(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】付加製造用の改良された粉末
(51)【国際特許分類】
C08L 71/10 20060101AFI20230111BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20230111BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230111BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230111BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230111BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230111BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C08L71/10
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B29C64/153
C08L79/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526310
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2020082748
(87)【国際公開番号】W WO2021099500
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】506306916
【氏名又は名称】エーオーエス ゲーエムベーハー エレクトロ オプティカル システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリュレ、ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ディクラエメール、ナディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フルリッヒ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ガレッツ、ヴェリーナ
(72)【発明者】
【氏名】トウッチキー、ザビーナ
(72)【発明者】
【氏名】フィスター、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA32
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL23
4J002CH091
4J002CH09W
4J002CM04X
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE146
4J002DE236
4J002DH046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002EG006
4J002FD010
4J002GT00
4J002HA09
(57)【要約】
本発明は少なくとも1つのポリマーを含む組成物に関し、ポリマーは粉末の形態であり、ポリマーは少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含み、熱可塑性ポリマーは、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンおよび/またはそれらのコポリマーおよび/またはブロックコポリマーおよび/またはポリマーブレンドから選択され、組成物は、少なくとも5cm3/10分のメルトボリュームレート(MVR)を有し、本発明はまた、製造のプロセスおよび組成物の使用に関する。本発明はまた、製作エレメントおよびその製作エレメントの製造のためのプロセスを扱う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
少なくとも1つのポリマーを含み、
前記ポリマーが粉末の形態であり、かつ
前記ポリマーが少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含み、
熱可塑性ポリマーが、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトン、ならびにそれらのコポリマーおよび/またはブロックコポリマーおよび/またはポリマーブレンドから選択され、
前記組成物が、少なくとも5cm
3/10分、より好ましくは少なくとも10cm
3/10分、および/または55cm
3/10分以下、好ましくは40cm
3/10分以下、より好ましくは30cm
3/10分以下、特に好ましくは26cm
3/10分以下、最も好ましくは24cm
3/10分以下のメルトボリュームレート(MVR)を有する、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の群から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の群から、PEKKのコポリマーの群から、およびPEEKのコポリマーの群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、少なくとも1つの半結晶性ポリマー、好ましくは1つの半結晶性コポリマーおよび/または半結晶性ポリマーブレンド、
および/または
少なくとも1つのアモルファスポリマー、好ましくは1つのアモルファスコポリマーおよび/またはアモルファスポリマーブレンドを含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルケトンケトンが以下の繰り返し単位:
【化1】
(式中、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとの比率は、好ましくはおよそ80:20から10:90の間、好ましくは70:30から40:60の間、特に好ましくは60:40である)
を含む、請求項2または3記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアリールエーテルケトンが、少なくとも約250℃、好ましくは少なくとも約260℃、特に好ましくは少なくとも約270℃、および/または最大約320℃まで、好ましくは最大約310℃まで、特に最大約300℃までの溶融温度Tmを有し、および/または前記ポリアリールエーテルケトンが、少なくとも約120℃、好ましくは少なくとも約140℃、特に好ましくは少なくとも約150℃、および/または約200℃以下、好ましくは約180℃以下、特に好ましくは約170℃以下のガラス転移温度Tgを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルケトンケトン(PEKK)が、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、特に好ましくは少なくとも265℃、および/または最大285℃、好ましくは最大280℃、特に最大275℃までの溶融の外挿開始温度T
eimを有する、請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも約1℃、好ましくは少なくとも約3℃、より好ましくは少なくとも約5℃、および最も好ましくは少なくとも約9℃、および/または約200℃以下、好ましくは約100℃以下、より好ましくは約50℃以下のプロセスウィンドウを有する、請求項2~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーブレンドがポリアリールエーテルケトン-ポリエーテルイミドを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物のポリマー粒子が、以下の粒子径分布:
- d10=少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μmおよび/または50μm以下、好ましくは40μm以下
- d50=少なくとも25μmおよび/または100μm以下、好ましくは少なくとも30μmおよび/または80μm以下、特に少なくとも40μmおよび/または60μm以下
- d90=少なくとも50μmおよび/または150μm以下、好ましくは120μm以下を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物のポリマー粒子が、以下の粒子径分布:
- d10=少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、特に少なくとも25μmおよび/または50μm以下、好ましくは40μm以下、特に30μm以下
- d50=少なくとも40μmおよび/または100μm以下、好ましくは少なくとも45μmおよび/または80μm以下、特に少なくとも50μmおよび/または65μm以下
- d90=少なくとも70μmおよび/または150μm以下、好ましくは少なくとも80μmおよび/または120μm以下、最も好ましくは110μm以下を有し、
前記ポリマー粒子が、重合フレークの粉砕によって得られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、3以下、好ましくは2以下、特に1.5以下、特に好ましくは1以下の分布幅(d90-d10)/d50を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマー粒子が、少なくとも約0.8、好ましくは少なくとも約0.85、特に好ましくは少なくとも約0.90、および最も好ましくは少なくとも約0.95の真球度を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が一次組成物を含み、好ましくは前記一次組成物の含有量が、組成物全体の10重量%超および/または60重量%未満、より好ましくは50重量%未満、さらにより好ましくは40重量%未満、特に好ましくは30重量%未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも約1秒、好ましくは少なくとも約2秒、最も好ましくは少なくとも約3秒、および/または約12秒以下、好ましくは約9秒以下、最も好ましくは約8秒以下の注入性を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、少なくとも1.01および/または1.7以下、好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.4以下、特に好ましくは約1.3以下、さらにより好ましくは約1.2以下、最も好ましくは約1.18以下のハウスナーファクターを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が少なくとも1つの流動剤を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中の前記少なくとも1つの流動剤の含有量が、約1重量%以下、好ましくは約0.5重量%以下、特に好ましくは約0.2重量%以下、特に約0.15重量%以下、最も好ましくは約0.1重量%以下である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも約0.1m
2/gおよび/または約10m
2/g以下、好ましくは5m
2/g以下、より好ましくは2m
2/g以下、特に好ましくは1.5m
2/g以下、最も好ましくは1m
2/g以下のBET表面を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物を製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを提供する工程であって、前記熱可塑性ポリマーが、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンおよび/またはそれらのコポリマーおよび/またはブロックコポリマーおよび/またはポリマーブレンドから選択される、工程と、
(ii)随意に、ポリマーを粉砕する工程と、
(iii)随意に、少なくとも30℃の温度かつポリマーの融点Tm未満で、ミキサーにおいて、好ましくは熱的-機械的処理によって、ポリマー粒子を丸める工程と、を含む、プロセス。
【請求項20】
前記プロセスが、Tgより高いかつTmより低い温度で、好ましくはオーブン内で、前記組成物をアニーリングする続く工程をさらに含む、請求項19記載のプロセス。
【請求項21】
製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクトを製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)好ましくは粉末の、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物の層および/または請求項19または20に記載のプロセスによって製造された組成物を製造パネルに塗布する工程と、
(ii)好ましくは照射ユニットを使用することによって、製造されるオブジェクトの断面を表す部位で前記組成物の塗布された層を選択的に凝固する工程と、
(iii)キャリアを下げ、前記製作エレメント、好ましくは前記3Dオブジェクトが完成するまで、前記適用する工程および前記凝固する工程を繰り返す工程と、を含む、プロセス。
【請求項22】
層を適用する工程i)が、少なくとも二重コーティングによって行われ、層の適用が、第1の高さH1を有する第1の層を適用する工程と第2の高さH2を有する第2の層を適用する工程とに細分され、前記高さH2の第2の層が前記高さH1の第1の層上に適用され、好ましくは、前記第1の層の高さH1が前記第2の層の高さH2に等しい、請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
前記組成物が、請求項19または20に記載のプロセスによって得られる、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクトであって、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物を含み、前記製作エレメントが、好ましくは、請求項21または22に記載のプロセスによって得られる、製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクト。
【請求項25】
請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、前記組成物が、好ましくはレーザー焼結、高速焼結、バインダージェッティング、選択的マスク焼結、選択的レーザー溶融を含む、特にレーザー焼結の使用のための、粉末床ベースのプロセスの群から、付加製造のために、好ましくは請求項19または20に記載のプロセスによって製造される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む組成物に関し、組成物は、最適化された付加製造プロセスを可能にするために特定のメルトボリュームレートを示す。さらに、本発明は、本発明の組成物の製造のためのプロセス、ならびに本発明の組成物を含む装置および本発明の組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状製作材料に基づくプロトタイプおよび装置の工業生産のための付加製造プロセスは、プラスチック製品の製造を可能にし、継続的に重要性を高めている。当該製造プロセスを使用することによって、層が選択的に溶融および凝固され、それぞれ、結合剤および/または接着剤を適用することによって所望の構造が製造される。当該プロセスは、「付加製造」、「デジタルファブリケーション」、または「三次元(3D)印刷」とも呼ばれる。
【0003】
プロトタイプの製造のための産業開発のプロセス(ラピッドプロトタイピング)は、何十年もの間使用されている。しかし、システムの技術的進歩によって、プロトタイプの代わりに、またはプロトタイプに追加して、最終製品の質的要件を満たす部品の生産が開始され(ラピッドマニュファクチャリング)、すなわち、今日のシステムの技術的進歩によって、最終製品の質的要件を満たす部品の製造も可能になっている。
【0004】
実際には、「付加製造」という用語は、しばしば、「生成的製造」または「ラピッドテクノロジー」という用語に置き換えられる。粉末状物質を使用する付加製造に含まれるプロセスは、たとえば、焼結、溶融、または結合剤による接着である。
【0005】
多くの場合、ポリマー系が物品の製造用の粉末状物質として使用される。そのようなポリマー系の産業的使用者は、そのようなシステムによって製造された物品の良好な加工性、成形の正確さ、および良好な機械的特性を要求する。
【0006】
そのような物品の製造の目的のために、相互拡散は溶融塊内でのみ起こり得るため、溶融塊と3D構造の下層との結合を得ることに利点がある。しかし、ポリマーの溶融特性が不十分なために(1つまたは複数の)層の結合が不十分な場合、3D物品は剥離し、安定性を失う傾向がある。したがって、製造中の構築(building)温度は、製造中のポリマーの溶融特性を最適化するように誘導されなければならない。
【0007】
したがって、3D物品の製造中、ポリマーの結晶化温度よりも高い構築温度が必要とされる。他方で、粉末ケーキ(powder cake)が構築領域で溶融しないようにするために、構築温度は本質的に溶融温度未満である必要がある。概して、付加製造によってオブジェクトを構築するために適用可能な温度範囲は、それぞれ、ポリマーのプロセスウィンドウまたは焼結ウィンドウと呼ばれる。
【発明の概要】
【0008】
よって、本発明の目的は、プロセス安全機械的安定性および高い形状精度を示すために物品の製造のための付加製造プロセスにおける材料としての使用に適した組成物を予見することである。特に、本発明の目的は、最適なプロセスウィンドウおよび溶融特性を示す組成物を提供することである。
【0009】
本発明によれば、そのような目的は、請求項1に関する組成物が、定義されたメルトボリュームレートを有する少なくとも1つのポリマーを含むことによって解決される。さらに、目的は、請求項19に関する組成物の製造のためのプロセス、請求項21に関するオブジェクトの製造のためのプロセス、および請求項25に関する本発明の組成物の使用によって解決される。
【0010】
したがって、本発明は、組成物、特に上述の付加製造プロセス用の構築材料に関し、組成物は、
少なくとも1つのポリマーを含み、
ポリマーは粉末の形態であり、かつ
上記ポリマーは少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含み、
熱可塑性ポリマーが、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトン、ならびにそれらのコポリマーおよび/またはブロックコポリマーおよび/またはポリマーブレンドから選択され、上記組成物は、少なくとも5cm3/10分、より好ましくは少なくとも10cm3/10分、および/または55cm3/10分以下、好ましくは40cm3/10分以下、より好ましくは30cm3/10分以下、特に好ましくは26cm3/10分以下、最も好ましくは24cm3/10分以下のメルトボリュームレート(MVR)を有する。
【0011】
その最も単純な実施形態では、本発明の組成物は、熱可塑性ポリマーからそれぞれ選択される、ポリマーまたはポリマー系を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】取り付けスペースを削減した(左)EOS P800上の十字試験成分の位置および高温計測定スポット(「P」、右上)を示す図である。
【
図2】各セクターの中央におけるP800のより小さな構築プラットフォームのマトリックス(xyで5×2)を示す図である。
【
図3】X方向、z方向、粉末ボックスでの引張試料の位置、ならびにEOS P800の密度キューブを示す図である。
【
図4】X方向、z方向、粉末ボックスでの引張試料の位置、ならびにEOS P800の密度キューブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、本明細書で使用される「組成物」は、1つまたは複数の添加剤を含み得る。本明細書で使用される「添加剤」という用語は、特に、アモルファスおよび/または半結晶性および/または結晶性のポリマー、ポリオール、界面活性剤および/または保護コロイドであり得る物質を指す。
【0014】
本明細書で使用される「粉末」という用語は、振とうまたは傾斜されたときに自由に流れ得る微粒子で構成されるバルク固体を指す。本発明によれば、そのような微粒子は、500μm未満の粒子径d50を有する。
【0015】
本発明によれば、組成物は、少なくとも約5cm3/10分、より好ましくは少なくとも約10cm3/10分、特に好ましくは少なくとも約15cm3/10分、最も好ましくは少なくとも約20cm3/10分、および/または約55cm3/10分以下、より好ましくは約40cm3/10分以下、特に好ましくは約30cm3/10分以下、特に好ましくは約26cm3/10分以下、および最も好ましくは約24cm3/10分以下のメルトボリュームレート(MVR)を示す。本明細書で使用される「約」または「およそ」(approx.)という用語は、指定された数または範囲が最大10~15%変動し得ることを意味している。
【0016】
本明細書で使用される「メルトボリュームレート(MVR)」という用語(同義語:メルトボリュームインデックス、MVI)は、熱可塑性ポリマーの溶融物の流れの容易性の尺度である。これは、一つの所定の温度に対する所定の一つの重量測定の重量により加えられた圧力によって特定の直径および長さのキャピラリーを通って10分で流れるポリマーの体積(cm3)として定義される。MVRはcm3/10分で報告される。当該方法は、たとえば、ASTM D1238-10で記載される。
【0017】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、特にPEKKのクラスのこのようなポリマーのMVR測定は、ソフトウェアCeast-View 6.3.1を用いるCeastの装置上で実行される。測定前に、粉末(4.8g)は、Sartorius MA100サーモバランスを用いて11分間120℃で予備乾燥される。その後、粉末は、30秒以内にMVRユニットに充填される。5kgの重量が適用され、測定は、380℃でASTM D1238-10に準拠して実行される。
【0018】
驚くべきことに、本発明によれば、有利な組成物は、たとえば粉末のバルク材料の優れた流動性および溶融特性、ならびに均質な構造を示し、結果として粘度などのレオロジー特性を改善し、それゆえ、材料堆積および機械的特性の改善が可能になる。バルク材料が自由かつ容易に流動すると、バルク材料の良好な流動性が想定される。
【0019】
本明細書で使用される「流動性」という用語は、「注入性」という用語と同義で使用される。粉末の注入性は、(方法のセクションで記載されるように)mmの漏斗を使用してDIN EN ISO 6186に準拠して、および/またはASTM D 7891-15に準拠してせん断セルによって、および/またはハウスナーファクターによって測定される。本出願によれば、「ハウスナーファクター」という用語は、「ハウスナー比」という用語と同義で使用される。
【0020】
本明細書で使用される「ポリマー」または「ポリマー系」という用語は、多数のモノマーから構築されている、少なくとも1つのホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーを指す。ホモポリマーが同じモノマーの共有結合を含む一方で、ヘテロポリマー(コポリマーとも呼ばれる)は共有結合を有する異なるモノマーを含む。本発明によれば、ポリマーまたはポリマー系は、上述のホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーの混合物を含み得るか、またはそれぞれ、1つを超えるポリマー系を含み得る。本出願では、そのような混合物はポリマーブレンドと呼ばれる。
【0021】
本発明に関連する中で、ヘテロポリマーは、無作為に割り当てられたモノマーを含む統計的コポリマーから、主に統計的コポリマーに類似しているが、鎖内のモノマーの含有量が増加または減少する、グラジエントコポリマーから、交互モノマーを含む交互コポリマーから、各モノマーのより長い配列またはブロックを含むブロックコポリマーまたはセグメントコポリマーから、および各モノマーのブロックが異なるモノマーのフレーム上にグラフトされているグラフトコポリマーから選択され得る。
【0022】
利点として、本発明の組成物は付加製造プロセスに使用することができる。本出願に関連する中で、付加製造プロセスは、特に、好ましくは、レーザー焼結、高速焼結、マルチジェットフュージョン、バインダージェッティング、選択的マスク焼結または選択的レーザー溶融を含む、粉末床プロセスの群からの、プロトタイプの製造(ラピッドプロトタイピング)および物品の製造(ラピッドマニュファクチャリング)に適したプロセスを含む。特に、本発明の組成物はレーザー焼結に使用することができる。本明細書で使用される「レーザー焼結」という用語は、「選択的レーザー焼結」という用語と同様に使用され、後者はより古い名称を表している。
【0023】
さらに、本発明は、本発明の組成物の製造のためのプロセスに関し、当該プロセスは、
(i)少なくとも1つのポリマーを提供する工程であって、熱可塑性ポリマーが、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンおよび/またはそれらのコポリマーおよび/またはブロックコポリマーおよび/またはポリマーブレンドから選択される、工程と、
(ii)随意に、ポリマーを粉砕する工程と、
(iii)随意に、少なくとも30℃の温度かつポリマーの融点Tm未満で、ミキサーにおいて、好ましくは熱的-機械的処理によって、ポリマー粒子を丸める工程と、を含む。
【0024】
本明細書で使用される「提供する」という用語は、現場で行われるポリマーまたはポリマー系の製造、および/または代替的または追加的に、外部サイトから供給されるポリマーまたはポリマー系の製造を指す。
【0025】
好ましくは、ポリマー粒子を得るために、重合プロセスからのポリマーペレットまたは重合フレークの粉砕が実施される。そのような重合フレークは、重合プロセスから得られた粗い多孔質の削りくずである。好ましくは、そのような粉末は、1m2/gを超えるBET表面を有する。ポリマーペレットを使用する場合、そのような粉砕工程は、好ましくは室温未満で、さらにより好ましくは液体窒素を加えることによって行われる。利点として、液体窒素の使用によって、結果として(特定の粒子径の)粉末の収率がより高くなる。
【0026】
丸い形状の粒子を得るために、ポリマー粒子には、好ましくは熱的-機械的処理が施される。このような処理は、少なくとも30℃かつポリマーの融点Tm未満の好ましい温度で、ミキサー、好ましくは高速ミキサーにおいて実施される。
【0027】
以下のように、混合する、混ぜる、ブレンドする、配合するという用語は、同義語として使用される。混合する、混ぜる、ブレンドする、配合するプロセスは、押出機における押出しによって、ニーダー、分散機および/または攪拌機において行うことができ、適切な場合、溶融、分散などの1つまたは複数の操作を含む。
【0028】
本発明の組成物を包装する場合、そのような包装プロセスは、好ましくは、それぞれ、湿度を排除して、または定義された湿度条件で行われる。
【0029】
本発明のプロセスによって製造された組成物は、三次元オブジェクトの層状製造のためのプロセスにおいて凝固される粉末状物質として有利に使用され、それにより、オブジェクトの連続層が、エネルギーによって、好ましくは電磁放射によって、特に好ましくはレーザー光によって、所定の部位で選択的に凝固される粉末から連続的に生成される。
【0030】
さらに、本発明は、前述のプロセスによって得られる、または得ることができる、特にレーザー焼結用の組成物に関する。
【0031】
最後に、本発明の組成物は、層状適用による、および製作材料、好ましくは粉末を選択的に凝固することによる、オブジェクト、特に三次元オブジェクトの製造に使用される。本明細書で使用される「凝固する」という用語は、それぞれ、製作材料の少なくとも部分溶融および続く凝固または再凝固を指し、焼結とも呼ばれ得る。
【0032】
製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクトの製造のための有利なプロセスは、少なくとも、
(i)好ましくは粉末の、本発明による組成物の層および/または本発明の製造プロセスによって製造された組成物を製造パネルに塗布する工程と、
(ii)好ましくは照射ユニットを使用することによって、製造されるオブジェクトの断面を表す部位で組成物の塗布された層を選択的に凝固する工程と、
(iii)キャリアを下げ、製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクトが完成するまで、適用する工程および凝固する工程を繰り返す工程と、を含む。
【0033】
本明細書で使用される「製作材料」という用語は、好ましくは、付加製造プロセスによって、好ましくは粉末床プロセスを適用することによって、特にレーザー焼結またはレーザー溶融によって、適切に凝固されて、それぞれ、製作エレメントまたは3Dオブジェクトを形成する、粉末または粉末状物質を指す。上記の本発明の組成物は製作材料として特に適している。
【0034】
好ましくは、製作エレメントの製造のためのプロセスまたはプロセスの一部は、窒素雰囲気下で行われる。
【0035】
本発明による製造パネルとは、付加製造のためにマシン内のキャリア上に配置され、キャリア材料の凝固に適した放射ユニットに対する予め定義された距離に位置づけられているプレートを指す。製作材料は、その上層が凝固されるレベルに対応するように、パネルに塗布される。キャリアは、製作の間、特にレーザー焼結中に、製作材料の最後に塗布された層が、放射ユニット、好ましくはレーザーに対して同じ距離を有するように調整され得、それによって、照射ユニットへの曝露により凝固される。
【0036】
本発明の組成物から生成された物品、特に3Dオブジェクトは、有利な引張強度および破断時伸びを示す。本明細書で使用される「引張強度」という用語は、材料を破断点まで引っ張るのに必要な最大力の測定値を指す。引張強度の判定は、当業者に既知であり、DIN EN ISO 527に準拠して測定され得る。本明細書で使用される「破断時伸び」という用語は、試験試料の破断後の変化した長さと初期の長さとの間の比率を指す。これは、亀裂形成のない形状の変化に耐える材料の能力を表している。破断時伸びの判定は、たとえば、DIN EN ISO 527-2に関して行われ得る。
【0037】
さらに、本発明の組成物から製造された製作エレメントは、寸法安定性の改善および/または形状の歪みの低減を示す。本明細書で使用される「寸法安定性」という用語は、材料が、温度、圧力、力、変更、または湿度の変化にさらされたときに、その元の寸法を維持する程度を指す。レーザー焼結のプロセスでは、寸法安定性は、製作エレメントの形状の歪みによって判定され得る。
【0038】
また、本発明は、上記の製造プロセスによって得られる、または得ることができる製作エレメントに関する。
【0039】
本発明の組成物の使用は、ラピッドプロトタイピングならびにラピッドマニュファクチャリングによって実現され得る。これにより、たとえば、好ましくは、レーザー焼結、高速焼結、バインダージェッティング、選択的マスク焼結、選択的レーザー溶融、特にレーザー焼結を含む、粉末床プロセスの群からの付加製造プロセスが実施されて、好ましくは、三次元オブジェクトを生成し、所定のエネルギーを有するレーザービームを粉末状の材料の層上に選択的に投射する。このプロセスを適用することによって、プロトタイプおよび製作エレメントを、時間と費用の効果の高い方法で生成することができる。
【0040】
本明細書で使用される「ラピッドマニュファクチャリング」という用語は、特に、製作エレメントの製造、すなわち、たとえば金型組立による生産が、経済的でないか、または製作エレメントの幾何学的特性のためにより複雑であるか、もしくは可能でない、1つを超える同等の物品の生産を指す。これは、全体として、物品が複雑な形状を示す場合に当てはまる。その例は、少数しか製造されていない高級車、レーシングカー、ラリーカー、または少数であるほかに、入手のタイミングが重要である、モータースポーツ用のスペアパーツのエレメントである。本発明の物品を実装することができる産業は、たとえば、それぞれ、航空宇宙産業、医療工学、機械工学、自動車産業、スポーツ産業、家庭用品産業、電気産業、またはライフスタイルである。さらに重要なことは、たとえば、ユーザに合わせて幾何学的形状を個々に調整することができる、プロテーゼ、(内耳)補聴器などの特定個人向けのエレメントの多数の同様の製作エレメントの生産である。
【0041】
最後に、本発明は、粉末状物質の形態の組成物を含み、組成物は、そのような粉末状物質から三次元オブジェクトの層状製造のプロセスにおいて凝固させ、それからオブジェクトの連続層が、エネルギーを適用することによって、好ましくは電磁放射を適用することによって、特にレーザー光を適用することによって、続いて特定の部位に構築されるのに適している。
【0042】
本発明のさらに好ましい実施形態は、以下の説明と一緒に従属請求項から導き出され、それにより、特定のカテゴリーの特許請求項は異なるカテゴリーの従属請求項によって形成され得、異なる例の特徴は新しい例に組み合わされ得る。上記および下記の用語の定義および説明が、本明細書および付随する請求項に記載されるすべての実施形態に適宜適用されることを理解されたい。以下では、本発明の方法の特定の実施形態がさらに特定される。
【0043】
好ましくは、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の群から、および/またはたとえば、ポリエーテルエーテルケトン-ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEEK-PEDEK)などの、PEKKのコポリマーまたはPEEKのコポリマーの群から、および/またはポリエーテルエーテルケトン-ポリエーテルメタエーテルケトン(PEEK-PEmEK)の群から選択される。
【0044】
より好ましくは、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンは、以下の通り、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)および/またはポリエーテルエーテルケトン-ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEEK-PEDEK)および/またはポリエーテルエーテルケトン-ポリエーテルメタエーテルケトン(PEEK-PEmEK)の群から選択される。
【0045】
【0046】
さらに好ましくは、少なくとも1つのポリマーは、少なくとも1つのホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーおよび/またはポリマーブレンドから選択され、ここで、少なくとも1つのホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーおよび/またはポリマーブレンドは、好ましくは、半結晶性ホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーおよび/または非結晶ホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーを含む。特に好ましくは、少なくとも1つのホモポリマーおよび/またはヘテロポリマーおよび/またはポリマーブレンドは、少なくとも1つの半結晶性ポリマーまたは少なくとも1つの半結晶性ポリマーと少なくとも1つのさらなる半結晶性ポリマーとの半結晶性ポリマーブレンドまたは少なくとも1つの半結晶性ポリマーとアモルファスポリマーとの半結晶性ポリマーブレンドから選択される。
【0047】
本明細書で使用される「半結晶性」という用語は、結晶性およびアモルファスの領域を含む物質として理解される。ポリマーは、ポリマーの固相における結晶化度が、約5重量%以下、特に約2重量%以下である場合に、本質的にアモルファスであると見なされる。特に、ポリマーは、動的示差熱量測定(DSC)によって融点を判定することができない、および/または溶融エンタルピーが第1の加熱で1J/g未満の場合に、本質的にアモルファスであると見なされる。半結晶性物質は、最大70重量%、好ましくは最大90重量%、特に最大95重量%の結晶性領域を含むことができる。
【0048】
好ましくは、ヘテロポリマーまたはコポリマーは、それぞれ、前述のポリマーおよびコポリマーに基づいて、少なくとも2つの異なる繰り返し単位および/または少なくともポリマーブレンドを含む。利点として、そのようなヘテロポリマーまたはコポリマーおよび/またはポリマーブレンドは半結晶性である。
【0049】
上述のポリマー(ホモポリマー、コポリマー、またはポリマーブレンド)の1つまたは複数を使用することによって、少なくとも部分的に半結晶性である材料、好ましくは粉末状物質を生成することができる。
【0050】
有利な組成物は、好ましくは、少なくとも約120℃、好ましくは少なくとも約150℃、特に好ましくは少なくとも約180℃の溶融温度を有するポリマーおよび/またはコポリマーおよび/またはポリマーブレンドを含む。しかし、好ましいポリマーおよび/またはコポリマーおよび/またはポリマーブレンドの溶融温度は、約320℃以下、好ましくは約300℃以下、特に好ましくは約280℃以下である。
【0051】
本明細書で使用される「溶融温度」という用語は、物質、好ましくはポリマー、コポリマー、またはポリマーブレンドが固体状態から液体状態に移行する温度または温度範囲を指す。
【0052】
代替的または追加的に、有利な組成物は、少なくとも約-10℃、好ましくは少なくとも約50℃、より好ましくは少なくとも約90℃、特に好ましくは少なくとも約120℃、および/または約250℃以下、好ましくは約225℃以下、より好ましくは約200℃以下、特に好ましくは約175℃以下のガラス転移温度Tgを有するポリマーおよび/またはコポリマーおよび/またはポリマーブレンドを含む。
【0053】
本明細書で使用される「ガラス転移温度」という用語は、ポリマーがガム状の粘性状態に変化する温度を指す。ガラス転移温度の判定は、当業者に既知であり、たとえば、DSC(DIN EN ISO 11357に従う)によって実施され得る。
【0054】
好ましい実施形態によれば、有利な組成物は、アニーリングによって処理されていない熱可塑性ポリマーと比較して、少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃高い融点ピークの外挿開始温度Teim、および/または少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃高い、結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)との差ΔTeim/Tcを有する。
【0055】
驚くべきことに、本発明者らは、組成物のアニーリングが、結果として、Teimの増加および/または差ΔTeim/Tcの増加をもたらす、すなわち、プロセスウィンドウの拡大を引き起こすことを見出した。本発明に使用される「プロセスウィンドウ」という用語は、考えられ得る最も低い構築温度(非カール温度:NCT)と考えられ得る最も高い構築温度(より高い構築温度:UBT)との間の開きを指す。本明細書で使用される「結晶化温度」および「溶融ピークの外挿開始温度」という用語は、DIN EN ISO 11357で定義されるようなピーク温度を指す。
【0056】
結晶化温度、溶融温度、および溶融ピークの外挿開始温度の判定のための方法は、当業者に既知であり、DIN EN ISO 11357に関して動的示差熱量測定(DSC)法によって実施され得る。アニーリング処理の有無にかかわらずポリマーの測定値の比較を可能にするために、使用される方法は、同じ保持時間、熱速度、開始温度、および終了温度を適用することを考慮に入れている。
【0057】
結晶化の程度は、DSCまたはX線回折などのさまざまな分析方法によって測定され得る。これにより、結晶化の程度は、(100%の理論上の結晶化度を有するポリマーと比較して)溶融エンタルピー[J/g]によって計算される。
【0058】
本明細書で使用される「溶融エンタルピー」という用語は、物質をその溶融温度および一定の圧力(等圧線)でその固体状態からその液体状態に溶融するのに必要なエネルギーを指す。
【0059】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、融点Tm未満の特定の温度範囲内でのアニーリングによってだけでなく、代替的または追加的に、ポリマーのメルトボリュームレート(MVR)の変動によっても、プロセスウィンドウを増加させることができることを発見した。利点として、上記で指定されたMVR範囲内で、プロセスウィンドウは、一次粉末、すなわち、未使用の粉末に対して、少なくとも約1℃、好ましくは少なくとも約3℃、より好ましくは少なくとも約5℃、および最も好ましくは少なくとも約9℃、および/または約200℃以下、好ましくは約100℃以下、より好ましくは約50℃以下である。
【0060】
好ましい実施形態によれば、上述のポリエーテルケトンケトンは、以下の繰り返し単位:
【化2】
(式中、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとの比率は、好ましくはおよそ80:20から10:90の間、好ましくは70:30から40:60の間、特に好ましくは60:40である)
を含む。
【0061】
特に好ましい実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトンは、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、特に好ましくは少なくとも270℃、および/または最大320℃まで、好ましくは最大310℃まで、特に最大300℃までの溶融温度Tmを有し、および/またはポリアリールエーテルケトンは、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃、特に好ましくは少なくとも150℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0062】
次の好ましい実施形態によれば、ポリエーテルイミドは、好ましくは、
【化3】
の繰り返し単位、および/または
【化4】
の繰り返し単位、および/または
【化5】
の繰り返し単位を含む。
【0063】
次の好ましい実施形態によれば、ポリマーブレンドは、ポリアリールエーテルケトン-ポリエーテルイミドを含む。
【0064】
さらにより好ましくは、ポリアリールエーテルケトンは、60:40の繰り返し単位Aと繰り返し単位B
【化6】
との比率を有するポリエーテルケトンケトンを含み、および/またはポリエーテルイミドは、
【化7】
の繰り返し単位を含む。
【0065】
さらに好ましい組成物は、以下の繰り返し単位:
【化8】
を有するポリエーテルケトンケトンを含む。
【0066】
好ましくは、繰り返し単位Aの1,4-フェニレン単位と繰り返し単位Bの1,3-フェニレン単位との比率は、90:10から10:90、より好ましくは70:30から10:90、特に60:40から10:90、最も好ましくは約60:40である。繰り返し単位Aまたは繰り返し単位Bの数n1またはn2は、それぞれ、好ましくは、少なくとも10および/または2000以下であり得る。
【0067】
さらに好ましくは、ポリマーの粘度数は、PAEKに適用された、ISO 307に準拠した25℃での96重量%の硫酸溶液中で測定されるように、0.7dl/gから1.2dl/g、好ましくは0.78dl/gから1.1dl/gである。
【0068】
たとえば、好ましいポリエーテルケトンケトンポリマーは、商品名Kepstan 6000のシリーズ(アルケマ社(Arkema)、フランス)で得られ得る。
【0069】
さらに好ましい実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトンは、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、特に好ましくは少なくとも270℃、および/または最大320℃、好ましくは最大310℃、特に最大300℃の溶融温度Tmを有する。
【0070】
さらに、好ましいポリアリールエーテルケトンは、少なくとも約120℃、好ましくは少なくとも約140℃、特に好ましくは少なくとも約150℃、および/または約200℃以下、好ましくは約180℃以下、特に好ましくは約170℃以下のガラス転移温度Tgを有する。
【0071】
次の好ましい実施形態によれば、ポリエーテルケトンケトンは、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、特に好ましくは少なくとも265℃、および/または最大285℃、好ましくは最大280℃、特に最大275℃の溶融の外挿開始温度(Teim)を有する。
【0072】
溶融温度Tmおよび溶融ピークの外挿開始温度(Teim)の判定は、たとえば、DSC(示差走査熱量測定)法によって実施することができる。TmおよびTeimの測定のための対応するDSC法は、好ましくは、Mettler Toledo DSC 823などの装置上で(DSCの第1の加熱曲線によって判定される)DIN EN ISO 11357に準拠して実行される(PAEK、特にPEKKに関して、初期温度は0℃であり、最高温度は360℃であり、最低温度は0℃である;加熱または冷却速度:20K/分、重量:4.5mg~5.5mg)。
【0073】
少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンのそのような溶融温度および/またはガラス転移温度は、利点として、溶融および結合の特性の改善、特にレーザー焼結を可能にし、したがって、結果として、そのようなポリマーから製造される製作エレメントの機械的特性の改善をもたらす。
【0074】
次に好ましい組成物では、熱可塑性ポリマーは少なくとも1つのポリエーテルイミドから選択される。特に好ましくは、そのようなポリエーテルイミドは、
【化9】
の繰り返し単位、および/または
【化10】
の繰り返し単位、および/または
【化11】
の繰り返し単位を含む。
【0075】
式I、IIおよびIIIの繰り返し単位の数nは、好ましくは、少なくとも10および/または1000以下である。
【0076】
好ましくは、そのようなポリエーテルイミドの数平均分子量(Mn)は、少なくとも10000D、好ましくは少なくとも15000Dおよび/または200000D以下、特に好ましくは少なくとも15000Dおよび/または100000D以下である。そのような好ましいポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは少なくとも20000D、より好ましくは少なくとも30000Dおよび/または500000D以下、特に好ましくは少なくとも30000Dおよび/または200000D以下である。
【0077】
式Iに関する好ましいポリエーテルイミドが、商品名Ultem(登録商標)1000、Ultem(登録商標)1010およびUltem(登録商標)1040(サビック社(Sabic)、ドイツ)で得られ得、式IIの好ましいポリエーテルイミドが、商品名Ultem(登録商標)5001およびUltem(登録商標)5011(サビック社、ドイツ)で入手可能である。
【0078】
さらに好ましい組成物は、ポリアリールエーテルケトン-ポリエーテルイミド、好ましくは、60:40の繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとの比率を有するポリエーテルケトンケトンを含むポリマーブレンドを含む。好ましい組成物は、好ましくは式Iの繰り返し単位を含む、ポリエーテルイミドをさらに含み得る。
【0079】
上述のように、有利な組成物は1つまたは複数の添加剤を含み得る。好ましい実施形態によれば、添加剤は、半結晶性ポリマーおよび/または半結晶性ポリオールおよび/または半結晶性界面活性剤および/または半結晶性保護コロイドであり得る。好ましくは、添加剤は、水溶性であり、および/または室温で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと混和性ではない。
【0080】
利点として、添加剤は、付加製造プロセス中の組成物の注入中にポリマー粒子の固化および空洞の形成を適切に防止し、それにより、組成物のかさ密度を積極的に増加させる。
【0081】
本明細書で使用される「かさ密度」という用語は、材料の多くの粒子の質量をそれらが占める総体積で割ったものを指す。総体積には、粒子体積、粒子間ボイド体積、および内部細孔体積が含まれる。かさ密度の判定は、当業者に既知であり、DIN EN ISO 60:2000-01に準拠して実施され得る。
【0082】
好ましい実施形態によれば、組成物は、少なくとも約30kg/m3および/または約65kg/m3以下、好ましくは少なくとも35kg/m3および/または55kg/m3以下、特に少なくとも40kg/m3および/または50kg/m3以下のかさ密度を有する。
【0083】
組成物が、重合フレークから粉砕することによって製造されたポリアリールエーテルケトンを含む場合、そのような組成物は、好ましくは、少なくとも約30kg/m3および/または約50kg/m3以下、好ましくは少なくとも32kg/m3および/または45kg/m3以下、特に少なくとも34kg/m3および/または40kg/m3以下のかさ密度を示す。これは、組成物が重合フレークから製造された場合に特に好ましい。
【0084】
概して、レーザー焼結に使用される組成物、特定の粒子径または粒子径分布に関して、それぞれ、適切なかさ密度および十分な注入性が重要である。
【0085】
本明細書で使用される「粒子径」という用語は、組成物中の単一粒子のサイズを指す。これにより、粒子径分布は、粉末形態で存在する組成物などの、注入可能な形態で存在する、バルク材料の特性に影響を与える。
【0086】
さらに好ましい実施形態によれば、組成物のポリマー粒子は、以下の粒子径分布を有する。
- d10=少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μmおよび/または50μm以下、好ましくは40μm以下
- d50=少なくとも25μmおよび/または100μm以下、好ましくは少なくとも30μmおよび/または80μm以下、特に少なくとも40μmおよび/または60μm以下
- d90=少なくとも50μmおよび/または150μm以下、好ましくは120μm以下
【0087】
粒子径または粒子径分布の判定のための方法は、それぞれ、当業者に既知であり、DIN ISO 13322-2に準拠して判定され得る。
【0088】
特に好ましい組成物は、ポリアリールエーテルケトンから選択されるポリマー粒子を含み、当該組成物のポリマー粒子は、以下の粒子径分布を有する。
- d10=少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、特に少なくとも25μmおよび/または50μm以下、好ましくは40μm以下、特に30μm以下
- d50=少なくとも40μmおよび/または100μm以下、好ましくは少なくとも45μmおよび/または80μm以下、特に少なくとも50μmおよび/または65μm以下
- d90=少なくとも70μmおよび/または150μm以下、好ましくは少なくとも80μmおよび/または130μm以下、より好ましくは120μm以下、特に好ましくは110μm以下
【0089】
さらにより好ましくは、そのような好ましいポリアリールエーテルケトン粉末は、重合フレークの粉砕によって得られる。
【0090】
さらに好ましい実施形態によれば、有利な組成物は、3以下、好ましくは2以下、特に1.5以下、特に好ましくは1以下の分布幅(d90-d10)/d50を示す。
【0091】
さらに好ましい組成物は、約5重量%以下、好ましくは約3重量%以下、特に好ましくは約2重量%以下および最も好ましくは1重量%以下の微細分を含む。本明細書で使用される「微細分」という用語は、10μm未満の粒子径を有する粒子を指す。
【0092】
本発明の組成物のポリマー粒子は、好ましくは、本質的に球形からレンチキュラー形状を示す。特に好ましくは、ポリマー粒子は、少なくとも約0.8、好ましくは少なくとも約0.85、特に好ましくは少なくとも約0.90、および最も好ましくは少なくとも約0.95の真球度を示す。真球度の判定は、たとえば、(Camsizer XT装置(レッチ テクノロジー社(Retsch Technology)、ドイツ)上で)DIN ISO 13322-1および/またはDIN ISO 13322-2に準拠して顕微鏡検査によって実施され得る。
【0093】
特に好ましい実施形態によれば、有利な組成物は、少なくとも1秒、好ましくは少なくとも2秒、最も好ましくは少なくとも3秒および/または12秒以下、好ましくは9秒以下、最も好ましくは8秒以下の(DIN EN ISO 6186に準拠する25mmの漏斗を用いて測定された)注入性を有する。
【0094】
さらに特に好ましい組成物は、少なくとも1.01および/または1.7以下、好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.4以下、特に好ましくは約1.3以下、さらにより好ましくは約1.2以下、最も好ましくは約1.18以下のハウスナーファクターを示す。
【0095】
本発明の組成物のポリマー粒子が小さな表面積を示すことに利点があることがさらに発見された。そのようなポリマー粒子の表面は、たとえば、ブルナウアー、エメットおよびテラー(BET)(DIN EN ISO 9277に関する)に準拠してガス吸着によって判定され得る。この方法に従って測定された粒子表面は、BET表面とも呼ばれる。
【0096】
好ましい実施形態によれば、有利な組成物のBET表面は、少なくとも約0.1m2/gおよび/または約10m2/g以下、好ましくは5m2/g以下、より好ましくは2m2/g以下、特に好ましくは1.5m2/g以下、最も好ましくは1m2/g以下である。特に、そのような組成物は、ポリアリールエーテルケトンから選択されるポリマー粒子を含む。
【0097】
これは、ポリアリールエーテルケトン粒子が重合フレークから製造される場合に特に好ましいが、そのようなポリアリールエーテルケトン粒子は、好ましくは、少なくとも0.5m2/gのBET表面を有する。特に好ましくは、そのようなポリアリールエーテルケトン粒子は粉砕によって得られる。
【0098】
組成物を製造するための本発明のプロセスは、最初に例示された。組成物の製造のためのさらに好ましい実施形態によれば、ポリマーは、好ましくは、ポリアリールエーテルケトンまたはそのコポリマーまたは他のポリマーとのブレンドから、より好ましくは粉末の形態で選択される。特に好ましくは、ポリマーは、重合プロセスからの重合フレークの形態で提供される。
【0099】
有利な組成物の製造は、たとえば分散剤のような添加剤中に上記の工程i)で提供されるようなポリマーの溶融分散の工程を含み得る。好ましくは、そのような分散剤は、ポリオールから、より好ましくは半結晶性ポリオールから選択される。特に、そのようなポリオールは、少なくとも1つの半結晶性ポリエチレングリコールおよび/または少なくとも1つの半結晶性ポリエチレンオキシドおよび/または少なくとも1つのポリビニルアルコールから、特に好ましくは少なくとも1つの半結晶性ポリエチレングリコールから選択される。好ましくは、そのような添加剤または分散剤の除去は、それぞれ、遠心分離および/または濾過によって行われる。
【0100】
分散工程、好ましくは溶融分散は、分散装置、より好ましくは押出機で行われる。代替的に、分散工程はニーダーで行われてもよい。好ましくは、分散装置は、特に前進方向に、いくつかの連続したゾーンを含む。
【0101】
さらなるプロセスでは、混合物または分散液からの、それぞれ、ポリマーまたはポリマー粒子の分離に続いて、分離されたポリマーまたはポリマー粒子の洗浄および/または乾燥工程が行われ得る。
【0102】
混合物または分散液の成分のそれぞれの分離は、好ましくは、遠心分離および/または濾過によって実施される。乾燥された組成物を得るための固体組成物の乾燥を、たとえば、真空乾燥機などのオーブンで実現することができる。
【0103】
代替的または追加的に、有利な組成物は、工程i)で提供されるようなポリマーを溶融配合し、ポリマーをさらに処理し、繊維化し、繊維をマイクロペレットに細断することによって得ることができる。
【0104】
代替的または追加的に、有利な組成物は、工程i)で提供されるようなポリマーを溶融配合し、溶融噴霧プロセスで、好ましくはノズルを介して高圧を加えることによって、溶融物を噴霧することによって得ることができる。
【0105】
代替的または追加的に、有利な組成物は、好ましくは高温で、ポリマーを溶媒中に溶解し、好ましくは冷却および撹拌によって、粉末を形成するために溶媒からポリマーを沈殿させることによって得ることができる。
【0106】
特に好ましい実施形態によれば、組成物の製造のための有利なプロセスは、Tgより高いかつTmより低い温度でポリマー粒子をアニーリングする(続く)工程をさらに含む。好ましくは、ポリマー粒子のアニーリングは炉内で行われる。
【0107】
アニーリング工程は、上記の丸める工程と同じ工程で実施され得る。代替的に、アニーリングは、ポリマー粒子を丸める前または後にさえも実施され得る。
【0108】
特に好ましい実施形態によれば、ポリマー、特にPAEKのアニーリングは、ポリマーを丸める工程と同じ工程で実施される。そのような特に好ましいプロセスは、好ましくは、少なくとも約30℃のアニーリング温度で、より好ましくは、少なくともポリマーのおよそのガラス転移温度で、および/またはポリマーのおよその溶融温度以下で行われる。
【0109】
また、本発明は、そのようなアニーリング工程を含むために上記のプロセスによって得られた、または得ることができる、組成物、特にPAEKポリマーを含む組成物に関する。
【0110】
最も好ましい実施形態によれば、有利な組成物の製造のためのプロセスは、少なくとも約250℃、より好ましくは少なくとも約260℃、特に好ましくは少なくとも約265℃、および/または好ましくは285℃以下、より好ましくは280℃以下、特に好ましくは275℃以下の好ましい温度で、ポリマー粒子、好ましくはPEKK粒子をアニーリングする工程を含む。
【0111】
次の工程では、有利なプロセスは添加剤の添加を含む。特に、そのような添加剤は流動剤から選択される。好ましくは、添加剤、特に流動剤の添加は、ミキサーで実施される。
【0112】
製作エレメントの本発明の製造は最初に説明された。ここで、驚くべきことに、本発明者らは、製作エレメントの製造のために、さらにより好ましくは、有利なプロセスが組成物のリフレッシュを使用することを発見した。有益なことに、リフレッシュされた組成物の使用は、製作エレメントの機械的安定性を高める。さらに、リフレッシュされた組成物の使用は、結果として費用効果の高い製造プロセスを好適にもたらす。
【0113】
本明細書で使用される「組成物のリフレッシュ」という用語は、組成物全体の一部、すなわち、少なくとも一度レーザー焼結プロセスで使用されている組成部分に対する、前にレーザー焼結プロセスで使用されていない組成部分に対して言及している。本発明に関連して、前にレーザー焼結プロセスで使用されていない組成部分は、「一次粉末」または「一次組成物」と呼ばれる。このような一次組成物の含有量は、組成物全体の好ましくは10重量%超および60重量%未満、より好ましくは50重量%未満、さらにより好ましくは40重量%未満、特に好ましくは30重量%未満である。
【0114】
作業量サイズ(job-volume-size)によっては、特にxy方向の部分の焼結ひずみが、60重量%を超える高いリフレッシュで観察され得る。したがって、特に好ましい実施形態によれば、リフレッシュが上記の数値の範囲内であることが好ましい。これは、特にPEKKにとって利点があり、最も好ましくは、PEKK 60:40(繰り返し単位A:繰り返し単位B)のコポリマーにとって利点がある。
【0115】
したがって、有利な実施形態によれば、好ましいリフレッシュは、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、特に好ましくは30重量%未満である。しかし、物品の表面が減少する可能性があるため(「オレンジ皮(orange skin)」効果)、リフレッシュは10重量%超である必要がある。これは、特に、たとえばEOS P800またはP810のマシンなどの、大きな構築ボリュームを有するマシンを使用する場合に関連しており、z高さが約100mmを超える構築を実行する場合にさらに関連しているか、またはz高さが約200mmを超える構築を実行する場合に最も関連している。利点として、そのようなリフレッシュは、PEKK、最も好ましくは、PEKK 60:40(繰り返し単位A:繰り返し単位B)のコポリマーに使用される。
【0116】
なおさらに、驚くべきことに、製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクトの製造のための有利なプロセスとして、層を適用する上述の工程i)が、少なくとも二重コーティングによって適用されることが発見され、
ここで、層の適用は、第1の高さH1を有する第1の層を適用する工程と第2の高さH2を有する第2の層を適用する工程とに細分され、
高さH2の第2の層は高さH1の第1の層上に適用され、好ましくは、第1の層の高さH1は第2の層の高さH2に等しい。
【0117】
次の好ましい実施形態によれば、そのような層は、好ましくは少なくとも約60μmおよび/または120μm以下、より好ましくは約100μmの厚さを有する。驚くべきことに、そのような厚さの層を適用すると、層の結合が改善される。
【0118】
特に好ましくは、製作エレメントの製造のための有利なプロセスの層は、1.9°の好ましい角度を有するルーフブレードを使用する。
【0119】
また、本発明は、製作エレメント、好ましくは3Dオブジェクトを包含し、製作エレメントは、上記の製造プロセスによって得られるか、または得ることができる。
【0120】
最後に、有利なプロセスは組成物の包装を含み得る。本発明の方法に従って製造された組成物、特に粉末の包装は、好ましくは、空気湿度から除外して実施される。そのような包装された材料は、固化効果を防ぐために低下した湿度下で保存され得、それによって本発明の組成物の保存安定性を改善する。加えて、有利な包装材料は、本発明の組成物への湿気のアクセス、特に空気湿度を防止し得る。
【0121】
上述のように、本発明の組成物は、付加製造プロセス、特にレーザー焼結プロセスに適している。通常、照射装置、特にレーザービームのターゲット領域、たとえば、付加製造装置の粉末床は、使用前に加熱され、その結果、一次粉末状物質の温度は、その溶融温度に近づき、粒子が合体して凝固するための総エネルギー入力を増加させるのに、わずかなエネルギー入力のみで十分となる。それにより、エネルギー吸収および/またはエネルギー反射物質が、それぞれ、高速焼結またはマルチジェット融合のプロセスから知られているように、照射ユニットのターゲット領域上に適用され得る。
【0122】
本明細書で使用される「溶融」という用語は、付加製造プロセス中に、エネルギーの入力による、好ましくは電磁放射による、特にレーザー放射による、たとえば、粉末床における粉末が、少なくとも部分的に溶融するプロセスを指す。これにより、本発明の組成物は、高い機械的安定性および成形精度を備えたプロセスセーフな製作エレメントの少なくとも部分的な溶融および製造を可能にする。
【0123】
さらに、引張強度および破断時伸びの判定が、本明細書から製造される、それぞれ、本発明の組成物または製作エレメントの加工性の尺度として有用であることが発見された。
【0124】
したがって、さらに好ましい実施形態は、本発明の組成物を使用することによって生成される製作エレメントを包含する。利点として、そのような製作エレメントは、好ましくは、少なくとも約50MPa、より好ましくは少なくとも約70MPa、特に少なくとも約80MPa、最も好ましくは少なくとも約90MPaのx-y方向の引張強度を示す。有利な製作エレメントは、好ましくは、約150MPa以下、より好ましくは約120MPa以下、特に約110MPa以下の引張強度を有する。
【0125】
代替的または追加的に、そのような製作エレメントは、好ましくは、少なくとも約1%、より好ましくは少なくとも約2%、特に少なくとも約2.5%、最も好ましくは少なくとも約3%、および/または約50%以下、より好ましくは約20%以下、特に好ましくは約15%以下の破断時伸びを示す。
【0126】
引張強度および破断時伸びの判定は、当業者に既知であり、DIN EN ISO 527に準拠して実施され得る。
【0127】
さらに好ましい実施形態によれば、有利な組成物は、少なくとも、好ましくは1つまたは複数の流動剤、熱安定剤、酸化安定剤、UV安定剤、着色剤、および赤外線吸収剤から選択される添加剤を含む。組成物中のそのような添加剤の好ましい含有量は、少なくとも約0.005重量%、好ましくは少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.05重量%、特に好ましくは少なくとも約0.1重量%、最も好ましくは少なくとも約0.2重量%であり得、および/または好ましい組成物は、好ましくは約3重量%以下、より好ましくは約2重量%以下、特に好ましくは約1重量%以下、最も好ましくは約0.5重量%以下の1つまたは複数の添加剤の含有量を含み得る。そのような添加剤の含有量は、組成物中の各々の単一の添加剤の含有量を指す。
【0128】
好ましくは3重量%を超えるより多い量で使用することができる他の機能性添加剤は、軟化剤、充填剤、および強化材料、ならびに難燃剤様の、強化繊維、SiO2粒子、炭素粒子、炭素繊維、ガラス繊維、カーボンナノチューブ、ミネラル繊維(たとえば珪灰石)、アラミド繊維(特にケブラー繊維)、ガラス球、ミネラル繊維、無機顔料および/または有機顔料および/または難燃剤(特にポリリン酸アンモニウムおよび/またはブロムなどのリン酸塩および/または他のハロゲンおよび/または水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムなどの有機物を含む)の群から選択される。特に好ましくは、添加剤は、強化繊維、特に炭素繊維を含む。
【0129】
さらに特に好ましい添加剤はポリシロキサンを含む。ポリシロキサンは、たとえば、ポリマー溶融物の粘度を低下させる流動剤として、および/または特にポリマーブレンドの柔軟剤として使用され得る。
【0130】
さらに好ましい実施形態によれば、有利な組成物は少なくとも1つの流動剤を含む。通常粒子の形態で存在するそのような流動剤は、ポリマー粒子に付着し、それにより、組成物の凝集を防ぐ。
【0131】
そのような流動剤は、好ましくは、金属石鹸の群から、好ましくは二酸化ケイ素、ステアリン酸塩、リン酸三カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛またはそれらの混合物から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの流動剤は二酸化ケイ素(同意語:シリカ)から選択される。有利な組成物は、少なくとも約0.01重量%および/または約1重量%以下の(1つまたは複数の)流動剤を含む。
【0132】
本発明のさらに好ましい実施形態は、説明とともに従属請求項から導出され、それにより、特定のカテゴリーの特許請求項は異なるカテゴリーの従属請求項によって形成され得、異なる例の特徴は新しい例に組み合わされ得る。上記および下記の用語の定義および説明が、本明細書および付随する請求項に記載されるすべての実施形態に適宜適用されることを理解されたい。以下では、本発明の特定の実施形態がさらに特定される。
【実施例】
【0133】
実施例1:
60:40のテレフタル酸単位とイソフタル酸単位との比率を有するPEKKを、以下の通りに製造した:
オルトジクロロベンゼン(1600g)および1,4-(フェノキシベンゾイル)ベンゼン(EKKE)(65g)を、乾燥窒素流下で撹拌しながら2Lの反応器に入れた。以下の酸塩化物:テレフタロイルクロライド(5.4g)、イソフタロイルクロライド(22.2g)およびベンゾイルクロライド(0.38g)を加えた。反応器を-5℃に冷却し、反応器内の温度を5℃未満に保ちながらAlCl3(115g)を加えた。ホモジナイゼーション期間(約10分)後、反応器の温度を毎分5℃ずつ90℃まで上昇させた(この温度上昇中に重合を開始した)。反応器を、30分間90℃で維持し、その後、30℃に冷却した。反応器内の温度が90℃を超えないように、400gの酸性水(3%のHCl)をゆっくり加えた。反応器を、2時間撹拌し、その後、30℃に冷却した。
【0134】
反応媒体を反応器から除去し、濾過/精製工程を当業者に従って行う。その後、精製した湿ったPEKKを、一晩真空(30mbar)下において190℃で乾燥する。フレークを得た。
【0135】
実施例2:
実施例1からのPEKK重合フレークを、適切に粉砕し、微粉末への空気分級を行った。粉末のデータを表Aに示す。
【0136】
【0137】
実施例3
ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を、実施例1および2に応じて製造した。
【0138】
その後、粉末を表1に従ってヘンシェル型のFMLのミキサーで混合した。粉末の質量は、以下、mと呼ばれる。フェーズ1は、加熱フェーズ、すなわち、ミキサーにおける混合物(粉末)が最大温度Tmaxに達するまでのフェーズを指す。Tmaxは処理温度TBに対応している。フェーズ1のミキサーの速度はD1と呼ばれる。フェーズ1の持続期間はt1と呼ばれる。フェーズ2は、保持フェーズ、すなわち、達した温度が維持されたフェーズである。フェーズ2のミキサーの速度はD2と呼ばれる。フェーズ2の持続期間はt2と呼ばれる。
【0139】
名称m、Tmax、D1、D2、t1、t2は、以下の実施例でも使用される。
【0140】
得られたかさ密度S、BET表面、10μmの粒径を有する粉末粒子の体積百分率(「%<10μm」)、および粒子径分布の分位d10、d50およびd90に対する値は、表2に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
実施例4
実施例3の粉末を、3時間、窒素雰囲気下で、換気炉(Naberthermタイプ N250/A)において(表3aに従う)異なる温度でアニーリングした。アニーリング後、粉末をPerflux 501タイプの振動ふるい(シープテーヒニーク社(Siebtechnik GmbH)、ミュールハイム、ドイツ)で160μmのふるいにかけた。得た粉末値を表3aに示す。
【0144】
P800タイプのレーザー焼結システム(スタートアップキット PAEK 3302 CFを備えたEOS P800)上で、表3bに示す処理パラメータを使用して結果として生じる3つの粉末(一次粉末)から試験体を生成した。層厚さは120μmであり、これを二重コーティングプロセス(層厚さ60μm)を使用することによって適用した。粉末を、加工性(プロセスウィンドウ)およびレーザー焼結部品の機械的特性に関して分析した。得た値を表3bおよび表3cに示す。
【0145】
【0146】
【0147】
見てわかるように、非カール温度(NCT)は、より高いアニーリング温度で上昇させられる。したがって、粉末は、より高いプロセスチャンバ温度(PK)で構築される必要があり、これにより、使用済み粉末の経年劣化が進み(MVR値の低下がより大きくなる(表3aを参照))、結果として熱処理温度の上昇に伴ってリフレッシュ率が低下する。
【0148】
【0149】
機械的特性に対する熱処理の影響が示されている。zにおける引張強度は、275℃のアニーリング温度で増大される。
【0150】
実施例5
実施例5では、実施例4と同様に、異なる溶融粘度の3つのPEKKタイプを生成した。例外として、重合時間を(実施例1と比較して)調整し、異なる溶融粘度(MVR)を有する粉末を得た。さらに、実施例5のミキサーの処理温度Tmaxは110~120℃の間であった。t1+t2を常に25分間維持するように、t2を各粉末に適合させた。3つの粉末すべてに関しての実施例5のアニーリング温度は265℃であった。粉末の分析データを表4aに示す。
【0151】
試験体を、表4bに示す処理パラメータを使用して結果として生じる3つの粉末(一次粉末)からP800タイプのレーザー焼結システム(スタートアップキット PAEK 3302 CFを備えたEOS P800)上で生成した。層厚さは120μmであり、これを二重コーティングプロセス(層厚さ60μm)を使用することによって適用した。粉末を、それらの加工性(プロセスウィンドウ)およびレーザー焼結部品の機械的特性に関して分析した。得た値は表4bおよび表4cで見ることができる。
【0152】
【0153】
【0154】
表4aおよび表4bに見られるように、NCTは、粉末のMVR値の増加とともに増加する。これは、構築温度(Tpk)がより高い温度であることを意味し、粉末の経年劣化およびリフレッシュに悪影響を及ぼす。また、プロセスウィンドウ(UBTとNCTとの差)は、粉末のMVRの増加に伴い、13℃からわずか5℃に低下する。
【0155】
【0156】
機械的特性に対する溶融粘度の影響は、表4cで明確に見られる。xy方向の引張強度および破断時伸びは73MPaから96MPaに、およびMVRが低いと2.1%から3.8%に大幅に増加し、一方、z方向では、破断時伸びは1.3%から1.2%にわずか減少するだけである。
【0157】
実施例6
実施例6では、実施例4と同様に、異なる粒子径分布を有する2つのPEKKタイプを生成した。例外として、重合時間を(実施例1と比較して)調整し、熱処理後に24cm3/10分のMVRを有する粉末を得た。さらに、実施例6のミキサーの処理温度Tmaxは110~120℃の間であった。t1+t2を常に25分間維持するように、t2を各粉末に適合させた。実施例6のアニーリング温度は、両方の粉末に対して265℃であった。一次粉末の分析データを表5aに示す。
【0158】
【0159】
粉末の流動性に対する粒子径分布の影響を明確に見ることができる。粗粉末は、より良好な流動性を示す(注入可能時間は15秒から8秒に短縮される)。
【0160】
表5bに示す処理パラメータを用いて、結果として生じる粉末(50%リフレッシュ)から、P800タイプのレーザー焼結システム(スタートアップキット PAEK 3302 CFを備えたEOS P800)上で試験体を生成した。層厚さは120μmであり、これを二重コーティングプロセス(層厚さ60μm)を使用することによって適用した。粉末を、レーザー焼結部品の機械的特性に関して分析した。得た値を表6に示す。
【0161】
【0162】
【0163】
表6から、8秒の注入性が改善された粉末が、x-y方向における引張強度および破断時伸びの改善を示していることがわかる。
【0164】
実施例7
実施例7では、実施例5で同様に記載されたように、PEKKを生成した。例外として、重合時間を(実施例1と比較して)調整し、熱処理後に22cm3/10分のMVRを有する粉末を得た。さらに、実施例7からのミキサーの処理温度Tmaxは116℃であった。t1+t2を25分間維持するように、t2を粉末に適合させた。実施例5のアニーリング温度は265℃であった。
【0165】
【0166】
試験体を、二重コーティングプロセス(層厚さは、それぞれ、60μm、50μm、30μm)を適用することによって、120μm、100μmおよび60μmの3つの異なる層厚さで、表7bに示す処理パラメータを用いて、結果として生じる粉末(一次粉末)から、P800タイプのレーザー焼結システム(スタートアップキット PAEK 3302 CFを備えたEOS P800)上で生成した。異なる層厚さを、レーザー焼結部品の機械的特性に関して分析した。得た値を表7cに示す。
【0167】
【0168】
【0169】
z方向における部品の機械的特性および密度に対する影響を明確に見ることができる。100μmおよび60μmの縮小した層厚さを適用すると、z-x方向の引張強度および破断時伸びが増大する。
【0170】
実施例8
実施例8では、重合時間を(実施例1と比較して)調整し、熱処理前に23cm3/10分のMVRを有する粉末を得たことを除いて、実施例4で同様に記載されたようにPEKKを生成した。さらに、実施例8のミキサーの処理温度Tmaxは110~120℃の間であった。t1+t2を常に25分間維持するように、t2を適合させた。また、アニーリング温度を調整した。粉末を、3時間、窒素雰囲気下で、換気炉(Naberthermタイプ N250/A)において(表8aに従う)異なる温度でアニーリングした。アニーリング後、粉末をPerflux 501タイプの振動ふるい(シープテーヒニーク社、ミュールハイム、ドイツ)で160μmのふるいにかけた。得た粉末値を表8aに示す。
【0171】
P810タイプのレーザー焼結システム上で、表8bに示す処理パラメータを用いて、結果として生じる3つの粉末(一次粉末)から、試験体を生成した。層厚さは120μmであり、これを二重コーティングプロセス(層厚さ60μm)を使用することによって適用した。粉末は、加工性(プロセスウィンドウ)、構築後の粉末床硬度、およびレーザー焼結部品の機械的特性に関して分析した。得た値を表8bおよび表8cに示す。
【0172】
【0173】
【0174】
見てわかるように、非カール温度(NCT)は、より高いアニーリング温度で上昇させられる。したがって、粉末は、より高いプロセスチャンバ温度(PK)で構築される必要があり、これにより、使用済み粉末の経年劣化が進み(MVR値の低下がより大きくなる(表8aを参照))、結果として熱処理温度の上昇に伴ってリフレッシュ率が低下する。最も低いアニーリング温度では、使用済み粉末のかさ密度はより大きく低下し、粉末の流動性も最も低くなる。
【0175】
【0176】
機械的特性に対する熱処理の影響が示されている。265℃のアニーリング温度で最高値に達する。
【0177】
実施例9
実施例9では、PEKK(サンプル番号1)を実施例2と同様に生成したが、重合時間を調整して、実施例6と同様の粘度を得た。その後、ミキサーの処理温度Tmaxが110~120℃の間であったことを除いて、実施例3に記載されているようにPEKKを混合した。t1+t2を25分間維持するようにt2を適合させた(サンプル番号2)。その後、実施例4と同様にアニーリングを行った(サンプル番号3)。サンプル3のアニーリング温度は265℃であった。実施例9、サンプル番号3に従って、異なるPEKKも生成した(サンプル番号4)。サンプル4のアニーリング温度も265℃であった。粉末のデータを以下の表9に示す。これらの粉末についてハウスナー比を分析した。
【0178】
【0179】
得た値を表9に示す。ハウスナー比に対する熱処理の影響を見ることができる。熱処理は、特に、ハウスナー比で測定した流動性に有益な効果を示す。見てわかるように、真球度は混合と熱処理の影響を受ける。
【0180】
実施例10
実施例10では、PEKKを実施例2と同様に生成したが、重合時間を調整して、熱処理前に29cm3/10分のMVRを有する粉末を得た(サンプル番号1)。その後、ミキサーの処理温度Tmaxが110~120℃の間であったことを除いて、実施例3に記載されているようにPEKKを混合した。t1+t2を25分間維持するようにt2を適合させた(サンプル番号2)。その後、アニーリング時間を調整した(サンプル番号3)ことを除いて、サンプル番号2を実施例4と同様にアニーリングした。サンプル3のアニーリング温度は265℃であった。BET分析をこれらのサンプルを用いて実施した。得たデータを表10に示す。
【0181】
【0182】
得た値を表10に示す。粒子のBET表面に対する混合と熱処理の影響を見ることができる。
【0183】
方法セクション:
熱的-機械的処理による丸め
ポリマー粒子の熱的-機械的処理は、好ましくはミキサー内で、少なくとも30℃の温度でかつポリマーの融点Tm未満で実行することができる。使用することができるミキサーは、たとえば、FMLタイプ、マシンサイズ40のヘンシェルミキサー(ツェッペリンシステムズ社(Zeppelin Systems GmbH)、ドイツ)である。
【0184】
ハウスナー比
ハウスナー比Hは、バルク材料の圧縮率についての情報を提供する。圧縮されていないバルク材料のかさ密度pb0(EN ISO-60に準拠)とタップ密度pt(DIN EN ISO 787-11に準拠)を判定に使用する。
【0185】
【0186】
タップ密度
タップ密度を、DIN EN ISO 787-11に準拠して判定する。
【0187】
【0188】
本発明による三次元オブジェクトの機械的特性は、以下に説明するように試験試料に基づいて判定することができる。
【0189】
試験方法および試験試料の部品寸法は、引張試験に関する標準DIN EN ISO 527-1:2012-06のものである。この目的のために、ソフトウェアTestExpert II V3.6を備えたツベイク社(Zwick)からの材料試験機TC-FR005TN.A50、書類番号:605922を使用した。
【0190】
標準化された引張試験では、表11の寸法を有する引張試料を用いる弾性率[GPa]、引張強度[MPa]、および破断時伸びなどの試験結果を判定した。試験速度は、PEKK成分に対して5mm/分である。弾性率(E-モジュラス)は、1mm/分の試験速度で判定される。
【0191】
溶融ピークの外挿開始温度の判定
材料は特定の特性を必要とし、これは、通常DSC(示差走査熱量測定)と呼ばれる動的示差熱量測定によって、外挿開始温度Teimに基づいて判定することができる。Tei、mの判定のための対応するDSC測定は、好ましくは、標準ISO 11357に準拠して実行される。装置は、たとえば、Mettler Toledo DSC 823である。また、溶融温度Tmおよび結晶化温度Tcはこの方法で判定される。TeimおよびTmは、第1の加熱曲線から判定される。
【0192】
熱可塑性材料が、PEKKのクラスのポリマーを含むか、またはポリマーである場合、0℃-360℃-O℃-360℃の温度勾配は標準から逸脱している。初期温度(0℃)、最高温度(360℃)、最低温度(0℃)は、3分間維持されるが、最終温度(360℃)では維持されない。さらに、加熱または冷却の速度は20K/分であり、測定の重量は4.5mg~5.5mgである。
【0193】
粒子径および粒子形状の判定のための光学的方法
測定は、関連するソフトウェアCamsizerXT64(バージョン6.6.11.1069)を用いてCamsizer XT装置およびX-Jetモジュール(レッチ テクノロジー社)上で実行される。粒子径および粒子形状の判定のための光学的方法は、標準ISO 13322-2に準拠している。速度調整を決定した後、約2gのサンプルを、80kPaの圧縮空気で分散させ、2つの異なる倍率カメラ(「ベーシック」および「ズーム」)を備えた較正済み光学ユニット上で4mm幅の通路を通過させる。評価のために、少なくとも10000枚の個別の画像を記録する。検討下の粒子の良好な光学的分離を確実にするために、画像化された粒子の面密度が3%未満(「ベーシック」カメラ)または5%未満(「ズーム」カメラ)である場合にのみ画像を使用する。粒子径および粒子形状を、定義された測定パラメータによって判定する。判定されたサイズは、粒子投影x_area=√(4A/Π)の同一の広がりを持つ円の等価直径である。この評価方法の経線または平均は、レーザー回折に匹敵している(d10、d50、およびd90、つまり、体積粒子径分布の10%分位、50%分位、および90%分位として報告される)。測定は、統計的測定の形成のために数回繰り返される。
【0194】
>2g/cm3の高い比重を有する粉末、または分散が困難な粉末に関して、サンプルボリューム、分散圧力、または流動助剤Alu Cの1%の添加の点で、方法を調整する必要があり得る。方法は、可能な限り最小のd90が達成されるべくサンプル量(最大8g)および分散圧力(最大150kPa)の変化が変動されるように適合される。
【0195】
カメラパラメータの較正および設定は装置に特異的に実行されるべきであり、調整およびメンテナンスは製造業者の仕様に従って実行される。(
図5、
図6、および
図7のソフトウェアの元の構成のプリントアウトでも見ることができる)Camsizer XTソフトウェアの以下の構成を使用した:
【0196】
CAMSIZER XTソフトウェアの構成
CAMSIZER XT:0301
重複領域:
x area:0.080mm~0.160mm
xc min:0.080mm~0.160mm
xFe min:0.080mm~0.160mm
xFe max:0.080mm~0.160mm
x area:0.100mm~0.160mm
xc min:0.100mm~0.160mm
xFE min:0.100mm~0.160mm
xFE max:0.100mm~0.160mm
x area:0.100mm~0.160mm
xc min:0.100mm~0.160mm
xFe min:0.100mm~0.160mm
xFe max:0.100mm~0.160mm
計算のためのカメラ間の固定比率:なし
光源のオフへの切り替え:あり
カメラ(測定パラメータ)
CCDベーシック:あり
閾値
粒径に関して
[mm]より小さい:0.0023
[mm]より大きい:20
モールドパラメータに関して
[mm]より小さい:0.0023
[mm]より大きい:20
CCDズーム:あり
閾値
粒径に関して
[mm]より小さい:0.0023
[mm]より大きい:2
モールドパラメータに関して
[mm]より小さい:0.0023
[mm]より大きい:2
画像レート:100%(1:1)
画像レート<0.95の場合の警告:あり
表示の間隔:80
透明粒子の充填:あり
【0197】
より低い構築温度(lower building temperature)(NCT)の判定
より低い構築温度(また非カール温度=NCT)は、クロステストによって判定され、たとえば、十字の試験成分のマトリックス(P800のより小さい構築プラットフォーム上の4×2、
図1)が判定される。この目的のために、レーザー焼結機は、通常の構築温度よりも約10℃(推定)低い温度、または代替的に、予想される非カール温度よりも約5℃低い温度に温められる。自動的な粉末適用の後、z=3mmの高さから十字の層が露出される。これらは強力なプロセスクリティカルなカールを示し、例えば露出された試験十字のエッジが大幅に上向きになり、十字が設置スペースからはがれ、温度が2℃上昇される。1.2mmの粉末層(P800、0.12mmの層厚さの10層、または0.10mmの層厚さでの12層または0.06mmの層厚さでの20層)を適用した後、試験が繰り返される。わずかなカールしか観察できない場合は、クロステストでプロセスクリティカルなカールが観察されなくなるまで、温度を1℃ずつさらに上昇させる。すなわち、十字は、コーティングプロセス中にコーターによって粉末床から引きはがされることなく、全高(1.2mmの高さ)で構築することができる。プロセスクリティカルなカールが観察されない温度は、非カール温度と呼ばれ、可能な限り低い構築温度を定義する。
図1は、取り付けスペースを削減した(左)EOS P800上の十字試験成分の位置および高温計測定スポット(「P」、右上)を示している。
【0198】
「プロセスクリティカルなカールがない」という用語は、カールを観察することができないか、または最小限のカールが、しかしコーターが、粉末適用中に露出した十字を粉末床から引きはがすことができない低い程度でのみ発生することを意味している。
【0199】
より高い構築温度(upper building temperature)(UBT)の判定
最高構築温度は、粉末状物質がまさに固着せず、それにより、粉末粒子の凝集体を形成せず、そしてコーティングプロセス用の粉末状物質は依然として十分に流動性であり、かつコーティング欠陥(たとえば、凝集体によるバンディング)のない、粉末状物質の構築温度である。最高処理温度は、特に使用する粉末状物質のタイプに依存する。
【0200】
しかし、粉末の(局所的な)融解膜の形成に到達しない場合にも最高構築温度に達し得、これは光沢フィルム(たとえばポリアミド12、PA2200)または粉末の局所的な暗色(たとえば、アプリケーションマニュアルに記載されているEOS PEEK-HP3)に見ることができる。
【0201】
判定のために、より低い構築温度の判定後にプロセスチャンバ温度は漸増され(1~2℃)、上記の効果の1つが発生したときに粉末床は正確に観察される。追加的または代替的に、ショア測定によって粉末床の硬度を判定することによって、より高い構築温度を判定することができる。これは、上記の効果の1つがまだ発生していない場合に有用である。構築プロセスの終了後に未焼結の粉末床が硬すぎる場合、露出した成分を未焼結の粉末から分離することはもはや不可能である。これにより、成分の精度が制限される。この目的のために、観測または想定されたより高い構築温度に達すると、プロセスチャンバ温度が1℃低下し、自動構築操作における上部層として3mmの粉末の別の層が適用される。構築プロセス後、粉末ケーキは室温まで冷却される。上部冷却された粉末ケーキの表面は、各セクターの中央におけるP800のより小さな構築プラットフォームのマトリックス(xyで5×2、
図2)上にある適切なショア硬度測定装置(ここでは、Bareiss HPII)によってマシンにおける交換可能なフレームにおいて判定される。ショア硬度の値は、結果としてマトリックスの50%の最高測定値からの平均値として得られる。測定される点の領域で粉末床に亀裂がある場合(室温に対する冷却プロセスによる粉末ケーキの損失に起因する)、それぞれのセクターでの測定値は、亀裂からおよそ15mmの十分な距離で検出されなければならない。より高い構築温度のショア硬度は、特に使用する粉末状物質のタイプに依存すする。これがどれだけ高いかは、それぞれの材料と、成分の質および廃粉リサイクルの要件に依存する。適切に、より高い構築温度のための同じショア硬度が比較として使用される。すべての等しく比例したリフレッシュメント(refreshments)について、これは常に本質的に同じである。さらに、これは判定されたショア硬度値に対する効果を有することができるため、比較される粉末間のレーザー焼結機の加熱分布に変化がないことが優先されるべきである。
【0202】
どのショア硬度測定がどの粉末に適しているかを判定することができる。ASTM D 2240でも規定されている、ショア00、ショア000、ショア000 Sのショア硬度は、好ましいことが証明されている。
【0203】
ショアによるこれらおよび他の硬度試験は、Bareiss HPII Operating Instructions(HPE II Shore [D], Version 26.05.2017)に記載されており、対応する規格がリストされている。例として、一部のポリマー粉末に関して、より高い構築温度に対するショア硬度は、Bareiss HPIIショア硬度計を用いて判定されている:
1)ポリアリールエーテルケトン
ショア-00=85
【0204】
動作温度(TPK)
プロセスチャンバ温度TPKで表される処理温度は、好ましくは、粉末のより低い構築温度より少なくとも1℃、より好ましくは少なくとも2℃、さらにより好ましくは少なくとも4℃高くなる、および/またはより高い構築温度の最大で、より高い構築温度より好ましくは最大で1℃、さらにより好ましくは最大で2℃、さらにより好ましくは最大で4℃低くなるように選択される。好ましくは、処理温度は、粉末のより低い構築温度より高く、より高い構築温度より低い。十分なプロセスセキュリティ(非カール、NCTから可能な限り最大の距離)が保証されなければならない。さらに、温度は、粉末状物質の付着を引き起こすことなく、できるだけ高くしなければならない。
【0205】
代替的または追加的に、各粉末に対する処理温度は、より高い構築温度判定(Upper Building Temperature Determination)(UBT)で記載されている方法に従って、冷却された粉末ケーキのショア硬度を判定することによって判定することができる。ショア硬度値は、好ましくは、UBTのショア硬度値より5%から最大50%低い。好ましくは最大で15%低く、より好ましくは最大で10%低い。
【0206】
レーザー焼結機上での成分の生成
熱可塑性材料がポリアリールエーテルケトン(PAEK)クラス、特にPEKKのポリマーを含むか、またはそれである場合、実験をPSW 3.8を備えた改良型P800(スタートアップキット PAEK 3302 CFを備えたEOSP800)上で実行した。ウォームアップフェーズ後、レーザー焼結機のプロセスチャンバが室温から指定された構築温度または温度検索の開始温度まで120分以内に温められる間に、50層(120μmの層厚さ)または60層(100μmの層厚さ)または120層(60μmの層厚さ)を、底層(=6mm)として露出することなく敷設する。底層を敷設した後、6つの引張試料(寸法は表1を参照)を、x方向に平行に並べた平行な長さで、構築現場の中央に互いに隣接して位置づけ、4つの直方体試験コンポーネント(寸法:20mm×4mm×13.56mm)を引張試料の左右に位置づける。z方向のコンポーネント間に、露出なしで層を敷設する。z=9,960mmで、25個の引張試料(構築現場の中央に互いに隣接して位置づけ、z方向に平行な長さに並べている)を構築する。最後に露出した層に続いて、別の3mmの粉末を自動的に適用し、加熱器が完全にオフに切り替わる前に、デフォルトのジョブで定義されている制御された冷却フェーズによって、マシンを約8時間以内に180℃に冷却する。室温に達した後、コンポーネントを、手動で取り外し、ガラスビーズでブラスト処理し、測定/テストした。
図3および
図4は、X方向、z方向、粉末ボックスでの引張試料の位置、ならびにEOS P800の密度キューブを示している。
【0207】
構築領域のサイズは約350mm×120mmである(プラットフォーム全体のサイズの約1/8、EOS PEEK-HP3アプリケーションマニュアルに従う、xy方向のP800に対する修正された構築スペース削減の変形1)。
【0208】
ジョブの高さは72.96mmである。
【0209】
以下の設定を選択した:
部品の構築中のプロセスチャンバ温度を、実施例のセクションで詳述する;
取り外し可能なフレーム/構築プラットフォームの温度:255℃(PEKKに関して);
デフォルトのジョブ設定:PAEK3302CF;
露出パラメータ:実施例のセクションで説明されているボリュームエネルギー入力。
【0210】
実験をP810(PSW 3.8を備える)上で実行した場合、以下のパラメータを使用して、ビルドを実行した:ウォームアップフェーズ後、レーザー焼結機のプロセスチャンバが室温から指定された構築温度または温度検索の開始温度まで120分以内に温められる間に、50層(120μmの層厚さ)または60層(100μmの層厚さ)または120層(60μmの層厚さ)を、底層(=6mm)として露出することなく敷設する。底層を敷設した後、6つの引張試料(寸法は表1を参照)を、x方向に平行に並べた平行な長さで、構築現場の中央に互いに隣接して位置づける。最後に露出した層に続いて、別の3mmの粉末を自動的に適用し、加熱器が完全にオフに切り替わる前に、デフォルトのジョブで定義されている制御された冷却フェーズによって、マシンを約8時間以内に180℃に冷却する。室温に達した後、コンポーネントを、手動で取り外し、ガラスビーズでブラスト処理し、測定/テストした。
図3は、EOS P810上のx方向の引張試料の位置を示している。
【0211】
構築領域のサイズは約350mm×120mmである(プラットフォーム全体のサイズの約1/8、EOS PEEK-HP3アプリケーションマニュアルに従う、xy方向のP800に対する修正された構築スペース削減の変形1)。
【0212】
ジョブの高さは35.16mmである。
【0213】
以下の設定を選択した:
部品の構築中のプロセスチャンバ温度を、実施例のセクションで詳述する;
取り外し可能なフレームの温度は265℃であり、構築プラットフォームの温度は255℃である;
デフォルトのジョブ設定:EOS_PAEK3304_120_000;
露出パラメータ:実施例のセクションで説明されているボリュームエネルギー入力。
【国際調査報告】