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特表2023-501309輸液ポンプシステムによる管応力緩和効果の補償のためのシステム及び方法
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  • 特表-輸液ポンプシステムによる管応力緩和効果の補償のためのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】輸液ポンプシステムによる管応力緩和効果の補償のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20230111BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61M5/168 518
A61M5/168 520
A61M5/142 502
A61M5/168 534
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525879
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2020070734
(87)【国際公開番号】W WO2021092616
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,341
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509280394
【氏名又は名称】スミスズ メディカル エーエスディー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】クィン モリスン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ハリソン クーンズ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD16
4C066QQ35
4C066QQ44
4C066QQ46
4C066QQ58
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
輸液供給部と輸液セットとの間に流体経路を提供するように構成された投薬セットと、投薬セット内の輸液の圧力を感知するように構成された少なくとも1つの圧力センサと、感知された圧力を監視し、監視された圧力に計算された風袋重量調整を適用して、応力緩和の結果としての投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するように構成された制御ユニットと、を含む輸液ポンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ポンプであって、
輸液の供給部と輸液セットとの間に流体経路を提供するように構成された投薬セットと、
該投薬セット内で注入する圧力を感知するように構成された少なくとも1つの圧力センサと、
感知された圧力を監視し、応力緩和の結果として前記投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するために、監視された圧力に計算された風袋重量調整を適用するように構成された制御ユニットと、
を備える輸液ポンプ。
【請求項2】
前記投薬セットのセグメントを一時的に圧縮することによって、前記投薬セットを通して輸液を促すように構成されたポンプ駆動機構をさらに備える、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記輸液ポンプは蠕動駆動機構を有する、請求項2に記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの圧力センサは、前記ポンプ駆動機構の上流に配置された上流圧力センサ、前記ポンプ駆動機構の下流側に配置された下流圧力センサ、又は上流圧力センサ及び下流圧力センサの組合せを備える、請求項2に記載の輸液ポンプ。
【請求項5】
前記制御ユニットは、感知された圧力を監視して、部分的に閉塞の存在を検出する、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項6】
前記風袋重量調整は、少なくとも部分的に、前記少なくとも1つの圧力センサによって収集されたデータに基づいて前記制御ユニットによって計算される、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項7】
前記風袋重量調整は非線形関数によって表される、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項8】
前記風袋重量調整は多項式によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記風袋重量調整は、以下の数式によって表され、
【数1】
ここで、
Rは時刻(t)の関数としての応力緩和に等しく、
τ1、τ2、τ3、C2及びC3はハードウエア特性定数を表し、
0及びC1は適合定数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記風袋重量調整は、前記制御ユニットによって適用の前に許容基準と比較される、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項11】
輸液システムであって、
駆動機構と、少なくとも一つの圧力センサと、制御ユニットとを備える輸液ポンプと、
輸液の供給部と輸液セットとの間に流体経路を提供するように構成された投薬セットと、を備え、
前記輸液ポンプは、前記少なくも一つの圧力センサによって、感知された投薬セット内で圧力を感知するように構成され、応力緩和の結果として前記投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するために、監視された圧力に計算された風袋重量調整を適用するように構成された制御ユニットと、
を備える輸液システム。
【請求項12】
前記輸液ポンプは、蠕動ポンプ又は大容量ポンプのうちの少なくとも1つを備える、請求項11に記載の輸液システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの圧力センサは、前記駆動機構の上流に配置された上流圧力センサ、前記駆動機構の下流側に配置された下流圧力センサ、又は前記上流圧力センサ及び前記下流圧力センサの組合せを備える、請求項11に記載の輸液システム。
【請求項14】
前記風袋重量調整は非線形関数によって表される、請求項11に記載の輸液システム。
【請求項15】
1つ又は複数のセンサを介した投薬セットの上流圧力及び下流圧力のうちの少なくとも1つの監視するステップと、
少なくとも部分的に、1つ又は複数のセンサから収集されたデータに基づいて風袋重量調整を計算するステップと、
計算された風袋重量調整が許容基準を満たすかどうかを判定するステップと、
応力緩和の結果としての投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するために、計算された風袋重量調整を1つ又は複数のセンサから収集されたデータに適用するステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、輸液ポンプシステムに関し、より詳細には、輸液ポンプシステムを用いて管応力緩和効果を補償するためのシステム及び方法に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は2019年11月4日に出願された米国特許仮出願第62/930,341号明細書の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの輸液ポンプは、薬物、液体、液体類似物質、又は医薬品(以下、総称して「輸液」という)の患者への規定量や投薬量の送達及び供給を管理するのに有用である。輸液ポンプは、長期間にわたって輸液を正確に送達することによって、手動投薬よりも有意な利点を提供する。輸液ポンプは、癌、糖尿病、及び血管、神経、及び代謝障害を含む、定期的な薬理学的介入を必要とする疾患及び障害の治療に特に有用である。輸液ポンプはまた、医療提供者が麻酔を行う能力と疼痛管理能力を高める。輸液ポンプは、病院、老人ホーム、及び他の短期及び長期医療施設を含む様々な環境において、ならびに住宅ケア環境において使用される。輸液ポンプの種類には、歩行用、大容量用、患者管理麻酔(PCA)用、エラストマー用、シリンジ用、経腸用、インスリン用のポンプなどがある。輸液ポンプは、静脈内、腹腔内、動脈内、皮内、皮下、神経に近接した状態、及び手術間部位、硬膜外腔、又はクモ膜下腔を含む各種送達方法を介して薬物を投薬するために使用することができる。
【0003】
一般に「蠕動」ポンプシステムと呼ばれる特定のタイプの輸液ポンプシステムでは、患者への輸液の送達が典型的には輸液投薬セットの使用によって達成され、輸液投薬セットは典型的には使用後に廃棄され、輸液の流量を制御するポンプと協働して、リザーバ(静脈内又は「IV」バッグなど)から患者への輸液のための流体経路(例えば、管)を提供することができる。蠕動輸液ポンプは、投薬セットの管の連続するセクションを波状の動きで繰り返し一時的に閉塞することによって機能することができる蠕動ポンプ機構を組み込む。「大容量ポンプ」又は「LVP」システムは前述のような関連する構成を有する一般的なタイプの蠕動ポンプであり、いくつかの公報では、「容量ポンプ」という用語がLVP又は蠕動ポンプを指すために様々に使用することもできる。
【0004】
しばしば、LVPは、管内の輸液の流体圧力を監視するように構成された1つ以上のセンサを含む。例えば、LVPはしばしば、LVPから外側に向かう所定の輸液の流れに対する望ましくない閉塞を検出するように構成された「下流圧力センサ」と、リザーバが空であるとき、及び/又は異常な流体圧力がポンプ機構の上流に存在するときを検出するように構成された「上流圧力センサ」とを含む。これらのセンサは典型的には所望の量の輸液が患者に送達されることを確実にするために、比較的高い信頼性及び高い感度を提供しなければならない。
【0005】
管内の圧力の正確な検出は、管自体の特性によって複雑になる可能性がある。特に、静脈内輸液管の構造に使用される特定の材料は一般に「応力緩和」と呼ばれる現象を受け得る。応力緩和とは、一般に、管を加圧したときに管壁の応力が減少することをいい、そのため、流体圧力データの時間的な正確な監視が難しくなります。しばしば、管は、それに作用する蠕動ポンプ機構からのような、圧力負荷の除去時に元の形状に戻る。時間の経過とともに、管の材料特性の変化によって応力が緩和され、その結果、圧力センサによって測定される輸液圧の低下が誤って生じる。
【0006】
カテーテルの開通性を維持し、閉塞を最小限にすることは、患者の安全性を高め、治療結果を改善するために重要である。閉塞の存在を利用者に警告するために、LVPのような多くの輸液ポンプシステムは、予め設定された閉塞圧力閾値を有する。下流圧力センサによって感知された圧力がプリセット限界を超えると、閉塞アラームがトリガされる。現代の輸液システムはしばしば、閉塞を検出するのに十分であるが、応力緩和の結果としての不正確な圧力検出は特定の輸液システムがより低い圧力で閉塞を検出することを不可能にし得る。閉塞圧が高いと、患者の壊滅的な組織又は臓器損傷の可能性が増大する。したがって、比較的正確な圧力検出は、輸液ポンプの安全な性能にとって重要であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は上記問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は投薬セットのポリマー管を通る流体圧力の感知及び測定において、管応力緩和効果を補償するためのシステム及び方法を提供し、それによって、輸液流体圧力のより安全かつより信頼性のある感知及び測定、ならびに閉塞を検出するために必要な時間の総合的な低下を可能にする。
【0009】
本開示の実施形態は輸液の供給部と輸液セットとの間に流体経路を提供するように構成された投薬セットと、投薬セット内の輸液の圧力を感知するように構成された少なくとも1つの圧力センサと、感知された圧力を監視し、監視された圧力に計算された風袋重量調整を適用して、応力緩和の結果としての投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するように構成された制御ユニットとを含む輸液ポンプを提供する。
【0010】
一実施形態では、輸液ポンプが投薬セットのセグメントを一時的に圧縮することによって、投薬セットを通して輸液を促すように構成されたポンプ駆動機構をさらに含む。一実施形態では、ポンプ駆動機構が蠕動駆動機構を含む。一実施形態では、少なくとも1つの圧力センサがポンプ駆動機構の上流に配置された上流圧力センサと、ポンプ駆動機構の下流側に配置された下流圧力センサと、上流圧力センサと下流圧力センサとの組み合わせを備える。一実施形態では、制御ユニットが感知された圧力を部分的に監視して、閉塞の存在を検出する。
【0011】
一実施形態によると、風袋重量調整は、少なくとも1つの圧力センサによって収集されたデータに少なくとも部分的に基づいて、制御ユニットによって計算される。一実施形態では、風袋重量調整が非線形関数によって表される。一実施形態では、風袋重量調整が多項式によって表される。実施形態において、風袋重量調整は次の式で表される。
【0012】
【数1】
【0013】
ここで、Rは時刻(t)の関数としての応力緩和に等しく、τ1、τ2、τ3、C2及びC3はハードウエア特性定数を表し、C0及びC1は適合定数を表す。一実施形態では、風袋重量調整が制御ユニットによる適用の前に、許容基準と比較される。
【0014】
本開示の実施形態は駆動機構と、少なくとも1つの圧力センサと、制御ユニットと、輸液の供給部と輸液セットとの間に流体経路を提供するように構成された投薬セットとを備える輸液ポンプを提供し、輸液ポンプは少なくとも1つの圧力センサによって感知された投薬セット内の圧力を監視し、計算された風袋重量調整を監視された圧力に適用して、応力緩和の結果としての投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するように構成される。
【0015】
本開示の別の実施形態は、1つ又は複数のセンサを介して投薬セットの上流圧力及び下流圧力のうちの少なくとも1つを監視するステップと、1つ又は複数のセンサから収集されたデータに少なくとも部分的に基づいて風袋重量調整を計算するステップと、計算された風袋重量調整が許容基準を満たすかどうかを判定するステップと、計算された風袋重量調整を1つ又は複数のセンサから収集されたデータに適用して、応力緩和の結果としての投薬セット内の観察可能な応力の減衰を補償するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
上記の発明の概要は、本開示のそれぞれの例示された実施形態又はすべての実施形態を説明することを意図していない。以下に示す図面及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【0017】
本開示は、添付の図面と関連して、本開示の様々な態様の以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の一実施形態による、患者と共に使用するための蠕動輸液ポンプシステムを示す概略斜視図である。
図2A図2Aは本開示の実施形態による、図1のシステムにおける蠕動輸液ポンプの部分を示す概略斜視図であり、特に、ポンプの組立レセプタクル及びレセプタクル扉口を図示する。
図2B図2Bは、本開示の実施形態による、組立レセプタクルによって受容される投薬セットの一部を伴う、図2Aの蠕動輸液ポンプの一部を示す概略斜視図である。
図3図3は、本開示の一実施形態による、図1のシステムにおける蠕動輸液ポンプの様々な部品及び電気回路を示す模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態による、投薬セットの管壁内の応力分布を示す断面図である。
図5図5は、本開示の一実施形態による、応力緩和の結果として、ある長期間にわたって投薬セットの管壁における所与の点における応力の非線形劣化を示すグラフである。
図6図6は、本開示の一実施形態による、応力緩和の結果としてある期間にわたって投薬セットの管壁の外部に応答するセンサによって測定される反力を示すグラフである。
図7図7は、最小二乗法を用いた応力緩和関数の計算又は曲線適合を示すグラフである。
図8図8は、本開示の一実施形態による、応力緩和を説明するための補償された圧力センサ値と、補償されない圧力センサ値と、輸液圧力を直接監視するように構成された外部ソースからのデータとの比較を示すグラフ図である。
図9図9は、本開示の一実施形態による、輸液圧力の測定における応力緩和を補償するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施形態は様々な改変形態及び代替形態に従うが、図面に例として示されるその詳細を説明する。しかしながら、本発明は、本開示を、説明した特定の実施形態に限定しようとするものではないと解されるべきである。反対に、意図は、特許請求の範囲によって定義される主題事項の精神及び範囲内にある全ての修正、等価物、及び代替物をカバーすることである。
【0020】
図1は輸液ポンプ102(より具体的には大容量ポンプ又はLVP102)と、使い捨て可能であり、ポンプ102に動作可能かつ取り外し可能に結合可能であるように構成及び構成され得る投薬セット104とを含む、患者とともに使用するための輸液ポンプシステム100の例示的な実施形態の概略斜視図である。投薬セット104はIVバッグ106から、最終的に患者110に輸液を送達する輸液セット又は管108への流体経路を提供するように概略的に示される。図1において、ポンプ102のレセプタクル扉口112は閉鎖構成で示され、投薬セット104はポンプ102に結合されないとして示される。
【0021】
ポンプ102の種々の構成要素をより完全に示すために、図2A及び図2Bは、ポンプ102の部分的描写を示す。具体的には、組立レセプタクル114及びレセプタクル扉口112に近接したポンプ102の一部のみが示されている。組立レセプタクル114は投薬セット104がそれによってポンプ102に動作可能に連結されるように、投薬セット104の組立品116を受容するように構成され得る。特に、図2B図2Aのポンプ102の部分の概略斜視図であり、組立品116は、組立レセプタクル114に受け入れられるか、又は取り外し可能に設置される。レセプタクル扉口112は、組立レセプタクル114へのアクセスを可能にするか、又はブロックするために開閉可能である。図2A~Bの両方において、ポンプ102のレセプタクル扉口112は、開位置で示される。
【0022】
蠕動ポンプ駆動機構122は、組立レセプタクル114内に配置することができる。投薬セット104の組立品116は、蠕動駆動機構122と作動関係にある組立品116の管の中央に位置する管セグメント120を含む投薬セット104の構成要素を位置決めするように構成及び構造化することができる。管の中央に位置する管セグメント120は、ポンプ102の蠕動駆動機構122による圧縮(及び圧縮からの回復)に適した弾性材料で形成することができる。蠕動駆動機構122は管係合部材118(「フィンガー」と呼ばれることもある)を含み、管係合部材118は、管の中心に位置する管セグメント120を波状の動きで繰り返し一時的に圧迫又は閉塞することによって、投薬セット104を通して流体を輸送するように、付勢し、押し、圧迫し、又は他の方法で作用するように構成される。
【0023】
図2A~Bは12個の管係合部材118を含むポンプ102を示し、他の実施形態では、より少ない又は追加の管係合部材が存在してもよい。一般に、管係合部材118の数は、各ポンプ周期のための流体送達の量、又は送達される流体の「パケットサイズ」を決定する。例えば、一実施形態では、流体のパケットサイズは約150μLとすることができ、他のパケットサイズも考えられる。
【0024】
投薬セット104内で生成される流体圧力は一般に、投薬セット104の部分の弾性的な伸張又は変形を介して検出可能である。例えば、実施形態において、投薬セット104内の、管係合部材118の上流及び下流の流体圧力は、それぞれ、上流圧力センサ124及び下流圧力センサ126によって検出可能である。図2A~Bに描かれているように、上流圧力センサ124及び下流圧力センサ126は、管係合部材118のそれぞれの側の組立レセプタクル114内に配置することができる。センサの他の位置、組み合わせ、及び配置も考えられる。
【0025】
図3は、システム100内の輸液ポンプ102の様々な部品及び電気回路の模式図である。管係合部材118は、記憶装置129を有する制御ユニット128によって制御することができる蠕動駆動機構122によって駆動することができる。制御ユニット128は、キーパッド130、及び上流圧力センサ124及び下流圧力センサ126のような他の入力装置、センサ及びモニタからの入力を受け取ることができる。制御ユニット128はまた、出力を提供し、例えば、タッチスクリーン入力及び表示システムなどのグラフィカルユーザインターフェース132から入力を受信することができる。
【0026】
一実施形態によると、制御ユニット128は、それぞれの上流圧力センサ124及び下流圧力センサ126を介して、上流及び下流の圧力を継続的に感知して、通常動作以外を示す可能性のある閉塞及び他の輸液圧力を監視することができる。管108内の輸液圧力の正確な検出は、管108自体の特性によって複雑になり得る。特に、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ラテックス又はゴムのような適当な圧縮可能な弾性材料で構成され得る組立品116の中央に配置された管セグメント120は、一般に応力緩和と呼ばれる現象を受ける。応力緩和は一般に、管セグメント120が加圧下に保持されるとき、管セグメント120内の観察可能な応力の非線形減衰を意味し、それによって、前述のように、時間の経過とともに輸液圧力データを正確に監視することが困難になる。
【0027】
図4は、初期流体加圧後の管108の断面内の初期応力分布を示す。従って、有限の応力が図5の点Pにおいて管108の断面内に存在することは、管108内の応力緩和の結果として、ある期間にわたる点Pにおける応力の非線形劣化を示す。図6は、同じ期間にわたって上流圧力センサ124又は下流圧力センサ126のいずれかによって測定された対応する反力を示す。図5及び図6に示すように、管108内の応力が時間の経過と共に緩和し、その結果、圧力センサ124及び/又は126によって測定される輸液圧力の低下が誤って現れることを理解されたい。場合によっては、応力及び対応する反力が初期応力及び対応する反力と比較して、例えば20%を超えて減少することができる。これらの差異は、ポンプ102の動作中に輸液圧力を監視する際に重大な誤差を生じ得る。問題をさらに複雑にするために、管108の素材は、典型的には圧力負荷の除去時にその元の形状に戻る。
【0028】
本開示の実施形態は非加圧状態(すなわち、輸液が周囲圧力条件下にあり、かつ、例えば、管係合部材118の動作の影響を受けていないとき)の輸液に関連する圧力センサ124及び/又は126によって測定される力の大きさを表す、いわゆる「風袋」値の連続的な非線形調整によって、投薬セット104内の管応力緩和効果を補償する。いくつかの実施形態では、動作中、応力緩和効果を補償するための機能に基づいて、風袋重量を時間調整することができる。いくつかの実施形態において、風袋重量は、管108の素材がその元の形状に戻ることを考慮して、管108上の圧力負荷の除去時に(例えば、管係合部材118の動作における輸液ポンプサイクルの完了時に)その初期値にリセットされ得る。
【0029】
一実施形態では、応力緩和効果の補償が[数1]」の多項式に従って提供することができる。
ここで、Rは時刻(t)の関数としての応力緩和に等しく、τ1、τ2、τ3、C2及びC3はハードウエア特性定数を表す。C0及びC1は、最初の試行期間にわたって一定の輸液圧下で、測定可能な応力緩和のための応力緩和関数に近似するために、制御ユニット128によって決定される適合された定数を表す。
【0030】
例えば、実施形態において、τ1、τ2、τ3、C2及びC3の数値は、動作前にハードウエア特性によって開発された所定の数値である。最初の試行時間(例えば、500秒)にわたる上流センサ124及び/又は下流センサ126によって収集されたデータは、センサ124及び/又は126によって観察されたデータに応力緩和関数(すなわち、風袋重量調整)を適合させるために、制御ユニット128によって使用されて、輸液動作がシステム100において開始される前のC0及びC1の値を計算することができる。その後、制御ユニット128は、経時的な応力緩和関数に応じて、風袋重量を定期的又は継続的に調整することができる。
【0031】
したがって、風袋重量関数は、測定に誤差を生じさせたものであろう応力緩和を考慮することによって、輸液圧力の推定値を改善することが理解されるべきである。それぞれの輸液の前にC0及びC1の値を計算することによって、風袋重量関数は、最初の反力、すなわち、応力緩和の前の反力をより高く又はより低くすることができる、追加の変動源、例えば、ポンプの寸法変動を考慮に入れることもできる。これは、輸液圧力の推定値をさらに改善することができ、閉塞を検出する能力を改善することができる。
【0032】
図7は、最小二乗の曲線適合法によるC0及びC1の一定値の算出を図式的に示す。レセプタクル扉口112がラッチされた時点(t = 0)から所定の終了時点(t = 500秒)までの間、制御ユニット128は、応力緩和関数が観測値と一致するまで、定数C0、C1、C2、C3を調整する。この実施形態では500秒の初期試行期間が利用されるが、他の初期試行期間を利用することもできる。例えば、一実施形態では、試行期間が5秒程度の短さとすることができる。
【0033】
指定された終了時間の後、制御ユニット128は応力緩和の効果を除去するために、1つ又は複数のセンサ124/126によって測定された値に応力緩和関数を適用する。いくつかの実施形態では、適合定数C0、C1、C2、C3は動作中に、アルゴリズムが満足に動作していることを保証するために、事前に定義された許容基準に対してチェックすることができる。許容基準が満たされない場合、デフォルトの応力緩和曲線を利用して、応力緩和のベースラインレベルを考慮することができる。
【0034】
図8は、応力緩和を説明するための補償圧力センサ値(「[グラフ上に記載]」)、補償されていない圧力センサ値(「[グラフ上に記載]」)、及び輸液圧力を直接監視するように構成された外部供給ソースからのデータ(「[グラフ上に記載]」)間のグラフ比較を示す。図示されるように、補償された圧力センサは、輸液の実際の流体圧力に密接に対応する。
【0035】
図9を参照すると、本開示の一実施形態による、応力緩和効果を説明するために投薬セット104内の圧力測定を補償する方法200が描かれている。この方法はS202で始まる。S204において、システム100は、1つ又は複数のセンサ124/126を介して、上流及び下流の圧力のうちの少なくとも1つを監視する。S206において、制御ユニット128は、1つ又は複数のセンサ124/126によって収集されたデータを利用して、前述のように時間の関数として非線形風袋重量調整を計算する。S208において、S206で計算された非線形風袋重量調整が事前定義された合格基準を満たしているかどうかの判定が行われる。計算された非線形風袋重量調整が所定の許容基準を満たす場合、S210において、計算された非線形風袋重量調整が応力緩和を補償するために、1つ又は複数のセンサ124/126によって収集されたデータに適用される。計算された非線形風袋重量調整が所定の許容基準を満たさない場合、S212において、デフォルトの非線形風袋重量調整が、1つ又は複数のセンサ124/126によって収集されたデータに適用される。S216において、プロセスは完了する。
【0036】
したがって、本開示の実施形態は投薬セットの管に関する輸液圧力の測定における応力緩和を補償するためのシステム及び方法を提供し、それによって、輸液圧力のより安全かつより信頼性の高い測定、及び閉塞を検出するために必要な時間の総合的な低下を可能にする。
【0037】
システム、装置、及び方法の様々な実施形態が、本明細書で説明されてきた。これらの実施形態は単に例として与えられたものであり、特許請求される主題の技術的範囲を限定することを意図するものではない。さらに、説明された実施形態の様々な特徴は、追加の実施形態を潜在的に生成するために様々な方法で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。さらに、各種材料、寸法、形状、構成、及び位置などが、開示された実施形態とともに使用するために説明されたが、開示されたもの以外の他のものも、特許請求された主題の技術的範囲を超えることなく利用され得る。
【0038】
当業者は、本明細書の主題が上記の例によって説明される任意の個々の実施形態に示されるよりも少ない特徴を含み得ることを認識するのであろう。本明細書で説明される実施形態は、本明細書の主題の様々な特徴を組み合わせることができる方法の網羅的な提示を意味するものではない。したがって、実施形態は、特徴の相互排他的な組み合わせではなく、むしろ、様々な態様は本明細書の主題の教示に反しないとしても、当業者によって理解されるように、異なる個々の実施形態から選択された異なる個々の特徴の組み合わせを含むことができる。さらに、実施形態に関して説明された要素は特に断らない限り、そのような実施形態で説明されていない場合であっても、他の実施形態で実施することができる。
【0039】
従属請求項は請求項において、1つ又は複数の他の請求項との特定の組合せを参照することができるが、他の実施形態は従属請求項と他の各従属請求項の主題との組合せ、又は1つ又は複数の特徴と他の従属又は独立請求項との組合せを含むこともできる。そのような組み合わせは、特定の組み合わせが意図されていないか、又は本明細書の主題の開示に反しないと述べられていない限り、本明細書で提案される。
【0040】
上記の文献の原稿による組み込みは、本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように限定される。上記の文献の基準による組み込みは、文献に含まれる特許請求の範囲が基準により本明細書に組み込まれないように、さらに限定される。上記の文献の基準による組み込みは、明示的に本明細書に含まれない限り、文献に提供される任意の定義が基準によって本明細書に組み込まれないように、さらに限定される。
【0041】
クレームを解釈する目的で、35U.S.C§112(f)の規定は特定の用語「手段」又は「ステップ」がクレームに記載されていない限り、援用されないことが明示的に意図されている。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】