(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】自動化された細胞処理のための品質制御方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20230111BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230111BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230111BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230111BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230111BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C12N1/00 B
C12N5/0783
C12Q1/68
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526463
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020059818
(87)【国際公開番号】W WO2021096850
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512190365
【氏名又は名称】ロンザ ウォーカーズヴィル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム, エイタン
(72)【発明者】
【氏名】オストラウト, ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QR77
4B065AA94X
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、自動化細胞工学システム内で生成される細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法を提供する。本方法は、好適には、自動化プロセス前、その間、およびその後の細胞の分子特性を監視して、プロセスパラメータにフィードバックを提供することを含む。実施形態では、生成される細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T-細胞である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、
(a)改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、
(b)自動化細胞工学システムを介して前記細胞培養物を遺伝子改変することと、
(c)前記遺伝子改変の間およびその後の前記改変された細胞培養物の前記1つ以上の分子特性を決定することと、
(d)前記自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、前記改変された細胞培養物の前記1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の分子特性が、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞培養物が、免疫細胞培養物、ナチュラルキラー細胞培養物、および神経変性療法のための細胞培養物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫細胞培養物が、T-細胞培養物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
T細胞培養物が、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の分子特性が、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(d)における前記最適化することが、前記遺伝子改変の前、その間、および/またはその後に起こる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化することが、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、
(a)改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、
(b)自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、前記改変前細胞培養物の1つの前記1つ以上の分子特性を変化させることと、
(c)前記改変前細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化された細胞培養物を生成することと、
(d)前記活性化された免疫細胞培養物をベクターで形質導入して、形質導入された細胞培養物を生成することと、
(e)前記形質導入された細胞培養物を増殖させることと、
(f)(e)の前記増殖された細胞培養物を濃縮することと、
(g)(f)の前記濃縮された細胞培養物を回収して、遺伝子改変された細胞培養物を生成することと、
(h)ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの間またはその後に、前記細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、
(i)ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、前記細胞培養物の前記1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法。
【請求項10】
前記1つ以上の分子特性が、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞培養物が、免疫細胞培養物、ナチュラルキラー細胞培養物、および神経変性療法のための細胞培養物である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫細胞培養物が、T-細胞培養物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
T-細胞培養物が、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の分子特性が、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記最適化することが、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、
(a)改変前T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、
(b)自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、前記改変前T-細胞培養物の1つの前記1つ以上の分子特性を変化させることと、
(c)前記改変前T-細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化されたT-細胞培養物を生成することと、
(d)キメラ抗原受容体をコードするベクターで前記活性化されたT-細胞培養物を形質導入して、CAR T-細胞培養物を生成することと、
(e)前記CAR T-細胞培養物を増殖させることと、
(f)(e)の前記増殖されたCAR T-細胞培養物を濃縮することと、
(g)(f)の前記濃縮されたCAR-T細胞培養物を回収することと、
(h)ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの間またはその後に、前記CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、
(i)ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、前記CAR T-細胞培養物の前記1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法。
【請求項17】
前記方法が、少なくとも約1億個の生存可能なCAR T-細胞を生成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、少なくとも約20億個の生存可能なCAR T-細胞を生成する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記T-細胞培養物が、末梢血単核細胞および/または精製されたT-細胞を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記T-細胞培養物が、少なくとも1つの補助細胞を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記補助細胞が、単球または単球由来の細胞を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記補助細胞が、CD28、CD40、CD2、CD40L、および/またはICOSを含む、T-細胞受容体のための抗原を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化試薬が、抗体または樹状細胞を含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、表面上に固定化される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記表面が、ビーズの表面である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体が、可溶性抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、抗CD3抗体および抗CD28抗体のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、膜破壊、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ベクターが、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスである、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上の分子特性が、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む、請求項16~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上の分子特性が、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型からなる群から選択される、請求項16~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも約500の遺伝子発現が、決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも約700の遺伝子発現が、決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
約780の遺伝子発現が、決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記最適化することが、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む、請求項16~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、
(a)改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、
(b)自動化細胞工学システムを介して前記細胞培養物を遺伝子改変することと、
(c)前記遺伝子改変の間およびその後の前記改変された細胞培養物の前記1つ以上の分子特性を決定することと、
(d)前記自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、前記改変された細胞培養物の前記1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動化細胞工学システム内で生成される細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法を提供する。本方法は、好適には、自動化プロセス前、その間、およびその後の細胞の分子特性を監視して、プロセスパラメータにフィードバックを提供することを含む。実施形態では、生成される細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T-細胞である。
【背景技術】
【0002】
先進的な細胞療法の臨床導入が加速されることが期待される中、これらの療法が世界中の患者に恩恵をもたらすための基礎的な製造戦略に注目が集まっている。細胞療法は、臨床的に大きな可能性を秘めているが、診療報酬に比べて製造コストが高いため、商業化には高い障壁となっている。したがって、費用対効果、プロセス効率、および産物の一貫性の必要性から、数多くの細胞療法分野における自動化、特にT細胞免疫療法のための取り組みが推進されている(例えば、Wang 2016を参照されたい)。
【0003】
しかしながら、自家細胞療法の幅広い採用を阻止し、製造不良を引き起こす重大な課題が残っている。出発細胞材料は、多くの場合、患者を起源とするため、これが複雑性の追加のレベル、およびばらつきの原因に相当する。現在、細胞療法で治療されている多くの患者は進行性疾患を有し、何度も再発しており、他の複数の療法での効果がない。結果として、患者がこれらの細胞療法から利益を得ることができる治療域は狭く、正確かつ信頼性の高い製造プロセスを必要としている。
【0004】
細胞療法産物を製造した後、産物が患者に投与され得る前の追加の遅延、主として、現在、遅くてコストがかかる沢山の規制要件およびリリース試験がある。現在の細胞療法リリース試験では、レギュレータが、投薬患者を快適にするために必要な情報を提供するが、臨床的有効性を予測するにはほとんど役に立たない。
【0005】
細胞ベース療法を生成するための自動化されたプロセスでは、多くの場合、個々の患者の必要性、および本方法中のリアルタイムの変更に基づくプロセスの様々なパラメータを最適化および修正する必要性がある。本発明は、好適には自動化システムにおいて、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化する方法を提供することによって、これらの必要性を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態では本明細書には、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムを介して細胞培養物を遺伝子改変することと、遺伝子改変の間およびその後の改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、が提供される。
【0008】
さらなる実施形態では、本明細書には、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変前細胞培養物の1つの1つ以上の分子特性を変化させることと、改変前細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化された細胞培養物を生成することと、活性化された免疫細胞培養物をベクターで形質導入して、形質導入された細胞培養物を生成することと、形質導入された細胞培養物を増殖させることと、(e)の増殖された細胞培養物を濃縮することと、(f)の濃縮された細胞培養物を回収して、遺伝子改変された細胞培養物を生成することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの間またはその後に、細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、が提供される。
【0009】
追加の実施形態では、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変前T-細胞培養物の1つの1つ以上の分子特性を変化させることと、改変前T-細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化されたT-細胞培養物を生成することと、キメラ抗原受容体をコードするベクターで活性化されたT-細胞培養物を形質導入して、CAR T-細胞培養物を生成することと、CAR T-細胞培養物を増殖させることと、(e)の増殖されたCAR T-細胞培養物を濃縮することと、(f)の濃縮されたCAR-T細胞培養物を回収することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの間またはその後に、CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、が提供される。
【0010】
また、本明細書には、細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムを介して細胞培養物を遺伝子改変することと、遺伝子改変の間およびその後の改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に記載される、細胞ベース療法を生成するための一般化された製造プロセスを示す。
【
図2】本明細書の実施形態に記載される、例示的な細胞工学システムを含む実験室空間を示す。
【
図3】本明細書の実施形態に記載される、細胞工学システム内で行われ得る細胞ベース療法生成プロセスを示す。
【
図4】自動化細胞工学システムについてのプロセスフローの凡例を示す。
【
図5】自動化細胞工学システムのカセットからサンプリングするためのシリンジおよびバッグの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、様々な細胞ベース療法の自動化された生成の監視、評価、および最適化するための方法を提供する。
【0013】
自動化された細胞処理
T細胞療法などの自家細胞ベース療法および治療については、製造マイクロロット(ロット当たり1人の患者)バッチが、同種(ロット当たり多数の患者)プロセスが活用することができる規模の経済性を欠いているため、費用対効果、プロセス効率、および産物の一貫性の必要性が特に急務である(例えば、Jones 2012;Trainor 2014を参照されたい)。マイクロロットに必要なより大きく、かつより局在化された労働力および施設は、物流、手動生成のためのGMPコンプライアンス(特に、可用性に関する)、およびスタッフのトレーニングにかなりの要求が課される。加えて、オペレータ間の技法におけるばらつきについての潜在性により、リリース基準を一貫して満たし、安全かつ信頼できる産物を確保する上で望ましくないリスクが生じる場合がある。
【0014】
本明細書に記載されるように、自動化された製造の設置および包括的な検証は、これらの物流および運用上の課題に対する解決策を提供する。生成プロセスに自動化を導入するための重要な手法は、「単位動作」と呼ばれる、オペレータが生成材料に物理的または化学的な変更を適用する主要なモジュールステップを特定することである。細胞製造の場合には、これは、細胞分離、遺伝子操作、増殖、洗浄、濃縮、および細胞の回収などのステップを含む。製造元は、多くの場合、自動化を導入するための即効性のある機会として、焦点となるプロセスの障害を特定する。これは、市販のバイオリアクタの大部分の技術的動作スペクトルに反映され、これは個別のプロセスステップに焦点を当てる傾向がある。細胞製造におけるプロセスの課題(無菌状態の維持からサンプルの追跡まで)は、必然的なプロセスのばらつきを改良しながら、一貫した細胞出力を生み出すエンドツーエンドの自動化によって本明細書で対処される。本明細書に記載の方法はまた、単純化を提供し、関連する電子記録は、GMP基準に準拠する際の助けになる(例えば、Trainor 2014を参照されたい)。
【0015】
単位動作の自動化および主要なプロセス感度
がん免疫療法のための改変自家T細胞を含む、様々な細胞ベース療法の臨床開発の最近の急速な進歩は、関連する翻訳およびスケールアップ/スケールアウトの意味合いの計画につながっている。
【0016】
特定のプロトコルは、異なる細胞ベース療法ごとに変わるが、一般化されたプロセスが
図1に例示されている。
図1は、例えば自家T細胞療法を含む、患者の血液サンプルの初期処理から出力細胞の製剤化までの、細胞ベース療法製造の単位動作について記載されている。
【0017】
本明細書に記載されるように、細胞製造自動化を達成するために、本明細書に記載の方法は、各移行点における細胞の状態、およびそれらが特定の単位動作によってどのように影響されるかを理解するために提供される。患者固有の療法のためのマイクロロット生成は、自動化の実現可能性に影響を及ぼす主要なプロセス感度を尊重する必要がある。本明細書に記載の自動化は、様々なプロセスステップをうまく受け入れる。
【0018】
以下の表1は、T細胞自動化を含む、細胞ベース療法の自動化のために特定された、いくつかのプロセスステップの課題を強調し、感度が自動化戦略に及ぼす影響を示している。すべての単位動作については、汚染のリスクに起因して、それぞれの機器間の細胞の開放移送は重要な感度であることに留意されたい。
【表1】
【0019】
表1に列挙された感度を中心とした手動プロセスの自動化に合わせて調整することによって、細胞療法の性能の優れた翻訳、維持、または改善を支持することができる。
【0020】
個別の自動化対完全に統合された自動化
自動化の価値についての有力な証拠があるが(例えば、Trainor 2014;Levine 2017を参照されたい)、自動化された移送を用いたエンドツーエンド配列において、これらの自動化ステップを統合する価値および実用性におけるその後の分析が必要である。個別のプロセス自動化の利点対エンドツーエンド統合の利点には、異なる見方がある。
【0021】
個別の自動化に対する主要な利益は、柔軟性である。これは、
1)独自のプロセス動作の維持
2)個別の単位動作検証に基づく翻訳活動の加速
3)ドナー間のばらつきに適応するための処理ステップを修正する能力、の分野に関する。
【0022】
柔軟性の向上に関する第1のポイントは、オペレータにプロセスのより細かい制御を提供することである。最終産物に影響を及ぼし得る高感度のステップをプロセスが有する状況において、これは重要である。オールインワンシステムに切り替えると、産物の成果に影響を与える制約が課される場合がある。個別の手法は、各ステップをどのように行うかを選ぶための柔軟性を提供し、これは、高感度の単位動作とともに特に重要であり得る。個別の手法はまた、手動処理から自動化へと徐々に転換することを可能にし、これは、各単位動作を独立して試験することができる場合、同等性を実証するのに役立つ。加えて、特定の単位動作を自動化すると、細胞の性能に基づいて意思決定を行うための柔軟性が提供される。例えば、細胞が急速に成長する場合、1つの細胞培養バッグから2つに拡張する必要がある場合がある。最後に、個別のシステムを使用した自動化に対する手法はまた、グループが各単位動作に使用するための装置を選定することも可能にする。
【0023】
装置の利用は、個別の自動化についての別の議論である。いくつかの単位動作は、他の動作よりも非常に多くの時間を要する場合がある。エンドツーエンド処理システムは、単一のシステム上ですべての複数の単位動作を実行する必要があり、したがって、培養プロセスの持続時間の間、装置を占領することになる。
【0024】
個別の自動化にも利益はあるが、エンドツーエンド手法は、様々な利益を供与し、有力な利益も少なくない。第一に、完全に統合されたシステムは、汚染のリスクを大幅に低減する。個別の手法に必要とされる取り扱いが増加するため、オペレータの介入に起因して産物がばらつく可能性が高い。第二に、および前述したように、これにより、必然的に人件費がより高くなる。
【0025】
個別の手法によって提供された柔軟性が重要である。産物を定義する際にプロセスが重要である状況では、エンドツーエンドシステムは、独自の感度を統合するための柔軟性を有する必要がある。これは、ある特定の栄養供給戦略、酸素レベル、表面処理などを含み得る。そのような手法は、ソフトウェアおよび使い捨て成分の両方において柔軟性を必要とする。本システムは、特定の単位動作が産物仕様のチェックポイントを満たしていることを確認するために、プロセス内の様々なポイントで細胞および培地サンプルを引き出す選択肢を提供する必要がある。修正を行うことが必要な場合、ソフトウェアは、理想的な条件を提供するためにこれらの変更を実施することができなければならない。使いやすく柔軟なソフトウェアは、翻訳目的では非常に有益であるが、臨床基準(FDA 21 CFR Part11)に準拠するために、ソフトウェアを簡単にロックダウンすることができることが重要である。ロックダウンされると、オペレータがプロトコルを変更する能力がある場合、制限される必要がある。しかしながら、本質的なドナーのばらつきを伴う問題に対処するために、細胞成長速度に基づいて種々の検証されたプロトコルから選択するための選択肢がなければならない。例えば、細胞が急速に成長する場合、本システムはこれに応答し、それに応じて、栄養供給または回収の時点を調整することができる必要がある。
【0026】
エンドツーエンド統合対個別自動化の選択はまた、臨床プロセスについての長期的なビジョンにも依存する。単一のオールインワンシステムは、非常に大きい空間効率を供与して、高価なGMPクリーンルーム内での必要な設置面積を最小限に抑えることができる。例えば、
図2に示されるように、完全に統合された自動化システムは、必要な設置面積を最大化して、高価なGMPクリーンルーム空間を削減するように設計されている。
図2は、標準的な実験室空間内で実行する96個の患者固有のエンドツーエンドユニットを示している。
【0027】
単一のシステムがより容易なデータ追跡も提供するのに対して、個別のシステムは、すべての電子データファイルを一緒にリンクさせる準拠したソフトウェアを供与しない場合がある。VINETI(Vineti Ltd)およびTRAKCEL(TrakCel Ltd)などのソフトウェアプラットフォームは、サプライチェーン物流の電子的な監視および組織化を可能にする。しかしながら、単一のオールインワン培養システムは、各単位動作に関連する、事象の処理および培養条件のバイオモニタリングの両方の履歴をバッチ記録に組み込むことによって、さらになお前進することができる。それに応じて、エンドツーエンド統合の利益は、大きい競争上の優位性を供与する。
【0028】
単位動作の統合のための商業的プラットフォーム
数多くの自家細胞療法、特に血液系のがんのための免疫療法における臨床試験の成功は、予測される臨床需要を満たすために、堅牢な生成プラットフォームに対する新しい臨床プロトコルの転換を可能にすることの重要性を強調している(例えば、Levine 2017;Locke 2017を参照されたい)。自家療法については、各患者固有の細胞治療を処理することは、好適には、包括的な製造活動および動作管理を利用する。本明細書における方法は、ターンキー自動化システム内の単位動作をリンクさせて、プロセスの最適化、セキュリティ、および経済性を達成する。
【0029】
自家プロセスを設計する際の課題は、2つある。第一に、物理的に別個のかつ最適化された装置の一部において別個の処理ステップが起こり得る同種製造とは異なり、スケールアウト自家プラットフォームは、好適には、単一の閉鎖型の自己完結型自動化環境において必要なステップのすべてを行う。第二に、あらゆる実行が、理論的には、既知の品質および予測可能なプロセス挙動を伴う、細胞バンクからの高品質のバイアルから始まる同種プロセスとは異なり、自家プロセスにおける出発物質は、非常にばらつきがあり、一般に、健康が損なわれた個体に由来する。
【0030】
したがって、本明細書では、物理的撹拌、pH、栄養供給、およびガスの取り扱いなどの要因を制御することによって、培養条件を感知し、洗練されたバイオリアクタとしてそれに応じて応答することができる方法が提供される。その上、同種治療と比較して、自家治療に関する技術移転には、明らかに異なる課題がある。自家産物は、製造プロセスと患者治療との間の安定性により多くの制約を有し得る。拠点は、単一のセンターではなく、世界的に配置することができる。オールインワンシステムをロックダウン(例えば、完全に閉鎖)すると、拠点間の技術移転プロセスが大幅に改善する。
【0031】
供給源のばらつきを排除することはできないが、自動化は、標準化および再現性を通して最終自家産物のばらつきを除去するのに役立つ。この慣行は、活性細胞培養物の状態を監視するバイオセンサを介して細胞性能基準点を取得するために、大手の細胞システムプロバイダによって採用される。エンドツーエンド統合では、プロセスにおける任意の特定の段階からの出力は、プロセスを先に進めるために許容可能なパラメータ内である必要がある。
【0032】
本明細書に記載されるように、実施形態では、提供される方法は、単一のターンキープラットフォームで複数の単位動作を統合するCOCOONプラットフォーム(Octane Biotech社(Kingston,ON))を利用する。非常に具体的な細胞の処理目的に合わせて、複数の細胞プロトコルが用意されている。効率的かつ効果的な自動化翻訳を提供するために、記載される方法は、複数の単位動作を組み合わせるアプリケーション固有/スポンサー固有のディスポーザブルカセットの概念を利用しており、すべて、最終細胞療法産物の中核的要件に焦点を当てている。
【0033】
本明細書に記載の方法は、完全に統合された閉鎖型自動化システムにおいて、CAR T細胞を含む(活性化、ウイルス形質導入、ならびに増殖、濃縮、および洗浄を含む)様々な細胞ベース療法を拡張するために使用されている(
図3)。
【0034】
自動化の利点
細胞療法の生成における単位動作の自動化により、同種および自家的な細胞療法の用途全体に普遍的な利益の機会がもたらされる。患者固有の自家細胞産物の独自のシナリオにおいて、およびさらにこれらの療法の最近の臨床的成功によって強調されているが、自動化の利点は、小バッチGMP準拠、経済性、患者のトレーサビリティ、およびプロセス逸脱の早期発見の重要なマイクロロットの複雑さのために、特に有力ものとなっている。複雑な製造プロトコルの出現に伴い、マイクロロット細胞生成における自動化された単位動作のエンドツーエンドの統合の価値は、これまであまり研究されてこなかったという事実が注目されている。しかしながら、間もなく承認されるこれらの療法の需要が予想されることから、完全に閉鎖したエンドツーエンドのシステムを実装することで、ハンズオンタイムおよび占有面積などの製造上のボトルネックに対する必要な解決策を提供することができる。
【0035】
Advanced Therapiesの開発者は、臨床翻訳の展開における早期の自動化、臨床試験プロトコルのスケールアップを検討するように勧められている。早期の自動化は、プロトコルの開発に影響を与えるものであり得、後の段階で手動プロセスから自動化されたプロセスに切り替えた場合に比較検討の必要性を回避し、より長期的な商品化ルートのより良い理解を深めることができる。
【0036】
CAR T細胞を含む、細胞ベース療法を生成するための自動化システムの品質制御
本明細書に記載されるように、様々な細胞ベース療法の自動化された生成の監視、評価、および最適化を可能にする方法が提供される。本明細書に記載の方法は、自動化プロセス前、その間、およびその後の異なる時間に様々な分子特性を監視することと、出力を最適化するために自動化システムの様々なパラメータに変更および調整を行うことと、を含む。そのような最適化は、所望の細胞数、濃度、または特定の療法、さらには個々の患者のための特性に基づいてもよい。
【0037】
したがって、実施形態では、本明細書には、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法が提供される。本明細書で使用される、「評価すること」は、本方法に対する任意の変更を導くのに役立つように、細胞の分子特性を含む、細胞の1つ以上の特性を測定または決定する行為を指す。本明細書で使用される、「最適化すること」は、本明細書に記載の自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを修正することを指す。本明細書で使用される、「細胞品質」とは、細胞ベース療法において、細胞が所望の通りに動作するために必要な特性を指す。この品質は、膜の完全性、核の完全性、所望の遺伝子プロファイル、所望のタンパク質プロファイル、所望の細胞寿命、所望の細胞数、または密度などを含む。
【0038】
本明細書で使用される、「細胞ベース療法」は、細胞材料が患者に注入、移植、またはインプラントされる療法を指す。細胞ベース療法は、好適には、無傷の生細胞を含む。細胞ベース療法は、免疫細胞、ナチュラルキラー細胞、神経変性療法のための細胞、および幹細胞などの様々な種類の細胞を含む。本明細書に記載の方法は、好適には、細胞ベース療法または細胞培養物に一般に使用される任意の細胞種類に使用することができ、これは、組織工学用途、およびウイルスベクターまたはタンパク質発現などの生物学的生成のための細胞培養法を含み得る。
【0039】
細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法は、好適には、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することを含む。本明細書で使用される、「分子特性」は、細胞の、遺伝子プロファイル(例えば、遺伝子発現プロファイル)、アミノ酸またはタンパク質プロファイル(例えば、細胞内または細胞表面上に発現するタンパク質)、脂質プロファイルなどのうちの1つ以上を含む。本明細書で使用される、「細胞培養物」とは、本明細書に記載の自動化された方法で使用するための単一の細胞、および細胞の集合体を指す。
【0040】
本方法は、好適には、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することから始まる。改変前細胞培養物は、本明細書に記載の自動化細胞工学システムにまだ入れられていない細胞培養物である。改変前細胞培養物は、患者から直接取られた細胞(例えば、採血されたもの、または血漿サンプル)、および患者から取り出され、本明細書に記載の自動化細胞工学システム内で改変されるべき所望の細胞培養物集団に到達するためにいくらかの濾過、選別、または他の改変を受けた細胞を含み得る。
【0041】
本方法は、好適には、自動化細胞工学システムを介して細胞培養物を遺伝子改変することを含む。本明細書で使用される、「遺伝子改変」は、1つ以上の遺伝子を細胞に導入して(例えば、形質導入を介して)、細胞のゲノムを好適に改変することを含む。遺伝子改変はまた、ゲノムに統合されない一時的な改変を含み得る。細胞培養物を遺伝子改変するための方法は、本明細書に記載されており、好適には、細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化された免疫細胞培養物を生成することと、活性化された細胞培養物を(例えば、ベクターで)形質導入して、形質導入された細胞培養物を生成することと、形質導入された免疫細胞培養物を増殖させることと、を含む(例えば、
図1および3を参照されたい)。細胞培養物を調製、活性化、形質導入、および増殖するための方法が本明細書に記載されている。
【0042】
例示的な実施形態では、細胞品質を評価および最適化するための方法は、遺伝子改変の間およびその後の改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することをさらに含む。すなわち、活性化、形質導入、および/または増殖のうちのいずれか1つの間の任意の時点で、細胞培養物を評価することができ、好適には、細胞培養物の1つ以上の分子特性が決定される。このサンプリングおよび評価は、自動化された処理中および自動化された処理後の様々な時点での細胞培養物の特性に関するデータを提供し、自動化の各段階で1つ以上の分子特性を追跡することを可能にする。
【0043】
細胞品質を評価および最適化するための方法は、好適には、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることをさらに含む。本明細書に記載されるように、最適化され得る自動化細胞工学システムのパラメータは、処理パラメータ(例えば、pH、温度、熱)、ならびに活性化、形質導入、および増殖の品質ならびに持続時間、細胞選別などを含む。
【0044】
例示的な実施形態では、1つ以上の分子特性は、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型のうちの1つ以上を含む。
【0045】
好適には、分子特性は、細胞ベース療法および/もしくは細胞培養物のRNA、DNA、ならびに/またはタンパク質標的の多重分析のための1つ以上の方法によって決定される。例示的な多重分析ツールとしては、様々なアレイ、バーコード技術、次世代シーケンシング手法、定量的PCRなどが挙げられる。
【0046】
例示的な実施形態では、分子特性は、NANOSTRING(登録商標)(Seattle,WA)によって開発された、分子バーコード手法NCOUNTER(登録商標)などの手法を使用して決定することができる。分子バーコード手法は、所望の標的(例えば、核酸(RNA、DNA)、タンパク質、またはペプチド)に結合するように設計された独自の捕捉プローブを利用する。バーコード(例えば、蛍光ベース、色ベース、または放射性ベースのタグ)を含むレポータープローブは、捕捉プローブに結合する。サンプルは精製および固定化され、次いで、バーコード化された標的分子はカウントおよび分析される。例えば、この開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Geiss,et al,”Direct multiplexed measurement of gene expression with color-coded probe pairs,”Nat.Biotechnol.26:317-325(2008)を参照されたい。
【0047】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載の自動化細胞工学システムに利用され得る細胞培養物としては、免疫細胞培養物、ナチュラルキラー細胞培養物、および神経変性療法のための細胞培養物が挙げられる。
【0048】
例示的な実施形態では、免疫細胞培養物は、T-細胞培養物であり、実施形態では、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物である。キメラ抗原受容体T細胞、または「CAR T細胞」は、より具体的には、がん細胞を標的とするようにキメラ抗原受容体(CAR)で改変されるT細胞である。一般に、CARは、エクトドメイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインの3つの部分を含む。エクトドメインは、細胞外流体に曝露される受容体の領域であり、3つの部分、すなわち、シグナルペプチド、抗原認識領域、およびスペーサーを含む。シグナルペプチドは、新生タンパク質を小胞体に誘導する。CARでは、シグナルペプチドは、一本鎖可変断片(scFv)である。scFvは、短いリンカーペプチドと連結された免疫グロビン(immunoglobins)の軽鎖(VL)および重鎖(VH)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシンおよびセリンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グルタミン酸およびリジンを含む。
【0049】
CARの膜貫通ドメインは、膜をまたぐ疎水性αヘリックスである。いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、高度に発現したCARをもたらす。いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、CD3ζ膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、CD3ζ膜貫通ドメインは、天然のT細胞受容体に組み込まれるCARをもたらす。
【0050】
CARのエンドドメインは、概して、受容体の「機能的」末端とみなされる。エクトドメインの抗原認識領域による抗原認識後、CARクラスター、およびシグナルが、細胞に伝達される。いくつかの実施形態では、エンドドメインは、3つの免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む、CD3ζエンドドメインである。この場合、ITAMは、抗原結合後にT細胞に活性化シグナルを伝達し、T細胞免疫応答の引き金となる。
【0051】
CAR T細胞の生成中、T細胞は、ヒト対象から取り出され、遺伝子操作され、患者に再導入して、がん細胞を攻撃する。CAR T細胞は、患者自身の血液(自家)に由来し得るか、または別の健康なドナー(同種)のいずれかに由来し得る。一般に、CAR T細胞は、健康な細胞内では発現しない、腫瘍上に発現する抗原に特異的であるように発達する。
【0052】
例示的な実施形態では、1つ以上の分子特性は、CAR T細胞の遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型のうちの1つ以上を含む。追加の実施形態では、1つ以上の分子特性は、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性に関する。
【0053】
好適には、分子特性は、CAR T特性評価パネルを用いて、NANOSTRING(登録商標)(Seattle,WA)によって開発された、分子バーコード手法NCOUNTER(登録商標)を使用して決定される。CAR T特性評価パネルの例示的な特性は、約700個、約750個、約760個、約770個、約780個、約790個、約800個、または約850個のヒト遺伝子を含む、約500~1000個の遺伝子、好適には約700~800個の遺伝子の発現を検査する能力を含む。遺伝子は、T細胞の活性化、代謝、疲弊、TCR受容体の多様性、および導入遺伝子発現を含む、CAR T細胞生物学の要素のうちの8つを含む。
【0054】
分子特性は、好適には、最大6ログのダイナミックレンジを有する分子の直接デジタル検出を可能にする非酵素的な非増幅バーコード化技術(例えば、NCOUNTER(登録商標))を使用して決定される。わずか15分の総実践時間および24時間未満のデータにより、ワークフローは、次世代シーケンシング(NGS)または定量的PCR(qPCR)手法のいずれかと比較したときの生産性の引き上げを提供する。これらの両方が、数日から数週間長くかかる場合があり、ライブラリー調製、DNA合成、および増幅(これらのすべてが追加の実践時間を要する)、潜在的なユーザエラー、および酵素の使用を通して導入された再現性の課題を含み得る。バーコード化された技術から生成されたデータは、分子の直接的なカウントをもたらし、専門の生物情報工学者を必要とせず、様々な分析ソフトウェアまたは他のカスタマイズされたレポートを通して、単純な分析の可視化およびレポートに修正可能である。
【0055】
nCounterプラットフォーム上の遺伝子発現を測定するnCounter CAR-T特性評価パネルは、細胞療法の分野で特に使用するために生成され、特性評価、最適化、およびシグネチャー開発をさらに可能にして、製造における様々な段階をプロファイリングし、プロセスのより良好な制御を可能にし、これによって、順次、細胞療法の一貫し、再現可能な製造を取り巻く課題に対処することができる。nCounter CAR T特性評価パネルは、CAR T療法の分野における8つの大手のセンターと共同で生成されており、CAR Tワークフロー全体にわたって使用するために設計され、白血球除去、製造産物、および注入後のCAR T細胞の均一で堅牢なプロファイリングを可能にする カスタマイズ可能な780の遺伝子発現パネルは、導入遺伝子発現を測定するための任意選択のカスタマイズを用いた、T細胞の活性化、代謝、疲弊、およびTCR受容体の多様性を含むCAR T細胞生物学の8つの必須要素を測定するための含有物を組み込んでいる。
【0056】
以下の表は、CAR T特性評価パネルから入手可能な例示的な情報を提供する(nanostring.com;car-t-characterization panelを参照されたい):
【表2】
【0057】
CAR T特性評価パネルに含まれる遺伝子は、以下を含むことができる(nanostring.com;car-t-characterization panelを参照されたい):
【表3】
【0058】
CAR T特性評価パネルについては、サンプルインプットは、分類されたT-細胞(例えば、遺伝子改変ステップの前)、CAR-T細胞(例えば、自動化プロセスの最終ステップの後)、CAR-T製造産物(例えば、自動化プロセスの異なる段階中の細胞)、全血、または核酸を含むことができる。
【0059】
分子特性から取得された情報に基づいて、1つ以上の最適化は、自動化プロセスにおいて起こり得る。これらの最適化は、自動化プロセスの遺伝子改変ステップ前、その間、および/またはその後に起こり得る。
【0060】
最適化は、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含み得る。
【0061】
自動化プロセスを最適化するための方法は、分子特性に関して収集された情報と組み合わせて、成長条件(例えば、ガス濃度、媒体条件、温度、pH、廃棄物、および栄養素濃度など)へのリアルタイムの修正を支援するために、自動化された方法を開始する前の細胞培養条件の最適化、ならびに様々なセンサからのフィードバックの使用などを含む。
【0062】
本明細書に記載されるように、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化することは、好適には、改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させる。すなわち、自動化細胞工学システムに対して行われる変更(例えば、ガス濃度、培地条件、温度、pH、廃棄物、および栄養素濃度などの変更)は、最適化された細胞培養物が改善された性質を有するように、細胞培養物の分子特性を変更する。これらの改善された性質は、例えば、より高い抗原濃度、より効率的または完全な形質導入、またはより高い細胞密度もしくはより高い細胞計数を含み得る。追加の改善された性質は、例えば、長寿命化された細胞、または特定の患者のための改善された特性などを含む遺伝子レベルで現れ得る。
【0063】
実施形態では、最適化プロセスは、自己調整プロセスであり、すなわち、外部(ヒト)ユーザからの入力を必要とせず、様々なコンピュータプログラムおよび条件を介して、自動化プロセスを最適化するために細胞培養物または他の特性に対する必要な修正を決定し得るプロセスである。実施形態では、自己調整プロセスは、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することを含む。これらの自己調整プロセスはまた、本明細書に記載されるような1つ以上の分子特性を監視することができ、自動化プロセスが開始される前、自動化プロセス中、またはプロセスが終了した後のいずれかに、自動化システムにリアルタイムのフィードバックを提供する。
【0064】
本明細書に記載されるように、完全密閉式細胞工学システムにおけるこれらの様々なセンサの使用は、システム内の様々な時間および場所で行われ協調しながら協働して、最適化を提供している。例えば、自己調整プロセスは、この監視に基づいて、形質導入T細胞培養物の温度、pHレベル、グルコースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を調整する(例えば、上昇または低下させる)ことができる。
【0065】
図4は、様々なセンサ(例えば、pHセンサ450、溶存酸素センサ451)、ならびにサンプリング/サンプルポート452、および様々なバルブ(制御バルブ453、バイパスチェックバルブ454)、ならびに構成要素を接続するシリコーンベースのチューブ構成要素を好適に備える1つ以上の流体経路440の位置決めを含む、本明細書に記載されるような自動化細胞工学システムについてのプロセスフロー凡例を示す。また、
図4には、ポンプチューブ457およびバッグ/バルブモジュール458とともに、カセット402の流路内の1つ以上の疎水性フィルタ455または親水性フィルタ456の使用が示されている。また、流路内の細胞培養チャンバ410の位置決めも示されている。
【0066】
最適化プロセスはまた、例えば、総細胞数、細胞の供給源、細胞の密度、細胞の年齢、および本明細書に記載されるように決定された細胞(CAR T細胞を含む)の分子特性を含む、出発細胞集団の独自の特性に基づくことができる。これらの出発細胞集団特性は、自動化された方法を開始する前にコンピュータ制御システムに入力することができ、その上でシステムは、方法を最適化するために、例えば、酸素および二酸化炭素濃度、流量、インキュベーション時間、pHなどの様々な初期修正を行うであろう。交互に、細胞プロセスの監視により、出発集団からの細胞培養配列の進行の自動化特性評価が可能となって、最適化された最終細胞培養物の性質についての条件をケースバイケースで調整することが可能である。
【0067】
本明細書に記載の最適化パラメータおよび修正は、一般に、COCOON(登録商標)自動化細胞工学システムに適用可能であるが、そのような最適化が、他の自動化細胞工学システムに適用することができることを理解されたい。一般に、培地流量、ガス濃度、およびpHなどの制御は、利用される自動化細胞工学システムの種類に関係なく、制御および最適化され得るすべてのパラメータである。
【0068】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも約5,000万個の生存可能な遺伝子改変免疫細胞を生成する。好適な実施形態では、記載された方法は、少なくとも約1億個の生存可能な遺伝子改変免疫細胞、または少なくとも約2億個の細胞、少なくとも約3億個の細胞、少なくとも約4億個の細胞、少なくとも約5億個の細胞、少なくとも約6億個の細胞、少なくとも約7億個の細胞、少なくとも約8億個の細胞、少なくとも約10億個の細胞、少なくとも約11億個の細胞、少なくとも約12億個の細胞、少なくとも約13億個の細胞、少なくとも約14億個の細胞、少なくとも約15億個の細胞、少なくとも約16億個の細胞、少なくとも約17億個の細胞、少なくとも約18億個の細胞、少なくとも約19億個の細胞、少なくとも約20億個の細胞、少なくとも約21億個の細胞、少なくとも約22億個の細胞、少なくとも約23億個の細胞、少なくとも約24億個の細胞、少なくとも約25億個の細胞、少なくとも約26億個の細胞、少なくとも約27億個の細胞、少なくとも約28億個の細胞、少なくとも約29億個の細胞、もしくは少なくとも約30億個の遺伝子改変免疫細胞を生成する。いくつかの態様では、本方法を使用して、例えば、100億個の細胞、120億個の細胞、または150億個の細胞など、約30億個を超える遺伝子改変免疫細胞を生成することができる。好適には、これらに限定されないが、これらの遺伝子改変免疫細胞は、CAR T細胞である。
【0069】
本明細書に記載されるように、本方法によって生成された遺伝子改変免疫細胞培養物は、好適には、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物を含むT細胞培養物である。そのような実施形態では、そのようなCAR T細胞を生成するために利用されたベクターは、キメラ抗原受容体をコードするベクターである。好適には、免疫細胞培養物は、末梢血単核細胞および/または精製されたT細胞を含む。実施形態では、免疫細胞培養物は、少なくとも1つの補助細胞、好適には単球または単球由来の細胞を含む。本明細書に記載されるように、実施形態では、補助細胞は、CD28、CD40、CD2、CD40L、および/またはICOSを含む、T細胞受容体のための抗原を含む。
【0070】
本明細書に記載の方法はまた、低いもしくは高い有効性のいずれか、あるいは低いもしくは高い毒性または副作用のいずれかと相関することが見出される、遺伝子改変の前、その間、またはその後の細胞ベース療法の分子特性に関する情報を提供することができる。したがって、本方法は、細胞ベース療法が患者に施されるべきかどうか、または代わりに、そのような細胞集団が利用される場合に問題の可能性が高いかどうかを決定するために使用され得る自動化プロセスの前、その間、またはその後に、品質制御情報を提供するであろう。
【0071】
追加の実施形態では、細胞ベース療法の分子特性に関する情報はまた、調製された細胞ベース療法が患者に施された後に決定することができる。例えば、患者の血液を採取することができ、所望の細胞型の分子特性を決定することができ、有効性の改善された監視、ならびに臨床転帰を細胞特性および自動化細胞工学プロセスにどのようにリンクさせるかの洞察の向上を可能にする。
【0072】
さらなる実施形態では、本明細書には、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変前細胞培養物の1つの1つ以上の分子特性を変化させることと、改変前細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化された細胞培養物を生成することと、活性化された免疫細胞培養物をベクターで形質導入して、形質導入された細胞培養物を生成することと、形質導入された細胞培養物を増殖させることと、増殖された細胞培養物を濃縮することと、濃縮された細胞培養物を回収して、遺伝子改変された細胞培養物を生成することと、を含む、方法、が提供される。
【0073】
本明細書に記載されるように、本方法は、好適には、活性化、形質導入、増殖、濃縮、または回収のステップのうちのいずれか1つの間またはその後に、細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、これらのステップのうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む。
【0074】
本明細書に記載されるように、1つ以上の分子特性は、好適には、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型を含む。
【0075】
例示的な細胞培養物としては、ナチュラルキラー細胞培養物、および神経変性療法のための細胞培養物などの免疫細胞培養物が挙げられる。好適な実施形態では、免疫細胞培養物は、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物を含むT-細胞培養物である。そのような実施形態では、1つ以上の分子特性は、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む。
【0076】
図5は、様々な細胞療法を生成するための本明細書に記載の方法を含む、自動化細胞工学システムの細胞にアクセスするための方法を示す。示されるように、様々なプロセス(形質導入、増殖など)が実施されるカセット402は、シリンジ502に取り付けることができる。このシリンジを使用して、プロセスの任意の段階中(例えば、活性化、形質導入、増殖、および/または回収のうちの1つの間またはその後)に細胞のサンプルを採取することができる。次いで、このサンプルを使用して、本明細書に記載の様々な分子特性について分析することができる。また、
図5には、より大きい細胞サンプルが所望されるか、または必要とされる場合、カセットに接続することができるバッグ504が示されている。
【0077】
様々な最適化方法が本明細書に記載されており、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含み得る。
【0078】
例えば、細胞培養物の分子特性が、培養物が所望の細胞培養物サイズに必要な成長を達成しないことを示す場合、細胞工学システムは、例えば、酸素化細胞培養培地を導入することによって、細胞培養培地を酸素化細胞培地に置き換えることによって、または細胞培養培地を、酸素化構成要素(つまり、シリコーンチューブ)を通して流すことによって、細胞培養物の酸素レベルを自動的に増加させることができる。
【0079】
別の例では、分子特性が、細胞培養物が急速に成長しすぎていることを示す場合(例えば、起こり得る細胞の過密が望ましくない特性につながる場合がある)、細胞工学システムは、細胞培養物の温度を自動的に低下させて、細胞の一定の成長速度(または、所望に応じて、指数関数的な成長速度)を維持することができる。なおさらなる実施形態では、分析された分子特性に基づいて、細胞工学システムは、分子特性に基づく細胞栄養供給スケジュールを自動的に調整することができる(つまり、細胞培養物に新鮮な培地および/または栄養素を提供すること)。
【0080】
さらなる実施形態では、本明細書には、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法が提供される。本方法は、好適には、改変前T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変前T-細胞培養物の1つの1つ以上の分子特性を変化させることと、改変前T-細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化されたT-細胞培養物を生成することと、キメラ抗原受容体をコードするベクターで活性化されたT-細胞培養物を形質導入して、CAR T-細胞培養物を生成することと、CAR T-細胞培養物を増殖させることと、増殖されたCAR T-細胞培養物を濃縮することと、濃縮されたCAR T-細胞培養物を回収することと、を含む。
【0081】
好適には、本方法は、活性化、形質導入、増殖、濃縮、または回収するステップのうちのいずれか1つの間またはその後に、CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、これらのステップのうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む。
【0082】
本明細書に記載されるように、好適には、1つ以上の分子特性は、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む。例示的な実施形態では、1つ以上の分子特性は、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型を含む。
【0083】
CAR T特性評価パネルに関して本明細書に記載されるように、好適には、本方法は、約700~800の遺伝子発現が決定される場合(約750、760、770、780、790、または800の遺伝子発現を含む)を含む、少なくとも約500の遺伝子発現、好適には少なくとも約700の遺伝子発現の決定を含む。
【0084】
本明細書に記載されるように、自動化プロセスの最適化は、好適には、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む。
【0085】
本明細書に記載の方法は、好適には、少なくとも約20億個の生存可能なCAR T-細胞を含む、少なくとも約1億個の生存可能なCAR T-細胞を生成するように最適化される。
【0086】
本明細書に記載されるようなT-細胞培養物の例示的な開始は、好適には、末梢血単核細胞および/または精製されたT-細胞を含む。
【0087】
例示的な実施形態では、T-細胞培養物は、単球または単球由来の細胞であり得る少なくとも1つの補助細胞を含む。
【0088】
好適には、補助細胞は、CD28、CD40、CD2、CD40L、および/またはICOSを含む、T-細胞受容体のための抗原を含む。
【0089】
本明細書に記載されるように、実施形態では、活性化試薬は、抗体または樹状細胞を含む。好適には、抗体は、表面上に固定化される。この表面は、ビーズの表面を含む。好適には、抗体は、抗CD3抗体および抗CD28抗体のうちの少なくとも1つを含む、可溶性抗体である。
【0090】
例示的な実施形態では、形質導入することは、ウイルス感染、エレクトロポレーション、膜破壊、またはそれらの組み合わせを含む。
【0091】
好適な実施形態では、形質導入で使用されるベクターは、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスである。
【0092】
CAR T生成を評価および最適化するための例示的なプロセスフロー
健康なドナーおよび患者の白血球除去を使用して、自動化細胞工学システム内でCAR-T細胞を製造する。
【0093】
細胞療法製造全体を通した複数のポイントで、細胞サンプルを取り、CAR-T細胞パネルで特性評価する。
【0094】
すべての試験からのデータを分析して、検出パネルを継続的に改善し(潜在的な検出パネルの変更)、細胞特性をさらなる製造プロセスの最適化を可能にする手段にどのように転換するかを理解するための知識を生み出す。
【0095】
医療センターとの共同を通して、データベースを作成して、臨床有効性を改善し、治療有害事象を削減することを目的とした改善された製造プロセスとともに、臨床転帰を細胞特性にどのようにリンクさせるかについての洞察を得る。
【0096】
細胞特性を翻訳して、自動化製造プロセスを最適化することと組み合わされた改善されたCAR-T細胞パネルは、供与され得る分析パッケージを提供するであろう。
【0097】
以下のセクションは、CAR T細胞の生成のための自動化細胞工学システムで使用される方法の説明を提供する。
【0098】
T細胞の活性化。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成された免疫細胞培養物は、CAR T細胞培養物である。CAR T細胞物を活性化して、活性化T細胞培養物を形成することができる。インビボでは、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)は、T細胞受容体(TCR)とAPC主要ヒストン適合性複合体(major histone compatibility complex:MHC)との相互作用を通して、T細胞活性化のための刺激として作用する。TCRは、細胞傷害性T細胞(例えば、CD8+ナイーブT細胞)およびTヘルパー細胞(例えば、CD4+ナイーブT細胞)の両方を活性化するのに役立つT細胞共受容体であるCD3と会合する。一般に、T細胞の活性化は、2シグナルモデルに従い、TCR/CD3複合体および共刺激受容体の刺激を必要とする。T細胞の活性化は、例えば、Kochenderfer 2015;Kalos 2011にさらに記載されている。
【0099】
共刺激シグナルなしでは、細胞はアネルギーにかかりやすく、非応答性になる。したがって、T細胞の共刺激は、T細胞増殖、分化、および生存のために重要であり得る。T細胞のための共刺激分子の非限定的な例としては、APCの膜上のCD80およびCD86のための受容体であるCD28、ならびにICOS-Lと相互作用する活性化T細胞上に発現するCD28スーパーファミリー分子であるCD278またはICOS(誘導性T-細胞共刺激因子)が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、共刺激分子は、CD28である。他の実施形態では、共刺激分子は、ICOSである。インビボでは、共刺激シグナルは、T細胞上のCD28受容体に結合するAPC上のB7分子によって提供され得る。B7は、T細胞上のCD28またはCD152表面タンパク質と相互作用して、共刺激シグナルを生成することができる、活性化APC上に見出される表在性膜貫通タンパク質である。したがって、いくつかの実施形態では、共刺激分子は、B7である。共刺激受容体は、例えば、Lafferty 1975;Harding 1992;Clavreul 2000;Charron 2015;Fathman 2007;Greenwald 2005にさらに記載されている。共刺激は、例えば、Carpenter 2000;Andris 2004にさらに記載されている。B7分子は、例えば、Fleischer 1996;Schwartz 2003にさらに記載されている。
【0100】
活性化の様々な方法をインビトロで利用して、T細胞活性化をシミュレーションする。実施形態では、T細胞培養物は、活性化試薬で活性化される。さらなる実施形態では、活性化試薬は、抗原提示細胞(APC)である。なおさらなる実施形態では、活性化試薬は、樹状細胞である。樹状細胞は、抗原を処理し、それを細胞表面上でT細胞に提示するAPCである。いくつかの実施形態では、活性化試薬は、T細胞培養物と共培養される。共培養することは、別個の精製、および第2の細胞型を培養することを必要とする場合があり、これは、労働要件およびばらつきの発生源を増加させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、代替的な活性化方法が使用される。
【0101】
いくつかの実施形態では、活性化試薬は、抗体である。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、ビーズを含む、ポリマー表面を含む、表面に結合された抗体で活性化される。さらなる実施形態では、1つ以上の抗体は、抗CD3および/または抗CD28抗体である。例えば、ビーズは、抗CD3および抗CD28でコーティングされた、例えばDYNABEADS(登録商標)などの磁気ビーズであり得る。抗CD3および抗CD28ビーズは、好適には、T細胞活性化を支持するための刺激シグナルを提供することができる。例えば、Riddell 1990;Trickett 2003を参照されたい。
【0102】
他の実施形態では、細胞培養物は、可溶性抗体で活性化される。さらなる実施形態では、可溶性抗体は、可溶性抗CD3抗体である。OKT3は、免疫グロブリンIgG2aアイソタイプのマウスモノクローナル抗体であり、CD3を標的とする。したがって、いくつかの実施形態では、可溶性抗CD3抗体は、OKT3である。OKT3は、例えば、Dudley 2003;Manger 1985;Ceuppens 1985;Van Wauwe 1980;Norman 1995にさらに記載されている。
【0103】
いくつかの実施形態では、T細胞活性化のための共刺激シグナルは、補助細胞によって提供される。補助細胞は、例えば、CD3抗体の、T細胞上のTCR/CD3複合体との架橋を可能にするFc受容体を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、末梢血単核細胞(PBMC)の混合集団である。PBMCは、T細胞の活性化を支持することができる補助細胞を含み得る。例えば、CD28共刺激シグナルは、PBMC内の単球上に存在するB7分子によって提供され得る。それに応じて、いくつかの実施形態では、補助細胞は、単球または単球由来の細胞(例えば、樹状細胞)を含む。追加の実施形態では、補助細胞は、B7、CD28、および/またはICOSを含む。補助細胞は、例えば、Wolf 1994;Chai 1997;Verwilghen 1991;Schwartz 1990;Ju 2003;Baroja 1989;Austyn 1987;Tax 1983にさらに記載されている。
【0104】
本明細書に記載されるように、活性化試薬は、生成されたCAR T細胞の表現型を決定し、所望の表現型の促進を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、活性化試薬は、T細胞サブセット、つまり、CD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞との比率を決定する。細胞傷害性CD8+T細胞は、典型的には、がん細胞(つまり、抗腫瘍応答)、感染している細胞(例えば、ウイルスで)、または他の形で損傷している細胞を殺す役割を担っている。CD4+T細胞は、典型的には、サイトカインを生成し、免疫応答を変調するのに役立ち、場合によっては、細胞溶解を支持し得る。CD4+細胞は、APCを活性化し、次いで、抗腫瘍応答のためにナイーブCD8+T細胞に刺激を与える。それに応じて、実施形態では、本開示の方法は、所定の表現型のCAR T細胞を生成すること(つまり、所望の表現型の細胞を促進すること)をさらに含む。所定の表現型は、例えば、CD8+細胞の、CD4+細胞に対する所定の比率であり得る。いくつかの実施形態では、CAR T細胞の集団におけるCD8+細胞の、CD4+細胞に対する比率は、約1:1、約0.25:1、または約0.5:1である。他の実施形態では、CAR T細胞の集団におけるCD8+細胞の、CD4+細胞に対する比率は、約2:1、約3:1、約4:1、または約5:1である。
【0105】
所定の表現型が生成される方法は、好適には、1つ以上の分子特性、つまり、CD8およびCD4のレベルを決定することを含み、そのような細胞を選別するか、またはそのような細胞の生成を推し進めるために生成パラメータを修正するかのいずれかによって最適化される。
【0106】
実施形態では、活性化試薬は、活性化ステップの後に活性化T細胞培養物から除去される。活性化試薬、例えば、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体は、細胞培養培地中に存在し得る。したがって、いくつかの実施形態では、活性化試薬、例えば、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を含有する細胞培養培地は、活性化ステップ後に活性化T細胞培養物から除去される。いくつかの実施形態では、活性化試薬の除去は、可溶性抗体を除去することを含む。例えば、可溶性抗体は、細胞培養培地を交換することによって除去することができる。可溶性抗体はまた、可溶性抗体に特異的なアフィニティ法によって除去することができる。他の実施形態では、活性化試薬の除去は、抗体を含有するビーズを除去することを含む。ビーズ除去は、例えば、ビーズを濾過すること、または磁石による除去を含み得る。
【0107】
活性化T細胞の形質導入。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞培養物は、キメラ抗原受容体をコードするベクターで形質導入されて、形質導入T細胞培養物を生成する活性化T細胞培養物である。いくつかの実施形態では、形質導入は、ウイルス感染、トランスポゾン、mRNAトランスフェクション、エレクトロポレーション、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、形質導入は、エレクトロポレーションを含む。それに応じて、実施形態では、細胞工学システムは、エレクトロポレーションシステムまたはエレクトロポレーションユニットを含む。追加の実施形態では、形質導入は、ウイルス感染を含む。ベクターは、例えば、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。実施形態では、形質導入は、細胞培養物の活性化T細胞にウイルスベクターを導入することを含む。追加の実施形態では、ベクターは、ウイルス粒子として送達される。
【0108】
いくつかの実施形態では、形質導入ステップは、活性化T細胞をレンチウイルスベクターで形質導入することを含み、レンチウイルスベクターが、約0.5~約50、約0.5~約30、または約0.5~約20の多重感染度(MOI)で導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.5~約8のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.5~約6のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.5~約4のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.5~約2のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.6~約1.5のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.7~約1.3のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.8~約1.1のMOIで導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2のMOIで導入される。
【0109】
いくつかの実施形態では、活性化ステップの後、T細胞培養物からの細胞培養培地が除去され、次いで培地は、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)と混合され、細胞に均等に分布される。いくつかの実施形態では、除去された細胞培養培地を使用して、ベクターを活性化T細胞培養物に希釈し、均等に送達する。T細胞培養物中のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)の均等な分布および結果として生じる均一な曝露は、形質導入効率を改善する。いくつかの実施形態では、細胞培養物の体積は、活性化後、およびベクターの添加前に減少する。体積の減少は、より高度な細胞-ベクター接触を可能にし得る。いくつかの実施形態では、活性化T細胞培養物は、形質導入中に実質的に邪魔されない。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、活性化および形質導入ステップ中、実質的に邪魔されない、つまり、細胞は、一般に、活性化試薬またはベクターが細胞に提供されている間、チャンバの同じ領域(例えば、細胞培養チャンバの底部)内に留まる。これは、活性化試薬および/またはベクターの細胞への均等な分布および均一な曝露を容易にすることができ、したがって、活性化および/または形質導入効率を改善することができる。
【0110】
形質導入されたT細胞の増殖。いくつかの実施形態では、形質導入T細胞培養物(または、他の細胞療法もしくは免疫細胞培養物)は、所定の培養物サイズ(つまり、細胞数)まで増殖される。所定の培養物サイズは、臨床使用、つまり、患者への輸血、研究および開発作業などに好適な十分な細胞数を含み得る。いくつかの実施形態では、患者への投与のためのCAR T細胞の臨床用量または治療用量は、約105個の細胞、約106個の細胞、約107個の細胞、約108個の細胞、約109個の細胞、または約1010個の細胞である。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100回の臨床用量のCAR T細胞を生成する。いくつかの実施形態では、形質導入T細胞培養物は、約0.1L~約5L、約0.1L~約2L、または約0.2L~約2Lの総体積まで増殖される。いくつかの実施形態では、形質導入T細胞培養物は、約0.1L、約0.2L、約0.3L、約0.4L、約0.5L、約0.6L、約0.7L、約0.8L、約0.9L、または約1.0Lの総体積まで増殖される。体積はまた、細胞生成プロセスの段階に基づいて、必要に応じて、プロセスを通して変えることができる。いくつかの実施形態では、所定の培養物サイズは、細胞工学システムのユーザによって入力される。ユーザは、生成される所望の細胞計数として所定の培養物サイズを入力することができるか(例えば、1010CAR T細胞)、または所定の培養物サイズを、生成される所望の数の臨床用量もしくは療法用量として入力することができる(例えば、CAR T細胞の10回の臨床用量または治療用量)。実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成されたCAR T細胞の数は、少なくとも約1億個(つまり、1*106個)の細胞、または少なくとも約3億個、少なくとも約5億個、少なくとも約6億個、少なくとも約7億個、少なくとも約8億個、少なくとも約9億個、少なくとも約10億個(つまり、1*109個)、少なくとも約11億個、少なくとも約12億個、少なくとも約13億個、少なくとも約14億個、少なくとも約15億個、少なくとも約16億個、少なくとも約17億個、少なくとも約18億個、少なくとも約19億個、少なくとも約20億個(つまり、2*109個)の細胞であり、少なくとも約21億個、少なくとも約22億個、少なくとも約23億個、少なくとも約24億個、少なくとも約25億個、少なくとも約26億個、少なくとも約27億個、少なくとも約28億個、少なくとも約29億個、もしくは少なくとも約30億個を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、形質導入T細胞培養物の増殖は、形質導入T細胞培養物の栄養供給、洗浄、監視、および選別の少なくとも1回のラウンドを含む。細胞培養物に栄養供給することは、培地および/または追加の栄養素で細胞培養物を補うことを含み得る。細胞培養物を洗浄することは、使用済み培地(つまり、栄養素が枯渇した、および/または細胞の廃棄産物を含有する培地)を除去すること、ならびに新鮮な培地で細胞培養物を補充することを含み得る。細胞培養物を監視することは、細胞培養物の温度、pH、グルコース、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および/または光学密度を監視することを含み得る。細胞培養物を選別することは、例えば、生存率、種類、および/または形態などの所望の特性を有する細胞を選別すること、ならびに所望の特性を有しない細胞を除去することを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞工学システムは、形質導入T細胞培養物の栄養供給、洗浄、監視、および/または選別の数回のラウンドを行って、所定の培養物サイズを達成するように構成される。いくつかの実施形態では、細胞工学システムは、形質導入T細胞培養物の栄養供給、洗浄、監視、および/または選別の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、または少なくとも100回のラウンドを行って、所定の培養物サイズを達成する。
【0112】
実施形態では、栄養供給、洗浄、および監視のうちの1つ以上を除去することができるか、または所望の細胞表現型もしくは細胞数などに依存して事象の順序を変更することができる。
【0113】
実施形態では、監視することは、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および/または光学密度センサで監視することを含む。それに応じて、いくつかの実施形態では、細胞工学システムは、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および/または光学密度センサのうちの1つ以上を含む。追加の実施形態では、細胞工学システムは、所定の培養物サイズに基づいて、細胞培養物の、温度、pH、グルコース、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および/または光学密度を調整するように構成される。例えば、細胞工学システムが、細胞培養物の現在の酸素レベルが低すぎて、所望の細胞培養物サイズに必要な成長を達成することができないことを検出する場合、細胞工学システムは、例えば、酸素化細胞培養培地を導入することによって、細胞培養培地を酸素化細胞培地に置き換えることによって、または細胞培養培地を、酸素化構成要素(つまり、シリコーンチューブ)を通して流すことによって、細胞培養物の酸素レベルを自動的に増加させるであろう。別の例では、細胞工学システムが、細胞培養物の現在の温度が高すぎること、および細胞が急速に成長しすぎていること(例えば、起こり得る細胞の過密が望ましくない特性につながる場合がある)を検出する場合、細胞工学システムは、細胞培養物の温度を自動的に低下させて、細胞の一定の成長速度(または、所望に応じて、指数関数的な成長速度)を維持するであろう。なおさらなる実施形態では、細胞工学システムは、細胞成長速度および/もしくは細胞数、またはpH、酸素、グルコースなどの他の監視された因子に基づいて、細胞栄養供給(つまり、細胞培養物に新鮮な培地および/または栄養素を提供すること)のスケジュールを自動的に調整する。細胞工学システムは、培地(および洗浄液などの他の試薬)を低温チャンバ(例えば、4℃または-20℃)内に保存し、室温チャンバまたは高温チャンバ(例えば、それぞれ25℃または37℃)内で培地を温めた後に、温まった培地を細胞培養物に導入するように構成され得る。
【0114】
実施形態では、洗浄することは、濾過または沈降によって細胞を洗浄することを含む。実施形態では、選別することは、細胞培養物を1つ以上の選別試薬と混合することを含む。選別試薬は、所望の細胞型に特異的であるビーズ、例えば、磁気ビーズであり得、次いで、ビーズに結合した細胞は、例えば、磁気チャンバを通過することによって、非結合細胞から分離される。例えば、選別ビーズは、所望の細胞型に特異的な抗体、例えば、抗CD8抗体または抗CD4抗体を含む。選別はまた、サイズに基づいて、ある特定の細胞の種類を除去または選別するための濾過によって行うことができる。プラスチック接着による細胞選別(つまり、1つのチャンバ内の細胞から始めることができ、不要な細胞は表面に張り付き、次いで、まだ懸濁液中にある所望の細胞は、別のチャンバに移動される)も利用することができる。
【0115】
増殖した培養物の濃度。いくつかの実施形態では、増殖T細胞培養物(または他の細胞療法は、他の免疫細胞培養物を含む)は、所定の濃度に濃縮される。所定の濃度は、患者に好適に注入することができる体積である。例えば、増殖したT細胞培養物は、約1ml、約2ml、約5ml、約10ml、約15ml、約20ml、約25ml、約30ml、約35ml、約40ml、約45ml、約50ml、約55ml、約60ml、約65ml、約70ml、約75ml、約80ml、約85ml、約90ml、約95ml、または約100mlに濃縮することができる。いくつかの実施形態では、濃縮は、遠心分離によって行われる。いくつかの実施形態では、濃縮は、濾過によって行われる。いくつかの実施形態では、濾過は、限外濾過および/または透析濾過である。いくつかの実施形態では、所定の濃度は、細胞工学システムのユーザによって入力される。他の実施形態では、所定の濃度は、ユーザによる異なるパラメータ入力、例えば、生成される臨床用量または治療用量の数もしくは体積、または生成される細胞数に基づいて、細胞工学システムによって決定される。いくつかの実施形態では、細胞工学システムは、入力パラメータに基づいて、生成された臨床用量もしくは治療用量の体積または数を自動的に調整する。いくつかの実施形態では、細胞工学システムは、所定の濃度に基づいて、遠心分離(例えば、遠心分離の速度、持続時間)または濾過(例えば、フィルタサイズ、体積、持続時間)のパラメータを自動的に調整する。
【0116】
チャンバのポート位置および設計に基づく沈降も利用することができる。すなわち、細胞を除去することなく、チャンバ内の流体体積を約0.5mLまで減少させることができる。
【0117】
CAR T細胞培養物の回収。いくつかの実施形態では、濃縮されたT細胞培養物(または他の免疫細胞培養物を含む他の細胞療法)は、回収されて、好適には、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞培養物を生成する。いくつかの実施形態では、収集は、CAR T細胞の、撹拌、流体流れ、および洗浄を含む。いくつかの実施形態では、回収することは、例えば、細胞の廃棄産物、ビーズ(例えば、抗体を含有するビーズおよび/または細胞の分離に使用されるビーズ)などの選別試薬、または過剰なウイルスベクターを含む、望ましくない産物からの細胞の分離を含む。いくつかの実施形態では、回収することは、1つ以上のフラスコ、バイアル、または槽の中のCAR T細胞の均等な分布を含む。いくつかの実施形態では、回収することは、CAR T細胞を製剤化試薬、例えば、長期保存のためにCAR T細胞を安定化する溶液中に再懸濁することを含む。いくつかの実施形態では、回収することは、CAR T細胞の凍結保存を含む。
【0118】
さらなる下流ステップ。いくつかの実施形態では、CAR T細胞(または他の免疫細胞を含む他の細胞療法)は、患者における療法的使用の前に、さらなる下流処理を受ける。例えば、CAR T細胞は、潜在的なウイルス粒子残留物を除去するために、滅菌濾過によって濾過され得る。滅菌濾過後、CAR T細胞は、1つ以上のバイアル、フラスコ、槽、または容器内にパッケージ化される前に、少なくとも1つ以上の濃縮ステップを受けることができる。パッケージ化されたCAR T細胞は、本明細書に記載されるような品質評価および/または品質制御試験に供され得る。いくつかの実施形態では、CAR T細胞は、患者に投与する前に、最小限の下流処理を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、回収されたCAR T細胞は、凍結保存されないが、回収後の短い期間内に患者に移送される。凍結保存ステップを回避することで、細胞の生存率が増加する場合がある。
【0119】
追加の例示的な実施形態
実施形態1は、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムを介して細胞培養物を遺伝子改変することと、遺伝子改変の間およびその後の改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、である。
【0120】
実施形態2は、1つ以上の分子特性が、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法を含む。
【0121】
実施形態3は、細胞培養物が、免疫細胞培養物、ナチュラルキラー細胞培養物、および神経変性療法のための細胞培養物である、実施形態1または実施形態2に記載の方法を含む。
【0122】
実施形態4は、免疫細胞培養物が、T-細胞培養物である、実施形態3に記載の方法を含む。
【0123】
実施形態5は、T細胞培養物が、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物である、実施形態4に記載の方法を含む。
【0124】
実施形態6は、1つ以上の分子特性が、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む、実施形態5に記載の方法を含む。
【0125】
実施形態7は、(d)における最適化することが、遺伝子改変の前、その間、および/またはその後に起こる、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0126】
実施形態8は、最適化することが、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0127】
実施形態9は、細胞ベース療法の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変前細胞培養物の1つの1つ以上の分子特性を変化させることと、改変前細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化された細胞培養物を生成することと、活性化された免疫細胞培養物をベクターで形質導入して、形質導入された細胞培養物を生成することと、形質導入された細胞培養物を増殖させることと、(e)の増殖された細胞培養物を濃縮することと、(f)の濃縮された細胞培養物を回収して、遺伝子改変された細胞培養物を生成することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの間またはその後に、細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、である。
【0128】
実施形態10は、1つ以上の分子特性が、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型からなる群から選択される、実施形態9に記載の方法を含む。
【0129】
実施形態11は、細胞培養物が、免疫細胞培養物、ナチュラルキラー細胞培養物、および神経変性療法のための細胞培養物である、実施形態9または実施形態10に記載の方法を含む。
【0130】
実施形態12は、免疫細胞培養物が、T-細胞培養物である、実施形態11に記載の方法を含む。
【0131】
実施形態13は、T-細胞培養物が、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物である、実施形態12に記載の方法を含む。
【0132】
実施形態14は、1つ以上の分子特性が、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む、実施形態13に記載の方法を含む。
【0133】
実施形態15は、最適化することが、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む、実施形態9~14のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0134】
実施形態16は、キメラ抗原受容体T(CAR T)細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変前T-細胞培養物の1つの1つ以上の分子特性を変化させることと、改変前T-細胞培養物を活性化試薬で活性化して、活性化されたT-細胞培養物を生成することと、キメラ抗原受容体をコードするベクターで活性化されたT-細胞培養物を形質導入して、CAR T-細胞培養物を生成することと、CAR T-細胞培養物を増殖させることと、(e)の増殖されたCAR T-細胞培養物を濃縮することと、(f)の濃縮されたCAR-T細胞培養物を回収することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの間またはその後に、CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、ステップ(c)~(g)のうちのいずれか1つの1つ以上のパラメータを最適化して、CAR T-細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、である。
【0135】
実施形態17は、方法が、少なくとも約1億個の生存可能なCAR T-細胞を生成する、実施形態16に記載の方法を含む。
【0136】
実施形態18は、方法が、少なくとも約20億個の生存可能なCAR T-細胞を生成する、実施形態16に記載の方法を含む。
【0137】
実施形態19は、T-細胞培養物が、末梢血単核細胞および/または精製されたT-細胞を含む、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0138】
実施形態20は、T-細胞培養物が、少なくとも1つの補助細胞を含む、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0139】
実施形態21は、補助細胞が、単球または単球由来の細胞を含む、実施形態20に記載の方法を含む。
【0140】
実施形態22は、補助細胞が、CD28、CD40、CD2、CD40L、および/またはICOSを含む、T-細胞受容体のための抗原を含む、実施形態20に記載の方法を含む。
【0141】
実施形態23は、活性化試薬が、抗体または樹状細胞を含む、実施形態16~22のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0142】
実施形態24は、抗体が、表面上に固定化される、実施形態23に記載の方法を含む。
【0143】
実施形態25は、表面が、ビーズの表面である、実施形態24に記載の方法を含む。
【0144】
実施形態26は、抗体が、可溶性抗体である、実施形態23に記載の方法を含む。
【0145】
実施形態27は、抗体が、抗CD3抗体および抗CD28抗体のうちの少なくとも1つを含む、実施形態23に記載の方法を含む。
【0146】
実施形態28は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、膜破壊、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態16~27のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0147】
実施形態29は、ベクターが、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスである、実施形態16~28のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0148】
実施形態30は、1つ以上の分子特性が、T-細胞の活性化、代謝、疲弊、およびT-細胞受容体の多様性を含む、実施形態16~29のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0149】
実施形態31は、1つ以上の分子特性が、遺伝子発現、タンパク質発現、mRNA発現、およびコピー数多型からなる群から選択される、実施形態16~30のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0150】
実施形態32は、少なくとも約500の遺伝子発現が、決定される、実施形態31に記載の方法を含む。
【0151】
実施形態33は、少なくとも約700の遺伝子発現が、決定される、実施形態31に記載の方法を含む。
【0152】
実施形態34は、約780の遺伝子発現が、決定される、実施形態31に記載の方法を含む。
【0153】
実施形態35は、最適化することが、細胞培地の流量を増加または減少させること、酸素濃度を増加または低減させること、二酸化炭素濃度を増加または低減させること、グルコースレベルを増加または低減させること、細胞増殖の温度を上昇または低下させること、細胞培地のpHを上昇または低下させること、細胞形質導入手順を修正すること、形質導入手順で使用するためのベクターを修正すること、および細胞単離手順を修正することのうちの1つ以上を含む、実施形態16~34のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0154】
実施形態36は、細胞培養物の細胞品質を評価および最適化するための方法であって、改変前細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムを介して細胞培養物を遺伝子改変することと、遺伝子改変の間およびその後の改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を決定することと、自動化細胞工学システムの1つ以上のパラメータを最適化して、改変された細胞培養物の1つ以上の分子特性を変化させることと、を含む、方法、である。
【0155】
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【0156】
本明細書に記載の方法および用途に対する他の好適な修正および適合を、実施形態のいずれかの範囲から逸脱することなく行うことができることは、関連する技術分野の当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0157】
本明細書では特定の実施形態を例示および記載しているが、特許請求の範囲は、記載および図示される部分の特定の形態またはアレンジメントに限定されるべきではないことが理解されるべきである。本明細書では、例示的な実施形態が開示され、特定の用語が用いられるが、それらは、限定の目的ではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ使用される。上記の教示に照らして、実施形態の修正および変形が可能である。したがって、実施形態は、具体的に記載される以外の方法で実施され得ると理解されるべきである。
【0158】
本明細書中に言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】