(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】抽出物、消費可能な製品及び抽出物における生物活性代謝産物を濃縮するための方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230111BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230111BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20230111BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230111BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20230111BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230111BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20230111BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20230111BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P3/00
A61P1/14
A61P1/16
A61P3/08
A23L33/10
A23K20/142
A61K31/165
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022526788
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 US2020059726
(87)【国際公開番号】W WO2021096813
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520253214
【氏名又は名称】ブライトシード・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リー・ヘイル・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・フラット
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・マルセラ・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・ナヴァロ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・リー・オチョア
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C206
【Fターム(参考)】
2B150AE33
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD61
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF14
4C206AA01
4C206AA10
4C206GA07
4C206GA28
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZA75
4C206ZC21
4C206ZC35
(57)【要約】
この開示は、方法及び1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された組成物に関する。チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法も本明細書で開示される。一部の実施形態は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸が濃縮された組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法であって、
(a)式Iの化合物
【化1】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され;破線の結合は存在する又は存在せず;
XはCH
2又はOであり;
ZはCHR
a、NR
a、又はOであり;
R
aは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され、
破線の結合は存在する又は存在しない]
を生産するための植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供する工程と、
(b)植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込む工程と
を含む方法。
【請求項2】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法であって、
(a)式IIの化合物
【化2】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して存在する又は存在せず、存在する場合は1つ又は複数の環原子(例えば2、3、及び/又は4位)の置換基であり、各環原子について独立してヒドロキシ基、ハロ基、置換若しくは非置換低級アルキル基、又は置換若しくは非置換低級アルコキシ基であり、
破線の結合は存在する又は存在しない]
を生産するための植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供する工程と、
(b)植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込む工程と
を含む方法。
【請求項3】
抽出物を植物から回収する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
植物をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
生物的ストレスが偽発芽である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが収穫後に適用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが収穫前に適用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非生物的ストレスが高浸透圧ストレス、塩、温度ストレス、異常な栄養条件、機械的衝撃、冠水、創傷、嫌気ストレス、酸化ストレス、オゾン、強光、重金属、毒性化学物質、超音波、紫外線、エリシターキトサン処理、改変レシチン処理、又はアブシジン酸処理の少なくとも1種から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
任意選択で抽出物を植物から回収する工程がエタノール抽出物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
植物がトリビュラス・テレストリス、アンノナ・モンタナ、アンノナ・ムルシカタ、アンノナ・チェリモラ、アンノナ・アテモヤ、ソラナム・チューベロサム、カンナビス・サティバ、リキウム・バルバルム、アリウム・サティブム、ソラナム・リコペルシカム、カプシカム・アンヌウム、カプシカム・フルテセンス、ソラナム・チューベロサム、アンノナ属種、リキウム・バルバルム、イポモエア・バタタス、ゼア・メイズ、ピパー・ニグラム、ディスファニア・アンブロシオイデス、ハイビスカス・サブダリファ、ピペル・アウリツム、ソラナム・リコペルシカム、又はアリウム・フィスツロスムの少なくとも1種から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
化合物がp-クマロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、n-フェルロイルチラミン、及びシナポイルチラミンから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
n-フェルロイルチラミンの収量が植物1kg当たり1000mgを超える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
p-クマロイルチラミンの収量が植物1kg当たり50mgを超える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが、植物を約25℃~約37℃及び6.5~約9.5のpHでインキュベートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが、植物を約30℃及び約8.5のpHでインキュベートすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非生物的ストレスが物理的創傷であり、式Iの化合物がn-フェルロイルチラミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
物理的創傷がn-フェルロイルチラミンを少なくとも9倍に増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
物理的創傷がn-フェルロイルチラミンを少なくとも13倍に増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
物理的創傷がn-フェルロイルチラミンを少なくとも33倍に増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
非生物的ストレスが紫外線であり、式Iの化合物がn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
植物が紫外線に約15~約30分間曝露される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
非生物的ストレスが温度ストレスであり、式Iの化合物がn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
温度ストレスがn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの生産を約25%~約47%増加させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法によって生産される消費可能な製品。
【請求項25】
栄養補助食品、食品成分、食品添加物、食品製品、飼料製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物である、請求項24に記載の消費可能な製品。
【請求項26】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された組成物であって、
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源材料を含み、抽出物又は供給源材料が酵素物質と接触されており、酵素物質が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換することが可能な1種又は複数の内因性酵素を含む、組成物。
【請求項27】
酵素物質がフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、4-クマル酸-CoAリガーゼ、ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ、クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ、クマロイル-CoA 3-ヒドロキシラーゼ、カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ、フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ、カフェイン酸/5-ヒドロキシフェルラ酸O-メチルトランスフェラーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ、又はこれらの組合せを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドがN-カフェオイルチラミン、N-フェルロイルチラミン、5-ヒドロキシフェルロイルチラミン、p-クマロイルチラミン、シンナモイルチラミン、シナポイルチラミン、又はこれらの組合せである、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
消費可能な製品である、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
消費可能な製品が栄養補助食品、食品成分、食品添加物、飼料製品、食品製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
抽出物又は供給源材料におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強するための方法であって、
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源材料を酵素物質と接触させる工程であって、酵素物質が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換することが可能な1種又は複数の内因性酵素を含み、
これにより抽出物又は供給源材料におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強する工程
を含む方法。
【請求項32】
抽出物又は供給源材料をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが式Iの化合物
【化3】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され;破線の結合は存在する又は存在せず;
XはCH
2又はOであり;
ZはCHR
a、NR
a、又はOであり;
R
aは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され、
破線の結合は存在する又は存在しない]
である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
供給源材料がトリビュラス・テレストリス、アンノナ・モンタナ、アンノナ・ムルシカタ、アンノナ・チェリモラ、アンノナ・アテモヤ、ソラナム・チューベロサム、カンナビス・サティバ、リキウム・バルバルム、アリウム・サティブム、ソラナム・リコペルシカム、カプシカム・アンヌウム、カプシカム・フルテセンス、ソラナム・チューベロサム、アンノナ属種、リキウム・バルバルム、イポモエア・バタタス、ゼア・メイズ、ピパー・ニグラム、ディスファニア・アンブロシオイデス、ハイビスカス・サブダリファ、ピペル・アウリツム、ソラナム・リコペルシカム、又はアリウム・フィスツロスムの少なくとも1種から選択される、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
N-ヒドロキシケイ皮酸アミド(HCAA)は、ヒドロキシシンナモイル-CoAチオエステル及び芳香族アミンの縮合によって合成される。ヒドロキシシンナモイル-CoAチオエステルはシンナモイル-CoA、p-クマロイル-CoA、カフェオイル-CoA、フェルロイル-CoA、及びシナポイル-CoAを含み、ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ、クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ、カフェイン酸O-メチルトランスフェラーゼ、フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ、及びヒドロキシケイ皮酸:CoAリガーゼを含む一連の酵素によってケイ皮酸から合成される(Douglas (1996) Trends Plant Sci 1:171~178頁)。
【背景技術】
【0002】
チラミン由来HCAAは一般的に、病原体感染又は創傷治癒領域の近くの組織の細胞壁に関連する。更に、フェルロイルチラミン及びフェルロイルオクトパミンは、ジャガイモ(ソラナム・チューベロサム(Solanum tuberosum))塊茎の天然及び傷害周皮の両方の共有結合型細胞壁構成成分であり、スベリンの芳香族ドメインの推定上の成分である。HCAAの堆積は、細胞壁消化率を低下させることによって病原体に対する障壁を作ると考えられる。HCAAは、ヒドロキシシンナモイル-CoAチオエステルとチラミン等のフェニルエチルアミン、又はプトレシン等のポリアミンの縮合によって形成される。チラミン由来HCAA生合成における最終工程は、ヒドロキシシンナモイル-CoA:チラミンN-(ヒドロキシシンナモイル)トランスフェラーゼによって触媒される。これらの化合物の重要な役割を考慮すると、植物におけるこれらの二次代謝産物のレベルを上昇させることが可能な手段及び方法を有することが望ましい。
【0003】
EP 1671534 A1は、植物を生物的及び/又は非生物的刺激で処理することによって、植物におけるデプシド、好ましくはジカフェオイルキナ酸及び/又はジカフェオイル酒石酸の含有量を増加させる方法を記載する。
【0004】
米国特許第7,666,455号は、ラッカセイの仁のサイズを縮小し、サイズが縮小したラッカセイの仁に非生物的にストレスを与え、非生物的にストレスを与えたサイズが縮小したラッカセイの仁を、サイズが縮小したラッカセイの仁におけるレスベラトロールの量を増加させることが可能な条件下でインキュベートすることによって、ラッカセイ材料におけるレスベラトロールの量を増加させるための方法を教示する。
【0005】
米国特許第9,227,898号は、サトウキビのビレットの切断側面に紫外線C又は紫外線B光を照射することによって、サトウキビにおけるスチルベン生産、特にレスベラトロール及びピセアタンノールを増加させるための方法を記載する。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0234657 A1号は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、及びペルオキシダーゼの発現を誘導し、リグニン生産を増強するための、改変レシチン、例えば、酵素処理レシチン(EML)並びにアセチル化レシチン(ACL)及びヒドロキシ化レシチン(HDL)等の化学処理レシチンによる植物の処理を教示する。
【0007】
更に、創傷を与えられたタバコ(Hagel及びFacchini (2005) Plan ta 22l:904~914頁)及びジャガイモ塊茎ディスク(Negrelら(1993) J. Plant Physiol. 142(5):518~524頁)は、フェルラ酸とチラミン又はオクトパミンとのアミドのレベルの上昇をもたらすことが示されており、エリシターキトサン処理は、ジャガイモにおいてクマロイルチラミンを増加させることが示されている(Schmidtら(1999) J. Biol. Chem. 274:4273~4280頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP 1671534 A1
【特許文献2】米国特許第7,666,455号
【特許文献3】米国特許第9,227,898号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0234657(A1)号
【特許文献5】米国特許第10,334,689(B2)号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Douglas (1996) Trends Plant Sci l:171~178頁
【非特許文献2】Hagel及びFacchini (2005) Planta 22l:904~914頁
【非特許文献3】Negrelら(1993) J. Plant Physiol. 142(5):518~524頁
【非特許文献4】Schmidtら(1999) J. Biol. Chem. 274:4273~4280頁
【非特許文献5】Kellerら(1996) Phytochemistry 42:389~396頁
【非特許文献6】Villegas及びBrodelius (1990) Physiol. Plant. 78:414~420頁
【非特許文献7】Negrel及びJavelle (1995) Physiol. Plant. 95:569~574頁
【非特許文献8】Zacaresら(2007) Mol. Plant Microbe Interact. 20(11)1439~48頁
【非特許文献9】Lovdalら(2010) Phytochemistry 71:605~613頁
【非特許文献10】Huyskens-Keil (2007) J. Appl. Bot. Food Qual. 81:140~144頁
【非特許文献11】Eichholz (2011) Food Chem. 126:60~64頁
【非特許文献12】Cantosら(2000) J. Agric. Food Chem. 48:4606~4612頁
【非特許文献13】Koら(2015) Internatl. J. Mol. Med. 36(4):1042~8頁
【非特許文献14】Knobloch及びHahlbrock (1977) Hoffm. Arch. Biochem. Biophys. 184:237~248頁
【非特許文献15】Lee及びDouglas (1996) Plant Physiol. 112:193~205頁
【非特許文献16】Hohlfeldら(1995) Plant Physiol. 107:545~552頁
【非特許文献17】Schmidtら(1998) Planta 205:51~55頁
【非特許文献18】Bradford (1976) Anal. Biochem. 72:248~54頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
諸態様では、本明細書で提供される開示は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法を記載する。一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法は、
(a)式Iの化合物
【0011】
【0012】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択され;破線の結合は存在する又は存在せず;
XはCH2又はOであり;
ZはCHRa、NRa、又はOであり;
Raは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択され、
破線の結合は存在する又は存在しない]
を生産するための植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供する工程と、
(b)植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込む工程と
を含む。
【0013】
一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法は、
(a)式IIの化合物
【0014】
【0015】
[式中、
R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して存在する又は存在せず、存在する場合は1つ又は複数の環原子(例えば2、3、及び/又は4位)の置換基であり、各環原子について独立してヒドロキシ基、ハロ基、置換若しくは非置換低級アルキル基、又は置換若しくは非置換低級アルコキシ基であり、
破線の結合は存在する又は存在しない]
を生産するための植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供する工程と、
(b)植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込む工程と
を含む。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、抽出物を植物から回収する工程を更に含む。一部の実施形態では、方法は、植物をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に含む。一部の実施形態では、生物的ストレスは偽発芽である。一部の実施形態では、少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスは収穫後に適用される。一部の実施形態では、少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスは収穫前に適用される。一部の実施形態では、非生物的ストレスは、高浸透圧ストレス、塩、温度ストレス、異常な栄養条件、機械的衝撃、冠水、創傷、嫌気ストレス、酸化ストレス、オゾン、強光、重金属、毒性化学物質、超音波、紫外線、エリシターキトサン処理、改変レシチン処理、又はアブシジン酸処理の少なくとも1種から選択される。
【0017】
一部の実施形態では、任意選択で抽出物を植物から回収する工程はエタノール抽出物を含む。一部の実施形態では、植物はトリビュラス・テレストリス(Tribulus terrestris)、アンノナ・モンタナ(Annona montana)、アンノナ・ムルシカタ(Annona muricata)、アンノナ・チェリモラ(Annona cherimola)、アンノナ・アテモヤ(Annona atemoya)、ソラナム・チューベロサム、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)、リキウム・バルバルム(Lycium barbarum)、アリウム・サティブム(Allium sativum)、ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum)、カプシカム・アンヌウム(Capsicum annuum)、カプシカム・フルテセンス(Capsicum frutescens)、ソラナム・チューベロサム、アンノナ属種(Annona spp.)、リキウム・バルバルム、イポモエア・バタタス(Ipomoea batatas)、ゼア・メイズ(Zea Mays)、ピパー・ニグラム(Piper nigrum)、ディスファニア・アンブロシオイデス(Dysphania ambrosioides)、ハイビスカス・サブダリファ(Hibiscus sabdariffa)、ピペル・アウリツム(Piper auritum)、ソラナム・リコペルシカム、又はアリウム・フィスツロスム(Allium fistulosum)の少なくとも1種から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、化合物はp-クマロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、n-フェルロイルチラミン、及びシナポイルチラミンから選択される。一部の実施形態では、n-フェルロイルチラミンの収量は、植物1kg当たり1000mgを超える。一部の実施形態では、p-クマロイルチラミンの収量は、植物1kg当たり50mgを超える。一部の実施形態では、少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスは、植物を約25℃~約37℃及び6.5~約9.5のpHでインキュベートすることを含む。一部の実施形態では、少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスは、植物を約30℃及び約8.5のpHでインキュベートすることを含む。
【0019】
一部の実施形態では、非生物的ストレスは物理的創傷であり、式Iの化合物はn-フェルロイルチラミンである。一部の実施形態では、物理的創傷はn-フェルロイルチラミンを少なくとも9倍に増加させる。一部の実施形態では、物理的創傷はn-フェルロイルチラミンを少なくとも13倍に増加させる。一部の実施形態では、物理的創傷はn-フェルロイルチラミンを少なくとも33倍に増加させる。一部の実施形態では、非生物的ストレスは紫外線であり、式Iの化合物はn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンである。一部の実施形態では、植物は紫外線に約15~約30分間曝露される。一部の実施形態では、非生物的ストレスは温度ストレスであり、式Iの化合物はn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンである。一部の実施形態では、温度ストレスはn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの生産を約25%~約47%増加させる。
【0020】
一部の実施形態では、消費可能な製品は本明細書に記載の通りの方法によって生産される。一部の実施形態では、消費可能な製品は栄養補助食品、食品成分、食品添加物、食品製品、飼料製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物である。
【0021】
一部の実施形態は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された組成物であって、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源材料を含み、抽出物又は供給源材料が酵素物質と接触されており、酵素物質が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換することが可能な1種又は複数の内因性酵素を含む、組成物に関する。
【0022】
一部の実施形態では、酵素物質はフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、4-クマル酸-CoAリガーゼ、ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ、クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ、クマロイル-CoA 3-ヒドロキシラーゼ、カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ、フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ、カフェイン酸/5-ヒドロキシフェルラ酸O-メチルトランスフェラーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ、又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドはN-カフェオイルチラミン、N-フェルロイルチラミン、5-ヒドロキシフェルロイルチラミン、p-クマロイルチラミン、シンナモイルチラミン、シナポイルチラミン、又はこれらの組合せである。一部の実施形態では、組成物は消費可能な製品である。一部の実施形態では、消費可能な製品は栄養補助食品、食品成分、食品添加物、飼料製品、食品製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物である。
【0023】
一部の実施形態では、抽出物又は供給源材料におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強するための方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、方法は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源材料を酵素物質と接触させる工程であって、酵素物質が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換することが可能な1種又は複数の内因性酵素を含み、これにより抽出物又は供給源材料におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、抽出物又は供給源材料をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に含む。一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは式Iの化合物である。一部の実施形態では、供給源材料はトリビュラス・テレストリス、アンノナ・モンタナ、アンノナ・ムルシカタ、アンノナ・チェリモラ、アンノナ・アテモヤ、ソラナム・チューベロサム、カンナビス・サティバ、リキウム・バルバルム、アリウム・サティブム、ソラナム・リコペルシカム、カプシカム・アンヌウム、カプシカム・フルテセンス、ソラナム・チューベロサム、アンノナ属種、リキウム・バルバルム、イポモエア・バタタス、ゼア・メイズ、ピパー・ニグラム、ディスファニア・アンブロシオイデス、ハイビスカス・サブダリファ、ピペル・アウリツム、ソラナム・リコペルシカム、又はアリウム・フィスツロスムの少なくとも1種から選択される。
【0024】
この開示は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物からなる、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された組成物であって、前記抽出物が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素活性を含む酵素物質と接触されている、組成物も提供する。一部の実施形態では、酵素物質はフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、4-クマル酸-CoAリガーゼ、ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ、クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ、クマロイル-CoA 3-ヒドロキシラーゼ、カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ、フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ、カフェイン酸/5-ヒドロキシフェルラ酸O-メチルトランスフェラーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ、又はこれらの組合せを含む。他の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドはN-カフェオイルチラミン、N-フェルロイルチラミン、5-ヒドロキシフェルロイルチラミン、p-クマロイルチラミン、シンナモイルチラミン又はシナポイルチラミンである。抽出物におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強するための方法と同様に、消費可能な製品、例えば栄養補助食品、食品成分若しくは添加物、食品製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ヒドロキシシンナモイル-CoAエステル及びチラミンからのチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの生合成のための概略経路を示す図である。しかし、明確にするために補因子及び補基質は示されていない。フェニルプロパノイド経路の酵素は、フェニルアラニンアンモニア-リアーゼ(PAL、E.C.4.3.1.24)、ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ(C4H、E.C.1.14.14.91)、4-クマロイル-CoAリガーゼ(4CL、E.C.6.2.1.12)、クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ(C3H、E.C.1.14.13.-)、クマロイル-CoA 3-ヒドロキシラーゼ(CCoA3H又は5-O-(4-クマロイル)-D-キナ酸3'-モノオキシゲナーゼ、E.C.1.14.14.96)、カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ(CCoAOMT、E.C.2.1.1.104)、フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ(F5H、E.C.1.14.-.-)、及びカフェイン酸/5-ヒドロキシフェルラ酸O-メチルトランスフェラーゼ(COMT、E.C.2.1.1.68)である。チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの生合成における追加の酵素は、ヒドロキシシンナモイルCoA:チラミンヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ(THT、E.C.2.3.1.110)、チロシンアンモニアリアーゼ(TAL、E.C.4.3.1.23)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH、E.C.1.14.16.1)及びチロシンデカルボキシラーゼ(TYDC、E.C.4.1.1.25)を含む。
【
図2】トリビュラス・テレストリス種子(1)、アサ(タイマ)種子殻(2)、アンノナ属種(アテモヤ)種子(3)、アンノナ・ムルシカタ(グアナバナ)種子(4)、A.チェリモラ(A. cherimola)(チェリモヤ)葉(5)、ゼア・メイズ軸(6)、トリビュラス・テレストリス(ゴートヘッド)種子(7)、A.チェリモラ硬材(樹皮及び中心部)(8)、ソラナム・リコペルシカム搾りかす粉(9)、S.チューベロサム(S. tuberosum)(イエローポテト)皮(10)、ピパー・ニグラム(黒コショウの実)果実(11)、S.チューベロサム(パープルポテト)皮(12)、S.チューベロサム(レッドポテト)皮(13)、S.リコペルシカム(S. lycopersicum)搾りかす(14)、S.リコペルシカム押出し搾りかす(15)、A.ムルシカタ(A. muricata)(グアナバナ)葉(16)、アリウム・サティブム(ニンニク)球根(17)、S.チューベロサム(パープルポテト)皮(18)、A.モンタナ(A. montana)(マウンテンサワーソップ)葉(19)、Z.メイズ(Z. mays)葉(20)、S.チューベロサム(パープルポテト)芽(21)、A.チェリモラ(チェリモヤ)種子(22)、アリウム・フィスツロスム(ネギ)植物全体(23)、S.チューベロサム(ホワイトポテト)皮(24)、A.チェリモラ(チェリモヤ)緑枝(25)、アサ(タイマ)葉(26)、S.チューベロサム(ホワイトポテト)皮(27)、S.リコペルシカム種子(28)、S.リコペルシカム(ビーフステーキ)果実全体(29)、A.ムルシカタ(グアナバナ)未熟果皮(30)、A.ムルシカタ(グアナバナ)熟した生の果実(31)、A.スクアモサ(A. squamosa)(バンレイシ)果実全体(32)、カプシカム・アンヌウム(セラノペッパー)果実(33)、S.チューベロサム(ラセットポテト)皮(34)、リキウム・バルバルム(ゴジベリー/クコシ)果実(35)、S.チューベロサム(パープルポテト)中心部(36)、ケノポジウム・キノア(Chenopodium quinoa)(キノア)種子(37)、イポモエア・バタタス(スイートポテト)ポテト全体(38)、イポモエア・バタタス(スイートポテト)皮(39)、アルモラシア・ルスティカーナ(Armoracia rusticana)(ホースラディッシュ)根(40)、S.チューベロサム(コロラドポテト)皮(41)、ファゴピラム・エスキュレンタム(Fagopyrum esculentum)(ソバ)殻(42)、カプシカム・フルテセンス(ピリペッパー)果実(43)、S.チューベロサム(パープルポテト)中心部(44)、C.アンヌウム(C. annuum)(タイチリ)茎及び葉(45)、A.ムルシカタ(グアナバナ)未熟生果実(46)、S.チューベロサム(イエローポテト)中心部(47)、並びにエラグロスティス・テフ(Eragrostis tef)(テフ)種子(48)を含む様々な供給源由来のエタノール抽出物中に存在するN-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン及びp-クマロイルチラミンの量(抽出物の%、w/w)を示す図である。
【
図3】ピパー・ニグラム(コショウの実)果実(1)、ディスファニア・アンブロシオイデス(アリタソウ)葉(2)、ハイビスカス・サブダリファ(ハイビスカス)ローゼル(3)、及びピペル・アウリツム(オハサンタ)葉を含む追加の供給源由来のエタノール抽出物中に存在するN-trans-フェルロイルチラミン及びp-クマロイルチラミンの量(mg化合物/kg乾燥植物材料)を示す図である。
【
図4】皮をむいた塊茎を傷つけた1、5及び9日後の、ソラナム・チューベロサム塊茎の中心部におけるN-trans-フェルロイルチラミンの生産に対する創傷ストレスの効果を示す図である。
【
図5A】対照の曝露されていない植物組織(CNTL)と比較した、15又は30分のUV-C曝露後のコショウの実におけるN-trans-フェルロイルチラミンの生産に対する照射ストレスの効果を示す図である(
図5A)。
【
図5B】対照の曝露されていない植物組織(CNTL)と比較した、15分のUV-C曝露後のグラビオラ葉及びネギにおけるN-trans-フェルロイルチラミン、N-trans-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの生産に対する照射ストレスの効果を示す図である(
図5B)。
【
図6】チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミド生産に対するタイマ種子の偽発芽の効果を示す図である。トーストしたタイマ種子を蒸留水に5日間浸漬し、N-trans-カフェオイルチラミン(M1)、N-trans-フェルロイルチラミン(M2)、又はp-クマロイルチラミン(M3)について毎日試料採取した。
【
図7】偽発芽によるN-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの組み合わせた濃縮に対する浸漬温度及びトースト条件の効果を示す図である。
【
図8】N-trans-フェルロイルチラミンの生産に対する、異なるストレスを組み合わせる効果を示す図である。レッドポテトをスライスし(すなわち創傷を与え)、10mg/mlの生きた内生菌根菌、10mg/mlの不活化cordy-gen菌、又は1mg/mlのラミナラン(褐藻類由来の多糖)の水溶液に漬けた。
【
図9】N-trans-フェルロイルチラミンの生産に対する、非生物的ストレスを前駆体と組み合わせた効果を示す図である。レッドポテトをスライスし(すなわち創傷を与え)、水中で6分間煮た又は400μMのチラミン若しくはクエン酸の水溶液(pH約4)に漬けた。
【発明を実施するための形態】
【0026】
チラミン由来N-ヒドロキシケイ皮酸アミド(HCAA)は一般的に、植物の病原体感染又は創傷治癒領域の近くの組織の細胞壁に関連する。更に、フェルロイルチラミン及びフェルロイルオクトパミンは、ジャガイモ(ソラナム・チューベロサム)塊茎の天然及び傷害周皮の両方の共有結合型細胞壁構成成分である。HCAAの堆積は、細胞壁消化率を低下させることによって病原体に対する障壁を作ると考えられる。
【0027】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは、バランスのとれた代謝(恒常性)の維持に関与する遺伝子の発現を調節する包括的な核転写因子HNF4α(肝細胞核因子4α)に対するアゴニスト活性を示すことが現在示されている。HNF4α活性をアゴナイズすることによって、植物特異的チラミン誘導体は、遊離脂肪酸の有害作用を軽減すること、代謝をモジュレートすること、消化の健康状態を改善すること並びに非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎及びII型糖尿病等の代謝障害の根底にある病因に対処することにおいて使用される。
【0028】
したがって、本開示は、1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物を、1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素活性を含む酵素物質と接触させることによって調製される。代替的に、又は加えて、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルの増強は、植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供し、任意選択で抽出物を植物から回収し、植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込むことによって達成され得る。本in situ方法は、植物抽出物又はそのフラクションにおけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの収量の増加を可能にし、これにより下流の処理及び精製コストを下げることができる。
【0029】
一部の態様では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは式Iの構造を有し、そのホモ二量体、ヘテロ二量体、及びコンジュゲートを含む:
【0030】
【0031】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択される。
【0032】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、及びR8はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択され、R4、R5、R6、R7、及びR9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、又はハロゲンである。
【0033】
一部の実施形態では、R1、R2、及びR8はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択され、R3、R4、R5、R6、R7、及びR9は、それぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、又はハロゲンである。
【0034】
一部の実施形態では、破線の結合は存在する又は存在しない。
【0035】
一部の実施形態では、XはCH2又はOである。
【0036】
一部の実施形態では、ZはCHRa、NRa、又はOである。
【0037】
一部の実施形態では、Raは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択される。
【0038】
一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは式IIの構造を有し、そのホモ二量体、ヘテロ二量体、及びコンジュゲート(例えばリグナンアミド)を含む:
【0039】
【0040】
式中、
R1は存在する又は存在せず、存在する場合は1つ又は複数の環原子(例えば2、3、及び/又は4位)の置換基であり、各環原子について独立してヒドロキシ基、ハロ基、置換若しくは非置換低級アルキル基、又は置換若しく非置換低級アルコキシ基であり;R2は存在する又は存在せず、存在する場合は1つ又は複数の環原子(例えば2、3、及び/又は4位)の置換基であり、各環原子について独立してヒドロキシ基、ハロ基、置換若しくは非置換低級アルキル基、又は置換若しくは非置換低級アルコキシ基であり、R3は存在する又は存在せず、存在する場合は1つ又は複数の環原子(例えば2、3、及び/又は4位)の置換基であり、各環原子について独立してヒドロキシ基、ハロ基、置換若しくは非置換低級アルキル基、又は置換若しくは非置換低級アルコキシ基であり、破線の結合は存在する又は存在しない。この開示に従い、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドはcis及びtrans異性体の両方を含む。
【0041】
本明細書の基について、以下の挿入的下付き文字は基を以下の通り更に定義する:「(Cn)」は基における正確な炭素原子数(n)を定義する。例えば「C1~C6-アルキル」は、1~6つの炭素原子(例えば1、2、3、4、5、若しくは6つ、又はそこから導き出せる任意の範囲(例えば3~6つの炭素原子))を有するアルキル基を表す。
【0042】
用語「低級アルキル」は、1~6つの炭素原子を含有する分枝状又は非分枝状飽和一価炭化水素基(すなわちC1~C6-アルキル)、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ブチル、n-ヘキシル等を意味することが意図される。
【0043】
同様に低級アルコキシ基は、Rが上で更に定義されている通りの「アルキル」である構造-ORを有するC1~C6-アルコキシ基である。特定のアルコキシ基は、例としてメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、1,2-ジメチルブトキシ等を含む。
【0044】
用語「ハロ」は、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)及びヨード(I)基を指すために本明細書で使用される。一部の実施形態では、ハロ基はフルオロ基である。
【0045】
本明細書に記載の基のいずれかにおいて、置換された基(例えば置換低級アルキル基又は置換低級アルコキシ基)は、利用可能な水素がアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アルコキシアルコキシ、アシル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アラルコキシカルボニル、ヘテロアリールスルホニル、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、アリールオキシカルボニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル又はグリコシル基で置き換えられていることを指す。
【0046】
一部の実施形態では、本開示は式(III)の化合物を包含する:
【0047】
【0048】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択される。
【0049】
一部の実施形態では、破線の結合は存在する又は存在しない。
【0050】
一部の実施形態では、ZはCHRa、NRa、又はOである。
【0051】
一部の実施形態では、Raは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択される。
【0052】
この出願において示される構造の原子の任意の定義されていない価数は、その原子に結合した水素原子を暗に表す。
【0053】
一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは式IVの構造を有する:
【0054】
【0055】
式中、
R2は存在する又は存在せず、存在する場合はヒドロキシ又はメトキシ基であり、
R3は存在する又は存在せず、存在する場合はヒドロキシル基又はメトキシ基であり、
R4は存在する又は存在せず、存在する場合はヒドロキシ又はメトキシ基である。
【0056】
「異性体」は、特に光学異性体(例えば本質的に純粋なエナンチオマー、本質的に純粋なジアステレオマー、及びそれらの混合物)並びに配座異性体(すなわちそれらの少なくとも1つの化学結合の角度だけが異なる異性体)、位置異性体(特に互変異性体)、及び幾何異性体(例えばcis-trans異性体)を指す。
【0057】
一部の実施形態では、本開示は式(V)の化合物を包含する:
【0058】
【0059】
一部の実施形態では、R3及びR4はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC2~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択される。
【0060】
一部の実施形態では、それぞれ独立して選択される破線の結合は存在する又は存在しない。
【0061】
一部の実施形態では、ZはCHRa、NRa、又はOである。
【0062】
一部の実施形態では、Raは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12ヘテロアリールから選択される。
【0063】
一部の実施形態では、Qa、Qb、Qc、Qdはそれぞれ独立して結合、CHRa、NRa、C=O、及び-O-から選択される。
【0064】
一部の実施形態では、Raは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C1~6アルキルC1~12ヘテロアリールから選択される。
【0065】
一部の実施形態では、Qc、Qdは存在しない。一部の実施形態では、Qdは存在しない。
【0066】
一部の実施形態では、nは1、2、3、又は4である。
【0067】
一部の実施形態では、式I、II、III、及びIVの化合物はカフェオイルチラミン、フェルロイルチラミン、クマロイルチラミン、シンナモイルチラミン、シナポイルチラミン、及び5-ヒドロキシフェルロイルチラミンから選択される。一部の実施形態では、式I、II、III、及びIVの化合物はn-カフェオイルチラミン、n-フェルロイルチラミン、n-クマロイルチラミン、n-シンナモイルチラミン、n-シナポイルチラミン、及び5-ヒドロキシフェルロイルチラミンから選択される。一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは以下の化合物のうちの1種である:
【0068】
【0069】
高等植物によるチラミンのヒドロキシケイ皮酸アミドの生合成は、フェニルプロパノイド経路、具体的には、チラミン部分及びヒドロキシケイ皮酸由来部分のカップリングを含む、ヒドロキシケイ皮酸チラミンアミド生合成経路を介する。アミドカップリング反応は、特定のヒドロキシケイ皮酸誘導体の活性化補酵素A(CoA)形態をチラミンと縮合する、チラミン-N-ヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ(以前はチラミン-N-フェルロイルトランスフェラーゼと称される)又はTHT(E.C.2.3.1.110)によって行われる。
【0070】
チラミン及びヒドロキシケイ皮酸部分は両方とも、芳香族アミノ酸及び葉酸化合物を生成するシキミ酸経路により生産される。チラミンの前駆体であるチロシンは、植物のプラスチドにおけるシキミ酸経路の中間体であるプレフェン酸から生産される。中心シキミ酸経路中間体コリスミ酸からコリスミ酸ムターゼによって誘導されるプレフェン酸は、アミン供与体としてグルタミンを使用するグルタミン酸プレフェン酸アミノトランスフェラーゼ(E.C.2.6.1.79)、又はアミン供与体としてアスパラギンを使用するアスパラギン酸プレフェン酸アミノトランスフェラーゼ(E.C.2.6.1.78)によるトランスアミナーゼ反応によりアロゲン酸に変換される。次いでアロゲン酸は、アロゲン酸デヒドラターゼ(E.C.4.2.1.91)又はアロゲン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.3.1.43)によってチロシンに変換される。最後にチロシンは、チロシンデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.25)によってチラミンに変換される。
【0071】
ヒドロキシケイ皮酸部分はフェニルアラニンの変換により生産され、フェニルアラニンは、チロシンのように、アロゲン酸からアロゲン酸デヒドラターゼによって生産される。次いでフェニルアラニンは、脱アミノ化工程を触媒するフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(E.C.4.3.1.24)によってtrans-ケイ皮酸に変換される。trans-ケイ皮酸はtrans-ケイ皮酸4-モノオキシゲナーゼ(E.C.1.14.14.91)によって4-ヒドロキシケイ皮酸に変換される。次いで4-ヒドロキシケイ皮酸及び補酵素Aは、4-クマル酸リガーゼ(E.C.6.2.1.12)によって4-クマロイル-CoAに変換される。カフェイン酸及びフェルラ酸を含む他のヒドロキシケイ皮酸ファミリーメンバーの活性化CoA形態は4-クマロイル-CoAから誘導される。
【0072】
チラミンのヒドロキシケイ皮酸アミドは、チラミン-N-フェルロイルトランスフェラーゼとしても知られるチラミン-N-ヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ(E.C.2.3.1.110)による、シンナモイル-CoA、p-クマロイル-CoA、カフェオイル-CoA、フェルロイル-CoA、及びシナポイル-CoAとチラミンとの縮合によって合成され、それぞれシンナモイルチラミン、p-クマロイルチラミン、N-カフェオイルチラミン、N-フェルロイルチラミン、及びシナポイルチラミンを生成する。生化学経路の概略図は
図1に提供される。
【0073】
原則として任意の植物が本開示に従って使用され得るが、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドは、ソラナム属種(Solanum sp.)(例えばトマト、ジャガイモ、イラクサ、トウガラシ、及びナス)、カプシカム(例えばピリピリペッパー及びセラノペッパー)、アリウム属種(Allium sp)(例えばニンニク、タマネギ、及びニラ)、トリビュラス属種(Tribulus sp.)(例えばハマヒジ)及びアンノナ属種(例えばチェリモヤ、カスタードアップル及びバンレイシ)を含む属に由来する植物において合成されることが示されている。試験した植物種のほとんどが、質量でエタノール抽出物中1%未満の力価で目的の化合物を生産することが見出された(
図2)。特に、アンノナ・ムルシカタ(グアナバナ)は、最高レベルのN-trans-カフェオイルチラミン及びp-クマロイルチラミンを生産するが、わずか低レベルのN-trans-フェルロイルチラミンを生産することが見出された。比較すると、アンノナ・アテモヤは、2番目に高い力価のN-trans-カフェオイルチラミン並びに高力価のp-クマロイルチラミン及びN-trans-フェルロイルチラミンの両方を生産した。更に、レッドポテト皮(ソラナム・チューベロサム)は、微量のN-trans-カフェオイルチラミン、高レベルのN-trans-フェルロイルチラミン及び最高力価のp-クマロイルチラミンを含有した。ネギは、2番目に多い量のp-クマロイルチラミン(ジャガイモ皮に次いで)、中程度のレベルのN-trans-フェルロイルチラミンを示し、検出可能な量のN-trans-カフェオイルチラミンを示さなかった。
【0074】
本開示の一態様に従い、フェノール化合物、特にチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミド及び/又はその生産のための基質の含有量を増加させるために、植物は少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレス又は刺激に供される。用語「植物」は、植物全体;植物部分、例えばシュート栄養器官/構造(例えば葉、茎及び塊茎)、根、花及び花器官/構造(例えば苞葉、萼片、花弁、雄しべ、心皮、葯及び胚珠)、種子(胚、胚乳、及び種皮を含む)及び果実(成熟した子房);植物組織(例えば維管束組織、基本組織等);並びに細胞(例えば孔辺細胞、卵細胞等)、及びその子孫及び培養物又は細胞株を含む。
【0075】
植物は、収穫前及び/又は収穫後に少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレス又は刺激に供され、その後ジュース、注入物及び発酵残渣を含む植物由来抽出物の調製に使用され得る。発酵産物、植物由来抽出物又はそれらの処理されたフラクション(例えば、精製されたチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを含む)は、ヒト及び動物用の健康促進組成物又は強壮剤等の消費可能な組成物並びに化粧品において使用される。
【0076】
少なくとも1種の生物的及び/又は非生物的処理を使用して、植物におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミド(例えばN-カフェオイルチラミン、N-フェルロイルチラミン、p-クマロイルチラミン、シンナモイルチラミン又はシナポイルチラミン)又はその前駆体のレベルを上昇させる。一部の実施形態では、1種より多く、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10種の生物的及び/又は非生物的処理が使用される。他の実施形態では、少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが収穫前に適用され、少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが収穫後に適用される。この開示の目的のために、用語「収穫」は、植物又は植物部分がその自然環境から取り除かれるプロセス又は期間を指す。例えば、植えられている土から取り除かれる場合は植物全体が収穫されるが、植物全体から取り除かれる場合は果実が収穫される。
【0077】
「生物的」ストレス又は刺激は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、益虫及び害虫、雑草、並びに栽培又は天然植物等の他の生きている生物によって生物に与えられる損傷の結果として生じるストレスと定義される。例えば蓄積するフェニルプロパノイドのうち、N-ヒドロキシシンナモイル-チラミンは、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)感染葉及び懸濁培養ジャガイモ細胞の両方において確認されている(Kellerら(1996) Phytochemistry 42:389~396頁)。ジャガイモにおけるP.インフェスタンス(P. infestans)誘導経路は、ニコチアナ・グルチノーサ(Nicotiana glutinosa)及びエッショルチア・カリフォルニカ(Eschscholzia californica)(Villegas及びBrodelius (1990) Physiol. Plant. 78:414~420頁)並びにニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)(Negrel及びJavelle (1995) Physiol. Plant. 95:569~574頁)の培養細胞におけるエリシター処理に応答して生じることも示されている。同様に、シュードモナス・シリンゲpv.トマト(Pseudomonas syringae pv. tomato)を接種したトマト植物は、p-クマロイルチラミン及びフェルロイルチラミンを蓄積することが示されている(Zacaresら(2007) Mol. Plant Microbe Interact. 20(11)1439~48頁)。
【0078】
この開示の方法において有用な適切な生物的刺激の例は、フィトフトラ・インフェスタンス、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、キサントモナス・カンペストリスpv.ベシカトリア(Xanthomonas campestris pv. vesicatoria)、エルウィニア・カロトボラ亜種カロトボラ(Erwinia carotovora subsp. Carotovora)、ラルストニア・ソラナケアルム(Ralstonia solanacearum)、シュードモナス・コルガタ(Pseudomonas corrugata)、アルテルナリア(Alternaria)、リゾクトニア(Rhizoctonia)、スクレロチニア(Sclerotinia)、コレトトリカム属種(Colletotrichum sp.)、ピシウム属種(Pythium sp.)、バーティシリウム(Verticillium)、フザリウム・ウィルト(Fusarium wilt)、葉枯病、黄化えそウイルス(spotted wilt virus)、トマトモザイクウイルス(tomato mosaic virus)、フルーツワーム、ネコブセンチュウ、ジャガイモウイルスY(Potato virus Y)、トマト黄化葉巻ウイルス(Tomato yellow leaf curl)、トマトモザイク(Tomato mosaic)、トマト斑点(Tomato mottle)、根朽病、うどんこ病、粉状そうか病、リーフロールウイルス、ブラエフラチロイデス・クベンセ(Braephratiloides cubense)、及びアザミウマを含むが、これらに限定されない。アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等の食品グレード真菌もフェノール化合物の生産を増強するために使用され得る。
【0079】
「非生物的」ストレス又は刺激は、生きている生物に対する非生物因子の負の影響と定義される。この開示の方法において有用な非生物的ストレスの例は、水枯れ又は高塩濃度等の高浸透圧ストレス、寒い又は暑い等の温度ストレス、異常な栄養条件、機械的衝撃、冠水、創傷、嫌気ストレス、酸化ストレス、オゾン、強光、重金属、毒性化学物質、超音波、紫外線、エリシターキトサン処理、改変レシチン処理、アブシジン酸処理、偽発芽及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0080】
実例として、窒素枯渇、温度、及び光は、トマトの葉におけるフェノール化合物の含有量及び遺伝子発現を相乗的に増加させることが示されている(Lovdalら(2010) Phytochemistry 71:605~613頁)。更に、チロシンデカルボキシラーゼ及びチラミンヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼレベルは、創傷を与えられたタバコ(Hagel及びFacchini (2005) Planta 221:904~914頁)及びジャガイモ塊茎ディスク(Negrelら(1993) J. Plant Physiol. 142(5):518~524頁)において上昇し、フェルラ酸とチラミン又はオクトパミンとのアミドのin vivo生産を同時に伴う。更に、エリシターキトサン処理はジャガイモにおいてクマロイルチラミンを増加させることが示されている(Schmidtら(1999) J. Biol. Chem. 274:4273~4280頁)。
【0081】
高浸透圧ストレスは、水枯れ、高塩濃度又は高溶質濃度条件への曝露を含む。水枯れは、植物が受け取る水の量を減らす又は排除することによって達成され得るが、高塩濃度又は高浸透圧条件は、例えば、少なくとも150mMのNaCl又は少なくとも300mMのマンニトールを含有する溶液に植物を曝露することを含み得る。植物を水で覆う又は水に沈めることによって、植物は冠水し得る又は水浸しになり得る。
【0082】
温度ストレスは、高温又は低温への曝露を含む。低温又は凍結ストレスは、植物環境の平均温度が15℃以下、更により厳しく5℃、より厳しく10℃以下、又はそれより低い条件であり得る。高温ストレスは、植物環境の平均温度が25℃以上、より厳しく30℃以上、更により厳しく35℃以上である条件であり得る。
【0083】
異常な栄養条件は多い又は少ない窒素、リン、鉄等を指す。
【0084】
用語「嫌気ストレス」は、低酸素及び無酸素を含む、本明細書で以前に定義された通りのストレスをもたらすのに十分な酸素レベルの任意の低下を意味する。
【0085】
酸化ストレスは活性酸素種の細胞内レベルを上昇させる任意のストレスを指す。
【0086】
創傷は、切断、スライス、研磨、押しつぶす、破壊、剥離、破砕、加圧、切りつける、摩砕、流体注入、浸透圧ショック、切り離す、細断、こする、穴あけ、挟む及び裂くことのような方法による、天然植物、組織及び/又は細胞構造の不可逆的侵害である。
【0087】
紫外線は、フェノール化合物の増加を誘導する非生物的ストレスであることが報告されている。UVBは、植物におけるフェノール系抗酸化剤生産を増加させるための最も頻繁に使用される照射源である。UVBスペクトルバンド(280~315μm)は、太陽光における短波長の光子の2%未満を担う。約10mW/cm2~約50mW/cm2の照度範囲でのUVB照射の収穫後適用は公知の方法によって行われ得る(Huyskens-Keil (2007) J. Appl. Bot. Food Qual. 81:140~144頁;Eichholz (2011) Food Chem. 126:60~64頁)。公知の方法に従って、約1mW/cm2~約25mW/cm2の照度範囲でのUVC処理(100~280nm)を使用してフェノール類の生産を誘導することもできる(Cantosら(2000) J. Agric. Food Chem. 48:4606~4612頁)。照射時間は、UV強度に依存し、ある特定の実施形態では約10分~約3時間の範囲であり、一部の継続時間は30分~1時間である。継続時間及び強度は、当技術分野の日常的な技能を使用して決定することができ、大量の植物材料を扱うための商業的設定により変動する。ある特定の実施形態では、照射は約20~40℃の範囲の温度で行われる。
【0088】
製麦と同様又は同一の偽発芽又は偽製麦処理は、当業者によって実施されるような技術を記載する。しかし、種子が休眠、例えば二次休眠中であるので、偽製麦に供された種子は発芽しない。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,334,689 B2号を参照されたい。
【0089】
生物的又は非生物的ストレスを植物に適用する工程は、重要な酵素の発現を誘導する、及び/又は酵素基質のプールを増加させ、次にこれが所望の化合物又は式Iの化合物のクラスの形成及び蓄積をもたらす。実際、本明細書で提供されるデータが実証する通り、ソラナム・チューベロサム塊茎の創傷はN-trans-カフェオイルチラミン生産の33倍の増加をもたらすことが見出された。
【0090】
この開示の別の態様に従い、植物又は抽出物における1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルは、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源植物材料を、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を含む酵素物質と接触させることによって増強される。ある特定の実施形態では、抽出物又は供給源材料及び酵素物質は、異なる供給源、例えば、同じ植物の2種以上の異なる組織、2種以上の異なる植物からの組織、又は植物及び微生物から得られる。一部の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む供給源材料を、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を含有する供給源材料と接触させる。別の実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む供給源材料を、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を含有する抽出物と接触させる。更なる実施形態では、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物を、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を含有する抽出物と接触させる。
【0091】
「抽出物」は、組成物が得られた天然供給源材料中に存在する他の物質から分離された目的の所望の化合物を含有する組成物を指す。一部の実施形態では、天然供給源材料は植物、微生物又は動物である。ある特定の実施形態では、抽出物は細菌又は真菌抽出物である。他の実施形態では、抽出物は植物抽出物である。植物抽出物は、植物全体を含む任意の植物組織;植物部分、例えばシュート栄養器官/構造(例えば葉、茎及び塊茎)、根、花及び花器官/構造(例えば苞葉、萼片、花弁、雄しべ、心皮、葯及び胚珠)、種子(胚、胚乳、及び種皮を含む)及び果実(成熟した子房);植物組織(例えば維管束組織、基本組織等);又は細胞(例えば孔辺細胞、卵細胞等)、並びにその子孫及び培養物又は細胞株から得られ得る。一部の実施形態では、抽出物はヒトの消費に一般的に安全と認められる。したがって、ある特定の実施形態では、抽出物は食用供給源に由来する。この点で抽出物は食用抽出物である。
【0092】
抽出物は、目的の供給源材料を凍結、摩砕、浸軟、粉砕及び/又は発酵し、供給源材料を溶媒抽出に供し、不溶性物質を可溶性物質から分離することによって調製され得る。この点で本開示の「抽出物」は、粗製であり得るか、分別、細分別、分離、単離、濃縮又は精製され得るが、これらに限定されない。用語「粗製」は、それが存在した元の組成物の成分から完全には分離されていない化合物又は分子を意味する。フラクション又はサブフラクションに関する実施形態では、粗製抽出物中の分子は部分分離に供され、他の物質を含有するあまり粗製でない抽出物を提供し得る。比較すると、用語「単離された」は、粗製抽出物におけるように、それが天然に存在する複合細胞環境に対して、化合物又は分子が実質的に濃縮又は精製されることを意味する。単離された分子が濃縮又は精製される場合、純度の絶対レベルは重要ではなく、当業者は、材料が供されるべき用途に従って純度の適当なレベルを容易に決定することができる。一部の状況では、単離された分子は、例えば他の成分を含有し得る組成物(例えば、多くの他の物質を含有するほぼ粗製の抽出物)の一部を形成する。他の状況では、単離された分子は、例えば分光光度法で、NMRによって、又はクロマトグラフィー(例えばLC-MS)によって決定される本質的な均質まで精製され得る。
【0093】
抽出物を調製するための適切な溶媒は、例えばn-ペンタン、ヘキサン、ブタン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、水、ブタノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、氷酢酸、アセトン、ノルフルラン(HFA134a)、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ヘプタフルオロプロパン(HFA227)、並びに亜臨界又は超臨界流体、例えば液体二酸化炭素及び水、又は任意の割合のこれらの組合せを含む。上記のもの等の溶媒が使用される場合、得られる抽出物は典型的には非特異的脂溶性物質を含有する。これは、特定の温度、典型的には-20℃に冷やすこと、続いて蝋質のバラストを除去するための濾過又は遠心分離、亜臨界若しくは超臨界二酸化炭素又は非極性溶媒(例えばヘキサン)による抽出、及び蒸留を伴う「脱蝋」を含む様々なプロセスによって除去され得る。
【0094】
「チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物」は、
図1に示される前駆体、すなわちチロシン、フェニルアラニン、チラミン、シンナモイル-CoA、ケイ皮酸、p-クマル酸、p-クマロイル-CoA、カフェイン酸、カフェオイル-CoA、フェルラ酸、フェルロイル-CoA、シナピン酸及び/又はシナポイル-CoAの1種又は複数を含む抽出物を指す。この開示に従ってこれらの前駆体の任意の天然の供給源を使用して、抽出物を提供することができる。実例として、p-クマル酸の天然供給源は、ラッカセイ、白インゲンマメ、トマト、ニンジン、バジル、ニンニク及びオオムギを含むが、これらに限定されない。更に、カフェイン酸の天然の供給源は、コーヒー、ウコン、バジル、タイム、オレガノ、セージ、キャベツ、リンゴ、イチゴ、カリフラワー、ダイコン、ネギ、マッシュルーム、ケール及びセイヨウナシを含むが、これらに限定されない。更に、フェルラ酸の天然の供給源は、ポップコーン、トマト、ニンニク、白インゲンマメ、タケノコ、及び焼いたスイートコーンを含む。加えて、ヒドロキシケイ皮酸リッチ供給源は、とりわけ穀物、穀草、果実、野菜及びハーブを含む。チーズも1種又は複数の前駆体の供給源である。
【0095】
「1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を含む酵素物質」は、
図1に示される酵素、すなわちPAL、C4H、4CL、C3H、CCoA3H、CCoAOMT、F5H、COMT、THT、TAL、PAH、及び/又はTYDCの1種又は複数を内因的に含む(例えば発現する)フラクション、サブフラクション、抽出物(本明細書に記載の通り)、単離された酵素、酵素複合体、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、又は植物組織培養物を指す。原則として、任意の植物を使用して本開示の酵素物質を供給することができるが、チラミンのヒドロキシケイ皮酸アミドは、ソラナム属種(例えばトマト、ジャガイモ、イラクサ、トウガラシ、及びナス)、アリウム属種(例えばニンニク、タマネギ、及びニラ)、トリビュラス属種(例えばハマヒジ)並びにアンノナ属種(例えばチェリモヤ、カスタードアップル及びバンレイシ)を含む属に由来する植物において合成されることが示されている。試験した植物種のほとんどが、質量でエタノール抽出物中1%未満の力価で目的の化合物を生産することが見出された(
図2)。特に、アンノナ・ムルシカタ(グアナバナ)は、最高レベルのN-trans-カフェオイルチラミン及びp-クマロイルチラミンを生産するが、わずか低レベルのN-trans-フェルロイルチラミンを生産することが見出された。比較すると、アンノナ・アテモヤは、2番目に高い力価のN-trans-カフェオイルチラミン並びに高力価のp-クマロイルチラミン及びN-trans-フェルロイルチラミンの両方を生産した。更に、レッドポテト皮(ソラナム・チューベロサム)は、微量のN-trans-カフェオイルチラミン、高レベルのN-trans-フェルロイルチラミン及び最高力価のp-クマロイルチラミンを含有した。ネギは、2番目に多い量のp-クマロイルチラミン(ジャガイモ皮に次いで)、中程度のレベルのN-trans-フェルロイルチラミンを示し、検出可能な量のN-trans-カフェオイルチラミンを示さなかった。
【0096】
更に、チラミンはチロシンの微生物触媒脱炭酸によっても生産される。様々な発酵微生物、特に乳酸菌は、チロシンデカルボキシラーゼ酵素をコードするtdcA遺伝子を発現する。この活性の例は、チーズ製品に見出されるエンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)による、チロシンのチラミンへの生物変換において見出される。
【0097】
この開示の所望のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを生産するために、ある特定の実施形態は、抽出物又は供給源材料を酵素物質と接触させることを含む。この開示の文脈において、「接触させた」又は「接触させること」は、前駆体の1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドへの変換を容易にするために、抽出物又は供給源材料及び酵素物質を一緒にすることを指す。一部の実施形態では、接触は、酵素物質が結合した固体表面上に抽出物を通過させることによって達成され得る。他の実施形態では、接触は、抽出物又は供給源材料を、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を発現する微生物と混合することによって達成され得る。ある特定の実施形態では、抽出物又は供給源材料と、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を発現する微生物との混合は、混合物にチロシンを補充することを更に含む。更なる実施形態では、接触は、抽出物又は供給源材料を、1種又は複数の前駆体を1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換する1種又は複数の内因性酵素を含む第2の抽出物、例えば植物抽出物又は供給源材料と混合することによって達成され得る。理想的には、抽出物又は供給源材料と酵素物質との接触は、酵素物質と接触していない同じ抽出物又は供給源材料と比較して、1種又は複数のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルの増強をもたらす。チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの生産を調節することが望ましい実施形態では、酵素活性は、補因子を含めることによって増強され得る、pH若しくは温度によってモジュレートされ得る、及び/又は酵素を酵素不活化工程、例えば熱処理に供することによって停止され得る。
【0098】
一部の実施形態では、供給源材料又は抽出物と、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体との接触は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの生産を更に増強し得る。したがって、一部の実施形態では、この開示の方法は、植物、供給源材料又は抽出物を、チロシン、フェニルアラニン、チラミン、シンナモイル-CoA、ケイ皮酸、p-クマル酸、p-クマロイル-CoA、カフェイン酸、カフェオイル-CoA、フェルラ酸、フェルロイル-CoA、シナピン酸及び/又はシナポイル-CoAを含むがこれらに限定されない、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に提供する。
【0099】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された抽出物は、そのまま使用され得る、又は沈殿、活性炭による処理、蒸発、濾過、クロマトグラフ分別、若しくはこれらの組合せによって更に処理され得る。チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された抽出物は、理想的にはクロマトグラフ分別によって得られる。クロマトグラフ分別は、典型的にはカラムクロマトグラフィーを含み、分子サイズ、電荷、溶解度及び/又は極性に基づき得る。クロマトグラフィー法の種類に応じて、カラムクロマトグラフィーは、例えばデキストラン、寒天、ポリアクリルアミド又はシリカからなるマトリックス物質で行われてもよく、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水、ジメチルホルムアミド、メタノール、食塩水、エチレンジクロリド、クロロホルム、プロパノール、エタノール、イソブタノール、ホルムアミド、メチレンジクロリド、ブタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム/ジクロロメタン等の溶媒を含み得る。
【0100】
代替法として、又はクロマトグラフィーと併せて、結晶化を行って高純度のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを得ることができる。チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの溶解度は、溶液の温度及び/若しくは組成を変化させることによって、例えばエタノールを除去することによって、並びに/又はpHを調整して沈殿を促進し、続いて沈殿した結晶若しくは油状物の濾過若しくは遠心分離によって調整される。
【0101】
典型的には、クロマトグラフィー工程の生成物は多数のフラクションで収集され、次いでこれらは任意の適切な分析技術(例えば、高若しくは中圧クロマトグラフィー、質量分析法)を使用して所望の化合物の存在について試験され得る。次いで所望の化合物が濃縮されたフラクションは、更なる精製のために選択され得る。
【0102】
実例として、N-trans-カフェオイルチラミンを含有する抽出物は、植物材料を摩砕又は粉砕し、植物材料を80%エタノールに室温で供し、80%エタノール抽出物を濾過及び濃縮し、濃縮された抽出物を水に再懸濁し、水溶液をヘキサンと分配し、クロロホルムを水性層に添加し、クロロホルム層を、シリカゲルを用いる液体クロマトグラフィーに供することによって得られる。例えばKoら(2015) Internatl. J. Mol. Med. 36(4):1042~8頁を参照されたい。
【0103】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを含有する抽出物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)等の従来の技術を使用して標準化され得る。用語「標準化された抽出物」は、抽出物中に存在する特徴的な成分又は生物活性マーカーを特定することによって標準化された抽出物を指す。特徴付けは、例えば、質量スペクトル(MS)、赤外線(IR)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析データ等のスペクトルデータの分析によるものとし得る。
【0104】
実質的に純粋なチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミド、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを含有する抽出物又はチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された植物材料は、対象による消費又は対象への投与のために消費可能な製品に組み込まれ得る。適切な消費可能な製品は、栄養補助食品、食品成分若しくは添加物、食品製品(例えば機能性食品)、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物を含むが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された、新規の調製された食品及び飲料を調製することができ、これは良好な代謝健康を促進する。したがって、この開示は、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された抽出物又は植物材料で調製された消費可能な製品も提供する。消費可能な製品の例は、栄養補助食品、食品成分若しくは添加物、食品製品(例えば機能性食品)、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物を含むが、これらに限定されない。
【0106】
食品成分又は添加物は、直接的又は間接的に任意の食品の成分になる又はそうでなければ任意の食品の特徴に影響を及ぼすことが意図された食用物質(食品の生産、製造、梱包、加工、調製、処理、包装、輸送、又は収容における使用が意図された任意の物質を含む)である。食品製品、特に機能性食品は、追加の補足的な栄養素及び/又は有益な成分を含むように、加工中に強化又は濃縮された食品である。この開示による食品製品は、例えばバター、マーガリン、甘い又は辛味のスプレッド、ビスケット、健康バー、パン、ケーキ、シリアル、キャンディー、菓子類、ヨーグルト又は発酵乳製品、ジュースベース及び野菜ベースの飲料、シェーク、フレーバーウォーター、発酵飲料(例えば昆布茶又は発酵イェルバ・マテ)、コンビニエンススナック、例えば焼いた若しくは揚げた野菜チップ又は他の押出しスナック製品、或いは任意の他の適切な食品の形態であり得る。
【0107】
栄養補助食品は、本開示の化合物又は抽出物を含有する、口から摂取される製品であり、食事を補うことが意図される。栄養補給食品は、食品に見出される基本的な栄養価に加えて、追加の健康利益を提供する食品源から誘導される製品である。医薬組成物は、薬理学的活性又は疾患の診断、治療、軽減、処置、若しくは防止における他の直接的な効果をもたらすこと、或いはヒト又は他の動物の身体の構造又は任意の機能に影響を及ぼすことが意図された薬品の任意の成分と定義される。栄養補助食品、栄養補給食品及び医薬組成物は、錠剤、コーティング錠剤、丸剤、カプセル剤、ペレット、顆粒剤、ソフトゲル、ゲルカプセル剤、液剤、散剤、乳剤、懸濁剤、エリキシル剤、シロップ剤、及び使用に適した任意の他の形態等の多くの形態で見出され得る。
【0108】
一部の実施形態では、チラミンのヒドロキシケイ皮酸アミドを含む濃縮された抽出物は担体と組み合わされる。本明細書で使用されるフレーズ「担体」は、対象化合物をある臓器又は身体の一部から別の臓器又は身体の一部に運搬又は輸送することに関与する液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム若しくは亜鉛、又はステアリン酸)、又は溶媒封入物質等の物質、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるべきであり、対象に有害であってはならない。担体として働き得る物質の一部の例は、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばカカオ脂及び坐剤ワックス;(9)油、例えばラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;(22)レシチンのような界面活性剤;並びに(22)従来の製剤に採用されている他の非毒性の適合性のある物質を含む。
【0109】
錠剤又はカプセル剤等の固体組成物を調製するために、濃縮された抽出物を担体(例えば従来の錠剤化成分、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はガム)及び他の希釈剤(例えば水)と混合して、固体組成物を形成する。次いでこの固体組成物は、本開示の有効量の化合物を含有する単位剤形に細分される。化合物又は抽出物を含有する錠剤又は丸剤は、コーティング又はそうでなければ調合され、長期作用の利点をもたらす剤形を提供することができる。
【0110】
本開示の化合物又は抽出物が、経口又は非経口投与のために組み込まれている液体形態は、水溶液、適切に風味付けされたシロップ剤、水性又は油性懸濁剤、及び食用油を用いる風味付けされた乳剤及びエリキシル剤及び同様のビヒクルを含む。水性懸濁剤のための適切な分散剤又は懸濁化剤は、合成天然ガム、例えばトラガント、アラビアゴム、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン又はゼラチンを含む。経口投与用の液体調製物は、例えば溶液剤、シロップ剤若しくは懸濁剤の形態をとってもよく、又は使用前に水若しくは他の適切なビヒクルで復元する乾燥製品として提示されてもよい。このような液体調製物は、従来の手段によって、許容される添加物、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース又は硬化食用脂肪);乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);保存剤(例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸);並びに人工又は天然着色料及び/又は甘味料を用いて調製され得る。
【0111】
この開示の単一用量製剤又は組成物を調製する方法は、本開示の濃縮された抽出物を担体並びに任意選択で1種又は複数の補助及び/又は活性成分と会合させる工程を含む。一般的に製剤は、本開示の濃縮された抽出物を液体担体、又は微細固体担体、又は両方と均一且つ密接に会合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。したがって、開示されている製剤は、適切な担体と組み合わせた本明細書に記載の濃縮された抽出物からなり得る、又は本質的になり得る。
【0112】
本開示の濃縮された抽出物が医薬品、栄養補給食品、又は栄養補助食品の形態でヒト及び動物に投与される場合、これらは例えば0.1~99%の活性成分を含有する組成物として、適切な担体と組み合わせて与えられ得る。一部の実施形態では、組成物は約10%~約30%の活性成分を許容される担体と組み合わせて含む。
【0113】
消費可能な製品は対象によって消費され、1日当たり100mg未満の本明細書に開示の化合物を提供する。ある特定の実施形態では、消費可能物は5~60mg/日のチラミンのヒドロキシケイ皮酸アミドを提供する。有効量は、当技術分野の研究において公知の方法によって確立され、バイオアベイラビリティ、毒性等に依存し得る。
【0114】
消費可能な製品が1種より多くのヒドロキシケイ皮酸アミドを含有することが企図されるが、消費可能な製品が単一のヒドロキシケイ皮酸アミドだけを含むことも企図される。1種又は複数の抽出物が任意の相対量で組み合わされ、2種以上のチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを所望の比で含有する成分のカスタム組合せを生産し、製品の有効性を増強し、官能特性又は製品の最終的使用に重要な品質の何らかの他の測定値を改善することができることも企図される。
【0115】
ある特定の高等植物種に天然に存在するより高い力価のチラミンのヒドロキシケイ皮酸アミドを生産する能力を考慮すると、この開示の方法は、より低コストの生産を有利に提供し、これにより下流の処理及び精製コストを下げる。加えて、この開示の方法を使用して、ある特定の高等植物種において見出される組成物を仮定して可能であり得るより、適合された有効な組成物を生産することが可能である。実際に組成物は、式Iの化合物のカスタマイズされた組合せで生産され得る。加えて植物は、例えばTHTのより大きな活性を促すため、及び基質のより多くのプールの生産を促すための処理の間に扱われ得る。
【実施例】
【0116】
以下の非限定的な実施例は、本開示を更に例示するために提供される。
【0117】
(実施例1)チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの供給源
エタノール抽出物を、様々な植物種及びその植物組織から調製した。乾燥植物粉末材料を95%水性エタノールで抽出することによって、個々の化合物を抽出物において特定した。エタノール抽出物を濃縮し、CELITE(登録商標)(珪藻土)に吸着させ、C18固相抽出カラムに乾燥充填した。2カラム体積の水で洗浄することによって抽出物を脱塩し、水を回収し、廃棄した。化合物を2カラム体積のメタノールで溶出させ、抽出物を濃縮乾固した。分析前に抽出物を1:1アセトニトリル:水に再懸濁した。分析前に既知の濃度の合成標準物を使用して検量線を作成した。この分析の結果をTable 1(表2)に提示する。
【0118】
【0119】
【0120】
ある特定のエタノール抽出物中のN-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン及びp-クマロイルチラミンの量(抽出物の%、w/w)を決定した。化合物の定量化は、エタノール抽出物の質量で結果を正規化することによって行った。これらの分析の結果を
図2に提示する。
【0121】
追加の植物組織のその後の分析は、N-trans-フェルロイルチラミン及びp-クマロイルチラミンの追加の植物供給源を特定した(Table 1(表2)に含まれる)。この第2の分析は第1と同様に行ったが、濃縮工程なしで、C18メタノール溶離液の直接的分析を可能にする異なる感度の高い分析機器を採用した。それらの結果を
図3に提示する。各化合物の抽出された質量(mg)を抽出に使用した乾燥植物材料の質量(kg)で正規化する。
【0122】
(実施例2)チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強させた抽出物
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの高等植物供給源の初めの分析的特徴付けは、これらの化合物の幅広く変化するレベルを示す(
図2)。基質を特定の下流の代謝経路に引き渡す生化学反応を触媒する代謝分岐点は多くの場合、目的の生成物の生化学合成全体における律速工程であることが知られている。THT工程はチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの生合成における律速工程であることが仮定される。更に、この反応の速度は、最初は基質により限定され、次に酵素により限定されると考えられる。
【0123】
したがって、より高いレベルのチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドを含む抽出物を生成するために、目的の基質、特にヒドロキシケイ皮酸誘導体若しくは目的の誘導体が濃縮された植物供給源及び/又はチラミンリッチ供給源を、THT酵素を含有する植物組織供給源と接触させる。THT酵素の植物組織供給源は、アンノナ属種、A.モンタナ(マウンテンサワーソップ)、A.ムルシカタ及びA.チェリモラ、トリビュラス・テレストリス、アリウム属種、A.サティバ(A. sativa)(ニンニク)及びA.フィスツロスム(A. fistulosum)(ネギ)、ソラナム・リコペルシカム(トマト)、カプシカム属種(Capsicum sp.)、C.アンヌウム(セラノペッパー)、並びにC.フルテセンス(C. frutescens)(ピリピリペッパー)を含む。
【0124】
THT含有植物供給源及びヒドロキシケイ皮酸由来基質含有植物供給源を、THT酵素の最適な活性に必要とされる温度及びpH条件と同様の条件下、すなわち30℃及び8.5のpHでインキュベートする。より一般的には、インキュベーションは25~37℃の温度及び6.5~9.5の範囲のpHを使用して行われる。実例として、N-trans-カフェオイルチラミンが濃縮された完成食品又は飲料製品は、THT含有植物組織をカフェオイルCoA供給源、例えばトリビュラス・テレストリス、アンノナ・モンタナ、アンノナ・ムルシカタ又はアンノナ・チェリモラと30℃及び8.5のpHで1時間インキュベートすることによって作製される。同様に、N-trans-フェルロイルチラミン、N-trans-クマロイルチラミン、又はN-trans-シンナモイルチラミンが濃縮された完成食品又は飲料製品は、THT含有植物組織を、それぞれフェルラ酸リッチ、酸リッチ又はケイ皮酸リッチ供給源とインキュベートすることによって作製される。
【0125】
発酵飲料又は食品製品は、チラミンを生産する、乳酸菌を含む微生物を1種又は複数のヒドロキシケイ皮酸、チロシン及びTHT酵素の供給源と共に使用して生産することもできる。
【0126】
(実施例3)創傷はN-trans-フェルロイルチラミンの生産を誘導する
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの高等植物供給源の初めの分析的特徴付けは様々なレベルを示す。基質を特定の下流の代謝経路に引き渡す生化学反応を触媒する代謝分岐点は多くの場合、目的の生成物の生化学合成全体における律速工程であることが知られている。THT工程はチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの生合成における律速工程であることが仮定された。更に、この反応の速度は、最初は基質により限定され、次に酵素により限定されると考えられた。したがって、植物を非生物的ストレス、例えば創傷に供することによって、上昇したレベルのチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドがin situで生成され得るかどうかを決定した。特に、傷つけることによってソラナム・チューベロサムの黄色塊茎に創傷を与え、傷つけてから1、5及び9日後に塊茎におけるN-trans-フェルロイルチラミンの生産を評価した。この分析の結果は、植物組織の物理的創傷がN-trans-フェルロイルチラミン生産の33倍の増加をもたらすことを示す(
図4)。イエローポテト塊茎と同様に、ホワイト、ラセット、ゴールド及びパープルポテト皮の創傷は、処理後14日の期間にわたりN-trans-フェルロイルチラミンの生産の178倍、13倍、及び9倍の増加をもたらした。更なる分析は、酸素が必要とされたこと、すなわちジャガイモは沈めることができなかったこと、クエン酸/NaClは創傷応答に対して悪影響を有していなかったこと、及び追加の基質(チラミン)の補充が創傷応答を増強したことを示した。
【0127】
(実施例4)UV-C照射はN-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの生産を誘導する
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルに対する照射の効果を決定した。特に、コショウの実をUV-C照射に15又は30分間曝露させ、室温で6時間インキュベートし、その後N-trans-フェルロイルチラミン生産についてアッセイした。この分析の結果は、UV-C照射への15分の曝露後にN-trans-フェルロイルチラミン生産収量のわずかな増加を示した(
図5A)。
【0128】
グラビオラ葉又はネギを使用して同様の分析を行った。この分析では、生の植物材料を直接UV-C照射に15分間供し、その後暗闇でインキュベートした(グラビオラは約5時間、ネギは終夜)。この分析の結果は、UV-C曝露がN-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン、及びp-クマロイルチラミン生産の50~300%の増加を誘導することを示した(
図5B)。
【0129】
(実施例5)偽発芽はN-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの生産を誘導する
タイマ種子におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルに対する偽発芽の効果を決定した。トーストしたタイマ種子を蒸留水に終夜浸漬した。水を抜き、種子を新しい蒸留水中で1日2回、5日間すすいだ。種子を湿気のある暗い環境で実験の時間経過にわたり維持し、種子の試料を毎日採取した。採取した各試料について、種子を乾燥させ、割り、ヘキサンで処理して脂肪を除去した。その後材料を粉にし、N-trans-フェルロイルチラミン、p-クマロイルチラミン、又はN-trans-カフェオイルチラミン生産について分析した。この分析は、N-trans-カフェオイルチラミン、N-trans-フェルロイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンのピーク誘導は2日目であるが(1.7倍の増加;
図6)、これらの化合物の濃縮は、終夜浸漬直後の1日目でさえ観察されたことを示した。
【0130】
追加の研究は、予備乾燥トースト温度及び蒸留水浸漬温度が達成される濃縮度に影響を及ぼすことを示す(
図7)。浸漬温度を摂氏20度から摂氏30度に上げると、N-trans-フェルロイルチラミン、N-trans-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの組み合わせた濃縮が対照より25%から47%増加する。一方、蒸留水(摂氏30度に維持した)に終夜浸漬する前に種子を10分間摂氏100度で再トーストすると、達成される濃縮度が12%に低下し、これはおそらくこのようなトースト条件が、偽発芽プロセスにおいて重要な役割を果たす酵素を不活化するからである。
【0131】
(実施例6)組み合わせたストレスはN-trans-フェルロイルチラミンの生産を誘導する
創傷がN-trans-フェルロイルチラミン生産を増加させ得ることが実証されたので、創傷とTHT酵素エリシターを組み合わせることがN-trans-フェルロイルチラミン生産を更に増強し得るかどうかを決定した。この分析のために、レッドポテトを標準の厚さにスライスした。その後、ジャガイモスライスを10mg/mlの生きた内生菌根菌、10mg/mlの不活化cordy-gen菌(Mycopia製)、1mg/mlのラミナラン(褐藻類由来の多糖)の溶液又は水(対照)に漬けた。ジャガイモスライスをゆるく覆い、空気の流れを可能にし、4又は8日間室温でインキュベートした。この分析の結果は、ラミナラン曝露と組み合わせた創傷はN-trans-フェルロイルチラミンの生産を実質的に増強したが、cordy-genと組み合わせた創傷はいくらかの増強をもたらし、生きた内生菌根は創傷に応答したN-trans-フェルロイルチラミン生産を妨げたことを示した(
図8)。
【0132】
(実施例7)創傷及び前駆体曝露はN-trans-フェルロイルチラミンの生産を誘導する
創傷がN-trans-フェルロイルチラミン生産を増加させ得ることが実証されたので、創傷をN-trans-フェルロイルチラミンの前駆体への曝露と組み合わせることがN-trans-フェルロイルチラミン生産を更に増強し得るかどうかを決定した。この分析のために、レッドポテトを標準の厚さ(1/4インチ;2つのジャガイモ/時点)にスライスした。その後、ジャガイモスライスを水中で6分間煮た、或いは400μMのチラミン(前駆体として)若しくはクエン酸(pH約4;保存剤として)の水溶液、又は水(対照)に漬けた。ジャガイモスライスをゆるく覆い、空気の流れを可能にし、4日間室温でインキュベートした。この分析の結果は、創傷及びチラミン曝露の組合せが4日目までにN-trans-フェルロイルチラミン生産を増強し得るが、クエン酸はほとんど効果を有しなかったことを示した(
図9)。とりわけ、チラミン漬けは創傷を与えられたジャガイモスライスの褐変を更に増加させたが、クエン酸はN-trans-フェルロイルチラミンの生産に影響を及ぼすことなく褐変経路を阻害した。
【0133】
(実施例8)酵素活性のストレス誘導増加の評価
生物的及び/又は非生物的ストレスを使用して、チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに関与する酵素のより多くの存在量及び活性を人工的に誘導すること、基質の供給量の増加を人工的に誘導すること、又はその両方が可能である。生物的及び/又は非生物的ストレスに応答した酵素活性評価は以下の通りに行うことができる。
【0134】
PAL活性は、100mMのTris-HCl緩衝液pH8.0及び酵素抽出物を含有する混合物(250μL)中でアッセイする。150μLの200mg mL-1 L-フェニルアラニン(最終濃度6mg mL-1)の添加によって反応を開始し、ケイ皮酸の生産を10分にわたりΔA290で測定する。
【0135】
C4H活性は、100mMのリン酸緩衝液(pH7.5)、1mMのDTT、1mMのNADPH、及び100μLの酵素抽出物を含有する混合物(250μL)中でアッセイする。10mMのtrans-ケイ皮酸(最終濃度1mM)の添加によって反応を開始し、290nmでの吸光度の変化を10分間記録する。
【0136】
4CL活性は、室温で、CoAエステルの形成を測定するための分光光度アッセイを使用して(Knobloch及びHahlbrock (1977) Hoffm. Arch. Biochem. Biophys. 184:237~248頁)、以前に記載された通りにアッセイする(Lee及びDouglas (1996) Plant Physiol. 112:193~205頁)。
【0137】
THT活性は公知の方法を使用してアッセイする(Hohlfeldら(1995) Plant Physiol. 107:545~552頁)。その活性の決定は、フォトダイオードアレイ検出と併せたHPLCによって行う(Schmidtら(1998) Planta 205:51~55頁)。
【0138】
酵素活性は、Bradford法(Bradford (1976) Anal. Biochem. 72:248~54頁)を使用してアッセイされ、算出される抽出物のタンパク質濃度の関数として表される。得られた酵素活性を対照試料に対して正規化し、正規化された値の変化倍率を算出する。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法であって、
(a)式Iの化合物
【化1】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され;破線の結合は存在する又は存在せず;
XはCH
2又はOであり;
ZはCHR
a、NR
a、又はOであり;
R
aは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され、
破線の結合は存在する又は存在しない]
を生産するための植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供する工程と、
植物を空気流に更に供する工程であって、
酵素、グルカン、クエン酸、真菌分離物、チラミン溶液の少なくとも1種、又はこれらの組合せと組み合わされる工程、
(b)植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込む工
程
を含む方法。
【請求項2】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルが増強された消費可能な製品を生産するための方法であって、
(a)式IIの化合物
【化2】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して存在する又は存在せず、存在する場合は1つ又は複数の環原子(例えば2、3、及び/又は4位)の置換基であり、各環原子について独立してヒドロキシ基、ハロ基、置換若しくは非置換低級アルキル基、又は置換若しくは非置換低級アルコキシ基であり、
破線の結合は存在する又は存在しない]
を生産するための植物を少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスに供する工
程、
(b)植物を空気流に更に供する工程であって、
酵素、グルカン、クエン酸、真菌分離物、チラミン溶液の少なくとも1種、又はこれらの組合せと組み合わされる工程、
(c)植物又は抽出物を消費可能な製品に組み込む工
程
を含む方法。
【請求項3】
抽出物を植物から回収する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
植物をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
生物的ストレスが偽発芽である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが収穫後に適用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが収穫前に適用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非生物的ストレスが高浸透圧ストレス、塩、温度ストレス、異常な栄養条件、機械的衝撃、冠水、創傷、嫌気ストレス、酸化ストレス、オゾン、強光、重金属、毒性化学物質、超音波、紫外線、エリシターキトサン処理、改変レシチン処理、又はアブシジン酸処理の少なくとも1種から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
任意選択で抽出物を植物から回収する工程がエタノール抽出物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
植物がトリビュラス・テレストリス、アンノナ・モンタナ、アンノナ・ムルシカタ、アンノナ・チェリモラ、アンノナ・アテモヤ、ソラナム・チューベロサム、カンナビス・サティバ、リキウム・バルバルム、アリウム・サティブム、ソラナム・リコペルシカム、カプシカム・アンヌウム、カプシカム・フルテセンス、ソラナム・チューベロサム、アンノナ属種、リキウム・バルバルム、イポモエア・バタタス、ゼア・メイズ、ピパー・ニグラム、ディスファニア・アンブロシオイデス、ハイビスカス・サブダリファ、ピペル・アウリツム、ソラナム・リコペルシカム、又はアリウム・フィスツロスムの少なくとも1種から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
化合物がp-クマロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、n-フェルロイルチラミン、及びシナポイルチラミンから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
n-フェルロイルチラミンの収量が植物1kg当たり1000mgを超える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
p-クマロイルチラミンの収量が植物1kg当たり50mgを超える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが、植物を約25℃~約37℃及び6.5~約9.5のpHでインキュベートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の生物的又は非生物的ストレスが、植物を約30℃及び約8.5のpHでインキュベートすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非生物的ストレスが物理的創傷であり、式Iの化合物がn-フェルロイルチラミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
物理的創傷がn-フェルロイルチラミンを少なくとも9倍に増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
物理的創傷がn-フェルロイルチラミンを少なくとも13倍に増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
物理的創傷がn-フェルロイルチラミンを少なくとも33倍に増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
非生物的ストレスが紫外線であり、式Iの化合物がn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
植物が紫外線に約15~約30分間曝露される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
非生物的ストレスが温度ストレスであり、式Iの化合物がn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
温度ストレスがn-フェルロイルチラミン、n-カフェオイルチラミン、及びp-クマロイルチラミンの生産を約25%~約47%増加させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法によって生産される消費可能な製品。
【請求項25】
栄養補助食品、食品成分、食品添加物、食品製品、飼料製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物である、請求項24に記載の消費可能な製品。
【請求項26】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが濃縮された組成物であって、
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源材料を含み、抽出物又は供給源材料が酵素物質と接触されており、酵素物質が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換することが可能な1種又は複数の内因性酵素を含む、組成物。
【請求項27】
酵素物質がフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、4-クマル酸-CoAリガーゼ、ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ、クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ、クマロイル-CoA 3-ヒドロキシラーゼ、カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ、フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ、カフェイン酸/5-ヒドロキシフェルラ酸O-メチルトランスフェラーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ、又はこれらの組合せを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドがN-カフェオイルチラミン、N-フェルロイルチラミン、5-ヒドロキシフェルロイルチラミン、p-クマロイルチラミン、シンナモイルチラミン、シナポイルチラミン、又はこれらの組合せである、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
消費可能な製品である、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
消費可能な製品が栄養補助食品、食品成分、食品添加物、飼料製品、食品製品、医療用食品、栄養補給食品又は医薬組成物である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
抽出物又は供給源材料におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強するための方法であって、
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの1種又は複数の前駆体を含む抽出物又は供給源材料を酵素物質と接触させる工程であって、酵素物質が1種又は複数の前駆体をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドに変換することが可能な1種又は複数の内因性酵素を含み、
1種又は複数の内因性酵素がフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL、E.C.4.3.1.24);ケイ皮酸-4-ヒドロキシラーゼ(C4H、E.C.1.14.14.91);4-クマロイル-CoAリガーゼ(4CL、E.C.6.2.1.12);クマル酸-3-ヒドロキシラーゼ(C3H、E.C.1.14.13.-);クマロイル-CoA 3-ヒドロキシラーゼ(CCoA3H、又は5-O-(4-クマロイル)-D-キナ酸3'-モノオキシゲナーゼ、E.C.1.14.14.96);カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ(CCoAOMT、E.C.2.1.1.104);フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ(F5H、E.C.1.14.-.-);及びカフェイン酸/5-ヒドロキシフェルラ酸O-メチルトランスフェラーゼ(COMT、E.C.2.1.1.68)、ヒドロキシシンナモイルCoA:チラミンヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ(THT、E.C.2.3.1.110);チロシンアンモニアリアーゼ(TAL、E.C.4.3.1.23)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH、E.C.1.14.16.1)及びチロシンデカルボキシラーゼ(TYDC、E.C.4.1.1.25)から選択され、
これにより抽出物又は供給源材料におけるチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドのレベルを増強する工程
を含む方法。
【請求項32】
抽出物又は供給源材料をチラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドの前駆体と接触させる工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
チラミン含有ヒドロキシケイ皮酸アミドが式Iの化合物
【化3】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9はそれぞれ独立して水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され;破線の結合は存在する又は存在せず;
XはCH
2又はOであり;
ZはCHR
a、NR
a、又はOであり;
R
aは水素、重水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているC-アミド、任意選択で置換されているN-アミド、任意選択で置換されているエステル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルケニル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキニル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12シクロアルキル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
4~12ヘテロシクリル、任意選択で置換されている-(O)C
4~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
5~12アリール、任意選択で置換されている-(O)C
1~12ヘテロアリール、及び任意選択で置換されている-(O)C
1~6アルキルC
1~12ヘテロアリールから選択され、
破線の結合は存在する又は存在しない]
である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
供給源材料がトリビュラス・テレストリス、アンノナ・モンタナ、アンノナ・ムルシカタ、アンノナ・チェリモラ、アンノナ・アテモヤ、ソラナム・チューベロサム、カンナビス・サティバ、リキウム・バルバルム、アリウム・サティブム、ソラナム・リコペルシカム、カプシカム・アンヌウム、カプシカム・フルテセンス、ソラナム・チューベロサム、アンノナ属種、リキウム・バルバルム、イポモエア・バタタス、ゼア・メイズ、ピパー・ニグラム、ディスファニア・アンブロシオイデス、ハイビスカス・サブダリファ、ピペル・アウリツム、ソラナム・リコペルシカム、又はアリウム・フィスツロスムの少なくとも1種から選択される、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】