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  • 特表-高濃度抗C5抗体配合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】高濃度抗C5抗体配合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 15/06 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20230111BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P43/00 105
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P13/12
A61P7/02
A61P9/10
A61P13/02
A61P25/00
A61P25/02
A61P27/02
A61P15/06
A61P17/00
A61P9/00
A61P21/04
A61P9/10 101
A61P25/28
A61P31/04
A61P37/06
A61P5/14
A61P3/10
A61P17/06
A61P7/06
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/04
A61K47/18
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526120
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 US2020058779
(87)【国際公開番号】W WO2021091937
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/992,319
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/932,674
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フィロミナタン, リーナ
(72)【発明者】
【氏名】メイソン, ブルース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076DD09
4C076DD21
4C076DD26
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF63
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD11
4C085EE05
4C085EE07
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、高濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含む安定な水溶液、及び溶液を調製するための方法に関する。本開示は、溶液を用いて、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、及び非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を含む血栓性微小血管症(TMA)などの補体関連障害を治療又は予防するための方法も提供する。更なる特徴は、溶液のうちの1つ以上を含有する治療用キットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約50mMのリン酸ナトリウム、
(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(d)約25mMのL-アルギニン、
(e)約50mg/mLのスクロース、及び
(f)注射用の水を含む安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項2】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約50mMのリン酸ナトリウム、
(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(d)約25mMのL-アルギニン、
(e)約50mg/mLのスクロース、及び
(f)注射用の水からなる安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項3】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、
(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、
(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(f)約25mMのL-アルギニン、
(g)約50mg/mLのスクロース、及び
(h)注射用の水を含む安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項4】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、
(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、
(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(f)約25mMのL-アルギニン、
(g)約50mg/mLのスクロース、及び
(h)注射用の水からなる安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項5】
(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、
(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、
(d)0.05w/v%のポリソルベート80、
(f)25mMのL-アルギニン、
(g)50mg/mLのスクロース、及び
(h)注射用の水からなる安定な水溶液であって、
前記溶液は、7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項6】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約50mMのリン酸ナトリウム、
(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(d)約25mMのL-アルギニン、
(e)約50mg/mLのスクロース、及び
(f)注射用の水を含む安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項7】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約50mMのリン酸ナトリウム、
(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(d)約25mMのL-アルギニン、
(e)約50mg/mLのスクロース、及び
(f)注射用の水からなる安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項8】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、
(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、
(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(f)約25mMのL-アルギニン、
(g)約50mg/mLのスクロース、及び
(h)注射用の水を含む安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項9】
(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、
(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、
(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、
(f)約25mMのL-アルギニン、
(g)約50mg/mLのスクロース、及び
(h)注射用の水からなる安定な水溶液であって、
前記溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項10】
(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、
(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、
(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、
(d)0.05w/v%のポリソルベート80、
(f)25mMのL-アルギニン、
(g)50mg/mLのスクロース、及び
(h)注射用の水からなる安定な水溶液であって、
前記溶液は、7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される、安定な水溶液。
【請求項11】
前記溶液は滅菌である、請求項1~10のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項12】
前記溶液は滅菌で半透明の清澄~帯黄色である防腐剤フリー溶液である、請求項1~11のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項13】
前記溶液は18ヶ月の貯蔵寿命を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項14】
ラブリズマブは、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも97%のモノマー性を維持する、請求項1~13のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項15】
SEC-HPLCによって判定して、前記溶液中のラブリズマブの3%未満が凝集化する、請求項1~14のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項16】
前記溶液は投与の前に50mg/mLのラブリズマブの濃度に希釈される、請求項1~15のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項17】
前記溶液は投与の前に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)で希釈される、請求項16に記載の安定な水溶液。
【請求項18】
前記溶液は希釈後2℃~8℃(36°F~46°F)で最大24時間安定である、請求項16又は17に記載の安定な水溶液。
【請求項19】
前記溶液は静脈内注入による投与に好適である、請求項1~18のいずれか一項に記載の安定な水溶液。
【請求項20】
補体関連疾患を患うヒト患者を治療する方法であって、前記補体関連疾患を治療するのに有効な量の請求項1~19のいずれか一項に記載の安定な水溶液を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記補体関連疾患が、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血再灌流傷害、血栓性微小血管症(TMA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、典型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、デンスデポジット病、視神経脊髄炎、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、黄斑変性症、HELLP症候群、自発性流産、血栓性血小板減少性紫斑病、微量免疫性血管炎、表皮水疱症、習慣性流産、外傷性脳損傷、心筋炎、脳血管障害、末梢血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸血管障害、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病、静脈気体塞栓、ステント留置後再狭窄、回転アテローム切除術、経皮経管冠動脈拡張術、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、発作性寒冷血色素尿症、抗リン脂質症候群、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身炎症反応敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、移植片拒絶反応、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、ドゴー病、及び劇症型抗リン脂質症候群からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記補体関連疾患はTMAである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記補体関連疾患はaHUSである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記補体関連疾患はPNHである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
PNHを患うヒト患者を治療する方法であって、前記患者に安定な水溶液を投与することを含み、前記安定な水溶液は約7.4のpHを有し、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含むか、或いはこれらからなり、
前記安定な水溶液は、
(e)1日目に、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して2,400mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して2,700mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,000mgの用量で;
並びに
(b)15日目、及びその後8週間ごとに、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して3,000mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して3,300mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,600mgの用量で、前記ヒト患者に投与される、方法。
【請求項26】
前記安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
aHUSを患うヒト患者を治療する方法であって、前記患者に安定な水溶液を投与することを含み、前記安定な水溶液は約7.4のpHを有し、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含むか、或いはこれらからなり、
前記安定な水溶液は、
(f)1日目に、
体重が≧5kg~<10kgの患者に対して600mg、
体重が≧10kg~<20kgの患者に対して600mg、
体重が≧20kg~<30kgの患者に対して900mg、
体重が≧30kg~<40kgの患者に対して1,200mg、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して2,400mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して2,700mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,000mgの用量で;並びに
(b)15日目、及びその後4又は8週間ごとに、
体重が≧5kg~<10kgの患者に対して300mg、
体重が≧10kg~<20kgの患者に対して600mg、
体重が≧20kg~<30kgの患者に対して2,100mg、
体重が≧30kg~<40kgの患者に対して2,700mg、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して3,000mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して3,300mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,600mgの用量で、前記ヒト患者に投与される、方法。
【請求項30】
前記安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、並びに15日目、及びその後4週間ごとに300mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、並びに15日目、及びその後4週間ごとに600mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、1日目に900mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに2,100mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、1日目に1,200mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに2,700mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
安定な水溶液は、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルで供給される、請求項20~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
安定な水溶液は、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルで供給される、請求項20~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記安定な水溶液は静脈内注入によって投与される、請求項20~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
(i)請求項1~19のいずれか一項に記載の安定な水溶液、及び
(ii)使用説明書を備える治療用キット。
【請求項41】
(i)請求項1~19のいずれか一項に記載の安定な水溶液、
(ii)生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)、及び
(iii)使用説明書を備える治療用キット。
【請求項42】
(i)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、及び約50mg/mLのスクロースを含むか或いはこれらからなる配合物、
(ii)生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)、並びに
(iii)使用説明書を備える治療用キット。
【請求項43】
前記配合物は凍結乾燥されている、請求項42に記載の治療用キット。
【請求項44】
約10mg/mL以下の濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含む安定な水溶液を生産するための方法であって、
i)約10mg/mLのラブリズマブを含む第1の水溶液を提供することと、
ii)前記第1の水溶液を、pH7.4で約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水の配合物中にダイアフィルトレーションし、それにより第2の水溶液を生産することと、
iii)前記第2の水溶液を濃縮して、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含む安定な水溶液を生産することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年11月8日出願の米国仮特許出願第62/932,674号明細書、及び2020年3月20日出願の米国特許仮出願第62/992,319号明細書の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体は、患者への投与に適し、且つ貯蔵及びその後の使用の間にその安定性を維持するように配合されなければならない。例えば、水溶液中の治療用抗体は、溶液が適切に配合されない限り、分解、凝集、又は望ましくない化学的改質をする傾向がある。液体配合物中の抗体の安定性は、配合物に使用される賦形剤の種類、及び賦形剤の量、及び互いに対する比率に依存する。更に、水性抗体配合物を調製する際は粘度及び視覚的品質も考慮に入れなければならない。したがって、治療用抗体を配合する際は、安定性を維持し、適切な濃度の抗体を含有し、好適な粘度を有し、患者に都合よく投与することができる配合物を考案するために相当な配慮が払われなければならない。
【0003】
抗C5抗体は当該技術分野で既知である。しかしながら、当該技術分野で、十分に安定であり、且つ患者、例えば、PNH又はaHUSなどの補体関連障害を患い、実質的な病的状態及び死亡のリスクを有する患者への投与に好適な抗C5抗体を含む新規な医薬配合物に対するニーズが依然として存在する。したがって、本発明の目的は、補体関連障害を患う患者を治療するための改善された配合物及び方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)(別名「抗体BNJ441」及び「ALXN1210」)などの安定した高濃度の抗C5抗体水溶液、並びに配合物を製造及び使用するための方法を提供した。本開示は、態様の中でもとりわけ、高濃度溶液中でラブリズマブの物理的及び機能的安定性をかなりの時間維持するのに好適な配合物条件を提供する。
【0005】
安定した高濃度の抗C5抗体水溶液(例えばラブリズマブ)の利点は非常に多い。第1に、抗体を患者に少量で投与することが必要な治療用途の場合、治療効力は、その少量中で投与することが可能な抗体の量に依存することが多い。
【0006】
更に、本明細書に記載される水溶液を生産するための方法は、凍結乾燥工程を必要とせず、特徴となる凍結乾燥材料からの再構成が必要な高濃度水溶液も必要としない。本発明で特徴となる高濃度抗体溶液は、再構成された凍結乾燥抗体配合物に勝るいくつかの利点を提供する。第1に、医師は、凍結乾燥した抗体溶液を現地で無菌的に再構成しなくてはならず、このため溶液が投与前に微生物汚染される可能性が増加する。更に、再構成には、再構成容器に収容される全ての固形分が溶液中に適切に溶解したことを確実にするための相当な配慮が必要である。したがって、本明細書で提供される高濃度水溶液は、治療用抗体を必要とする患者に治療用抗体を送達するための迅速、容易、安全、且つ効率的な手段を、医師、介護人、及び/又は患者に提供する。
【0007】
高濃度配合物のその他の利点としては、例えば、バルク貯蔵の空間及び/又は生成物充填の回数が低減することによる製造コストの節約が挙げられる。加えて、貯蔵寿命の長い生成物を生産する能力のために、最終的に必要な生産工程が少なくなり、このため最終的に高濃度治療用抗体の製造者及び消費者のコストは減少する。
【0008】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むラブリズマブ、又はその抗原結合フラグメント及びバリアントである。その他の実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)又は可変領域(VR)を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブの重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するラブリズマブの軽鎖可変(VL)領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3重鎖配列、並びにそれぞれ配列番号4、5、及び6に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3軽鎖配列を含む。
【0009】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0010】
別の実施形態では、抗体は、配列番号13に記載される重鎖定常領域を含む。
【0011】
別の実施形態では、抗体は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、ここでバリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0012】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5、及び6に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3軽鎖配列、並びにヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、ここでバリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0013】
別の実施形態では、抗体は、上記の抗体と、C5上の同じエピトープとの結合について競合し、且つ/又はC5上の同じエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体は、上記の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性を有する(例えば、配列番号12及び/又は配列番号8と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の可変領域同一性)。
【0014】
別の実施形態では、抗体は、pH7.4及び25℃で、0.1nM≦K≦1nMの範囲にある親和性解離定数(K)でヒトC5に結合する。別の実施形態では、抗体は、pH6.0及び25℃で、K≧10nMでヒトC5に結合する。更に別の実施形態では、抗体の[(pH6.0及び25℃におけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合フラグメントのK)/(pH7.4及び25℃におけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合フラグメントのK)]は、25超である。
【0015】
一態様では、安定な水溶液が提供される(例えば滅菌溶液)。別の実施形態では、安定な水溶液は、1つ以上の追加の薬剤(例えば安定化剤、緩衝剤、界面活性剤、及び/又は防腐剤)を含む。例えば、一実施形態では、安定な水溶液は安定剤を含む。例示的な安定剤としては、ポリオール、糖(例えばスクロース又はトレハロース)、アミノ酸(例えばアルギニン)、アミン、及び塩析塩(salting out salt)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、溶液は、2%以上10%以下の濃度で少なくとも1つの安定化剤を含む。別の実施形態では、溶液は10mM以上50mM以下の濃度で少なくとも1つ以上の安定化剤を含む。別の実施形態では、安定化剤は、溶液中に少なくとも20mM又は20mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、安定化剤は、溶液中に少なくとも25mM又は25mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、安定化剤は、溶液中に少なくとも50mM又は50mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、溶液は5%のスクロースを含む。別の実施形態では、溶液は、約30mg/mL~60mg/mL(例えば、約30mg/mL、31mg/mL、32mg/mL、33mg/mL、34mg/ml、35mg/ml、36mg/mL、37mg/mL、38mg/mL、39mg/mL、40mg/mL、41mg/mL、42mg/mL、43mg/mL、44mg/mL、45mg/mL、46mg/mL、47mg/mL、48mg/mL、49mg/mL、50mg/mL、51mg/mL、52mg/mL、53mg/mL、54mg/mL、55mg/mL、56mg/mL、57mg/mL、58mg/mL、59mg/mL、又は60mg/mL)のスクロースを含む。特定の実施形態では、溶液は50mg/mLのスクロースを含む。別の実施形態では、溶液は、20~30mMのアルギニン(例えばL-アルギニン)を含む。例えば、一実施形態では、溶液は、20mMのアルギニン、21mMのアルギニン、22mMのアルギニン、23mMのアルギニン、24mMのアルギニン、25mMのアルギニン、26mMのアルギニン、27mMのアルギニン、28mMのアルギニン、29mMのアルギニン、又は30mMのアルギニンを含む。特定の実施形態では、溶液は25mMのL-アルギニンを含む。
【0016】
別の実施形態では、溶液は、少なくとも1つ以上の緩衝剤を含む。洗浄溶液に含まれ得る典型的な緩衝液の非限定的な例としては、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、ビス-トリス、ビス-トリスプロパン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ギ酸塩、酢酸塩、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、リン酸塩、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、クエン酸塩、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TAPS(3{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、カコジル酸塩(ジメチルアルシン酸)、SSC(クエン酸ナトリウム食塩液)、一塩基性リン酸ナトリウム、及び二塩基性リン酸ナトリウムが挙げられる。別の実施形態では、緩衝剤はアミノ酸である。アミノ酸は、例えば、アルギニン(例えばL-アルギニン)、ヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)、セリン(例えばL-セリン)、及びグリシン(例えばL-グリシン)からなる群から選択される1つであってもよい。別の実施形態では、溶液は、2つ以上の緩衝剤を含む。特定の実施形態では、緩衝剤は、一塩基性リン酸ナトリウムである。別の特定の実施形態では、緩衝剤は、二塩基性リン酸ナトリウムである。
【0017】
別の実施形態では、溶液は10mM以上300mM以下の濃度で少なくとも1つ以上の緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は10mM以上200mM以下の濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は10mM以上100mM以下の濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は10mM以上50mM以下の濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は20mM以上50mM以下の濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、緩衝剤は、溶液中に少なくとも20mM又は20mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、溶液中に少なくとも25mM又は25mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、溶液中に少なくとも50mM又は50mMに等しい濃度で存在する。特定の実施形態では、緩衝剤は、約33.1mMの濃度の一塩基性リン酸ナトリウムである。別の特定の実施形態では、緩衝剤は、約16.5mMの濃度の二塩基性リン酸ナトリウムである。
【0018】
別の実施形態では、溶液は界面活性剤を含む。一実施形態では、配合物中の界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。特定の実施形態では、配合物中の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20、40、60、80、又はこれらの1つ以上の組み合わせである。一実施形態では、配合物中の界面活性剤は、ポリソルベート80(Tween 80)である。溶液中の界面活性剤の濃度は、例えば0.001%以上0.02%以下であってもよい。例えば、界面活性剤は、配合物中に約0.001%~約1%、又は約0.001%~約0.5%、又は約0.01%~約0.2%の量で存在してもよい。一実施形態では、水溶液は、界面活性剤を、少なくとも、又は約0.001%(例えば、少なくとも、又は約0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、又は0.5%以上)の濃度で含有する。別の実施形態では、水溶液は、0.2%以下(例えば0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、又は0.001%以下)の薬学的に許容される界面活性剤を含有する。特定の実施形態では、界面活性剤は0.05w/v%のポリソルベート80である。
【0019】
別の実施形態では、溶液は注射用の水を含む。
【0020】
別の実施形態では、pHは7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、又は7.9である。別の実施形態では、溶液のpHは7.0~7.4である。別の実施形態では、溶液のpHは7.2~7.8である。別の実施形態では、溶液のpHは7.2~7.6である。特定の実施形態では、溶液のpHは7.4である。
【0021】
別の実施形態では、溶液は、薬物及びその他の治療用組成物を貯蔵するのに好適な任意の容器中にある。例えば、溶液は、密封及び滅菌されたバイアル、アンプル、シリンジ、カートリッジ、又は瓶などの所定の容積を有するプラスチック又はガラス容器内に収容され得る。本発明の溶液を収容するために、例えばガラス又はプラスチックバイアルを含む様々な種類のバイアルを用いることができる。一実施形態では、バイアルは3mLの単回使用バイアルである。別の実施形態では、バイアルは、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルである。別の実施形態では、バイアルは11mLの単回使用バイアルである。別の実施形態では、バイアルは、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルである。
【0022】
別の実施形態では、溶液は投与の前に希釈される。例えば、一実施形態では、溶液は投与の前に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)で希釈される。別の実施形態では、溶液は投与の前に50±15mg/mLのラブリズマブ(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65mg/mLのラブリズマブ)の濃度に希釈される。特定の実施形態では、溶液は投与の前に約50mg/mLのラブリズマブの濃度に希釈される。別の実施形態では、溶液は希釈後2℃~8℃(36°F~46°F)で最大24時間安定である。別の実施形態では、例えば溶液をナトリウム制限(例えば低ナトリウム)食事療法中の患者に投与するときなど、食塩水(例えば塩化ナトリウム)の量を任意選択的に低減してもよい。
【0023】
一実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に7種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に6種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に5種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に4種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に3種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に2種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に1種以下の剤を含む。
【0024】
別の実施形態では、安定な水溶液は、100±20(例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、又は120)mg/mLの濃度のラブリズマブ、50±15(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65)mMのリン酸緩衝液、5±3(例えば2、3、4、5、6、7、又は8)%のスクロース、及び25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35)mMのアルギニンを含むか又はこれからなり、ここで溶液は7.4±0.5(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、又は7.9)のpHを有する。
【0025】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0026】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0027】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0028】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0029】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0030】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0031】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0032】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0033】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0034】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0035】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0036】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0037】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0038】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0039】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0040】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0041】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0042】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0043】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0044】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0045】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0046】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0047】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0048】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0049】
別の実施形態では、安定な水溶液は滅菌である。別の実施形態では、溶液は滅菌で半透明の清澄~帯黄色である防腐剤フリー溶液である。別の実施形態では、溶液は18ヶ月の貯蔵寿命を有する。
【0050】
本明細書に記載される溶液は、任意の好適な投与方法用に配合され得る。一実施形態では、溶液は非経口的方法による投与用に配合される(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射)。特定の実施形態では、溶液は皮下投与用に配合される。例えば、一実施形態では、安定な水溶液は、100mg/mLの濃度の抗C5抗体を含み、且つ皮下投与用に配合される。別の特定の実施形態では、溶液は(例えば静脈内注入を介した)静脈内投与用に配合される。例えば、一実施形態では、安定な水溶液は、100mg/mLの濃度のラブリズマブを含み、且つ静脈内注入用に配合される。
【0051】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの一実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、SEC-HPLC(例えばゲル透過HPLC)によって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも9ヶ月間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも1年間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも18ヶ月間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも2年間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。
【0052】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、SEC-HPLC(例えばゲル透過HPLC)によって判定して、溶液中の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の5%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の4%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の3%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の2%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の1%未満が凝集化する。
【0053】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも9ヶ月間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも1年間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも18ヶ月間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも2年間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも3年間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。
【0054】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも9ヶ月間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも1年間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも18ヶ月間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも2年間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも3年間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。
【0055】
補体関連疾患を患うヒト患者を治療する方法であって、補体関連疾患を治療するのに有効な量の本明細書に記載される安定な水溶液を(例えば静脈内注入を介して)患者に投与することを含む、方法も提供される。例示的な補体関連疾患としては、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血再灌流傷害、血栓性微小血管症(TMA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、典型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、デンスデポジット病、視神経脊髄炎、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、黄斑変性症、HELLP症候群、自発性流産、血栓性血小板減少性紫斑病、微量免疫性血管炎、表皮水疱症、習慣性流産、外傷性脳損傷、心筋炎、脳血管障害、末梢血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸血管障害、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病、静脈気体塞栓、ステント留置後再狭窄、回転アテローム切除術、経皮経管冠動脈拡張術、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、発作性寒冷血色素尿症、抗リン脂質症候群、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身炎症反応敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、移植片拒絶反応、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、ドゴー病、及び劇症型抗リン脂質症候群が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、補体関連疾患はaHUSである。別の特定の実施形態では、補体関連疾患はTMAである。別の特定の実施形態では、補体関連疾患はPNHである。
【0056】
一実施形態では、ヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、患者の体重に基づいて患者に安定な水溶液を投与することを含む。例えば、一実施形態では、PNHを患うヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、(例えば静脈内注入を介して)患者に安定な水溶液を投与することを含み、ここで安定な水溶液は約7.4のpHを有し、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含むか、或いはこれらからなり、ここで安定な水溶液は、
(a)1日目に、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して2,400mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して2,700mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,000mgの用量で;
並びに
(b)15日目、及びその後8週間ごとに、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して3,000mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して3,300mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,600mgの用量で、ヒト患者に投与される。
【0057】
一実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で投与される。別の実施形態では、水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で投与される。
【0058】
別の実施形態では、aHUSを患うヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、(例えば静脈内注入を介して)患者に安定な水溶液を投与することを含み、ここで安定な水溶液は約7.4のpHを有し、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含むか、或いはこれらからなり、ここで安定な水溶液は、
(b)1日目に、
体重が≧5kg~<10kgの患者に対して600mg、
体重が≧10kg~<20kgの患者に対して600mg、
体重が≧20kg~<30kgの患者に対して900mg、
体重が≧30kg~<40kgの患者に対して1,200mg、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して2,400mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して2,700mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,000mgの用量で;並びに
(b)15日目、及びその後4又は8週間ごとに、
体重が≧5kg~<10kgの患者に対して300mg、
体重が≧10kg~<20kgの患者に対して600mg、
体重が≧20kg~<30kgの患者に対して2,100mg、
体重が≧30kg~<40kgの患者に対して2,700mg、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して3,000mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して3,300mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,600mgの用量で、ヒト患者に投与される。
【0059】
一実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、並びに15日目、及びその後4週間ごとに300mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、並びに15日目、及びその後4週間ごとに600mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、1日目に900mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに2,100mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、1日目に1,200mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに2,700mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルで供給される。別の実施形態では、安定な水溶液は、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルで供給される。
【0060】
他の実施形態では、安定な水溶液は、患者の体重に関係なく固定された均一固定用量で投与される。例えば、安定な水溶液は、患者の体重に関係なく1000、1400、1600、1800、2000、2400、3000、又は5400mgの固定用量で投与され得る。特定の実施形態では、投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、効果的応答)をもたらすように調節される。
【0061】
別の実施形態では、安定な水溶液は、誘導期の間に3000mgの用量でヒト患者に投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、誘導期の間に3000mgの用量で1回ヒト患者に投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、維持期の間に5400mgの用量でヒト患者に投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、維持期の間に5400mgの用量で3回ヒト患者に投与される。例えば、抗C5抗体、又はその抗原結合フラグメントは、投与サイクルの29日目、及び続いてその後は維持期中に84日(又は12週間)ごと、すなわち投与サイクルの113日目及び197日目に、5400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、ヒト患者に、(a)1日目に3,000mgの用量、(b)それから4週間後に5,400mgの用量、及び続いて(c)その後84日(又は12週間)ごとに5,400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、ヒト患者に、(a)誘導期中の投与サイクルの1日目に3,000mg、並びに(b)維持期中の投与サイクルの29日目、及び続いてその後84日(又は12週間)ごとに5,400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、ヒト患者に、(a)誘導期中の投与サイクルの1日目に3,000mg、並びに(b)維持期中の投与サイクルの29日目、113日目、及び197日目に5,400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、10mg/mLの濃度のラブリズマブを含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、100mg/mLの濃度のラブリズマブを含む。
【0062】
本明細書に記載される安定な水溶液を100mg/mL投与するための注入時間及び速度は、同等の低用量(例えば10mg/mL)の溶液の注入時間及び速度と比較して著しく(例えば少なくとも50%)低い。注入時間及び速度は、必要に応じて臨床医によって調節可能である。一実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、最小注入時間1.4時間及び最大注入速度8mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後4週間ごとに300mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度8mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度16mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後4週間ごとに600mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度16mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、1日目に900mgの用量で、最小注入時間0.6時間及び最大注入速度30mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに2,100mgの用量で、最小注入時間1.3時間及び最大注入速度33mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、1日目に1,200mgの用量で、最小注入時間0.5時間及び最大注入速度46mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに2,700mgの用量で、最小注入時間1.1時間及び最大注入速度49mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度64mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で、最小注入時間0.9時間及び最大注入速度65mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、最小注入時間0.6時間及び最大注入速度92mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で、最小注入時間0.7時間及び最大注入速度99mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、最小注入時間0.4時間及び最大注入速度144mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で、最小注入時間0.5時間及び最大注入速度144mL/時間で投与される。
【0063】
本明細書に記載される方法で使用するのに適した、本明細書に記載される安定な水溶液を治療的有効量で含むキットが更に提供された。一実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載される溶液のうちいずれか、及び(ii)使用説明書を備える。別の実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載される溶液のうちいずれか、(ii)生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)、及び(iii)使用説明書を備える。別の実施形態では、キットは、(i)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、及び約50mg/mLのスクロースを含むか或いはこれらからなる配合物、(ii)生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)、並びに(iii)使用説明書を備える。別の実施形態では、配合物は凍結乾燥されている。別の実施形態では、キットは、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルを含む。別の実施形態では、キットは、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルを含む。
【0064】
別の態様では、安定な濃縮抗体溶液を生産するための方法が提供される。一実施形態では、約10mg/mL以下の濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含む安定な水溶液を生産するための方法が提供され、方法は、
i)約10mg/mLのラブリズマブを含む第1の水溶液を提供することと、
ii)第1の水溶液を、pH7.4で約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水の配合物中にダイアフィルトレーションし、それにより第2の水溶液を生産することと、
iii)第2の水溶液を濃縮して、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含む安定な水溶液を生産することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】PNH患者における第II相臨床試験(「研究201」)の設計を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本開示は、高濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含有する特定の安定な水溶液を特徴とする。溶液は、補体関連障害の治療又は予防するための方法などの様々な治療的用途で使用することができる。断じて限定を意図するものではないが、例示的な溶液、配合物、治療用キット、及び上記のいずれかを製造及び使用するための方法を下記で詳細に説明し、実施例で例示する。
【0067】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明を実施又は試験するために本明細書に記載されるものと同様又は等価の任意の方法及び組成を使用できるが、好ましい方法及び組成を本明細書で記載する。
【0068】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り複数の指示対象を含む。
【0069】
特に所与の量又は数に関する用語「約」は、プラス又はマイナス10パーセント(±10%)(例えば±5%)以内の逸脱を包含することを意味する。
【0070】
用語「医薬配合物」は、活性成分の生物学的活性が明白に効果的であることを可能にするような形態であり、また配合物が投与される対象に対して有意な毒性のある追加成分を含有しない、製剤を指す。
【0071】
本明細書で使用するとき、「水性」医薬組成物とは、水性担体が水である、医薬的用途に好適な組成物である。医薬的用途に好適な組成物は、滅菌、均質、且つ/又は等張性であり得る。水性医薬組成物は、水性形態で直接調製することもでき、且つ/或いは、凍結乾燥物から再構成することもできる。
【0072】
「等張性」配合物とは、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有するものである。等張性配合物は、一般に、約275~350mOsm/kgの浸透圧を有する。用語「低張性」とは、浸透圧がヒト血液のそれよりも低い配合物を表す。同様に、用語「高張性」は、浸透圧がヒト血液のそれよりも高い配合物を表す。等張性は、例えば蒸気圧又は氷冷式浸透圧計を用いて測定することができる。「等張化剤」とは、配合物を等張性にする化合物である。
【0073】
本明細書で使用するとき、溶液の「オスモル濃度」とは、溶媒1キログラムあたりの溶質のオスモル数である。オスモル濃度は、溶液中に存在する粒子の数の指標であり、粒子のサイズ又は重量に依存しない。これは、粒子濃度にのみ依存する溶液の性質を用いることによってのみ測定することが可能である。これらの性質とは、蒸気圧降下、凝固点降下、沸点上昇、及び浸透圧であり、これらは集合的に束一的性質と称される。
【0074】
「滅菌」配合物とは、無菌であり、すなわちあらゆる生きた微生物及びその胞子が存在しないか又は本質的に存在しない。
【0075】
「安定な」配合物とは、本明細書で使用するとき、その中の抗体が貯蔵時にその物理的安定性及び/若しくは化学的安定性並びに/又は生物学的活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析手法が当該技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)で論評されている。抗C5抗体配合物の安定性は、選択された期間の後に選択された温度で測定することができる。例えば、貯蔵後の凝集体形成の増加は、水性抗C5抗体配合物の不安定性の指標である。凝集体形成に加えて、貯蔵寿命を通した元の清澄度、色、及び臭気の保持は、本明細書に記載される水性抗C5抗体溶液の安定性を観察するために用いられる指標である。
【0076】
抗体は、色彩及び/若しくは透明度を目視検査して、又は紫外線散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定して凝集、沈殿、及び/又は変性の徴候を実質的に示していない場合、抗体は、医薬配合物中で「その物理的安定性を保持している」。
【0077】
用語「凝集」とは、天然の折り畳みタンパク質が集合して非天然構造を含む凝集体を形成することを指す。凝集は、生理学的な非変性状態下であっても起こり得、これは不可逆的であり、不活性且つ場合によっては免疫原性及び毒性の非天然凝集体をもたらす場合が多い。
【0078】
本明細書で使用するとき、用語「低~検出不可能レベルの凝集」とは、ゲル透過高速液体クロマトグラフィー(GP-HPLC)、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、又は静的光散乱(SLS)技術によって測定して、タンパク質の重量に対して約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、及び約0.5%以下の凝集を含有する試料を指す。
【0079】
抗体は、所与の時間における化学的安定性が、抗体が下記で定義されるその生物学的活性を依然として保持すると見なされるものである場合、医薬配合物中で「その化学的安定性を保持している」。化学的安定性は、抗体の化学的に変化した形態を検出して定量化することによって評価することができる。化学的変化は、既知の技術、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、マトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)、及び/又はイオン交換クロマトグラフィーを用いて評価することが可能な、サイズ変更(例えばクリッピング)、アミド分解、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離、及びジスルフィド交換を伴い得る。
【0080】
医薬配合物中の抗体がその用途に関して生物学的に活性である場合、抗体は医薬配合物中で「その生物学的活性を保持している」。例えば、医薬配合物中の抗体の生物学的活性が、医薬配合物の調製時点で示される生物学的活性の(アッセイの誤差内で)約30%、約20%、又は約10%以内である場合(例えば、抗原結合アッセイで判定して)、生物学的活性は、保持されている。本明細書では、モノクローナル抗体の「生物学的活性」とは、抗体が抗原に結合する能力を指す。これは、抗原に結合し、インビトロ又はインビボで測定され得る測定可能な生物学的応答をもたらす抗体を更に含み得る。
【0081】
医薬生成物、例えば抗C5抗体を含む水溶液の「貯蔵寿命」とは、分解が起きるまでに生成物が貯蔵される時間の長さである。例えば、貯蔵寿命は、生成物の0.1%、0.5%、1%、5%、又は10%が分解するだけの時間として定義され得る。
【0082】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」とは、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域若しくはFv、又はCDR)を含むポリペプチドを表す。抗体は既知の形態の抗体を含む。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、又はキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディ、又はドメイン抗体でもあり得る。抗体は、次のアイソタイプのうちいずれかのものであってもよい:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、及びIgE。抗体は、天然の抗体であってもよく、タンパク質改変技術によって(例えば、突然変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションによって)変更された抗体であってもよい。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能特性)を変化させる1つ以上のバリアントアミノ酸(天然の抗体と比較して)を含んでもよい。例えば、例えば半減期、エフェクター機能、及び/又は患者における抗体に対する免疫応答に影響を与える多くのこうした変化が当該技術分野で既知である。用語抗体は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工的又は改変ポリペプチド構築物を更に含む。
【0083】
本明細書で使用するとき、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、及び「特異的に結合する」とは、抗体が、所定の抗原のエピトープに結合するが、他の抗原には結合しないことを指す。典型的に、抗体は、(i)例えば所定の抗原、例えばC5を分析質として、且つ抗体をリガンドとして用いるBIACORE(登録商標)2000表面プラズモン共鳴機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術、又は抗原陽性細胞に対する抗体の結合のスキャッチャード分析などによって判定して、約10-8M、10-9M、若しくは10-10M、又は更にはそれ未満などの約10-7M未満の平衡解離定数(K)で結合し、(ii)所定の抗原又は近縁の抗原以外の非特異性抗原(例えばBSA、カゼイン)に対するその結合の親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で所定の抗原に結合する。したがって、別段の指摘がない限り、「ヒトC5に特異的に結合する」抗体とは、約10-8M、10-9M、若しくは10-10M、又は更にはそれ未満などの10-7M以下のKで可溶性又は細胞結合性ヒトC5に結合する抗体を指す。
【0084】
本明細書で使用するとき、用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)を使用してバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより実時間生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。更なる説明に関しては、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26;Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques 11:620-627;Johnsson,B.,et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125-131;及びJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268-277を参照されたい。
【0085】
本明細書で使用するとき、用語「Koff」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の解離速度定数(off rate constant)を指すことが意図される。
【0086】
本明細書で使用するとき、用語「K」とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指すことが意図される。
【0087】
本明細書で使用するとき、用語「対象」又は「患者」は本明細書では互換的に使用され、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、雌ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物を指す。一実施形態では、患者はヒト患者(例えば補体関連疾患を有するヒト患者)である。
【0088】
本明細書で使用するとき、用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、本明細書に記載される療法的処置を指す。「治療」の方法は、疾患若しくは障害又は再発性疾患若しくは障害の1つ以上の症状を治癒するか、遅延させるか、その重症度を低減させるか、又は回復させるために、或いは、対象の生存を、こうした治療が存在しない場合に予期されるよりも長引かせるために、本明細書に開示される組み合わせを対象に投与することを用いる。
【0089】
本明細書で使用するとき、「効果的な治療」とは、有益な効果、例えば疾患又は障害の少なくとも1つの症状の回復をもたらす治療を指す。有益な効果は、ベースラインを上回る改善、すなわち、本方法による療法の開始前に行われた測定又は観察を上回る改善の形態を取り得る。有効な治療とは、疾患又は状態の少なくとも1つの症状の緩和を指し得る。
【0090】
用語「有効量」とは、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的な結果を提供する剤の量を指す。この結果とは、疾患又は状態の徴候、症状、若しくは原因のうち1つ以上の低減、改善、軽減、減少、遅延、及び/若しくは緩和、又は生体系の任意の他の所望の変化であり得る。一実施例では、「有効量」とは、疾患又は状態の少なくとも1つの症状を緩和させるだけの安定な水溶液の量である。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。
【0091】
本明細書で使用するとき、用語「誘導」及び「誘導期」は、互換的に使用され、治療の第1段階を指す。
【0092】
本明細書で使用するとき、用語「維持」及び「維持期」は、互換的に使用され、治療の第2段階を指す。特定の実施形態では、治療は、臨床的有益性が観察される限り、或いは制御できない毒性又は疾患進行が起きるまで、継続される。
【0093】
II.抗C5抗体
本発明の使用に好適な抗C5抗体(又はそれから誘導されるVH/VLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を用いて生成することができる。或いは、当該技術分野で認知される抗C5抗体を用いてもよい。C5への結合に関してこれら当該技術分野で認知される抗体のうちいずれかと競合する抗体を用いてもよい。
【0094】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)、又はその抗原結合フラグメント及びバリアントである。ラブリズマブ(別名BNJ441及びALXN1210)は、その教示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開US2015/019225号パンフレット及び米国特許第9,079,949号明細書で説明されている。用語ULTOMIRIS(登録商標)、ラブリズマブ、BNJ441、及びALXN1210は、本書全体を通して互換的に使用され得る。ラブリズマブは、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合して、補体活性化中にそれがC5a及びC5bに開裂することを阻害する。この阻害が、微生物のオプソニン化及び免疫複合体の除去に不可欠補体活性化の近位又は初期成分(例えばC3及びC3b)を保存しながら、炎症促進性媒介物質C5aの放出、及び細胞溶解性孔形成膜攻撃複合体(MAC)C5b-9の形成を防ぐ。
【0095】
他の実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に記載される配列を有するラブリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に記載される配列を有するラブリズマブのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18、及び3に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びにそれぞれ配列番号4、5、及び6に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0096】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗体BNJ421、又はその抗原結合フラグメント及びバリアントである。BNJ421(別名ALXN1211)は、その教示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開US2015/019225号パンフレット及び米国特許第9,079,949号明細書で説明されている。
【0097】
他の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に記載される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に記載される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18、及び3に記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びにそれぞれ配列番号4、5、及び6に記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0098】
CDRの厳密な境界は、様々な方法に応じて様々に定義されている。いくつかの実施形態では、軽鎖又は重鎖可変ドメイン内のCDR又はフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.[(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]によって定義される通りであり得る。こうした場合、CDRは「Kabat CDR」(例えば「Kabat LCDR2」又は「Kabat HCDR1」)と称されてもよい。いくつかの実施形態では、軽鎖又は重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883によって定義される通りであり得る。したがって、これらの領域は「Chothia CDR」(例えば「Chothia LCDR2」又は「Chothia HCDR3」)と称されてもよい。いくつかの実施形態では、軽鎖及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothiaの組み合わせの定義によって定義される通りであり得る。こうした実施形態では、これらの領域は「組み合わせKabat-Chothia CDR」と称され得る。Thomas et al.[(1996)Mol Immunol 33(17/18):1389-1401]は、Kabat及びChothiaの定義に従うCDR境界の同定を例示している。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含むか、或いはこれらからなる重鎖CDR1を含む:
【化1】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含むか、或いはこれらからなる重鎖CDR2を含む:
【化2】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む:
【化3】
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIK(配列番号8)。
【0101】
本明細書に記載される抗C5抗体は、いくつかの実施形態では、バリアントヒトFc定常領域が誘導される天然ヒトFc定常領域の親和性よりも高い親和性でヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み得る。例えば、このFc定常領域は、バリアントヒトFc定常領域が誘導される天然ヒトFc定常領域に対して1つ以上(例えば2、3、4、5、6、7、又は8以上)のアミノ酸置換を含み得る。この置換は、相互作用のpH依存性を維持しながら、pH6.0でのFcRnに対するバリアントFc定常領域を含有するIgG抗体の結合親和性を増加させ得る。抗体中のFc定常領域における1つ以上の置換が(相互作用のpH依存性を維持しながら)pH6.0でのFcRnに対するFc定常領域の親和性を増加させるかどうかを試験するための方法は、当該技術分野で既知であり、実施例で例示されている。例えば、それぞれの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開US2015/019225号パンフレット及び米国特許第9,079,949号明細書を参照されたい。
【0102】
FcRnに対する抗体Fc定常領域の結合親和性を強化する置換は、当該技術分野で既知であり、例えば、(1)Dall’Acqua et al.(2006)J Biol Chem 281:23514-23524によって説明されるM252Y/S254T/T256E三重置換;(2)Hinton et al.(2004)J Biol Chem 279:6213-6216及びHinton et al.(2006)J Immunol 176:346-356で説明されるM428L又はT250Q/M428L置換;及び(3)Petkova et al.(2006)Int Immunol 18(12):1759-69で説明されるN434A又はT307/E380A/N434A置換が挙げられる。追加の置換対合:P257I/Q311I、P257I/N434H、及びD376V/N434Hが、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれるDatta-Mannan et al.(2007)J Biol Chem 282(3):1709-1717に記載される。
【0103】
いくつかの実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基255においてバリンへの置換を有する。いくつかの実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基309においてアスパラギンへの置換を有する。いくつかの実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基312においてイソロイシンへの置換を有する。いくつかの実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基386において置換を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、バリアントFc定常領域は、それが誘導された天然定常領域に対して、30以下(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2以下)のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を含む。いくつかの実施形態では、バリアントFc定常領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I、及びV308Fからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアントヒトFc定常領域は、各々EUナンバリングで、428位にメチオニン、及び434位にアスパラギンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントFc定常領域は、例えば、米国特許第8,088,376号明細書に記載される428L/434S二重置換を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、これらの変異の正確な位置は、抗体改変のために天然ヒトFc定常領域位置から移動している場合がある。例えば、IgG2/4キメラFcで使用される場合の428L/434S二重置換は、ラブリズマブ(BNJ441)で見出されるM429L及びN435Sバリアント中にあり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,079,949号明細書に記載される、429L及び435Sに対応し得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、バリアント定常領域は、天然ヒトFc定常領域に対して237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434、又は436のアミノ酸位(EUナンバリング)に置換を含む。いくつかの実施形態では、置換は、237位でのメチオニンからグリシン;238位でのアラニンからプロリン;239位でのリジンからセリン;248位でのイソロイシンからリジン;250位でのアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシンからスレオニン;252位でのフェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシンからメチオニン;254位でのスレオニンからセリン;255位でのグルタミン酸からアルギニン;256位でのアスパラギン酸、グルタミン酸、又はグルタミンからスレオニン;257位でのアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、スレオニン、又はバリンからプロリン;258位でのヒスチジンからグルタミン酸;265位でのアラニンからアスパラギン酸;270位でのフェニルアラニンからアスパラギン酸;286位でのアラニン又はグルタミン酸からアスパラギン;289位でのヒスチジンからスレオニン;297位でのアラニンからアスパラギン;298位でのグリシンからセリン;303位でのアラニンからバリン;305位でのアラニンからバリン;307位でのアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシンからスレオニン;308位でのアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、又はスレオニンからバリン;309位でのアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、又はアルギニンからロイシン又はバリン;311位でのアラニン、ヒスチジン、又はイソロイシンからグルタミン;312位でのアラニン又はヒスチジンからアスパラギン酸;314位でのリジン又はアルギニンからロイシン;315位でのアラニン又はヒスチジンからアスパラギン;317位でのアラニンからリジン;325位でのグリシンからアスパラギン;332位でのバリンからイソロイシン;334位でのロイシンからリジン;360位でのヒスチジンからリジン;376位でのアラニンからアスパラギン酸;380位でのアラニンからグルタミン酸;382位でのアラニンからグルタミン酸;384位でのアラニンからアスパラギン又はセリン;385位でのアスパラギン酸又はヒスチジンからグリシン;386位でのプロリンからグルタミン;387位でのグルタミン酸からプロリン;389位でのアラニン又はセリンからアスパラギン;424位でのアラニンからセリン;428位でのアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、又はチロシンからメチオニン;433位でのリジンからヒスチジン;434位でのアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、又はチロシンからアスパラギン;及び436位でのヒスチジンからチロシン又はフェニルアラニンからなる群から選択される(全てEUナンバリング)。
【0107】
本明細書に記載される方法で使用するのに好適な抗C5抗体は、いくつかの実施形態では、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。或いは、本明細書に記載される方法で使用するのに好適な抗C5抗体は、いくつかの実施形態では、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0108】
一実施形態では、抗体は、pH7.4及び25℃で(及び、さもなければ生理学的条件下で)、少なくとも0.1(例えば、少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95、又は0.975)nMの親和性解離定数(K)で、C5に結合する。いくつかの実施形態では、抗C5抗体、又はその抗原結合フラグメントのKは、1nM以下(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、又は0.2nM以下)である。
【0109】
その他の実施形態では、[(pH6.0及びCにおけるC5に対する抗体のK)/(pH7.4及び25℃におけるC5に対する抗体のK)]は、21超(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、又は8000超)である。
【0110】
抗体がタンパク質抗原に結合するかどうか、及び/又はタンパク質抗原に対する抗体の親和性を判定するための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、タンパク質抗原に対する抗体の結合は、ウエスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)、又は酵素結合免疫測定アッセイ(ELISA)などであるがこれらに限定されない様々な技術を用いて検出及び/又は定量化が可能である。例えば、Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,”Humana Press(ISBN:1588290921);Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198;Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26;及びJonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627を参照されたい。更に、親和性(例えば解離及び結合定数)を測定する方法が、実施例に記載される。
【0111】
本明細書で使用するとき、用語「k」は、抗原に対する抗体の結合の速度定数を指す。用語「k」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を指す。また、用語「K」は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、運動速度定数の比から推定される(K=k/k)。こうした判定は、25℃又は37℃で測定することが好ましい(実施例を参照されたい)。例えば、ヒトC5に結合する抗体の動態は、BIAcore3000機器上の表面プラズモン共鳴(SPR)を介し、抗体を不動化する抗Fc捕捉法を用いて、pH8.0、7.4、7.0、6.5、及び6.0で判定され得る。
【0112】
一実施形態では、抗C5抗体、又はその抗原結合フラグメントは、C5タンパク質(例えばヒトC5タンパク質)のC5a及び/又はC5b活性フラグメントの生成又は活性を遮断する。この遮断効果によって、抗体は、例えばC5aの炎症促進効果、及び細胞の表面におけるC5b-9膜攻撃複合体(MAC)の生成を阻害する。
【0113】
本明細書に記載される特定の抗体がC5の開裂を阻害するかどうかを判定するための方法は、当該技術分野で既知である。ヒト補体成分C5の阻害は、対象の体液中の補体の細胞溶解能力を低減することができる。体液中に存在する補体の細胞溶解能力のこうした低減は、例えば、Kabat and Mayer(eds.),“Experimental Immunochemistry,2nd Edition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages 135-139によって記載される溶血アッセイなどの従来の溶血アッセイ、又は、例えばHillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載されるニワトリ赤血球溶血法などの、このアッセイの従来型変形によるものなどの、当該技術分野で周知される方法によって測定することができる。候補化合物がヒトC5から形態C5a及びC5bへの開裂を阻害するかどうかを判定するための方法は当該技術分野で既知であり、Evans et al.(1995)Mol Immunol 32(16):1183-95で説明されている。例えば、体液中のC5a及びC5bの濃度及び/又は生理学的活性は、当該技術分野で周知される方法によって測定することができる。C5bの場合、溶血アッセイ、又は本明細書で論じられる可溶性C5b-9のためのアッセイを用いることができる。当該技術分野で既知のその他のアッセイを用いてもよい。これら、又はその他の好適な種類のアッセイを用いて、ヒト補体成分C5を阻害することのできる候補薬剤をスクリーニングすることができる。
【0114】
ELISAなどであるがこれに限定されない免疫学的技法を用いて、C5から生物学的活性産物への変換を阻害する抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントの能力を判定するために、C5及び/又はその分解産物のタンパク質濃度を測定することができる。いくつかの実施形態では、C5aの生成が測定される。いくつかの実施形態では、C5b-9ネオエピトープ特異性抗体を用いて、終末補体の形成を検出する。
【0115】
溶血アッセイを用いて、補体活性化に対する抗C5抗体、又はその抗原結合フラグメントの阻害活性を判定することができる。インビトロでの血清試験溶液中の古典的な補体経路媒介性溶血に対する抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントの効果を判定するために、例えば、溶血素でコーティングしたヒツジ赤血球又は抗ニワトリ赤血球抗体で感作したニワトリ赤血球を標的細胞として使用する。溶解のパーセンテージは、100%溶解をその阻害剤の不在下で起きる溶解と等しいと見なすことによって正規化される。いくつかの実施形態では、古典的補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Classical Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL CP310,Euro-Diagnostica,Sweden)において利用されるヒトIgM抗体によって活性化される。簡潔には、試験血清は、ヒトIgM抗体の存在下で抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントと共にインキュベートされる。生成されるC5b-9の量は、混合物を酵素標識抗C5b-9抗体及び蛍光原基質と接触させ、適切な波長で吸光度を測定することによって測定される。対照として、試験血清が抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントの不在下でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、試験血清は、C5ポリペプチドで再構成したC5欠乏血清である。
【0116】
代替経路媒介性溶血に対する抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントの効果を判定するために、非感作ウサギ又はモルモット赤血球が標的細胞として使用され得る。いくつかの実施形態では、血清試験溶液は、C5ポリペプチドで再構成したC5欠乏血清である。溶解のパーセンテージは、100%溶解をその阻害剤の不在下で起きる溶解と等しいと見なすことによって正規化される。いくつかの実施形態では、代替的補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Alternative Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL AP330,Euro-Diagnostica,Sweden)において利用されるリポ多糖分子によって活性化される。簡潔には、試験血清は、リポ多糖の存在下で抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントと共にインキュベートされる。生成されるC5b-9の量は、混合物を酵素標識抗C5b-9抗体及び蛍光原基質と接触させ、適切な波長で蛍光を測定することによって測定される。対照として、試験血清が抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントの不在下でインキュベートされる。
【0117】
いくつかの実施形態では、C5活性又はその阻害は、CH50eqアッセイを使用して定量化される。CH50eqアッセイは、血清中の全古典的補体活性を測定するための方法である。この試験は、50%溶解を得るために必要な量(CH50)を判定するために、古典的補体経路の活性化因子として抗体感作された赤血球、及び試験血清の種々の希釈を使用する溶解アッセイである。溶血パーセントは、例えば、分光光度計を使用して判定され得る。CH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC)形成の間接的な尺度を提供するが、それは、TCC自体が、測定される溶血を直接司るからである。
【0118】
アッセイは周知されており、当業者によって一般的に実施される。簡潔には、古典的補体経路を活性化するために、未希釈血清試料(例えば、再構成されたヒト血清試料)が、抗体感作された赤血球を含有するマイクロアッセイウェルに添加され、それによってTCCが生成される。次に、活性化された血清は、捕捉試薬(例えば、TCCの1つ以上の成分に結合する抗体)でコーティングされたマイクロアッセイウェル中で希釈される。活性化された試料中に存在するTCCは、マイクロアッセイウェルの表面をコーティングするモノクローナル抗体に結合する。ウェルは洗浄され、各ウェルに、検出可能に標識されて、結合されたTCCを認識する検出試薬が添加される。検出可能な標識は、例えば、蛍光標識又は酵素標識であり得る。アッセイの結果は、1ミリリットルあたりのCH50単位当量(CH50 U Eq/mL)で表される。
【0119】
阻害は、例えば、終末補体活性に関する場合、類似の条件下及び等モル濃度における対照抗体(又はその抗原結合フラグメント)の効果と比較した、例えば、溶血アッセイ又はCH50eqアッセイにおける、終末補体の活性における少なくとも5(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60)%の減少を含む。実質的な阻害とは、本明細書で使用するとき、少なくとも40(例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90若しくは95又はそれを超える)%の、所与の活性(例えば、終末補体活性)の阻害を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、エクリズマブのCDR(すなわち、配列番号1~6)に対して1つ以上のアミノ酸置換を含有するが、溶血アッセイ又はCH50eqアッセイにおいて、エクリズマブの補体阻害活性の少なくとも30(例えば、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95)%を依然として保持する。
【0120】
本明細書に記載される抗C5抗体は、少なくとも20(例えば、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、又は55)日である、ヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、少なくとも40日であるヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、約43日であるヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、39~48日であるヒトにおける血清半減期を有する。抗体の血清半減期を測定するための方法は、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、実施例に記載されるマウスモデル系のうちの1つ(例えば、C5欠損/NOD/scidマウス、又はhFcRnトランスジェニックマウスモデル系)において測定して、エクリズマブの血清半減期よりも少なくとも20(例えば、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、500)%長い血清半減期を有する。
【0121】
一実施形態では、抗体は、本明細書に記載される抗体と、C5上の同じエピトープとの結合について競合し、且つ/又はC5上の同じエピトープに結合する。2つ以上の抗体に関する、「同じエピトープに結合する」という用語は、抗体が、所与の方法によって決定して、アミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載される抗体と、「C5上の同じエピトープ」に結合するかどうかを判定するための技術としては、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析、及び水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)が挙げられる。他の方法は、ペプチド抗原フラグメント又は変異した変形形態の抗原への抗体の結合を監視し、ここで抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の喪失は、エピトープ成分の指標と見なされる場合が多い。更に、エピトープマッピングのためのコンビナトリアル計算法もまた使用され得る。これらの方法は、特定の短いペプチドをコンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリから親和性単離する、目的の抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2、及び3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予測される。
【0122】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体とは、標的に対する他の抗体の結合を(部分的又は完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するかどうか、すなわち、一方の抗体が標的に対する他方の抗体の結合を阻害するかどうか、及びどの程度まで阻害するかは、既知の競合実験を用いて判定され得る。特定の実施形態では、抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%、標的への結合について別の抗体と競合し、且つ標的に対する別の抗体の結合を阻害する。阻害又は競合のレベルは、どちらの抗体が「遮断性抗体」(すなわち、最初に標的と共にインキュベートされる寒冷抗体(cold antibody))であるかに応じて異なり得る。競合する抗体は、(例えば、立体障害によって明らかであるように)同じエピトープ、重複エピトープ、又は隣接エピトープに結合する。
【0123】
本明細書に記載される方法で使用される、本明細書に記載される抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントは、様々な当該技術分野で認識された技術を用いて生成され得る。モノクローナル抗体は、当業者に知られた様々な技術によって得ることができる。簡潔には、所望の抗原で免疫化された動物由来の脾臓細胞は、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化される(Kohler&Milstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)を参照されたい)。代替的な不死化の方法としては、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、若しくはレトロウイルスによる形質転換、又は当該技術分野で周知される他の方法が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性及び親和性を有する抗体の産生についてスクリーニングされ、かかる細胞によって産生されたモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹腔中への注射を含む様々な技術によって増強され得る。或いは、Huse,et al.,Science 246:1275-1281(1989)によって概説された一般的プロトコルに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体又はその結合フラグメントをコードするDNA配列を単離することができる。
【0124】
III.高濃度抗C5抗体溶液
抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含む安定な水溶液が本明細書で提供される。本明細書に記載される水溶液は、例えば、PNH、TMA、又はaHUSなどの補体関連障害を治療又は予防するために対象に投与するための、滅菌の医薬グレード組成物であり得る。本明細書に記載される溶液は、標準法に従って配合され得る。医薬配合物は、十分に確立した技術分野であり、例えば、Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th Edition,Lippincott,Williams&Wilkins(ISBN:0683306472);Ansel et al.(1999)“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,”7th Edition,Lippincott Williams&Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);及びKibbe(2000)“Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,”3rd Edition(ISBN:091733096X)で更に説明されている。本明細書に記載される高濃度抗体溶液に好適な配合は、実施例で例示されている。
【0125】
本明細書に記載される水溶液は、ラブリズマブなどのヒト補体成分C5に結合する高濃度の抗体を含む。こうした溶液は、本明細書では、「高濃度抗体溶液」と称される場合もある。本明細書で使用するとき、水溶液中で「高濃度」の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)とは、少なくとも40mg/mLであるか、これに等しいか、又はこれを超える(例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、又は300mg/mLであるか、これに等しいか、又はこれを超える)抗体の濃度である。一実施形態では、抗C5抗体は溶液中に100mg/mL超(例えば105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、又は195mg/mL超)の濃度で存在する。別の実施形態では、抗C5抗体は溶液中に200mg/mL超(例えば200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、又は295mg/mL超)の濃度で存在する。別の実施形態では、抗C5抗体は、溶液中に300mg/mL超の濃度で存在する。別の実施形態では、抗体は、溶液中に、例えば40mg/mL~200mg/mL、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~200mg/mL、70mg/mL~200mg/mL、80mg/mL~200mg/mL、90mg/mL~200mg/mL、100mg/mL~200mg/mL、110mg/mL~200mg/mL、120mg/mL~200mg/mL、130mg/mL~200mg/mL、140mg/mL~200mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、40mg/mL~100mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、60mg/mL~100mg/mL、70mg/mL~100mg/mL、80mg/mL~100mg/mL、90mg/mL~100mg/mL、40mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、60mg/mL~150mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~150mg/mL、90mg/mL~150mg/mL、100mg/mL~150mg/mL、110mg/mL~150mg/mL、120mg/mL~150mg/mL、40mg/mL~50mg/mL、40mg/mL~250mg/mL、50mg/mL~250mg/mL、60mg/mL~250mg/mL、70mg/mL~250mg/mL、80mg/mL~250mg/mL、90mg/mL~250mg/mL、100mg/mL~250mg/mL、110mg/mL~250mg/mL、120mg/mL~250mg/mL、130mg/mL~250mg/mL、140mg/mL~250mg/mL、150mg/mL~250mg/mL、160mg/mL~250mg/mL、170mg/mL~250mg/mL、180mg/mL~250mg/mL、190mg/mL~250mg/mL、200mg/mL~250mg/mL、200mg/mL超(例えば、少なくとも201mg/mL)~250mg/mL、又は200mg/mL超(例えば、201mg/mL以上)~300mg/mLの濃度で存在する。
【0126】
特徴となる水溶液は、顕著な物理的及び化学的安定性、並びに機能的安定性を備える、その中に配合された抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を提供する。例えば、本明細書に記載される配合物は、溶液中に高濃度で存在する抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の構造的一体性を維持することができる。一実施形態では、溶液は2~8℃(例えば4℃)での貯蔵に好適である。別の実施形態では、溶液は0℃未満(例えば-20℃又は-80℃)の温度での貯蔵用に配合される。別の実施形態では、溶液は、2~8℃(例えば4℃)で最大3年間(例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、1年半、2年間、2年半、又は3年間)の貯蔵用に配合される。別の実施形態では、溶液は、2~8℃(例えば4℃)で少なくとも1、2、又は3年間の貯蔵に好適である。
【0127】
本明細書に記載される実施例で例示されるように、本明細書に記載される溶液は、約2℃~8℃で最大2年間、抗C5抗体を主にモノマー形態で約100mg/mLにて維持するのに好適である。本明細書で使用するとき、特徴となる水溶液中で高濃度で配合される抗C5抗体は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー高速液体クロマトグラフィー(ゲル透過HPLCなどのSEC-HPLC)を用いて判定して、溶液中に存在する抗体が、少なくとも95%(例えば、少なくとも95.1、95.2、95.3、95.4、95.5、95.6、95.7、95.8、95.9、96、96.1、96.2、96.3、96.4、96.5、96.6、96.7、96.8、96.9、97、97.1、97.2、97.3、97.4、97.5、97.6、97.7、97.8、97.9、98、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、若しくは99.9%、又はこれを超えて)モノマー性である場合は、「主にモノマー性」であるか、又は「主にモノマー形態」である。一実施形態では、本明細書に記載される溶液中の抗C5抗体は、約2℃~8℃で貯蔵(例えば、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10℃で貯蔵)後少なくとも1ヶ月間(例えば、少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、又はこれ以上)、主にモノマー性であり続けることができる。
【0128】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの一実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、SEC-HPLC(例えばゲル透過HPLC)によって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも9ヶ月間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも1年間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも18ヶ月間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも2年間、SEC-HPLCによって判定して少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98、又は99)%のモノマー性を維持する。
【0129】
別の実施形態では、溶液中の抗体の5%未満(例えば、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1%未満)が、オリゴマーであり、凝集し、且つ/又はフラグメント化している。本明細書で使用するとき、抗体フラグメント化とは、全抗体よりも低い分子量を有する、全抗体の不適切に集合した構成成分又は分解生成物を指す。こうしたフラグメント化形態としては、遊離モノマー重鎖ポリペプチド、ダイマー重鎖ポリペプチド(例えば、ジスルフィド結合重鎖ポリペプチド)、1つの軽鎖ポリペプチドに結合したダイマー重鎖ポリペプチド、1つの軽鎖ポリペプチドに結合したモノマー重鎖ポリペプチド、又は軽鎖若しくは重鎖ポリペプチドの更なる分解生成物又はフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体の2%未満(例えば、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1%未満)が、2℃~8℃で貯蔵後に少なくとも1ヶ月間(例えば、少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、又はこれ以上)凝集化する。いくつかの実施形態では、抗体の1%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1%未満)が、2℃~8℃で貯蔵後に少なくとも1ヶ月間(例えば、少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、又はこれ以上)フラグメント化する。溶液中に存在するモノマー性抗体の量及び抗C5抗体のオリゴマー、凝集、又はフラグメント化形態の量を判定するための方法は、本明細書に記載され、且つ実施例で例示される。例えば、当業者であれば、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー高速液体クロマトグラフィー(ゲル透過HPLCなどのSEC-HPLC)、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外分光(FTIR)、円二色性(CD)、尿素誘導タンパク質アンフォールディング技術、内在性トリプトファン蛍光、非還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、及び示差走査熱量測定(DSC)を用いて、所与の溶液中に存在する全ての、フラグメント化され、フォールディングされていない中間体、及び/又は凝集化抗体種のパーセンテージを判定することができる。
【0130】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの一実施形態では、SEC-HPLC(例えばゲル透過HPLC)によって判定して、溶液中の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の5%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の4%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の3%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の2%未満が凝集化する。別の実施形態では、SEC-HPLCによって判定して、溶液中の抗C5抗体の1%未満が凝集化する。
【0131】
本明細書に記載されるように、本明細書で特徴となる溶液を含有する抗C5抗体は、2℃~8℃で貯蔵後少なくとも1ヶ月間(例えば、少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、25月間、26ヶ月間、27ヶ月間、28ヶ月間、29ヶ月間、30ヶ月間、31ヶ月間、32ヶ月間、33ヶ月間、34ヶ月間、35ヶ月間、36ヶ月間、又はこれ以上)、その生物学的/機能的活性(例えばヒトC5に結合する能力)の少なくとも90(例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は更には100)%を保つことができる。
【0132】
別の実施形態では、本明細書に記載される溶液中に存在する抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、2℃~8℃で貯蔵後少なくとも1ヶ月間(例えば、少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、25月間、26ヶ月間、27ヶ月間、28ヶ月間、29ヶ月間、30ヶ月間、31ヶ月間、32ヶ月間、33ヶ月間、34ヶ月間、35ヶ月間、36ヶ月間、又はこれ以上)、その溶血を阻害する活性の少なくとも90(例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は更には100)%を保つことができる。特徴となる溶液中の抗体がその活性を保つかどうかを判定するための好適な溶血アッセイ法は、本明細書に記載されており、且つ当該技術分野で既知である(例えば、トリ又はブタ赤血球を用いたインビトロ溶血アッセイ)。抗体製剤がヒト補体成分C5に結合する能力を評価するための好適な方法は当該技術分野で既知であり、且つ本明細書に記載されている。
【0133】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも9ヶ月間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも1年間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも18ヶ月間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも2年間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。別の実施形態では、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも3年間、そのC5結合活性の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。
【0134】
本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも9ヶ月間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも6ヶ月間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも1年間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも18ヶ月間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも2年間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。本明細書に記載される溶液のうちいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、貯蔵前の抗C5抗体に対応する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で貯蔵中に少なくとも3年間、その溶血を阻害する能力の少なくとも80(例えば、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99)%を保持する。
【0135】
本明細書に記載される水溶液は、1つ以上の一般的薬剤(例えば、1つ以上の賦形剤及び/又は添加剤、例えば緩衝剤、糖若しくはサッカライド、塩、界面活性剤、可溶化剤、希釈剤、結合剤、安定剤、塩、親油性溶媒、アミノ酸、キレート剤、及び/又は防腐剤)を含有することができる。
【0136】
一実施形態では、水溶液は、1つ以上の緩衝剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「緩衝剤」とは、水溶液に添加されると、酸又はアルカリを添加したときに、又は溶媒で希釈したときのpHの変動から溶液を保護することが可能な1つ以上の成分を指す。一実施形態では、溶液は、少なくとも1つ以上の緩衝剤を含む。洗浄溶液に含まれ得る典型的な緩衝液の非限定的な例としては、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、ビス-トリス、ビス-トリスプロパン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ギ酸塩、酢酸塩、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、リン酸塩、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、クエン酸塩、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TAPS(3{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、カコジル酸塩(ジメチルアルシン酸)、SSC(クエン酸ナトリウム食塩液)、及びリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0137】
別の実施形態では、緩衝剤はアミノ酸である。アミノ酸は、例えば、ヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)、セリン(例えばL-セリン)、及びグリシン(例えばL-グリシン)からなる群から選択される1つであってもよい。別の実施形態では、溶液は、2つ以上の緩衝剤を含む。
【0138】
一実施形態では、特徴となる溶液は、緩衝剤として遊離アミノ酸を含まない。別の実施形態では、特徴となる溶液は、緩衝剤として1つだけの遊離アミノ酸(例えばヒスチジン)を含む。別の実施形態では、特徴となる溶液は、緩衝剤として、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ以上)の異なるアミノ酸、例えばセリン及びヒスチジンを含んでもよい。
【0139】
緩衝液の濃度は、所望のpHを維持するのに十分であり、また、例えば配合物の等張性を維持するように変化してもよい。非経口配合物に用いられる従来の緩衝剤の典型的な濃度は、以下で見出すことができる:Pharmaceutical Dosage Form:Parenteral Medications,Volume 1,2nd Edition,Chapter 5,p.194,De Luca and Boylan,“Formulation of Small Volume Parenterals”,Table 5:Commonly used additives in Parenteral Product。一実施形態では、配合物中の1つ以上の緩衝剤の濃度は、約10mM以上300mM以下である。別の実施形態では、溶液は10mM以上200mM以下の濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、本明細書に記載される水溶液は、少なくとも10mM(例えば、少なくとも15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mM以上)の濃度で緩衝剤を含む。別の実施形態では、水溶液は、約10mM~50mM、15mM~50mM、20mM~50mM、25mM~50mM、30mM~50mM、40mM~50mM、10mM~100mM、15mM~100mM、20mM~100mM、25mM~100mM、30mM~100mM、40mM~100mM、10mM~150mM、15mM~150mM、20mM~150mM、25mM~150mM、30mM~150mM、40mM~150mM、50mM~100mM、60mM~100mM、70mM~100mM、80mM~100mM、50mM~150mM、60mM~150mM、70mM~150mM、80mM~150mM、90mM~150mM、100mM~150mM、10mM~200mM、15mM~200mM、20mM~200mM、25mM~200mM、30mM~200mM、40mM~200mM、50mM~200mM、60mM~200mM、70mM~200mM、80mM~200mM、90mM~200mM、100mM~200mM、150mM~200mM、10mM~250mM、15mM~250mM、20mM~250mM、25mM~250mM、30mM~250mM、40mM~250mM、50mM~250mM、60mM~250mM、70mM~250mM、80mM~250mM、90mM~250mM、100mM~250mM、150mM~250mM、又は200mM~250mMの濃度で緩衝剤を含む。別の実施形態では、配合物中の緩衝液の濃度は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、90mM、95mM、又は約100mMである。別の実施形態では、緩衝剤は、溶液中に少なくとも20mM又は20mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、溶液中に少なくとも25mM又は25mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、溶液中に少なくとも50mM又は50mMに等しい濃度で存在する。特徴となる溶液が、2つ以上(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10以上)の異なる緩衝剤を含有する実施形態では、2つ以上の緩衝剤のそれぞれが、独立して、例えば上記の濃度のうちの1つで存在することができる。
【0140】
特定の実施形態では、緩衝剤は、一塩基性リン酸ナトリウムである。別の特定の実施形態では、緩衝剤は、二塩基性リン酸ナトリウムである。別の特定の実施形態では、緩衝剤は、約33.1mMの濃度の一塩基性リン酸ナトリウムである。別の特定の実施形態では、緩衝剤は、約16.5mMの濃度の二塩基性リン酸ナトリウムである。
【0141】
一実施形態では、溶液は、1つ以上の界面活性剤、例えばアニオン性、カチオン性、又は非イオン性界面活性剤を含有する。本明細書で使用するとき、用語「界面活性剤」とは、疎水性部分(例えばアルキル鎖)及び親水性部分(例えばカルボキシル基及びカルボキシレート基)の両方を含有する表面活性分子を指す。一実施形態では、配合物中の界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。特定の実施形態では、配合物中の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20、40、60、80、又はこれらの1つ以上の組み合わせである。一実施形態では、配合物中の界面活性剤は、ポリソルベート80(Tween 80)である。配合物に添加される界面活性剤の量は、配合された抗体の凝集を低減し、且つ/又は配合物中の粒子の形成を最小化するのに十分である。例えば、界面活性剤は、配合物中に約0.001%~約1%、又は約0.001%~約0.5%、又は約0.01%~約0.2%の量で存在してもよい。一実施形態では、水溶液は、界面活性剤を、少なくとも、又は約0.001%(例えば、少なくとも、又は約0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、又は0.5%以上)の濃度で含有する。別の実施形態では、水溶液は、0.2%以下(例えば0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、又は0.001%以下)の薬学的に許容される界面活性剤を含有する。
【0142】
別の実施形態では、配合物は、約0.001%~約0.5%、約0.005%~約0.2%、約0.01%~約0.1%、又は約0.02%~約0.06%、又は約0.03%~約0.05%(w/v)の濃度でポリソルベートを含む。特定の実施形態では、配合物は、0.01%、又は0.02%、又は0.03%、又は0.04%、又は0.05%、又は0.06%、又は0.07%、又は0.08%、又は0.09%、又は0.1%、又は0.15%、又は0.2%(w/v)の濃度でポリソルベートを含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、配合物中に0.02%又は約0.04%(w/v)の量で存在する。一実施形態では、界面活性剤は、配合物中に0.05%(w/v)の量で存在する。
【0143】
一実施形態では、配合物は、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.02%、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、又は少なくとも約0.5%のポリソルベート80を含む。特定の実施形態では、配合物は、約0.01%~約0.5%、約0.01%~約0.3%、約0.001%~約0.2%、約0.02%~約0.5%、約0.02%~約0.3%、約0.02%~約0.2%、約0.05%~約0.5%、約0.05%~約0.3%、約0.05%~約0.2%、約0.075%~約0.5%、約0.075%~約0.3%、又は約0.075%~約0.2%のポリソルベート80を含む。更なる実施形態では、配合物は、約0.01%、約0.02%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、又は約0.5%のポリソルベート80を含む。一実施形態では、配合物は、約0.05%のポリソルベート80を含む。一実施形態では、配合物は、約0.04%のポリソルベート80を含む。一実施形態では、配合物は、約0.03%のポリソルベート80を含む。一実施形態では、配合物は、約0.02%のポリソルベート80を含む。一実施形態では、配合物は、約0.01%のポリソルベート80を含む。
【0144】
一実施形態では、水溶液は、1つ以上の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又は塩化マグネシウムを含有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される水溶液は、少なくとも10mM(例えば、少なくとも15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mM以上)の濃度で塩を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される水溶液は、200mM未満又は約200mM(例えば190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、若しくは10mM未満、又は約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、若しくは10mM)の濃度で塩を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される水溶液は、約10mM~50mM、15mM~50mM、20mM~50mM、25mM~50mM、30mM~50mM、40mM~50mM、10mM~100mM、15mM~100mM、20mM~100mM、25mM~100mM、30mM~100mM、40mM~100mM、10mM~150mM、15mM~150mM、20mM~150mM、25mM~150mM、30mM~150mM、40mM~150mM、50mM~100mM、60mM~100mM、70mM~100mM、80mM~100mM、50mM~150mM、60mM~150mM、70mM~150mM、80mM~150mM、90mM~150mM、100mM~150mM、10mM~200mM、15mM~200mM、20mM~200mM、25mM~200mM、30mM~200mM、40mM~200mM、50mM~200mM、60mM~200mM、70mM~200mM、80mM~200mM、90mM~200mM、100mM~200mM、150mM~200mM、10mM~250mM、15mM~250mM、20mM~250mM、25mM~250mM、30mM~250mM、40mM~250mM、50mM~250mM、60mM~250mM、70mM~250mM、80mM~250mM、90mM~250mM、100mM~250mM、150mM~250mM、又は200mM~250mMの濃度で塩を含み得る。特徴となる溶液が、2つ以上(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10以上)の異なる塩を含有する実施形態では、2つ以上の塩のそれぞれが、独立して、例えば上記の濃度のうちの1つで存在することができる。特定の実施形態では、水溶液は塩化ナトリウムを含有する。
【0145】
一実施形態では、水溶液は、1つ以上の炭水化物賦形剤を含む。好適な炭水化物賦形剤は、例えば、Katakam and Banga(1995)J Pharm Pharmacol 47(2):103-107;Andya et al.(2003)AAPS PharmSci 5(2):Article 10;及びShire(2009)“Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing,”Volume 11,Springer,354 pagesに記載されている。本明細書に記載される溶液中で使用するのに好適な炭水化物賦形剤としては、限定するものでないが、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、及びソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びセロビオースなどの二糖類、マルトデキストリン、デキストラン、及びデンプンなどの多糖類、並びにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、及びソルビトールなどの糖アルコール類が挙げられる。一実施形態では、炭水化物賦形剤は、本発明で特徴となる溶液中に、少なくとも、又は約0.5%(例えば、少なくとも、又は約0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10%、又はこれ以上)の濃度で存在する。特徴となる溶液が、2つ以上(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10以上)の異なる炭水化物賦形剤を含有する実施形態では、各賦形剤は、独立して、上記の濃度のうちのいずれかで存在することができる。
【0146】
別の実施形態では、安定な水溶液は、1つ以上の安定化剤を含む。
【0147】
例示的な安定剤としては、ポリオール、糖(例えばスクロース又はトレハロース)、アミノ酸(例えばアルギニン)、アミン、及び塩析塩(salting out salt)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、溶液は、2%以上10%以下の濃度で少なくとも1つの安定化剤を含む。別の実施形態では、溶液は10mM以上50mM以下の濃度で少なくとも1つ以上の安定化剤を含む。別の実施形態では、安定化剤は、溶液中に少なくとも20mM又は20mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、安定化剤は、溶液中に少なくとも25mM又は25mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、安定化剤は、溶液中に少なくとも50mM又は50mMに等しい濃度で存在する。別の実施形態では、溶液は5%のスクロースを含む。別の実施形態では、溶液は、約30mg/mL~60mg/mL(例えば、約30mg/mL、31mg/mL、32mg/mL、33mg/mL、34mg/ml、35mg/ml、36mg/mL、37mg/mL、38mg/mL、39mg/mL、40mg/mL、41mg/mL、42mg/mL、43mg/mL、44mg/mL、45mg/mL、46mg/mL、47mg/mL、48mg/mL、49mg/mL、50mg/mL、51mg/mL、52mg/mL、53mg/mL、54mg/mL、55mg/mL、56mg/mL、57mg/mL、58mg/mL、59mg/mL、又は60mg/mL)のスクロースを含む。特定の実施形態では、溶液は50mg/mLのスクロースを含む。別の実施形態では、溶液は、20~30mMのアルギニン(例えばL-アルギニン)を含む。例えば、一実施形態では、溶液は、20mMのアルギニン、21mMのアルギニン、22mMのアルギニン、23mMのアルギニン、24mMのアルギニン、25mMのアルギニン、26mMのアルギニン、27mMのアルギニン、28mMのアルギニン、29mMのアルギニン、又は30mMのアルギニンを含む。特定の実施形態では、溶液は25mMのL-アルギニンを含む。
【0148】
別の実施形態では、溶液は注射用の水を含む。
【0149】
別の実施形態では、pHは7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、又は7.9である。別の実施形態では、溶液のpHは7.0~7.4である。別の実施形態では、溶液のpHは7.2~7.8である。別の実施形態では、溶液のpHは7.2~7.6である。特定の実施形態では、溶液のpHは7.4である。
【0150】
別の実施形態では、溶液は、薬物及びその他の治療用組成物を貯蔵するのに好適な任意の容器中にある。例えば、溶液は、密封及び滅菌されたバイアル、アンプル、シリンジ、カートリッジ、又は瓶などの所定の容積を有するプラスチック又はガラス容器内に収容され得る。本発明の溶液を収容するために、例えばガラス又はプラスチックバイアルを含む様々な種類のバイアルを用いることができる。一実施形態では、バイアルは3mLの単回使用バイアルである。別の実施形態では、バイアルは、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルである。別の実施形態では、バイアルは11mLの単回使用バイアルである。別の実施形態では、バイアルは、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルである。
【0151】
別の実施形態では、溶液は投与の前に希釈される。例えば、一実施形態では、溶液は投与の前に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)で希釈される。別の実施形態では、溶液は投与の前に50±15mg/mLのラブリズマブ(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65mg/mLのラブリズマブ)の濃度に希釈される。特定の実施形態では、溶液は投与の前に約50mg/mLのラブリズマブの濃度に希釈される。別の実施形態では、溶液は希釈後2℃~8℃(36°F~46°F)で最大24時間安定である。別の実施形態では、例えば溶液をナトリウム制限(例えば低ナトリウム)食事療法中の患者に投与するときなど、食塩水(例えば塩化ナトリウム)の量を任意に低減してもよい。
【0152】
一実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に7種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に6種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に5種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に4種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に3種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に2種以下の剤を含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、抗C5抗体、例えばラブリズマブの他に1種以下の剤を含む。
【0153】
別の実施形態では、安定な水溶液は、100±20(例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、又は120)mg/mLの濃度のラブリズマブ、50±15(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65)mMのリン酸緩衝液、5±3(例えば2、3、4、5、6、7、又は8)%のスクロース、及び25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35)mMのアルギニンを含むか又はこれからなり、ここで溶液は7.4±0.5(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、又は7.9)のpHを有する。
【0154】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0155】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0156】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0157】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0158】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0159】
一実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0160】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0161】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0162】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0163】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0164】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0165】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0166】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0167】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)50mg/mLのスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0168】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0169】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)約0.05w/v%のポリソルベート80、(d)約25mMのL-アルギニン、(e)約5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0170】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約50mMのリン酸ナトリウム、(c)0.05w/v%のポリソルベート80、(d)25mMのL-アルギニン、(e)5w/v%のスクロース、及び(f)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0171】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0172】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0173】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)5w/v%のスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水を含み、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0174】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)約0.05w/v%のポリソルベート80、(f)約25mMのL-アルギニン、(g)約50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、約7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0175】
別の実施形態では、安定な水溶液は:(a)100mg/mLの濃度のラブリズマブ、(b)33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、(c)16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、(d)0.05w/v%のポリソルベート80、(f)25mMのL-アルギニン、(g)50mg/mLのスクロース、及び(h)注射用の水からなり、ここで溶液は、7.4のpHを有し、1100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアル中に収容される。
【0176】
別の実施形態では、安定な水溶液は滅菌である。別の実施形態では、溶液は滅菌で半透明の清澄~帯黄色である防腐剤フリー溶液である。別の実施形態では、溶液は18ヶ月の貯蔵寿命を有する。
【0177】
本明細書に記載される溶液は、任意の好適な投与方法用に配合され得る。一実施形態では、溶液は非経口的方法による投与用に配合される(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射)。特定の実施形態では、溶液は皮下投与用に配合される。例えば、一実施形態では、安定な水溶液は、100mg/mLの濃度の抗C5抗体を含み、且つ皮下投与用に配合される。別の特定の実施形態では、溶液は(例えば静脈内注入を介した)静脈内投与用に配合される。例えば、一実施形態では、安定な水溶液は、100mg/mLの濃度のラブリズマブを含み、且つ静脈内注入用に配合される。
【0178】
III.治療方法
記載される溶液は、ヒト患者における様々な疾患及び状態を治療するために用いられ得る。一実施形態では、溶液は、関節リウマチ(RA)、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血再灌流傷害、血栓性微小血管症(TMA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、典型又は感染性溶血性尿毒症症候群(tHUS)、デンスデポジット病(DDD)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、視神経脊髄炎(NMO)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、多発性硬化症(MS)、黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD))、溶血、肝酵素増加、及び低血小板(HELLP)症候群、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自発性流産、微量免疫性血管炎、表皮水疱症、習慣性流産、及び外傷性脳損傷が挙げられるがこれらに限定されない補体関連障害を治療するために用いられ得る(例えば、Holers(2008)Immunological Reviews 223:300-316及びHolers and Thurman(2004)Molecular Immunology 41:147-152を参照されたい)。
【0179】
別の実施形態では、補体関連障害は、糖尿病関連血管障害(例えば、眼の)、網膜中心静脈閉塞症、心臓血管障害、心筋炎、脳血管障害、末梢(例えば、筋骨格)血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸血管障害、移植片及び/又は再移植片への血管再生、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病(動脈炎)、静脈気体塞栓(VGE)、及びステント留置後再狭窄、回転アテローム切除術、並びに経皮経管冠動脈拡張術(PTCA)などであるがこれらに限定されない補体関連血管障害である(例えば、米国特許出願公開第20070172483号明細書を参照されたい)。
【0180】
追加の補体関連障害としては、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、ギラン・バレー症候群、ドゴー病、移植片拒絶反応(例えば移植拒絶反応)、敗血症、熱傷(例えば重度熱傷)、全身炎症反応敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、グッドパスチャー症候群、抗リン脂質症候群(APS)、劇症型APS(CAPS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、及び慢性炎症性脱髄性ニューロパチーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0181】
別の実施形態では、本明細書に記載される溶液は、血栓性微小血管症(TMA)、例えば、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を含む本明細書に記載される補体関連障害のうちのいずれかなどの補体関連障害に付随するTMAを治療するために用いることができる。
【0182】
補体関連障害としては、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、α-1抗トリプシン欠乏症、気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、歯槽炎、サルコイドーシス、肺線維症、及び膠原血管病などであるがこれらに限定されない補体関連肺障害も挙げられる。
【0183】
別の実施形態では、本明細書に記載される溶液は、対象における補体関連炎症反応(例えば、補体関連障害の補体関連炎症反応態様)の少なくとも1つの症状を治療、予防、又は改善するために、対象に投与される。例えば、組成物を用いて、移植片拒絶反応/移植片対宿主病(GVHD)、再灌流傷害(例えば、心肺バイパス又は組織移植後の)、及び熱傷(例えば重度熱傷)、鈍的外傷、脊髄損傷、又は凍傷などの外傷のその他の形態に続く組織損傷などの補体関連炎症反応に付随する1つ以上の症状を治療、予防、及び/又は改善することができる。例えば、Park et al.(1999)Anesth Analg 99(1):42-48;Tofukuji et al.(1998)J Thorac Cardiovasc Surg 116(6):1060-1068;Schmid et al.(1997)Shock 8(2):119-124;及びBless et al.(1999)Am J Physiol 276(1):L57-L63を参照されたい。
【0184】
別の実施形態では、補体媒介性障害は、心臓血管障害、心筋炎、脳血管障害、末梢(例えば、筋骨格)血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸血管障害、移植片及び/又は再移植片への血管再生、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体血管炎、臓器又は組織移植、高安病、毛細管漏出症候群、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、胸腹部大動脈瘤、川崎病(動脈炎)、静脈気体塞栓(VGE)、及びステント留置後再狭窄、回転アテローム切除術、並びに経皮経管冠動脈拡張術(PTCA)などであるがこれらに限定されない補体媒介性血管障害である(例えば、米国特許出願公開第20070172483号明細書を参照されたい)。一実施形態では、ヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、患者の体重に基づいて患者に安定な水溶液を投与することを含む。例えば、一実施形態では、PNHを患うヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、(例えば静脈内注入を介して)患者に安定な水溶液を投与することを含み、ここで安定な水溶液は約7.4のpHを有し、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含むか、或いはこれらからなり、ここで安定な水溶液は、
(c)1日目に、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して2,400mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して2,700mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,000mgの用量で;
並びに
(b)15日目、及びその後8週間ごとに、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して3,000mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して3,300mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,600mgの用量で、ヒト患者に投与される。
【0185】
一実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で投与される。別の実施形態では、水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で投与される。
【0186】
別の実施形態では、aHUSを患うヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、(例えば静脈内注入を介して)患者に安定な水溶液を投与することを含み、ここで安定な水溶液は約7.4のpHを有し、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含むか、或いはこれらからなり、ここで安定な水溶液は、
(d)1日目に、
体重が≧5kg~<10kgの患者に対して600mg、
体重が≧10kg~<20kgの患者に対して600mg、
体重が≧20kg~<30kgの患者に対して900mg、
体重が≧30kg~<40kgの患者に対して1,200mg、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して2,400mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して2,700mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,000mgの用量で;並びに
(b)15日目、及びその後4又は8週間ごとに、
体重が≧5kg~<10kgの患者に対して300mg、
体重が≧10kg~<20kgの患者に対して600mg、
体重が≧20kg~<30kgの患者に対して2,100mg、
体重が≧30kg~<40kgの患者に対して2,700mg、
体重が≧40kg~<60kgの患者に対して3,000mg、
体重が≧60kg~<100kgの患者に対して3,300mg、又は
体重が≧100kgの患者に対して3,600mgの用量で、ヒト患者に投与される。
【0187】
一実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、並びに15日目、及びその後4週間ごとに300mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、並びに15日目、及びその後4週間ごとに600mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、1日目に900mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに2,100mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、1日目に1,200mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに2,700mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、並びに15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルで供給される。別の実施形態では、安定な水溶液は、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルで供給される。
【0188】
その他の実施形態では、ヒト患者を治療する方法が提供され、方法は、安定な水溶液を、患者の体重に関係なく固定された均一固定用量で患者に投与することを含む。例えば、安定な水溶液は、患者の体重に関係なく1000、1400、1600、1800、2000、2400、3000、又は5400mgの固定用量で投与され得る。特定の実施形態では、投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、効果的応答)をもたらすように調節される。
【0189】
別の実施形態では、安定な水溶液は、誘導期の間に3000mgの用量でヒト患者に投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、誘導期の間に3000mgの用量で1回ヒト患者に投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、維持期の間に5400mgの用量でヒト患者に投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、維持期の間に5400mgの用量で3回ヒト患者に投与される。例えば、抗C5抗体、又はその抗原結合フラグメントは、投与サイクルの29日目、及び続いてその後は維持期中に84日(又は12週間)ごと、すなわち投与サイクルの113日目及び197日目に、5400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、ヒト患者に、(a)1日目に3,000mgの用量、(b)それから4週間後に5,400mgの用量、及び続いて(c)その後84日(又は12週間)ごとに5,400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、ヒト患者に、(a)誘導期中の投与サイクルの1日目に3,000mg、並びに(b)維持期中の投与サイクルの29日目、及び続いてその後84日(又は12週間)ごとに5,400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、ヒト患者に、(a)誘導期中の投与サイクルの1日目に3,000mg、並びに維持期中の投与サイクルの29日目、113日目、及び197日目に5,400mgの用量で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、10mg/mLの濃度のラブリズマブを含む。別の実施形態では、安定な水溶液は、100mg/mLの濃度のラブリズマブを含む。
【0190】
本明細書に記載される安定な水溶液を100mg/mL投与するための注入時間及び速度は、同等の低用量(例えば10mg/mL)の溶液の注入時間及び速度と比較して著しく(例えば少なくとも50%)低い。注入時間及び速度は、必要に応じて臨床医によって調節可能である。一実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、最小注入時間1.4時間及び最大注入速度8mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧5kg~<10kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後4週間ごとに300mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度8mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、1日目に600mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度16mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧10kg~<20kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後4週間ごとに600mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度16mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、1日目に900mgの用量で、最小注入時間0.6時間及び最大注入速度30mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧20kg~<30kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに2,100mgの用量で、最小注入時間1.3時間及び最大注入速度33mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、1日目に1,200mgの用量で、最小注入時間0.5時間及び最大注入速度46mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧30kg~<40kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに2,700mgの用量で、最小注入時間1.1時間及び最大注入速度49mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、1日目に2,400mgの用量で、最小注入時間0.8時間及び最大注入速度64mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧40kg~<60kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに3,000mgの用量で、最小注入時間0.9時間及び最大注入速度65mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、1日目に2,700mgの用量で、最小注入時間0.6時間及び最大注入速度92mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧60kg~<100kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに3,300mgの用量で、最小注入時間0.7時間及び最大注入速度99mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、1日目に3,000mgの用量で、最小注入時間0.4時間及び最大注入速度144mL/時間で投与される。別の実施形態では、安定な水溶液は、体重が≧100kgのヒト患者に対して、15日目、及びその後8週間ごとに3,600mgの用量で、最小注入時間0.5時間及び最大注入速度144mL/時間で投与される。
【0191】
IV.併用療法
一実施形態では、本明細書に記載される溶液は、単独療法として患者に投与される。別の実施形態では、これらは、1つ以上の追加の薬剤、及び/又はその他の療法(例えば、補体関連障害の治療に好適な)と共に投与される。例えば、併用療法は、ヒト患者に、患者に治療的有益性を提供する1つ以上の追加の薬剤(例えば、抗凝血剤、降圧薬、又は抗炎症薬(例えばステロイド))を投与することを含み得る。一実施形態では、本明細書に記載される溶液は、抗炎症剤(例えば、NSAID、コルチコステロイド、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、エタネルセプト及びインフリキシマブなどの抗TNF剤、リツキシマブなどのB細胞涸渇剤、インターロイキン-1アンタゴニスト、又はアバタセプトなどのT細胞共刺激遮断剤)と組み合わせて投与される。
【0192】
対象における補体関連障害を治療するための追加の薬剤は、治療対象の特定の疾患に応じて変化するが、これとしては、限定するものでないが、1つ以上の降圧薬(例えば、アンギオテンシン転換酵素阻害剤、ラベタロール、ヒドララジン、ニフェジピン、カルシウムチャネルアンタゴニスト、ニトログリセリン、又はニトロフェリシアン化ナトリウム)、抗凝血剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、免疫抑制剤(例えば、ビンクリスチン又はシクロスポリンA)、抗凝血剤(例えば、ワルファリン(Coumadin)、アスピリン、ヘパリン、フェニンジオン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス)、トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジン、又はダビガトラン)、α線維素溶解剤(例えば、アンクロド、α-アミノカプロン酸、抗プラスミン-a1、プロスタサイクリン、及びデフィブロチド)、降圧剤(例えば、ラベタロール、ヒドララジン、ニフェジピン、カルシウムチャネルアンタゴニスト、ニトログリセリン、又はニトロフェリシアン化ナトリウム)、脂質低下剤(例えば、ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素の阻害剤)、抗てんかん剤(例えば硫酸マグネシウム)、抗血栓剤(例えば、ヘパリン、アンチトロンビン、プロスタサイクリン、又は低用量アスピリン)、交感神経興奮作用剤(例えば、アルブテロール)、抗生物質、デオキシリボヌクレアーゼ(例えば、Pulmozyme(登録商標))、抗コリン作動薬、抗IgE阻害剤(例えば、抗IgE抗体)、コルチコステロイド、又は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げられ得る。多種多様なNSAIDが入手可能であり、そのうちいくつかはイブプロフェン(Advil(登録商標)、Motrin(登録商標)、Nuprin(登録商標))及びナプロキセン(Alleve(登録商標))を含む市販薬であり、メロキシカム(Mobic(登録商標))、エトドラク(Lodine(登録商標))、ナブメトン(Relafen(登録商標))、スリンダク(Clinoril(登録商標))、トレメンチン(Tolectin(登録商標))、コリンサリチル酸マグネシウム(Trilasate(登録商標))、ジクロフェナク(Cataflam(登録商標)、Voltaren(登録商標)、Arthrotec(登録商標))、ジフルシナル(Dolobid(登録商標))、インドメチシン(indomethicin)(Indocin(登録商標))、ケトプロフェン(Orudis(登録商標)、Oruvail(登録商標))、オキサプロジン(Daypro(登録商標))、及びピロキシカム(Feldene(登録商標))を含む多くのその他が処方により入手可能である(例えば、Mihu et al.(2007)J Gastrointestin Liver Dis 16(4):419-424を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書に記載される溶液は、静脈内ガンマグロブリン療法(IVIG)、プラスマフェレーシス、血漿置換、又は血漿交換と共に患者に投与するために配合され得る。
【0193】
一実施形態では、溶液並びに1つ以上の追加の薬剤及び/又は療法は、同時に投与される。別の実施形態では、溶液は、1つ以上の追加の薬剤及び/又は療法を投与する前に投与される。別の実施形態では、溶液は、1つ以上の追加の薬剤及び/又は療法を投与した後で投与される。
本明細書に記載される抗体溶液が第2の活性剤と組み合わせて用いられる場合は、剤(例えば、抗C5抗体及び第2の剤)は、別個に配合されてもよく、共に配合されてもよい。例えば、溶液と剤とは、例えば投与直前に混合されて共に投与されてもよく、或いは別個に、例えば同時に又は異なる時間に投与されてもよい。
【0194】
V.キット及び単位剤形
ヒト患者(例えば、補体関連障害を有する患者)への投与に好適な治療的有効量でラブリズマブなどの抗C5抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する安定な水溶液を含むキットも本明細書で提供される。キットは、任意に、例えば、実践者(例えば、医師、看護師、又は患者)が、これに収容される組成物を投与して患者に溶液を投与することができるようにするための投与スケジュールを含む指示も含み得る。
【0195】
キットは、1つ以上の溶液を、これを必要とする患者、例えば、補体関連障害を患う、これを有することが疑われる、又はこれを発症するリスクのある患者に送達するための好適な手段も収容し得る。一実施形態では、この手段は、溶液を患者に静脈内送達するのに好適である。
【0196】
任意に、キットは、それぞれ単回投与のための有効量の溶液を含有する単回用量溶液の複数のパッケージを含む。溶液を投与するために必要な機器又はデバイスもキットに含まれ得る。例えば、キットは、溶液を含有する1つ以上の予め充填されたシリンジを提供することができる。
【0197】
一実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載される溶液のうちいずれか、及び(ii)使用説明書を備える。別の実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載される溶液のうちいずれか、(ii)生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)、及び(iii)使用説明書を備える。別の実施形態では、キットは、(i)約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、及び約50mg/mLのスクロースを含むか或いはこれらからなる配合物、(ii)生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)、並びに(iii)使用説明書を備える。別の実施形態では、配合物は凍結乾燥されている。別の実施形態では、キットは、300mgのラブリズマブを含む3mLの単回使用バイアルを含む。別の実施形態では、キットは、1,100mgのラブリズマブを含む11mLの単回使用バイアルを含む。
【0198】
VI.高濃度抗体溶液を調製するための方法
高濃度抗C5抗体溶液を調製するための方法も本明細書で提供される。一実施形態では、約10mg/mL以下の濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含む安定な水溶液を生産するための方法が提供され、方法は、
i)約10mg/mLのラブリズマブを含む第1の水溶液を提供することと、
ii)第1の水溶液を、pH7.4で約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水の配合物中にダイアフィルトレーションし、それにより第2の水溶液を生産することと、
iii)第2の水溶液を濃縮して、約100mg/mLの濃度のラブリズマブ、約33.1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、約16.5mMの二塩基性リン酸ナトリウム、約0.05w/v%のポリソルベート80、約25mMのL-アルギニン、約50mg/mLのスクロース、及び注射用の水を含む安定な水溶液を生産することと、を含む。
【0199】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本開示で使用するための方法及び材料を本明細書に記載する。当該技術分野で既知のその他の好適な方法及び材料を用いることもできる。材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ(例えば、PUBMED、NCBI、又はUNIPROT受託番号)、及びその他の引用文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
【実施例
【0200】
実施例1:配合物
pH7.4で、50mMリン酸ナトリウム、25mMのL-アルギニン、5%(w/v)のスクロース、0.05%(w/v)のポリソルベート80中に100mg/mLの濃度のULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)を含有する滅菌水溶液を、共栓付きの3ml及び11mLガラスバイアル中で配合した。溶液は、市販の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)中に希釈することによって注入用に設計される。
【0201】
A.製剤
製剤の定量的及び定性的組成を表1に示す。賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(Ph.Eur.)及び/又は日本薬局方(JP)に対して試験する。ラブリズマブのバイアル含有量は抽出可能量に基づく。
【0202】
【表1】
【0203】
容器閉鎖システムは、USP/Ph.Eur.タイプ1ガラスバイアル、Flurotec(登録商標)をラミネートしたブチルゴム製ストッパ、及びポリプロピレン製フリップオフキャップを備えるアルミニウムシールからなる。
【0204】
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)注射100mg/mLは、静脈内用途の滅菌で半透明の清澄~帯黄色である防腐剤フリー溶液である。各単回用量バイアルは、7.4のpHで、100mg/mLの濃度で300mg又は1,100mgのULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)を含有する。各mLは、ポリソルベート80(0.5mg)(植物由来)、塩化ナトリウム(8.77mg)、二塩基性リン酸ナトリウム(4.42mg)、一塩基性リン酸ナトリウム(4.57mg)、L-アルギニン(4.33mg)、スクロース(50mg)、及び注射用の水も含有する(USP)。
【0205】
生成物は、1カートンあたり以下の力価の単回使用バイアルとして供給される防腐剤フリー溶液として入手可能である。
【0206】
【表2】
【0207】
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)バイアルは、光から保護するために元のカートン中、2℃~8℃(36°F~46°F)で冷蔵貯蔵される。これらは冷凍又は振盪してはならない。
【0208】
B.適応
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を患う成人患者の治療、並びに非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を患う1ヶ月齢以上の成人及び小児患者の補体媒介性血栓性微小血管症(TMA)を阻害するための治療に適応される。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、志賀毒素大腸菌関連溶血性尿毒症症候群(Shiga toxin E.coli related hemolytic uremic syndrome、STEC-HUS)を患う患者の治療には適応しない。
【0209】
C.投薬及び投与
患者は、深刻な感染症のリスクを軽減するために、現行のACIPガイドラインに従って髄膜炎菌性疾患のワクチン接種を受ける。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)療法開始から2週間前未満でULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)を即座に開始してワクチンを投与する場合、2週間の抗菌剤予防法が患者に施される。
【0210】
体重40kg以上のPNHを患う成人患者における推奨投薬レジメンは、静脈内注入によって投与される負荷用量、及びそれに続く維持投薬から構成される。表3に示すように、用量は患者の体重に基づいて投与される。負荷用量の投与から2週間後に開始して、維持用量は8週間に1回の間隔で開始する。投薬スケジュールは、時にはスケジュールされた注入日から7日以内で変更してもよい(ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の最初の維持用量を除く)が、後続の用量は元のスケジュールに従って投与されるべきである。
【0211】
【表3】
【0212】
体重5kg以上のaHUSを患う成人及び1ヶ月齢以上の小児患者における推奨投薬レジメンは、静脈内注入によって投与される負荷用量、及びそれに続く維持投薬から構成される。表4に示すように、用量は患者の体重に基づいて投与される。負荷用量の投与から2週間後に開始して、維持用量は(体重に応じて)8週間ごと又は4週間ごとに1回で開始する。
【0213】
投薬スケジュールは、時にはスケジュールされた注入日から7日以内で変更してもよい(ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の最初の維持用量を除く)が、後続の用量は元のスケジュールに従って投与される。
【0214】
【表4】
【0215】
SOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)からULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)へと切り替え中である患者に対しては、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の負荷用量は、最後のエクリズマブ注入から2週間後に投与され、続いて維持用量が、負荷用量の投与から2週間後に開始して、(体重に応じて)8週間ごと又は4週間ごとに1回投与される。
PE/PI(プラスマフェレーシス若しくは血漿交換、又は新鮮凍結血漿注入)の投与は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の血清中濃度を低下させ得る。
【0216】
D.調製
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の各バイアルは、単回用量のみを目的とする。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、単回用量バイアル中300mg/3mL(100mg/mL)及び単回用量バイアル中1,100mg/11mL(100mg/mL)で供給される。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の100mg/mL(3mL及び11mLバイアル)と10mg/mL(30mLバイアル)とは混合すべきではない。
【0217】
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、3mL及び11mLバイアルで50mg/mLの最終濃度、又は30mLバイアルで5mg/mLの最終濃度への希釈を必要とする。ULTOMIRISの調製には以下の無菌技術が用いられる。
1.希釈されるバイアルの数は個々の患者の体重及び処方用量に基づいて決定する。
2.希釈前にバイアル中の溶液を目視検査する。溶液はいかなる粒子状物質又は沈殿物も含むべきではない。粒子状物質又は沈殿物の証拠が存在する場合その溶液は使用されない。
3.算出された量のULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)を適切な数のバイアルから取り出し、注入バッグ中で0.9%塩化ナトリウム注入(USP)を用いて、3mL及び11mLバイアルで50mg/mLの最終濃度又は30mLバイアルで5mg/mLの最終濃度に希釈する。生成物を穏やかに混合する。これは冷凍又は振盪すべきではなく、また光から保護すべきである。
4.調製された溶液を調製直後に投与する。注入液は、0.2又は0.22マイクロメートルフィルタを介して投与する。
5.希釈されたULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)注入溶液を即座に使用しない場合、2℃~8℃(36°F~46°F)で冷蔵貯蔵し、これは予想される注入時間を含めて24時間を超えてはならない。冷蔵から取り出したら、希釈されたULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)注入溶液は、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)3mL又は11mLバイアルで調製された場合は6時間以内に投与する。
【0218】
E.投与
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は静脈内注入として投与する。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、100mg/mL配合物(3mL及び11mLバイアル)の場合は50mg/mLの最終濃度に希釈する。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、0.2又は0.22マイクロメートルフィルタを介して投与する。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)100mg/mL(3mL及び11mLバイアル)の負荷用量及び維持用量は下記の表5及び6に記載される。
【0219】
【表5】
【0220】
【表6】
【0221】
投与前に、混合物を室温(18℃~25℃、64°F~77°F)に調節させる。混合物は、周囲空気温度以外のいかなる熱源でも加熱しない。
【0222】
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の投与中に有害反応が生じた場合は、注入は医師の判断で減速又は中止してよい。患者は、注入完了から少なくとも1時間は注入反応の徴候又は症状に関して観察される。
【0223】
実施例2:PNHを患う患者における静脈内ラブリズマブ100MG/ML配合物の効力、安全性、及び薬物動態を評価する第2相研究の中間分析
ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)は、2つの大規模第3相治験及び現実世界のPNH集団において実証済みの効力(例えば、血管内溶血制御、輸血非依存性、及び最低限度のブレイクスルー溶血)及び安全性を示している。したがって、配合物の変更(10mg/mL静脈内(IV)から100mg/mL IVへの)後のULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)の効力、安全性、薬物動態(PK)、及び免疫原性を特性決定するために、第2相非盲検複数漸増用量研究延長期間(NCT02605993)の中間分析を実施した。
【0224】
要約すると、PNHを患う補体阻害剤にナイーブな成人に、その内容が参照により本明細書に明示的に組み込まれる国際公開第2017/123636号パンフレットに記載されるプロトコルに従って4つの異なるULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)投薬レジメンを投与した(コホート1~4;図面を参照されたい)。延長相では、コホート1~3は体重ベースの投薬に切り替え、それに続き、延長期間の後期に、全てのコホートがULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)10mg/mL IVから100mg/mL IVへと変更した。続いて配合物を変更する前後のデータを比較した。効力(乳酸デヒドロゲナーゼレベル)、安全性、PK(血清ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)トラフ濃度)、及び免疫原性を評価した。コホート1~3(8週間ごとに(q8w)体重ベースの投薬を受けた)の分析をグループ分けした。コホート4(12週間ごとに投与)の結果は別に提示した。有害事象(AE)を、Medical Dictionary for Regulatory Activities version 21.0を用いてコード化した。患者はインフォームドコンセントを与えられ、関連する医療機関内倫理委員会が承認を与えた。
【0225】
合計で25人のULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)10mg/mL IVを投与された患者が、100mg/mL IVに切り替えた。患者の大半は男性であった(76.0%、n=19)。民族性は、非ヒスパニック又はラテンアメリカ人(84.0%、n=21)であると報告されたか、ヒスパニック又はラテンアメリカ人(4.0%、n=1)であると報告されたか、或いは提供されなかった(12.0%、n=3)。患者は、その人種を、白人(60.0%、n=15)であると報告したか、アジア人(24.0%、n=6)であると報告したか、「その他」(4.0%、n=1)であると報告したか、或いはこの情報を開示しなかった(12.0%、n=3)。初回注入時の平均(標準偏差[SD])年齢は44.6(16.5)歳であった。ベースラインでは、平均(SD)体重、身長、及び肥満指数は、それぞれ78.1(14.8)kg、174.8(10.6)cm、及び25.4(3.2)kg/mであった。配合物変更後に平均乳酸デヒドロゲナーゼレベル又は血清トラフ濃度の大きな差は観察されなかった。治療中に発生した有害反応(TEAE)及び重篤AEの全体暴露調整率は、両方の配合物で同等であり、全ての報告されたTEAEは、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)とは無関係であると見なされた。配合物を変更する前後で、死亡、中断、又は抗薬物抗体陽性応答は発生しなかった。体重40~60kgの成人患者の場合、100mg/mLの配合物を使用することで、10mg/mLの製剤と比較して注入時間が87分短縮した(57分[100mg/mL]対144分[10mg/mL])。注入時間は、体重60~100kgの患者の場合は78分短縮し(42分[100mg/mL]対120分[10mg/mL])、体重>100kgの患者の場合は102分短縮した(30分[100mg/mL]対132分[10mg/mL])。
【0226】
この中間分析において、ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)IV 100mg/mLの効力、安全性、PK、及び免疫原性は、IV 10mg/mL配合物と同等であり、高濃度配合物はPNHを患う患者において耐用性が良好であった。ULTOMIRIS(登録商標)(ラブリズマブ)IV 100mg/mL配合物は、低濃度配合物と比較して注入時間の大幅な短縮を可能にし(10mg/mL配合物と比較して成人における維持用量注入時間を78~102分短縮)、患者の利便性を改善した。
【0227】
【表7】
【0228】
【表8】
【0229】
【表9】
【0230】
【表10】
図1
【配列表】
2023501377000001.app
【国際調査報告】