(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置およびこのようなアクチュエータ装置を備えたトランスミッション装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/28 20060101AFI20230111BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20230111BHJP
F16H 3/44 20060101ALI20230111BHJP
F16H 3/72 20060101ALI20230111BHJP
F16H 3/02 20060101ALI20230111BHJP
F16H 3/08 20060101ALI20230111BHJP
F16H 3/091 20060101ALI20230111BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20230111BHJP
F16H 48/40 20120101ALI20230111BHJP
F16H 63/32 20060101ALI20230111BHJP
F16H 63/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16H61/28
F16H25/20 E
F16H3/44 B
F16H3/72 A
F16H3/02 A
F16H3/08
F16H3/091
F16H48/08
F16H48/40
F16H63/32
F16H63/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526750
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020081317
(87)【国際公開番号】W WO2021094223
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】102019130357.5
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テオドア ガスマン
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ヴェアクハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハウプト
【テーマコード(参考)】
3J027
3J062
3J067
3J528
【Fターム(参考)】
3J027FB02
3J027HA03
3J027HC07
3J027HC13
3J027HC14
3J062AA02
3J062AB01
3J062AB21
3J062BA11
3J062CD02
3J062CD24
3J062CG83
3J067AA21
3J067AB23
3J067AC05
3J067AC12
3J067DA41
3J067DB32
3J067EA23
3J067FA73
3J067FB12
3J067GA01
3J528EB25
3J528EB33
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB74
3J528EB85
3J528FA13
3J528FB05
3J528FB13
3J528FC13
3J528FC23
3J528FC42
3J528GA02
3J528HA02
3J528HA22
(57)【要約】
本発明は、自動車の駆動系に設けられた2つの切替えユニットを作動させるアクチュエータ装置であって、ケーシング(8)、アクチュエータ駆動装置(3)、ケーシング(8)内に配置されており、アクチュエータ駆動装置(3)により3つの位置に軸線方向に可動のシフトロッド(4)、シフトロッドに軸線方向に可動に配置された第1の切替え部材(6)および第2の切替え部材(7)、第1の切替え部材(6)を第1の軸ストッパ(18)の方に押圧すると共に第2の切替え部材(7)を第2の軸ストッパ(19)の方に押圧するばね部材(17)、第1の切替え部材(6)を軸線方向において支持することができる第1のケーシングストッパ(24)、第2の切替え部材(7)を軸線方向において支持することができる第2のケーシングストッパ(25)を有する、アクチュエータ装置に関する。本発明はさらに、このようなアクチュエータ装置(2)を備えたトランスミッション装置(20)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の駆動系に設けられた2つの切替えユニットを作動させるアクチュエータ装置であって、
ケーシング(8)と、
アクチュエータ駆動装置(3)と、
前記ケーシング(8)内に配置されており、前記アクチュエータ駆動装置(3)により少なくとも3つの位置(P0,P1,P2)に軸線方向に可動のシフトロッド(4)と、
前記シフトロッドに軸線方向に可動に配置された第1の切替え部材(6)および第2の切替え部材(7)と、
前記第1の切替え部材(6)を第1の軸ストッパ(18)の方に押圧すると共に前記第2の切替え部材(7)を反対の軸線方向で第2の軸ストッパ(19)の方に押圧するばね部材(17)と、
前記ばね部材(17)から前記第1の切替え部材(6)に作用する力方向(F1)に前記シフトロッド(4)が動かされると前記第1の切替え部材(6)を軸線方向において支持する第1のケーシングストッパ(24)と、
前記ばね部材(17)から前記第2の切替え部材(7)に作用する力方向(F2)に前記シフトロッド(4)が動かされると前記第2の切替え部材(7)を軸線方向において支持する第2のケーシングストッパ(25)と
を有する、アクチュエータ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ駆動装置(3)は、回転駆動装置の形態で形成されており、前記シフトロッド(4)は、前記回転駆動装置により回転駆動可能であり、前記シフトロッド(4)の回転運動を、前記シフトロッド(4)の軸線方向運動に変換するスピンドル機構(5)が設けられている、請求項1記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記シフトロッド(4)は、中間位置(P0)から出発して、前記アクチュエータ駆動装置(3)により第1の軸線方向位置(P1)に移動可能であり、このとき前記第1の切替え部材(6)は前記第1のケーシングストッパ(24)に支持されており、前記第2の切替え部材(7)は前記第2のケーシングストッパ(25)から離れており、かつ
前記シフトロッド(4)は、前記中間位置(P0)から出発して、前記アクチュエータ駆動装置(3)により反対の第2の軸線方向位置(P2)に移動可能であり、このとき前記第2の切替え部材(7)は前記第2のケーシングストッパ(25)に支持されており、前記第1の切替え部材(6)は前記第1のケーシングストッパ(24)から離れている、請求項1または2記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記ばね部材(17)は、前記第1の切替え部材(6)と前記第2の切替え部材(7)とを互いに軸線方向に押し離しており、前記第1のケーシングストッパ(24)と前記第2のケーシングストッパ(25)とは、軸線方向において相対して向けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記ばね部材(17)は、前記シフトロッド(4)において前記第1の切替え部材(6)と前記第2の切替え部材(7)との間に配置されており、前記ばね部材(17)は、特にコイルばねの形態で形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記第1の切替え部材(6)および前記第2の切替え部材(7)のうちの少なくとも1つは、シフトスリーブを軸線方向に移動させるように形成されたシフトフォークの形態で形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記第1の切替え部材(6)は第1の切替えユニット(27)の作動に用いられ、前記第2の切替え部材(7)は第2の切替えユニット(28)の作動に用いられる、請求項1から6までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】
前記第1および第2の切替えユニット(27,28)のうちの少なくとも1つは、形状結合クラッチを有している、請求項7記載のアクチュエータ装置。
【請求項9】
前記第1および第2の切替えユニット(27,28)のうちの少なくとも1つは、駆動装置に応じてディファレンシャル伝動装置(26)を接続または遮断するように形成されている、請求項7または8記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】
前記シフトロッド(4)は、一方の端部では前記スピンドル機構(5)によりかつ他方の端部では滑り軸受(14)により回転軸線(A4)を中心として回転可能に前記ケーシング(8)内に支持されている、請求項2から9までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記スピンドル機構(5)は、前記ケーシング(8)に相対回動不能にかつ軸線方向に不動に結合された支持部分(15)と、前記シフトロッド(4)に固く結合されかつ前記支持部分(15)に螺合させられた回転部分(16)とを有し、これにより、前記シフトロッド(4)ひいては前記シフトロッド(4)に結合された前記回転部分(16)が前記支持部分(15)に対して相対的に回転すると、前記シフトロッド(4)の軸線方向移動が生じることになる、請求項2から10までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項12】
出力経路内で前記回転駆動装置と前記シフトロッド(4)との間に配置された駆動部材(12)は、前記駆動部材(12)と係合している駆動部材(13)に対して相対的に軸線方向に移動可能である、請求項2から11までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項13】
前記アクチュエータ駆動装置と前記シフトロッド(4)との間には変速段が設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)を備えたトランスミッション装置であって、
回転駆動可能なディファレンシャルケース(29)と、第1のサイドシャフトを駆動する第1のディファレンシャル出力部材(33)と、第2のサイドシャフトを駆動する第2のディファレンシャル出力部材(33’)とを備えたディファレンシャル伝動装置(26)と、
前記ディファレンシャルケース(29)を選択的に、トルクを伝達する駆動装置部分(31)に結合する、または前記駆動装置部分(31)から切り離すために前記ディファレンシャルケース(29)と前記駆動装置部分(31)との間に配置された第1の切替えユニット(27)と、
前記ディファレンシャル出力部材(33,33’)のうちの1つを、トルクを伝達する付属のサイドシャフトに結合可能なまたは前記サイドシャフトから切離し可能な第2の切替えユニット(28)と
を有し、
前記第1の切替えユニット(27)は、前記アクチュエータ装置(2)の前記第1の切替え部材(6)により作動可能であり、前記第2の切替えユニット(28)は、前記第2の切替え部材(7)により作動可能である、トランスミッション装置。
【請求項15】
内燃機関と電気機械とを備えたハイブリッド駆動装置用の、請求項1から13までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)を備えたトランスミッション装置であって、
内燃機関(51)に駆動結合可能であり、多段トランスミッション入力部材(60)と多段トランスミッション出力部材(66)とを選択的に、第1のシフト段または第2のシフト段を介して結合する、または互いに切り離すための切替えクラッチ(59)を有する多段トランスミッション(53)と、
前記電気機械(52)に結合可能な変速トランスミッション入力部材(67)を有し、前記変速トランスミッション入力部材(67)に導入された回転運動を、変速トランスミッション出力部材(73)に対して低速に変速するように形成された減速トランスミッション(54)と、
前記多段トランスミッション出力部材(66)に駆動結合された第1の入力部材(56)と、オーバラップトランスミッション出力部材(73)に駆動結合された第2の入力部材(57)と、出力部材(58)とを備えたオーバラップトランスミッション(55)であって、前記第1の入力部材(56)と前記第2の入力部材(57)と前記出力部材(58)とは互いに補償作用を有する、オーバラップトランスミッション(55)と、
前記オーバラップトランスミッション(55)の前記出力部材(58)に駆動結合されており、前記出力部材(58)に対して同軸に配置されたディファレンシャルケース(29)と、第1のサイドシャフトを駆動するための第1のディファレンシャル出力部材(33)と、第2のサイドシャフトを駆動するための第2のディファレンシャル出力部材(33’)とを備えたディファレンシャル伝動装置(26)と、
前記オーバラップトランスミッション(55)の前記第1の入力部材(56)、前記第2の入力部材(57)および前記出力部材(58)のうちの2つの部材の間に作用するように配置された制御可能な第1の切替えユニット(27)と、
出力経路内で前記オーバラップトランスミッション(55)の前記出力部材(58)と、前記第1のサイドシャフトと前記第2のサイドシャフトのうちの1つとの間に配置された制御可能な第2の切替えユニット(28)と
を有する、トランスミッション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車の駆動系用の複数の切替えユニットを作動させるアクチュエータ装置、ならびにこのようなアクチュエータ装置を備えたトランスミッション装置に関する。
【0002】
制御可能な切替えユニットは、自動車の駆動系において、例えば各駆動系部分を接続しかつ切り離すクラッチ、様々なギヤを入れるマニュアルトランスミッション、トランスミッションの様々な部材の補償運動をロックまたは解除する遊星歯車伝動装置および/またはパーキングロックに用いられてもよい。
【0003】
独国特許発明第69516766号明細書(DE 695 16 766 T2)から、ギヤチェンジ変速機用のリニアアクチュエータとシフトフォークとを備えたシフト装置が公知である。シフトフォークの動きは、リニアアクチュエータにより押しずらされた複数のばねにより導入される。
【0004】
独国特許発明第2138657号明細書から、カウンタシャフトギヤチェンジ変速機用のクラッチを備えたシフト装置が公知である。クラッチは、ばねにより互いに軸線方向に離れるように押圧される2つのクラッチ部材を有している。
【0005】
独国特許出願公開第102007040040号明細書から、2つの変速段を切り替えるための3つの切替え位置を有する切替え要素が公知である。切替え要素は、1つのシフトフォークにより操作可能な2つの切替えスリーブ半部を有している。
【0006】
国際公開第2012007031号から公知の、自動車用の電気駆動装置は、電動モータとトランスミッション装置とを有している。トランスミッション装置は、互いに同軸に配置された遊星歯車伝動装置およびディファレンシャル伝動装置、ならびにアクチュエータにより3つの切替え位置に移行可能な切替えクラッチを有している。切替えクラッチにより、遊星歯車伝動装置のサンギヤが選択的に、リングギヤに相対回動不能に結合され得るか、または位置固定されたケーシング部分において相対回動不能に支持され得るか、または空転位置に移行され得る。
【0007】
国際公開第2015/149875号から、マニュアルトランスミッションに設けられたクラッチ用の作動ユニットが公知である。作動ユニットは、電動モータにより駆動されるボールねじ駆動装置を有している。ボールねじ駆動装置により、クラッチは選択的に3つのシフト位置、つまり第1のシフト段、第2のシフト段およびニュートラル位置に移行可能である。
【0008】
国際公開第2019/063227号から、2つの溝軌道を備える回転可能なシフトドラムを有する自動車用トランスミッションが公知である。第1の溝軌道は、前方の軌道部分と、後方の軌道部分と、袋小路として形成された側方部分とを有している。第1の溝軌道内には、パーキングロックに連結された軌道従動部材が係合しており、これにより、軌道従動部材が側方部分に配置されると、パーキングロックの係合状態が生ぜしめられる。第2の溝軌道内には第2の軌道従動部材が係合しており、第2の軌道従動部材は、自動車の前進ギヤを切り替えるシフトフォークに連結されている。
【0009】
国際公開第2010/027584号から、遮断可能な入力軸を備えた力伝達ユニットが公知である。このためには、アクチュエータ装置により締結位置または解除位置に移行可能なクラッチが設けられている。
【0010】
独国特許出願公開第102016204133号明細書から公知のリニアアクチュエータは、セルフロック式の第1のスピンドルと第1のナットとを備えた第1のねじ山付き駆動装置、非セルフロック式の第2のスピンドルと第2のナットとを備えた第2のねじ山付き駆動装置、ならびに第1のスピンドルの回転運動と第2のスピンドルの回転運動とを互いに結合しかつ互いに分離する伝動装置を有している。
【0011】
独国特許出願公開第102007055307号明細書から公知の、シフトフォークを備えた常時噛合い式トランスミッション用の操作ユニットは、第1のギヤ段とニュートラル位置との間で軸線方向に移動可能である。1つの位置軸に、シフトフォーク用の2つの位置決め部材が軸線方向に移動可能に、ただし回動不能に支持されている。
【0012】
自動化された多段の車両トランスミッションは、1つの中央液圧ユニットまたは複数の電気機械的なアクチュエータを介して切り替えることができる。この場合、可能な限り短い、部分的には負荷もかからないオーバラップシフトが実現されることが望ましく、これにより、このことに結び付いた大きな走行快適性と高い出力とが保証される。
【0013】
本発明の課題は、自動車の駆動系内の複数の切替えユニットの切替えを可能にしかつ簡単な構造上の構成を有するアクチュエータ装置を提案することにある。課題はさらに、このようなアクチュエータ装置を備え、簡単に構成されたトランスミッション装置を提案することにある。
【0014】
課題を解決するために、自動車の駆動系用の複数の切替えユニットを作動させるアクチュエータ装置であって、ケーシング、アクチュエータ駆動装置、ケーシング内に配置されており、アクチュエータ駆動装置により少なくとも3つの位置に可動のシフトロッド、シフトロッドに軸線方向に可動に配置された第1の切替え部材および第2の切替え部材、第1の切替え部材を第1の軸ストッパの方に押圧すると共に第2の切替え部材を反対の軸線方向で第2の軸ストッパの方に押圧するばね部材、ばね部材から第1の切替え部材に作用する力方向にシフトロッドが動かされると第1の切替え部材を軸線方向において支持する第1のケーシングストッパ、ばね部材から第2の切替え部材に作用する力方向にシフトロッドが動かされると第2の切替え部材を軸線方向において支持する第2のケーシングストッパを有するアクチュエータ装置を提案する。
【0015】
当該アクチュエータ装置の1つの利点は、このアクチュエータ装置が簡単かつ廉価な構成を有している、という点にある。2つの切替え部材がシフトロッドに説明した形態で配置されていることにより、シフトロッドの1回の動作で2つの切替え部材の複数の異なるシフト位置を生ぜしめることができる。有利には、異なる切替え動作用の2つの切替え部材を作動させるために、1つの回転駆動装置のみが必要とされている。切替え部材は、自動車の駆動系に設けられた切替えユニット、例えばトランスミッション、クラッチ、特に遮断クラッチ、および/またはパーキングロックの一部であってもよい。複数の駆動源およびシフトトランスミッションもしくはマルチモードトランスミッションを備えた駆動装置では、切替え動作時の駆動出力の落込みを調整するために、複数の異なるモータが使用され得る。この場合、パワーシフトトランスミッションを省き、ギヤチェンジまたはモードチェンジ用に連続的な切替え動作を利用することが可能である。これらの切替え動作は、本発明のアクチュエータ装置により簡単に実現され得る。特に簡単なひいては廉価な構成は、切替えユニットとして、従来のシンクロ機構またはクラッチと比較可能な小さな切替え力しか必要としない形状結合クラッチを使用することにより達成され得る。
【0016】
アクチュエータ駆動装置は、構成空間状況や技術的な要件に相応して選択され得、例えば電動モータ駆動装置、電磁駆動装置または液圧駆動装置の形態で形成されていてもよいもしくはこれらを含んでいてもよい。駆動装置は、リニア駆動装置または回転駆動装置として形成されていてもよい。
【0017】
回転駆動装置を使用した場合、シフトロッドは回転駆動され、この場合はシフト軸と呼ぶこともできる。この場合、特にシフトロッドに導入された回転運動を、シフトロッドの軸線方向運動に変換するスピンドル機構が設けられていてもよい。回転可能なシフトロッドを備えた1つの実施形態では、2つの切替え部材が好適には回転可能にシフトロッドに支持されており、これにより、シフトロッドが回転駆動装置により回転させられた場合、切替え部材はその回転位置を保持するようになっている。回転駆動装置は、シフトロッドを2つの回転方向に回転駆動するように形成されている。好適には、回転駆動装置は電気機械的なサーボモータもしくは電動モータの形態で形成されており、この場合、液圧駆動装置または空圧駆動装置等の別の回転駆動装置も可能である。
【0018】
アクチュエータ駆動装置とシフトロッドとは互いに軸線方向に間隔をあけて配置されていてもよいか、互いに同軸に配置されていてもよく、または互いに直交して配置されていてもよい。回転駆動装置とシフトロッドとの間には、2つ以上の駆動部材を備えた変速段が設けられていてもよい。出力経路内で回転駆動装置とシフトロッドとの間に配置された駆動部材は、この駆動部材と係合している駆動部材に対して相対的に軸線方向に移動可能に形成されていてもよい。これらの駆動部材は、例えば歯車であってもよい。
【0019】
2つの切替え部材は、それぞれシフトロッドおよびケーシングストッパと呼ぶこともできる定置のストッパに支持され得る。定置のストッパとしては、軸の移動時に各切替え部材を軸線方向において支持することができる任意のストッパが使用され得る。例えば、ストッパはケーシングの一部またはケーシングに結合された構成部材であってもよい。
【0020】
中間位置から出発して、シフトロッドは第1の軸線方向位置に動かされてもよく、このとき第1の切替え部材は第1のケーシングストッパに支持されており、第2の切替え部材は第2の軸ストッパにより連行されて第2のケーシングストッパから離れている。これに相応して、シフトロッドは中間位置から出発して、反対の第2の軸線方向位置に動かされてもよく、このとき第2の切替え部材は第2のケーシングストッパに支持されており、第1の切替え部材は第1の軸ストッパにより連行されて第1のケーシングストッパから離れている。回転駆動装置およびスピンドル機構を使用した場合、シフトロッドの軸線方向移動は、スピンドル機構による第1の回転方向もしくは反対の第2の回転方向への相応する回転により生ぜしめられる。
【0021】
1つの実施形態では、ばね部材が第1の切替え部材と第2の切替え部材とを互いに軸線方向に押し離しており、この場合、第1のケーシングストッパと第2のケーシングストッパとは、好適には軸線方向において相対して向けられている。しかしまた、2つの切替え部材が1つまたは複数のばねにより互いに向かって押圧される逆の配置も可能である。この場合、定置のストッパは互いから離れる方向に向けられている。ばね部材は、特にシフトロッドにおいて第1の切替え部材と第2の切替え部材との間に配置され、例えばコイルばねとして形成されていてもよく、この場合、ばねの別の配置および構成も可能である。
【0022】
1つの可能な実施形態では、第1の切替え部材および第2の切替え部材のうちの少なくとも1つは、シフトスリーブを軸線方向に移動させるように形成されたシフトフォークの形態で形成されていてもよい。さらに、第1の切替え部材は第1の切替えユニットの作動に用いられてもよく、第2の切替え部材は第2の切替えユニットの作動に用いられてもよい。切替えユニットのうちの少なくとも1つは、形状結合クラッチを有していてもよくかつ/または駆動装置に応じてディファレンシャル伝動装置を接続または遮断しかつ/または遊星歯車伝動装置をロックまたは解放するように形成されていてもよい。
【0023】
シフトロッドは、ケーシング内に軸線方向に可動に、かつアクチュエータ駆動装置に応じて場合により回転可能に支持されている。回転駆動装置とスピンドル機構とを備えた1つの実施形態では、シフトロッドは、一方の端部ではスピンドル機構によりかつ他方の端部では滑り軸受により回転軸線を中心として回転可能にケーシング内に支持されていてもよい。この場合、シフトロッドの一方の軸受箇所は、スピンドル駆動装置の固定部分に結合されている。このようにして、シフトロッドの軸受箇所と、駆動装置の回転運動の軸線方向運動への変換とが1つの構成部材で実現される。さらに、各構成部材の小さな質量慣性モーメントに基づき、迅速な切替え時間が可能になる。反対側に位置する軸受箇所は、軸の軸線方向移動を可能にする滑り軸受により形成されている。
【0024】
スピンドル機構は、ケーシングに相対回動不能にかつ軸線方向に不動に結合された支持部分と、シフトロッドに固く結合された回転部分とを有していてもよい。回転部分は、支持部分に螺合させられており、これにより、シフトロッドひいてはシフトロッドに結合された回転部分が支持部分に対して相対的に回転すると、シフトロッドの軸線方向移動が生じることになる。
【0025】
前記課題はさらに、前記実施形態のうちの1つまたは複数に基づき形成されていてもよいアクチュエータ装置を備えた自動車用のトランスミッション装置であって、駆動装置部分により回転駆動可能なディファレンシャルケースと、第1の駆動軸を駆動する第1のディファレンシャル出力部材と、第2の駆動軸を駆動する第2のディファレンシャル出力部材とを備えたディファレンシャル伝動装置、ディファレンシャルケースを選択的に、トルクを伝達する駆動装置部分に結合する、または駆動装置部分から切り離すために駆動装置部分とディファレンシャルケースとの間に配置された第1の切替えユニット、および第1のディファレンシャル出力部材もしくは第2のディファレンシャル出力部材を、第1の出力軸もしくは第2の出力軸にトルクを伝達するように結合可能なまたは第1の出力軸もしくは第2の出力軸から切離し可能な第2の切替えユニットを有する、トランスミッション装置により解決される。
【0026】
これに相応して当該トランスミッション装置はアクチュエータ装置と同じ利点を有しているため、簡略的に前記説明を参照されたい。アクチュエータ装置に関連して説明した全ての特徴が、当該トランスミッション装置において実現され得る。当該トランスミッション装置は、それぞれ個別にまたは共に重畳してディファレンシャル伝動装置を駆動することができる電気機械と内燃機関とを備えたハイブリッド駆動装置の一部であってもよい。
【0027】
本発明のアクチュエータ装置を作動させる方法は、以下のステップ、すなわち、シフトロッドの中間位置において、2つの切替え部材をばね部材により各軸ストッパもしくはケーシングストッパの方に押圧するステップであって、このとき2つの切替え部材は、それぞれの第1の切替え位置(S6a,S7a)を占めるステップ、シフトロッドが第1の軸線方向に移動すると、第2の軸ストッパが第2の切替え部材を軸線方向に連行して第2の切替え部材を第2の切替え位置(S7b)に移行させるステップであって、このとき第1の切替え部材は第1のケーシングストッパに軸線方向において支持されておりかつ第1の切替え部材の第1の切替え位置(S6a)を占めているステップ、および、シフトロッドが第2の軸線方向に移動すると、第1の軸ストッパが第1の切替え部材を軸線方向に連行して第1の切替え部材の第2の切替え位置(S6b)に移行させるステップであって、このとき第2の切替え部材は第2のケーシングストッパに軸線方向において支持されておりかつ第2の切替え部材の第1の切替え位置(S7a)を占めているステップを含んでいてもよい。
【0028】
以下に、好適な実施例を図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】自動車の駆動系用の2つの切替えユニットを作動させる本発明によるアクチュエータ装置を第1の実施形態で示す図である。
【
図2A】
図1に示したアクチュエータ装置のシフト群を、シフトロッドの第1のシフト位置(P1)で示す図である。
【
図2B】
図1に示したアクチュエータ装置のシフト群を、シフトロッドの中間のシフト位置(P0)で示す図である。
【
図2C】
図1に示したアクチュエータ装置のシフト群を、シフトロッドの第2のシフト位置(P2)で示す図である。
【
図3】
図1に示したアクチュエータ装置を備えたトランスミッション装置を示す断面図である。
【
図4】
図1に示したアクチュエータ装置を備えたハイブリッド駆動装置を示す概略図である。
【
図5】自動車の駆動系用の2つの切替えユニットを作動させる本発明によるアクチュエータ装置を別の実施形態で示す図である。
【0030】
以下で一緒に説明する
図1~
図3には、自動車(図示せず)の駆動系用の少なくとも2つの切替えユニットを作動させるアクチュエータ装置2が示されている。アクチュエータ装置2は、複数の切替えユニットの切替え、例えばマニュアルトランスミッションの少なくとも2つのギヤ段の切替え、パーキングロックの作動、切替えクラッチの作動および/またはディファレンシャル伝動装置のロックに用いられてもよい。回転駆動装置3は、例えば電動モータの形態で形成されていてもよいが、これに限定されていなくてもよい。
【0031】
アクチュエータ装置2は、アクチュエータ駆動装置3、アクチュエータ駆動装置3により軸線方向に可動のシフトロッド4、ならびにシフトロッド4に結合された2つの切替え部材6,7を有している。本実施例では、アクチュエータ駆動装置3は、シフトロッド4を回転駆動する回転駆動装置、特に電気機械的なサーボモータの形態で形成されている。スピンドル機構5が、シフトロッド4の回転運動を軸線方向運動に変換する。回転駆動装置3は、第1の回転方向R1と、反対の第2の回転方向R2とに回転駆動可能であり、これにより、駆動結合されたシフトロッド4も相応して2つの回転方向に回転させられてもよい。択一的な駆動装置を備えたもしくはスピンドル駆動装置無しの、例えば並進式にシフトロッドに作用する電磁駆動装置を備えた別の構成も可能である、ということは自明である。
【0032】
本実施形態では、回転駆動装置3とシフトロッド4とは2つの平行な軸線A3,A4上でケーシング8(ここでは部分的にのみ図示)内に配置されている。シフトロッド4に回転駆動装置のモータ軸9の回転運動を伝達するために、本実施形態では任意の伝動装置10もしくは伝達段が設けられている。伝動装置は、モータ軸9に固く結合された第1の歯車12と、第1の歯車12に噛合い、シフトロッド4に固く結合された第2の歯車13とを有している。回転駆動装置3の回転運動のシフトロッド4への伝達手段は、構成空間の状況や技術的な要件に従って形成され得る、ということは自明である。
【0033】
シフトロッド4は、ケーシング8内に軸線方向に可動にかつ回転軸線A4を中心として回転可能に支持されている。支持は、シフトロッド4の一方の端部ではスピンドル機構5を介して行われ、反対側の端部では滑り軸受14を介して行われる。スピンドル機構5により、シフトロッド4の軸受箇所と、回転運動の軸線方向運動への変換とが1つの構成部材で実現される。
【0034】
スピンドル機構5は、ケーシング8に相対回動不能にかつ軸線方向に不動に結合された支持部分15と、シフトロッド4に固く結合された回転部分16とを有している。回転部分16と支持部分15とは、2つの部分相互の相対的な回転運動が相対的な移動動作を生ぜしめるように形成され、互いに結合されている。このために支持部分15は、本実施形態ではスピンドルナットの形態で形成されており、回転部分16は、スピンドル軸もしくはスピンドル軸部分の形態で形成されている。スピンドル軸部分16は、スピンドルナット15に螺合させられており、これにより、シフトロッド4ひいてはシフトロッド4に結合されたスピンドル部分16がスピンドルナット15に対して相対的に回転すると、シフトロッド4の軸線方向移動が生じることになる。
【0035】
第1の切替え部材6および第2の切替え部材7は、それぞれシフトロッド4に回転可能に支持されかつ軸線方向に可動に配置されている。2つの切替え部材6,7の間には、ばね部材17が作用するように配置されており、ばね部材17は、第1の切替え部材6を第1の軸ストッパ18の方に、かつ第2の切替え部材7を第2の軸ストッパ19の方に、互いに離反する軸線方向に押圧している。ばね部材17は、本実施形態ではシフトロッド4に対して同軸に配置されたコイルばねとして形成されている。切替え部材6,7は、本実施形態では各1つの付属の支持体スリーブ22,23を有しており、支持体スリーブ22,23は、シフトロッド4に回転可能にかつ軸線方向に移動可能に支持されている。支持体スリーブ22,23は、各1つのスリーブ部分を有しており、スリーブ部分には、コイルばね17がその端部でもって被せ嵌められている。このようにして、コイルばねがシフトロッドに接触することが防止される。切替え部材6,7は、特にシフトフォークの形態で形成されており、シフトフォークは、付属のシフトスリーブを軸線方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0036】
第1の定置ストッパ24が設けられており、シフトロッド4が、ばね部材17から第1の切替え部材6に作用する力方向F1に移動させられると、第1の切替え部材6は軸線方向において第1の定置ストッパ24に支持され得る。これに相応して、第2の切替え部材7用に第2の定置ストッパ25が設けられており、シフトロッド4が、ばね部材17から第2の切替え部材7に作用する反対の力方向F2に移動させられると、第2の切替え部材7は軸線方向において第2の定置ストッパ25に支持され得る。
【0037】
アクチュエータ装置の機能形式は以下の通りである。
【0038】
図1および
図2Bに示すシフトロッド4の中間位置P0において、第1の切替え部材6および第2の切替え部材7は、それぞれ第1のシフト位置S6a,S7aに位置している。
【0039】
中間位置P0から出発して、シフトロッド4はスピンドル機構5により第1の回転方向に回転させられることにより、第1の軸線方向位置P1(
図2Aに図示)に移動させられてもよい。シフトロッド4が軸線方向に移動すると、第1の切替え部材6は軸線方向において第1のケーシングストッパ24に支持されるのに対し、シフトロッド4はケーシングストッパ24に対して軸線方向に引き続き移動する。すなわち、第1の支持部材6は、その第1のシフト位置S6aに留まる。これに対して第2の切替え部材7は、第2の軸ストッパ19により軸線方向に連行され、シフトロッド4と共に軸線方向に移動しており、このとき第2のケーシングストッパ25から軸線方向に離れ、第2のシフト位置S7bを占めている(
図2A)。
【0040】
同様にシフトロッド4は、再び中間位置P0から出発して、スピンドル機構5により反対の第2の回転方向に回転させられることにより、第2の軸線方向位置P2(
図2Cに図示)に移動させられてもよい。シフトロッド4が軸線方向に移動すると、第2の切替え部材7は軸線方向において第2のケーシングストッパ25に支持されるのに対し、シフトロッド4は第2のケーシングストッパ25に対して軸線方向に引き続き移動する。すなわち、第2の支持部材7はその第1のシフト位置S7aに留まるのに対し、第1の切替え部材6は第1の軸ストッパ18により軸線方向に連行され、シフトロッド4と共に軸線方向に移動しており、このとき第1のケーシングストッパ24から軸線方向に離れ、第2のシフト位置S6bを占めている(
図2C)。
【0041】
図3には、トランスミッション装置20に設けられた本発明によるアクチュエータ装置の1つの適用例が、
図1と比べてやや変更された実施形態で示されている。アクチュエータ装置2の構成および機能形式は比較可能であり省略するため、上記説明を参照されたい。この場合、個々の同一の部分には、
図1および
図2と同一の符号を付してある。本実施例のトランスミッション装置20は、ディファレンシャル伝動装置26と、アクチュエータ装置2により作動可能な2つの切替えユニット27,28とを有している。
【0042】
ディファレンシャル伝動装置26はディファレンシャルケース29を有しており、ディファレンシャルケース29は、軸受30,30’により、回転軸線A29を中心として駆動装置部分31内で回転可能に支持されている。ディファレンシャルは、ディファレンシャルケース29内に導入された駆動トルクを自動車の左右のサイドシャフトに均等に伝達するために設けられている。ディファレンシャル伝動装置26は、ディファレンシャルケース29と共に回転軸線A29を中心として回転する複数のディファレンシャルギヤ32と、ディファレンシャルギヤ32と歯列係合している2つのサイドシャフトギヤ33,33’とを有している。サイドシャフトギヤ33,33’は、ディファレンシャルの出発部分として用いられ、中間軸34,35を介して自動車の各サイドシャフトに駆動結合され得る。
【0043】
本実施形態では、駆動装置部分31とディファレンシャルケース29との間に、制御可能な第1の切替えユニット27が設けられている。切替えユニット27は、回転可能な駆動装置部分31に固く結合された第1のクラッチ部材36、ディファレンシャルケース29に相対回動不能に結合された第2のクラッチ部材37、ならびに2つのクラッチ部材36,37を選択的に互いに結合するまたは互いに切り離す連結部材38を備える形状結合クラッチを有している。連結部材38は、第2のクラッチ部材37に相対回動不能にかつ軸線方向に可動に結合されたシフトスリーブの形態で形成されている。シフトスリーブは、アクチュエータ装置2の第1の切替え部材6に結合されている。駆動装置部分31とディファレンシャルケース29とは、クラッチ27の開位置では互いに自由に回転することができるのに対し、クラッチの閉位置では互いに相対回動不能に結合されており、回転軸線A29を中心として共に回転する。
【0044】
第2の切替えユニット28は、サイドシャフトギヤ33’と、車軸に付属するサイドシャフトとの間の出力経路内に配置されている。第2の切替えユニット28は選択的に、トルクをディファレンシャル伝動装置26と駆動軸のサイドシャフトとの間に伝達するため、または前記コンポーネントを互いに切り離すために設けられている。第2の切替えユニット28は、特にサイドシャフトギヤ33’に相対回動不能に結合された第1のクラッチ部材39、軸部分42に相対回動不能に結合された第2のクラッチ部材40、ならびに連結部材43を備えた形状結合クラッチを有している。第1のクラッチ部材39と第2のクラッチ部材40とは選択的に、駆動軸にトルクを伝達するために連結部材43を介して互いに結合可能であるか、または駆動軸を、その前に位置する出力経路から切り離すように、互いに切離し可能である。連結部材43は、第1のクラッチ部材39に相対回動不能にかつ軸線方向に可動に結合されたシフトスリーブの形態で形成されている。第1のクラッチ部材39は、サイドシャフトギヤ33’に相対回動不能に結合された中間軸44のフランジ部分の半径方向外側に形成されている。軸部分42は、軸受45により定置のケーシング8内に回転可能に支持されており、付属のサイドシャフトにトルクを伝達するために用いられる。
【0045】
第1および第2のクラッチ27,28は、本実施形態ではアクチュエータ装置2により作動可能であり、アクチュエータ装置2は、構成および機能形式に関して
図1および
図2に示した実施形態に相応するため、この点についてはアクチュエータ装置2の説明を簡略的に参照されたい。
【0046】
アクチュエータ装置2により、以下のシフト位置が実現され得る。すなわち:シフトロッド4の中間位置P0(
図3に図示)では、2つの切替え部材6,7は各端部ストッパ24,25(図示せず)に軸線方向において支持されており、これにより、2つのクラッチ27,28は締結されている。シフトロッド4の第1の軸線方向位置P1では、第1の切替え部材6が第1の端部ストッパに支持されており、この場合、第1の切替え部材6を介して第1のクラッチ27が締結されている。第2の切替え部材7は、第2の端部ストッパから離れており、この場合、第2の切替え部材7を介して第2のクラッチ28は解除されている。シフトロッド4の第2の軸線方向位置P2では、第2の切替え部材7が第2の端部ストッパに支持されており、この場合、第2のクラッチ28が締結されている。第1の切替え部材6は、第1の端部ストッパから離れており、この場合、第1のクラッチ27は解除されている。
【0047】
図4には、車軸を駆動する本発明によるトランスミッション装置20もしくはハイブリッド駆動装置50が示されている。ハイブリッド駆動装置50には、内燃機関51と、電気機械52と、本発明によるアクチュエータ装置2を備えたトランスミッション装置20とが含まれる。
【0048】
トランスミッション装置20は、内燃機関51の第1の駆動トルクおよび/または電気機械52の第2の駆動トルクを車両の駆動軸に伝達するように形成されている。このためにトランスミッション装置20は、内燃機関に対応して配置された第1のトランスミッションユニット53と、電気機械に対応して配置された第2のトランスミッションユニット54と、オーバラップトランスミッション55とを有しており、オーバラップトランスミッション55は、第1のトランスミッションユニット53に結合された第1の入力部材56と、第2のトランスミッションユニット54に結合された第2の入力部材57と、出力経路内に後置されたディファレンシャル伝動装置26に結合された出力部材58とを備えている。オーバラップトランスミッション55の第1の入力部材56と出力部材58とを選択的に、互いに結合する、または互いに切り離すために、制御可能な第1のクラッチ27が設けられている。制御可能な第2のクラッチ28は、出力経路内でディファレンシャル伝動装置26の後ろ、すなわちディファレンシャル伝動装置26と車軸の一方のサイドシャフトとの間に配置されており、サイドシャフト遮断手段として用いられる。
【0049】
第1のトランスミッションユニット53は、本実施形態では多段トランスミッションとして形成されているが、これに限定されるものではない。多段トランスミッション53は、内燃機関51からオーバラップトランスミッション56への出力伝達を異なる変速比で可能にする、もしくは出力伝達の中断を可能にする。切替え用には、切替えユニットと呼ぶこともできる制御可能な切替えクラッチ59が設けられている。
【0050】
特に多段トランスミッション53は、入力軸60に回転可能に支持された第1の駆動ギヤ61および第2の駆動ギヤ62、ならびに入力軸60に平行な中間軸63を有しており、中間軸63は、第1の駆動ギヤ61に噛み合う第1の中間ギヤ64と、第2の駆動ギヤ62に噛み合う第2の中間ギヤ65とを備えている。切替えクラッチ59は選択的に、第1の駆動ギヤ61または第2の駆動ギヤ62を入力軸60に結合する、または入力軸60から切り離すために設けられている。第1のシフト段は、第1のギヤ対(61,64)により形成されており、これによりトルクを、入力軸60からオーバラップトランスミッション55の第1の入力部材56に第1の変速比で伝達することができる(第1のギヤ段)。第2のシフト段は、第2のギヤ対(62,65)により形成されており、これによりトルクを第2の変速比でもってオーバラップトランスミッション55に伝達することができる(第2のギヤ段)。ニュートラル位置では、2つの駆動ギヤ61,62は入力軸60から切り離されている。
【0051】
中間軸63は、オーバラップトランスミッション55もしくはディファレンシャル伝動装置26の回転軸線A26,A55に対して平行に配置されている。出力を伝達するために、第1の中間ギヤ64は、オーバラップトランスミッション55の第1の入力部材56を駆動するリングギヤ66に噛み合っている。リングギヤ66は、オーバラップトランスミッション55の支持体部材31に固く結合されており、支持体部材31は、オーバラップトランスミッション55の出力部材58に対して回転可能に支持されておりかつクラッチ27を介して出力部材58に駆動結合可能である。この点で、支持体部材31は駆動部材と呼ばれることもある。
【0052】
第2のトランスミッションユニット54は、電気機械52に駆動結合されている。電気機械52は、特にステータと、ステータに対して回転可能なロータとを有しており、ロータは、機械の給電時に駆動軸67を回転駆動する。駆動軸67は、第2のトランスミッションユニット54を介してオーバラップトランスミッション55の第2の入力部材57に駆動結合されている。第2のトランスミッションユニット54は、好適には減速伝動装置として、特に平歯車伝動装置として形成されており、これにより、電気機械52により導入された回転運動を、高速から低速に変速することができる。減速トランスミッション54もしくは平歯車伝動装置は、第1の駆動ギヤ68と、第1の駆動ギヤ68に噛み合う第1の中間ギヤ69とを備えた第1の変速段、ならびに第2の中間ギヤ70と、第2の中間ギヤ70に噛み合う第2の駆動ギヤ72とを備えた第2の変速段を有している。第2の駆動ギヤ72は、中空軸73を介して第2の入力部材57に結合されている。
【0053】
オーバラップトランスミッション55は、本実施例では遊星歯車伝動装置として形成されており、第1の入力部材としてのリングギヤ56と、リングギヤに対して同軸に配置された第2の入力部材としてのサンギヤ57と、サンギヤとリングギヤとに噛み合う複数のプラネタリギヤ71と、プラネタリギヤが回転可能に支持された出力部材58としてのプラネタリキャリアとを有している。プラネタリキャリア58は、ディファレンシャルケース29に固く結合されており、この場合、両構成部材は共にキャリア部材と呼ばれてもよい。支持体部材31とキャリア部材もしくはプラネタリキャリア58との結合により、オーバラップトランスミッション55の回転自由度が制限される、すなわち相対的な回転運動が解消される。クラッチ27の締結状態では、オーバラップトランスミッション55の部材56,57,58は互いにロックされており、共通の回転軸線A55を中心として共に回転する。
【0054】
第1のクラッチ27および第2のクラッチ28は、本発明によるアクチュエータ装置2(本実施形態では概略的にのみ図示)により作動可能である。構成および機能形式は、
図1~
図3に示した実施形態に相応するため、共通点については簡略的に前記説明を参照されたい。この場合、個々の同一の部分には同一の符号を付してある。
【0055】
内燃機関51と電気機械52とを備えた本実施形態のトランスミッション装置20もしくはハイブリッド駆動装置50は、有利には特に、無段変速機(Continuously Variable Transmission, CVT)、2つの駆動源、すなわち内燃機関および電気機械による並行駆動、後退駆動、内燃機関の引きずり始動、無負荷のシフト、車両停止時の内燃機関によるバッテリー充電の可能性、ならびに自動車停止時の電気機械による内燃機関の始動機能の技術的な特性を提供する。よって全体としてこのトランスミッション装置は、多数の運転モードと同時に簡単かつコンパクトな構成を兼ね備えている。この場合、これらの運転モードは、各切替え部材6,7を介してクラッチ27,28をその「閉」位置もしくは「開」位置に移行させることができる単一のアクチュエータ装置2のみを用いて簡単に実現され得る。
【0056】
図5には、本発明によるアクチュエータ装置2が第2の実施形態で示されており、第2の実施形態は大部分において
図1~
図4に示した実施形態に相応するため、共通点に関しては前記説明を参照されたい。この場合、個々の同一のもしくは互いに対応する部分には同一の符号を付してある。
図5に示す本実施形態の相違点は、シフトロッド4がモータ軸9に対して同軸に配置されておりかつ結合手段46を介してモータ軸9に相対回動不能に結合されている点である。この場合、変速比は想定されていない。
【符号の説明】
【0057】
2 アクチュエータ装置
3 アクチュエータ駆動装置
4 シフトロッド
5 スピンドル機構
6 第1の切替え部材
7 第2の切替え部材
8 ケーシング
9 モータ軸
10 伝動装置
12 第1の歯車
13 第2の歯車
14 滑り軸受
15 支持部分
16 回転部分
17 ばね部材
18 第1の軸ストッパ
19 第2の軸ストッパ
20 トランスミッション装置
22 第1の支持体スリーブ
23 第2の支持体スリーブ
24 第1のケーシングストッパ
25 第2のケーシングストッパ
26 ディファレンシャル伝動装置
27 第1の切替えユニット
28 第2の切替えユニット
29 ディファレンシャルケース
30,30’ 軸受
31 駆動装置部分/支持体部材
32 ディファレンシャルギヤ
33,33’ 出力部材/サイドシャフトギヤ
34 中間軸
35 中間軸
36 第1のクラッチ部材
37 第2のクラッチ部材
38 連結部材
39 第1のクラッチ部材
40 第2のクラッチ部材
42 軸部分
43 連結部材
44 中間軸
45 軸受
46 結合手段
50 ハイブリッド駆動装置
51 内燃機関
52 電気機械
53 第1のトランスミッションユニット/多段トランスミッション
54 第2のトランスミッションユニット/減速トランスミッション
55 オーバラップトランスミッション
56 第1の入力部材
57 第2の入力部材
58 出力部材
59 切替えクラッチ
60 入力軸
61 第1の駆動ギヤ
62 第2の駆動ギヤ
63 中間軸
64 第1の中間ギヤ
65 第2の中間ギヤ
66 出力部材/リングギヤ
67 入力部材/駆動軸
68 第1の駆動ギヤ
69 第1の中間ギヤ
70 第2の中間ギヤ
71 プラネタリギヤ
72 第2の駆動ギヤ
73 出力部材/中空軸
A 軸線
F 力方向
P 軸位置
R 回転方向
S シフト位置
【国際調査報告】