(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】第VIII因子ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230111BHJP
C07K 14/755 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230111BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230111BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230111BHJP
A61K 38/37 20060101ALI20230111BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230111BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230111BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/755 ZNA
C12N15/10 200Z
C12N15/864 100Z
C12N7/01
A61P7/04
A61K38/37
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525555
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 GB2020052760
(87)【国際公開番号】W WO2021084275
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345464
【氏名又は名称】フリーライン セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】キア、アザデ
(72)【発明者】
【氏名】カンパー、ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】コルバウ、ロムアルド
(72)【発明者】
【氏名】ドデヴ、ティホミル
(72)【発明者】
【氏名】マッキントッシュ、ジェニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
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4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
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4C084MA16
4C084MA17
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4C084NA14
4C084ZA531
4C084ZA532
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA53
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA66
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、対応する野生型第VIII因子と比較して1つ以上の置換変異を含む第VIII因子ポリペプチドを提供し、ここで、該1つ以上の置換変異は、第VIII因子ポリペプチドの2つのドメイン間のドメイン間インターフェイスに位置する。本発明の第VIII因子ポリペプチドをコードする第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含む組換えAAV構築物、そのような組換えAAV構築物を含むAAVウイルス粒子、本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、またはAAVウイルス粒子を含む組成物、並びに本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子および組成物の治療における使用も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、1つ以上の置換変異を含み、該1つ以上の置換変異は、配列番号1のM662に対応するアミノ酸の置換を含み、該1つ以上の置換変異は、M662C置換を含まない、第VIII因子ポリペプチド。
【請求項2】
(i)第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより高い比活性を有する;および/または
(ii)第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型FVIII因子ポリペプチドと比較してより高い安定性を有する;および/または
(iii)第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより長い半減期を有し、任意にここで、該第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたときに、該参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより長い半減期を有する;および/または
(iv)第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現される、
請求項1の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項3】
第VIII因子ポリペプチドが、参照第VIII因子ポリペプチドの比活性よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、または少なくとも5.5倍高い比活性を有する、請求項2の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項4】
第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドの少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.8若しくは少なくとも3倍の半減期であるより長い半減期を有する、および/または第VIII因子ポリペプチドが、活性化されたときに、活性化されたときの参照野生型第VIII因子ポリペプチドの少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.8若しくは少なくとも3倍の半減期である半減期を有し、任意に、ここで、該より長い半減期は、血漿中のより長い半減期である、請求項2または3の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項5】
(i)発現される第VIII因子ポリペプチドのレベルが、宿主細胞によって分泌されるFVIIIポリペプチドのレベルであり、任意にここで、該宿主細胞は、ヒト肝細胞であり、任意にここで、該ヒト肝細胞は、Huh7細胞である;および/または
(ii)発現される第VIII因子ポリペプチドのレベルが、インビボ発現である、
請求項2から4のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項6】
第VIII因子ポリペプチドが、第VIII因子ポリペプチドの第VIII因子アミノ酸配列を含むが、1つ以上の置換変異を含まない、参照第VIII因子ポリペプチドよりも、より高い比活性および/若しくはより高い安定性を有し並びに/または宿主細胞中でより高いレベルで発現され、任意にここで、該参照第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1、3または5の第VIII因子ポリペプチドである、請求項2から5のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項7】
1つ以上の置換変異が、メチオニンのトリプトファン、チロシン、イソロイシン、ロイシンまたはフェニルアラニンでの置換を含む、請求項1から6のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項8】
1つ以上の置換変異が、配列番号1のM662に対応するアミノ酸の芳香族アミノ酸での置換を含む、請求項1から7のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項9】
1つ以上の置換変異がM662W置換を含む、請求項1から8のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項10】
1つ以上の置換変異がM662WおよびH693W置換を含む、請求項1から9のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項11】
1つ以上の置換変異が第VIII因子ポリペプチドの活性化を阻害しない、請求項1から10のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項12】
第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号1、3若しくは5において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、または配列番号1、3若しくは5の少なくとも1349個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から11のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項13】
第VIII因子ポリペプチドがベータドメイン欠失(BDD)第VIII因子ポリペプチドである、請求項1から12のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項14】
第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号1の位置1から731および1670から2332に対応するアミノ酸を含む、請求項1から13のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項15】
第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号28において記載されるアミノ酸配列、または配列番号28において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から14のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド。
【請求項16】
第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(iii)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(iv)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
(A)該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い比活性を有する;および/または
(B)該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する;および/または
(C)該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現される、
第VIII因子ポリペプチド。
【請求項17】
第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.配列番号1のM662若しくはH693に対応するアミノ酸の置換;または
b.第1のアミノ酸および第2のアミノ酸を含む一対のアミノ酸のシステイン残基での置換であって、
i.該第1のアミノ酸は、配列番号1のM147、S149若しくはS289に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のE1969、E1970若しくはN1977に対応するか;
ii.該第1のアミノ酸は、配列番号1のT667、T669、N684、L687、I689、S695若しくはF697に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のS1791、G1799、A1800、R1803、E1844、S1949、G1981、V1982、若しくはY1979に対応するか;または
iii.該第1のアミノ酸は、配列番号1のA108、T118若しくはV137に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のN2172、Q2329若しくはY2332に対応する、
置換
からなる群から選択される1つ以上の置換変異を含む、第VIII因子ポリペプチド。
【請求項18】
第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該第VIII因子ヌクレオチド配列は、請求項1から17のいずれか一項に記載の第VIII因子ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項19】
第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列が、配列番号31において記載されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、または配列番号31若しくは配列番号29の少なくとも4047個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項18のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18または19に記載の第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む、組換えAAV構築物。
【請求項21】
請求項20に記載の組換えAAV構築物を含む、AAVウイルス粒子。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物またはAAVウイルス粒子、および薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
【請求項23】
治療方法における使用のための、請求項1から22のいずれか一項に記載のFVIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物。
【請求項24】
血友病Aを治療する方法における使用のための、請求項1から22のいずれか一項に記載のFVIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物であって、前記方法は、有効量の、請求項1から22のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物AAVウイルス粒子または組成物を、患者に投与することを含む、FVIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物。
【請求項25】
血友病Aを治療する方法であって、前記方法は、有効量の、請求項1から22のいずれか一項の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物AAV、AAVウイルス粒子または組成物を、患者に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第VIII因子(FVIII)ポリペプチド、第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、および組換えAAV構築物に関する。本発明はさらに、本発明の組換えAAV構築物を含むAAVウイルス粒子、および本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物またはAAVウイルス粒子を含む組成物に関する。本発明はまた、本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子および/または組成物を使用する方法並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血友病Aは、血液凝固第VIII因子の欠乏によって引き起こされる出血性障害である。それは、世界中で1:4,000から1:5,000の生きている男性の出生に影響を及ぼす。症例の大半は、X連鎖劣性形質として遺伝する。現在の治療法は、第VIII因子タンパク質の頻繁な静脈内注射(週あたり2~3回)を含む。この治療法は、出血を止めるのに非常に効果的であるが、それは、治癒的ではなく、非常に高価であり(£150,000/患者/年)、すなわち、該治療法を世界中の血友病A患者の大半によって手が届かないものとする。血友病Aについての遺伝子治療は、第VIII因子遺伝子の機能するコピーの罹患した患者への導入に続く、第VIII因子の持続的で内因性の産生を通した治癒についての可能性を提供する。
【0003】
第VIII因子は、6つのドメイン、すなわちA1-A2-B-A3-C1-C2からなる。第VIII因子は、フォン・ヴィレブランド因子に結合しながら、不活性形態で血流中で循環する。傷害に応答して、第VIII因子は、活性化され(しばしば次いで第VIIIa因子として呼ばれる)、フォン・ヴィレブランド因子から分離する。第VIIIa因子は、凝固カスケードにおいて第IXa因子と相互作用する。特に、FVIIIa因子は、第X因子の活性化における第IXa因子についての補因子である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、特定のアミノ酸置換(置換変異)を含む第VIII因子ポリペプチドに関する。第VIII因子は、A1-A2-Bドメイン、およびA3-C1-C2ドメインからなるヘテロ二量体複合体として発現し、不活性形態で循環する。第VIII因子は、トロンビンによるタンパク質分解切断によって活性化される。トロンビン切断に続き、第VIII因子は、A1ドメイン、A2ドメイン、およびA3-C1-C2ドメインからなるヘテロ三量体複合体を形成し、コンフォメーション変化を受け、それが、第IXa因子への結合および第X因子の活性化を可能にする。活性化に続き、第VIIIa因子は、さらなるタンパク質分解を受け得、および/またはヘテロ三量体複合体のそれぞれの成分は、互いに解離し得、それによって第VIIIa因子を不活性化し得る。本発明者らは、第VIII因子ポリペプチドの比活性を増加させる第VIII因子のドメインのインターフェイスに位置する特定のアミノ酸の置換を同定した。第VIII因子ポリペプチドの比活性を増加させることは、より少ない量の第VIII因子ポリペプチドが凝固が起こるために必要とされ得ることを意味する。
【0005】
第1の態様においては、第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドが提供され、ここで、該FVIIIアミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(i)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(ii)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い比活性を有する。
【0006】
第2の態様においては、第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドが提供され、ここで、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(i)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(ii)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する。
【0007】
第3の態様においては、第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドが提供され、ここで、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(i)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(ii)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現される。
【0008】
第4の態様においては、第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドが提供され、ここで、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.配列番号1のM662若しくはH693に対応するアミノ酸の置換;または
b.第1のアミノ酸および第2のアミノ酸を含む一対のアミノ酸のシステイン残基での置換であって、
1.該第1のアミノ酸は、配列番号1のM147、S149若しくはS289に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のE1969、E1970若しくはN1977に対応するか;
2.該第1のアミノ酸は、配列番号1のT667、T669、N684、L687、I689、S695若しくはF697に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のS1791、G1799、A1800、R1803、E1844、S1949、G1981、V1982、若しくはY1979に対応するか;または
3.該第1のアミノ酸は、配列番号1のA108、T118若しくはV137に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のN2172、Q2329若しくはY2332に対応する、
置換
からなる群から選択される1つ以上の置換変異を含む。
【0009】
第5の態様においては、第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供され、ここで、該第VIII因子ヌクレオチド配列は、本発明の第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0010】
第6の態様においては、第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む組換えAAV構築物が提供され、ここで、該第VIII因子ヌクレオチド配列は、本発明の第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0011】
第7の態様においては、本発明の組換えAAV構築物を含むAAVウイルス粒子が提供される。
【0012】
第8の態様においては、本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物またはAAVウイルス粒子、および薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物が提供される。
【0013】
第9の態様においては、治療方法における使用のための、本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物が提供される。
【0014】
第10の態様においては、有効量の、本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物を、患者に投与することを含む、治療方法が提供される。
【0015】
第11の態様においては、治療方法における使用のための薬剤の製造における、本発明の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の説明
【
図1】
図1は、アミノ酸の水相から非水相(オクタノール)への自由エネルギー(ΔG)移行についてのWimley-White疎水性スケールを示す。より負のΔG値は、水相から非水相中へのより好ましい移行と関連しており、より疎水性のアミノ酸を示す。
【
図2】
図2は、各変異体についての多くの代替置換残基を含む、いくつかの異なるアミノ酸置換変異変異体について、いかなる置換変異をも欠くFVIII-SQ(‘95’)対照と比較した、SA(比活性)における倍率変化を示す。変異体65(H693W)は、95と比較してSAにおける上昇を示す。
【
図3】
図3は、いくつかの異なる二重システイン置換変異変異体について、いかなる置換変異をも欠くFVIII-SQ(‘95’)対照と比較した、SAにおける倍率変化を示す。多くの変異体は、95と比較してSAにおける上昇を示す。
【
図4】
図4は、置換変異を含む一連の第VIII因子ポリペプチドの第VIII因子比活性を示す。比活性に対する置換変異の影響は、いかなる置換変異をも含まない第VIII因子-SQ対照と比較して、‘SQ’および’96-106’第VIII因子ポリペプチドにおいて評価した。エラーバーは、ELISAおよび活性アッセイにおけるサンプル重複からの標準偏差を表す。
【
図5】
図5は、構築物FRE72-SP5-FVIIICo19(26-96-106)-SpA(配列番号27);FRE72-SP5-FVIIICo19-SQ-SpA(配列番号32);または、天然のFVIIIシグナルペプチド、SpAおよび肝臓特異的プロモーターを有する、コドン最適化されたFVIII-SQコード配列を含むコンパレーター構築物(配列番号34)から作製した2×10
12vg/kgのAAV8ウイルス粒子を静脈内注射したC7BL/6 FVIIIノックアウトマウスの血漿中の、注射6週間後の第VIII因子比活性を示す。
**P=0.0038。左側のパネルは、ナイーブ対照と比較したFRE72-SP5-FVIIICo19(26-96-106)-SpA(左側のカラム)およびコンパレーター構築物(中央のパネル)の比活性を示し;右側のパネルは、FRE72-SP5-FVIIICo19-SQ-SpA(左側のカラム)およびコンパレーター構築物(右側のカラム)の比活性を示す。
【0017】
配列リストの説明
【0018】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
一般的な定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
一般に、用語「含む」は、含むが限定されないことを意味することを意図している。例えば、句「第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチド」は、該第VIII因子ポリペプチドは第VIII因子アミノ酸配列を有するが、該第VIII因子ポリペプチドはさらなるアミノ酸を含有し得ることを意味すると解釈されるべきである。同様に、句「第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド」は、第VIII因子ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを指すが、該ポリヌクレオチドは、追加のヌクレオチドを含有し得る。
【0022】
本発明のいくつかの実施態様においては、単語「含む」は、句「実質的にからなる」で置き換えられる。用語「実質的にからなる」は、特定のさらなる成分、すなわち主題の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさないものが存在し得ることを意味する。
【0023】
本発明のいくつかの実施態様においては、単語「含む」は、句「からなる」で置き換えられる。用語「からなる」は、限定していることを意図している。例えば、句「第VIII因子アミノ酸配列からなる第VIII因子ポリペプチド」は、該第VIII因子ポリペプチドが、第VIII因子アミノ酸配列を有し、追加のアミノ酸を何も有さないことを意味すると解釈されるべきである。同様に、句「第VIII因子ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド」は、該ポリヌクレオチドが、第VIII因子ヌクレオチド配列を有し、追加のヌクレオチドを何も有さないことを意味すると理解されるべきである。
【0024】
本発明のいくつかの実施態様においては、単語「有する」は、単語「含む」または句「からなる」で置き換えられ得る。
【0025】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書においては交換可能に使用され、任意の長さのアミノ酸の高分子鎖を指すことを意図している。
【0026】
用語「核酸分子」「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」は、本明細書においては交換可能に使用され、任意の長さのヌクレオチドの高分子鎖を指すことを意図している。
【0027】
用語「置換変異」および「アミノ酸置換」は、本明細書においては交換可能に使用され、アミノ酸配列中の1つのアミノ酸の異なるアミノ酸での置換を意味することを意図している。句、アミノ酸X「の置換」、または「置換されている(される)アミノ酸X」においては、アミノ酸Xは、アミノ酸配列内に存在し、置き換えられる元のまたは天然のアミノ酸である。例えば、メチオニンの置換は、天然のメチオニンアミノ酸が別のアミノ酸によって置き換えられることを意味する。句、アミノ酸Y「での置換」においては、アミノ酸Yは、アミノ酸配列中の元のまたは天然のアミノ酸を置き換える異なるアミノ酸である。例えば、メチオニンでの置換は、天然の(非メチオニン)アミノ酸のメチオニンでの置換えを指す。置換変異を定義するために使用される標準的な略記法は、置換されるアミノ酸配列内のある位置での元のまたは天然のアミノ酸、および元のまたは天然のアミノ酸を置き換えるアミノ酸をリストする。例えば、置換変異M662Wを含む第VIII因子アミノ酸配列は、位置662に対応する位置のメチオニン残基のトリプトファン残基での置換を含む(すなわち位置662にトリプトファン残基を含む)第VIII因子アミノ酸配列を指す。
【0028】
用語「保存的置換」は、アミノ酸が、同様の、サイズ、電荷または疎水性などの生化学的特性を有する別のアミノ酸で置換される置換変異を指す。アミノ酸は、それらの側鎖の構造に基づいてグループに分類し得る:脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン);ヒドロキシル/硫黄含有(セリン、スレオニン、システイン、メチオニン);環式(プロリン);芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);塩基性(ヒスチジン、リジン、アルギニン);酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);および酸アミン(アスパラギン、グルタミン)。「保存的置換」はすなわち、アミノ酸が同じグループ中の別のアミノ酸で置換される置換変異を指す。逆に、用語「非保存的置換」は、アミノ酸が異なる生化学的特性を有する別のアミノ酸で置換される置換、すなわちアミノ酸が別のグループ中のアミノ酸で置換される置換変異を指す。例えば、アスパラギン酸のグルタミン酸での置換は、「保存的置換」であると見なされ得、一方で、アスパラギン酸のバリンでの置換は「非保存的」置換であると見なされ得る。
【0029】
用語「野生型」および「天然の」は、本明細書においては交換可能に使用され、天然に存在しているものを説明することを意図している。例えば、「野生型第VIII因子アミノ酸配列」は、自然界に存在するアミノ酸第VIII因子配列である。
【0030】
用語「Bドメイン」および「ベータドメイン」は、本明細書においては、第VIII因子のBドメインに関して交換可能に使用される。野生型第VIII因子のBドメインは、配列番号1のアミノ酸741~1648に対応する領域からなる。
【0031】
用語「AAVウイルス粒子」および「AAVベクター」は、本明細書においては交換可能に使用される。
【0032】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の長さを説明する文脈において使用される用語「約」は、配列が、定義された数のヌクレオチドまたはアミノ酸、プラス若しくはマイナス10%、より具体的にはプラス若しくはマイナス5%、またはより具体的にはプラス若しくはマイナス単一の整数を含み得るかまたはそれらからなり得ることを示す。例えば、長さが「約」45のアミノ酸のアミノ酸配列への言及は、長さが41~49のアミノ酸、より具体的には43~47のアミノ酸、より具体的には44~46のアミノ酸のアミノ酸配列を指し得る。
【0033】
本発明の目的のために、2つの配列(2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列などの)のパーセント同一性を決定するために、該配列は、最適な比較目的のためにアラインされる(例えば、ギャップは、第2の配列との最適なアラインメントのために第1の配列中に導入され得る)。各位置のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を、次いで比較する。第1の配列中のある位置が第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチドまたはアミノ酸で占められているとき、そのときは、該ヌクレオチドまたはアミノ酸はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、該配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/参照配列中の位置の総数×100)。
【0034】
典型的には配列比較は、参照配列の長さにわたって行う。例えば、ユーザーが所与の(「試験」)配列が配列番号3と95%同一であるかどうかを決定したい場合、配列番号3が参照配列であろう。配列が配列番号3(参照配列の例)と少なくとも95%同一であるかどうかを評価するために、当業者は、配列番号3の長さにわたってアラインメントを行い、試験配列中のどれだけ多くの位置が配列番号3のものと同一であるかを同定するであろう。位置の少なくとも95%が同一である場合、試験配列は、配列番号3と少なくとも95%同一である。配列が配列番号3より短い場合、ギャップまたは欠落した位置は、同一ではない位置であると見なすべきである。
【0035】
当業者は、2つの配列間の相同性または同一性を決定するために利用可能な種々のコンピュータプログラムを知っている。例えば、配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。ある実施態様においては、2つのアミノ酸または核酸配列間のパーセント同一性は、Blosum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、並びに16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み、および1、2、3、4、5、または6の長さの重みを使用して、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で利用可能)中のGAPプログラム中に組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(1970)アルゴリズムを使用して決定される。
【0036】
単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が他に明確に指示していない限り、複数の指示対象が含む。すなわち、例えば、「アミノ酸」への言及は、そのようなアミノ酸の2つ以上の例またはバージョンを含む。
【0037】
上記または下記のいずれであろうと、本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
機能変異の獲得
活性化された第VIII因子ヘテロ三量体複合体のそれぞれの成分の解離(特に、A1ドメインおよびA3-C1-C2ドメインからのA2ドメインの解離)は、凝固カスケードの活性化に続く第VIII因子活性の喪失の主要なメカニズムの1つであると考えられている。理論によって拘束されることを望まないが、本アミノ酸置換変異は、第VIII因子ポリペプチドの活性化に続く第VIII因子ヘテロ三量体複合体のそれぞれの成分の解離を防ぐまたは遅延させるのに役立ち得、それによって、活性なFVIIIaが無傷である、すなわち活性である時間を延長し得ると考えられている。
【0039】
本発明の第VIII因子ポリペプチドは、対応する野生型第VIII因子アミノ酸配列と比較して、1つ以上の置換変異を含む。より具体的には、1つ以上の置換変異は、第VIII因子ポリペプチドの2つのドメイン間のドメイン間インターフェイスに位置している。特に、1つ以上の置換変異は、A1/A3ドメインインターフェイス、A2/A3ドメインインターフェイス、またはA1/C2ドメインインターフェイスから選択されるドメイン間インターフェイスに位置している。第VIII因子アミノ酸配列は従って、A1、A2、A3またはC2ドメイン中の置換変異を含む。第VIII因子の3次元結晶構造が利用可能であり(例えば、PDBアクセッション番号2RZEまたは4BDV);従って、これらのドメイン内のアミノ酸、より具体的には、置換され得る特定のドメイン間インターフェイスに位置するアミノ酸を同定することは、定型的であろう。野生型第VIII因子に関して、A1ドメインは、配列番号1の位置1~329に対応するアミノ酸からなり;A2ドメインは、配列番号1の位置380~711に対応するアミノ酸からなり;A3ドメインは、配列番号1の位置1694~2021に対応するアミノ酸からなり;C1ドメインは、配列番号1の位置2021~2169に対応するアミノ酸からなり;C2ドメインは、配列番号1の位置2174~2332に対応するアミノ酸からなる。最後の6つのアミノ酸(配列番号1の位置2327から2332に対応する)は、C2ドメインの一部とは見なされない可能性がある。すなわち、任意に、C2ドメインは、配列番号1の位置2174~3236に対応するアミノ酸からなる。
【0040】
特定の実施態様においては、本明細書において開示される、A1/A3ドメインインターフェイス、A2/A3ドメインインターフェイスまたはA1/C2ドメインインターフェイスに1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い比活性を有し得る。第VIII因子ポリペプチドの比活性を増加させる例示的な置換変異が、本明細書において開示されている。
【0041】
第VIII因子は、凝固カスケードにおける第X因子についての補因子であり、いったん活性化されると、活性化された第IX因子と共同で作用し、第X因子を活性化する。第VIII因子は、それ自体では、独立して酵素活性を有していない。すなわち、本明細書における第VIII因子ポリペプチドの活性または比活性への言及は、第X因子の活性を決定するための機能アッセイにおける観察された活性または比活性を指し、ここで、第VIII因子は、第IX因子と共同で第X因子の補因子として作用し得る(すなわち第VIII因子補因子活性(FVIII:C))。同様に、参照第VIII因子ポリペプチド(野生型第VIII因子ポリペプチドなどの)よりも高い活性または比活性を有する第VIII因子ポリペプチドへの言及は、参照第VIII因子ポリペプチドについての前記アッセイにおける観察された第X因子の活性または比活性と比較して、前記第VIII因子ポリペプチドについて増加した、機能アッセイにおける観察された第X因子の活性または比活性を指す。
【0042】
第VIII因子ポリペプチドが参照野生型第VIII因子ポリペプチドなどの参照第VIII因子ポリペプチドと比較して増加した比活性を有するかどうかを決定する目的のために、第VIII因子ポリペプチドの活性を、2段階の発色性第Xa因子アッセイによって測定し得る。例えば、適切な発色アッセイは、以下のとおりである。第VIII因子ポリペプチドを、ヒト第X因子ポリペプチドおよび第IXa因子ポリペプチド、トロンビン、リン脂質並びにカルシウムと混合する。トロンビンは、第VIII因子ポリペプチドを活性化して、第VIIIa因子ポリペプチドを形成する。トロンビンで活性化された第VIII因子ポリペプチドは、第IXa因子ポリペプチド、リン脂質およびカルシウムと酵素複合体を形成し、その酵素複合体は、第X因子ポリペプチドの第Xa因子ポリペプチドへの変換を触媒し得る。第Xa因子ポリペプチドの活性は、発色性基質(例えばSXa-11)の切断を触媒して、pNAを産生し得る。生成したpNAのレベルは、405nmでの発色を決定することによって測定する(例えば吸光度によって測定する)ことができる。第X因子ポリペプチド、従って第Xa因子ポリペプチドは、過剰に提供する。従って、制限因子は、第VIIIa因子ポリペプチドである。すなわち、生成するpNAのレベルは、サンプル中のFVIIIa因子ポリペプチドによって生成する第Xa因子ポリペプチドの量に比例し、これは、サンプル中のFVIIIa因子ポリペプチドの活性に比例する。サンプル中のFVIIIa因子ポリペプチドの活性は、該サンプル中のFVIII因子ポリペプチドの補因子活性の尺度である。
【0043】
例えば、適切な発色アッセイは、実施例において使用する、HYPHEN BioMedによって製造されるBIOPHEN FVIII:Cアッセイ(参照:221406)である。第VIII因子ポリペプチドの活性は、BIOPHEN FVIII:Cアッセイを使用して測定し得る。より具体的には、第VIII因子ポリペプチドの活性は、実施例1において以下に記載するプロトコルに従って、BIOPHEN FVIII:Cアッセイを使用して測定し得る。
【0044】
本出願の目的のために、用語「比活性」は、活性が、サンプル中の第VIII因子ポリペプチドの量または濃度を考慮して‘正規化’されるような、第VIII因子ポリペプチドの単位あたり(例えばμgあたり、IUあたり、または正常なヒト血漿中のレベルの%としての抗原レベルあたり)の活性(例えば凝固活性または内因性酵素活性)を指す。(典型的には、プールされた健康なヒト血漿は、0.2μg/mlの第VIII因子濃度を有することに注意されたい。)これは、サンプル中の第VIII因子ポリペプチドの濃度を測定することにより、例えば、実施例1において記載するアッセイなどの、標準的なELISAアッセイを使用し、活性を第VIII因子濃度で割ることにより、行うことができる。発色アッセイは、「比活性」を測定するために使用し得る。発色アッセイは、活性を計算し、サンプル中の第VIII因子ポリペプチドの濃度で割ることにより、「比活性」を測定するために使用し得る。発色アッセイは、本明細書において記載される発色アッセイの任意の1つであり得る。
【0045】
ELISAアッセイの実施例においては、第VIII因子ポリペプチドに結合する抗体を、プレートに結合させ得るであろう。未知の濃度の第VIII因子ポリペプチドを含むサンプルを、プレート上を通過させ得るであろう。第VIII因子ポリペプチドに結合する二次検出抗体をプレートに適用し、いかなる過剰分をも洗い流し得るであろう。残っている(すなわち洗い流されていない)検出抗体は、第VIII因子ポリペプチドに結合するであろう。検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素に連結させ得るであろう。プレート上の第VIII因子ポリペプチドに結合する検出抗体のレベルは、該検出抗体の量を測定することによって測定することができるであろう。例えば、検出抗体が西洋ワサビペルオキシダーゼに連結している場合、該西洋ワサビペルオキシダーゼは、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)などの基質からの青色の反応生成物の産生を触媒することができ、青色の生成物のレベルは、450nmでの吸光度によって検出することができる。青色の生成物のレベルは、洗浄工程後に残った検出抗体の量に比例し、それは、サンプル中の第VIII因子ポリペプチドの量に比例する。あるいは、例えば精製されたタンパク質を使用するときは、第VIII因子ポリペプチドの量または濃度は、分光光度法で決定し得る。
【0046】
特定の実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドを精製し、比活性は、精製した第VIII因子ポリペプチドに対して行う発色アッセイによって測定する。いくつかの実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドの比活性は、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むAAV粒子を生成し、マウスに該AAV粒子を注入し、発色アッセイを使用して該マウスからの血漿中の比活性を検出することによって、測定する。いくつかの実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドの比活性は、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリペプチドを安定して発現する細胞を提供し、該細胞および/または培養培地から第VIII因子ポリペプチドを取り出し、発色アッセイを使用して該第VIII因子ポリペプチドの比活性を測定することによって、測定する。
【0047】
第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチド(参照野生型第VIII因子ポリペプチドなどの)の比活性よりも高い比活性を有し得る。第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドの比活性よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、または少なくとも5.5倍高い比活性を有し得る。第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドの比活性よりも1.2倍と5.5倍との間、または1.5倍と5倍との間高い比活性を有し得る。活性の倍数変化に言及するとき、用語「間」は、指定された値を含む。すなわち、例えば、「1.2倍と5.5倍との間」は、値1.2および5.5を含む。
【0048】
さらなる実施態様においては、本明細書において開示されるA1/A3ドメインインターフェイス、A2/A3ドメインインターフェイスまたはA1/C2ドメインインターフェイスに1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドより高い安定性を有し得る。
【0049】
参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドよりも、経時的にその第VIII因子活性のより高い比率を保持する。本発明の第VIII因子ポリペプチドは、活性化される前の参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有し得る、すなわち該第VIII因子ポリペプチドは、その不活性形態の参照第VIII因子ポリペプチドよりも、その不活性形態においてより高い安定性を有し得る。言い換えると、本発明の不活性な第VIII因子ポリペプチドは、不活性な参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有し得る。あるいはまたはさらに、本発明の第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたとき、参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有し得る。言い換えると、本発明の活性な第VIII因子ポリペプチドは、活性な参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有し得る。
【0050】
第VIII因子ポリペプチドは、活性化前に参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有し得る。参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い割合の、活性化前に参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する第VIII因子ポリペプチドが、長い期間、活性化されることができる状態を維持し得る。活性化前の第VIII因子ポリペプチドの安定性は、サンプル中の残留第VIII因子活性を経時的に測定することによって決定し得る。不活性化された第VIII因子ポリペプチドを含有するサンプルのアリコートを適切な時点で取り出し得、第VIII因子ポリペプチド活性は、アリコート中の第VIII因子ポリペプチドを活性化し、本明細書において記載される2段階の第X因子発色アッセイを実施することによって決定し得る。所与の時点での活性を、次いでサンプルの最初の第VIII因子活性と比較し得(すなわち最初の時点での第VIII因子活性を決定することによって)、残存する第VIII因子活性を、最初の第VIII因子活性のパーセンテージとして計算し得る。すなわち、活性化されるとき、活性化前に参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い残存活性(すなわち最初の第VIII因子ポリペプチド活性のパーセンテージとして)を有するであろう。
【0051】
任意に、サンプル中の不活性な第VIII因子ポリペプチドの残存活性は、5、10、15、20、25、30、45若しくは60分の過程で、または2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間若しくは24時間の過程で、または2日、3日、4日、5日、6日若しくは7日の過程で測定し得る。サンプルのアリコートは、最初の時点で該サンプルのアリコートを採取することに加えて、一連の時点、例えば2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上の時点で採取し得、各アリコート中の第VIII因子活性を決定し得る。各時点での第VIII因子活性を最初の時点での第VIII因子活性と比較することは、残存する第VIII因子活性を決定することを可能にする。任意に、比活性は、各時点で決定し得る。
【0052】
第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたとき、参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有し得る。活性化されたときに参照FVIIIポリペプチドよりも高い安定性を有する第VIII因子ポリペプチドは、活性化に続き、参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い割合の、その第VIII因子活性を長い期間維持し得る。活性化に続く第VIII因子ポリペプチドの安定性は、サンプル中の第VIII因子ポリペプチド活性を経時的に測定することによって、すなわちFVIIIa活性減衰アッセイで決定し得る。第VIII因子ポリペプチドは、トロンビンを使用して23℃で1分間活性化し得、ヒルジンを使用して直ちにクエンチしてトロンビンを不活性化し得る。アリコートは、適切な時点で取り出し得、活性は、第X因子発色アッセイを使用して決定し得る。
【0053】
任意に、サンプル中の活性な第VIII因子ポリペプチドの活性は、活性化に続く5、10、15、20、25または30分の過程で測定し得る。活性は、活性化に続いて(例えば活性化に続いて直ちに)サンプル中の第VIII因子の活性を決定することに加えて、一連の時点、例えば活性化に続く2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上の時点で決定し得る。代表的な例として、サンプル中の第VIII因子の活性は、活性化に続いて直ちに決定し得、さらなる測定を、活性化の20分以内の一連の6つまでの時点で行い得る。任意に、比活性は、各時点で決定し得る。
【0054】
参照第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドと比較してより長い半減期を有し得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、活性化前に参照第VIII因子ポリペプチドよりも長い半減期を有する。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたとき、参照第VIII因子よりも長い半減期を有する。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドの少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.8または少なくとも3倍の半減期である半減期を有する。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたとき、活性化されたときの参照第VIII因子ポリペプチドの少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.8または少なくとも3倍の半減期である半減期を有する。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたとき、活性化されたときの参照第VIII因子ポリペプチドの1.1と3との間、1.2と3との間、1.5と3との間、1.7と3との間、1.8と3との間、2と3との間、2.2と3との間、2.5と3との間、または2.8と3との間の倍の半減期である半減期を有する。
【0055】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、液体中で(すなわち溶液中であるときに)より高い安定性を有し得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、液体中でより長い半減期を有する。任意に、液体は、第VIII因子ポリペプチドを発現する宿主細胞が培養される馴化培地などの、馴化培地である。任意に、液体は、生物学的サンプルである。生物学的サンプルは、血液、血清または血漿であり得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、血漿中でより高い安定性を有し得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、血漿中でより長い半減期を有し得る。
【0056】
さらにさらなる実施態様においては、本明細書において開示されるA1/A3ドメインインターフェイス、A2/A3ドメインインターフェイスまたはA1/C2ドメインインターフェイスに1つ以上のアミノ酸の置換を含む第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現され得る。例えば、置換を含む第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドと比較して、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍または少なくとも5倍高く発現され得る。任意に、置換を含む第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドと比較して、1.1倍と5倍との間、1.2倍と5倍との間、1.5倍と5倍との間、1.8倍と5倍との間、2倍と5倍との間、2.5倍と5倍との間、3倍と5倍との間、3.5倍と5倍との間、4倍と5倍との間または4.5倍と5倍の間高く発現され得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドよりも高いレベルで宿主細胞によって分泌される。
【0057】
第VIII因子ポリペプチドの発現のレベル(および従って第VIII因子ポリペプチドが参照される野生型第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現されるかどうか)は典型的には、サンプル中の第VIII因子ポリペプチドのレベルを測定することによって決定し得る。宿主細胞中の本発明の第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルは、宿主細胞中の参照第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルと比較し得る。これは、定量的に決定し得る。例えば、第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルは、上記のELISAアッセイによって決定し得る。あるいは、第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルは、半定量的に、例えば、SDS-PAGE電気泳動によってまたはウエスタンブロットによって、決定し得る。特定の実施態様においては、血漿中の発現は、実施例において記載されるAsserachromアッセイによって決定し得る。
【0058】
宿主細胞によって分泌される第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルは、典型的には、すなわち、宿主細胞によって細胞内に保持されている第VIII因子ポリペプチドのレベルとは対照的に決定する。これは、例えば、第VIII因子ポリペプチドを含有する液体(例えば血液、血清若しくは血漿などの、生物学的サンプル、または第VIII因子ポリペプチドを発現する宿主細胞を培養する馴化培地などの培養培地)から細胞(例えば宿主細胞)を分離し、該液体中の第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルを決定することにより、決定し得る。細胞は、例えば、遠心分離若しくは濾過によって分離し得、および/または液体は、細胞から(例えばピペッティングによって)デカントし得る。第VIII因子ポリペプチドの発現のレベルは、血液、血清若しくは血漿などの、生物学的サンプル中で決定し得るか、または第VIII因子ポリペプチドを発現する宿主細胞を培養する馴化培地などの、培養培地中で決定し得る。
【0059】
宿主細胞は、第VIII因子ポリペプチド(または参照第VIII因子ポリペプチド)を発現する任意の真核生物宿主細胞であり得る。任意に、宿主細胞は、第VIII因子ポリペプチドを発現する昆虫細胞であり得る。典型的には、宿主細胞は、第VIII因子ポリペプチドを発現する哺乳類の宿主細胞であり得る。哺乳類の宿主細胞は、ヒト、イヌ、ブタ、マウス、ハムスター、またはモルモットの細胞を含む。より具体的には、宿主細胞は、哺乳類の肝細胞であり得、より具体的にはヒトの肝細胞であり得る。任意に、宿主細胞は、Huh7細胞であり得る。任意に、宿主細胞は、生物内の宿主細胞であり得る。任意に、発現は、インビボ発現であり得る。任意に、発現はインビボ発現であり得、血漿中の発現を決定し得る。
【0060】
本発明の第VIII因子ポリペプチドは、参照第VIII因子ポリペプチドよりも、より高い比活性および/若しくは安定性を有し得、並びに/または宿主細胞中でより高いレベルで発現され得る。任意に、参照第VIII因子ポリペプチドは、野生型第VIII因子ポリペプチドであり得、すなわち参照第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドであり得る。「参照野生型第VIII因子ポリペプチド」は、配列番号1の第VIII因子ポリペプチドなどの、任意の野生型FVIII因子ポリペプチドであり得る。任意に、参照第VIII因子ポリペプチドは、ベータドメイン欠失第VIII因子ポリペプチドである。任意に、参照第VIII因子ポリペプチドは、配列番号3または5において記載されるアミノ酸配列を有する。任意に、参照第VIII因子ポリペプチドは、本発明の第VIII因子ポリペプチドの第VIII因子アミノ酸配列を含むが、1つ以上の置換変異を含まない。
【0061】
1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスのアミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含み得る。生物物理学的研究が、20の天然に存在するアミノ酸の疎水性、またはより具体的には、該アミノ酸の相対的な疎水性を確立するために実施され、疎水性スケールは、該アミノ酸のそれぞれの疎水性をリストする。1つのそのような例は、水相から非水相(オクタノール)へのアミノ酸の移行の自由エネルギーを計算する、Wimley-White全残基疎水性スケールである。用語「より疎水性のアミノ酸」は、Wimley-White疎水性スケールによる、水相からオクタノールへの移行についてより好ましい(より負のΔG)自由エネルギー値を有するアミノ酸を指す。水相からオクタノールへの移行についての自由エネルギーを、下の表2に示し、
図1にグラフで示す。最も疎水性のアミノ酸から始めて、Wimley-White疎水性スケールは、アミノ酸の疎水性を以下の順序でリストする:トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、メチオニン、バリン、システイン、グルタミン酸(非荷電)、ヒスチジン(非荷電)、プロリン、スレオニン、アスパラギン酸(非荷電)、セリン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、アルギニン(正に荷電)、ヒスチジン(正に荷電)、リジン(正に荷電)、グルタミン酸(負に荷電)、アスパラギン酸(負に荷電)。
【0062】
【0063】
本発明の置換変異は、第VIII因子ポリペプチドのドメインの2つ以上の間の相互作用を安定化させ得る。例えば、ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の置換変異は、第VIII因子ポリペプチドのそれぞれのドメイン間の相互作用を安定化させ得る。特に、A1/A3ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の置換変異は、A1およびA3ドメインの相互作用を安定化させ得、A2/A3ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の置換変異は、A2およびA3ドメインの相互作用を安定化させ得、A1/C2ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の置換変異は、A1およびC2ドメインの相互作用を安定化させ得る。任意に、本発明の1つ以上の置換変異は、活性化されたときに、第VIII因子ポリペプチドのそれぞれのドメインの相互作用を安定化させ得る。特に、本発明の1つ以上の置換変異は、活性化されたときに、第VIII因子ポリペプチドのA1およびA3ドメイン、A2およびA3ドメイン、並びに/またはA1およびC2ドメインの(すなわちそれぞれのドメインの)相互作用を安定化させ得る。
【0064】
任意に、本発明の1つ以上の置換変異は、活性化された第VIII因子ヘテロ三量体複合体のA1ドメイン、A2ドメイン、およびA3-C1-C2ドメインの相互作用を安定化させ得る。任意に、1つ以上の置換変異は、活性化第VIII因子ヘテロ三量体複合体のA2ドメインのA1ドメインおよびA3-C1-C2ドメインとの相互作用を安定化させ得る。任意に、1つ以上の置換変異は、活性化された第VIII因子ヘテロ三量体複合体のA1ドメインおよびA3-C1-C2ドメインからのA2ドメインの解離を防ぐかまたは遅延させ得る。
【0065】
第VIII因子のA1ドメイン、A2ドメイン、およびA3-C1-C2ドメインの相互作用は、表面プラズモン共鳴(SPR、またはBiacore)によって決定し得る。異なる成分を別々に分離し得、ドメインの1つをSPRチップの表面上に固定化し得;固定化に続き、他のドメインをフローセル中に注入し得、ドメインの相互作用についての結合および解離速度(konおよびkoff)を経時的にモニターし得る。あるいは、不活性な第VIII因子をSPRチップ上に固定化し得、トロンビンをフローセル中に注入して第VIII因子を活性化し得;シグナルにおける低下を経時的にモニターし得、これは、第VIII因子ヘテロ三量体複合体のそれぞれの成分の解離(質量の減少)を表す(koff)。いずれの手段によっても、参照第VIII因子ポリペプチド(例えば参照野生型第VIII因子ポリペプチド)との比較は、ドメインの相互作用の安定性を決定することを可能にする。FVIIIaの安定性を決定するための表面プラズモン共鳴の使用は、Gale et al. 2006. Journal of Thrombosis and Haemostasis 4,1315-1322に記載されている。
【0066】
ポリペプチド内のドメイン間相互作用は典型的には、それぞれのドメインのそれぞれにおけるアミノ酸側鎖間の相互作用によって媒介される。それぞれのドメイン中のアミノ酸側鎖間の相互作用は、非共有結合相互作用であり得る。あるいは、それぞれのドメイン中のアミノ酸側鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合)を形成し得る。第VIII因子ポリペプチドのドメイン間の相互作用は従って、第VIII因子ポリペプチドのそれぞれのドメイン(例えばA1およびA3、A2およびA3またはA1およびC2ドメイン)の相互作用を安定化させるアミノ酸置換(複数可)(置換変異)によって安定化され得る(すなわち参照第VIII因子ポリペプチドと比較して)。
【0067】
芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、ヒスチジンおよびトリプトファンの側鎖は、パイスタッキング相互作用によってお互いと相互作用し得る。パイスタッキング相互作用においては、芳香族側鎖の対は典型的には、それらのそれぞれの芳香環を中心から外れた平行配向でアラインさせ得る。あるいは、芳香族側鎖の対は、それらのそれぞれの芳香環を互いにT字型の垂直配向でアラインさせ得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間のパイスタッキング相互作用を増加させる1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。
【0068】
疎水性アミノ酸であるグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンおよびメチオニンの側鎖は典型的には、タンパク質の疎水性コア内で一緒にクラスターを形成する。水に曝される疎水性側鎖の数を最小化することは、タンパク質の折り畳みの背後の主要な推進力であり、疎水性パッキングは、タンパク質構造を安定化させることに貢献する。逆に、荷電したおよび極性のアミノ酸の側鎖は、タンパク質の水に曝された表面上に位置し、そこで、それらは、周囲の水分子と相互作用する。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間の疎水性パッキングを増加させる(すなわち互いに相互作用し、より効率的に水を排除する脂肪族/疎水性アミノ酸の側鎖についてより疎水性の環境を提供する)1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。
【0069】
任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでの荷電したまたは極性のアミノ酸の疎水性アミノ酸での置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでの荷電したまたは極性のアミノ酸のグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンまたはメチオニンでの置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでの疎水性アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含む。
【0070】
それぞれのドメイン中のアミノ酸側鎖は、それぞれのドメインの互いに対する配向のために、好ましくない方法で互いに相互作用し得る。例えば、アミノ酸側鎖は、それぞれのドメインの互いに対する配向のために、エネルギー的に好ましくないコンフォメーションを採用することを余儀なくされ得る(立体衝突)。あるいは、アミノ酸側鎖は、別のドメイン中の同様に荷電したアミノ酸側鎖の近くに配置され得る(好ましくない静電相互作用)。
【0071】
任意に、1つ以上の置換変異は、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間の好ましくない相互作用を排除し得る。任意に、1つ以上の置換変異は、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間の立体衝突を低下させ得る。任意に、立体衝突を低下させるための1つ以上の置換変異は、大きな疎水性アミノ酸のより小さなアミノ酸での置換を含み得る。任意に、1つ以上の置換変異は、大きな疎水性アミノ酸のイソロイシン、ロイシン、バリン、アラニンまたはグリシンでの置換を含み得る。任意に、大きな疎水性アミノ酸は、芳香族アミノ酸である。任意に、1つ以上の置換変異は、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間の好ましくない静電相互作用を低下させ得る。任意に、1つ以上の置換変異は、正に荷電したアミノ酸の置換を含み得る。任意に、1つ以上の置換変異は、正に荷電したアミノ酸の負に荷電したアミノ酸での置換を含み得る。任意に、負に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。任意に、1つ以上の置換変異は、負に荷電したアミノ酸の置換を含み得る。任意に、1つ以上の置換変異は、負に荷電したアミノ酸の正に荷電したアミノ酸での置換を含み得る。任意に、正に荷電したアミノ酸は、アルギニンまたはリジンである。任意に、1つ以上の置換変異は、荷電アミノ酸の非荷電アミノ酸での置換を含み得る。任意に、非荷電アミノ酸は、極性アミノ酸であり得る。任意に、非荷電アミノ酸は、アスパラギンまたはグルタミンであり得る。任意に、非荷電アミノ酸は、セリンまたはスレオニンであり得る。任意に、非荷電アミノ酸は、バリン、イソロイシン、ロイシン、アラニンまたはグリシンであり得る。
【0072】
任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の表面にアクセスできないアミノ酸の置換を含み得る。第VIII因子の3次元結晶構造が利用可能であり(例えば、PDBアクセッション番号2RZEまたは4BDV);従って、表面にアクセスできない、ドメイン間インターフェイスでのアミノ酸を同定することは、定型的であろう。任意に、表面にアクセスできないアミノ酸は、活性化されたとき、第VIII因子ポリペプチドにおいて表面にアクセスできない。
【0073】
本発明の第VIII因子ポリペプチドは、A1/A3インターフェイス、A2/A3インターフェイス、またはA1/C2インターフェイスから選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得、ここで、置換されるアミノ酸は、メチオニンまたはヒスチジンである。これらのドメイン間インターフェイスでのメチオニンまたはヒスチジン残基は、例えば、第VIII因子の三次元結晶構造から同定し得る。任意に、メチオニンまたはヒスチジンは、より疎水性のアミノ酸で置換し得る。任意に、メチオニン残基は、チロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはトリプトファンで置換し得る。任意に、ヒスチジン残基は、グルタミン酸、システイン、バリン、メチオニン、チロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはトリプトファンで置換し得る。任意に、第VIII因子アミノ酸配列は、1つ以上の置換変異を含み得、ここで、置換されるアミノ酸は、配列番号1の位置662のアミノ酸に対応するメチオニン残基(M662)、または配列番号1の位置693のアミノ酸に対応するヒスチジン残基(H693)である。任意に、M662は、アラニン、システイン、グルタミン酸、グリシンまたはセリンで置換し得る。任意に、H693は、アルギニンで置換し得る。任意に、M662またはH693は、より疎水性のアミノ酸で置換し得る。任意に、M662は、チロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはトリプトファンで置換し得る。任意に、H693は、グルタミン酸、システイン、バリン、メチオニン、チロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはトリプトファンで置換し得る。
【0074】
配列番号1の特定のアミノ酸「に対応する」残基を決定することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、当業者は単に、上記のNeedlemanおよびWunschのものなどの適切なアラインメントアルゴリズムを使用して、野生型第VIII因子アミノ酸配列の配列番号1との配列アラインメントを実施し、どの残基が配列番号1のアミノ酸とアラインするかを決定する必要があるだけである。
【0075】
任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでのアミノ酸の芳香族アミノ酸での置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでのアミノ酸のフェニルアラニン、チロシン、ヒスチジンまたはトリプトファンでの置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでのメチオニン残基のフェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンでの置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、ドメイン間インターフェイスでのヒスチジン残基のフェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンでの置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、M662F、M662WまたはM662Y置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、H693F、H693WまたはH693Y置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、M662W置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、H693WまたはH693Y置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、H693W置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、M662WおよびH693W置換を含む。
【0076】
すなわち、特定の実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み、ここで、該1つ以上の置換変異は、M662W置換を含む。さらなる実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み、ここで、該1つ以上の置換変異は、H693W置換を含む。さらにさらなる実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み、ここで、該1つ以上の置換変異は、M662WおよびH693W置換を含む。
【0077】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号28、30、35、36、40若しくは41のいずれか1つにおいて記載される第VIII因子アミノ酸配列、または配列番号28、30、35、36、40若しくは41のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0078】
任意に、1つ以上の置換変異は、M662のより低い疎水性のアミノ酸での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、M662Iを含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、M662Cを含まない。
【0079】
任意に、1つ以上の置換変異は、M662Kを含まない。任意に、第VIII因子アミノ酸配列が配列番号1の位置1828に対応する位置(D1828)にアスパラギン酸残基を含む場合、1つ以上の置換変異は、M662Kを含まない。任意に、第VIII因子アミノ酸配列が配列番号1の位置1823~1834に対応する位置に配列MAPTKDEFDCKAを含む場合、1つ以上の置換変異は、M662Kを含まない。
【0080】
任意に、1つ以上の置換変異は、A108の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、A108のより疎水性のアミノ酸での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、A108Iを含まない。
【0081】
任意に、1つ以上の置換変異は、負に荷電したアミノ酸の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、負に荷電したアミノ酸の非荷電アミノ酸での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、D27、E272、E287、D302、D519、E540、E665、D666、E683、D696、D1795、E1829、E1984の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、D27、E272、E287、D302、D519、E540、E665、D666、E683、D696、D1795、E1829、E1984の非荷電アミノ酸での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、D27、E272、E287、D302、D519、E540、E665、D666、E683、D696、D1795、E1829、E1984のアラニンまたはバリンでの置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、D519L、D519Q、D519TまたはD519Vを含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、D519、E665およびE1984の2つ以上の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、D519、E665およびE1984の2つ以上のアラニンまたはバリンでの置換を含まない。
【0082】
任意に、1つ以上の置換変異は、正に荷電したアミノ酸の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、正に荷電したアミノ酸の非荷電アミノ酸での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、K380、R490、K512、K523、R527、K556、R562、K570またはR571の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、K380、R490、K512、K523、R527、K556、R562、K570またはR571の非荷電アミノ酸での置換を含まない。
【0083】
任意に、1つ以上の置換変異は、S313、H317、T522、S524、R531、N538、S650、S654、N684、S695、S1791、Q1820、S1949、N1950またはR1966の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、S313、H317、T522、S524、R531、N538、S650、S654、N684、S695、S1791、Q1820、S1949、N1950またはR1966のアラニンでの置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、Y476、Y664、Y1786またはY1792の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、Y476、Y664、Y1786またはY1792のフェニルアラニンでの置換を含まない。
【0084】
任意に、1つ以上の置換変異は、K659の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、K659の非保存的置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、K659D、K659E、K659Y、K659N、K659Q、K659T、K659S、K659C、K659W、K659F、K659P、K659M、K659V、K659L、K659I、K659Y、K659GまたはK659Aを含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、E665の置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、E665の非保存的置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、E665V、E665I、E665M、E665NまたはE665Yを含まない。
【0085】
任意に、1つ以上の置換変異は、K659の置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、K659Q、K659G、K659IまたはK659Fを含む。任意に、1つ以上の置換変異は、E665の置換を含む。任意に、1つ以上の置換変異は、E665R、E665Q、E665H、E665K、E665M、E665F、E665WまたはE665Yを含む。
【0086】
特定の実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドは、A1/A3ドメインインターフェイス、A2/A3ドメインインターフェイスまたはA1/C2ドメインインターフェイスから選択されるドメイン間インターフェイスでの1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得、ここで、該1つ以上の置換変異の少なくとも1つは、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含む。言い換えると、少なくとも1つ以上の置換変異は、第1のドメイン(例えばA1またはA2ドメイン)中のシステイン残基の置換および第2のドメイン(例えばA3またはC2ドメイン)中のシステイン残基の置換を含み得る。一対のアミノ酸は従って、第1のアミノ酸(第1のドメイン中の)および第2のアミノ酸(第2のドメイン中の)を含み得る。言い換えると、少なくとも1つ以上の置換変異は、第1のアミノ酸(第1のドメイン中の)、および第2のアミノ酸(第2のドメイン中の)のシステイン残基での置換を含み得る。すなわち、第VIII因子ポリペプチドは、第VIII因子ポリペプチドの2つのそれぞれのドメイン中の一対の同族アミノ酸のシステイン残基での置換を含む1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。
【0087】
任意に、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換は、システイン残基がそれぞれのドメイン間にジスルフィド結合を形成することを可能にする。ジスルフィド結合の形成は、質量分析によって、および特に、例えば、Gorman et al. 2002 Mass Spectrometry Reviews 21,183-216に概説されているように、任意に、限られたタンパク質分解に続いて、ジスルフィド結合を含有すると疑われるポリペプチドの断片化パターンを分析することによって、決定し得る。あるいは、ジスルフィド結合の形成は、ポリペプチドに対して限られたタンパク質分解を実施し、得られたタンパク質フラグメントを、任意にN末端配列決定と組み合わせて、還元および非還元条件下の両方でSDS-PAGEにより分析することによって、決定し得る。
【0088】
任意に、システイン残基で置換されている一対のアミノ酸は、A1およびA3ドメイン中にあり得る。任意に、第1のアミノ酸は、配列番号1のM147、S149またはS289に対応し得、第2のアミノ酸は、配列番号1のE1969、E1970またはN1977に対応し得る。任意に、1つ以上の置換変異は、(i)S289CおよびN1977C、(ii)M147CおよびE1970C、並びに(iii)S149CおよびE1969Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含む。
【0089】
任意に、システイン残基で置換されている一対のアミノ酸は、A2およびA3ドメイン中にあり得る。任意に、第1のアミノ酸は、配列番号1のT667、T669、N684、L687、I689、S695またはF697に対応し、第2のアミノ酸は、配列番号1のS1791、G1799、A1800、R1803、E1844、S1949、G1981、V1982、またはY1979に対応する。任意に、1つ以上の置換変異は、(i)T669CおよびV1982C、(ii)L687CおよびA1800C、(iii)I689CおよびG1799C、(iv)F697CおよびS1949C、(v)T667CおよびG1981C、(vi)T669CおよびY1979C、(vii)N684CおよびS1791C、(viii)L687CおよびR1803C、並びに(ix)S695CおよびE1844Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含む。
【0090】
任意に、システイン残基で置換されている一対のアミノ酸は、A1およびC2ドメイン中にあり得る。任意に、第1のアミノ酸は、配列番号1のA108、T118またはV137に対応し、第2のアミノ酸は、配列番号1のN2172、Q2329またはY2332に対応する。任意に、1つ以上の置換変異は、(i)A108CおよびQ2329C、(ii)T118CおよびN2172C、並びに(iii)V137CおよびY2332Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含む。
【0091】
任意に、1つ以上の置換変異は、配列番号1の位置656~667に対応するアミノ酸(YTFKHKMVYEDT)のいずれか1つのシステイン残基での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、配列番号1の位置1823~1834に対応するアミノ酸(MAPTKDEFDCKA)のいずれか1つのシステイン残基での置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、配列番号1の位置656~667に対応するアミノ酸(YTFKHKMVYEDT)のいずれか1つのシステイン残基での置換を含む第1の置換変異、および配列番号1の位置1823~1834に対応するアミノ酸(MAPTKDEFDCKA)のいずれか1つのシステイン残基での置換を含む第2の置換変異を含まない。
【0092】
任意に、1つ以上の置換変異は、Y656CおよびA1834C、T657CおよびK1833C、K659CおよびD1831C、H660CおよびF1830C、K662CおよびE1829C、M662CおよびD1828C、V663CおよびK1827C、Y664CおよびT1826C、E665CおよびP1825C、D666CおよびA1824C、並びにT667CおよびM1823Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、M662CおよびD1828C、並びにY664CおよびT1826Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、R121CおよびL2302C置換を含まない。任意に、1つ以上の置換変異は、M662CおよびD1828C、S268CおよびF673C、I312CおよびP672C、S313CおよびA644C、M662CおよびK1827C、Y664CおよびT1826C、P264CおよびQ645C、R282CおよびT522C、S285CおよびF673C、H311CおよびF673C、S314CおよびA644C、S314CおよびQ645C、V663CおよびE1829C、N694CおよびP1980C、並びにS695CおよびE1844Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含まない。
【0093】
特定の実施態様においては、1つ以上の置換は、(i)L687CおよびA1800C;(ii)N684CおよびS1791C;並びに(iii)S695CおよびE1844Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号37、38、39、42、43若しくは44のいずれか1つにおいて記載される第VIII因子アミノ酸配列、または配列番号37、38、39、42、43若しくは44のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を含み得る。
【0094】
上で概説したように、第VIII因子の活性化は、トロンビンによるタンパク質分解切断を必要とする。トロンビン切断に続いて、第VIII因子は、A1ドメイン、A2ドメイン、およびA3-C1-C2ドメインからなるヘテロ三量体複合体を形成する。活性化の過程で、第VIII因子は、コンフォメーション変化を受ける。より具体的には、活性化の過程で、A1およびA3-C1-C2ドメインに対するA2ドメインの配向が変更される。活性化された第VIII因子のA2ドメインはすなわち、A1、A3、C1およびC2ドメインに関して、不活性な第VIII因子とは異なる配向にある。A2ドメインは従って、活性化の過程の間に、第VIII因子の他のドメインに関してピボットするように見え得る。野生型第VIII因子の最大活性は典型的には、活性化の約2分後に見られる。
【0095】
理論によって拘束されることを望まないが、A2ドメインによって行われるコンフォメーション変化は、第VIII因子活性化について必要とされ得ると考えられている。不活性な第VIII因子の配向でコンフォメーションA2ドメインを安定化させる置換変異は従って、第VIII因子ポリペプチドの活性化を阻害し得る。特定の実施態様においては、1つ以上の置換変異は、第VIII因子ポリペプチドの活性化を阻害しない。任意に、1つ以上の置換変異は、参照野生型第VIII因子ポリペプチドの活性化と比較して第VIII因子ポリペプチドの活性化を阻害しない。任意に、A1/A3、A2/A3またはA1/C2ドメインインターフェイスに1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりもゆっくりとは活性化されない。
【0096】
第VIII因子活性化の阻害は、活性化に続く最大の第VIII因子活性を達成するのにかかる時間を、参照野生型第VIII因子ポリペプチドのそれと比較することによって、決定し得る。トロンビンは、第VIII因子ポリペプチドを含有するサンプルに加え得、第VIII因子活性化は、適切な時点でサンプルのアリコートを採取し、各アリコートについてのFVIII活性を決定することによって、モニターし得る。任意に、FVIII活性は、活性化に続く5、10、15または20分の過程で、測定し得る。活性は、一連の時点、例えば活性化に続く2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上の時点で、決定し得る。任意に、第VIII因子活性は、活性化の直前に、決定し得る。代表的な例として、第VIII因子活性は、活性化に続いて直ちに決定し得、さらなる測定を、活性化に続く30秒ごとに行い得る。任意に、相対的な第VIII因子活性は、活性化に続く直後の第VIII因子活性と比較した、所与の時点での第VIII因子活性における倍数増加を計算することによって、決定し得る。任意に、比活性は、各時点で決定し得る。
【0097】
1つ以上の置換変異を含む第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチド
第VIII因子アミノ酸配列は、本明細書において記載されているもののいずれかなどの、シグナルペプチドの全てまたは一部を含み得る。任意に、シグナルペプチドは、野生型第VIII因子シグナルペプチドであり得る。任意に、シグナルペプチドは、配列番号15を含み得る。任意に、シグナルペプチドは、野生型第VIII因子シグナルペプチド以外のシグナルペプチドであり得る。任意に、シグナルペプチドは、配列番号18または20を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、成熟した第VIII因子ポリペプチドであり得る。「成熟した第VIII因子ポリペプチド」は、シグナルペプチドを含まない第VIII因子ポリペプチドである。シグナルペプチドは、合成に続き切断されたか可能性がある。シグナルペプチドは、全く存在しなかった可能性がある。例えば、第VIII因子アミノ酸配列は、シグナルペプチドを全く含んでいなかった可能性がある。
【0098】
野生型第VIII因子ポリペプチドは、A1ドメイン、A2ドメイン、Bドメイン、A3ドメイン、C1ドメインおよびC2ドメインを含む。本発明の第VIII因子ポリペプチドは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、Bドメイン、C1ドメインおよび/またはC2ドメインのそれぞれの全てまたは一部を含み得る。野生型第VIII因子ポリペプチドの配列は、配列番号1において記載する。
【0099】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、イヌ、ブタまたはヒトの第VIII因子である。特定の実施態様においては、第VIII因子ポリペプチドは、ヒト第VIII因子である。ヒト第VIII因子のアミノ酸配列は、配列番号1において記載する。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。言い換えると、第VIII因子ポリペプチドは任意に、配列番号1内の対応する配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である第VIII因子アミノ酸配列を含む。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異によってのみ配列番号1において記載されるアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸を含み得る。
【0100】
第VIII因子ポリペプチドの第VIII因子アミノ酸配列に対応する配列番号1内の配列を決定することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、当業者は単に、上記のNeedlemanおよびWunschのものなどの適切なアラインメントアルゴリズムを使用して、第VIII因子アミノ酸配列の配列番号1との配列アラインメントを実施し、配列番号1のどの領域が第VIII因子アミノ酸に対応するか(すなわち配列番号1のどの配列が第VIII因子アミノ酸配列にアラインするか)を決定する必要があるだけである。
【0101】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個の連続するアミノ酸と少なくとも90%同一であり得る。あるいは、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の5つまでの、4つまでの、3つまでの、または2つまでの領域からの少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個のアミノ酸と少なくとも90%同一であり得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1つの置換変異によって配列番号1の少なくとも1349個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異によってのみ配列番号1の少なくとも1349個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸を含み得る。
【0102】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、20以下、15個以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1つの置換変異によって配列番号1において記載されるアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異によってのみ配列番号1において記載されるアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸を含み得る。
【0103】
第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインの一部を含み得、または第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインを含まない可能性がある。特定の実施態様によると、第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインを含まない。第VIII因子ポリペプチドは従って、ベータドメイン欠失(BDD)第VIII因子ポリペプチドであり得る。
【0104】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号3または5の少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号3または5の少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個の連続するアミノ酸と少なくとも90%同一であり得る。あるいは、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号3または5の5つまで、4つまで、3つまで、または2つまでの領域からの少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個のアミノ酸と少なくとも90%同一であり得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1つの置換変異によって配列番号3または5の少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異によってのみ配列番号3または5の少なくとも1349、少なくとも1357、少なくとも1368、少なくとも1376、少なくとも1377、少なくとも1385、少なくとも1386、少なくとも1391、少なくとも1394、少なくとも1418または少なくとも1421個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸を含み得る。
【0105】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号3または5において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1つの置換変異によって配列番号3または5において記載されるアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、1つ以上の置換変異によってのみ配列番号3または5において記載されるアミノ酸配列と異なる第VIII因子アミノ酸を含み得る。
【0106】
第VIII因子ポリペプチドのドメインのいずれかまたは全ては、ドメインの第VIII因子アミノ酸配列を野生型第VIII因子アミノ酸配列と比較したときに、本明細書において定義される1つ以上の置換変異に加えて、1つ以上の、置換、挿入および/または欠失などの改変を含み得る。
【0107】
第VIII因子ポリペプチドは、A1ドメインの少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A1ドメインの少なくとも300個のアミノ酸(任意に少なくとも300個の連続するアミノ酸)と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A1ドメインと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A1ドメインと少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から329に対応するアミノ酸の少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から329に対応するアミノ酸の少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から329に対応するアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から329に対応するアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0108】
第VIII因子ポリペプチドは、A2ドメインの少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A2ドメインの少なくとも300個のアミノ酸(任意に少なくとも300個の連続するアミノ酸)と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A2ドメインと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A2ドメインと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置380から711に対応するアミノ酸の少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置380から711に対応するアミノ酸の少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置380から711に対応するアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置380から711に対応するアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0109】
第VIII因子ポリペプチドは、A3ドメインの少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A3ドメインの少なくとも300個のアミノ酸(任意に少なくとも300個の連続するアミノ酸)と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A3ドメインと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、A3ドメインと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1694から2021に対応するアミノ酸の少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1694から2021に対応するアミノ酸の少なくとも300個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1694から2021に対応するアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1694から2021に対応するアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0110】
第VIII因子ポリペプチドは、C1ドメインの少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、C1ドメインの少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸(任意に少なくとも130個の連続するアミノ酸)と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、C1ドメインと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、C1ドメインと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2021から2169に対応するアミノ酸の少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2021から2169に対応するアミノ酸の少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2021から2169に対応するアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2021から2169に対応するアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0111】
第VIII因子ポリペプチドは、C2ドメインの少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸(任意に少なくとも130個の連続するアミノ酸)と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、C2ドメインの少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、C2ドメインと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、C2ドメインと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2174から2326に対応するアミノ酸の少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2174から2326に対応するアミノ酸の少なくとも130、少なくとも135または少なくとも140個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2174から2326に対応するアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置2174から2326に対応するアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0112】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、完全なまたは部分的なBドメインを含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインの少なくとも820個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインの少なくとも820個のアミノ酸(任意に少なくとも820個の連続するアミノ酸)と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、Bドメインと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置741から1648に対応するアミノ酸の少なくとも800個のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置741から1648に対応するアミノ酸の少なくとも800個のアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置741から1648に対応するアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み得る。第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置741から1648に対応するアミノ酸と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0113】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、改変ベータドメイン関連(BDR)領域を含み得る。野生型BDR領域は、配列番号1の位置713と1697との間の領域に対応する。第VIII因子ポリペプチドは、最大88個のアミノ酸を含む改変BDR領域を含み得る。
【0114】
野生型BDR領域は、配列番号1の位置713と1697との間の領域に対応する。アミノ酸の位置を指すとき、用語「間」は、指定された位置を含まない。すなわち野生型BDR領域は、配列番号1の位置714に対応する位置で始まり、配列番号1の位置1696に対応する位置で終わる。野生型BDR領域は、第VIII因子のベータドメインを含む。野生型BDR領域は、配列番号1の位置713と1697との間の領域であり得る。野生型BDR領域は、配列番号1の位置714で始まり得、配列番号1の位置1696で終わり得る。野生型BDR領域は、配列番号1の位置713と1697との間の領域に対応する別の野生型第VIII因子アミノ酸配列からの領域であり得る。野生型BDR領域は、配列番号1の位置714で始まり、配列番号1の位置1696で終わる領域に対応する別の野生型第VIII因子アミノ酸配列からの領域であり得る。
【0115】
配列番号1の位置713と1697との間の領域「に対応する」野生型第VIII因子アミノ酸配列の領域を決定することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、当業者は単に、上記のNeedlemanおよびWunschのものなどの適切なアラインメントアルゴリズムを使用して、野生型第VIII因子アミノ酸配列の配列番号1との配列アラインメントを実施し、野生型第VIII因子アミノ酸配列のどの領域が配列番号1の位置713と1697との間の領域とアラインするかを決定する必要があるだけである。例えば、当業者は、野生型第VIII因子アミノ酸配列のどの領域が配列番号1の位置714から1696とアラインするかを決定し得る。
【0116】
「改変BDR領域」は、野生型BDR領域と同一ではない。改変BDR領域は、野生型BDR領域よりも短い。当業者は、第VIII因子ポリペプチドの改変BDR領域が「野生型BDR領域と比較して改変されている」かどうかを容易に決定することができる。例えば、当業者は単に、上記のNeedlemanおよびWunschのものなどの適切なアラインメントアルゴリズムを使用して、第VIII因子アミノ酸配列の、第VIII因子ポリペプチドの野生型第VIII因子アミノ酸配列との配列アラインメントを実施し、配列番号1の位置713と1697との間の領域に対応する野生型第VIII因子アミノ酸配列の領域(野生型BDR領域)とアラインする第VIII因子アミノ酸配列における領域(改変BDR領域)を決定し、該第VIII因子アミノ酸配列における領域(改変BDR領域)と該野生型第VIII因子アミノ酸配列における領域(野生型BDR領域)との間のアミノ酸配列を比較する必要があるだけである。何らかの違いがある場合、その場合は、該領域は、改変BDR領域である。
【0117】
本発明の第VIII因子ポリペプチドの改変BDR領域は最大88個のアミノ酸を含むため、第VIII因子アミノ酸配列を野生型第VIII因子のアミノ酸配列とアラインさせるとき、野生型BDR領域と比較して、改変BDR領域における第VIII因子アミノ酸配列においては、1つ以上のギャップがあるであろう。すなわち、本発明の第VIII因子ポリペプチドの改変BDR領域は、該改変BDR領域を野生型BDR領域と比較するとき、1つ以上の欠失を含む。改変BDR領域はまた、該改変BDR領域を野生型BDR領域と比較するとき、置換および/または挿入などの1つ以上の改変を有し得る。改変BDR領域は、野生型BDR領域において見出される1つ以上のアミノ酸を含み得る。例えば、改変BDR領域は、野生型BDR領域において見出される1つ以上の一続きのアミノ酸を含み得る。
【0118】
改変BDR領域は、「最大」指定された数のアミノ酸「を含む」。これは、改変BDR領域が指定された数以下のアミノ酸を含むことを意味する。第VIII因子アミノ酸配列は、さらなるアミノ酸を含み得るが、改変BDR領域においてはそうではない。例えば、改変BDR領域が「最大88個のアミノ酸を含む」場合、該改変BDR領域は、88個以下のアミノ酸を含む。さらなる例として、改変BDR領域が「最大74個のアミノ酸を含む」場合、該改変BDR領域は、74個以下のアミノ酸を含む。
【0119】
「第VIII因子ポリペプチド」は、機能的である。機能的な第VIII因子ポリペプチドは、トロンビンによって活性化されるとき、第IXa因子、リン脂質およびカルシウムと酵素複合体を形成し得、該酵素複合体は、第X因子の第Xa因子への変換を触媒し得る。
【0120】
第VIII因子ポリペプチドが機能的であるかどうかを決定することは、当業者の能力の範囲内である。当業者は単に、第VIII因子ポリペプチドの比活性を決定する必要があるだけである。ポリペプチドの比活性が、配列番号1の第VIII因子ポリペプチドなどの野生型第VIII因子ポリペプチドの比活性の少なくとも20%である場合、その場合は、それは、機能的である。第VIII因子ポリペプチドの活性は、補因子活性を測定する発色アッセイなどの、発色アッセイを使用して分析することができる。例えば、適切な発色アッセイは、以下のとおりである。第VIII因子ポリペプチド(ヒト第X因子ポリペプチドおよび第IXa因子ポリペプチド、トロンビン、リン脂質並びにカルシウムと混合されている)。トロンビンは、第VIII因子ポリペプチドを活性化して、第VIIIa因子ポリペプチドを形成する。トロンビンで活性化された第VIII因子ポリペプチドは、第IXa因子ポリペプチド、リン脂質、およびカルシウムと酵素複合体を形成し、その酵素複合体は、第X因子ポリペプチドの第Xa因子ポリペプチドへの変換を触媒し得る。第Xa因子ポリペプチドの活性は、発色性基質(例えばSXa-11)の切断を触媒して、pNAを産生し得る。生成したpNAのレベルは、405nmでの発色を決定することによって測定する(例えば吸光度によって測定する)ことができる。第X因子ポリペプチド、従って第Xa因子ポリペプチドは、過剰に提供する。従って、制限因子は、第VIIIa因子ポリペプチドである。すなわち、生成するpNAのレベルは、サンプル中のFVIIIa因子ポリペプチドによって生成する第Xa因子ポリペプチドの量に比例し、これは、サンプル中のFVIIIa因子ポリペプチドの活性に比例する。サンプル中のFVIIIa因子ポリペプチドの活性は、該サンプル中のFVIII因子ポリペプチドの補因子活性の尺度である。
【0121】
例えば、適切な発色アッセイは、実施例において使用する、HYPHEN BioMedによって製造されるBIOPHEN FVIII:Cアッセイ(参照:221406)である。第VIII因子ポリペプチドの活性は、BIOPHEN FVIII:Cアッセイを使用して測定し得る。
【0122】
第VIII因子ポリペプチドの活性は、凝固アッセイを使用して分析することができる。アッセイは、一段階凝固アッセイであり得る。例えば、適切な凝固アッセイ(一段階凝固アッセイ)は、以下のとおりである。
【0123】
第VIII因子は凝固カスケードの一部であるため、増加した活性を有する第VIII因子ポリペプチドは、より低い活性を有する第VIII因子ポリペプチドよりも速く血液凝固を触媒するであろう。第VIII因子ポリペプチドを、血小板の少ない血漿と混合し、37℃で培養する。次いで、リン脂質およびKaolynまたはSynthaSIL APTT試薬などの接触活性化経路活性化因子を加える。カルシウムを次いで加え、ユーザーは、凝固が起こるのにかかる時間を測定する。血塊形成は、磁性鋼球法によって、直接評価することができる。血塊形成は、球の周りのフィブリンストランドの形成が動きを生じ、磁場における変化を検出することができるまで、鋼球が磁場中で静止したままである、回転キュベットアッセイを使用して測定し得る。あるいは、血塊形成は、球の周りのフィブリンストランドの形成がその回転を停止させる(これは、センサーによって検出することができる)まで磁石の影響下で鋼球を回転させる、回転鋼球アッセイを使用して測定し得る。いずれの場合においても、凝固時間を記録し得る。
【0124】
ヒト患者などの患者においては、第VIII因子ポリペプチドの活性は、該患者から血液サンプルを採取することによって、または該患者から採取された血液サンプルに対してアッセイを実施することによって、測定し得る。
【0125】
第VIII因子ポリペプチドの活性は、テールクリップアッセイを使用して分析することができる。適切なテールクリップアッセイは、第VIII因子ポリペプチド、または遺伝子治療の文脈における第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを、第VIII因子に欠けたノックアウトマウスなどのマウスに投与することを含み得る。マウスの尾を次いで切り取り、尾における切り込みが凝固するのにかかる時間を測定する。出血の継続時間は、投与される第VIII因子、例えば改変BDR領域を含む第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチド対野生型第VIII因子、または第VIII因子ヌクレオチド配列の少なくとも一部分が野生型ではない第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされる第VIII因子ポリペプチド対野生型第VIII因子の活性の相対的尺度を提供する。
【0126】
改変BDR領域は、最大88個のアミノ酸を含む。改変BDR領域は、最大87、85、80、75、70、65、60、55、50、または45個のアミノ酸を含み得る。好ましくは、改変BDR領域は、最大74個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、最大54個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、最大47個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、最大45個のアミノ酸を含み得る。
【0127】
改変BDR領域は、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも28、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも60、または少なくとも65個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、少なくとも28個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、少なくとも30個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、少なくとも54個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、少なくとも57個のアミノ酸を含み得る。改変BDR領域は、少なくとも58個のアミノ酸を含み得る。
【0128】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から722および1670から2332に対応するアミノ酸を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から722および1670から2332に対応するアミノ酸からなる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から731および1670から2332に対応するアミノ酸を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から731および1670から2332に対応するアミノ酸からなる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から743および1638から2332に対応するアミノ酸を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る(‘SQ’第VIII因子ポリペプチド)。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号1の位置1から743および1638から2332に対応するアミノ酸からなり得る。任意に、第VIII因子アミノ酸配列は、SQリンカー配列SFSQNPPVLKRHQRを含み得る。
【0129】
任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号28または30において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号28または30において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列からなる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号28または30において記載されるアミノ酸配列を含む第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。任意に、第VIII因子ポリペプチドは、配列番号28において記載されるアミノ酸配列からなる第VIII因子アミノ酸配列を含み得る。
【0130】
第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
本発明は、第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供し、ここで、該第VIII因子ヌクレオチド配列は、本発明の第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0131】
用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さの、ヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはそれらの類似体の高分子鎖を指す。例えば、ポリヌクレオチドは、DNA(デオキシリボヌクレオチド)またはRNA(リボヌクレオチド)を含み得る。ポリヌクレオチドは、DNAからなり得る。ポリヌクレオチドはmRNAであり得る。ポリヌクレオチドはRNAまたはDNAを含み得るため、T(チミン)ヌクレオチドへの全ての言及は、U(ウラシル)で置き換え得る。
【0132】
第VIII因子ヌクレオチド配列は、第VIII因子ポリペプチドをコードする。「コードする」「配列」は、コードされるアミノ酸配列をコードするコドンを含むヌクレオチド配列を指す。例えば、第VIII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドンを含む。野生型第VIII因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に提供する。第VIII因子ヌクレオチド配列は、1つ以上の、イントロンなどの非コードヌクレオチドの、1つ以上の領域を含み得る。非コードヌクレオチドの領域は、コードされるアミノ酸配列をコードするコドンの配列に割り込み得る。すなわちコードされるアミノ酸配列をコードするコドンの配列は、配列において連続し得るか、または非コードヌクレオチドの1つ以上の領域によって分離され得る。好ましくは、第VIII因子ヌクレオチド配列は、いかなる非コードヌクレオチドも含まない。本明細書においては、終止コドンは、非コードヌクレオチドと見なされないであろう。
【0133】
以下の表は、各アミノ酸をコードするコドンを説明する。
【0134】
【0135】
対応するRNAコドンは、上記の表におけるTの代わりにUを含有するであろう。
【0136】
第VIII因子ヌクレオチド配列は、成熟した第VIII因子ポリペプチドをコードし得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、シグナルペプチドの全てまたは一部分をコードしない。第VIII因子ヌクレオチド配列は、本明細書において記載されるシグナルペプチドのいずれかまたはいずれかの一部などの、シグナルペプチドの全てまたは一部をコードし得る。
【0137】
本発明の第VIII因子ヌクレオチド配列は、コドン最適化され得る。上記したように、遺伝暗号は、縮重しており、多くのアミノ酸は、複数の代替コドンによってコードされ得る。しかしながら、種々の生物、組織または細胞の遺伝暗号は、特定のアミノ酸をコードすることについて1つの特定のコドンを使用する方向に偏らされ得る。「コドン最適化された」ヌクレオチド配列は、特定の宿主細胞または生物における発現、例えばヒト肝細胞における発現について最適化され得る。好ましくは、コドン最適化された核酸配列は、第VIII因子ヌクレオチド配列に対して改変されているが、一方で、該ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、改変されていない。
【0138】
コドン最適化された第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ヌクレオチド配列と比較して、ヒト肝細胞において、より高いレベルで発現され得る。
【0139】
すなわち第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされる第VIII因子ポリペプチドは、該配列がヒト肝細胞において発現されるとき、野生型第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドよりも高いレベルで発現され得る。例えば、コドン最適化された第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ヌクレオチド配列と比較して、ヒト肝細胞において、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍高く発現され得る。「参照野生型第VIII因子ヌクレオチド配列」は、配列番号2の第VIII因子ヌクレオチド配列などの、野生型コドンを使用して第VIII因子ポリペプチド(それ自体が野生型第VIII因子ポリペプチドであり得るか、または改変BDRを含む本発明の第VIII因子ポリペプチドなどの改変第VIII因子ポリペプチドであり得る)をコードする、任意の第VIII因子ヌクレオチド配列であり得る。任意に、参照野生型第VIII因子ヌクレオチドは、「同等の」第VIII因子ヌクレオチド配列である、すなわち参照野生型第VIII因子ヌクレオチドは、比較されている第VIII因子ポリヌクレオチドと同じ第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0140】
ヌクレオチド配列を「コドン最適化された」として説明することによって、全てのコドンが最適化される必要はない。すなわち第VIII因子ヌクレオチド配列のコドン最適化された一部分は、野生型第VIII因子ヌクレオチド配列の対応する一部分と比較したとき、野生型コドン(複数可)の代わりに1つ以上の代替コドンを含み得る。第VIII因子ヌクレオチド配列がコドン最適化された一部分を含む場合、該第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、野生型第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドよりも高いレベルで発現され得る。第VIII因子ヌクレオチド配列のコドン最適化された一部分は、ヒト肝細胞における発現についてコドン最適化され得る。すなわち第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、該配列がヒト肝細胞において発現されるとき、同等のコドン最適化されていない(例えば野生型)第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドよりも高いレベルで発現され得る。「同等の」コドン最適化されていない第VIII因子ヌクレオチド配列は、第VIII因子ポリペプチドをコードするために使用されるコドンが配列番号2などの野生型第VIII因子配列の対応するコドンに対応するであろうことを除いて、同一である(すなわち、同じ第VIII因子ポリペプチドをコードし、同じ転写調節エレメントを含む等)。典型的には、第VIII因子ヌクレオチド配列のコドン最適化された一部分は、終止コドンを含まない。
【0141】
本発明の第VIII因子ヌクレオチド配列は、野生型コドン(複数可)の代わりに1つ以上の代替コドンを含み得、ここで、「代替」コドンは、野生型コドンと異なる配列を有するが、野生型コドンと同じアミノ酸をコードするコドン(すなわち縮重コドン)である。表3は、各アミノ酸をコードするコドンを説明する。
【0142】
コドン最適化されたヌクレオチド配列は、コドン最適化されていない対応するヌクレオチド配列よりも少なくとも1つ多くの「好ましい」コドンを含み得る。コドン最適化されたヌクレオチド配列は、コドン最適化されていない対応するヌクレオチド配列よりも高いパーセンテージの「好ましい」コドンを含み得る。コドン最適化されたヌクレオチド配列は、コドン最適化されていない対応するヌクレオチド配列よりも少なくとも1つ少ない「好ましくはない」コドンを含み得る。コドン最適化されたヌクレオチド配列は、コドン最適化されていない対応するヌクレオチド配列よりも低いパーセンテージの「好ましくはない」コドンを含み得る。ヒト肝細胞における第VIII因子の発現についての好ましいコドンは、表3において下線を引いている。
【0143】
任意に、第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号4の少なくとも4047、少なくとも4071、少なくとも4104、少なくとも4128、少なくとも4131、少なくとも4155、少なくとも4158、少なくとも4173、少なくとも4182、少なくとも4254または少なくとも4263個のヌクレオチド(任意に、少なくとも4047、少なくとも4071、少なくとも4104、少なくとも4128、少なくとも4131、少なくとも4155、少なくとも4158、少なくとも4173、少なくとも4182、少なくとも4254若しくは少なくとも4263個の連続するヌクレオチド、または配列番号4の5つまで、4つまで、3つまで若しくは2つまでの領域からの少なくとも4047、少なくとも4071、少なくとも4104、少なくとも4128、少なくとも4131、少なくとも4155、少なくとも4158、少なくとも4173、少なくとも4182、少なくとも4254若しくは少なくとも4263個のヌクレオチド)を含むヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1つのヌクレオチドによって配列番号4の少なくとも4047、少なくとも4071、少なくとも4104、少なくとも4128、少なくとも4131、少なくとも4155、少なくとも4158、少なくとも4173、少なくとも4182、少なくとも4254または少なくとも4263個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、1つ以上の置換変異をコードする代替コドンによってのみ配列番号4の少なくとも4047、少なくとも4071、少なくとも4104、少なくとも4128、少なくとも4131、少なくとも4155、少なくとも4158、少なくとも4173、少なくとも4182、少なくとも4254または少なくとも4263個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列を含み得る。
【0144】
任意に、第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号6において記載されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、43以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1つのヌクレオチドによって配列番号6において記載されるヌクレオチドと異なるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、1つ以上の置換変異をコードする代替コドンによってのみ配列番号6において記載されるヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列を含み得る。
【0145】
任意に、第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号29において記載されるヌクレオチドと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号29において記載されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるヌクレオチド配列からなり得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号29において記載されるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号29において記載されるヌクレオチド配列からなり得る。
【0146】
任意に、第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号31において記載されるヌクレオチドと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号31の少なくとも4047個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号31において記載されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるヌクレオチド配列からなり得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号31において記載されるヌクレオチド配列を含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号31において記載されるヌクレオチド配列からなり得る。
【0147】
ポリヌクレオチドを含む組換えAAV構築物
本発明は、第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む組換えAAV構築物を提供し、ここで、該第VIII因子ヌクレオチド配列は、第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。ポリヌクレオチドは、本発明の任意のポリヌクレオチドであり得る。第VIII因子ヌクレオチド配列は、本発明の任意の第VIII因子ヌクレオチド配列であり得る。第VIII因子ポリペプチドは、本発明の任意の第VIII因子ポリペプチドであり得る。
【0148】
組換えAAV構築物は、長さが4900未満、4850未満、4800未満、または4750未満のヌクレオチドであり得る。組換えAAV構築物は、長さが4700と4900との間、4700と4850との間、4700と4800との間、4700と4750との間または約4713のヌクレオチドであり得る。組換えAAV構築物は、長さが約4845のヌクレオチドであり得る。
【0149】
組換えAAV構築物は、長さが4850と4900との間、または約4845のヌクレオチドであり得、任意に、長さが4318未満のヌクレオチドの第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、長さが4318と4046との間、4318と4070との間、4264と4127との間、4210と4151との間または約4182のヌクレオチドであり得る。
【0150】
組換えAAV構築物は、長さが4700と4850との間、4700と4800との間、4700と4750との間または約4713のヌクレオチドであり得、任意に、長さが4318未満のヌクレオチドの第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含み得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、長さが4318と4046との間、4264と4070との間、4264と4103との間、4255と4127との間、4246と4130との間、4237と4154との間、4228と4157との間、4219と4166との間、4210と4169との間、4201と4172との間、4192と4175との間または約4182のヌクレオチドであり得る。任意に、第VIII因子ヌクレオチド配列は、長さが約4182のヌクレオチドであり得る。
【0151】
任意に、組換えAAV構築物は、長さが約4713のヌクレオチドであり得、第VIII因子ヌクレオチド配列は、長さが4228と4157との間、4219と4166との間、4210と4169との間、4201と4172との間、4192と4175との間または約4131、約4134、約4155、約4158、約4161、約4167、約4173若しくは約4182のヌクレオチドであり得る。任意に、組換えAAV構築物は、長さが約4713のヌクレオチドであり得、第VIII因子ヌクレオチド配列は、長さが4131、4134、4155、4158、4161、4167、4173または4182のヌクレオチドであり得る。任意に、組換えAAV構築物は、長さが4713のヌクレオチドであり得、第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号27であり得る。
【0152】
いくつかの場合においては、組換えAAV構築物の文脈における上記の節における第VIII因子ヌクレオチド配列の長さへの言及は、‘終止’コドンを含まない-終止コドンを含む第VIII因子ヌクレオチド配列は、上記のヌクレオチド配列より3ヌクレオチド長いであろう。いくつかの実施態様においては、第VIII因子ヌクレオチド配列は、終止コドンを含み得る。
【0153】
組換えAAV構築物は、転写調節エレメント(TRE)および/またはポリA配列に作動可能に連結された第VIII因子ヌクレオチド配列を含む。
【0154】
組換えAAV構築物はさらに、転写調節エレメント(TRE)を含み得る。転写調節エレメントは、肝臓特異的プロモーターを含み得る。転写調節エレメントは、長さが270未満のヌクレオチドであり得る。TREは任意に、配列番号13において記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むかまたはそれからなり得る。本発明者らは、驚くべきことに、既知のHLP2 TREからの相当な数のヌクレオチドが、TREの有効性に有意に影響を与えることなく欠失しまたは改変され得ることを決定した。特に、本発明者らは、驚くべきことに、短い転写調節エレメントFRE 72が、かなりより短い長さであるにもかかわらず、HLP2 TREと同等の有効性(すなわち比較により少なくとも50%以上の活性)を有することを見出した。任意に、転写調節エレメントは、200ヌクレオチドよりも短く、任意に150ヌクレオチドよりも短く、任意に125ヌクレオチドよりも短い。任意に、転写調節エレメントは、長さが少なくとも85のヌクレオチド、任意に長さが少なくとも100のヌクレオチド、任意に長さが少なくとも110のヌクレオチドである。任意に、転写調節エレメントは、配列番号14において記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むかまたはそれからなり得る。
【0155】
組換えAAV構築物はさらに、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。シグナルペプチドは、野生型第VIII因子シグナルペプチドであり得る。シグナルペプチドは、配列番号15において記載される野生型FVIIIシグナルペプチドを含み得る。任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号16または17と少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である。任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号16または17を含む。
【0156】
任意に、シグナルペプチドは、野生型第VIII因子シグナルペプチドではない。シグナルペプチドは、配列番号18または20の配列と少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含み得る。シグナルペプチドは、配列番号18と少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含み得る。シグナルペプチドは、配列番号20と少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含み得る。シグナルペプチドは、配列番号18を含み得る。シグナルペプチドは、配列番号20を含み得る。
【0157】
好ましくは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、長さが57未満のヌクレオチドである。より好ましくは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、長さが約54のヌクレオチドである。シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、長さが約54のヌクレオチドであり得、配列番号18の配列をコードし得る。シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、長さが約54のヌクレオチドであり得、配列番号20の配列をコードし得る。任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化され得る。配列番号18において記載されるシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19の配列を有する。配列番号20において記載されるシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号21の配列を有する。任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19または21と少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である。任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19または21を含む。
【0158】
組換えAAV構築物はさらに、ポリAヌクレオチド配列を含み得る。ポリAヌクレオチド配列は、合成であり得る。ポリAヌクレオチド配列は、長さが50未満のヌクレオチドであり得る。ポリAヌクレオチド配列は、長さが16と50との間のヌクレオチドであり得る。ポリAヌクレオチド配列は、長さが約49のヌクレオチドであり得る。ポリAヌクレオチド配列は、配列番号22のヌクレオチド配列を含み得る。
【0159】
組換えAAV構築物はさらに、1つまたは2つのITRを含み得る。そのまたは各(The or each)ITRは、野生型ITRであり得る。任意に、組換えAAV構築物は、AAV1、AAV2、AAV4および/またはAAV6に由来するITR配列を含む。そのまたは各ITRは、AAV2 ITRであり得る。そのまたは各ITRのヌクレオチド配列は、長さが157未満、または154未満のヌクレオチドであり得る。そのまたは各ITRのヌクレオチド配列は、長さが約145のヌクレオチドであり得る。5’ITRのヌクレオチド配列は、配列番号23のヌクレオチド配列を含み得る。3’ITRのヌクレオチド配列は、配列番号24のヌクレオチド配列を含み得る。
【0160】
組換えAAV構築物は、一本鎖であり得る。組換えAAV構築物は、AAVゲノムであり得る。
【0161】
第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列は、配列番号27の配列を含み得、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19を含み得る。組換えAAV構築物は、肝臓特異的プロモーターである転写調節エレメントを含み得、該肝臓特異的プロモーターは、配列番号13のヌクレオチド配列を含み得る。組換えAAV構築物は、2つのITRおよびポリAヌクレオチド配列を含み得、ここで、5’ITRのヌクレオチド配列は、配列番号23であり、3’ITRの配列は、配列番号24であり、ポリAヌクレオチド配列は、配列番号22のヌクレオチド配列を含む。AAV構築物は、配列番号27の配列を有し得る。
【0162】
構築物を含むウイルス粒子
本発明はまた、本発明の組換えAAV構築物を含むAAVウイルス粒子を提供する。
【0163】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えゲノムを含むウイルス粒子を提供する。本発明の目的のために、用語「ウイルス粒子」は、ビリオンの全てまたは一部を指す。例えば、ウイルス粒子は、組換えゲノムを含み、さらにカプシドを含み得る。ウイルス粒子は、遺伝子治療ベクターであり得る。本明細書においては、用語「ウイルス粒子」および「ベクター」は、交換可能に使用される。本出願の目的のために、「遺伝子治療」ベクターは、遺伝子治療において使用し得るウイルス粒子、すなわち、投与後の宿主細胞中で、第IX因子ヌクレオチド配列などの導入遺伝子を発現するために必要とされる全ての機能的要素を含むウイルス粒子である。
【0164】
適切なウイルス粒子は、パルボウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスまたは単純ヘルペスウイルスを含む。パルボウイルスは、アデノ随伴ウイルス(AAV)であり得る。ウイルス粒子は好ましくは、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはレンチウイルスベクターである。より好ましくは、ウイルス粒子は、AAVウイルス粒子である。用語AAVおよびrAAVは、本明細書においては交換可能に使用される。
【0165】
全ての既知のAAV血清型のゲノム構成は、非常に類似している。AAVのゲノムは、長さが約5,000未満のヌクレオチドである線状の一本鎖DNA分子である。逆方向末端反復(ITR)は、非構造複製(Rep)タンパク質および構造(VP)タンパク質の固有のコーディングヌクレオチド配列に隣接する。VPタンパク質(VP1、-2および-3)は、カプシドを形成する。末端145ntは、自己相補的であり、T字型ヘアピンを形成するエネルギー的に安定な分子内二重鎖が形成され得るように構成されている。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製についての起点として機能し、細胞DNAポリメラーゼ複合体についてのプライマーとして役立つ。哺乳類細胞における野生型(wt)AAV感染に続き、Rep遺伝子(すなわちRep78およびRep52タンパク質をコードする)は、それぞれP5プロモーターおよびP19プロモーターから発現され、両方のRepタンパク質は、ウイルスゲノムの複製において機能を有する。Rep ORFにおけるスプライシングイベントは、実際には4つのRepタンパク質(すなわちRep78、Rep68、Rep52およびRep40)の発現をもたらす。しかしながら、哺乳類細胞におけるRep78およびRep52タンパク質をコードするスプライシングされていないmRNAは、AAVベクターの産生について十分であることが示されてきた。また、昆虫細胞においては、Rep78およびRep52タンパク質は、AAVベクターの産生に十分である。
【0166】
AAVベクターの産生のために本発明において使用し得るAAV配列は、任意のAAV血清型のゲノムに由来し得る。一般に、AAV血清型は、アミノ酸および核酸レベルで有意な相同性のゲノム配列を有し、同一の遺伝的機能のセットを提供し、本質的に物理的におよび機能的に同等であるビリオンを産生し、実際的に同一のメカニズムによって複製し組み立てる。さまざまなAAV血清型のゲノム配列およびゲノム類似性の概要については、例えばGenBankアクセッション番号U89790;GenBankアクセッション番号J01901;GenBankアクセッション番号AF043303;GenBankアクセッション番号AF085716;Chiorini et al,1997;Srivastava et al,1983;Chiorini et al,1999;Rutledge et al,1998;およびWu et al,2000を参照されたい。本発明においては、AAV血清型1、2、3、3B、4、5、6、7、8、9、10、11または12を使用し得る。AAV血清型からの配列は、遺伝子治療ベクターの産生において使用されているとき、変異させまたは改変し得る。
【0167】
任意に、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4および/またはAAV6に由来するITR配列を含む。好ましくはITR配列は、AAV2 ITR配列である。本明細書においては、用語AAVx/yは、AAVxからのいくつかの成分(ここで、xは、AAV血清型番号である)およびAAVyからのいくつかの成分(ここで、yは、同じまたは異なる血清型の番号である)を含むウイルス粒子を指す。例えば、AAV2/8ベクターは、AAV2株からの、ITRを含むウイルスゲノムの一部分、およびAAV8株に由来するカプシドを含み得る。
【0168】
ある実施態様においては、ウイルス粒子は、カプシドを含むAAVウイルス粒子である。AAVカプシドは、一般的に3つのタンパク質VP1、VP2およびVP3から形成される。VP1のアミノ酸配列は、VP2の配列を含む。VP2の一部を形成しないVP1の一部分は、VP1 uniqueまたはVP1Uとして呼ばれる。VP2のアミノ酸配列は、VP3の配列を含む。VP3の一部を形成しないVP2の一部分は、VP2 uniqueまたはVP2Uとして呼ばれる。ウイルス粒子は、カプシドを含み得る。カプシドは、
(i)配列番号25と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%または100%同一である配列を含むカプシド;
(ii)配列番号26と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、または100%同一である配列を含むカプシド;
(iii)肝臓向性カプシド;および
(iv)AAV5カプシド
からなる群から選択し得る。
カプシドは、
(i)配列番号47と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%または100%同一である配列を含むカプシド;
(ii)配列番号48と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%または100%同一である配列を含むカプシド;および
(iii)AAV6カプシド
からなる群から選択し得る。
【0169】
本発明のウイルス粒子は、ウイルスITRおよびウイルスカプシドが、異なるAAV血清型などの、異なるパルボウイルスに由来する、「ハイブリッド」粒子であり得る。好ましくは、ウイルスITRおよびカプシドは、AAVの異なる血清型に由来し、その場合において、そのようなウイルス粒子は、カプシド転換されたものまたは疑似型のものとして知られている。同様に、パルボウイルスは、「キメラ」カプシド(例えば、異なるパルボウイルス、好ましくは異なるAAV血清型からの配列を含有する)または「標的を定めた」カプシド(例えば、標的指向性(directed tropism))を有し得る。
【0170】
組成、方法および使用
本発明のさらなる態様においては、本発明のポリヌクレオチドまたは構築物/ウイルス粒子および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が提供される。
【0171】
薬学的に許容される賦形剤は、担体、希釈剤および/または他の医薬品(medicinal agents)、医薬品(pharmaceutical agents)若しくはアジュバント等を含み得る。任意に、薬学的に許容される賦形剤は、生理食塩水を含む。任意に、薬学的に許容される賦形剤は、ヒト血清アルブミンを含む。
【0172】
本発明はさらに、治療方法における使用のための、本発明のポリヌクレオチド、構築物/ウイルス粒子または組成物を提供する。任意に、治療方法は、有効量の、本発明のポリヌクレオチドまたは構築物/ウイルス粒子を、患者に投与することを含む。
【0173】
本発明はさらに、治療方法における使用のための薬剤の製造における、本発明のポリヌクレオチド、構築物/ウイルス粒子または組成物の使用を提供する。任意に治療方法は、有効量の、本発明のポリヌクレオチドまたは構築物/ウイルス粒子を、患者に投与することを含む。
【0174】
任意に治療方法は、遺伝子治療である。「遺伝子治療」は、それが投与される宿主中で導入遺伝子(第VIII因子ヌクレオチド配列などの)を発現することができる、本発明の構築物/ウイルス粒子を投与することを含む。
【0175】
任意に、治療方法は、血友病(例えば血友病AまたはB)またはフォン・ヴィレブランド病などの凝血障害を治療する方法である。好ましくは、凝血障害は、増加する出血および/または低下する凝固によって特徴付けられる。任意に、治療方法は、血友病、例えば血友病Aを治療する方法である。いくつかの実施態様においては、患者は、血友病Aに罹患している患者である。任意に患者は、第VIII因子に対する抗体または阻害剤を有する。任意に、ポリヌクレオチドおよび/または構築物/ウイルス粒子は、静脈内投与する。任意に、ポリヌクレオチドおよび/または構築物/ウイルス粒子は、患者への1回のみの投与(すなわち単回投与)用である。
【0176】
任意に、本発明の方法はさらに、遺伝子治療ベクターの投与によって、患者が部分的にまたは完全に治療されたかどうかを決定する(例えば、患者が血友病Aの症状について部分的にまたは完全に治療されたことを決定する)工程を含み得る。血友病Aを部分的にまたは完全に治療することは、血友病Aに罹患している患者の凝固を改善すること、および制御不能な出血イベントのリスクを低下させることを指し得る。血友病Aを部分的にまたは完全に治療することは、例えば関節における制御不能な出血イベント若しくは内出血の数および/または頻度を低下させることを指し得る。部分的にまたは完全に治療されている患者は、1年あたりでより少ない制御不能な出血イベントに罹患し得る。血友病Aが上記の方法で「治療され」るとき、これは、血友病の1つ以上の症状が改善されることを意味する。それは、血友病の症状が、患者においてもはや存在しないように完全に治療されることは意味しないが、一部の方法では、そうなる場合があり得る。治療方法は、治療前よりも重症度が低い、血友病Aの症状の1つ以上をもたらし得る。血友病Aを部分的にまたは完全に治療することは、患者の血漿中に存在するFVIIIの量または活性を増加させることを指し得る。任意に、投与前の状況と比較して、治療方法は、患者の血液中の循環する第VIII因子の量/濃度、および/または所与の量の患者の血液内の検出可能な第VIII因子活性の全体的なレベル、および/または患者の血液中の第VIII因子の比活性(第VIII因子タンパク質の量あたりの活性)における増加をもたらす。血友病を部分的に治療することは、重度の(<1%の正常な血液凝固因子活性)または中程度に重篤の血友病(<2%の正常な血液凝固因子活性)の患者を軽度の血友病(5~40%の正常な血液凝固因子活性)の患者に転換することを指し得る。血友病を完全に治療することは、重度の、中程度に重篤のまたは軽度の血友病の患者の血液凝固因子活性を正常範囲内(50%~150%の正常な血液凝固因子活性)に増加させることを指し得る。
【0177】
部分的にまたは完全に治療されている患者は、より低い用量の第VIII因子が投与されることを必要とし得る。任意に、部分的にまたは完全に治療されている患者は、FVIIIの進行中の投与を必要としない可能性がある。任意に、該方法はさらに、血友病について部分的にまたは完全に治療された患者がもはや進行中の治療を必要としないか、または第VIII因子での進行中の治療の低下したレベルを必要とするかどうかを評価し、例えば投与されるべき第VIII因子の用量または用量頻度を低下させるように、または第VIII因子の投与を停止するように、患者の治療計画を適切に調整する工程を含み得る。
【0178】
「治療有効量」は、投与量でおよび必要な期間の間に(血友病Aの症状を改善するのに十分なレベルでの機能的第VIII因子産生につながるように)対象における機能的第VIII因子のレベルを上げるなどの所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。
【0179】
任意に、構築物/ウイルス粒子は、患者の体重1kgあたり1×1011未満、1×1012未満、5×1012未満、2×1012未満、1.5×1012未満、3×1012未満、1×1013未満、2×1013未満、または3×1013未満の構築物ゲノムの用量で投与する。任意に、ポリヌクレオチド、ウイルス粒子または組成物は、患者の体重1kgあたり少なくとも4.5×1011の、または4.5×1011と1×1012との間の構築物ゲノムの用量(vg/kg)で投与する。任意に、ポリヌクレオチド、ウイルス粒子または組成物は、5×1011vg/kg未満の用量で投与する。任意に、ポリヌクレオチド、ウイルス粒子または組成物は、4.5×1011vg/kgと5×1011vg/kgの間、または4.5×1011vg/kgと4.9×1011vg/kgとの間の用量で投与する。任意に、投与されるポリヌクレオチドまたはウイルス粒子は、哺乳類細胞から産生され、および/または哺乳類ウイルス構築物産生細胞の使用から生じ、昆虫ウイルス構築物産生細胞(例えばバキュロウイルス系)において産生される構築物とは区別する特徴を有する。
【0180】
任意に、-構築物ゲノムの数の観点で定量化された-構築物/ウイルス粒子の所与の用量の投与は、構築物ゲノムの力価測定をするためのqPCRを使用して達成される。
【0181】
qPCRを実施する方法は、当業者に知られている。リアルタイムPCRサイクラーおよびSYBR Green(ThermoFisher Scientific)などのDNA結合色素を使用して、発生期の二本鎖アンプリコンの増幅を、リアルタイムで検出することができる。既知の量のqPCRテンプレート遺伝物質(例えばプロモーター領域)を、次いで段階的に希釈して検量線を作成し、サンプル構築物のゲノム力価を、検量線から補間する。
【実施例】
【0182】
実施例1-一般的な材料および方法
FVIII構築物
FVIII-SQポリペプチドは、配列番号1)のアミノ酸1~743および1638~2332に対応するアミノ酸を含む(Lind et al. 1995. Eur J Biochem 232,19-27)(配列番号3)。
【0183】
内部で切断されたヒトFVIIIポリペプチド(FVIII-96~106)は、配列番号1)のアミノ酸732~1669に対応するアミノ酸の欠失を含み、配列番号1のアミノ酸1~731および1670~2332に対応するアミノ酸を含む(配列番号7)。
【0184】
AAVベクターの生成
AAV粒子は、AAV RepおよびCap機能;アデノウイルスヘルパー機能;並びにAAV2 ITRが隣接するFVIII発現カセットを含有する組換えゲノムをコードするプラスミドを用いたHEK293T細胞のトリプルプラスミドトランスフェクションによって製造した。細胞ペレットおよび上清を、トランスフェクションの72時間後に取り出し、AAV粒子を、POROS Capture SelectおよびAVB Sepharoseなどの樹脂を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。AAVを、次いでPBS中で一晩透析し、4℃で保存し、qPCRによって力価測定した。
【0185】
FVIII発色活性アッセイ
Biophen FVIII:C発色アッセイ(Hyphen BioMed,参照221406)は、FVIIIの補因子活性(FVIII:C)を測定する。
【0186】
トロンビン活性化を通して、FVIII:Cポリペプチドは、ヒト第IXa因子、リン脂質およびカルシウムと複合体を形成する。これらの条件下で、特定の濃度でおよび過剰にこのアッセイにおいて提供される第X因子は、第Xa因子に転換される(活性化される)。産生するこの第Xa因子は、制限要因であるFVIII:Cに正比例する。第Xa因子は、発色基質であるSxa-11によって直接測定する。第Xa因子は、発色基質を切断し、pNAを放出する。pNAの産生は、FVIII:C活性に直接関連する、第Xa因子活性に比例する。放出されるpNAのレベルは、405nmでの発色を測定することによって決定することができ、これは、サンプル中のFVIII:Cの活性に比例する、サンプル中の第VIII:C因子によって生成される第Xa因子ポリペプチドの量に関連する。
【0187】
アッセイは、製造元の指示に従って実施する。簡単には、37℃でプレインキュベートしたマイクロプレートウェルに、50μlのキャリブレーター血漿、希釈した(試薬R4中)試験血漿若しくは細胞上清/ライセートまたは対照を加え、その後、試薬R1およびR2のそれぞれ50μlを加え、これを、6mLの蒸留水で再構成し、37℃に予熱する。混合後、これらの成分は、150μlの反応物を形成し、これを、37℃で5分間インキュベートする。引き続き、反応物に、試薬R3を補充し、これを、それ自体6mLの蒸留水中に再懸濁し、37℃に予熱し、200μLの混合物を、37℃でさらなる5分間インキュベートする。反応を、50μlの20%酢酸またはクエン酸(20g/l)を加えることによって停止し、得られた250μlの混合物の405nmでの吸光度を測定する。
【0188】
試薬:
R1-フィブリン重合阻害剤の存在下で凍結乾燥した、ヒト第X因子。
R2-活性化試薬-ヒトトロンビン、カルシウムおよび合成リン脂質を含有する、凍結乾燥した、一定の最適化された濃度の、第IXa因子(ヒト)。
R3-SXa-11-トロンビン阻害剤を有する、第Xa因子に特異的な、凍結乾燥した、発色基質。
R4-Tris-BSA緩衝液。1% BSA、PEG、FVIII:C安定剤およびアジ化ナトリウム(0.9g/L)を含有する。
【0189】
発色活性アッセイからの読み取り値に関連して、「%FVIII活性」(「%FVIII:C」とも呼ばれる)は、「%正常」であり、これは、例えばHuH-7細胞においてFVIII発現カセットを発現させる文脈においては、100%FVIII活性を有するヒト血漿サンプルと比較して、HuH-7細胞におけるFVIII発現カセットの発現に続いて上清において検出されるFVIII活性が、前記100%FVIII活性を有するヒト血漿サンプルにおいて検出されるFVIII活性の特定の%であることを意味する。
【0190】
FVIIIサンドイッチELISA抗原アッセイ
Asserachrom VIII:Agキット(Stago Diagnostica,参照00280)は、酵素免疫測定法(ELISA)による血漿中のFVIIIの定量のための抗原アッセイである。アッセイするサンプル中のFVIIIは、プラスチックマイクロプレートウェルの壁をプレコーティングする、マウスモノクローナル抗ヒトVIII:Ag抗体によって捕捉される。非特異的結合を低下させるための十分なインキュベーションおよび洗浄に続き、ペルオキシダーゼに結合したマウス抗ヒトFVIII抗体は、捕捉されたFVIIIの残りの遊離抗原決定基に結合する。結合したペルオキシダーゼは、次いでTMB基質によって明らかにされる。TMBによって誘導される発色は、強酸の添加によって停止する。発色の強さは、分析するサンプル中のFVIII濃度に正比例し、450nmでの吸光度を測定することにより決定する。
【0191】
このアッセイからの読み取り値は、「%正常」として表し得、これは、例えばマウスにおいてFVIII構築物を発現させる文脈においては、100%FVIII活性を有するヒト血漿サンプルと比較して、マウス血漿サンプルにおいて検出されるFVIII分子(厳密には、エピトープ)の数が、前記100%FVIII活性を有するヒト血漿サンプルにおいて検出されるFVIII分子/エピトープの数の特定の%であることを意味する。
【0192】
上記の活性および抗原アッセイの両方において、FVIII(活性または抗原レベル)は、製造業者が推奨したかまたは含めた、既知の、WHO国際規格(NIBSCコード07/316)に対して較正されたFVIII活性または抗原の凍結乾燥ヒト血漿サンプルを(必要に応じて)使用して、マウスサンプルまたはヒトの細胞上清サンプル中で定量化する。
【0193】
実施例2-FVIII置換変異変異体の相対比活性のインビトロ評価
インシリコモデリングを使用して、FVIIIの安定性を増加させ得るであろう、表面に露出していないドメイン間表面上での単一アミノ酸置換およびシステイン置換の対を予測した。しかしながら、任意の安定性への影響が必ずしも活性への有益な効果と等しいというわけではなく、いくつかの場合においては、増加した安定性は、有害作用を有するであろう(例えば、安定性を増加させるが、必要なFVIIIドメインの活性型への再配列を可能にしない置換)。以下に説明するように、多数のそのような置換変異体を、インビトロで試験した。
【0194】
1つ以上のそのような置換を含むFVIII-SQ変異体をコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を、遺伝子合成し、市販の発現ベクターpcDNA5-FRT(Invitrogen)中にクローン化した。プラスミドDNAを、96Deepwellプレート中のexpi293浮遊細胞(Invitrogen)中に製造元のプロトコルに従ってトランスフェクトし、加湿した8%CO2インキュベーター中37℃で、400rpmで振とうしながら5日間インキュベートした。細胞培養物を1000×gで5分間4℃で遠心分離し、上清を0.2μlフィルターを通してろ過して、実施例1において記載する発色アッセイおよび抗原定量における即時試験を行った。
【0195】
ブランクサブトラクションに続き、発色アッセイからのFVIII活性の読み取り値を、FVIII抗原定量化(ELISA)の読み取り値で割って、比活性(SA)値を得た。
【0196】
図2Aは、各変異体についての多くの他に採り得る置換残基を含む、いくつかの異なる単一アミノ酸置換変異体について、いかなる置換変異をも欠くFVIII-SQ(‘95’)対照と比較した、SAにおける倍率変化を示す。以下の表は、番号付けした構築物のそれぞれに対応する置換の正体を示す。変異体65(H693W)は、95と比較してSAにおける上昇を示す。
【0197】
【0198】
別の実験においては、置換M662W(‘26’と呼ばれる)は、‘95’と比較してSAにおける著しい増加を示した。位置M662については、全ての他に採り得る置換のSAをスクリーニングすることを決定した。結果を、
図2Bに示し、これはまた、M662WをH693Wと組み合わせる二重置換を含む(
図2Aからの65)。置換の正体については、再び以下の表を参照されたい。位置M662でのCおよびEでの置換は、95と比較してSAにおけるいくらかの上昇を与えるように見える。SAにおける最大の増加は、M662W+H693Wの組合せについて観察された。
【0199】
【0200】
実施例3-ジスルフィド架橋を形成すると予測される追加のFVIII置換変異変異体の相対比活性のインビトロ評価
実施例2におけるインシリコ予測作業に基づいて、システイン置換の多くの対を、実施例2において記載する方法論を使用して試験した。
【0201】
結果-再びFVIII-SQ(‘95’)(配列番号3)と比較した比活性における倍率変化として表す-を、
図3に示す。以下の表は、
図3に示す構築物番号に対応する置換対を示す。C-C置換変異体のいくつかは、対照と比較して比活性における数倍の増加を示す。
【0202】
【0203】
実施例4-特定の有望な置換変異体の確認用インビトロ試験
図4は、実施例2および3の試験した置換変異体のサブセットについて、FVIII-SQ(‘95’)対照と比較したSAにおける倍数増加を確認する。置換は、2つのFVIII‘バックグラウンド’において評価し、第1のバックグラウンドは、上記の実施例におけるようにFVIII-SQである。
・FVIII-SQ-M662W(‘26’)
・FVIII-SQ-H693W(‘65’)
・FVIII-SQ-M662W-H693W(‘26-65’)
・FVIII-SQ-L687C-A1800C(‘12SS’)
【0204】
第2のFVIIIバックグラウンドは、Bドメインを包含し、その両側上に広がる、より広範な内部欠失を含有する点においてFVIII-SQと異なる。欠失した領域はアミノ酸位置732~1669に対応し、変異体タンパク質は、FVIII-(96~106)として呼ばれる。
・FVIII-(96-106)-M662W(‘26-96-106’)
・FVIII-(96-106)-H693W(‘65-96-106’)
・FVIII-(96-106)-M662W-H693W(‘26-65-96-106’)
・FVIII-(96-106)-L687C-A1800C(‘12SS-96-106’)
【0205】
図4が示すように、試験した構築物の上記のサブセットのそれぞれは、FVIII-SQ対照(95)と比較して比活性における約2倍以上の増加を示した。
【0206】
実施例5-安定化置換変異を含有する内部欠失したFVIII導入遺伝子構築物のインビボ評価
この研究においては、AAV8ベクターを、以下の構築物から作製した。
・FRE72-SP5-FVIIICo19(26-96-106)-SpA(配列番号27)
・FRE72-SP5-FVIIICo19-SQ-SpA(配列番号32)
【0207】
上記の構築物は、FRE72プロモーター、シグナルペプチド5、および合成ポリAを含有する。それらは、一方がFVIII-SQをコードし、一方で、他方が「96~-106」内部欠失、並びに置換変異「26」(=M662W)を有するより短い変異体をコードする点で異なる。
・コンパレーターFVIIIco-SQ
【0208】
上記の構築物は、天然のFVIIIシグナルペプチド、SpA、および肝臓特異的プロモーターを有する、コドン最適化されたFVIII-SQをコードする配列を含む。構築物は、配列番号34の配列を有する。
【0209】
AAV8-コンパレーターFVIIIco-SQは、別個の実験においてAAV8-FRE72-SP5-FVIIICo19(26-96-106)-SpAおよびAAV8-FRE72-SP5-FVIIICo19-SQ-SpAとそれぞれ比較した。
【0210】
6~8週齢のC7BL/6第VIII因子ノックアウト(FVIII-KO)マウスに、上記のベクターのそれぞれの1つの2×1012vg/kgを静脈内注射した。この研究についての全てのAAV8ベクターは、同時にqPCR法によって力価測定した。
【0211】
注射後6週時に、クエン酸塩(1:10希釈)上のヘパリン処理されていない青い毛細管を用いた眼窩後方穿刺により、各マウスから100μlと200μlとの間の血液を収集した。血漿は、4000rpmでの20分間の遠心分離によって調製した。
【0212】
注射したおよびナイーブな動物からの血漿を、FVIII活性およびヒトFVIII抗原レベルについて分析し(実施例1において記載するアッセイ)、FVIII活性の抗原レベルに対する比(すなわち比活性)を計算した(
図5)。
【0213】
本発明の番号付けした態様
1.第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(i)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(ii)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い比活性を有する、
第VIII因子ポリペプチド。
【0214】
2.第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(i)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(ii)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも高い安定性を有する、
第VIII因子ポリペプチド。
【0215】
3.第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.A1/A3ドメインインターフェイス;
b.A2/A3ドメインインターフェイス;または
c.A1/C2ドメインインターフェイス
からなる群から選択されるドメイン間インターフェイスに1つ以上の置換変異を含み、
(i)該1つ以上の置換変異は、アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換を含むか;または
(ii)該1つ以上の置換変異は、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、
該第VIII因子ポリペプチドは、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現される、
第VIII因子ポリペプチド。
【0216】
4.第VIII因子アミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドであって、該第VIII因子アミノ酸配列は、
a.配列番号1のM662若しくはH693に対応するアミノ酸の置換;または
b.第1のアミノ酸および第2のアミノ酸を含む一対のアミノ酸のシステイン残基での置換であって、
1.該第1のアミノ酸は、配列番号1のM147、S149若しくはS289に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のE1969、E1970若しくはN1977に対応するか;
2.該第1のアミノ酸は、配列番号1のT667、T669、N684、L687、I689、S695若しくはF697に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のS1791、G1799、A1800、R1803、E1844、S1949、G1981、V1982、若しくはY1979に対応するか;または
3.該第1のアミノ酸は、配列番号1のA108、T118若しくはV137に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のN2172、Q2329若しくはY2332に対応する、
置換
からなる群から選択される1つ以上の置換変異を含む、第VIII因子ポリペプチド。
【0217】
5.第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより高い比活性を有する、態様2から4のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0218】
6.第VIII因子ポリペプチドが、参照第VIII因子ポリペプチドの比活性よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、または少なくとも5.5倍高い比活性を有する、態様1または5の第VIII因子ポリペプチド。
【0219】
7.第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより高い安定性を有する、態様1または3から5のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0220】
8.第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより長い半減期を有し、任意にここで、該第VIII因子ポリペプチドは、活性化されたときに、該参照野生型第VIII因子ポリペプチドと比較してより長い半減期を有する、態様2または7の第VIII因子ポリペプチド。
【0221】
9.第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドの少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.8若しくは少なくとも3倍の半減期であるより長い半減期を有する、および/または第VIII因子ポリペプチドが、活性化されたときに、活性化されたときの参照野生型第VIII因子ポリペプチドの少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.8若しくは少なくとも3倍の半減期である半減期を有する、態様8の第VIII因子ポリペプチド。
【0222】
10.より長い半減期が、血漿中のより長い半減期である、態様8または9の第VIII因子ポリペプチド。
【0223】
11.第VIII因子ポリペプチドが、参照野生型第VIII因子ポリペプチドよりも宿主細胞中でより高いレベルで発現される、態様1、2または4から6の第VIII因子ポリペプチド。
【0224】
12.発現される第VIII因子ポリペプチドのレベルが、宿主細胞によって分泌されるFVIIIポリペプチドのレベルである、態様11の第VIII因子ポリペプチド。
【0225】
13.宿主細胞がヒト肝細胞である、態様11または12の第VIII因子ポリペプチド。
【0226】
14.ヒト肝細胞がHuh7細胞である、態様13の第VIII因子ポリペプチド。
【0227】
15.発現される第VIII因子ポリペプチドのレベルが、インビボ発現である、態様11の第VIII因子ポリペプチド。
【0228】
16.第VIII因子ポリペプチドが、第VIII因子ポリペプチドの第VIII因子アミノ酸配列を含むが、1つ以上の置換変異を含まない、参照第VIII因子ポリペプチドよりも、より高い比活性および/若しくはより高い安定性を有し並びに/または宿主細胞中でより高いレベルで発現される、態様1から15のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0229】
17.参照第VIII因子ポリペプチドが、配列番号1、3または5の第VIII因子ポリペプチドである、態様16の第VIII因子ポリペプチド。
【0230】
18.ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の置換変異が、活性化されたときに、第VIII因子ポリペプチドのそれぞれのドメインの相互作用を安定化する、態様1から17のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0231】
19.1つ以上の酸置換変異の少なくとも1つが、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間のパイスタッキング相互作用を増加させる、態様18の第VIII因子ポリペプチド。
【0232】
20.1つ以上の置換変異の少なくとも1つが、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間の疎水性パッキングを増加させる、態様18または19の第VIII因子ポリペプチド。
【0233】
21.1つ以上の置換変異の少なくとも1つが、それぞれのドメインのアミノ酸側鎖間の立体衝突および/または好ましくない静電相互作用を低下させる、態様18から20のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0234】
22.1つ以上の置換変異が、ドメイン間インターフェイスでの1つ以上の表面にアクセスできないアミノ酸の置換を含む、態様1から3または5から21のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0235】
23.より疎水性のアミノ酸で置換されたアミノ酸が、メチオニンまたはヒスチジンである、態様1から3または5から22のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0236】
24.より疎水性のアミノ酸で置換されたアミノ酸が、配列番号1の位置662のアミノ酸に対応するメチオニンまたは配列番号1の位置693のアミノ酸に対応するヒスチジンである、態様1から3または5から23のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0237】
25.1つ以上の置換変異がM662C置換を含まない、態様1から24のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0238】
26.
a.1つ以上の置換変異が、メチオニンのチロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン若しくはトリプトファンでの置換を含む;および/または
b.1つ以上の置換変異が、ヒスチジンのグルタミン酸(glutamate)、システイン、バリン、メチオニン、チロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン若しくはトリプトファンでの置換を含む、
態様1から25のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0239】
27.1つ以上の置換変異がアミノ酸の芳香族アミノ酸での置換を含む、態様1から26のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0240】
28.1つ以上の置換変異がM662W置換を含む、態様1から27のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0241】
29.1つ以上の置換変異がH693W置換を含む、態様1から28のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0242】
30.1つ以上の置換変異がM662WおよびH693W置換を含む、態様1から29のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0243】
31.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該システイン残基は、それぞれのドメイン間にジスルフィド結合を形成する、態様1から30のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0244】
32.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該一対のアミノ酸は、A1およびA3ドメイン中にある、態様1から31のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0245】
33.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該一対のアミノ酸は、第1のアミノ酸および第2のアミノ酸を含み、ここで、該第1のアミノ酸は、配列番号1のM147、S149またはS289に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のE1969、E1970またはN1977に対応する、態様1から32のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0246】
34.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該1つ以上の置換変異は、(i)S289CおよびN1977C、(ii)M147CおよびE1970C、並びに(iii)S149CおよびE1969Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含む、態様1から33のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0247】
35.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該一対のアミノ酸は、A2およびA3ドメイン中にある、態様1から31のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0248】
36.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該一対のアミノ酸は、第1のアミノ酸および第2のアミノ酸を含み、ここで、該第1のアミノ酸は、配列番号1のT667、T669、N684、L687、I689、S695またはF697に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のS1791、G1799、A1800、R1803、E1844、S1949、G1981、V1982、またはY1979に対応する、態様1から31または35のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0249】
37.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該1つ以上の置換変異は、(i)T669CおよびV1982C、(ii)L687CおよびA1800C、(iii)I689CおよびG1799C、(iv)F697CおよびS1949C、(v)T667CおよびG1981C、(vi)T669CおよびY1979C、(vii)N684CおよびS1791C、(viii)L687CおよびR1803C、並びに(ix)S695CおよびE1844Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含む、態様1から31、35または36のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0250】
38.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該一対のアミノ酸は、A1およびC2ドメイン中にある、態様1から31のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0251】
39.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該一対のアミノ酸は、第1のアミノ酸および第2のアミノ酸を含み、ここで、該第1のアミノ酸は、配列番号1のA108、T118またはV137に対応し、該第2のアミノ酸は、配列番号1のN2172、Q2329またはY2332に対応する、態様1から31または38のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0252】
40.1つ以上の置換変異が、それぞれのドメイン中の一対のアミノ酸のシステイン残基での置換を含み、ここで、該1つ以上の置換変異は、(i)A108CおよびQ2329C、(ii)T118CおよびN2172C、並びに(iii)V137CおよびY2332Cからなるリストから選択される一対の置換変異を含む、態様1から31、38または39のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0253】
41.1つ以上の置換変異が、第VIII因子ポリペプチドの活性化を阻害しない、態様1から40のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0254】
42.第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号1、3若しくは5において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、または配列番号1、3若しくは5の少なくとも1349個のアミノ酸を含むアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1から41のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0255】
43.第VIII因子ポリペプチドがベータドメイン欠失(BDD)第VIII因子ポリペプチドである、態様1から42のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0256】
44.第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号1の位置1から722および1670から2332に対応するアミノ酸を含む、態様1から43のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0257】
45.第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号1の位置1から731および1670から2332に対応するアミノ酸を含む、態様44の第VIII因子ポリペプチド。
【0258】
46.第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号1において記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である、態様1から43のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0259】
47.第VIII因子アミノ酸配列が、配列番号28に記載されるアミノ酸配列、または配列番号28に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1から46のいずれか1つの第VIII因子ポリペプチド。
【0260】
48.第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該第VIII因子ヌクレオチド配列は、態様1から47のいずれか1つに記載の第VIII因子ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【0261】
49.第VIII因子ヌクレオチド配列がコドン最適化されている、態様48のポリヌクレオチド。
【0262】
50.第VIII因子ヌクレオチド配列が、ヒト肝細胞における発現のためにコドン最適化されている、態様48または49のポリヌクレオチド。
【0263】
51.第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされる第VIII因子ポリヌクレオチドが、参照野生型第VIII因子ヌクレオチド配列と比較して、ヒト肝細胞においてより高いレベルで発現される、態様50のポリヌクレオチド。
【0264】
52.第VIII因子ヌクレオチド配列によってコードされる第VIII因子ポリヌクレオチドが、参照野生型第VIII因子ヌクレオチド配列と比較して、ヒト肝細胞において、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍高く発現される、態様50または51のポリヌクレオチド。
【0265】
53.参照野生型第VIII因子ヌクレオチド配列が、配列番号2の第VIII因子ヌクレオチド配列である、態様51または52のポリヌクレオチド。
【0266】
54.第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列が、配列番号31において記載されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、または配列番号31の少なくとも4047個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であるヌクレオチド配列を含む、態様49から53のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0267】
55.第VIII因子アミノ酸配列をコードする第VIII因子ヌクレオチド配列が、配列番号29において記載されるヌクレオチド配列または配列番号29において記載されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含む、態様49から54のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0268】
56.態様49から55のいずれか1つに記載の第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む、組換えAAV構築物。
【0269】
57.長さが4900未満のヌクレオチドである、態様56の組換えAAV構築物。
【0270】
58.長さが4700と4900との間、4700と4850との間、4700と4800との間、4700と4750との間または約4713のヌクレオチドである、態様57の組換えAAV構築物。
【0271】
59.組換えAAV構築物が一本鎖である、態様56~58のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0272】
60.第VIII因子ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが、転写調節エレメントおよび/またはポリA配列に作動可能に連結されている、態様56から59のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0273】
61.転写調節エレメントが、配列番号13または14において記載される配列を有する、態様60の組換えAAV構築物。
【0274】
62.ポリA配列が配列番号22において記載される配列を有する、態様60または61の組換えAAV構築物。
【0275】
63.シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、態様56から62のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0276】
64.シグナルペプチドが野生型第VIII因子シグナルペプチドである、態様63の組換えAAV構築物。
【0277】
65.シグナルペプチドが配列番号15を含む、またはシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列が配列番号16若しくは配列番号17を含む、態様64の組換えAAV構築物。
【0278】
66.シグナルペプチドが野生型第VIII因子シグナルペプチドではない、態様63の組換えAAV構築物。
【0279】
67.シグナルペプチドが配列番号18若しくは20を含む、またはシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列が配列番号19若しくは21を含む、態様66の組換えAAV構築物。
【0280】
68.1つまたは2つのITRをさらに含む、態様56から67のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0281】
69.そのまたは各ITRのヌクレオチド配列が、長さが157未満、154未満、または約145のヌクレオチドである、態様68の組換えAAV構築物。
【0282】
70.そのまたは各ITRが野生型ITRである、および/またはそのまたは各ITRがAAV2 ITRである、態様68または69の組換えAAV構築物。
【0283】
71.そのまたは各ITRのヌクレオチド配列が配列番号23または24のヌクレオチド配列を含む、態様68から70のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0284】
72.AAV構築物がAAVゲノムである、態様56から71のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0285】
73.AAV構築物が、配列番号27において記載される配列を含むかまたはそれからなる、態様56から72のいずれか1つの組換えAAV構築物。
【0286】
74.態様56から73のいずれか1つに記載の組換えAAV構築物を含むAAVウイルス粒子。
【0287】
75.ウイルス粒子がカプシドを含む、態様74のAAVウイルス粒子。
【0288】
76.カプシドが、
(i)配列番号25と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%または100%同一である配列を含むカプシド;
(ii)配列番号26と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、または100%同一である配列を含むカプシド;
(iii)肝臓向性カプシド;および
(iv)AAV5カプシド
からなる群から選択される、態様75のAAVウイルス粒子。
【0289】
77.カプシドが、
(i)配列番号47と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%または100%同一である配列を含むカプシド;および
(ii)配列番号48と少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%または100%同一である配列を含むカプシド;および
(iii)AAV6カプシド
からなる群から選択される、態様75に記載のAAVウイルス粒子。
【0290】
77.態様1から76のいずれか1つに記載の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、またはAAVウイルス粒子、および薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
【0291】
78.治療方法における使用のための、態様1から77のいずれか1つに記載のFVIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物。
【0292】
79.態様78に記載の使用のための第VIII因子ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物であって、該治療方法は、有効量の、態様1から77のいずれか1つの第VIII因子ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物またはAAVウイルス粒子を、患者に投与することを含む、第VIII因子ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物。
【0293】
80.有効量の、態様1から77のいずれか1つに記載の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物またはAAVウイルス粒子または組成物を、患者に投与することを含む、治療方法。
【0294】
81.治療方法における使用のための薬剤の製造における、態様1から77のいずれか1つに記載の第VIII因子ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物の使用。
【0295】
82.治療方法が、有効量の、態様1から77のいずれか1つに記載の第VIII因子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物AAVウイルス粒子または組成物を、患者に投与することを含む、態様80の使用。
【0296】
83.治療方法が血友病を治療する方法である、態様78から82のいずれか1つに記載の使用、方法または使用のための、第VIII因子ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物AAVウイルス粒子または組成物。
【0297】
84.治療方法が血友病Aを治療する方法である、態様78から83のいずれか1つに記載の使用、方法または使用のための、第VIII因子ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、組換えAAV構築物、AAVウイルス粒子または組成物。
【配列表】
【国際調査報告】