IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオマグネティック ソリューションズ リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2023-501353改良された大規模な免疫磁気分離装置
<>
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図1
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図2
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図3A
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図3B
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図4
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図5A
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図5B
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図6A
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図6B
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図7
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図8
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図9
  • 特表-改良された大規模な免疫磁気分離装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】改良された大規模な免疫磁気分離装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526075
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 US2020059062
(87)【国際公開番号】W WO2021092141
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,917
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522177145
【氏名又は名称】バイオマグネティック ソリューションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リベルティ,ポール,エー.
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029HA02
(57)【要約】
可撓性の膨張可能な処理チャンバおよび磁気アレイを有する、免疫磁気分離のための装置および方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバ内の標的バイオエンティティおよびバイスタンダーバイオエンティティの流体懸濁液から標的バイオエンティティを磁気分離するためのシステムであって、
プラットフォームであって、前記プラットフォームの上面で前記処理チャンバを受容するように構成され、前記チャンバが、前記処理チャンバが磁化されたまたは磁化可能な標的バイオエンティティを有する細胞懸濁液で充填され得る開口部を有し、前記処理チャンバが収集表面を有する流体チャンバである、プラットフォームと、
前記プラットフォームに取り付けられ、前記プラットフォームに対して移動可能な磁気要素であって、前記プラットフォームの第1の選択された位置において、前記磁気要素が前記処理チャンバに磁気的に結合されて、前記収集表面に磁場を印加して、前記標的バイオエンティティを前記収集表面に引き付けるようにする、磁気要素と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記プラットフォームの回転に応答して、前記磁気要素を前記第1の選択された位置から第2の選択された位置に移動させるように、軸を中心に前記分離チャンバおよび前記磁気要素を旋回させるように動作可能な、前記処理チャンバおよび前記磁気要素に接続されたチャンバ制御アセンブリを備え、
前記第2の選択された位置は、前記第1の選択された位置よりも前記プラットフォームからさらに離れている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁気要素は、前記上面に対して垂直な方向に移動可能である、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プラットフォームは、1つまたは複数のポストを含み、該1つまたは複数のポスト上には前記磁気要素が前記第1の選択された位置から前記1つまたは複数のポスト上の第2の選択された位置に移動することを可能にするように前記磁気要素が移動可能に取り付けられ、
前記第2の選択された位置は、前記第1の選択された位置よりも前記プラットフォームからさらに離れている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記磁気要素は、前記プラットフォームの回転に応答して、前記第1の選択された位置から前記第2の選択された位置まで前記1つまたは複数のポスト上を移動するように構成される、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記磁気要素は、前記プラットフォームの回転に応答して、前記第1の選択された位置から、前記第1の選択された位置よりも前記プラットフォームからさらに離れた第2の選択された位置に移動するように構成される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁気要素は、磁石のアレイを含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プラットフォームは、該プラットフォームを通って延在するキャビティを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁気要素は、前記キャビティ内に嵌合するように寸法決めされる、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記キャビティ内に離間した関係で互いに平行に配設された複数の長手方向の非磁性バーであって、前記長手方向の非磁性バーのそれぞれの対の間に複数の開口部が配設される、複数の長手方向の非磁性バーを備える、
請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記磁気要素は、前記磁気要素が前記第1の選択された位置にあるときに前記複数の開口部のうちのそれぞれの開口部内に嵌合するように寸法決めされた長手方向に延在する磁石のアレイを含む、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プラットフォームは、前記処理チャンバと係合するための平坦な表面を提供するために、前記複数の長手方向の非磁性バーの上に配設され、前記複数の長手方向の非磁性バーと接触する非磁性シートを含む、
請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
カバーであって、前記処理チャンバを受容して保持するための空間を前記カバーと前記上面との間に画定するように前記上面の上に配設される、カバーを備える、
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記上面と前記カバーとに接触するカムであって、前記上面と前記カバーとの間の距離を変化させるように回転可能である、カムを備える、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記カバーは、前記上面と前記カバーとの間の距離を変化させるように前記上面に垂直な方向に沿って移動可能である、
請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理チャンバは血液バッグである、
請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
バッグの形態の処理チャンバ内の標的バイオエンティティおよびバイスタンダーバイオエンティティの流体懸濁液から標的バイオエンティティを磁気分離するためのシステムであって、前記チャンバが、前記チャンバが磁化されたまたは磁化可能な標的バイオエンティティを有する細胞懸濁液で充填され得る開口部を有し、前記処理チャンバが収集表面を有する流体チャンバである、システムであって、
プラットフォームであって、上面から対向する下面まで、該プラットフォームを通って延在するキャビティを有するプラットフォームと、
前記キャビティ内に離間した関係で互いに平行に配設された複数の長手方向の非磁性バーであって、前記長手方向の非磁性バーのそれぞれの対の間に複数の開口部が配設される、複数の長手方向の非磁性バーと、
前記上面に近接する前記キャビティ内の前記複数の開口部内に配設された複数の磁石であって、前記複数の磁石が前記処理チャンバに磁気的に結合されて、前記収集表面に磁場を印加して、前記標的バイオエンティティを前記収集表面に引き付け得るようにする、複数の磁石と、
を備える、システム。
【請求項18】
前記処理チャンバを受容して支持するための平坦な表面を提供するために、前記上面に配設され、かつ前記複数の長手方向の非磁性バーと接触する非磁性シートを備える、
請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年11月5日に出願された米国仮出願第62/930,917号の優先権の利益を主張するものであり、その出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、大規模な細胞分離に関し、特に、細胞の免疫磁気分離に関し、このような分離をより迅速に、より効率的に、より経済的にするためのプロセス革新に関する。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物細胞を採取し、それらの宿主中の有害な細胞を除去することができる生体薬物に変換することができる方法論および新しい技術の出現により、これらのプロセスのための末梢血単核細胞(PBMC)からの重要な開始細胞サブセットの単離において新たな関心が存在する。大規模な臨床細胞分離は、典型的には、バッチ当たり10~1011個の細胞を処理することができる。細胞および遺伝子療法のこの新しい分野において遺伝子改変細胞(CAR-T細胞)を産生するための重要なサブセットであるT細胞は、典型的には、白血球搬出産物の30~45%を構成する。これらの生体薬物の接種材料の製造を開始するのに十分なT細胞を得るためには、1010個のPBMC(末梢血単核細胞)で十分である。一方、開始細胞集団の0.5~2%に相当する幹細胞の単離は、10倍多い初期細胞を必要とする。いずれの場合においても、免疫磁気分離は、以下の3つの必須のステップを必要とする:(1)標的細胞を磁性材料で標識する;(2)このような細胞を混合物から分離する;および(3)標的細胞を回収する。標的細胞からの磁性材料の分離が望ましい場合には、潜在的な第4のステップが可能である。
【0004】
国際公開第2016/183032号パンフレット(以下、「‘3032」)に記載された共同所有の分離システム1は、図1に示されており、以下の要素を含む:(1)試薬を混合すること、重力に対して磁気分離を行うこと、収集表面上で緩衝液および緩衝液メニスカスを移動させること、ならびにチャンバを充填および空にするために有益な配向を使用することなどの精製中のプロセスステップを容易にするために中間点で旋回する、インキュベーション、分離、および薄い直線状の流体チャンバ(FC)2の組合せ、(2)FC2と接触させたときに、(a)標的細胞上への磁性ナノ粒子装填の増強、(b)細胞分離、および(c)これらの磁気的に固定化された分離細胞のその後の精製処理ステップを実施するのに特に適している、磁気アレイ5。‘3032に開示されるように、項目「(c)」は、他の外部磁場磁気分離とは異なり、このようなバイスタンダー細胞の産物を除去するために懸濁および磁気分離のサイクルを必要としない、磁気分離中に典型的に同伴されるバイスタンダー細胞を除去するプロセスステップを含む。同伴したバイスタンダー細胞は、代わりに、緩衝液およびその上の緩衝液メニスカスの通過によって磁気的に保持された細胞から除去される。したがって、‘3032の開示は、最小数のステップで免疫磁気細胞分離を効率的に実施するための方法および操作を詳述している。‘3032のシステム1は、他のエンティティに対しても同様の分離を実施することができる。‘3032は、分離プロセスにおいて使用される様々なステップを実施するために、磁気アレイ5とFC2とが結合および結合解除され得るシステム1を開示していることに留意されたい。
【0005】
‘3032に記載されるシステム1は、大規模な分離の単離に有用であるだけでなく、異なる収集表面積のFC2を使用することができるので、より少ない量にも使用することができ、したがって、単純な規模拡大または規模縮小が可能である。開示されたシステム
1はまた、外部磁気勾配磁場を使用して血管から分離することができる高度に磁性のコロイド状ナノ粒子で標識された細胞上での使用に設計された。細胞標識のために有意により大きな磁気ビーズ(約1~5μm)を使用する細胞分離もまた、‘3032に開示された方法によって有利に実施され得るが、追加のステップが一般に必要とされる。
【0006】
これらすべての考察の結果は、‘3032に開示された細胞分離システム1の主要な構成要素の4分の3の図を示す図1に示されている。項目2は、流体を導入または除去するためのポート3を備えた薄い剛性側面を有する収集チャンバである。チャンバ2は、‘3032に開示されるように、ロータリアクチュエータアセンブリおよびリニアアクチュエータアセンブリキャリッジに接続され得るように、フレーム4に嵌合する。したがって、処理チャンバ2の平面は、矢印9(横方向移動)および矢印10(回転移動)によって示されるように、横方向に回転および並進させることができる。また、システム1には、ヨークを提供し、固着された磁気要素7を保持する鉄製のバックプレート6を有する磁気アレイ5が示されており、この磁気要素は、例えば、バックプレート6に面する北極および南極を有する平行な列の磁気要素など、様々な方法で配置することができる。‘3032に開示されるように、このような配置は、これらの磁極面によって画定されるその平面に磁気要素を引き付ける強い磁気勾配を形成する。また、磁気勾配が、平面からの距離ならびに磁気到達および保持の関数としての勾配に関して良好に制御され得ることを実証する、様々な磁気配置の有限要素計算解析も開示された。磁気アレイ5は、磁石7を下向きにして、好ましくは45°の角度で空間に固定することができる。あるいは、磁気アレイ5を処理チャンバ2と直接接触させて、磁気アレイと処理チャンバの両方をユニットとして回転または並進させることができるように、磁気アレイ5に固着することができる。明らかに、磁気アレイ5が処理チャンバ2と接触すると、強い磁気勾配が処理チャンバの内容物に課される。
【0007】
末梢血単核細胞(PBMC)からCD3+T細胞を単離するためにシステム1を使用するための詳細なプロトコルおよび方法論、ならびに処理チャンバ2の回転特性および並進特性の利点は、‘3032に開示された。簡潔に述べると、ほぼ垂直な位置にある処理チャンバ2には、ある容積のPBMCおよび第2の容積の抗CD3 FFが充填され、処理チャンバ2の回転および/または並進振動によって混合され、その間にCD3 T細胞が磁気的に標識される。次に、処理チャンバ2を並進させて磁気アレイ5と接触させると、磁気的に標識された細胞が処理チャンバ2の上部内面上にもたらされ、処理チャンバ2内で細胞上を通過する流体が細胞を除去しないように、細胞は十分に強く保持される。このように保持された標的細胞上を穏やかに通過した緩衝液ならびにメニスカスは、この適度な撹拌によって、磁気分離ステップ中に同伴されたバイスタンダー細胞を懸濁液に戻し、非常に高レベルの純度をもたらすことができることが、‘3032に開示された。このような洗浄(または「メニスカススクラブ(meniscus scrub)」)の2または3サイクル後、処理チャンバ2をその垂直配向にすることができ、磁気アレイ5を除去することができ、システム1の回転および横方向の並進特性を利用して、産物細胞をいくつかの所望の容量の緩衝液中に懸濁させることができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、出願人は、処理チャンバの内容物に最大の磁気勾配を印加する必要性により、平面磁気アレイによって生成される勾配がそれらの平面からの距離の関数として急激に低下するので、処理チャンバの収集壁を非常に薄くする必要があることを認識した。この薄さは、そのような壊れやすいチャンバを、それらが製造および滅菌することが困難であるために高価にするだけでなく、薄い壁は、例えば混合操作または「メニスカススクラブ」プロセス(高純度を達成するために磁気的に保持された標的細胞上に緩衝液メニスカスを通過させるプロセスを指す)を実施するために、処理チャンバが回転または左右に揺動されることを必要とするプロセスステップ中に処理チャンバが歪まないようにする
ための支持システムを必要とする。
【0009】
本発明によれば、出願人はまた、可撓性バッグ、例えば、適切なサイズの血液バッグから狭い矩形状の剛性壁のチャンバを形成することによって、これらのチャンバの問題に対する想像的な解決策を認識している。この解決策は、このようなバッグをほぼ平行な壁の間に閉じ込め、バッグを適度な圧力下に置くことによって達成することができ、それによって可撓性バッグの壁を閉じ込め壁と密接に接触させ、しわのない収集表面を有する剛性チャンバを提供する。ここで使用されるタイプの磁気勾配は、平面磁石からの距離の関数として急激に低下するので、平坦なしわのない表面の必要性はいくら強調してもしすぎることはない。このような収集表面におけるしわは、平面磁石アレイ上のそれらの高さが減少した磁気勾配であるので、著しい標的細胞の損失を引き起こす。収集処理チャンバを圧力下に維持して剛性チャンバを形成するために同期ポンプを使用することに加えて、加圧空気で充填され、圧力制限弁が取り付けられた適切な容積の単純なバラストタイプの補助チャンバを使用することができることに留意されたい。適切な制限弁が取り付けられた大型(2L)の血液バッグが首尾よく使用されている。
【0010】
以下にさらに開示されるように、出願人は、ほぼ平行な壁の間に配置されたバッグ、例えば血液バッグの形態で、磁気アセンブリを狭い矩形状の剛性壁の処理チャンバと結合させ、任意に適度な圧力下でバッグと結合させることを発明的な方法で考案した。磁気アセンブリとバッグの形態の処理チャンバとの結合は、磁気アセンブリおよびバッグの勾配が完全に位置合わせされた状態で永続的であってもよい。
【0011】
別の態様では、本発明は、i)ほぼ平行な壁の間に配置された血液バッグなどのバッグの形態の狭い矩形状の剛性壁の処理チャンバと、ii)磁気アセンブリとが、任意に、かつ再現可能な処理に必要とされる正確な位置合わせで結合および結合解除され得る装置を提供することができる。このような構成は、以下の理由から重大な課題を提示している:(1)処理チャンバは、結合および結合解除のサイクルを通してその形状を保持しなければならない圧力下で操作される大きな薄壁の狭い直線状のチャンバであり、(2)磁気アレイによって生成される磁気勾配は、その平面から急速に低下し、処理チャンバの収集表面のすべての領域へのその近接性を重大な問題にする。一態様では、本明細書に開示されているのは、再現可能な処理に必要とされる精度でこれらの主要な構成要素を結合および結合解除するタスクを達成するシステムである。開示された例示的なシステムの構成は、一般に入手可能なアクチュエータを使用することによって自動化を容易にすることができる。加えて、この分離システムは、その旋回能力を介して細胞分離プロセスにおいて重力を使用することができるので、重力も使用することができ、または磁気アレイと処理チャンバとの結合および結合解除を支援することができる。
【0012】
磁気アセンブリと処理チャンバとの可逆的な結合は、処理中に処理チャンバを観察することができるように好ましくは透明な、強力なカバーを有する処理チャンバ用の新規で独立したハウジングと、処理チャンバと磁気アセンブリ、すなわち処理チャンバと磁気アレイとの密接な接触を可能にする独自の構造を有する床部または底部プラットフォームとを作製することによって達成することができる。その底部の床部は、磁石アレイのバッキングプレートの寸法よりもいくらか大きい剛性の矩形プレート、好ましくはアルミニウムから始めて、かつプレートからほぼ中央の矩形領域を切断することによって達成することができ、その結果、磁気アレイの磁石は、個々の磁石の頂部がプレートまたは床部の上面と同じレベルになる程度まで、その全体をその空間に挿入することができる。処理チャンバの底部加圧面を定位置に保持するために、支持構造が必要とされる。この支持構造は、(1)切り欠き空間内に、磁気アレイの個々の磁石の方向に対応する方向に、切り欠きによって形成された対向面のうちの2つに固着された水平かつ平行に配置された薄い部材を配置し、したがってグリル状構造を形成すること、(2)磁気アレイの個々の磁石の間に、
その空間に容易に出入りすることができる十分な公差で嵌合することができる支持部材を使用すること、(3)スロット付きまたはグリル状の床部が磁気アレイ上に配置されたときに隣接する磁石の間または他のすべての磁石の間のいずれかに嵌合することができるように支持部材の間隔を空けること、かつ(4)薄いシート、例えば1mmの剛性Plexiglas(登録商標)ブランドのアクリルシートを、その格子状支持構造上に配置して、処理チャンバ用の滑らかで完全に平坦な底部閉じ込め壁を形成することによって、達成することができる。剛性底部プレートまたは床部の厚さおよび磁気アレイを構築するために使用されるブロック磁石の高さを適切に選択することによって、これらのアレイの平面表面を処理チャンバの底部表面の0.5~1.0mm以内にすることが可能であり、これにより、このチャンバの内容物に最大の磁気勾配を効果的に与えることができる。
【0013】
前述から、本開示の教示を考慮すると、‘3032に記載される多くの利点、特にシステム自動化およびオペレータのタスクの排除に関しては、これらの2つの主要構成要素、すなわち、処理チャンバと磁気アレイとを結合解除する能力によっても作り出されることが明らかであろう。この手法はまた、結合されたユニットに必要とされるように、標的細胞が導入される前に標的細胞を磁気的に標識するための別個の処理ステーションの必要性を排除するので、別の非常に重要な利点を有する。処理チャンバと磁気アレイとを結合解除することはまた、処理チャンバから産物を単に排出することによって、産物の採取を単純化する。
【0014】
一態様では、本発明は、処理チャンバ内の標的バイオエンティティおよびバイスタンダーバイオエンティティの流体懸濁液から標的バイオエンティティを磁気分離するためのシステムを提供することができる。処理チャンバは血液バッグの形態で提供されてもよい。本システムは、プラットフォームであって、該プラットフォームの上面で処理チャンバを受容するように構成されたプラットフォームを含むことができ、チャンバは、処理チャンバが磁化されたまたは磁化可能な標的バイオエンティティを有する細胞懸濁液で充填され得る開口部を有し、処理チャンバは、収集表面を有する流体チャンバである。加えて、本システムは、プラットフォームに取り付けられ、プラットフォームに対して移動可能な磁気要素であって、プラットフォームの第1の選択された位置において、この磁気要素が処理チャンバに磁気的に結合されて、収集表面に磁場を印加して、標的バイオエンティティを収集表面に引き付けるようにする、磁気要素を含むことができる。チャンバ制御アセンブリはまた、処理チャンバおよび磁気要素と接続されて提供されてもよく、チャンバ制御アセンブリは、プラットフォームの回転に応答して、磁気要素を第1の選択された位置から第2の選択された位置に移動させるように、軸を中心に分離チャンバおよび磁気要素を旋回させるように動作可能であってもよく、第2の選択された位置は、第1の選択された位置よりもプラットフォームからさらに離れている。磁気要素は、上面に垂直な方向に移動可能であってもよい。
【0015】
さらに、プラットフォームは、1つまたは複数のポストを含むことができ、この1つまたは複数のポスト上には磁気要素が第1の選択された位置から1つまたは複数のポスト上の第2の選択された位置に移動することを可能にするように磁気要素が移動可能に取り付けられ、第2の選択された位置は、第1の選択された位置よりもプラットフォームからさらに離れていてもよい。磁気要素は、プラットフォームの回転に応答して、第1の選択された位置から第2の選択された位置まで1つまたは複数のポスト上を移動するように構成されてもよい。磁気要素は、プラットフォームの回転に応答して、第1の選択された位置から、第1の選択された位置よりもプラットフォームからさらに離れた第2の選択された位置に移動するように構成されてもよい。磁気要素は、磁石のアレイを含むことができ、プラットフォームは、このプラットフォームを通って延在するキャビティを含むことができ、磁気要素は、キャビティ内に嵌合するように寸法決めされる。
【0016】
さらに、本システムは、キャビティ内に離間した関係で互いに平行に配設された複数の長手方向の非磁性バーであって、この長手方向の非磁性バーのそれぞれの対の間に複数の開口部が配設される、複数の長手方向の非磁性バーを含むことができる。磁気要素は、磁気要素が第1の選択された位置にあるときに複数の開口部のうちのそれぞれの開口部内に嵌合するように寸法決めされた長手方向に延在する磁石のアレイを含むことができる。プラットフォームはまた、処理チャンバと係合するための平坦な表面を提供するために、複数の長手方向の非磁性バーの上に配設され、かつ複数の長手方向の非磁性バーと接触する非磁性シートを含むことができる。処理チャンバを受容して保持するための空間をカバーと上面との間に画定するように、カバーが上面に配設されてもよい。加えて、上面とカバーとに接触するカムが提供され、カムは上面とカバーとの間の距離を変化させるように回転可能であり、カバーは上面に垂直な方向に沿って移動可能であり、上面とカバーとの間の距離を変化させ得る。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、バッグの形態の処理チャンバ内の標的バイオエンティティおよびバイスタンダーバイオエンティティの流体懸濁液から標的バイオエンティティを磁気分離するためのシステムを提供することができる。チャンバは、チャンバが磁化されたまたは磁化可能な標的バイオエンティティを有する細胞懸濁液で充填され得る開口部を有することができ、処理チャンバは、収集表面を有する流体チャンバである。本システムは、プラットフォームであって、上面から対向する下面まで、このプラットフォームを通って延在するキャビティを有するプラットフォームと、キャビティ内に離間した関係で互いに平行に配設された複数の長手方向の非磁性バーであって、この長手方向の非磁性バーのそれぞれの対の間に複数の開口部が配設される、複数の長手方向の非磁性バーと、上面に近接するキャビティ内の複数の開口部内に配設された複数の磁石であって、この複数の磁石が処理チャンバに磁気的に結合されて、収集表面に磁場を印加して、標的バイオエンティティを収集表面に引き付け得るようにする、複数の磁石と、を含むことができる。本システムはまた、処理チャンバを受容して支持するための平坦な表面を提供するために、上面に配設され、かつ複数の長手方向の非磁性バーと接触する非磁性シートを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
前述の概要および本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとさらに理解することができる。
【0019】
図1】‘3032に開示される細胞分離システムの特定の構成要素の簡略図を概略的に示す図である。
図2】本発明の装置における免疫磁気細胞精製のための処理チャンバとして使用を最適化するように修正された、標準的な血液バッグの上面図を概略的に示す図である。
図3A】本発明の例示的な構成による、血液バッグを加圧して処理チャンバを形成する準備ができた膨張したエアバッグを備えた、例えば「壁で囲まれた」フレーム内に配設された、収縮した可撓性血液バッグの形態の膨張可能な可撓性チャンバの側面図を概略的に示す図である。
図3B】剛性処理チャンバを形成するための、図3Aの「壁で囲まれた」フレーム内での図3Aの可撓性血液バッグの膨張を示す側面図を概略的に示す図である。
図4図3Bの加圧された膨張可能な血液バッグ処理チャンバの一方の側を支持することができる、本発明によるスロット付き剛性非磁性プレートの例示的な構成の上面図を概略的に示す図であり、非磁性プレート内のスロットは、アレイの磁石が処理チャンバと密接に接触することを可能にする。
図5A図4の非磁性プレートに平面磁気アレイの磁石を「噛み合わせる」ことができる、本発明による平面磁気アレイの例示的な構成の上面図を概略的に示す図である。
図5B】バッキングプレート上に位置する磁石を示す、図5Aの平面磁石アレイの側面図を概略的に示す図である。
図6A図4の支持プレートに機械的に連結された図5A図5Bの平面磁石アレイの側面図を概略的に示す図であり、支持プレートの上にカバープレートが追加されて、可撓性血液バッグなどの膨張可能な可撓性チャンバを保持するためのフレームが形成されている。
図6B図6Aに示す配向に対してその回転軸を中心に180°回転された図6Aのシステムの部分切欠図を概略的に示す図であり、この回転は、磁石をスロット付きの非磁性プレート内の間隔を通って移動させる。
図7図4図6Bの平面磁気アレイおよび処理チャンバを含む、本発明による旋回可能磁気分離装置の例示的構成の分解等角図を概略的に示す図であり、旋回/回転動作は、重力の作用による回転時にアレイの磁石を係合または係合解除する役割を果たし、膨張可能な可撓性分離処理チャンバを収容する旋回可能な磁気分離装置の部分が分解されて示される。
図8】分離処理チャンバが平面磁気アレイと密接に接触しているときにフレームワークが分離処理チャンバを支持するとき、切断線8-8に沿って切り取った、分解されていないときの図7の装置の断面図を概略的に示す図である。
図9】分離処理チャンバの深さを変更することができる、本発明によるカム機構の例示的な構成を概略的に示す図である。
図10】本発明の例示的なシステムの旋回を使用して、処理チャンバを磁気アレイと接触させるか、または免疫磁気分離の手順ステップを実施するために係合解除させるかを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
全体を通して同様の要素に同様の番号が付けられている図面を参照すると、本発明による磁気アレイ55を有する分離システムと、可撓性の膨張可能な処理チャンバ16、例えば、血液バッグとの両方の利点の多くを達成するための1つの例示的な方法は、これらの構成要素を互いに永続的に固着させることである(図2図3A図3B)。別の例示的な手法は、処理チャンバ/バッグ16と、磁石アレイ55を有する分離システムとを互いに対して移動可能にすることである(例えば、図2図6A図6B)。
【0021】
チャンバ16を最初に参照すると、図2は、図3Aおよび図6Aの両方の構成での使用に適した修正された血液バッグ16の形態で提供され得る、本発明による例示的な可撓性の膨張可能な処理チャンバ16を示す。修正された血液バッグ16は、流体(溶液または気体)を独立してまたは同期してバッグ16の中にまたは外にそれぞれポンプ注入するように、入口ポンプおよび出口ポンプそれぞれへの接続のために、バッグの両側に(しかし、他の位置が使用され得る)入口ポート17および出口ポート18を含むことができる。バッグ16の角部19、20は、良好な流体の流れがないと処理が妨げられる可能性がある、バッグの角部への流れを遮断するために溶接されていることに留意されたい。流れダイバータ21および22は、バッグ16を通るプラグ流を促進するように設計することができる。臨床細胞分離において処理チャンバ16として血液バッグなどを使用することの重要な利点は、これらのバッグが血液製剤と適合性があり、無菌であり、使用者によく知られており、安価な使い捨て可能なものであることである。
【0022】
図3Aを参照すると、本発明によるシステム100が示されており、このシステムは、平行な保持壁の間に配置された、収縮した血液バッグとして示されている可撓性の膨張可能な処理チャンバ16を含み、この保持壁のうちの一方が23’であり、他方が磁気アレイ55として示されている。膨張可能な処理チャンバ16は加圧されて剛性の処理チャンバを形成し、このチャンバの壁は、フレーム23内の保持壁23’および磁気アレイ55と面一になるようにされる(図3B)。適度な油圧または空気圧(<1.0psi)下で、血液バッグ16は、剛性に維持することができ、可撓性の壁は、すべての処理ステップ
を通してしわがない。
【0023】
バラストエアバッグ25は、血液バッグ16を加圧するための1つの可能な方法として、ラインクランプ26によって閉じて保持されてもよい(図3A)。上述したように、フレームの一方の壁は、磁石57の磁気アレイ55を含むことができ、例えば、その上に、Plexiglas(登録商標)ブランドのアクリルシートなどの薄い(約0.5~1mmの厚さ)剛性非磁性シート52が配置され、このシートは、滑らかな平坦な表面を作り出す役割を果たす。反対側23’は、可撓性の膨張可能な処理チャンバ16が挿入され、加圧されるとフレーム23内の定位置に保持されるように、容易に取り外し可能であってもよい。
【0024】
図3Bは、図3Aの装置を概略的に示すが、可撓性の膨張可能な処理チャンバ16がフレーム23内で膨張している。ラインクランプ26が開放され、エアバッグ25からの空気が膨張して血液バッグ16を加圧し、剛性の膨張チャンバ16を形成する。血液バッグ16が加圧された状態で、壁23’、剛性の非磁性シート52、磁気アレイ55および血液バッグ16の適切な配置が達成されて、例えば、磁気細胞分離プロセスを実施するために処理チャンバ/バッグ16に磁場を送達することができる。フィードバックを有する圧力ゲージに連結された同期ポンプを使用して、膨張可能な可撓性チャンバ16を、典型的には50~160分、または追加のステップが含まれる場合にはさらに長いプロセス全体にわたって剛性かつ一定の圧力下に維持することができる。
【0025】
処理チャンバ16を磁気アレイ55に永続的に結合することによって構築される分離装置100では、間接的な磁気標識を使用する正の細胞選択は、以下のように実施することができる:(1)細胞懸濁液を標識モノクローナル抗体(mAb)と混合し、システム100に結合された適切な外部システム内でインキュベートすることができ;(2)次に、必要に応じて、非結合mAbを遠心分離によって除去することができ;(3)次いで、共通の捕捉磁性ナノ粒子をmAb標識細胞に添加し、インキュベートすることができ;(4)次に、ステップ「(3)」の混合物を加圧された処理チャンバ16内にポンプ注入し、そこで分離を直ちに行うことができ;(5)次いで、磁気分離中に同伴された非標的バイスタンダー細胞を、分離された磁気的に保持された細胞に対して1~3サイクルのメニスカススクラビング(例えば、’3032に開示されているように)を実施することによって磁気的に収集された細胞から除去することができ;(6)最後に処理チャンバを磁気勾配から取り出して細胞を回収した(正の選択の場合)。
【0026】
免疫磁気分離などの磁気プロセスのために図3A図3Bのシステム100をより便利に使用するためには、磁気アレイ55の磁石57を修正された血液バッグ16の少なくとも1つの壁と密接に接触させる方法が望ましい。
【0027】
この点に関して、かつ別の態様では、本発明は、処理チャンバ/バッグ16のための保持壁を提供し、図4に示されるその必要性を革新的に達成する支持構造30を提供することができる。図4は、内部に配設されたキャビティ32を有する、大きな剛性の矩形の非磁性ベースプレート31、例えば7~8mmの厚さのアルミニウムプレートを示す。キャビティ32の寸法は、磁気勾配がバッグ16のすべての部分に付与される場合、処理チャンバ/バッグ16の寸法よりもわずかに大きくてもよい。キャビティ32には、複数の非磁性バー33、例えば1.5×12mmのアルミニウム製のフラットバーが架け渡されている。バー33は、バー33のそれぞれの端部が配置されるキャビティ32の周囲の非磁性プレート31内に配設されたスロットによってキャビティ32内に保持されてもよい(図4)。
【0028】
隣接するバー33間の間隔34は、平面磁気アレイ55の1つまたは複数のブロック磁
石57がその空間に滑らかに挿入され得るように、十分に大きくなければならない(図6A図6B)。穴36は、処理チャンバ/バッグ16を囲むカバー42を定位置に保持するためにベースプレート31の上に突出するポスト65を固着するために、ベースプレート31の4つの角部に設けられてもよい(図4図7)。穴36はまた、4つの角部の各々においてベースプレート31の下に突出するポスト43を固着するために使用されてもよい(図7)。ポスト43は、図7に関連して以下でより十分に説明するように、磁気アレイ55を懸架するために使用されてもよい。図4および図5Aでは、中線35は、細胞精製のためのプロセスに必要とされる配向を生成するために、ベースプレートシステム30が旋回する線を示す。
【0029】
さらに別の態様では、本発明者は、処理チャンバ16を磁気アレイ55と永続的に結合させることによって、図3A図3Bのシステム100にいくつかのプロセス上の欠点があることを認識している。例えば、処理チャンバ16と磁気アレイ55とを容易に分離することができる場合、磁石57をチャンバ16と接触させたり接触させなかったりする特定のプロセスは、以下のように動作することができる:アレイ55とチャンバ16との間の結合解除状態では、細胞混合物を処理チャンバ16に導入し(次いで、適切に壁で囲んで加圧し)、続いてモノクローナル抗体(mAh)を標識することができる。次いで、システム100は、混合およびインキュベーションのために旋回点を中心に左右に揺動されてもよく、次に、共通の捕捉磁性材料が処理チャンバ16に導入され、この処理チャンバは、混合およびインキュベーションのために再び揺動される。(この最後のステップは、アレイ55とチャンバ16との間の結合状態では行うことができないことに留意されたい。なぜなら、添加された磁性材料の多くの分離は、磁性材料の導入直後に起こり、システムが十分に混合される前に起こる可能性が高いからである。続いて、標的細胞と磁性剤との導入、混合およびインキュベーションの後に、処理チャンバ16および磁気アレイ55が結合および結合解除されるステップがあり得る。例えば、処理チャンバ16と磁気アレイ55との断続的な結合(20~30秒間)を使用して、変化する磁気勾配により磁性ナノ粒子の移動を増加させることができ、一方、より大きな細胞は比較的静止したままであり、潜在的に任意の非結合の磁性ナノ粒子に結合する標的細胞を見つけさせ、標的細胞の磁気負荷を増加させる。
【0030】
正の選択の場合、使用済み細胞が処理チャンバ16から除去された後、チャンバ16および磁気アレイ55が係合したままで、磁気的に保持された細胞の緩衝液洗浄が行われ、その後、メニスカススクラビングが行われて、高度に精製された細胞産物を得ることができる。磁気分離に同伴されたバイスタンダー細胞は、磁気的に分離された細胞(標的された細胞および同伴された細胞)を定位置に保持し、それらの上に緩衝液および緩衝液メニスカスを通過させ、同伴された細胞を流体相に移動させることによって容易に除去することができ、したがって、処理チャンバ16と磁気アレイ55とを結合解除し、かつチャンバ16を排出することによって簡単に採取され得る高純度細胞をもたらす。結合解除され得る磁気アレイ55およびチャンバ16を有するシステムの前述の利点のすべてに加えて、結合されたユニットに必要とされるような、その壁で囲まれた空間から処理チャンバ16を除去する余分なステップが取り除かれる。
【0031】
磁気アレイ55と接触する処理チャンバ壁のための支持構造を作製する際の課題は、この壁が薄い、好ましくは1.0mm未満であるという理由だけでなく、処理チャンバ16が加圧されるという理由からも困難になる。2×10個の細胞/mLの最適化された分離濃度で1×1010個の細胞に対する磁気分離を収容するために8~10mmの深さに閉じ込められた、このようなチャンバ16では、薄壁の収集表面積は、約500cmであり得る。0.8PSIの内圧では、その表面に約65ポンドの荷重がかかる。加圧された収集チャンバ壁を定位置に維持し、磁気アレイ55がそれに対して押圧されていないときに壁が歪まないように維持することは、アレイ55とチャンバ16とを結合および結合
解除する間にその表面上に生じ得る歪みと同様に、標的細胞の不均一な収集につながり得る。標的細胞の不均一な収集および/またはチャンバ壁の歪みを防止することは、重大な課題を提示する。加えて、比較的簡単な方法で自動化することができる方法でアレイ55とチャンバ16とを結合および結合解除するための手段が最も有利であろう。
【0032】
上記の収集表面計算の表面積は、本発明のシステムの別の重要な考慮事項とよく一致することに留意することが重要である。磁気分離中に同伴されたバイスタンダー細胞は、収集された細胞層の数が約6、おそらく7未満である場合にのみ、メニスカススクラビングによって効率的に除去され得ることを示す、かなりの量の実験データが蓄積されている。この場合、層中の1010個の全細胞の40~50%の分離には、その条件を満たすために約520cmの収集面積が必要であることを、別の考察によって示すことは容易である。したがって、収集表面は、7細胞層未満の所望の細胞の収集を収容するために十分に大きい必要がある。
【0033】
アレイ55とチャンバ16との結合および結合解除が可能であるシステムについて上記で認識された利点に応じて、別の態様では、本発明は、可撓性の膨張可能な処理チャンバ16を磁気アレイ55と可逆的に結合することが可能である装置を提供する。例えば、1つの例示的な構成では、本発明の装置は、ベースプレート31の4つの角部に取り付けられた対応するスリーブ軸受44とともに、円筒形ポスト43を介してベースプレート31の下に磁気アレイ55を懸架することを含むことができる(図6A図8)。ポスト43の長さは、磁気アレイ55がその最下位置にあるとき、処理チャンバ/バッグ16に磁気勾配が課されないように十分に長くあるべきである(図6A図7)。
【0034】
すなわち、磁気アレイ55がポスト43およびスリーブ軸受44上でベースプレート31の下に懸架されると、重力によって磁気アレイ55は円筒形ポスト上のその最下位置にあり、すなわち、処理チャンバ/バッグ16から完全に係合解除される(図6A図7)。一方、装置40が上下逆にされた場合、重力によって磁気アレイ55が滑り落ちてハウジング床部のスロット付きグリッド内に入り、したがって係合する。したがって、そのように説明される結合および結合解除の一実施形態は、重力駆動のものであってもよく、それによって、単にこのシステムを回転させることが、そのタスクを達成し、‘3032に開示されるものなど、磁気分離プロトコルに対して有利にそれを行う。
【0035】
システム40が磁気アレイ55に固着されたピボットバーに取り付けられている場合、磁気勾配の係合は、上述した配向とは反対の配向で生じることは明らかであろう。重力はすべての必要性に役立つ可能性があるが、完全に自動化された係合/係合解除が任意の配向で所望される場合、単純なアクチュエータを使用することができる。より少ないエネルギーのアクチュエータが必要とされるので、重力補助も自動化システムの一部であり得る。また、このように説明したシステムにロック位置を設けることは有利であり得る。例えば、記載されたシステムを180°回転させることにより磁気アレイ55が上になる場合、2つの構成要素を定位置に保持するロック機構を使用して、システムがどのように配向されていてもこれらの構成要素を係合状態に保持することができる。
【0036】
この加圧された収集/処理システムと磁気勾配を結合または結合解除することを可能にするシステムを有することによって、‘3032に開示される実施形態のすべては、以下のステップを用いて容易に達成され得る:(1)空の加圧された処理チャンバを用いて、試薬および細胞は、結合解除モードにおいて適切な角度(45°付近)でシステムにポンプ注入される、(2)試薬は、磁場の非存在下で処理チャンバを旋回させることによって標的細胞と混合および撹拌される、(3)標的の磁気分離は、ユニットを一緒に保持する広範囲の有益な角度にわたって重力に対して発生させ得る、(4)磁気的細胞のメニスカススクラビングなどの処理ステップは、磁石が係合された状態で、かつ結合が重力駆動で
ある場合には、磁石が係合される角度を通って旋回して実施することができる、(5)産物が採取され得るようにユニットを結合解除する。処理チャンバの内容物を任意に勾配磁場に配置する能力を有するシステムはまた、システムの別の選択肢、すなわち、磁石が係合解除され、それらの対応する角度を通して旋回し、その後、第2または第3の懸濁および磁気分離を実施するために処理チャンバの再配向が可能である場合に、磁気的に収集された細胞を洗浄緩衝液の存在下で懸濁する選択肢を提供する。したがって、ステップ4は、同伴されたバイスタンダー細胞を除去する別の方法を提供する。
【0037】
加えて、磁気分離が行われた後に処理試薬を減少させるために用いることができる、処理チャンバの深さを変更するための手段が開示される。この可能性は、多くの試薬および時間節約方法が分離スキームに組み込まれることを可能にする。例えば、完全なアフェレーシス産物分離の場合、このシステムにおける分離のための典型的な容積は約330mLであり、その分離は深さ7mmの処理チャンバ内で行われ得る。正の分離では、磁気的に収集された細胞が清浄な緩衝液に浸され、続いて少なくとも660mLの緩衝液を必要とする少なくとも2サイクルのメニスカススクラビングを受ける必要がある。磁気分離後の処理チャンバの深さを約3mmまで下げ、洗浄緩衝液を添加する前に、必要とされる緩衝液の容積を半分より多く減少させることによって、処理チャンバに緩衝液を出し入れするための時間がそれに応じて短縮し、これらの時間のすべては、処理時間の短縮が最も確実に生存性が高いことを意味するので、経済的観点ならびに細胞生存性から重要である。
【0038】
可撓性バッグ、収集または処理チャンバ、およびポートを有する血液バッグという用語は、互換的に使用される。外部磁気勾配は、磁極片、その極性、その特別な配置および電力を使用して自由空間に形成される磁気勾配であり、これらのすべてを使用して、空間内に非常に異なる勾配磁場のスペクトルを生成することができる。‘3032は、本明細書で使用される平面磁気アレイの解析を非常に詳細に開示している。
【0039】
例示的な用途
本発明の装置を用いた免疫磁気分離に使用することができる多くの磁性ナノ粒子が存在する。しかし、コロイド状で高度に磁性(約84%磁性質量)であるLibertiら(米国特許第5,698,271号;米国特許第6,120,856号)のような140nmサイズ範囲の高度に磁性のコロイド状ナノ粒子(HMNP)は、拡散力によって細胞を磁気的に標識することができ、HMNPでそのように標識された細胞は、4~6キロガウス/cmをわずかに超える勾配を有する外部磁気装置において分離することができるので、望ましい。このサイズ(150nm)の磁性ナノ粒子は、そのように標識されたこれらの材料またはエンティティの磁気収集を十分に制御することができ、実際、本発明者らが発見したように、半径方向勾配四重極磁気装置において容易に生成される均一な磁気勾配で単層に収集することができるので、有利である。
【0040】
本発明者らはさらに、標的細胞が単層またはほぼ単層で磁気的に収集される場合、当該技術分野で通常行われているように、バイスタンダー同伴細胞を除去するためにこのような標的の懸濁および磁気収集のサイクルを実施する必要がないことを発見した。代わりに、適度に均一な層に収集された標的細胞は、単にこれらの細胞上に緩衝液メニスカスを通過させることによって、バイスタンダー同伴細胞を除去することができ、これらの収集された細胞は磁気的に定位置に保持される。本発明者らは、分離された細胞を精製するためのこのプロセスを「メニスカススクラビング(meniscus scrubbing)」と呼んでいる。したがって、単純な二次精製プロセスでは、表面張力は、おそらく弱く保持された同伴された非標的細胞を除去する際に作動可能であることを示唆することは合理的なようである。「メニスカススクラビング」が非常に穏やかなプロセスであるという考えを支持する証拠は、このプロセスが細胞生存性に負の影響を及ぼさないことが本発明の知見である。当然のことながら、これは、より高い標的細胞収率をもたらす。
【0041】
これらの基本的な発見などに基づいて、複数の設計原理を本発明の装置に組み込むことができる:(1)標的細胞が収集壁まで移動するのに必要な距離は、バイスタンダー細胞エントレインメントが最小化されるように、可能な限り小さくすることが望ましい(距離が大きいほどバイスタンダーエントレインメントが大きいことを示す実験データに基づく)、(2)原理「(1)」は、多数の細胞(10~1011個の細胞)の分離に適応する必要性と組み合わせて、小さい深さ(15mm未満、磁気勾配内)を有するチャンバ内で6~7個の単層において比較的均一に細胞を層状にするのに十分な表面積にわたって細胞が収集されることを必要とする、(3)収集された標的細胞の任意のパイルが排除または最小化され、その結果、「メニスカススクラビング」が使用され得る層で細胞を収集する利点は、円筒状表面(四重極セパレータ)が必要とされる処理可能な容量を収容するために非常に高い必要があるので、6~7単層で細胞を層状にするのに十分に大きい平面が磁気収集のために使用されることを本質的に示す。
【0042】
標的細胞を層状に収集するために、大きな表面積にわたって均一性を可能にする平面的な磁気勾配の発達が必要とされる(最大7単層の細胞を層状にするのに十分な大きさ)。本発明者らは、このような勾配を形成することによって、標的細胞がほぼ単層で収集され得ることを示した。磁気的に保持された細胞の大きな面積にわたって緩衝液メニスカスを都合よく通過させるために、薄い直線的な収集処理チャンバが形成され、このチャンバは、その中の揺動された流体および気泡が、このような細胞の上を流れ、文字通りバイスタンダー細胞をこすり取ることができるように、その中間点で旋回する。加えて、そのチャンバの旋回能力は、最適な方法で免疫磁気分離の様々なステップを実施するために使用される。例えば、試薬を処理チャンバに添加し、左右に揺動させることによって混合することができ、処理チャンバを充填または空にするために最適な角度に傾斜させることができ、磁気分離を重力に対して行うことができ、これは、同伴されたバイスタンダー細胞の減少につながることを本発明者らが実証した。
【0043】
図5A図5Bを参照すると、図5A図5Bは、ブロック磁石57によって画定される領域にわたって、ブロック磁石57の上部によって画定される平面に対して強力かつほぼ均一な勾配力を生成するために、磁気伝導性バッキングプレート56上に最適に離間されたブロック磁石57を概略的に示す。この面積は、ベースプレートシステム30のキャビティ32と同等である(わずかに小さい)ことに留意されたい。磁気アレイ55に穿孔された小さな穴38は、ポスト59(図9)を保持し、これは、多くの血液バッグがそうであるように、バッグが吊り下げるための穴またはスリットを頂部に有する血液バッグから得られた場合に、処理チャンバ/バッグ16をしっかりと保持する。磁気アレイ55の4つの角部にあるドリル穴39は、後述するように磁気アレイ55をベースプレートシステム30に隣接することを可能にする軸受(図示せず)を収容する。線37は、磁気アレイ55の中心線を意味する。図5Bは、磁石アレイ55の側面図を示しており、磁石57が磁気伝導性バッキングプレート56上でどのように離間されるかを示す。
【0044】
図6Aは、機能的な自動化可能な分離システム40の例示的な構成を概略的に示しており、平面磁気アレイ55がポスト43およびスリーブ軸受44を介してベースプレート31の下側にどのように接合され、磁気アレイ55の磁石57の対がベースプレート31の開放空間34を通過することができるように、磁気アレイ55を上方に摺動させることを可能にするかを断面で示す。処理チャンバ/バッグ16は、圧力下にあるように示されている。図6A図6Bの図面を簡単にするために、処理チャンバ/バッグ16の下およびバー33の上に位置する薄い(0.5~1.0mm)剛性プラスチックシートは示されていない。(剛性プラスチックシートは、後の図、例えば図7のシート52に示され、説明される。)本発明者らは、これらの支持バー33上に配置された、図7のこのような剛性シート52が、4psi程度の高い圧力下であっても歪みのない完全に平坦な表面を処理
チャンバ/バッグ16に提供することを示した。図6Aでは、処理チャンバ/バッグ16の内容物の可視化を任意に可能にする、Plexiglas(登録商標)ブランドのアクリルシートの厚いシート42は、処理中に処理チャンバ/バッグ16を閉じ込めるための上壁を提供する。シート42は、蝶ナット46によって定位置に保持され、図3のドリル穴36に固着されたポスト65に取り付けられてもよい。カバーシート42は、蝶ナット46とシート42との間にばね51を配置することによってばね付勢することができる。
【0045】
図6Aの分離システム40は、磁気アレイ55がベースプレート31から懸架された状態で垂直に示されており、この場合、重力が磁気アレイ55をその最も低い位置に配置する、すなわち、スリーブ44がポスト43上の停止部45上に置かれることに留意されたい。ここで分離システム40が旋回点41を中心に180度旋回される場合、システム40は図6Bのように見える。図6Bは、磁石57がプレート31の空間34内で移動するように、重力がどのように磁気アレイ55を下方に摺動させるかを示す。磁石57の高さ、ベースプレート31の厚さ、およびスリーブ軸受44の配置を適切に選択することにより、磁石57は、処理チャンバ/バッグ16に最も近いベースプレート31の表面と同じ高さに配設することができる。したがって、単に分離システム40を旋回させることによって、本発明者らは、本システムの2つの主要な構成要素の磁気アレイ55および処理チャンバ/バッグ16を係合および係合解除するためのシステムを作製した。また、図6Aに示す配向では、磁気アレイ55および処理チャンバ/バッグ16は、いずれかの方向にほぼ90°傾斜したときに係合解除されたままであり得ることも明らかであろう。この配向により、分離システム40が、磁気勾配の不在下で試薬の混合のために使用されることが可能になる。同様に、磁気アレイ55および処理チャンバ/バッグ16が接触している図6Bの配向では、重力がそれらを接続したままにする広範囲の角度も存在する。この能力は、例えば‘3032に開示されるように、メニスカススクラビングなどのプロセスのために分離システム40を使用することを可能にする。
【0046】
ロック機構を追加して、磁気アレイ55および処理チャンバ/バッグ16を一緒にまたは別々に保持し、分離システム40の有用性を拡大することができる。例えば、磁気分離を行うために分離システム40が図示のように使用される場合、システム40は、処理チャンバ/バッグ16および磁気勾配と係合するように、図6Bに示すように反転される必要がある。重力に対する分離が有益であることが示されているとしても、それが有益でない場合、またはそれが有利でない場合があり得る。重力効果に対抗するロック機構を有することによって、分離システム40は、図6Aの配向にロックされ、180°回転されて、重力による分離または何らかの他の動作を実施することができる。ロック機構の別の利点は、ユニットが一緒になったり離れたりする方法を制御することである。例えば、図6Aの配向から始まるロック機構がない場合、ユニットが回転され、重力が運動を引き起こす配向に達すると、ポストおよびスリーブ軸受にねじり力が生じ、これらの構成要素を摩耗させる可能性がある。より洗練された手法は、ロックされた状態で装置を180度回転させ、次いでロックを解除することである。この手法では、構成要素の摩耗が最小限になり、磁場が印加または除去される時間が正確に制御される。
【0047】
図7は、回転可能なシャフト54に取り付けられ、360度の回転を可能にする支持構造53内に位置決めされた分離システム40の描写50を示す。この描写は、剛性処理チャンバ16となる可撓性容器が配置される空間を形成するシステム50の構成要素を分解図で示している。処理チャンバ/バッグ16が加圧されたときにそれを支持する支持バー33のグリル状構造は、ベースプレート31の顕著な特徴であり、個々の支持バー33およびそれらの間の開放空間34が明確に示されている。好ましくは1.5mm未満の厚さを有する薄い非磁性剛性シート52が、ベースプレート31のバー33の上に置かれて、圧力下にあるときに押し付けられる処理チャンバ/バッグ16の側面のための滑らかで平坦な表面を提供する。圧縮ばね51は、ベースプレート31に固着された4つの支持ポス
ト65上のカバー42の上に配置することができる。ばね51は、処理チャンバ/バッグ16が加圧されたときにカバー42上の上向きの圧力に抵抗するように適合され、力がいくらか大きくなければならない。可撓性の膨張可能な処理チャンバ16の深さを固定するために、最適な分離のために高さ3~12mmとすることができる厚壁シリンダ(図示せず)のセットをコーナーポスト65上に配置することができ、これは、カバー42の下面がコーナーポスト65の上面にどれだけ近づくことができるかの限界を設定する。
【0048】
図8は、図7のシステム50を切断線8-8で切断した断面図を示す。磁石57が対になって支持バー33と噛み合い、支持バー33の頂部と同じ高さになる方法は、この例示的な設計によって、平面磁気アレイ55の勾配磁場が、抑制されずにその力を処理チャンバ16に及ぼすことができることを実証している。
【0049】
本明細書に開示される設計および概念から達成することができる1つの他の実用的な用途がある。記載された分離プロトコルに必要とされる操作の間に、収集チャンバの深さを変化させることができることが望ましい場合がある。この利点を例示するために、このシステム上の典型的な完全なアフェレーシス産物(約7×10個の総有核細胞(TNC))が、350mLの最終容量(分離時に2×10個の細胞/mL)で分離されることを考慮する。その分離のために、440cmの表面積の適切に修正された血液バッグが使用され、その深さは8mmに固定される。このシステムの最大充填速度または最大空速度は、60mL/分であり、これは、細胞がより高い速度で剪断力によって除去されるためである。それには6分を要する。さらに、揺動メニスカススクラブ手順の後、6~8分間の休止を用いて、そのプロセス中に除去された任意の標的細胞を再収集する。したがって、3回のメニスカススクラブサイクルでは、6回の充填/空に加えて2回の休止期間が必要であり、合計で60分である。さらに、これらのサイクルの間に、3×350mLの緩衝液廃棄物が生成され、これは有害廃棄物の一部となる。
【0050】
一方、処理チャンバの深さが、最初の分離のために(処理される細胞の総数を収容し、分離において最適な細胞濃度を達成するために)8mmの深さに設定され、その後、後続の処理ステップのために3または4mmの深さに減少される場合、これは、チャンバの全容積を減少させるだけでなく、本発明者らは、シミュレートされたシステムにおいて、より小さい深さが、実際に、これらの後続の精製ステップのためにより効果的なメニスカススクラブを与えることも見出した。
【0051】
したがって、上記の深さ変更では、容積は、充填/空にするごとに131mLに減少し、したがって、これらのステップのための時間要件を半分超削減する。さらに、除去された細胞は深さ8mmよりも3mmでの勾配がほぼ2倍大きい収集表面により近いので、再収集のための「休止」期間も短縮される。上述のプロセスステップの56分のうち、スループットに有意である20分に短縮することができると推定される。
【0052】
図9は、レバー61に取り付けられた楕円形カム60を使用する処理チャンバの深さを変更するための機構を示す。この楕円形の寸法、例えば8×4mmを選択することによって、レバー61を、最初に8mmの配向から4mmの寸法まで、または所望の比率で移動させることができる。4つのこのようなカム60およびレバー61は、チャンバハウジングユニットの角部の各々に配置されてもよい。図9はまた、多くの血液バッグがそうであるように、バッグが吊り下げるために上部に穴またはスリットを有する血液バッグから得られた場合に、処理チャンバ/バッグ16を分離システム40内の定位置に保持するために磁気アレイ55およびベースプレート31を通って延在するポスト59を示す。
【0053】
上述したベースプレート31および挿入された膨張した血液バッグ16の深さを減少させるいくつかの手法がある。最初に、血液バッグ16などの可撓性バッグがシステム40
の断面に挿入された場合、このバッグは約0.7psiの圧力下にあることを考慮する。その結果、カバー42は、大きなバッグについて上述したように、約60ポンドの総力を及ぼすことができる。この力は、カバー42を定位置に保持する圧縮ばね51によって相殺される必要がある。収集チャンバから流体を排出するためには、かなり強いばねが必要となる。より良い手法は、カム60をそのより小さい寸法に調節し、処理チャンバを空にする大部分を実施するために流出ポンプを使用して、深さを減少させることができるようにすることである。それにもかかわらず、この単純な機構によって、これらのプロセスのための充填および空のサイクルは、メニスカススクラビングプロセスの間に強制的に懸濁状態にされ得た標的細胞が収集表面に戻るために必要とされる時間と同様に減少され得る。
【0054】
図10は、膨張式処理チャンバ16、Plexiglas(登録商標)ブランドのアクリルの厚いシート42、および薄い剛性非磁性シート52を含むチャンバ複合体62と、プロトコルの異なるステップのための磁気アレイ55とを係合または係合解除するために重力を使用するシステム50上で免疫磁気分離を実施するための配向を使用するスキーマを示す。図10では、平行な矩形の第1のパネルは、磁気アレイ55が重力によってその低い構成で定位置に保持されるために分離されたチャンバ複合体62および平面磁気アレイ55を示す。約-45°で分離されたユニットを有するこの構成では、アフェレーシス産物、mAbおよび磁性流体を順次添加し、本システムを-/+45°の間で揺動させて混合し、インキュベートする(上部中央のパネル)。右上のパネルでは、本システムは、磁気アレイ55が上にあり、ここでチャンバ複合体62と嵌合し、重力(望ましい)に対する磁気的に標識されたエンティティの分離が行われるように回転される。この同じ配向では、産物を回収する(負の選択)ことができ、または使用済みPBMCをポンプ注入して廃棄することができる。加えて、この同じ構成では、磁気アレイ55がチャンバ複合体62と嵌合したままであり、磁気的に保持された標的細胞上を通過する緩衝液が、左下のパネルに示されるように、それらの上を緩衝液およびメニスカスが通過するにつれてメニスカススクラビングを実施することができるため、緩衝液を収集チャンバに添加し、本システムを揺動させることができる。このように、バイスタンダー同伴細胞は、非常に効果的に懸濁状態に戻される。数回のスクラビングサイクルの後、所望の量の緩衝液を添加することができ、磁気アレイ55を下にして配向を反転させ(右下のパネル)、最後のパネルに示すように、細胞を懸濁し、回収することができる。
以下の実施例は、前述の開示の有用性を示し、腫瘍細胞を含まないT細胞またはそのサブセットを調製するために使用され得る革新を説明する。
【0055】
(実施例1)磁気勾配および処理チャンバの重力駆動係合/係合解除を用いるCD3+細胞の負の選択。
凍結アフェレーシス産物を室温(RT)で解凍し、遠心分離し、ペレットをウシ胎仔血清10%を含有するRPMI培養培地に懸濁した。懸濁した細胞を遠心分離し、同じ緩衝液中でさらに2回懸濁し、最後に、細胞分離緩衝液中での4回目の遠心分離後、1×10個の細胞/mLの細胞数まで懸濁した。18mLのこの懸濁液を、両端に入口ポート17および出口ポート18を有する約3×6.75インチの処理チャンバ/バッグ16(図2)にポンプ注入した。図3Aに示し、図10の左上のパネルに表すように、バッグ(処理チャンバ)を、壁23’と磁気アレイ55との間のフレーム23内に位置決めした。可撓性の膨張可能な処理チャンバ16の深さを8mmに設定し、細胞混合物を底部ポートにポンプ注入する前に、バッグを0.5psiの圧縮濾過空気で加圧した。上部ポート18は、同様に加圧され、0.5psiに設定されたリリーフ弁を有するバラストエアバッグ25に取り付けられた。したがって、細胞混合物がバッグに入ると、空気がシステムから出た。次に、すべてがIgG1クラスであり、CD3+細胞以外のすべてを対象とする、マウスモノクローナルの専有カクテル18mLを処理チャンバにポンプ注入し、試薬を混合するために図10の第2のパネルのように揺動させた。2サイクルの揺動(各5回の振
動)を用いた後、14分間の静置インキュベーションを行い、その時点で、20μg/mLのラット抗マウスIgG1磁性流体36mLを処理チャンバにポンプ注入し、処理チャンバを上記のように揺動させた。10分間のインキュベーション後、18mLの分離緩衝液を処理チャンバに添加して、処理チャンバが90mLの懸濁液を保持するようにした。処理チャンバを上記のように揺動させて内容物を混合し、本システムを180°回転させて磁気アレイ55をチャンバ複合体62と係合させ(図10右上のパネル)、こうして処理チャンバ内の磁気的に標識された細胞に、処理チャンバの上面への強い上向きの引力を与えた。
【0056】
15分後、非磁性画分(負に選択された細胞、すなわち画分I)を収集し、フローサイトメトリーによって解析した。次に、磁気アレイ55が依然としてチャンバ複合体62の上にあり、このチャンバ複合体と係合している状態で、処理チャンバを80mLの細胞緩衝液で充填し、本システムを180°回転させ、これにより、磁石アレイ55を処理チャンバ/バッグ16から係合解除し、本システムを揺動させて、緩衝液および大きな気泡が細胞上を通過し、収集された非標的細胞を懸濁液に移動させるようにした(図10右下のパネル)。これは、各サイクルが5回の振動を有する3サイクルの揺動を必要とした。磁石アレイ55が上にあり、処理チャンバ16と係合するように、本システムを再び回転させて、第2の分離を生じさせ、その後、非磁性細胞(画分II)を回収した。これらの陰性画分の解析を以下の表に示す。元の産物はフロー解析により60.13%のCD3+であった。
【表1】
【0057】
このプロセスにおいて、アフェレーシス産物は、mAhおよびインキュベーション後の非結合抗体のカクテルとともにインキュベートされ、共通の捕捉磁性流体であるラット抗マウスIgG1 FFの添加前に除去される必要がないことは注目に値する。これは、共通の捕捉材料が導入される前に、典型的に非結合mAhが除去されるので、おそらくこのサイズ範囲のナノ粒子に特有の非常に重要な利点である。これができるのは、これらのFFの高い結合能力およびこれらの大きさの結果である可能性が高い。本発明者らは、磁気細胞分離に使用されるこれらのコロイド状ナノ粒子の範囲(135~150nm)は、ミクロンサイズの粒子と比較して、いくらかの凝集素が添加される場合、非常にゆっくりと凝集することを見出した。
【0058】
(実施例2)循環腫瘍細胞[CTC]を含有するアフェレーシス産物からのCD3+細胞の負の選択。
現在、CAR-T細胞療法は、B細胞癌の治療において最も成功している。明らかに、このような患者からのアフェレーシス産物は、癌性B細胞を含有する可能性が非常に高い。しかし、CD3+細胞に対する負の選択において、このような腫瘍細胞は、適切なカクテル中の特異的mAhによって標的化される正常B細胞とともに除去される。現在、固形腫瘍に対してCAR-T技術を使用することにおいて並外れた努力がなされている。このような患者用のCAR-T細胞を製造するためのCD3+調製物を調製する際には、陰性画分を汚染する腫瘍細胞が残されないことを確実にすることが重要であろう。固形腫瘍は
上皮由来であり、循環腫瘍細胞[CTC]の単離および同定において多くの経験を有するため(Terstappenら、米国特許第7,332,288 B2号および同第6,645,731 B2号)、本発明者らは、抗上皮抗体をインキュベーションmAhカクテルに添加することが有利であり得ると推測した。この実施例では、抗上皮mAh(クローンVU1D9)をインキュベーションカクテルに添加した。
【0059】
CTCをパージするだけでなく非CD3+細胞を除去する本発明のシステムの能力を評価するために、CD3+細胞の負の選択では、結腸癌細胞株(Colo 205)を、上記のように調製したアフェレーシス産物にスパイクした。これらの細胞を、CellTracker(商標)Red CMTPX Dye(Thermo-Fisher)で蛍光染色した。転移性癌患者が典型的には少なくとも200CTC/mLの血液を有し得るという事実に基づいて、200個のColo 205細胞を、開始産物中の3×10個の全核細胞ごとにスパイクした。CD3陰性細胞以外のすべてを枯渇させるために最適化されたmAh専有mAhカクテルに、IgG1クラスの抗上皮細胞mAh(クローンVU1D9)を、0.5μg/mLのカクテル/細胞インキュベーション懸濁液で添加した。上記のように分離を行った。上清中のCD3+細胞に対する結果(収率/純度)は、上記のデータとほぼ同一であった。
【0060】
負の選択の間の上皮細胞の除去の有効性について試験するために、CTC検出試験を、負の選択において回収されたCD3+細胞の3×10個の細胞/mLで二重の5mLアリコートに対して行った。Colo 205細胞が除去されなかった場合、最大で10,000個の細胞[(200/3×10)×(3×10)×5=10,000]の腫瘍細胞が検出されることに留意されたい。しかし、実際には50~60%しか期待されない。二重の5mL試料に、それに結合していた8μg/mLの磁性流体、VU1D9抗EpcamおよびビオチンBSAを添加し、混合し、20分間インキュベートし、その後、0.8μg/mLのストレプトアビジンを添加し、混合し、5分間インキュベートした。(最後のステップの目的は、ストレプトアビジンが、非結合FFをColo 205細胞に結合したFFに結合させ、それによりそれらの磁気負荷を増加させ、磁気的に分離されるそれらの能力を有意に増大させることである。)四重極磁気セパレータでの分離後、上清を廃棄し、分離管を磁気装置から取り出し、これらの管の壁を2.0mLの緩衝液で慎重に洗い流して、その後の分離のために収集された細胞を管の側面から2mLの容量に移した。磁気的に収集された細胞を保持しながら容積を減少させるこのプロセスを、試料容積が200μLになるまで繰り返した。次いで、この試料をポリリジン被覆スライドガラス上にプレーティングし、蛍光顕微鏡によって細胞を計数した。対照スパイク実験では、スパイクされた細胞の55%を捕捉することができた。陰性CD3+細胞実験では、蛍光細胞は検出されなかった。CTC検出のための上述のプロトコルが試料の5細胞/mL程度しか検出できないことを考慮すると、本発明のmAhカクテルへの抗Epcamモノクローナルの添加は、これらの調製物からこのような細胞を除去するための明らかに有効な手段である。この用途は、CAR-T細胞を作製する際に、開始細胞が増殖され、CTCを増殖させる可能性が存在する可能性が最も高いので、非常に重要であり得る。
【0061】
前述の開示は、多くのステップを必要とするプロセスの自動化を単純化するために、重力および圧縮ばね力をどのように使用することができるかを示している。細胞収集チャンバ16と平面磁気アレイ55との嵌合は、相当な工学的努力およびかなり複雑な製造を必要とする様々な機械的/電子的要素によって行うことができる。ここで開示される概念は、その必要性を取り除く。本実施例は、この装置の概念の有用性を示すだけでなく、CAR-T細胞および高純度を必要とする他の細胞用途のための開始材料の調製へのそれらの適用も実証する。
【0062】
免疫磁気細胞分離のために本発明の装置を使用することに加えて、分離/処理チャンバ
の内容物に磁気勾配を断続的に付与するために使用されるこのような装置の能力は、細胞治療構築物の製造における別の重要な必要性のために有利であり得る。例えば、同時係属出願国際特許第2018/022694A1号において、ストレプトアビジン磁性流体ナノ粒子(Libertiら、米国特許第5,698,271号、米国特許第6,120,856号)などの多価共通捕捉剤で磁気的に標識された正に選択されたT細胞が、ビオチン化抗CD28抗体の単純な添加によってその後活性化および増殖され得ることが実証された。このようなナノ粒子が特異的抗体を介してCD4エピトープに連結される正に選択されたCD4+細胞の場合、活性化/増殖は、2つの抗体、すなわちビオチン化抗CD3およびビオチン化抗CD28の添加を必要とする。これらの後者の抗体が共通の捕捉単離細胞に添加されるステップにおいて、断続的な磁気勾配の適用が有意により大きな増殖をもたらすことが実証されている。したがって、本発明の装置は、その用途に理想的であり得る。精製された正に単離された細胞は、磁気勾配の非存在下で収集チャンバ内に懸濁され、活性化剤は、添加され、アクチュエータを介して収集チャンバと磁気アレイとを単に結合することによって、または結合もしくは結合解除を引き起こすために重力を用いる配向によって、内容物に適用される揺動および断続的な磁気勾配によって混合される。
【0063】
結論:上記の具体的な説明は、本発明を例示し説明することを意図しており、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲の文言上および等価の範囲によって定義される。
【0064】
多数の特許および非特許刊行物ならびに特許出願が前述の明細書に引用されており、これらの刊行物/出願のそれぞれの開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の特定の実施形態を上記に記載および/または例示したが、様々な他の実施形態が、前述の明細書から当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、記載および/または例示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、かなりの変更および修正が可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】