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特表2023-501213遮光の場合に改善された効率を示す光起電力素子、及びそのような光起電力素子の製造方法
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  • 特表-遮光の場合に改善された効率を示す光起電力素子、及びそのような光起電力素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】遮光の場合に改善された効率を示す光起電力素子、及びそのような光起電力素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20230111BHJP
   H10K 39/10 20230101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L31/04 130
H01L31/04 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525264
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 DE2020100925
(87)【国際公開番号】W WO2021083462
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】102019129355.3
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512286163
【氏名又は名称】ヘリアテク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HELIATEK GMBH
【住所又は居所原語表記】Treidlerstrasse 3, 01139 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルメナウ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ビルンシュトック, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラペイラード, ミカエル
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151EA10
5F151EA16
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】
本発明は、ベース電極(3)と、上部電極(4)と、少なくとも1つの光活性層(6)を備え、ベース電極(3)及び上部電極(4)の間に配置された層システム(5)とを有する少なくとも1つの光起電力セル(2)を含む光起電力素子(1)に関する。少なくとも1つの光起電力セル(2)は、少なくとも部分的にセグメント(7)にセグメント化され、セグメント化は、1つのセグメント(7)の少なくとも上部電極(4)及び層システム(5)が、別のセグメント(7)の上部電極(4)及び層システム(5)から、互いの接触を防止するように少なくとも1つのキャビティ(8)によって分離されるように、又は1つのセグメント(7)の上部電極(4)、層システム(5)及び少なくとも部分的にベース電極(3)が、別のセグメント(7)の上部電極(4)、層システム(5)及び少なくとも部分的にベース電極(3)から、互いの接触を防止するように少なくとも1つのキャビティ(8)によって分離されるように設計され、少なくとも1つのキャビティ(8)は、少なくとも1つの光起電力セル(2)の層システム(5)に対して少なくとも実質的に垂直方向に形成され、少なくとも1つの光起電力セル(2)のセグメント(7)は、少なくとも1つの光起電力セル(2)を通る電流の流れが個々のセグメント(7)に分配されるように互いに並列に電気伝導的に接続される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース電極(3)と、上部電極(4)と、少なくとも1つの光活性層(6)を含み、前記ベース電極(3)及び前記上部電極(4)の間に配置された層システム(5)とを有する少なくとも1つの光起電力セル(2)を含む光起電力素子(1)であって、
前記少なくとも1つの光起電力セル(2)は、少なくとも部分的にセグメント(7)にセグメント化され、前記セグメント化は、1つのセグメント(7)の少なくとも前記上部電極(4)及び前記層システム(5)が、別のセグメント(7)の前記上部電極(4)及び前記層システム(5)から分離されるか、又は1つのセグメント(7)の前記上部電極(4)、前記層システム(5)及び少なくとも部分的に前記ベース電極(3)が、別のセグメント(7)の前記上部電極(4)、前記層システム(5)及び少なくとも部分的に前記ベース電極(3)から分離され、それぞれの場合に、互いの接触を防止するように少なくとも1つのキャビティ(8)によって分離されるように設計され、前記少なくとも1つのキャビティ(8)は、前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の前記層システム(5)に対して少なくとも実質的に垂直方向に形成され、前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の前記セグメント(7)は、前記少なくとも1つの光起電力セル(2)を通る電流の流れが個々のセグメント(7)に分配されるように互いに並列に電気伝導的に接続される、
ことを特徴とする光起電力素子(1)。
【請求項2】
前記光起電力素子(1)が、少なくとも第1の光起電力セル(2)と第2の光起電力セル(2)とを備え、前記少なくとも第1の光起電力セル(2)と前記第2の光起電力セル(2)は直列に接続され、前記第1の光起電力セル(2)の前記上部電極(4)が前記第2の光起電力セル(2)の前記ベース電極(3)に電気伝導的に接続され、好ましくは前記光起電力セル(2)の前記ベース電極(3)は前記層システム(5)に対して水平方向に互いに分離され、前記光起電力セル(2)の前記上部電極(4)は前記層システム(5)に対して水平方向に互いに分離されることを特徴とする、請求項1に記載の光起電力素子(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の前記セグメント(7)の断面積(9)が、前記層システム(5)の水平方向の延在に基づいて、互いに等しく、好ましくは、前記セグメント(7)の前記断面積(9)の大きさは、前記少なくとも1つの光起電力セル(2)を通る電流の流れに依存して等しいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光起電力素子(1)。
【請求項4】
セグメント(7)の幅(10)が1cm~2m、好ましくは5cm~1mであり、及び/又は前記層システム(5)に対して水平方向の個々の前記セグメント(7)間の距離が10nm~200nm、好ましくは40nm~80nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項5】
前記セグメント(7)の長さ(11)、特に前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の長さ(11)が、1mm~1m、好ましくは5mm~5cmであり、前記セグメント(7)は好ましくは少なくとも実質的に互いに平行に形成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項6】
個々のセグメント(7)が、それぞれ前記光起電力セル(2)の方向全体にわたって形成され、前記セグメント(7)の形状は好ましくは異なる設計のものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項7】
前記セグメント(7)が、少なくとも実質的に平行であり、好ましくはストリップ状に形成され、後続の光起電力セル(2)の前記セグメント(7)は、好ましくは、先行する光起電力セル(2)と比較して、互いに平行にオフセットされることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項8】
前記光起電力素子(1)の前記光起電力セル(2)が、少なくとも1つのバスバーによって電気伝導的に接続されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項9】
前記層システム(5)が少なくとも2つの光活性層(6)を含み、ここで前記光起電力セル(2)はタンデムセルであり、前記層システム(5)が好ましくは少なくとも3つの光活性層(6)であり、ここで前記光起電力セル(2)はトリプルセルであり、及び/又は前記層システム(5)が少なくとも1つの電荷キャリア輸送層をさらに含み、ここで前記少なくとも1つの電荷キャリア輸送層は前記ベース電極(3)又は前記上部電極(4)と光活性層(6)との間に配置され、前記層システム(5)が、好ましくは、少なくとも第1の電荷キャリア輸送層と第2の電荷キャリア輸送層とを含み、ここで前記第1の電荷キャリア輸送層は前記ベース電極(3)と少なくとも1つの光活性層(6)との間に配置され、前記第2の電荷キャリア輸送層は少なくとも1つの光活性層(6)と前記上部電極(4)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項10】
前記光起電力素子(1)が有機光起電力素子(1)、好ましくはフレキシブル有機光起電力素子(1)であり、好ましくは前記有機光起電力素子(1)の少なくとも1つの光活性層(6)が吸収材料として低分子を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項11】
前記光起電力素子(1)がバイパスダイオードを含まないことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の光起電力素子(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも2つの光起電力素子(1)を含み、前記少なくとも2つの光起電力素子(1)が直列に接続される、光起電力システム。
【請求項13】
それぞれがベース電極(3)と、上部電極(4)と、前記ベース電極(3)及び前記上部電極(4)の間に配置され、少なくとも1つの光活性層(6)を有する層システム(5)とを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも2つの光起電力セル(2)を含む、光起電力素子(1)、特にフレキシブル光起電力素子(1)の製造方法であって、
a)基板にベース電極層を提供するステップ、
b)前記ベース電極層が個々のベース電極(3)に分割されるように、前記ベース電極層をレーザで構造化するステップ、
c)少なくとも1つの光活性層(6)を有する層システム(5)を、前記構造化されたベース電極(3)に適用し、レーザアブレーションによって個々のベース電極(3)のそれぞれに関連付けられた少なくとも1つの開口部を前記層システム(5)内に形成するステップであって、前記ベース電極(3)は前記少なくとも1つの開口部で少なくとも部分的に露出されている、形成するステップ、
d)前記少なくとも1つの開口部に、及び/又は前記少なくとも1つの開口部により前記層システム(5)上に上部電極層を適用するステップであって、前記少なくとも1つの開口部は充填される、適用するステップ、
e)個々の上部電極(4)及び個々の層システム(5)が形成されるように、前記上部電極層及び前記層システム(5)をレーザで構造化するステップであって、第1の光起電力セル(2)の上部電極(4)が第2の光起電力セル(2)のベース電極(3)に電気伝導的に接続される、構造化するステップ、及び
f)前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の、少なくとも前記上部電極(4)及び前記層システム(5)、又は前記上部電極(4)、前記層システム(5)及び少なくとも部分的に前記ベース電極(3)を、レーザアブレーションによってセグメント化するステップであって、前記少なくとも1つの光起電力セル(2)のセグメント(7)が形成される、セグメント化するステップ、
を含む方法。
【請求項14】
前記上部電極層が、上部電極(4)が得られるように前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の前記層システム(5)に対して水平方向に分割され、前記ベース電極層が、ベース電極(3)が得られるように前記少なくとも1つの光起電力セル(2)の前記層システム(5)に基づいて水平方向に分割される、請求項13に記載の光起電力素子(1)の製造方法。
【請求項15】
前記方法がロールツーロール法で使用される、請求項13又は14に記載の光起電力素子(1)の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの光起電力セルを含む光起電力素子、少なくとも2つのそのような光起電力素子を含む光起電力システム、及びそのような光起電力素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力素子、特に建築構造物に組み込まれた光起電力素子は、一時的に遮光される。光起電力素子は、少なくとも1つの光活性層を含む少なくとも1つの光起電力セルからなり、これは直列又は並列に接続され得る。
【0003】
直列に接続された光起電力素子又はその光起電力セルは、必ずしも全てが同じ程度に遮光されるわけではなく、部分的に太陽光に曝され続ける。この場合、他と直列に接続された遮光された光起電力セルは、遮光されていない光起電力セルと比較して対向する電圧を発生し、他の光起電力セルからその光起電力セルに電流が流れるのを制限又は遮断する。
【0004】
部分遮光の問題を回避する先行技術の方法は、直列接続された光起電力セルから電流が流れ続けることを保証し、部分遮光された光起電力セルの損傷を防止するためにバイパスダイオードを採用する。遮光又は欠陥光起電力セルの場合、光起電力セルと並列にバイパスダイオードを接続することで、電力損失は低減される。光起電力素子、特に光起電力素子の光起電力セルが少なくとも部分的に遮光されている場合、この光起電力セルは電圧を発生しないか低い電圧を発生し、その上流で直列接続されている光起電力セルによる発生電流は伝導されることができず、少なくとも部分的に遮光された光起電力セルを損傷させる。このような場合、バイパスダイオードは、上流で接続された光起電力セルからバイパスダイオードを介して下流に接続された光起電力セルへの発生電流の伝導を引き継ぐことができるので、遮光された光起電力セルの破損を防止することができる。かくして、光起電力素子は、少なくとも部分的に遮光された光起電力セルにおいて機能し続けることができる。しかしながら、このような解決策は非常にコストがかかり、高度の複雑さを必要とし、これは高い追加コストにつながる。
【0005】
米国特許出願公開第20150349164A1号明細書は、バイパスダイオードを一体化した太陽電池セルを開示し、ここでバイパスダイオードと太陽電池セルは、基板上で互いに隣接する異なる領域を含み、ギャップによって分離されている。
【0006】
欧州特許第EP 1 920 468 B1号明細書は、バイパスダイオードを含む有機光起電力セルを開示している。
【0007】
国際公開第2014/051889A1号パンフレットは、多数の光起電力セルを備える太陽電池セルを開示し、ここで光起電力セルは中間スペースの特定の配置を有し、その結果、得られるセルの領域は最大対向電圧のみを許容し、バイパスダイオードの数を減らすことができる。
【0008】
しかしながら、先行技術の欠点は、製造中に光起電力セルに完全なバイパスダイオードを組み込むことは複雑であることが判明していることである。バイパスダイオードは、電気を作ることができない大きな面積を必要とし、その結果、光起電力素子の電力損失が大きくなる。さらに、既知の方法は、特に光起電力素子の製造のためのロールツーロール法に適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、個々の光起電力セル又はセル領域の少なくとも部分的な遮光の場合により良い効率を示し、遮光された光起電力セルの耐用年数が向上し、前述の欠点が生じず、特に、光起電力セルの少なくとも部分的な遮光の場合に損傷しない、光起電力素子を提供するという目的に基づいている。特に、活性領域の損失は可能な限り少なく、性能への影響も最小限に抑えられる。
【0010】
この目的は独立請求項の主題によって達成される。有利な構成は従属項から明らかになる。
【0011】
この目的は、特に、ベース電極と、上部電極と、少なくとも1つの光活性層を含み、ベース電極及び上部電極の間に配置される層システムとを有する少なくとも1つの光起電力セルを含む光起電力素子を提供することによって達成される。少なくとも1つの光起電力セルは、少なくとも部分的にセグメントにセグメント化され、セグメント化は、1つのセグメントの少なくとも上部電極及び層システムが、別のセグメントの上部電極及び層システムから分離されるか、又は1つのセグメントの上部電極、層システム及び少なくとも部分的にベース電極が、別のセグメントの上部電極、層システム及び少なくとも部分的にベース電極から分離され、それぞれの場合に、互いの接触を防止するように少なくとも1つのキャビティによって分離されるように設計され、少なくとも1つのキャビティは、少なくとも1つの光起電力セルの層システムに対して少なくとも実質的に垂直方向に形成され、少なくとも1つの光起電力セルのセグメントは、少なくとも1つの光起電力セルを通る電流の流れが個々のセグメントに分配されるように互いに並列に電気伝導的に接続される。
【0012】
好ましい実施形態において、ベース電極、層システム、及び上部電極は、レーザで構造化される。好ましい実施形態において、ベース電極はカソードを形成し、上部電極はアノードを形成する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、ベース電極は、基板、特にフィルム上に配置される。
【0014】
キャビティとは、特に、少なくとも2つのセグメント間の空間であって、セグメントを少なくともセクションにおいて互いに分離し、その結果、少なくとも2つのセグメント間にそのようなセクションを介した少なくとも電気伝導的な接続がない、及び/又はセグメントがこのセクション領域において互いに接触しない空間として理解される。キャビティは、一方が他方より下にある2つのセグメント間に、層システムに対して水平方向に特定の距離を形成する。キャビティは特に中間の空間である。
【0015】
特に、本発明は、いわゆるホットスポットとして知られているものによる、光起電力素子、特に有機光起電力素子への損傷を回避するための技術的解決策を開示する。この解決策を実施することにより、複数の光起電力セルから構成された光起電力素子は、1つ又は複数の光起電力セルが遮光された場合でも、損傷なしに機能を継続させることができる。
【0016】
セグメント化とは、特に、光起電力セルの上部電極と層システムの、又は上部電極、層システム、及び少なくとも部分的にベース電極の少なくとも部分的な分離であって、その結果、少なくとも1つの光起電力セルに少なくとも部分的に遮光及び/又は欠陥がある場合に、得られたそれぞれの個々のセグメントの電流が、光起電力セルを損傷しない大きさである、部分的な分離を意味するように理解される。それぞれのセグメントにおける電流密度の所望の制限に依存して、セグメントは、セグメントの断面積、特にセグメントの幅及び長さに依存してセグメント化することができ、個々のセグメントにおける電流密度は、セグメント化されていない光起電力セルと比較して低くなる。本発明の好ましい実施形態において、電流は個々のセグメントにおいて減少し、特に電流密度は非常に低く、少なくとも部分的に遮光された光起電力セル、特に完全に遮光された光起電力セルは、遮光されていない隣接する光起電力セルの電流を損傷なしに依然として導ける。
【0017】
遮光とは、特に、光起電力素子への光の入射の少なくとも部分的な減少、特に、少なくとも本質的に不透明な物体が光起電力素子の構成要素に太陽に基づくその影を落としている状態を意味するように理解される。遮光されたセル又は少なくとも部分的に遮光されたセルでは、少なくとも部分的に遮光されたセル自体に電流が発生しないか、又はより少ない電流が発生するため、光が照射される場合、遮光されないセルと比較して対向電圧が存在する。結果として、他の遮光されないセルと直列に接続されている少なくとも部分的に遮光されたセルが損傷するおそれがある。
【0018】
欠陥とは、特に、光起電力セルの層システムにおける障害、又は少なくとも1つの電極を含む層システムの電気伝導的な接続における障害を意味するように理解される。
【0019】
光起電力素子とは、特に太陽電池セルを意味するように理解され、光起電力素子は少なくとも1つの光起電力セルを有している。光起電力セルは、光起電力素子内で様々な方法で配置及び/又は接続されてもよい。好ましくは、光起電力素子は、直列に接続された複数の光起電力セルから構成されている。
【0020】
光起電力セルの層システムの可能な構造は、国際公開第2004083958A2号パンフレット、国際公開第2011013219A1号パンフレット、国際公開第2011138021A2号パンフレット、国際公開第2011161108A1号パンフレットに記載されている。ここで特定された用途において、光活性層が、気化可能で物理蒸着(PVD)により適用される、又は適用された吸収材料を含む層システムが好ましくは使用される。このために、「低分子」のグループに属する材料が使用され、これらは、特に、国際公開第2006092134A1号パンフレット、国際公開第2010133208A1号パンフレット、国際公開第2014206860A1号パンフレット、国際公開第2014128278A1号パンフレット、国際公開第2017114937A1号パンフレット、及び国際公開第2017114938A1号パンフレットに記載されている。光活性層はアクセプタ/ドナーシステムを形成し、平面ヘテロ接合、好ましくはバルクヘテロ接合として、複数の個別層、又は混合層のものであり得る。物理蒸着によって完全に適用できる層システムが好ましい。
【0021】
層システムはシングルセル、タンデムセル、又はマルチセルの形態であってよく、その呼称はサブセルの数によって決定され、各サブセルは、好ましくは輸送層、及び任意選択の再結合層によって分離され、それら自体が複数の層から構成され得る少なくとも1つの光活性層を含む。p-層システム又はn-層システムは、単にp-層又はn-層とも呼ばれ、複数の層から構成され得、p-層システム又はn-層システムの層の少なくとも1つは、好ましくはp-ドープ又はn-ドープワイドギャップ層として、p-ドープ又はn-ドープされる。i-層システムは、i-層とも呼ばれ、ドープされないか、又は、サブセル内のp-及びn-層に比べてより少なくドープされる、すなわちより弱いドープを有し、光活性層の形態である。これらのn-、p-、i-層のそれぞれは、さらなる層から構成され得、ここでn-及びp-層は、そのドープの結果として電荷キャリアの増加に寄与する、それぞれ少なくとも1つのドープされたn-及びp-層から構成されている。つまり、光起電力セルの層スタックは、p-、n-、及びi-層システムの好都合な組み合わせから構成され、すなわち、各サブセルはi-層システム及び少なくとも1つのp-又はn-層システムを含む。
【0022】
層システムの水平方向の延在は、特に、層システムの基板及び/又は層と本質的に平行な方向を意味するように理解される。
【0023】
好ましい実施形態において、光起電力素子は、少なくとも1つの光活性層を含むセル、特にCIS-、CIGS-、GaAs-若しくはSi-セル、ペロブスカイトセル又は有機光起電力素子(OPV)、いわゆる有機太陽電池セルを有する。有機光起電力素子とは、特に、少なくとも1層の有機光活性層を有する光起電力素子、特に高分子有機光起電力素子、又は低分子に基づく有機光起電力素子を意味するように理解される。高分子は気化できない、したがって溶液からしか適用できないという特徴があるが、低分子は通常気化できるので、ポリマーのように溶液として適用することができるが、蒸着技術、特に真空からの蒸着によって適用することもできる。特に、光起電力素子は、低分子をベースとしたフレキシブルな有機光起電力素子であることが好ましい。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、層システムの光活性層は、真空中で気化可能な低分子を含む。本発明の好ましい実施形態において、層システムの少なくとも光活性層は、真空中で蒸着される。
【0025】
低分子とは、特に、常圧(周囲大気の気圧)及び室温で固相に存在する、単分散モル質量が100~2000g/molの非重合体有機分子を意味するように理解される。特に、低分子は光活性であり、「光活性」とは、光にさらされると分子の電荷状態及び/又は分極状態が変化することを意味するように理解される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、上部電極は、銀又は銀合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、金又は金合金、或いはこれらの材料の組み合わせを含み、好ましくは銀合金としてAg:Mg又はAg:Caを含む。
【0027】
本発明による光起電力素子は、従来技術を凌ぐ利点を有する。有利なことに、ホットスポットに対する光起電力素子の保護が可能となり、特に、遮光されていないセルで発生した電流を少なくとも部分的に遮光されたセルの個々のセグメント間で分割することができ、それによって少なくとも部分的に遮光されたセルの損傷を防止することができる。このため、光起電力素子は、他の遮光されていないセルを用いて電気を発生し続けることができる。有利なことに、少なくとも1つの光起電力セルは、少なくとも部分的な遮光の場合及び/又は光起電力セルの欠陥の場合、損傷しない。有利なことに、光起電力素子の個々の光起電力セルが遮光された場合、効率が向上し、光起電力素子の耐用年数が向上する。有利なことに、光起電力セルの面積の損失がないか、又は少なくとも実質的になく、及び/又は光起電力セルの働きに損失がないか、又は少なくとも実質的にない。有利なことに、先行する光起電力セルからの電流の流れは、少なくとも部分的に遮光された光起電力セルの個々のセグメントに分配される。有利なことに、セグメント化は、現行の製造方法に特に簡単に組み込むことでき、特に、レーザ構造化のプログラミングにわずかな労力を必要とするだけである。有利なことに、この製造はロールツーロール法に一体化することができる。セグメント化は、追加の外部構成要素、特にダイオードを使用することなく、製造時に層システムに直接組み込むことができる。有利なことに、光起電力セルのセグメント化は、他の解決策、特にバイパスダイオードと比較して、費用対効果に優れている。有利なことに、個々のセグメントを通る電流の流れはより小さい。
【0028】
本発明の発展によれば、光起電力素子は、少なくとも第1の光起電力セルと第2の光起電力セルとを備え、少なくとも第1の光起電力セルと第2の光起電力セルは直列に接続され、第1の光起電力セルの上部電極が第2の光起電力セルのベース電極に電気伝導的に接続され、好ましくは、光起電力セルのベース電極は、層システムに対して水平方向に互いに分離され、光起電力セルの上部電極は、層システムに対して水平方向に互いに分離されることが提供される。
【0029】
本発明の発展によれば、少なくとも1つの光起電力セルのセグメントの断面積は、層システムの水平方向の延在に基づいて、互いに等しく、好ましくは、セグメントの断面積の大きさは、少なくとも1つの光起電力セルを通る電流の流れに依存して等しいことが提供される。個々のセグメントを通る電流の流れが少ないほど、電流密度は低くなり、個々のセグメントを通る電流の流れが多いほど、電流密度は高くなる。
【0030】
断面積とは、特に、層システムの水平方向の延在における、特に層システムの層に沿ったセグメントの面積を意味するように理解される。
【0031】
本発明の発展によれば、セグメントの幅が1cm~2m、好ましくは5cm~1mであり、及び/又は層システムに対して水平方向の個々のセグメント間の距離が10nm~200nm、好ましくは40nm~80nmの範囲にある。個々のセグメント間の距離は、特に、少なくとも1つのキャビティによって形成されることが提供される。
【0032】
本発明の発展によれば、セグメントの長さ、特に少なくとも1つの光起電力セルの長さが、1mm~1m、好ましくは5mm~5cmであり、セグメントは好ましくは少なくとも実質的に互いに平行に形成されることが提供される。
【0033】
本発明の発展によれば、個々のセグメントは、それぞれ光起電力セルの方向全体にわたって形成され、セグメントの形状は好ましくは異なる設計のものであることが提供される。
【0034】
本発明の発展によれば、セグメントは、少なくとも実質的に平行であり、好ましくはストリップ状に形成され、好ましくは、後続の光起電力セルのセグメントは、先行する光起電力セルと比較して、互いに平行にオフセットされていることが提供される。
【0035】
本発明の発展によれば、光起電力素子の光起電力セルが、少なくとも1つのバスバーによって電気伝導的に接続されていることが提供される。
【0036】
光起電力セルは、2つのベース及び上部接点の間の層構造の輸送及び他の層による光活性層システムの数に依存して、シングル、タンデム、又はマルチセルに分割される。タンデム及びマルチセルは、電極の間に上下に配置された少なくとも2つのサブセルから構成され、各サブセルは少なくとも1つの光活性層システムを含む。
【0037】
本発明の発展によれば、層システムが少なくとも2つの光活性層を含み、ここで光起電力セルはタンデムセルであり、層システムが好ましくは少なくとも3つの光活性層を含み、ここで光起電力セルはトリプルセルであり、及び/又は層システムが少なくとも1つの電荷キャリア輸送層をさらに含み、ここで少なくとも1つの電荷キャリア輸送層はベース電極又は上部電極と光活性層との間に配置され、層システムが、好ましくは、少なくとも第1の電荷キャリア輸送層と第2の電荷キャリア輸送層とを含み、ここで第1の電荷キャリア輸送層はベース電極と少なくとも1つの光活性層との間に配置され、第2の電荷キャリア輸送層は少なくとも1つの光活性層と上部電極との間に配置されていることが提供される。
【0038】
本発明の発展によれば、光起電力素子が有機光起電力素子、好ましくはフレキシブル有機光起電力素子であり、好ましくは有機光起電力素子の少なくとも1つの光活性層が吸収材料として低分子を有することが提供される。
【0039】
特に、フレキシブル光起電力性とは、特に、ある範囲内で曲げる及び/又は伸ばすことができる光起電力素子を意味するように理解される。
【0040】
本発明の発展によれば、光起電力素子がバイパスダイオードを含まないことが提供される。
【0041】
また、本発明の目的は、特に上述した例示的な実施形態の1つによる、少なくとも2つの光起電力素子を備えた光起電力システムを提供することによっても達成される。この光起電力システムに関して、これは、特に、少なくとも1つの光起電力セルを含む光起電力素子に関連して既に記載した利点をもたらす。少なくとも2つの光起電力素子はこの場合直列に接続される。光起電力素子は、好ましくは、互いに直列に接続された光起電力セルから構成される。光起電力セルは、好ましくは、1つの光起電力セルの上部電極を後続の光起電力セルのベース電極に電気伝導的に接続することによって直列に接続される。
【0042】
本発明の目的はまた、それぞれがベース電極と、上部電極と、ベース電極及び上部電極の間に配置された層システムとを有する、少なくとも2つの光起電力セルを含む光起電力素子、特にフレキシブル光起電力素子の製造方法であって、特に上述の例示的な実施形態の1つに従って、層システムが少なくとも1つの光活性層を有する製造方法を提供することによって達成される。この方法に関して、これは、特に、少なくとも1つの光起電力セルを含む光起電力素子に関連して、及び光起電力システムと併せて既に記載した利点をもたらす。本方法は、以下のステップを含む:
a)基板にベース電極層を提供するステップ、
b)ベース電極層が個々のベース電極に分割されるように、ベース電極層をレーザで構造化するステップ、
c)少なくとも1つの光活性層を有する層システムを、構造化されたベース電極に適用し、レーザアブレーションによって個々のベース電極に関連付けられた少なくとも1つの開口部を層システム内に形成するステップであって、ベース電極は少なくとも1つの開口部で少なくとも部分的に露出されているステップ、
d)少なくとも1つの開口部に、及び/又は少なくとも1つの開口部により層システム上に上部電極層を適用するステップであって、少なくとも1つの開口部は充填されるステップ、
e)個々の上部電極及び個々の層システムが形成されるように、上部電極層及び層システムをレーザで構造化するステップであって、第1の光起電力セルの上部電極が第2の光起電力セルのベース電極に電気伝導的に接続されるステップ、及び
f)少なくとも1つの光起電力セルの、少なくとも上部電極及び層システム、又は上部電極、層システム及び少なくとも部分的にベース電極を、レーザアブレーションによってセグメント化するステップであって、少なくとも1つの光起電力セルのセグメントが形成されるステップ。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、ステップe)及びステップf)は同時に実行される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、ステップc)でレーザアブレーションによって開口部を形成するために、ステップb)及びステップe)におけるレーザ構造化のために、及び/又はステップf)におけるセグメント化のために、少なくとも1つのレーザビームのパラメータ、好ましくはエネルギー密度、パルス期間、パルス形状、パルス周波数及び/又は波長が、ベース電極、層システム及び/又は上部電極の材料及び層厚さに依存して調整される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、ベース接点と層システム、層システムの個々の層、及び/又は層システムと上部電極は、適切な構造化、特にレーザ構造化によって電気伝導的に接続される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、層は、印刷法、好ましくはインクジェット法、スクリーン印刷法、及び/又はフレキソ印刷法、及び/又は適用される材料の蒸着によって適用される。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、ステップc)におけるレーザアブレーション、ステップb)及びステップe)におけるレーザ構造化、及び/又はステップf)におけるセグメント化におけるレーザの波長範囲は、300nm~1200nm、好ましくは400nm~1000nm、又は好ましくは450nm~800nmである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、ステップc)のレーザアブレーション及び/又はステップf)のセグメント化における少なくとも1つのレーザビームのエネルギー密度は、層システムの除去深さの関数としてアブレーションの間に調整される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、層システムは、レーザ構造化によってベース電極及び/又は上部電極に電気伝導的に接続される。
【0050】
本発明の発展によれば、上部電極層が、上部電極が得られるように少なくとも1つの光起電力セルの層システムに対して水平方向に分割され、ベース電極層が、ベース電極が得られるように少なくとも1つの光起電力セルの層システムに基づいて水平方向に分割されることが提供される。
【0051】
本発明の発展によれば、方法がロールツーロール法で使用されることが提供される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、構造化は、層システムの個々の層の適用中に行われる。本発明の代替的に好ましい実施形態において、構造化は、層システムの個々の層の適用後に行われる。
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】光起電力セルの電極を含む層システムの構造の概略図を示す。
図2】少なくとも部分的に遮光された光起電力セルの問題を明確にするために光起電力素子の概略図を側面図で示す。
図3】セグメント化された光起電力素子の例示的な実施形態の概略図を側面図及び上面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、光起電力セル2の電極3、4を含む層システム5の構造の概略図を示している。
【0056】
光起電力素子1、特に有機光起電力素子1は、少なくとも1つの光活性層6を有する一連の薄層、層システム5からなり、少なくとも1つの光活性層6は、好ましくは真空中で蒸着されるか、溶液から加工される。電気的な連結は、金属層、透明導電性酸化物及び/又は透明導電性ポリマーによって実装することができる。有機層の真空蒸着は、特に、多層太陽電池セル、特にタンデムセル又はトリプルセルを製造する際に有利である。このような光起電力セル2の層システム5が、図1に1つの例示的な実施形態において示されている。
【0057】
この例示的な実施形態では、光起電力セル2は、基板13としてガラスを有し、ITO(M)14で作られた透明ベース電極3と、フラーレンC60の層15、少なくとも1種の吸収材料及びフラーレンC60を含む光活性層16、及びDi-NPB及びNDP9で作られたpドープ正孔輸送層17からなる層システム5と、金18で作られた上部電極4とを含んでいる。
【0058】
図2は、少なくとも部分的に遮光された光起電力セル2の問題を明らかにするために、光起電力素子1を側面図で概略的に表したものである。同一且つ機能的に均等な要素には同じ参照符号が付されているので、この点については先の記載を参照されたい。
【0059】
光起電力セル2の少なくとも部分的な遮光12の場合の直列接続された光起電力セル2の問題は、遮光された光起電力セル2が、直列接続された遮光されていない又はあまり遮光されていない光起電力セル2に対して逆バイアスされたダイオードであることである。そのため、それらは光生成された電流の流出を阻害し、効率に悪影響を及ぼす。また、欠陥地点に起因して遮光された光起電力セル2に電流の集中が発生し得るリスクがあり、これにより局所的な過熱、及び最終的に光起電力セル2の不可逆的な劣化、したがって光起電力素子1の効率の損失がもたらされ得る。
【0060】
少なくとも部分的な遮光12に起因する光起電力セル2の劣化の一例を図2に示す。少なくとも部分的な遮光12は、この場合、光起電力セル2の望ましくない局所的な損傷をもたらす。
【0061】
図3は、セグメント化された光起電力素子1の例示的な実施形態を側面図及び上面図で概略的に示したものである。同一且つ機能的に均等な要素には同一の参照符号が付されているので、この点については先の記載を参照されたい。
【0062】
光起電力素子1は、ベース電極3と、上部電極4と、少なくとも1つの光活性層6を含む層システム5とを有する少なくとも1つの光起電力セル2を有し、層システム5は、ベース電極3と上部電極4との間に配置されている。少なくとも1つの光起電力セル2は、少なくとも部分的にセグメント7にセグメント化されており、セグメント化は以下のように設計される、すなわち、1つのセグメント7の少なくとも上部電極4と層システム5が、別のセグメント7の上部電極4及び層システム5から分離され、又は、1つのセグメント7の上部電極4、層システム5及び少なくとも部分的にベース電極3が、別のセグメント7の上部電極4、層システム5及び少なくとも部分的にベース電極3から分離され、それぞれの場合に、互いの接触を防止するように少なくとも1つのキャビティ8によって分離され、少なくとも1つのキャビティ8は、少なくとも1つの光起電力セル2の層システム5に対して少なくとも実質的に垂直方向に形成され、少なくとも1つの光起電力セル2のセグメント7は、少なくとも1つの光起電力セル2を通る電流の流れが個々のセグメント7に分配されるように互いに並列に電気伝導的に接続されるように、設計される。
【0063】
その結果、少なくとも1つの光起電力セル2は、少なくとも部分的な遮光12の場合及び/又は光起電力セル2の欠陥の場合、損傷することはなく、特にホットスポットによって損傷することはない。さらに、光起電力素子1の個々の光起電力セル2が遮光12された場合に効率が向上するため、光起電力素子の耐用年数が付随して向上する。有利なことに、光起電力セル2の面積の損失がないか、少なくとも実質的にないか、及び/又は光起電力セル2の性能において損失が少なくとも実質的にない。セグメント化は、現行の製造方法に特に容易に組み込むことができ、特に、レーザ構造化のプログラミングにわずかな労力を必要とするだけである。
【0064】
本発明の一構成において、光起電力素子1は、少なくとも第1の光起電力セル2と第2の光起電力セル2とを含み、少なくとも第1の光起電力セル2と第2の光起電力セル2とは直列に接続されており、第1の光起電力セル2の上部電極4は、第2の光起電力セル2のベース電極3に電気伝導的に接続され、ここで、光起電力セル2のベース電極3は、好ましくは層システム5に対して水平方向に互いに分離され、光起電力セル2の上部電極4は、層システム5に対して水平方向に互いに分離されている。好ましくは、各場合において、先行する光起電力セル2の上部電極4は、後続する光起電力セル2のベース電極3に電気伝導的に接続されている。
【0065】
本発明のさらなる構成において、層システム5の水平方向の範囲に基づいて、少なくとも1つの光起電力セル2のセグメント7の断面積9は、互いに等しく、好ましくは、セグメント7の断面積9の大きさは、少なくとも1つの光起電力セル2を通る電流の流れに依存して設計される。
【0066】
本発明のさらなる構成において、セグメント7の幅10は1cm~2m、好ましくは5cm~1mであり、及び/又は層システム5に対して水平方向に個々のセグメント7間の距離は10nm~200nm、好ましくは40nm~80nmの範囲である。
【0067】
本発明のさらなる構成において、セグメント7の長さ11、特に少なくとも1つの光起電力セル2の長さ11は、1mm~1m、好ましくは5mm~5cmであり、セグメント7は、好ましくは少なくとも実質的に互いに平行に形成されている。
【0068】
本発明のさらなる構成において、個々のセグメント7は、それぞれ光起電力セル2の全方向にわたって形成されており、好ましくはセグメント7の形状は異なる設計である。
【0069】
本発明のさらなる構成において、セグメント7は、少なくとも実質的に平行に、好ましくはストリップ状に形成され、好ましくは、後続の光起電力セル2のセグメント7は、先行する光起電力セル2と比較して、互いに平行にオフセットされている。
【0070】
本発明のさらなる構成において、光起電力素子1の光起電力セル2は、少なくとも1つのバスバーによって電気伝導的に接続されている。
【0071】
本発明のさらなる実施形態において、層システム5は、少なくとも2つの光活性層6を含み、ここで光起電力セル2はタンデムセルであり、層システム5は、好ましくは少なくとも3つの光活性層6を含み、ここで光起電力セル2はトリプルセルであり、及び/又は層システム5はさらに少なくとも1つの電荷キャリア輸送層を含み、ここで少なくとも1つの電荷キャリア輸送層はベース電極3又は上部電極4と光活性層6との間に配置され、層システム5は好ましくは、少なくとも第1の電荷キャリア輸送層と第2の電荷キャリア輸送層とを含み、第1の電荷キャリア輸送層はベース電極3と少なくとも1つの光活性層6との間に配置され、第2の電荷キャリア輸送層は少なくとも1つの光活性層6と上部電極4との間に配置されている。
【0072】
本発明のさらなる構成において、光起電力素子1は、有機光起電力素子1、好ましくはフレキシブル有機光起電力素子1であり、好ましくは有機光起電力素子1の少なくとも1つの光活性層6は、吸収材料として低分子を有する。
【0073】
本発明のさらなる構成において、光起電力素子1は、バイパスダイオードを有さない。
【0074】
少なくとも2つの光起電力素子1を直列に接続することで、光起電力システムが形成される。
【0075】
それぞれがベース電極3と、上部電極4と、ベース電極3及び上部電極4の間に配置された層システム5とを有し、層システム5が少なくとも1つの光活性層6を備える、少なくとも2つの光起電力セル2を含む光起電力素子1、特にフレキシブル光起電力素子1の製造方法は、以下のステップを含む:
a)基板13にベース電極層を提供するステップ、
b)ベース電極層が個々のベース電極3に分割されるように、ベース電極層をレーザで構造化するステップ、
c)少なくとも1つの光活性層6を有する層システム5を、構造化されたベース電極3に適用し、レーザアブレーションによって個々のベース電極3に関連付けられた少なくとも1つの開口部を層システム5内に形成するステップであって、ベース電極3は少なくとも1つの開口部で少なくとも部分的に露出されているステップ、
d)少なくとも1つの開口部に、及び/又は少なくとも1つの開口部により層システム5上に上部電極層を適用するステップであって、少なくとも1つの開口部は充填されるステップ、
e)個々の上部電極4及び個々の層システム5が形成されるように、上部電極層及び層システム5をレーザで構造化するステップであって、第1の光起電力セル2の上部電極4が第2の光起電力セル2のベース電極3に電気伝導的に接続されるステップ、及び
f)少なくとも1つの光起電力セル2の、少なくとも上部電極4及び層システム5、又は上部電極4、層システム5及び少なくとも部分的にベース電極3を、レーザアブレーションによってセグメント化するステップであって、少なくとも1つの光起電力セル2のセグメント7が形成されるステップ。層システムは、好ましくは、レーザ構造化によってベース電極3及び/又は上部電極4に電気伝導的に接続される。
【0076】
ステップe)の上部電極層と層システム5のレーザ構造化と、ステップf)のセグメント化は、同時に行ってもよい。
【0077】
本発明の構成において、上部電極層は、上部電極4が得られるように、少なくとも1つの光起電力セル2の層システム5に対して水平方向において分割され、ベース電極層は、ベース電極3が得られるように、少なくとも1つの光起電力セル2の層システム5に基づいて水平方向において分割される。
【0078】
本発明のさらなる構成において、層システム5は、少なくとも部分的に真空下の蒸着によって適用される。
【0079】
本発明のさらなる構成において、本方法は、ロールツーロール法で使用される。
【0080】
1つの例示的な実施形態において、ステップb)におけるレーザアブレーションにおいて以下のパラメータが用いられる:レーザ速度4μJ-385mm/s、及び各レーザパルスのエネルギー25kHz(1秒あたり25パルス)。
【0081】
一実施形態(図3)において、提供された基板13は、提供後に光起電力セル2のベース電極層でコーティングされ、構造化(P1)され、ベース電極層は、個々のセグメント7のベース電極3に分離される。続いて、層システム5が、ベース電極3上に適用される。層システム5は、好ましくは低分子の蒸着によって、シングルセル、タンデムセル又はマルチセルとして適用することができる。層システム5を形成するためのベース電極3の領域への個々の層の適用は、少なくとも部分的に、印刷プロセス、好ましくはインクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷又はフレキソ印刷プロセスによって、又は適用される材料の蒸着によって実施され得る。層システム5、特に層システム5の個々の層は、好ましくは、真空下の物理蒸着によって適用される。続いて、光起電力セル2の層システム5(P2)が構造化される。上部電極層が層システム5に適用され、最終的な構造化(P3)により上部電極層は個々の上部電極4に分離される。光起電力セル2の個々の層は、例えば、レーザアブレーション、電子又はイオンビームアブレーション、或いはシャドウマスクを用いて構造化することができる。
【0082】
1つの例示的な実施形態において、レーザを用いる構造P1/P2/P3に対して、以下のパラメータが用いられる:
P1:波長1030nm、線幅50μm;P2:波長515nm、線幅50μm;P3:波長1030nm、線幅100μm。P1/P2/P3はここでは直列に接続され、各セグメントは並列に接続されている。
【0083】
図3に、光起電力セル2のレーザ構造化の例示的な実施形態を示す。構造P1/P2/P3が示されている。電流の流れは矢印で示されている。この例示的な実施形態において、光生成された電流は、特に、光起電力セル2の個々のセグメント7に分割された遮光された光起電力セル2の上部電極4を介して流れ、そこで追加のP2構造化を介して改善された程度までベース電極3に流れ込むことができる。


図1
図2
図3
【国際調査報告】