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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】接着剤組成物およびゴム補強材
(51)【国際特許分類】
   C09J 119/02 20060101AFI20230111BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230111BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 13/402 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 13/11 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 13/332 20060101ALI20230111BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 101/34 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C09J119/02
C09J175/04
C09J11/06
D06M15/564
D06M13/402
D06M13/395
D06M13/11
D06M13/332
B60C9/00 G
B60C9/00 C
B60C9/00 D
B60C1/00 C
D06M101:34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526746
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2021004416
(87)【国際公開番号】W WO2021206471
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0043565
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0043567
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0045708
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J040
4L033
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA32
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA37
3D131AA60
3D131BA18
3D131BC07
3D131BC36
3D131DA01
3D131LA28
4J040BA001
4J040CA011
4J040CA041
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4J040HC06
4J040HC12
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4J040LA01
4J040LA06
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4J040MB02
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4J040PA30
4L033AA08
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4L033AC11
4L033BA08
4L033BA48
4L033BA69
4L033BA72
4L033CA50
(57)【要約】
本出願は、(A)ラテックス、(B)ポリウレタン、(C)アミン系接着増進剤、および(G)水含有溶媒を含む接着剤組成物に関する。前記組成物は、環境にやさしく、火災発生の危険が少なく、接着力に優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラテックス、(B)ポリウレタン、(C)アミン系接着増進剤、および(G)水(water)含有溶媒を含み、
ウベローデ粘度計を用いて常温で測定された相対粘度が2.50~3.00の範囲を満足する、接着剤組成物。
【請求項2】
前記(C)アミン系接着増進剤は、脂肪酸(C)とアミン化合物(C)との反応物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸(C)は、炭素数が6~30の範囲の脂肪族鎖を有する飽和脂肪酸である、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記アミン化合物(C)は、炭素数が1~12のアルキレンジアミンである、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記(C)アミン系接着増進剤は、化学式1で表される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【化1】
前記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~30の範囲の脂肪族鎖基であり、Aは、炭素数1~12の範囲の2価の基である。
【請求項6】
(D)アミン系鎖延長剤をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記(C)アミン系接着増進剤の重量(W)は、前記(D)アミン系鎖延長剤の重量(W)より大きい、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記(C)アミン系接着増進剤の重量(W)と前記(D)アミン系鎖延長剤の重量(W)との間の重量比率(W/W)は、1.5~10の範囲である、請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
組成物の全体重量を基準として、1.0重量%以上の前記(C)アミン系接着増進剤を含む、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
組成物の全体重量を基準として40重量%以上の含有量の水を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
組成物の全体の重量を基準として、1.0~30重量%の範囲で前記(A)ラテックスを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記(B)ポリウレタンは、重量平均分子量(Mw)が250,000~350,000の範囲である、請求項1に記載のポリウレタンを含む接着剤組成物。
【請求項13】
組成物の全体の重量を基準として、0.5~9.0重量%の範囲で前記ポリウレタンを含む、請求項12に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
(E)エポキシ化合物をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
(F)イソシアネート化合物をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
繊維を含むローコード(raw cord)、および、前記ローコード上に形成されたコーティング層を含み、
前記コーティング層は、請求項1に記載の接着剤組成物から形成された、ゴム補強材。
【請求項17】
前記ローコードは、互いに異なる2種の下撚糸を上撚して形成されたハイブリッドコードである、請求項16に記載のゴム補強材。
【請求項18】
前記ハイブリッドコードは、アラミド下撚糸とナイロン下撚糸とを含む、請求項17に記載のゴム補強材。
【請求項19】
ローコード、前記ローコード上に形成された第1コーティング層、および、前記第1コーティング層上に形成され、請求項1に記載の接着剤組成物から形成された第2コーティング層を順次に含み、
前記第1コーティング層は、反応活性基付与成分としてエポキシおよびイソシアネートの中から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項16に記載のゴム補強材。
【請求項20】
請求項16に記載のゴム補強材を含むゴム複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年4月9日付の韓国特許出願第10-2020-0043567号および第10-2020-0043565号、並びに2021年4月8日付の韓国特許出願第10-2021-0045708号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、接着剤組成物およびゴム補強材に関する。具体的には、本出願は、タイヤなどといったゴム複合体に使用できる接着剤およびゴム補強材に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴム構造物の強度などを補強するために繊維補強材が使用される。例えば、ゴムタイヤには、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維やポリビニルアルコール繊維などが、補強材として使用できる。そして、繊維によってはゴムとの接着性が良くない場合もあるため、接着剤を繊維表面にコーティングした後、ゴムと繊維との接着性を補ったりもする。例えば、タイヤコード用ポリエステル繊維(ローコード、raw cord)とタイヤ用ゴムとの間の接着力を向上させるために、ポリエステル繊維に接着剤が塗布される。
【0004】
従来技術において、前記用途の接着剤には、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(Resorcinol-Formaldehyde:RF)またはこれに由来する成分が使用されることが一般的であった。しかし、フェノール類のレゾルシノール(Resorcinol)と、発癌物質として知られたホルムアルデヒド(Formaldehyde)とを含むRFは人体に有害であり、RFを含む接着剤の廃液については事後管理と後処理に関する追加の費用が発生したりもする。
【0005】
一方、接着剤組成物を繊維補強材上にコーティングする方式としては、浸漬(dipping)や噴射などが考慮されうる。前記方式が適用されたコードの製造過程において、接着剤組成物をなす各成分は、組成物に含まれる溶媒内で均等に混合され分散していなければならない。また、各成分が均等に混合され分散している組成物が、浸漬や噴射された後にも、繊維補強材(例:ローコード)の表面上に均一に適正量でコーティングされうることが重要である。接着剤組成物をなす成分同士の間で混合が十分に行われないか、溶媒の過剰使用によって組成物の流れ性が高すぎると、接着力が確保されないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一つの目的は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(Resorcinol-Formaldehyde、以下、「RF」)成分を含まない環境にやさしい接着剤組成物を提供することである。
【0007】
本出願の他の目的は、接着力に優れた接着剤組成物を提供することである。
【0008】
本出願のさらに他の目的は、コーティング工程性に優れた接着剤組成物を提供することである。
【0009】
本出願のさらに他の目的は、前記接着剤を用いて形成されたゴム複合体およびゴム補強材を提供することである。
【0010】
本出願の上記の目的およびその他の目的は、下記に詳細に説明される本出願によってすべて解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願によれば、(A)ラテックス、(B)ポリウレタン、(C)アミン系接着増進剤、および(D)水(water)含有溶媒を含み、所定の粘度を満足する接着剤組成物;前記接着剤組成物またはその硬化物と、繊維コード(cord)とを含むゴム補強材;および前記ゴム補強材を含むゴム複合体が提供される。
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態による接着剤およびこれを用いて製造されたゴム補強材などについて説明する。
【0013】
本出願に係る一例において、本出願は、接着剤組成物に関する。
【0014】
前記組成物は、接着剤組成物や組成物に含まれる個別の成分に対する溶媒または分散媒として、水(HO)を含むことができる。例えば、火災の危険、人体に対する有害性、および組成物の成分の分散性確保などを考慮して、本出願では、組成物内に過剰の水(例えば、全体の組成物中における固形分を除く水の含有量が約40重量%以上または50重量%以上)が使用できる。特に異なるように定義しない限り、本出願において、「固形分含有量」とは、組成物、または組成物に含まれる各成分に関する、水分または液体成分(例:溶媒)を蒸発させて残る有効成分(固体形態であってもよい)の含有量を意味することができる。水分または液体成分(例:溶媒)の蒸発のための条件は、特に制限されないが、例えば、約0.5~3時間にわたって70~100℃の範囲の加温(加熱)条件が適用可能である。
【0015】
これに関連して、本出願の発明者は、過剰の溶媒、例えば、40重量%以上、50重量%以上、または60重量%以上の含有量の水と、その他の含有量を占める固形分とを含むように、接着剤組成物が過剰の水または溶媒を含む場合には、接着剤組成物の粘度が低くなるに伴い十分な接着力を確保できなくなるという問題があることを確認して、本出願発明を完成するに至った。
【0016】
それによって、本出願による前記組成物は、(A)ラテックス、(B)ポリウレタン、(C)アミン系接着増進剤、および(D)水(water)含有溶媒を含み、ウベローデ粘度計(Ubbelohde viscometer)を用いて常温で測定された相対粘度(RV:relative viscosity)が2.50~3.00の範囲を満足する。
【0017】
本出願において、「常温」とは、特に減温または加温が行われない状態の温度であって、例えば、15~30℃の範囲の温度を意味することができる。具体的には、前記温度範囲内で、常温は、17℃以上、19℃以上、21℃以上、または23℃以上の温度であってもよく、そして、29℃以下または27℃以下の温度であってもよい。
【0018】
また、本出願において、特に他に言及しない以上、数値化された特性の評価が行われる温度は、常温であってもよい。
【0019】
前記「相対粘度」は、基準溶媒の粘度(特性)に対する組成物の粘度(特性)の比率を意味するもので、相対粘度の測定時に使用される基準の溶媒は、水(例:脱塩水(demineralized water)または純水)であってもよい。具体的には、前記相対粘度(RV)は、ウベローデ粘度計の所定の目盛区間を前記組成物が通過するまでにかかった時間(T)と、同じ大きさの目盛区間を水(例:脱塩水)が通過するまでにかかった時間(T)とを測定した後、TをTで割って計算される。同一の条件で同一の粘度計によって測定されたTとTによって計算される相対粘度は、無次元の定数として取り扱われる。より詳しくは、図1を参照して以下の実験例1で説明する。
【0020】
具体的には、前記組成物の相対粘度の下限は、例えば、2.51以上、2.52以上、2.53以上、2.54以上、2.55以上、2.56以上、2.57以上、2.58以上、2.59以上、2.60以上、2.61以上、2.62以上、2.63以上、2.64以上、2.65以上、2.66以上、2.67以上、2.68以上、2.69以上、または2.70以上であってもよい。そして、前記組成物の相対粘度の上限は、例えば、2.95以下または2.90以下であってもよく、より具体的には、2.89以下、2.88以下、2.87以下、2.86以下、2.85以下、2.84以下、2.83以下、2.82以下、2.81以下、2.80以下、2.79以下、2.78以下、2.77以下、2.76以下、2.75以下、2.74以下、2.73以下、2.72以下、または2.71以下であってもよい。
【0021】
相対粘度が前記範囲未満の場合には、組成物の製造と硬化過程で形成された低分子量ポリマーが被着物に転写されながら接着力が低下する問題があり、それによって、その用途に合った十分な物性(例:機械的強度など)が提供できないことがある。また、相対粘度が低い場合には、流れ性が相対的に大きいため、被着物上に十分なコーティング層を形成できないことがある。また、例えば、相対粘度が前記範囲を超える場合には、組成物の製造と硬化の過程で形成された高分子量ポリマー同士の間の凝集力が大きくなるに伴い、被着物上に接着剤が均一に分布(または塗布)しにくくなるので、接着力が低下するという問題がある。それによって、その用途に合った十分な物性(例:機械的強度など)が提供できないのでありうる。
【0022】
結果として、前記相対粘度の範囲を満足する接着剤組成物は、下記の実験例に示されるように、優れた接着力を提供し、適正水準のピックアップ率を確保できるようにし、接着剤の製造と適用に関する工程性と生産性を改善する。
【0023】
下記に説明される組成物のすべての成分は、前記全体組成物の粘度を満足できるように本出願に反しない含有量の範囲内で選択されて使用可能である。
【0024】
(A)ラテックス成分
(A)ラテックスは、組成物の用途を考慮して使用される成分である。具体的には、前記接着剤組成物は、ゴム複合体やゴム補強材といった被着物に使用できるが、ラテックスを使用する場合、被着物との親和性、混和性、または接着力を確保するのに有利であり得る。場合によっては、接着剤組成物に含まれるラテックス成分は、被着物が有するゴム成分と同一に選択されてもよい。
【0025】
先に説明された全体の組成物の粘度を満足できるようにして、本出願に反していなければ、前記組成物に使用できるラテックスの種類は特に制限されない。
【0026】
一つの例において、前記ラテックスとしては、天然ゴムラテックス、ビニル-ピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス(Vinyl-Pyridine-Styrene-Butadiene-copolymer Latex)のようなビニル-ピリジンラテックス(以下、「VPラテックス」)、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル系共重合体ラテックス、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスまたはこれらの変性ラテックスなどが使用できる。変性ラテックスに関連して、ラテックスを変性する方法やラテックスの具体的な種類は制限されない。例えば、ビニル-ピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体をカルボキシル基などで変性した変性ラテックスが使用できる。
【0027】
下記に説明される全体の組成物の粘度を満足できるようにして、本出願に反していなければ、市販中のラテックスも使用可能である。例えば、市販中のVPラテックスとして、Denaka社のLM-60、APCOTEX社のVP-150、Nippon A&L社のVB-1099、Closlen社の5218、またはCloslen社の0653などが使用できる。
【0028】
一つの例において、上述したラテックスのうちの1以上を含むラテックス成分が接着剤組成物に使用できる。
【0029】
一つの例において、前記ラテックスは、溶媒(水または有機溶媒)に分散した状態で、他の組成物の構成成分と混合される。この場合、先に説明された全体組成物の粘度を満足できる範囲内で、ラテックス成分に使用される溶媒の含有量と種類が決定可能である。
【0030】
一つの例において、前記接着剤組成物は、組成物の全体含有量を基準として、前記(A)ラテックスを1.0重量%以上、例えば、1.5重量%以上含むことができる。前記含有量は、組成物中にラテックス固形分の占める含有量を意味することができる。具体的には、前記(A)ラテックスの含有量の下限は、例えば、2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上、6.0重量%以上、7.0重量%以上、8.0重量%以上、9.0重量%以上、10.0重量%以上、11.0重量%以上、12.0重量%以上、13.0重量%以上、14.0重量%以上、または15.0重量%以上であってもよく、その上限は、例えば、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、または15重量%以下であってもよい。前記範囲を満足する場合、本件の接着剤が使用されるゴム含有被着物に対する親和性、混和性、および/または接着力を確保するのに有利であり得る。
【0031】
(B)ポリウレタン(polyurethane dispersion resin、PUD)成分
ポリウレタンは、以下に説明されるアミン系化合物を保護するかキャプチャ(capture)して、接着組成物から形成された接着層(またはコーティング層)が安定的に硬化できるようにする。また、ポリウレタンは、ゴムまたはラテックス成分との親和性に優れているため、ゴムを含む被着物に接着剤組成物が安定的にくっ付くのに寄与し、結果的に、被着剤に対する優れた接着力(特に耐熱接着力)を確保できるようにする。
【0032】
一つの例において、前記ポリウレタン成分としては、水(HO)に分散した水分散ポリウレタンが使用できる。水分散ポリウレタンを使用する場合には、ポリウレタンが有する特有の耐摩耗性と弾性も確保できる。先に説明された組成物全体の粘度を満足できるようにして、本出願に反していなければ、水分散ポリウレタン成分に含まれる水の含有量は特に制限されない。
【0033】
例えば、水分散ポリウレタン成分に含まれる水の含有量は(水分散ポリウレタンの単一成分の重量を100重量%とするとき)、40重量%~80重量%の範囲であってもよく、その他の含有量はポリウレタンが占めることができる。場合によっては、水分散ポリウレタンには、公知の微量の添加剤が約10重量%以下、約5重量%以下、または約1重量%以下で少量含まれてもよい。
【0034】
先に説明された組成物全体の粘度を満足できるようにして、本出願に反していなければ、ポリウレタンの種類は特に制限されない。
【0035】
例えば、ポリカーボネート系ウレタン、ポリエステル系ウレタン、ポリアクリル系ウレタン、ポリテトラメチレン系ウレタン、ポリカプロラクトン系ウレタン、ポリプロピレン系ウレタンまたはポリエチレン系ウレタンなどが使用できる。また、前記挙げられたもののうちの1つ以上が使用されてもよい。
【0036】
一つの例において、前記ポリウレタンの分子量は、250,000~350,000の範囲であってもよい。特に他に定めない限り、本明細書において、「分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を用いて測定された重量平均分子量(Mw:weight-average molecular weight)であってもよい。
【0037】
具体的には、前記ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)の下限は、例えば、255,000以上、260,000以上、265,000以上、270,000以上、275,000以上、280,000以上、285,000以上、290,000以上、295,000以上、300,000以上、または305,000以上であってもよい。そして、前記ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)の上限は、例えば、345,000以下、340,000以下、335,000以下、330,000以下、325,000以下、320,000以下、315,000以下、310,000以下、305,000以下、または300,000以下であってもよい。前記分子量範囲を満足する場合、先に説明された接着剤組成物全体の粘度を確保するのに有利であり、その結果、接着剤の接着力と、ゴム補強材などの耐疲労度、耐摩耗性および弾性を確保できる。
【0038】
前記重量平均分子量の範囲を満足すれば、水分散ポリウレタンの製造方法は特に制限されない。例えば、下記の製造例1のように、ポリオール、ジオールおよびイソシアネート由来の単位を有するプレポリマーを中和剤で中和し、中和されたプレポリマーを蒸留水と撹拌して水分散を進行させた後、鎖延長剤と反応させる方式で水分散ポリウレタンが製造できる。
【0039】
先に説明したように、前記ポリウレタンの重量平均分子量の範囲を満足する場合であれば、ウレタンを形成するのに使用されるポリオール、ジオール、およびイソシアネートの種類は特に限定されない。
【0040】
例えば、1,6-HDまたは1,4-EGなどのようなジオールが使用可能であり、ポリオールとしては、ジオール以外のものでポリエステル系ポリオールやポリエーテル系ポリオールが使用可能である。また、イソシアネートとしては、ジイソシアネートやポリイソシアネートが使用可能であり、これらは、脂肪族または芳香族イソシアネートであってもよい。
【0041】
一つの例において、前記ポリウレタンは、重量平均分子量(Mw)が5,000以下のポリエステル系ポリオール由来の単位を有することができる。具体的には、前記ポリウレタンの形成に使用されるポリエステル系ポリオールの重量平均分子量の上限は、例えば、4,500以下、4,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、または2,000以下であってもよく、その下限は、例えば、500以上、1,000以上、または1,500以上であってもよい。前記範囲を満足する場合、先に説明された範囲でポリウレタンの重量平均分子量を調節し、ポリウレタンの使用による効果を得るのに有利であり得る。
【0042】
一つの例において、前記接着剤組成物において、前記(B)ポリウレタンは、組成物の全体の含有量を基準として、0.5重量%以上含まれる。前記含有量は、組成物内でポリウレタン固形分の占める含有量を意味することができる。具体的には、前記ポリウレタンの含有量の下限は、例えば、1.0重量%以上、1.5重量%以上、または2.0重量%以上であってもよく、その上限は、例えば、9.0重量%以下、例えば、9.0重量%未満、8.5重量%以下、8.0重量%以下、7.5重量%以下、7.0重量%以下、6.5重量%以下、6.0重量%以下、5.5重量%以下、5.0重量%以下、4.5重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、または2.0重量%以下であってもよい。
【0043】
一つの例において、組成物全体の粘度範囲を考慮するとき、前記組成物内で上述した分子量を満足するポリウレタンの固形分含有量は、1.0重量%~5.0重量%の範囲であってもよい。
【0044】
前記含有量の範囲を満足する場合、当該構成の使用による効果を十分に発揮することができる。例えば、ポリウレタンの含有量が前記範囲未満の場合、ポリウレタンの使用による効果がわずかであり、粘度が低くなりうる。また、ポリウレタンの含有量が前記範囲を超過する場合には、接着剤の粘度が過度に増加するのに伴い、接着力が低下しうる。
【0045】
(C)アミン系接着増進剤成分
アミン系接着増進剤(C)は、組成物の硬化に関与して被着剤上に安定したコーティング層を形成するだけでなく、組成物内で水が過剰含まれて現れる接着力低下の問題を改善することができる。
【0046】
具体的には、本出願では、(B)水分散ポリウレタンと(G)過剰の溶媒の使用による粘度低下を考慮して、長鎖構造を有するアミン系接着増進剤を含む。長鎖構造を有するアミン系接着増進剤は、溶媒(例:水)を過剰含む組成物の製造と硬化の過程で(アミン系接着増進剤を使用しない場合に比べて)分子量を大きく形成できるため、分子の凝集力を適正水準で確保できるようにする。その結果、被着剤に安定した接着剤コーティング層が形成されうる。その結果、優れた接着力とその用途に合った十分な物性(例:機械的強度など)が提供されうる。
【0047】
一つの例において、前記アミン系接着増進剤(C)としては、脂肪酸アミド(fatty acid amide)が使用される。特に制限されないが、前記脂肪酸アミドは、脂肪酸(C)とアミン化合物(C)との反応(例:脱水縮合)によって形成された反応物であってもよい。
【0048】
アミン系接着増進剤(C)に関連して、「脂肪酸」とは、飽和もしくは不飽和の長い脂肪族鎖を有するカルボン酸を意味することができる。ここで、脂肪酸が有する脂肪族鎖の炭素数は、6~30の範囲であってもよい。具体的には、脂肪族鎖の炭素数は、例えば、8以上、10以上、12以上、または14以上であってもよく、そして、28以下、26以下、24以下、22以下、または20以下であってもよい。脂肪酸が有する長鎖は、アミン系接着増進剤に長鎖構造を付与して、優れた接着力と物性を提供するのに寄与する。
【0049】
一つの例において、前記脂肪酸(C)は、脂肪族鎖内に二重結合を有しない飽和脂肪酸であってもよい。上述したように、鎖の炭素数が6~30の範囲であれば特に制限されないが、使用可能な飽和脂肪酸としては、カプリル酸(CH(CHCOOH)、カプリン酸(CH(CHCOOH)、ラウリン酸(CH(CH10COOH)、ミリスチン酸(CH(CH12COOH)、パルミチン酸(CH(CH14COOH)、ステアリン酸(CH(CH16COOH)、アラキジン酸(CH(CH18COOH;イコサン酸)、ベヘン酸(CH(CH20COOH;docosanoic acid)、リグノセリン酸(CH(CH22COOH;テトラコサン酸)またはセロチン酸(CH(CH24COOH;ヘキサコサン酸)などが、例として挙げられる。また、前記挙げられた脂肪酸のうちの1以上が、アミン系接着増進剤の形成に共に使用されてもよい。
【0050】
一つの例において、脂肪酸が有する長鎖構造を考慮するとき、ミリスチン酸(CH(CH12COOH)、パルミチン酸(CH(CH14COOH)、ステアリン酸(CH(CH16COOH)やアラキジン酸(CH(CH18COOH)が使用できる。また、前記挙げられた脂肪酸のうちの1以上がアミン系接着増進剤の形成に共に使用されてもよい。
【0051】
本出願において、アミン系接着増進剤(C)に関連して、「アミン化合物」とは、アンモニアだけでなく、前記アンモニアの水素原子が有機基で置換された化合物を意味することができる。有機基の種類は特に制限されない。
【0052】
一つの例において、アミン系接着増進剤(C)に関連して、「アミン化合物」は、ジアミンであってもよい。ジアミンが使用される場合、前記アミン系接着増進剤(C)は、脂肪酸ビスアミドであってもよい。
【0053】
一つの例において、前記ジアミンは、炭素数が1~12のアルキレンジアミンであってもよい。特に制限されるわけではないが、アルキレンジアミンとしては、例えば、エチレンジアミンが使用できる。
【0054】
一つの例において、前記アミン系接着増進剤は、下記の化学式1で表される。
【0055】
【化1】
【0056】
前記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~30の範囲の脂肪族鎖基であってもよく、Aは、炭素数1~12の範囲の2価の基であってもよい。ここで、前記RとRは、上述した脂肪酸(C)由来の単位であり、Aは、上述したアミン化合物(C)由来の単位であってもよい。
【0057】
一つの例において、前記化学式1のRおよびRは、同一であってもよい。もう一つの例において、前記化学式1のRおよびRは、異なっていてもよい。
【0058】
一つの例において、前記化学式1のAは、炭素数1~8、2~6または2~4の炭素数を有するアルキレン基であってもよい。
【0059】
一つの例において、前記アミン系接着増進剤は、固体状態または液体状態で存在することができる。前記アミン系接着増進剤が固体状態の場合、溶媒(水または有機溶媒)に分散した状態で、他の組成物の構成成分と混合される。この場合、先に説明された組成物全体の粘度を満足できる範囲内で、アミン系接着増進剤成分に使用される溶媒の含有量と種類が決定可能である。
【0060】
一つの例において、前記接着剤組成物は、前記(C)アミン系接着増進剤と、後述する(D)アミン系鎖延長剤とを所定の含有量で含むことができる。例えば、前記接着剤組成物に含まれる前記(C)アミン系接着増進剤の重量(W)は、前記(D)アミン系鎖延長剤の重量(W)より大きいのでありうる。前記含有量(W、W)は、(C)アミン系接着増進剤と(D)アミン系鎖延長剤がそれぞれ占める固形分含有量を意味することができる。
【0061】
また、一つの例において、接着剤組成物内で、前記(C)アミン系接着増進剤の重量(W)と、前記(C)アミン系鎖延長剤の重量(W)との比率(W/W)は、1.5~10.0の範囲であってもよい。具体的には、前記比率(W/W)は、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、または5.0以上、5.5以上、6.0以上であってもよく、そして、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下であってもよい。前記比率(W/W)の範囲を満足できない場合、先に説明された組成物の粘度範囲を満足できないため、接着力が低下するという問題がある。
【0062】
一つの例において、前記比率(W/W)は、3.0~5.0の範囲であってもよい。具体的には、前記範囲内でその比率(W/W)は、3.5以上、4.0以上、または4.5以上であってもよい。以下の実験から確認されるように、当該範囲を満足する場合に、より優れた接着力をタイヤコードに提供することができる。
【0063】
一つの例において、前記接着剤組成物は、組成物の全体の含有量を基準として、前記(C)アミン系接着増進剤を1.0重量%以上含むことができる。前記含有量は、(C)アミン系接着増進剤の占める固形分含有量を意味することができる。具体的には、(C)アミン系接着増進剤の含有量の下限は、例えば、1.0重量%超過、より具体的には、1.5重量%以上または2.0重量%以上であってもよく、その上限は、例えば、5.0重量%以下、4.5重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、または2.0重量%以下であってもよい。前記含有量の範囲を満足する場合、当該構成の使用による効果を十分に発揮することができる。
【0064】
(D)アミン系鎖延長剤成分
アミン系鎖延長剤(D)は、先に説明された(C)アミン系接着増進剤に該当しないアミン系化合物を意味することができる。つまり、(D)アミン系鎖延長剤と(C)アミン系接着増進剤とは、互いに構造が異なる。例えば、アミン系鎖延長剤は、上述した脂肪酸由来の鎖構造を有しない1級、2級または3級アミンを包括する意味で使用できる。
【0065】
アミン系鎖延長剤は、組成物の硬化に関与して被着剤上に安定したコーティング層を形成できるようにする。その機能を考慮して、前記(D)アミン系鎖延長剤は、アミン系硬化剤と称される。あるいは、(C)アミン系接着増進剤を第1アミン化合物と称し、(D)アミン系鎖延長剤を第2アミン化合物と称してもよい。
【0066】
前記(C)アミン系接着増進剤と異なっていれば、(D)アミン系鎖延長剤の種類は特に制限されない。例えば、脂肪族アミン、脂環式アミンまたは芳香族アミンなどが使用できる。
【0067】
一つの例において、前記(D)アミン系鎖延長剤としては、市販品が使用できる。具体的には、DAEJUNG社のピペラジン(Piperazine)、KUKDO化学社のG640、ハンツマン社のHK511などが使用できる。
【0068】
一つの例において、前記接着剤組成物は、上述したように、前記(D)アミン系鎖延長剤の重量が前記(C)アミン系接着増進剤の重量より小さいように、(D)アミン系鎖延長剤を含むことができる。
【0069】
一つの例において、前記接着剤組成物は、上述したように、前記(C)アミン系接着増進剤と(D)アミン系鎖延長剤とを所定の重量比率(W/W)で含むことができる。
【0070】
一つの例において、前記接着剤組成物は、組成物の全体含有量を基準として、前記(D)アミン系鎖延長剤を3.0重量%以下で含むことができる。前記含有量は、(D)アミン系鎖延長剤の占める固形分含有量を意味することができる。具体的には、(D)アミン系鎖延長剤の含有量の上限は、例えば、2.5重量%以下、または2.0重量%以下、または1.0重量%以下であってもよい。そして、その含有量の下限は、例えば、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、または0.5重量%以上であってもよい。上述したアミン系鎖延長剤の含有量の範囲を満足する場合、当該構成の使用による効果を十分に発揮することができる。例えば、(D)アミン系鎖延長剤の含有量が前記範囲未満の場合には、組成物の硬化が十分でなく、前記範囲を超える場合には、過度な硬化で接着力が低下しうる。
【0071】
一つの例において、全体の組成物の含有量を基準とするとき、前記(C)アミン系接着増進剤の重量(W)と、(D)アミン系鎖延長剤の重量(W)とを合わせた含有量は、1.0重量%以上、具体的には、1.0重量%超過、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、3.5重量%以上、4.0重量%以上、4.5重量%以上、または5.0重量%以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、8重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、5.0重量%以下、より具体的には、4.5重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、または1.5重量%以下であってもよい。上述した含有量の範囲を満足する場合、前記(C)アミン系接着増進剤と(D)アミン系鎖延長剤の併用による効果を十分に発揮することができる。
【0072】
(E)エポキシ成分
一つの例において、前記接着剤組成物は、(E)エポキシ化合物をさらに含むことができる。エポキシ化合物は、一種の硬化剤として機能して、接着剤に対する熱処理時に3次元網目構造を形成し、接着剤組成物から形成されたコーティング層に、接着力と層の安定性を付与する。
【0073】
上述した全体組成物の粘度範囲を満足することを前提として、接着剤組成物に含まれるエポキシ化合物の種類は特に制限されない。例えば、ジエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオール-ジグリシジルエーテル、グリセロール-ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン-ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール-ポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトール-ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール-ポリグリシジルエーテル、ソルビトール-ポリグリシジルエーテルなどといったグリシジルエーテル系化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などといったノボラック型エポキシ樹脂;およびビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などといったビスフェノール型エポキシ樹脂などがエポキシ化合物として使用できる。
【0074】
また、上述した全体組成物の粘度範囲を満足することを前提として、前記接着剤組成物には、公知または市販のエポキシ樹脂が使用できる。例えば、エポキシ樹脂としては、NAGASE社のEX614B、Kolon社のKETL6000、Ipox chemical社のCL16またはRaschig社のGE500などが使用できる。
【0075】
一つの例において、エポキシ樹脂の当量(Epoxy Equivalent Weight、g/eq)は、120~300g/eqの範囲であってもよい。エポキシ樹脂の当量が120未満の場合、エポキシ樹脂の重合単位が小さくて網目構造を形成することが難しいことがある。また、エポキシ樹脂の当量が300超過の場合には、単位分子あたりエポキシの個数が相対的に不足して接着力が低下しうる。
【0076】
一つの例において、前記接着剤組成物は、組成物の全体の含有量を基準として、前記(E)エポキシ化合物を0.5重量%以上含むことができる。前記含有量は、(E)エポキシ化合物が組成物内に占める固形分含有量を意味することができる。具体的には、(E)エポキシ化合物の含有量の下限は、例えば、1.0重量%以上、2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、または5.0重量%以上であってもよい。また、その含有量の上限は、例えば、10重量%以下、具体的には5.0重量%以下、4.0重量%以下、3.0重量%以下、2.0重量%以下、または1.5重量%以下であってもよい。
【0077】
上述したエポキシ化合物の含有量の範囲を満足する場合、当該構成の使用による効果を十分に発揮することができる。例えば、前記範囲を超えるエポキシ化合物が使用されると、組成物の過度な硬化で接着力が低下しうる。また、前記範囲未満のエポキシ化合物が使用されると、エポキシ化合物の使用による効果を得にくい。
【0078】
(F)イソシアネート成分
一つの例において、前記接着剤組成物は、(F)イソシアネートをさらに含むことができる。イソシアネートは、一種の架橋剤として機能して、接着剤に対する熱処理時に3次元網目構造を形成して、接着剤組成物から形成されたコーティング層に、接着力と層の安定性を付与する。
【0079】
接着剤組成物に含まれるイソシアネートの種類は、特に制限されないが、上述した全体組成物の粘度範囲を考慮して選択可能である。
【0080】
例えば、前記イソシアネートとしては、芳香族基を含む化合物、つまり、芳香族イソシアネートが使用できる。芳香族ポリイソシアネートの場合、非芳香族ポリイソシアネートと比較する時、高い反応速度を確保できるため、水系組成物の低い粘度を高めるのに有利であり得る。
【0081】
一つの例において、イソシアネート化合物が含む芳香族基は、フェニル基であってもよく、そのような芳香族基を含むイソシアネートとしては、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルポリイソシアネート、またはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが使用できる。
【0082】
一つの例において、前記イソシアネート化合物は、その末端がブロッキングされたもの(Blocked isocyanate)であってもよい。ブロッキングされたイソシアネート化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物に公知のブロッキング剤を付加する反応によって製造できる。使用可能なブロッキング剤としては、例えば、フェノール、チオフェノール、クロロフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p-sec-ブチルフェノール、ptert-ブチルフェノール、p-sec-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノールなどのフェノール類;イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの第2級または第3級のアルコール;ジフェニルアミン、キシリジンなどの芳香族第2級アミン類;フタル酸イミド類;δ-バレロラクタムなどのラクタム類;ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステルなどの活性メチレン化合物;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;3-ヒドロキシピリジンなどの塩基性窒素化合物、酸性亜硫酸ソーダなどが使用できる。
【0083】
一つの例において、上述した全体組成物の粘度範囲を満足することを前提として、商業的に市販の水分散ブロックイソシアネート(Blocked Isocyanate)が使用できる。例えば、EMS社のIL-6またはMEISEI Chemical社のDM-6500などが、本発明の一実施例によるイソシアネートとして使用できる。
【0084】
一つの例において、前記接着剤組成物は、組成物の全体含有量を基準として、前記(F)イソシアネートを1重量%以上含むことができる。前記含有量は、(F)イソシアネートが組成物内に占める固形分含有量を意味することができる。具体的には、(F)イソシアネートの含有量の下限は、例えば、2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、または5.0重量%以上であってもよい。また、その含有量の上限は、例えば、10重量%以下、9.0重量%以下、8.0重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、または5.0重量%以下であってもよい。
【0085】
上述したイソシアネートの含有量の範囲を満足する場合、当該構成の使用による効果を十分に発揮することができる。例えば、前記範囲を超えるイソシアネートが使用されると、過度な架橋によって接着剤コーティング層を有する補強材の疲労度が増加し、物性が低下しうる。また、前記範囲未満のイソシアネートが使用されると、架橋が十分に起こらないため、接着層の物性が低下しうる。
【0086】
一つの例において、(E)エポキシ化合物が共に使用される場合、(F)イソシアネート化合物は、エポキシ化合物とイソシアネート化合物とが4:1~1:4の重量比となるように使用できる。もう一つの例において、前記含有量の範囲を満足することを前提として、全体組成物内において(F)イソシアネートの重量は、(E)エポキシ化合物の重量より大きい。このような含有量を満足する場合、十分な架橋と適正水準の硬化が行われる。
【0087】
(G)溶媒
本出願において、溶媒成分は、上述した(A)~(F)および後述する(H)成分のように、固形分として含有量が測定可能である成分を除いた成分を意味することができる。例えば、前記溶媒成分は、非固形分成分と称されうる。
【0088】
本出願の接着剤組成物は、溶媒成分(G)として、水(HO)を含む。例えば、本出願では、人体に対する有害性と引火の危険性を考慮して、有機溶媒(例:トルエンやエタノールなど)を使用しないか、少量の有機溶媒と共に過剰の水を溶媒として使用することができる。
【0089】
一つの例において、前記接着剤組成物は、粘度が測定される組成物の全体重量を基準として、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、または80重量%以上であり、そして、90重量%以下の含有量で溶媒成分を含むことができるが、前記溶媒は、水であってもよい。
【0090】
他の例において、前記溶媒含有量の過剰または大部分を水が占めることができる。例えば、組成物に含まれる溶媒成分中の過剰(例:約40重量%以上)が水であってもよく、溶媒中に水を除いた残りの残留含有量(例:30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、または5重量%以下)を有機溶媒などが占めることができる。
【0091】
つまり、本出願の具体例によれば、接着剤組成物は、水系組成物または水性組成物であると考えられる。
【0092】
一つの例において、接着剤組成物において溶媒として使用される水は、脱塩水(または純水、Demineralized water)であってもよい。
【0093】
一つの例において、粘度が測定される組成物の全体重量を基準として、前記水の含有量は、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、または80重量%以上であってもよい。そして、前記水含有量の上限は、例えば、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、または60重量%以下であってもよい。
【0094】
一つの例において、前記全体組成物中の水の含有量は、溶媒として混合される水の含有量を意味するものであってもよい。
【0095】
もう一つの例において、前記全体組成物中の水の含有量は、溶媒として混合される水の含有量だけでなく、例えば、(B)成分にてポリウレタンを分散させるのに使用されたように、他の構成成分に使用されていた溶媒(例:水またはその他少量の有機溶媒など)の含有量までもが含まれたものであってもよい。
【0096】
前記溶媒の含有量が前記範囲未満の場合、組成物を形成する各成分の分散性と混和程度が劣化し、コーティング作業性が悪くなり、被着剤上に形成された接着層が有する接着力が低下することがある。また、前記溶媒の含有量が前記範囲を超える場合には、被着剤上に接着層の形成が容易でなく、ゴム補強材やゴム複合体で要求される物性を十分に発揮できず、乾燥に長時間がかかるというように、工程性が良くなく、生産費用が増加する。
【0097】
上述したように、本出願では、前記含有量の溶媒(G)に、溶媒以外の他の成分(例:(A)~(F)成分および/または(H)成分)が混合されて組成物を構成する。溶媒以外の他の成分の含有量は、各成分の固形分含有量であってもよい。例えば、前記組成物は、60~85重量%の溶媒と、15~40重量%の固形分とを含むことができる。
【0098】
(H)その他の成分
本出願の接着剤組成物は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)またはこれに由来する成分を含まない。つまり、本出願の組成物は、つまり、RF-フリー(free)組成物でありうる。それによって、RF成分を使用していた従来技術に比べて人体に有害でなく、環境にやさしい接着剤組成物が提供される。また、このような接着剤組成物の使用は、事後管理と後処理の費用を節減するという利点を提供する。
【0099】
それ以外には、上述した本出願に反しないことを前提として、公知の添加剤などを少量の範囲で含むことができる。
【0100】
上述したように、本出願の組成物は、(A)~(D)および(G)成分の混合物、またはこれらに対して(E)および/または(F)が追加混合された混合物であってもよい。前記成分が混合された組成物は、上述した固形分含有量で各成分を含むことができる。これら組成物の用途は、コーティングまたは接着用途であってもよい。
【0101】
本出願に係る他の一例において、本出願は、ゴム補強材に関する。ゴム補強材は、例えば、ベース基材上に上述した接着剤がコーティングされたタイヤコードであってもよい。前記ベース基材は、繊維成分を含むローコード(raw cord)であってもよい。
【0102】
具体的には、前記タイヤコードは、ローコード(raw cord);および前記ローコード上に形成されたコーティング層を含むことができる。前記コーティング層は、上述した接着剤組成物から形成されたコーティング層であるか、これを含むものであって、前記ローコードを囲む形状にコーティングされうる。
【0103】
前記ローコードに含まれる繊維は、特に制限されないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維またはガラス繊維であってもよい。
【0104】
一つの例において、前記ローコードは、2~3本の繊維が撚られて形成された2プライまたは3プライコードであってもよい。
【0105】
一つの例において、前記ローコードは、ハイブリッドコードであってもよい。例えば、前記ローコードは、アラミド下撚糸とナイロン下撚糸とを含むように、互いに異なる種類の繊維を有する下撚糸を上撚して形成されたハイブリッドコードであってもよい。
【0106】
互いに異なる種類の下撚糸が上撚されて形成されたハイブリッドコードの場合、下撚糸同士の間の物性(例:モジュラスなど)の差に起因して、耐疲労特性が低くなりうるのであり、それによってタイヤの安定性が良くないのでありうる。しかし、上述した接着剤組成物は、被着剤であるハイブリッドローコード上で適正なコーティング層を形成するだけでなく、被着剤であるハイブリッドローコードと、これに隣接するタイヤ構成との間に優れた接着力を付与するため、ハイブリッドコードの使用によるタイヤの耐疲労特性低下の問題を、ある程度改善できることが期待される。
【0107】
一つの例において、前記ローコードを形成するのに使用される繊維糸条の撚り数は、例えば、200TPM(twist per meter)以上、250TPM以上、300TPM以上、350TPM以上、400TPM以上、450TPM以上、500TPM以上、または550TPM以上であってもよい。また、前記撚り数の上限は、例えば、800TPM以下、750TPM以下、700TPM以下、650TPM以下、600TPM以下、550TPM以下、500TPM以下、450TPM以下、または400TPM以下であってもよい。
【0108】
一つの例において、前記コーティング層は、上述した接着剤組成物から形成されたコーティング層であるか、これを含むものであってもよい。具体的には、前記タイヤコードは、ローコード上に前記接着剤組成物をコーティングして形成されたものであってもよい。接着剤組成物をコーティングする方式は特に制限されない。例えば、公知のディッピングまたは噴射方式によってコーティングが行われる。
【0109】
一つの例において、前記タイヤコードが含むコーティング層は、第1コーティング層;および前記第1コーティング層上に形成された第2コーティング層を含むことができる。具体的には、前記タイヤコードは、ローコード、第1コーティング層、および第2コーティング層を順次に含むことができる(図2参照)。
【0110】
特に制限されないが、第1コーティング層と第2コーティング層は、視認可能な境界を有することができる。
【0111】
一つの例において、前記第1コーティング層は、第2コーティング層と同一の成分を含むことができる。
【0112】
一つの例において、前記第1コーティング層は、第2コーティング層とは異なる成分を含むことができる。具体的には、第1コーティング層は、反応活性基付与成分を含む第1コーティング層形成組成物(第1コーティング液)に、前記ローコードをディッピングして形成されたものであってもよい。つまり、第1コーティング層は、前記ローコードまたはその表面を囲むように形成される。第1コーティング層に使用される反応活性基付与成分の種類は特に制限されないが、例えば、第1コーティング液は、エポキシおよびイソシアネートの中から選択される1つ以上の化合物を含むことができる。前記第1コーティング層形成組成物(第1コーティング液)が含む溶媒成分は、特に制限されないが、第2コーティング層との混和性などを考慮するとき、水(例:脱塩水)が使用できる。そして、第2コーティング層は、第1コーティング層が表面に形成されたタイヤコード(またはタイヤコード前駆体)を、第2コーティング層形成組成物(第2コーティング液)にディッピングして形成されたもので、第2コーティング層形成組成物(第2コーティング液)は、上述した粘度を満足する接着剤組成物と同一のものでありうる。
【0113】
一つの例において、前記第1コーティング液は、イソシアネート化合物およびエポキシ化合物を含むことができる。この場合、十分な架橋と適正水準の硬化が行われるように、エポキシ化合物とイソシアネート化合物は、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2の重量比で使用できる。
【0114】
もう一つの例において、前記含有量の範囲を満足することを前提として、全体組成物内においてイソシアネート化合物の重量は、エポキシ化合物の重量より大きい。
【0115】
本出願に係る他の一例において、本出願は、ゴム補強材の製造方法に関する。前記ゴム補強材の製造方法は、ゴム補強材用ベース基材上にコーティング液を塗布後、乾燥して、コーティング層を形成する段階を含む。
【0116】
前記コーティング液をベース基材上に塗布する方式は特に制限されないが、例えば、噴射または浸漬であってもよく、好ましくは、浸漬であってもよい。
【0117】
一つの例において、前記ゴム補強材は、タイヤコードであってもよい。
【0118】
一つの例において、前記ベース基材は、繊維基材、具体的には、ローコード(raw cord)であってもよい。ローコードの形成材料などに関する説明は上述した通りである。
【0119】
一つの例において、前記コーティング液は、上述した接着剤組成物であってもよい。
【0120】
一つの例において、前記方法は、ゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング液を塗布した後、乾燥して、ベース基材上に第1コーティング層を形成する段階;および、前記第1コーティング層上に第2コーティング液を塗布した後、乾燥して、第1コーティング層上に第2コーティング層を形成する段階を含むことができる。
【0121】
前記第1コーティング液をベース基材上に塗布するか、第1コーティング層上に第2コーティング液を塗布する方式は特に制限されないが、例えば、噴射または浸漬であってもよく、好ましくは、浸漬であってもよい。
【0122】
一つの例において、前記第1コーティング液および第2コーティング液の成分は、同一または異なっていてもよい。
【0123】
例えば、第1コーティング液は、繊維基材などに反応性基を付与するために、エポキシ化合物とイソシアネート化合物とを含むことができる。ここで、十分な架橋と適正水準の硬化が行われるように、エポキシ化合物とイソシアネート化合物は、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2の重量比で使用できる。
【0124】
一つの例において、前記第1コーティング液は、溶媒を含むことができる。つまり、第1コーティング液は、エポキシ化合物、イソシアネート化合物および溶媒を含むことができる。
【0125】
溶媒が不足した場合、浸漬による1次コーティングが円滑に行われず、溶媒の含有量が多すぎる場合、ゴム補強用ベース基材に反応性基が十分に付与されない。このような点を考慮するとき、第1コーティング液の全体重量に対して、溶媒は94~99重量%の含有量を有し、エポキシ化合物とイソシアネート化合物との混合物は1~6重量%の含有量を有する。つまり、第1コーティング液は、全体重量に対してエポキシ化合物とイソシアネート化合物とからなる混合物1~6重量%および溶媒94~99重量%を含む。特に制限されないが、第1コーティング液に含まれるかまたは使用できる溶媒は、水であってもよい。
【0126】
一つの例において、ゴム補強材用ベース基材は、第1コーティング液に浸漬された後、乾燥できる。具体的には、浸漬によってゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング液が塗布される。以後、第1コーティング液が乾燥および硬化して、第1コーティング層が形成される。
【0127】
本出願による具体例において、前記ベース基材上に塗布された第1コーティング液に対する乾燥は、100~160℃の温度で30~150秒間にわたって行われる。また、本出願の具体例において、前記乾燥後に、200~260℃の温度で30~150秒間にわたって、乾燥した第1コーティング液を硬化する段階が行われうる。前記乾燥および硬化により、ゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング層が形成されうる。前記条件の乾燥および硬化により、ゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング層が安定的に形成されうる。
【0128】
特に制限されないが、前記浸漬、乾燥、および/または硬化過程中に、ローコードには0.05~3.00g/dの範囲の張力が印加されうる。しかし、本発明の他の実施例がこれに限定されるものではなく、ローコードに張力が印加されなくてもよい。
【0129】
一つの例において、エポキシ化合物とイソシアネート化合物とを含む第1コーティング液と異なる第2コーティング液は、上述した粘度を満足する接着剤組成物であってもよい。具体的には、前記第2コーティング液は、少なくとも(A)ラテックス、(B)水分散ポリウレタン、(C)アミン系接着増進剤、および(G)水(water)含有溶媒を含むことができる。
【0130】
本出願による具体例において、前記方法は、反応活性基が付与されたゴム補強材用ベース基材上に、つまり、第1コーティング層上に、第2コーティング層を形成する段階をさらに含むことができる。第2コーティング層を形成する過程(例:方式と条件)は、第1コーティング層を形成するものと同一に、または類似した具合に行われうる。
【0131】
例えば、ベース基材および第1コーティング層上に第2コーティング液が塗布され、以後、第2コーティング液に対する乾燥と硬化が行われうる。第2コーティング液の塗布は、浸漬や噴射などによって行われうる。
【0132】
本出願に係る具体例において、前記第2コーティング液に対する乾燥は、100~160℃の温度で30~150秒の間に行われうる。また、本出願に係る具体例において、前記乾燥後に、前記第2コーティング液に対する硬化は、200~260℃の温度で30~150秒の間に行われうる。前記条件の乾燥および硬化によって、第1コーティング層上に第2コーティング層が安定的に形成されうる。その結果、コーティング層を有するゴム補強材が提供される。
【0133】
特に制限されないが、前記浸漬、乾燥、および/または硬化過程中に、ローコードには0.05~3.00g/dの範囲の張力が印加されうる。しかし、本発明の他の実施例がこれに限定されるものではなく、ローコードに張力が印加されなくてもよい。
【0134】
以下、本出願の具体例によるゴム補強材の製造方法を、図2および図3を参照して説明する。
【0135】
ローコード10は、第1ワインダ100に巻かれている状態で製造および/または流通されうる。そして、ローコード10が、第1コーティング槽200に入っている第1コーティング液21’に浸漬されることで、ローコード10上に塗布が行われる。前記浸漬工程の際には、張力、浸漬時間および温度が適切に調節可能であり、これは、当業者によって適切に調節可能である。
【0136】
次に、ローコード10に塗布された第1コーティング液21’が乾燥および硬化できる。乾燥は、乾燥装置300で行われうる。乾燥と硬化に関する温度や時間などの条件は上述した通りである。
【0137】
次に、第1コーティング層21上に第2コーティング層22を形成する段階が進行する。第2コーティング層形成段階は、第1コーティング層21によって活性基が付与されたローコード10にゴム系接着組成物を付与する段階である。第2コーティング層の形成には、第1コーティング液と異なる組成を有する第2コーティング液が使用可能であり、第1コーティング層の形成と同様に、浸漬(dipping)工程が適用可能である。
【0138】
第2コーティング層22の形成のために、第1コーティング層21でコーティングされたローコード10が第2コーティング液22’に浸漬される。第2コーティング液22’は、第2コーティング槽400に入っている。前記浸漬によって第1コーティング層21上に第2コーティング液22’が印加される。前記浸漬工程の際には、張力、浸漬時間および温度が適切に調節可能であり、これは、当業者によって適切に調節可能である。
【0139】
次に、第2コーティング液22’に対する乾燥および硬化が行われる。前記乾燥と硬化は、乾燥装置500で行われうる。乾燥と硬化に関する温度や時間などの条件は上述した通りである。
【0140】
上記のような工程を経て、第1コーティング層21上に第2コーティング層22が形成される。このように製造されたタイヤコード30は、第2ワインダ600に巻き取られる。
【0141】
前記のように、浸漬(dipping)によって形成されたコーティング層を有するタイヤコード30をディップコード(dipped cord)と称することができる。
【0142】
本出願に係るさらに他の一例において、本出願は、ゴム複合体に関する。前記ゴム複合体は、例えば、タイヤであってもよい。前記タイヤは、上述したタイヤコードを含む。
【0143】
タイヤコードのほか、前記タイヤは、図4に示されているように、一般に知られた構成を有することができる。
【発明の効果】
【0144】
本出願の具体例によれば、環境にやさしく、火災発生の危険が少なく、接着力に優れており、作業性(工程性)の向上と費用節減に有利な接着剤組成物が提供される。また、本出願は、前記接着剤組成物を用いて製造されたもので、物性(例:機械的強度や耐疲労特性など)が改善されたゴム補強材またはゴム複合体を提供するという発明の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1】本出願の接着剤組成物が有する相対粘度を測定する方法を説明するためにウベローデ粘度計を概略的に示したものである。
図2】本出願の一例により接着剤組成物を用いて製造できるタイヤコードの断面を概略的に示したものである。
図3】タイヤコードの製造過程を概略的に示したものである。
図4】本出願の一例により接着剤組成物を用いて製造できるタイヤの断面を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0146】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは、発明の例として提示されたものであって、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されない。
【0147】
製造例
<製造例1:水分散ポリウレタンの製造>
ポリエステル系ポリオール(重量平均分子量:約2,000)、ジオール(1,6-Hexane diol; 1,6-ヘキサンジオール)、およびアイオノマー(DMBA:Dimethylol butanoic acid; ジメチロールブタン酸)を反応器に投入し、75±5℃で4時間撹拌した。そして、脂肪族イソシアネート(H12MDI:Dicyclohexylmethane-4,4’-diisocyanate; ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添MDI)を2時間反応させてプレポリマーを製造し、製造されたプレポリマーの反応温度を60℃に下げた後、溶媒(Acetone; アセトン)に中和剤(TEA:Triethanolamine; トリエタノールアミン)を投入して中和した。この際、分散のために撹拌機を用い、撹拌機のRPMは1,000から1,500に維持して分散させた。分散を終えた後、減圧によりプレポリマーから溶媒(Acetone)を除去した。以後、中和されたプレポリマーに固形分含有量が60重量%となるように蒸留水を投入後、撹拌して水分散を進行させた。最後に、鎖延長剤(EDA:Ethylene diamine; エチレンジアミン)を添加して、重量平均分子量が約308,000の水分散ポリウレタンを製造した。
【0148】
<製造例2:実施例および比較例の組成物の製造>
下記表1のような含有量(重量%)で同一の条件で混合と撹拌を行って、実施例および比較例の組成物を製造した。具体的には、各成分を混合し、約20℃で24時間撹拌した。
【0149】
【表1】
【0150】
単位(含有量): (A)~(F)固形分の各重量%、および非固形分である(G)溶媒の重量%
(A)ラテックス: Closlen社の0653であるVPラテックス
(B)水分散ポリウレタン: 製造例1で製造された水分散ポリウレタンが使用される
(C)アミン系接着増進剤(第1アミン化合物): エチレンジアミン(Ethylenediamine)とステアリン酸(stearic acid)との反応物であるエチレン-ビス-ステアロアミド(N,N'-Ethylenebis(stearamide))
(D)アミン系鎖延長剤(第2アミン化合物): ピペラジン(Piperazine)
(E) エポキシ化合物: 当量が120~300 g/eqの範囲に調節されたNAGASE社のEX614B
(F) イソシアネート: EMS社のIL-6
(G) 溶媒: 純水(Demineralized water)を含む非固形分成分
【0151】
【表2】
【0152】
単位(含有量): (A)~(F)固形分の各重量%、および非固形分である(G)溶媒の重量%
(A)ラテックス: Closlen社の0653であるVPラテックス
(B)水分散ポリウレタン: 製造例1で製造された水分散ポリウレタンが使用される
(C)アミン系接着増進剤(第1アミン化合物): エチレンジアミン(Ethylenediamine)とステアリン酸(stearic acid)との反応物であるN,N'-Ethylenebis(stearamide)
(D)アミン系鎖延長剤(第2アミン化合物): ピペラジン(Piperazine)
(E)エポキシ化合物: 当量が120~300 g/eqの範囲に調節されたNAGASE社のEX614B
(F)イソシアネート: EMS社のIL-6
(G)溶媒: 純水(Demineralized water)を含む非固形分成分
【0153】
<製造例3:ローコード(raw cord)およびタイヤコード(tire cord)の製造>
アラミド原糸(1,500de)とナイロン原糸(1,260de)を用いて360TPMの撚り数を有する下撚糸(Z-方向)2本11、12を用意した後、前記2本の下撚糸を360TPMの撚り数で共に上撚(S-方向)して、合撚糸(1,500de A/1,260de N)を製造した。このように製造された合撚糸をローコード(raw cord)10として使用した。
【0154】
前記ローコード(raw cord)10にコーティング層20を形成してタイヤコード30を製造した。具体的には、アラミドおよびナイロンからなるローコードを第1コーティング液に浸漬した後、乾燥温度150℃および硬化温度240℃にて、それぞれ約1分間処理して第1コーティング層21を形成することによって、ローコードに反応活性基を付与した。この際、第1コーティング液は、製造例2で使用された成分の一部であるエポキシ化合物とイソシアネート化合物が約1:2の重量比で、97重量%の脱塩水(demineralized water)と共に混合されて製造されたものである。
【0155】
そして、第1コーティング層が形成されたローコードに、製造例2により製造された実施例および比較例の接着組成物(以下、第2コーティング液)を付与した。具体的には、第1コーティング層が形成されたローコードを、第2コーティング液に浸漬し、乾燥および硬化して、第2コーティング層22を形成した。この際、乾燥温度150℃および硬化温度235℃にて、それぞれ約1分ずつ処理して乾燥および硬化が行われた。第1コーティング液の浸漬工程および第2コーティング液の浸漬工程は、連続的に行われ、この際の張力条件は0.5g/dとした。このような過程を経て、ディップコード(Dipped Cord)形態にてタイヤコード(tire cord)30を製造した。
【0156】
実験例
<実験例1:実施例および比較例の組成物の相対粘度の測定>
製造例2で製造された各組成物の粘度は、ウベローデ粘度計(Ubbelohde viscometer)を用いて恒温水槽(約25℃)で30分間放置された後、測定された。具体的には、以下のような過程を経て脱塩水をウベローデ粘度計に一定量入れた後、脱塩水の粘度特性を測定し、同様の方法で組成物の粘度特性を測定した後、すでに測定された脱塩水の粘度特性を基準として相対粘度を計算した。その結果は表2の通りである。
【0157】
以下、図1を参照して粘度の測定過程を説明する。
【0158】
(1)ウベローデ粘度計A管に試料(組成物または脱塩水)を注入する。
【0159】
(2)恒温水槽を25℃に設定した後、C部分が水槽に浸るように固定し、30分間放置する。
【0160】
(3)ピペットフィラーを用いて試料がC部分の中間までくるようにする。
【0161】
(4)以後、試料を下へ流れるようにし、試料の液面がBの上目盛を通過してBの下目盛を通過するまでにかかった時間を測定する。
【0162】
(5)測定した時間を以下の相対粘度計算式に適用して相対粘度を求める。
【0163】
<相対粘度計算式>
相対粘度=T/T
【0164】
(T:接着剤組成物がBの上目盛を通過してBの下目盛を通過するまでにかかった時間、T:脱塩水(Demineralized water)がBの上目盛を通過してBの下目盛を通過するまでにかかった時間)
【0165】
【表3】
【0166】
【表4】
【0167】
<実験例2:Resin pick up(樹脂付着)の程度の確認>
製造例2で製造された実施例および比較例の接着剤(組成物)に、製造例3で製造されたローコード(Raw Cord)を20秒間浸漬した後、巻き上げて、乾燥した。具体的には、引張試験機を用いて、前記ローコードを一定速度(約250mm/min)で接着剤溶液に浸漬し、それから巻き上げた。そして、巻き上げられたローコードを240℃のオーブン(Oven)で1分30秒間乾燥した。
【0168】
Resin Pick Up(樹脂付着)の程度(RPU、%)は、下記式1のように計算し、その結果を表3に記載した。
【0169】
<式1>
(W-W)/W×100
【0170】
上記式1中、Wは、浸漬後のローコードの重量(g)であり、Wは、浸漬前のローコードの重量(g)である。
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
前記表3および4から確認されるように、比較例1、比較例3、比較例5の接着剤組成物は、実施例に比べて粘度が低く、流れ性が高いことを確認できる。流れ性が高すぎる場合、表6に示すように、ピックアップ率が低い。したがって、被着物または被コーティング体上にコーティング層が均等に形成されず、十分な接着力を提供できないのでありうる。実施例と比較例の組成物を用いた接着力の比較結果は、下記表8と表9から確認加能である。
【0174】
また、前記表3および4のように、比較例2、比較例4、比較例6の接着剤組成物は、実施例に比べて粘度が高く、流れ性が低いことを確認できる。流れ性が低すぎる場合、組成物の構成成分間で十分な混合などが行われないため、接着力が低下しうる。実施例と比較例の組成物を用いた接着力の比較結果は、下記表8と表9から確認加能である。
【0175】
<実験例3:接着力評価>
実施例および比較例の組成物をそれぞれ用いて、製造例3で製造されたタイヤコードに対する単位面積あたりの接着力を評価した。前記接着力評価は、ASTM D4393の方法を用いて、タイヤコードの接着剥離強度を測定する方式で行われた。
【0176】
具体的には、0.6mmの厚さのゴムシート、コード紙(製造例3のタイヤコード)、0.6mmの厚さのゴムシート、コード紙(製造例3のタイヤコード)、0.6mmの厚さのゴムシートを順に積層し、60kg/cmの圧力で、170℃で15分間にわたって加硫してサンプルを作製した。そして、サンプルを裁断して1インチの幅を有する試験片を製造した。参照として、前記ゴムシートは、下記表7に記載された組成を有するものであって、タイヤを構成するカーカスに使用されるシートである。このようなゴムシートを用いた積層体を用いることによって、カーカス層に対するタイヤコードの接着力を確認できる。
【0177】
製造された試験片に対して、万能材料試験機(Instron社)を用いて25℃で125mm/minの速度で剥離試験を行って、カーカス層に対するタイヤコードの接着力を測定し、測定された接着力の相対的な大きさを表8と9に記載した。この際、剥離時に発生する荷重の3回の平均値を接着力として算定した。
【0178】
【表7】
【0179】
【表8】
【0180】
* 使用された接着剤組成物: 第2コーティング層の形成時に使用された接着剤組成物を意味する。
* 接着力: 実施例10の結果を100%基準として相対比較を行なう。
【0181】
【表9】
【0182】
* 使用された接着剤組成物: 第2コーティング層の形成時に使用された接着剤組成物を意味する。
* 接着力: 実施例10の結果を100%基準として相対比較を行なう。
【符号の説明】
【0183】
10:ローコード
11:下撚糸
12:下撚糸
20:コーティング層
21:第1コーティング層
21’:第1コーティング液
22:第2コーティング層
22’:第2コーティング液
30:タイヤコード
100:第1ワインダ
200:第1コーティング槽
300:第1乾燥装置
400:第2コーティング槽
500:第2乾燥装置
600:第2ワインダ
1000:トレッド
2000:ショルダ
3000:サイドウォール
4000:キャッププライ
5000:ベルト
6000:ボディプライまたはカーカス
7000:インナーライナ
8000:エーペックス
9000:ビード
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】