(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】差動油圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20230111BHJP
B60G 17/015 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F15B11/00 C
B60G17/015 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526730
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020060577
(87)【国際公開番号】W WO2021097341
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512321121
【氏名又は名称】クリアモーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オシェイ,コリン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】セルデン,ブライアン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,クライブ
【テーマコード(参考)】
3D301
3H089
【Fターム(参考)】
3D301DA08
3D301DB35
3D301DB38
3D301DB39
3D301EC01
3D301EC05
3H089BB05
3H089CC09
3H089CC20
3H089DA02
3H089DA03
3H089GG02
(57)【要約】
油圧システム内の流量及び/又は圧力脈動の伝播を低減する油圧システム及び方法について説明する。一実施形態では、油圧システムは、油圧装置と、油圧装置に流体的に接続された差動緩衝器とを含み得る。差動緩衝器は、別個の流路に沿って伝播する圧力脈動であって、互いに少なくとも部分的に位相のずれた圧力脈動にさらされるピストンを含み得る。位相のずれた脈動に起因するピストンの対応する変位によって、差動緩衝器の下流側の油圧システム内の脈動の伝播が少なくとも部分的に緩和され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧システムであって、
第1の装置ポートと第2の装置ポートとを備えた油圧装置と、
第1の緩衝器ポートと第2の緩衝器ポートとを備えた差動緩衝器と、
前記第1の装置ポートを前記第1の緩衝器ポートに流体的に接続する第1の流路と、
前記第2の装置ポートを前記第2の緩衝器ポートに流体的に接続する第2の流路と
を含む、油圧システム。
【請求項2】
前記差動緩衝器は、前記差動緩衝器内に摺動可能に収容された緩衝器ピストンによって流体的に分離される第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室を含み、前記第1の緩衝器室は、前記第1の装置ポートに流体的に接続され、前記第2の緩衝器室は、前記第2の装置ポートに流体的に接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1の方向への前記緩衝器ピストンの運動に抵抗するように構成された第1のばねと、前記第1の方向と反対の第2の方向への前記緩衝器ピストンの運動に抵抗するように構成された第2のばねとをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のばね及び前記第2のばねは、コイルばねを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のばね及び前記第2のばねは、皿ばねを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記緩衝器ピストンは、前記第1の緩衝器室内の圧力が前記第2の緩衝器室内の圧力よりも大きいときに第1の方向に、及び前記第2の緩衝器室内の前記圧力が前記第1の緩衝器室内の前記圧力よりも大きいときに、前記第1の方向と反対の、第2の方向に移動するように構成される、請求項2~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記緩衝器ピストンが前記第1の方向に移動すると、前記第1の緩衝器室の第1の容積が大きくなり、前記第2の緩衝器室の第2の容積が小さくなり、前記緩衝器ピストンが前記第1の方向と反対の前記第2の方向に移動すると、前記第2の緩衝器室の前記第2の容積が大きくなり、前記第1の緩衝器室の前記第1の容積が小さくなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記油圧装置は、少なくとも1つの動作モードで油圧ポンプとして動作するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記油圧装置は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の流路は、第1の正味コンプライアンスを有し、前記第2の流路は、第2の正味コンプライアンスを有し、前記第1の正味コンプライアンスは、所定の周波数範囲内の前記第2の正味コンプライアンスの20%以内である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の流体流路は、第1の正味インピーダンスを有し、前記第2の流体流路は、第2の正味インピーダンスを有し、前記第1の正味インピーダンスは、所定の周波数範囲内の前記第2の正味インピーダンスの20%以内である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記差動緩衝器は、第3のポートと第4のポートとを含み、前記第3のポート及び前記第4のポートは、油圧負荷と流体連通する、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記油圧負荷は、能動サスペンションアクチュエータである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
能動サスペンションアクチュエータシステムであって、
第1の装置ポートと第2の装置ポートとを含む油圧装置と、
差動緩衝器内に摺動可能に収容された緩衝器ピストンによって流体的に分離される第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室を備えた差動緩衝器であって、前記第1の緩衝器室は、前記油圧装置の前記第1のポートに流体的に接続され、前記第2の緩衝器室は、前記油圧装置の前記第2のポートに流体的に接続される、差動緩衝器と、
油圧アクチュエータ内に摺動可能に収容されたアクチュエータピストンによって流体的に分離される第1のアクチュエータ室及び第2のアクチュエータ室を備えた油圧アクチュエータであって、前記第1のアクチュエータ室は、前記第1の緩衝器室に流体的に接続され、前記第2のアクチュエータ室は、前記第2の緩衝器室に流体的に接続される、油圧アクチュエータと
を含む、能動サスペンションアクチュエータシステム。
【請求項15】
第1の方向への前記緩衝器ピストンの運動に抵抗するように構成された第1のばねと、前記第1の方向と反対の第2の方向への前記緩衝器ピストンの運動に抵抗するように構成された第2のばねとをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のばね及び前記第2のばねは、コイルばねを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のばね及び前記第2のばねは、皿ばねを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記緩衝器ピストンは、前記第1の緩衝器室内の圧力が前記第2の緩衝器室内の圧力よりも大きいときに第1の方向に、及び前記第2の緩衝器室内の前記圧力が前記第1の緩衝器室内の前記圧力よりも大きいときに、前記第1の方向と反対の、第2の方向に移動するように構成される、請求項14~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記緩衝器ピストンが前記第1の方向に移動すると、前記第1の緩衝器室の第1の容積が大きくなり、前記第2の緩衝器室の第2の容積が小さくなり、前記緩衝器ピストンが前記第1の方向と反対の前記第2の方向に移動すると、前記第2の緩衝器室の前記第2の容積が大きくなり、前記第1の緩衝器室の前記第1の容積が小さくなる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記油圧装置は、少なくとも1つの動作モードで油圧ポンプとして動作するように構成される、請求項14~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記油圧装置は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる群から選択される、請求項14~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の装置ポートと前記第1の緩衝器室との間に延びるとともに前記第1の装置ポートと前記第1の緩衝器室とを含む第1の流路は、第1の正味コンプライアンスを有し、前記第2の装置ポートと前記第2の緩衝器室との間に延びるとともに前記第2の装置ポートと前記第2の緩衝器室とを含む第2の流路は、第2の正味コンプライアンスを有し、前記第1の正味コンプライアンスは、所定の周波数範囲内の前記第2の正味コンプライアンスの20%以内である、請求項14~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の装置ポートと前記第1の緩衝器室との間に延びるとともに前記第1の装置ポートと前記第1の緩衝器室とを含む第1の流路は、第1の正味インピーダンスを有し、前記第2の装置ポートと前記第2の緩衝器室との間に延びるとともに前記第2の装置ポートと前記第2の緩衝器室とを含む第2の流路は、第2の正味インピーダンスを有し、前記第1の正味インピーダンスは、所定の周波数範囲内の前記第2の正味インピーダンスの20%以内である、請求項14~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記差動緩衝器は、前記第1の緩衝器室に流体的に結合された第3のポートと、前記第2の緩衝器室に流体的に結合された第4のポートとを含み、前記差動緩衝器の前記第3のポートは、前記第1のアクチュエータ室に流体的に接続され、前記第4のポートは、前記第2のアクチュエータ室に流体的に接続される、請求項14~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
油圧システムを動作させる方法であって、
第1の緩衝器室に流体的に接続された第1の流路と、第2の緩衝器室に流体的に接続された第2の流路とに流量脈動を加えることであって、前記第1の緩衝器室内の前記流量脈動は、前記第2の緩衝器室内の前記流量脈動に対して少なくとも部分的に位相がずれている、加えることと、
少なくとも部分的には前記第1の緩衝器室内の前記流量脈動と前記第2の緩衝器室内の前記流量脈動との位相差によって、前記第1の緩衝器容積と前記第2の緩衝器容積との間に配置された緩衝器ピストンを変位させることと
を含む方法。
【請求項26】
前記緩衝器ピストンを変位させることによって、前記第1の緩衝器室の容積及び前記第2の緩衝器室の容積が変化して、油圧負荷に伝達される前記流量脈動の大きさが低減される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記油圧負荷は、能動サスペンションアクチュエータである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記緩衝器ピストンを中立構成となるように付勢することをさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の緩衝器室内の圧力が前記第2の緩衝器室内の圧力よりも大きいときに第1の方向に、及び前記第2の緩衝器室内の前記圧力が前記第1の緩衝器室内の前記圧力よりも大きいときに、前記第1の方向と反対の、第2の方向に前記緩衝器ピストンを移動させることをさらに含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記緩衝器ピストンが前記第1の方向に移動すると、前記第1の緩衝器室の第1の容積が大きくなり、前記第2の緩衝器室の第2の容積が小さくなり、前記緩衝器ピストンが前記第1の方向と反対の前記第2の方向に移動すると、前記第2の緩衝器室の前記第2の容積が大きくなり、前記第1の緩衝器室の前記第1の容積が小さくなる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
油圧装置を用いて前記流量脈動を生成することをさらに含む、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記油圧装置は、少なくとも1つの動作モードで油圧ポンプとして動作するように構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記油圧装置は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる群から選択される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記緩衝器ピストンの両側における前記油圧流量脈動の前記位相差は、140度以上~220度以下の位相ずれである、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
油圧システムであって、
第1の装置ポートと第2の装置ポートとを備えた油圧装置と、
第1の緩衝器ポートと第2の緩衝器ポートとを備えた差動緩衝器と、
前記第1の装置ポートを前記第1の緩衝器ポートに流体的に接続する第1の流路と、
前記第2の装置ポートを前記第2の緩衝器ポートに流体的に接続する第2の流路と
を含む、油圧システム。
【請求項36】
前記差動緩衝器は、前記差動緩衝器内に摺動可能に収容された緩衝器ピストンによって流体的に分離される第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室を含み、前記第1の緩衝器室は、前記第1の装置ポートに流体的に接続され、前記第2の緩衝器室は、前記第2の装置ポートに流体的に接続される、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
第1の方向への前記緩衝器ピストンの運動に抵抗するように構成された第1のばねと、前記第1の方向と反対の第2の方向への前記緩衝器ピストンの運動に抵抗するように構成された第2のばねとをさらに含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記緩衝器ピストンは、前記油圧装置によって生成された流量脈動の周波数範囲内の共振モードを有するように構成される、請求項37に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月13日に出願された、米国仮特許出願第62/935,047号の優先権を米国特許法第119条(e)に基づいて主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
開示の実施形態は、油圧システム内の流量及び/又は圧力脈動を緩和する方法及びシステムに関し得る。いくつかの実施形態は、差動油圧緩衝器を含む油圧システムを対象とし得る。
【背景技術】
【0003】
背景
電力を貯蔵、変換、及び/又は伝送するために流体を利用する油圧システムが、大規模な産業プラントから自動車まで、種々の産業及び用途にわたって利用されている。これらの油圧システムは、概して、例えば、油圧ポンプ、弁、様々なリザーバ又はアキュムレータ、タンク、流体室、フィルタ、膜、他の油圧構成要素、及びこれらの構成要素間に延びる流路などの、種々の構成要素を含み得る。これらの様々な構成要素及び接続部を通る並びに/又はこれらの構成要素及び接続部間の作動液の流れは、構成要素の振動及び/又は音響ノイズを生成し得る流体圧力及び/又は流量脈動をもたらすことがある。この脈動は、不快なレベルのノイズが発生する、設備の損耗が加速する、及び/又は関連する周波数範囲でのシステム性能が低下するという理由から望ましくない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
一実施形態では、油圧システムは、第1の装置ポートと第2の装置ポートとを備えた油圧装置と、第1の緩衝器ポートと第2の緩衝器ポートとを備えた差動緩衝器と、第1の装置ポートを第1の緩衝器ポートに流体的に接続する第1の流路と、第2の装置ポートを第2の緩衝器ポートに流体的に接続する第2の流路とを含む。
【0005】
一実施形態では、能動サスペンションアクチュエータシステムは、第1の装置ポートと第2の装置ポートとを含む油圧装置を含む。能動サスペンションアクチュエータシステムはまた、差動緩衝器内に摺動可能に収容された緩衝器ピストンによって流体的に分離される第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室を備えた差動緩衝器を含む。第1の緩衝器室は、油圧装置の第1のポートに流体的に接続され、第2の緩衝器室は、油圧装置の第2のポートに流体的に接続される。能動サスペンションアクチュエータシステムはまた、油圧アクチュエータ内に摺動可能に収容されたアクチュエータピストンによって流体的に分離される第1のアクチュエータ室及び第2のアクチュエータ室を備えた油圧アクチュエータを含む。第1のアクチュエータ室は、第1の緩衝器室に流体的に接続され、第2のアクチュエータ室は、第2の緩衝器室に流体的に接続される。
【0006】
一実施形態では、油圧システムを動作させる方法は、第1の緩衝器室に流体的に接続された第1の流路と、第2の緩衝器室に流体的に接続された第2の流路とに流量脈動を加えることであって、第1の緩衝器室内の流量脈動は、第2の緩衝器室内の流量脈動に対して少なくとも部分的に位相がずれている、加えることと、少なくとも部分的には第1の緩衝器室内の流量脈動と第2の緩衝器室内の流量脈動との位相差によって、第1の緩衝器容積と第2の緩衝器容積との間に配置された緩衝器ピストンを変位させることとを含む。
【0007】
一実施形態では、油圧システムは、第1の装置ポートと第2の装置ポートとを備えた油圧装置と、第1の緩衝器ポートと第2の緩衝器ポートとを備えた差動緩衝器と、第1の装置ポートを第1の緩衝器ポートに流体的に接続する第1の流路と、第2の装置ポートを第2の緩衝器ポートに流体的に接続する第2の流路とを含む。
【0008】
前述の概念、及び以下に述べる追加の概念は、本開示がこの点に関して限定されないので、任意の好適な組み合わせで構成され得ることを理解すべきである。さらに、本開示の他の利点及び新規な特徴は、添付図面と併せて考慮すると、様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0009】
本明細書及び参照により組み込まれる文書が矛盾する及び/又は一貫性のない開示を含む場合、本明細書が優勢であるものとする。参照により組み込まれる2つ以上の文書が互いに対して矛盾する及び/又は一貫性のない開示を含む場合、有効日が遅い方の文書が支配するものとする。
【0010】
図面の簡単な説明
添付の図面は、一定の比率で描かれるように意図されていない。図面中では、様々な図に図示する同一又はほぼ同一の各構成要素は、類似の数字で表されることがある。明確にする目的で、全ての図面において全ての構成要素に符号が付されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】可逆油圧装置と油圧負荷とを備えた油圧回路の一実施形態を図示する。
【
図2】例示的な動作条件についての
図1の可逆油圧装置の2つのポートの各々での予想される油圧挙動の一実施形態を図示する。
【
図3】例示的な動作条件についての
図1の可逆油圧装置の2つのポートでの予想される流体吐出量及び流体取込量の一実施形態を図示する。
【
図4】可逆油圧装置と油圧負荷と2つのアキュムレータとを備えた油圧回路の一実施形態を図示する。
【
図5】可逆油圧装置と油圧負荷と差動緩衝器とを備えた油圧回路の一実施形態を図示する。
【
図6】可逆油圧装置と、油圧能動サスペンションアクチュエータと、アキュムレータと、貫流構成の差動緩衝器とを備えた油圧回路の一実施形態を図示する。
【
図7A】並列配置で積層された皿ばねの一実施形態の断面図を図示する。
【
図7B】直列配置で積層された皿ばねの一実施形態の断面図を図示する。
【
図7C】並列に積層された皿ばねと直列に積層された皿ばねとの組み合わせを使用して積層された皿ばねの一実施形態の断面図を図示する。
【
図8】ばねが、緩衝器ピストンのいずれか一方の側に配置された皿ばねの並列配置を含む、貫流差動緩衝器と油圧装置の一実施形態を図示する。
【
図9】緩衝器ピストンのいずれか一方の側に配置された相対向する皿ばね積層体の形態のばねを備えた差動緩衝器の実施形態の斜視断面図を図示する。
【
図10】
図9の差動緩衝器の正面断面図を図示する。
【
図11A】ピストンが第1の中立動作位置にある、
図9及び
図10に示すものと同様の差動緩衝器の一実施形態を図示する。
【
図12A】差動緩衝器に含まれ得る皿ばね積層体の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、油圧ポンプ、例えば、特に、ジェロータポンプ、クレセントポンプ、ギヤポンプ、及びピストンポンプなどの、容積型ポンプが、取込ポートと吐出ポートの両方において、リップルと呼ばれることもある、流量及び/又は圧力脈動を誘発し得ることを認識している。これらの脈動は、油圧回路全体にわたる様々な箇所に伝達され、様々な箇所で観察され得る。これらの圧力脈動は、油圧システムのノイズの増加及び/又は不安定化をもたらし得る。柔軟性のあるリザーバ(例えば、アキュムレータ)は、油圧システムの様々な部分への流量及び/又は圧力脈動の伝達を部分的に緩和するために使用され得る。しかしながら、本発明者らは、より大きいリザーバの使用が、ポンプの前後に所望の圧力差を確立するために、ポンプによって、又は他の油圧装置によってより多くの流体を移動させる必要性を生じさせ得ることを認識している。追加的に、リザーバが圧縮されると、ある特定の種類のリザーバではコンプライアンスが低下し得る(すなわち、リザーバがより硬くなり得る)。それゆえ、本発明者らは、リザーバが圧縮されると、流量及び/又は圧力脈動を緩和する際のリザーバの有効性がより低くなり得ること、例えば、ガス充填リザーバの場合、この関係が非線形であり得ることを認識している。
【0013】
上記を考慮して、本発明者らは、油圧装置の別個のポートに接続された異なる流路に沿った位置に存在する流量及び/又は圧力脈動に生じる位相差を使用して油圧システムの他の部分に伝播する流量及び/又は圧力脈動の大きさを低減することに関連する利点を認識している。具体的には、2つの流路間の流量及び/又は圧力脈動の位相差及び相対的な大きさは、油圧装置によって加わる流路間の公称圧力差と異なる圧力差を所与の位置にもたらし得る。よって、異なる流路に沿った位相のずれた流量及び/又は圧力脈動に関連する圧力差の部分は、油圧システムの別の部分に伝播する流量及び/又は圧力脈動を少なくとも部分的に緩和するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、流量及び/又は圧力脈動に関連する2つの流路間のこの圧力差は、各流路に関連する緩衝器室の対応する容積変化を生じさせて、流量及び/又は圧力脈動を少なくとも部分的に緩和し、場合により実質的に排除するために使用され得る。例えば、第1の緩衝器室の容積変化は、第2の緩衝器室内の対応する逆の容積変化をもたらし得、この逆の容積変化によって、別個の緩衝器室に加わる少なくとも部分的に位相のずれた流量及び/又は圧力脈動が少なくとも部分的に調整され得る。いくつかの実施形態では、この容積変化は、2つの緩衝器室間に摺動可能に配置されて2つの緩衝器室を隔てる緩衝器ピストンを使用して達成され得、2つの緩衝器室に加わる位相のずれた流量及び/又は圧力脈動によって、緩衝器ピストンを変位させ得る。具体的な実施形態を以下にさらに詳しく説明する。
【0014】
一実施形態では、油圧システムは、第1の装置ポートと第2の装置ポートとを備えた油圧装置(例えば、油圧モータ又はポンプ)を含み得る。例えば、油圧装置は、少なくとも1つの動作モードで油圧ポンプとして動作させる油圧ポンプ、又は少なくとも1つの動作モードで油圧ポンプとして動作させる油圧モータであり得る。実施形態は、第1の緩衝器ポートと第2の緩衝器ポートとを備えた差動緩衝器を含み得る。第1の流路は、第1の装置ポートを第1の緩衝器ポートに流体的に接続し得、第2の流路は、第2の装置ポートを第2の緩衝器ポートに流体的に接続し得る。差動緩衝器は、差動緩衝器から差動緩衝器に流体的に接続された1つ又は複数の油圧負荷に伝達される、油圧装置によって生成された流量及び/又は圧力脈動を低減するように機能し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、差動緩衝器は、第1の緩衝器室と第2の緩衝器室とを含む内部容積を備えたハウジングを含み得る。第1の緩衝器室と第2の緩衝器室との間における差動緩衝器のハウジング内に配置された緩衝器ピストンは、2つの緩衝器室間の緩衝器ピストンの前後に加わる差圧の影響下で前後に摺動するように構成され得る。第1のばねは、第1の方向への緩衝器ピストンの運動に抵抗し得、第2のばねは、第1の方向と反対の第2の方向への緩衝器ピストンの運動に抵抗し得る。よって、ピストンは、第1の室及び第2の室に伝達される少なくとも部分的に位相のずれた流量及び/又は圧力脈動を少なくとも部分的に打ち消すために第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室の容積を相応に変化させ得る、油圧装置によって生成された流量及び/又は圧力脈動に関連する加わる圧力差の下で移動し得る。
【0016】
本明細書に開示する差動緩衝器及びシステムは任意の適切な油圧負荷と共に使用され得るが、いくつかの実施形態では、本明細書で説明するように、油圧装置に流体的に接続される油圧負荷は、能動サスペンションアクチュエータであり得る。そのような一実施形態では、能動サスペンションアクチュエータシステムは、油圧ポンプ又は油圧モータなどの、油圧装置を含み得る。油圧装置は、第1の装置ポートと第2の装置ポートとを含み得る。実施形態はまた、第1の緩衝器室と第2の緩衝器室との間に配置される緩衝器ピストンによって流体的に分離される第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室を備えた差動緩衝器を含み得る。緩衝器ピストンは、第1の緩衝器室と第2の緩衝器室との間の差動緩衝器のハウジング内を摺動するように構成され得る。例えば、緩衝器ピストンは、第1の緩衝器室及び第2の緩衝器室を少なくとも部分的に画定する円筒状容積内に摺動可能に保持され得る。第1の緩衝器室は、油圧装置の第1の装置ポートに流体的に接続され得、第2の緩衝器室は、油圧装置の第2の装置ポートに流体的に接続され得る。能動サスペンションシステムはまた、第1のアクチュエータ室と第2のアクチュエータ室とを備えた油圧アクチュエータを含み得る。いくつかの実施形態では、第1のアクチュエータ室及び第2のアクチュエータ室は、それぞれ、アクチュエータの伸長室及び圧縮室に対応し得る。いずれの場合にも、第1のアクチュエータ室と第2のアクチュエータ室は、アクチュエータピストンによって流体的に分離され得る。いくつかの実施形態では、アクチュエータピストンは、第1のアクチュエータ室及び第2のアクチュエータ室を少なくとも部分的に画定するアクチュエータ本体の内部容積内に配置された円筒状容積内に摺動可能に収容され得る。特定の構造にかかわらず、第1のアクチュエータ室は、第1の緩衝器室に流体的に接続され得、第2のアクチュエータ室は、第2の緩衝器室に流体的に接続され得る。以下にさらに詳しく説明するように、このような構造は、油圧装置から差動緩衝器を通ってアクチュエータに伝達され得る流量及び/又は圧力脈動の大きさを低減するのに役立つことがある。
【0017】
油圧システム内の流量及び/又は圧力脈動を緩和する差動緩衝器の能力を含む、油圧システムの動作に関連付けられたある特定のパラメータは、油圧システムの動作周波数範囲と、結果として生じる励起された流量及び/又は圧力脈動の周波数範囲とに少なくとも部分的に関連付けられ得る。よって、いくつかの実施形態では、本明細書で説明する様々な動作パラメータ及び性能特性は、以下に述べる動作周波数範囲並びに流量及び/又は圧力脈動周波数範囲内の動作パラメータ及び/又は性能特性に相当し得る。
【0018】
実施形態に応じて、油圧装置は、任意の適切な動作周波数範囲を示し得る。例えば、油圧装置の最大応答周波数は、1Hz以上、5Hz以上、10Hz以上、20Hz以上、及び/又は他の任意の適切な周波数範囲であり得る。それに対応して、油圧装置は、100Hz以下、50Hz以下、40Hz以下、30Hz以下、20Hz以下、及び/又は他の任意の適切な周波数範囲である最大応答周波数を有し得る。上述の周波数範囲の組み合わせは、1Hz以上~50Hz以下である最大周波数応答で応答することが可能である油圧装置を含めて考慮される。さらに、油圧装置は、0Hz以上から上述の最大応答周波数のいずれか以下まで広がる動作周波数範囲を有し得る。しかしながら、本開示はそのように限定されるものではないので、油圧装置が、0Hzよりも大きい動作周波数範囲に異なる下限を有する実施形態も考慮される。追加的に、油圧装置の最大応答周波数の具体的な周波数範囲について上述したが、本開示はこの様態に限定されるものではないので、上述した範囲よりも広い範囲と狭い範囲の両方を含む、油圧装置の任意の適切な動作周波数範囲が、具体的な用途に応じて使用され得ることを理解すべきである。追加的に、最大応答周波数について上記で説明したが、特定の油圧装置の動作速度は、ある特定の実施形態における装置の最大応答時間に関連する周波数よりも大きい場合がある。例えば、ジェロータなどの油圧装置、又は他の同様の装置は、いくつかの実施形態で上述した最大応答周波数よりも高い周波数を有する周期的励起を伴う回転速度を示し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、油圧装置は、異なる脈動周波数の範囲内の流量及び/又は圧力脈動を生成し得る。例えば、油圧装置によって生成される流量及び/又は圧力脈動は、10Hz以上、20Hz以上、30Hz以上、40Hz以上、50Hz以上、100Hz以上、500Hz以上、1000Hz以上、2000Hz以上、3000Hz以上、及び/又は他の任意の適切な周波数範囲である周波数を有し得る。それに対応して、流量及び/又は圧力脈動に関連する周波数範囲は、10,000Hz以下、5000Hz以下、4000Hz以下、3000Hz以下、2000Hz以下、1000Hz以下、500Hz以下、100Hz以下、50Hz以下、及び/又は他の任意の適切な周波数範囲であり得る。例えば、10Hz以上~10,000Hz以下及び30Hz以上~300Hz以下である、流量及び/又は圧力脈動の周波数範囲を含む、前述の周波数範囲の組み合わせが考慮される。当然ながら、本開示はそのように限定されるものではないので、具体的な油圧システム構造に応じて、上述したものよりも大きい及び小さい流量及び/又は圧力脈動の周波数範囲が考慮されることを理解すべきである。
【0020】
上述のように、ポンプ又は油圧モータなどの、油圧装置は、例えば、油圧装置の別個のポートに流体的に接続される2つの別個の流路に沿って流量及び/又は圧力脈動を生成し得る。別個の流路に沿って伝播するこれらの脈動は、位相が互いに少なくとも部分的にずれている可能性がある。相対向する2つの緩衝器室内などの、流路に沿った特定の位置における圧力脈動の位相が互いに完全にずれている、例えば180°ずれている場合、以下にさらに詳しく説明するように、流量及び/又は圧力脈動の最大量の緩和が達成され得る。代替的に、相対向する2つの緩衝器室内などの、流路に沿った特定の位置における脈動の位相が互いに部分的にずれている、すなわち180°未満ずれている場合、流量及び/又は圧力脈動のより少量の緩和が達成可能であり得る。追加的に、差動緩衝器によって行われる脈動緩和の量をさらに高めるために、2つの別個の流路から相対向する緩衝器室に伝達される流量及び/又は圧力脈動の大きさが互いにほぼ等しいことが望ましい場合がある。以下にさらに詳しく説明するように、関連する差動緩衝器への油圧システムの別個の流路に沿って存在する脈動の位相及び大きさは、流路内の流体の質量、減衰、及び/又は流量及び/又は圧力脈動を生成する油圧装置と流体流路に接続された差動緩衝器の別個の室との間に延びるとともに油圧装置と差動緩衝器の別個の室とを含むこれらの流体流路の剛性に依存し得る。したがって、油圧装置のポートから放出された脈動の大きさ及び/又は位相をシステムの差動緩衝器のポートで発生する脈動の大きさ及び位相に関連付ける、特定の油圧システム構造の結果であり得る、適切な伝達関数が存在し得る。これらの伝達関数は、油圧システムの様々な動作パラメータを決定するために、以下に詳しく説明するように、実験的に測定され得る。
【0021】
上記を考慮して、差動緩衝器の相対向する第1の室及び第2の室に伝達される流量及び/又は圧力脈動は、差動緩衝器の相対向する室内では互いに位相がほぼ180°ずれているか又は実効的に互いに位相が180°ずれているように、少なくとも所望の周波数範囲内で少なくとも互いに対して整合され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも脈動の所望の周波数範囲内で差動緩衝器の相対向する室に加わる流量及び/又は圧力脈動は、互いに対する180°の位相ずれからの40°、30°、20°、10°、5°、1°、及び/又は他の任意の適切なオフセットの範囲内(例えば、140°以上~220°以下の位相ずれ)であり得る。とは言え、本開示はそのように限定されるものではないので、互いに対する180°の位相ずれから上述した量よりも多くの量だけオフセットされる圧力脈動も考慮される。
【0022】
いくつかの実施形態では、油圧装置から差動緩衝器の相対向する緩衝器室に伝達される、所望又は目標の周波数範囲内の流量及び/又は圧力脈動の大きさは、実質的又は実効的に互いに等しい場合がある。例えば、脈動の所望又は目的の周波数範囲内で相対向する緩衝器室に加わる流量及び/又は圧力脈動の大きさの差は、所与の周波数での緩衝器室内のより大きい振幅の脈動の20%、15%、10%、5%、1%、及び/又は他の任意の適切なパーセンテージ以下であり得る。当然ながら、本開示はそのように限定されるものではないので、異なる室に加わる上述した範囲よりも大きい脈動の大きさの差も考慮される。
【0023】
脈動の所望又は目標の周波数範囲内で差動緩衝器の相対向する室に加わる脈動の大きさ及び/又は位相の間の所望の関係をもたらすのに役立つように、所与の圧力変化に対して予想される容積変化に対応するほぼ同等のコンプライアンスを有する差動緩衝器の対応する緩衝器室に油圧装置のポートを接続する流路を設けることが望ましい場合がある。流路が作動液などの実質的に非圧縮性の流体を含むので、これらの流路に沿ったコンプライアンスの大部分は差動緩衝器自体によって提供され得ることに留意すべきである。いずれの場合にも、本開示はそのように限定されるものではないので、油圧装置の第1の装置ポートを差動緩衝器の第1の緩衝器室に流体的に接続する第1の流路と、油圧装置の第2の装置ポートを差動緩衝器の第2の緩衝器室に流体的に接続する第2の流路とのコンプライアンスの差は、より大きい方のコンプライアンスの20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、及び/又は他の任意の適切なパーセンテージ以下であり得る。しかしながら、本開示はそのように限定されるものではないので、上述したコンプライアンスの差よりも大きい2つの流体流路のコンプライアンスの差も考慮される。
【0024】
代替的又は追加的に、脈動の所望の周波数範囲内で差動緩衝器の相対向する室に加わる脈動の大きさ及び/又は位相の間の所望の関係をもたらすのに役立つように、差動緩衝器の対応する緩衝器室に油圧装置の別個のポートを接続する別個の流路に対してほぼ同等の流体インピーダンスを提供することも望ましい場合がある。各流路に沿った流体インピーダンスは、流れ抵抗と、油圧装置と差動緩衝器との間に延在する流体の質量とからの寄与を含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、流体インピーダンスは、流路に沿った摩擦損失によって支配され得る。いずれの場合にも、本開示はそのように限定されるものではないので、油圧装置の第1の装置ポートを差動緩衝器の第1の緩衝器室に流体的に接続する第1の流路に沿った流体インピーダンスと、油圧装置の第2の装置ポートを差動緩衝器の第2の緩衝器室に流体的に接続する第2の流路に沿った流体インピーダンスとの差は、より大きい方の流体インピーダンスの20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、及び/又は他の任意の適切なパーセンテージ以下であり得る。しかしながら、本開示はそのように限定されるものではないので、上述した流体インピーダンスの差よりも大きい2つの流体流路の流体インピーダンスの差も考慮される。
【0025】
いくつかの実施形態では、差動緩衝器から油圧負荷に伝達される流量及び/又は圧力脈動の大きさは、油圧装置によって生成されて油圧装置から差動緩衝器に伝達される流量及び/又は圧力脈動の大きさに比べて低減され得る。所望の用途に応じて、大きさの低減は適切なパーセンテージであり得る。例えば、伝達される脈動の大きさの低減は、差動緩衝器によって低減されるよりも前の元の圧力及び/又は流量変動の大きさの1%、5%、20%、50%、又は他の任意の適切なパーセンテージ以上であり得る。それに対応して、大きさの低減は、元の圧力及び/又は流量変動の大きさの80%、50%、20%、5%、1%、及び/又は他の任意の適切なパーセンテージ以下であり得る。差動緩衝器から流体的に接続された油圧負荷に伝達される流量及び/又は圧力脈動の大きさの50%以上~80%以下の低減を含む、前述の組み合わせも考慮される。当然ながら、本開示はそのように限定されるものではないので、前述の範囲の異なる組み合わせ並びに上述のものよりも大きい低減と小さい低減の両方である低減も考慮される。
【0026】
特定の実施形態に応じて、システム内の流量及び/又は圧力脈動の上述の周波数及び位相オフセットは、任意の適切な様態で測定され得る。とは言え、いくつかの実施形態では、脈動の周波数及び位相は、差動緩衝器内に位置する別個の緩衝器室に関連する圧力センサを使用して測定され得る。例えば、別個の圧力センサ及び/又は差圧センサは、油圧システムの異なる緩衝器室又は他の部分内の圧力脈動を測定するために使用され得る。しかしながら、本開示はこの様態に限定されるものではないので、システムを用いて流量及び/又は圧力脈動の周波数及び/又は位相を測定する他の方法も使用され得ることを理解すべきである。
【0027】
様々な流路に沿った上述のコンプライアンス及び流体インピーダンスもまた、任意の適切な様態で決定され得る。例えば、一実施形態では、油圧システムの異なる流路に関連するコンプライアンス及び流体インピーダンスを決定するために、数値流体力学(CFD)解析が実施され得る。別の実施形態では、これらのパラメータは、実験的に測定され得る。
【0028】
圧力リップル源と差動緩衝器との間の流路伝達関数は、実験的に測定され得る。例えば、この測定は、適切な周波数範囲、例えば10~3000Hz又は10~10000Hzの周波数において圧力を測定することが可能な圧力センサを流路の両端部における位置に配置することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、実験中に、油圧装置は、ポンプと同じ位置(例えば位置141)において体積流量変位を誘発するために使用され得る外部の体積流量源に置き換えられ得る。所望の範囲全体にわたる周波数において外部流量源を用いた励起掃引によって、流路のインピーダンスを測定することができる。いくつかの実施形態では、油圧装置の第1のポートと差動緩衝器の第1の室とを接続する流路の伝達関数の大きさ及び位相は、油圧装置の第2のポートと差動緩衝器の第2の室とを接続する流路の伝達関数の大きさ及び位相よりも20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%及び/又は他の任意の適切なパーセント小さい大きさ及び/又は位相を有し得る。
【0029】
以下にさらに説明するように、いくつかの実施形態では、1つ又は複数のばねは、差動緩衝器の第1の緩衝器室と第2の緩衝器室との間に摺動可能に配置された緩衝器ピストンに動作可能に結合され得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のばねは、ばねが緩衝器ピストンを中立位置に向けて付勢するように、緩衝器ピストンのいずれか一方の側に配置された1つ又は複数のばねを含み得る。具体的な構造について、図との関連で以下にさらに説明する。しかしながら、本開示は任意の特定の種類のばねに限定されるものではないので、所望の力を加えて差動緩衝器の緩衝器ピストンを所望の中立位置に向けて付勢することが可能な任意の適切な種類のばねが使用され得ることを理解すべきである。したがって、適切なばねは、限定されるものではないが、コイルばね、皿ばね、及び/又は適切な力を加えることが可能な他の任意の適切な種類のばねを含み得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、流量及び/又は圧力脈動、流量及び/又は圧力リップル、流量脈動、圧力脈動、脈動及び他の同様の用語は、いくつかの油圧システム内で発生し得る同じ又は同等の物理現象を指すように交換可能に使用され得る。具体的には、流量及び/又は圧力脈動は、油圧装置に流体的に接続された所与の流路に沿った油圧装置の指令動作に関連する、一定であるか可変であるかにかかわらず、公称流量及び/又は公称圧力から逸脱した流量及び/又は圧力脈動の発生を指すことがある。場合により、これらの脈動は、実際の流量及び圧力が公称指令流量及び/又は圧力の付近で周期的に変化するように、周期的に変化し得る。例えば、図を参照して以下にさらに説明するように、ある特定の種類のポンプの動作中に、ポンプの別個のポートに接続された異なる流路に沿った流れ及び圧力は、ポンプの圧送機構の所与のサイクル全体を通じて変化し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「油圧装置」、「油圧ポンプ」、及び「油圧モータ」という用語は、互いに交換可能に使用され得る。よって、本明細書で説明する様々な実施形態は、油圧システム内の様々な箇所に所望の流体流れ及び/又は圧力差をもたらすように駆動させることが可能な任意の適切な油圧装置に対応する油圧装置を含み得る。この油圧装置は、少なくとも1つの動作モードで流体の流れを駆動するためのポンプとして動作するように構成され得る油圧ポンプ及び油圧モータを含み得る。追加的に、いくつかの実施形態では、油圧装置は、油圧装置を駆動するために流体の流れが使用される少なくとも1つの動作モードで油圧モータとして動作するように構成されるポンプ又は油圧モータを含み得る。特定の用途に応じて、油圧ポンプ及び/又は油圧モータなどの、油圧装置が、第1の方向と反対の第2の方向との両方向に流体が油圧装置を通って流れることを許容し得るように、可逆的であることが望ましい場合がある。しかしながら、油圧装置を通る流れが一方向である実施形態も考慮される。追加的に、いくつかの実施形態では、本開示はそのように限定されるものではないので、油圧装置は、可変の公称速度又は一定の公称速度で動作し得る。適切な種類の油圧装置は、限定されるものではないが、ジェロータ、クレセントポンプ、ギヤポンプ、ピストンポンプ、斜板ポンプなどの容積型ポンプを含み得る。
【0032】
本開示は特定の種類の油圧システムに限定されるものではないので、本明細書に開示する油圧システム及び差動緩衝器は、任意の適切な種類の油圧負荷と共に使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書に開示する油圧システムに含まれ得る油圧負荷は、限定されるものではないが、能動サスペンションアクチュエータ、油圧アクチュエータ、及び/又は他の任意の適切な種類の油圧負荷を含み得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、流路は、例えば、油圧システム内の別個の油圧構成要素の2つのポート間などの、油圧回路内の2つ以上の箇所の間を流体が流れ得る、導管又は他の密閉通路を指すことがある。適切な種類の流路は、限定されるものではないが、油圧管、固体素子で形成されたチャネル、別個の構成要素の相対向する2つの表面間(例えば、同心状に位置する管若しくはハウジング間)に延びる通路、及び/又は油圧システム内の2つ以上の箇所の間の流体の流れを許容するための流路として機能することが可能な他の任意の適切な構造を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「流体的に接続する」、「流体的に接続される」、「流体連通」、及び他の同様の用語は、油圧回路内の異なる箇所の間の流体接続を指すことがある。例えば、流路は、少なくともいくつかの動作条件時に油圧回路のこれらの2つの部分間で流体が交換され得るように、油圧回路の2つの部分を流体的に接続し得る。本開示はこの様態に限定されるものではないが、油圧回路の2箇所間の流体接続は、介在する構成要素、例えば、2つの位置間における、弁などの流量制御装置なしの直接流体接続、又は2つの位置間に介在する1つ若しくは複数の構成要素間に流路が延び得る間接接続のいずれか一方であり得ることを理解すべきである。
【0035】
次に図を参照して、具体的な非限定的実施形態をさらに詳細に説明する。本開示は本明細書で説明する具体的な実施形態のみに限定されるものではないので、これらの実施形態に関連して説明する様々なシステム、構成要素、特徴、及び方法は、個別に及び/又は任意の所望の組み合わせで使用され得ることを理解すべきである。
【0036】
図1は、ポンプ又は油圧モータなどの、可逆油圧装置101を含む油圧回路100を図示している。
図1(並びに
図4、
図5、及び
図6)に図示する油圧装置101は、可逆的であるように、且つ油圧ポンプ及び油圧モータとして動作することが可能であるように示されている。いくつかの実施形態では、非可逆油圧ポンプ又は油圧モータが使用され得ることに留意すべきである。油圧回路100の油圧装置101は、第1のポート102と第2のポート103とを含む。油圧装置101は可逆的であるので、具体的な動作条件に応じて、いずれのポートも入口ポート又は出口ポートとして動作し得る。例えば、ジェロータ、クレセントポンプ、又はギヤポンプの場合、第2のポート102は、ポンプが第1の方向に回転するときの出口ポートであり、ポンプが第1の方向と反対の第2の方向に回転するときの入口ポートであり得る。
図1に示すように、油圧装置101はまた、油圧負荷104の一定の動作条件下で油圧モータとして動作し得る。
【0037】
図2は、
図1の油圧回路100に図示する流路105及び106に沿って伝播し得る圧力脈動のグラフを提示している。
図2では、破線110は、油圧装置が動作していないときの、システム圧力、すなわち、システムプリチャージ圧を表す。油圧装置が一定の速度で動作しているときに、出口ポートでの公称指令圧力は、名目上一定であり、取込圧(名目上一定であり、プリチャージ圧よりも低いこともある)よりも高いプリチャージ圧よりも高いことがある。しかしながら、入口ポート及び出口ポートにおける圧力は、
図2では、トレース111及び112で図示するように、名目上一定であり得るが、ポンプが一定の公称速度で動作していても、圧力変動、すなわち脈動が、入口ポート及び出口ポートにそれぞれ存在することがある。これらの圧力変動は、各ポートにおいて公称指令圧力の付近で周期的に変化し得る。追加的に、圧力変動は、各ポートにおける公称指令圧力に重畳された異なる周波数の複数の変動を含むトレースで図示するように、ある周波数範囲にわたって起こり得る。追加的に、圧力差を生じさせるために使用される油圧装置の種類に応じて、また
図2で分かるように、圧力トレース111及び112は、互いの鏡像であり得る。これは、少なくとも部分的に互いに位相がずれている、2つのポートにおけるに圧力脈動に対応している(例えば、
図2では、圧力脈動は、2つのポートにおいて位相が180度ずれていることが示されている)。
【0038】
図3は、
図1に示すものと同様の油圧装置を例えば一定の公称速度で動作させたときの、出口ポートでの正の流量121と入口ポートでの負の流量122とを図示している。
図2に示す対応するポートにおける圧力と同様の様態で、流量トレースは、異なる周波数範囲にわたって公称指令流量に重畳された振動に対応する流量脈動を含む。これにより、別個の流路及びポートに関連する流量が、各ポートにおいて公称指令流量の付近で周期的に変化する。上記と同様に、トレース121及び122は、脈動の位相が互いに少なくとも部分的にずれている(例えば、位相が180度ずれている)ので、互いの鏡像である。
【0039】
図2及び
図3に含まれるトレースはデータではなく、むしろ、一定の指令公称流量及び圧力差の下で動作させる、例えば油圧ポンプなどの、油圧装置のポートにおける予想される流量及び圧力を表したものであることに留意すべきである。しかしながら、油圧装置を一定の動作条件下で、例えば速度又は流量で動作させない場合には、公称流量及び公称圧力も変化し得る。そのような場合、図に示す周期変動に対応する流量及び圧力脈動は、システムの任意の所与の動作点での変化する公称流量及び/又は圧力に重畳され得る。よって、流量及び/又は圧力脈動を緩和するための開示の実施形態は、一定の公称動作条件でのみ動作することに限定されるものではない。
【0040】
いくつかの実施形態では、油圧装置の取込ポートに流入して吐出ポートから流出する流れから生じる流量脈動は、圧縮性媒体(例えば、ガス)が部分的に充填されるリザーバを組み込むことによって少なくとも部分的に緩和され得る。
図4は、可逆油圧装置131(例えば、ポンプ又は油圧モータ)と、油圧負荷104と、第1の流路132と、第2の流路133とを含む油圧システム130の実施形態を図示している。また、図示のシステムの油圧回路には、油圧装置と油圧負荷との間に配置された位置においてそれぞれ第1の流路及び第2の流路に流体的に接続されるリザーバ134及び135が含まれる。リザーバ134は、ピストン134aと、ガス充填容積134bとを含む。リザーバ135は、ピストン135aと、ガス充填容積135bとを含む。ある特定の実施形態では、リザーバ134及び135は、関連する流路に沿って油圧負荷に伝達される脈動の大きさを低減するために流体をリザーバに流入させるか又はリザーバから流出させることで流量脈動を少なくとも部分的に調整することによって、ポート131a及び131bにおける作動液の脈動流を緩和する役割を果たし得る。本発明者らは、リザーバ内のガス容積134b及び135bが大きいほど、ポンプによって誘発される脈動を低減する際の有効性がより高くなることを認識している。しかしながら、本発明者らはまた、ポート131aと131bとの間に所望の圧力差を確立するために、リザーバが大きいほど、より多くの流体を油圧装置131によって圧送する必要があることを認識している。
【0041】
上記に加えて、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らはさらに、脈動を緩和する際のガス充填リザーバの有効性がリザーバのコンプライアンスに比例し得ることを認識している。よって、ポンプを動作させることによって流路132又は流路133内の圧力が上昇するので、関連するリザーバ内のガス容積が圧縮され得る。リザーバのガス容積が圧縮されると、コンプライアンスが低下し(すなわち、リザーバがより硬くなり)、リザーバは、油圧脈動を緩和する際の有効性がより低くなり得る。加えて、ガス充填リザーバのコンプライアンスと圧力との関係は非線形である。よって、1つ又は複数のリザーバは、本明細書で説明する様々な実施形態において任意の流路に流体的に接続され得るが、本発明者らは、油圧システム内に存在する流量及び/又は圧力脈動をさらに緩和し得る構造の必要性を認識している。
【0042】
図5は、油圧装置141と、油圧負荷104と、第1の流路142と、第2の流路143とを含む油圧システムを図示している。油圧装置141は、第1の装置ポート141aと第2の装置ポート141bとを含む。油圧システム140はまた、差動緩衝器145を含む。差動緩衝器145は、差動緩衝器145の内部容積内に摺動可能に収容される緩衝器ピストン146を含む。例えば、
図5の実施形態に示すように、ピストン146は、緩衝器ピストン146が内部容積を第1の緩衝器室145aと第2の緩衝器室145bとに流体的に分離するように、内部容積の円筒部分内に摺動可能に収容され得る。緩衝器ピストン146は、緩衝器ピストン146の移動によって一方の緩衝器室の容積が増加して他方の緩衝器室の容積が減少するように、第1の緩衝器室145aと第2の緩衝器室145bとの間に配置される。
図5の実施形態では、相対向するピストン面146a及び146bは、それぞれ、第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145b内の作動液の圧力にさらされる。
【0043】
油圧装置141は、それぞれ第1の流路142及び第2の流路143によって油圧負荷104に流体的に接続される。具体的には、油圧装置141aの第1のポートは、第1の流路142によって油圧負荷104aの第1のポートに流体的に接続され得る。それに対応して、油圧装置141bの第2のポートは、第2の流路143によって油圧負荷104bの第2のポートに流体的に接続され得る。第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bは、2つの分岐流路によってそれぞれ流路142及び143に流体的に接続される。例えば、緩衝器室145a及び145bはまた、ポート147a及び147bを含み得る。したがって、第1の緩衝器室のポート147aは、油圧装置141と油圧負荷104との間の第1の流路142に沿った位置において第1の流路142に流体的に接続され得る。それに対応して、第2の緩衝器室145bのポート147bは、油圧装置141と油圧負荷104との間の第2の流路143に沿った位置において第2の流路143に流体的に接続され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、油圧システム140の油圧装置141が動作してない、例えば、その2つのポート間に差圧を生じさせていないときに、差動緩衝器145の緩衝器ピストン146を中立位置に向けて付勢することが望ましい場合がある。よって、いくつかの実施形態では、差動緩衝器145は、緩衝器ピストンを差動緩衝器145の内部容積内の所望の中立位置に向けて付勢するように緩衝器ピストン146に動作可能に結合される1つ又は複数のばねを含み得る。例えば、
図5に図示する実施形態では、差動緩衝器145は、緩衝器ピストンの両側に配置されて相対向するピストン表面146a及び146bにそれぞれ接触する第1のばね148a及び第2のばね148bを含み得る。いくつかの実施形態では、ばねがピストンとハウジングの対向する内面との間に延びる図に示すように、各ばねの第1の端部は、緩衝器ピストン146の表面に押し当てて配置され得、ばねの対向端部は、差動緩衝器145のハウジングの内面などの支持面に押し当てて配置される。しかしながら、本開示は、緩衝器ピストンに対してばねを所望の位置及び/又は向きに維持するための任意の特定の種類の支持構造に限定されるべきではない。いずれの場合にも、1対のばねは、ピストン146の前後の差圧がゼロ又は実効的にゼロであるときに、等しく逆向きの、又は実効的に等しく逆向きの力をピストン146に加えることによって、差動緩衝器ハウジングに対するピストン146の位置を維持するように構成され得る。いくつかの実施形態では、2つのばねのばね定数は、等しくなるか又は実効的に等しくなるように選択され得る。例えば、ピストンのいずれか一方の側にある1つ又は複数のばねの有効ばね定数は、ばねのより大きい方のばね定数の20%、10%、5%、1%、及び/又は他の任意の適切なパーセンテージの範囲内であり得る。本開示は任意の特定の数のばね又は種類のばねの使用に限定されるものではないので、いくつかの実施形態では、図に示すばねのいずれか一方又は両方は、組み合わせて図示の単一のばねと同等である複数のばねによって置き換えられ得る。
【0045】
上記の実施形態では、流路と差動緩衝器との間の分岐接続と、一般的な油圧負荷について説明した。しかしながら、本開示はこの様態に限定されるものではない。例えば、
図5に示す様態と異なる様態でシステムの油圧装置及び/又は1つ若しくは複数の油圧負荷に接続される差動緩衝器を含む油圧システムも考慮される。
図6は、そのような一実施形態を図示している。
【0046】
先の実施形態と同様に、
図6は、装置ポート141a及び141bを備えた油圧装置141を含む油圧システム240を図示している。油圧システム240はまた、上記で説明したものと同様でもある差動緩衝器145を含む。ここでもまた、差動緩衝器145は、緩衝器の内部容積内に摺動可能に収容される緩衝器ピストン146であって、内部容積を、関連する第1のばね145a及び第2のばね145bを備えた第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bに流体的に分離する、緩衝器ピストン146を含み得る。しかしながら、分岐接続を使用するのではなく、差動緩衝器145は、貫流構成で構築される。具体的には、図に示すように、第1の緩衝器室145aは、それぞれ図に示す第1のポート147a及び第2のポート147bに対応する2つの流通ポートを含み得る。第2の緩衝器室145bはまた、第3のポート147c及び第4のポート147dに対応する2つの流通ポートを含み得る。油圧装置141の第1の装置ポート141aは、油圧装置141と第1の緩衝器室145aとの間に延びる第1の流路142aを介して、第1の緩衝器室145aの第1のポート147aに流体的に接続され得る。同様に、第1の緩衝器室の第2のポート147bは、第1の緩衝器室と油圧負荷との間に延びる第3の流路142bによって、図示の能動サスペンションアクチュエータ150などの、油圧負荷の第1のポート154aに流体的に接続され得る。同様に、油圧装置の第2の装置ポート141bは、油圧装置141と第2の緩衝器室145bとの間に延びる第2の流路143aによって、第2の緩衝器室のポート147c、すなわち、第3のポート147cに流体的に接続され得る。第2の緩衝器室の他のポート、すなわち、第4のポート147dは、第2の緩衝器室145bと油圧負荷との間に延びる第4の流体流路143bによって、油圧負荷の第2のポート154bに流体的に接続され得る。
【0047】
能動サスペンションアクチュエータ150の図示の実施形態では、アクチュエータは、伸長容積151aと圧縮容積151bとの間におけるアクチュエータのハウジングの内部容積内に摺動可能に配置されたピストン152を含む。ピストンロッド153は、ピストン152の少なくとも第1の側に取り付けられ、少なくとも第1の側から延びる。ピストンは、アクチュエータハウジングの外部に延び得る。図示の実施形態では、伸長容積151aは、アクチュエータの第1のポート154aと流体連通し、圧縮容積151bは、アクチュエータの第2のポート154bと流体連通する。当然ながら、特定の能動サスペンションアクチュエータが図に示されているが、本開示はそのように限定されるものではないので、任意の適切な油圧負荷が図示のシステムに含まれ得ることを理解すべきである。
【0048】
ピストン152を備えた能動サスペンションアクチュエータ150を含む図示の実施形態では、油圧システムの動作によって、ピストンが変化量だけアクチュエータの内部容積内に延び得る。したがって、油圧システム240はまた、アクチュエータハウジングへのピストンロッド153の進入又はアクチュエータハウジングからのピストンロッド153の引き抜きによって変位させる作動液を収容するように構成され寸法決めされ得る、アキュムレータ155、又は他の適切なリザーバを含み得る。
図6の実施形態では、伸長行程中に、伸長容積151aが小さくなり、圧縮容積151bが大きくなる。圧縮行程中に、伸長容積が大きくなり、圧縮容積が小さくなる。
【0049】
図6の油圧システム240の動作中に、ポンプなどの油圧装置141は、圧縮容積151bから流体を引き出して伸長容積151a内に流体を押し込み、能動サスペンションアクチュエータ150に圧縮を行わせるために使用され得る。
図6の実施形態では、ある量の流体が、油圧装置141の第1のポート141aから第1の流路142a内に、第1の緩衝器室145aの第1のポート147a内に、第1の緩衝器室を通って第1の緩衝器室の第2のポート147bに、第3の流路142bを通って、能動サスペンションアクチュエータの第1のポート154aを通って、伸長容積151a内に圧送され得る。これにより、ピストン152が圧縮方向に移動し、ある量の流体が、圧縮容積151bから流出して、アクチュエータ150の第2のポート154b又は他の適切な油圧負荷を通って流れ得る。圧縮容積から流出する流体量の一部は、第4の流路143bを通って第2の緩衝器室145bのポート(すなわち、第4のポート147d)に流れ、第2の緩衝器室145bを通って第2の緩衝器室の別のポート(すなわち、第3のポート147c)に流れ、第2の流路143aを通って油圧装置の第2の装置ポート141bに流入する。ポート154bから出た流れの残り部分は、アキュムレータ155に流入し得る。
図6の構成では、ピストン152の所与の変位について、油圧装置141を通過する流体の量は、ピストン152の断面積からピストンロッド153の断面積を差し引いた断面積によって掃引される体積に等しいことに留意すべきである。この体積とピストン断面積によって掃引される体積との差が、ピストン152の移動方向に応じて、アキュムレータ155に流入するか又はアキュムレータ155から流出する。結果として、所望の圧力差を確立するために油圧装置141によって圧送する必要がある流体の量は、同じ圧力差を確立するためにより多量の流体を1つのリザーバから別のリザーバに圧送する必要がある
図4の実施形態よりも大幅に少なくなり得る。
【0050】
上記の説明では、能動サスペンションアクチュエータ150の運動の圧縮サイクルについて説明した。しかしながら、能動サスペンションアクチュエータ150はまた、アクチュエータハウジングからさらに延出するようにピストンロッド153を変位させる伸長サイクルも行い得る。よって、油圧装置141を逆方向に動作させると、流体が、上記で説明した様々な構成要素を通って逆方向に流れ得る。追加的に、システムが、
図6に図示する能動サスペンションアクチュエータ150と異なる油圧負荷を動作させるように制御されたときに、異なる流路及び差動緩衝器145を通る同様の流体の流れが発生し得る。
【0051】
前述のように、油圧装置141の動作は、油圧装置141と差動緩衝器145との間に延びる流路142a及び143aに沿って伝播する流量脈動をもたらし得る。したがって、流量脈動は、油圧装置141の装置ポート141a及び141bで発生し得、差動緩衝器145に並びに第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145b内に伝播し得る。前述のように、流量脈動は、第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145b内において少なくとも部分的に位相がずれている場合がある。緩衝器ピストン146の前後に加わる、これらの位相のずれた流量脈動に関連する圧力差に起因して、第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bに達する流量脈動は、緩衝器ピストン146が移動するように誘導し得る。結果として生じる緩衝器ピストン146の移動は、一方向であり得、差動緩衝器145から1つ又は複数の関連する油圧負荷に向かって下流側に伝播する脈動の大きさが、差動緩衝器145の上流側(例えば、差動緩衝器145と油圧装置141との間)の脈動の大きさに比べて、低減され、場合により、実質的又は実効的に排除され得るような、位相のずれた脈動に関連付けられる大きさを有し得る。例えば、第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bと関連する油圧負荷との間に延びる流路142b及び143bに沿って伝達される脈動の大きさは、第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bと油圧装置141との間で伝達される脈動の大きさよりも小さい場合がある。これにより、油圧負荷に加わる脈動の大きさが相応に低減され得る。
【0052】
本発明者らは、差動緩衝器を用いた流量脈動の緩和の程度は、差動緩衝器の相対向する室内において圧力パルスが180°位相のずれた状態にどれだけ近いかに少なくとも部分的に依存し得ることを認識している。脈動が別個の緩衝器室内において180°位相のずれた状態から乖離するほど、差動緩衝器を用いた開示のパルス緩和戦略は、パルス間の相殺的干渉が少なくなるので有効性が低くなり得る。よって、いくつかの実施形態では、流体流路142a及び143aのコンプライアンス及び/又はインピーダンスが互いに実質的に等しくなるか、又は少なくとも互いに何らかの所望の許容差内に収まるように、油圧装置141と対応する第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bとの間に延びるとともに油圧装置141と対応する第1の緩衝器室145a及び第2の緩衝器室145bとを含む流体流路142a及び143aのコンプライアンス及び/又はインピーダンスを整合させることが望ましい場合がある。このように流路のバランスが保たれると、相対向する室に達する脈動は、互いに位相がほぼ180度ずれているので、これらの脈動によりピストンに誘発される運動によってより実効的に打ち消され得る。
【0053】
油圧装置から関連する油圧負荷に伝播する流量及び/又は圧力脈動を少なくとも部分的に緩和するための差動緩衝器の動作を
図6に関連して説明したが、同様の動作方法が
図5の実施形態にも適用可能である。具体的には、差動緩衝器145の第1の緩衝器室145aと第2の緩衝器室145bとの間に配置された緩衝器ピストン146は依然として、油圧装置141の第1のポート141a及び第2のポート141bにおいて生成された脈動にさらされ得る。よって、緩衝器ピストン146は、ここでもまた、別個の緩衝器室145a及び145bに加わる位相のずれた脈動から生じる周期的な圧力差の下で移動し得る。これはまた、
図5の実施形態では貫流接続ではなく分岐接続が図示されているが、脈動が差動緩衝器145の接続部から関連する流路に下流側に伝播されるのを少なくとも部分的に緩和し得る、緩衝器ピストン146の運動をもたらし得る。したがって、本開示の差動緩衝器は、直接貫流流体接続、間接流体接続、及び/又は脈動に関連する所望の周波数範囲内で緩衝器室と関連する流路との間の流体連通を許容する別の適切な種類の接続を使用して別個の流路内に存在する脈動にさらされ得ることを理解すべきである。
【0054】
図6を参照すると、緩衝器ピストン146は、ピストンとピストンが移動すると移動する流体との両方の慣性質量を指す、質量mを有し得る。他の質量ばねシステムと同様に、差動緩衝器145は、固有共振モードを有し得る。このことは、差動緩衝器145が、他の周波数と比較して、固有共振モードの周波数で差動緩衝器ピストンを移動させるのに同じ量の励起エネルギーを必要としないことを意味する。差動緩衝器145の共振モードは、ばね148a及び148b上で振動する緩衝器ピストン146の質量mによって生成され得る。質量mは、差動緩衝器145の所望の剛性を考慮して選択され得る。概して、ノイズ又は容積リップルの抑制への質量mの影響を低減するために質量mを最小限に抑えることが望ましい場合があるが、ばねの質量m及びコンプライアンスもまた、差動緩衝器145の有効性をさらに高め得る、共振モード(ばね148a及び148b上で振動する緩衝器ピストン146の質量mによって生じる)を生成するように選択され得る。
【0055】
一例において、油圧装置141が圧力リップルを100Hzで出力する場合、非常に小さい質量mの緩衝器ピストン146を備えたシステムでは、油圧回路の剛性は、主にばねに基づき得る(すなわち、ばねが支配的である)。固有共振周波数を超える周波数では、緩衝器ピストン146が圧力リップルに応答して移動することが質量mによって防止されるので、油圧回路の剛性が、ばね剛性よりも高く見えることがある(すなわち、ここでは質量が支配的である)。しかしながら、圧力リップルが100Hzで出力されたときに固有共振が発生するように緩衝器ピストン146の質量mが選択される場合、油圧回路の剛性は、単なるばね剛性よりもはるかに柔らかい剛性であり得る。
【0056】
図5及び
図6に示す実施形態は1つ又は複数のコイルばねを含んでいるが、本開示はそのように限定されるものではない。例えば、図示の実施形態のコイルばねは、1つ又は複数の皿ばねに置き換えられ得る。
図7A~
図7Cに示すように、複数の皿ばねは、所望のばね特性に応じて、並列171で、直列172で、又は並列と直列との組み合わせ173で積層され得る。よって、本開示はいかなる種類のばね及び/又はばねの配置にも限定されないことを理解すべきである。
図8は、油圧システム340が油圧装置141を含み、且つ差動緩衝器345が緩衝器ピストン346を含む、そのような例示的な一実施形態を図示する。先の実施形態と同様に、差動緩衝器345は、緩衝器ピストンの相対向する表面に押し当てて配置された1つ又は複数のばね348a及び348bを含む。しかしながら、図示の実施形態では、ばねは、緩衝器ピストンのいずれか一方の側に並列構成で配置された4つの皿ばねに相当する。当然ながら、本開示はそのように限定されるものではないので、緩衝器ピストンに関連する異なる数及び配置の皿ばねも使用され得る。
【0057】
図9は、緩衝器ピストン446の両側に配置された皿ばね積層体の形態のばね448a及び448bによって生じる力にさらされるピストン446を備えた小型の差動緩衝器445の斜視断面図を図示している。
図10は、差動緩衝器445の一部分を覆う外部ハウジング560を備えた差動緩衝器445の正面断面図を図示している。差動緩衝器445は、内部ハウジング561の別個の第1の部分及び第2の部分に形成された1つ又は複数の開口部562を含む内部ハウジング561を含む。これらの開口部562は、それぞれ、第1の緩衝器室545a又は第2の緩衝器室545bのいずれかと流体連通し得る。したがって、別々の第1の流体容積563及び第2の流体容積564は、外部ハウジングと内部ハウジングとの間に形成され得る。第1の流体容積563及び第2の流体容積564は、内部ハウジング561と外部ハウジング560との間に配置された、図示のOリングなどの、1つ又は複数のシールによって互いに分離され得る。差動緩衝器445はまた、外部ハウジング560に対して又は差動緩衝器445の他の適切な部分に対して流体的に密閉される基部部分565を含み得る。図示の実施形態では、差動緩衝器445用のポートは、差動緩衝器445の基部部分565及び/又は外部ハウジング560に形成され得る。例えば、
図10に示すように、第1の緩衝器室545aと流体連通する第1のポート547aは、図示の中心支持軸などの、基部部分565に形成され、第1の緩衝器室545aと流体連通する別個のポート547bは、外部ハウジング560に形成される。したがって、流体は、第1の緩衝器室545aと、外部ハウジング560と内部ハウジング561との間に配置された対応する第1の容積563とを通って、第1のポートと第2のポートとの間を流れ得る。それに対応して、第3のポート547cもまた、第2の緩衝器室と流体連通するように基部部分565に形成され得、第4のポート547dは、流体が、第2の緩衝器室と、外部ハウジングと内部ハウジングとの間に配置された対応する第2の容積とを通って、第3のポートと第4のポートとの間を流れ得るように、外部ハウジング560に形成され得る。
【0058】
上記の実施形態は主に、流体が緩衝器室を直接通って流れる差動緩衝器を図示しているが、流体が差動緩衝器の緩衝器室を直接通って油圧負荷に流れない実施形態も考慮される。例えば、流体が主流路から差動緩衝器に流入し差動緩衝器から流出し得る、
図5に示すものと同様のT分岐接続が使用され得る。追加的に、2つ以上のポートが、外部ハウジング560に形成され、内部ハウジング561と外部ハウジング560との間に配置された同じ流体容積と流体連通する、
図10に示すものと同様の実施形態が使用され得る。そのような実施形態では、流体は、流体の接続容積を通って、外部ハウジング560に形成された2つのポート間を流れ得る。しかしながら、流体のその容積は、内部ハウジング561に形成された1つ又は複数の開口部を通して関連する緩衝器室と流体連通し得る。よって、ピストンは依然として、関連する油圧装置によって放出された流量脈動にさらされ得るが、油圧装置と油圧負荷との間に延びる流路は、差動緩衝器の緩衝器室を直接通過しない場合がある。したがって、本開示は任意の特定の構造に限定されるものではないので、本開示は、差動緩衝器に関連する、ポート、ハウジング、及び流体接続部の任意の数の異なる配置を含むように意図されていることを理解すべきである。
【0059】
図11A~
図11Cは、
図9~
図10に示す差動緩衝器と同様の差動緩衝器645の別の実施形態の3つの正面断面図を図示している。ここでもまた、差動緩衝器は、第1の緩衝器室645aと第2の緩衝器室645bとの間に配置された緩衝器ピストン646を含む。緩衝器ピストン646は、異なる図における異なる位置に図示されている。
図11Aは、緩衝器ピストン646の2つの面への圧力が等しいか又は実効的に等しい中立位置に緩衝器ピストン646が位置する差動緩衝器645を示しており、ピストンの両側に動作可能に結合された第1のばね648a及び第2のばね648bもまた、中立状態にあり得る。
図11Bは、第1の緩衝器室内の圧力が第2の緩衝器室に比べて上昇したことに起因して、緩衝器ピストン646が下方に移動し、第1の緩衝器室645a及び第1のばね648aを伸長させながら、第2の緩衝器室645b及び関連する第2のばね648bを圧縮することを示している。
図11Cは、第1の緩衝器室645aに比べて上昇した圧力が第2の緩衝器室645b内に存在し、緩衝器ピストン646を上方に逆方向に移動させ、第2の緩衝器室645b及び第2のばね648bを伸長させながら第1の緩衝器室645a及び第1のばね648aを圧縮する、緩衝器ピストン646前後の逆の圧力差を図示している。ここでもまた、ピストンの前後に加わる圧力差に起因する緩衝器ピストン646のこの相対移動によって、流体的に接続された油圧装置によって生成された流量及び/又は圧力脈動を緩和するのに差動緩衝器が役立つことが可能となる。
【0060】
図12は、本明細書に開示する差動緩衝器の様々な実施形態で使用され得る皿ばね積層体の態様を図示している。図示の実施形態では、皿ばね700は、皿ばねの第1の平面から反対の第2の平面に延びる1つ又は複数の貫通孔702を含み得る。中心軸が皿ばねの積層体を貫通して延びる実施形態では、これらの1つ又は複数の貫通孔は、皿ばねの積層体に形成された中心孔とは別個であり得る。理論に拘束されることを望むものではないが、皿ばねに形成されたこれらの1つ又は複数の貫通孔の存在は、互いに向けて圧縮される相対向する2つの皿ばね間の流体の閉じ込めを回避するのに役立つことがある。これは、このようなばね配置を含む差動緩衝器を通る流体の自由な流れを促進するのに役立つことがある。いくつかの実施形態では、皿ばねはまた、接触する皿ばねの隣り合う部分間の図示のさねはぎ配置などの、1つ又は複数の連結機構704を含み得る。これらの連結機構は、皿ばねの互いに対する横方向移動と回転移動の両方を防止するのに役立つことがあり、これにより、動作中の全体的な皿ばね積層体の安定性を向上させ得る。
【0061】
本教示を様々な実施形態及び例と併せて説明してきたが、本教示がそのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。むしろ、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替形態、修正形態、及び等価物を包含する。よって、前述の説明及び図面は、単なる例にすぎない。
【国際調査報告】