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特表2023-501303レーザ切断方法及びそれに関連するレーザ切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】レーザ切断方法及びそれに関連するレーザ切断装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20230111BHJP
   C03B 33/037 20060101ALI20230111BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20230111BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20230111BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20230111BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C03B33/09
C03B33/037
B23K26/38 Z
B23K26/53
B28D5/00 Z
H01L21/78 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525845
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2020080823
(87)【国際公開番号】W WO2021089546
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102019217021.8
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514315849
【氏名又は名称】フォトン エネルギー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】ハンス アムラー
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ポリューシュキン
【テーマコード(参考)】
3C069
4E168
4G015
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA08
3C069BB04
3C069CA05
3C069CA11
3C069CB05
3C069EA01
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA11
4E168EA17
4E168JA12
4E168JA14
4G015FA04
4G015FA06
4G015FA09
4G015FB01
4G015FC14
5F063AA37
5F063BA45
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB22
5F063CB26
5F063DD26
5F063DD27
5F063DD31
(57)【要約】
本発明は、板形状の材料を切断するためのレーザ切断方法及びそれに関連するレーザ切断装置(1)に関する。第1のステップにおいて、被切断材を、所定の切断線(20)に沿ってパルス状の第1のレーザ光(11)を照射することによって弱め、特に穿孔される。第2のステップにおいて、第2のレーザ光(13)を照射することによって、前記被切断材を、前記切断線(20)の領域において局所的に加熱し、材料応力を発生させる。被切断材を、第2のステップにおいて、切断線(20)上の1つの点(22)のみにおいて、又は互いに離間した複数の点(22)において加熱する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板形状の材料を切断するためのレーザ切断方法であって、
第1のステップにおいて、被切断材を、所定の切断線(20)に沿ってパルス状の第1のレーザ光(11)を照射することによって弱め、特に穿孔し、
第2のステップにおいて、第2のレーザ光(13)を照射することによって、前記被切断材を、前記切断線(20)の領域において局所的に加熱し、材料応力を発生させ、
前記被切断材を、前記第2のステップにおいて、前記切断線(20)上の1つの点(22)のみにおいて、又は互いに離間した複数の点(22)のみにおいて加熱する、レーザ切断方法。
【請求項2】
前記被切断材を、前記第2のステップにおいて、前記切断線(20)上の互いに離間した、ちょうど2つの点(22)のみにおいて加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3のステップにおいて、前記被切断材を、機械的負荷によって、特に前記被切断材の曲げ、せん断、及び/又は、引き離しによって、前記切断線(20)において分離する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のレーザ光(11)をアキシコンレンズ(14)によってベッセルビーム(15)に集束し、そのベッセルビームの集束領域(16)に前記被切断材を配置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のレーザ光(13)を、弱く集束して又は集束せずに、前記被切断材に放射する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被切断材は、前記第1のレーザ光(11)に対して透明である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被切断材は、前記第2のレーザ光(13)に対して不透明又は半透明である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のレーザ光(11)を、前記被切断材に、300フェムト秒と30ピコ秒との間のパルス長を有するパルスにおいて放射する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記被切断材として、ガラス板(2)を用い、特に非強化ガラスを用い、
前記第1のレーザ光(11)は約1マイクロメートルの波長を有し、
前記第2のレーザ光(13)は約10マイクロメートルの波長を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記被切断材として、シリコン製の板(31)を用い、
前記第1のレーザ光(11)は約2マイクロメートルの波長を有し、
前記第2のレーザ光(13)は約1マイクロメートルの波長を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
板形状の材料を切断するためのレーザ切断装置(1)であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、レーザ切断装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板形状の材料を切断するためのレーザ切断方法及びそれに関連するレーザ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ切断方法においては、被切断材を、短パルスレーザ光を用いて、所定の切断線に沿った一連の焦点において弱める、特に穿孔することによって、最初に直線状の目標切断箇所を形成することが多い。例えば強化ガラスのような割れやすい材料の場合には、この弱め又は穿孔は、切断線に沿って材料を分離するために十分である。非強化ガラス又はシリコンのような他の材料の場合には、追加の熱処理が必要であり、その追加の熱処理によって、材料の分離を容易にする切断線の領域において、被切断材に機械的応力を的確に発生させる。通常、この熱処理のために、切断線は、連続的な、且つ弱くのみ集束した又は全く集束していないレーザ光によって走査される。
【0003】
このような方法の欠点は、熱処理によって比較的低い作業速度しか得られないことであり、特に、このステップにおける可能な光線強度が、材料の損傷を避けるために制限されることである。そのため、十分なエネルギ付与を確保するためには、第2のステップにおいて、比較的長い照射時間が必要となる。そのため、従来のレーザ切断方法においては、熱処理によって事実上速度が低下し、それによって限られた効率しか得られなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、板形状の材料を切断するための特に効率的なレーザ切断方法及びそれに関連するレーザ切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
レーザ切断方法に関して、その課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。レーザ切断装置に関して、その課題は、本発明によれば、請求項11の特徴によって解決される。本発明の、有利な、且つ部分的には個別に発明的な実施形態及びさらなる展開は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0006】
この方法によれば、被切断材を、第1のステップ(「焼きステップ」ともいう)において、所定の切断線に沿ってパルス状の第1のレーザ光を照射することによって弱める、特に穿孔する。第2のステップ(「熱処理」ともいう)においては、次いで、被切断材を、第2のレーザ光を照射することによって切断線の領域において局所的に加熱し、材料応力を発生させる。本発明によれば、第2のステップにおいて、被切断材を切断線全体に沿って連続的に加熱することはない。むしろ、被切断材を、第2のステップにおいて、切断線上を点的にのみ、すなわち、切断線上の1つの点(単一の点)又は互いに離間した複数の点において加熱する。本発明の好ましい実施形態においては、被切断材を、第2のステップにおいて、ちょうど2つの点において加熱し、その際、これら2つの点は、特に切断線の両端部の近傍に配置されている。
【0007】
本発明は、被切断材を的確に分離するための十分な材料応力を発生させるためには、熱処理中に被切断材を点的に加熱すれば十分であることに着目したものである。切断線全体に沿って材料を加熱する必要がないため、熱処理の作業速度が大幅に向上する。特に、この方法においては、2つの方法ステップの作業速度をほぼ一致させることができ、それによって、特に効率よく方法を実行することが可能になる。
【0008】
好適な実施形態においては、方法は、熱処理に続く第3のステップを含む。この第3のステップは機械的な分離ステップであり、そのステップにおいては、被切断材を、機械的負荷によって、特に被切断材の曲げ、せん断、及び/又は、引き離しによって、切断線において分離する。熱処理の際に発生する材料応力の作用によって、おのずから引き裂かれる、又は割れる材料の場合には、第3のステップは省略される。
【0009】
焼きステップにおいて使用される第1のレーザ光は、好ましくは、アキシコンレンズによってベッセル状のビーム(以下簡略して、「ベッセルビーム」という)に集束される。被切断材は、このベッセルビームの集束領域に配置される。通常の定義によれば、円錐形に研磨されたレンズ形状の光学系がアキシコンレンズと呼ばれ、そのレンズは、点光源からの光をアキシコンレンズの光軸に沿った線上に結像させる。
【0010】
好ましくは、生成されるベッセルビームの集束領域が少なくとも被切断材の厚みに等しい長さを有するように、アキシコンレンズを選択する。これによって、所定の焦点において材料の厚み全体にわたって弱めるために、焼きステップの間において材料の厚み全体にわたって同時に十分なエネルギが与えられる。好適な寸法においては、アキシコンレンズが生成するベッセルビームの集束領域は、例えば、長さ(ビーム方向に測定)2ミリメートル、幅(ビーム方向に対して横方向に測定)2~5マイクロメートルを有する。
【0011】
熱処理に使用される第2のレーザ光を、好ましくは、弱くのみ集束して又は集束せずに、被切断材に放射する。
【0012】
第1のレーザ光の光波長は、好ましくは、被切断材が第1のレーザ光の光に対して透明であるように選択される。燃きステップにおいて被切断材を弱める、特に穿孔するためのエネルギ付与は、第1のレーザ光の非線形な光吸収によって行われる。その際、第1のレーザ光に対する被切断材の透明性は、エネルギ付与が被切断材の厚み全体にわたって均一に行われることをもたらす。
【0013】
一方、第2のレーザ光の光波長は、好ましくは、被切断材が第2のレーザ光の光に対して不透明又は半透明であるように選択される。これによって、被切断材が第2のレーザ光の光エネルギの線形吸収によって効果的に加熱され、しかしながら損傷は受けないということがもたらされる。第2のレーザ光の被切断材への浸透深度を高くし、それによって被切断材をその厚み方向にできるだけ均一に加熱することを保障するためには、第2のレーザ光の光に対する被切断材の半透明性が好ましい。
【0014】
好適な実施形態においては、第1のレーザ光を、300フェムト秒と30ピコ秒との間のパルス長を有するパルスにおいて被切断材に放射する。
【0015】
上記全般に説明した方法は、好ましい使用においては、ガラス製の板、特に熱処理されていないガラスを切断するために用いられる。この場合、第1のレーザ光の光波長は、好ましくは0.5マイクロメートルと2マイクロメートルとの間、特に約1マイクロメートルに定められている。本方法の好適な一実施形態においては、モードロックMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)超短パルスレーザが、第1のレーザ光を生成するために使用される。それに対して、第2のレーザ光の光波長は、好ましくは、4マイクロメートルと11.5マイクロメートルとの間、特に5マイクロメートル又は10マイクロメートルに定められている。本方法の好適な一実施形態においては、連続的な(すなわち、非パルスの)COレーザが、第2のレーザ光を生成するために使用される。
【0016】
更なる好ましい使用においては、本発明による方法は、シリコン製の板、特にウエハを切断するために使用される。この場合、第1のレーザ光の光波長は、好ましくは1.5マイクロメートルと4マイクロメートルとの間、特に2マイクロメートルに定められている。この方法の好適な一実施形態においては、同様に、モードロックされたMOPA超短パルスレーザが、第1のレーザ光の生成に使用される。それに対して、第2のレーザ光の光波長は、好ましくは、1マイクロメートルと11.5マイクロメートルとの間、特に1マイクロメートル又は5マイクロメートルに定められている。この方法の好適な一実施形態においては、連続的な(すなわち、非パルスの)ネオジムYAG又はCOレーザが、第2のレーザ光を生成するために使用される。
【0017】
本発明によるレーザ切断装置は、全般に、上記した本発明による方法を、特に上記した実施形態のうちの1つにおいて実行するために構成される。
レーザ切断装置は、特に
・被切断材のシートを保持するワークホルダと、
・第1のレーザ光を発生させる第1のレーザと、
・第2のレーザ光を発生させる第2のレーザと、
・第1レーザ光及び第2レーザ光及び第2レーザ光をワークホルダに対して相対的に移動させる送り機構と、
・本発明による方法を実行するための送り機構及び2つのレーザの制御装置と、
を備える。
【0018】
ワークホルダは、好ましくは、被切断材の板を載せる支持体として形成される。支持体は、好適な形態においては、例えば、所定の非吸収性の、例えばポリテトラフルオロエチレン製の散乱層を有するガラス板によって形成される。
【0019】
送り機構は、好ましくは、(例えば、リニアモータ駆動の、又はスピンドル駆動の)X-Yテーブルとして形成される。送り機構は、好ましくは、ワークホルダ(必要に応じて取り付けられた被切断材の板とともに)を固定配置されたレーザに対して移動させる。
【0020】
レーザ切断装置の代替的な一実施形態において、送り機構は、第1のレーザ及び第2のレーザを、(共通に、又は、互いに独立して、)固定されたワークホルダに対して相対的に移動させる。レーザ切断装置の更なる実施形態における送り機構は、レーザ全体の代わりに、第1及び第2のレーザのそれぞれのビーム出射ヘッドのみを(同様に、共通に、又は、互いに独立して)移動させる。一方、それぞれのレーザの更なる構成要素、特にレーザ共振器、及び必要に応じて存在する増幅器は、固定して配置される。その際、送り機構によって移動されるビーム出射ヘッドとそれぞれのレーザの固定部品とは、レーザ光を導くために、柔軟な光ファイバを介して、第1のレーザの場合は特に中空ファイバを介して互いに結合されている。
【0021】
さらに、本発明は上記の代替的な実施形態の混合形態も含む。その混合形態においては、ワークホルダと、2つのレーザ又はビーム出射ヘッドの少なくとも一方とが(互いに独立して)送り機構によって移動される、及び/又は、その混合形態においては、2つのレーザの一方が送り機構によって全体的に移動され、一方、他のレーザにおいては、ビーム出射ヘッドのみが移動される。
【0022】
第1のレーザは、好ましくは、モードロックされたMOPA超短パルスレーザによって形成される。第1のレーザ光の細長い集束領域を形成するために、第1のレーザの下流にアキシコンレンズが接続されている。第2のレーザは、好ましくは、連続的な(すなわち、非パルスの)ネオジウム-YAGレーザ又はCOレーザとして形成されている。
【0023】
制御装置は、好ましくは、送り機構及び2つのレーザを制御するための制御プログラムが実装された制御コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ又はマイクロコントローラ)によって形成されている。制御プログラムに従って、レーザ又はその出射ヘッド及び/又はワークホルダを所定の切断線に沿って移動させ、レーザ光を移動させることができる。第1のレーザは、その際、制御プログラムに従って、第1のステップにおいて、ワークホルダに保持された材料を切断線に沿った一連の焦点において弱めるように、特に穿孔するようにパルス制御される。第2のレーザは、制御プログラムに従って、第2のステップにおいて、被切断材を切断線に沿って1つの点又は互いに間隔をあけた複数の点において点的に加熱し、材料応力を発生させるように制御される。
【0024】
この2つのステップは、好ましくは、1つのステップの後に(すなわち、時間的に順次に)実行される。特に、第1のレーザ光及び第2のレーザ光が、互いに独立してワークホルダに対して相対的に移動可能である場合、本発明の範囲内において、2つのステップを時間的に重複して実行することも可能である。この場合、被切断材は、切断線のうち、第1のレーザ光によって被切断材があらかじめ弱められた領域、特に穿孔された領域においてのみ、第2のステップにおいて加熱されることになる。
【0025】
好ましくは、レーザ切断装置は、第3のステップにおいて、焼きステップ及び熱処理によって前処理された切断線に沿って、機械的に、特に、被切断材の曲げ、せん断、及び/又は引き離しによって、被切断材を分離するために、機械的分離装置をさらに備える。本発明の範囲において、その分離装置は、ワークホルダ自体によって形成されてもよく、この場合、そのワークホルダは、例えば、互いに傾斜可能又は変位可能な2つの部分によって形成される。代替的には、オプションの分離装置は、ワークホルダとは個別の装置、必要に応じては、空間的に離れた装置によって形成される。
【0026】
値の指定の過程における「約」という用語は、特に断らない限り、指定値から10%(すなわち±10%)までの、好ましくは5%(すなわち±5%)までの偏差を含むものと解される。
【0027】
以下において、本発明の実施例について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】板形状の材料、この場合はガラス板を切断するレーザ切断装置を簡略化して概略的に示す斜視図であり、そのレーザ切断装置は、被切断材を保持するワークホルダと、第1のレーザ光を発生する第1のレーザと、第2のレーザ光を発生する第2のレーザと、第1のレーザ光及び第2のレーザ光に対してワークホルダを移動する送り機構と、送り機構と2つのレーザのための制御装置とを備える。
図2】第1のレーザ光の光経路と、光経路に配置されたアキシコンレンズとを示す概略図である。
図3】レーザ切断装置によって実行される方法の第1のステップ後のガラス板を示す平面図であり、第1のステップにおいては、ガラス板を、第1のレーザ光によって、切断線に沿った一連の焦点において弱める。
図4】第2のステップ後のガラス板を示す、図3に応じた平面図であり、第2のステップにおいては、材料応力を発生させるために、ガラス板を、第2のレーザ光によって、切断線上の1つの点において局所的に加熱する。
図5】第3のステップ後のガラス板を示す、図3に応じた平面図であり、第3のステップにおいては、ガラス板を、機械的負荷によって、この場合は曲げによって切断線に沿って分離する。
図6】被切断材のさらなる実施例として、第1のステップ後のシリコンウエハを示す、図3に応じた平面図であり、この第1のステップにおいては、シリコンウエハを、第1のレーザ光によって切断線に沿った一連の焦点において弱める。
図7】第2のステップ後のシリコンウエハを示す、図3に応じた平面図であり、この第2のステップにおいては、材料応力を発生させるために、シリコンウエハを、第2のレーザ光によって、切断線上の対峙する2つの点において局所的に加熱する。
図8】第3のステップ後のシリコンウエハを示す、図3に応じた平面図であり、この第3のステップにおいては、シリコンウエハを、機械的負荷によって、この場合は引き離しによって切断線に沿って分離する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
すべての図において、対応する部品及び構造には常に同一の参照符号を付す。
【0030】
図1は、板形状の材料を切断するための(レーザ切断)装置1を簡略化して概略的に示す斜視図であり、その板形状の材料は、本実施例においては、非熱処理ガラス製のガラス板2である。そのガラス板2は、例えば、1ミリメートルの厚さを有する。
【0031】
装置1は、ガラス板2を保持するためのワークホルダ3を含む。そのワークホルダ3は、ガラス製の支持板4によって形成されており、その支持板のワーク側(すなわち、装置1の動作時に被切断ガラス板2が目的にしたがって置かれる側)にはポリテトラフルオロエチレン製の散乱層5が設けられている。
【0032】
その支持板4は、例えば5センチメートルの厚さを有し、その散乱層5は例えば、0.2ミリメートルの厚さを有する。
【0033】
ワークホルダ3は、X-Yテーブルとして形成されている。そのX-Yテーブルにおいて、支持板4は、送り機構6(図1においては概略した表示のみ)によって、支持板4の表面に平行な面内において、矢印7によって示す方向に変位可能である。送り機構6は、例えば、支持板4に駆動結合される2つのリニアモータを含む。
【0034】
装置1は、第1のレーザ光11を発生させるための第1のレーザ10と、第2のレーザ光13を発生させるための第2のレーザ12とをさらに含む。2つのレーザ10及び12は、それぞれから放射されるレーザ光11又は13が、それぞれ支持板4のワーク側表面に対して垂直に向けられるように、ワークホルダ3の上方に取り付けられている。レーザ10及び12は固定されており、そのため、送り機構6によって支持板4が移動された際に、支持板4に取り付けられたガラス板2はレーザ光11及び13に対して相対的に移動する。
【0035】
第1のレーザ10は、モードロックMOPA超短パルスレーザであり、図1による実施例においては、レーザパルスの形態において第1のレーザ光11を発生する。第1のレーザ光11は、約1マイクロメートル、具体的には例えば1064ナノメートルの光波長を有する。したがって、第1のレーザ光11は電磁スペクトルの近赤外域にあり、被切断ガラス板2は第1のレーザ光11に対して透明である。
【0036】
第1のレーザ10の前方に、光学系としてアキシコンレンズ14が置かれ、そのアキシコンレンズは第1のレーザ光11を細長い集束領域16を有するベッセルビーム15に集束させる。例示的な大きさにおいては、アキシコンレンズ14は、2~5マイクロメートルの幅(ビーム方向に対して横方向に測定)、及び約2ミリメートルの長さ(ビーム方向に測定)を有する第1のレーザ光11の集束領域16を生成する。図2には、アキシコンレンズ14とそれによって生成されるベッセルビーム15、及びその集束領域16が、簡略化されて概略的に示されている。装置1の範囲において、ベッセルビーム15の集束領域16が支持板4に取り付けられたガラス板2の全厚さを通過するように、アキシコンレンズ14は、ワークホルダ3に関連して調整されている。
【0037】
図1による実施形態においては、第2のレーザ12はCOレーザである。そのCOレーザは、第2のレーザ光13を、約10マイクロメートルの、具体的には例えば10.6マイクロメートルの光波長と、例えば100ワットのパワー/強度とを有する連続的な(すなわち非パルスの)レーザ光として生成する。そのため、第2のレーザ光13の光は、電磁スペクトルの中赤外域にあり、その結果、被切断ガラス板2は、ガラスの種類に応じて、第2のレーザ光13に対して半透明、又は不透明である。第2のレーザ光13は、支持板4及びその上に搭載されたガラス板2に対して非集束に放射される。
【0038】
最後に、装置1は、制御装置としての制御コンピュータ17を含む。この制御コンピュータ17には制御プログラム18が実装されており、その制御プログラムに応じて、制御コンピュータ17は、装置1の動作中に送り機構6、及び2つのレーザ10及び12を制御する。
【0039】
目的に応じて、レーザ切断方法は装置1によって実行され、この方法は、非熱処理ガラスの切断に使用される場合、3つのステップを含む。第1のステップ後の、又は第2のステップ後の、又は第3のステップ後のガラス板2の状態を図3図5に示す。
【0040】
この方法の第1のステップにおいて、支持板(制御コンピュータ17において実行される制御プログラム18によって制御され、送り機構6によって駆動される)を、第1のレーザ10に対して相対的に移動させることによって、第1のレーザ光11は、所定の切断線20(図3)に沿って、被切断ガラス板2上をガイドされる。高集束パルスレーザ光11によって、切断線20に沿ってガラス板2に一連の焦点21(図3)が生成され、その焦点において、ガラス板2の材料はパルスエネルギの非線形吸収によって弱められる、又は破壊される。第1のレーザ光11の光に対するガラス板2の透明性と、集束領域16の軸方向の長い延びによって、各焦点21は、2~5マイクロメートルの幅においてガラス板2の全厚さに及んでいる。焦点21は、切断線20上に、例えば1~10マイクロメートル、特に4~5マイクロメートルの間隔において生成される。ガラス板2から出たレーザ光11は、散乱層5において吸収されずに散乱され、その結果、レーザ光の光経路のさらなる経過においてエネルギ密度が減少する。それによって、第1のレーザ光11は、支持板4を損傷させることなく透過する。
【0041】
続く第2のステップにおいては、第2のレーザ光13が切断線20上の所定の1つの点22に出現するように、被切断ガラス板2をワークホルダ3とともに移動させる(図4)。ここで、ガラス板2に第2のレーザ光13を例えば5~2000ミリ秒の間照射することによって、ガラス板2の材料を1つの点22において局所的に加熱する。この熱処理によって、ガラス板2に材料応力が発生し、その材料応力は、その後の切断線20におけるガラス板2の分離を促進する。
【0042】
そのために、第3のステップにおいて、ガラス板2は機械的に負荷される。その結果、ガラス板は、前のステップによって前処理された切断線20において割れる。この機械的負荷の結果として、ガラス板2は、図5による第3のステップ後においては、切断線20において分離された2つの部分23として存在する。本実施例においては、機械的負荷は、詳細には示されない分離装置を使用したガラス板2の曲げによって行われる。その分離装置は、好ましくは、一体的な、及び制御コンピュータ17によって自動的に作動する機構として形成されている。この場合、分離装置は、例えば昇降機構であり、その昇降機構は、ガラス板2を局所的に持ち上げ、それによって、ガラス板2の曲げをその自重の作用によって生じさせる。代替的には、ガラス板2を曲げるために、装置1とは個別の分離装置を用いることも可能である。更に代替的には、ガラス板2を手動によって曲げること、又は他の方法によって負荷することも可能である。
【0043】
図6図8に示される更なる使用において、レーザ切断方法は、シリコン製のウエハ31からチップ30(例えば、集積電子回路)を分離するために使用される。図3図5の順序と類似して、図6図9は、第1のステップ後の、又は第2のステップ後の、又は第3のステップ後のウエハ31を示す。すべてのチップ30が個別化されるまで、方法ステップは異なる切断線20を使用して繰り返される。
【0044】
図6図8に示されるレーザ切断方法の変形は、図1による装置1に(以下に説明する相違点を除いて)対応する装置1の実施形態を用いて実行される。しかしながら、図1による実施形態とは異なり、ウエハ31を切断するために、第1のレーザ10及び第2のレーザ12は、2マイクロメートルの光波長を有する第1のレーザ光11が生成され、1マイクロメートルの光波長を有する第2のレーザ光13が生成されるように、形成されている。このような光波長の選択によって、ウエハ31は、第1のレーザ光11の光に対して透明であり、第2のレーザ光13の光に対して半透明又は不透明であることが保障される。また、この変形においては、COレーザの代わりに、ネオジウムYAGレーザを第2のレーザ12として使用可能である。
【0045】
図3図5による方法変形との更なる相違は、図7による第2のステップにおいて、ウエハ31は、切断線20の対峙する端部に配置された2つの点22において加熱されることである。
【0046】
最後に、図8によるウエハ31の分離は、切断線20によって区切られたウエハ31の部分23を引き離すことによって行われる。このために、ウエハ31は、好ましくは、図示しない可撓性の支持フィルムに平面的に接着され、この支持フィルムは、その部分23を分離するために引き伸ばされる。
【0047】
図6図8に示すステップ順序に代えて、ウエハ31を最初に分割せずに、まず、チップ30の分離に必要な全ての切断線20を、第1のステップと第2のステップとを連続して繰り返し実行することによって下準備する。続いて、第3のステップを1回実行することによって、すなわち支持フィルムを1回引き伸ばすことによって、ウエハ31の全てのチップ30を同時に互いに分離することができる。
【0048】
本発明は、上記の実施例から特に明白である。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。むしろ、本発明の多数のさらなる実施形態は、特許請求の範囲及び上記の説明から導き出すことができる。特に、上記の実施例の個々の特徴は、本発明から逸脱することなく、他のやり方において組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 (レーザ切断)装置
2 ガラス板
3 ワークホルダ
4 支持板
5 散乱層
6 送り機構
7 矢印
10 (第1の)レーザ
11 (第1の)レーザ光
12 (第2の)レーザ
13 (第2の)レーザ光
14 アキシコンレンズ
15 ベッセルビーム
16 集束領域
17 制御コンピュータ
18 制御プログラム
20 切断線
21 焦点
22 点
23 部分
30 チップ
31 ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】