(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】眼内レンズデバイスで使用するためのシリコーンオイルターポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 77/44 20060101AFI20230111BHJP
A61F 2/16 20060101ALI20230111BHJP
C08G 77/24 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C08G77/44
A61F2/16
C08G77/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526104
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020059177
(87)【国際公開番号】W WO2021092222
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313005019
【氏名又は名称】レンスゲン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シルベストリーニ、トーマス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤクーブ、ケビン
【テーマコード(参考)】
4C097
4J246
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB08
4C097CC01
4C097CC12
4C097CC16
4C097DD01
4C097SA01
4J246AA03
4J246AB02
4J246BA02X
4J246BB021
4J246BB022
4J246BB02X
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4J246FA281
4J246FA291
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4J246GA01
4J246GA02
4J246GC23
4J246GC24
4J246HA12
(57)【要約】
下記式(I)によって表される非架橋ターポリマーの形態のハロシリコーンオイルが開示される:(I)少なくとも1つのブロック形成成分が、ハロゲン化、好ましくはフッ素化された置換基、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル又は3,3,3-トリフルオロプロピルを含む。いくつかの実装形態では、少なくとも1つのブロック形成成分は、ポリマーの屈折率を高めるフェニルなどのアリール基も含む。いくつかの実装形態では、ハロシリコーンオイルが眼内レンズに組み込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)によって表されるターポリマーであって、
【化1】
ポリマーは架橋されておらず、かつ
R
1及びR
12は、独立して、任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたアルケニルから選択され;
R
2、R
3、R
10及びR
11は、独立して、水素又は任意に置換されたアルキルから選択され;
R
4は、任意に置換されたハロアルキルであり;
R
5は、任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたハロアルキルであり;
R
6は、任意に置換されたアリール又は任意に置換されたアリール(アルキル)であり;
R
7は、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアリール(アルキル)、又は任意に置換されたアルキルであり;
R
8及びR
9は、独立して、任意に置換されたアルキルであり;
lは0.01~0.8のモル分率であり;
mは0.01~0.5のモル分率であり;
nは0.01~0.6のモル分率である、ターポリマー。
【請求項2】
R
1及びR
12はメチル又はビニルである、請求項1に記載のターポリマー。
【請求項3】
R
2、R
3、R
10及びR
11はメチル又はエチルである、請求項1又は2に記載のターポリマー。
【請求項4】
R
4はフルオロアルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項5】
R
4は2,2,2-トリフルオロエチル又は3,3,3-トリフルオロプロピルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項6】
R
5はメチル又はエチルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項7】
R
6はフェニルである、請求項1~6のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項8】
R
7はフェニル、メチル、又はエチルである、請求項1~7のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項9】
R
8及びR
9は独立してメチル又はエチルである、請求項1~8のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項10】
lは0.5を含む0.4~0.6である、請求項1~9のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項11】
mは0.1を含む0.05~0.15である、請求項1~10のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項12】
nは0.4を含む0.3~0.5である、請求項1~11のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項13】
度数可変眼内レンズであって、
第1の側部、
第2の側部、及び
第1の側部と第2の側部との間に延びてそれらを連結する周辺部を含み、
第1の側部、第2の側部、及び周辺部は、架橋されていないフルオロシリコーンターポリマー流体によって少なくとも部分的に充填された閉じた空洞を形成している、度数可変眼内レンズ。
【請求項14】
架橋されていないフルオロシリコーンターポリマー流体が請求項1~12のいずれか一項に記載のターポリマーである、請求項13に記載の度数可変眼内レンズ。
【請求項15】
架橋されていないフルオロシリコーンターポリマー流体の表面張力は、第1の側部及び第2の側部の両方の表面張力よりも少なくとも0.5mN/m大きい、請求項13又は14に記載の度数可変眼内レンズ。
【請求項16】
架橋されていないフルオロシリコーンターポリマー流体の表面張力は、第1の側部及び第2の側部の両方の表面張力よりも少なくとも1.0mN/m大きい、請求項13~15のいずれか一項に記載の度数可変眼内レンズ。
【請求項17】
度数可変眼内レンズであって、
第1の側部、
第2の側部、及び
第1の側部と第2の側部との間に延びてそれらを連結する周辺部を含み、
第1の側部、第2の側部、及び周辺部は、第1の側部の表面張力及び第2の側部の表面張力よりも少なくとも0.5mN/m大きい表面張力を有するハロシリコーン流体によって少なくとも部分的に充填された閉じた空洞を形成している、度数可変眼内レンズ。
【請求項18】
ハロシリコーン流体は架橋されていないフルオロシリコーン流体である、請求項17に記載の度数可変眼内レンズ。
【請求項19】
ハロシリコーン流体は、請求項1~12のいずれか一項に記載の架橋されていないフルオロシリコーン流体である、請求項17又は18に記載の度数可変眼内レンズ。
【請求項20】
調節性IOLであって、
ベースレンズ、
ハプティック、及び
度数可変レンズを含み、度数可変レンズは、第1の側部、第2の側部、第1の側部と第2の側部とを連結する周辺部、及び請求項1~12のいずれか一項に記載の流体を収容するように構成された閉じた空洞を含み、
度数可変レンズの第1の側部は、ハプティックの第1の縁から離れている、調節性IOL。
【請求項21】
ハプティックは、
第1の開放端部、
ベースレンズと結合された第2の端部、
水晶体嚢の赤道領域と係合するように構成された外周部、
内周部及び第1の縁と第2の縁との間の高さを含み、内周部は、空洞の周りに配置され、レンズを受容し保持するように構成されたレンズ保持部を有する、請求項20に記載の調節性IOL。
【請求項22】
度数可変レンズは、度数可変レンズの第1の側部がハプティックの第1の縁から離れた状態で前記空洞に嵌まるように構成されている、請求項21に記載の調節性IOL。
【請求項23】
ハプティックの少なくとも一部は、度数可変レンズの周辺部の材料に対し高コントラストの材料を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の調節性IOL。
【請求項24】
ハプティックの少なくとも一部は第1の色の表面を含み、度数可変レンズの周辺部は、第1の色の表面と視覚的に異なる第2の色の表面を含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の調節性IOL。
【請求項25】
複数の開放チャネルが、調節性IOLの外側から、ベースレンズと度数可変レンズの第2の側部との間の空間まで延びている、請求項20~24のいずれか一項に記載の調節性IOL。
【請求項26】
ハプティックは、ベースレンズに結合された第1の部分とハプティックに結合された第2の部分とを含む離隔された複数のラジアルヒンジを含み、ラジアルヒンジと度数可変レンズの第2の側部との間に隙間が提供されている、請求項20~25のいずれか一項に記載の調節性IOL。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してシリコーンオイル、より具体的には眼内レンズデバイスでの使用に適したシリコーンオイルに関する。
【背景技術】
【0002】
広範な眼科的状態に対処するための高度な介入が技術的進歩によって可能になるにつれて、眼の外科処置が増加している。このような処置は一般的に安全であることが証明され、患者のQOLを大幅に向上させる結果をもたらすため、患者の受け入れは過去20年間にわたって増加している。
【0003】
白内障手術は、最も一般的な手術の1つであり、世界中で1,600万件を超える白内障手術が行われている。平均寿命が延び続けるにつれて、この数字は上昇し続けると予想される。白内障は、典型的には、水晶体を眼から取り出し、眼内レンズ(intraocular lens)(「IOL」)をその場所に移植することによって治療される。従来のIOLデバイスは、通常、単焦点レンズを介して単一の距離でのみ視力矯正を提供するため、老視を矯正することができない。したがって、標準的なIOL移植を受けた患者は、もはや白内障からの曇りを経験しないが、焦点を近くから遠くに、遠くから近くに、及びその間の距離に変更することができず、矯正眼鏡を使用する必要がある。
【0004】
眼の屈折異常を矯正するための手術も非常に一般的になっており、中でもレーシックの人気が高まっており、1年に70万件を超える手術が行われている。屈折異常の高い罹患率と、この手術が比較的安全で有効であることを考慮すると、従来の眼鏡又はコンタクトレンズに比べてますます多くの人々がレーシック又は他の外科手術に向かうことが予想される。近視の治療におけるレーシックの成功にもかかわらず、従来のレーシック手術では治療することができない老視を矯正する効果的な外科的介入に対するニーズはまだ満たされていない。
【0005】
ほぼすべての白内障患者が老視にも苦しんでいるので、市場の要求はこれらの両方の状態の治療に集中している。患者の眼の白内障及び/又は老視に対処するために、IOLデバイスの様々な変更が導入されている。例えば、IOLデバイス用の多焦点レンズが、単焦点レンズに必要な追加の矯正レンズの必要性をなくすことを目的として、複数の距離で視力矯正を提供するために導入された。多焦点レンズは総じて、屈折力が変化する領域を有することで、複数の距離(例えば、近距離、中距離、及び遠距離)で視力を提供する。しかし、多焦点レンズの重大な欠点の1つは、特に夜間の光源の周りにグレアやハローの形で、視覚的な歪みが発生する可能性があることである。
【0006】
最近では、白内障手術で使用するために、調節性IOLデバイスも導入されている。調節性IOLデバイスは、眼の自然な調節メカニズムに応じて移動及び/又は形状を変化させるように構成された単焦点レンズを備えていることが多く、それによって広範囲の距離にわたって視力矯正を提供する。そのような調節性IOLデバイスはまた、中央レンズから突き出たハプティックシステムを備えていることがある。このようなハプティックシステムは、通常、眼の毛様体筋の収縮と弛緩に応答し、最終的に中央レンズの変化に影響を与えて、様々な視度の力を提供するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いくつかのIOLデバイスはまた、その中に流体を含むことがあり、その場合、前記流体の動きは、屈折力の変化をもたらすことができる。しかしながら、従来の流体は、IOLデバイスを構成するバルクポリマー材料(例えば、レンズ、ハプティックシステムなど)の望ましくない膨潤をもたらすことが分かっている。したがって、前記デバイスのバルクポリマー材料の膨潤を最小化又は排除する、IOLデバイスで使用するための改良された流体を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の実装形態では、眼内レンズ(IOL)デバイスが提供される。IOLデバイスは、第1の側部、第2の側部、及び第1の側部と第2の側部との間に延びてそれらを連結する周辺部を含む度数可変レンズを含み得る。第1の側部、第2の側部、及び周辺部は、架橋されていないフルオロシリコーンターポリマー流体によって少なくとも部分的に充填された閉じた空洞を形成する。
【0009】
特定の実施において、流体は式(I)のハロゲン化シリコーンオイルであり、
【0010】
【0011】
式中、R1及びR12は、独立して、ビニル(アルキル)を含む任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたアルケニルから選択され;R2、R3、R10及びR11のそれぞれは、独立して、水素又は任意に置換されたアルキルであり得;R4は、フルオロアルキルを含む任意に置換されたハロアルキルであり;R5は、フルオロアルキルを含む任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたハロアルキルであり;R6は、任意に置換されたアリール又は任意に置換されたアリール(アルキル)であり;R7は、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアリール(アルキル)、又は任意に置換されたアルキルであり;R8及びR9のそれぞれは、独立して、任意に置換されたアルキルであり;lは0.01~0.8のモル分率であり;mは0.01~0.5のモル分率であり;nは0.01~0.6のモル分率である。上記の式は、ブロックが、異なる種類の他のブロックとランダムに組み合わされた特定の種類の複数の-Si(Rx,Rx)O-シリコーンユニットで構成されているランダムブロックコポリマーを指す。l、m、及びnは、エンドブロッカーを除いたポリマー中のこれらの特定のシリコーンユニットの合計モル分率を示す。上記の構造は、ポリマーの構造そのものではなく、式である。ポリマーは、示されている順序のとおりの3つの大きなブロックのみからなるわけではない。
【0012】
いくつかの実装形態では、第1の側部、第2の側部、及び第1の側部と第2の側部との間に延び、それらを連結する周辺部を含み、第1の側部、第2の側部、及び周辺部が、ハロシリコーン流体又はレンズオイルによって少なくとも部分的に充填された閉じた空洞を形成している度数変更眼内レンズが存在する。いくつかの実装形態では、ハロシリコーン流体は、第1の側部の表面張力及び第2の側部の表面張力よりも少なくとも0.5mN/m大きい表面張力を有する。いくつかの実装形態では、ハロシリコーン流体は式(I)のものである。
【0013】
いくつかの実装形態では、ベースレンズ、ハプティック、及び度数可変レンズを含む調節性IOLが存在する。度数可変レンズは、第1の側部、第2の側部、第1の側部と第2の側部とを連結する周辺部、及び本明細書に開示されるようなシリコーンレンズオイルなどの流体を収容するように構成された閉じた空洞を含み得る。度数可変レンズは、ハプティックの第1の縁から離隔され得る。いくつかの実装形態では、ハプティックは、第1の開放端部、ベースレンズと結合された第2の端部、及び、水晶体嚢の赤道領域を含む水晶体嚢と係合するように構成された外周部を含む。ハプティックは、内周部及び第1の縁と第2の縁との間の高さをさらに含み得、内周部は、空洞の周りに配置され、レンズを受容し保持するように構成されたレンズ保持部を有する。
【0014】
記載された化合物及びデバイスの他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、好ましい実装形態を示しているが、限定ではなく例示として与えられていることを理解されたい。その趣旨から逸脱することなく多くの変更及び修正を行うことができ、本発明はそのようなすべての修正を含む。
【0015】
好ましい非限定的な実装形態は、以下の添付の図面を参照することにより、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1A及び1Bは、眼内レンズデバイスが水晶体嚢に埋め込まれている人の眼の特定の解剖学的特徴を示す断面図であり、IOLデバイスは、それぞれ、調節された(accommodated)状態及び調節されていない(unaccommodated)状態にある。
【
図2】
図1に示される調節性IOLデバイスの前面斜視図である。
【
図2A】
図2の調節性IOLデバイスの前面図である。
【
図2B】
図2の調節性IOLデバイスの分解図である。
【
図2C】断面2C-2Cに沿った
図2の調節性IOLデバイスの断面図である。
【
図2D】断面2D-2Dに沿った
図2の調節性IOLデバイスの断面図である。
【
図3】断面2C-2Cに沿った
図2の調節性IOLの度数可変レンズの断面図である。
【
図4】IOL内に含まれる流体の構成によって、シリコーンIOLの表面のたわみがどのように変化するかを示す光干渉断層撮影(OCT)画像である。
【
図5】本明細書の実施例E1によるターポリマーの2つの実施例のGPC結果の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態の詳細な説明
次に、レンズオイル及びレンズオイルを含むIOLの特定の非限定的な実装形態について説明する。本明細書に開示される任意の実施形態又は実装形態の特定の特徴及び態様は、本明細書に開示される任意の他の実施形態又は実装形態の特定の特徴及び態様と使用され及び/又は組み合わせられ得ることが理解されるべきである。また、そのような実施形態は一例であり、本開示の範囲内の、単に例示的な少数の実装形態にすぎないことも理解されたい。
【0018】
定義
以下の定義は、式(I)のターポリマー及び関連するターポリマーの記述に関連して使用される。ある基が「置換された」又は「任意に置換された」と記載されるときは常に、その基は、示された置換基のうちの1つ以上で置換され得る。置換基が示されていない場合、示された「任意に置換された」又は「置換された」基は、アルキル、アルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、ハロゲン、及びハロアルキルから個別にかつ独立して選択される1つ以上の基で置換され得ることを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和した(二重結合又は三重結合のない)炭化水素基を含む直鎖又は分岐炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る(本明細書に出現するときは常に、「1~20」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指す。例えば、「1~20個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個までの炭素原子で構成され得ることを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語が出現するときも対象となる)。アルキル基はまた、1~10個の炭素原子を有する中型のアルキルであり得る。アルキル基はまた、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有する低級アルキルであり得る。化合物のアルキル基は、「C1~C4アルキル」又は同様の呼び方で呼ばれ得る。例示の目的でのみ、「C1~C4アルキル」は、アルキル鎖に1~4個の炭素原子が存在することを示す。つまり、そのアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルから選択される。典型的なアルキル基には、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、及びヘキシルが含まれる。アルキル基は、置換又は非置換であり得る。
【0020】
「アルキレン基」は直鎖状の-CH2-連結基であり、末端の炭素原子を介して分子フラグメントを連結する結合を形成する。例として、限定するものではないが、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、及びブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)が挙げられる。アルキレン基は、アルキレン基の1つ以上の水素を「置換された」の定義の下にリストされた置換基で置き換えることによって置換することができる。アルキレン基は、1~6個の炭素又は1~4個の炭素を含む1~20個の炭素を有することができる。6個以下の炭素を有する基は、「低級」アルキレン基と称されることもある。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を有する直鎖又は分岐炭化水素鎖を指す。アルケニル基の例には、ビニル、ビニルメチル、及びエテニルが含まれる。アルケニル基は、非置換でも置換されていてもよい。本明細書で使用される場合、「ビニル(アルキル)」は、末端ビニル基が、低級アルキレン基を含むアルキレン基を介して置換基として結合されているアルケニル基を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、すべての環にわたって完全に非局在化されたパイ電子系を有する炭素環式の(全て炭素の)単環式又は多環式芳香環系(2つの炭素環が化学結合を共有する縮合環系を含む)を指す。アリール基の炭素原子の数は様々である。例えば、アリール基は、C6~C14アリール基、C6~C10アリール基、又はC6アリール基であり得る。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれるが、これらに限定されない。アリール基は、置換又は非置換であり得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1、2、3、又はそれ以上のヘテロ原子、すなわち、窒素、酸素、及び硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素を含む単環式又は多環式芳香族環系(完全に非局在化されたパイ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環の原子数は様々であり得る。例えば、ヘテロアリール基は、環に4~14個の原子、環に5~10個の原子、又は環に5~6個の原子を含むことができる。さらに、「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つのアリール環及び少なくとも1つのヘテロアリール環、又は少なくとも2つのヘテロアリール環などの2つの環が、少なくとも1つの化学結合を共有する縮合環系を含む。ヘテロアリール環の例には、限定するものではないが、本明細書に記載されるもの及び以下が含まれる:フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3-チアゾール、1,2,4-チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソキサゾール、ベンゾイソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、及びトリアジン。ヘテロアリール基は、置換又は非置換であり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」及び「アリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン及びアリール基は、置換又は非置換であり得る。例には、限定するものではないが、ベンジル、キシリル、トリル、2-フェニルアルキル、3-フェニルアルキル及びナフチルアルキルが含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアラルキル」及び「ヘテロアリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキルの低級アルキレン及びヘテロアリール基は、置換又は非置換であり得る。例には、限定するものではないが、2-チエニルアルキル、3-チエニルアルキル、フリルアルキル、チエニルアルキル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソキサゾリルアルキル、イミダゾリルアルキル、及びそれらのベンゾ縮合アナログが含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」は、1つ以上の水素原子がハロゲンで置き換えられているアルキル基(例えば、モノハロアルキル、ジハロアルキル、及びトリハロアルキル)を指す。そのような基には、限定するものではないが、クロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロ-フルオロアルキル、クロロ-ジフルオロアルキル、及び2-フルオロイソブチルが含まれる。ハロアルキルは、置換又は非置換であり得る。本明細書で使用される「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素などの、元素の周期表の7族の放射線安定性原子のいずれか1つを意味する。
【0027】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が明示されない場合、各中心は、独立して、R配置又はS配置又はそれらの混合物であり得ることが理解される。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋か、鏡像異性的に濃縮されているか、ラセミ混合物か、ジアステレオマー的に純粋か、ジアステレオマー的に濃縮されているか、又は立体異性体混合物であり得る。さらに、E又はZとして定義することができる幾何異性体を生成する1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載の任意の化合物において、各二重結合は、独立して、E又はZそれらの混合物であり得ることが理解される。
【0028】
植え込まれた眼内レンズデバイス
図1A~1Bは、人間の眼の簡略化された概略図、及びその水晶体嚢に植え込まれた眼内レンズ(IOL)デバイスを示す。
図1A~1Bに示されるように、人間の眼100は、流体で満たされた3つの房、すなわち、前眼房102、後眼房104、及び硝子体眼房106を含む。前眼房102は、一般に、角膜108と虹彩110との間の領域に相当し、一方、後眼房104は、一般に、虹彩110、水晶体嚢112、及び水晶体嚢112に結合した小帯線維114によって境界が定められた領域に相当する。前眼房及び後眼房102、104は、房水、すなわち、瞳孔116(虹彩110によって画定される開口部)を通ってそれらの間を流れる流体を包含する。光は瞳孔116を通って眼100に入り、視軸A-Aに沿って移動し、最終的に網膜118に当たって視力を生み出す。眼100に入る光の量は、虹彩110によって調節される瞳孔116の大きさに直接関係している。
【0029】
硝子体眼房106は、一般に、水晶体嚢112と網膜118との間の領域に相当する。硝子体眼房106は、房水よりも粘性のある透明で無色のゼラチン状の塊である硝子体液を包含する。硝子体液の体積の多くは水であるが、細胞、塩、糖、ビトロシン、II型コラーゲン繊維のグリコサミノグリカンヒアルロン酸とのネットワーク、及びタンパク質も含まれている。好ましくは、硝子体は純水の2~4倍の粘度を有し、これがゼラチン状の粘稠度を付与している。硝子体液はまた、1.336の屈折率を有し得る。
【0030】
水晶体嚢112は、通常、眼の天然の水晶体(図示略)を収容する。天然の水晶体は、毛様体筋120及び小帯線維114を介した張力下で維持される弾性のある透明な結晶性の膜様構造である。結果として、天然の水晶体は、より丸みのある構成を有する傾向があり、これは、眼100が近距離で焦点を合わせるためにとらなければならない形状である。天然の水晶体が形を変えると、眼の焦点距離が変わる。したがって、眼の自然な調節メカニズムは、上記の水晶体の形状の変化によって反映される。
【0031】
眼の白内障及び/又は老視などの屈折異常を矯正するために、水晶体嚢112に収容されている天然の水晶体を取り出して、IOLデバイス122と交換することがある。IOLデバイス122の植込みは、まず水晶体嚢112内に収容された天然の水晶体を、水晶体超音波乳化吸引術などの標準的な外科的処置を使用して、小さな切開部を通して取り除くことによって達成され得る。天然の水晶体を取り除いた後、IOLデバイス122が、続いて上記小さな切開部を通して水晶体嚢112に導入され得る。
【0032】
図1A~1Bの非限定的な実施形態に示されるように、IOLデバイス122は、眼100の後眼房104に面する前方領域124を有するものとして特徴付けられ得る。IOLデバイス122の前方領域124は、光軸A-Aを中心とする屈折光学要素(図示略)を含み得る。IOLデバイス122はまた、前方領域124に結合された後方領域126を有するものとして特徴付けられ得る。ここで、後方領域126は眼100の硝子体眼房106に面する。IOLデバイス122は、前方及び後方領域124、126間に画定された空洞領域128をさらに有することができ、この中に流体(例えば、レンズオイル)が配置され得る。いくつかの態様では、流体は、水晶体嚢112にIOLデバイス122を植え込んだ後、IOLデバイス122のセルフシールバルブを介して空洞領域128に導入され得る。IOLデバイス122内に含まれる流体の量は、本開示を読めば当業者には理解されるように、各患者の水晶体嚢112のサイズに従って調整され得る。好ましい態様では、空洞領域128内の流体の体積は、IOLデバイス122の周辺領域130が小帯線維114及び毛様体筋120と係合することを可能にするのに十分であり得る。
【0033】
天然の水晶体と同様に、IOLデバイス122は、眼100の調節機構に応答してその形状を変化させる。例えば、
図1Aは、眼100が近くの物体に焦点を合わせている場合のように、一般的な調節された状態にある眼100を示す。そのような調節された状態では、毛様体筋120は収縮し、前方に向かって動く。毛様体筋120の収縮は、小帯線維114に加えられる応力を低減し、これは、次に、小帯線維114によって水晶体嚢112に加えられる応力を低減する。結果として、IOLデバイス122は、弾性回復を受け、より丸みを帯びた両凸形状を達成し得る。
【0034】
図1Bは、眼100が離れたところに焦点を合わせている場合のように、一般的な調節されていない状態にある眼100を示す。このような調節されていない状態では、毛様体筋120が弛緩することによりその開口部の直径が大きくなり、小帯線維114が光軸A-Aから引き離される。これにより、水晶体嚢112の周辺部で小帯線維114が放射状に引っ張られる。これにより、IOLデバイス122は、調節された状態と比較して、より平坦な形状/ジオメトリをとるようになる。水晶体嚢112、及びその中に配置されたIOLデバイス122のより平坦な形状/ジオメトリは、瞳孔116に入る光を曲げる、又は屈折させる能力の低下に対応する。
【0035】
眼内レンズデバイス
患者の眼の水晶体嚢への植込みに適した眼内レンズ(IOL)デバイスには、2015年11月17日に発行された米国特許第9,186,244号;2013年2月28日に公開された米国特許出願公開第2013/0053954号;2014年2月4日に公開された米国特許出願公開第2016/0030161号;2016年5月2日に出願された米国特許出願第15/144,544号;2016年5月2日に出願された米国特許出願第15/144,568号;2016年3月31日に公開された国際公開第2016/049059号、及び2019年12月12日に公開された国際公開第2019/236908号に記載されたものが含まれ得る。これらの開示は、参照のためにその全体が本明細書に組み込まれる。シリコーンオイルは、前述の参考特許文献に記載されているIOLデバイスに組み込まれ得ることが理解される。例えば、本明細書に記載のシリコーンオイルは、これらの参考特許文献のいずれかに記載されている流体の代わりに使用することができる。
【0036】
特定の好ましい実施形態では、本明細書に記載のシリコーンオイルは、以下に記載され、
図2~2Dに示されるように、IOLデバイスに組み込まれ得る。
図2~2Dは、調節性IOLデバイス150の変形例を示す。調節性IOLデバイス150は、ベース部材151及び度数可変レンズ153を含む。度数可変レンズ153は、ベース部材151と度数可変レンズ153とが別々に、例えば、順次送達され得るように、ベース部材151から分離されている。ベース部材151は、度数可変レンズ153の前に送達することができる。度数可変レンズ153は、その後、ベース部材151の中に送達することができ、ベース部材151が眼の水晶体嚢の中にあるときに、ベース部材151内で展開することができる。この順次送達により、ベース部材151及び度数可変レンズ153は、より複雑な構造を有することが可能になり、より高い機能を提供し、それでもなお、小さな切開部を通して送達可能である。
【0037】
ベース部材151は、ベースレンズ163及びハプティック165を含むことができる。ベースレンズ163は、存在する場合、調節性IOLデバイス150の焦点を合わせる力の一部を提供する。ハプティック165は、水晶体嚢の赤道領域内に延び、度数可変レンズ153の取り付け位置を確立する。一実施形態では、ベースレンズ163及びハプティック165は、協働して水晶体嚢を、嚢切開前の水晶体54の形状及びサイズと類似した拡張状態に維持する。このように、ベース部材151は、小さな切開部を通して送達するように設計されている従来の非高機能なIOLと比較して大きい。
【0038】
度数可変レンズ153は、複数の光学部、例えば、第1の側部400における膜と、第2の側部404におけるレンズとを含む。光学流体を、第1の側部400と第2の側部404との間に配置することができる。度数可変レンズ153は、第1の側部400及び第2の側部404における光学部と一緒に光学流体を含む周辺部408を含む。光学流体には多くの利点があり、これには、圧縮力を、度数可変レンズ153の周辺部408から、制御された方法で変形可能な光学面に伝達して、調節の範囲全体にわたって光学的に許容可能な面を提供することが含まれる。度数可変レンズ153の構造は、より高い機能を提供するために、従来の非高機能なIOLよりもはるかに複雑である。
【0039】
眼に挿入する前にベース部材151と度数可変レンズ153を分離することにより、ユニットとして同時に挿入されるすべての光学部よりも小さい切開サイズが可能になる。ベース部材151及び度数可変レンズ153は、それらがアセンブリに組み合わされているときよりも分離されているときの方が、より大きく圧縮することができる。さらに、度数可変レンズ153とは別にベース部材151を形成することにより、ベース部材151を、必ずしも調節性でなくてもよい他の10Lデバイスで使用することが可能になる。
【0040】
図2Aは、調節性IOLデバイス150が、組み立てられたときに、1つ又は複数の開放チャネル155を有することができることを示している。開放チャネル155は、ベース部材151の後側と度数可変レンズ153の前側との間で前後方向に延びる。図示された実施形態には、12個の開放チャネル155がある。開放チャネル155はより多くても少なくてもよく、例えば、少なくとも2個、少なくとも4個、少なくとも6個、少なくとも8個、又は少なくとも10個の開放チャネル155とすることができる。好ましくは、IOLデバイス150の光軸Aに対して対称に配置された偶数のチャネルが存在する。開放チャネル155のそれぞれは、部分的に、ベース部材151の内周部144によって、及び度数可変レンズ153の外周又は外周部408によって画定される。開放チャネル155はそれぞれ、ベース部材151の隣接する圧縮アーム180の間に配置することができ、これについては以下でさらに説明する。開放チャネル155は、流体が水晶体嚢内を循環することを可能にし、例えば、デバイス150の前側と後側との間を流れ、調節性IOLデバイス150の光学ゾーンの外側の領域から光学ゾーン内に流れることを可能にする。この流体の流れは、調節性IOLデバイス150が、水晶体嚢とデバイス150の構成要素の表面との間に加圧ゾーンを作成する傾向を低下させることができる。
【0041】
図2Cは、調節性IOLデバイス150が組み立てられたときに1つ又は複数の開放チャネル157を有することができ、それはまた、調節性IOLデバイス150の外側から、ベース部材151と度数可変レンズ153との間に配置された空間161への流れを提供できることを示す。
図2Cは、開放チャネル157を通して提供され得る流体の流れ158を示す。以下でさらに述べるように、チャネル157は、流体の流れを可能にするが、空間161への細胞の移動を制限するように構成される。チャネル155は、前後方向に提供されて、
図2及び2Aに示されるように、調節性IOLデバイス150の前側と後側との間の流れ158を提供又は増強する。複数の開放チャネル157は、流体が、調節性IOLデバイス150の外側から、存在する場合、ベースレンズ163と、度数可変レンズ153の第2の側部404との間の位置に流れることを可能にする。空間161を開放して、調節性IOLデバイス150の外側からベースレンズ163と第2の側部404との間の位置に流体を流すことにより、光軸OAに沿う方向ではなく、光軸OAを横切る方向への力の適用が、度数変更の主な要因となる。赤道領域74からベース部材151を通した度数可変レンズ153への力の伝達は、均一に分散された半径方向及び周方向の圧縮時に調整を引き起こすような特有の構成とすることができる。
【0042】
図2Bは、ベース部材151が、度数可変レンズ153を受容し、保持するように構成された空洞160を有することを示している。空洞160は、ベースレンズ163と、ベース部材151の反対側の端部にある開口136との間に画定され、調節性IOLデバイス150の周囲に配置されたハプティック165によって囲まれている。より具体的には、ベースレンズ163は、空洞160に面する前面164を含む。前面164は、空洞160を部分的に境界付けている。ベースレンズ163はまた、水晶体嚢の後部の前側に面するとともにそれに接触することができる後面123を有する。いくつかの実施形態では、前面164の曲率は、後面123の曲率よりも小さくすることができる。例えば、前面164の曲率は、約15mm
-1以下であり得る。前面164の湾曲は、0より大きく約12mm
-1以下、0より大きく約10mm
-1以下であり、0より大きく約7mm
-1以下、0より大きく約5mm
-1以下、0より大きく約3mm
-1以下、又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲/サブ範囲内の任意の値とすることができる。別の例として、ベースレンズ163は、実質的に平面の前面164を有する平凸レンズとして構成することができる。そのような実施形態では、前面164の曲率は、0又は実質的に0と同等(例えば、0.1mm
-1以下)とすることができる。また、ハプティック165は、第1の端部166と、第1の端部166の反対側にある第2の端部132とを有する。第1の端部166は、ベース部材151が水晶体嚢に配置されたときに前方にあるハプティック165の端部である。第2の端部132は、166ベース部材151が水晶体嚢に配置されたときに第1の端部の後方にあるハプティック165の端部である。空洞160は、ハプティック165の第1の縁152と第2の縁との間に配置される。以下でさらに述べるように、ハプティック165は、空洞160の周りに配置された前方ゾーン及び後方ゾーンを有し、これらは度数可変レンズ153の保持及び圧縮のために、及びベース部材151の全体的な圧縮性を高めるために別々に構成される。
【0043】
図2は、度数可変レンズ153が空洞160に挿入されていることを示している。本明細書で述べられるように、この状態は、切開のサイズを縮小又は最小化するために、眼において達成することができる。度数可変レンズ153の第1の側部400は、ハプティック165のその第1の端部166に形成された開口部136の後方にある。ベース部材151のハプティック165の構成は、水晶体嚢の前部の後側が、水晶体嚢の後部から離れたままであることを確実にする。水晶体嚢の2つの層の互いの間隔は、これらの構造間の、調節性の幅の潜在力を制限し又は低下させるであろう線維形成を低減、最小化、又は排除する。ハプティック165の外周部の第1の縁と第2の縁との間の高さ148は、水晶体嚢を開いた構成で保持するように構成される。例えば、ハプティック165の高さ148は、約2mm以上であり得る。様々な実施形態において、ハプティック165の高さ148は、約2.0mm以上及び約3.5mm以下、約2.2mm以上及び約3.3mm以下、約2.5mm以上及び約3.0mm以下、又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲/サブ範囲内の任意の高さであり得る。高さ148及び外周部140の外形は、水晶体嚢の前部を水晶体嚢の後部の前方に保つように構成される。これにより、水晶体嚢の線維形成又は「シュリンクラップ」を軽減、排除、又は最小限に抑えることができる。外周部140の高さ148及び外形は、水晶体嚢の前部を度数可変レンズ153の前方に保つように構成される。これは、以下でさらに述べるように、水晶体嚢が調節性IOLデバイス150の調節性能に干渉するのを防ぐことができる。様々な実施形態において、ハプティック165は、度数可変レンズの植え込み中のハプティックの視認性を高めるために、不透明染料(例えば、紺色染料、藍染料、紫染料)を含むことができる。
【0044】
開口部136から度数可変レンズ153の第1の側部400までの距離、及びハプティック165の第1の端部166の構成は、水晶体嚢の前部が度数可変レンズ153から離れたままであることを提供する。水晶体嚢の前部が第1の側部400と接触していた場合、度数可変レンズ153の調節効果は減少するであろう。様々な実施形態において、開口部136から度数可変レンズ153の第1の側部400までの距離は、約0.6mm以上及び約0.75mm以下であり得る。様々な実施形態において、開口部136から度数可変レンズ153の第1の側部400までの距離は、ハプティック165の軸方向高さ148の約0.01%からハプティック165の軸方向高さ148の約37%までであり得る。度数可変レンズ153を、開口部136から、ハプティック165の軸方向高さ148の約0.01%からハプティック165の軸方向高さ148の約37%の距離に配置することにより、網膜剥離及び水晶体嚢を充填した結果としてのPCOのリスクを有利に低減することができる。ベース部材151は、単独で、及び本明細書に開示される様々な第2のレンズと組み合わせて、安定した有効水晶体位置(ELP)を得、及び/又は天然の水晶体嚢の容積を充填又は維持する結果としての植込み後の傾斜や回転の問題を低減することができる。天然の水晶体嚢の容積を充填又は維持することはまた、植込み後の安定した屈折及び/又は硝子体網膜張力の低下をもたらし得る。特定の理論に帰することなく、天然の水晶体嚢の容積を実質的に維持することによって、硝子体が前方に移動することが防止されると考えられる。度数可変レンズ153を、開口部136から、ハプティック165の軸方向高さ148の約0.01%からハプティック165の軸方向高さ148の約37%の距離に配置することにより、手術後の炎症を有利に低減することができる。
【0045】
調節性IOLデバイス150は、度数可変レンズ153を空洞160内の挿入位置に維持するように構成されたレンズ保持部164を含む。レンズ保持部164は、開口部136からハプティック165の空洞160内に離隔されている。レンズ保持部164は、いくつかの図に関連して以下でより詳細に述べるように、複数の部材を含むことができる。
【0046】
ベース部材151の全体的な構造は上述されている。
図2Bは、ベース部材151の様々な追加の有利な態様を示している。
図2Bは、ベースレンズ163及びハプティック165が別々に形成され、次いで組み立てられてベース部材151を形成できることを示している。他の実施形態では、ベース部材151は、モノリシック構造を有する単一の成形部品である。ハプティック165は、上述したように、水晶体嚢の赤道領域74と接触するように構成された外周部140、及び外周部140の内側に配置された内周部144を含むことができる。様々な実装形態では、ハプティック165はまた、内周部144の半径方向内側に配置されたレンズインターフェース部、一例ではリング292を含むことができる。リング292は、外周部140の赤道接触セグメント141の後方に配置することができる。リング292は、ハプティック165の第2の端部132の後方に配置することができる。リング292は、ハプティック165の第2の縁156の後方に配置することができる。外周部140の赤道接触セグメント141に対するリング292の位置は、ベース部材151が水晶体嚢に配置されるときに、水晶体嚢の後部の前側と直接接触するように、ベース部材151の後面を配置するように選択することができる。リング292から、又はそれに結合された光軸に沿ったベースレンズ163からの距離は、既知であり、かつ制御することができ、以下で述べるように、度数可変レンズ153又は別の非調節性レンズの選択における要因となり得る。
【0047】
図2Bは、ベースレンズ163が、リング292(又は他のレンズインターフェース部)のところでハプティック165と結合され得ることを示している。ベースレンズ163は、ハプティックインターフェース部又は周辺ハプティックインターフェース部の一例であるハプティックインターフェース面320を有することができ、レンズインターフェース面又はレンズインターフェース部332は、リング292を有することができる。図示の実施形態では、レンズインターフェース面又はレンズインターフェース部332は、リング292の内周部の周りに配置された環状領域を含む。レンズインターフェース面又はレンズインターフェース部332は、リング292の後面を含むことができる。図示の実施形態では、ベースレンズ163のハプティックインターフェース面320は、ベースレンズ163の周囲に配置された環状スカート321を含むことができる。一実施形態では、ハプティックインターフェース面320は完全な環とすることができる。他の実施形態では、ハプティックインターフェース面320は、ベースレンズ163の周囲に配置された複数の離隔した部材を含むことができる。ベースレンズ163は、面又は部320、332のところで、接着剤の使用、溶接を含む任意の適切な手段によって、又は締まりばめポスト及び凹み又は互いにスナップすることができる特徴などの連結コネクタによって(接着剤、及び、溶接に関連する応力集中又は材料の変形を排除する)、ハプティック165と結合することができる。
【0048】
別の言い方をすれば、眼内レンズ150のベース部材151は、ベース部材ハプティック165とベースレンズ163との結合及び固定を含む、以下に説明する方法を使用して組み立てることができる。ベース部材ハプティック165は、第1の開放端部166の反対側にある第2の端部132にレンズインターフェース部332を含むことができる。レンズインターフェース部332は、リング292を含むことができる。ベースレンズ163は、中央の光学部323及びハプティックインターフェース部320を有することができる。ベースレンズ163は、周辺部325を有することができ、これは、円形であり得るか、又は中央光学部323の、その光軸とは反対に面する円筒形表面であり得、レンズインターフェース部332のリング292に挿入されるようなサイズである。ハプティックインターフェース部320は、環状スカート321を有することができる。
【0049】
ベースレンズ151のハプティックインターフェース部320は、ベース部材ハプティック165のレンズインターフェース部332と結合することができる。ベースレンズ163の円筒形又は円形の周辺部325は、環状スカート321の前面がリング292の後面335に結合されるように、ベース部材ハプティック165のレンズインターフェース部332のリング292に挿入することができる。いくつかの態様では、レンズインターフェース部332は、不透明構造(例えば、青色の構造)を含むことができ、ベースレンズ163は、ハプティックインターフェース部320をレンズインターフェース部332と結合することが、ベースレンズ163とベース部材ハプティック165との間のインターフェースまたは境界で光透過性から不透明に移行することを含むような光透過性の構造を含むことができる。
【0050】
いくつかの態様では、ハプティックインターフェース部320は、中央光学部323の半径方向外側に配置された環状部材、例えば、スカート321を含み、レンズインターフェース部332は、ベース部材ハプティック165の第2の端部132に配置された環状構造、例えば、リング292を含む。ここで、ハプティックインターフェース部320をレンズインターフェース部332に結合することは、環状部材、例えば、スカート321の前側を、環状構造、例えば、リング292の後側335に当てて配置することを含む。いくつかの態様では、ハプティックインターフェース部320は周辺部325を含み、レンズインターフェース部332は、ハプティックインターフェース部320をレンズインターフェース部332に結合することが、ベース部材ハプティック165の光学的対向面333に沿って中央光学部323の周辺部325を前進させることを含むように、ベースレンズ163の光軸OAに面する表面333に面する光軸を含む。
【0051】
いくつかの態様では、ハプティックインターフェース部320は、ベースレンズ163の光軸OAを横切るように配置された第1の横方向表面、例えば、スカート321の前面と、第1の環状表面、例えば、光軸OAの周りに配置された周辺部325とを含む。レンズインターフェース部332は、第2の横方向表面335(例えば、リング292の後面)及び第2の環状表面、例えば、光学的対向面333(例えば、ベースレンズ163が取り付けられている空間の中心に面する部分)を含むことができる。ベースレンズ163のハプティックインターフェース部320をベース部材のハプティック165のレンズインターフェース部332と結合することは、第1の環状表面325を第2の環状表面333内に少なくとも部分的に配置すること、及び第1の横方向表面321を第2の横方向表面335に隣接させて配置することを含むことができる。
【0052】
ベースレンズ151は、レンズインターフェース部332及びハプティックインターフェース部320のところでベース部材ハプティック165に固定することができる。レンズインターフェース部332及びハプティックインターフェース部320を固定することは、環状スカート321の前面とリング292の後面335との間に接着剤を塗布することを含むことができる。レンズインターフェース部332及びハプティックインターフェース部320を固定することは、リング292の内面333とベースレンズ163の外面325との間に接着剤を塗布することを含むことができる。レンズインターフェース部332をハプティックインターフェース部320に固定するために使用される接着剤と環状スカート321をリング292に固定するために使用される接着剤は、ベースレンズ151、ハプティック165及び/又は眼内レンズ150の他の構成要素を形成するために使用されるのと同じ材料とすることができ、これは本明細書に記載の材料を含むことができる。接着剤は、円形の周辺部325と環状スカート321が接するところに塗布することができ、その結果、トラフが形成され得る。トラフは、スカート321と周辺部325が接する場所の周りに配置された領域を含むことができる。スカート321の前面は、その自由端が周辺部325に接合された端部よりも高い位置にあるように傾斜させることができる。この構造は、接着剤がベースレンズ163の光学面から離れて維持されるように、組み立て中に接着剤を封じ込めるのに役立つ。ベース部材ハプティック165は、ベースレンズ163とは異なる材料で作ることができるが、それにもかかわらず、ベース部材ハプティック165及びベースレンズ151を固定するために使用される接着剤は、2つの異なる材料を接合又は接着することができる。
【0053】
ハプティック165とは別にベースレンズ163を形成することにより、ベース部材151は、特定の目的に適合された材料を使用することから利益を得ることができる。ベースレンズ163は、高い光学的品質、高い圧縮性、低い摩擦係数、後嚢混濁を妨げるための有益な組織係合特性、又はこれらの材料特性の任意の組み合わせを有する材料から形成することができる。一実施形態では、ベースレンズ163はシリコーンで形成されるが、使用できる他の材料には、アクリル(例えば、疎水性及び親水性アクリル)が含まれる。適切なシリコーン材料は、ハプティック165については医療グレードのシリコーンを含む生体適合性のものであり、好ましくは、硬化材料は、約37℃の水、生理食塩水、又は眼液によって抽出可能な化合物を、少量、無視できる程の微量、又は医学的に重要でない量で含む。特定の適切なシリコーン材料は、硬化時に、100psi(約7×105Pa)未満、又は、5~50psi(約3.5×104~3.5×105Pa)、10~40psi(約7×104~3×105Pa)、及び10~35psi(約7×104~205×105Paを含む50psi(約3.5×105Pa)未満、のヤング率を有する。適切なシリコーン材料の例には、限定するものではないが、NuSil製のMED4805、MED4810、MED4820、MED4830、MED5820、及びMED5830が含まれる。適切なシリコーン材料の光学部の例には、限定するものではないが、MED6215、MED6210、MED6219、MED6233、及びMED6820が含まれる。光学部又は他のレンズ部品の一部又は全部を形成するための別の適切なシリコーン材料は、PCT国際公開第2016/049059号に開示されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。適切な光学部材料はまた、シリコーン成分とブレンド又はそれに結合され得るUV発色団又はUV吸収基を含み得る。いくつかのそのような材料では、UV発色団又はUV吸収基は、約37℃の水、生理食塩水、又は眼液によって、硬化したレンズ材料から実質的に抽出できない。アクリルを含むベースレンズ163の実施形態は、成形法を使用して部分的に製造され、部分的に機械加工され得る。ハプティック165は、ベースレンズ163の材料と同じ又は異なる材料で作ることができる。ハプティック165は、選択的に剛性又は非圧縮性であるように選択された材料で作ることができる。以下でさらに説明するように、ハプティック165は、好ましくは、半径方向外向きの位置から半径方向内向きの位置に高いパーセンテージの力を伝達することで、度数可変レンズ153に視力の単位において大きな調節力をもたらす圧縮アームを含む。ハプティック165の材料はまた、円周の圧縮、低い摩擦係数、多数のサイクルにわたってバルク特性を維持すること、及び他の特性の優先度を考慮に入れることができる。ハプティック165に適した材料の1つはシリコーンであり、限定するものではないが、ベースレンズ用に上記に挙げたシリコーン材料が含まれるが、他の材料も使用することができる。
【0054】
以下でさらに述べられるいくつかの変形例では、ベースレンズ163は省略される。ベース部材151は、光軸の周りに配置された水晶体嚢の環状領域に直接接触することができるリング292を含むことができる。リング292は、赤道接触セグメント141に同じ距離を提供するためにさらに後方に延びることができ、又は度数可変レンズ153の全体的な光学設計が選択されるとき、それを考慮して距離を変えることができる。
【0055】
ハプティック165は、空洞160内に配置されたレンズの位置を設定するように構成される。ハプティック165は、度数可変レンズ153の第1の側部400及び第2の側部404の一方又は両方の前後位置の1つ以上を設定するように構成することができる。ハプティック165は、調節性IOLデバイス150の光軸OAに対して、度数可変レンズ153の第1の側部400及び第2の側部404の一方又は両方の向きを設定するように構成することができる。
【0056】
ハプティック165は、調節性IOLデバイス150の光軸OAに沿って度数可変レンズ153の位置を設定するために、度数可変レンズ153と嵌合する表面又は複数の表面を有することができる。
図2Dは、度数可変レンズ153の第2の側部404が空洞160内に配置され、度数可変レンズ153の第2の側部404上の周辺部408の一部が複数の支持面170上に乗るようにすることができることを示す。支持面170は、圧縮アーム180の後端から半径方向内側に延びることができる。各支持面170は、対応する圧縮アーム180の後端と結合された外側端部172と、外側端部172の半径方向内側に配置された内側端部174とを有することができる(
図6及び6Aを参照)。
【0057】
支持面170の円周方向の広がりは、複数の離隔位置のそれぞれで同じにすることができる。円周方向の広がりは、約25度の弧、約20度の弧、約15度の弧、約10度の弧、又は約10~30度の範囲の弧、又は約15~20度の範囲の弧に及び得る。支持面170の半径方向の広がりは、度数可変レンズ153の第2の側部404の直径の約2~20%であり得る。他の実施形態では、支持面170の半径方向の広がりは、度数可変レンズ153の第2の側部404の直径の約4~15%、6~10%、又は約8%であり得る。
【0058】
好ましくは、支持面170のうちの少なくとも3つは、互いに同一平面上にある。好ましくは、支持面170のうちの少なくとも3つは、調節性IOLデバイス150の光軸OAに対して実質的に横断方向、例えば、光軸OAに対する垂直から約2~5度以内にある共通の平面内に整列される。一実施形態では、3つ以上、例えば、すべての支持面170が、光軸OAに垂直な平面内に整列している。場合によっては、支持面170は、度数可変レンズ153の第2の側部404に接触し、そのような接触時に、度数可変レンズ153の光軸は、ベースレンズ163の光軸からのずれが25度未満になるように構成される。支持面170は、度数可変レンズ153の第2の側部404に接触し、そのような接触時に、度数可変レンズ153の光軸は、ベースレンズ163の光軸からのずれが15未満、10度未満、5度未満、又は3度未満になるように構成することができる。様々な実施形態において、ハプティック165及び/又はベースレンズ163の縁は、異常光視症の発生を低減又は軽減するために丸くすることができる。例えば、光路内にある1つ以上の縁を、鋭い縁ではなく丸みを帯びた縁として構成することで、異常光視症を低減又は軽減することができる。別の例として、レンズ保持部164の縁、赤道接触セグメント141の縁、1つ以上の支持面170の縁は、異常光視症を低減又は軽減するために、鋭い縁ではなく丸みを帯びた縁として少なくとも部分的に構成することができる。一般性を失うことなく、IOLデバイス150の幾何学的中心の周りの直径7mmの円形領域内の複数の縁は、異常光視症を低減又は軽減するために、鋭い縁ではなく丸い縁として構成することができる。
【0059】
ベース部材151は、6つの支持面170を有するように示されているが、支持面170は6つより少なくても多くてもよい。様々な実施形態において、度数可変レンズ153を配置して度数可変レンズ153をベース部材151内に位置決めするための、4つ、3つ、又は2つの支持面170が存在する。
【0060】
図2A~2D及び
図3は、度数可変レンズ153を詳細に示す。度数可変レンズ153は、可撓性膜402、光学部406、及び周方向縁部と呼ばれることもある外周縁409を含む。外周縁409は、可撓性膜402を光学部406に結合する。外周縁409から膜カプラー410が配置されて、可撓性膜402を外周縁409と結合する。同様に、外周縁409から光学部カプラー411が配置されて、光学部カプラー411を外周縁409と結合する。好ましくは、光学部カプラー411は、光学部406を可撓性膜402に向けて配置するように、可撓性膜402に向けて角度が付けられている。
【0061】
度数可変レンズ153の構造は、従来の細長く薄いハプティック構造を必要としないことによって単純化されている。むしろ、周辺部408は環として形成される。軸対称構造は、いくつかの実施形態において、光学部406にシリンダパワー(cylinder power)がなくても、度数可変レンズ153を空洞160内の任意の回転位置に配置することを可能にする。ベース部材151内の度数可変レンズ153の任意の回転位置は、均一な圧縮を提供し、そのような圧縮は、主に可撓性膜402の形状を変えることによって、均一な度数変更を提供する。度数可変レンズ153は、1つの膜を備えた流体充填レンズを提供する。光学部406は可動光学部である。度数可変レンズ153は、眼の力に応答した周辺部408の直径方向の圧縮によって度数を変更する。そのような力は、
図3の、可撓性膜402の実線位置の前方(上方)の破線によって示されるように、可撓性膜402を偏向させる。光学部406はまた、
図3の光学部406の前方(上方)の破線によって示されるように、周辺部408の圧縮に応答して移動する。特定の理論に従うものではないが、度数変更の均一性は、ベンチトップ測定システムを使用して測定することができる。ベンチトップ測定システムは、ベース部材151及び度数可変レンズ153を含むIOLデバイス150を、患者の眼において調節された状態と同様の圧縮状態で保持することができる円筒形デバイスを備えることができる。円筒形デバイスによって加えられる圧縮力の量は、IOL平面で4.0ジオプターの屈折力と同等の度数可変を達成するのに十分であり得る。横軸のいずれかに沿って測定された平均屈折力がIOL平面において3.0ジオプターと5.0ジオプターとの間である場合、IOLデバイス150の度数変更は均一であると見なすことができる。
【0062】
光学部406は、可撓性膜402の形状の変化における主要な又は最大の推進力ではない。むしろ、光学部406は、閉じた空洞412内の流体の移動に応答した可撓性膜402の動きに従う。光学部406は、閉じた空洞412内の流体に浮かんでいると見なすことができ、したがって、矢印Aによって示されるように、周辺部408の圧縮を引き起こす眼の力に応答した流体の前方への動きにより、光学部406を前方に移動させる。示されるように、矢印Aと反対の方向への眼の力の除去による周辺部408の弛緩に応答した流体の後方への動きは、光学部406を後方に移動させる。流体及び光学部406の移動は、度数可変レンズ153の歪みを最小限に抑え、したがって、度数変更中の異常光視症及び他の光学的干渉を最小限に抑える。
図3の断面図に示されている矢印は、度数可変レンズ153において成分に分割された圧縮力Fを示すことを意図している。力Fの大部分は可撓性膜402に駆動される。これは、膜がハプティック165の後方セグメント163における赤道接触セグメント141の平面内にあるためである。これは、ベース部材151内の度数可変レンズ153の深い設定位置によるものである。いくらかの力が光学部カプラー411に伝達され得る。しかしながら、この力への応答は、光学部406を直接前方に動かすのではなく、カプラーを関節運動させることができる。したがって、度数可変レンズ153内の力分布でさえ、圧縮力Fに応答して駆動される前方への動きを減衰させる。
【0063】
光学部406が可撓性膜402の前方形状変化に追随することを可能にするための度数可変レンズ153の構成は、光学部406の後面をベースレンズ163の前面164に隣接するように配置することを可能にする。これらの構造間の距離は、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、約0.2mm、又は0.2mm以下であり得る。これらの構造を近接して配置することにより、ベース部材151内の度数可変レンズ153の深いはめ込み位置が可能になる。
【0064】
いくつかの実施形態では、度数可変レンズ153の性能は、可撓性膜402が光学部406の前方にあるように、度数可変レンズ153を眼に配置することに依存する。また、眼への挿入のために度数可変レンズ153を圧縮する方法は、眼への送達を成功させるために重要となり得る。特定の変形例は、度数可変レンズ153の向きを迅速に確認するのに役立つ。
【0065】
図3は、例えば、可撓性膜402及び光学部406の位置を積極的に識別するために、度数可変レンズ153の向きの確認を提供することができる任意選択の追加の可視色構造409を示す。度数可変レンズ153は、周辺部408に配置された可視色構造409を有することができる。可視色構造409は、少なくとも部分的に不透明な染料又は顔料を有する。不透明な染料又は顔料は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、及び/又は他の任意の適切な色又は色の組み合わせを含むことができる任意の色であり得る。可視色構造409は、連続的又は変化し得る様々な断面サイズ及び形状であり得る。例えば、可視色構造409は、周辺、前側、及び/又は後側から見える完全な環であることができる。可視色構造409は、周辺、前側及び/又は後側から見える1つ以上の弧又は弧のセグメントを含むことができる。可視色構造409は、周辺部408の前部と後部との間に配置され、可視色構造409の少なくとも部分的に不透明な染料又は顔料が、度数可変レンズ153に含まれ、光軸Aの半径方向外側、場合によってはレンズ153の閉じた空洞412の外側に配置される。可視色構造409は、度数可変レンズ153の第1の側部400(前側)と第2の側部404(後側)との間に配置される。一例では、可視色構造409は、周辺部408の前部よりも後部の近くに配置される。この位置決めにより、度数可変レンズ153の向きの便利な視覚的確認が可能になる。可視色構造409は、可撓性膜402の前面に接する平面よりも、光学部406の後面に接する平面の近くに配置されている。したがって、側面から見た場合、可視色構造409に最も近い度数可変レンズ153の側面は、光学部406の側面、例えば、第2の側部404であり、一方、可視色構造409から最も遠い側面は、可撓性膜402の側部、例えば、第1の側部400である。
【0066】
可視色構造409は、度数可変レンズ153がインジェクタに正しく装填されていることの視覚的確認を提供することができる。いくつかの態様では、可視色構造409を使用して、度数可変レンズ153がレンズ保持部164によってベース部材151内に固定されていることを視覚的に確認することができる。例えば、可視色構造409は、度数可変レンズ153がレンズ保持部164によってベース部材151内に固定されているとき、上から見たときに、レンズ保持部164によって視覚的に途切れた連続環状形状であり得る(レンズ保持部164が不透明であるか、又は本明細書の他の場所で説明されるようにソリッドカラーを有する場合)。したがって、上から見たときに、所与のレンズ保持部164の位置で可視色構造409が途切れている場合、度数可変レンズ153は所与のレンズ保持部164によって、その所与のレンズ保持部164の位置で固定されている。関連して、度数可変レンズ153は、上から見たときに、所与のレンズ保持部164の位置で可視色構造409が中断していない場合、所与のレンズ保持部164によって固定されていない。
【0067】
いくつかの態様では、可視色構造409は、周辺部408の前部と後部を結合する接着剤と組み合わせることができる。接着剤は、度数可変レンズ153と同じ材料又は別の適切な材料とすることができる。いくつかの態様では、可視色構造409は、光軸を中心に回転対称に配置されている。可視色構造409は、光軸を取り囲む弧状のバンドであり得る。いくつかの態様では、可視色構造409は、周辺部408を介して伝達される観察可能なグレアを低減する。
【0068】
レンズオイル
いくつかの実施形態によれば、レンズオイルは、式(I)によって表されるシリコーンオイルターポリマーを含み得る:
【0069】
【0070】
式中、R1及びR12は、独立して、ビニル(アルキル)を含む任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたアルケニルから選択され;R2、R3、R10及びR11のそれぞれは、独立して、水素又は任意に置換されたアルキルであり得;R4は、任意に置換されたハロアルキルであり;R5は、任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたハロアルキルであり;R6は、任意に置換されたアリール又は任意に置換されたアリール(アルキル)であり;R7は、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアリール(アルキル)、又は任意に置換されたアルキルであり;R8及びR9のそれぞれは、独立して、任意に置換されたアルキルであり;lは0.01~0.8のモル分率であり;mは0.01~0.5のモル分率であり;nは0.01~0.6のモル分率である。モル分率又はパーセンテージは、エンドブロッカー、触媒、及び反応物中の任意の他の成分の3種類のブロックのみを対象としており、かつ/又は、最終生成物のポリマーは、モル分率又はパーセンテージの計算から除外される。上述したように、上記の式は、ブロックが、異なる種類の他のブロックとランダムに組み合わされた特定の種類の複数の-Si(Rx,Rx)O-シリコーンユニットで構成されているランダムブロックコポリマーを指す。上記の構造は、ポリマーの構造そのものではなく、式である。ポリマーは、示されている順序のとおりの3つの大きなブロックのみからなるわけではない。
【0071】
いくつかの実装形態において、アルキル及び/又はアルキレン基は、1~6個の炭素及び1~4個の炭素を含む1~20個の炭素を有する。好ましいアルキル基には、限定するものではないが、メチル、エチル、及びプロピルが含まれる。好ましいアルケニル基には、ビニル、ビニルメチル及びビニルエチルが含まれる。好ましいアリール及びアリール(アルキル)基には、フェニル、及びフェニルメチルが含まれる。いくつかの実装形態では、ターポリマーの3つの成分のモル分率は以下の通りである:lのモル分率は、約0.01~0.8であり、これには約0.1~0.7、約0.4~0.6、約0.45、約0.5、及び約0.55が含まれる;mのモル分率は、約0.01~0.5であり、これには約0.05~0.3、約0.5~0.2、約0.1、及び約0.15が含まれる;nのモル分率は、約0.01~0.6であり、これには約0.1~0.5、約0.2~0.5、約0.3、約0.35、約0.4及び約0.45が含まれる。いくつかの実装形態では、R1~R3及びR6~R12について、1つ以上の基が置換される場合、その置換は、ハロ又はハロゲン以外の基によって行われる。特定の実装形態では、1つのみ又は2つの任意選択で置換される基は実際に置換され、他の実装形態では、任意選択で置換される基は実際には置換されない。特定の好ましい実装形態において、ハロアルキルは、トリフルオロエチルなどのトリフルオロアルキル又はトリフルオロプロピルを含むフルオロアルキルである。一部の実装形態には、前述の2つ以上が含まれる。
【0072】
いくつかの実装形態では、R1及びR12はメチル、エチル、又はビニルである。
いくつかの実装形態では、R2、R3、R10及びR11は、メチル又はエチルを含むC1~6アルキルである。
【0073】
いくつかの実装形態では、R4は、ジ-及びトリフルオロアルキル基を含むC1~6フルオロアルキルである。特定の実装形態は、2,2,2-トリフルオロエチル又は3,3,3-トリフルオロプロピルとしてR4を含む。
【0074】
いくつかの実装形態では、R5は、フルオロアルキルを含むC1~6ハロアルキルである。R4と同じ場合もあれば、異なる場合もある。他の実装形態では、R3はメチル又はエチルを含むC1~6アルキルである。
【0075】
いくつかの実装形態では、R6はフェニルである。
いくつかの実装形態では、R7はフェニル、又はメチル又はエチルを含むC1~6アルキルである。いくつかの実装形態では、R6とR7は同じ基である。
【0076】
いくつかの実装形態では、R8及びR9は独立して、メチル又はエチルを含むC1~6アルキルである。いくつかの実装形態では、R8とR9は同じ基である。
いくつかの実装形態では、lは0.4~0.6であり、0.5を含む;mは0.05~0.15であり、0.1を含む;及び/又はnは0.3~0.5であり、0.4を含む。
【0077】
式(I)のシリコーンレンズオイルは、さらに、1つ以上、又は以下に記載される物理的及び/又は化学的特性を有し得る。レンズオイルは、本開示の範囲内にあるためにこれらの特性のいずれかを有する必要はない。
【0078】
分子量
シリコーンオイルは、約1000~30,000ダルトンの平均分子量(Mw)を有し得、これには、約1000~25,000ダルトン、約10,000~30,000ダルトン、約15,000~30,000ダルトン、約10,000~25,000ダルトン、約1000~15,000ダルトン、約1000~15,000ダルトン、約1000~10,000ダルトン、約2500~10,000ダルトン、約2500~7500ダルトン、約3000~7500ダルトン、約4000~7000ダルトン、約4500~6500ダルトン、及び約5000~6500ダルトンが含まれる。シリコーンオイルは、約5500+/-300ダルトン、約5600+/-300ダルトン、約5700+/-300ダルトン、約5800+/-300ダルトン、約5900+/-300ダルトン、約6000+/-300ダルトン、約6100+/-300ダルトン、約6200+/-300ダルトン、約6300+/-300ダルトン、約6400+/-300ダルトン、約6500+/-300ダルトン、約6600+/-300ダルトン、約6700+/-300ダルトン、約6800+/-300ダルトン、約6900+/-300ダルトン、又は約7000+/-300ダルトンの平均分子量(Mw)を有し得る。別の実装形態では、シリコーンオイルは、約25,000+/-1000ダルトン、約26,000+/-1000ダルトン、約27,000+/-1000ダルトン、約28,000+/-1000ダルトン、約29,000+/-1000ダルトン、又は約30,000+/-1000ダルトンの平均分子量(Mw)を有し得る。別の実装形態では、シリコーンオイルは、約10,000+/-1000ダルトン、約12,000+/-1000ダルトン、約15,000+/-1000ダルトン、約17,000+/-1000ダルトン、約20,000+/-1000ダルトン、又は約22,000+/-1000ダルトンの平均分子量(Mw)を有し得る。別の態様では、シリコーンオイルは、前述の値のいずれか2つを含む範囲内の平均分子量を有し得る。
【0079】
上記の重量平均分子量を有するものを含むがこれらに限定されないいくつかの実装形態において、分子量分布の下限は、約500ダルトン、約1000ダルトン、約2000ダルトン、約2500ダルトン、約3000ダルトン、約4000ダルトン、約5000ダルトン、約6000ダルトン、約7000ダルトン、約8000ダルトン、約9000ダルトン、又は約10,000ダルトン以上であり得る。低分子量ポリマーは、固体シリコーン材料に浸透する能力が高くなる。このような固体シリコーン材料は、付属書などに記載されているIOLの成分を含む。より高いメチル含有量(すなわち、R4からR9の多くがメチルである)を有するシリコーンオイルは、より高い透過性を有し、より低いメチル含有量を有するか又はメチルを含有しないシリコーンオイルは、メチル含有量が高いものよりも低い分子量の、したがって分布の下限がより低い分子を含み得ることが発見された。
【0080】
粘度
シリコーンレンズオイルは、25℃で約1~3000cPの範囲の粘度を有し得、これには、25℃で約5~1000cP、25℃で約5~500cP、及び25℃で約20~250cPが含まれる。レンズオイルはこれらの範囲外の粘度を有してもよい。
【0081】
屈折率
いくつかの実装形態では、シリコーンレンズオイルは、約1.40~約1.60の範囲の屈折率を有し、これには、約1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59が含まれ、これには挙げられた値の間にある値、例えば1.465、1.4452、1.455などが含まれる。
【0082】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるシリコーンレンズオイルは、それが使用されるIOLデバイスを形成するバルク材料と実質的に屈折率が一致し得る。本明細書で使用されるとき、屈折率が一致する材料とは、別の材料の屈折率とほぼ等しいか、又はそれに非常に近い屈折率の材料を指す。
【0083】
表面張力
好ましい実装形態では、シリコーンレンズオイルは、空洞の内面に対し十分に高い又は十分に異なる表面張力を有し、その結果、それがIOLの空洞に配置されると、非ハロゲン化シリコーンを含むシリコーンで形成されたものであり得る空洞のシェル又は壁を形成する材料の表面によって弾かれる(空洞の壁にフッ素含有量がほとんど又はまったくない場合)。これは、流体が導入されたときにレンズキャビティが両凸形状になるのに役立つ。シリコーンレンズオイルの表面張力が十分に高くない場合(又は空洞壁と十分に異ならない場合)、レンズの片側又は両側にくぼみ又は凹状の形状が形成され、光学部の品質が低下又は悪化する可能性がある。
【0084】
表面張力は、ポリマーを形成するために使用されるモノマーの種類と量の両方によって操作できる。これにより、ポリマー自体に様々なブロックを形成するシリコーンユニットの種類とモル分率が決まる。フッ素含有基を含むシリコーンユニットを含めると、表面張力が増加する傾向があることがわかっている。フェニル基も、表面張力を高めるのに役立つ。下の表は、様々な種類の材料について測定された表面張力を示している。流体と空洞壁の間の表面張力の差は、0.5~7mN/m及びを1.0~5mN/m含め、少なくとも0.5~1.0mN/m以上が望ましい。
【0085】
【0086】
上記の表1で、DMはジメチルシリコーンユニット(-Si(CH3)2O-)、DPはジフェニルシリコーンユニット(-Si(C6H5)2O-)、TFはメチル、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシリコーンユニット(-Si(CH3)(CH2CH2CF3)O-)である。サンプルの表面張力は、温度制御システムを備えたDCAT25張力計にWilhelmyプレートを使用して、24.9℃と39.9℃で2回測定した。
【0087】
表面張力又は表面エネルギーの違いは、
図4の光干渉断層撮影(OCT)画像によってさらに示されている。画像はジフェニル及びジメチルシロキサンから作られた3つのIOLの断面図であり、これらは、各画像の上から数えて2番目と3番目の線の間のスペースに配置されたレンズオイルを除いて同一である。上の画像のレンズオイルは、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサンのみのシリコーン骨格(100%F)を有し、中央の画像は、ジメチル及びジフェニルシロキサンのみの骨格(0%F)を有し、下の画像は、50モル%の3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン、40モル%のジメチルシロキサン、及び10モル%のジフェニルシロキサン(50%F)である。OCT画像は、100%及び50%のフッ素化では2番目の線が3番目の線から離れて偏向するが、フッ素化置換基を持たない2番目の画像では、2番目の線が3番目の線に向かって曲がっており、凸面が少なくなっているか、わずかに窪んだ、又は凹んだレンズ表面となっていることを示している。中央の画像のように、窪んだ、平らな、又は凹状の表面は、より凸状の表面、つまり最初の(上の)線に向かって上方に湾曲している上の画像及び下の画像と比較して、レンズにはあまり適していない。IOLSを作製するのに有用ないくつかの実装形態によるレンズオイルは、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る:高度に疎水性、非常に低い表面エネルギー、及び反発する表面張力。
【0088】
架橋
シリコーンレンズオイルのいくつかの実装形態は、ビニルなどの架橋可能な末端基を含み得るが、レンズオイルは、好ましくは、架橋されていない。非架橋レンズオイルは、非圧縮性又は実質的に非圧縮性の流体であるため、ポアソン効果で機械的に動作するわずかに架橋又はゲル化されたシリコーンポリマーとは異なり、流体にはポアソン比やヤング率がない。代わりに、流体の機械的挙動は粘度及びせん断の影響を受け、ニュートン流体や非ニュートン流体の挙動など、その流体が示すレオロジーの種類に依存する。好ましい実装形態において、シリコーンオイルを構成するポリマー鎖は、架橋又はゲル化されていないにもかかわらず、IOLデバイスのバルクポリマー材料の中を拡散しない。
【0089】
調製方法
本明細書に開示されるシリコーンレンズオイルは、既知の合成及び高分子化学技術を使用して合成することができる。例えば、シリコーンオイルを製造する方法は、アニオン付加重合、リビング重合、リビングアニオン重合などを含み得る。いくつかの実装形態では、オイルは、以下に記載される方法によって、又はこれらの方法の改変によって作られる。出発物質は商業的に入手可能及び/又は既知の合成手順を利用して調製可能である。式(I)のシリコーンオイルの一例の全般的な合成経路が、本明細書に示され、説明されている。本明細書に示され、説明される出発物質及び経路は、例示にすぎず、いかなる場合でも、本開示及び/又は特許請求の範囲を制限することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきでもない。当業者は、開示された合成の改変を認識し、本明細書の開示に基づいて代替経路を考案することができるであろう。そのようなすべての変更及び代替経路は、特許請求の範囲内にある。
【0090】
本開示のシリコーンオイルは、単純な重合プロセスによって製造することができる。出発物質には、ターポリマーの各ブロックタイプに対応する環状シロキサン、連鎖成長停止剤、及び触媒が含まれる。触媒以外の出発物質を秤量し、反応フラスコに入れる。反応フラスコは、冷水又は他の冷却剤が循環する凝縮器を備えた適切なサイズの丸底フラスコであり得る。フラスコの内容物を約100+/-10℃に加熱しながら撹拌し、温度がその温度範囲の下限に達したときに触媒を加える。反応混合物の温度は、約100+/-10℃の温度範囲で約2時間維持され、その間、温度は、触媒が失活するか、又は出発物質の1つが劣化又は分解する温度を超えてはならない。フラスコの内容物が乳白色から透明に変われば、重合反応が生じている。内容物の粘度の上昇も明らかに見られ得る。混合物を平衡状態に到達させるために、混合物を100+/-10℃で少なくとも2時間(少なくとも3時間、少なくとも4時間、及び2~4時間を含む)撹拌し続ける必要がある。次に、混合物の温度を約150℃に上げて、触媒を失活させる。温度が約150℃に達したら、加熱を停止又は除去するが、撹拌を続け、混合物を約100℃以下に達するまで冷却させる。内容物(この時点では原料ポリマー混合物)の温度が約100℃を下回ったら、撹拌を停止することができる。
【0091】
次に、原料ポリマー混合物を、ポリマーに適した任意の方法によって精製することができ、その方法は、超臨界流体抽出、薄膜/ワイプドフィルム蒸発器などによる真空蒸留の使用、及びサイズ排除クロマトグラフィー/ゲル浸透クロマトグラフィー(SEC)/(GPC)を含むがこれらに限定されない。これらの技術を使用して、残留モノマー又は他の出発物質、及び、最終生成物には望ましくない可能性のある低分子量成分を除去することができる。いくつかの実装形態において、シリコーンオイルを精製するために2つ以上の方法を使用することができる。シリコーンオイルの精製は、レンズデバイスの壁への及び/又はレンズデバイスの壁を通した成分の浸透を低減するのに役立ち、及び/又は最終的なレンズ製品のヘイズを低減する。精製はまた、精製されたレンズオイルにおけるより安定した屈折率を提供し、精製されていない材料と比較して表面張力を増加させ得る。
【0092】
真空蒸留は、市販の薄膜又はワイプドフィルム蒸発器を使用して行うことができる。SEC/GPCは、多孔質の架橋ゲルが充填されたカラムを利用して、カラム内の保持時間に従い、ポリマー分子を分子サイズに基づき分離する手法である。
【0093】
超臨界流体抽出の場合、これは、超臨界CO2、プロパン、エタン、エチレン、それらの組み合わせ、及び/又は本開示を読んだ当業者によって理解される他の適切な溶出溶媒を使用する様々な市販の抽出ユニットの任意のものを使用して行うことができる。特定の実装形態では、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)などの溶媒を、抽出前に、約25~30重量%を含む約10~40重量%の量でシリコーンオイルに添加することができる。理論に拘束されることを意図していないが、アルコールの添加は、オイル中に残っている場合、水蒸気と複合体を形成し、完成したレンズ製品の曇りに寄与し得る少量の極性物質を除去するのに役立つ可能性がある。例えば、70%シリコーンオイル/30%IPA(w/w)の混合物が超臨界CO2で抽出される場合、IPAは、製品のシリコーンオイルであるラフィネートから除去される最初のフラクションの1つである。
【0094】
出発物質は、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルシクロトリシロキサン、及び(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサンを含むがこれらに限定されない環状トリ又はテトラシロキサンであり得る。連鎖成長停止剤は、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(例えば、2×10-6m2/s(2cSt)粘度CAS No.9016-00-6/63148-62-9、Gelestの製品コードDMS-T02)又はビニル末端ポリジメチルシロキサン(例えば、2×10-6~3×10-6m2/s(2~3cSt)粘度、CAS No.68083-19-2、Gelestの製品コードDMS-V03)を含む。適切な触媒には、テトラメチルアンモニウムシロキサノラートが含まれる。
【0095】
実施例
本開示の式(I)によるシリコーンレンズオイル(E1からE12)の12の例を、合成方法の一実装形態に従って合成し分析した。手順の例として、Elの手順を以下に示す。
【0096】
出発物質である(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンを、以下の表に示されているモルパーセントに対応する量で1リットルの丸底フラスコに加えた。上記のように、ポリマーの繰り返しブロックを形成するシロキサンのモルパーセントは100%になる。エンドブロッカー、触媒、その他の成分は合計100%に含まれていない。
【0097】
【0098】
トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン連鎖成長停止剤(Gelestの製品コードDMS-T02)を、循環冷水を備えた凝縮器と機械式スターラーを取り付けたフラスコに加え、加熱マントルに入れた。混合物の加熱を開始し、温度が90℃に達したときに0.25pphのテトラメチルアンモニウムシロキサノラート触媒を添加した。混合物の粘度が増加し透明になるまで、混合物の温度を100+/-10℃に維持した(例えば、97.8℃)。この初期段階での触媒の失活を避けるために、温度を115℃未満に保つように注意を払った。
【0099】
混合を100+/-10℃で少なくとも2時間続け、その後温度を約150℃に上げた。温度が約150℃に達したら、加熱を止め、温度が約100℃以下に下がるまで混合を続けた。次に、生成物を最初にワイプフィルム蒸発器で蒸留し、続いてCO
2で超臨界流体抽出することによりクリーンアップした。次に、ポリマーを適切な保管容器に移し、分子量と屈折率を試験した。
図5は、GPCによるポリマーの2つのサンプルの分子量分布の分析の結果を含む。この方法は、本開示における分子量を決定するために使用された。
【0100】
Elの屈折率試験の結果と外観、及び他の11の実験のそれぞれを以下の表に示す。
【0101】
【0102】
本明細書に記載され請求される本発明は、本明細書に開示される特定の実装形態、態様、及び実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際には、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような変更も、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0103】
本明細書で使用される「実施形態」という用語は、本明細書で開示される本発明の態様又は実装形態を指し、実施形態は互いに組み合わせることができることを理解されたい。
本発明の特定の実装形態及び実施形態を説明してきたが、これらは単なる例として提示されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規な組成物及びデバイスは、他の様々な形態で具体化することができる。さらに、本明細書に記載の材料及びデバイスの様々な省略、置換及び変更を、本開示の趣旨から逸脱することなく行うことができる。付随する請求項及びそれらの同等物は、本開示の範囲及び趣旨に含まれるような形式又は修正をカバーすることを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及び将来求められる可能性のある他の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0104】
特定の態様、実施形態、又は例に関連して説明される特徴、材料、特性、又はグループは、両立しないものでない限り、このセクション又は本明細書の他の場所に記載される任意の他の態様、実施形態、又は例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されるすべての特徴(付随する付属書、特許請求の範囲、要約及び図面を含む)、及び/又はそのように開示される任意の方法のすべてのステップは、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書に開示された特徴の任意の新規のもの、又は任意の新規の組み合わせ(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)、又はそのように開示された任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規のもの、又は任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【0105】
さらに、別個の実装形態又は実施形態の文脈で本開示に記載されている特定の特徴はまた、単一の実装形態において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実装形態の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実装形態で個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明されている場合があるが、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、組み合わせから切り出すことができ、組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形として主張され得る。
【0106】
さらに、操作は、特定の順序で図面又は明細書に記載され得るが、そのような操作は、望ましい結果の達成のために、示される特定の順序又は連続した順序で実行される必要はなく、又はすべての操作が実行される必要はない。図示又は説明されていない他の操作は、例示的な方法及びプロセスに組み込むことができる。例えば、1つ以上の追加の操作を、説明されている任意の操作の前、後、それと同時に、又はそれらの間に実行できる。さらに、他の実装形態では、操作を並べ替えることができる。当業者は、いくつかの実施形態では、図示及び/又は開示されたプロセスで行われる実際のステップが、図に示されているものとは異なる場合があることを理解するであろう。実施形態に応じて、上記の特定のステップを削除することができ、他のステップを追加することができる。さらに、上に開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、異なる方法で組み合わされて、追加の実施形態を形成することができ、これらはすべて、本開示の範囲に含まれる。
【0107】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、及び新規な特徴が本明細書に記載されている。特定の実施形態によれば、必ずしもそのようなすべての利点が達成され得るとは限らない。したがって、例えば当業者は、本明細書で教示される1つの利点又は一群の利点を達成するような方式で、本明細書で教示又は示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、本開示が具体化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0108】
条件的な文言、例えば「可能」、「できる」、「~し得る」、「~でもよい」などは、特に断りのない限り、又は使用される文脈内で別様に理解されない限り、一般に、特定の実施形態は特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件的な文言は、一般に、その特徴、要素、及び/又はステップが1つ以上の実施形態に何らかの形で必要とされること、又は1つ以上の実施形態が、ユーザ入力又はプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/又はステップが含まれるか、又は特定の実施形態で実行されるかどうかを決定するためのロジックを必然的に含むことを意味することを意図しない。
【0109】
本明細書で使用される程度の言語、例えば、本明細書で使用される「ほぼ」、「約」、「概して」、及び「実質的に」という用語などは、記載された値、量、又は特性に近い、依然として所望の機能を実行し又は所望の結果を達成する値、量、又は特性を表す。例えば、「ほぼ」、「約」、「概して」、及び「実質的に」という用語は、記載された量の10%未満の範囲、5%未満の範囲、1%未満の範囲、0.1%未満の範囲、及び0.01%未満の範囲にある量を指し得る。別の例として、特定の実施形態では、「ほぼ平行」及び「実質的に平行」という用語は、厳密な平行から15度、10度、5度、3度、1度、又は0.1度以下の値、量、又は特性を指す。
【0110】
文脈上別段の定めがない限り、明細書及び特許請求の範囲における「含む」という用語及びその変形の使用は、オープンエンドであり、「包含する」又は「含むがこれ(ら)に限定されない」と同義であり、「からなる」及び「本質的にからなる」というより狭い用語も含めることを意図している。後者の用語は、範囲が、記載されている要素又はステップ、及び既に記載されたものの基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えないその他のものに限定されることを意味する。
【0111】
別段の定義がない限り、すべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者に通常の慣習的な意味を与えるものであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されない。本開示の特定の特徴又は態様を説明する際の特定の用語の使用は、その用語が本明細書において再定義されて、その用語が関連付けられている本開示の特徴又は態様の特定の特徴を含むように制限されることを意味すると解釈されるべきではないことに留意されたい。本願で使用される用語及び句、ならびにそれらの変形は、特に添付の特許請求の範囲において、特に明記しない限り、オープンエンドであり、限定ではないものとして解釈されるべきである。前述の例として、「含む」という用語は、「含むが限定ではない」、「含むがこれ(ら)に限定されない」などを意味すると解釈されるべきである。本明細書で使用される「含む」という用語は、「包含する」、「含有する」、又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、引用されていない要素又は方法のステップを除外しない。「~を有する」という用語は「少なくとも~を有する」と解釈すべきである。「含む」という用語は「含むがこれ(ら)に限定されない」と解釈すべきである。「例」という用語は、述べられているその項目の網羅的又は限定的なリストではなく、その例示的な実例を提供するために使用されている。「既知」、「通常」、「標準」などの形容詞、及び同様の意味の用語は、説明されている項目を特定の期間又は特定の時点で利用可能な項目に限定するものとして解釈されるべきではなく、代わりに現在、又は未来の任意の時点で利用可能又は知られている既知の、通常の、又は標準の技術を包含するものとして解釈されるべきである。「好ましい」、「望ましい」などの用語、及び同様の意味の単語の使用は、特定の特徴が発明の構造又は機能にとって必須又は重要であることを意味するものとして理解されるべきではなく、代わりに、本発明の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替又は追加の特徴を強調することを単に意図している。同様に、接続詞「及び」でつなげられた項目のグループは、それらの項目のすべてがグループに存在することが必要であると解釈すべきではなく、特に明記しない限り、「及び/又は」として解釈すべきである。同様に、接続詞「又は」でつなげられた項目のグループは、そのグループの中で相互排他性を必要とするものとして解釈されるべきではなく、特に明記されていない限り、「及び/又は」として解釈されるべきである。
【0112】
数値範囲の記載が提供されている場合、それは、範囲を定義する値を含む範囲内にある各個別の値を個別に参照する省略表記として機能することを目的としており、各個別の値は、個々に記載されているが如く本明細書に組み込まれる。さらに、上限及び下限は、記載された範囲内に含まれることが理解される。
【0113】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形へ、及び/又は単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、様々な単数形/複数形の順列を本明細書に明示的に記載することができる。不定冠詞「1つ」及び定冠詞「その」は、文脈で明確に別段の指示がない限り、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。請求項内の参照記号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0114】
導入された請求項の特定の数が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような説明がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解されよう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するための導入句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかし、同じ請求項に「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という導入句及び「1つ」などの不定冠詞(例えば、「1つ」は通常、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」と解釈されるべきである)が含まれる場合でも、そのような句の使用は、不定冠詞「1つ」による請求項の記載の導入が、そのような導入された請求項の記載を含む特定の請求項を、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。同じことが、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。さらに、導入された請求項の記載における特定の数が明示的に記載されている場合でも、当業者は、そのような記載は通常、少なくとも記載された数を意味する(例えば、他の修飾語のない「2つの記載」の裸の記載は、通常、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)と解釈されるべきであることを認識するであろう。さらに、「A、B、及びCなどの少なくとも1つ」に似たような表現法がある場合、一般に、そのような構成は、当業者が、例えば、単一のメンバーを含む、挙げられた項目の任意の組み合わせを含むものとして、その表現法を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」には、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はAとBとCを一緒に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)。「A、B、又はCなどの少なくとも1つ」に似たような表現法が使用されている場合、一般に、そのような構成は、当業者が、その表現法を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はAとBとCを一緒に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)。さらに、当業者には、2つ以上の代替用語を提示する事実上すべての分離語及び/又は句は、明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、それらの用語の1つ、それらの用語のいずれか、又はそれらの両方の用語を含む可能性が予期される。例えば、「A又はB」という句は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0115】
本明細書で使用される成分の量、反応条件などを表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書に記載の数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を本願の優先権を主張する出願における特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0116】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が明細書に含まれる開示と矛盾する場合、本明細書が、そのような矛盾する資料よりも優先されることを意図している。
【0117】
見出しは、参照用及び様々なセクションの検索を補助するために本明細書に含まれている。これらの見出しは、それに関して説明されている概念の範囲を制限することを意図したものではない。このような概念は、明細書全体に適用できる場合がある。
【0118】
本開示の範囲は、このセクション又は本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図されておらず、このセクション又は本明細書の他の場所に提示される、又は将来提示される請求項によって定義され得る。請求項の文言は、請求項で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例又は出願の審査中に限定されるべきではない。これらの例は非排他的なものとして解釈されるべきである。
【国際調査報告】