510℃の反応温度および0.6時間の滞留時間である条件下で運転した。
【0126】
コーカーディーゼルの硫黄含有量は0.26重量%、凝縮点は-11℃、セタン価は48であった。
【0127】
コーカーワックス油の硫黄含量は1.12重量%、凝縮点は32℃であった。
【0128】
コーカーガソリンは、収率14.7%、硫黄含有量0.10重量%、MON61.8で得られた。
【0129】
コーカーディーゼルおよびコーカーワックス油を第3反応ユニットに再循環させ、水素化処理のためにLCO 1と混合したが、その反応条件は実施例I-1と同じであった。
【0130】
コーカーディーゼルと、コーカーワックス油と、LCOとの混合油の特性および第1重質成分8の特性を表I-1に示した。
【0131】
真空残渣由来のDOAを、1:10の重量比で第1重質成分8と混合し、混合供給原料の特性を表I-2に示した。
【0132】
まず、DOAと第1重質成分8との混合材料を、水素分解ユニット(脱油アスファルトと第1重質成分8とによって形成される混合供給原料に対する水素の供給量の体積比は100、水素分解ユニットの運転温度は320℃、圧力は8MPa)で水素と混合し、得られた混合材料を第1反応ユニットに供給した。第1反応ユニットは、反応温度が360℃、反応圧力が8MPa、液時体積空間速度が0.3h-1、第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0133】
第1反応ユニットから得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0134】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0135】
[実施例I-9]
ディーゼル水素分解装置を用いて、実施例I-1から得られた350℃未満の第2軽質成分について試験を行い、ディーゼル成分を得た。
【0136】
運転条件は、反応温度が360℃、反応圧力が10MPa、油に対する水素の体積比が1000、液時体積空間速度が1.0h-1であることを含んでいた。
【0137】
その結果、ディーゼル成分の硫黄含有量は5ppm、凝縮点は-32℃、セタン価は53であった。
【0138】
[実施例I-10]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例I-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料1、水素化脱金属および脱硫触媒、並びに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は以下の通りであった:RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料1:RDM-33B:RCS-31=6:60:14:20(V/V)。
【0139】
水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0140】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0141】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0142】
[実施例I-11]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例I-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料2、ミネラルリッチ前駆体材料1、水素化脱金属および脱硫触媒、ならびに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は、以下の通りであった:RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料2:ミネラルリッチ前駆体材料1:RDM-33B:RCS-31=6:30:30:14:20(V/V)。
【0143】
水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0144】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0145】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0146】
[実施例I-12]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例I-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、水素化脱金属および脱硫触媒、並びに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は以下の通りであった:RG-30B:RDM-33B:RCS-31=15:35:50(V/V)。
【0147】
水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0148】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0149】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0150】
[実施例I-13]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例I-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料3、水素化脱金属および脱硫触媒、並びに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は、以下の通りであった:RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料3:RDM-33B:RCS-31=10:40:20:30(V/V)。
【0151】
水素化後、混合供給原料の特性を表I-3に示した。
【0152】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0153】
350℃未満の温度での第2軽質成分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0154】
[比較例I-1]
触媒および装置は、以下の事項以外は実施例I-1と同様であった:
比較例では、芳香族リッチ留分油QY(芳香族含量20重量%)を、部分水素飽和ユニットを通さずにDOAと直接的に混合した。DOAおよびQYを1:10の重量比で混合し、混合供給原料特性を表I-2に示した。
【0155】
実施例I-1と同様に、本比較例の混合供給原料をまず水素分解ユニットで水素と混合し、得られた混合物は、それを水素化処理する第1反応ユニットに供給した。生成物の特性を表I-3に示した。
【0156】
第1反応ユニットによる水素化処理から得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0157】
350℃未満の温度での第2軽質成分を固定床水素分解ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0158】
[比較例I-2]
触媒および装置は、以下の事項以外は実施例I-1と同様であった:
比較例では、芳香族リッチ留分油QYが部分的水素化飽和ユニットを通さずにDOAと直接的に混合された。DOAおよびQYを2:10の重量比で混合し、混合供給原料特性を表I-2に示した。
【0159】
実施例I-1と同様に、本比較例の混合供給原料をまず水素分解ユニットで水素と混合し、得られた混合物は、それを水素化処理する第1反応ユニットに供給した。水生成物の特性を表I-3に示した。
【0160】
第1反応ユニットによる水素化処理から得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表I-4に示した。
【0161】
350℃未満の温度での第2軽質成分を固定床水素分解ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表I-5に示した。
【0162】
[比較例I-3]
触媒および装置は、以下の事項以外は実施例I-1と同様であった:
比較例では、芳香族リッチ留分油QYが部分的水素化飽和ユニットを通さずにDOAと直接的に混合された。DOAとQYを3:10の重量比で混合した。混合供給原料は大量の固形分(100℃)を含んでいたので、次の実験は実施できなかった。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
[実施例B]
溶媒脱アスファルトは供給原料として真空残渣を用いて行い、溶媒はブタン(ブタン含有量70重量%)を含む炭化水素混合物であり、溶媒脱アスファルトは120℃で行い、溶媒:真空残渣=3:1(重量比)であり、70重量%の収率でDAOが得られ、30重量%の収率でDOAが得られた。
【0171】
得られたDAOおよびDOAの特性を表II-1に示した。
【0172】
得られたDAOおよびDOAの特性を表II-1に示した。
【0173】
[実施例II-1]
本実施例に使用したDAOおよびDOAは、実施例II-B由来のものであった。
【0174】
第4反応ユニットで水素化反応に供されたDAOから得られた液相生成物の特性を表II-1に示した。液体生成物は反応用のDCCユニットに供給され、LCO1およびHCO1を得た。
【0175】
LCO1は、第3反応ユニットにおいて水素化飽和に供され、次いで分留されて、第1軽質成分1および第1重質成分1を得た。
【0176】
第3反応ユニットの水素化は、反応温度が290℃、反応圧力が4MPa、液時体積空間速度が1h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下で運転した。LCO1および第1重質成分1の特性を表II-2に示した。
【0177】
DOAと第1重質成分1とを重量比1:10で混合し、混合供給原料の特性を表II-3に示した。
【0178】
DOAと第1重質成分1とを水素分解ユニットで水素と混合し、混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)とした。混合材料については、反応温度が360℃、反応圧力が10MPa、液時体積空間速度が0.3h-1、および第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で第1反応ユニットを運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0179】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0180】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0181】
[実施例II-2]
本実施例に使用したDAOおよびDOAは、実施例II-B由来のものであった。
【0182】
第4反応ユニットで水素化反応に供されたDAOから得られた液相生成物の特性を表II-1に示した。液体生成物を反応用のDCCユニットに供給して、LCO2およびHCO2を得た。
【0183】
HCO2は、第3反応ユニットにおいて水素化飽和に供され、次いで分留されて、第1軽質成分2および第1重質成分2を提供した。第3反応ユニットの水素化は、反応温度が330℃、反応圧力が6MPa、液時体積空間速度が1h-1、および油に対する水素の体積比が800:1の条件下で運転した。HCO2および第1重質成分2の特性を表II-2に示した。
【0184】
DOAと第1重質成分2とを重量比5:10で混合し、混合供給原料の特性を表II-3に示した。
【0185】
DOAと第1重質成分2とを水素分解ユニットで水素と混合し、混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)を得た。混合材料については、反応温度が380℃、反応圧力が8MPa、液時体積空間速度が0.3h-1、および第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で第1反応ユニットを運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0186】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2の重質成分の特性を表II-5に示した。
【0187】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0188】
[実施例II-3]
実施例に使用したDAOおよびDOAは、実施例II-B由来のものであった。
【0189】
第4反応ユニットで水素化反応を行ったDAOから得られた液相生成物の特性を表II-1に示した。液相生成物を反応用のDCCユニット(実施例II-1と同じ運転条件下)に供給して、LCO1およびHCO1を得た。
【0190】
LCO1を第3反応ユニットで水素化飽和させ、次いで分留して、第1軽質成分3および第1重質成分3を得た。第3反応ユニットの水素化は、反応温度が320℃、反応圧力が6MPa、液時体積空間速度が1h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下で運転した。LCO1および第1重質成分3の特性を表II-2に示した。
【0191】
DOAと第1重質成分3とを重量比10:10で混合し、混合供給原料の特性を表II-3に示した。
【0192】
DOAと第1重質成分3とを水素分解ユニットで水素と混合し、混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)を得た。混合材料のために、反応温度が370℃、反応圧力が8MPa、液時体積空間速度が0.3h-1、および第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で第1反応ユニットを運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0193】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0194】
第2重質成分を反応温度500℃で0.5時間、コークス化反応に供し、2.7重量%の硫黄含有量を有する石油コークス(収率31重量%)を得た。
【0195】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0196】
[実施例II-4]
本実施例に使用したDAOおよびDOAは、実施例II-B由来のものであった。
【0197】
第4反応ユニットで水素化反応に供されたDAOから得られた液相生成物の特性を表II-1に示した。液相生成物を反応用のDCCユニット(実施例II-1と同じ運転条件下)に供給して、LCO1およびHCO1を得た。
【0198】
本実施例で使用した芳香族リッチ留分油は、中国のコールタールユニットおよびLCO1に由来するコールタール(表II-1に示す特性)であった。LCO1およびコールタールを1:1の重量比で使用した。芳香族リッチ留分油を第3反応ユニットで水素飽和に供し、次いで分留して、第1軽質成分4および第1重質成分4を得た。第3反応ユニットの水素化は、反応温度が300℃、反応圧力が10MPa、液時体積空間速度が0.8h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下で運転した。芳香族リッチ留分油および第1重質成分4の特性を表II-2に示した。
【0199】
DOAと第1重質成分4とを15:10の重量比で混合し、混合供給原料の特性を表II3に示した。
【0200】
DOAと第1重質成分4とを水素分解ユニットで水素と混合し、混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)を得た。混合材料のために、反応温度が350℃、反応圧力が12MPa、液時体積空間速度が0.3h-1、および第1反応ユニットの入口における原油に対する再循環油の体積比が0.5:1である条件下で第1反応ユニットを運転した。水素化後、混合原料の特性を表II-4に示した。
【0201】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0202】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0203】
[実施例II-5]
以下の事項以外は、実施例II-3と同様の方法を用いた:
この実施例においては、第1反応ユニットの水素化処理は395℃で運転した。
【0204】
他の条件は実施例II-3と同様である。
【0205】
水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0206】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0207】
[実施例II-6]
触媒の装填量および水素化処理条件は、実施例II-4と同様であった。
【0208】
実施例II-4と同様の混合供給原料を第1反応ユニットで水素化処理に供した後、30日毎に反応温度を3℃上昇させ、水素化試験運転360日後に運転を停止した。
【0209】
反応器に最初に装填されたミネラルリッチ前駆体材料1およびミネラルリッチ前駆体材料2は、反応後に、焙焼分析後にそれぞれ69重量%および60重量%のV含有量を有するVリッチ材料1およびVリッチ材料2となり、したがって、これらは、高い価値を有するV2O5を調製するための高品質材料であった。
【0210】
[実施例II-7]
小規模接触分解固定流動床試験装置において、実施例II-3から350℃未満で第2軽質成分について接触分解試験を行った。ここで、触媒は、SINOPEC CATALYST CO., LTD..CHANGLING DIVISIONによって製造された接触分解触媒MLC-500であった。反応温度が540℃、油に対する触媒の比率が6、滞留時間が3秒である条件下で流動触媒ユニットを運転した。
【0211】
その結果、収率40重量%の製品ガソリンが得られ、そのRONオクタン価は93であった。
【0212】
[実施例II-8]
本実施例において、得られた第2重質成分を反応用の遅延コーキングユニットに供給して、コーカーガソリン、コーカーディーゼルおよびコーカーワックス油を提供したことを除いて、手順は実施例II-1の手順と同様であった。
【0213】
遅延コーキングユニットは、510℃の反応温度および0.6時間の滞留時間の条件下で運転した。
【0214】
コーカーディーゼルの硫黄含有量は0.26重量%、凝縮点は-11℃、セタン価は48であった。
【0215】
コーカーワックス油の硫黄含量は1.12重量%、凝縮点は32℃であった。
【0216】
コーカーガソリンは、収率14.7%、硫黄含有量0.10重量%、MON61.8で得られた。
【0217】
コーカーディーゼルおよびコーカーワックス油は第3の反応ユニットに再循環され、水素飽和のためにLCO 1と混合され、次いで分留されて、180℃の切断点を有する第1軽質成分8および第1重質成分8を提供し、そのための反応条件は、実施例II-1のものと同じであった。コーカーディーゼル、コーカーワックス油、LCO1の混合油の特性および第1重質成分8の特性を表II-2に示した。
【0218】
実施例II-B由来のDOAと第1重質成分8とを1:10の質量比率で混合し、混合供給原料の特性を表II-3に示した。
【0219】
DOAと第1重質成分8とを水素分解ユニットで水素と混合し、混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)を得た。第1反応ユニットは、反応温度が360℃、反応圧力が8MPa、液時体積空間速度が0.3h-1、および油に対する水素の体積比が800:1である条件下で運転した。水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0220】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の性質を表II-5に示した。
【0221】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0222】
[実施例II-9]
ディーゼル水素化品質向上装置で、実施例II-1から得た第2軽質成分を350℃未満の温度で試験し、ディーゼル成分を得た。
【0223】
ディーゼル水素化品質向上装置は、反応温度が360℃、反応圧力が12MPa、油に対する水素の体積比が1000、液時体積空間速度が1.0h-1である条件下で運転した。
【0224】
その結果、ディーゼル成分の硫黄含有量は5ppm、凝縮点は-33℃、セタン価は53であった。
【0225】
[実施例II-10]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例II-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料1、水素化脱金属および脱硫触媒、並びに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は以下の通りであった:RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料1:RDM-33B:RCS-31=6:60:14:20(V/V)。
【0226】
水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0227】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0228】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0229】
[実施例II-11]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例II-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料2、ミネラルリッチ前駆体材料1、水素化脱金属および脱硫触媒、ならびに水素化脱硫触媒を順次装填した。第1反応ユニットにおいて、触媒間の装填比率は、以下の通りであった:RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料2:ミネラルリッチ前駆体材料1:RDM-33B:RCS-31=6:30:30:14:20(V/V)。
【0230】
水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0231】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0232】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0233】
[実施例II-12]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例II-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、水素化脱金属および脱硫触媒、水素化脱硫触媒を連続的に装填した。触媒間の装填比率は、RG-30B:RDM-33B:RCS-31=15:40:45(V/V)であった。
【0234】
水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0235】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0236】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0237】
[実施例II-13]
本実施例において、第1反応ユニットにおける触媒の装填が以下の通りであったことを除いて、手順は実施例II-1の手順と同様であった:
反応物の流れ方向に応じて、水素化保護触媒、ミネラルリッチ前駆体材料3、水素化脱金属および脱硫触媒、並びに水素化脱硫触媒を連続的に装填した。触媒間の装填比率は、RG-30B:ミネラルリッチ前駆体材料3:RDM-33B:RCS-31=10:40:25:35(V/V)であった。
【0238】
水素化後、混合供給原料の特性を表II-4に示した。
【0239】
第1反応ユニットの処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0240】
350℃未満の温度での第2の軽質留分を第2の反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0241】
[比較例II-1]
触媒および装置は、以下の事項以外は実施例II-1と同様であった:
比較例では、芳香族リッチ留分油QY(芳香族含量20重量%)を、部分水素飽和ユニットを通さずにDOAと直接的に混合した。DOAとQYとを重量比1:10で混合し、混合供給原料の特性を表II-3に示した。
【0242】
この混合材料を水素分解ユニットで水素と混合し、得られた混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)を第1反応ユニットで水素化処理し、その生成物の特性を表II-4に示した。
【0243】
第1反応ユニットの水素化処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の性質を表II-5に示した。
【0244】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0245】
[比較例II-2]
触媒および装置は、以下の事項以外は実施例II-1と同様であった:
比較例では、芳香族リッチ留分油QYを、部分的水素飽和ユニットを通さずにDOAと直接的に混合した。DOAとQYとを重量比2:10で混合し、混合供給原料の特性を表II-3に示した。
【0246】
この混合材料を水素分解ユニットで水素と混合し、得られた混合材料(その中の水素含有量を表II-3に示す)を第1反応ユニットで水素化処理し、その生成物の特性を表II-4に示した。
【0247】
第1反応ユニットの水素化処理によって得られた液相生成物を分留し、350℃以上の温度での第2重質成分の特性を表II-5に示した。
【0248】
350℃未満の温度での第2軽質留分を第2反応ユニットで試験し、水素分解生成物を得、その特性を表II-6に示した。
【0249】
[比較例II-3]
触媒および装置は、以下の事項以外は実施例II-1と同様であった:
比較例II-3では、芳香族リッチ留分油QYを、部分水素飽和ユニットを通さずにDOAと直接的に混合した。DOAとQYを3:10の重量比で混合した。混合供給原料は大量の固形分(100℃)を含んでいたので、次の実験は実施できなかった。
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
これらの結果から、本発明の技術は、DOA由来の低硫黄船舶燃料または低硫黄コークス製品を製造するための高品質原料を可能にすると理解される。
【0259】
さらに、本発明の技術は、国家V基準を満たす高品質のガソリン製品を提供することができる。
【0260】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内で、様々な技術的特徴が任意の他の適切な方法で組み合わされることを含めて、本発明の技術的解決策に多くの単純な修正を行うことができ、これらの単純な修正および組み合わせも本発明の開示とみなされるべきであり、すべて本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態によって芳香族リッチ留分油を加工するためのフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態によって芳香族リッチ留分油を加工するためのフローチャートである。
【国際調査報告】