(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】粒子複合体の個別列挙による分析物の検出及び定量化
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G01N33/543 545J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525449
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020057794
(87)【国際公開番号】W WO2021087006
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522170490
【氏名又は名称】ジェノティクス・バイオテクノロジーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・キン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・シー・ブリテン
(72)【発明者】
【氏名】ヤピン・ゾン
(57)【要約】
標的分析物が2つ以上の粒子に結合して分析物連結粒子複合体を形成することに基づいて、試料中の標的分析物を個別に検出及び定量化するためのシステム及び方法を本明細書に記載する。分析物連結粒子複合体は、利用される粒子の固有の物理的特徴に基づいて、未結合のシングレット粒子と対比して識別及び列挙することができる。本開示のいくつかの実施形態において、これは、1つのタイプの標的分析物を含み得るが、他の実施形態において、これは、複数の異なるタイプの標的分析物を、個々に又は分析物複合体中に含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的分析物の同時的な検出及び定量化において使用するためのシステムであって、前記システムが、少なくとも1つのサブシステムを含み、前記サブシステムが、一緒に混合される際に、分析物連結粒子複合体を形成し、前記サブシステムが、
a. 標的生物学的分析物のセットであって、各標的生物学的分析物が、
i. 複数の結合部位を有する単一の成分;及び
ii. 各成分が、少なくとも1つの結合部位を有する、複数の成分
からなる群から選択される、標的生物学的分析物のセット;
b. 固有の物理的特徴によって標識される捕捉粒子のセットであって、各捕捉粒子が、選択された標的生物学的分析物の第1の結合部位に結合することができる、捕捉粒子のセット;並びに
c. 固有の物理的特徴によって標識される検出粒子のセットであって、各検出粒子が、前記標的生物学的分析物の前記第1の結合部位と異なる前記標的生物学的分析物の第2の結合部位に結合することができる、検出粒子のセット
を含み、
それにより、前記標的生物学的分析物のセットと前記捕捉粒子のセット及び前記検出粒子のセットの両方との混合が、
a. i. 捕捉粒子のため;及び
ii. 検出粒子のため
の両方の前記標的生物学的分析物の結合部位にそれぞれ結合する捕捉粒子及び検出粒子を有する分析物連結粒子複合体を形成し、
b. そのようにして形成された前記分析物連結粒子複合体が、少なくとも1つの捕捉粒子、少なくとも1つの標的生物学的分析物、及び少なくとも1つの検出粒子を一緒に連結し、
そのようにして形成された前記分析物連結粒子複合体が、未結合の捕捉粒子及び検出粒子を含む混合物中に存在する前記分析物連結粒子複合体を個別的に識別及び列挙することによって、前記標的生物学的分析物の検出及び定量化を可能にする、
システム。
【請求項2】
前記標的生物学的分析物が、
a.前記捕捉粒子;及び
b.前記検出粒子
からなる群から選択される1つのタイプの粒子にコンジュゲートされる試薬に結合し得、
前記試薬が、
a.共有結合;及び
b.親和性タグ
からなる結合機構の群から選択される結合機構によって前述の群から選択されるそのタイプの粒子に結合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの選択された捕捉粒子及び1つの選択された検出粒子が、前記標的生物学的分析物のそれらのそれぞれの結合部位に直接結合する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出粒子が、分子プローブを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記標的生物学的分析物に結合する標識された捕捉粒子上の分子プローブの平均数が、前記標的生物学的分析物の濃度を測定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
そこに含まれるカップリング試薬を有する前記分析物連結粒子複合体内の少なくとも1つの結合親和性が、モジュレート剤を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
複数のサブシステムに含まれる各サブシステムが、適切な方法によって、同時に識別及び列挙され得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
複数のサブシステムに含まれる各サブシステムを同時に及び個別的に識別及び列挙するための適切な技法が、
a.光学特性を測定するための技法;
b.電子特性を測定するための技法;
c.電磁特性を測定するための技法;
d.蛍光特性を測定するための技法;
e.放射性同位体特性を測定するための技法;
f.化学特性を測定するための技法;
g.質量特性を測定するための技法;
h.サイズ特性を測定するための技法;
i.親和性特性を測定するための技法;
j.物質組成特性を測定するための技法;及び
k.密度シグネチャー特性を測定するための技法
からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
複数のサブシステムに含まれる各サブシステム内の様々な分析物連結粒子複合体及び未結合粒子を同時に及び個別的に識別及び列挙することが、
a.フローサイトメーター;
b.イメージング顕微鏡;及び
c.レーザー走査顕微鏡
からなる群から選択されるシステムに含まれるマルチパラメーター粒子計数器によってもたらされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記標的生物学的分析物の濃度が、分析物連結粒子複合体の少なくとも1つの群を個別的に識別及び列挙することに由来し、分析物連結粒子複合体の各群が、固有の数の捕捉粒子及び固有の数の検出粒子からなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのタイプの生物学的分析物を同時に検出及び定量化するための方法であって、各生物学的分析物が、
i.複数の結合部位を有する単一の成分;及び
ii.各成分が、少なくとも1つの結合部位を含む、複数の成分
からなる群から選択され;
前記方法が、
a. i.少なくとも1つの標的生物学的分析物;
ii.そのそれぞれの標的生物学的分析物の第1の結合部位に結合することができる少なくとも1つの捕捉粒子;及び
iii.前記標的生物学的分析物の前記第1の結合部位と異なる、そのそれぞれの標的生物学的分析物の第2の結合部位に結合することができる少なくとも1つの検出粒子
からなる分析物連結粒子複合体を形成する工程;並びに
b.前記粒子の固有の物理的特徴に基づいて、未結合の捕捉粒子及び検出粒子を含む混合物中の前記分析物連結粒子複合体を個別的に識別及び列挙する工程
を含む、方法。
【請求項12】
試薬が、
a.選択された捕捉粒子;及び
b.選択された検出粒子
からなる群から選択される1つのタイプの粒子にコンジュゲートされ、
前記試薬が、
a.共有結合;及び
b.親和性タグ
からなる結合機構の群から選択される結合機構によって前述の群から選択されるそのタイプの粒子に結合しており、
前記試薬が、選択されたタイプの粒子が結合する選択された標的生物学的分析物の結合部位にも結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択された捕捉粒子及び選択された検出粒子の少なくとも1つが、前記標的生物学的分析物のそれらのそれぞれの選択された結合部位に直接結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記検出粒子が、分子プローブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記標的生物学的分析物に結合する標識された捕捉粒子上の分子プローブの平均数が、前記標的生物学的分析物の濃度を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
そこに含まれる前記分析物連結粒子複合体及びカップリング試薬内の少なくとも1つの結合親和性が、前記分析物連結粒子複合体が形成される混合物にモジュレート剤を導入することによって影響を受ける、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
任意の適切な方法による様々な分析物連結粒子複合体及び未結合粒子を同時に及び個別的に検出、識別及び列挙することが、様々な分析物連結粒子複合体のサブシステムを互いから識別する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
様々な分析物連結粒子複合体及び未結合粒子を同時に及び個別的に検出、識別及び列挙することが、
a.光学特性を測定するための技法;
b.電子特性を測定するための技法;
c.電磁特性を測定するための技法;
d.蛍光特性を測定するための技法;
e.放射性同位体特性を測定するための技法;
f.化学特性を測定するための技法;
g.質量特性を測定するための技法;
h.サイズ特性を測定するための技法;
i.親和性特性を測定するための技法;
j.物質組成特性を測定するための技法;及び
k.密度シグネチャー特性を測定するための技法
からなる群から選択される少なくとも1つの技法によってもたらされる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
様々な粒子複合体及び未結合粒子を同時に及び個別的に検出、識別及び列挙することが、
a.フローサイトメーター;
b.イメージング顕微鏡;及び
c.レーザー走査顕微鏡
を含む群から選択されるマルチパラメーター粒子計数器によってもたらされる、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記標的生物学的分析物の濃度が、分析物連結粒子複合体の少なくとも1つの群を個別的に識別及び列挙することに由来し、分析物連結粒子複合体の各群が、固有の数の捕捉粒子及び固有の数の検出粒子からなる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、概して、生物学的分析物を分析及び定量化する技術分野、並びに特に、改善された正確性と感度、より広いダイナミックレンジ、及び簡略化されたワークフローを提供するそれらのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
高感度分析的測定は、現代の科学及び医学の根幹をなすものである。タンパク質及び他の小粒子の測定も、生物医学研究及び医療診断に幅広く必須である。しかしながら、ほとんどの生物医学的アッセイは、単一の分析物を、特に、複合試料マトリックス内で、正確に測定するための感度及び精度が欠如している。ほとんどのタンパク質及び小粒子アッセイは、バルク分析を中心にフォーマットされ、多くの場合、シグナル増幅を必要とする。バルク分析は、システム全体に関して有用な情報を提供することができ、且つそれを提供するが、それらは、一般に、分析物又は分析物の下位集団の複数の特徴を同定及び定量化するそれらの能力を妨げる根本的な限界を常に有している。この問題は、標的タンパク質及び他の分析物の濃度が極めて低く、標的分析物よりも数桁高い濃度で存在する多くの非標的分析物が存在し、且つ更にデータ又は診断的読み出し情報の精度及び正確性が必須である、複合試料、例えば、血清、尿又は唾液で特に問題であり得る。
【0003】
特異的タンパク質を定量化するための最も一般的に使用される生物医学的アッセイとしては、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、ウエスタンブロット及び質量分析が挙げられる。ELISAは、プレート又はマイクロビーズの表面にコーティングされた特異的抗体で標的分析物を捕捉すること、次いで、濃度範囲を超える抗体-分析物サンドイッチを検出するために、その後のシグナル増幅、一般的に、色素、発光又は蛍光のシグナル増幅を可能にする特異的な二次酵素コンジュゲート抗体で分析物を標識することによって、機能する。典型的には、ELISAは、限定的なダイナミックレンジのみを提供し、広範囲に及ぶ試料の精製及び洗浄を必要とし、較正曲線と比較しなければならないアナログデータを生成し、且つインキュベーション時間における小さな変化、試薬品質のロット間の変動、洗浄及び異なる濃度での結合平衡の変化に起因する分析物又は抗体の損失、温度又は光のような実験条件のわずかな相違、シグナルを生成するために必要とされる多くの基質及び緩衝液成分の濃度の精度、並びに保管中の経時的な様々なアッセイ成分の安定性の相違にさえ起因する可変の結果を必然的に生じる。ほとんどの場合において、ELISAは、pM範囲のより低い検出限界(LOD)を有するが、ほとんどの関連のある生物医学的分析物が、aM~fM範囲で血清中に存在し、それらが、尿及び唾液中ではより低い桁数であり得ると言われている。複数の工程のためのインキュベーション時間をそれぞれ10時間を超えて長くすること、捕捉表面積を劇的に増加させること、及び/又は蛍光発生基質若しくは放射性同位体標識基質を使用することで、LODをゼプトモル濃度(zM)範囲にまで下げて低下させる可能性を有することが示されている。しかしながら、これは、診断アッセイのための、特に、ポイントオブケアタイプの環境又は多くの患者の試料及び/若しくは時間が必須となる任意の状況のための実際上のワークフローではない。
【0004】
ウエスタンブロット及び質量分析のような方法はより定性的であるが、定量化を、シグナル強度を参照標準と相互に関連付けることによって試みることができる。これは、一部の状況、特に、より定量的な方法が開発されていない状況では十分であり得るが、診断目的のための正確な手法ではない。これらの方法は、実際に、ELISAの開発及び最適化に極めて重要であるが、ELISAは、より正確な分析定量化のために微調整される。
【0005】
単一の分析物定量化のためのより最近の技術開発は、デジタルELISAである。この方法は、単一の標的分析物をビーズの細画分上で捕捉するのに十分な特定の比で抗体コーティングマイクロビーズを利用し、次いで、従来のELISAと同様に、標的分析物を酵素コンジュゲート検出抗体で標識する。従来のELISAからの相違及びアッセイをデジタル化するものは、最適には最大でも1つのタンパク質を捕捉する個々のビーズが、次いで、50K~200Kウェルアレイ(単一分子アレイと呼ばれる)の別々のフェムトリットル(fL)サイズのウェルにばらまかれ、酵素基質への曝露後に、蛍光顕微鏡及び光学顕微鏡の両方によって個別的に計数されることである。ビーズはfLサイズのウェル内で捕捉されるので、それぞれの個々のビーズを取り巻く体積は十分に少なく、これは、極めて低濃度の検出酵素からでさえ酵素シグナル発生を可能にして、陽性のウェルが陰性のウェルから識別され得るポイントを増加させる。蛍光ウェル中の各ビーズは活性と表され、活性ビーズのパーセンテージは、光学顕微鏡によって決定される全体のビーズカウントに対して算出される。
【0006】
「標的分析物検出及び溶液中の標的分析物濃度の決定のための方法及びアレイ」という表題の特許協力条約(「PCT」)公開特許出願の国際公開第2007/098148 A2号は、単一分子のアレイ、及び10アトリットル~50ピコリットルの間の規定された体積のための単一分子のアレイを生成する方法の両方を開示している。開示された方法は、機能を発見するため、結合パートナー若しくは阻害剤を検出するため、及び/又は速度定数を測定するために、生体分子、例えば、酵素に対する単一分子を検出及び定量化することを可能にする。0対1又はそれより多くのタンパク質の明確な識別を伴うデジタルカウントは、従来のELISAのノイズ障壁を低減することによって、タンパク質検出の感度を大きく増強する。残念ながら、デジタルELISAにおける有限数のマイクロウェルは、アッセイのダイナミックレンジを制限する。加えて、アッセイにおける酵素濃度は、バックグラウンドのノイズを最小化し、シグナル飽和を防止するために注意深くバランスを取らなければならない。
【0007】
全てのELISAに基づく方法についての1つの主要な問題は、試薬を、一貫した標識化を生じさせるために、標的分析物濃度に対して過剰に供給しなければならないことである。この理由のために、洗浄方法を各標識化工程の後に使用して、過剰の依然として遍在する未結合の試薬を除去し、このようにして、最終測定に対する結果として生じる妨害を最小化しなければならない。洗浄工程は、時間及びリソースを消費するだけでなく、結合試薬及び遊離試薬の間で確立される平衡も変化させ、これは、バイアス及び標識分析物の損失をもたらし得る。加えて、酵素的増幅は、酵素動力学、非特異的活性、正確な試薬の品質又は量、ロット間の変動及び加齢関連の機能喪失における相違を含む種々の理由のために、可変のシグナルアウトプットをもたらす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/098148 A2号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Howard M.、Shapiro in Practical Flow Cytometry、第4版(Wiley、2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、正確性及び感度の増加、より広いダイナミックレンジ、並びに簡略化されたワークフローを有する改善された分析物定量化についての当技術分野における必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の開示
本開示は、改善された正確性及び感度、より広いダイナミックレンジ、並びに簡略化されたワークフローを有する生物学的分析物の分析及び定量化を改善するためのシステム及び方法を提供する。
【0012】
本開示の主要な実施形態において、システム及び方法は、単一分析物レベルで試料中の1つのタイプの標的分析物を検出及び列挙するために提案される。システムは、粒子の2つの区別された群:捕捉粒子及び検出粒子からなる。捕捉粒子は、標的分析物のある特定の結合部位又はエピトープに対する特異的な親和性を有する分析物特異的試薬とコンジュゲートされる。検出粒子は、同じ標的分析物の第2の結合部位又はエピトープに対する特異的な親和性を有する別の分析物特異的試薬とコンジュゲートされる。標的分析物を含有する試料が捕捉粒子及び検出粒子と混合されると、分析物連結粒子複合体が形成され得る。試料混合物中の標的分析物の濃度が捕捉粒子及び検出粒子の濃度よりも著しく低い場合、複合体は、大部分が、単一の標的分析物を通して単一の検出粒子に連結された単一の捕捉粒子からなる粒子ダブレットであろう。これ以降、未結合シングレット粒子と称される分析物に結合していない粒子に対して分析物連結粒子ダブレットの個別の検出、識別及び列挙を可能にする方法で試料混合物を分析することによって、試料中の標的分析物の濃度は、正確に決定され得る。
【0013】
より高い標的分析物濃度では、複数の分析物を含有するより高次の粒子複合体が形成され得る。未結合シングレット粒子に対して全ての分析物連結粒子マルチプレットの個別の検出、識別及び列挙を可能にする方法で試料混合物を分析することによって、試料中の標的分析物の濃度は、再び、正確に決定され得る。
【0014】
本開示において議論される試薬の分析物特異性は、文字通り解釈されるべきではないことに留意されたい。本開示における捕捉粒子は、試薬のコレクションCにコンジュゲートされてよく、検出粒子は、分析物の群Aを標的にするCの部分及びA又はAの下位群のいずれかを標的にする試薬の別のコレクションDの部分を伴って、Dにコンジュゲートされてよい。ここで、C及びDが、同一であってよく、又は部分的に重複してよく、又は全体的に異なってよいことも留意すべきである。
【0015】
本開示の前述の実施形態並びに後続の実施形態において、当業者には、粒子、例えば、捕捉粒子又は検出粒子が参照される特定の命名法が、本開示の説明を単純化するために使用されることは明らかであるはずである。実際に、両方のタイプの粒子は、形態及び同一性の両方で交換することができ、その代わりに、システムは、未結合シングレット粒子から個別的に識別可能である分析物連結粒子複合体を形成することができる2つ以上の粒子の群(例えば、群1、群2等)を含むと考えられ得る。
【0016】
本開示の別の実施形態において、システム及び方法は、単一の分析物レベルで試料中の複数のタイプの標的分析物を同時に検出及び列挙するためにマルチプレックスアッセイについて提案される。システムは、粒子の2つの別個の群:捕捉粒子及び検出粒子を含み、捕捉粒子は、下位群に更に分割され、捕捉粒子の各下位群は、ある特定の物理的特徴で固有に標識される。捕捉粒子は、特定のタイプの標的分析物のある特定の結合部位又はエピトープに対する特異的な親和性を有する分析物特異的試薬とそれぞれコンジュゲートされる。検出粒子は、それらのそれぞれのタイプの標的分析物の第2の結合部位又はエピトープに対する特異的な親和性を有する異なるセットの分析物特異的試薬のうちの1つとそれぞれコンジュゲートされる。標的分析物を含有する試料が捕捉粒子及び検出粒子と混合される場合、複数の分析物連結粒子複合体の群が形成され得、1つのタイプの分析物並びに対応する検出粒子及び捕捉粒子の下位群とそれぞれ会合され得る。捕捉粒子標識に従って識別及び群化することによって、試料中の多数のタイプの分析物を、本開示の第1の実施形態において提案されるものと同じ方法で分析される各タイプの分析物とともに同時に分析することができる。
【0017】
当業者には、本開示のマルチプレックスアッセイの実施形態は、検出粒子又は捕捉粒子及び検出粒子の両方を区別して標識することによっても実行され得ることは明らかであるはずである。
【0018】
本開示の関連する実施形態において、前に提案されたマルチプレックスアッセイの実施形態は、1つ又は複数の従来のアナログアッセイと組み合わされてよい。例えば、標識された捕捉粒子の1つの下位群に対応する1つの下位群の分析物特異的検出粒子は、分析物特異的分子プローブ、例えば、蛍光分子と直接コンジュゲートされた分析物特異的検出試薬によって置き換えられ得る。結果として、対応する分析物の濃度は、分析物連結粒子複合体の列挙からの代わりに、分析物連結粒子と分子プローブとのサンドイッチの平均蛍光強度から抽出される。そのような組合せマルチプレックスアッセイの1つの可能な適用は、1つの試料中で、分析物連結粒子複合体を使用して低存在量の分析物を、及び分析物連結粒子と分子プローブとのサンドイッチを使用して高存在量の分析物を同時に測定することである。当業者には、この例が、多数のタイプの粒子コンジュゲート試薬及び分子検出試薬を組み合わせるアッセイに拡張することができることは明らかであるはずである。
【0019】
本開示の更に別の実施形態において、システム及び方法は、単一の分析物レベルで試料中の分析物-分析物相互作用を研究する。システムは、粒子の2つの別個の群:捕捉粒子及び検出粒子からなる。捕捉粒子は、第1の標的分析物のある特定の結合部位又はエピトープに対する特異的な親和性を有する分析物特異的試薬とコンジュゲートされる。検出粒子は、第2の標的分析物のある特定の結合部位又はエピトープに対する特異的な親和性を有する分析物特異的試薬とコンジュゲートされる。2つの分析物を含有する試料が捕捉粒子及び検出粒子と混合されると、2つの異なる標的分析物間の相互作用に起因して、分析物連結粒子複合体が形成され得る。したがって、分析物複合体は、本開示の第1の実施形態と同じ方法で分析され得る。本開示のいくつかの実施形態において、第1の標的分析物に特異的な検出粒子の別の群も、その濃度、及びその結果として部分占有を同時に測定するために導入され得る。本開示の更に他の実施形態において、1つ又は複数の標的分析物は、中間の捕捉試薬及び/又は検出試薬なしで捕捉粒子及び/或いは検出粒子に直接的若しくは間接的に結合又はコンジュゲートされ得るか、第2の標的分析物が実際に捕捉試薬及び/又は検出試薬であり得る。当業者には、本開示の分析物-分析物相互作用アッセイの実施形態も、本開示の前のマルチプレックスアッセイの実施形態において議論されるように、マルチプレックス化され得ることは明らかであるはずである。
【0020】
本開示の提案された実施形態は、分析物連結粒子複合体の個別の検出及び列挙を通して分析物又は分析物複合体の濃度を測定することに焦点を合わせているが、当業者には、それらが、モジュレート剤、例えば、薬物、医薬品、タンパク質、キナーゼ、転写因子、ペプチド、糖、オリゴ糖、多糖、核酸、脂質、界面活性剤、ホルモン、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、活性化剤、阻害剤、小分子活性化剤、小分子阻害剤、他の分子、及び/又はこれらの組合せ若しくは複合体の導入に起因する変化を含む、分析物-試薬若しくは分析物-分析物相互作用を研究するための動力学及び/又は動態アッセイとして容易に実行することができることは明らかであるはずである。そのようなアッセイは、医薬品開発を最適化するため、薬物の有効性及び選択を決定するため、オフターゲット応答に対するオンターゲット応答を解明するため、異なる実験的及び生理学的状態における有効な濃度を同定するため、薬力学を解明するため、シグナル伝達及び代謝経路をマッピングするため、抗体製造を最適化するため、並びに多くの他の研究及び/又は開発適用のために使用され得る。
【0021】
本開示の様々な実施形態において議論される捕捉粒子及び検出粒子並びに分析物連結粒子複合体は、それらの識別可能なサイズ、質量、化学的、光学的、電気的、磁気的、放射性同位元素的及び/又は生物学的な特性を活用する任意の粒子計数技法を使用して、弁別的に特徴付けられ得る。例えば、固有の光学特性、例えば、光散乱、吸収及び/又は蛍光を有する粒子は、マルチパラメーター粒子計数器、例えば、Howard M.、Shapiro in Practical Flow Cytometry、第4版(Wiley、2003年)によって記載されているようなフローサイトメーター、又はイメージング顕微鏡若しくはレーザー走査顕微鏡を使用して、弁別的に計数され得る。固有のサイズを有する粒子は、インピーダンスに基づく粒子計数器を使用して、弁別的に計数され得る。或いは、本開示の様々な実施形態に記載される捕捉粒子及び検出粒子並びに分析物連結粒子複合体の弁別的計数の、試料からの抽出を可能にする任意の測定技法が利用され得る。
【0022】
本開示の様々な実施形態において、分析物は、目的の任意の試験分子又は粒子を指し、限定されるものではないが、タンパク質、キナーゼ、転写因子、抗体、受容体、ペプチド、サイトカイン、ケモカイン、糖、オリゴ糖、多糖、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド複合体、一本鎖核酸配列、二本鎖核酸配列、天然ポリマー、合成ポリマー、脂質、界面活性剤、ホルモン、成長因子、ミセル、リポソーム、リポタンパク質、細胞外小胞、エキソソーム、オンコソーム(oncosome)、ウイルス、ウイルス様粒子、細胞、細胞断片、天然粒子、合成粒子、合成化合物、植物由来化合物、動物由来化合物、化学物質、薬物、医薬品、活性化剤、阻害剤、小分子活性化剤、小分子阻害剤、モジュレーター、及び/又はこれらの組合せ若しくは複合体が挙げられる。本開示のいくつかの実施形態において、分析物は、粒子表面にコンジュゲートされる同種の捕捉試薬及び/又は検出試薬によって捕捉粒子及び/又は検出粒子に結合するように標的にされてよいが、他の実施形態において、分析物は、中間の捕捉試薬及び/若しくは検出試薬を使用することなく、例えば、共有結合又は親和性タグの使用によって、捕捉粒子及び/或いは検出粒子に直接的若しくは間接的に結合又はコンジュゲートされてよい。本開示の様々な実施形態は、いかなる特定の分析物にも限定されない。
【0023】
本開示の実施形態において、捕捉試薬及び検出試薬は、標的分析物の部位又はエピトープに結合するあらゆるものであり得、限定されるものではないが、抗体、結合タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質複合体、糖、オリゴ糖、多糖、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド複合体、一本鎖核酸配列、二本鎖核酸配列、アプタマー、天然ポリマー、合成ポリマー、医薬品、薬物、脂質、界面活性剤、ミセル、リポソーム、リポタンパク質、細胞外小胞、エキソソーム、オンコソーム、ウイルス、ウイルス様粒子、細胞、細胞断片、化学物質等が挙げられる。本開示のいくつかの実施形態において、1つ若しくは複数の捕捉試薬及び/又は検出試薬は、標的分析物として、特に、分析物-試薬及び/又は分析物-分析物相互作用アッセイにおいて機能し得る。本開示のいくつかの実施形態において、結合は特異的であってよく、他の実施形態において、結合は意図的に非特異的であってよい。本開示のいくつかの実施形態において、捕捉試薬及び/又は検出試薬は、捕捉粒子及び/又は検出粒子に直接コンジュゲートされてよいが、他の実施形態において、捕捉試薬及び/又は検出試薬は、例えば、親和性タグの使用によって、捕捉粒子及び/又は検出粒子に間接的にコンジュゲートされてよい。本開示の様々な実施形態は、任意の特定の捕捉試薬又は検出試薬に限定されることを意図するものではない。
【0024】
本開示の実施形態において、親和性タグは、第2の分子若しくは結合パートナーに対する親和性を有するか、又は第2の分子又は結合パートナーによって同定及びより一般的に標的にされ得る任意の分子又は要素を指し、成分の対に区別してコンジュゲートされる場合、2つの成分を複合体に一緒に連れて行くために使用され得る。そのような親和性タグとしては、限定されるものではないが、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラアビジン、赤血球凝集素、ポリヒスチジン、マルトース結合タンパク質、myc、グルタチオン-s-トランスフェラーゼ、FLAG、プロテインA、プロテインG、プロテインL、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、一本鎖核酸配列、二本鎖核酸配列等が挙げられる。本開示の他の実施形態において、捕捉試薬及び/若しくは検出試薬の特定の対について種起源に相違があるか、又は試薬間、例えば、マウス対ウサギ抗体、IgG対IgM、IgGl対IgG3等の間で相違を可能にするいくつかの一般的な相違がある場合、その結果、これらの相違は、親和性タグに類似して機能する捕捉粒子及び/又は検出粒子に直接的又は間接的にコンジュゲートされた、種、クラス又はアイソタイプの特異的標的化試薬、例えば、抗マウスIgG3特異的抗体によっても標的化され得る。この文脈において、本開示の実施形態に関して、種、クラス及びアイソタイプの特異的標的化試薬及び/又は抗体は、親和性タグ及び/又は試薬を構成する。本開示のいくつかの実施形態において、親和性タグは、捕捉試薬及び/又は検出試薬を、捕捉粒子、検出粒子、その両方の粒子又はそのどちらでもない粒子にコンジュゲートするために使用され得る。本開示の他の実施形態において、親和性タグは、捕捉粒子及び/又は検出粒子に直接分析物を特異的又は非特異的に結合するために使用され得、この状況において、特定の捕捉試薬及び/又は検出試薬が必要ではない場合がある。本開示の様々な実施形態は、いかなる特定の親和性タグ又は試薬にも限定されない。
【0025】
最後に、本開示のこれらの実施形態において、捕捉試薬及び検出粒子は、任意の無機物質、有機物質若しくは生体物質から構成され得るか、又は物質の複合体であり得、限定されるものではないが、ポリスチレン、シリカ、ガラス、金属、磁石、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質複合体、糖、オリゴ糖、多糖、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド複合体、一本鎖核酸配列、二本鎖核酸配列、アプタマー、天然ポリマー、合成ポリマー、脂質、界面活性剤、ミセル、リポソーム、リポタンパク質、細胞外小胞、エキソソーム、オンコソーム、ウイルス、ウイルス様粒子、細胞、細胞断片等が挙げられる。捕捉粒子及び検出粒子はまた、ある特定の固有の物理的、化学的及び/又は生物学的な特徴で標識されてもよい。更に、捕捉粒子及び検出粒子は、それらが個別的に検出及び列挙され得る限り、任意のサイズ、形状又は物質の均一性のものであってよい。本開示のいくつかの実施形態において、粒子は、1nm~100μmの直径である。本開示の他の実施形態において、粒子は、2nm~10μmの直径である。本開示の更に他の実施形態において、粒子は、5nm~2μmの直径である。本開示の好ましい実施形態において、粒子は、10nm~1μmの直径である。
【0026】
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示に記載される分析物連結粒子複合体の第1の実施形態の略図である。
【
図2】単一の分析物システムにおいて形成され得る様々な粒子及び分析物連結粒子複合体の略図である。
【
図3】本開示のマルチプレックスアッセイにおいて形成され得る分析物連結粒子複合体の略図である。
【
図4】一方は捕捉粒子に、他方は検出粒子に結合する2つの部分の間で形成される分析物複合体を表す図である。
【
図5】単一粒子の光散乱及び蛍光の検出に基づく、本開示によるシステムから抽出され得る可能なデータを表す図である。
【
図6】蛍光標識された捕捉粒子及び検出粒子を使用する単一粒子の蛍光の検出に基づく、本開示によるシステムから抽出され得る可能なデータを表す図である。
【
図7】低濃度、中濃度及び高濃度のヒトPSAを分析するための類似の濃度での蛍光捕捉粒子及び蛍光検出粒子を使用する本開示の特定の実行によって生成した、実験に基づく2D蛍光ヒストグラム及び列挙の結果を表す図である。
【
図8】低濃度、中濃度及び高濃度のヒトPSAを分析するための類似の濃度での蛍光捕捉粒子及び蛍光検出粒子を使用する本開示の特定の実行から得られた、2つの蛍光次元において形成する様々な分析物連結粒子マルチプレットを個別的に分析するために使用されるゲーティンググリッドの例を表す図である。
【
図9】単一粒子の光散乱及び蛍光の検出に基づく本開示のマルチプレックスアッセイから抽出され得るデータを表す図である。
【
図10】アナログシグナル検出に対する粒子及び分析物連結粒子複合体の列挙を比較する、本明細書に開示される技法を使用して抽出され得るデータといくつかの公知の技法から抽出され得るデータとの間のいくつかの相違を表す図である。
【
図11】より高い分析物の濃度範囲にシフトしている、より高次の分析物連結粒子複合体に対する分析物連結粒子ダブレットの異なる線形範囲を表す図である。
【
図12】分子試薬に対する粒子コンジュゲート試薬の使用を比較する、本開示の技法と公知の技法との間の有意差を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明を実施するための最良の形態
本開示は、試料中の個々の分析物の個別の検出及び定量化のためのシステム及び方法を提示する。より具体的には、本開示は、標的分析物への2つの粒子、即ち、第1の分析物特異的捕捉粒子、及び第2の分析物特異的検出粒子の結合を用い、それによって、分析物連結粒子複合体を形成する。本開示のいくつかの実施形態において、1つのタイプの分析物は、捕捉粒子及び検出粒子の1つのセットによって標的にされてよいが、他の実施形態において、複数のタイプの分析物は、ある特定の識別可能な物理的特徴でそれぞれ固有に標識された異なる下位群の捕捉粒子及び/又は検出粒子を使用して同時に標的にされてよい。
【0029】
本開示の1つの実施形態において、個々の標的分析物は、最初に捕捉粒子によって結合され、次いでその後、検出粒子によって結合される。本開示の他の実施形態において、捕捉粒子及び検出粒子は、試料に同時に添加されるが、更に他の実施形態において、試料は、捕捉粒子及び検出粒子を含有する溶液に添加されてよい。
【0030】
試料を粒子と混合する具体的な順番又は順序は本開示に重要ではないことは当業者によって理解されるであろう。次いで、任意の粒子下位群を識別するのと一緒に、未結合シングレット粒子に対して分析物連結粒子複合体の個別の検出、識別及び列挙を可能にする方法での試料混合物の分析を使用して、試料中の1つ又は複数のタイプの標的分析物の濃度を正確に決定することができる。
【0031】
本開示の好ましい実施形態において、粒子及び粒子複合体は、マルチパラメーター粒子計数器、例えば、フローサイトメーター、又はイメージング顕微鏡若しくはレーザー走査顕微鏡によって分析される。分析物連結粒子ダブレットは、単一の分析物の個別の検出を提示し、これは、分析される体積あたりの分析物の総数を与えるように直接的に計数され得る。より高次の粒子マルチプレットは、蛍光、光散乱及び/又は他の光学的シグネチャーをより高い強度に個別的にシフトし、追加分析物の個別の包含を提示する。したがって、分析される体積あたりで計数された分析物の総数は、各タイプの粒子複合体の数の合計に各複合体に含有される分析物の対応する数を掛けて誘導することができる。言い換えれば、Naが分析される体積あたりで計数された分析物の総数であり、Nmがm個の分析物を含有する計数された粒子複合体の数である場合、その結果、以下である。
【0032】
【0033】
更に、十分な分析物結合親和性並びに過剰の捕捉粒子及び検出粒子により、Naは、分析物のモル濃度に直接変換することができる。非平衡状態で、又はより低い分析物結合親和性を有する捕捉試薬及び/若しくは検出試薬を使用する場合、Naは、分析物のモル濃度を決定するための標準曲線と比較され得る。
【0034】
本開示の第1の実施形態において、システム及び方法は、液体試料マトリックス内の1つのタイプの分析物の個別の検出及び定量化に関連する。
図1に示されるように、これは、分析物101を第1の捕捉粒子102及び第2の検出粒子103に結合させること、分析物連結粒子ダブレット104を形成することによって達成される。捕捉粒子102の分析物特異性は、分析物特異的捕捉試薬105の特異性によって提供され、これは、例えば、共有結合、又は限定されるものではないが、ビオチン、ストレプトアビジン、赤血球凝集素、ポリヒスチジン、グルタチオン-s-トランスフェラーゼ等を含む親和性タグにより、直接的又は間接的な結合106によって粒子にコンジュゲートされ得る。同様に、検出粒子103の特異性は、分析物特異的検出試薬107の特異性によって提供され、これは、直接的又は間接的な結合106によって粒子にコンジュゲートされ得る。
【0035】
タンパク質分析物のための代表的な捕捉試薬又は検出試薬は、分析物特異的抗体であり、これは、本開示の多数の図において表される特徴的なY形状を有する。しかしながら、開示されるシステムは、いかなる特定のタイプの捕捉試薬又は検出試薬にも限定されない。根本的に、捕捉試薬又は検出試薬は、特異的又は非特異的に、標的分析物に結合する任意の分子又は実体であり得る。捕捉試薬及び検出試薬は、好ましくは、
図1中の108及び109として示される2つの異なる結合部位で分析物に結合するが、いくつかの例において、実験目標は、特定の結合部位に対する2つ以上の結合試薬についての競合を分析することであり得る。本開示のいくつかの実施形態において、捕捉粒子及び/又は検出粒子は、1つの特異的なタイプの分析物に結合するようにそれぞれ標的にされ得るが、他の実施形態において、捕捉粒子及び/又は検出粒子は、特異的に又は非特異的に、異なるタイプの分析物の混合物に結合することが意図され得る。後者の場合において、アッセイの特異性は、1つ又は複数の検出試薬の特異性に依存するであろう。
【0036】
本開示の図において、捕捉粒子102及び検出粒子103は、本開示の特定の実施形態の説明を簡略化するために、それらの表面にコンジュゲートされた1つのみ又はいくつかの捕捉試薬105又は検出試薬107とともにそれぞれ描写される。しかしながら、実際には、特定の最大数若しくは最小数の捕捉試薬又は検出試薬なしで、各粒子にコンジュゲートされる無制限の数の捕捉試薬又は検出試薬が存在し得る。捕捉試薬又は検出試薬の正確な数は、
1.捕捉試薬又は検出試薬のサイズ;
2.サイズ、及びしたがって、捕捉粒子又は検出試薬の表面積;
3.粒子製造の間に使用される捕捉試薬又は検出試薬の濃度;
4.捕捉試薬又は検出試薬の特異的なモル比を変更するために、及びしたがって、捕捉又は検出粒子の表面へのコンジュゲートについてそれらと競合させるために、反応混合物の製造への代替の試薬又は物質の添加、;並びに
5.特異的な製造のプロトコール及び手順の他の詳細
に依存する。
【0037】
前述の制約は、当業者には明らかであり、図面の図に付随して表される粒子が本開示を説明する目的で簡略化されていることは明確であろう。
【0038】
粒子が特定の試薬の1つのみのコピーとコンジュゲートすることは理論的に可能であり得るが、これは、実際には、任意の時間的間隔の間に試料混合物中の分析物と粒子との間で起こる任意の特定の衝突の間に、分析物が捕捉試薬又は検出試薬の場所で捕捉粒子又は検出粒子に適正に接触するであろう可能性を著しく減少させるであろうために、ほとんどのアッセイにおいてそれらの機能性に著しい制限を課す。対照的に、粒子上のより高い試薬密度は、より高い局所試薬濃度を意味し、これは、バルク中で均一に分布している同等の濃度の分子試薬に匹敵する平衡反応における分析物-試薬結合形成に有利に働く。
【0039】
本開示の第1の実施形態は、単一の分析物によって一緒に結合される捕捉粒子及び検出粒子の対をそれぞれ含む分析物連結粒子ダブレットの形成を記載するが、
図2は、分析物の粒子に対する濃度比に応じて、反応混合物中で形成され得るか、又はそこに残り得る、各種の代替の可能性を図示する。第1に、
図2Aに示されるように、捕捉粒子102及び/又は検出粒子103が分析物101に結合しない場合、特に、分析物101の濃度が捕捉粒子及び/又は検出粒子の濃度よりも低い場合、その結果、これらは、試料混合物中の残った未結合のシングレットの捕捉粒子102及び/又は検出粒子103である。低分析物濃度では、十分な分析物結合親和性並びに過剰の捕捉粒子及び検出粒子により、ほぼ全ての標的分析物は、
図2Bに示されるように、分析物連結粒子ダブレット104の形態で存在する。標的分析物の濃度が増加すると、より高次の分析物連結粒子マルチプレットが形成される。
図2Cは、分析物連結粒子トリプレット201を図示し;
図2Dは、分析物連結粒子クワドゥルプレット202を図示し;
図2Eは、分析物連結粒子クインテュプレット203を図示する。当業者にとって、他のタイプの分析物連結粒子複合体も可能であることが明らかであるはずである。これらの粒子及び分析物連結粒子複合体を互いから区別することができるマルチパラメーター粒子計数器を使用して、各タイプの粒子及び粒子複合体の数は、容易に測定することができ、試料中に含有される標的分析物の総数は、前に記載されるようにして、そのような測定値から容易に抽出することができる。
【0040】
本開示の別の実施形態は、複合試料混合物中の多数の異なる分析物を同時に標的にするマルチプレックスアッセイである。
図3に表されるように、試料中の3つの異なるタイプの分析物101-1、101-2及び101-3は、それらの対応する捕捉粒子102-1、102-2又は102-3及び検出粒子103-1、103-2又は103-3に別々に結合し、それぞれの1つが、それらのそれぞれの標的分析物101-1、101-2又は101-3上の第1の結合部位108-1、108-2若しくは108-3又は第2の結合部位109-1、109-2若しくは109-3に対する特異性を有する特異的な捕捉試薬105-1、105-2若しくは105-3又は検出試薬107-1、107-2若しくは107-3にコンジュゲートされる。
図3の図示において、捕捉粒子の下位群を表す各捕捉粒子102-1、102-2又は102-3は、いくつかの固有の物理的特徴及び/又は標識、例えば、サイズ及び/又は光学特性(例えば、吸収、蛍光及び/又は光散乱の強度及び/又は波長)を保有する粒子を固有の遮光符号化することで標識される。次いで、それらの対応する標識に従って粒子を分解することができるマルチパラメーター粒子計数器は、粒子及び分析物連結粒子複合体を、試料混合物中の特異的なタイプの標的分析物にそれぞれ対応する下位群に識別及び群化することができる。その結果として、各下位群の捕捉粒子及び対応する分析物連結粒子複合体は、本開示の第1の実施形態において提案されるものと同じ方法で同時に分析することができ、それによって、3つのタイプ全ての標的分析物の濃度の同時測定を可能にする。
【0041】
当業者には、本開示における
図3及びその説明が例証目的だけのためであることは明らかであるはずである。本開示のマルチプレックスアッセイの実施形態は、マルチプレックス検出の任意の特定のフォーマット、任意のタイプの標的分析物、又は同時に分析される異なる標的分析物の任意の特定の数に限定されることを意図するものではない。いくつかの実施形態において、本開示は、1~1000個の異なる標的分析物を同時的に分析するために使用され得る。他の実施形態において、本開示は、1~100個の異なる標的分析物を同時的に分析するために使用され得る。好ましい実施形態において、本開示は、1~50個の異なる標的分析物を同時的に分析するために使用される。マルチプレックス標的分析物の数が増加すると、スループット及びダイナミックレンジが比例的に低減され得るが、これらは、計測手段のスループットを改善することによって、又は取得時間を長くすることによって、釣り合いを取り、且つ増加させることができる。
【0042】
本開示の別の実施形態は、分析物-分析物相互作用を研究するために行われる。
図4は、本開示の1つの例示的な実施形態を図示し、ここで、捕捉粒子102は、第1の分析物101-1上の結合部位108-1を標的にし、検出粒子103は、第2の分析物101-2上の結合部位108-2を標的にし、第1の分析物101-1及び第2の分析物101-2は、分析物複合体401中で一緒に結合している。モジュレート剤402も、分析物複合体401の2つの部分101-1及び101-2の間の相互作用の活発なモジュレート、阻害又は増強を図示するために
図4に含まれる。本開示の本実施形態において、捕捉粒子及び検出粒子複合体403の観察は、分析物複合体401を形成する2つの分析物101-1及び101-2の結合を表し、これらの複合体401は、本開示の第1の実施形態について上記に記載される列挙と同様に列挙され得る。
【0043】
更に、本開示の前の実施形態において提案されたマルチプレックスアッセイの変形を使用して、異なる物理的特徴で標識された検出粒子を、その濃度を同時に測定するために、第1の分析物101-1を標的にするように導入してよい。そのようなマルチプレックスアッセイは、単一の分析物レベルで第1の分析物101-1に結合した第2の分析物101-2の部分占有の正確な測定を可能にするだろう。いくつかの場合において、多数の捕捉粒子及び/又は検出粒子の分析物複合体への結合は、複合体内の同じ分析物の多数のコピーの存在を同定するために使用され得る。
【0044】
当業者には、本開示の提案された実施形態は、単一の分析物レベルで、例えば、特定の医薬品、薬物又は目的の他の関連するモジュレート分子若しくは粒子の導入に起因する、一緒に結合し、分析物複合体を形成する2つ以上の分析物の結合親和性及び/又は動力学を研究するために使用することができる。そのようなアッセイは、医薬品開発を最適化するため、薬物の有効性及び選択を決定するため、オフターゲット応答に対するオンターゲット応答を解明するため、異なる実験的及び生理学的状態における有効な濃度を同定するため、薬力学を解明するため、シグナル伝達及び代謝経路をマッピングするため、抗体製造を最適化するため、並びに多くの他の研究及び/又は開発適用のために使用され得る。前述の例は、単なる実例であって、包括的なものではなく、本開示は、分析物複合体の検出若しくは分析のいかなる特定のフォーマット、標的分析物のいかなるタイプ、又は同時的に分析される異なる標的分析物のいかなる特定の数にも限定されない。
【0045】
本開示のシステム及び方法を使用して調製される未結合粒子及び分析物連結粒子複合体は、シングレット粒子に対して粒子複合体の個別の検出、識別及び列挙を可能にする任意の方法で分析することができる。本開示のいくつかの実施形態において、これらの方法は、限定されるものではないが、イメージング顕微鏡又はレーザー走査顕微鏡、抵抗パルスセンシング、及びフローサイトメトリーが挙げられ得る。本開示の他の実施形態において、分析物連結粒子複合体中の捕捉粒子及び検出粒子の近接によって生じる物理的特性のシグナル及び/又は相違における組合せは、バルク分析を可能にし得る。例えば、未結合粒子と様々な分析物連結粒子複合体との間のサイズの相違は、遠心分離若しくはサイズ選択フィルター、又は更に動的光散乱若しくはナノ粒子トラッキング分析を使用して識別され得る。分析物連結粒子複合体中の捕捉粒子と検出粒子との間のエネルギー移動は、分光法を使用して調べ得る。前述のリストは、確実に包括的なものではない。しかしながら、バルク分析は、粒子ごとの計数及び分析の精度及び正確性を提供しない。本開示の好ましい実施形態において、粒子及び分析物連結粒子複合体は、フローサイトメーター、又はイメージング顕微鏡若しくはレーザー走査顕微鏡に類似するマルチパラメーター粒子計数器を使用して、個別的に検出、識別及び列挙される。
【0046】
図5は、マルチパラメーター粒子計数器を使用する単一粒子の光散乱及び蛍光の検出に基づく本開示によるシステムから抽出され得る可能性があるデータを表す。この例において、捕捉粒子は、蛍光標識されているが、検出粒子は、非蛍光である。その結果として、
図5Aにおいて、分析物連結粒子複合体104、201、202及び203、並びに未結合捕捉粒子102は、蛍光強度におけるそれらの相違により、未結合検出粒子103から明確に識別される。示されるように、未結合粒子102並びに全ての分析物連結粒子複合体104、201、202及び203の蛍光強度は、蛍光閾値501を上回るが、未結合検出粒子103の蛍光強度は、閾値501を下回る。
【0047】
更に、分析物連結捕捉粒子及び検出粒子複合体を形成することで、結合した粒子の数に応じて、光散乱強度の個別のシフトを引き起こす。
図5Bは、可能性があるヒストグラムのプロットを示す。蛍光閾値501を下回る未結合検出粒子103の排除後、未結合捕捉粒子102、並びに対応する0、1、2、3又は4つの検出粒子を含有する分析物連結粒子複合体104、201、202及び203の数は、容易に分解及び列挙され得る。
【0048】
図6は、検出粒子の蛍色(蛍光2)とは異なる蛍光色(蛍光1)で標識された捕捉粒子を使用して、多色の単一粒子の蛍光の検出に基づく本開示によるシステムから抽出され得る可能性があるいくつかの可能性があるデータを示す。その結果として、
図6Aにおいて模式的に示されるように、未結合捕捉粒子102並びに分析物連結粒子複合体104、201、202及び203は、蛍光1の強度におけるそれらの相違により、未結合検出粒子103から明確に識別され得る。その一方で、分析物連結捕捉粒子及び検出粒子複合体を形成することで、捕捉粒子に結合した分析物の数に応じて、蛍光2の強度の個別のシフトを引き起こす。
図6Bは、可能性があるヒストグラムのプロットを示す。蛍光1チャネルにおける閾値501を下回る蛍光強度を有する未結合検出粒子103の排除後、未結合捕捉粒子102、並びに0、1、2、3又は4つの検出粒子を含有する分析物連結粒子複合体104、201、202及び203の数、及びしたがって分析物は、蛍光2におけるそれらの別個の強度に基づいて容易に分解及び列挙され得る。
【0049】
図5及び
図6に表される図示が単なる実例であることに留意されたい。前に述べたように、本開示の実際の実施形態において観察される分析物結合粒子複合体のタイプは、粒子に対する分析物の相対濃度に依存するであろう。
【0050】
産業上の利用可能性
捕捉粒子及び検出粒子は両方とも蛍光標識され、一方が他方を超えて使用されるよりもむしろ同様の濃度で使用される場合、その結果、生じる分析物連結粒子複合体は、標識化のために使用される2つの蛍光の次元でフラクタルなパターンを生じ得る。
図7は、ヒト前立腺特異抗原(PSA)で標識される場合のこの現象を表す実際の予備的な結果を提供する。
図7A、
図7B及び
図7Cは、それぞれ、低濃度、中濃度及び高濃度のPSAを提示する。
図7Aにおいて見られるように、PSAの濃度が低い場合、捕捉粒子102及び検出粒子103は、通常通り、PSAに結合した場合に分析物連結粒子ダブレット104を形成する。しかしながら、PSAの濃度が、
図7B及び
図7Cに示されるように増加するにつれて、より高次の分析物連結粒子複合体が、使用される蛍光の次元の両方で個別的に分解される。この場合において、2次元での分析物連結粒子マルチプレット、例えば、201-1及び201-2、又は201-2、202-2及び202-3は、異なる粒子の組合せを含み、それにもかかわらず、同じ粒子多重性の分析物連結粒子複合体あたりの結合した分析物の数は、特異的な粒子の組合せに関わらず同等であろう。例えば、分析物連結粒子トリプレットが1×粒子1+2×粒子2(201-1)又はその逆(201-2)から構成されるかどうかにかかわらず、両方の分析物連結粒子トリプレットは、2つの捕捉された分析物を表す。
図7Cの拡大挿入図において、202-1、202-2及び202-3は、分析物連結粒子クワドゥルプレットをそれぞれ表し、203-1及び203-2は、分析物連結粒子クインテュプレットの2つの可能性のある組合せを表し、701は、分析物連結粒子セクステュプレットの1つの可能性のある組合せを表す。これらの特異的な粒子複合体は、例としてのみ提供され、形成され得る多くの組合せの包括的なリストであることを意図するものではない。
【0051】
全ての集団が個別的に分解されるので、各集団は、個別的に列挙することができ、次いで、これを使用して、数学的に、統計的に、又は標準曲線との比較によってのいずれかで、分析物濃度を算出することができる。更に、所与の分析物濃度でデータポイントを1つだけ発生する多くの従来のアッセイとは異なって、本開示の技法による各濃度での多数のデータポイントの自然発生は、より正確な測定を可能にする。
【0052】
様々な集団を列挙するためのゲーティングの経験例は、
図8に示され得るが、
図8A、
図8B、
図8C及び
図8Dは、それぞれ、対照、低、中及び高PSA濃度を表す。
図8のヒストグラムにおいて、分析物連結粒子ダブレットは、グリッドの左下隅に見えるが、より高次の分析物連結粒子複合体は、それらが上向き及び右に進むにつれて、それらの粒子の多重性が増加する。
【0053】
類似のデータ分析は、本開示に従って行われたマルチプレックスアッセイに適用され得る。
図9は、そのようなマルチプレックスアッセイの1つの例示的な実施形態を実証し、ここで、蛍光標識された捕捉粒子を使用して、多数のタイプの分析物を同時に同定及び分析する。具体的には、
図9Aに示されるように、捕捉粒子は、下位群A1、A2、…、D4及びD5に分割される。捕捉粒子の各下位群A1、A2、…、D4又はD5は、別個の蛍光強度を示す蛍光1及び蛍光2の蛍光色素の固有の組合せで標識され、特異的なタイプの分析物を標的にする特異的試薬にコンジュゲートされる。例えば、下位群D1における捕捉粒子は、蛍光1における最低強度及び蛍光2における最低強度を有し、下位群A1における捕捉粒子は、蛍光1及び蛍光2の両方における最高強度を有する。
図9B、
図9C及び
図9Dは、未結合粒子及び分析物連結粒子複合体が、
図9Aに図示されるように、捕捉粒子の蛍光標識に従って、識別され、下位群に群化されると、その結果、各タイプの分析物について、0、1、2つ以上の検出粒子(102、104、201、202及び203)を含有する分析物連結粒子複合体、及びしたがって分析物の数は、散乱強度の対応するヒストグラムに基づいて容易に分解及び列挙され得る。
【0054】
前述の例示的な実施形態に記載されるシステムは、任意の特定の数又は各種のフルオロフォア又はスペクトル標識に限定されない。本開示のいくつかの実施形態において、2つより多くの蛍光チャネルが分析物標識のために使用されてよい。他の実施形態において、各種の蛍光特性、散乱特性及び/又は他の光学特性若しくはスペクトル特性を分析物標識として使用してよい。更に、検出粒子はまた、例えば、捕捉粒子によって生じる光の色と異なる色を使用して、蛍光標識されてもよい。
【0055】
分析物連結粒子複合体及び未結合粒子を個別的に計数する能力は、アナログシグナル分析に最終的に依拠する従来の技法から本開示を識別する主要な特徴である。
図10は、2つの手法を使用して実験から抽出され得るデータにおける相違を模式的に強調する。
図10A、
図10B及び
図10Cは、本開示の技法を使用する結果を表すが、
図10D、
図10E及び
図10Fは、従来のアナログシステムによって生成された結果である。分析物濃度は、両方の例において、左から右に増加する。しかしながら、本開示について示されるように、分析物連結捕捉粒子及び検出粒子ダブレット(
図10Aにおける104)の数は、分析物濃度の増加につれて増加する。中間の分析物濃度で、分析物連結粒子トリプレット(
図10Bにおける201)の数は、増加し始める。最後に、より高い分析物濃度で、より高次の分析物連結粒子マルチプレットが形成される(
図10C)。しかしながら、全ての場合において、
図10Aから
図10Cまで、シグナル(104、201、202及び203)は、バックグラウンドの未結合粒子102及び103から常に明確に分解される。或いは、平均強度から分析物濃度を抽出するための従来の測定は、より低い分析物濃度でバックグラウンド(1002)からシグナル(1001)を不十分に分解し(
図10D)、より高い濃度で飽和する(
図10F)。
【0056】
更に、
図11に表されるように、分析物濃度が増加するにつれて、より高次の分析物連結粒子複合体も、分析物連結粒子ダブレットの初期線形範囲からシフトした線形範囲を示す。
図11において、分析物連結粒子ダブレット104は、数ディケードに及ぶ初期線形範囲を有するが、特定の中間サイズの分析物連結粒子複合体1101は、分析物連結粒子ダブレット104のものよりも広い数ディケードであって、且つそれよりも広い数ディケードにも広がる線形範囲を有する分析物濃度で形成され始める。同様に、特定の大きなサイズの分析物連結粒子複合体1102は、中間の分析物連結粒子複合体1101について必要とされるものよりも広い数ディケードである分析物濃度でのみ形成され始め、更に広く広がる線形範囲を有する。
【0057】
開示に従ってアッセイを使用して集められたデータは、それら独自の特徴的な集団分布及び凝集挙動をそれぞれ有する多くの個別のデータポイントを生じるので、これらのデータポイントは、分析物濃度を決定するための追加の特徴を提供し、アッセイの正確性及び信頼性を改善する。例えば、所与の分析物濃度で唯一のデータポイントを発生するイムノアッセイによって示される1つの一般的な問題は、アッセイについて飽和点に達する際に、それらが、フック効果及びプロゾーン効果を示すことであり、ここで、更なる分析物の添加は、適した抗体結合又は複合体形成を阻害し、実際に低減する。これは、任意の個々の結果がアッセイシグナル対濃度曲線の増加側又は減少側に位置するかどうかについての不確実性につながり、アッセイが完了した後に、より多くの試料が添加され、次いでそれが再分析される、追加の工程を行うこと、又は追加の希釈ポイントを調べて、シグナルが追加のデータポイントについて増加若しくは減少するかを決定することのいずれかを必要とする。
図11において実証されるように、個別の粒子複合体範囲における分析物連結粒子ダブレットに主な焦点が当てられ、濃度が高くなると、線形範囲を近位のより高次の分析物連結粒子複合体に単にシフトし、その結果、複数のデータポイントを別々に定量化することができ、組合せを、分析物濃度を正確に決定するために使用することができる。
【0058】
アナログシグナル及び分子試薬に基づく従来のアッセイとは異なって、本開示に表される技法を使用することによって、列挙される各分析物連結捕捉粒子及び検出粒子ダブレットは、単一の分析物又は分析物複合体を表す。したがって、本開示のアッセイのダイナミックレンジは、実験の間に計数される粒子の総数に正比例する。例えば、106個の粒子が分析されると、その結果、名目上のダイナミックレンジは6ディケードであろう。これは、基本的なマルチパラメーター粒子計数器、例えば、フローサイトメーター、又はイメージング顕微鏡若しくはレーザー走査型顕微鏡において取得するのに数分しかかからないだろう。特に、より高次の粒子複合体を考慮に入れる場合、範囲は、計数された粒子の数が同じであっても、別のディケード以上に広がり得る。更に、ダイナミックレンジは、計数される事象の総数に比例するので、これは、試料の取得時間を伸ばすことによって更に広がり得る。例えば、1分よりもむしろ10分間で試料を取得することで、ダイナミックレンジが別のディケードまで比例的に増加するだろう。本開示の前の実施形態において議論されるように、本開示に記載される実際のダイナミックレンジは、低及び高存在量の分析物をそれぞれ測定するために、粒子コンジュゲート試薬及び分子検出試薬を組み合わせるマルチプレックスアッセイを使用して更に広がり得る。
【0059】
図12は、本開示と従来の技法との間の別の有意差を図示する。分析物濃度を正確に測定するために、試薬濃度は、通常、試料中で過剰の標的分析物濃度が使用され、それによって、結合平衡において分析物-試薬複合体の形成を増強する。
図12Aに示されるように、従来のアッセイにおいて、少なくとも1つの試薬は分子形態(107)である。その結果として、試料体積がどれだけ小さいかに関わりなく、遍在する未結合分子試薬107は、最終測定の前に注意深く洗浄することにより、試料から除去されなければならない。洗浄は、時間及びリソースを消費するだけでなく、平衡も破壊し、分析物-試薬複合体の損失をもたらし、それによって結果にバイアスをかける。他方で、本開示において、捕捉試薬及び検出試薬は両方とも、標識粒子にコンジュゲートされる。シグナル増幅の酵素又は他の形態に依拠することなく、分析物連結粒子ダブレット104及びより高次の粒子マルチプレットは、単一の分析物レベルで、それらの対応する分析物又は分析物複合体についての敏感で信頼性のあるプローブを提供する。加えて、分析物連結粒子複合体は、マルチパラメーター粒子計数器、例えば、
図12に模式的に図示されるフローサイトメーターによって、未結合粒子102及び103から容易に識別することができ、洗浄は、最終測定の前に未結合粒子を除去するために必要ではない。実際に、未結合粒子を同時に列挙することで、分析物の濃度を総試料体積の一部のみを使用して正確に決定することを可能にし、重要な統計及び性能の信頼性情報を提供する。その結果として、アッセイのための結合平衡を、プロセス全体にわたって維持することができる。
【0060】
前述の開示は様々な実施形態の観点で行ったが、そのような開示は純粋な実例であって、限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるべきである。本開示のいくつかの例示的な実施形態は、いくらか詳細に記載したが、上記の教示に照らして、当業者には、記載される実施形態の多くの改変及び変形が、請求項に記述されている本開示の原理及び概念から逸脱することなく可能であることは明らかであろう。その結果として、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の様々な変更、改変及び/又は代替適用が、疑いなく、前述の開示を読んだ後に、当業者に示唆されるだろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、本開示の真の精神及び範囲内にある全ての変更、改変又は代替適用を包含するものとして解釈されることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
101 分析物
102 捕捉粒子
103 検出粒子
104 分析物粒子連結ダブレット
105 捕捉試薬
106 結合
107 検出試薬
108 第1の結合部位
109 第2の結合部位
201 分析物連結粒子トリプレット
202 分析物連結粒子クワドゥルプレット
203 分析物連結粒子クインテュプレット
401 分析物複合体
402 モジュレート剤
403 捕捉粒子及び検出粒子複合体
501 閾値
701 分析物連結粒子セクステュプレット
1001 シグナル
1002 バックグラウンド
1101 中間サイズの分析物連結粒子
1102 大きなサイズの分析物連結粒子複合体
【国際調査報告】