IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院の特許一覧

特表2023-501196ビフェノール金属錯体、その製造方法およびその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ビフェノール金属錯体、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20230111BHJP
   C07F 7/28 20060101ALI20230111BHJP
   C07D 311/82 20060101ALI20230111BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230111BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C07F17/00 CSP
C07F7/28 F
C07D311/82
C08F10/00
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525125
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2020124376
(87)【国際公開番号】W WO2021083207
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911032074.2
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911032096.9
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911032105.4
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911033274.X
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911033277.3
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】韓書亮
(72)【発明者】
【氏名】李昊坤
(72)【発明者】
【氏名】宋文波
(72)【発明者】
【氏名】金▲ザオ▼
(72)【発明者】
【氏名】王路生
(72)【発明者】
【氏名】方園園
【テーマコード(参考)】
4H049
4H050
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN05
4H049VP01
4H049VQ08
4H049VR21
4H049VR32
4H049VR41
4H049VU33
4H049VW01
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB40
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100AA19Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA24
4J100FA09
4J100FA10
4J128AA02
4J128AB02
4J128AC01
4J128AC10
4J128AD01
4J128AD11
4J128AD13
4J128AD23
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB00B
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA19
(57)【要約】
ビフェノール金属錯体が本発明で開示される。その構造は、式I(式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルから選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルから選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基もまた任意に結合して環を形成しており;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属から選択され;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリドイオン、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルリン、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルまたはこれらの組合せからなる群から選択され;mおよびnはそれぞれ独立して、1~4の整数であり;Lは2価の結合基である)で表される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成しており;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属であり;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリド、アミド、アルコキシド、アルキルスルフィド、アルキルホスフィド、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルおよびこれらの組合せからなる群から選択され;mおよびnは独立して、1~4の整数であり;Lは2価の結合基である)で表される構造を有する、
ビスフェノール金属錯体。
【請求項2】
式Ia
【化2】

(式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成しており;RおよびRはそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;Rそれぞれは独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属であり;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリド、アミド、アルコキシド、アルキルスルフィド、アルキルホスフィド、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルおよびこれらの組合せからなる群から選択され;mおよびnは独立して、1~4の整数である)で表される構造を有する、
請求項1に記載のビスフェノール金属錯体。
【請求項3】
式Ib
【化3】

(式中、R、R´、R、R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成しており;RおよびRはそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属であり;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリド、アミド、アルコキシド、アルキルスルフィド、アルキルホスフィド、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルおよびこれらの組合せからなる群から選択される)で表される構造を有する、
請求項1に記載のビスフェノール金属錯体。
【請求項4】
以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:
-式I、IaおよびIbにおいて、R、R´、R、R´はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C20アルキル、および置換または非置換のC~C20アリールからなる群から選択され、好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~Cアルキルからなる群から選択される;
-式I、IaおよびIbにおいて、R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C20アルキルからなる群から選択され、好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~Cアルキルからなる群から選択される;
-式IaおよびIbにおいて、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C20アルキルからなる群から選択され、好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~Cアルキルからなる群から選択される;
-式I、IaおよびIbにおいて、MおよびM´はそれぞれ独立して、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択され、好ましくはチタンである;ならびに、
-式I、IaおよびIbにおいて、Xそれぞれは独立して、メチル、フルオライド、クロライド、ブロマイドおよびヨーダイドからなる群から選択され、好ましくはメチルまたはクロライドである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のビスフェノール金属錯体。
【請求項5】
式Ibで表される以下の錯体から選択される少なくとも1つである、請求項3に記載のビスフェノール金属錯体:
【化4】

-ビスフェノール金属錯体1:R=R=R´=R´=Me、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体2:R=R=R´=R´=Et、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体3:R=R=R´=R´=iPr、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体4:R=R=R´=R´=tBu、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体5:R=R=R´=R´=Me、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体6:R=R=R´=R´=Et、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体7:R=R=R´=R´=iPr、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
-ビスフェノール金属錯体8:R=R=R´=R´=tBu、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
および、X=メチルである、対応する化合物。
【請求項6】
請求項1に記載のビスフェノール金属錯体の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
1)対応するビスフェノール化合物を強塩基と反応させて、ビスフェノール二塩を形成する工程;および、
2)前記ビスフェノール二塩を式Vで表される金属錯体と反応させて、式Iで表される前記ビスフェノール金属錯体を得る工程
【化5】

(式中、R~R、MおよびXは、請求項1の式Iに対して定義されたものと同じ意味を有する)。
【請求項7】
請求項3に記載のビスフェノール金属錯体の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
1)式IIで表されるビスフェノール化合物を式IIIで表される金属化合物と反応させて、式IVで表されるビスフェノール二塩を得る工程;および、
2)式IVで表される前記ビスフェノール二塩化合物を式Vで表される金属錯体と反応させて、式Ibで表される前記ビスフェノール金属錯体を得る工程
【化6】

(式IIおよび式IVにおいて、R、R´、R、R´、RおよびRは請求項7の式Ibに対して定義されたものと同じ意味を有し;
式IIIにおいて、Mは第IA族の金属であり、好ましくはリチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC~C10アルキルであり;
式Vにおいて、R~R、MおよびXは、請求項7の式Ibに対して定義されたものと同じ意味を有する)。
【請求項8】
以下の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項7に記載の方法:
-式IIで表される前記ビスフェノール化合物と式IIIで表される前記化合物とのモル比は、1:(1~20)であり、好ましくは1:(4~8)である;
-式IIで表される前記ビスフェノール化合物と式IIIで表される前記化合物との反応の反応温度は、-78℃~60℃であり、好ましくは-10℃~40℃である;
-式IIで表される前記ビスフェノール化合物と式IIIで表される前記化合物との反応の反応時間は、1~10時間であり、好ましくは1.5~3時間である;
-式IVで表される前記化合物と式Vで表される前記金属化合物とのモル比は、1:(1.8~2.4)であり、好ましくは1:2である;
-式IVで表される前記化合物と式Vで表される前記金属化合物との反応の反応温度は、-78℃~60℃であり、好ましくは-10℃~40℃である;
-式IVで表される前記化合物と式Vで表される前記金属化合物との反応の反応時間は、6~24時間であり、好ましくは8~16時間である。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のビスフェノール金属錯体の、オレフィン重合における、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2019年10月28日に出願されたCN201911032105.4、CN201911033274.X、CN201911032074.2、CN201911032096.9およびCN201911033277.3の優先権を主張し、これらはすべての目的のために全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ビスフェノール金属錯体ならびにその製造方法および用途に関し、有機合成の分野に属する。
【0003】
〔従来の技術〕
チーグラー・ナッタ触媒に代表される配位重合触媒の適用は、ポリオレフィン産業の急速な発展を促進した。今日、溶液重合用金属触媒の開発は、配位重合の分野における研究のホットスポットの1つとなっており、フェノール配位子系遷移金属触媒はその1つのクラスに属する。このクラスの触媒は、オレフィン重合に対して良好な触媒活性を有する。例えば、2,6-ジイソプロピルフェノキシチタン触媒は、エチレンの単独重合を成功裏に実現し、直鎖のポリエチレンを得(Nomura K, Naga N, Miki M, et al., Macromolecules 1998, 31, 7588-7597)、エチレンとα-オレフィンとの共重合に使用される場合、高いα-オレフィン含有量を有するコポリマーを得ることができ、これは熱可塑性エラストマーであり得る。
【0004】
同時に、活性酵素触媒の研究結果に基づいて、相乗触媒が徐々に開発されてきた。ダブルジルコニウム金属触媒を用いた場合、シングルジルコニウム金属触媒を用いた場合と比較して、エチレン重合活性および得られたポリマーの分子量は同程度であるが、ポリマー鎖中のエチルグラフト率ははるかに高く、12%に達する一方、シングルジルコニウム金属触媒を用いてエチレン重合を触媒して得られるポリマー中のエチルグラフト率は1.1%にすぎないことが、研究により明らかになった。同時に、ダブルジルコニウム金属触媒を使用する場合、ダブルホウ素共触媒を使用することによって得られるポリマー中のエチルグラフト率(12%)もまた、シングルホウ素共触媒を使用することによって得られるポリマー中のエチルグラフト率(2.7%)よりも高い(Li, H.; Marks, T. J. Proc. Natl. Acad. Sci. 2006, 103, 15295)。
【0005】
CN201010204671.1は、ダブルチタン金属触媒を用いた、エチレンの単独重合、ならびにエチレンとヘキセンおよびオクテンなどの単量体との共重合を開示している。常圧での重合活性は10g・mol-1(Ti)・h-1オーダーであり、コポリマーの分子量は約300,000であり、分子量分布は2より大きい。
【0006】
所望の触媒性能を示す新規な金属化合物を開発することが、当該技術分野において依然として必要とされている。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明者らは鋭意研究を行い、その結果、オレフィン重合に使用した場合、あるクラスのビスフェノール金属錯体が高い触媒効率および高いコモノマー取り込み能力を示すことを見出した。これに基づいて、本発明がなされた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ビスフェノール金属錯体を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ビスフェノール金属錯体の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる別の目的は、ビスフェノール金属錯体の、オレフィン重合における触媒系の構成要素としての使用を提供することである。
【0011】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
ここで、本明細書で採用される好ましい実施形態および定義を含む、本発明の様々な具体的な実施形態、変形例を説明する。以下の詳細な記載は具体的な好ましい実施形態を与えるが、当業者は、これらの実施形態が例示的なものにすぎず、本発明が他の方法で実施され得ることを理解するであろう。本「発明」への言及はいずれも、特許請求の範囲によって定義される本発明のうち1つ以上を指すが、必ずしもすべてを指すわけではない。見出しの使用は、単に便宜上のものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0012】
本発明およびその特許請求の範囲の目的のために、周期律表の族のための新しい番号付けスキームが、Chemical and Engineering News, 63(5), pg. 27 (1985)に記載されるように使用される。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「置換する」または「置換された」は、対象の基上の1つ以上の水素原子が、C~Cアルキル、フェニル、ベンジル、ハロゲン原子、ヘテロ原子、C~Cアルコキシなどのヘテロ原子含有基で置換されているか、または主鎖中の炭素原子がヘテロ原子で置換されていることを意味する。置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ、およびエトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロゲン」または「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のうち少なくとも1つを指す。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「ヘテロ原子」は、O、S、N、P、B、Si、GeおよびSnのうち少なくとも1つを指す。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「重合」は、単独重合および共重合を包含する。本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーを包含する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「触媒成分」は、アルキルアルミニウムおよび任意の外部電子供与体などの従来の共触媒と共に、オレフィン重合のための触媒を構成する主触媒成分または触媒の前駆体を指す(このような組合せは、当技術分野では触媒系とも呼ばれる)。
【0018】
第1の態様において、本開示は、式Iで表される構造を有するビスフェノール金属錯体を提供する。
【0019】
【化1】
【0020】
式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成しており;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属であり;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリド、アミド、アルコキシド、アルキルスルフィド、アルキルホスフィド、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルおよびこれらの組合せからなる群から選択され;mおよびnは独立して、1~4の整数であり;Lは2価の結合基である。
【0021】
いくつかの実施形態において、2価の結合基Lは、2価のヒドロカルビル、または実質的に炭化水素の性質を有する、1~30個の炭素原子を有する2価の結合基である。本明細書中で使用される場合、用語「実質的に炭化水素の性質を有する2価の結合基」は、全体として炭化水素の特性を示す2価の基を指す。このような基は、1つ以上のヘテロ原子が炭化水素鎖に含まれることを可能にするが、活性水素を有さない。本発明において有用な2価の結合基Lは、C1~C30アルキレン、C1~C30ヘテロアルキレン、C5~C30シクロアルキレン、C4~C30ヘテロシクロアルキレン、C2~C30アルケニレン、C2~C30ヘテロアルケニレン、C4~C30シクロアルケニレン、C4~C30ヘテロシクロアルケニレン、C2~C30アルキニレン、C2~C30ヘテロアルキニレン、C6~C30アリーレン、およびC4~C30ヘテロアリーレンからなる群から選択することができる。Lの例としては、メチレン、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,2-シクロペンタンジイル、1,3-シクロペンタンジイル、1,2-シクロヘキサンジイル、1,3-シクロヘキサンジイル、1,4-シクロヘキサンジイル、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,8-ナフチレン、1,8-アントリレン、1,8-フルオレニレン、1,8-カルバゾリリデン、4,5-アクリジンジイル、4H-ジベンゾピラン-1,9-ジイル、ならびに上記の基の炭素鎖および/または環にC1~C6アルキル置換基などのアルキル置換基を1つ以上備えた対応する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、本開示のビスフェノール金属錯体は、式Iaで表される構造を有する。
【0023】
【化2】
【0024】
式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成しており;RおよびRはそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;Rそれぞれは独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属であり;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリド、アミド、アルコキシド、アルキルスルフィド、アルキルホスフィド、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルおよびこれらの組合せからなる群から選択され;mおよびnは独立して、1~4の整数である。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、本開示のビスフェノール金属錯体は、式Ibで表される構造を有する。
【0026】
【化3】
【0027】
式中、R、R´、R、R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され、R~Rのうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成し、R´~R´のうちいずれか2つの隣接する基は任意に結合して環を形成しており;RおよびRはそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルからなる群から選択され;MおよびM´はそれぞれ独立して、第4族の金属であり;Xそれぞれは独立して、1個~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、ヒドリド、アミド、アルコキシド、アルキルスルフィド、アルキルホスフィド、ハライド、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、式I、IaおよびIbにおいて、R、R´、R、R´はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C20アルキル、および置換または非置換のC~C20アリールからなる群から選択され、好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~Cアルキルからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、式I、IaおよびIbにおいて、R~R、R´~R´はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C20アルキルからなる群から選択され、好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~Cアルキルからなる群から選択される。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、式IaおよびIbにおいて、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C20アルキルからなる群から選択され、好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、および置換または非置換、直鎖または分岐鎖のC~Cアルキルからなる群から選択される。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態では、式I、IaおよびIbにおいて、MおよびM´はそれぞれ独立して、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択され、好ましくはチタンである。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、式I、IaおよびIbにおいて、Xそれぞれは独立して、メチル、フルオライド、クロライド、ブロマイドおよびヨーダイドからなる群から選択され、好ましくはメチルまたはクロライドである。
【0033】
いくつかの実施形態において、ビスフェノール金属錯体は、式Ibで表される以下の錯体のうち少なくとも1つである。
【0034】
【化4】
【0035】
ビスフェノール金属錯体1:R=R=R´=R´=Me、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体2:R=R=R´=R´=Et、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体3:R=R=R´=R´=iPr、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体4:R=R=R´=R´=tBu、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体5:R=R=R´=R´=Me、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体6:R=R=R´=R´=Et、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体7:R=R=R´=R´=iPr、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
ビスフェノール金属錯体8:R=R=R´=R´=tBu、R=R=R=R=R=R´=R´=R´=R´=R´=Me、R=R=H、M=M´=Ti、X=Cl;
および、X=メチルである、対応する化合物。
【0036】
第2の態様において、本発明は、上述のビスフェノール金属錯体の製造方法を提供する。当該方法は、以下の工程を含む:
1)対応するビスフェノール化合物を強塩基と反応させてビスフェノール二塩を形成する工程;および、
2)ビスフェノール二塩を式Vで表される金属錯体と反応させて、式Iで表されるビスフェノール金属錯体を得る工程。
【0037】
【化5】
【0038】
式中、R~R、MおよびXは、式Iに対して上記で定義されたものと同じ意味を有する。
【0039】
いくつかの具体的な実施形態において、本発明は、式Ibで表される上述のビスフェノール金属錯体の製造方法を提供する。当該方法は、以下の工程を含む:
1)式IIで表されるビスフェノール化合物を式IIIで表される金属化合物と反応させて、式IVで表されるビスフェノール二塩を得る工程;および、
2)式IVで表されるビスフェノール二塩化合物を式Vで表される金属錯体と反応させて、式Ibで表されるビスフェノール金属錯体を得る工程。
【0040】
【化6】
【0041】
ここで、式IIおよび式IVにおいて、R、R´、R、R´、RおよびRは式Ibに対して上記で定義されたものと同じ意味を有し;
式IIIにおいて、Mは第IA族の金属であり、好ましくはリチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC~C10アルキルであり;
式Vにおいて、R~R、MおよびXは、式Ibに対して上記で定義されたものと同じ意味を有する。
【0042】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、製造方法は、式IIで表されるビスフェノール化合物を式IIIで表される金属化合物と有機溶媒中で反応させて、式IVで表されるビスフェノール二塩化合物を得ること;次いで、ビスフェノール二塩化合物を式Vで表される金属錯体と有機溶媒中で反応させて、式Ibで表されるビスフェノール金属錯体を得ることを含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、およびジクロロメタンから選択される。
【0044】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、ビスフェノール化合物は、式IIで表される以下のビスフェノール化合物のうち少なくとも1つである。
【0045】
【化7】
【0046】
ビスフェノール化合物1:R=R=R´=R´=Me、R=R=H;
ビスフェノール化合物2:R=R=R´=R´=Et、R=R=H;
ビスフェノール化合物3:R=R=R´=R´=iPr、R=R=H;
ビスフェノール化合物4:R=R=R´=R´=tBu、R=R=H。
【0047】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、式IIIで表される金属化合物は、KH、NaH、MeLi、EtLi、PrLiおよびBuLiから選択される少なくとも1つである。
【0048】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、式IVで表される化合物は、以下の化合物のうち少なくとも1つである。
【0049】
【化8】
【0050】
フェノキシド化合物1:R=R=R´=R´=Me、R=R=H、M=Li;
フェノキシド化合物2:R=R=R´=R´=Et、R=R=H、M=Li;
フェノキシド化合物3:R=R=R´=R´=iPr、R=R=H、M=Li;
フェノキシド化合物4:R=R=R´=R´=tBu、R=R=H、M=Li;
フェノキシド化合物5:R=R=R´=R´=Me、R=R=H、M=Na;
フェノキシド化合物6:R=R=R´=R´=Et、R=R=H、M=Na;
フェノキシド化合物7:R=R=R´=R´=iPr、R=R=H、M=Na;
フェノキシド化合物8:R=R=R´=R´=tBu、R=R=H、M=Na;
フェノキシド化合物9:R=R=R´=R´=Me、R=R=H、M=K;
フェノキシド化合物10:R=R=R´=R´=Et、R=R=H、M=K;
フェノキシド化合物11:R=R=R´=R´=iPr、R=R=H、M=K;
フェノキシド化合物12:R=R=R´=R´=tBu、R=R=H、M=K。
【0051】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、式Vで表される金属化合物は、以下の金属錯体のうち少なくとも1つである。
【0052】
【化9】
【0053】
金属錯体1:R=R=R=R=R=H、M=Ti、X=Cl;
金属錯体2:R=R=R=R=R=Me、M=Ti、X=Cl。
【0054】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、式IIで表されるビスフェノール化合物と式IIIで表される化合物とのモル比は、1:(1~20)であり、例えば、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5、1:10、1:10.5、1:11、1:11.5、1:12、1:12.5、1:13、1:13.5、1:14、1:14.5、1:15、1:15.5、1:16、1:16.5、1:17、1:17.5、1:18、1:18.5、1:19、1:19.5、1:20、およびこれらの間の任意の数値であり、好ましくは1:(2~10)であり、より好ましくは1:(4~8)である。
【0055】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、式IIで表されるビスフェノール化合物と式IIIで表される化合物との反応の反応温度は、-78℃~60℃であり、例えば、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、およびこれらの間の任意の値であり、好ましくは-10℃~40℃である。
【0056】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、式IIで表されるビスフェノール化合物と式IIIで表される化合物との反応の反応時間は、1~10時間であり、例えば、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5時間、およびこれらの間の任意の時間であり、好ましくは1.5~3時間である。
【0057】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、式IVで表される化合物と式Vで表される金属化合物とのモル比は、1:(1.8~2.4)であり、例えば、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、およびこれらの間の任意の数値であり、好ましくは1:2である。単に、ビスフェノール化合物のモル数は、式IVで表される化合物のモル数とみなしてもよい。
【0058】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、式IVで表される化合物と式Vで表される金属化合物との反応の反応温度は、-78℃~60℃であり、例えば、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、およびこれらの間の任意の値であり、好ましくは-10℃~40℃である。
【0059】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態において、式IVで表される化合物と式Vで表される金属化合物との反応の反応時間は、6~24時間であり、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、およびこれらの間の任意の値であり、好ましくは6~19時間である。
【0060】
第3の態様において、本発明は、上述のビスフェノール金属錯体の、オレフィン重合における、使用を提供する。ここで、ビスフェノール金属錯体は、オレフィン重合触媒の主触媒(または触媒化合物)として使用される。
【0061】
いくつかの実施形態において、オレフィン重合触媒は、有機アルミニウム化合物および有機ホウ素化合物から選択される共触媒をさらに含む。
【0062】
〔実施例〕
本発明は具体的な実施例と共に以下にさらに説明されるが、本実施例は本発明に対するいかなる限定も構成するものではない。
【0063】
以下の実施例に含まれる評価方法および試験方法は、以下のとおりである。
【0064】
1.プロトン核磁気スペクトルおよび炭素核磁気スペクトルは、溶媒として重水素化クロロホルムを用いて、Bruker-300核磁気共鳴装置で、110℃で記録する。
【0065】
2.高分解能質量スペクトルは、分散溶媒としてアセトニトリルを使用するBruker ESI-Q/TOF MS質量分析計で記録する。
【0066】
3.重合活性:重合して得られたポリマーを乾燥させて秤量し、ポリマーの重量を重合中に添加した触媒の量で除算することによって、触媒活性を求める。
【0067】
4.ポリマーの分子量および分子量分布PDI(PDI=Mw/Mn):PL-GPC220を用いて150℃、溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した(標準:PS;流量:1.0mL/分;カラム:3×Plgel 10um M1×ED-B 300×7.5nm)。
【0068】
5.ポリマーの融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって以下のように決定する:10mgのサンプルをるつぼに入れ、METTLER DSC1示差走査熱量計で測定する。窒素雰囲気下で、温度を10℃/分のランプ速度で-70℃から200℃に上昇させ、1分間維持し、次いで、温度を10℃/分の速度で-70℃に低下させ、3分間維持する。次いで、再び10℃/分の速度で温度を200℃に上昇させ、2回目の加熱走査のデータを記録する。
【0069】
6.ポリマー中のコモノマーの含有量は、高温核磁気炭素スペクトルによって決定する。
【0070】
〔実施例1-ビスフェノール金属錯体7の製造〕
ビスフェノール化合物3(2.24mmol)をジエチルエーテル溶媒に溶解し、純粋なKH固体(8.96mmol)を得られた溶液に-78℃で添加した。1時間反応させた後、反応混合物を室温に温め、次いで反応をさらに2時間続けた。次に、溶液を、-78℃のジクロロメタン中の金属錯体2(4.48mmol)の溶液に、輸送伝導によって移した。その温度で1時間反応させた後、反応混合物を徐々に室温に温め、次いで反応をさらに12時間続けた。反応が完了したら、溶媒を真空ラインで除去し、残渣をジクロロメタンで洗浄し、セライトで濾過した。濾液を真空下で蒸発乾固し、粗生成物をジクロロメタン/n-ヘキサンで再結晶して、90%の収率でオレンジ色の目的生成物を得た。キャラクタリゼーションデータは以下の通りである。
【0071】
H NMR(CDCl、400MHz):δ=7.45(dd、J=7.6、2.0Hz、2H、アリール-H)、7.25(s、4H、アリール-H)、7.14-7.21(m、4H、アリール-H)、3.13(m、4H、CH)、2.18(s、30H、CH)、1.80(s、6H、CH)、1.03(d、J=6.8Hz、24H、CH)。
【0072】
13C NMR(CDCl、100MHz):δ=159.1、146.9、138.9、133.5、132.8、130.6、130.4、130.0、124.5、122.9、34.3、33.9、26.3、24.3、13.1。
【0073】
5972ClTiに対するESI-MS:M=1064.34。
【0074】
〔実施例2-ビスフェノール金属錯体4の製造〕
ビスフェノール化合物4(2.00mmol)をテトラヒドロフラン溶媒に溶解し、純粋なNaH固体(12.00mmol)を得られた溶液に-10℃で添加した。1時間反応させた後、反応混合物を室温に温め、次いで反応をさらに1時間続けた。次に、溶液を、-10℃のテトラヒドロフラン中の金属錯体1(4.00mmol)の溶液に、輸送伝導によって移した。その温度で0.5時間反応させた後、反応混合物を徐々に室温に温め、次いで反応をさらに8時間続けた。反応が完了したら、溶媒を真空ラインで除去し、残渣をジクロロメタンで洗浄し、セライトで濾過した。濾液を真空下で蒸発乾固し、粗生成物をジクロロメタン/n-ヘキサンで再結晶して、92%の収率でオレンジ色の目的生成物を得た。
【0075】
キャラクタリゼーションデータは以下の通りである:C5156ClTiに対するESI-MS:M/Z=954.21。
【0076】
〔実施例3-ビスフェノール金属錯体Aの製造〕
【0077】
【化10】
【0078】
ビスフェノール化合物3(2.24mmol)をジエチルエーテル溶媒に溶解し、n-BuLi(4.48mmol、1.6mol/L)を得られた溶液に-78℃で添加した。1時間反応させた後、反応混合物を室温に温め、次いで反応をさらに2時間続けた。次に、溶液を、-78℃のジエチルエーテル中のインデニルチタン錯体(4.48mmol)の溶液に、輸送伝導によって移した。その温度で1時間反応させた後、反応混合物を徐々に室温に温め、次いで反応をさらに12時間続けた。反応が完了したら、溶媒を真空ラインで除去し、残渣をジクロロメタンで洗浄し、セライトで濾過した。濾液を真空下で蒸発乾固し、粗生成物をジクロロメタン/n-ヘキサンで再結晶して、60%の収率で紫赤色の目的生成物を得た。
【0079】
H NMR(CDCl、400MHz):δ=7.74(dd、J=6.4、2.8Hz、4H、アリール-H)、7.47(t、J=4.8Hz、2H、アリール-H)、H=7.37(dd、6.4、2.8Hz、4H、アリール-H)、7.22(s、4H、アリール-H)、7.18(d、J=4.8Hz、4H、アリール-H)、6.78(d、J=3.6Hz、4H、アリール-H)、6.42(t、J=3.2Hz、2H、アリール-H)、3.25(sept、4H、CH)、2.18(s、30H、CH)、1.82(s、6H、CH)、1.08(d、J=6.8Hz、24H、CH)。
【0080】
13C NMR(CDCl、100MHz):δ=164.5、146.8、138.5、134.6、130.6、130.3、129.9、129.7、128.3、125.9、125.8、124.5、123.0、120.4、113.3、34.2、34.0、26.8、23.8。
【0081】
〔実施例4-ビスフェノール金属錯体Bの製造〕
【0082】
【化11】
【0083】
ビスフェノール化合物3(1.00mmol)をテトラヒドロフラン溶媒に溶解し、n-BuLi(2.00mmol、1.6mol/L)を、得られた溶液に-78℃で添加した。1時間反応させた後、反応混合物を室温に温め、次いで反応をさらに2時間続けた。次に、溶液を、-78℃のテトラヒドロフラン中のペンタメチルシクロペンタジエニルハフニウム錯体(2.00mmol)の溶液に、輸送伝導によって移した。その温度で1時間反応させた後、反応混合物を徐々に室温に温め、次いで50℃に加熱し、次いで反応をさらに12時間続けた。反応が完了したら、溶媒を真空ラインで除去し、残渣をジクロロメタンで洗浄し、セライトで濾過した。濾液を真空下で蒸発乾固し、粗生成物をジクロロメタン/n-ヘキサンで再結晶して、21%の収率で紫色の目的生成物を得た。
【0084】
H NMR(CDCl、400MHz):δ=7.40(dd、J=7.4、2.2Hz、2H、アリール-H)、7.16-7.11(m、4H、アリール-H)、7.08(s、4H、アリール-H)、2.93(sept、4H、CH)、2.22(s、30H、CH)、1.77(s、6H、CH)、1.04(d、J=6.8Hz、24H、CH)。
【0085】
〔実施例5〕
加熱乾燥後、500mLの重合オートクレーブを排気し、窒素ガスを2回充填した後、排気し、エチレンガスを1回充填した。次に、2mmol/mLのメチルアルミノキサン(MAO)のトルエン溶液10mLと、脱酸素および脱水処理を施したn-ヘキサン150mLと、5μmol/mLのビスフェノール金属錯体7のトルエン溶液1mLとを順次添加した。機械的に撹拌しながら、1.0MPaの圧力下のエチレンを導入し、その圧力下、20℃で20分間反応を継続させた後、エタノールを加えて反応を停止させた。2.8gのポリエチレンポリマーが得られた。重合活性は、8.4×10g・mol-1(Ti)・h-1と計算された。DSCで測定した融点は133.5℃;GPCで測定したMwは1.9×10、Mw/Mnは4.82であった。
【0086】
〔実施例6〕
加熱乾燥後、500mLの重合オートクレーブを排気し、窒素ガスを2回充填した後、排気し、エチレンガスを1回充填した。次に、0.5mmol/mLのトリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液2mLと、脱酸素および脱水処理を施したn-ヘキサン150mLと、2.5μmol/mLのビスフェノール金属錯体7のトルエン溶液1mLとを順次添加した後、2mL(5μmol/mL)のホウ素含有試薬[PhC][B(C]を加えた。機械的に撹拌しながら、1.0MPaの圧力下のエチレンを導入し、その圧力下、80℃で20分間反応を継続させた後、エタノールを加えて反応を停止させた。5.1gのポリエチレンポリマーが得られた。重合活性は、3.06×10g・mol-1(Ti)・h-1と計算された。DSCで測定した融点は133.3℃;GPCで測定したMwは1.8×10、Mw/Mnは6.84であった。
【0087】
〔実施例7〕
加熱乾燥後、500mLの重合オートクレーブを排気し、窒素ガスを2回充填した後、排気し、エチレンガスを1回充填した。次に、メチルアルミノキサン(MAO)のトルエン溶液(10質量%)6.8mlと、1-ヘキセン15mlと、脱酸素および脱水処理を施したn-ヘキサン150mLと、2.5μmol/mLのビスフェノール金属錯体7のトルエン溶液2mLとを順次添加した。機械的に撹拌しながら、3atmの圧力下のエチレンを導入し、その圧力下、25℃で20分間反応を継続させた後、エタノールを加えて反応を停止させた。5.21gのポリマーが得られた。活性は、1.56×10g・mol-1(Ti)・h-1と計算された。DSCで測定した融点は103℃;GPCで測定したMwは1.9×10、Mw/Mnは1.92であった。1-ヘキセンのモル含有量は、高温核磁気炭素スペクトルを介して、5.3%であることが見出された。
【0088】
〔実施例8〕
加熱乾燥後、500mLの重合オートクレーブを排気し、窒素ガスを2回充填した後、排気し、エチレンガスを1回充填した。次に、0.5mmol/mLのトリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液2mLと、脱酸素および脱水処理を施したn-ヘキサン150mLと、2.5μmol/mLのビスフェノール金属錯体Aのトルエン溶液2mLとを順次添加した後、3mL(5μmol/mL)のホウ素含有試薬[PhC][B(C]を加えた。機械的に撹拌しながら、0.4MPaの圧力下のエチレンを導入し、その圧力下、40℃で10分間反応を継続させた後、エタノールを加えて反応を停止させた。1.3gのポリエチレンポリマーが得られた。重合活性は、7.8×10g・mol-1(Ti)・h-1と計算された。DSCで測定した融点は130.0℃;GPCで測定したポリエチレンのMwは3.4×10、Mw/Mnは8.53であった。
【0089】
〔実施例9〕
加熱乾燥後、500mLの重合オートクレーブを排気し、窒素ガスを2回充填した後、排気し、エチレンガスを1回充填した。次に、0.5mmol/mLのトリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液2mLと、1-オクテン9.3mLと、脱酸素および脱水処理を施したn-ヘキサン150mLと、2.5μmol/mLのビスフェノール金属錯体Aのトルエン溶液2mLとを順次添加した後、3mL(5μmol/mL)のホウ素含有試薬[PhC][B(C]を加えた。機械的に撹拌しながら、0.4MPaの圧力下のエチレンを導入し、その圧力下、40℃で10分間反応を継続させた後、エタノールを加えて反応を停止させた。2.25gのポリエチレンポリマーが得られた。活性は、1.35×10g・mol-1(Ti)・h-1と計算された。DSCで測定した融点は125.5℃;GPCで測定したポリエチレンのMwは5.6×10、Mw/Mnは2.91であった。1-オクテンのモル含有量は、高温核磁気炭素スペクトルを介して、2.4%であることが見出された。
【0090】
本発明に記載されている任意の数値について、任意の最低値と任意の最高値との間に2単位区間しかない場合、最低値から最高値までの1単位の増分を有するすべての値が含まれる。例えば、構成要素の量、または温度、気圧、時間などの処理変数の値が50~90であると記載されている場合、本明細書においては、51~89、52~88、...、69~71、および70~71などの値が具体的に列挙されていることを意味する。非整数値の場合、0.1、0.01、0.001、または0.0001が、1つの単位として適切に考慮され得る。これらは、具体的な言及の例に過ぎない。本出願では、同様に、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組合せが開示されているものとみなされる。
【0091】
なお、上記の例は、本発明を説明するためのものであり、本発明に対するいかなる限定も構成するものではない。本発明は、典型的な例を参照して説明されてきたが、ここで使用される用語は限定的な用語ではなく、記述的かつ説明的な用語であることを理解されたい。本発明は、規定された本発明の請求の範囲内で修正されてもよく、本発明は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく修正されてもよい。本明細書に記載された本発明は、具体的な方法、材料および実施形態に関するが、本発明が本明細書に開示された具体的な例に限定されることを意味するものではない。反対に、本発明は、同じ機能を有する他のすべての方法および用途に拡張することができる。
【国際調査報告】