(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】抗ミュラー管ホルモンポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230111BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230111BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230111BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230111BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20230111BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20230111BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20230111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230111BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230111BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/575 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61K38/22
A61P15/08
A61P15/18
A61P35/00
C07K16/18
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525870
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 AU2020051187
(87)【国際公開番号】W WO2021081601
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】594202523
【氏名又は名称】モナシュ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・アンソニー・ハリスン
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ルイーズ・ウォルトン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084DB51
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA861
4C084ZA862
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC031
4C084ZC032
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体、より具体的には、AMHII型受容体(AMHR2)のアゴニストであるAMH類似体に関する。より具体的には、本開示は、配列番号1のアミノ酸残基533~548のうちの1つ以上内に存在する修飾を有するAMH類似体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C末端ドメイン配列を含む、単離された抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体であって、前記C末端ドメインが、配列番号5に示される天然ヒト成熟プロセシングAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、前記修飾が、配列番号1のアミノ酸残基533~548のうちの1つ以上内に存在する、単離された抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体。
【請求項2】
前記AMH類似体が、前記天然成熟プロセシングAMHポリペプチドの活性と比較して、少なくとも2.5倍大きい活性を有する、請求項1に記載のAMH類似体。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸残基30~447に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むN末端ドメインをさらに含む、請求項1または2に記載のAMH類似体。
【請求項4】
前記N末端ドメインが、X
1X
2X
3RKKRX
8X
9X
10X
11(配列番号37)を含むプロタンパク質変換酵素部位を含み、X
1は、非存在またはイソロイシンであり、X
2は、非存在またはセリンであり、X
3は、非存在またはセリンであり、X
8は、非存在またはセリンであり、X
9は、非存在またはバリンであり、X
10は、非存在またはセリンであり、X
11は、非存在またはセリンである、請求項3に記載のAMH類似体。
【請求項5】
前記プロタンパク質変換酵素部位が、ISSRKKRSVSS(配列番号6)を含む、請求項4に記載のAMH類似体。
【請求項6】
前記プロタンパク質変換酵素部位が、RKKR(配列番号40)を含む、請求項4に記載のAMH類似体。
【請求項7】
前記N末端ドメインおよびC末端ドメインが、別個のポリペプチドである、請求項3~6のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸残基533~548内に存在する前記修飾が、少なくとも1つのアミノ酸置換である、請求項1~7のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸残基533~548内に存在する前記修飾が、単一のアミノ酸置換である、請求項8に記載のAMH類似体。
【請求項10】
前記アミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基533、535または548に位置する、請求項8または9に記載のAMH類似体。
【請求項11】
前記アミノ酸置換が、(i)G533、(ii)L535および(iii)G533+L535からなる群から選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項12】
前記置換が、(i)L535Mおよび(ii)G533A+L535Mからなる群から選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項13】
前記修飾が、(i)G533A、(ii)G533S、(iii)G533K、(iv)G533Lおよび(v)G533Rからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項14】
前記修飾が、G533Kである、請求項1~13のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項15】
前記C末端ドメインが、
(i)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYAKKLLISLSEERISAHHVPNMVATECGCR (配列番号9)、
(ii)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYASKLLISLSEERISAHHVPNMVATECGCR (配列番号10)、
(iii)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYAAKLLISLSEERISAHHVPNMVATECGCR (配列番号11)、
(iv)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYAHKLLISLSEERISAHHVPNMVATECGCR (配列番号12)、
(v)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYAGKMLISLSEERISAHHVPNMVATECGCR (配列番号13)、(vi)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYAAKMLISLSEERISAHHVPNMVATECGCR (配列番号14)、および
(vii)SAGATAADGPCALRELSVDLRAERSVLIPETYQANNCQGVCGWPQSDRNPRYGNHVVLLLKMQARGAALARPPCCVPTAYAAKMLISLSEERISAHKVPNMVATECGCR (配列番号15)からなる群から選択される配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項16】
前記C末端ドメインが、任意選択で、前記N末端に1つ以上のさらなるアミノ酸残基を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項17】
前記N末端における前記1つ以上のさらなるアミノ酸残基が、SVSS(配列番号41)を含む、請求項16に記載のAMH類似体。
【請求項18】
Fcタンパク質、検出タグ、精製タグ、または担体分子のうちの1つ以上から選択される融合パートナーをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のAMH類似体。
【請求項19】
C末端ドメイン配列を含むポリペプチドを含むAMH前駆体であって、前記C末端ドメインが、配列番号5に示される天然ヒト成熟プロセシングAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、前記修飾が、配列番号1のアミノ酸残基533~548のうちの1つ以上内に存在する、AMH前駆体。
【請求項20】
前記修飾が、G533A、G533KまたはG533Sである、請求項19に記載のAMH前駆体。
【請求項21】
前記ポリペプチドが、配列番号1または配列番号3に示される配列を含み、配列番号1のG533に対応するアミノ酸が、G533A、G533SまたはG533Kへの置換によって修飾される、請求項19または20に記載のAMH前駆体。
【請求項22】
配列番号4に示される配列を含むAMHポリヌクレオチドであって、配列番号4のヌクレオチド1603~1605におけるポリヌクレオチド配列が、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される、AMHポリヌクレオチド。
【請求項23】
配列番号34に示される配列を含むAMHポリヌクレオチドであって、配列番号33のヌクレオチド1597~1599におけるポリヌクレオチド配列が、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される、AMHポリヌクレオチド。
【請求項24】
配列番号35に示される配列を含むAMHポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド244~246におけるポリヌクレオチド配列が、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される、AMHポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体または請求項19~21のいずれか一項に記載のAMH前駆体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項27】
AAVベクターである、請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
請求項26または27に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項29】
請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体、請求項22~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項26もしくは27に記載のベクターを含む組成物。
【請求項30】
前記組成物が、細胞治療剤、免疫治療剤、化学療法剤または放射線治療剤と組み合わせて投与される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
女性対象における機能的卵巣予備能の低下を予防する方法であって、前記対象に、請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体、または請求項29もしくは30に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項32】
女性対象における避妊の方法であって、前記対象に、請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体、または請求項29もしくは30に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項33】
対象における卵巣および/または子宮保護のための方法であって、前記対象に、請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体、または請求項29もしくは30に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項34】
対象における婦人科がんを治療するための方法であって、前記対象に、請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体、または請求項29もしくは30に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記対象が、がんの治療を受けているか、もしくは受けようとしているか、または慢性疾患もしくは障害の治療を受けているか、もしくは受けようとしている、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が自己免疫疾患を有し、免疫療法で、治療されるようになるか、もしくは現在治療されているか、もしくは治療されてきているか、または前記対象が、子宮もしくは卵巣における細胞に対する細胞死もしくは細胞傷害を引き起こす細胞傷害性薬物もしくは細胞傷害性薬剤で治療されるようになるか、もしくは現在治療されているか、または治療されてきている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、ヒトである、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、ネコ、イヌ、およびウマから選択される非ヒト動物である、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
卵胞予備能の温存、避妊、子宮保護、または婦人科がんを治療するための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体の使用。
【請求項40】
前記AMH類似体が、N末端ホモ二量体およびC末端ホモ二量体を含む四次複合体として投与される、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法または請求項39に記載の使用。
【請求項41】
請求項31~38のいずれか一項に記載の方法に従って使用するためのキットであって、
(i)請求項1~18のいずれか一項に記載のAMH類似体を含む投与デバイスと、
(ii)対象における使用のための説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月30日に出願されたAU2019/904097に対する優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で引用または参照されるすべての文書、および本明細書で引用または参照されるすべての文書は、本明細書で言及される、または参照により本明細書に組み込まれる任意の文書における任意の製品の製造業者の指示、説明、製品仕様、および製品シートとともに、それらの全体が参照により本明細書によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表の電子提出の全体的な内容は、すべての目的に関して、参照により、その全体が組み込まれる。
【0004】
本開示は、抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体、より具体的には、AMHII型受容体(AMHR2)のアゴニストであるAMH類似体に関する。
【背景技術】
【0005】
がんは世界で2番目に主要な死因であり、2018年には米国だけで960万人が死亡したと推定されている。米国では、2026年までに若い成人がんの生存者(15~39歳)が200万人弱になると推定されている。残念ながら、これらのがんの治療の多くはまた、不妊症(infertility)、不妊症(sterility)、または早期閉経を引き起こす可能性がある(Jeruss,JS et al.,(2009)N Engl J Med 360,902-911)。不妊症または早期卵巣不全は、化学毒性に起因する急速な卵母細胞の喪失に起因して、がん生存者の40%~80%において報告されている(Pereila N et al.,(2017)J Oncol Praction 13,643-651)。がん生存者のリプロダクティブヘルスは、患者の将来の生活の質についての主要な懸念事項であり、不妊症は現在および将来の関係におけるストレスの予測因子であるため、心理的苦痛をもたらす可能性が高い(Rosen A et al.,(2009)Semin Oncol Nurs 25,268-277)。女性がん患者に対する確立された不妊治療の選択肢は、患者のサブセットでの使用にのみ適した侵襲的アプローチに限定され、一方で、研究的アプローチは限定された有用性を有する(Woodruff TK et al.,(2010),Nat Rev Clin Oncol 7,466-475)。さらに、これらの侵襲的なアプローチには、患者の適時紹介および専門分野間のケアの調整に大きく依存するため、後方業務上の障壁があり、患者が利用可能な選択肢にアクセスすることを制限し、がん治療の待機時間を延ばす可能性がある。さらに、高額の治療費および特定の保険会社による補償の不足による金銭的な障壁は、侵襲的な不妊治療の適用性をさらに制限する。理想的ながん生殖医療温存治療は、がん治療を受けている若い女性の妊孕性を温存するがん治療と同時に投与される非介入薬である。
【0006】
ヒトAMH遺伝子は、第19染色体上に位置し、その発現は、性的二形性である。AMHは、両能性泌尿生殖隆線のミュラー管の退行に影響を及ぼし、それを放置しておくと、子宮、子宮頸部、卵管、および膣上部などの女性の生殖器系構造を生じさせるため、正常な男性生殖器系の発達には絶対的に必要である(Cate et al.,(1986)Cell 45:685-698)。男性において、AMH(ミュラー管抑制因子(MIS)としても知られる)の発現は、胎児精巣において妊娠9週目から始まり、思春期まで高レベルで続き、その後、発現レベルは劇的に低下する。女性において、AMHは、成人男性と同様のレベルで、思春期前から閉経まで顆粒膜細胞において出生後のみに産生され、その後、発現が停止する。男性胎児において、AMHは、ミュラー管、卵管の前駆体、子宮、子宮頸部および膣上部の退行を引き起こす。
【0007】
AMHは、セリンスレオニンキナーゼ受容体にわたるI型およびII型単一膜貫通ヘテロ二量体に結合した後に、その生物学的効果を発揮する。AMHは、II型受容体に結合し、これは、I型受容体からシグナル伝達を開始するII型受容体によるI型受容体のGSボックスキナーゼドメインの交差リン酸化をもたらす。続いて、SMAD1、5および8が活性化され、SMAD4とともに遺伝子転写を調節する。AMHII型受容体(本明細書では、AMHR2とも呼ばれる)は、65kDaのタンパク質であり、胚および成人ミュラー管構造、ならびに乳房組織、前立腺組織、性腺、運動ニューロン、および脳において検出されている。AMHR2の発現はまた、性腺、ならびに卵巣体腔上皮においても検出され得る。
【0008】
例えば、細胞傷害性薬物または他の薬物治療(例えば、化学療法)によって引き起こされる早期卵巣不全を予防することによって、または、例えば、自己免疫疾患などの慢性疾患または障害の治療中に、妊娠が望ましくないであろう長期治療を受けながら、卵巣予備能を温存するために、妊孕性の温存を容易にする化合物に対する当該技術分野の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
研究により、抗ミュラー管ホルモン(AMH)が卵巣予備能(すなわち、原始卵胞の質および量)の尺度であることが示されている(Visser JA et al.,(2012)Nat Rev Endocrinol 8,331-341)。AMHアッセイは、不妊治療中および性腺毒性がん治療または卵巣手術後の卵巣予備能を臨床的に評価するために使用され得る(Victoria M et al.,(2019)J Gynecol Obstet Hum Reprod 48,19-24)。化学療法剤は、(i)発育卵胞においてアポトーシスを誘導すること、および(ii)Akt依存性原始卵胞の動員を増加させることによって卵巣を傷害することが仮定される。まとめて、これらのプロセスが、卵巣予備能の急速な「焼損」をもたらす(R.R.R.Wong RR et al.,(2014)Endocr Relat Cancer 21,R227-233)。
【0010】
本発明者らは、部位特異的変異導入を使用して、ヒトAMH上の推定II型受容体(AMHR2)結合部位を同定した。細胞モデルを利用して、本発明者らは、野生型AMH成熟ドメインと比較して、AMH受容体複合体からのシグナル伝達を増加させるAMH類似体を同定した。AMH類似体は、AMHII型受容体のアゴニストとして有用であり得ると考えられている。これらの類似体は、がん生殖医学(すなわち、がん治療中およびがん治療後の妊孕性の温存)における、ならびに婦人科がんの治療における、ならびに可逆的避妊薬としての用途を有し得る。驚くべきことに、本発明者らは、野生型AMH成熟ドメイン配列におけるGly533の変異が、野生型/天然AMH(配列番号1)と比較して有意に増加したAMH活性をもたらすことを見出した。この発見は、グリシンが、タンパク質-タンパク質相互作用に典型的に関与する残基ではないことを考慮すると、驚くべきことであった。かかる類似体は、化学療法中の妊孕性温存薬として、家系のがんの治療のための薬剤として、および性腺刺激剤によって引き起こされる卵巣予備能への傷害を制限することができる潜在的な可逆的避妊薬として、がん生殖医学的および妊孕性関連用途における有用性を有することが予想される。
【0011】
一態様では、本開示は、配列番号1に示される天然AMHポリペプチドに対する少なくとも80%の同一性、または配列番号1のアミノ酸残基452~560に対する少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド配列を含む、抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体を提供する(
図1A)。別途示されない限り、本明細書を通しての残基番号付けは、配列番号1に示されるヒトAMH前駆体(
図1A)を参照しており、前駆体配列中の第1の残基(例えば、メチオニン)は、位置1として番号付けされ、配列中の最後の残基は、位置560として番号付けされる。
【0012】
一実施例では、AMH類似体は、配列番号1に示される天然のAMHポリペプチドと少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性、または配列番号1のアミノ酸残基452~560と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む(
図1A)。
【0013】
別の態様では、本開示は、配列番号1に示される天然ヒトAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含むポリペプチド配列を含むAMH類似体を提供し、その修飾は、配列番号1のアミノ酸残基452~560内に存在する。
【0014】
別の態様では、本開示は、配列番号1(
図1A)のアミノ酸残基452~560と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むC末端ドメインを含む、単離された抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、C末端ドメイン配列を含む、単離された抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体であって、C末端ドメインが、配列番号5に示される天然ヒト成熟プロセシングAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、その修飾が、配列番号1のアミノ酸残基533~548のうちの1つ以上内に存在する、単離された抗ミュラー管ホルモン(AMH)類似体を提供する。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸残基533~548内に存在する修飾は、少なくとも1つのアミノ酸置換である。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸残基533~548内に存在する修飾は、単一アミノ酸置換である。
【0016】
一実施例では、C末端ドメインは、配列番号1(
図1A)のアミノ酸残基452~560に対して少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0017】
一実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基30~447と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むN末端ドメインをさらに含む。一実施例では、N末端ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基30~447に対して少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む(
図1A)。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基30~451に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基26~447に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基26~451に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。
【0018】
一実施例では、N末端ドメインおよびC末端ドメインは、共有結合されていない。一実施例では、N末端ドメインおよびC末端ドメインは、ペプチド結合によって共有結合されておらず、すなわち、N末端ドメインおよびC末端ドメインは、別個のポリペプチドである。代替実施例では、N末端ドメインおよびC末端ドメインは、共有結合されている。一実施例では、共有結合は、ペプチド結合を含む。
【0019】
いくつかの実施例では、N末端ドメインは、X1X2X3RKKRX8X9X11(配列番号37)を含むプロタンパク質変換酵素部位を含み、式中、X1は、非存在またはイソロイシンであり、X2は、非存在またはセリンであり、X3は、非存在またはセリンであり、X8は、非存在またはセリンであり、X9は、非存在またはバリンであり、X10は、非存在またはセリンであり、X11は、非存在またはセリンである。一実施例では、プロタンパク質変換酵素部位は、ISSRKKRSVSS(配列番号6)を含む。一実施例では、プロタンパク質変換酵素部位は、RKKR(配列番号40)を含む。
【0020】
いくつかの実施例では、類似体の活性は、天然ヒトAMHの活性に匹敵するか、またはそれを超える。特定の例では、天然ヒトAMHは、配列番号1の残基452~560のポリペプチド配列、または配列番号5に示されるポリペプチド配列を含む。
【0021】
一超では、AMH類似体の活性は、天然成熟プロセシングAMHポリペプチドの活性と比較して、天然ヒトAMHに等しいか、約2倍超か、約2.5倍超か、約3倍超か、約3.5倍超か、約4倍超か、約4.5倍超か、約5倍超か、または5倍超である。いくつかの実施形態では、天然成熟プロセシングAMHポリペプチドは、配列番号5に示される配列を含む。いくつかの実施形態では、天然成熟プロセシングAMHポリペプチドは、配列番号36に示される配列を含む。一実施例では、類似体の活性は、ルシフェラーゼアッセイによって決定される。
【0022】
一実施例では、AMH類似体の活性は、少なくとも2.5倍超か、または2.5倍~5倍超である。
【0023】
一実施例では、配列は、単一のアミノ酸残基修飾を含む。
【0024】
一実施例では、配列は、2つのアミノ酸残基修飾を含む。
【0025】
一実施例では、配列は、3つのアミノ酸残基修飾を含む。
【0026】
別の実施例では、配列は、5つ以下のアミノ酸残基修飾を含む。
【0027】
一実施例では、修飾は、置換である。
【0028】
一実施例では、C末端ドメインは、配列番号5に示される天然ヒトAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、その修飾は、配列番号1のアミノ酸残基533~548内に存在する。
【0029】
別の実施例では、C末端ドメインは、配列番号5に示される配列を含む成熟プロセシングAMHポリペプチドに対する単一アミノ酸残基修飾を含む。別の実施例では、C末端ドメインは、配列番号5に示される配列を含む成熟プロセシングAMHポリペプチドに対して2つのアミノ残基修飾を含む。別の実施例では、C末端ドメインは、配列番号5に示される配列を含む成熟プロセシングAMHポリペプチドに対して3つのアミノ残基修飾を含む。
【0030】
いくつかの実施例では、C末端ドメインは、任意選択で、N末端に1つ以上のさらなるアミノ酸残基(例えば、配列番号5に示される天然ヒトAMHポリペプチドに対する)を含む。
【0031】
いくつかの実施例では、修飾は、アミノ酸置換である。
【0032】
一実施例では、アミノ酸残基置換は、配列番号1の残基533、535および/または548に位置する。
【0033】
一実施例では、アミノ酸置換は、G533、L535、およびG533+L535からなる群から選択される。別の実施例では、置換は、L535M、およびG533A+L535Mからなる群から選択される。
【0034】
一実施例では、アミノ酸修飾は、配列番号1のG533にある。別の実施例では、修飾は、配列番号1のG533A、G533S、G533K、G533LおよびG533Rからなる群から選択される。別の実施例では、修飾は、配列番号1のG533A、G533SおよびG533Kからなる群から選択される。
【0035】
特定の例では、修飾は、配列番号1のG533Kである。
【0036】
一実施例では、N末端における1つ以上のさらなるアミノ酸残基は、SVSS(配列番号41)を含む。
【0037】
さらに別の実施例では、AMH類似体は、AMHII型受容体(AMHR2)のアゴニストである。一実施例では、AMH類似体は、AMHR2に特異的に結合する。
【0038】
いくつかの実施例では、AMH類似体のAMHR2に対する受容体結合親和性は、天然ヒトAMHに対して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または5倍超増加する。
【0039】
一実施例では、AMH類似体は、ヒトポリペプチドである。
【0040】
一実施例では、AMHは、配列番号3に示される配列を含むAMH前駆体に由来する。一実施例では、前駆体のG533におけるアミノ酸残基(すなわち、配列番号3における残基535)は、アラニン、セリンまたはリジンへの置換によって修飾される。
【0041】
いくつかの実施例では、AMH類似体またはAMH前駆体配列は、タンパク質分解プロセシングを改善するためにさらに修飾される。一実施例では、R448~R451における天然タンパク質分解プロセシング部位は、ISSRKKRSVSS(配列番号6、
図1B)に示される配列で置き換えられる。
【0042】
いくつかの実施例では、AMH類似体またはAMH前駆体は、天然シグナル伝達ペプチドを置き換えることによって組換え産生を増強するようにさらに修飾される。一実施例では、MRDLPLTSLALVLSALGALLGTEAL(配列番号7)に示される配列からなる天然ヒトAMHシグナル伝達配列は、ラットアルブミンシグナルペプチド配列で置き換えられる。一実施例では、ラットアルブミンシグナル配列は、MKWVTFLLLLFISGSAFS(配列番号8)に示される配列を含むか、またはそれからなる。
【0043】
一実施例では、AMH類似体またはAMH前駆体は、タンパク質分解プロセシング部位およびシグナルペプチド配列の両方に対する修飾を含む。
【0044】
いくつかの実施例では、AMH類似体またはAMH前駆体は、精製を補助するためのHisタグ、例えば、His6タグをさらに含んでもよい。いくつかの実施例では、N末端ドメインは、N末端Hisタグをさらに含んでもよい。
【0045】
特定の実施例では、AMH前駆体は、
【化1】
(配列番号3)に示される配列を含むか、またはそれからなり、G533におけるアミノ酸残基(配列番号1に示される天然配列を参照して、太字および下線で示され、番号付けされる)は、アミノ酸置換によって修飾される。
【0046】
別の実施例では、AMH類似体は、MKWVTFLLLLFISGSAFS(配列番号8)として示されるシグナル配列を欠く配列番号3を含むか、またはそれからなり、G533におけるアミノ酸残基(太字および下線で示される)は、アミノ酸置換によって修飾される。
【0047】
疑義を避けるために、G533への言及は、配列番号1に示される天然ヒトAMH配列における残基位置533に位置するGlyを指す。G533は、配列番号3に示される修飾配列におけるG535に対応する。
【0048】
一実施例では、配列番号3のG533におけるアミノ酸置換は、G533A、G533SまたはG533Kである。
【0049】
別の態様では、本開示は、
【化2】
(配列番号9)、
【化3】
(配列番号10)、
【化4】
(配列番号11)、
【化5】
(配列番号12)、
【化6】
(配列番号13)、
【化7】
(配列番号14)、および
【化8】
(配列番号15)からなる群から選択される配列を含むC末端ドメインを有するAMH類似体を提供する。
【0050】
いくつかの実施例では、AMH類似体は、Fcタンパク質、検出タグ、精製タグ、または担体分子のうちの1つ以上から選択される融合パートナーをさらに含む。
【0051】
さらなる態様では、本開示は、プロモーターに作用可能に結合した、本明細書に記載のAMH類似体またはAMH前駆体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。一実施例では、ポリヌクレオチドは、
【化9】
(配列番号4)に示される配列を含むか、またはそれからなり、(太字および下線として示される)ヌクレオチド1603~1605におけるポリヌクレオチド配列は、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される。
【0052】
一実施例では、配列番号4におけるポリヌクレオチド残基1603~1605は、gct、gcc、gca、gcg、tct、tcc、tca、tcg、aaaまたはaagからなる群から選択される。
【0053】
さらなる態様では、C末端ドメイン配列を含むポリペプチドを含むAMH前駆体であって、C末端ドメインが、配列番号5に示される天然ヒト成熟プロセシングAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、修飾が、配列番号1のアミノ酸残基533~548のうちの1つ以上内に存在する、AMH前駆体が提供される。
【0054】
いくつかの実施例では、修飾は、G533A、G533KまたはG533Sである。
【0055】
いくつかの実施例では、ポリペプチドは、配列番号1または配列番号3に示される配列を含み、配列番号1のG533に対応するアミノ酸は、G533A、G533SまたはG533Kへの置換によって修飾される。
【0056】
さらなる態様では、配列番号4に示される配列を含むAMHポリヌクレオチドであって、配列番号4のヌクレオチド1603~1605のポリヌクレオチド配列が、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される、AMHポリヌクレオチドが提供される。
【0057】
さらなる態様では、配列番号34に示される配列を含むAMHポリヌクレオチドであって、配列番号33のヌクレオチド1597~1599のポリヌクレオチド配列が、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される、AMHポリヌクレオチドが提供される。
【0058】
さらなる態様では、配列番号35に記載の配列を含むAMHポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド244~246におけるポリヌクレオチド配列が、アラニン(A)、セリン(S)またはリジン(K)をコードするように修飾される、AMHポリヌクレオチドが提供される。
【0059】
一実施例では、AMH類似体は、組換え産生される。一実施例では、AMH前駆体は、組換え産生される。
【0060】
一実施例では、AMH類似体をコードするポリペプチドは、ベクター、好ましくは、哺乳類ベクターにおいて発現される。別の実施例では、ベクターは、細菌ベクターである。さらなる例では、ベクターは、ウイルスベクターである。特定の例では、ベクターは、pcDNA3.1ベクターである。
【0061】
いくつかの実施例では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。特定の例では、ベクターは、AAV血清型9(AAV-9)である。
【0062】
さらなる態様では、本開示は、本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞を提供する。一実施例では、宿主細胞は、哺乳類宿主細胞である。別の実施例では、宿主細胞は、胚性腎臓、CHO、または卵巣細胞から選択される。一実施例では、宿主細胞は、HEK293T細胞である。
【0063】
さらなる態様では、本開示は、本明細書に記載のAMH類似体、または本明細書に記載のAMH類似体もしくはAMH前駆体をコードするベクターを含む組成物を提供する。
【0064】
一実施例では、組成物は、配列番号1のアミノ酸残基452~560に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むAMH類似体を含む。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基30~447に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基26~447に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基30~451に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基26~451に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むN末端ドメインをさらに含む。いくつかの実施例では、C末端ドメインおよびN末端ドメインは、共有結合されない。いくつかの実施例では、AMH類似体は、2つのC末端ドメインおよび2つのN末端ドメインを含む四級複合体を含む。いくつかの実施例では、四級複合体は、C末端ホモ二量体およびN末端ホモ二量体を含む。
【0065】
別の実施例では、N末端ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基30~447に対して少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する配列を含む。別の実施例では、N末端ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基30~451に対して少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する配列を含む。別の実施例では、N末端ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基26~447に対して少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する配列を含む。別の実施例では、N末端ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基26~451に対して少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する配列を含む。
【0066】
一実施例では、組成物は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15からなる群から選択されるC末端ドメインを含むAMH類似体を含む。
【0067】
好ましくは、対象に投与されたときのいずれかの態様によるAMH類似体は、2つのN末端ドメインおよび2つのC末端ドメインを含む四級複合体である。一実施例では、対象に投与されるときのいずれかの態様によるAMH類似体は、N末端ホモ二量体およびC末端ホモ二量体を含む四級複合体である。好ましくは、ベクターからの発現に続くAMH類似体またはAMH前駆体は、ホモ二量体である。ある特定の実施例では、モノマーは、ジスルフィド結合によって連結される。ある特定の実施例では、N末端ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。ある特定の実施例では、C末端ドメインは、ジスルフィド結合によって連結される。他の実施例では、モノマーは、リンカーによって連結される。別の実施例では、モノマーは、非共有結合的に会合される。
【0068】
一実施例では、AMH類似体は、治療有効量で提供される。「治療有効量」は、意図される使用に応じて異なる場合がある。一実施例では、治療有効量は、対象における卵胞形成の完全な停止を提供する濃度で投与される量である。別の実施例では、治療有効量は、対象の血液中のAMH類似体の濃度を、AMHの非存在下と比較して、10~50%高く、または50~100%高くするのに十分な量であると考えられる。一実施例では、治療有効量は、対象の血液中のAMH類似体の濃度を1μg/ml~5μg/mlの間で増加させるのに十分な量である。
【0069】
別の実施例では、組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0070】
一実施例では、組成物は、ヒトまたは非ヒト霊長類に投与される。別の実施例では、組成物は、非ヒト動物に投与される。一実施例では、組成物は、ネコ、イヌおよびウマから選択される非ヒト動物に投与される。一実施例では、対象は、がんを有する。一実施例では、がんは、婦人科がんである。別の実施例では、対象は、免疫療法、細胞療法、放射線療法または化学療法などのがんに対する治療を受ける。別の例では、対象は、対象の滅菌、および/または卵胞形成の抑制が対象の福祉の最善の利益であるように、精神的に不適格である。
【0071】
組成物の投与は、当業者に既知の任意の方法および経路によってもよい。投与は、腹腔内または皮下投与、または直接卵胞中への注射であってもよい。投与は、経皮的であってもよい。いくつかの実施例では、AMH類似体は、一貫した分娩のために、例えば、永続的避妊が望ましい遺伝子治療のためのベクター型式での一回限りの注射として投与される。他の実施例では、AMH類似体は、単回投与の後に非投与の間隔が続く断続的である場合、例えば、一時的な避妊方法などの卵胞形成の一時的な停止を有することが望ましい場合、または対象の生涯の後期段階で妊娠が望まれる場合に、パルス形式で送達される。いくつかの実施例では、パルス投与は、AMH類似体の投与に続いて、本明細書に開示される組成物のパルス投与の間に、少なくとも3日間、少なくとも7日間、約7日間~3週間の処置なしの間隔を含む。
【0072】
本開示の組成物は、経皮パッチ、腟リング、ビオゲルの形態で、または子宮内デバイス(IUD)などの埋め込み型避妊デバイス上にコーティングとして提供され得る。
【0073】
組成物は、単独で、または細胞治療剤、免疫治療剤、化学療法剤、または放射線治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0074】
別の態様では、本開示は、対象に、本開示のAMH類似体または組成物を投与することを含む、女性対象における機能的卵巣予備能の低下を予防する方法を提供する。いくつかの実施例では、機能的卵巣予備能の低下を予防することは、女性対象における卵巣卵胞予備能を温存する方法に関する。いくつかの実施例では、機能的卵巣予備能の低下を予防することは、AMH類似体の非存在下と比較して、動員される原始卵胞の数を少なくとも10%低減させるか、またはAMH類似体の非存在下と比較して、動員される原始卵胞の数を10%~99%低減させるか、または卵胞形成にある完全な停止を引き起こすか、または原始卵胞の活性化を遅延させることに関する。
【0075】
別の態様では、本開示は、女性対象における避妊方法であって、対象にAMH類似体または本開示の組成物を投与することを含む、方法を提供する。一実施例では、対象は、閉経前の女性対象である。一実施例では、対象または思春期前の女性対象。本開示のAMH類似体の使用は、短期であっても長期であってもよい。
【0076】
別の態様では、本開示は、対象における卵巣および/または子宮保護のための方法であって、対象に本開示のAMH類似体または組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0077】
一実施例では、対象は、35歳を超えるヒト対象である。
【0078】
一実施例では、対象は、がんの治療を受けているか、または受けようとしている。一実施例では、対象は、がんに対する免疫療法、細胞療法、化学療法または放射線療法を受けている。一実施例では、対象は、慢性疾患または障害の治療を受けている。
【0079】
いくつかの実施例では、本方法は、本明細書に記載のAMH類似体を投与しない年齢適合対象と比較して、機能的卵巣予備能における自然な年齢関連減少を少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%もしくは50%超抑制する。
【0080】
いくつかの実施例では、対象は、がんの治療を受けているか、またはがんの治療を受けようとしているか、または慢性疾患もしくは障害の治療を受けようとしている。
【0081】
いくつかの実施例では、対象は、自己免疫疾患を有し、免疫療法で治療されることになるか、または免疫療法で現在治療されているか、または免疫療法で治療されてきている。
【0082】
いくつかの実施例では、対象は、子宮または卵巣の細胞に細胞死または細胞障害を引き起こす細胞傷害性薬物または細胞傷害性薬で治療されることになるか、または現在治療中であるか、または治療されてきている。
【0083】
別の態様では、本開示は、対象における婦人科がんを治療するための方法であって、対象に本開示のAMH類似体または組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0084】
別の態様では、本開示は、卵胞予備能の温存、避妊、子宮保護、または婦人科がんを治療するための薬剤の製造における、本明細書に記載のAMH類似体を提供する。
【0085】
いくつかの実施例では、女性対象が、卵巣予備能を温存することを必要とするか、または生殖を遅延させる必要性もしくは望みを有するか、または対象が、卵巣予備能低下(DOR)、早期卵巣老化(POA)、原発性卵巣不全(POI)、子宮内膜症、BRAC1変異、ターナー症候群、自己免疫疾患、甲状腺自己免疫、副腎自己免疫または自己免疫多腺性症候群のうちのいずれか1つを有するか、またはそれにかかり易い。
【0086】
本明細書に記載のいずれかの方法または使用による特定の例では、AMH類似体は、N末端ホモ二量体およびC末端ホモ二量体を含む四級複合体として投与される。
【0087】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のいずれかの方法に従って使用するためのキットであって、
(i)本明細書に記載されるAMH類似体を含む投与デバイスと、
(ii)対象における使用のための説明書と、を含む、キットを提供する。
【0088】
一例では、投与デバイスは、ポンプまたは注入デバイス、1つ以上の単回用量、または複数回用量の事前に装填された注射器または経皮パッチから選択される。一実施例では、ポンプは、浸透圧ポンプ、例えば、アルゼットポンプである。一実施例では、投与デバイスは、例えば、US5267963、同6277097、同6386306、または同6793646に記載される自動注射器である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】(A)野生型ヒトAMHタンパク質配列の注釈付きアミノ酸配列(GenBank AAH49194、配列番号1)。シグナルペプチドは、下線が引かれており、アミノ酸1-25に対応している。プロタンパク質変換酵素認識部位(「プロタンパク質変換酵素部位」とも呼ばれる)は、Arg448~Arg451を含み、Arg451とSer452との間で生じる切断を伴って陰影処理によって示されている。プロドメインは、Arg26~Arg451の配列を含む。成熟ドメイン配列(Ser452~Arg560、配列番号5)は、太字で示されている。Gly533は、成熟ドメイン配列において太字および下線として示されている。(B)改変ヒトAMHの注釈付きアミノ酸配列(hAMH+SCUT+RSA、配列番号3)。シグナルペプチドは、下線が引かれており、アミノ酸1-18に対応している。ヘキサ-ヒスチジンタグは、太字および下線で示されている。スーパーカット(SCUT)プロタンパク質変換酵素認識配列(Ile447a~Ser451d)は、Arg451とSer451aとの間で生じる切断を伴って灰色で陰影処理されている。プロドメインは、Pro30~Arg451の配列である。プロセシングされたAMHは、Ser451a~Arg560のアミノ酸を含む。成熟ドメインは、太字でされている。(Ser452~Arg560)。
【
図2】mAMH変異体の発現を示す。修飾を、インビトロ部位特異的変異誘発を介してmAMH cDNAに行った。修飾が前駆体プロセシングに影響を及ぼすかどうかを評価するために、トランスフェクトされたHEK-293T細胞由来の条件培地を12.5倍に濃縮し、還元条件下でウエスタンブロット法により分析した。ブロットを、AMHのC末端に向かう領域を特異的に認識するmAb-5/6Aで探索した。12.5kDaの単量体成熟ドメインおよび70kDaの単量体AMHプロタンパク質を示す。
【
図3】hAMH変異体の第1のコホートの発現を示す。修飾を、インビトロ部位特異的変異誘発を介して、hAMH+SCUT+RSA cDNAに行った。変異がタンパク質分泌を予防したかどうかを評価するために、トランスフェクトされたHEK-293T細胞由来の条件培地を12.5倍に濃縮し、還元条件下でウエスタンブロット法によって分析した。ブロットを、AMHのC末端に向かう領域を特異的に認識するmAb-5/6Aで探索した。12.5kDaモノマー成熟ドメインを示す。
【
図4】hAMH変異体の第2のコホートの発現を示す。修飾を、インビトロ部位特異的変異誘発を介して、hAMH+SCUT+RSA cDNAに行った。変異がタンパク質分泌を予防したかどうかを評価するために、トランスフェクトされたHEK-293T細胞由来の条件培地を12.5倍に濃縮し、還元条件下でウエスタンブロット法によって分析した。ブロットを、AMHのC末端に向かう領域を特異的に認識するmAb-5/6A(下部パネル)、およびプロセシングされたhAMHプロドメインを特異的に検出するmAb-9/6A(上部パネル)で探索した。12.5kDaの単量体成熟ドメイン(下部パネル)および55kDaでプロセシングされたAMHプロドメイン(上部パネル)を示す。
【
図5】hAMH変異体の第3のコホートの発現を示す。修飾を、インビトロ部位特異的変異誘発を介して、hAMH+SCUT+RSA cDNAに行った。変異がタンパク質分泌を予防したかどうかを評価するために、トランスフェクトされたHEK-293T細胞由来の条件培地を12.5倍に濃縮し、還元条件下でウエスタンブロット法によって分析した。ブロットを、AMHのC末端に向かう領域を特異的に認識するmAb-5/6Aで探索した。12.5kDaモノマー成熟ドメインを示す。
【
図6】hAMH変異体の第4のコホートの発現を示す。修飾を、インビトロ部位特異的変異誘発を介して、hAMH+SCUT+RSA cDNAに行った。変異がタンパク質分泌を予防したかどうかを評価するために、トランスフェクトされたHEK-293T細胞由来の条件培地を12.5倍に濃縮し、還元条件下でウエスタンブロット法によって分析した。ブロットを、AMHのC末端に向かう領域を特異的に認識するmAb-5/6A(下部パネル)、およびプロセシングされたhAMHプロドメインを特異的に検出するmAb-9/6A(上部パネル)で探索した。12.5kDaの単量体成熟ドメイン(下部パネル)および55kDaでプロセシングされたAMHプロドメイン(上部パネル)を示す。
【
図7】hAMH変異体のCo-IMAC精製を示す。一過性トランスフェクト細胞によって条件付けられた200mLの培地を、約1mLに濃縮し、結合バッファーで5mLの最終体積に戻した。濃縮した条件培地を、HisPur(商標)コバルト樹脂を含有するカラム中で約2.5時間インキュベートした。非結合タンパク質を収集し、カラムをPBSで2回洗浄した。結合タンパク質を溶出するために、HisPur(商標)コバルト樹脂を、500mMのイミダゾールを含有する3mLのPBS中で約2.5時間インキュベートした。結合したままのタンパク質を回収するために、樹脂を、1Mのイミダゾールを含有する3mLのPBS中で約1時間インキュベートした。各画分の10μLをSDS-PAGEにより分離し、続いてウエスタン転写を行った。回収を、mAb-5/6Aでブロットを探索することによって評価した。
【
図8】G533A、G533SおよびG533K変異体の活性を示す。Smad1/5応答性ルシフェラーゼレポーターおよびAMHR2でトランスフェクトされたCOV434ヒト顆粒細胞を、増加した濃度(A、3.1~50ng/mL;B、0.62~50ng/mL)のCo-IMAC精製hAMH変異体で一晩処理した。測定されたルシフェラーゼ活性は、対照ウェルの平均についての調整された値1.0に対する倍率変化として提示される。
【
図9】G533H、H548K、L535MおよびG533A+L535M変異体の活性を示す。Smad1/5応答性ルシフェラーゼレポーターおよびAMHR2でトランスフェクトされたCOV434ヒト顆粒細胞を、増加した濃度(0.62~50ng/mL)のCo-IMAC精製hAMH変異体で一晩処理した。測定されたルシフェラーゼ活性は、対照ウェルの平均についての調整された値1.0に対する倍率変化として提示される。
【
図10】成熟ホルモンを形成するためのAMHのプロセシング(A)、ならびに標識された手首および指ドメインを有する成熟AMHの構造モデル(B)を示す。
【
図11】ヒト、ネコ、イヌおよびウマからのプロセシングされた成熟AMHの配列アラインメントを示す。アラインメントを、ClustalWを使用して調製した(Larkin et al.,(2007).Bioinformatics,23,2947-2948、Thompson et al.,(1994).Nucleic Acids Res.,22,4673-4680)。図を、ESPriptを使用して調製した(Robert & Gouet(2014)Nucleic Acids Res.,42(W1),W320-W324)。
【
図12】R&D Systemsから購入したhAMHの活性と比較して、hAMH+SCUT+RSAから産生された成熟プロセシングAMHの活性を示す。活性を、本明細書に記載されるルシフェラーゼアッセイを使用して決定した。
【発明を実施するための形態】
【0090】
配列一覧表への鍵
配列番号1は、天然ヒトAMH前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号2は、天然マウスAMH前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号3は、hAMH+SCUT+RSA(改変シグナル配列、ヘキサヒスチンジン精製タグおよび改変タンパク質分解部位を有するヒトAMH前駆体)のアミノ酸配列である。
配列番号4は、hAMH+SCUT+RSA(改変シグナル配列、ヘキサヒスチンジン精製タグおよび改変タンパク質分解部位を有するヒトAMH前駆体)のヌクレオチド配列である。
配列番号5は、ヒト成熟プロセシングAMHポリペプチドの配列である。
配列番号6は、hAMH+SCUT+RSAで使用されるタンパク質分解プロセシング部位の配列である。
配列番号7は、ヒトAMHリーダー/シグナル配列の配列である。
配列番号8は、hAMH+SCUT+RSAで使用されるリーダー/シグナル配列の配列である。
配列番号9は、AMH類似体の配列である。
配列番号10は、AMH類似体の配列である。
配列番号11は、AMH類似体の配列である。
配列番号12は、AMH類似体の配列である。
配列番号14は、AMH類似体の配列である。
配列番号14は、AMH類似体の配列である。
配列番号15は、AMH類似体の配列である。
配列番号16は、シグナル配列である。
配列番号17は、シグナル配列である。
配列番号18は、シグナル配列である。
配列番号19は、シグナル配列である。
配列番号20は、シグナル配列である。
配列番号21は、シグナル配列である。
配列番号23は、シグナル配列である。
配列番号24は、シグナル配列である。
配列番号25は、シグナル配列である。
配列番号26は、シグナル配列である。
配列番号27は、マウスAMH前駆体ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
配列番号28は、ウマAMH前駆体ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
配列番号29は、イヌAMH前駆体ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
配列番号30は、ネコAMH前駆体ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
配列番号31は、ウマAMH前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号32は、イヌAMH前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号33は、ネコAMH前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号34は、ヒトAMH前駆体ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
配列番号35は、ヒト成熟プロセシングAMHをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号36は、プロセシングされたhAMH+SCUT+RSAのアミノ酸配列である。
配列番号37は、タンパク質分解プロセシング部位の配列である。
配列番号38は、タンパク質分解プロセシング部位の配列である。
配列番号39は、タンパク質分解プロセシング部位の配列である。
配列番号40は、タンパク質分解プロセシング部位の配列である。
配列番号41は、C末端ドメインへのN末端伸長である。
【0091】
一般的な技術および選択された定義
用語「および/または」、例えば、「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味またはいずれかの意味の明示的な支持を提供すると解釈されるべきである。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」および「the」は、文脈が別様に明示的に示さない限り、単数および複数の態様の両方を含む。
【0093】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、デバイス、物品等についての任意の考察は、これらの事項のいずれかまたはすべてが、本出願の各請求項の優先日以前に存在したため、本開示に関連する分野における先行技術の基盤の一部を形成するまたは一般的な知識であることを、認めるものではない。
【0094】
本明細書全体を通して、特に別段の記載がない限り、または文脈上別段の要求がない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップ群または物質の組成物の群を参照することは、それらのステップ、物質の組成物、ステップ群または物質の組成物の群のうちの1つおよび複数(すなわち、1つ以上)を包含するものとみなされなければならない。
【0095】
本明細書に記載される各実施例は、特に別段の記載がない限り、本開示の互いにおよびすべての他の実施例に準用されるべきである。
【0096】
当業者は、本開示が、具体的に記載されるもの以外の変形および修正の影響を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、すべてのそのような変形および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、個別または集合的に、本明細書で言及または示されるステップ、特徴、組成物、および化合物のすべて、ならびに該ステップまたは特徴の任意のおよびすべての組み合わせ、または任意の2つ以上を含む。
【0097】
本開示は、本明細書に記載される特定の実施例によって範囲が限定されるべきではなく、例示のみを目的とするように意図されている。機能的に等価な産生物、組成物、および方法は、明らかに、本開示の範囲内にある。
【0098】
本開示は、別段の指示がない限り、分子生物学、組換えDNA技術、細胞生物学、および免疫学の従来の技術を使用して、過度の実験なしに実施される。そのような手順は、例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Second Edition(1989),Vols I,II,およびIIIの全体、DNA Cloning:A Practical Approach,Vols.I and II(D.N.Glover,ed.,1985),IRL Press,Oxford,全文、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(M.J.Gait,ed,1984)IRL Press,Oxford,全文、ならびに特に以下の論文:Gait,ppl-22;Atkinson et al,pp35-81;Sproat et al,pp 83-115、およびWu et al,pp 135-151;4.Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(B.D.Hames &S.J.Higgins,eds.,1985)IRL Press,Oxford,全文、Immobilized Cells and Enzymes:A Practical Approach(1986)IRL Press,Oxford,全文、Perbal,B.,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.),全シリーズ、Sakakibara,D.,Teichman,J.,Lien,E.Land Fenichel,R.L.(1976).Biochem.Biophys.Res.Commun.73 336-342、Merrifield,R.B.(1963).J.Am.Chem.Soc.85,2149-2154、Barany,G.and Merrifield,R.B.(1979)in The Peptides(Gross,E.and Meienhofer,J.eds.),vol.2,pp.1-284,Academic Press,New York.12.Wunsch,E.,ed.(1974)Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie(Muler,E.,ed.),vol.15,4th edn.,Parts 1 and 2,Thieme,Stuttgart;Bodanszky,M.(1984)Principles of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,Heidelberg;Bodanszky,M.& Bodanszky,A.(1984)The Practice of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,Heidelberg;Bodanszky,M.(1985)Int.J.Peptide Protein Res.25,449-474;Handbook of Experimental Immunology,VoIs.I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986,Blackwell Scientific Publications)、およびAnimal Cell Culture: Practical Approach,Third Edition(John R.W.Masters,ed.,2000),ISBN 0199637970、全文、に記載されている。
【0099】
本明細書全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形形態は、記載されたステップもしくは要素もしくは整数、またはステップもしくは要素もしくは整数の群の包含を意味するが、任意の他のステップもしくは要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群の排除を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0100】
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解されるのと同じ意味(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学)を有すると解釈されるべきである。
【0101】
「からなる(consists)」または「からなる(consisting of)」という用語は、物質の方法、プロセスまたは組成物が、列挙されたステップおよび/または構成要素を有し、追加のステップまたは構成要素を有しないことを意味すると理解されるべきである。
【0102】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、重量、時間、用量などの測定可能な値を指す場合、そのような変動は開示される方法を実行するのに適切であるため、指定された量から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにいっそう好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0103】
AMHという用語は、本明細書で使用される場合、抗ミュラー管ホルモンを指す。この用語は、ミュラー管抑制因子(MIS)という用語と互換的に使用され得る。「前プロタンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列、例えば、配列番号1に示される配列(野生型AMHタンパク質)を含む全長タンパク質を指す。「プロタンパク質」または「プロドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列、例えば、アミノ酸残基Arg26~Gly447の配列を欠くAMHタンパク質配列を指す。「成熟」AMHタンパク質またはポリペプチドという用語は、本明細書で使用される場合、プロセシングおよび切断後のAMHポリペプチドを指す。成熟配列は、Ser452~Arg560の配列である。生物学的に活性なAMHタンパク質は、2つのモノマー単位を含むホモ二量体であり、各モノマー単位は、Ser452~Arg560の配列を有する。
【0104】
本明細書に記載のAMH類似体が単離された形態であることを理解されたい。「単離された」とは、天然には見られない形態であるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞を意味する。単離されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞は、それらがもはや自然界に見られる形態ではない程度に精製されたものを含む。いくつかの態様では、単離されるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞は、実質的に純粋である。
【0105】
「特異的に結合する」という用語は、AMH類似体を指すときに本明細書で使用される場合、AMH2を認識し、AMH2に結合するが、試料中の他の分子を実質的に認識せず、かつ結合しないAMH類似体を指す。
【0106】
「同一性」または「配列同一性」という用語およびその文法的変形は、2つ以上の参照される実体が同一であることを意味する。したがって、2つのポリペプチド配列が同一である場合、それらは、少なくとも参照領域または部分内で、同じアミノ酸配列を有する。2つの核酸配列が同一である場合、それらは、少なくとも参照される領域または部分内に、同じポリヌクレオチド配列を有する。同一性は、配列の定義された範囲(領域またはドメイン)にわたってあり得る。%同一性は、比較ウィンドウ上で2つの最適にアラインメントされた配列を比較し、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で生じる位置の数を決定して、マッチングされた位置の数を得、マッチングされた位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、結果を100で乗算して、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。%同一性は、GAP(Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:444-453.1970)分析(GCGプログラム)、SmithおよびWatermanのホモロジーアルゴリズム(Adv.Appl.Math.2:482(19801))、またはPearsonおよびLipmanの方法(PNAS USA 85:2444-48(1988))により決定され得る。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに好適な別のアルゴリズムは、Altschul et al.J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。
【0107】
「増加した」という用語は、本明細書で使用される場合、参照レベル、例えば、天然のAMHポリペプチドと比較した増加を指す。増加は、例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍以上を含む、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%以上であってもよい。増加は、発現レベル、効力、またはタンパク質活性を指し得る。
【0108】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、約100核酸塩基長を超える分子を指す。核酸塩基としては、例えば、DNA(例えば、アデノシン「A」、グアニン「G」、チミン「T」、もしくはシトシン「C」)またはRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」もしくはC)に見られる天然に存在するプリンまたはピリミジン塩基が挙げられる。
【0109】
「ウイルスベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞内への核酸構築物の担体としてのウイルスまたはウイルス関連ベクターの使用を指す。構築物は、細胞への感染または形質導入のために、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターを含む、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)などの非複製欠陥ウイルスゲノムに組み込まれ、パッケージ化され得る。ベクターは、細胞ゲノムに組み込まれても、組み込まれなくてもよい。構築物は、必要に応じて、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、構築物は、エピソーム複製が可能なベクター、例えば、EPVおよびEBVベクターに組み込まれ得る。
【0110】
「薬学的組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの治療的または生物学的活性剤を含有し、患者への投与に好適な任意の組成物を意味する。これらの製剤のいずれかは、当該技術分野で周知であり、かつ受け入れられている方法によって調製され得る。例えば、Gennaro,A.R.,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(2000)を参照されたい。
【0111】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、および/または他の問題もしくは合併症なしでヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適な、健全な医学的判断の範囲内にある化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すように使用される。
【0112】
「治療すること」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の障害または状態に関連する症状の緩和を含む。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味し得る。治療を必要とするものとしては、すでに状態もしくは障害を有するもの、ならびに状態もしくは障害を有する傾向があるもの、または状態もしくは障害が予防されるべきものが挙げられる。
【0113】
「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の障害または状態の予防を含む。「予防」という用語は、疾患または障害(例えば、POAまたはDOR)の1つ以上の症状または測定可能なマーカーの発現における回避または遅延を指す。この用語は、疾患もしくは障害を発症する同様の可能性もしくは感受性を有する対照または非処置個体におけるそれらの症状もしくはメーカーと比較して、または疾患もしくは障害の影響を受ける集団の歴史的もしくは統計的尺度に基づいて生じる可能性が高い症状もしくはマーカーと比較して、疾患の症状もしくはマーカーの回避もしくは予防だけでなく、疾患の症状もしくはマーカーのうちのいずれか1つの重症度もしくは程度の低減も含む。重症度の低減は、対照または参照と比較して、症状または測定可能な疾患マーカーの重症度または程度の少なくとも10%の低減、例えば、少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%(すなわち、症状または測定可能なマーカーなし)でさえ意味する。
【0114】
「治療有効量」という用語は、疾患または障害の少なくとも1つ以上の症状を緩和するのに十分な量の本明細書に記載されるAMH類似体またはポリヌクレオチドを意味すると理解されなければならず、かつ、障害に関連する症状または臨床マーカーにおいて所望の効果を提供するか、または有意な低減を提供するのに十分な量の組成物に関連する。処置の有効性は、妊孕性の動物モデルにおいて評価され得、妊娠の予防、または卵胞形成の停止につながる組成物の任意の処置または投与は、有効な処置を示す。症状の治療的または予防的に有意な減少は、例えば、対照または非処置対象と比較して、測定されたパラメータにおいて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%以上である。
【0115】
別途示されない限り、「野生型」または「天然」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトAMHをコードする天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列(それは、通常、インビボで存在するため)を指す。本明細書に開示されるように、ヒトAMHのプレプロタンパク質の野生型アミノ酸配列は、配列番号1に対応し、アミノ酸残基1~25は、リーダー/シグナル配列に対応する。本明細書に開示されるように、AMHのプロタンパク質形態の野生型アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸残基26~560(例えば、リーダー配列を欠く)を含み、これは、その場合、タンパク質分解切断によって翻訳後プロセシングされて、成熟AMHを形成する。本明細書で開示されるように、成熟AMHの野生型アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸残基452~560を含む。AMHは、活性AMHを形成するために翻訳後プロセシングを必要とするジスルフィド結合ホモ二量体前駆体として産生される。翻訳後プロセシングは、成熟AMHを放出するプロドメインからの切断および解離を含む。本明細書に記載される多様体もしくは変異体ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質への言及には、「野生型」または「天然」ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質とは異なる少なくとも1つのアミノ酸残基を含有するペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその断片が含まれ、すなわち、配列番号1に提供されるヒトAMHのプレプロタンパク質(または配列番号1のアミノ酸残基452~560などのその断片)とは異なる少なくとも1つのアミノ酸残基が含まれる。いくつかの実施形態では、異なる少なくとも1つのアミノ酸残基が、配列番号1のアミノ酸残基452~560(すなわち、C末端ドメインまたは成熟プロセシングAMH)内に位置する。当業者であれば理解するであろうが、ヒトAMHの少なくとも1つの天然に存在する配列多形が存在する。本出願の目的のために、多様体または変異体ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、野生型配列を有しないヒトAMHの任意の天然に存在する配列多型を含む。
【0116】
別途示されない限り、本明細書を通しての残基の番号付けは、配列番号1に示されるヒトAMH前駆体(
図1A)に関しており、配列番号1に提供される配列における第1の残基は、位置1として番号付けされ、配列番号1に提供される配列における最後の残基は、位置560として番号付けされる。追加のアミノ酸が、例えば、精製タグ、異なるリーダー配列、異なるプロテアーゼ切断配列などの包含のために、ポリペプチドに挿入される実施形態では、挿入された残基は、挿入直前の野生型残基の残基数およびアルファベットの文字に基づいて標識される。例えば、以下の表1を参照されたい。
【表1】
【0117】
アミノ酸が、例えば、異なるリーダー配列、異なるプロテアーゼ切断配列などの包含のために、ポリペプチドから欠失される実施形態では、残基は、配列番号1に提供される対応する野生型残基の残基番号に基づいて標識される。
【0118】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小長さに限定されない。この用語は、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、タンパク質分解切断などのポリペプチドの翻訳後修飾を含む。この用語はまた、ポリペプチドが所望の活性を維持する限り、天然配列への付加および置換などの修飾(概して、自然界では保存的である)を含むポリペプチドを含む。これらの修飾は、部位特異的変異誘発、またはPCR増幅もしくは他の組換え方法に起因するエラーを通じて、意図的であり得る。合成非天然アミノ酸、置換アミノ酸、または1つ以上のD-アミノ酸を含む、非天然アミノ酸のポリペプチドへの組み込みは、ある特定の状況において望ましい。D-アミノ酸含有ポリペプチドは、L-アミノ酸含有形態と比較して、インビトロおよびインビボでの安定性の増加を示す。
【0119】
「保存的置換」という用語は、ポリペプチドを記載する場合、ポリペプチドの活性を実質的に変化させない、ポリペプチドのアミノ酸組成の変化を指す。例えば、保存的置換は、類似の化学的特性を有する異なるアミノ酸残基に対してアミノ酸残基を置換することを指す。特定のアミノ酸配列の保存的置換は、ポリペプチド活性に重要でないそれらのアミノ酸の置換、または同様の性質を有する他のアミノ酸でのアミノ酸の置換であって、重要なアミノ酸の置換であってもポリペプチドの活性が低減しないようにする、アミノ酸の置換を指す。例えば、以下の6つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0120】
「置換」という用語は、ポリペプチドを指す場合、異なる実体、例えば、別のアミノ酸に対するアミノ酸における変化を指す。置換は、保存的であっても非保存的であってもよい。
【0121】
「組換え」という用語は、ポリヌクレオチドの文脈において本明細書で使用される場合、ゲノム、cDNA、半合成および/または合成起源のポリヌクレオチドであって、その起源または操作により、そのポリヌクレオチドが自然界で会合しているポリヌクレオチドの全部または一部と会合していない、ポリヌクレオチドを意味する。組換えという用語は、ポリペプチドの文脈において本明細書で使用される場合、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。
【0122】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、動物または非ヒト動物を指す。対象は、予防的処置を含む処置が本開示の組成物とともに投与されるヒトであってもよい。いくつかの実施例では、非ヒト動物は、伴侶動物、好ましくは、ネコ、イヌ、またはウマである。いくつかの実施例では、対象は、非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカクである。対象は、好ましくは、ヒト女性である。対象は、出産年齢(例えば、20~35歳)、10代(例えば、13~19歳)、または思春期前(例えば、6~12歳)であってもよい。女性対象は、35歳以上であってもよい。
【0123】
「類似体」という用語は、ポリペプチド(例えば、AMH)に関して本明細書で使用される場合、広義には、修飾ポリペプチドであって、ペプチドの1つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されている、および/または1つ以上のアミノ酸残基がペプチドから欠失されている、および/または1つ以上のアミノ酸残基がペプチドに付加されている、修飾ポリペプチドを意味する。類似体は、天然ポリペプチドに由来する。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基の付加または欠失は、ポリペプチドのN末端および/またはポリペプチドのC末端および/もしくはポリペプチドのドメインのポリペプチドのN末端および/もしくはポリペプチドのドメインのポリペプチドのC末端で起こり得る。付加および/または置換アミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然に存在する残基、または純粋に合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、類似体は、アゴニストである。
【0124】
自然界では、いくつかのポリペプチドは、シグナルペプチドなどの標的化標識に加えて、タンパク質成熟中のある時点で除去(プロセシングされた)される他のペプチド断片も含有し、一次翻訳産物とは異なるポリペプチドの成熟形態をもたらす複合前駆体として産生される(シグナルペプチドの除去は別として)。「成熟」という用語は、本明細書でタンパク質に関して使用される場合、翻訳後プロセシングされたポリペプチド、すなわち、一次翻訳産物中に存在する任意のプレプロペプチドまたはプロペプチドが切断または除去されたポリペプチドを指す。「前駆体タンパク質」または「プレプロペプチド」または「プレプロタンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、すべて、mRNAの翻訳の、すなわち、プレプロペプチドおよびプロペプチドが依然として存在する一次産物を指す。この命名法における「プレ」は、一般に、シグナルペプチドを指す。シグナルペプチドのみを除去したが、さらなるプロセシングを行わない翻訳産物の形態は、「プロペプチド」または「プロタンパク質」と呼ばれる。除去される断片またはセグメント自体もまた、「プロペプチド」と呼ばれ得る。したがって、プロタンパク質またはプロペプチドは、シグナルペプチドを除去したが、プロペプチド(ここではプロペプチドセグメントを指す)および成熟タンパク質を構成する部分を含有する。AMHに関して、「成熟」AMHは「C末端ドメイン」とも呼ばれ、プロペプチドセグメントは「N末端ドメイン」とも呼ばれる。C末端ドメインは、配列番号9~配列番号15からなる群から選択される配列を含み得る。当業者が理解するように、C末端ドメインは、任意選択で、N末端またはC末端に追加の残基を含み得る。一実施形態では、C末端ドメインは、任意選択で、N末端にSVSS(例えば、配列番号36)を含み得る。同様に、N末端ドメインは、任意選択で、N末端またはC末端に追加の残基を含み得る。
【0125】
「プロセシングされた」という用語は、本明細書でAMH(すなわち、「プロセシングされたAMH」)に関して使用される場合、本明細書で論じられるように、プレドメインおよびプロドメインを切断するための一次翻訳産物(すなわち、プレプロタンパク質)のプロセシング後の成熟AMH(すなわち、配列番号1の452~560)を指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドに関する「ドメイン」という用語は、広く定義され、ポリペプチド、またはポリペプチドの領域、断片もしくはセグメントを指す。好ましくは、ポリペプチド、またはポリペプチドの領域、断片もしくはセグメントは、例えば、独立して安定であり得かつ折り畳み得るコンパクトな三次元構造を形成する。しかしながら、当業者は、いくつかのドメインまたはその部分が、非構造化され得るか、またはランダムコイル構造を有することが理解するであろう。多くのタンパク質は、単一のドメインのみを含み、他のタンパク質は、いくつかのドメインを有し得る。
【0127】
本明細書でAMH類似体に関連して使用する場合、「活性」という用語は、AMH受容体複合体によるシグナル伝達を誘導する類似体の能力を指す。例えば、いくつかの実施形態では、活性は、AMH類似体での処置後のSmad-1/5応答を測定することによって測定される。
【0128】
抗ミュラー管ホルモン
ミュラー管抑制因子(MIS)としても知られる抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、二量体前駆体として産生され、N末端(プロ)ドメインからの切断および解離を必要とする活性化のための翻訳後プロセシングを受けて、生体活性C末端断片を放出する(
図10Aを参照されたい)。
【0129】
AMHレベルは低下し、卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルは女性の加齢とともに増加する。US Centre for Human Reproductionは、女性の卵巣予備能を評価するために、AMHおよびFSHの年齢特異的レベルを確立している。これらのベースラインレベルは、以下の表2における通りである。
【表2】
【0130】
AMHは、糖タンパク質の大きな形質転換成長因子-β(TGF-β)マルチ遺伝子ファミリーの140kDaのジスルフィド結合糖タンパク質メンバーである。還元条件下でのウエスタンブロット分析は、AMHが、おそらく生合成および分泌プロセス中に、各「モノマー」が2つのより小さな種に切断されたジスルフィド結合二量体であることを示す。翻訳後プロセシングの後、AMHは、57kDaのN末端ドメイン二量体および12.5kDaのカルボキシ末端(C末端)ドメイン二量体を含み、これらはともに非共有結合複合体を形成する。C末端ドメインは生物学的に活性な部分であり、切断が活性に必要とされる。N末端ドメインは、インビボでのタンパク質折り畳みを補助し、C末端ペプチドのその受容体、例えば、AMHR2への送達を促進し得る。
【0131】
AMHプロホルモンは、サブチリシン/ケキシン様プロタンパク質変換酵素(PC)ファミリー(例えば、フリン)のメンバーによって切断されて、N末端ドメイン(すなわち、プロドメイン)およびC末端ドメイン(すなわち、成熟AMH)を生成することができる。このタンパク質分解プロセスは、その生理活性に必要であり、TGF-βの配列に見られる二塩基性切断部位に類似した位置にある部位で生じる。AMHの非切断性変異体は、生物学的に不活性である。
【0132】
AMH前駆体のプロセシングは、リーダー配列(例えば、配列番号1のアミノ酸1~25)のタンパク質分解切断および除去、N末端およびC末端ドメインを生成するためのAMHタンパク質の切断、ならびに生体活性ホモ二量体AMHタンパク質を形成するために第2のC末端ドメインにジスルフィド結合されているC末端ドメインの解離を伴う。成熟AMH二量体は、プロドメイン二量体と非共有結合的に会合している。
【0133】
切断は、主に、RAQR(配列番号1の448~451)によって特徴付けられるkex様部位で生じる。第2のアルギニンが切断された後に、ペプチドは結合する。この部位での切断は、AMHのC末端ドメイン(例えば、配列番号1のアミノ酸452~560)を産生する。本明細書で使用される場合、「プロタンパク質変換酵素部位」という用語は、一次AMH切断部位を指し、配列番号1の残基448~451(RAQR)を含む。
【0134】
有意性が未知である二次切断部位(「R/S」と呼ばれる)は、配列番号1の残基254~255ではあまり頻繁に観察されない。この部位は、R Sを含有するが、それ以外の場合、フーリン切断のためのコンセンサスArg-X-(Arg/Lys)-Argに従わない。
【0135】
AMHの非切断性変異体は、生物学的に活性ではなく、カルボキシ末端ドメインを切断するヒト遺伝子の変異は、持続性ミュラー管症候群をもたらす。インビボでのアミノ末端ドメインの役割は、タンパク質のフォールディングを補助し、C末端ドメイン断片のその受容体への送達を促進し得る。
【0136】
いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次RAQR切断部位は、例えば、Duckert,Brunark & Blom(2004)Protein Eng Des Sel,17:107-112に記載されているように、亜チリシン/ケキシン様プロタンパク質コンバーターゼ(PC)ファミリーのコンセンサス配列で置き換えられる。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次切断部位は、フリンコンセンサス配列、例えば、配列モチーフR-X-[K/R]-R↓(式中、Xは任意のアミノ酸残基である)によって置き換えられる。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次RAQR切断部位は、PCT出願PCT/US14/024010に記載されるように、RARRに変更される。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451の一次切断部位は、X
1X
2X
3RKKRX
8X
9X
10X
11(配列番号37)に変更され、式中、X
1は非存在またはイソロイシンであり、X
2は非存在またはセリンであり、X
3は非存在またはセリンであり、X
8は非存在またはセリンであり、X
9は非存在またはバリンであり、X
10は非存在またはセリンであり、X
11は非存在またはセリンである。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次RAQR切断部位は、RKKR(配列番号38)に変更される。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次切断部位は、ISSRKKRSVSS(配列番号6、本明細書ではSCUTとも呼ばれる)に変更される。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次切断部位は、ISSRKKR(配列番号39)に変更される。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸位置448~451における一次切断部位は、RKKRSVSS(配列番号40)に変更される。アミノ酸X
1~X
3およびX
8~X
11のうちのいずれか1つ以上の包含または省略もまた、本開示の範囲内である。全長SCUT、すなわち、表1におけるオプション1の使用は、切断がR451と次のSダウンストリーム(すなわち、S451a)との間で生じるために、成熟AMH上にN末端SVSSを残すことに留意されたい。hAMH+SCUT+RSAから産生された成熟プロセシングAMHの活性は、R&D Systemsから購入されたhAMHの活性に匹敵する(
図12)。切断されたSCUTが使用される場合(例えば、表1の様々なオプションを参照されたい)、これは、追加のN末端アミノ酸の存在、配列、および/または数を変化させる可能性がある。例えば、表1のオプション2または3では、SVSSは完全に存在しない。他のオプションおよび結果は、当業者には明らかとなるであろう。
【0137】
上述のように、成熟野生型AMHタンパク質は、配列番号1の野生型AMHタンパク質のアミノ酸残基1~25に対応するN末端リーダー配列を含む前駆体として最初に産生される。このリーダー配列を切断して、AMHプロタンパク質を産生する。本開示のすべての態様では、AMH前駆体は、非内因性リーダー/シグナル配列を有することができ、配列番号1のアミノ酸1~25のリーダー/シグナル配列は、例えば、ヒト血清アルブミンリーダー配列などの異なるリーダー配列で置換される。本開示のすべての態様では、本明細書に開示されるAMH前駆体は、一次RAQR切断部位がフリンコンセンサス配列により置換され、内因性リーダー/シグナル配列が異種リーダー配列で置換された修飾組換えAMHポリペプチドであり得る。本開示のすべての態様では、本明細書に開示されるAMH前駆体は、一次RAQR切断部位が配列番号6で置換され、内因性リーダー/シグナル配列が異種リーダー配列で置換された修飾組換えAMHポリペプチドであり得る。
【0138】
分泌タンパク質は、分泌経路への侵入を確実にするリーダー配列を含有する前駆体形態にある細胞の内部で最初に発現する。このようなリーダー配列は、シグナルペプチドとも呼ばれ、小胞体(ER)の膜を横断する発現された産物を方向付ける。シグナルペプチドは、一般に、ERへのトランスロケーション中にシグナルペプチダーゼによって切断される。分泌経路に入ると、タンパク質はゴルジ装置に輸送される。ゴルジから、タンパク質は、細胞空胞または細胞膜などの区画につながる異なる経路をたどることができ、またはそれは、外部培地に分泌される細胞を外して経路付けされ得る(Pfeffer and Rothman(1987)Ann.Rev.Biochem.56:829-852)。
【0139】
いくつかの実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基1~25に対応するAMHタンパク質の野生型リーダー配列の代わりに、修飾リーダー/シグナル配列を含む。いくつかの実施例では、配列番号1のアミノ酸残基1~25の天然リーダー配列は、異種リーダー配列、例えば、限定されないが、アルブミンリーダー配列またはその機能的断片で置換される。いくつかの実施例では、異種リーダー配列は、ヒト血清アルブミン配列(HSA)、例えば、配列番号26に対応するリーダー配列である。いくつかの実施例では、異種リーダー配列は、ラット血清アルブミン配列、例えば、配列番号8に対応するリーダー配列である。
【0140】
HSAリーダー配列の修飾バージョンも、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,759,802号に開示されるように、本開示に包含される。いくつかの実施例では、HSAリーダー配列の機能的断片は、MKWVTFISLLFLFSSAYS(配列番号17)またはその変形であり、その全体が本明細書に組み込まれるEP特許EP2277889号に開示されている。HSAシグナル配列のプレプロ領域の変異体(例えば、MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR、配列番号18)は、HSAシグナル配列のプレ領域(例えば、MKWVTFISLLFLFSSAYS、配列番号19)またはそれらの変異体、例えば、MKWVSFISLLFLFSSAYS(配列番号20)などの断片を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、リーダー配列は、配列番号7のアミノ酸残基と少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一のリーダー配列である。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、配列番号8のアミノ酸残基と少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一のリーダー配列である。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、配列番号26のアミノ酸残基と少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一のリーダー配列である。
【0142】
他のリーダー配列もまた、配列番号1のアミノ酸1~25を置換するために、本開示によって企図される。かかるリーダー配列は当該技術分野において周知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS2007/0141666に開示されるように、組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチド(IgSP-tPA)に融合された免疫グロブリンシグナルペプチドを含むリーダー配列を含む。多数の他のシグナルペプチドは、分泌されたタンパク質の産生に使用される。これらのうちの1つは、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド(IgSP、EMBL受託番号M13331)である。IgSPは、1983年にLoh et al.(Cell.33:85-93)によって初めて同定された。IgSPは、哺乳類細胞において良好な発現をもたらすことが知られている。例えば、EP特許第0382762号は、IgSPとホースラディッシュペルオキシダーゼとの間の融合ポリペプチドを構築することによって、ホースラディッシュペルオキシダーゼを産生する方法を開示している。他のリーダー配列としては、例えば、MPIF-1シグナル配列(例えば、GenBank受託番号AAB51134のアミノ酸1~21)MKVSVAALSCLMLVTALGSQA(配列番号16)、スタニオカルシンシグナル配列(MLQNSAVLLLLVISASA、配列番号17)、インベルターゼシグナル配列(例えば、MLLQAFLFLLAGFAAKISA、配列番号18)、酵母交配因子アルファシグナル配列(例えば、K.ラクチスキラー毒素リーダー配列)、ハイブリッドシグナル配列(例えば、MKWVSFISLLFLFSSAYSRSLEKR、配列番号19)、HSA/MFa-1ハイブリッドシグナル配列(HSA kex2としても知られている)(例えば、MKWVSFISLLFLFSSAYSRSLDKR、配列番号20)、K.ラクチスキラー/MFaー1融合リーダー配列(例えば、MNIFYIFLFLLSFVQGSLDKR、配列番号21)、免疫グロブリンIgシグナル配列(例えば、MGWSCIILFLVATATGVHS、配列番号22)、フィブリンB前駆体シグナル配列(例えば、MERAAPSRRVPLPLLLLGGLALLAAGVDA、配列番号23)、クラステリン前駆体シグナル配列(例えば、MMKTLLLFVGLLLTWESGQVLG、配列番号24)、およびインスリン様増殖因子結合タンパク質4シグナル配列(例えば、MLPLCLVAALLLAAGPGPSLG、配列番号25)を含むが、これに限定されない。
【0143】
さらなる実施例では、AMH前駆体またはそれをコードする核酸配列は、精製を補助するタグも含む。いくつかの実施例では、タグは、c-myc、ポリヒスチジンまたはFLAGタグであり得る。いくつかの実施例では、タグは、ポリヒスチジンタグである。特定の実施例では、タグは、翻訳後プロセシング(例えば、フーリンまたは類似のプロテアーゼによる切断)後に、C末端ドメイン断片がタグ付けされないように位置する。言い換えると、タグは、翻訳後プロセシング(例えば、フーリンまたは類似のプロテアーゼによる切断)後に、N末端ドメインがタグ付けされるように位置する。特定の実施例では、ポリヒスチジンタグは、リーダー/シグナル配列に続いて、例えば、配列番号1のアミノ酸残基25の後に位置する。特定の実施例では、ポリヒスチジンタグは、配列番号1のアミノ酸残基30の直前に位置する。ポリヒスチジンタグは、His6またはHis8であってもよい。AMH前駆体は、同じであってもまたは異なっていてもよい複数のタグを含み得る。好ましくは、タグは、AMHR2に結合し、かつAMHR2を活性化する際に、AMH類似体機能の生体活性に干渉しないか、または実質的に影響しない。
【0144】
さらなる実施例では、AMH類似体は、1つ以上の残基上でグリコシル化される。いくつかの実施例では、AMH類似体は、N末端ドメイン内の1つ以上の残基上でグリコシル化される。
【0145】
いくつかの実施形態では、AMH類似体は、配列番号5に示される天然ヒトAMHポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、AMHの推定フィンガードメイン内にある(
図10B)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、AMHの推定フィンガー2内にある(
図10B)。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1のアミノ酸残基533~548内に存在する。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1のアミノ酸残基533~535内に存在する。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1のアミノ酸残基533にある。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1のアミノ酸残基535にある。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1のアミノ酸残基533および535にある。
【0146】
いくつかの実施形態では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基452~560に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのC末端ドメインポリペプチドと、配列番号1のアミノ酸残基30~447に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つのN末端ドメインポリペプチドとを含む。一実施例では、AMH類似体は、配列番号1のアミノ酸残基452~560に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む2つのC末端ドメインポリペプチドと、配列番号1のアミノ酸残基30~447に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む2つのN末端ドメインポリペプチドとを含む。
【0147】
AMH類似体は、AMHR複合体の活性を調節することができる。いくつかの実施形態では、AMH類似体は、AMHR2のアゴニストである。
【0148】
様々な非ヒト動物由来のAMH配列を以下の表3に提供する。
【表3】
【0149】
ヒトおよび非ヒト動物由来の成熟AMH配列のアラインメントを
図11に提供する。
【0150】
本明細書に記載のAMH類似体は、例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、もしくはリン酸化により、または酸付加塩、アミド、エステル、特にC末端エステル、およびN-アシル誘導体の生成により、さらに修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、AMH類似体ポリペプチドまたはその対応する前駆体は、1つ以上の融合パートナーに融合され得る。一実施例では、融合パートナーは、Fcタンパク質(例えば、動物またはヒトFc)である。融合タンパク質は、精製または検出タグなどの第2の融合パートナー、例えば、直接的または間接的に検出され得るタンパク質(緑色蛍光タンパク質、ヘマグルチニン、またはアルカリホスファターゼなど)、DNA結合ドメイン(例えば、GAL4またはLexA)、遺伝子活性化ドメイン(GAL4またはVP16)、精製タグ、または分泌シグナルペプチド(例えば、プレプロトリプシンシグナル配列)をさらに含んでもよい。
【0151】
いくつかの実施例では、AMH類似体ポリペプチドは、担体分子などの第2の融合パートナーに融合されて、その生物学的利用能を増強する。かかる担体は、当該技術分野において既知であり、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリ(アルキル)グリコールを含む。意図される他の修飾としては、ポリマー(例えば、PEG)への付着が挙げられる。PEG化の方法は、当該技術分野において既知である。他の例としては、ポリペプチドの薬物動態を改善するトランスフェリン、アルブミン、成長ホルモンもしくはセルロース、または他の分子とのコンジュゲーションまたは遺伝子融合が挙げられる。
【0152】
ある特定の実施例では、AMH類似体は、類似体の半減期を増加させるように修飾されてもよい。いくつかの実施例では、AMH類似体は、インビボでAMH類似体の半減期を増加させる半減期延長部分を含むか、またはそれにコンジュゲートされる。好適な半減期延長部分としては、ポリエチレングリコール、脂質およびタンパク質(例えば、Fc断片、アルブミン結合タンパク質、PAS配列として含むポリペプチド、XTEN)が挙げられるが、これらに限定されない。血清アルブミンへの融合によっても、ポリペプチドの血清半減期を増加させることができる。当業者が理解するように、半減期の増加または延長は、血液からの特定の分子の遅いクリアランスを意味する。
【0153】
半減期延長部分は、例えば、血清アルブミンへのインビボ会合を可能にするペプチドまたはタンパク質を含み得る。特に、半減期延長部分は、アルブミン結合部分であってもよい。アルブミン結合部分は、例えば、天然に存在するポリペプチド、またはそのアルブミン結合断片、または操作されたポリペプチドからなり得る。操作されたアルブミン結合ポリペプチドは、例えば、タンパク質足場の変異体であってもよく、この変異体は、アルブミンに対する特異的な結合親和性のために選択されている。特定の実施形態では、タンパク質足場は、連鎖球菌タンパク質Gまたはその誘導体のドメインから選択され得る。好適なアルブミン結合ドメインの他の例は、WO2009/016043に開示されている。
【0154】
半減期延長部分は、例えば、ポリペプチドベースのランダムコイルドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、半減期延長部分は、PASポリペプチドであってもよい(例えば、Payne et al.(2010)Pharm.Dev.Technol.,1-18;Pisal et al.(2010)J.Pharm.Sci.99(6),2557-2575、Veronese.(2001)Biomaterials 22(5),405-417、PCT/EP2011/058307およびPCT/EP2008/005020を参照されたい)。PASポリペプチドは、安定した無秩序なポリペプチドを形成するプロリン、アラニン、および任意選択でセリン(PA/SまたはPAS)残基の配列を含む。いくつかの実施形態では、半減期延長部分は、XTENポリペプチドであり得る(例えば、Podust et al.,(2016)J Control Release 240:52-66を参照されたい)。XTENは、親水性の高い非構造化ポリペプチドを形成するアラニン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、およびスレオニン残基から完全に構成される。
【0155】
当業者は、ポリペプチドのインビボ半減期を延長するために、複数の他の既知のアプローチが存在し、任意の好適なアプローチが使用され得ることを理解するであろう。治療用タンパク質の半減期を延長するための例示的な戦略については、Zaman et al.,(2019)J.Control.Release.301:176-189でも論じられている。
【0156】
変異AMHポリペプチドの調製
変化したポリペプチド(AMH類似体)は、当該技術分野で既知の任意の技術を使用して調製され得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、インビトロ変異誘発に供され得る。かかるインビトロ変異誘発技術は、ポリヌクレオチドを好適なベクターにサブクローニングすること、ベクターをE.coli XL-1赤色(Stratagene)などの「変異誘発」株に形質転換すること、および形質転換された細菌を好適な数世代にわたって繁殖させることを含む。変異/変化したDNAに由来する産物は、容易に、本明細書に記載される技術を使用してスクリーニングされて、それらが受容体結合活性を有するかどうかを判定することができる。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、当業者に既知の技術、例えば、Stratagene Inc.(現在は、Agilent technologies)によって開発されたQuikChange(商標)法または他の市販のキット/戦略を使用して、部位特異的変異誘発に供され得る。
【0157】
アミノ酸配列変異体の設計において、変異部位の位置および変異の性質は、修飾される特徴に依存する。変異のための部位は、例えば、(1)まず、保存的アミノ酸選択で置換し、次いで、達成された結果に応じてよりラジカルな選択で置換すること、(2)標的残基を欠失させること、または(3)位置する部位に隣接する他の残基を挿入することによって、個別にまたは連続して修飾され得る。
【0158】
アミノ酸配列の欠失は、一般に、約1~15個の残基、より好ましくは、約1~10個の残基、および典型的には、1~5個の連続した残基の範囲である。置換変異体においては、ポリペプチド中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、異なる残基がその代わりに挿入されている。置換変異誘発のための最大の関心部位には、受容体結合に重要であるとして特定された部位が含まれる。
【0159】
ある特定の実施例では、部位は、比較的保存的な方法で置換される。かかる保存的置換を、「例示的置換」の見出しで表4に示す。
【表4】
【0160】
本明細書に記載されるアミノ酸は、好ましくは、「L」異性体形態である。しかしながら、D異性体形態の残基は、結合の所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限り、任意のL-アミノ酸残基に置換され得る。修飾には、構造的および機能的類似体、例えば、合成もしくは非天然アミノ酸またはアミノ酸類似体および誘導体化形態を有するペプチド模倣体も含まれる。
【0161】
組換え産生
ベクター
本開示のAMH類似体は、容易に入手可能な技術および材料、例えば、自動ペプチド合成装置を使用して、組換えて産生され得る(例えば、Applied Biosystems、Foster City,Calif.を参照されたい)。
【0162】
本明細書で核酸分子を説明するために使用される「組換え」という用語は、ゲノム、cDNA、ウイルス、半合成、および/または合成起源のポリヌクレオチドを意味し、これは、その起源または操作のために、自然界でそれが会合しているポリヌクレオチドの全部または一部と会合していない。組換えという用語は、タンパク質またはポリペプチドに関して使用する場合、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。宿主細胞に関して使用される場合、組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドが導入された宿主細胞を意味する。組換えはまた、異種材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)の導入によって改変された材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)を指すように本明細書で使用される。
【0163】
組換え産生のために、本開示のAMHポリペプチドをコードする核酸は、好ましくは、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためにまたは発現のために単離され、複製可能なベクターに挿入される。ポリペプチドをコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、ポリペプチドをコードするDNAに特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離または合成される。
【0164】
多くのベクターが利用可能である。ベクター成分は、一般に、シグナル配列、本開示のポリペプチドをコードする配列、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0165】
「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指し、プラスミドは、「ベクター」に包含される属の種である。「ベクター」という用語は、典型的には、宿主細胞における複製および/または維持に必要な複製起点および他の実体を含有する核酸配列を指す。それらが作用可能に結合している遺伝子および/または核酸配列の発現を指示することができるベクターは、本明細書では、「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、有用である発現ベクターは、多くの場合、「プラスミド」の形態であり、これは、ベクター形態では染色体に結合されない環状二本鎖DNAループを指し、典型的には、安定または一過性の発現のための実体またはコードされたDNAを含む。
【0166】
(i)シグナル配列成分。本開示のAMHポリペプチドは、直接だけでなく、好ましくは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換えで産生され得る。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され、かつプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。
【0167】
(ii)プロモーター成分。発現およびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、抗体核酸に作用可能に連結されるプロモーターを含有する。原核生物宿主との使用に好適なプロモーターとしては、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターが好適である。細菌系で使用するためのプロモーターは、ポリペプチドをコードするDNAに作用可能に連結されるシャインダルガーノ(S.D.)配列も含有する。
【0168】
本明細書で使用される場合、本明細書で互換的に使用される「プロモーター」または「プロモーター領域」または「プロモーター要素」は、典型的には、DNAもしくはRNA、またはそれらの類似体に限定されないが、それが作用可能に連結される核酸配列の転写を制御する核酸配列のセグメントを指す。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼ認識、結合および転写開始に十分な特異的配列を含む。プロモーター領域のこの部分は、プロモーターと呼ばれる。さらに、プロモーター領域は、RNAポリメラーゼのこの認識、結合および転写開始活性を調節する配列を含む。これらの配列は、シス作用であってもよく、またはトランス作用因子に応答性であってもよい。プロモーターは、調節の性質に応じて、構成的であっても調節されていてもよい。プロモーターは、組織特異的プロモーター(例えば、卵巣上または子宮上での発現に特異的な)を指してもよい。
【0169】
プロモーターは、真核生物については既知である。ほぼすべての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25~30個の塩基上流に位置するATの多い領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70~80個の塩基上流に見出される別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであってもよいCNCAAT領域である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にポリA尾部を付加するためのシグナルであり得るAATAAA配列がある。これらの配列はすべて、真核生物発現ベクターに好適に挿入される。酵母宿主との使用に好適な促進配列の例としては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたはエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の糖分解酵素のためのプロモーターが挙げられる。成長条件によって制御される転写の追加の利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびに麦芽糖およびガラクトース利用を担う酵素のためのプロモーター領域である。酵母発現に使用するのに好適なベクターおよびプロモーターについては、EP73,657にさらに記載されている。酵母エンハンサーはまた、酵母プロモーターとともに有利に使用される。
【0170】
(iii)エンハンサー要素成分。高等真核生物による本開示のAMHポリペプチドをコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。現在、多くのエンハンサー配列が、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)によって知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用される。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のための要素の増強に関してはYaniv(1982)Nature 297:17~18を参照されたい。エンハンサーは、AMHポリペプチドコード配列に対して5’または3’の位置でベクターにスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
【0171】
(iv)転写終結成分。真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターはまた、転写の終了おびmRNAの安定化に必要な配列も含有するであろう。かかる配列は、一般的に、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および場合によっては3’の非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびその中に開示されている発現ベクターを参照されたい。
【0172】
(v)宿主細胞の選択および形質転換。本明細書のベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、または高等真核生物細胞である。この目的のための好適な原核生物としては、真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、E.coli、腸内細菌、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えば、サルモネラチフス菌、セラチア、例えば、セラチアマルセスカンス、およびシゲラなどの腸内細菌、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformisなどの桿菌、P.aeruginosaなどの緑膿菌、およびストレプトマイセスが挙げられる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli 294(ATCC31,446)であるが、他の株、例えば、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)、およびE.coli W3110(ATCC27,325)が好適である。これらの実施例は、限定するのではなく例示的である。
【0173】
本明細書で有用であり得る他の発現ベクターとしては、プラスミド、エピソーム、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージまたはウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されず、かかるベクターは、宿主のゲノムに組み込まれ得るか、または特定の細胞において自律的に複製され得る。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであり得る。等価な機能を果たす、当業者に既知の他の形態の発現ベクターも、例えば、自己複製染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに組み込まれるベクターを使用することができる。好ましいベクターは、それらが連結される核酸の自律的複製および/または発現が可能なものである。それらが作用可能に連結している遺伝子の発現を指示することができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。発現ベクターは、DNAの安定なまたは一過性の発現をもたらし得る。本開示に使用するための例示的な発現ベクターは、pcDNA3.1である。
【0174】
いくつかの実施例では、AMH類似体をコードする核酸は、ウイルスベクターとして投与される。かかるウイルスベクターは、例えば、US5,399,346に記載されているように、遺伝子治療における使用に好適である。細胞への侵入は、当該技術分野において既知の手段により、例えば、ポリヌクレオチドをベクター内に提供することにより、またはポリヌクレオチドをリポソーム内に封入することにより促進することができる。
【0175】
真核細胞に匹敵する発現ベクターを使用して、本明細書に記載されるAMH類似体の発現のための組換え構築物を産生することができる。真核細胞発現ベクターは、当該技術分野において既知であり、商業的供給源から入手可能である。そのようなベクターは、典型的には、DNAの挿入のための制限部位を提供される。これらのベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、オーソポックス(例えば、ワクシニア)、鳥痘、レンチウイルス、またはマウスマロニー白血病ウイルスなどの痘ウイルスであり得る。
【0176】
いくつかの実施例では、プラスミド発現ベクターが使用され得る。プラスミド発現ベクターとしては、BL21、AD494(DE3)pLys、Rosetta(DE3)、Origami(DE3)およびpCIneoなどのE.coli宿主細胞におけるタンパク質発現のためのpcDNA3.1、pETベクター、pGEXベクターおよびpMALベクターが挙げられる。
【0177】
いくつかの実施例では、ベクターは、複製能のないアデノウイルスベクター、例えば、pAdeno X、pAd5F35、pLP-Adeno-X-CMV(Clontech(登録商標))、pAd/CMV/V5-DEST、pAd-DESTベクター(Invitrogen(商標)Inc.)である。
【0178】
本発明において利用され得るウイルスベクターシステムとしては、(a)アデノウイルスベクター、(b)レトロウイルスベクター、(c)アデノ随伴ウイルスベクター、(d)単純ヘルペスウイルスベクター、(e)SV40ベクター、(f)ポリオーマウイルスベクター、(g)パピローマウイルスベクター、(h)ピコルナウイルスベクター、(i)オルトポックスなどのポックスウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスベクターまたはアビポックス、例えば、がん性ポックスまたは鳥類ポックス、および(j)ヘルパー依存性または無益なアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。一実施例では、ベクターは、アデノウイルスである。複製欠陥ウイルスも有利であり得る。
【0179】
本明細書で使用する場合、「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」という用語は、AAVベクターゲノムを含有するAAVウイルス粒子(次に、本明細書で言及される第1および第2の発現カセットを含む)を意味する。好適なAAVベクターは、当業者に既知であり、すべての血清型、例えば、AAV-1~AAV-10、好ましくはAAV-1(US6,759,237)、AAV-2、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、およびそれらの組み合わせのAAVベクターを含む。例えば、国際特許公開第02/33269号、同第02/386122号(AAV8)、およびGenBank、ならびにそのような配列が、シングレットエラーを修正するためにどのように変更されているか、例えば、AAV6.2、AAV6.1、AAV6.1.2、rh64R1およびrh8R(例えば、2006年10月19日に公開されたWO2006/110689を参照されたい)を参照されたい。あるいは、既知の技術を使用して当業者によって特定された配列を含む他のAAV配列(例えば、国際特許公開第2005/033321号およびGenBankを参照されたい)または他の手段は、本明細書に記載されるように修飾され得る。
【0180】
ベクターは、細胞ゲノムに組み込まれても、組み込まれなくてもよい。構築物は、必要に応じて、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、構築物は、エピソーム複製が可能なベクター、例えば、EPVおよびEBVベクターに組み込まれ得る。
【0181】
宿主細胞
AMHポリペプチドの発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(フルーツフライ)、およびBombyx moriなどの宿主由来の多数のバキュロウイルス株および変異体、ならびに対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-I変異体およびBombyx mori NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、かかるウイルスは、本明細書において、本発明によるウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る。
【0182】
有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVl株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚性腎臓株(浮遊培養における増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham et al.(1977)Gen Virol.36:59)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、Urlaub et al.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci USA 77:4216)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather(1980)Biol.Reprod.23:243-251)、サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70)、アフリカ緑色サル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.(1982)Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68)、MRC 5細胞、FS4細胞、およびPER.C6(商標)(Crucell NV)である。
【0183】
ある特定の実施例において、本明細書に記載されるAMH類似体は、本明細書に記載されるまたは当業者によって既知である1つ以上の精製方法によって、単離および/もしくは精製されるか、または実質的に精製され得る。一般に、純度は、少なくとも90%、特に、95%であり、多くの場合、99%を超える。
【0184】
ある特定の実施形態では、天然に存在する化合物は、より広い属の一般的な記載から除外される。
【0185】
AMH類似体の活性の測定
本明細書でAMH類似体に関連して使用する場合、「活性」という用語は、AMH受容体複合体によるシグナル伝達を誘導する類似体の能力を指す。本明細書に記載されるAMH類似体は、天然ヒトAMHの活性に匹敵するか、またはそれを超える活性を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAMH類似体は、天然ヒトAMHによって引き起こされる活性化レベルに匹敵するか、またはそれを超えるレベルでAMHR2を活性化することができる場合がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAMH類似体は、天然ヒトAMHによって引き起こされる活性化レベルに匹敵するか、またはそれを超えるレベルでAMHR1を活性化することができる場合がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAMH類似体は、天然ヒトAMHによって引き起こされる活性化レベルに匹敵するか、またはそれを超えるレベルでSMAD1/5を活性化する(例えば、SMAD1/5のリン酸化を誘導する)ことができる場合がある。AMH類似体の活性は、当業者に既知の技術を使用して決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、活性は、AMH類似体での処置後のSmad-1/5応答を測定することによって測定される。いくつかの実施形態では、AMH類似体の活性は、本明細書に記載されるルシフェラーゼアッセイを使用して決定され得る。簡潔に述べると、COV434細胞を、Smad1/5応答性BRE-ルシフェラーゼレポーターおよびAMHR2でトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を、ある範囲の濃度で、AMH類似体で一晩処理する。細胞を回収し、溶解し、基質D-ルシフェリンを添加した直後に、発光を測定する。ルシフェラーゼ活性は、ベースライン活性に関連する倍率変化として分析される。
【0186】
AMH類似体の治療的使用
本明細書に記載されるAMH類似体は、卵巣および/または子宮保護に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「卵巣保護」は、外因性剤、例えば、治療剤または治療の外傷、傷害、または効果の結果として、一方または両方の卵巣に対す劇害的なまたは有害な影響に対する保護を指す。いくつかの実施形態では、外因性剤は、化学療法剤または細胞傷害性剤であり得る。「卵巣保護」はまた、卵巣に対するいかなる侵襲または外傷(例えば、生着、または損傷)に対する保護も指し得る。卵巣保護は、一方または両方の卵巣の保護を指してもよい。「卵巣保護」は、卵巣の機能(例えば、生殖ホルモンの産生、適切なレベルの卵胞刺激ホルモンの維持、または卵胞産生)、および卵巣の組織学(例えば、サイズ、および組織の健康)を保護することを指す。卵巣保護は、治療剤の投与後に、該投与前の卵巣機能と比較して、卵巣機能の少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%を維持する。卵巣保護には、がん治療中の傷害による卵巣の保護も包含される。
【0187】
本明細書に記載されるAMH類似体はまた、卵胞形成を低減するのに有用であり得、したがって、卵巣保護を促進する。卵胞形成は、未成熟卵母細胞を含む卵胞の成熟であり、月経サイクルの一部として多数の小原始卵胞が大排卵前卵胞に進行することである。原始卵胞またはホルモンの合図に反応する原始卵胞の枯渇は、更年期の始まりを示す。卵胞形成を低減させることで、原始卵胞が温存される。卵巣保護により、AMH類似体の非存在下と比較して、女性対象における卵胞形成を低減させ得るか、または補充される原発性卵胞の数を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、またはそれ以上低減させ得る。
【0188】
いくつかの実施例では、卵巣保護は、早期卵巣不全の抑制であり得る。本明細書で使用される場合、「早期卵巣不全」は、40歳以前の卵巣機能の停止を指す。臨床的には、早期卵巣不全は、血液中の高レベルの卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンによって診断される。早期卵巣不全の原因としては、化学療法、放射線療法、自己免疫疾患、甲状腺疾患、糖尿病、および外科的に誘発される閉経(例えば、子宮摘出術、または卵巣摘出術)が挙げられるが、これらに限定されない。卵巣保護はまた、化学療法および放射線療法などのがん治療レジメン、または細胞傷害性因子、ホルモン欠乏、成長因子欠乏、サイトカイン欠乏、細胞受容体抗体などの他の人工的傷害から女性生殖系を保護する方法を包含し得る。その他の侵襲には、女性の生殖器系の一部または全体が外科的に除去される外科的侵襲が含まれる。特に、1つの卵巣の除去によりもたらされるホルモン不均衡は、本明細書に記載されるAMH類似体の投与によって完全にまたは部分的に回復される。
【0189】
本明細書に記載されるAMH類似体は、子宮保護にも有用である。本明細書で使用される場合、「子宮保護」は、治療剤または治療、例えば化学療法剤または細胞傷害性剤の結果としての子宮への劇害的なまたは有害な影響に対する保護を指す。「子宮保護」とは、子宮の機能(例えば、胚着床、胎盤の発達、および妊娠する能力(例えば、流産または早産なしで))、および子宮の組織学(例えば、子宮内膜の健康)を保護することを指す。「子宮保護」はまた、卵巣に対するいかなる傷害(例えば、手術、例えば、帝王切開、または傷害)に対する保護も指し得る。子宮保護は、治療剤の投与後に、該投与前の子宮機能と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%の子宮機能を維持する。子宮保護は、子宮内膜の増加であり得る。薄い子宮内膜は、胚が子宮内膜に着床する能力を妨げる可能性がある。非侵襲的イメージング、例えば、骨盤超音波または超音波検査は、対象における子宮内膜の厚さを評価するために使用され得る。月経中、子宮の内膜は2~4mmであり、2mm未満は薄い子宮内膜を示す。
【0190】
子宮保護は、女性対象における子宮内膜症の可能性を抑制または低減し得る。子宮内膜症は、子宮の外側、例えば、生殖器官(例えば、卵巣、卵管、または子宮を取り囲む組織)における子宮内膜成長をもたらす状態である。子宮内膜症は、卵巣、卵管、または子宮の機能を阻害し、不妊症をもたらす可能性がある。子宮保護は、妊娠誘発性高血圧または妊娠高血圧腎症の発生率またはリスクを低減することができる。
【0191】
本明細書に記載されるAMH類似体は、避妊に使用されてもよく、これは、受胎の可能性、したがって妊娠の可能性を減少させる能力を停止させることを意味する。女性対象へのAMH類似体の投与は、該女性が生理周期、および生殖ホルモン分泌を制御することを可能にし、原始卵胞の補充および/または活性化を遅くするか、または防止する(例えば、AMH類似体の投与により生理周期が停止する)。
【0192】
本明細書に開示されるAMH類似体は、機能的卵巣予備能(FOR)の低下を防止する、または女性対象における卵胞形成を低減するために投与され得る。対象は、15歳~55歳の間であってもよく、免疫療法、細胞療法、化学療法、放射線療法、または化学放射線療法から選択される治療で治療を受けるようになるか、または治療を受けている。対象は、がんまたは自己免疫疾患を有する場合がある。対象は、細胞傷害性剤による治療を受けるようになるか、または受けている。女性対象における卵胞形成の低減は、AMH類似体の非存在下と比較して、補充される原始卵胞の数が少なくとも10%低減したか、もしくは補充される原始卵胞の数が10%~99%低減したか、またはAMH類似体の非存在下と比較して、卵胞形成における完全な停止であり得る。
【0193】
本明細書に記載されるAMH類似体は、がん、例えば、AMH受容体を発現するがんまたはAMHR2応答性がんを治療するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、がんは、AMHR2を発現する。いくつかの実施形態では、がんは、AMHR2応答性がんである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAMH類似体は、婦人科がんの治療に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「婦人科がん」は、女性生殖系のがん、例えば、子宮頸部、卵管、卵巣、胎盤、子宮、子宮内膜、膣および外陰部のがんを指す。いくつかの実施形態では、婦人科がんは、子宮がん、卵巣がんおよび子宮頸がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、婦人科がんは、卵巣がんであるか、または卵巣がん細胞を含む。いくつかの実施形態では、婦人科がんは、子宮内膜がんであるか、または子宮内膜がん細胞を含む。いくつかの実施形態では、対象は、追加の薬剤またはがん療法で治療されるようになるか、またはそれで治療されている。いくつかの実施例では、対象は、化学療法、放射線療法、免疫療法、細胞療法または化学放射線療法から選択される治療されるようになるか、またはそれで治療されている。いくつかの実施例では、対象は、細胞傷害性剤で治療を受けるようになるか、または受けている。いくつかの実施形態では、AMH受容体(例えば、AMHR2)の発現は、対象から得られた生体試料、例えば、がんもしくは腫瘍組織試料、またはがん細胞もしくは腫瘍細胞、例えば、生検組織試料において測定される。
【0194】
AMH類似体の投与
本明細書に記載されるAMH類似体またはポリヌクレオチドまたは組成物の治療有効量または投与量は、例えば、停止卵胞形成に投与される。例えば、有効量は、組成物が投与されていないときと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%補充される原始卵胞の数を低減させるために、AMH類似体またはそれをコードする核酸またはその前駆体をコードする核酸の量である。女性対象に投与されるAMH類似体またはそれをコードする核酸またはその前駆体をコードする核酸を含む組成物の量は、その量が、補充される原始卵胞の数を所望の数に低減する、または補充される原始卵胞の確率を所望の値に減少させるのに十分な場合に、有効であるとみなされる。いくつかの実施例では、投与される組成物の量は、避妊を達成するのに十分である。
【0195】
本明細書に開示される組成物は、一度に投与され得るか、またはサブ用量に分割され得る。
【0196】
いくつかの例では、投与は、慢性的であってもよく、例えば、数週間または数ヶ月の期間にわたって1日に1回以上の用量および/または治療であってもよい。投与および/または治療スケジュールの例は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月、またはそれ以上の期間にわたって、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、または4回以上の投与である。用量は、有害な副作用を引き起こすほどであってはならない。
【0197】
対象への短期または長期投与は、本開示によって企図される。短期投与の例は、本明細書に記載されるように、放射線または化学的傷害、またはがん治療による卵巣を保護するための投与である。短期投与において、組成物は、侵襲に曝露する直前の約30日前からの期間で、少なくとも1回投与される。
【0198】
より低用量のAMH類似体が、より長期的かつ継続的な投与において必要とされ得る。
【0199】
いくつかの実施例では、対象への投与は、インビボであってもよい。インビボ投与は、経口、血管内、腹腔内、子宮内、卵巣内、皮下、筋肉内、直腸、局所(粉末、軟膏、滴下、口腔内、舌下)、膣内、大槽内、またはそれらの組み合わせを包含する。卵巣内投与が所望される実施形態では、卵巣内投与が、例えば、卵巣への直接注射を含むいくつかの方法によって達成され得る。
【0200】
本明細書に記載されるそのAMH類似体は、当該技術分野において既知であるか、または本明細書に記載される任意の経路によって、例えば、経口、非経口(例えば、静脈内または筋肉内)、腹腔内、直腸、皮膚、経鼻、膣、吸入剤、皮膚(パッチ)、または眼によって投与され得る。AMH類似体は、任意の用量または投薬レジメンで投与され得る。
【0201】
いくつかの実施例では、投与は、卵巣を静止状態に維持するのに十分であり得る。
【0202】
一実施例では、本明細書に記載のAMH類似体を含む組成物は、対象に、約2、または約3、または約4、または約5週間、または5週間超、例えば、約2、または約3、または約4、または約5、または約6、または約7ヶ月間以上投与され得、次いで、適切な間隔の後、追加の期間、例えば、約2、または約3、または約4、または約5日間、または5日間超投与され得る。治療のサイクルは、直ちに連続して、またはサイクル間の治療なしの間隔で存在してもよい。典型的には、対象に、妊孕性の温存のために本明細書に記載されるAMH類似体を含む組成物を投与する場合(例えば、卵胞形成を停止させる方法において)、対象に、組成物を、約3~4ヶ月の期間、または約4~6ヶ月の期間、または約6~8ヶ月の期間、または約8~12ヶ月の期間、または約12~24ヶ月の期間、または約24~36ヶ月の期間、または約36ヶ月超の期間、続いて無分娩の間隔で投与することができる。
【0203】
いくつかの実施例では、対象に、避妊方法において本明細書に記載されるAMH類似体を含む組成物を投与する場合、対象に、組成物を、約3~4ヶ月の期間、もしくは約4~6ヶ月の期間、もしくは約6~8ヶ月の期間、もしくは約8~12ヶ月の期間、もしくは約12~24ヶ月の期間、もしくは約24~36ヶ月の期間もしくは約36ヶ月超の期間、または対象が妊娠にならないことを望む限り、続いて分娩の間隔で投与することができる。
【0204】
特定の実施例では、本明細書に記載されるAMH類似体を含む組成物は、ほとんどの手段によって投与され得るが、いくつかの実施形態では、注射(例えば、静脈内、皮下、動脈内)、注入または滴下として対象に送達される。ある特定の実施形態では、AMH類似体を含む組成物は、経口摂取または膣内投与によって対象に送達される。
【0205】
いくつかの例では、本明細書に開示されるAMH類似体は、例えば、当業者に既知であるように、ヒドロゲル、膣錠剤、ペッサリー/坐剤、粒子系、および膣内環を含むものを使用して、膣に投与され得る。
【0206】
いくつかの実施形態では、AMH類似体は、化学療法治療、免疫療法、細胞傷害性治療、手術、または放射線治療の前に対象に投与されることが好ましい。例えば、AMH類似体が、卵胞形成を低減するため、早期卵巣不全を阻害するため、避妊のため、または機能的卵巣予備能(FOR)の低下を防止するために、卵巣および/または子宮保護を投与される場合、AMH類似体が、化学療法治療、免疫療法、細胞傷害性治療、手術、または放射線治療の前に対象に投与されることが好ましい。
【0207】
いくつかの実施例では、女性対象は、以下の用量のAMH類似体が投与される:女性13~45歳:1~10ng/mL;45歳以上の女性:1ng/mL未満。用量値は、例えば、女性の機能的卵巣予備能、または緩和される卵巣老化もしくは卵巣予備能の低下の重症度に応じて変化し得る。
【0208】
AMH類似体の有効性および毒性は、細胞培養物または実験動物(例えば、ED50(用量は集団の50%で有効である)およびLD50(用量は集団の50%で致死的である))における標準的な薬学的手順によって決定され得る。治療効果に対する毒性の用量比は、治療指数であり、その比、LD50/ED50として表され得る。
【0209】
使用され得る適切な実験モデルは、使用可能な用量を決定することを含み、これは、当業者に一般に知られているミュラー管退行バイオアッセイまたはインビボがんモデルである。インビボがんモデルは、Frese et al.,”Maximizing mouse cancer models” Nat Rev Cancer.2007 Sep;7(9):645-58 and Santos et al.,Genetically modified mouse models in cancer studies.Clin Transl Oncol.2008 Dec;10(12):794-803,and ”Cancer stem cells in mouse models of cancer”,6th Annual MDI Stem Cell Symposium,MDI Biological Lab,Salisbury Cove,ME,August 10-11,2007”(これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)で論じられている。例えば、組換えヒトAMHポリペプチドの治療有効量は、妊孕性のマウスモデルにおいて評価され得る。
【0210】
必要に応じて、本開示の組成物は、治療を必要とする領域(例えば、卵巣)に局所的に投与され得る。これは、例えば、手術中の局所注入、局所適用、例えば、注入による、カテーテルによる、またはインプラントによるものであってもよく、インプラントは、多孔質、非多孔質、もしくはゼラチン質の材料であり、膜、例えば、シラスティック膜、繊維、もしくは市販の皮膚代替品などを含む。
【0211】
AMH類似体をコードする薬剤、例えば、核酸薬剤は、ベクター、例えば、当業者に周知の方法により、ウイルスベクターを使用して送達され得る。
【0212】
いくつかの実施例では、AMH類似体は、単剤療法として投与される。いくつかの実施例では、AMH類似体は、少なくとも1つの追加の治療剤(すなわち、同時投与)と組み合わせて投与される。例えば、AMH類似体は、化学療法剤、抗腫瘍剤、放射線、または手術と組み合わせて投与され得る。「同時投与する」という用語は、少なくとも2つの化合物(1つはAMH類似体である)の各々が、生物学的活性または効果のそれぞれの期間が重なる時間枠中に投与されることを示す。したがって、この用語は、化合物の逐次的ならびに同一の広がりをもつ投与を含む。化合物を投与することと同様に、1つを超える物質の同時投与は、治療および/または予防目的のためであってもよい。1つを超える物質または化合物が同時投与される場合、2つ以上の物質の投与経路は、同じである必要はない。本明細書に記載される方法および使用の範囲は、AMH類似体と同時投与され得る物質の同一性によって限定されない。
【0213】
いくつかの実施例では、AMH類似体は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。チェックポイント阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合する小分子、阻害性RNA/RNAi分子(一本鎖および二本鎖の両方)、抗体、抗体試薬、またはその抗原結合断片であり得る。治療薬の標的となる一般的なチェックポイントとしては、PD-1、CTLA4、TIM3、LAG3およびPD-Llが挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
いくつかの実施例では、AMH類似体は、免疫療法(例えば、自己免疫疾患を治療するために使用される薬物または薬剤)と組み合わせて投与される。
【0215】
組成物
本明細書に記載されるAMH類似体を含む組成物は、様々なビヒクル、アジュバント、添加剤、および希釈剤などの任意の適合性担体を含有する滅菌注射溶液などの任意の好適な手段で製剤化され得る。本開示で利用される化合物は、対象に、徐放性皮下インプラントまたは標的送達システムの形態、例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオントフォレーシス、ポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェアの形態で非経口的に投与され得る。
【0216】
綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、またはミリスチン酸イソプロピルなどのピーナッツ油およびエステルなどの非水ビヒクルも、組成物の溶媒系として使用され得る。さらに、抗菌保存剤、酸化防止剤、キレート剤、および緩衝液を含む、組成物の安定性、無菌性、および等張性を向上させる様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって確保され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射用医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0217】
いくつかの実施例では、組成物は、脂質ベースの製剤であり得る。例えば、多胞体リポソーム、多層リポソームおよび単層リポソームは、組成物の持続放出率を提供することができる。
【0218】
いくつかの例では、本明細書に記載される方法で使用される組成物は、制御された放出形態であり得る。様々な既知の制御放出剤形または持続放出剤形、製剤、およびデバイスは、本開示の組成物とともに使用するように適合され得る。例としては、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,733,566号、および同第6,365,185号に記載されるものが挙げられる。これらの剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧系(例えば、OROS(登録商標)(Alza Corporation、MountainView,Calif.USA)、またはそれらの組み合わせを使用して、所望の放出プロファイルを様々な割合で提供して、1つ以上の有効成分の徐放性または制御放出を提供するように使用され得る。
【0219】
一実施例では、組成物は、リポソーム中に送達される(Langer(1990)Science 249:1527-1533を参照されたい)。
【0220】
いくつかの実施例では、本明細書に記載されるAMH類似体を含む組成物は、任意の他の治療剤と併せて(例えば、組み合わせて)投与および/または製剤化され得る。
【0221】
本開示の薬学的組成物は、本開示の化合物および薬学的に許容される担体を含み、化合物は、目的の状態を治療するのに有効な量で組成物中に存在する。適切な濃度および投与量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0222】
薬学的に許容される担体は、当業者にはよく知られている。液体溶液として製剤化された組成物については、許容される担体は、生理食塩水および滅菌水を含み、任意選択で、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および他の一般的な添加剤を含み得る。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体、粉末トラガント、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤、落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エステルなどのエステル、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、リン酸塩緩衝液、エチル緩衝液、ならびに医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
組成物はまた、本発明の化合物に加えて、希釈剤、分散剤、および表面活性剤、結合剤、および潤滑剤を含有する丸剤、カプセル剤、顆粒剤、または錠剤として製剤化することもできる。当業者は、適切な方法で、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro,Ed.Mack,Publishing Co.,Easton,Pa.1990に開示される許容される粒子に応じて、本開示の化合物をさらに製剤化してもよい。
【0224】
いくつかの実施例では、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、遊離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も、組成物中に存在してもよい。薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど、ならびに金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0225】
「持続放出」、「制御放出」、または類似の用語は、活性成分(例えば、AMH類似体)が経時的に放出されることを可能にし、体内(例えば、血流中)の活性成分のより一貫したレベルを維持するために使用される製剤を指し、当該技術分野では既知である。
【0226】
本開示の製剤には、静脈内投与、経口投与、経鼻投与、局所投与、経皮投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、膣投与、および/または非経口投与に好適なものが含まれる。
【0227】
経口投与に好適な本発明の製剤としては、カプセル、カシェ、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味ベースで、通常はスクロースおよびアカシアもしくはトラガカントを使用する)、粉末、顆粒を、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または油中もしくは油中水液体乳剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、またはパスティーユ(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアなどの不活性塩基を使用する)として、ならびに/または口腔洗浄剤などが挙げられ、各々、活性成分として所定量の本開示の化合物を含有する。
【0228】
本開示の化合物の経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実、アメリカホドイモ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香料、着色剤、芳香剤、および保存剤などのアジュバントも含んでもよい。
【0229】
組成物は、例えば、座薬として、直腸または膣投与のために製剤化されてもよく、これは、本開示の1つ以上の化合物(例えば、AMH類似体)を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つ以上の好適な賦形剤または担体と混合することによって調製されてもよく、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって活性化合物を放出する。かかる投与に好適な担体および製剤は、当該技術分野において既知である。
【0230】
本明細書に記載される組換えヒトAMHポリペプチドの局所投与または経皮投与のための、例えば、筋肉投与のための剤形としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。
【0231】
経皮パッチは、化合物を適切な媒体中に溶解または分散させることによって作製され得る。吸収増進剤は、皮膚にわたる化合物のフラックスを増加させるためにも使用され得る。かかるフラックスの速度は、速度制御膜を提供するか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に活性化合物を分散させるかのいずれかによって制御され得る。
【0232】
非経口投与に好適な薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射用溶液もしくは分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて、抗酸化剤、緩衝液、バクテリオスタット、配合物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る、1つ以上の本開示の化合物を含む。
【0233】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確保することができる。また、糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、注射用医薬形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含めることによってもたらされ得る。
【0234】
ある特定の例では、医薬組成物は、任意選択で、1つ以上の追加の治療剤をさらに含み得る。もちろん、かかる治療剤は、当業者に既知であり、当業者によって容易に識別され得る。
【0235】
ある特定の例では、組成物は、例えば、組織特異性および細胞、例えば、筋肉細胞に対する標的化を増加させるために、標的化剤にコンジュゲートまたは共有結合されるAMH類似体を含み得る。標的化剤は、例えば、抗体、サイトカインおよび受容体リガンドを含み得るが、これらに限定されない。
【0236】
治療を必要とする対象
一実施例では、本明細書に記載のAMH類似体を投与されている対象は、がんを有し、化学療法剤または抗がん剤で、治療されるようになるか、または現在治療されているか、または治療されてきている。がんとしては、例えば、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭状腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性肺がん、腎細胞がん、肝臓がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胚性がん腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、悪性黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病、慢性白血病および真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、または免疫グロブリン重鎖病が挙げられる。がんは、原発性がんまたは転移性がんであり得る。
【0237】
本明細書で使用される場合、「抗がん剤」は、子宮および/または卵巣に有害な影響を有することが示されているがんの治療のための意図された使用(例えば、免疫チェックポイント阻害剤、CAR T細胞、または標的療法)を有する任意の治療薬を指し得る。卵巣および/または子宮への傷害は、例えば、細胞死、組織欠損もしくは腐敗、または卵巣もしくは子宮の異常な機能(例えば、異常なホルモン分泌、卵胞形成の増加、またはホルモン刺激に対する卵胞の脱感作)の存在によって測定され得る。
【0238】
いくつかの実施例では、本明細書に記載される方法は、女性の対象が生存子孫を産生する能力および/または卵巣予備能を保持することを可能にする。いくつかの実施例では、組成物の投与は、細胞傷害性剤もしくは化学療法剤への女性対象の曝露の前に、または代替的に、治療と併せて、および/または細胞傷害性剤もしくは化学療法剤による治療、またはがん治療の後に終了する。
【0239】
別の実施例では、本明細書に記載されるAMH類似体を投与される対象は、自己免疫疾患を有し、免疫療法で、治療されることになるか、または現在治療されているか、または治療されてきている。本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患または障害」は、外来細胞と健常細胞とを区別することができないことを特徴とする。自己免疫疾患の非限定的な例としては、卵巣炎、炎症性関節炎、1型糖尿病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、SLE、および血管炎、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、および接触性過敏症などのアレルギー性炎症、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、グレーブス病(甲状腺機能亢進)、橋本甲状腺炎(甲状腺機能の低下)、慢性移植片対宿主病、凝固因子に対する抗体を有する血友病、セリアック病、クローン病および潰瘍性大腸炎、ギラン・バレ症候群、原発性胆道硬化症/肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、レイノー現象、強皮症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、慢性疲労症候群(CFS)、乾癬、自己免疫性アジソン病、強直性脊椎炎、急性散在性脳脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、抗リン脂質抗体症候群、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、犬の多発性関節炎、ライター症候群、高安動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症および線維筋痛症(FM)が挙げられる。
【0240】
一実施例では、女性対象は、子宮または卵巣の細胞に細胞死または細胞障害を引き起こす細胞傷害性剤または細胞傷害性剤で治療されるようになるか、または現在治療中であるか、または治療されてきている。
【0241】
一実施例では、女性対象は、長期治療計画、すなわち、慢性状態の治療、慢性状態の再発、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウイルス性肝炎、ウイルス性または細菌性髄膜炎、マラリア、または神経変性疾患で治療されるようになるか、または現在治療中であるか、または治療されてきている。一実施例では、女性対象は、子宮および/または卵巣に傷害をもたらさない長期治療計画で治療されるようになるか、または現在治療中であるか、または治療されてきている。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の治療を受けている対象は、原始卵胞補充の動員および/もしくは活性化を遅延させるかもしくはゆっくりにさせるか、または自身の妊孕性を温存することを望む場合がある。対象は、投与される治療薬が胎児に有害作用を有するか、または治療の副作用(例えば、疲労、もしくは吐き気)のために治療中に妊娠が理想的ではないであろうことを含むが、これらに限定されない理由のために、長期治療中に自身の妊孕性を温存することおよび/または妊娠を防ぐことを望み得る。
【0242】
いくつかの実施例では、女性対象は、治療中の卵巣または子宮保護以外の理由で、自身の妊孕性を温存することを望む場合がある。女性対象は、多数の異なるライフスタイル要因のために、子供の出生を遅らせることを望む場合がある。いくつかの実施例では、女性対象は、妊孕性を温存するために本明細書に記載されるAMH類似体を投与され、追加の治療を受けていないか、または追加の治療薬を受けていない。本明細書で使用される場合、「妊孕性温存」は、例えば、AMH類似体が患者に最初に投与される時点で、対象をその既存の状態で、妊孕性潜在性(例えば、卵子の年齢、生理周期の規則性、卵巣予備能、卵巣機能、卵巣ホルモン分泌などの要因に基づいて、子供を妊娠させる可能性)を維持することを指す。「妊孕性温存」は、その自然限界を超えた、例えば、出産年齢を過ぎた、延長された妊孕性を指し得る。「妊孕性温存」は、AMH類似体の投与前に対象の卵巣に存在するのと同じ数の原発性卵胞を維持することを指し得る。AMH類似体は、加齢妊孕性低下を阻害するために女性対象に投与され得る。「加齢妊孕性低下」とは、女性の年齢による妊娠の可能性の低下を指す。女性が子供を産むためのピークの生物学的年齢は、10代後半から20代前半であり、不妊症の割合は女性の年齢とともに増加する。
【0243】
いくつかの実施例では、女性対象は、対象が、卵巣予備能低下(DOR)、早期卵巣老化(POA)、原発性卵巣不全(POI)、子宮内膜症、1つ以上のFMR1前変異または55~200回のGCC FMR1の反復、BRAC1変異、ターナー症候群、自己免疫疾患、卵巣自己免疫疾患(例えば、卵巣炎)、甲状腺自己免疫、副腎自己免疫、または自己免疫多腺症候群を有する場合、または事前に処置されている場合、原発性卵胞の補充を遅延させるかまたはゆっくりにさせるか、または自身の妊孕性を温存することを望む場合がある。
【0244】
いくつかの実施例では、AMH類似体は、対象における避妊薬として使用される。したがって、本開示はまた、本明細書に記載されるAMH類似体を対象に投与することを含む、避妊方法を提供する。一実施例では、対象は化学療法を受けている。さらなる例では、避妊薬は、アデノウイルスベクター内に、本明細書に記載されるAMH類似体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0245】
キット
本開示はまた、本明細書に記載される任意の方法で使用するためのキットを提供し、キットは、本明細書に記載される組換えAMHポリペプチドを含むポンプまたは注入デバイスと、対象の治療のためにポンプまたは注入デバイスを女性対象に埋め込むための説明書とを含む。
【0246】
1つの実施例では、治療を必要とする女性対象は、卵巣予備能低下(DOR)、早期卵巣老化(POA)、原発性卵巣不全(POI)、子宮内膜症、1つ以上のFMR1前突然変異もしくは55~200回のGCC FMR1反復のうちの1つ以上を有するか、または対象ががん治療を受けているか、がんを有しているか、もしくはがん治療を受けようとしている。
【0247】
キットは、少なくとも1つの試薬、例えば、AMH類似体を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)であり、製造物は、本明細書に記載される方法を実行するための単位として促進、配布、または販売されている。
【0248】
本明細書に記載されるキットは、本明細書に記載される方法を実行するために有用な追加の構成要素を任意に含んでもよい。例として、キットは、本明細書に記載されるAMH類似体を含む組成物に好適な流体(例えば、緩衝液)、本明細書に記載される方法の性能を説明する指示資料などを含んでもよい。キットは、本明細書に記載される組成物の送達のためのデバイスおよび/または試薬をさらに含んでもよい。さらに、キットは、取扱説明書を含んでもよく、および/または取得された結果の関連性に関する情報を提供してもよい。
【0249】
多くの変形および/または修正が、本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して行われ得ることを、当業者は理解するであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【実施例】
【0250】
方法
AMH cDNA源および部位特異的変異誘発
哺乳類発現ベクターpcDNA3.1内に含有される完全長ヒト抗ミューレリアンホルモン(hAMH)の修飾形態をコードするcDNA配列は、Axel Themmen博士(Erasmus University、The Netherlands)によって親切に提供され、その研究室によって以前に記載されている(Weenen C et al.(2004)Molecular Human Reproduction 10(2):77-83)。簡単に述べると、hAMH cDNAへの修飾は、Glu29の後のHis-6精製タグの挿入であった。さらに、プロドメインの3’末端のタンパク質分解プロセシング部位は、タンパク質成熟を増強するために「RARR」に置換されていた(本明細書ではプラスミドhAMHと呼ぶ)。
【0251】
hAMHに対する2つの追加の修飾は、オーバーラップエクステンションPCRによって行われ、修飾cDNAは次いで、制限部位NotIとHindIIIとの間でpCDNA3.1(-)(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)にサブクローニングされた。第1の修飾は、タンパク質分解プロセシング部位を理論的に理想的な「ISSRKKRSVSS」スーパーカットモチーフに修飾することによって、タンパク質の成熟をさらに向上させることであった(Duckert,Brunak & Blom(2004)Protein Engineering Design & Selection 17(1):107-112)。スーパーカットしたcDNA配列を、Gly447およびSer452の配列間に、かつ「RARR」残基(本明細書ではプラスミドhAMH+SCUTと呼ぶ)の代わりに挿入した。ヒト血清アルブミンリーダー配列とのhAMHリーダー配列(最初の25アミノ酸)の置き換えは、哺乳類細胞株由来のhAMHの組換え産生を増強することが以前に報告されている(Peepin D et al.(2013)Technology 1(1):63-71)。したがって、hAMH+SCUT cDNAは、His-6タグのアミノ酸N末端(残基MRDLPLTSLA LVLSALGALL GTEALRAEE)を、ラット血清アルブミン(RSA)シグナルペプチド配列「MKWVTFLLLLFISGSAFS」(本明細書ではhAMH+SCUT +RSAと呼ぶ)で置換されるようにさらに改変された。その後、hAMH+SCUT+RSAプラスミドを、さらなる改変のためのテンプレートとして使用し、製造業者の説明書に従い、QuikChange Lightning Site-Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies、Santa Clara,CA)を使用して実施した。生成された各構築物について、cDNAカセット全体を、Micromonのゲノミクス施設(Monash University、Clayton,VIC)によって実施されたDNA配列決定によって確認された。
【0252】
組換えAMHタンパク質の発現および精製
組換えAMHタンパク質の産生は、ポリエチレンイミン(PEI)-MAX(リニア;MW 40,000)(Polysciences、Warrington,PA)を使用したHEK-293T細胞の一過性トランスフェクションによって行った。分泌される分子形態を評価するための小規模産生のために、細胞を、10%の胎仔血清(FCS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)内のポリ-D-リジン(Sigma-Aldrich)でコーティングされた6ウェルプレートに8×105細胞/ウェルでプレーティングし、5%のCO2中で37℃でインキュベートした。一晩インキュベーションした後、培地をOPTI-MEM(Life Technologies、Carlsbad,CA)培地に変更した。次いで、プラスミドDNA(5μg/ウェル)を、PEI-MAXと10分間組み合わせた。DNA-PEI複合体を細胞に直接添加し、OPTI-MEM培地で4時間、5%のCO2中で37℃でインキュベートした後、新鮮なOPTI-MEM培地で置き換え、収集前にさらに90時間インキュベートした。
【0253】
分泌後、AMHプロドメインおよび成熟ドメインは、プロ成熟複合体として非共有結合的に会合したままである(Pepinsky et al.(1988)Journal of Biological Chemistry 263(35):18961-18964)。したがって、精製戦略は、プロドメインのN末端に位置するポリヒスチジンタグを標的とした。このアプローチは、ホルモンの生物活性を担う成熟ドメインを、タグ付けすることなく精製することを可能にした。精製前に、まず、上記と同様の方法論を用いて、より大規模な産生(200mL)を実施した。簡潔に述べると、10×106細胞/プレートを、ポリD-リジンでコーティングされた15cmプレートに10%のFCSを補充したDMEMに播種し、5%のCO2中で37℃でインキュベートした。一晩インキュベーションした後、培地をOPTI - MEM培地に変更した。プラスミドDNA(60μgDNA/プレート)をPEI-MAXと10分間組み合わせた。DNA-PEI複合体を細胞に直接添加し、5%のCO2中でOPTI-MEM培地で37℃で4時間インキュベートした後、0.02%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有する新鮮なOPTI-MEM培地で置き換え、収集前に90時間インキュベートした。
【0254】
組換えタンパク質を含有する条件培地をプールし、遠心分離(Centricon Plus-70、5kDa MWカットオフ、Millipore、Billerica,MA)により約1mLに濃縮し、次いで結合緩衝液[50mMのリン酸緩衝液、300mMのNaCl、pH7.4]中に再懸濁して5mLの最終体積にした。濃縮培地を、室温で約0.5mLのHisPur(商標)コバルト樹脂(Thermo Fisher Scientific)を含有するカラム中で約2.5時間回転させることにより、コバルト基固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(Co-IMAC)に供した。溶出の前に、ビーズを4mLの結合緩衝液で2回洗浄した。結合したタンパク質を、3mLの溶出緩衝液[50mMのリン酸緩衝液、300mMのNaCl、500mMのイミダゾール]中で室温で約2.5時間回転させることによって溶出した。結合したままの任意のタンパク質を溶出するために、HisPur(商標)コバルト樹脂を、室温で約1時間、3mLの1Mイミダゾール[50mMのリン酸緩衝液、300mMのNaCl、1Mのイミダゾール]中で回転させた。イミダゾールを、製造業者のガイドラインに従い、2mLの3.5K MW Cut-off Slide-A-Lyzer(登録商標)MINI Dialysis Devices(Thermo Fisher Scientific)を使用して透析によって精製タンパク質から除去した。緩衝液交換は、ダルベッコリン酸塩緩衝生理食塩水(Life Technologies)で行った。精製したタンパク質を、Protein LoBind Tube(Eppendorf、Hamburg,Germany)中に-80℃で保管した。
【0255】
ウエスタンブロッティングによるAMHタンパク質分析
ウエスタンブロッティングを使用して、条件培地に分泌されるAMHの分子形態を評価し、Co-IMACおよび透析後の質量推定値を提供した。簡潔に述べると、条件培地は、ナノセップマイクロ濃縮器(3kDa MWカットオフ、Pall Life Sciences、Port Washington,NY)で12.5倍濃縮したが、Co-IMAC画分は、さらなる濃縮を必要としなかった。試料を、2X NuPAGE(登録商標)LDS試料緩衝液(Life Technologies)+5%の2-メルカプトエタノール(Bio-Rad、Hercules,CA)で調製した。
【0256】
調製した試料を、沸騰した水(約95℃)中で約3分間加熱した。タンパク質を、上部ランニング緩衝液[3.5mMのSDS、100mMのトリシン、100mMのTrizma(登録商標)塩基(Sigma-Aldrich)]および下部ランニング緩衝液[pH8.9、200mMのTrizma(登録商標)塩基]を有する、Mini-PROTEAN(登録商標)垂直電気泳動セル(Bio-Rad)内で実行する10%ハンドキャストドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)ゲル中で分離した。このユニットは、染料フロントが分離ゲルに到達するまで80ボルトで走行し、単一の偶数線を形成し、その後、電圧を150ボルトに増加され、染料フロントがゲルの底部から外れるまで走行した。SDS-PAGEによる分離後、ゲルを0.45μMのニトロセルロース膜(Bio-Rad)に対して配置し、ウエスタン転写緩衝液[10%のメタノール、200mMのグリシン、25mMのtrizma(登録商標)塩基]を充填したMini Trans-Blot(登録商標)セル(Bio-Rad)に一緒に組み立てた。転送ユニットを、少なくとも1時間、100ボルトで動作させた。移送後、膜を、少なくとも1時間、トリス緩衝生理食塩水(TBS)中のブロッキング溶液[1%のBSA(Sigma-Aldrich)][pH7.5、25mMのtrizma(登録商標)塩基、250mMのNaCl]+0.05%のTween(登録商標)20(Sigma-Aldrich)]のブロッキング溶液中に配置し、その後、一次抗体(遮断溶液中で1:5000に希釈)と一緒に一晩プローブしながら振盪した。一次抗体と一緒に室温で一晩インキュベーションした後、膜を、TBS-Tween(登録商標)[pH7.5、25mMのtrizma(登録商標)塩基、250mMのNaCl+0.05%のTween(登録商標)20]を用いて各洗浄5分間で3回洗浄し、TBSでの5分間洗浄を2回続けた。続いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼ抱合抗マウスIgG(GE Healthcare、Buckinghamshire,UK)二次抗体(ブロッキング溶液中1:10,000で希釈)と一緒に、室温で1時間インキュベートした。開発前に、上記で詳述したように、膜を再び5回洗浄した。1mLのLumi-Lightルミノール/エンハンサー溶液(Roche、Basel,Switzerland)、続いて1mLのLumi-Light安定過酸化物溶液(Roche)を添加することによって、膜の開発を行った。化学発光発生の画像をChemiDoc(商標)(Bio-Rad)によって捕捉し、Image Lab(商標)ソフトウェア(Bio-Rad)で分析した。
【0257】
成熟AMHタンパク質を検出するために、膜をmAb-5/6A(Oxford Brookes University、Oxford,UK)でプローブした。mAb-5/6Aを、hAMH成熟ドメイン(Weenen et al.(2004)Molecular Human Reproduction 10(2):77-83)のC末端に向かう領域に対応する32アミノ酸ペプチド(VPTAYAGKLLISLSEERISAHHVPNMVATECG、hAMH中のアミノ酸527-558)に上昇させた。ヒトAMHプロドメインを検出するために、膜をmAb-9/6A(Oxford Brookes University)でプローブした。mAb-9/6Aは、hAMHタンパク質全体に対してマウスを免疫付与することによって開発された。mAb-9/6Aは、プロセシングされたhAMHプロドメインを特異的に検出することが以前に報告され、AMH ELISAの検出抗体として開発者によって初めて選択された(Al-Qahtani et al.(2005)Clinical Endocrinology 63(3):267-273)。
【0258】
分子量を評価するために、事前に染色されたタンパク質標準物質SeeBlue Plus2(Life Technologies)を使用した。市販の組換えhAMH成熟ドメイン(R & D Systems、Minneapolis,Minnesota)を標準として、濃度推定値を決定した。5つの質量基準の範囲を、4つの異なる体積の精製材料とともに使用し、4つの体積の平均濃度を、実際の濃度の推定値として使用した。AMH変異体A546MおよびH548Kの場合、mAb-5/6Aによって認識されたエピトープは破壊された。したがって、検出およびその後の濃度推定は、膜をmAb-9/6Aでプローブし、以前に定量化された成熟前AMHの調製物と比較して、プロセシングされたプロドメインの密度測定を評価することによって決定された。
【0259】
COV434細胞を用いたインビトロ転写レポーターアッセイ
顆粒膜細胞は、卵巣内のAMH標的であり(Pepin,Sabatini & Donahoe(2018)Current Opinion in Endocrinology Diabetes and Obesity 25(6):399-405)、AMH活性は、Smad-1/5シグナル伝達を介して細胞内媒介される(Sedes L et al.(2013)PLoS One 8(11):13)。COV434細胞は、不死化ヒト顆粒膜細胞株(Zhang H et al.(2000)Molecular Human Reproduction 6(2):146-153であり、AMHを内因的に発現させないことが以前に報告されており(Weenen C et al.(2004)Molecular Human Reproduction 10(2):77-83)、それらを、内因性AMHからの干渉なしにAMH活性を評価するためのヒト顆粒膜細胞モデルとして使用することができる。この実験室(Al-Musawi SL et al.(2013)Endocrinology 154(2):888-899;Patino LC et al.(2017)Journal of Clinical Endocrinology & metabolism 102(3):1009-1019)および他の実験室(Moore,Otsuka & Shimasaki(2003)Journal of Biological Chemistry 278(1):304-310、Peng J et al.(2013)PNAS 110(8):E776-E785)は、BMPリガンドでの処理後に頑強なSmad-1/5応答を示すCOV434細胞を以前に報告している。したがって、この研究中に生成されたCo-IMAC精製AMHタンパク質によるSmad-1/5経路の活性化を評価するために、Smad1/5応答性BRE-ルシフェラーゼアッセイをCOV434細胞で使用した。これは、Id1遺伝子プロモーターから単離されたBMP応答エレメントの2つのコピーを有するプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を含有するプラスミドであるBRE-Lucの一過性トランスフェクションを伴う(Korchynskyi & Ten Dijke(2002)JBC 277(7):4883-4891)。加えて、細胞がAMHに応答することを確実にするために、細胞を、AMH特異的II型受容体であるAMHR2のための少量のプラスミドで同時形質移入した(Imbeaud S et al.(1995)Nature Genetics 11(4):382-388)。
【0260】
簡潔に述べると、細胞を、DMEM/10%のFCS中の7.5×104細胞/ウェルでポリ-D-リジンでコーティングされた48ウェルプレートにプレーティングし、5%のCO2中で37℃で一晩増殖させた。翌日、細胞を、248.44ngのpBRE-Lucおよび1.56ngのpAMHR2からなる250ng/ウェルのプラスミドDNAでトランスフェクトした(GenScript HK Limited、Hong Kong;カタログ番号:OHu22327D;NM_020547)。プラスミドDNAを、製造業者の指示に従い、Lipofectamine 3000(Life Technologies)と組み合わせ、次いで細胞に直接添加し、5%のCO2中、37℃で24時間インキュベートした。翌日、トランスフェクトしたCOV434細胞を、低血清培地(50mMのHEPESおよび0.2%のFCSを有するDMEM)中で希釈した用量範囲のAMH変異体で処理した。これは、細胞からトランスフェクション培地を除去し、ウェル当たり200μLの処理培地で置き換えることによって生じた。次いで、細胞を、少なくとも3回試験される各用量で、5%のCO2中、37℃で一晩処理媒体中でインキュベートした。ルシフェラーゼタンパク質の発現を評価するために、培地を除去し、細胞を、氷上で20分間振盪しながら、可溶化緩衝液[26mMのグリシルグリシン(pH7.8)、16mMのMgSO4、4mMのEGTA、900μMのジチオトレイトール、1%のTriton X-100]中で溶解させた。溶解物を白い96ウェルプレートに移した。ルシフェラーゼ発現は、CLARIOstarマイクロプレートリーダー(BMG Labtech、Ortenberg,Germany)を使用して、基質D-ルシフェリン[25mMのグリシルグリシン(pH7.8)、15mMのMgSO4、4mMのEGTA、1mMのジチオトレイトール、1.5mMのATP、0.5mMのD-ルシフェリン(Life Technologies)]を含有する混合物を添加した直後に発光を測定することによって評価した。ルシフェラーゼ活性を、ベースライン活性に対する倍率変化として分析した(Chand AL et al.(2007)Human Reproduction 22(12):3241-3248)。
【0261】
実施例1 AMHタンパク質配列および修飾
天然ヒトAMHタンパク質の配列は、識別子AAH49194.1としてGenBankから入手可能である。この配列を以下に示す。
【化10】
(配列番号1)
【0262】
25アミノ酸シグナル配列は、下線で示される。タンパク質分解プロセシング部位は、太字で示される。
【0263】
野生型マウスAMHタンパク質配列の配列は、識別子NP_031471.2としてGenBankから入手可能である。この配列を以下に示す。
【化11】
(配列番号2)
【0264】
信号シーケンスは、下線で示される。
【0265】
ヒトおよびマウスのAMH配列は、73%の同一性を共有する。
【0266】
hAMH+SCUT+RSA修飾
野生型ヒトAMH配列を、方法に記載されるように修飾して、His6タグ、スーパーカットプロドメイン切断部位およびRSAシグナルペプチドを組み込んだ。このタンパク質はhAMH+SCUT+RSAと称され、タンパク質配列を以下に示す。
【化12】
(配列番号3)
【0267】
信号シーケンスは、下線で示される。His6タグは、シェーディングで強調表示される。タンパク質分解プロセシング部位は、太字で示される。配列番号3で定義されるhAMH+SCUT+RSAのプロセシングは、配列番号36に提供される配列を有する成熟AMHを産生する。
【0268】
対応する核酸配列を、以下に提供する。
atgaagtgggtaacctttctcctcctcctcttcatctccggttctgccttttcccatcatcatcatcatcatccagctgtgggcaccagtggcctcatcttccgagaagacttggactggcctccaggcagcccacaagagcctctgtgcctggtggcactgggcggggacagcaatggcagcagctcccccctgcgggtggtgggggctctaagcgcctatgagcaggccttcctgggggctgtgcagagggcccgctggggcccccgagacctggccaccttcggggtctgcaacaccggtgacaggcaggctgccttgccctctctacggcggctgggggcctggctgcaggaccctggggggcagcgcctggtggtcctacacctggaggaagtgacctgggagccaacaccctcgctgaggttccaggagcccccgcctggaggagctggccccccagagctggcgctgctggtgctgtaccctgggcctggccctgaggtcactgtgacgagggctgggctgccaggtgcccagagcctctgcccctcccgagacacccgctacctggtgttagcggtggaccgccctgcgggggcctggcgcggctccgggctggccttgaccctgcagccccgcggagaggactcccggctgagtaccgcccggctgcaggcactgctgttcggcgacgaccaccgctgcttcacacggatgaccccggccctgctcctgctgccgcggtccgagcccgcgccgctgcctgcgcacggccagctggacaccgtgcccttcccgccgcccaggccatccgcggaactggaggagtcgccacccagcgcagaccccttcctggagacgctcacgcgcctggtgcgggcgctgcgggtccccccggcccgggcctccgcgccgcgcctggccctggatccggacgcgctggccggcttcccgcagggcctagtcaacctgtcggaccccgcggcgctggagcgcctactcgacggcgaggagccgctgctgctgctgctgaggcccactgcggccaccaccggggatcctgcgcccctgcacgaccccacgtcggcgccgtgggccacggccctggcgcgccgcgtggctgctgaactgcaagcggcggctgccgagctgcgaagcctcccgggtctgcctccggccacagccccgctgctggcgcgcctgctcgcgctctgtccaggaggccccggcggcctcggcgatcccctgcgagcgctgctgctcctgaaggcgctgcagggcctgcgcgtggagtggcgcgggcgggatccgcgcgggccgggtatctcatcgagaaagaaacgctcagtctcatcaagcgcgggggccaccgccgccgacgggccgtgcgcgctgcgcgagctcagcgtagacctccgcgccgagcgctccgtactcatccccgagacctaccaggccaacaattgccagggcgtgtgcggctggcctcagtccgaccgcaacccgcgctacggcaaccacgtggtgctgctgctgaagatgcaggcccgtggggccgccctggcgcgcccaccctgctgcgtgcccaccgcctacgcgggcaagctgctcatcagcctgtcggaggagcgcatcagcgcgcaccacgtgcccaacatggtggccaccgagtgtggctgccggtaa (配列番号4)
【0269】
実施例2 組換えAMHタンパク質発現
前駆体プロセシングおよびタンパク質分泌を改善することを目的として、重複伸長PCRを介してhAMH cDNAに修飾を行った。所望の転帰が達成されたかどうかを評価するために、HEK-293T細胞を、改変hAMH cDNAを含有する改変発現ベクター(hAMH+SCUTおよびhAMH+SCUT+RSAのそれぞれ)で一過性にトランスフェクトした。
【0270】
mAb-5/6Aを用いたウエスタンブロット法による濃縮および還元された条件培地の分析(
図2)は、12.5kDaのモノマーAMH成熟ドメインおよび70kDaのモノマーAMH前駆体の両方を検出した(
図2;レーン4)。スーパーカット(SCUT)修飾を含有するAMHバリアントは、同じ試料内の12.5kDa成熟形態と比較して、70kDa前駆形態のかすかな検出によって定性的に判断されるように、改善された前駆体プロセシングを示した(
図2;レーン5)。SCUT修飾およびRSAシグナルペプチド(
図2;レーン6)の両方を含有するhAMH形態は、潜在的な受容体結合エピトープを標的とする後続の変異のための鋳型として使用された。
【0271】
実施例3 hAMHの潜在的な受容体結合エピトープを標的とする変異
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーリガンドの、その受容体との複合体における構造は、以前に、多数のスーパーファミリーメンバーについて報告されている(Hinck,Mueller & Springer(2016)Cold Spring harbor Perspectives in Biology 8(12):51。これらの報告された構造およびタンパク質配列相同性をガイドとして使用して、本発明者らは、そのII型受容体であるAMHR2との固有の相互作用を媒介するhAMH内のアミノ酸を同定しようと試みた。この目的のために、インビトロ部位特異的変異誘発を使用して、多数のhAMH変異発現ベクターコホートを生成した。
【0272】
コホートワン変異体
最初に(
図3)、G533AおよびL535A変異体を生成した。G533およびL535は、成熟天然hAMH配列において以下の太字および下線で示される。
【化13】
(配列番号5)
【0273】
L535A変異体は、分泌不良であった(データを図示せず)。したがって、本発明者らは、このアミノ酸の役割を試み、評価するために、より保存的な変異であるL535Mを生成した(
図4)。
【0274】
コホートである2つのhAMH変異体
第2のコホート(
図4)において、以下の変異体が生成された:G533Sおよび二重変異体G533A+L535M。
【0275】
コホートである3つのhAMH変異体
第3のコホート(
図5)において、以下の変異体が生成された:G533H、G533K、G533RおよびG533L。G533L変異体は分泌されず、G533R変異体は不十分に分泌されたため、これらの2つの変異体の活性は決定されなかった。
【0276】
コホートである4つのhAMH変異体
第4のコホート(
図6)において、H548K変異体を生成した。
【0277】
実施例4 組換えAMHタンパク質の精製
AMHを純化するために、AMHプロドメインのN末端に位置するポリヒスチジンタグを標的とするHisPur(商標)コバルト樹脂を使用した。このアプローチは、ホルモンの生物活性を担う成熟ドメインを、タグ付けすることなく精製することを可能にした。簡単に述べると、200mLの条件培地を濃縮し、樹脂と一緒に約2.5時間インキュベートした後、非結合タンパク質を収集し、樹脂をPBSで2回洗浄して、任意の緩く結合したタンパク質を除去した。2つの異なる濃度のイミダゾールを使用して、コバルト結合AMHを放出した。回収を、mAb-5/6Aでプローブしたウエスタンブロッティングによって評価し、結合したAMHの大部分を、最初の溶出で回収した。いくつかのAMHタンパク質をまた、より高い濃度のイミダゾールを含有する第2の溶出液中で溶出したが、いくつかのAMHタンパク質は樹脂に結合しなかった。イミダゾールを、ダルベッコのリン酸塩緩衝生理食塩水に対する透析によって調製物から除去した。変異型AMHタンパク質を、hAMH+SCUT+RSA(本明細書では「野生型」と称される)と同様の割合で回収した(
図7を参照されたい)。
【0278】
実施例5 組換えAMHタンパク質の活性
生成された精製された組換えAMH調製物の活性を評価するために、COV434細胞を、Smad1/5応答性BRE-ルシフェラーゼレポーターおよびAMHR2でトランスフェクトした。24時間後、細胞を、溶解の前にAMHの用量範囲で一晩処理し、基質D-ルシフェリンの添加の直後に発光の測定を行った。ルシフェラーゼ活性を、ベースライン活性に関連する倍率変化として分析した。異なるAMH変異体は、hAMH+SCUT+RSA(野生型)AMHに対してBRE-ルシフェラーゼレポーターを刺激する能力に関して以下にグループ化されている。
【0279】
(i)活性が中等度から大幅に増加したAMH変異体タンパク質
hAMH+SCUT+RSA(野生型)AMHは、典型的には、15~50ng/mLのCOV434 BRE-ルシフェラーゼアッセイにおいて、約6ng/mLのEC50でピーク応答が与えられる。G533A変異体は、「野生型」AMHの約2倍もの大きい活性を示したが(
図8A)、G533S変異体は、約3倍もの大きい活性を示した(
図8A、B)。G533K変異体は、「野生型」AMHよりも約5倍もの大きい活性を示し、同時に、最上位用量で実質的により高い最大応答も刺激した(
図8B)。
【0280】
(ii)活性の観察可能な変化を有しないAMH変異型タンパク質
変異体G533H、H548K、L535Mおよび二重変異体G533A+L535Mは、ルシフィエラーゼアッセイにおいて、hAMH+SCUT+RSA(野生型)AMHと比較して観察可能な差を示さなかった(
図9)。
【0281】
生成されたhAMH変異体を、以下の表5に要約する。
【表5-1】
【表5-2】
【配列表】
【国際調査報告】