(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】注射器センタリング機能及び分解防止機能付き針用安全デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61M5/32 510K
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022525743
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2020080574
(87)【国際公開番号】W WO2021084099
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520153257
【氏名又は名称】テック グループ ヨーロッパ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Tech Group Europe Ltd.
【住所又は居所原語表記】Damastown Close,Mulhuddart,DK 15009 Dublin,Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】マケルロイ・テリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー・カール
(72)【発明者】
【氏名】ダウリング・パトリック
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF03
4C066HH02
4C066HH12
4C066LL22
4C066LL26
(57)【要約】
【課題】注射器の針用の安全デバイスを、自然な、又は偶発的な分解を防止するように構成する。
【解決手段】注射器用のある安全デバイスが提供される。この安全デバイスはハウジングと針シールドとを備えている。ハウジングの本体は、注射器を収容するように構成されている。ハウジングのフランジ支持体は、注射器のフランジを支持してハウジングに対する注射器の遠位側への移動を防止し、又は制限するように構成されている。針シールドは、ハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置されているスリーブを含み、これにより、針の先端部を覆う前進位置と、その先端部を露出させる後退位置との間でハウジングの外周側を滑動可能である。この安全デバイスは注射器センタリング機能及び/又は分解防止機能を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器(1)用の安全デバイス(2)であって、注射器用のハウジング(120)と針シールド(22)とを備え、
前記ハウジング(120)は、
注射器(1)を収容するように構成されている実質的に筒状の部分を含む本体(122)と、
前記ハウジング(120)に挿入された前記注射器(1)のフランジ(16)を支持して、前記ハウジング(120)に対する前記注射器(1)の軸方向への移動を制限するように構成されているフランジ支持体(130)と
を有し、
前記針シールド(22)は、
前記ハウジング(120)に対して望遠鏡のように伸縮可能に配置されているスリーブ
を含み、かつ、
前記針シールド(22)の内径が前記ハウジング(120)の外径よりも大きいことにより、前記注射器(1)の針の先端部を露出させる後退位置と、前記針の先端部を覆う前進位置との間で前記ハウジングの外周側を滑動可能であり、
前記本体(122)が、
前記本体(122)に切り欠き又は溝を含む線路(136)
を含み、
前記針シールド(22)が、
前記線路(136)に収容され、前記針シールド(22)が前記後退位置と前記前進位置との間で移動するにつれて、前記線路(136)の第1の端部から前記線路(136)の第2の端部まで前記線路(136)に沿って移動するように構成されているピン(240)
を含み、
前記本体(122)が更に、
近位側ラッチ面(154)と遠位側ラッチ面(156)とを含むロック用凹部(152)
を含み、
前記針シールド(22)が更に、
近位側制止面(252)と遠位側制止面(254)とを含むラッチアーム(250)
を含み、
前記針シールド(22)が前進位置にあるときに前記ラッチアーム(250)が前記ロック用凹部(152)に引っ掛かり、前記近位側制止面(252)が前記近位側ラッチ面(154)と接触することによって前記ハウジング(120)に対する前記針シールド(22)の近位側への移動が制限され、前記遠位側制止面(254)が前記遠位側ラッチ面(156)と接触することによって前記ハウジング(120)に対する前記針シールド(22)の遠位側への移動が制限される
ことを特徴とする安全デバイス(2)。
【請求項2】
前記遠位側制止面(254)が、前記ハウジング(120)の中心を通る縦軸(X-X)に対して傾斜しており、前記遠位側制止面(254)と前記縦軸(X-X)との間に鈍角が形成されている、請求項1に記載の安全デバイス(2)。
【請求項3】
前記遠位側ラッチ面(156)が、前記ハウジング(120)の中心を通る縦軸(X-X)に対して傾斜しており、前記遠位側ラッチ面(156)と前記縦軸(X-X)との間に鋭角が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の安全デバイス(2)。
【請求項4】
前記近位側制止面(252)が前記ハウジング(120)の縦軸に対して傾斜しており、前記近位側制止面(252)と前記ハウジング(120)の中心を通る縦軸との間に鈍角が形成されている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項5】
前記近位側ラッチ面(154)が前記ハウジング(120)の縦軸に対して傾斜しており、前記近位側ラッチ面(154)と前記縦軸(X-X)との間に鋭角が形成されている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項6】
前記ピン(240)が、前記ピン(240)と前記安全デバイス(22)の壁部との間に返しを含む、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項7】
前記返しが、前記縦軸(X-X)に対して傾斜している前記ピン(240)の遠位面を設けることによって形成されており、前記ピン(240)の遠位面と前記縦軸(X-X)との間に鈍角が形成されている、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項8】
前記線路(136)が、
近位側を向いており、前記縦軸に対して傾斜している遠位端壁部(136a)
を含み、
前記遠位端壁部(136a)と前記縦軸(X-X)との間に鋭角が形成されている、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項9】
前記針シールド(22)が、
各々が対応するロック用凹部(152)に引っ掛かるように構成されている複数のラッチアーム(250)
を含む、請求項1に記載の安全デバイス(2)。
【請求項10】
前記複数のラッチアーム(250)が、直径を挟んで向かい合う2本のラッチアーム(250)を含む、請求項2に記載の安全デバイス(2)。
【請求項11】
各ラッチアーム(250)は、前記ピン(240)が前記線路(136)の第2の端部に位置するときに前記対応するロック用凹部(152)に引っ掛かるように構成されている、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項12】
各ラッチアーム(250)は弾性変形が可能であり、
前記ハウジング(120)は、前記針シールド(22)が前記後退位置から前記前進位置まで移動するにつれて前記ラッチアーム(250)を曲げるように構成されている、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項13】
注射器用の安全デバイス(2)を分解から守る方法であって、
注射器用のハウジング(120)に取り付けられた注射器(1)の針を針シールド(22)が覆う前進位置まで、前記針シールド(22)を前記ハウジング(120)に対して遠位側へ前進させるステップと、
前記前進位置まで前記針シールド(22)を前進させることにより、前記針シールド(22)に設けられている、近位側制止面(252)と遠位側制止面(254)とを含む可撓性ラッチアーム(250)を、前記ハウジング(120)に設けられている、近位側ラッチ面(154)と遠位側ラッチ面(156)とを含むロック用凹部(152)に引っ掛けるステップと、
前記前進位置まで前記針シールド(22)を前進させることにより、前記針シールド(22)に設けられているピン(240)を、前記ハウジング(120)に設けられている線路(136)に沿って前記線路(136)の遠位端部へ移動させるステップと、
前記近位側制止面(252)を前記近位側ラッチ面(154)と接触させることによって前記ハウジング(120)に対する前記針シールド(22)の近位側への移動を制限するステップと、
前記針シールド(22)が前記前進位置にあるときに、前記遠位側制止面(254)を前記遠位側ラッチ面(156)と接触させることによって前記ハウジング(120)に対する前記針シールド(22)の遠位側への移動を制限するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記ピン(240)を前記線路(136)の端壁部(136a)に引っ掛けるステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
注射器(1)用の安全デバイス(2)を製造する方法であって、
注射器(1)を収容するように構成されている本体(122)と、
前記注射器(1)のフランジ(16)を支持して前記ハウジング(120)に対する前記注射器(1)の軸方向への移動を制限するように構成されているフランジ支持体(130)と
を含む注射器用のハウジング(120)
を有する第1の部分を成型するステップと、
ピン(240)を収容するように構成されている線路(136)と、
近位側ラッチ面(154)及び遠位側ラッチ面(156)を含むロック用凹部(152)と
を前記本体(122)に形成するステップと、
前記本体(122)の外径よりも内径が大きいスリーブ
を含む針シールド(22)
を有する第2の部分を成型し、
前記線路(136)に収容されるように構成されているピン(240)と、
近位側制止面(252)及び遠位側制止面(254)を含むラッチアーム(250)と
を前記第2の部分に形成するステップと、
前記ラッチアーム(250)に対し、前記ラッチアーム(250)が前記ロック用凹部(152)に引っ掛かる前進位置へ向かうように力を加え、前記近位側制止面(252)を前記近位側ラッチ面(154)と接触させることによって前記ハウジング(120)に対する前記針シールド(22)の近位側への移動を制限し、前記遠位側制止面(254)を前記遠位側ラッチ面(156)と接触させることによって前記ハウジング(120)に対する前記針シールド(22)の遠位側への移動を制限するステップと、
前記針シールド(22)を前記ハウジング(120)に組み合わせて、前記ハウジング(120)に対して望遠鏡のように伸縮可能に配置し、かつ、後退位置と前記前進位置との間で前記ハウジング(120)の外周側を滑動可能にし、前記ピン(240)を前記線路(136)の中に設置するステップと、
前記ハウジング(120)と前記針シールド(22)との間に付勢要素(24)を配置して、前記針シールド(22)に対して前記前進位置へ向かうように力を加えさせるステップと、
前記付勢要素(24)を圧縮して前記針シールド(22)を後退位置に固定するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記ラッチアームの遠位側制止面(254)と、
前記ピン(240)の遠位面と、
前記ロック用凹部(152)の遠位側ラッチ面(156)と、
前記線路(136)の端壁部の表面(136a)と
のうち少なくとも1つが前記ハウジング(120)の前記縦軸(X-X)に対して傾斜している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
注射器(1)用の安全デバイス(2)であって、注射器用のハウジング(120)と針シールド(22)とを備え、
前記ハウジング(120)が、
注射器(1)を収容するように構成されている実質的に筒状の部分を含む本体(122)と、
前記注射器(1)のフランジ(16)を支持するように構成されているフランジ支持体(130)と
を有し、
前記フランジ支持体(130)は、
前記ハウジングに対する前記注射器の近位側への移動を制限する第1の接触面と、
前記ハウジングに対する前記注射器(1)の遠位側への移動を制限するように構成されている第2の接触面と
を含み、
前記針シールド(22)は、
前記ハウジング(120)に対して望遠鏡のように伸縮可能に配置されているスリーブ
を含み、かつ、
前記針シールド(22)の内径が前記ハウジング(120)の外径よりも大きいことにより、前記注射器(1)の針の先端部を露出させる後退位置と、前記注射器(1)の針の先端部を覆う前進位置との間で前記ハウジング(120)の外周側を滑動可能であり、
前記ハウジング(120)は更に、
各々が第1の位置へ向かうように力を受けている複数の弾性変形可能なアーム(200)
を含み、
前記第1の位置では、前記複数のアーム(200)の各々が内側の接触面(202)を前記実質的に筒状の部分の内面の内周側に配置して、前記ハウジング(120)の内部に狭窄部を形成し、
前記複数のアーム(200)は、前記注射器(1)が前記ハウジング(120)に挿入されるときに、前記注射器(1)によって前記第1の位置から外周側へ曲がるように構成されており、
前記複数のアーム(200)の内側の接触面(202)が前記ハウジング(120)の近位端と遠位端との中間に位置する
ことを特徴とする安全デバイス(2)。
【請求項18】
前記複数のアーム(200)の各々が、前記ハウジングの本体に接続されている固定端から自由端まで伸びている片持ち梁部を含む、請求項17に記載の安全デバイス(2)。
【請求項19】
前記片持ち梁部(200)の固定端が前記自由端の遠位側に位置する、請求項17又は請求項18に記載の安全デバイス(2)。
【請求項20】
前記本体が、前記実質的に筒状の部分の壁に形成されている複数の窓又は切り欠きを含み、前記複数のアームの各々が1つの窓又は切り欠きに配置されている、請求項17から請求項19までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項21】
直径を挟んで向かい合う2本のアームを備えている、請求項17から請求項20までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項22】
前記片持ち梁部(200)の縦断面が湾曲した輪郭を含み、前記輪郭では、各アームの第1の部分が内側へ湾曲して前記ハウジングの縦軸へ向かい、各アームの第2の部分が外側へ湾曲して前記縦軸から離れており、
各アームの接触面が当該アームの湾曲の変曲点に位置する、
請求項17から請求項21までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項23】
手で操作されるプランジャを更に備えている、請求項1から請求項12までのいずれか一項、又は請求項17から請求項22までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項24】
前記針シールド(22)に対して前記前進位置へ向かうように力を加えるように構成されている付勢要素(24)を更に備えている、請求項1から請求項12までのいずれか一項、又は請求項17から請求項22までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項25】
前記ハウジングと前記複数のアーム(200)とが単一の成型部品として形成されている、請求項17から請求項24までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項26】
前記複数のアーム(200)は、注射器のシリンダに対し、前記シリンダの縦軸が前記ハウジングの縦軸と一致する位置へ向かうように力を加えることにより、前記シリンダを前記ハウジングの内部の中心に置くように構成されている、請求項17から請求項25までのいずれか一項に記載の安全デバイス(2)。
【請求項27】
請求項1から請求項26までのいずれか一項に記載の安全デバイスと、
前記ハウジング(120)に挿入されている注射器と
を備えている注射装置。
【請求項28】
前記注射器の針を覆う針キャップを更に備えている、請求項27に記載の注射装置。
【請求項29】
前記針キャップの外径が前記注射器のシリンダの外径以上である、請求項28に記載の注射装置。
【請求項30】
安全デバイスを製造する方法であって、
ハウジング(120)の本体、フランジ支持体、及び複数の弾性変形可能なアーム(200)を含む第1の部分を成型するステップと、
前記ハウジング(120)の外径よりも内径が大きいスリーブ
を含む針シールド(22)
を有する第2の部分を成型するステップと、
前記ハウジング(120)に対して前記スリーブ(22)が望遠鏡のように伸縮可能に配置されるように、かつ、前記針シールド(22)が前進位置と後退位置との間で前記ハウジングの外周側を滑動できるように、前記ハウジング(120)に前記針シールド(22)を組み合わせるステップと、
前記針シールド(22)と前記ハウジング(120)との間に付勢手段を配置して、前記針シールド(22)に対して前記前進位置へ向かうように力を加えさせるステップと、
前記針シールドを前記後退位置に解放可能に固定するステップと
を含み、
前記ハウジングの本体は、
前記ハウジング(120)に挿入された注射器(1)のシリンダの少なくとも一部を囲むように構成されている実質的に筒状の部分
を含み、
前記フランジ支持体は前記注射器(1)のフランジを支持するように構成されており、
前記複数のアーム(200)は第1の位置へ向かうように力を受けており、
前記第1の位置では、前記複数のアーム(200)が内側の接触面を前記実質的に筒状の部分の内面の内周側に配置して、前記ハウジング(120)の内部に狭窄部を形成し、
前記複数のアームは、前記ハウジング(120)に挿入された前記注射器(1)によって前記第1の位置から外周側へ曲がるように構成されており、
前記複数のアームの内側の接触面は前記ハウジングの近位端と遠位端との中間に位置する
ことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記複数のアーム(200)の各々が、前記ハウジングの本体に接続されている固定端から自由端まで伸びている片持ち梁部を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ハウジングに注射器を挿入するステップと、
前記注射器を挿入する間に前記複数のアーム(200)を前記第1の位置から外側へ、第2の位置まで曲げるステップと
を更に含む、請求項30又は請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記注射器が、フランジを含むシリンダと、針と、前記針を覆う針キャップとを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記針キャップが、変形不能な針シールドを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記針キャップの外径が前記シリンダの外径よりも大きい、請求項33又は請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ハウジングに前記注射器(1)が挿入される間に、前記針キャップが前記複数のアーム(200)を外側へ第2の位置まで曲げ、
前記注射器が前記ハウジングの内部の最終位置に設置されて、前記フランジが前記第1の接触面と前記第2の接触面との間に拘束される際に、前記複数のアームが前記第1の位置、又は、前記第1の位置と前記第2の位置との中間へ戻る、
請求項33から請求項35までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器を対象とする針用の安全デバイス全般に関する。安全デバイスは注射器センタリング機能及び/又は分解防止機能を備えている。これらの機能は、安全デバイスの自然な又は偶発的な分解を防止するように構成されている。本発明はまた、薬剤充填済み注射器と安全デバイスとが組み合わされた注射デバイスにも関する。それらに関連する、注射器を安全デバイスの中心に置く方法、及び/又は、安全デバイスの偶発的な分解を防止する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
注射完了後の針刺しによる損傷を防止する目的で、使用済みの注射器又は注射デバイスの針を覆うように作動する安全デバイスが開発されている。そのような安全デバイスは、薬剤充填済み注射器が挿入可能な付属品から構成可能である。この付属品は、注射器をハウジングの内部へ後退させて針の注入端部を露出させないように、又は、その針の周囲にスリーブを前進させ、必要であればそのスリーブを前進位置にロックして、その後にスリーブが後退して注射済みの針が露出するのを防止するように構成されている。
【0003】
注射処理の完了後に針の周囲にスリーブを伸ばす針用安全デバイスの例が、国際公開第2012/166527号に記載されている。この文献に記載されている針用安全デバイスは、薬剤充填済み注射器が挿入可能な保護支持体と、注射が完了すると、ばねによって注射器の針の周囲へ前進する針スリーブとを備えている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様では注射器用の安全デバイスが提供される。この安全デバイスは注射器用のハウジングを備えている。ハウジングは、注射器を収容するように構成されている実質的に筒状の部分を含む本体と、注射器のフランジを支持するように構成されているフランジ支持体とを有する。フランジ支持体は、注射器がハウジングに挿入されるとハウジングに対する注射器の移動を防止し、又は制限するように構成されている。少なくともいくつかの実施形態ではフランジ支持体が、ハウジングに対する注射器の近位側への移動を制限する第1の接触面と、ハウジングに対する注射器の遠位側への移動を制限するように構成されている第2の接触面とを含む。安全デバイスは更に針シールドを備えている。針シールドは、ハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置されているスリーブを含む。針シールドの内径はハウジングの外径よりも大きい。これにより針シールドは、注射器の針の先端部を露出させる後退位置と、その針の先端部を覆う前進位置との間でハウジングの外周側を滑動可能である。好ましくは、安全デバイスが更に、注射後に針シールドを前進位置にロックするロック機構を備えている。ハウジングは更に複数の弾性変形可能なアームを含む。各アームは、内側の接触面が実質的に筒状の部分の内面の内周側に配置される第1の位置へ向かうように力を受けている。この配置は、複数のアームがハウジングの内部に狭窄部を形成するように構成されている。複数のアームは、注射器がハウジングに挿入されるときに注射器によって第1の位置から外周側へ曲がるように構成されている。アームの内側の接触面はハウジングの近位端と遠位端との中間に位置する。これにより、アームが注射器の本体を中心に置くことができる。
【0005】
少なくともいくつかの実施形態では、複数のアームの間に形成される狭窄部が、フランジ支持体の遠位側でハウジングの近位側の2分の1又は3分の1の部分に位置する。
【0006】
いくつかの実施形態では各アームが、ハウジングの本体に接続されている固定端から自由端まで伸びている片持ち梁部を含んでもよい。一例では、片持ち梁部の固定端がアームの自由端の遠位側に配置される。この配置は特に、ハウジングの成型品を金型から取り外す操作を容易にするのに有利である。他の実施形態では、各アームの固定端が自由端の近位側に配置されてもよい。
【0007】
必要であれば、本体が、実質的に筒状の部分の壁に形成されている複数の窓又は切り欠きを含んでもよく、各アームが1つの窓又は切り欠きに位置付けられている。
【0008】
いくつかの実施形態では、安全デバイスが、直径を挟んで向かい合う2本のアームを備えていてもよい。ただし、アームが3本以上設けられてもよい。
【0009】
必要であれば、片持ち梁部の縦断面の輪郭が湾曲し、各アームの第1の部分が内側へ湾曲してハウジングの縦軸へ向かい、第2の部分が外側へ湾曲して縦軸から離れている。各アームの接触面はそのアームの湾曲の変曲点に位置する。言い換えれば、アームが実質的にS字形の部分を含んでもよい。
【0010】
安全デバイスは、従来の手動の注射器又は同様な注射器での使用に適合する。それに応じて、安全デバイスが更に、手で操作されるプランジャを備えていてもよい。
【0011】
必要であれば、付勢要素が設けられ、針シールドがハウジングに対して前進位置へ向かうように針シールドに対して力を加えるように構成されていてもよい。付勢要素は、ハウジングに設けられている第1の支持面と、それと対向する、針シールドに設けられている第2の支持面との間に配置されていてもよい。
【0012】
安全デバイスの構成要素はポリマー材料で形成されていてもよく、好ましくは、射出成型で形成されている。少なくともいくつかの例では、ハウジングとアームとが単一の成型部品として形成されている。
【0013】
複数のアームは、注射器のシリンダに対し、シリンダの縦軸がハウジングの縦軸と一致する位置へ向かうように力を加えることにより、シリンダをハウジングの内部の中心に置くように構成されていてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態ではロック機構が設けられている。ロック機構は、針シールドを前進位置にロックするように構成されている。さらに、解除可能なロック機構が設けられ、注射が完了してユーザがそのロック機構を解除するまで、針シールドをハウジングに対して後退位置に維持してもよい。
【0015】
以下に説明されるように、複数の可撓性アームを設けることにより、本願が開示する態様は、製造公差又は設計事項に起因して注射器(又はその構成要素)の外径にばらつきがあってもその注射器を確実に収容可能な安全デバイスを提供することができる。
【0016】
本発明の第2の態様ではある注射装置が提供される。この注射装置は、上記の実施形態のいずれかについて説明されているような安全デバイスを備え、更に注射器用のハウジングに挿入されている注射器を備えている。いくつかの実施形態では、注射器が更に、その針を覆う針キャップを含む。針キャップが変形不能な針シールドであってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、針キャップの外径が注射器のシリンダの外径以上である。
【0017】
本発明の第3の態様では安全デバイスの製造方法又は組み立て方法が提供される。この方法は、必要であれば成型により、第1の部分を設けるステップを含む。第1の部分はハウジングの本体、フランジ支持体、及び複数の弾性変形可能なアームを有する。ハウジングの本体は、ハウジングに挿入された注射器のシリンダの少なくとも一部を囲むように構成されている実質的に筒状の部分を含む。フランジ支持体は、注射器のフランジを支持するように構成されている。アームは第1の位置へ向かうように力を受けている。第1の位置では、アームの内側の接触面が実質的に筒状の部分の内面の内周側に配置され、ハウジングの内部に狭窄部を形成する。アームは、ハウジングに挿入された注射器によって第1の位置から外周側へ曲がるように構成されている。アームの内側の接触面はハウジングの近位端と遠位端との中間に位置する。この方法は更に、必要であれば成型により、第2の部分を設けるステップを含む。第2の部分は、ハウジングの外径よりも内径が大きいスリーブを含む針シールドを有する。この方法はまた、針シールドをハウジングに組み合わせて、ハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置し、かつ、前進位置と後退位置との間でハウジングの外周側を滑動可能にするステップ、針シールドとハウジングとの間に付勢手段を配置して、針シールドに対して前進位置へ向かうように力を加えさせるステップ、及び、針シールドを後退位置に解放可能に固定するステップも含む。
【0018】
必要であれば、各アームが、ハウジングの本体に接続されている固定端から自由端まで伸びている片持ち梁部を含んでもよい。少なくともいくつかの実施形態では、上記の方法が更に、注射器をハウジングに挿入するステップと、注射器を挿入する間にアームを第1の位置から外側へ、第2の位置まで曲げるステップとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、注射器が、フランジを含むシリンダと、針と、その針を覆う針キャップとを有する。針キャップが変形不能な針シールドを含んでもよい。必要であれば、針キャップの外径がシリンダの外径よりも大きい。
【0020】
上記の方法が更に、注射器をハウジングに挿入する間に、針キャップでアームを外周側へ、第2の位置まで曲げるステップを含んでもよい。このステップでは、注射器がハウジングの内部の最終位置に設置されて、フランジが第1の接触面と第2の接触面との間に拘束される際に、アームが第1の位置、又は、第1の位置と第2の位置との中間へ戻る。
【0021】
本発明の第4の態様では、安全デバイスを組み立ててその内部の中心に注射器を置く方法が提供される。本発明の第4の態様によれば、この方法が、注射器用のハウジングを設けるステップを含む。ハウジングは、本体、フランジ支持体、及び複数の弾性変形可能なアームを有する。本体は、ハウジングに挿入された注射器のシリンダの少なくとも一部を囲むように構成されている実質的に筒状の部分を含む。フランジ支持体は、注射器のフランジを支持するように構成されている。アームは第1の位置へ向かうように力を受けている。第1の位置では、アームの内側の接触面が実質的に筒状の部分の内面の内周側に配置されてハウジングの内部に狭窄部を形成する。アームは、ハウジングに挿入された注射器によって第1の位置から外周側へ曲がるように構成されている。アームの内側の接触面はハウジングの近位端と遠位端との中間に位置する。上記の方法は、注射器をハウジングに挿入して片持ち梁部を外周側へ曲げるステップと、注射器をハウジングの内部に固定するステップとを含む。
【0022】
注射器は、そのフランジを、注射器用のハウジングの遠位端に設けられているフランジ支持体に嵌めることにより、そのハウジングの内部に固定されてもよい。
【0023】
本発明の第5の態様では注射器用の安全デバイスが提供される。この安全デバイスは注射器用のハウジングを備えている。ハウジングは本体とフランジ支持体とを有する。本体は、注射器を収容するように構成されている実質的に筒状の部分を含む。フランジ支持体は、ハウジングに挿入された注射器のフランジを支持して、ハウジングに対する注射器の軸方向への移動を制限するように構成されている。この安全デバイスは針シールドも備えている。針シールドは、ハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置されているスリーブを含む。針シールドの内径はハウジングの外径よりも大きい。これにより針シールドは、注射器の針の先端部を露出させる後退位置と、その針の先端部を覆う前進位置との間でハウジングの外周側を滑動可能である。第1の実施形態では本体が線路を有し、針シールドがピンを有する。線路は本体に切り欠き又は溝を含む。ピンは、線路に収容されるように、かつ、針シールドが後退位置と前進位置との間を移動するにつれて、線路の第1の端部から第2の端部まで線路に沿って移動するように構成されている。他の実施形態では、ピンと線路との位置が入れ換えられていてもよい。例えば、ピンがハウジングに設けられていてもよく、線路がハウジングに設けられていてもよい。
【0024】
本体は更に、近位側ラッチ面及び遠位側ラッチ面を含むロック用凹部を有する。針シールドは更に、近位側制止面及び遠位側制止面を含むラッチアームを有する。ラッチアームは、ロック用凹部に引っ掛かるように構成されている。
【0025】
安全デバイスは次のように構成されている。針シールドが前進位置にあるときにラッチアームがロック用凹部に引っ掛かり、近位側制止面を近位側ラッチ面と接触させることによってハウジングに対する針シールドの近位側への移動を制限(又は防止)し、遠位側制止面を遠位側ラッチ面と接触させることによってハウジングに対する針シールドの遠位側への移動を制限し、又は防止する。近位側制止面と遠位側制止面との間の距離がロック用凹部の近位端面と遠位端面との間の距離と実質的に等しくてもよいことは理解されるだろう。これにより、ラッチアームがロック用凹部の内側にぴったり適合し、針シールドに対するハウジングの軸方向への移動が防止される。他の実施形態では、近位端面と遠位端面との間の距離が近位側ラッチ面と遠位側ラッチ面との間の距離よりも大きくてもよい。これにより、針シールドに対するハウジングの移動が(例えば、ある狭い範囲までは)許容されるが、例えば、ハウジング内に取り付けられた注射器の針を使用後に再び露出させることができないように制限される。
【0026】
近位側ラッチ面と遠位側ラッチ面とを設け、ラッチアームに近位制止面と遠位制止面とを設けることにより、本発明の実施形態は、ハウジングに対する針シールドの遠位側への移動に伴う安全デバイスの偶発的な、又は自然な分解を防止できる。
【0027】
いくつかの実施形態では、遠位側制止面が、ハウジングの中心を通る縦軸に対して傾斜していてもよい。遠位側制止面と縦軸との間には鈍角が形成されている。
【0028】
遠位側ラッチ面が、ハウジングの中心を通る縦軸に対して傾斜していてもよい。遠位側ラッチ面と縦軸との間には鋭角が形成されている。
【0029】
遠位側ラッチ面と縦軸に対して垂直な軸との間の角度が10度~20度の間であり、例えば約15度であってもよい。遠位側制止面と、縦軸に対して垂直な軸との間の角度が10度~20度の間であり、例えば約15度であってもよい。
【0030】
遠位側ラッチ面の傾斜角と遠位側制止面の傾斜角とが一致していてもよい。すなわち、遠位側ラッチ面と遠位側制止面とが平行な平面であってもよい。
【0031】
それに加え、又はそれに代えて、近位側制止面がハウジングの縦軸に対して傾斜していてもよい。近位側制止面と、ハウジングの中心を通る縦軸との間には鈍角が形成されている。
【0032】
近位側ラッチ面がハウジングの縦軸に対して傾斜してもよい。近位側ラッチ面と縦軸との間には鋭角が形成されている。
【0033】
近位側ラッチ面と縦軸に対して垂直な軸との間の角度が10度~20度の間であり、例えば約15度であってもよい。近位側制止面と縦軸に対して垂直な軸との間の角度が10度~20度の間であり、例えば約15度であってもよい。
【0034】
近位側ラッチ面の傾斜角と近位側制止面の傾斜角とが一致していてもよい。すなわち、近位側ラッチ面と近位側制止面とが平行な平面であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態ではピンが、例えばピンと針シールドの壁部との間に、返し(アンダーカット)を含んでもよい。必要であれば、縦軸に対して傾斜しているピンの遠位面が設けられることにより、返しが形成されていてもよい。ピンの遠位面と縦軸との間には鈍角が形成されている。
【0036】
それに加え、又はそれに代えて、線路が遠位端壁部を含んでもよい。遠位端壁部は近位側を向き、縦軸に対して傾斜しており、縦軸との間に鋭角を形成している。
【0037】
いくつかの実施形態では、針シールドが複数のラッチアームを含んでもよい。各ラッチアームは、対応するロック用凹部に引っ掛かるように構成されている。例えば、複数のラッチアームが、直径を挟んで向かい合う2本のラッチアームを含んでもよい。
【0038】
必要であれば、各ラッチアームは、ピンが線路の第2の端部に位置するとき、対応するロック用凹部に引っ掛かるように構成されている。
【0039】
少なくともいくつかの実施形態では、各ラッチアームが弾性変形可能であってもよい。ラッチアームは、初期状態ではハウジングの近位側の凹部に引っ掛かるように構成され、針シールドが後退位置から前進位置まで移動するにつれてハウジング(必要であれば、その上の傾斜面)によって曲がるように構成されている。
【0040】
安全デバイスは従来の手動の注射器又は同様な注射器での使用に適合する。それに応じて、安全デバイスが更に、手で操作されるプランジャを備えていてもよい。
【0041】
必要であれば、安全デバイスが、針シールドに対して前進位置へ向かうように力を加えるように構成されている付勢要素を備えていてもよい。
【0042】
好ましくは、上記の安全デバイスが更に、ハウジングの内部の中心に注射器の本体を置くように構成されている複数の変形可能な片持ち梁部を備えていてもよい。片持ち梁部は本発明の第1の態様について先に説明された片持ち梁部として形成されていてもよい。
【0043】
本発明の第6の態様では、安全デバイスが組み立て式注射装置の部品として形成されていてもよい。本発明の第6の実施形態に従って提供される注射装置は、先に説明された針用の安全デバイスの実施形態のいずれかを備え、さらに、注射器用のハウジングに挿入されている注射器を備えている。
【0044】
いくつかの実施形態では、注射器が更に、その針を覆う針キャップを含む。針キャップが変形不能な針シールドであってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、針キャップの外径が注射器のシリンダの外径以上である。
【0045】
本発明の第7の態様では、注射器用の安全デバイスを分解から守る方法が提供される。この方法は、注射器用のハウジングに取り付けられている注射器の針を覆う前進位置まで針シールドをハウジングに対して遠位側へ前進させるステップを含む。この方法は更に、前進位置まで針シールドを前進させることにより、針シールドに設けられている可撓性ラッチアームをハウジング内のロック用凹部に引っ掛けるステップを含む。可撓性ラッチアームは近位側制止面と遠位側制止面とを含み、ロック用凹部は近位側ラッチ面と遠位側ラッチ面とを含む。この方法はまた、前進位置まで針シールドを前進させることにより、針シールドに設けられているピンを、ハウジングに設けられている線路に沿ってその遠位端まで移動させるステップと、近位側制止面と近位側ラッチ面との接触によってハウジングに対する針シールドの近位側への移動を制限するステップと、針シールドが前進位置にあるときに、遠位側制止面と遠位側ラッチ面との接触によってハウジングに対する針シールドの遠位側への移動を制限するステップとを含む。必要であれば、この方法は更に、例えば、ピンに形成されている返しを線路の端壁部に引っ掛けることにより、ピンを線路の端壁部に引っ掛けるステップを含んでもよい。
【0046】
本発明の第8の態様では、注射器用の安全デバイスを製造する方法が提供される。この方法は、第1の部分を成型するステップを含む。第1の部分は、注射器を収容するように構成されている本体と、注射器のフランジを支持してハウジングに対する注射器の軸方向への移動を制限するように構成されているフランジ支持体とを有する。この方法は更に、ピンを収容するように構成されている線路と、近位側ラッチ面及び遠位側ラッチ面を含むロック用凹部とを本体に形成するステップ、及び第2の部分を成型するステップを含む。第2の部分は、本体の外径よりも内径が大きいスリーブを含む針シールドを有する。この方法はまた、以下のステップも含む。上記の線路に収容されるように構成されているピンと、近位側制止面及び遠位側制止面を含むラッチアームとを第2の部分に形成するステップ。ラッチアームに対し、ラッチアームがロック用凹部に引っ掛かる前進位置へ向かうように力を加え、近位側制止面と近位側ラッチ面との接触によってハウジングに対する針シールドの近位側への移動を制限し、遠位側制止面と遠位側ラッチ面との接触によってハウジングに対する針シールドの遠位側への移動を制限するステップ。ハウジングに針シールドを組み合わせて針シールドをハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置し、かつ、後退位置と前進位置との間でハウジングの外周側を滑動可能にし、ピンを線路の中に設置するステップ。ハウジングと針シールドとの間に付勢要素を配置して針シールドに対して前進位置へ向かうように力を加えさせるステップ。付勢要素を圧縮して針シールドを後退位置に固定するステップ。
【0047】
本発明の第9の態様では注射器用の安全デバイスが提供される。この安全デバイスは注射器用のハウジングを備えている。ハウジングは、注射器を収容するように構成されている実質的に筒状の部分を含む本体と、ハウジングに挿入された注射器のフランジを支持してハウジングに対する注射器の軸方向への移動を制限するように構成されているフランジ支持体とを有する。安全デバイスはまた、ハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置されているスリーブを含む針シールドも備えている。針シールドの内径はハウジングの外径よりも大きい。これにより針シールドは、注射器の針の先端部を露出させる後退位置と、その針の先端部を覆う前進位置との間でハウジングの外側を滑動可能である。第1の実施形態では、本体が線路を有し、針シールドがピンを含む。線路は本体に切り欠き又は溝を含む。ピンは、線路に収容されるように、かつ、針シールドが後退位置と前進位置との間を移動するにつれて、線路の第1の端部から第2の端部まで線路に沿って移動するように構成されている。他の実施形態では、ピンと線路との位置が入れ換えられていてもよい。例えば、ピンがハウジングに設けられていてもよく、線路がハウジングに設けられていてもよい。
【0048】
本体が更に、近位側ラッチ面を含むロック用凹部を有し、針シールドが更に、近位側制止面を含むラッチアームを有する。ラッチアームは、ロック用凹部に引っ掛かるように構成されている。近位側制止面は、近位側ラッチ面に引っ掛かるように構成されている。ピンは更に返し(アンダーカット)を含む。返しは、針シールドが前進位置にあるときに、ピンを線路の遠位端壁部に(例えば、フックの仕組みで)引っ掛けるように構成されている。ピンに返しを設けることにより、ピンが線路から外れる可能性が低減する。これは特に有利な効果である。何故なら、ピンが線路から外れると、安全デバイスが分解して使用済みの針を露出させるかも知れないからである。
【0049】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によって設けられ得る他の利点もまた、以下の詳細な説明及び添付の図面に照らして当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本願の開示内容の態様の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。以下の図面は、本発明を作用させることができる方法の非限定的な例示的な例であることを理解されているい。ただし、本発明は、図面に示されている例示的な実施形態に限定されない。
【0051】
【
図1】針用の安全デバイス及び注射器の分解図を示す。
【
図2】注射器を収容するように構成されているハウジングを示す。
【
図3A】注射器のシリンダが中心に置かれている、
図2のハウジングの近位端の縦断面図を示す。
【
図3B】
図3Aに示されているハウジングから伸びている片持ち梁部の拡大断面図を示す。
【
図4A】第1の実施形態による注射器センタリング配置の横断面図を示す。
【
図4B】第2の実施形態による注射器センタリング配置の横断面図を示す。
【
図4C】必要に応じてハウジングの遠位端に追加されるレールを備えている構成による、
図2のハウジングの遠位端の上面斜視図を示す。
【
図5】
図1に示されている安全デバイスの針シールドの縦断面図を示す。
【
図6A】使用中の安全デバイスのハウジングに対する針シールドの位置を示す。
【
図6B】使用中の安全デバイスのハウジングに対する針シールドの位置を示す。
【
図6C】使用中の安全デバイスのハウジングに対する針シールドの位置を示す。
【
図7A】針シールドが前進位置にあり、針シールド上のラッチアームがハウジング内のロック用凹部に引っ掛かっている、針シールドとハウジングとの間の嵌合部の縦断面図を示す。
【
図8】針シールドが前進位置まで伸びており、針シールド上のピンがハウジング上の線路に引っ掛かっている、針シールドとハウジングとの間の嵌合部の縦断面図を示す。
【
図9】本願の開示内容の一態様による、安全デバイスを製造する方法のステップを模式的に示す。
【
図10】本願の開示内容の一態様による、安全デバイスを製造する方法のステップを模式的に示す。
【
図11】本願の開示内容の一態様による、安全デバイスを分解から守る方法のステップを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
特定の用語が、便宜上以下の詳細な説明で使用され、非限定的であることが理解されるであろう。「上部」、「下部」、「内側」、「外側」、「頂部」、及び「底部」という用語は、図面の方向及び構成要素部品又は表面の相対位置を指定するために使用され得る。同様に、「内側に」、「外側に」、「上流で」、及び「下流で」という用語は、システム及び方法が使用されているときに適用される方向を指すために使用され得る。「a」、「an」、及び「the」という用語は、「少なくとも1つの」を意味するものとして読み取られるべきである。この明細書における「遠位」方向は、安全デバイスに取り付けられた従来のシステムの針へ近づく方向である。「近位」方向は、安全デバイスに取り付けられた従来の注射器の針から遠ざかり、その注射器のフランジ付きの端部へ近づく方向である。
【0053】
「含む/備えている(comprising)」という用語は、特定の特徴又はステップを含む/備えているシステム又は方法が、列挙されている特徴又はステップのみに限定されるのではなく、列挙されていない特徴又はステップも含んでもよいように、「~を含む(including)が、これらに限定されない」を意味することが理解されるであろう。
【0054】
当業者は、また発明概念から逸脱することなく、この明細書に記載されている例示的な実施形態に、変更がな可能なことを理解するであろう。この明細書に記載されるシステム及び装置の構造的特徴は、機能的に同等の部品で置き換えられ得る。更に、実施形態からの特徴は、本願の開示内容から逸脱することなく互いに組み合わせ可能なことが理解されるであろう。
【0055】
図1を参照すると、注射器1を対象とする安全デバイス2は一般に、注射器1を収容するように構成されている注射器用のハウジング120と、ハウジング120に対して滑動可能に取り付けられ、かつ、ハウジング120に対して前進させられると注射器1の針を保護するように構成されている針シールド22とを備えている。注射器は、本体4と、本体4の遠位端に固定されている針(図示せず)とを備えている。ピストン8は、本体4に対して移動可能に配置され、近位側へ前進させられると従来の仕方で、針を通して1回分の薬剤を投与することができる。注射器1は標準タイプのガラス製の注射器、すなわち使い捨て用であってもよい。注射器1が針付きの注射筒を備えていてもよい。ただし、本発明はガラス製の注射器にも、針付きの注射器にも限定されない。
図1に示されているように、注射器1は遠位端(針側の端)から近位端まで伸びている。
【0056】
注射器の本体4は、好ましくは、その近位端にフランジ16を含む。フランジ16は円環状であってもよいし、反対方向の突起を2つ以上備えていてもよい。これらの突起は1つの面を成す。その面に対しては指が、注射器を操作して、それに収められている薬剤を注射する間に力を加える。ピストン8は一般に、ロッド10と、その近位端に位置する押圧面14とを備えている。押圧面14は、ユーザに親指を押し当てさせてピストン8を前進させ、注射させることができる。注射器の針は、好ましくは、注射前は針キャップ19によって覆われている。針キャップ19が変形不能な針シールド(rigid needle shield、RNS)であってもよい。変形不能な針シールドは、米国特許出願第13/813,590号(その内容の全体は参照によってこの明細書に組み込まれる。)に記載されているタイプであってもよい。ただし、他の針キャップも利用可能である。
【0057】
図1に示されているように、安全デバイス2は縦軸X-Xに沿って伸びており、注射器用のハウジング120、針シールド22、及び付勢要素24を備えている。付勢要素24はハウジング120と針シールド22との間に配置されており、針シールド22に対して前進位置へ向かうように力を加える。前進位置では針シールド22が、安全デバイスに挿入された注射器の針の遠位端を越えて伸びている。安全デバイス2は、使用を目的として組み立てられたときには、ハウジング120に挿入されている注射器1を備えている。ハウジング120は針シールド22に挿入されている。
【0058】
針シールド22は、ハウジング120の外径よりも内径が大きい実質的に筒状の本体を備えている。これにより、ハウジング120が針シールド22の内部に配置可能である。針シールド22の遠位端には、注射器の針が通過可能な穴60が開いている。針シールド22は、必要であれば、その近位端にフランジ50を備えていてもよい。フランジ50は針シールド22の本体から外周側へ広がっており、1つの支持面を備えていてもよい。支持面に対してユーザは、安全デバイスの操作中に指を、従来の注射器のフランジ16に対する載せ方と同様な仕方で載せることができる。
【0059】
ハウジング120は、注射器の本体4の少なくとも一部を囲むように構成されている実質的に筒状の部分を有する本体を備えている。ハウジング120は、その遠位端に、注射器1の針が通過可能な穴が開いていると共に、注射器1のフランジ16を支持するように構成されているフランジ支持体130を備えている。フランジ支持体130は、ハウジング120に対する注射器1の軸方向への移動を防止し、又は制限するように構成されている。フランジ支持体130の実施形態の一例について、
図2を参照しながら更に詳細に説明する。ハウジング120は、必要に応じ、線路136を備えていてもよい。それに沿って針シールド22の内面上のピン(
図1には示されていない。)が滑動可能である。線路136は、針シールドのピンが移動可能な通路を定めるように構成されているので、針シールド22とハウジング120との相対移動が所定の軌道に制限される。線路136とピン(図示せず。)との間の相互作用については
図2を参照しながら更に詳細に説明する。
【0060】
ハウジング120は針シールド22の中に望遠鏡のように伸縮可能に配置されており、これらの2つの部品の間には付勢要素24が配置されている。
図1に示されている実施形態では付勢要素24が、ハウジング120の周りに巻き付けられた螺旋ばねとして形成されている。ばね24は、ハウジング120に設けられている第1の支持面と、針シールド22に設けられている第2の支持面との間に配置可能である。図示されている実施形態は螺旋ばね24がハウジング120の周りに配置されていることを示す。しかし、他の付勢要素が、針シールド22に初期状態での後退位置から前進位置への移動を促すように配置されてもよいことは、理解されるであろう。
【0061】
解除可能なロック機構が設けられている。この機構は、ばね24が第1の支持面と第2の支持面との間で圧縮されている状態で、ハウジング120に対する針シールド22の位置をロックするように構成されている。ばね24は、このロック機構が解除されると、針シールド22に対する近位側への移動をハウジング120に促し、露出している針の外周側へ針シールド22を前進させるように構成されている。
【0062】
以下、ハウジング120について、
図2を参照しながら更に詳細に説明する。
図2に示されているように、ハウジング120は近位端のフランジ支持体130から、針が通る遠位端の穴160まで伸びている。ハウジング120は本体122を備えている。本体122は、注射器1を収容するように構成されている中空の実質的に筒状の部品として形成されている。本体122が注射器の本体4を完全に包み込む必要はなく、
図2に示されているように、本体122に切り欠き及び凹部が設けられていてもよい。これらについては、後で更に詳細に説明する。
【0063】
ハウジング120の本体122は複数の弾性変形可能なアーム200を備えている。
図3A及び
図3Bを参照すると、各アーム200は内面202を備え、それは内周側を向いて安全デバイスの縦軸X-Xに面している。アーム200はある位置へ向かうように力を受けている。この位置では、アーム200がハウジング120の内部に狭窄部を形成するように、アーム200の内側の接触面を実質的に筒状である本体の内面の内周側に配置する。言い換えれば、アーム200の内側の接触面同士の最短距離がハウジング120の本体122の内径よりも小さい。
【0064】
アーム200は弾性変形可能な材料で形成されている。この材料によってアーム200は、受けている力で向かわされる位置(アーム200は、この位置で注射器1を安全デバイスの中心に置くように構成されている。)から外周側へ曲がることができる。これは、仮に注射器の本体4の外径がハウジング120の内径よりも著しく小さい場合であってもかなり有用である。このような場合、注射器がハウジング120の内側にぴったり嵌まるという理由では、(縦軸に対する)注射器の横方向への移動が抑えられないだろう。しかし、アーム200によって形成される狭窄部の直径が、注射器の本体4と接触するのには十分な程度まで狭められてもよい。したがって、アーム200が、ハウジング120の内部の中心に注射器1を置く作用を発揮できる(
図4A及び
図4B参照)。
【0065】
アーム200によって形成される狭窄部が、支持されなければハウジング120の内部でがたつくほど細い注射器を支持してもよい。この場合でも、アーム200がそれらの初期位置から外周側へ曲げられるので、外径がハウジング120の内径よりは小さいが狭窄部よりは大きい注射器を、ハウジング120が内部に収容可能である。外径がハウジング120の内径に近い注射器が挿入される際にはアーム200が外周側へ曲げられるので、その太めの注射器が収容可能である。そのような場合はアーム200が、注射器に対するセンタリング機能を向上させるのに加え、ハウジング120の内部における注射器の横方向への移動を抑える。したがって、そのような配置により、ハウジングがその内部の中心に支持できる注射器の直径の範囲が改善される。初期位置から外周側へ曲げられるというアーム200の能力は、注射器の全体がハウジング120の内部に挿入されるとその注射器の本体4が中心に設置されることを保証する一方で、直径が注射器の本体4よりも大きい変形不能な針シールドをハウジングの内部に通すことができる点でも有利だろう。
【0066】
図2に示されているように、アーム200はハウジング120と一体に成形することができる。
図2に示されている実施形態では、アーム200は各々ハウジング120の切り欠き210の1つの中に形成されており、ハウジング120に取り付けられた固定端200aから、切り欠き210の中に配置されている自由端200bまで伸びている。アーム200は自由端200bを近位側へ向け、固定端220aを遠位側へ向けていてもよい。この配置は、ハウジング120が射出成型部品によって形成されている本発明の実施形態では特に有利だろう。これは、アーム200の向きが、ハウジング120を型から近位側へ取り外すことを妨げない(又は、より小さい程度しか妨げない)からである。ハウジング120を型から近位側へ取り外すことがハウジング120の他の構成要素、例えばフランジ支持体130には必要とされてもよい。
【0067】
ただし、アーム200が、上記のセンタリング機能を依然として発揮するのであれば、他の構成で設けられてもよい。これは当業者には理解されるであろう。例えば、アーム200が自由端200bを遠位側へ向け、固定端200aを近位側へ向けていてもよい。図面に示されているアーム200は、固定端から自由端まで伸びている片持ち梁部として構成されているが、実施形態の中には、アームが両端で固定されているものがあってもよいことも理解されるであろう。
【0068】
図3A及び
図3Bを再び参照すると、アーム200がそれらの長さ方向において湾曲していてもよい。例えば、アーム200の縦断面がある湾曲した輪郭を含んでもよい。この輪郭では、各アーム200の第1の部分が内側へ湾曲してハウジングの縦軸X-Xへ向かい、第2の部分が外側へ湾曲して縦軸X-Xから離れており、各アーム200の接触面202がそのアームの湾曲の変曲点に位置する。このように湾曲した片持ち梁部が設けられていることにより、アーム200によって形成される狭窄部の中へ注射器(及び/又は変形不能な針シールド)を導入可能である。この湾曲によって形成される狭窄部のフレア状の(すなわち先が広がっている)穴は、注射器1がハウジング120へ挿入される間に、例えば変形不能な針シールドがアーム200に捕捉されるのを防ぐことができる。この理由により、フレア状の穴は、その最も広い部分から遠位側へ向かって、狭窄部の最も狭い場所に近づくにつれて狭まっている。例示用の図面に示されているアーム200の含む輪郭は湾曲が滑らかである(これは、製造を目的とする場合には有利であろう)。しかし、アーム200によって形成される狭窄部のフレア状の穴が他の幾何学的な輪郭、例えば複数の直線部分の交差によって形成される変曲点を含むアーム200によって形成されてもよいことが理解されるであろう。
【0069】
図3Bに示されているように、アーム200は、外周方向の広がりがハウジング120の本体122の外径を超えないように構成されていてもよい。これは、アーム200がハウジング120と針シールド22又は付勢要素24との間の相互作用を妨げないことを意味する。
【0070】
以下、
図4A及び
図4Bを参照すると、複数のアームが、直径を挟んで互いに向かい合う2本のアーム200(
図4A)、又は、注射器の本体4をハウジング120の内部の中心に置くように構成されている3本以上のアーム200(
図4B)を含んでもよい。
図4Bに示されている実施形態では、第1のアーム200がハウジングの第1の側部に設けられ、それと向かい合う2本のアーム200’がハウジング120の反対の側部に配置されている。当業者には理解されるであろうように、2本のアーム200を備えている実施形態(
図4A)では、それらのアーム200が互いに反対側から注射器の本体4と接触し、それら2本のアームの間を結ぶ方向における注射器の本体4の移動を制限する。これとは異なり、3本以上のアーム200を備えている実施形態では、注射器の本体4の移動が更に別の方向においても制限される。
【0071】
図4A及び
図4Bを再び参照すると、アーム200は、横断面が湾曲して凸状の内面202を成すように形成されていてもよい。この内面202は、注射器の本体4の円筒状の外面に形状が合うように構成されている。アーム200の凸状の内面は更に、注射器の本体4が縦軸X-Xに揃っている状態から外れる動きを制限してもよい。
【0072】
図4Cを参照すると、ハウジング120の内部における注射器1のセンタリングを更に容易にする目的で、ハウジング120の遠位端に縦方向へ伸びる複数のレール127a、127b、127cが設置されていてもよく、好ましくは、少なくとも3本のレール127a、127b、127cが設置されている。レール127a、127b、127cはハウジング120の遠位端の穴160、又は少なくともその近傍から縦方向へ伸びてハウジング120の近位端へ向かっている。レール127a、127b、127cの高さ、幅、及び長さは、次のことが保証されるように選択されている。注射器の本体4の遠位端が中心に維持され、注射器1の縦軸がハウジング120の縦軸と実質的に同軸に揃い、注射器の本体4の遠位端が穴160の中への挿入を妨げられない(すなわち、注射器1がハウジング120へ挿入されるときに、レール127a、127b、127cの表面と注射器の本体4の遠位端の外面との間の摩擦力を超える過大な力が必要とされない)。好ましい実施形態では、レール127a、127b、127cが穴160の周に沿って等間隔に配置されている。
【0073】
図2に再び戻ると、ハウジング120はフランジ支持体130を備えている。フランジ支持体130は、互いに向かい合う接触面の間に注射器1のフランジ16を拘束することにより、注射器1をハウジング120の内部に固定するように構成されている。
図2に示されているように、フランジ支持体30は、注射器のフランジ16を囲むように構成されている周方向の壁部128を備えている。周方向の壁部128は(
図3Aに示されている)接合用の棚部129によってハウジング120の本体122に接続されている。棚部129が(近位側を向いている)第1の接触面を含む。第1の接触面は、フランジ16がハウジング120に対して遠位側へ移動するのを防止する。棚部129はまた、ばね24の近位端を支持する支持面も含む。ばね24とハウジング120との噛み合わせについては後で、
図6A~
図6Cに関連付けながら更に詳細に説明する。
【0074】
フランジ支持体130はまた、(遠位側を向いている)第2の接触面を含む複数の留め部131も備えている。第2の接触面は、安全デバイス2に挿入された注射器1のフランジ16をハウジング120に対して軸方向へは移動させず、又はその移動を制限する。
図2(及び
図3A)に示されているように、フランジ支持体130は、近位側を向いている接触面と遠位側を向いている接触面との間に凹部を設けている。この凹部に注射器1のフランジ16が拘束され、注射器をハウジング120の内部に固定する。
図2及び
図3Aに示されている実施形態では、フランジ支持体130が4つの留め部131を備えている。しかし、向かい合う接触面の間にフランジ16を拘束するのには他の構成も可能であり、それらも本発明の範囲内であることは、当業者には理解されるであろう。
【0075】
ハウジング120はまた、ハウジング120の本体122に1つ以上の凹部122aも備えていてもよい。凹部122aは、針シールド22に設けられているラッチアーム250(
図5、
図6、
図7A、及び
図7Bに示されている。)を収容可能である。これについては後で更に詳細に説明する。注射器用ハウジングの凹部に引っ掛かるように構成されているラッチアームを備えているデバイスの一例は、国際公開第2012/166527号に記載されている。その全体は参照によって組み込まれている。
【0076】
ハウジング120はまた、線路136も備えている(線路は本体122の反対側の側面にも設けられていてもよく、全部で2本又は3本以上であってもよい)。線路136は直線状部分138を含む。この部分138はハウジング120の本体122に沿って縦軸X-Xに対して平行に伸びている。(
図6A~
図6Cを参照しながら更に詳細に説明されるように)線路138の直線状部分138がハウジング120に対する針シールド22の軸方向への最大の移動量を決めるので、線路136の第1の直線状部分138が針よりも長いことが好ましい。線路の第2の部分140は第1の部分に繋がっており、線路136の第1の直線状部分138の近位端に繋がっている第1の端部から、第1の直線状部分の近位端の遠位側に位置する第2の端部まで伸びている。線路136の第2の部分140は、好ましくは第1の部分138との間に鋭角を成すように、第1の部分138に接続されている。必要であれば、第3の直線状部分142が第2の部分140の第2の端部から伸びていてもよい。第3の部分142は第1の部分138に対して実質的に平行であってもよい。線路136は、針シールド22のピン(
図2には示されていない。)が移動可能な通路を定める。線路136はロック機構の一部を形成している。ロック機構は、針シールド22とハウジング120との相対移動を注射の完了後まで防止するためのものである。ロック機構については、
図6A~
図6Cを参照しながら更に詳細に説明する。
【0077】
ハウジング120は更に複数の舌部150を備えていてもよい。舌部150はハウジングの本体122の遠位端から伸びており、ハウジング120の本体122に接続され、遠位側へ向かうにつれてハウジング120の縦軸X-Xへ近づくように傾斜している。これにより、複数の舌部150の遠位端間の距離がハウジング120の本体122の内径よりも小さい。複数の舌部150は、例えば、安全デバイスに挿入された注射器1に設けられている変形不能な針キャップ19の外径以下の距離だけ、互いに間隔を開けるように構成されていてもよい。舌部150は、注射器1が安全デバイスに挿入されるときに(
図2に示されている)それらの初期位置から外側へ曲がって針キャップ19を収容するように構成されている。針キャップ19が注射器1から取り外されると、舌部が
図2に示されている位置へ戻る。取り外された針キャップの直径よりも舌部150の間隔が狭いので、舌部150は注射器への針キャップの嵌め直しをさせない。この嵌め直しは針刺しによる損傷のよくある原因であり、使用済みの注射器をユーザが誤って再使用しようとする主な原因でもあるからである。
【0078】
以下、針シールド22の内部の構成要素について、
図5を参照しながら更に説明する。
図5に示されているように、針シールド22は実質的に中空管状の本体を含む。中空管状の本体は、
図1に示されているように、ハウジング120を収容するように構成されている。少なくとも1本のピン240が針シールド22の内面から内周側へ伸びており、ハウジング120の線路136に引っ掛かるように構成されている(線路136は
図2及び
図7に示されている)。好ましくは、ピン240の遠位側に返し242が設けられている。
図6A~
図6C及び
図8を更に参照すると明らかになるように、返し242によってピン240は、線路136の遠位端と噛み合うことができる。ばね24の支持面245が、ばねを保持するための周方向の壁部246の範囲内に設けられている。支持面245は、ばね24の遠位端を支持するように構成されている。少なくとも1本のラッチアーム250が針シールド22の本体に設けられている。ラッチアーム250は、針シールド22が
図6Cに示されている前進位置にあるとき、ハウジング120に設けられているロック用凹部152に位置が合うと、それに引っ掛かるように構成されている(
図2参照)。ラッチアーム250とロック用凹部152との引っ掛かりについては、
図7A及び
図7Bを参照しながら更に詳細に説明する。
【0079】
以下、
図2に示されているハウジング120と
図5に示されている針シールド22との相互作用について、
図6A~
図6Cを参照しながら更に詳細に説明する。
図6Aは、注射の準備状態にある安全デバイス2を示す。この状態では、針シールド22に設けられている支持面145とハウジング120の棚部129との間にばね24が挟まれて圧縮されている。ばね24は圧縮された状態では針シールド22を、ハウジング120に対して遠位側へ向かって押す。しかし、ピン240が線路136に拘束されており、線路の第2の部分142の閉端に押し付けられるので、ハウジング120に対する針シールド22の遠位側への移動を妨げる(
図2も参照せよ)。
【0080】
図6Bは、注射直後、ユーザがハウジング120を、矢印Aで示されているように、遠位側へ押してばねを更に圧縮させた後の安全デバイスを示す。
図6Bに示されているように、ユーザがハウジング120を針シールド22に対して遠位側へ押すので、ピン240が線路136の第2の部分140に沿って移動する。線路の第2の部分が縦軸に対して傾斜しているので、ピン240の移動に伴ってハウジング12が針シールド22に対して回転し、ピン240の位置を線路136の直線状部分138の位置に合わせる(
図6B参照)。
【0081】
図6Cを参照すると、ピン24の位置が線路136の直線状部分138の位置に合っている状態では、針シールド22がばね24の力でハウジング120に対して遠位側へ自由に移動可能である。これにより、針シールド22が、
図6Cに示されている位置へ前進する。この位置では、安全デバイスに組み合わされた注射器の針が、針シールド22によって覆われる。
【0082】
図6A~
図6Cからも理解できるように、針シールド22は、
図6Aに示されている後退位置から
図6Cに示されている前進位置まで移動することにより、ラッチアーム250を凹部122aに引っ掛かっている状態(
図6A参照。)から離脱させ、ロック用凹部152に引っ掛ける(
図6C参照)。ラッチアーム250がロック用凹部152に引っ掛かることにより、安全デバイス2がばね24の力に逆らって縮んで針を再び露出させることが防止される。また、
図7A及び
図7Bを参照しながら更に詳細に説明されるように、ラッチアーム250がロック用凹部152に引っ掛かることにより、ばね24がハウジング120を針シールド22から分離させることも防止可能である。
【0083】
図7Aは、ラッチアーム250がロック用凹部152に引っ掛かっている状態である安全デバイス2の遠位端の断面図を示す。
図7Bは、
図7Aに示されている配置の拡大図を示す。
図7Aに示されているように、ラッチアーム250は、注射の完了後に安全デバイス2を、
図6Cに示されている安全な位置に固定する(又は、その固定を支援する)ように構成されている。ラッチアーム250は、針シールド22の本体に接続されている固定端から自由端まで伸びている。ラッチアーム250は、ハウジング120の外面に沿ってロック用凹部152まで滑動するように構成されている。ラッチアーム250は、ロック用凹部152に引っ掛かる位置へ向かうように内周側への力を受けている。ラッチアーム250の自由端の位置がロック用凹部152の位置に合うと、
図7Aに示されているように、ラッチアーム250がロック用凹部152に引っ掛かる。
【0084】
図7Bに示されているように、ラッチアーム250は第1の(近位側)制止面252と第2の(遠位側)制止面254とを含む。第1の制止面252はラッチアーム250の自由端に設けられ、実質的には近位側を向いており、ロック用凹部152の近位端面154と噛み合うように構成されている。第2の制止面254はラッチアーム250に返しとして形成され、実質的には遠位側を向いており、ロック用凹部152の遠位端面156と噛み合うように構成されている。ラッチ250の第1の制止面252とロック用凹部152の近位端面154とは安全デバイス2の縦軸X-Xに対して傾斜している(例えば、縦軸X-Xとの交差角が垂直ではない平面に広がっている)。近位端面154は特に、縦軸X-Xと成す角が鋭角であってもよい。第1の制止面252は特に、縦軸と成す角が鈍角であってもよい。少なくともいくつかの実施形態では近位側制止面252の傾斜角が、縦軸X-Xに対して垂直な軸に対して10度~20度の間であり、より好ましくは約15度である。同様に、ロック用凹部152の近位端面156の傾斜角がその垂直な軸に対して10度~20度の間であり、好ましくは約15度である。
【0085】
使用後の安全デバイス2が縮められそうになるときに、近位側制止面252がロック用凹部152の近位端面と接触する。これにより、針シールド22がハウジング120に対して近位側へは移動できない。さらに、両面252、254の傾斜角が互いの補角を成すので、ラッチアーム250に対して力が加えられてラッチアーム250がロック用凹部152の近位端と接触する際に、その力がラッチアームを内周側へ曲げて縦軸X-Xへ近づける。これにより、近位側制止面252が近位端面154の内周側へ押し込まれ、ラッチアーム250が外周側へ曲がってロック用凹部152から外れることは、確実に起こらない。
【0086】
図7Bを再び参照すると、遠位側制止面254は、例えばばね24の力で、ハウジング120に対する針シールド22の遠位側への移動に抵抗するように作用する。
図7Bに示されているように、針シールド22が、例えばばねの影響で、又は針シールド22をハウジング120から外そうとする操作の間に、ハウジング120に対して遠位側へ向かうように力を受けたとしても、遠位側制止面254がロック用凹部152の遠位端面156と接触する。これらの接触により、ハウジング120に対する針シールド22の遠位側への移動が防止される(又は抵抗を受ける)。少なくともいくつかの実施形態では、遠位側制止面254が縦軸X-Xへ向かって傾斜している。すなわち、遠位側制止面254は、実質的には遠位側を向きつつ、遠位側へ向かうほど縦軸X-Xへ近づくように傾斜し、縦軸との間に鋭角を形成している。必要であれば、その傾斜角の補角を成す角度でロック用凹部152の遠位端面156が傾斜していてもよい。例えば、遠位端面156が実質的には近位側を向きつつ、縦軸との間に鈍角を形成している。それらの面254、156(の一方又は両方)が傾斜していることにより、ロック用凹部152の遠位端面156によって遠位側制止面254に対して加えられる力が、ラッチアーム150を内周側へ曲げるように、更にロック用凹部152に引っ掛けるように作用する。少なくともいくつかの実施形態では遠位側制止面254の傾斜角が、縦軸X-Xに対して垂直な軸に対して10度~20度の間であり、より好ましくは約15度である。同様に、ロック用凹部152の遠位端面154の傾斜角がその垂直な軸に対して10度~20度の間であり、好ましくは約15度である。
【0087】
1本のラッチアーム250が1つのロック用凹部152に引っ掛かるだけでも、既知のシステム及び方法が改善されることが理解されるであろう。しかし、更に複数のラッチアーム250が複数のロック用凹部152に引っ掛かるように構成されていることにより、使用済みの安全デバイスが潰され、又は分解される可能性をも抑えることができる。図面に示されている実施形態では、直径を挟んで向かい合う2本のラッチアーム250が設けられ、直径を挟んで向かい合う2つのロック用凹部152に引っ掛かるように構成されている。同様に断面
図6A~6Cにはピン240が1本しか示されていないが、少なくとも実施形態のいくつかの例では針シールド22が第1及び第2のピン240を備えており、それぞれが、ハウジング120の第1及び第2の線路136に引っ掛かるように構成されている。
【0088】
いくつかの実施形態ではラッチアーム250は、ピン240が線路136のうち、ピンを保持する部分142から外れてその位置を直線状部分138の位置に合わせたことを、ユーザに対して聴覚的に、又は触覚的に伝えるようにも構成されていてもよい。
図6Aに示されているように、安全デバイス2が注射の準備状態であると、ラッチアーム250がハウジングの本体122の凹部122aに引っ掛かっている(凹部122aは
図2に明確に示されている)。
図2に示されているように、凹部122aが更に、縦方向に伸びているリブ122bを備えていてもよい。リブ122bは凹部を第1の部分と第2の部分とに分割している。第1の部分は、線路136に近い方である。ピン240が
図6Aに示されている位置にあると、ラッチアーム250が、その位置を凹部122aの第1の部分の位置に合わせ、それに引っ掛かる。しかし、(
図6Bに示されているように)針シールド22がハウジング120に対して回転するときには、ラッチアーム250がリブ122bに乗り上げなければならない。ラッチアーム250がリブ122bに乗り上げるのには十分な回転が発生すると、ラッチアーム250が凹部122aの第2の部分にパチンと音を立てて引っ掛かる。リブ122bの外周側でラッチアーム250がこのように動くことにより、ピン240が線路136の直線状部分138に位置を合わせる位置に針シールド22が到達し、ばね24の力で針シールド22が、
図6Cに示されている前進位置まで前進させられたことが、ユーザに対して聴覚的に、又は触覚的に伝わる。
【0089】
図2に見られるように、凹部122aの第1の部分が傾斜部123を含む。安全デバイス2の組み立て中、ハウジング120が針シールド22に挿入される際に、傾斜部123の外周側をラッチアーム250が通過する。
図2に示されているように、傾斜部123がリブ122bの反対側にある凹部122aの第2の部分の遠位端に位置する同様な傾斜部125よりも長くてもよい。安全デバイスが組み立てられた状態であるとき、仮に傾斜部123が急勾配であれば、ラッチアーム250の遠位側制止面(
図7A及び
図7Bを参照しながら更に詳細に説明する。)が傾斜部123に載ることにより、ラッチアーム250が外周側へ曲がって使用前に緊張状態になるかも知れない。この現象の可能性を抑えるには、好ましくは、傾斜部123が十分に長い。この長さは、針シールド22が後退位置にあるときに傾斜部123がラッチアーム250とは干渉しにくいほど、傾斜部123の傾斜が緩やかであるように設定される。
【0090】
本願の開示内容に照らして当業者には理解されるであろうように、傾斜部125は、表面に十分な斜角が付けられ、又は表面が十分に傾けられることにより、ラッチアーム250が曲がって凹部122aの第2の部分から外れて針シールド22をハウジング120に対して遠位側へ前進させることを支援するように、構成されていてもよい。したがって、必ずしも傾斜部125の傾斜角が傾斜部123の傾斜度と同じでなくてもよい。
【0091】
以下、
図8を参照しながら、ピン240と線路136との引っ掛かりについて、更に詳細に説明する。先に
図5を参照しながら説明されたとおり、針シールド22が含むピン240は、線路136に沿って移動するように構成されている。ピン240が、線路136の端壁部に引っ掛かるように構成されたフック状の返し242を備えていてもよい。
図8は、ピン240が線路136の端部に到達したときの針シールド22とハウジング120(
図6Cを参照)との拡大断面図を示す。
図8は明らかに、線路136の端壁部136aに引っ掛かるフックをピン240の返しが形成していることを示している。ピン240の返しは、ピン240と針シールド22の壁部との間に凹みを設けることによって形成されている。この凹みは、ピン240の遠位面が縦軸X-Xに対して傾斜して縦軸X-Xと鈍角を成すことによって形成されていてもよい。その他に、切り欠きが設けられていてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、ピン240の遠位面の傾斜角が、縦軸X-Xに対して垂直な軸に対して10度~20度の間であり、より好ましくは約15度である。
【0092】
図8に示されているように、線路136の近位側を向いた端壁部136aに傾斜面を設け、その傾斜角をピン240の傾斜角の補角にすることにより、ピン240と線路136の端壁部136aとの間のフックによる引っ掛かりを更に強めることができる。示されている実施形態では、例えば、線路136の端壁部136aとピンの返しとの表面がほぼ平行であるように、それらの傾斜角が等しい。
図8に見られるように、ピン240の傾斜した遠位面によって設けられている返しが生み出すフックとしての作用は、線路136の遠位側の端壁部136aに引っ掛かることにより、ピン240が相対的に遠位側へ移動することを制限するだけでなく、ピン240が線路136に対して横方向へ移動して線路136から外れることをも防止する。少なくともいくつかの実施形態では、ピン240の遠位面の傾斜角が、縦軸X-Xに対して垂直な軸に対して10度~20度の間であり、より好ましくは約15度である。
【0093】
理解されるであろうように、ラッチアーム250とロック用凹部152との引っ掛かり及びピン240と線路136の端壁部136aとの引っ掛かりは、いずれかが単独で実装されていても、既知のシステムに対して有利である。しかし、(
図7A及び
図7Bを参照しながら説明された)ラッチアーム250の返しと(
図8を参照しながら説明された)ピン240の返しとが組み合わされている安全デバイスは、使用後の自然な又は偶発的な分解に対する更なる安全性を提供できる。提供されるこの改善点は、容積が小さい、例えば1.0ml未満(例えば0.5ml)である組み立て式注射器との使用を安全デバイス2が目的とする場合、特に有利であろう。
【0094】
さらに、
図7A、
図7B、及び
図8を参照しながら説明される安全機能が、片持ち梁部200のない安全デバイス2に設けられてもよい(例えば、国際公開第2012/166527号に記載されている安全デバイス参照。)。しかし、片持ち梁部200とラッチアーム250及び/又は返し付きのピン240との組み合わせであれば、既知の安全デバイス、特にある範囲のサイズの注射器(例えば1.0mlの注射器と0.5mlの注射器との両方)と共に使用されるように構成されている安全デバイスを、更に改善することができる。
【0095】
本願の開示内容が、上記の安全デバイスに加え、既知の方法を改善可能な方法の例を多数提供することも理解されるであろう。
【0096】
図9に模式的に示されているように、本願の開示内容はまた、安全デバイス2を組み立ててその内部の中心に注射器を置く方法を提供する。
図9に示されているように、安全デバイスを組み立てるある方法は以下のステップを含む。第1の部分を成型するステップ。第1の部分は、注射器用のハウジングの本体、フランジ支持体、及び複数の弾性変形可能なアームを備えている。これらのアームは、第1の位置へ向かうように力を受けており、第1の位置では、アームの内側の接触面が実質的に筒状の部分の内面の内周側に配置される。第2の部分を成型するステップ。第2の部分は針シールドを備えており、針シールドは、内径がハウジングの外径よりも大きいスリーブを含む。ハウジングに針シールドを組み合わせて、スリーブをハウジングに対して望遠鏡のように伸縮可能に配置し、かつ前進位置と後退位置との間でハウジングの外周側を滑動可能にするステップ。ばねを圧縮して針シールドを後退位置に固定するステップ。この方法は、必要であれば更に、注射器をハウジングに挿入することによってアームをそれらの初期位置から曲げるステップと、アームを使って注射器を中心に置くステップとを含んでもよい。注射器1をハウジングの内部の中心に置くことにより、安全デバイスの操作を改善することができる。注射器1をハウジング120の内部の中心に適切に置くことができ、針シールド19を複数のアーム150の間に適切に設置することができ、かつ、注射中にプランジャ8の位置を縦軸に揃えることができるからである。
【0097】
本願の開示内容はまた、安全デバイスの分解を防止するその安全デバイスの製造方法の例をも提供する。
図10に模式的に示されているように、安全デバイスの分解を防止するその安全デバイスの製造及び組み立て方法は、第1の部分を成型するステップを含む。第1の部分は注射器用のハウジング120を備えている。ハウジング120は本体122とフランジ支持体130とを有する。本体122は、注射器1を収容するように構成されている実質的に筒状の部分を含む。フランジ支持体130は、ハウジング120に挿入された注射器1のフランジ16を支持してハウジング120に対する注射器の軸方向への移動を防止し、又は制限するように構成されている。本体122には線路136が形成されている。線路136は本体122に切り欠き又は溝を含む。線路136は、針シールド22のピン240を収容するように構成されている。本体122は更に、近位側ラッチ面154及び遠位側ラッチ面156を含むロック用凹部152を備えている。この方法はまた、第2の部分を成型するステップも含む。第2の部分は針シールド22を備えている。針シールド22は、内径がハウジング120の外径よりも大きいスリーブを含み、ハウジングの外周側を滑動可能である。針シールド22はまたピン240も含む。ピン240は、線路136に収容され、安全シールド22が後退位置と前進位置との間を移動するにつれて線路136の第1の端部から第2の端部まで線路136に沿って移動するように構成されている。針シールド22は更に、近位側制止面252及び遠位側制止面254を含むラッチアーム250を有する。この方法は更に、針シールド22をハウジング120に組み合わせて、針シールド22をハウジング120に対して望遠鏡のように伸縮可能に配置し、後退位置と前進位置との間で滑動可能にするステップを含む。針シールド22は後退位置においてハウジング120に組み合わされている。組み立て後の安全デバイスではラッチアーム250が、ロック用凹部152に引っ掛かる位置へ向かうように力を受けている。これにより、針シールド22が前進位置にあるときには、近位側制止面252を近位側ラッチ面154と接触させることによってハウジング120に対する針シールド22の近位側への移動を制限し、遠位側制止面254を遠位側ラッチ面156と接触させることによってハウジング120に対する針シールド22の遠位側への移動を制限する。
【0098】
本願の開示内容はまた、安全デバイスを分解から守る方法の例も提供する。
図11に模式的に示されているように、この方法は以下のステップを含む。針シールド22をハウジング120に対して遠位側へ、ハウジング120に取り付けられた注射器1の針を覆う前進位置まで前進させるステップ。前進位置まで針シールド22を前進させることにより、針シールド22に設けられている可撓性ラッチアーム250をハウジング120のロック用凹部152に引っ掛けるステップ。前進位置まで針シールド22を前進させることにより、針シールド22に設けられているピン240を、ハウジング120に設けられている線路136に沿って線路136の遠位端へ移動させるステップ。この方法はまた次のステップも含む。近位側制止面252を近位側ラッチ面154と接触させることによってハウジング120に対する針シールド22の近位側への移動を制限するステップ。針シールド22が前進位置にあるときに、遠位側制止面254を遠位側ラッチ面156と接触させることによってハウジング120に対する針シールド22の遠位側への移動を制限するステップ。
【0099】
本発明から逸脱することなく上記の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には理解されるであろう。特に、上記の製造方法が更に、この明細書に記載されている安全デバイスに関して説明されている特徴のいずれを設けるステップをも含んでもよい。本願の開示の範囲内にある実施形態の他の例では、ラッチアーム250、ピン240、ロック用凹部152、凹部122a、及び線路136のそれぞれの位置が反対にされてもよい。すなわち、ラッチアーム250及びピン240がハウジング120の本体122に配置される一方で、ロック用凹部152、凹部122a、及び線路136が針シールド22のスリーブに配置されてもよい。さらに、実施形態の1つ以上の例に関して説明されている特徴が、他の実施形態に関して説明されている特徴と組み合わされてもよいことが理解されるであろう。さらに、この明細書に記載されている構成要素が、構造的に類似の、又は機能的に同等の構成要素に置換されてもよい。そのような変更が本発明の範囲内にあることは、理解されるであろう。
【国際調査報告】