(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ケミカルリサイクル用触媒としての微細鉱物質の組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
C10J 3/00 20060101AFI20230111BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20230111BHJP
B01J 23/889 20060101ALI20230111BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230111BHJP
C01B 3/40 20060101ALI20230111BHJP
C01B 32/40 20170101ALI20230111BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230111BHJP
【FI】
C10J3/00 Z
C08J11/16 ZAB
B01J23/889 M
B01J35/10 301A
C01B3/40
C01B32/40
C01B32/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525505
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 US2020058036
(87)【国際公開番号】W WO2021087160
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520370991
【氏名又は名称】ラディカル プラスティクス インク.
【氏名又は名称原語表記】Radical Plastics Inc.
【住所又は居所原語表記】6 Saturn Road, Marblehead, MA 01945, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェレナ カン
【テーマコード(参考)】
4F401
4G140
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4F401AA02
4F401AA11
4F401AA15
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
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4F401EA19
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4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4F401FA08Z
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4G140EA06
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4G140EC02
4G140EC05
4G140EC08
4G146JA01
4G146JA02
4G146JB02
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4G146JC30
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA06A
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4G169BA16B
4G169BB06A
4G169BC02A
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4G169BC09A
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4G169BC66A
4G169BC67A
4G169CC17
4G169DA06
4G169DA08
4G169EA02X
4G169EB01
4G169EB18X
(57)【要約】
本願で開示される実施態様は、プラスチックの、または固体プラスチック廃棄物のケミカルリサイクルにおける、石炭由来の微細鉱物質の利用に関する。ここに開示される鉱物系触媒は、炭素の利用、およびリサイクル原料または再生可能な原料からの元の品質のプラスチックの製造を最大化する一方で、環境におけるプラスチック汚染を低減するための接触分解、ガス化および水蒸気改質のプロセスに利益をもたらす。前記触媒は、無機の微細鉱物質、石炭堆積物中で見出される天然の古代鉱物混合物に基づくことができ、複数の遷移金属、例えば鉄、銅およびマンガン、並びに助触媒として作用できるカルシウム、バリウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムを含有する。前記触媒の添加は、従来の技術のエネルギーの割合で、プラスチックを合成ガスへと変換できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭由来の、および/または火山玄武岩、氷河岩屑堆積物、ケイ酸鉄カリウムおよび/または海岸堆積物を含む天然資源から採掘された、ある量の触媒性微細鉱物質であって、約2μm~約50μmの範囲の粒子サイズを有する前記触媒性微細鉱物質を得ること、および
溶融ポリマーまたはその蒸気を前記触媒性微細鉱物質と、クラッキングまたはガス化温度で酸素および/または水蒸気の存在下で接触させて合成ガス生成物を形成すること
を含む、ケミカルリサイクル方法。
【請求項2】
前記合成ガス生成物が、H
2、CO、CH
4、CO
2、H
2Oおよび不活性ガスの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒性微細鉱物質が、Fe、Cu、Mn、Mo、Zn、Coまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属を、以下の濃度:
Fe 14,000~45,000ppm、
Cu 10~50ppm、
Mn 100~700ppm、
Mo 1~2ppm、
Zn 20~120ppm、および
Co 10~15ppm
で含み、ここでppmは、ICP-AES法を用いて、加温消化槽内で硝酸、塩酸および過酸化水素を利用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒性微細鉱物質が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属Ca、K、Na、Mgまたはそれらの組み合わせを以下の濃度:
Ca 1,000~18,000ppm、
K 600~4,000ppm、
Na 300~1,500ppm、および
Mg 20~8,000ppm
で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒性微細鉱物質の濃度が、0.5~8体積%、または触媒/原料比で約1:5~約1:100質量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒性微細鉱物質が、担体材料または触媒のいずれかとして利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融ポリマーが、産業で使用済みまたは消費者で使用済みのプラスチック廃棄物の、固体混合プラスチック廃棄物の、または石油化学重油およびアルカンの、スチームクラッキング、ガス化および改質プロセスによる触媒プロセスに続いて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液化がガス化に先行し、液化は熱分解、熱クラッキングまたはスチームクラッキングを介して達成されて、プラスチック廃棄物を合成の重油および凝縮性ガスへと変換し、それがガス化装置および/または水蒸気改質に注入される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ガス化に続いて、合成ガス生成物の組成を改善するための洗浄および/または水素化をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ガスを、KDVプロセス、テキサコプロセス、または単塔式または二塔式の、流動床、固定床および同伴流反応器を利用するプロセスの1つ以上に供することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記スチームクラッキングが、超臨界水中での水熱分解を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
改質プロセスが、メタンの合成ガス生成物への触媒水蒸気改質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記合成ガス生成物に通電することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記合成ガス生成物を、スチームクラッキングまたはガス化を促進するための熱源として使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記合成ガス生成物を、ハイドロクラッキングを支えるためのガス源として使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
触媒スチームクラッキングが、バッチ式、または連続フロー式(スラリータイプ)である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子サイズは、概ね5マイクロメートル~概ね0.5マイクロメートルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
加熱を、摂氏約200度~摂氏約500度の範囲の温度で実施する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は2019年10月29日に提出された「Coal-derived fine mineral matter as a catalyst for the chemical recycling of plastics, mixed plastic solid waste and heavy oil feedstocks」と題する米国仮特許出願第62/927,493号についての優先権を主張し、参照をもってその全文が本願内に含まれるものとする。
【0002】
分野
本開示の様々な実施態様は一般に、プラスチックおよび/または固体混合プラスチック廃棄物のケミカルリサイクルにおける微細鉱物質、例えば石炭由来の微細鉱物質の利用に関し、より具体的には、接触分解、ガス化および水蒸気改質のプロセスの間のリサイクルの効率を増進する鉱物質に基づく触媒の存在下での廃棄物および重油原料のリサイクルに関する。
【背景技術】
【0003】
合成プラスチック産業は過去50年の大きな産業的成功の1つである。例えば、プラスチックの生産高は1964年の1500万メートルトンから2014年の3億1100万トンへと急増し、次の20年にわたって再度倍増し、プラスチックの新たな使用および用途が年々実現されることが予測される。市場におけるプラスチックの普及に伴って、この広範なプラスチックの使用の意図されない結果がプラスチック廃棄物およびゴミの比例し且つ急速な増加である。最終的に埋め立てられるプラスチックの量は世界的に年間の生産高のほぼ半分であると見積もられており、それは年間1億5000万トンを超える。そして、廃棄物の処分は、埋め立てのコストおよび可用性、焼却の毒性、およびメカニカルリサイクルがサポートできるサイクル数が限られていることに起因して問題になる。
【0004】
従来のリサイクルプロセスは、産業におけるプラスチックの使用の普及の増加に対抗するそれらの拡張性および広範な使用を妨げるいくつかの欠点を有する。現在のリサイクルプロセスは、多様なプラスチック廃棄物を処理する能力に欠け、残りの廃棄物は埋め立てる選択しか残されていない。リサイクルおよび処理され得る廃棄物について、それらから製造される製品は一般に元の化合物よりも品質が低く、あまり望ましくない製品およびより短いライフサイクルがもたらされる。例えば、これによって、より埋め立て地に行きやすくなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施態様によれば、ケミカルリサイクル法は、石炭由来の、および/または火山玄武岩、氷河岩屑堆積物、ケイ酸鉄カリウムおよび/または海岸堆積物を含む天然資源から採掘され、約50μm未満~約2μmの範囲の粒子サイズを有する、ある量の触媒性微細鉱物質を得ること、および溶融ポリマーまたはその蒸気を前記触媒性微細鉱物質と、クラッキングまたはガス化温度で酸素および/または水蒸気の存在下で接触させて合成ガス生成物を形成することを含む。
【0006】
前記合成ガス生成物はH2、CO、CH4、CO2、H2Oおよび不活性ガスの1つ以上を含み得る。前記触媒性微細鉱物質は、Fe、Cu、Mn、Mo、Zn、Coまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属を、以下の濃度: Fe 14,000~45,000ppm、Cu 10~50ppm、Mn 100~700ppm、Mo 1~2ppm、Zn 20~120ppm、およびCo 10~15ppmで含み、ここでppmは、ICP-AES法を用いて、加温消化槽内で硝酸、塩酸および過酸化水素を利用して測定される。いくつかの実施態様において、前記触媒性微細鉱物質は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属Ca、K、Na、Mgまたはそれらの組み合わせを、以下の濃度: Ca 1,000~18,000ppm、K 600~4,000ppm、Na 300~1,500ppm、およびMg 20~8,000ppmで含む。前記触媒性微細鉱物質を、担体材料または触媒のいずれかとして利用できる。前記触媒性微細鉱物質の濃度は0.5~8体積%、または触媒/原料比で約1:5~約1:100質量%の範囲であってよい。いくつかの実施態様において、粒子サイズは概ね5マイクロメートル~概ね0.5マイクロメートルの範囲であってよい。
【0007】
とりわけ、本願に開示される方法における溶融ポリマーは、産業で使用済みまたは消費者で使用済みのプラスチック廃棄物の、固体混合プラスチック廃棄物の、または石油化学の重油およびアルカンの、スチームクラッキング、ガス化および改質プロセスによる触媒プロセスに続いて生成され得る。液化がガス化に先行し、液化は熱分解、熱クラッキングまたはスチームクラッキングを介して達成されて、プラスチック廃棄物を合成の重油および凝縮性ガスへと変換し、それがガス化装置および/または水蒸気改質に注入される。前記方法は、ガス化に続いて、合成ガス生成物の組成を改善するための洗浄および/または水素化も含み得る。いくつかの実施態様において、前記方法は合成ガスを、KDVプロセス、テキサコプロセス、または単塔式または二塔式の、流動床、固定床および同伴流反応器を利用するプロセスの1つ以上に供することができる。
【0008】
いくつかの実施態様において、前記スチームクラッキングは超臨界水中での水熱分解を含み得る。前記改質プロセスは、メタンの合成ガス生成物への触媒水蒸気改質を含み得る。前記合成ガス生成物を、スチームクラッキングまたはガス化を促進するための熱源として使用してもよいし、またはハイドロクラッキングを支えるためのガス源として使用してもよい。加熱を摂氏約200度~摂氏約500度の範囲の温度で実施できる。いくつかの実施態様において、前記方法は合成ガス生成物を通電することをさらに含み得る。触媒スチームクラッキングは、バッチ式、または連続フロー式(スラリータイプ)であってよい。
【0009】
この開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて捉えることから、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本願に開示される実施態様による炭化水素プラスチックのリサイクル方法を説明するフローダイヤグラムを示す。
【
図2】
図2は、本願に開示される実施態様の1つの実施態様による、空気中での安定化直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の分解のグラフを示す。
【
図3】
図3は、本願に開示される実施態様の1つの実施態様による、空気中での変性LLDPEの分解のグラフを示す。
【
図4】
図4は、本願に開示される実施態様の1つの実施態様による、種々の速度でのベースのLLDPEの重量変化のグラフを示す。
【
図5】
図5は、本願に開示される実施態様の1つの実施態様による、種々の速度での変性LLDPEの重量変化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本願内に開示される系、装置および方法の構造、機能、製造および使用の原理の全体的な理解を提供するため、特定の例示的な実施態様をここで説明する。それらの実施態様の1つ以上の例を添付の図面に示す。当業者は、本願内に具体的に記載され且つ添付の図面において示される系、装置および方法が限定されない例示的な実施態様であり、且つ本開示の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施態様と関連付けて示されるかまたは記載される特徴を、他の実施態様の特徴と組み合わせることができる。そのような修正および変動は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。さらには、当業者は、本願内に開示される範囲が概算的であり且つ単なる例示であることを認識するであろう。遷移金属、助触媒、および触媒を構成する他の化合物の濃度範囲は、許容される値内で変化し得る。
【0012】
例示的な実施態様において、石炭由来の微細鉱物質が、プラスチックの、または固体プラスチック廃棄物のケミカルリサイクルにおいて利用される。前記微細鉱物質は、接触分解、ガス化および水蒸気改質のプロセスにおいて、本願で開示される実施態様の範囲内である鉱物の存在下でのポリエチレン(PE)原料の熱分解の活性化エネルギーを低下させるためにはたらくことができる。そのような技術は、炭素の利用、およびリサイクル原料または再生可能な原料からの元の品質のプラスチックの製造を最大化する一方で、環境におけるプラスチック汚染を低減するという使命を支えることができる。例えば、ここで開示される組成物および方法を使用して、任意の種類のプラスチック廃棄物(PW)を、分類されていても分類されていなくても処理し、且つ同じ品質のプラスチックを製造できる。そのような技術は、エネルギーの回収または埋め立てのためにプラスチックを燃焼させるのではなく、廃棄物のプラスチックを新たなプラスチックのための原料へ変換することを可能にし得る。いくつかの実施態様において、ここで開示される実施態様の微細鉱物質は、以下でより詳細に議論されるプロセスのための担体材料として利用され得る。
【0013】
例示的な実施態様において、ケミカルリサイクルを使用して任意のプラスチック材料(混合または分類された)の無制限のリサイクルをもたらすことができ、ここでその焦点は、プラスチック材料の構成ブロックを回復することにある。ケミカルリサイクルは、分離が経済的にも技術的にも実現可能ではない場合に、不均一であり且つ汚染されたプラスチック廃棄物材料について大きな可能性を有する。ケミカルリサイクルは、ポリマーをより小さな分子へと変換し、次いでそれらが元々回収されたものと同じ製品に転用される閉じたループのリサイクル、またはそれらのより小さな分子が異なる製品に転用される開いたループにおいて使用され得る。ケミカルリサイクルは、環境におけるプラスチック汚染を低減する一方で、元の材料の価値を次世代の製品に移し、化石原料(貯蔵炭素)の消費を低減し、且つ化石原料と関連するGHG放出を低減するという効果を有する。
【0014】
ケミカルリサイクルの経路は、熱化学変換と触媒変換とに大別でき、それはとりわけ、スチームクラッキング、熱分解、ガス化、流動接触分解、ハイドロクラッキングを含む。クラッキング、ガス化、水蒸気改質のプロセスは適切に触媒されることができ、空気または酸素または水蒸気の存在下で実施され得る。それらの技術は、酸化性の熱分解に対して非常に敏感であり且つ生成されるプラスチック廃棄物の60%を上回るポリオレフィン、ポリマーにとって特に興味深い。多くの他の種類のポリマーも、特に水蒸気または超臨界水の存在下での、触媒酸化クラッキング、ガス化および改質に対して非常に敏感であることがある。本願で開示される組成物および方法が適用され得るポリマーの限定されないいくつかの例は、アクリル、スチレン、ビニル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、セルロース系プラスチック、上記の組み合わせおよびコポリマーを含み得る。
【0015】
モノマー、多くはオレフィンの製造のための従来の技術は、ナフサ/アルカンの直接的な熱クラッキングに基づくことを当業者は認識するであろう。クラッキングの間に、原料の一部が副生成物に変換され、それはプラスチックの直接的な合成において有用ではなく、40~60%がオレフィン以外の炭化水素であり、4~25%がメタンであり、10%までがベンゼンである。水蒸気は、典型的には炭化水素の分圧を下げるために使用される。クラッカー中の酸素含有分子の存在下で、水蒸気改質およびガス化を介して炭素酸化物(CO、CO2)および水素も生成され得る。
【0016】
原料が混合プラスチック廃棄物である場合、より多くのメタンが生成されることが予想される。100%の炭素の回収を達成するために、さらなるプロセス、例えば炭化水素のCOおよびH2への水蒸気改質、および熱需要の一部をカバーし且つCO2の形態で炭素を回収するための原料の燃焼(それは合成ガスのH2/CO比のバランスも取る)を実施できる。燃焼プロセスについては、水の電気分解を介してO2が生成されることがある(酸素燃焼)。燃焼および電気分解および水蒸気改質の経路は、原料のモノマーへの直接的なスチームクラッキングよりも燃料依存性が遙かに低い。
【0017】
いくつかの実施態様において、プラスチック廃棄物の触媒による熱クラッキングを流動床反応器において実施できる。例えば、触媒による熱クラッキングにおいては、触媒および吸収剤を床材料の形態で導入できる。いくつかの実施態様において、二塔式流動床(DFB)を使用して、熱生成区域(燃焼)をクラッキング区域から分離できる。単塔式流動床反応器に比して、DFB構成はクラッキング生成物を蒸気のみを用いて(且つ煙道ガスは用いずに)希釈し、別途の燃焼区域において炭素堆積物から触媒を再生するという追加的な利点をもたらす。触媒床材料の流動床反応器への導入は、熱分解段階の間に、または熱分解生成物の水蒸気改質の二次的な段階において行うことができる。
【0018】
上記に記載されたスチームクラッキングは、液化原料を生成し、次にその一部がガス化反応器に送られて、水素と一酸化炭素との組み合わせである合成ガスを生成できる。ガス化プロセスの最後で硫黄不純物を除去するために水素化が利用されることもある。ガス化によって生成された合成ガスを、以下で詳細に議論されるとおり、FTS(フィッシャー・トロプシュ合成)を介して、またはメタノールおよびDME(ジメチルエーテル)合成、引き続くMTG(メタノールからガソリンへの)またはMTO(メタノールからオレフィンへの)変換を介して、石油状製品の製造において使用できる。メタノールは世界で最も多く生産される化学物質の1つであり、なぜなら、それはいくつかの汎用化学品、例えばホルムアルデヒド、酢酸、メチルアミンを製造するための反応物質として使用されるからである。合成ガスは、スチームクラッキングを促進するための熱源、またはハイドロクラッキングを支えるためのガス源としても使用できる。
【0019】
触媒スチームクラッキングの使用は、多環芳香族炭化水素(コークス前駆体)の選択的な低温水蒸気改質(LTSR)に起因して、より軽い組成物を有する液体生成物をみちびき且つコークスの形成を低減することができる。LTSRおよび水性ガス反応の両方の結果としてin situで形成されるさらなる水素は、触媒スチームクラッキングにおいて形成される炭化水素ラジカルの飽和に起因して、アップグレードに関与することもできる。触媒スチームクラッキングの効率および効果を増加させるために、以下でより詳細に記載するとおり、重油原料および水性環境中で安定である活性且つ選択的な触媒を使用できる。触媒スチームクラッキングは、固定触媒床およびスラリーを用いたバッチ式または連続フロー式であってよい。バッチ式においては、分散された触媒は現在Mo化合物、Ni化合物、Fe化合物に基づいている。具体的には、Feを含有する分散触媒の使用はコークス化の低減をみちびき、それはPetr Yeletsky らにより、“Catalytic steam cracking of heavy oil feedstocks”, Catalyst in Industry, 2018, vol 10, No.3,185~201ページにおいて、鉄塩が、水素で飽和した炭化水素分子から新たに形成される炭化水素ラジカルへの水素移動および有機化合物間の電子移動を酸化状態の可能な変化に起因して促進する能力によって説明されている。Fe2+のFe3+への水素移動は、炭化水素ラジカルの飽和をみちびき、Fe3+がFe2+へと還元される能力は炭化水素ラジカルの安定性の改善をみちびくことができ、そのことによって重縮合に関与しにくくなる。不均一担持触媒、例えばZrO2で改質された赤泥を、バッチ式で使用できる。連続フロー式においては、触媒床の流体力学的抵抗および触媒の急速な失活(被毒またはコークス化に起因)によって、触媒スチームクラッキングが複雑になることがある。これを防ぐために、スラリー型の反応器は、本実施態様に開示されるような分散された触媒を使用し、いくつかの実施態様においては、芳香族溶剤の添加を含む。鉄化合物、例えばマグネタイトへと還元されるヘマタイトは、このアプローチにおいて(それらの上記のレドックス化学に基づき)有益であることができる。
【0020】
いくつかの実施態様において、ここで開示される触媒の組成物は、1つ以上の無機の微細鉱物質、石炭堆積物中で見出される天然の古代鉱物混合物に基づくことができ、複数の遷移金属、例えば鉄、銅およびマンガンを含有する。前記触媒はカルシウム、バリウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの1つ以上も含有することができ、それは助触媒として作用し得る。前記触媒の組成物の1つの例示的な実施態様は、30,100ppmの鉄、17,600ppmのカルシウム、5,190のマグネシウム、2,980のカリウム、1,920の硫黄、1,190の窒素、253ppmのマンガン、139ppmのリン、93ppmの亜鉛、43ppmの銅、2ppmのモリブデンであってよい。そのような触媒を構成する前記微細鉱物質のバルクの鉱物学的分析(XRD、XRF)を以下の表1に示す:
【表1】
【0021】
いくつかの実施態様において、鉱物酸化物、例えばAl2O3、BaO、CaO、Fe2O3、MgO、P2O5、K2O、Na2O、TiO2、MnO2も前記微細鉱物質の組成物中に存在し得る。
【0022】
前記微細鉱物質を構成するいくつかの沈積粘土は、化学触媒として作用できるゼオライト鉱物と同様に多孔質構造および水和水を含み得る。前記微細鉱物質の多孔質構造は、Ca2+、Mg2+、Na+、K+からFe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Mn2+および/またはMn3+に及ぶ様々なカチオンを収容でき、それらはゆるく保持され、且つすぐに使用できて他のものと交換され且つ電子移動反応に関与する。
【0023】
表1に示される鉱物中の結合は、イオン性または共有結合性の特性のいずれかであることができ、種々の配置、対称性、電荷および結合特性をもたらす。配位子場のアプローチが最も適用可能であり、なぜなら、それは中心原子またはイオンを取り囲むイオンまたは分子を含み、配位子場の生じる強度が制御因子となるからである。電荷移動プロセスも配位子場の状況で生じ、且つ光化学的酸化・還元をみちびき得る。
【0024】
前記微細鉱物質は、Fe、Cu、Mn、Mo、Znおよび/またはCoからなる群から選択される少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つの遷移金属を含む。前記微細鉱物質内の金属および金属塩の濃度は、使用される分析方法に依存し、且つ典型的にはX線技術: 蛍光(XRF)および回折(XRD)および誘導結合プラズマ酸元素分析(ICP-AES)によって測定される。前記微細鉱物質中のそれらの遷移金属は、ICP-AES法を用いて、加温消化槽内で硝酸、塩酸および過酸化水素を利用して測定され且つ表2に示される範囲で定義される濃度を有する:
【表2】
【0025】
いくつかの実施態様において、前記微細鉱物質は、アルカリ金属/アルカリ土類金属である助触媒をさらに含む。それらの助触媒の限定されない例は、プラスチックの酸化分解を促進するためのCa、K、Mgまたはそれらの組み合わせを含み得る。前記微細鉱物質中の助触媒は表3に示される範囲で定義される濃度を有する。同様の画分の可溶性カチオンを有する他のアルカリ/アルカリ土類含有鉱物も、酸化分解のための助触媒として使用され得る。
【0026】
【0027】
ICP-AESによって同定された他の元素を表4に示す:
【表4】
【0028】
いくつかの実施態様において、前記触媒性微細鉱物質の濃度は反応器の種類に依存し得る。例えば、連続流動床反応器において、触媒対原料の比は約1:5~約1:100質量%の範囲であってよいがいくつかの実施態様において、その範囲は約1:10~約1:70質量%であってよい。バッチ式反応器において、触媒の濃度は、約0.5~約30体積%の範囲であってよいが、いくつかの実施態様において、前記範囲は約0.5~8体積%であってよい。
【0029】
前記微細鉱物質を泡沫浮遊選鉱技術、または当業者に公知の類似のプロセスによって分離でき、且つ概ね約50μm未満~約2μmの範囲の粒子サイズを有するが、いくつかの実施態様においては、前記粒子サイズは概ね0.5~概ね20マイクロメートルの範囲であってよい。いくつかの実施態様において、より微細な画分、例えば概ね5マイクロメートル~概ね0.5マイクロメートル、または概ね2マイクロメートル~概ね0.5マイクロメートルを使用できる。
【0030】
提案された触媒は、ポリマーの鎖の切断及び酸化変換を増進し、上記で議論された石油化学重油原料および/またはアルカン、混合プラスチック固体廃棄物または産業で使用済みまたは消費者で使用済みのプラスチック廃棄物の熱接触分解においてCO、CO2の収率を高める。遷移金属化合物は、炭化水素と水との両方を含有する媒体中での酸化還元プロセスに関与することができ、つまり炭化水素での遷移金属酸化物の還元(酸化クラッキング)に、過熱水蒸気または超臨界流体の形態であり得る水での再酸化が続く。還元された化合物の再酸化の間にin situで形成される水素は、液体生成物を飽和し且つそれらの品質を高めることができる。
【0031】
液化生成物の分布は、固有の鉱物質の存在によって影響されることがあり、原炭は脱灰炭より高いベンゼンおよびピリジン可溶分の収率をもたらす。石炭の液化条件下で、水素供与性溶剤(例えばテトラリン)はその水素を石炭由来の遊離基に供与する(ナフタレンが溶剤の脱水素の主な生成物である)。
【0032】
ここで開示される実施態様において、重油または混合プラスチック原料から生成される遊離基は水素供与化合物で終端されるのではなく、むしろ水素引き抜きに関与し、酸素が豊富な環境において高分子量の炭化水素のさらなる鎖のアンジッピングを促進する。
【0033】
当業者は、プロセスの苛酷性の条件が高いほど(高温および/または圧力を要する)、典型的にはより高い割合の芳香族をみちびくことを認識するであろう。触媒の存在下で、例えば、苛酷性は最小化されることができ、且つ生成される分子の組成は、より均質にされることができ、より少ない割合の芳香族を有する。低温での完全な変換は、引き続く通電を簡単にすることができ、それはいくつかの実施態様において燃焼の代わりおよび/または燃焼に追加して利用され得る。
【0034】
本願で開示される触媒の使用は、部分酸化、低温部分水蒸気改質および接触分解を促進することができ、クラッキングおよび水蒸気改質/ガス化のプロセスの効率を著しく高める。水を蒸気、過熱水蒸気または超臨界流体の状態で使用できる。超臨界水を伴うクラッキングは、触媒の存在下で非常に有効であり、なぜなら超臨界水は通常の水とは異なりほぼ無極性であり且つ炭化水素に対して良好な溶剤であるからである。超臨界水は、エマルションの形成により、容易に可溶できないかまたは不溶性である高分子量炭化水素を分散させることもでき、それはコークスの収率の低減および液体生成物の収率の増加をみちびく。超臨界水は、炭化水素の部分酸化を促進することによって酸化クラッキングの効率を高めることができ、且つさらなる水素の形成をみちびく。
【0035】
いくつかの実施態様において、開示される触媒は熱分解を受けないことが理解されるであろう。むしろ、いくつかの実施態様において、本願で開示される触媒は、スチームクラッキング、改質およびガス化のプロセスが、低減されたプロセスの苛酷性の条件、つまり温度、圧力、エネルギー消費で実施されることを可能にする。前記触媒はポリオレフィン系原料の分解の活性化エネルギーを、その分解が酸化性の環境下、例えば空気下で行われる場合に低下させることが示されている。TGAのデータは、以下でさらに記載されるとおり、記載される鉱物の存在下でのPE原料の熱分解の活性化エネルギーの低下を実証している。例えば、いくつかの実施態様において、活性化エネルギーは、約2%の前記微細鉱物質を使用して43から23kJ/molへと低下され得る。
【0036】
前記触媒はin situとガス化後の反応との両方においてはたらき得る。前者はガス化に先立ち原料中に触媒を含浸することを含み得る。それは流動床のように反応器に直接追加できる。ガス化後の反応において、触媒は形成されたタールおよびメタンを変換するための、ガス化装置の下流の第2の反応器内に配置され(ガード床反応器)、それはガス化装置の稼働条件から独立であるという追加的な利点を有する。第2の反応器は改質反応にとって最適な温度で稼働され得る。
【0037】
ここで開示される触媒を使用でき、且つ/または使用して改善できるプロセスのいくつかの限定されない例は、(1)KDVプロセス(触媒無圧解重合プロセス)、(2)テキサコプロセス、このプロセスは流動床、固定床および同伴流反応器を利用、および(3)他の触媒化合物の添加を用いるかまたは用いない石炭硫黄化合物の脱硫を含み得る。ここで開示される触媒から利益を得られるさらなるプロセスを以下に要約する:
【0038】
オレフィンアルコールのエポキシ化: アルキルヒドロペルオキシドによる単純なオレフィンのエポキシ化のためのバナジウムおよびモリブデンの使用が知られているが、複雑な分子合成のためには利用されていない。微細鉱物質に基づく触媒の使用は、より有効且つ手頃なアプローチをもたらす可能性がある。
【0039】
合成ガスのメタノールへの変換: 提案された触媒は、現在、メタノールの工業生産の最も一般的な方法である合成ガスからのメタノールの触媒合成のさらなる最適化も提供し得る。合成ガスのメタノールへの触媒変換のための現在の触媒は、ZnO/Al2O3(BASFプロセス)またはCu/ZnO/Al2O3(ICIプロセス)に基づく。
【0040】
メタノールからガソリンへの(MTG)変換: Mobil Oil Corporationによって開発されたメタノールからガソリンへの合成は、ゼオライト触媒(NaAlSi2O6・H2O)上で、350℃且つ圧力約30atmでメタノールを触媒により炭化水素へと変換する。同様の「石炭からガソリンへの」プロセスは、中国においてJincheng Anthracite Mining Groupによって開発された。
【0041】
メタノールからオレフィンへの(MTO)変換: MTOプロセスは、メタノールを軽質オレフィンに変換する。スチームクラッキングとは異なり、エチレンに対するプロピレンの収率はよりフレキシブルであり、それはスチームクラッキングに対する強い長所である。このプロセスは現在、MTGよりも高い温度を必要とするが、大気圧付近である。
【0042】
いくつかの実施態様において、技術の組み合わせ、例えば液化段階および同伴または固定または流動床ガス化装置を使用することもできる。液化段階において、プラスチック廃棄物は合成重油およびいくつかの凝縮性および非凝縮性のガス画分へと、熱的に穏やかにクラッキング(解重合)されることができる。非凝縮性のガスは、液化において燃料として(天然ガスと共に)再利用され得る。油および凝縮性ガスは、ガス化装置に注入されることができ、そこで酸素および水蒸気を用いてガス化が行われる。とりわけ、HClおよびHFの除去を含み得る多数の洗浄プロセスの後、主にCOおよびH2からなる清浄且つ乾燥した合成ガスが、少量のCH4、CO2、H2Oおよびいくつかの不活性ガスと共に生成される。典型的なガス化は概ね1200℃~1500℃の温度範囲で実施されるが、当業者は、ガス化を促進するためにより高いかまたはより低い温度を適用できることを認識し、それは本質的に上述のテキサコプロセスである。テキサコプロセスは変換を促進するために高温を必要とすることが理解されるであろう。
【0043】
前記化学リサイクル法はS1で開始し、そこで、触媒として使用され得る、ある量の微細鉱物質が得られる。前記微細鉱物質は、上述の泡沫浮遊選鉱プロセスを用いて石炭廃物および/または微細サイズの石炭から分離される。前記微細鉱物質は、天然資源、例えば火山玄武岩、氷河岩屑堆積物、ケイ酸鉄カリウムおよび/または他の海岸採掘堆積物から採掘されることもできる。前記微細鉱物質の粒子サイズは約50μm未満~約2μmの範囲である。前記微細鉱物質は、Fe、Cu、Mn、Mo、Zn、Co、またはそれらの組み合わせなる群から選択される遷移金属の少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つを含んで、非生分解性プラスチックの酸化分解を引き起こす。前記微細鉱物質中のそれらの遷移金属は、ICP-AES法を用いて、加温消化槽内で硝酸、塩酸および過酸化水素を利用して測定され、且つ上記表2に示される範囲で定義される濃度を有する。
【0044】
いくつかの実施態様において、加熱を摂氏約200度~摂氏約500度の範囲の温度で実施できる。
【0045】
前記微細鉱物質は、プラスチックの酸化分解を促進するためにCa、K、Mgまたはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0046】
段階S2において、前記微細鉱物質が、クラッキングの間に形成される溶融ポリマーまたはポリマーの蒸気と接触する。前記微細鉱物質との接触を、クラッキングまたはガス化温度で、酸素および/または水蒸気の存在下で行うことができ、H2およびCOが豊富な合成ガスが、より少量のCH4、CO2、H2Oおよびいくつかの不活性ガスと共に生成する。
【0047】
段階S3において、前記微細鉱物質中の遷移金属が酸化分解を触媒する。ラジカル連鎖プロセスに敏感な炭化水素系ポリマーについて、分解プロセスの律速部分は、酸化セグメントであり、一般には過酸化と称される。炭化水素ポリマーは、過酸化に耐える(または受ける)能力において異なる。従って、酸化安定性は、天然ゴム(シス-ポリ(イソプレン))からポリ(ブチレン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルへと上昇する。ポリエチレンのうち、それらの化学的特性および形態学的特性に起因して、LDPEおよびLLDPEはHDPEよりも酸化分解されやすい。
【実施例】
【0048】
実験データ
本願で開示される触媒で変性される直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびLLDPEの試料を、TA Instruments Discoveryの熱重量分析(TGA)分析器を用いて、空気中、50℃から550℃まで5、10、15および20℃/分の速度で試験した。分解の活性化エネルギーをキッシンジャー法によって計算した:
【数1】
【0049】
前記式中、αは変換率であり、Eaは見かけの活性化エネルギー、kJ/molであり、Aは頻度因子であり、βは加熱速度、℃/分であり、Rは一般の気体定数、J/mol°Kであり、Tmは最高分解速度での温度、°Kであり、且つnは反応次数である。前記キッシンジャー法は、積n(1-α)m
n-1が1に等しく、且つ加熱速度から独立であることを示す。ln(β×Ea/RTm
2)=-Ea/RTmとして書き直して、ln(β/Tm2)の(1/RTm)に対する依存性が直線を示すことがわかる。見かけの活性化エネルギーは、傾きから、且つ頻度因子はy軸上での直線の切片から計算される。
【0050】
図2~5は、触媒の添加がLLDPEに及ぼし得る影響を説明する。
図2に示すとおり、空気中でのベースのLLDPE化合物の分解のE
aは43.4kJ/molである。ベースのLLDPE化合物は、0.2%のフェノール系一次酸化防止剤および0.13%のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤も含有する。ベースのLLDPE化合物への触媒の添加は、
図3に示されるとおり、E
aを20.85kJ/molに低下させる。従って、触媒の包含は、触媒の不在下で必要とされる分解において、活性化エネルギーE
aの概ね50%以上の低下をもたらす。当業者は図面内の「fmm」が「微細鉱物質」を示すことを認識するであろう。上記のE
aの計算において使用されるベースのLLDPEおよび変性LLDPEの試料についてのTGAデータを
図4および5に示す。ベースのLLDPEについて
図4に示されるとおり、分解は5C/分(A)、10C/分(B)、15C/分(C)および20C/分(D)で示される。
【0051】
窒素中で実施される分解については、ベースのLLDPEおよび変性LLDPEの活性化エネルギーはそれぞれ107.83および156.44kJ/molである。それらの値は、前記微細鉱物質が酸化プロセスを触媒し、且つ酸化を含むケミカルリサイクル技術を検討すべきであることを示唆する。そのような技術のいくつかの限定されない例は、酸素の存在下または他の酸化性環境下で実施されるガス化、熱クラッキングまたは接触分解であることができる。
【0052】
いくつかの実施態様において、異なる安定化の化学的性質を有するLDPE化合物をTGAによって試験する場合、微細鉱物質によって変性された化合物中での活性エネルギーの低下も実証されており、ほんの0.5%の前記鉱物質の使用で51.6から45.7kJ/molへ低下する。
【0053】
様々な材料についてのLDPEおよびLLDPEの熱分解のTGAデータの要約表を以下の表5に示す。
【0054】
【0055】
当業者は、上述の実施態様に基づき、本開示のさらなる特徴および利点を理解するであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される以外、具体的に示され且つ記載されるものに限定されない。引用された全ての刊行物および参考文献は、参照をもってその全文が本願内に明示的に組み込まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭
から分離された、および/または火山玄武岩、氷河岩屑堆積物、ケイ酸鉄カリウムおよび/または海岸堆積物を含む天然資源から採掘された、ある量の触媒性微細鉱物質であって、約2μm~約50μmの範囲の粒子サイズを有する前記触媒性微細鉱物質を得ること、および
溶融ポリマーまたはその蒸気を前記触媒性微細鉱物質と、クラッキングまたはガス化温度で酸素および/または水蒸気の存在下で接触させて合成ガス生成物を形成
し、前記溶融ポリマーまたはその蒸気が、前記微細鉱物質との接触後により小さな分子へと変換されること
を含む、ケミカルリサイクル方法。
【請求項2】
前記合成ガス生成物が、H
2、CO、CH
4、CO
2、H
2Oおよび不活性ガスの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒性微細鉱物質が、Fe、Cu、Mn、Mo、Zn、Coまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属を、以下の濃度:
Fe 14,000~45,000ppm、
Cu 10~50ppm、
Mn 100~700ppm、
Mo 1~2ppm、
Zn 20~120ppm、および
Co 10~15ppm
で含み、ここでppmは、ICP-AES法を用いて、加温消化槽内で硝酸、塩酸および過酸化水素を利用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒性微細鉱物質が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属Ca、K、Na、Mgまたはそれらの組み合わせを以下の濃度:
Ca 1,000~18,000ppm、
K 600~4,000ppm、
Na 300~1,500ppm、および
Mg 20~8,000ppm
で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒性微細鉱物質の濃度が、0.5~8体積%、または触媒/原料比で約1:5~約1:100質量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒性微細鉱物質が、担体材料または触媒のいずれかとして利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融ポリマーが、産業で使用済みまたは消費者で使用済みのプラスチック廃棄物の、固体混合プラスチック廃棄物の、または石油化学重油およびアルカンの、スチームクラッキング、ガス化および改質プロセスによる触媒プロセスに続いて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液化がガス化に先行し、液化は熱分解、熱クラッキングまたはスチームクラッキングを介して達成されて、プラスチック廃棄物を合成の重油および凝縮性ガスへと変換し、それがガス化装置および/または水蒸気改質に注入される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ガス化に続いて、合成ガス生成物の組成を改善するための洗浄および/または水素化をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ガスを、KDVプロセス、テキサコプロセス、または単塔式または二塔式の、流動床、固定床および同伴流反応器を利用するプロセスの1つ以上に供することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記スチームクラッキングが、超臨界水中での水熱分解を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
改質プロセスが、メタンの合成ガス生成物への触媒水蒸気改質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記合成ガス生成物に通電することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記合成ガス生成物を、スチームクラッキングまたはガス化を促進するための熱源として使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記合成ガス生成物を、ハイドロクラッキングを支えるためのガス源として使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
触媒スチームクラッキングが、バッチ式、または連続フロー式(スラリータイプ)である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子サイズは、概ね5マイクロメートル~概ね0.5マイクロメートルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
加熱を、摂氏約200度~摂氏約500度の範囲の温度で実施する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒性微細鉱物質が、前記溶融ポリマーまたはその蒸気の鎖の切断または酸化変換を増進する、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】