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特表2023-501397肥満細胞疾患および好酸球性障害の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】肥満細胞疾患および好酸球性障害の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20230111BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K31/53
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P9/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P21/00
A61P19/00
A61P25/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526152
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2020058632
(87)【国際公開番号】W WO2021091846
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,338
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】515010246
【氏名又は名称】ブループリント メディシンズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】マー,ブレントン
(72)【発明者】
【氏名】グラシアン,アレクサンドラ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB13
(57)【要約】
本開示は、肥満細胞疾患および好酸球性障害の治療のための、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の化合物(I):
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、肥満細胞疾患を治療する方法。
【請求項2】
肥満細胞疾患が、肥満細胞活性化症候群(MCAS)および遺伝性αトリプターゼ血症(HAT)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MCASが、原発性MCAS(モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS))、二次性MCAS(別の疾患から生じるMCAS)および特発性MCAS(原発性または二次性MCASを除外するMCAS)から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
肥満細胞疾患が、遺伝性αトリプターゼ血症(HAT)(トリプターゼ上昇の原因となるTPSAB1の過剰発現)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
肥満細胞疾患が、肥満細胞媒介性喘息、アナフィラキシー(特発性、IgE媒介性および非IgE媒介性を含む)、蕁麻疹(特発性および慢性を含む)、アトピー性皮膚炎、浮腫(血管性浮腫)、過敏性腸症候群、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性大腸炎、掻痒症、慢性掻痒症、慢性腎不全に続発する掻痒症、ならびに肥満細胞に関連した心臓、血管、腸管、脳、腎臓、肝臓、膵臓、筋肉、骨および皮膚の状態から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
肥満細胞疾患が、野生型KITに関連した、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象が、エクソン17KITに変異を有さない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象が、KITにD816V変異を有さない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量の化合物(I):
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、好酸球性障害を治療する方法。
【請求項10】
好酸球性障害が、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性筋膜炎およびチャーグストラウス症候群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象が、KITのエクソン17変異を有する、請求項1~5または9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
対象が、KITのエクソン17においてD816変異を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
D816変異が、D816Vである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
D816変異が、D816Yである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
治療有効量が、30~400mgである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
治療有効量が、1日当たり100~300mgである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療有効量が、1日当たり100mgである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
治療有効量が、1日当たり200mgである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
治療有効量が、1日当たり300mgである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月4日に出願された米国特許仮出願第62/930,338号の優先権を主張する。前述の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
今般、下記に示す化合物(I)が、肥満細胞疾患および好酸球性障害の治療のために有用であることが見出された。
【0003】
【化1】
【0004】
本開示の一態様は、治療有効量の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、肥満細胞疾患を治療する方法である。
本開示の別の態様は、肥満細胞疾患を治療するための医薬の製造のための化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の使用である。
【0005】
本開示の別の態様は、肥満細胞疾患を治療するための化合物(I)またはその薬学的に許容される塩である。
本開示の一態様は、治療有効量の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、好酸球性障害を治療する方法である。
【0006】
本開示の別の態様は、好酸球性障害を治療するための医薬の製造のための化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の使用である。
本開示の別の態様は、好酸球性障害を治療するための化合物(I)またはその薬学的に許容される塩である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、肥満細胞活性化症候群(MCAS)を含む肥満細胞疾患および遺伝性αトリプターゼ血症(HAT)を治療するために有用であり得る。化合物(I)は、KIT変異およびPDGFRa変異に関連した肥満細胞疾患を治療するために有用であり得る。化合物(I)は、野生型(WT)KITに関連した肥満細胞疾患を治療するために有用であり得る。
【0008】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、肥満細胞が、不適切且つ過度にケミカルメディエーターを放出し、時にはアナフィラキシー発作またはアナフィラキシーに近い発作を含む、一連の慢性症状を生じる結果となる免疫学的状態である肥満細胞活性化症候群(MCAS)を治療するために有用であり得る。患者が異常に増加した数の肥満細胞を有する肥満細胞症とは異なり、MCAS患者は、適切に機能せず、「反応亢進」として定義される正常な数の肥満細胞を有する。MCASの病型としては、原発性MCAS(モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS))、二次性MCAS(別の疾患から生じるMCAS)および特発性MCAS(原発性または二次性MCASを除外するMCAS)が挙げられる。
【0009】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、遺伝性αトリプターゼ血症(HAT)(トリプターゼ上昇の原因となるTPSAB1の過剰発現)を治療するために有用であり得る。
【0010】
肥満細胞は、蕁麻疹(Maurer、Immunological Reviews(2018)282:232-247)、アナフィラキシー(Akin,C.、Current Allergy and Asthma Review(2019)19:31)、および肥満細胞活性化症候群(Butterfield、J.Clin Immunol Pract(2019)、7(4)1097)などの様々な他の疾患に関与する。化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、肥満細胞媒介性喘息、アナフィラキシー(特発性、IgE媒介性および非IgE媒介性を含む)、蕁麻疹(特発性および慢性を含む)、アトピー性皮膚炎、浮腫(血管性浮腫)、過敏性腸症候群、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性大腸炎、掻痒症、慢性掻痒症、慢性腎不全に続発する掻痒症、ならびに肥満細胞に関連した心臓、血管、腸管、脳、腎臓、肝臓、膵臓、筋肉、骨および皮膚の状態を含む他の肥満細胞疾患を治療するために有用であり得る。
【0011】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性筋膜炎およびチャーグストラウス症候群を含む好酸球性障害を治療するために有用であり得る。
【0012】
本開示は、30mg~400mg(例えば100mg~300mg、または200mg~300mg)の量の化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩をそれを必要とする対象に1日1回投与するステップを含む、肥満細胞疾患を治療する方法を提供する。一部の実施形態において、量は、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mgを1日1回である。一部の実施形態において、量は1日1回25mgである。一部の実施形態において、量は1日1回50mgである。一部の実施形態において、量は1日1回75mgである。一部の実施形態において、量は1日1回100mgである。一部の実施形態において、量は1日1回150mgである。一部の実施形態において、量は1日1回200mgである。一部の実施形態において、量は1日1回250mgである。一部の実施形態において、量は1日1回300mgである。
【0013】
本開示は、30mg~400mg(例えば100mg~300mg、または200mg~300mg)の量の化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩をそれを必要とする対象に1日1回投与するステップを含む、好酸球性障害を治療する方法を提供する。一部の実施形態において、量は、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mgを1日1回である。一部の実施形態において、量は1日1回25mgである。一部の実施形態において、量は1日1回50mgである。一部の実施形態において、量は1日1回75mgである。一部の実施形態において、量は1日1回100mgである。一部の実施形態において、量は1日1回150mgである。一部の実施形態において、量は1日1回200mgである。一部の実施形態において、量は1日1回250mgである。一部の実施形態において、量は1日1回300mgである。
【0014】
本明細書で使用する「化合物(I)」は、化学名(S)-1-(4-フルオロフェニル)-1-(2-(4-(6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-4-イル)ピペラジン-イル)ピリミジン-5-イル)エタン-1-アミンを有し、以下の構造:
【0015】
【化2】
【0016】
を有する化合物を指す。
化合物(I)は、WO2015/057873に開示され、その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれる。化合物(I)の調製は、WO2015/057873の実施例7に記載される。
【0017】
化合物(I)は、KITのD816V変異および他のKITのエクソン17変異を選択的に標的化するために開発され、インビトロでKITのD816Vに対する強力且つ選択的活性、インビボでのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)抵抗性肥満細胞腫モデルにおける強い増殖阻害、ならびに毒性学および安全性薬理学研究で活性用量での忍容性を示した。進行全身性肥満細胞症(AdvSM)を有する患者における化合物(I)の進行中の第1相試験(NCT02561988)は、安全性および予備有効性を評価している。推奨される第2相用量(RP2D)は、1日1回(QD)300mgと同定され、この研究の拡大コホートは、より大きいコホートの患者におけるこの用量の有効性および安全性をさらに評価しており、且つAdvSMを有する患者の症状改善に対する化合物(I)の影響を評価するために開発されたAdvSM症状評価フォーム(AdvSM-SAF)を検証している。300mgQDで治療した患者の新たな安全性および有効性のデータに基づき、200mgQDで治療した患者の追加コホートが加えられた。
【0018】
D816位での活性化変異は、好酸球性障害において見出され、最も一般的な変異はD816VおよびD816Yである。D816V変異は、キナーゼドメインの活性化ループにおいて見出され、これはKITキナーゼの構成的活性化をもたらす。
【0019】
イマチニブなどのKIT阻害剤での一次治療はまた、好酸球性障害の初期治療に有益であることが示されている。具体的には、イマチニブは、特発性好酸球増多症候群の治療用に承認されている。しかし、イマチニブに対する抵抗性が、体細胞変異を介して数か月以内に発生する。これらのイマチニブ抵抗性二次変異は、エクソン11、13、14、17または18に位置する頻度が最も高い。好酸球性障害を有する患者、具体的にはエクソン17変異を有する患者を治療するための治療剤が必要とされている。
【0020】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、エクソン17の1つまたは複数のKIT変異(例えば、D816V、D816Y、D816F、D816K、D816H、D816A、D816G、D820A、D820E、D820G、N822K、N822H、Y823DおよびA829P)に対して活性であり得、野生型KITに対する活性はかなり低い。
【0021】
一実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、KITのエクソン17におけるD816変異に対して活性であり得る。具体的な実施形態において、D816変異はD816Vである。別の具体的な実施形態において、D816変異はD816Yである。
【0022】
化合物(I)は、WT KITに対してよりも、疾患関連KIT変異体すべてに対してより大きな効力を示す。具体的には、化合物(I)は、WT KITに対して73nMのIC50値を有し、D816Vエクソン17KITに対して0.27nMのIC50値を有することが報告されている(Evansら、Sci.Transl.Med.9、eaao1690(2017))。化合物(I)がWT KITに関連した肥満細胞疾患を治療するために有用であり得ることは、今や知られている。WT KITに関連した肥満細胞疾患とは、この疾患を有する対象において、KIT変異が同定されないことを意味する。化合物(I)は、エクソン17KITに変異を有さない対象における肥満細胞疾患を治療するために有用であり得る。化合物(I)は、KITにD816V変異を有さない対象における肥満細胞疾患を治療するために有用であり得る。化合物(I)は、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態において、化合物(I)は、肥満細胞活性化および脱顆粒を阻害する。一部の実施形態において、阻害は、用量依存的である。化合物(I)は、肥満細胞の増殖を阻害する。化合物(I)は、肥満細胞の生存を妨害しない、すなわち、化合物(I)は、肥満細胞を死滅させることはない。一部の実施形態において、化合物(I)は、肥満細胞負荷および肥満細胞活性化の両方を低下させる。肥満細胞疾患に対する現行の治療パラダイムは、症状管理のための個別の肥満細胞メディエーターを阻害すること(抗ヒスタミン、抗IgE抗体など)、またはKIT変異体mMCASにおいてKITエクソン17阻害剤を使用することを重視している。
【0023】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される塩」は、本開示の化合物の非毒性の塩の形態を指す。化合物(I)の薬学的に許容される塩としては、好適な無機および有機の酸および塩基に由来するものが挙げられる。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。好適な薬学的に許容される塩は、例えば、Berge,S.M.ら、J. Pharma. Sci.66:1~19(1977)に開示されたものである。当該の論文に開示された薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、酢酸塩;ベンゼンスルホン酸塩;安息香酸塩;炭酸水素塩;酒石酸水素塩;臭化物;エデト酸カルシウム;カンシル酸塩;炭酸塩;塩化物;クエン酸塩;二塩酸塩;エデト酸塩;エジシル酸塩;エストール酸塩;エシル酸塩;フマル酸塩;グルセプト酸塩;グルコン酸塩;グルタミン酸塩;グリコリルアルサニル酸塩;ヘキシルレゾルシン酸塩;ヒドラバミン;臭化水素酸塩;塩酸塩;ヒドロキシナフトエ酸塩;ヨウ化物;イセチオン酸塩;乳酸塩;ラクトビオン酸塩;リンゴ酸塩;マレイン酸塩;マンデル酸塩;メシル酸塩;臭化メチル;メチル硝酸塩;メチル硫酸塩;ムコ酸塩(mucate);ナプシル酸塩;硝酸塩;パモ酸塩(エンバオン酸塩);パントテン酸塩;リン酸塩/二リン酸塩;ポリガラクツロン酸塩;サリチル酸塩;ステアリン酸塩;塩基性酢酸塩;コハク酸塩;硫酸塩;タンニン酸塩;酒石酸塩;テオクル酸塩;トリエトヨウ化物;ベンザチン;クロロプロカイン;コリン;ジエタノールアミン;エチレンジアミン;メグルミン;プロカイン;アルミニウム;カルシウム;リチウム;マグネシウム;カリウム;ナトリウムおよび亜鉛が挙げられる。
【0024】
適当な酸に由来する薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸または過塩素酸などの無機酸で形成される塩;酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸で形成される塩;およびイオン交換などの当技術分野で用いられる他の方法を用いて形成される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩の追加の非限定的な例としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩および吉草酸塩が挙げられる。適当な塩基に由来する薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1~4アルキル)塩が挙げられる。本開示はまた、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の非限定的な例としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムが挙げられる。薬学的に許容される塩のさらなる非限定的な例としては、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される、アンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンが挙げられる。薬学的に許容される塩の他の非限定的な例としては、ベシル酸塩およびグルコサミン塩が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用する、本明細書に開示される化合物の「治療有効量」は、対象の生物学的または医学的応答を誘発する、例えば、酵素もしくはタンパク質活性を低減もしくは阻害するか、症状を寛解させるか、状態を軽減するか、または疾患進行を遅らせるもしくは遅延させる化合物の量を指す。
【0026】
本明細書で使用する用語「患者」または「対象」は、本開示の方法により治療される生物を指す。非限定的な例示的な生物としては、哺乳動物、例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなどが挙げられる。一部の実施形態において、生物はヒトである。
【0027】
障害または状態と組み合わせて使用する場合、本明細書で使用する用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患または状態の改善をもたらす任意の効果、例えば、緩和、低減、調節、寛解および/または排除することを含む。疾患または状態の任意の症状の重症度の改善または緩和は、当技術分野で公知の標準的な方法および技術に従って容易に評価できる。
【0028】
医薬組成物
本明細書に記載される化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩は、医薬品有効成分(API)および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を組み込み、ヒト対象への投与に好適である医薬組成物を調製するための材料として有用である。
【0029】
一部の実施形態において、本開示は、化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩、ならびに少なくとも1種の追加の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本明細書で使用する用語「薬学的に許容される賦形剤」は、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物および/またはビヒクルを指す。各賦形剤は、対象組成物およびその成分と適合し、且つ患者に有害でないという意味で「薬学的に許容される」ものでなくてはならない。任意の従来の薬学的に許容される賦形剤が、何らかの望ましくない生物学的作用をもたらすことによるか、またはそうでなければ薬学的に許容される組成物の任意の他の成分と有害な方式で相互作用することによるなど、化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩と適合しない場合を除き、その使用は、本開示の範囲内であることが企図される。
【0030】
薬学的に許容される賦形剤として作用し得る材料のいくつかの非限定的な例としては、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)トラガント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤に用いられる他の非毒性相溶性物質が挙げられる。
【0031】
Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2005年、D.B.Troy編、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、ならびにEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編、1988~1999、Marcel Dekker、New York、各々の内容が参照により本明細書に組み込まれ、またこれは薬学的に許容される賦形剤の追加の非限定的な例、ならびにそれを調製および使用するための公知の技術を開示する。
【0032】
本明細書に開示される医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所、直腸内、経鼻、経頬、経膣または埋め込み型リザーバーを介して投与され得る。本明細書で使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病変内、および頭蓋内への注射または注入技術を含む。一部の実施形態において、本開示の組成物は、経口、腹腔内または静脈内投与される。本開示の医薬組成物の滅菌注射可能形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当技術分野で公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射可能調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液であり得る。使用できる許容されるビヒクルおよび溶媒の非限定的な例としては、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として通常用いられる。
【0033】
この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意のブランドの固定油が用いられ得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は注射剤の調製に有用であり、同様に、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、とりわけこれらのポリオキシエチル化バージョンも有用である。これらの油の溶液または懸濁液はまた、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはエマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤化に一般に用いられる同様の分散化剤を含有し得る。Tween、Spansおよび他の乳化剤などの他の一般に用いられる界面活性剤、または薬学的に許容される固体、液体もしくは他の剤形の製造に一般に用いられる生物学的利用能増強剤も、製剤化のために用いられ得る。
【0034】
本明細書に開示される医薬組成物はまた、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。水性懸濁液が経口使用に必要とされる場合、有効成分は典型的には乳化剤および懸濁化剤と組み合わせられる。所望される場合、特定の甘味剤、香味剤または着色剤も添加され得る。一部の実施形態において、化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、当技術分野で公知の方法を用いて調製される錠剤である。一部の実施形態において、錠剤は、経口投与のための即時放出錠剤である。一部の実施形態において、化合物(I)および/またはその薬学的に許容される塩は、即時放出錠剤を形成するために薬局方賦形剤とブレンドされる。一部の実施形態において、錠剤を構成する賦形剤は、微結晶セルロース、コポビドン、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムである。一部の実施形態において、製剤ブレンドは、ローラーで圧密化し、圧縮して円形の錠剤にし、美観上フィルムコーティングされる。
【国際調査報告】