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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】熱伝導性硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20230111BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20230111BHJP
【FI】
C08L83/08
C08K3/011
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525566
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2020060330
(87)【国際公開番号】W WO2021090181
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】19207379.9
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ゴルゴル,リカルド ミゾグチ
(72)【発明者】
【氏名】エイヒラー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ビッシンガー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ユーリエヴィッチ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】シュタイガー,ボルフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーブ,シーグフリード アール.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP091
4J002DA026
4J002DA066
4J002DE146
4J002DE166
4J002DE167
4J002DF016
4J002DG037
4J002DH027
4J002DJ006
4J002DK006
4J002DM007
4J002EF007
4J002EF037
4J002EF047
4J002FD147
4J002FD206
4J002GN00
(57)【要約】
本開示は、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分と、
b)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系と、
c)熱伝導性フィラーと、を含む、硬化性組成物に関する。
別の態様によると、本開示は、硬化性組成物の製造方法に関する。更に別の態様では、本開示は、産業用途、特に自動車産業における熱管理用途のための熱伝導性硬化性組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分と、
b)前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系と、
c)熱伝導性フィラーと、
を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、少なくとも500g/mol、少なくとも1000g/mol、少なくとも1500g/mol、少なくとも2000g/mol、少なくとも2500g/mol、又は更には少なくとも3000g/molの数平均分子量を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、少なくとも1つの環状アミン、好ましくは2つの環状アミンを含む多官能性化合物である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、アジリジノ官能性ポリシロキサンオリゴマー、特にN-アルキルアジリジノ官能性ポリシロキサンオリゴマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(1):
【化1】
[式中、
は、H、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C15アルカリール、C~C15アラルキル又はC~C12シクロアルキルからなる群から選択され、これらの基は、Cl若しくはFによって部分的に、完全に、又は混在する態様で置換されていてもよく、かつ/又はO、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、
は、R及び/又はRの選択からの基であり、
は、SiR 又はSiR であり、
式中、Rは以下の式(2):
【化2】
を有し、Aは、(n+1)価の飽和、不飽和、又は芳香族の、直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基であって、O、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、1~18個の炭素原子、又は更には1~12個の炭素原子を含み、
Bは、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Dは、C(O)O、C(O)NR、C(O)、C(O)C(O)、C(O)(CH)m(C(O)、C(S)NR及びCHからなる群から選択され、
Eは、二価の飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基であって、O、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、0~18個の炭素原子、又は更には1~12個の炭素原子を含み、
aは、0又は1であり、
fは、2~1000の整数であり、
n及びmは、各々1~10の整数であり、
x、y、及びzは、各々0又は整数のいずれかで、その合計が1~10,000である]を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(3):
【化3】
を有し、これは、
xが0~500の整数であり、R=SiR
y、z=0、及びf=2である式(1)の化合物に相当する、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(6):
【化4】
[式中、
及びRは、式(1)で定義されたとおりであり、
xは、10~10,000の範囲の整数であり、特にxは、カチオン性シリコーン系自己硬化性オリゴマー化合物の計算された数平均分子量が1000~20,000g/molの範囲であるように選択される]を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための前記硬化系が、アニオンと、カチオンとしてのアンモニウム又はアミニウムのいずれかと、を含むイオン性化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
熱伝導性フィラーを含む熱伝導性ギャップフィラー組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記硬化性組成物の総体積に基づいて少なくとも30体積%の前記熱伝導性フィラーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
a)2~20重量%の前記カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物と、
b)0.2~3重量%の前記硬化系と、
c)50~98重量%の前記熱伝導性フィラーと、
d)任意に、1~10重量%のシリコーン流体と、
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化させることによって得られうる、硬化した組成物。
【請求項13】
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分を提供する工程と、
b)前記カチオン自己硬化性オリゴマー化合物のための硬化系を提供する工程と、
c)熱伝導性フィラーを提供する工程と、
d)前記ベース成分と、前記熱伝導性フィラーと、前記硬化系とを組み合わせる工程と、
を含む、硬化性組成物の製造方法。
【請求項14】
自動車産業における熱管理用途、特に熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物又は請求項12に記載の硬化した組成物の使用。
【請求項15】
複数の電池セルを含む電池モジュールの製造のため、特に自動車産業で使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物又は請求項12に記載の硬化した組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、硬化性組成物の分野に関し、より具体的には、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物に基づく熱伝導性硬化性組成物の分野に関する。本開示は、熱伝導性硬化性組成物の製造方法、及び産業用途、特に自動車用途、特に自動車産業における熱管理用途のための熱伝導性硬化性組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物、特にカチオン硬化性組成物は、接着剤及びコーティングなどの汎用産業用途、並びに、例えば歯科分野などの医療産業における高性能用途を含む様々な用途での使用に適したものとして長年既知である。カチオン硬化性組成物の硬化は、典型的には、硬化触媒を使用して実施される。
【0003】
長年にわたるカチオン硬化性組成物の広範な使用により、性能要件は、特に、硬化挙動、貯蔵安定性、及び加工性特性に関して、ますます厳しいものになっている。
【0004】
カチオン硬化性組成物の例は、例えば、米国特許第4,167,618号(Schmittら)、米国特許出願公開第A1-2008/0200585号(Klettkeら)、米国特許出願公開第A1-2013/0030076号(Weinmannら)、米国特許第6,894,144号(Zechら)及び米国特許出願公開第A1-2003/0153726号(Eckhardtら)に記載されている。当該技術分野において記載されているカチオン硬化性組成物は、典型的には、限定されるものではないが、配合の複雑性、低い費用効果、腐食性、人体への潜在的有害影響を有する材料の使用、及び貯蔵不安定性などの欠点に悩まされる。既知のカチオン硬化性組成物は、一般に、効率的かつ再現可能な硬化特性、並びに許容可能な柔軟性、弾性又は熱安定性を提供する観点からも最適ではない。
【0005】
他の既知の(液体)熱伝導性硬化性組成物は、付加型シリコーン、縮合型シリコーン、又はポリウレタンに基づく。そのような組成物の例は、例えば、米国特許出願公開第A1-2017/0260392号(Kitazawaら)に記載されている。これらの既知の解決策は、典型的には、熱管理用途のための良好なエラストマー特性を提供するが、熱伝導性フィラー担持量が高いと、許容できない流動性特性に悩まされることが多い。既知の付加型シリコーン及び縮合型シリコーンはまた、白金又はスズなどの金属に基づく費用効果の低い硬化系を使用する必要がある。
【0006】
当該技術分野において既知の解決策に関連する技術的利点への異議を唱えることなく、上記の欠点を克服する熱伝導性硬化性組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
一態様によると、本開示は、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分と、
b)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系と、
c)熱伝導性フィラーと、を含む、
硬化性組成物に関する。
【0008】
別の態様によると、本開示は、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分を提供する工程と、
b)カチオン自己硬化性オリゴマー化合物のための硬化系を提供する工程と、
c)熱伝導性フィラーを提供する工程と、
d)ベース成分と、熱伝導性フィラーと、硬化系とを組み合わせる工程と、
を含む、熱伝導性硬化性組成物の製造方法に関する。
【0009】
なお別の態様では、本開示は、上記のような硬化性組成物の、産業用途、特に自動車産業における熱管理用途のための使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様によると、本開示は、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分と、
b)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系と、
c)熱伝導性フィラーと、を含む、
硬化性組成物に関する。
【0011】
本開示との関係においては、驚くべきことに、上記の熱伝導性硬化性組成物は、熱伝導性フィラー担持量が比較的高い場合であっても、卓越した柔軟性、弾性、粘度、及び流動性特性を備えることが見出された。記載された熱伝導性硬化性組成物は更に、卓越した燃焼特性を、並びに比較的高温及び長い貯蔵期間の場合であっても熱及びエージング安定性を備える。
【0012】
いくつかの有利な態様では、記載された熱伝導性硬化性組成物は、硬化効率、硬化速度、硬化プロファイル再現性、硬化プロファイル予測性及び硬化プロファイル調整性などが挙げられるがこれらに限定されない、有利な硬化特性及び性能を更に備える。
【0013】
カチオン自己硬化性オリゴマー化合物は、より従来型のカチオン自己硬化性小分子と比較した場合、一般に、主に予想される酸で開始されるカチオン重合反応(例えば、直鎖状ポリマー縮合)に加えて、様々な二次的な、複雑な、及び望ましくない化学反応を招くものとして認識されていることから、これは、特に予想外の発見である。主にオリゴマーバックボーンの存在に起因する、この多数の副重合反応は、元々の硬化性組成物の硬化特性、特に硬化プロファイルの再現性に悪影響を及ぼすことが直感的に予想され、これは、関与する硬化プロセス全体の実質的に制御不能な性質による。
【0014】
上記の硬化性組成物は、以下の有利な利点:(i)容易に入手可能な出発物質及び最小化された製造工程に基づく、容易かつ費用効果の高い製造方法、(ii)配合の単純さ及び汎用性、(iii)高温又は化学線などの任意の実質的なエネルギー入力を必要とせずに効率的に硬化する能力、(iv)人体への有害な影響を有する材料又は製品の非使用による安全な取り扱い、(v)貯蔵及びエージング安定性、並びに(vi)広範な特定用途に調整可能な熱伝導性硬化性組成物のための堅牢かつ汎用性のある硬化系ポートフォリオを展開する能力、のうちの1つ以上によって更に特徴付けられる。
【0015】
理論に束縛されることを望むものではないが、これらの卓越した特性及び性能属性は、特にカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物、及び関連する硬化系の存在に起因すると考えられる。
【0016】
したがって、本開示の熱伝導性硬化性組成物は、自動車産業における熱管理用途、特に電池モジュールの製造に有利に使用され得る熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造に極めて適している。有利には、本開示の熱伝導性硬化性組成物は、特に、その卓越した硬化特性、寸法安定性及び操作特性(特に、柔軟性、弾性、粘度及び流動特性)により、自動操作及び適用、特に高速ロボット装置による自動操作及び適用に適している。記載された熱伝導性硬化性組成物はまた、その極めて優れた燃焼特性により、最も厳しい消防法水準を満たすことができる。
【0017】
本開示との関係において、「カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物」という表現は、カチオン、特に反応性カチオンを含有する又は生成できる開始剤を使用して硬化され得るシリコーン系オリゴマー化合物を指すことを意味し、それによってシリコーン系オリゴマー化合物は実質的に単独で硬化し、シリコーン系オリゴマー化合物の化学反応から生じるポリマー生成物を形成することができる。典型的な態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のシリコーン系オリゴマーバックボーンは、硬化プロセスの間、非反応性のままである。用語「開始剤」は、硬化性組成物の硬化プロセスを引き起こす又は開始する又は硬化プロセスに寄与することができる物質又は物質群を指すことを意味する。
【0018】
本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、特に限定されない。本明細書で使用するために適したカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0019】
本開示の熱伝導性硬化性組成物の1つの有利な態様によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、カチオン開環重合によって硬化(重合)することができる。したがって、有益な態様では、本開示で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、少なくとも2つの複素環式基、特に環状アミン基を含む。
【0020】
本開示の別の有利な態様によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、更に架橋性であり、特にカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の硬化(重合)から生じるポリマー生成物の架橋反応に関与することができる。
【0021】
本開示の有益な態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、少なくとも500g/mol、少なくとも1000g/mol、少なくとも1500g/mol、少なくとも2000g/mol、少なくとも2500g/mol、又は更には少なくとも3000g/molの数平均分子量を有する。別途記載のない限り、数平均分子量は、当業者に周知の適切な技術を使用してGPCによって特定される。
【0022】
本開示の別の有益な態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、50,000g/mol以下、40,000g/mol以下、30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、又は更には20,000g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0023】
本開示の更に別の態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、500~50,000g/mol、500~40,000g/mol、1000~40,000g/mol、1000~30,000g/mol、1000~25,000g/mol、又は更には1000~20,000g/molの数平均分子量を有する。
【0024】
本開示の有益な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、少なくとも1つの環状アミン、好ましくは2つの環状アミンを含む多官能性化合物である。例示的な態様では、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物に含まれ得る環状アミンは、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0025】
1つの有利な態様では、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、少なくとも2つのアジリジン官能基を含む多官能性化合物である。より有利には、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、多官能性アジリジン、特にビス-アジリジノ化合物である。
【0026】
本開示のより有利な態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、アジリジノ官能性シリコーン系オリゴマーである。有利には、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、アジリジノ官能性極性シリコーン系オリゴマーである。
【0027】
本開示の別の有利な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、シリコーン系オリゴマーバックボーン、特にポリシロキサンを含む極性シリコーン系オリゴマーバックボーンに基づくアジリジノ官能性化合物である。
【0028】
有利な態様によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、アジリジノ官能性ポリシロキサンオリゴマー、特にN-アルキルアジリジノ官能性ポリシロキサンオリゴマーである。
【0029】
アジリジノ官能性ポリシロキサンポリマーは、特に熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造に使用された場合、所望の特性の良好なバランスを提供することが見出されている。概ね、ポリシロキサンバックボーンは、所望の未硬化時のレオロジー特性、並びに所望の硬化した機械的特性及び熱特性の両方を提供する一方で、適切な熱伝導率を達成するために必要な熱伝導性フィラー担持量を可能にする。
【0030】
本明細書で使用するためのポリシロキサンオリゴマーは、所望の熱特性及び機械的特性を含む様々な因子に基づいて選択され得る。ポリシロキサンオリゴマーは、概ね、その主鎖(側鎖に対する)にシロキサン基を有するポリマーを指す。本開示で使用するのに適したポリシロキサンオリゴマーとしては、脂肪族ポリシロキサンオリゴマーが挙げられる。このようなポリシロキサンオリゴマーは、シロキサン結合を介して結合された直鎖及び分岐鎖アルキレン基を含み得る。1つの例示的態様では、アルキレン基は1~6個の炭素原子、例えば、2~4個の炭素原子を有する。
【0031】
ポリシロキサンオリゴマーは、単一のアルキレン基のみの繰り返し単位を有するホモポリマー、又は2つ以上のアルキレン基のコポリマーであってもよい。このようなコポリマーは、ブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、交互コポリマー、又はランダムコポリマーであってもよい。このようなコポリマーは、鎖に沿ったモノマーの均質又は勾配分布を示すことができる。いくつかの実施形態では、コポリマーは、ホモポリマーのブロック、ランダムコポリマーのブロック、交互コポリマーのブロック、及びこれらの組み合わせを含有してもよい。本明細書で使用するためのポリシロキサンオリゴマーは、当業者に周知の重合技術に従って調製され得る。
【0032】
本開示の1つの有利な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、以下の式(1):
【化1】
[式中、
は、H、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C15アルカリール、C~C15アラルキル又はC~C12シクロアルキルからなる群から選択され、これらの基は、Cl若しくはFによって部分的に、完全に、又は混在する態様で置換されていてもよく、かつ/又はO、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、
は、R及び/又はRの選択からの基であり、
は、SiR 又はSiR であり、
式中、Rは以下の式(2):
【化2】
を有し、
Aは、(n+1)価の飽和、不飽和、又は芳香族の、直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基であって、O、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、1~18個の炭素原子、又は更には1~12個の炭素原子を含み、
Bは、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Dは、C(O)O、C(O)NR、C(O)、C(O)C(O)、C(O)(CH)m(C(O)、C(S)NR及びCHからなる群から選択され、
Eは、二価の飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基であって、O、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、0~18個の炭素原子、又は更には1~12個の炭素原子を含み、
aは、0又は1であり、
fは、2~1000、2~100、又は更には2~50の整数であり、
n及びmは、各々1~10、1~5、又は更には1~3の整数であり、
x、y、及びzは、各々0又は整数のいずれかで、その合計が1~10,000、1~1000、又は更には10~500である]を有する。
【0033】
式(1.2)における記号「」は、この方法で標識された原子価が、フラグメント(1.1)において「」と標識された位置に連結されることを意味する。
【0034】
特定の態様では、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、式(1)を有するが、xが0より大きい場合、y又はzはx以下、xの0.05倍以下、又は更にはxの0.02倍であるという制限を有する。
【0035】
別の特定の態様では、Rのx個の基それぞれのうち、最大でxの0.5倍の基がRであり、その他の基はRである。
【0036】
y+z=0である場合、直鎖ポリシロキサンが存在し、y+z>0である場合、分岐鎖ポリシロキサンが存在し、ここで、式(1)は、この場合にポリマーが、シリコーン命名法と関連してD単位、並びにT及び/又はQ単位の両方を含有してもよく、それは分子内の任意の位置にあってよく、T及びQ単位の連結点において、全長がx個のD単位である任意の所望の長さのD鎖を有することを意味するとみなされるべきである。
【0037】
基Rの各記述は、単にRで示された選択範囲からの選択を意味し、異なる名称は、異なる各置換点における、及びポリマー式の各繰り返し単位における、異なるR基を意味し得る。これは、構造単位(SiOR)x-が、定義されたR及びRを有するホモポリマーと、異なる基R及びRを有するシリコーンのコポリマーとの両方を意味することを意図するが、式中、xは、基R及びRになされた選択に関係なく、対象となる全てのケイ素原子の数を示す。同様の状況は、因子-Si(O)R(O)y-及び基Rに相応に当てはまる。
【0038】
1つの典型的な態様では、ポリマー均一なポリシロキサン基本鎖は存在しない。多分散度(M/M)は、調製プロセスに応じて、1.1~20又は更には1.2~10である。
【0039】
整数x、y、及びzは、独立して選択されてもよく、ゼロであってもよく、ただし、少なくとも1つはゼロではなく、これらの値は得られる分子量が所望の条件を満たすように選択される。
【0040】
本開示の1つの有利な態様では、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、式(1)を有し、式中、整数x、y、及びzは、化合物の平均分子量Mが、500~50,000g/mol、又は更には1000~20,000g/molの範囲となるように選択される。
【0041】
別の有利な態様によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、1分子当たり1~10個のN-アルキルアジリジノ基を含む。
【0042】
更に別の有利な態様によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、250~25,000g/当量の範囲、又は更には400~10,000g/当量の範囲のアジリジノ当量を有する。
【0043】
本明細書で使用するためのN-アルキルアジリジノシリコーン系オリゴマー化合物の具体例は、一般式の意味での式(1)と式(2)との好ましい代表例の組み合わせによって得られる化合物である。式(2)の代表例の式(1)の代表例への連結は、しばしばヒドロシリル化反応によって達成される。
【0044】
本開示の1つの典型的な態様では、式(1)を有するカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、直鎖状シロキサン、櫛状シリコーン(comb-like silicones)、T分岐鎖シロキサン、及びMQシリコーン樹脂からなる群から選択される。
【0045】
式(1)に従う、本明細書で使用するための、1つの例示的な直鎖状シロキサンは、以下の一般構造:
【化3】
[式中、
=メチル、R=R、x=0~500、
=SiMe(式中、Rは式(2)に従う)、
y,z=0、かつf=2である]を有する。
【0046】
式(1)に従う、本明細書で使用するための、1つの例示的な櫛状シロキサンは、以下の一般構造:
【化4】
[式中、
=メチル、R=R、x=0~500、
=SiMe(式中、Rは式(2)に従う)、又はSiR (式中、R=メチル)
y,z=0、かつf=1~100である]を有する。
【0047】
式(1)に従う、本明細書で使用するための、1つの例示的なT分岐鎖シロキサンは、以下の一般構造:
【化5】
[式中、
=メチル、R=R、x=0~500、
=SiMe(式中、Rは式(2)に従う)、又はSiR (式中、R=メチル)
y=1~500、z=0、かつf=1~100である]を有する。
【0048】
式(1)に従う、本明細書で使用するための、1つの例示的なMQシリコーン樹脂は、以下の一般構造:
【化6】
[式中、
=メチル、R=R、x=0~500、
=SiMe(式中、Rは式(2)に従う)、又はSiR (式中、R=メチル)
y=0~25、z=1、かつf=1~100である]を有する。
【0049】
本開示の1つの有利な態様によると、式(1)を有するカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、直鎖シロキサンからなる群から選択される。
【0050】
本開示の更に有利な態様によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、以下の式(3):
【化7】
を有し、これは、
xが、0~500の整数であり、R=SiR
y、z=0、及びf=2である式(1)の化合物に相当する。
【0051】
特に有利な態様では、本開示で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、式(3)の化合物に相当する式を有し、式中、Rはメチルであり、Rはメチルである。
【0052】
更に別の有利な態様によると、本開示で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、式(1)の化合物に相当する式を有し、式中、Rは、以下の構造:
【化8】
[式中、
Dは、C(=O)O、C(=O)NR、C(=O)、C(=O)C(=O)N(R)、C(=O)(CH(C(=O)、C(=S)NR、及びCHから選択され、
Eはアルキレン基であり、
は、H、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、又はアリールであり、
は、H、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、又はアリールであり、
pは、整数である]を有する。
【0053】
いくつかの態様では、Rは、H-、メチル-、エチル-、エテニル-、プロペニル-、フェニル-、又はトリールである。
【0054】
例示的なアジリジノ官能基としては、以下のものが挙げられる:
【化9】
[式中、D=C(=O)NR(R=Hである);E=1,3-プロパンジイル];
【化10】
[式中、D=C(=O)NR(R=Hである);E=2-メチル-1,3-プロパンジイル];
【化11】
[式中、D=C(=O)NR(R=Hである);E=1,3-ブタンジイル];
【化12】
[式中、D=C(O)O;E=1,2-エタンジイル];
【化13】
[式中、D=C(O)O;E=1,2-エタンジイル];
【化14】
[式中、D=C(O)NH;E=2-アザ-1,4-ブタンジイル];
【化15】
[式中、D=C(O);E=2-メチル-1,2-プロパンジイル];
【化16】
[式中、D=C(O);E=1,2-エタンジイル];
【化17】
[式中、D=C(O);E=1-メチル-1,2-プロパンジイル];
【化18】
[式中、D=C(=O)C(=O)NR(R=Hである);E=1,3-プロパンジイル];
【化19】
[式中、D=C(=O)C(=O)NR(R=Hである);E=2-メチル-1,3-プロパンジイル]及び
【化20】
[式中、D=C(=O)C(=O)NR(R=Hである);E=1,3-ブタンジイル]。
【0055】
本明細書で使用するためのアジリジノ官能性(アジリジニル官能性と呼ばれる場合もある)有機部分は、主鎖中のポリシロキサンオリゴマーバックボーンに結合している。アジリジノ基は、様々な二価結合基のいずれかを介してポリシロキサンオリゴマーバックボーンに結合し得る。例えば、これらは、カーボネート-、ウレタン-、尿素-、エステル-エーテル-又は他の連結を介して結合してもよい。
【0056】
本開示の1つの好ましい実施によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、以下の式(4):
【化21】
を有するN-アルキルプロピレンイミン誘導体であり、
これは式(1)[式中、
Aは(CHであり、BはNHであり、DはC(O)C(O)NHであり、Eは1,3-プロパンジイルであり、
wは1~10の整数である]の化合物に相当する。
【0057】
本開示の別の好ましい実施によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、以下の式(5):
【化22】
を有するN-アルキルブチレンイミン誘導体であり、
これは式(1)[式中、
Aは(CHであり、BはNHであり、DはC(O)C(O)NHであり、Eは1,3-ブタンジイルであり、
wは1~10の整数である]の化合物に相当する。
【0058】
本開示の特に好ましい実施によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、以下の式(6):
【化23】
[式中、
及びRは、式(1)で定義されたとおりであり、
xは、1~10,000、1~1000、又は更には10~500の範囲の整数であり、特にxは、カチオン性シリコーン系自己硬化性オリゴマー化合物の計算された数平均分子量が1000~20,000g/molの範囲であるように選択される]を有する。
【0059】
本開示の更に別の好ましい実施によると、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物は、式(6)[式中、Rはメチルであり、Rはメチルである]の化合物に相当する式を有する。
【0060】
本明細書で使用するための硬化系は、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を硬化させることができる限り、特に限定されない。本明細書で使用するために好適な硬化系は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0061】
本開示による硬化性組成物の1つの典型的な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、特に90℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は更には15℃以下である温度T1で開始される。
【0062】
本開示の有利な一態様では、本明細書で使用するためのカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の硬化系は、高温又は化学線などの任意の実質的なエネルギー入力を必要とせずに硬化性組成物を硬化させることができる。また、硬化温度は、特に、硬化特性を制御するために硬化プロセス全体を通して、所望に応じて変化されてもよい。
【0063】
より有利な態様では、本開示の硬化性組成物は、例えば室温(特に23℃)などの比較的低温で硬化され得る。
【0064】
本開示の別の有利な態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、-10℃~85℃、0℃~80℃、5℃~60℃、5℃~50℃、10℃~40℃、又は更には15℃~35℃の範囲である温度T1で開始される。
【0065】
1つの有利な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、アニオンと、カチオンとしてのアンモニウムとを含むイオン性化合物(ionogenic compound)を含む。
【0066】
別の有利な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、アニオンと、カチオンとしてのアミニウムイオンと、を含むイオン性化合物を含む。
【0067】
本明細書で使用するためのイオン性化合物は、特に限定されない。硬化性組成物の当該技術分野において一般的に知られている任意のイオン性化合物は、(アニオンと)カチオンとしてのアンモニウム又はアミニウムとを含む限り、本開示に関連して使用され得る。本明細書で使用するための適したイオン性化合物は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0068】
本開示の1つの典型的な態様によると、本明細書で使用するためのイオン性化合物は、酸生成化合物、特にプロトン化剤である。
【0069】
本開示の有利な一態様では、カチオン性自己硬化性オリゴマー化合物のための硬化系は、ブレンステッド酸又はブレンステッド酸の前駆体によるアンモニアのプロトン化から生じる。より有利には、本明細書で使用するためのブレンステッド酸は、2.5以下のpKaを有する。
【0070】
より有利な態様では、本明細書で使用するためのブレンステッド酸は、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、テトラフルオロホウ酸、スルホン酸、ホスホン酸、フッ素化有機酸、ポリマー酸、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0071】
本開示の特に有利な一態様によると、本明細書で使用するためのブレンステッド酸は、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、スルホン酸、飽和カルボン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0072】
本明細書で使用するためのブレンステッド酸がスルホン酸の群から選択される有利な態様によると、スルホン酸は、アルキルスルホン酸、フルオロアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から有利に選択され得る。
【0073】
更により有利な態様によると、ブレンステッド酸として使用するためのスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メチルスルホン酸、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0074】
イオン性化合物の一部として本明細書で使用するためのアニオンは、特に限定されない。当業者には明らかであるように、好適なアニオンは、有利には、アンモニウム又はアミニウムカチオンと組み合わせて反応性であるが適度に安定したイオン性化合物を形成するように選択され得る。イオン性化合物の一部として本明細書で使用するための好適なアニオンは、本開示を踏まえて当業者によって容易に特定され得る。
【0075】
本開示の有利な態様によると、イオン性化合物のアニオンは、低配位性及び非配位性アニオン及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。より有利には、イオン性化合物のアニオンは、低求核性アニオンからなる群から選択される。
【0076】
アニオンの求核性の性質に関する分類は、例えば、C.G.Swainらにより、J.Am.Chem.Soc.,75,141ページ(1953)において、又はA.B.Ashらにより、J.Org.Chem.,34,4071ページ(1969)において記載されている方法で行われる。
【0077】
硬化性組成物の1つの有利な実施において、本明細書で使用するためのイオン性化合物のアニオンは、PF 、BF 、SbF 、AsF 、CFSO 、及びSbFOHからなる群から選択される。より有利には、本明細書で使用するためのイオン性化合物のアニオンは、PF 、BF 、SbF 、AsF 、及びSbFOHからなる群から選択される。
【0078】
硬化性組成物の特に好ましい態様によると、本開示で使用するためのイオン性化合物のアニオンは、PF 及びBF からなる群から選択される。
【0079】
本開示の硬化性組成物の別の特に好ましい態様によると、本明細書で使用するためのイオン性化合物は、テトラフルオロホウ酸アンモニウム及びヘキサフルオロリン酸アンモニウムからなる群から選択される。
【0080】
イオン性化合物の一部として本明細書で使用するためのアミニウムイオンは、特に限定されない。当業者には明らかであるように、好適なアミニウムカチオンは、有利には、アニオンと組み合わせて反応性であるが適度に安定したイオン性化合物を形成するように選択され得る。イオン性化合物の一部として本明細書で使用するために好適なアミニウムカチオンは、本開示を踏まえて当業者によって容易に特定され得る。
【0081】
本開示の典型的な態様によると、イオン性化合物のアミニウムイオンは、N-置換アミン、特に一級N-置換アミン、二級N-置換アミン、又は三級N-置換アミンのプロトン化から生じる。有利な態様では、本明細書で使用するためのN-置換アミンは、少なくとも7以上のpKaを有する。
【0082】
本開示の有利な態様によると、本明細書で使用するためのイオン性化合物のアミニウムイオンは、一級アミニウムカチオン、二級アミニウムカチオン、三級アミニウムカチオン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0083】
本開示のより有利な態様によると、イオン性化合物のアミニウムイオンは、二級アミニウムカチオン、三級アミニウムカチオン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0084】
本開示の更により有利な態様によると、イオン性化合物のアミニウムイオンは、三級アミニウムカチオン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0085】
別の有益な態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、少なくとも1つの上記定義によるブレンステッド酸又はブレンステッド酸の前駆体と、少なくとも1つの制酸作用化合物とを含む。
【0086】
有利には、本明細書で使用するための制酸作用化合物は、アルミニウム、クロム、銅、ゲルマニウム、マンガン、鉛、アンチモン、テルル、チタン又は亜鉛の元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はカルボン酸塩、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0087】
より有利には、本明細書で使用するための制酸作用化合物は、酸化亜鉛を含むように選択され、ブレンステッド酸は、特に、スルホン酸からなる群から、より具体的には、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から、選択される。
【0088】
より有利な態様によると、本明細書で使用するための制酸作用化合物は、酸化亜鉛を含むように選択され、ブレンステッド酸は、p-トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸からなる群から選択され、特にp-トルエンスルホン酸である。
【0089】
更により有利な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、p-トルエンスルホン酸亜鉛を含む。
【0090】
本開示による熱伝導性硬化性組成物の特に有利な一態様では、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系は、水を更に含む。
【0091】
1つの有利な態様によると、本開示による硬化性組成物は、熱伝導性ギャップフィラー組成物である。
【0092】
本開示との関係においては、本開示の硬化性組成物が、熱管理用途に極めて適していることが、実際に驚くべきことに発見された。特に、自動車産業で使用するための電池モジュールの製造に有利に使用され得る熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造のために使用することができる。これは特に、本明細書全体を通して記載される他の有利な特性と組み合わせて、本開示による硬化性組成物によって提供される硬化効率、硬化速度、硬化プロファイルの再現性、硬化プロファイル予測性、及び硬化プロファイル調整性に関する優れた特性及び性能に起因する。これらの有利な特性としては、限定されるものではないが、比較的高い熱伝導性フィラー担持量の場合であっても卓越した柔軟性、弾性、粘度、及び流動特性、卓越した燃焼特性、並びに比較的高温及び長い貯蔵期間の場合であっても優れた熱及びエージング安定性が挙げられる。
【0093】
本開示による硬化性組成物に基づく熱伝導性ギャップフィラー組成物は、電池及び電池アセンブリ、具体的には電気自動車及びハイブリッド電気自動車で使用される電池の種類に特に適している。しかしながら、この組成物の有用性は、そのように限定されることはない。本明細書に記載の熱伝導性ギャップフィラー組成物は、このような材料が、例えば、電子機器(例えば、民生用電子機器)又は電気用途において使用されるどのような場合であっても、用途を見つけることができる。
【0094】
熱管理は、多くの電子機器又は電気用途において重要な役割を果たす。例えば、リチウムイオン電池を電動ビークル(electric vehicle)電池パックに組み込むための課題としては、性能、信頼性、及び安全性が挙げられる。電池アセンブリの適切な熱管理は、これらの課題のそれぞれに対処することに寄与する。これは、電池セルが電池モジュール内で組み立てられる第1のレベルの熱管理と、これらのモジュールが電池サブユニット又は電池システム内に組み立てられる第2のレベルの熱管理との両方を含む。熱管理はまた、電池制御ユニット及び非電池の電子用途の冷却においても重要であり得る。
【0095】
現在、電池アセンブリの熱管理は、硬化性液体ギャップフィラー又はパッドに依存している。硬化性液体は組み立て中に流動し、硬化前に寸法変動に適合することができる。また、液体は組み立て時に適用することができ、より柔軟な設計を可能にする。しかしながら、現在の未硬化の及び硬化した組成物は、以下に記載されるように、汚染物質の存在を含むいくつかの限界を有する。パッドは、硬化材料の所定のレイアウトを含み、したがって、パッドは汚染物質を導入する傾向が低減されている。しかしながら、硬化材料は、典型的な電池アセンブリに見られる寸法変動範囲に適応するのに十分な適合性をもたらさない場合がある。また、設計変更は、新たな設計レイアウトが作成されなければならないため、より高価で複雑であり得る。
【0096】
本開示との関係において、本開示による硬化性組成物に基づく熱伝導性ギャップフィラー組成物は、上述の欠陥を実質的に克服し得ることが予想外に見出された。
【0097】
いくつかの態様では、本開示による硬化性組成物に基づく熱伝導性ギャップフィラー組成物は、以下の有利な利点:(i)特定の作業サイクルへの適応を可能にするために容易に調節可能な硬化プロファイル、(ii)未硬化の組成物の有利なレオロジー挙動、(iii)構成成分が適用され、配置されるのを可能にするのに十分な硬化までのオープンタイム、(iv)オープンタイム後の急速な硬化、(v)追加のエネルギー入力、特に熱エネルギー又は化学線を伴わない硬化、(vi)白金などの高価な触媒を必要とせずに硬化可能な組成物、(vii)部品上の有利な湿潤挙動、(viii)硬化した組成物の安定性、(ix)使用条件下で良好な接触を確実にするために有利な柔軟性及び跳ね返り(変形に対する回復)特性、(x)熱伝導率の低減を最小限に抑えるために、空気の含有及び気体又は気泡形成がないこと、(xi)例えば未反応成分及び低分子量材料、又は揮発性成分などの汚染物質がないこと、及び(xii)同じ材料の連続硬化層間の良好な結合、のうちの1つ以上を提供し得る。
【0098】
1つの例示的な態様によると、本明細書で使用するための熱伝導性硬化性組成物は、硬化性組成物の総体積に基づいて、少なくとも30体積%、少なくとも50体積%、少なくとも65体積%、少なくとも70体積%、少なくとも75体積%、又は更には少なくとも80体積%の熱伝導性フィラーを含む。熱伝導性硬化性組成物に使用するための熱伝導性フィラーの量は、有利には、所望の熱伝導性のレベルに応じて様々かつ適切に選択され得る。
【0099】
一般に、任意の既知の熱伝導性フィラーを使用することができるが、ブレークスルー電圧が懸念される場合には、電気絶縁性フィラーが好ましい場合がある。適している電気絶縁性熱伝導性フィラーとしては、酸化物、水和物、ケイ酸塩、ホウ化物、炭化物、及び窒化物などのセラミックが挙げられる。適している酸化物としては、例えば、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムが挙げられる。適している窒化物としては、例えば、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムが挙げられる。適している炭化物としては、例えば、炭化ケイ素が挙げられる。他の熱伝導性フィラーとしては、例えば、黒鉛、並びにアルミニウム及び銅などの金属が挙げられる。面直方向熱伝導率は、本出願において最も重要である。したがって、いくつかの特定の実施では、非対称繊維、フレーク、又はプレートが、面内方向に整列する傾向があり得るため、概ね対称のフィラー(例えば、球状フィラー)が好ましい場合がある。
【0100】
分散を助け、フィラー担持量を増加させるために、熱伝導性フィラーは表面処理又はコーティングされてもよい。概ね、任意の既知の表面処理及びコーティングが適し得る。
【0101】
本開示の有利な一態様によると、本明細書で使用するための熱伝導性フィラーは、セラミック、金属、黒鉛、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0102】
熱伝導性硬化性組成物は、標的とする用途及び性能属性に応じて、追加成分を有利に含んでもよい。
【0103】
例示的な一態様によると、本開示の熱伝導性硬化性組成物は、可塑剤、難燃剤、及び難燃性可塑剤のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0104】
特定の一態様では、本開示の熱伝導性ギャップ硬化性組成物は、難燃性を提供することができ、したがって、膨張材料(例えば、膨張黒鉛及びリン化合物)を使用し得る固体難燃性添加剤を含んでもよい。他の固体難燃剤添加物としては、水酸化アルミニウム化合物(例えば、三水酸化アルミニウム)及びアンモニウム塩(例えば、テトラフルオロホウ酸アンモニウム及びヘキサフルオロリン酸アンモニウムなど)が挙げられる。特定の固体難燃性材料としては、膨張材料、水酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。具体的には、膨張材料は、リン及び膨張黒鉛からなる群から選択することができる。更に、熱伝導性ギャップフィラーがリン材料である場合、それは、赤リン及び白リンから選択することができる。
【0105】
1つの有利な態様では、リン酸アルキルエステルなどの液体難燃性可塑剤を使用することが有利であり得る。例えば、有用な液体難燃性可塑剤としては、一般式OP(OR)(OR)(OR)を有するものが挙げられ、式中、R、R及びRのそれぞれは、独立して、C~C10脂肪族基(芳香環なし)及びC~C20アリール基、C~C30アルキルアリール基並びにC~C30アリールアルキル基から選択される。
【0106】
1つの特に有利な態様では、本開示の熱伝導性硬化性組成物で使用するための液体難燃性可塑剤は、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートを含む。
【0107】
代替的態様によると、本開示による硬化性組成物は、難燃剤、特に鉱物、有機ハロゲン化合物、及び有機リン化合物に基づく難燃剤を実質的に含まない。
【0108】
1つの有利な態様では、本開示による硬化性組成物は、シリコーン(不活性)流体、特にポリジアルキルシロキサン、より具体的にはポリジメチルシロキサンを更に含む。
【0109】
本開示との関係においては、驚くべきことに、シリコーン流体を熱伝導性硬化性組成物に含めることは、得られる硬化性組成物の硬度を低下させることによって、有利な軟化効果を提供することが実際に見出された。
【0110】
1つの有利な態様によると、本明細書で使用するためのシリコーン流体は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のポリシロキサンオリゴマーバックボーンと(実質的に)同一のポリシロキサンオリゴマーバックボーンを含む。有利には、本明細書で使用するためのシリコーン流体は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のポリシロキサンオリゴマーバックボーンに一般的に結合しているアジリジノ官能性有機部分を含まない。
【0111】
本開示の硬化性組成物中に存在する反応物質及び試薬(特に、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物、硬化系及び熱伝導性フィラー)は、熱伝導性硬化性組成物及び得られる硬化した組成物に期待される標的とする用途及び特性に応じて、任意の適切な量で使用され得る。したがって、様々な反応物質及び試薬のそれぞれの量は、標的とする用途及び予想される性能属性に対して好適に調節及び調整され得る。
【0112】
1つの有利な態様では、本開示の硬化性組成物は、一剤型組成物の形態であって、特に、
a)2~20重量%、2~18重量%、3~18重量%、3~16重量%、4~15重量%、又は更には4~10重量%のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物と、
b)0.2~3重量%、0.2~2.5重量%、0.3~2重量%、0.5~2重量%、0.5~1.8重量%、0.5~1.5重量%、0.6~1.2重量%、又は更には0.8~1.2重量%の硬化系と、
c)50~98重量%、55~98重量%、60~96重量%、70~96重量%、75~96重量%、80~96重量%、又は更には85~95重量%の熱伝導性フィラーと、
d)任意に、1~10重量%、1~9重量%、1.5~8重量%、2~8重量%、2~6重量%、又は更には2~5重量%のシリコーン流体と、
を含む。
【0113】
別の有利な態様によると、本開示の硬化性組成物は、第1の部分及び第2の部分を有する二剤型組成物の形態であり、
a)第1の部分が、硬化系を含み、
b)第2の部分が、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物と、任意にシリコーン流体と、を含むベース成分を含み、
熱伝導性フィラーは、第1の部分及び/又は第2の部分に存在し、第1の部分及び第2の部分は、2つの部分を組み合わせて硬化した組成物を形成するまで分離状態に保たれる。
【0114】
二剤型硬化性組成物は、低温(例えば、室温約23℃)での硬化が標的とされるとき、又は硬化が、高温又は化学線などの実質的なエネルギー入力を伴わずに実施されることが予想されるときに、特に有利である。
【0115】
硬化性組成物の非反応性成分は、2つの部分の間で所望通りに分散されてもよい。本開示の別の態様では、非反応性成分の一部は、両方の部分に存在してもよい。特に粘度整合の観点から、2つの部分の後続の混合がより容易になるように、様々な成分を分配することが望ましい場合がある。
【0116】
本開示の硬化性組成物は、硬化効率、硬化速度、硬化プロファイル調整性に関して卓越した特性及び性能を備えた硬化した組成物の製造に特に適している。したがって、上記の硬化系に基づく硬化性組成物により、広範な特定用途に合わせて調整可能な硬化性組成物のための、強固かつ多用途の硬化ポートフォリオを容易に開発することが可能になる。これらの性能属性は、任意の工業製造プロセス及び加工工程との関係において極めて貴重である。
【0117】
例示的な一態様によると、本開示の熱伝導性硬化性組成物は、72時間以下、48時間以下、又は更には24時間以下の硬化時間後に、23℃で、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化率で硬化可能である。
【0118】
特記のない限り、硬化率及び硬化時間は、当業者に周知のレオロジー及び硬度技術によって測定される。典型的には、上記の値は、23℃で、25mmのプレート/プレートを備えたレオメーターDHR2(TA Instrumentsから入手可能)の振動モード(1Hz)、及びデュロメータ タイプAを用いて測定される。硬化時間開始は、レオメーター曲線においてG’及びG’’が増加し始めたときに示される。硬化時間の終了は、硬化性組成物がその最終硬度の90%に達成したときに記録される。
【0119】
別の例示的な態様によると、本開示の熱伝導性硬化性組成物は、210分以下、180分以下、150分以下、120分以下、100分以下、90分以下、80分以下、70分以下、60分以下、50分以下、40分以下、又は更には30分以下の硬化時間後に、23℃で90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化率で硬化可能である。
【0120】
硬化時間は、標的とする用途及び製造要件に応じて、所望に応じて調整することができる。
【0121】
本開示の有利な態様によると、硬化性組成物は、任意の化学線、特にUV光、又は任意の金属触媒、特に白金触媒を使用せずに硬化可能である。
【0122】
例示的な態様によると、本開示による硬化性組成物は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定したときに、少なくとも0.5W/mK、少なくとも1.0W/mK、少なくとも2.0W/mK、少なくとも3.0W/mK、少なくとも4.0W/mK、少なくとも5.0W/mK、少なくとも6.0W/mK、少なくとも7.0W/mK、少なくとも8.0W/mK、少なくとも9.0W/mK、又は更には少なくとも10W/mKの熱伝導率を有する。
【0123】
別の例示的な態様によると、本開示による熱伝導性硬化性組成物は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定したときに、0.5~10W/mK、1~8W/mK、2~6W/mK、3~5W/mK、又は更には4~5W/mKの熱伝導率を有する。
【0124】
有利な態様によると、硬化性組成物は、実施例セクションに記載の熱重量(TGA)試験方法に従って測定したときに、250℃超、300℃超、350℃超、又は更には400℃超の温度で2重量%未満の質量変動を有する。
【0125】
更に別の有利な態様によると、本明細書に記載の熱伝導性硬化性組成物は、UL-94規格燃焼試験方法に従って測定したときに、V-0に分類される。
【0126】
別の態様では、本開示は、上記の硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化させることによって得られる硬化した組成物に関する。
【0127】
更に別の態様では、本開示は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の自己硬化反応生成物を含む硬化した組成物に関し、自己硬化反応生成物は、実質的に完全に硬化されており、特に、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化率を有する。
【0128】
硬化した組成物の有利な態様によると、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の自己硬化反応生成物は、ポリシロキサンイミン、特に直鎖又は分岐鎖ポリシロキサンエチレンイミンを含む、又はそれからなる。
【0129】
特にカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物、硬化系、熱伝導性フィラー、及び熱伝導性ギャップフィラー組成物に関する特定の態様及び好ましい態様は全て、硬化性組成物との関連において上述したものであり、上記の硬化した組成物に完全に適用可能である。
【0130】
別の態様によると、本開示は、上述の第1の熱伝導性ギャップフィラー組成物の第1の層によって第1のベースプレートに接続された複数の電池セルを含む電池モジュールに関する。
【0131】
更に別の態様では、本開示は、第2の熱伝導性ギャップフィラー組成物の第2の層によって第2のベースプレートに接続された複数の電池モジュールを含む電池サブユニットに関し、各電池モジュールは、第1の熱伝導性ギャップフィラー組成物の第1の層によって第1のベースプレートに接続された複数の電池セルを含み、第1の熱伝導性ギャップフィラー組成物及び第2の熱伝導性ギャップフィラー組成物は独立して選択され、それぞれが上記の熱伝導性ギャップフィラー組成物である。
【0132】
特にカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物、硬化系、熱伝導性フィラー、及び熱伝導性ギャップフィラー組成物に関する特定の態様及び好ましい態様は全て、硬化性組成物との関連において上述したものであり、上記の電池モジュール及び電池サブユニットに完全に適用可能である。
【0133】
本明細書で使用するための好適な電池モジュール、電池サブユニット、及びその製造方法は、例えば、欧州特許第A1-3352290号(Goebら)、特に図1図3及び段落[0016]~[0035]に記載されており、その内容全体を参照により本願に援用する。
【0134】
更に別の態様によると、本開示は、
a)上記の第1の熱伝導性ギャップフィラー組成物の第1の層を第1のベースプレートの第1の表面に適用する工程と、
b)電池セルを第1のベースプレートに接続するために、複数の電池セルを第1の層に取り付ける工程と、
c)第1の熱伝導性ギャップフィラー組成物を硬化させる工程と、
を含む、電池モジュールの製造方法に関する。
【0135】
更に別の態様では、本開示は、
a)上記の第2の熱伝導性ギャップフィラー組成物の第2の層を第2のベースプレートの第1の表面に適用する工程と、
b)電池モジュールを第2のベースプレートに接続するために、複数の電池モジュールを第2の層に取り付ける工程と、
c)第2の熱伝導性ギャップフィラー組成物を硬化させる工程と、を含む、電池サブユニットの製造方法に関する。
【0136】
本開示の更に別の態様では、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分を提供する工程と、
b)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系を提供する工程と、
c)熱伝導性フィラーを提供する工程と、
d)ベース成分と、熱伝導性フィラーと、硬化系とを組み合わせる工程と、
を含む、熱伝導性硬化性組成物の製造方法が提供される。
【0137】
上記の硬化性組成物の製造方法を再現することは、本開示を読む当業者の能力の範囲内である。
【0138】
熱伝導性硬化性組成物の調製方法は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系を溶媒中で溶解する工程と、様々な工程で有利に組み込まれた熱伝導性フィラーの存在下で、溶解した硬化系を、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分と混合する工程と、を含み得る。熱伝導性フィラーは、硬化系をベース成分と混合する前に硬化系と混合されてもよく、又は硬化系をベース成分と混合する前にベース成分と混合されてもよく、又は第1及び第2の量の熱伝導性フィラーが、2つの部分を一緒に混合する前に、硬化系及びベース成分のそれぞれへ混合されてもよい。
【0139】
熱伝導性硬化性組成物、特に二剤型硬化性組成物の製造方法の特定の一態様では、熱伝導性フィラーを、先ず、二剤型硬化性組成物の第1の部分の全ての非反応性液体(例えば、溶媒、液体難燃剤又は分散剤など)と混合して、次いで硬化系と溶媒とをこの混合物に添加し、これにより、二剤型硬化性組成物の第1の部分を形成する。次いで、この第1の部分を、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分を含む第2の部分と組み合わせる。
【0140】
特にカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物、硬化系、熱伝導性フィラー、及び熱伝導性ギャップフィラー組成物に関する特定の態様及び好ましい態様は全て、硬化性組成物との関連において上述したものであり、硬化性組成物の調製方法、電池モジュールの製造方法、及び電池サブユニットの製造方法に完全に適用可能である。
【0141】
なお別の態様では、本開示は、産業用途、特に自動車用途、より特定的には、自動車産業における熱管理用途のための、上記の硬化性組成物又は硬化した組成物の使用に関する。
【0142】
更に別の態様によると、本開示は、熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造のための、上記の硬化性組成物又は硬化した組成物の使用に関する。
【0143】
更に別の態様では、本開示は、複数の電池セルを含む電池モジュールの製造のため、特に自動車産業で使用するための、上記の酸硬化性組成物又は硬化した組成物の使用に関する。
【0144】
更に別の態様では、本開示は、複数の電池セルを含む電池モジュールの製造のため、特に自動車産業で使用するための、硬化性組成物又は硬化した組成物の使用に関する。
【0145】
更に別の態様では、本開示は、熱伝導性硬化性組成物の製造のための、上記のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用に関する。
【0146】
なお別の態様によると、本開示は、特に自動車産業における熱管理用途のための、上記のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用に関する。
【0147】
更に別の態様によると、本開示は、熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造のための、上記のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用に関する。
【0148】
更に別の態様では、本開示は、複数の電池セルを含む電池モジュールの製造のため、特に自動車産業で使用するための、上記のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用に関する。
【0149】
項目1は、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分と、
b)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系と、
c)熱伝導性フィラーと、を含む、
硬化性組成物である。
【0150】
項目2は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、カチオン開環重合によって硬化する、項目1に記載の硬化性組成物である。
【0151】
項目3は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、更に架橋性である、項目1又は2に記載の硬化性組成物である。
【0152】
項目4は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、少なくとも500g/mol、少なくとも1000g/mol、少なくとも1500g/mol、少なくとも2000g/mol、少なくとも2500g/mol、又は更には少なくとも3000g/molの数平均分子量を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0153】
項目5は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、50,000g/mol以下、40,000g/mol以下、30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、又は更には20,000g/mol以下の数平均分子量を有する、項目1~4のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0154】
項目6は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、500~50,000g/mol、500~40,000g/mol、1000~40,000g/mol、1000~30,000g/mol、1000~25,000g/mol、又は更には1000~20,000g/molの数平均分子量を有する、項目1~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0155】
項目7は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、少なくとも1つの環状アミン、好ましくは2つの環状アミンを含む多官能性化合物である、項目1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0156】
項目8は、環状アミンが、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目7に記載の硬化性組成物である。
【0157】
項目9は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、少なくとも2つのアジリジン官能基を含む多官能性化合物である、項目1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0158】
項目10は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、多官能性アジリジン、特に、ビス-アジリジノ化合物である、項目1~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0159】
項目11は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、アジリジノ官能性シリコーン系オリゴマー、特にアジリジノ官能性極性シリコーン系オリゴマーである、項目1~10のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0160】
項目12は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、シリコーン系オリゴマーバックボーン、特にポリシロキサンを含む極性(直鎖又は分岐鎖)シリコーン系オリゴマーバックボーンに基づくアジリジノ官能性化合物である、項目1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0161】
項目13は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、アジリジノ官能性(直鎖又は分岐鎖)ポリシロキサンオリゴマー、特にN-アルキルアジリジノ官能性(直鎖又は分岐鎖)ポリシロキサンオリゴマーである、項目1~12のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0162】
項目14は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(1):
【化24】
[式中、
は、H、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C15アルカリール、C~C15アラルキル又はC~C12シクロアルキルからなる群から選択され、これらの基は、Cl若しくはFによって部分的に、完全に、又は混在する態様で置換されていてもよく、かつ/又はO、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、
は、R及び/又はRの選択からの基であり、
は、SiR 又はSiR であり、
式中、Rは、以下の式(2):
【化25】
を有し、
Aは、(n+1)価の飽和、不飽和、又は芳香族の、直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基であって、O、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、1~18個の炭素原子、又は更には1~12個の炭素原子を含み、
Bは、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Dは、C(O)O、C(O)NR、C(O)、C(O)C(O)、C(O)(CH)m(C(O)、C(S)NR及びCHからなる群から選択され、
Eは、二価の飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基であって、O、N、及びSからなる群からの0~5個のヘテロ原子を含有してもよく、0~18個の炭素原子、又は更には1~12個の炭素原子を含み、
aは、0又は1であり、
fは、2~1000、2~100、又は更には2~50の整数であり、
n及びmは、各々1~10、1~5、又は更には1~3の整数であり、
x、y、及びzは、各々0又は整数のいずれかで、その合計が1~10,000、1~1000、又は更には10~500である]を有する、
項目1~13のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0163】
項目15は、xが0より大きい場合、y又はzはx以下、xの0.05倍以下、又は更にはxの0.02倍であるという制限を有する、項目14に記載の硬化性組成物である。
【0164】
項目16は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、1分子当たり1~10個のN-アルキルアジリジノ基を含む、項目14又は15に記載の硬化性組成物である。
【0165】
項目17は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、250~25,000g/当量、又は更には400~10,000g/当量の範囲のアジリジノ当量を有する、項目14~16のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0166】
項目18は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(3):
【化26】
を有し、これは、
xが、0~500の整数であり、R=SiR
y、z=0、及びf=2である式(1)の化合物に相当する、
項目14~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0167】
項目19は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、式(3)[式中、Rはメチルであり、Rはメチルである]の化合物に相当する式を有する、項目18に記載の硬化性組成物である。
【0168】
項目20は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(4):
【化27】
を有するN-アルキルプロピレンイミン誘導体であり、
これは式(1)[式中、
Aは(CHであり、BはNHであり、DはC(O)C(O)NHであり、Eは1,3-プロパンジイルであり、
wは1~10の整数である]の化合物に相当する、
項目14~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0169】
項目21は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(5):
【化28】
を有するN-アルキルブチレンイミン誘導体であり、
これは式(1)[式中、
Aは(CHであり、BはNHであり、DはC(O)C(O)NHであり、Eは1,3-ブタンジイルであり、
wは1~10の整数である]の化合物に相当する、
項目14~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0170】
項目22は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、以下の式(6):
【化29】
[式中、
及びRは、式(1)で定義されたとおりであり、
xは、1~10,000、1~1000、又は更には10~500の範囲の整数であり、特にxは、カチオン性シリコーン系自己硬化性オリゴマー化合物の計算された数平均分子量が1000~20,000g/molの範囲であるように選択される]を有する、
項目1~21のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0171】
項目23は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、式(6)[式中、Rはメチルであり、Rはメチルである]の化合物に相当する式を有する、項目22に記載の硬化性組成物である。
【0172】
項目24は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系が、特に90℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は更には15℃以下である温度T1で開始される、項目1~23のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0173】
項目25は、温度T1が、-10℃~85℃、0℃~80℃、5℃~60℃、5℃~50℃、10~40℃、又は更には15~35℃の範囲である、項目24に記載の硬化性組成物である。
【0174】
項目26は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系が、アニオンと、カチオンとしてのアンモニウムと、を含むイオン性化合物を含む、項目1~25のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0175】
項目27は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系が、アニオンと、カチオンとしてのアミニウムイオンと、を含むイオン性化合物を含む、項目1~25のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0176】
項目28は、イオン性化合物が、酸生成化合物、特にプロトン化剤である、項目26又は27に記載の硬化性組成物である。
【0177】
項目29は、カチオン自己硬化性オリゴマー化合物のための硬化系が、ブレンステッド酸又はブレンステッド酸の前駆体によるアンモニアのプロトン化から生じる、項目26又は28に記載の硬化性組成物である。
【0178】
項目30は、イオン性化合物のアニオンが、ブレンステッド酸又はブレンステッド酸の前駆体の脱プロトン化から生じる、項目26~29のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0179】
項目31は、ブレンステッド酸が、2.5以下のpKaを有する、項目29又は30に記載の硬化性組成物である。
【0180】
項目32は、ブレンステッド酸が、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、テトラフルオロホウ酸、スルホン酸、ホスホン酸、フッ素化有機酸、ポリマー酸、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目29~31のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0181】
項目33は、ブレンステッド酸が、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、スルホン酸、飽和カルボン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目29~31のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0182】
項目34は、スルホン酸が、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、フルオロアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目32又は33に記載の硬化性組成物である。
【0183】
項目35は、スルホン酸が、p-トルエンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メチルスルホン酸、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される、項目32~34のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0184】
項目36は、イオン性化合物のアニオンが、低配位性及び非配位性アニオン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目26~35のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0185】
項目37は、イオン性化合物のアニオンが、低求核性アニオンからなる群から選択される、項目26~35のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0186】
項目38は、イオン性化合物のアニオンが、PF 、BF 、SbF 、AsF 、及びSbFOHからなる群から選択される、項目26~35のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0187】
項目39は、イオン性化合物のアニオンが、PF 及びBF からなる群から選択される、項目26~35のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0188】
項目40は、イオン性化合物が、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムからなる群から選択され、特にヘキサフルオロリン酸アンモニウムである、項目26又は28~39のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0189】
項目41は、イオン性化合物のアミニウムイオンが、N-置換(有機)アミン、特に一級(有機)N-置換アミン、二級(有機)N-置換アミン、又は三級(有機)N-置換アミンのプロトン化から生じる、項目27~39のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0190】
項目42は、N-置換(有機)アミンが、少なくとも7以上のpKaを有する、項目40に記載の硬化性組成物である。
【0191】
項目43は、イオン性化合物のアミニウムイオンが、一級アミニウムカチオン、二級アミニウムカチオン、三級アミニウムカチオン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される、項目41又は42に記載の硬化性組成物である。
【0192】
項目44は、イオン性化合物のアミニウムイオンが、二級アミニウムカチオン、三級アミニウムカチオン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される、項目41~43のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0193】
項目45は、イオン性化合物のアミニウムイオンが、三級アミニウムカチオン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される、項目41~44のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0194】
項目46は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系が、項目30~34のいずれか一項の定義による少なくとも1つのブレンステッド酸又はブレンステッド酸の前駆体と、少なくとも1つの制酸作用化合物とを含む、項目1~25のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0195】
項目47は、制酸作用化合物が、アルミニウム、クロム、銅、ゲルマニウム、マンガン、鉛、アンチモン、テルル、チタン又は亜鉛の元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はカルボン酸塩、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目46に記載の硬化性組成物である。
【0196】
項目48は、制酸作用化合物が、酸化亜鉛を含むように選択され、ブレンステッド酸は、特に、スルホン酸からなる群から、より具体的には、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から、選択される、項目46又は47に記載の硬化性組成物である。
【0197】
項目49は、制酸作用化合物が、酸化亜鉛を含むように選択され、ブレンステッド酸が、p-トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸からなる群から選択され、特にp-トルエンスルホン酸である、項目48に記載の硬化性組成物である。
【0198】
項目50は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系が、p-トルエンスルホン酸亜鉛を含む、項目1~49のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0199】
項目51は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物のための硬化系が、水を更に含む、項目1~50のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0200】
項目52は、熱伝導性ギャップフィラー組成物である、項目1~51のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0201】
項目53は、硬化性組成物の総体積に基づいて、少なくとも30体積%、少なくとも50体積%、少なくとも65体積%、少なくとも70体積%、少なくとも75体積%、又は更には少なくとも80体積%の熱伝導性フィラーを含む、項目1~52のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0202】
項目54は、熱伝導性フィラーが、セラミック、金属、黒鉛、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~53のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0203】
項目55は、シリコーン(不活性)流体、特にポリジアルキルシロキサン、より具体的にはポリジメチルシロキサンを更に含む、項目1~54のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0204】
項目56は、
a)2~20重量%、2~18重量%、3~18重量%、3~16重量%、4~15重量%、又は更には4~10重量%のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物と、
b)0.2~3重量%、0.2~2.5重量%、0.3~2重量%、0.5~2重量%、0.5~1.8重量%、0.5~1.5重量%、0.6~1.2重量%、又は更には0.8~1.2重量%の硬化系と、
c)50~98重量%、55~98重量%、60~96重量%、70~96重量%、75~96重量%、80~96重量%、又は更には85~95重量%の熱伝導性フィラーと、
d)任意に、1~10重量%、1~9重量%、1.5~8重量%、2~8重量%、2~6重量%、又は更には2~5重量%のシリコーン流体と、
を含む、項目1~55のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0205】
項目57は、第1の部分及び第2の部分を有する二剤型組成物の形態であり、
a)第1の部分が、硬化系を含み、
b)第2の部分が、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物と、任意にシリコーン流体と、を含むベース成分を含み、
熱伝導性フィラーは、第1の部分及び/又は第2の部分に存在し、第1の部分及び第2の部分は、2つの部分を組み合わせて硬化した組成物を形成するまで分離状態に保たれる、
項目1~56のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0206】
項目58は、72時間以下、48時間以下、又は更に24時間以下の硬化時間後に、23℃で、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化率で硬化可能である、項目1~57のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0207】
項目59は、210分以下、180分以下、150分以下、120分以下、100分以下、90分以下、80分以下、70分以下、60分以下、50分以下、40分以下、又は更には30分以下の硬化時間後に、23℃で90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化率で硬化可能である、項目1~58のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0208】
項目60は、任意の化学線、特にUV光、又は任意の金属触媒、特に白金触媒を使用せずに硬化可能である、項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0209】
項目61は、難燃剤、特に鉱物、有機ハロゲン化合物、及び有機リン化合物に基づく難燃剤を実質的に含まない、項目1~60のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0210】
項目62は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定したときに、少なくとも0.5W/mK、少なくとも1.0W/mK、少なくとも2.0W/mK、少なくとも3.0W/mK、少なくとも4.0W/mK、少なくとも5.0W/mK、少なくとも6.0W/mK、少なくとも7.0W/mK、少なくとも8.0W/mK、少なくとも9.0W/mK、又は更には少なくとも10W/mKの熱伝導率を有する、項目1~61のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0211】
項目63は、実験セクションに記載の試験方法に従って測定したときに、0.5~10W/mK、1~8W/mK、2~6W/mK、3~5W/mK、又は更には4~5W/mKの熱伝導率を有する、項目1~62のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0212】
項目64は、実施例セクションに記載の熱重量(TGA)試験方法に従って測定しときに、250℃超、300℃超、350℃超、又は更には400℃超の温度で2重量%未満の質量変動を有する、項目1~63のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0213】
項目65は、UL-94規格燃焼試験方法に従って測定したときに、V-0に分類される、項目1~64のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
【0214】
項目66は、項目1~65のいずれか一項に記載の硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化させることによって得られうる(部分的又は完全に)硬化した組成物である。
【0215】
項目67は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の自己硬化反応生成物が、実質的に完全に硬化されており、特に、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化率を有する、項目66に記載の(部分的又は完全に)硬化した組成物である。
【0216】
項目68は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の自己硬化反応生成物が、ポリシロキサンイミン、特に直鎖又は分岐鎖ポリシロキサンエチレンイミンを含む、又はそれからなる、項目66又は67に記載の(部分的又は完全に)硬化した組成物である。
【0217】
項目69は、項目1~68のいずれか一項に記載の第1の硬化性(ギャップフィラー)組成物の第1の層によって第1のベースプレートに接続された複数の電池セルを含む電池モジュールである。
【0218】
項目70は、第2の硬化性(ギャップフィラー)組成物の第2の層によって第2のベースプレートに接続された複数の電池モジュールを含む電池サブユニットであって、各電池モジュールが、第1の硬化性(ギャップフィラー)組成物の第1の層によって第1のベースプレートに接続された複数の電池セルを含み、第1の硬化性(ギャップフィラー)組成物及び第2の硬化性(ギャップフィラー)組成物が独立して選択され、それぞれが項目1~69のいずれか一項に記載の熱伝導性硬化性(ギャップフィラー)組成物である、電池サブユニットである。
【0219】
項目71は、
a)項目1~70のいずれか一項に記載の第1の硬化性(ギャップフィラー)組成物の第1の層を、第1のベースプレートの第1の表面に適用する工程と、
b)電池セルを第1のベースプレートに接続するために、複数の電池セルを第1の層に取り付ける工程と、
c)第1の硬化性(ギャップフィラー)組成物を硬化させる工程と、を含む電池モジュールの製造方法である。
【0220】
項目72は、
a)項目1~71のいずれか一項に記載の第2の硬化性(ギャップフィラー)組成物の第2の層を、第2のベースプレートの第1の表面に適用する工程と、
b)電池モジュールを第2のベースプレートに接続するために、複数の電池モジュールを第2の層に取り付ける工程と、
c)第2の硬化性(ギャップフィラー)組成物を硬化させる工程と、を含む電池サブユニットの製造方法である。
【0221】
項目73は、
a)カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物を含むベース成分を提供する工程と、
b)カチオン自己硬化性オリゴマー化合物のための硬化系を提供する工程と、
c)熱伝導性フィラーを提供する工程と、
d)ベース成分と、熱伝導性フィラーと、硬化系とを組み合わせる工程と、を含む硬化性組成物の製造方法である。
【0222】
項目74は、カチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物が、項目1~23のいずれか一項に記載のとおりである、項目73に記載の方法である。
【0223】
項目75は、硬化系が、項目24~51のいずれか一項に記載のとおりである、項目73又は74に記載の方法である。
【0224】
項目76は、産業用途、特に自動車用途、より具体的には、自動車産業における熱管理用途のための、項目1~65のいずれか一項に記載の硬化性組成物又は項目66~68のいずれか一項に記載の(部分的又は完全に)硬化した組成物の使用である。
【0225】
項目77は、熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造のための、項目1~65のいずれか一項に記載の硬化性組成物又は項目66~68のいずれか一項に記載の(部分的又は完全に)硬化した組成物の使用である。
【0226】
項目78は、複数の電池セルを含む電池モジュールの製造のため、特に自動車産業で使用するための、項目1~65のいずれか一項に記載の硬化性組成物又は項目66~68のいずれか一項に記載の(部分的又は完全に)硬化した組成物の使用である。
【0227】
項目79は、硬化性組成物の製造のための、項目1~23のいずれか一項に記載のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用である。
【0228】
項目80は、特に自動車産業における熱管理用途のための、項目1~23のいずれか一項に記載のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用である。
【0229】
項目81は、熱伝導性ギャップフィラー組成物の製造のための、項目1~23のいずれか一項に記載のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用である。
【0230】
項目82は、複数の電池セルを含む電池モジュールの製造のため、特に自動車産業で使用するための、項目1~23のいずれか一項に記載のカチオン自己硬化性シリコーン系オリゴマー化合物の使用である。
【実施例
【0231】
以下の実施例により本開示を更に説明する。これらの実施例は、単に例示目的のみのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0232】
試験方法
1)熱伝導率測定
硬化した組成物の熱伝導率は、ASTM E1461/DIN EN821(2013)に従って、Netzsch Hyperflash LFA467(Netzsch,Selb,Germany)でフラッシュ分析法を使用して測定する。2枚のPET剥離ライナーの間に硬化性組成物をナイフコーターでコーティングし、室温で硬化させることによって、1mm厚の試料を調製する。この試料を、次いで、試料ホルダーに適合するように、ナイフカッターを用いて10mm×10mmの正方形に注意深く切断する。測定前に、試料の両側に、グラファイト(GRAPHIT33、Kontakt Chemie)の薄層をコーティングする。測定では、光のパルス(キセノンフラッシュランプ、230V、20~30マイクロ秒の持続時間)を試料の底側に照射した後、上側の温度を、InSb IR検出器によって測定する。次いで、Cowan法を使用することによって、サーモグラムのフィッティング(fit)から拡散率を計算する。各試料について、23℃で3回の測定を行う。各配合物について、3つの試料を調製し、測定する。熱伝導率は、各試料の熱拡散率、密度、及び比熱容量から計算する。標準試料(Polyceram)と組み合わせてNetzsch-LFA Hyper Flashを使用して、ジュール毎グラム毎ケルビンで、熱容量(Cp)を計算した。密度(d)は、試料の重量及び幾何学的寸法に基づいてグラム毎立方センチメートルで特定した。これらのパラメータを使用して、熱伝導率(L)は、L=a・d・Cpに従って、ワット毎メートル・ケルビンで計算する。
【0233】
2)熱重量分析(TGA)
TGAは、TA instrumentsのDiscovery TGAで実施する。空気又は窒素を、流動ガスとして使用する。試料を40℃で平衡化し、次いで温度を10℃/分の速度で900℃まで上昇させる。各試料を2回分析する。
【0234】
3)硬度
組成物の硬度は、ASTM D2240に従ってデュロメータ タイプAで測定する。試料サイズは、6mm厚で10mm×10mmの正方形である。圧子の荷重は12.5Nである。
【0235】
4)燃焼試験
試験は、UL-94規格(装置及び器具部品用プラスチック材料の燃焼性の安全性試験に関する規格)を使用して実施する。UL-94規格は、米国のUnderwriters Laboratoriesによって発表されたプラスチックの燃焼性規格である。この規格は、試験片が発火した際に材料が炎を消火するか又は広げる傾向があるかどうかを決定する。UL-94規格は、IEC60707、60695-11-10及び60695-11-20並びにISO9772及び9773と整合している。1mm厚で7.5mm×15mmシートのサイズの試料を、2cm、50Wのチリルバーナー火炎に曝露する。試験試料を、試験火炎が試料の底部に当たる状態で、火炎の上に水平に配置する。各試料について、消火までの時間を測定し、V等級をつける。下記表1に示すように、V等級は、試料がクランプ上端まで燃焼しないか、又は綿指標を発火させ得る溶融材料を落下しない状態で消火するまでの時間の尺度である。
【0236】
【表1】
【0237】
原材料:
実施例では、以下の原材料を使用する。
AZISi3K(AZS-3)は、約3000g/molの数平均分子量を有するN-アルキルビスアジリジノ官能性シリコーン系オリゴマーであり、3M Company,USAから入手することができる。
AZISi14K(AZS-14)は、約14,000g/molの数平均分子量を有するN-アルキルビスアジリジノ官能性シリコーン系オリゴマーであり、3M Company,USAから入手することができる。
AZISi40K(AZS-40)は、約40,000g/molの数平均分子量を有するN-アルキルビスアジリジノ官能性シリコーン系オリゴマーであり、3M Company,USAから入手することができる。
APregon4(AP-4)は、約4400g/molの数平均分子量を有するプロピレングリコールビスアジリジノ官能性オリゴマーであり、3M Company,USAから入手することができる。
Silgel612B(SG-612B)は、Wackerから市販されている付加型シリコーン油である。
Acclaim4200(A-4200)は、Covestroから市販されている直鎖ポリプロピレンエーテルポリオールである。
EOx200D(EO-200)は、Wackerから入手することができる不活性オキサレート官能性シリコーン流体である。
Santicizer141(S-141)は、Valtrisから市販されている、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートの難燃剤である。
Disperbyk-145(D-145)は、Bykから市販されている、高分子量コポリマーのリン酸エステル塩の分散剤である。
亜鉛トシレート(ZnTs)は、3M Company,USAから入手することができる硬化剤である。
p-トルエンスルホン酸(TsOH)は、Sigma-Aldrichから入手される。
Silatherm advance 1438-800 EST(ZnO)は、Quarzwerke GmbHから市販されている酸化亜鉛に基づくフィラー材料である。
Martoxid TM1250は、Huberから市販されている、アルミナの熱伝導性フィラーである。
BAK10は、Bestryから市販されている、球状アルミナの熱伝導性フィラーである。
BAK70は、Bestryから市販されている、球状アルミナの熱伝導性フィラーである。
【0238】
実施例:
例示的な熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例1)の一般的な調製方法
例示的な熱伝導性ギャップフィラー組成物を、二剤型配合物(A剤及びB剤)として調製する。B剤は、N-アルキルビスアジリジノ官能性シリコーン系オリゴマーを含有する。
【0239】
B剤の調製
B剤は、スピードミキサー容器内で7.6gのAZS-40を、2.3gのA-4200及び0.16gのD-145と混合することで調製し、3000rpmで30秒間撹拌する。次いで、を添加する。次いで、54.0gのBAK70、18.0gのBAK10、及び18.0gのTM1250を連続工程で添加し、混合する。次いで、材料を脱気して、空気の取り込みを回避する。
【0240】
A剤の調製
先ず、171gのS-141と、17.75gのZnOとを、高剪断スピードミキサーDispermat内で混合することによってプレミックスを調製し、3000rpmで5分間撹拌する。次いで、6gのp-トルエンスルホン酸一水和物を添加し、1000rpmで撹拌する。混合物を3000rpmで5分間更に撹拌する。次いで、3.3gの脱イオン水を添加し、混合物を2500rpmで更に10分間撹拌する。次いで、混合物を、80℃の油浴中で1時間撹拌して、プレミックスを得る。A剤は、スピードミキサー容器内で10.68gのプレミックスを0.019gのD-145と混合することによって調製し、この混合物を2500rpmで20秒間撹拌する。次いで、53.6gのBAK70、17.9gのBAK10、及び17.9gのTM1250を三連続工程で添加し、手で撹拌する。
【0241】
熱伝導性ギャップフィラー組成物は、3gのA剤と、3.12gのB剤とを、空気の混入を回避するためにかき取り運動を使用して1分間混合することによって調製する。ギャップフィラー組成物を、2枚のPET剥離ライナー間にナイフコーターでコーティングし、室温で硬化して、分析に使用されるギャップフィラーを得る。
【0242】
試験のための例示的な熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例2~5)及び比較例CE1~CE5の一般的な調製方法:
他の例示的な熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例2~5)は、単純化された二剤型ギャップフィラー組成物であり、ZnTsがin-situで調製されず、水への分散液としてA剤に直接添加されることを除いて、上記のように調製する。比較用熱伝導性ギャップフィラーの完全組成物CE1、並びに他の比較用の単純化されたギャップフィラー組成物(CE2~CE5)は、AZS-40の代わりにAPregon4(CE1~CE3及びCE5)又はSilgel 612B(CE4)を使用したことを除いて、上記の手順に従って調製する。例示的な配合物の配合を表2に示す。表中、全ての値はグラム単位で与えられている。例示的及び比較用ギャップフィラー組成物は、典型的には、A剤とB剤とを1:1の質量比で1分間混合することで得る。
【0243】
【表2】
【0244】
耐高温性能
実施例1及び比較例CE1の組成物の耐高温性能を、TGA測定によって評価する。性能結果を、表3に示す。
【0245】
【表3】
【0246】
表3に示す結果から分かるように、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例1)は、高温における分解に対する耐性が、比較用ポリエーテル系組成物(CE1)よりもはるかに優れる。
【0247】
加工性性能
熱伝導性フィラーの担持量が高い実施例3及び比較例CE3及びCE4の組成物の加工性性能を、目視観察によって評価する。目視観察は、同様の熱伝導性フィラー担持量(80体積%)で、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例3)は、なお均質なペースト状組成物を形成するが、比較組成物(CE3及びCE4)は非流動性材料を形成することを示す。
【0248】
熱伝導率性能
実施例2及び実施例3及び比較例CE2及びCE3の組成物の熱伝導率性能は、フラッシュ分析法によって特定する。性能結果を、表4に示す。
【0249】
【表4】
【0250】
表4に示す結果から分かるように、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例2及び実施例3)は、比較組成物(CE2及びCE3)と比較して、同様の熱伝導性フィラー担持量において、熱伝導率に関して改善された性能及び特性を提供する。
【0251】
柔軟性性能
実施例4及び実施例5及び比較例CE2及びCE5の組成物の柔軟性性能は、硬度測定によって特定する。実験はまた、異なる流体の組み込みによってもたらされる柔軟性効果も比較する。性能結果を、表5に示す。
【0252】
【表5】
【0253】
表5に示す結果から分かるように、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例4)は、比較例(CE2)と比較したときに、初期の改善された柔軟性を提供する。更に、結果は、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例5)が、同様の重量パーセントの適切な不活性流体を使用した場合、比較組成物(CE5)と比較して、改善された柔軟性増加を提供することを示す。
【0254】
エージング後安定性性能
様々なエージング条件における実施例4及び比較例CE2の組成物の安定性を、硬度変動測定によって試験する。性能結果を、表6に示す。
【0255】
【表6】
【0256】
表6に示す結果から分かるように、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例4)は、比較組成物(CE2)と比較して、改善されたエージング後安定性を提供する。
【0257】
燃焼性能
様々なエージング条件における実施例2及び比較例CE2の組成物の燃焼性性能を、様々な態様において試験する。性能結果を表7に示す。
【0258】
【表7】
【0259】
表7に示す結果から分かるように、本開示による熱伝導性ギャップフィラー組成物(実施例2)は、燃焼試験に合格しない比較組成物(CE2)と比較して、改善された燃焼特性を提供し、様々なエージング条件でV-0評価を得る。
【国際調査報告】