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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】大気中の水蒸気を回収する装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/28 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
E03B3/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526806
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 MX2020050039
(87)【国際公開番号】W WO2021096343
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】MX/A/2020/001916
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MX
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522181382
【氏名又は名称】エルナンデス マイエン,アルフォンソ
【氏名又は名称原語表記】HERNANDEZ MAYEN, Alfonso
【住所又は居所原語表記】Calle 6, numero 478, Garcia Gineres, Merida, Yucatan, 97070 (MX)
(71)【出願人】
【識別番号】522181393
【氏名又は名称】コンソリダンド エル パトリモニオ,エス.エー.ピー.アイ. デ シー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】CONSOLIDANDO EL PATRIMONIO, S.A.P.I. DE C.V.
【住所又は居所原語表記】Heriberto Frias Numero 1032, Del Valle Centro, Ciudad de Mexico, 03100 (MX)
(71)【出願人】
【識別番号】522181407
【氏名又は名称】スチュワート ラン,ダニエル
【氏名又は名称原語表記】STEWART LANG, Daniel
【住所又は居所原語表記】Calle 6, numero 478, Garcia Gineres, Merida, Yucatan, 97070 (MX)
(71)【出願人】
【識別番号】522181418
【氏名又は名称】ヘリクサ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HEALIXA, INC
【住所又は居所原語表記】477 Madison Avenue 6th Floor, Manhattan, NY Nueva York, NY 10022 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート ラン,ダニエル
(57)【要約】
本開示は、凝華、相状態変化および融合の熱力学的プロセスを利用して、大気水蒸気を引き寄せ、捕捉し、有用な液体水に変換するための装置、システム、および製品を目的とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気水蒸気を引き寄せて収集し有用な液体水に変換するためのシステムであって、
低温相変化材料(Material de Cambio de Fase a Baja Temperatura、MCFBT)を含む複数の低温相変化材料(MCFBT)タンクであって、
個々の前記MCFBTタンクの外面のそれぞれは熱伝導性であって水の凝華のために滑らかに仕上げられた霜収集面を有しており、
これらの各外面上で水蒸気の固体状態(霜)への瞬時の変換が行われ、かつ、
個々の前記MCFBTタンクのそれぞれは、互いに近接して配置されているが、MCFBTタンクと、個々のタンク内の前記MCFBTの温度を低下させ維持するための冷却システムと、前記MCFBTのチューブまたは容器と、の列の各外面の周りを水蒸気が自由に流れまたは堆積できるように間隔を空けており、
前記冷却システムは、複数の蒸発器を含み、前記蒸発器のそれぞれが、水蒸気または空気と直接接触しないように、個々の前記MCFBTタンク内に前記MCFBTによって挿入および/または封入されている、複数のMCFBTタンクと、
前記MCFBTを所望の温度に維持し、それによって水の凝華を行うことができるよう複数の前記MCFBTタンクの表面の温度を維持するために、前記冷却システムを「オン」または「オフ」にする温度センサスイッチと、
複数の前記MCFBTタンクを包み込んで、複数の前記LTPCMタンクの各表面を周囲温度およびシステム熱から熱的に遮蔽可能な断熱ライナーと、
複数の前記MCFBTタンクを内包する隔離チャンバに出入りする大気水蒸気および/または大気空気の流れを許容、禁止または調節するためのシステムと、
複数の前記MCFBTタンクを包み込む前記断熱ライナーの外側の掻き取り機構であって、前記MCFBTタンクの前記霜収集面から堆積した霜を除去するための固定パターンと時間指定された固定掻き取り経路とを有する複数のスクレイパーを備える、前記掻き取り機構と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記冷却システムは、
圧縮機と、
前記圧縮機に接続された凝縮ユニットと、
一方の端において前記凝縮ユニットに接続され、他方の端において、個々の前記MCFBTタンク内に前記MCFBTによって挿入および/または封入された複数の前記蒸発器に接続された、複数の膨張装置と、
蒸発器の大部分に接続された液体ラインと、そして
閉ループ冷媒サイクル冷却システム内の冷媒作動流体と、
を含む冷媒冷却サイクルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の前記膨張装置は、これも前記MCFBTタンク、チューブ、または容器内に前記MCFBTによって挿入および/または封入されたキャピラリーチューブである、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、それぞれの膨張装置について第1弁および第2弁をさらに備え、
前記第1弁は、対応する前記膨張装置のすぐ上流のインラインにあり、第2弁は、対応する蒸発器のすぐ下流のインラインにあって、
両弁は、前記圧縮機が「OFF」のときに前記第1弁および前記第2弁を閉じることによって冷媒の流れを停止させ、前記圧縮機が「ON」のときに前記第1弁および第2弁をaiが開いて前記冷媒が前記サイクルを正常に流すことを可能にすることで、前記冷凍サイクルaiによって前記MCFBTにおいて行われる冷却作業を保全する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記冷却システムは、スターリング冷却器と、冷却ヘッドと、再生器と、を備えるスターリングチラーサイクルであって、
前記システムの複数の前記蒸発器は、ふるい分け回路内にあって、熱作動流体で満たされており、前記スターリングチラー冷却ヘッドに取り付けられている、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記冷却システムは、
ヒートシンクに取り付けられた「熱」側面を備えた熱電モジュール冷却器と、
前記熱電モジュール冷却器の「冷」側面と、
を備える熱電冷却サイクルであって、
前記システム内の気化器の大部分は閉ループ内にあって熱作動流体で満たされている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記冷却システムは、
電気音響トランスデューサと、共振器と、共振器と、
再生器と、
低温熱交換器と、
を備える電気音響トランスデューササイクルであって、
前記システムの複数の前記蒸発器熱交換器は閉回路内にあって、熱作動流体で満たされており、前記低温熱交換器に取り付けられている、請求項1から請求項6の何れか一項に記載のシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、水の凝華(deposition of water)として知られる熱力学的プロセスを利用した大気中の水の回収および/または調達に関する。本開示はまた、一般に、大気中の水蒸気を引き寄せて捕捉するように設計された装置に関連し、捕捉した水蒸気を霜の形態で固体状態に瞬時に相変化させる凝華として知られるプロセスと、取得された霜を取り出す機構と、取り出した霜を液体状態に相変化させるプロセスと、そして最後に、例えば上水、飲料水、農業その他商業用または個人用を含む様々な用途、システム、製品、デバイスおよび/またはコンポーネントのための、液体水の保管および/または使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年11月16日に出願された米国仮出願第61/413,995号および2011年9月8日に出願された米国仮出願第61/532,104号に対する優先権を主張する。これらの優先出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願は、2010年11月16日に出願された米国仮出願第61/413,995号、2011年9月8日に出願された米国仮特許出願第61/532,104号、2012年11月15日に出願されたPCT/US2012/065170、2012年11月15日に出願されたPCT/US2012/065174、2016年7月11日に提出されたPTC/US2017/041530、2016年12月8日に付与されたメキシコ特許第344188号、2017年7月18日に付与された米国特許第9,711,705号にも関連する。これらの関連出願の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。今日、結露を利用して大気から水蒸気を回収するために、多くのデバイス、システム、および製品が存在し使用されている。水の凝縮は温度と圧力の両方に依存するため、このようなデバイス、システム、および製品は、入ってくる大気空気および構成水蒸気の絶えず変化する多数の周囲温度および圧力に対応するように、企画および/または設計されなければならない。前述の企画および/または設計上の考慮事項のせいで、必要とされるシステム水の結露条件を達成すると同時にシステム全体の実効性を得るためには、周囲温度および圧力のこれらの変化が、組み込まれるシステムのコストと継続的なエネルギーコストの大幅な上乗せをもたらすことになる。
【0003】
一部の製品では、変動する周囲大気条件に対応するための設計により、パッケージ全体のサイズ、重量、コンポーネントが上乗せされ、最終製品、設置、運用のコストが増加する。多くの場合、大気中の水を回収するシステムの能力と効果は、周囲の相対湿度と温度条件に直接関連している。全体的なパフォーマンスは、相対湿度が低く温度が高いと低下し、多くの場合、有用な水が回収されるのは、相対湿度が30%超の大気条件中にあるシステムに限定される。さらに、現在市販されている結露に基づくシステムの全てにおいて、より低い相対湿度レベルでは、液体水の取得量が減少し取得される水の単位当たりのコストは増加する。さらに、大気中の水の露点が水の氷点未満になった場合には、現在市販されている凝縮に基づくシステムでは水回収は不可能である。
【0004】
使用可能な液体水を取得および供給するために、貯水池、河川、帯水層、地下水井戸、廃水処理プラント、脱塩プラントなど、他の多くの水セクタが存在している。これらの供給源およびシステムの多くは、何世紀にもわたって成功裏に使用されてきた。しかしながら、世界の人口が増加の一途をたどる中、水不足がますます広がっている。さらに、人類の水需要と気候変動が増え続けているのに対し、現在の貯水池、河川、帯水層の容量は一貫して減少している。これらの供給源の汚染によっても、人口および産業が使用可能な液体水にアクセスできなくなっている。さらに、前述の全ての供給源には、供給源から水を取得する際のエネルギーコストとメンテナンスコストが組み込まれている。
【0005】
さらに、多くの場合、前述の供給源は全て、補助的なメンテナンスおよびエネルギーを必要とする分配システムに依存している。これらの補助的な要件によって、エンドユーザに供給される単位あたりの水に追加コストが加えられる。
【0006】
現在、エンドユーザに水を輸送するためには多数の分配方法が採用されている。いくつかの一般的な例は、水道橋、パイプ、トラック、船舶、および/またはこれらの方法の異なる組み合わせである。しかしながら、これらの方法は、人口規模およびシステム利用期間の増加とともに水供給システムのエネルギーコストおよび/または維持コストが増加するため、一般に不十分である。多くの場合、世界の先進国の例でさえ、エンドユーザに向かう途中でのパイプ漏れにより、供給可能な水の30%から50%超が失われている。現代の水道システムの場合、取得した供給可能な水のかなりの量が、供給源の場所から地方の分配プラントへ、エンドユーザへと移動する間に、大気に蒸発している。さらに、場合によっては、水の取得、分配および供給のためのエネルギー使用量は、人口のエネルギー消費全体の20%にも達することがある。したがって、増加する人口の増加する水需要を満たすためには、使用可能な清潔な水をより効率的かつ効果的に回収および供給するための製品および/または改良された装置やシステムが必要である。
【0007】
さらに、人口が都市にますます移住して、これらの人口内または近隣における商業上および産業上の関心が高まっているため、必要な水を効率的かつ効果的に地元で取得して分配、供給および関連するメンテナンスコストを削減または排除するための、改良されたデバイス、システム、および製品が必要とされている。 本開示は、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服および/または改善することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、熱力学的プロセスである凝華を利用した、大気から取得される水蒸気(大気水蒸気とも称する)の回収に関し、これにより霜および/または氷を捕捉し得る。例示的な実施形態では、捕捉された霜および/または氷は、収集領域または収集面から取り出され、霜が溶けて液体水になることができるように熱制御された環境で貯蔵され得る。
【0009】
例示的な実施形態では、取得した大気水蒸気は、回収、変換、貯蔵および/または供給され、これによってユーザの所望の場所においてオンデマンドで利用可能とされ得る。例えば、例示的な実施形態では、分配および/または供給される液体水の必要性が、装置、システム、および/または製品によって排除または低減され得る。
【0010】
例示的な実施形態では、所望の量の大気水蒸気が、様々な温度の大気から取得され得る。例えば、例示的な実施形態では、装置、システム、および/または製品は、任意の気候帯(例えば、熱帯、温帯、または極地)において、所望の量の大気水蒸気を取得し得る。
【0011】
例示的な実施形態では、所望の量の大気水蒸気が、様々な高度の大気から取得され得る。例えば、例示的な実施形態では、装置、システム、および/または製品は、海面および/または高い高度およびその間の任意の高度において、所望の量の大気水蒸気を取得し得る。
【0012】
例示的な実施形態では、所望の量の大気水蒸気が、様々な相対湿度(R.H.)レベルの大気から取得され得る。例えば、例示的な実施形態では、装置、システム、および/または製品は、5%R.H.未満、10%R.H.、20%R.H.、30%R.H.、および/またはより大きなR.H.レベルにおいて、所望の量の大気水蒸気を取得し得る。
【0013】
例示的な実施形態では、所望の量の大気水蒸気が、屋外環境の大気から取得され得る。
【0014】
例示的な実施形態では、所望の量の大気水蒸気が、屋内環境の雰囲気から取得され得る。
【0015】
例示的な実施形態では、所望の量の大気水蒸気が、屋内および/または屋外環境の雰囲気の組み合わせにおいて取得され得る。
【0016】
例示的な実施形態では、取得された大気水蒸気は、システムの収集領域内に周囲大気の温度よりも低い温度を使用することによって、装置、システム、および/または製品内に引き寄せられ得る。
【0017】
例示的な実施形態では、取得された大気水蒸気は、システムの収集領域内に周囲の雰囲気の圧力よりも低い圧力を使用することによって、装置、システム、および/または製品内に引き寄せられ得る。
【0018】
例示的な実施形態では、取得された大気水蒸気は、システム内の収集領域内に周囲大気の温度および圧力の組み合わせよりも低い温度および低い圧力の何らかの組み合わせを使用することによって、装置、システム、および/または製品内に引き寄せられ得る。
【0019】
例示的な実施形態では、捕捉された霜は、収集面から霜を掻き取ることによって取り出され得る。
【0020】
例示的な実施形態では、捕捉された霜は、収集面上の振動周波数を利用する手段によって取り出され得る。
【0021】
例示的な実施形態では、捕捉された霜は、収集面上に防氷性コーティングを適用することで支援される重力によって取り出され得る。
【0022】
例示的な実施形態では、冷凍サイクルシステム(例えば、圧縮機、凝縮コイル、膨張装置、蒸発器コイルおよび作動流体)によって、収集領域または収集面が低温とされ得る。
【0023】
例示的な実施形態では、スターリングサイクルシステム(例えば、スターリングチラーおよび再生器)によって、収集領域または収集面が低温とされ得る。
【0024】
例示的な実施形態では、ペルチェ効果(例えば、熱電モジュールチラーおよびヒートシンク)によって、収集領域または収集面が低温とされ得る。
【0025】
例示的な実施形態では、熱音響冷凍システム(例えば、電気音響変換器、共振器、再生器、高温および低温熱交換器および音響媒体または作動流体)によって、収集領域または収集面が低温とされ得る。
【0026】
例示的な実施形態では、まず、液体窒素カートリッジの制御放出によって収集領域または収集面が低温とされ、その後、先に記載した冷却方法のいずれかによって維持され得る。
【0027】
例示的な実施形態では、先に説明した冷却方法のいずれかによって収集領域または収集面が低温に維持され得るが、冷却プロセスに使用されるシステムが必要とする仕事量(work)を低減するために、相変化材料(phase change material、PCM)を添加して収集領域内における熱障壁として使用し得る。例えば、液体から固体への相変化点が-35℃のPCM内に蒸発コイルを封入すると、選択した冷却システムは、例えば30℃の大気の周囲温度から所望の-40℃まで、70℃にもなり得るような非常に大きなサーマルデルタで作動し続けるのではなく、-36℃でオンになった後に例えば-40℃で再びオフになり、4℃のサーマルデルタを維持しながら最小量の仕事(work)を行うようにシステムを設計できる。さらに、物体の固相の比熱は、一般に、その液体または気体状態の比熱よりも低く、これは固体状態のPCMを冷却する方が液体または気体状態のPCMを冷却するよりも1グラム1℃当たりのエネルギーが少なくて済むことを意味する。
【0028】
例示的な実施形態では、収集領域内を低温に維持し、冷たい乾燥空気の出口手段を設けることによって、収集領域の圧力が周囲圧力よりも低くされ得る。
【0029】
例示的な実施形態では、システムの冷却サイクルによって生成した熱は、捕捉された霜を融解して液体水にするために使用され得る。
【0030】
例示的な実施形態では、新たに融解された液体水(冷水)は、熱を減少させ、それによりシステムの冷却サイクルのエネルギー需要を低減するために使用され得る。例えば、システムの冷水タンクを横切って空気を吸入するように凝縮コイル用のファン入口を配置して必要とされるファン速度を低下させ、これによってシステムに必要な全体的なエネルギーを低減してもよい。
【0031】
例示的な実施形態では、液体ラインの端部における冷媒の状態を制御するために、冷凍サイクル冷却システムのキャピラリーチューブ膨張装置の一部が、蒸発コイルの低温PCMに埋め込まれ、或いは部分的に埋め込まれて、システムのエネルギー要件が低減され得る。
【0032】
例示的な実施形態では、冷却システムによって発生する熱は、凝縮コイルの前もしくは後に液体PCM塊(liquid PCM mass)中に埋め込まれたブレージングプレート熱交換器を用いて、例えば給湯器もしくは空間ヒータのような別のシステムに転送され、規制されて、システムに必要とされる仕事量およびエネルギーが低減され得る。
【0033】
例示的な実施形態では、装置、システム、および/または製品は、エンドユーザに供給されるべき量の水が重力によって確実に供給されるように据え付けられ、それによりポンプの使用および付随的なメンテナンスおよび/またはエネルギーコストが削減または排除されるように、設計され得る。
【0034】
例示的な実施形態では、装置、システム、および/または製品に、保証された飲料水を供給するための追加の濾過装置の使用を採用し得る。
【0035】
概要で論じた実施形態に加えて他の実施形態も、明細書、図面、および特許請求の範囲に開示されている。概要は、本開示について企図される全てのそれぞれの実施形態、組み合わせ、または変形を網羅することを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、例示的な実施形態について、あくまで例示として、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、例示的な実施形態の模式図である。
【0038】
図2は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、別の例示的な実施形態の模式図である。図2は、蒸発コイルを低温封入PCMに埋め込むことにより冷凍サイクルによって行われた冷却仕事の一部を保全する手段を図2が開示している点を除いて、図1と同様である。
【0039】
図3は、図2の埋め込まれた蒸発コイルの模式図である。
【0040】
図4は、図3の埋め込まれた蒸発コイルの断面図である。
【0041】
図5は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、別の例示的な実施形態の模式図である。図5は、図5では凝縮コイルおよび膨張装置の端部もまた、図2図3および図4に開示された低温封入PCMに埋め込まれている点を除いて、図2と同様である。
【0042】
図6は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、別の例示的な実施形態の模式図である。図6は、図6においてブレージングプレート熱交換器がファンに置き換えられており、取得した熱エネルギーを凝縮コイルが二次システムに伝達する点を除いて、図5と同様である。
【0043】
図7は、図1図2図5および/または図6に開示された例示的な実施形態の模式図であり、大気水蒸気を収集領域におよび収集領域から、引き寄せ、方向付け、循環させる方法を開示している。
【0044】
図8は、霜収集面を熱的に隔離する方法を開示する図7の細部の模式図である。
【0045】
図9は、霜収集面間の体積サイクルを制御する方法を開示する図8の、別の細部の模式図である。
【0046】
図10は、収集面から集積水タンクに霜を除去する方法を開示する図7の、別の細部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、大気水蒸気を引き寄せ、水の凝華として知られる熱力学的プロセスを利用して回収することを目的としており、凝華において、水蒸気は液相および相を蒸気から氷または霜に直接「スキップ」する。
【0048】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、水の凝華に必要な氷点下の温度を達成し維持することが可能な現在の冷凍システムのエネルギー要件を低減することを目的としている。特定の実施形態は、化石燃料および/またはエネルギー電力網から、少なくとも10%または100%まで独立していてもよい。
【0049】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、水蒸気が固相に相変化したときに水蒸気内から放出される熱エネルギーのごく一部分を、また他の実施形態はかなりの部分を、転用することを目的としている。特定の実施形態では、作動流体を利用するシステムにおいて仕事を行うため、取得した熱エネルギーを運動エネルギーに変換することによって取得した熱エネルギーを転用する補助システムを採用してもよい。例えば、熱エネルギーは、熱エネルギーが熱エンジンを駆動するために使用される補助システムに振り向けられてもよい。振り向けられた熱エネルギーを利用する補助システムを使用することでも、廃熱を環境に除去する一次システムの凝縮コイルの仕事量が削減され、圧縮機の電気的要件が低減され得る。
【0050】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、自然環境および人工的環境のためだけでなく経済的理由のためにも、有益となり得る。例示的な実施形態において、システム、方法および/または装置は、少なくとも特定の用途について、システムへの外部送電の必要性を排除または低減し得る。例示的な実施形態において、水蒸気から取得された熱エネルギーは貯蔵されてもよい。他の例示的な実施形態において、熱エネルギーは、システムの別の場所または補助的なシステムに輸送されてもよく貯蔵されてもよい。
【0051】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、捕捉された霜の液体水への相変化を利用して、冷凍サイクルの凝縮側を補助し、システム全体のエネルギー所要量を低下させることを目的とする。
【0052】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、自然環境および人工的環境のためだけでなく経済的理由のためにも、有益となり得る。例示的な実施形態において、システム、方法および/または装置は、少なくとも特定の用途について、外部の水分配および/または供給システムによって提供されるべき水の必要性を排除または低減し得る。例示的な実施形態において、システム、方法および/または装置は、エンドユーザの所在地に直に設置され、エンドユーザの内部の水システムに直に接続され得る。特定の用途において、特に新規建設のために、本明細書に記載する例示的な実施形態は、地方自治体の地下または他の送水システムのコストおよび/またはメンテナンスを低減または排除し得る。本明細書に記載する例示的な実施形態の特定の用途では、エンドユーザへのトラックによる水の供給のコストが低減または排除され得る。さらに、本明細書に記載する例示的な実施形態において、システム、方法および/または装置は、エンドユーザの送水ポンプの必要性を排除または低減し得る。
【0053】
図1は、凝華として知られている水蒸気を瞬時に凍結させる熱力学的プロセスを利用して大気水蒸気を捕集するためのシステムの、例示的な実施形態の模式図である。図1の例示的な実施形態は、より一般的に知られている水の凝縮の熱力学的プロセスを利用して大気から液体水を回収する現在の大気水回収システムを、改善したものである。
【0054】
図1の大気水回収器は、3つのプロセスから構成されている。最初のプロセスは、冷蔵庫および/または冷凍庫で日常的に使用されている十分に確立された市販の冷凍サイクルによって、駆動される。交流または直流電気である入力エネルギー1は、スイッチ4および温度センサ5によってオン/オフ状態が決定される圧縮機2およびファン3に、電力を供給する。閉ループ冷凍サイクルは、圧縮機2、凝縮コイル6、膨張装置7、および蒸発コイル8から構成される。典型的には商業用冷媒である一定体積の作動流体が、前述の閉ループ冷凍サイクル内にシールされる。システムが「ON」状態にあるとき圧縮機2はオンになり、システムが「OFF」のときに典型的には蒸気状態にある凝縮コイル6内の作動流体を圧縮して、液体にする。ファン3もまたオンになり、凝縮コイル6を横切るように周囲空気を吹き付けて、作動流体の熱エネルギー15の一部が凝縮コイル6の壁を通ってシステムから周囲空気中に出ていくのを補助する。作動流体からの熱エネルギー15を圧縮除去するプロセスによって、作動流体が蒸気状態から液体状態に凝縮される。また、冷凍サイクルのこの部分は、システムの「高圧/高温側」として知られている。「高圧」は、圧縮機2が凝縮コイル6の一方の端部に冷媒(作動流体)を圧送し、冷媒の流れが凝縮コイル6の反対側の端部で膨張装置7により制限されることによって、生じる。「高温」は、プロセスのこの段階で熱エネルギー15が凝縮コイル6の壁を通ってシステムを出ていく結果である。膨張装置7は、システムの対向側の蒸発コイル8への凝縮コイル6からの作動流体の流れを制限するが、システムの対向側はシステムの「低圧/低温側」として知られている。低圧は、蒸発コイル8の一方の側にある膨張装置7を通る作動流体の流れが制限され、蒸発コイル8の反対側の端部にある圧縮機2による吸引によって、蒸発コイル8の内部に生じる。作動流体もしくは冷媒は、膨張装置7を出ると蒸発コイル8に入るが、蒸発コイル8内は圧力が低いため、段階的に蒸気状態へと移行する。圧縮機に戻る途中における液体から蒸気への作動流体の相変化により、蒸発コイル8の壁を通して熱エネルギー15がシステム内に引き込まれ、蒸発コイル8および取り付けられた霜収集面9が冷却される。このサイクルは、大気水蒸気を回収するシステムプロセス用に設計された霜収集面9の温度が温度センサ5によって検出され、冷凍サイクルの圧縮機2およびファン3を「OFF」にするスイッチ4が開かれるまで、継続される。例えば、霜収集面の設計温度は、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃、-50℃、またはより低くてもよい。 例えばまた、霜収集面9の温度が-10℃超の場合は「ON」になり、霜収集面9の温度が-45℃未満の場合は「OFF」になるように、センサを設定してもよい。
【0055】
図1の大気水回収器の第2のプロセスは、霜収集面9に近接および/または接触してくる大気の構成水蒸気の間の熱力学的反応プロセスによって、駆動される。この反応プロセスは、熱力学の第二法則の直接的な結果であり、一方向伝達が必要とされることで高温の物体から低温の物体へと熱が移動する。図1の大気水回収器の場合、高温の物体は水蒸気13であって、低温の物体である霜収集面9と相互作用する。あらゆるエネルギー伝達システムの場合と同様に、高温と低温の差が大きいほどエネルギーのポテンシャルおよび伝達速度は大きくなる。
【0056】
熱伝達プロセスの強度は、フーリエの法則としても知られる熱伝導の法則を使用して簡単に計算および/または表現され得る。
Q=(k/s)A dT=U A dT
式中、
Q=熱伝達量(W)
k=材料の熱伝導率(W/mK)
s=材料の厚さ(m)
A=伝熱面積(m
U=k/s=熱伝達係数(W/(mK))
dT=t1-t2=材料全体の温度勾配(差)(℃)
【0057】
簡単に言えば、上記式の他の全ての条件が静的であるため、高温の物体と低温の物体との間のdTが大きいほど熱伝達量は大きくなる。例えば、周囲の水蒸気13(高温物体)の温度として40℃、霜収集面9(低温の物体)のシステム設計温度を-1℃とすると、dTは41℃に等しくなる。霜収集面9のシステム設計温度を、例えば-50℃に下げると、dTが90℃に広がって熱エネルギー伝達率は増加する。
【0058】
霜の成長速度に影響を与える最大の要因は水蒸気13と霜収集面9との間のdTであるということが、過去50年間に亘って発表された多数の科学的研究で詳述され、十分に確立された結論である。霜の蓄積は航空宇宙産業および冷凍産業におけるシステムに悪影響を及ぼすため、これらの多くの研究はそもそも、霜の成長速度条件を理解し、これらの産業における霜の成長のプロセスを遅くまたは制限する方法を開発するエンジニアを支援するために、行われたものである。図1の大気水回収器では、目標は逆で、霜の成長を促進し高速化することである。
【0059】
研究で見つかった霜の成長速度の他の要因は、霜の層が厚くなるにつれて霜の成長速度が遅くなるということである。ほとんどの研究は、この霜の成長の鈍化は、主に2つの影響によるものと結論付けているが、第1は霜の結晶特性の影響であって、霜収集面9よりも入ってくる水蒸気13の接触点となる霜の中に、エアポケットや空隙が生じる。第2は霜の層自体の影響であって、これが厚くなるにつれて、入ってくる水蒸気13と霜収集面9との間に熱障壁、または断熱層が作り出される。dTは狭くなり、式中におけるk、s、Aなどの他の熱伝達特性が、もはや静的でなくなる。水蒸気13は、直接霜収集面9とは熱的に接触しなくなり、霜の層に接触する。しかしながら、凝華プロセスを利用して大気水回収のために設計されたシステムでは、図1の大気水回収器の第2のプロセスのために、水蒸気13からの迅速な霜成長速度を最適化することが極めて重要である。図1のシステムは、霜収集面9の温度が低温、例えば-50℃に維持されていることによる利益、例えば40℃であり得る水蒸気13に対して大きなdTが残っていることが担保された上述の冷凍プロセスによる利益を享受し得、蓄積した霜14の層を剥ぎ取って霜収集面9から遠ざける、以下に説明する手段またはプロセスが設けられてもよい。
【0060】
したがって、図1の大気水回収器の第3のプロセスは、電気的な入力エネルギー1によって駆動されるスクレイパーアクチュエータ11によって駆動されるスクレイパー10である。スクレイパー10は、時間管理された固定のスクレイパー経路12に沿って移動し、霜14の新しい層を除去して霜収集面9から遠ざける。例えば、スクレイパーアクチュエータは、掻き取りが行われる前の霜14層の深さが最大で0.1mmに達することを許容するようにプログラムされてもよい。図1の大気水回収器の霜収集面から霜14を掻き取る際、例えば重力によって霜14を液体水収集容器21内へと方向付け、最終的に液体水22に融解させて使用できるようにしてもよい。液体水収集容器21に入った霜14を融解させるのに必要な入力エネルギーは、ほとんどの環境において、霜収集面9と比べてはるかに温かい液体水収集容器21の周囲環境の大気によって伝達され得る。
【0061】
図2は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、別の例示的な実施形態の模式図である。図2は、図2において、PCM封入タンク16内に封止された低温PCM17に蒸発コイル8を埋め込むことにより、冷凍サイクルによって行われる冷却仕事の一部が保全され、システム全体の冷却エネルギー要件が低減され得ることを除いて、図1と同様である。
【0062】
蒸発コイル8を低温蓄熱PCM17内に封入すると、蒸発コイル8と、はるかに暖かい冷却されるべき水蒸気13との間の接触がなくなる。また、開示されているように蒸発コイル8を封入すれば、圧縮機のオン/オフサイクル時の本実施形態のシステムによる霜収集面9の再冷却が、防止もしくは低減される。このようにすれば、関連部分に利点がもたらされ、圧縮機2の仕事によって達成された蒸発コイル8の低温も保持される。公知の冷凍サイクルシステム圧縮機は、一般に、一日に複数回オン/オフサイクルし、各サイクルによって達成された蒸発コイルを囲む空気を温める仕事のかなりの部分、場合によっては全てが、失われてしまう。しかしながら、蒸発コイル8が低温蓄熱PCM17内に封入されていれば、低温蓄熱PCM17が水蒸気13と蒸発コイル8との間の断熱障壁として機能するため、各サイクルの仕事の一部が保全される。さらに、蒸発コイル8の始端部および終端部に自動弁を追加すれば、システム動作サイクルの「OFF」期間中、蒸発コイル8内の作動流体の温度および低圧の両方が低温蓄熱PCM17によって維持され得、前の「ON」サイクル中に圧縮機2によって行われた仕事の関連部分が保全される。
【0063】
蒸発コイル8を封入する最適な低温蓄熱PCM17の選定は、入ってくる水蒸気13に合わせた所望のdTを維持する目的で、主に霜収集面9の所望の設計温度に基づいてもよい。例えば、定期的に30℃を超える周囲温度に達する環境中で、霜収集面9の所望の設計温度が-40℃であるように決定された大気水回収システムでは、低温蓄熱PCM17に、例えば固相から液相への相変化温度が-30℃であるものを選定し得る。
【0064】
上記の例で-30℃の低温蓄熱PCM17を選択する主な理由は、2つある。第1に、霜収集面9を-40℃に維持するためには、水蒸気13の入ってくる熱エネルギーと冷凍サイクルシステムの冷却能力によって、低温蓄熱PCM17を-42℃~-45℃の間まで断続的に冷却する必要がある。このような特定温度のシステムの設計では、コンプレッサの2つの温度センサ5を、例えば-42℃でシステムを「ON」にし、-45℃で再び「OFF」するように設定して、冷凍サイクルが、霜収集面9の所望の-45℃と、入ってくる水蒸気13の30℃との差である75℃dTではなく、3℃dTだけ冷却するようにしてもよい。加えて、冷却/加熱するために固相のPCMが必要とするエネルギーは、一般に、それぞれが液体段階で必要とするよりも約50%少ない。例えば、液体から固体へ、または固体から液体への相変化点が0℃の水は、固体状態では2.06J/g℃しか必要としないが、液体状態では4.18J/g℃を必要とする。さらに、相変化点での1℃の温度変化に対する相変化は、その1℃の温度変化のためにさらに334J/gを必要とする。
【0065】
ほとんどの冷凍システムでは、蒸発器温度が-20℃未満で、全ての固体がそれぞれの固体状態において低い比熱容量を有しているだけでなく典型的には液体状態におけるよりも優れた熱伝導体である場合に、冷却能力および冷却効率が低くなる。簡単に言えば、物質を加熱または冷却するために必要な仕事量、そしてそれによりエネルギーは、それぞれが固体状態にあれば、液体状態にあるよりもはるかに少ない。したがって、運転中、所定のPCMの塊を-42℃未満の温度に維持するのに必要な仕事量は、変化する屋外環境から入ってくる量の水蒸気と空気を-45℃に冷却する冷凍サイクルよりもはるかに少ない。 このように、システムの冷凍サイクルが低温PCM17塊を例えば-42℃から-45℃に冷却するだけで、低温PCM17塊は、入ってくる水蒸気13を水蒸気13が入ってくる温度から-45℃まで冷却する。
【0066】
第2に、大気水回収システムが常に動作している必要はない。液体水収集容器21が例えば満杯である場合、ユーザはシステム全体を遮断してもよく、それによって圧縮機はもはやサイクルしなくなる。システムは、日常的な清掃やメンテナンス作業を行うためにシャットオフされてもよい。低温PCM17塊は、主にPCM封入タンク16がより暖かい隣接環境からどの程度良好に断熱されているかに依存する速度で、ゆっくりと温度上昇するであろう。しかしながら、低温PCM17が上記の例のように-30℃の相変化温度を有している場合、-30℃から-29℃までの昇温に要する時間は、融解潜熱によって1℃当たり100倍を超える時間係数で延長される。もし、PCM封入タンク16がより暖かい温度から十分に断熱されていれば、低温PCM17は、数分間ではなく数日間にわたって-30℃に維持され得る。これに対し、低温PCM17封入のない標準的な蒸発コイル8は、たとえ十分に断熱されていても、システムがシャットダウンされてから数分以内に、周囲温度に非常に近い温度まで暖められるであろう。さらに、低温PCM17封入のないシステムを再起動するには、-40℃の霜収集面温度を達成するために、95℃の熱的「引き下げ(pull-down)」が必要な場合があるが、蒸発コイル8の周囲に低温PCM17封入を追加すると、システムは、例えば15℃の熱的「引き下げ」のみを必要とすることになり、再起動時の時間とエネルギーの両方が節約される。
【0067】
図3および図4は、図2に開示されたPCM封入タンク16の内部に埋め込まれた蒸発コイル8の模式図である。図3および図4の例示的な実施形態は、水の凝華のプロセスに有益なPCM封入タンク16の材料および材料特性を選択する有用な設計方法を開示する。PCM封入タンク16の表面および裏面は、それぞれ霜収集面9である。PCM封入タンク16構造には、良好な熱伝導率を有する不透過性材料が用いられるべきである。さらに、壁の厚み、材料の厚み、大気に対する反応性、PCMに対する反応性、仕上げの滑らかさ、製造の容易さ、および材料の入手し易さも、適切な選択のために重要な特性である。例えば、PCM封入タンク16は水蒸気にさらされるであろうが、長期間にわたって-30℃未満の温度に維持されて低温PCM17を保持し、この低温PCM17は、例えば、低温PCM17の相変化設計温度を設定するための割合の蒸留水とエタノールの混合物を含んでいてもよい。霜収集面9でもあるPCM封入タンク16の外側表面の仕上がりが平滑であるほど、堆積した霜14は簡単に除去され得る。1100、3003、3004および5052といったグレードのアルミニウムシートは、耐食性を有し、高い熱伝導性を有し、軽量であり、そして市場で容易に入手可能であるので、PCM封入タンク16のシェルとして使用され得る。ステンレス鋼は、前述のグレードのアルミニウムよりもヤング弾性率および引張強度に優れているため、それらのグレードのアルミニウムに加えて316ステンレス鋼もまた、PCM封入タンク16のシェルとして使用され得、価格および重量に基づいて選択され得る。本明細書に記載のアルミニウムおよびステンレス鋼のグレードは単なる一例であって、前述の材料特性の値に基づいて他の材料を選択してもよい。霜収集面9は平坦であるべきであるため、タンクの内側面には、表面の変形を防ぐために、-45℃未満の温度に耐えることができる耐食性エポキシを使用してタンク内部ブレーシング23のチャネルが取り付けられる。
【0068】
蒸発コイル8は、蒸発器入口穴24を通ってPCM封入タンク16に入る。蒸発コイル8は、タンク内部ブレーシング23のチャネルの周りを曲がるように成形されており、これが内部に封止されるPCM封入タンク16の内部に封入された低温PCM17を最も均等に冷却できるように、PCM封入タンク16の内部に均等に分布していてもよい。蒸発コイル8は、蒸発器出口穴25を通ってPCM封入タンク16から出る。低温PCM17が経時的に劣化するのを防止するため、蒸発器入口穴24および蒸発器出口穴25は、PCM封入タンク16の外部に対するシーリングを必要とする。加えて、PCM封入タンク16の内部に、温度センサチューブ28を貼付して設置してもよい。低温PCM17が経時的に劣化するのを防止するため、この温度センサチューブ28は、PCM封入タンク16の外部に対するシーリングを必要とする。PCM封入タンク16の縁部は、機械的に封止されたタンクを形成するため、接着剤を使用しておよび/または溶接されて、シールされてもよい。タンクがシールされた後、低温PCM17でタンクを充填するために、PCMタンク充填開口26およびPCMタンク通気開口27を使用してもよい。低温PCM17が経時的に劣化するのを防止するため、PCMタンク充填開口26およびPCMタンク通気開口27は、PCM封入タンク16内にシールされてもよい。
【0069】
図5は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、別の例示的な実施形態の模式図である。図5は、図5では、凝縮コイル6および膨張装置7の端部もまた、図2図3および図4に開示されたPCM封入タンク16に封止されている点を除いて、図2と同様である。冷凍業界では、冷媒過冷却がシステムの性能を向上させエネルギーを節約する信頼性の高い方法であることは、よく理解されている。凝縮コイル6、圧縮機2内の冷媒を過冷却するため、類似および別個のシステムの使用に加えて多くのアプローチが公知となっており、使用されている。これらのアプローチは、通常、冷凍サイクルシステムに複雑さとコストを追加する。主に、蒸発器に入る前の冷媒の品質がシステム全体の性能に影響を与えることが十分に理解されているため、このテーマについてはかなりの研究が行われている。本明細書に記載される新しいアプローチは、蒸発コイル8がPCM封入タンク16に保持された低温封入PCM17に埋め込まれているために、可能である。冷媒の過冷却は、業界では「液体ライン」とも呼ばれる凝縮コイル6の端部と、キャピラリーチューブ膨張装置7との両方で行われてもよい。これらの箇所では、冷凍サイクルの他の箇所と比較して特定の時間における冷媒量が比較的少ないため、過冷却は、これら2つの箇所で簡素化され極めて容易となる。これらの箇所の冷媒は、多かれ少なかれ「拘束されている(captive)」であり、熱の影響を受け易い可能性がある。さらに、PCM封入タンク16、低温PCM17、および蒸発コイルの温度は、サイクル中に温度が低下しているため、少量の冷媒と比較して多大なヒートシンクを利用できる。膨張装置7の直前に冷媒を過冷却することには、圧縮機2および凝縮コイル6からの過冷却の作業負荷の一部が削減されることに加えて、2つの追加の利点がある。第1の利点は、冷媒が、膨張装置7を通過して蒸発コイル8に入る際、実際に完全に液体状態であることが保証される点である。第2の利点は、低い温度の液体冷媒が高い粘度を有し、膨張装置内に大きな抵抗をもたらす点である。したがって、PCM封入タンク16内部のエアポケットに液体ラインを配置すれば、システムに追加コストをかけずに圧縮機2および凝縮コイル6の両方の作業負荷が効果的に低減され得る。
【0070】
図5は、2つのボール弁30を含んでいることでも、図2に開示されたシステムとは異なっている。ボール弁30の1つは膨張装置7の直前のインラインにあり、第2のボール弁30は蒸発コイル8の直後のインラインにある。2つのボール弁30の目的は、圧縮機2が「OFF」のときに2つのボール弁30を閉じて冷媒の流れを止めることにより、冷凍サイクルによって低温PCM17に対して行われる冷却仕事を保全することである。サイクルに2つのボール弁30が追加されていなければ、圧縮機2がオフになったとしても、凝縮コイル6の内部で、システムの高圧側の冷媒は両側が等しい圧力になるまで低圧側に流れ続けるであろう。圧縮機2が「ON」されなければ、この流れは凝縮コイル6から蒸発コイル8に熱をもたらし、この熱が冷却器低温PCMに吸収されて、次の「ON」サイクルでの不要な仕事を追加するであろう。圧縮機2が「ON」のとき、2つのボール弁30は開かれて、冷媒は正常に循環可能となる。
【0071】
図6は、凝華として知られる熱力学的プロセスによって大気水蒸気を回収するためのシステムの、別の例示的な実施形態の模式図である。図6は、図6では、ファン3および凝縮コイル6がブレージングプレート熱交換器18に置き換えられ、取得した熱エネルギーを二次システムに伝達する点を除いて、図5と同様である。少なくともいくつかの用途では、冷凍サイクルから取得した熱エネルギー15を、熱エネルギー15を利用し得る別のシステムに転送することが有用であり得る。図6の例示的な実施形態では、圧縮機2を出た冷媒流は、システムの膨張装置7に入る前にブレージングプレート熱交換器18を通って流れる。二次システムの作動流体は、流入導管19を通ってブレージングプレート熱交換器18の反対側に入る。二次システムの作動流体が、ブレージングプレート熱交換器18を圧縮機2の冷凍サイクルの逆流方向に通過すると、圧縮機2の後の冷凍サイクルからの熱エネルギー15は二次システムの作動流体に伝達され、これによって冷凍システムの作動流体が凝縮されて、通常は凝縮コイル5およびファン3によって行われる仕事が達成される。一例として二次システムは、給湯器として、または環境の空間暖房として、有用なものであり得る。
【0072】
図7は、図1図2図5および/または図6に開示された例示的な実施形態の模式図であり、大気中の水蒸気13を、システムの収集領域におよび収集領域から、引き寄せ、方向付け、循環させる方法を開示している。大気水蒸気13を、システムの収集領域におよび収集領域から、引き寄せ、方向付け、循環させるプロセスは、図1図2図5および/または図6に先に開示された冷凍プロセスが霜収集面9の所望の設計温度、例えば-40℃を達成するまで、開始されない。この「引き下げ」プロセス中に冷凍サイクルが実行されている間、断熱蓋33は閉止位置にあり、蓋シール34によってシールされる。収集領域は、断熱シェル31によって熱的に保護されている。液体水収集容器21は、タンクシール36を用いて収集領域の底部に取り付けられている。霜収集面9が適切な温度になると、スクレイパーアクチュエータ11は、スクレイパーパネル42が取り付けられた断熱蓋32をスクレイパー経路12に沿って開放位置に達するまで持ち上げる。所定時間後、スクレイパーアクチュエータ11が反転して断熱蓋33が閉じ、収集領域は再シールされる。蓋は所定時間閉じたままとされ、このプロセスは、液体水収集容器21が満杯であることを水フロート弁38が示してプロセスが停止されるまで、繰り返される。上記プロセスは、水フロート弁38が液体水収集容器21内の水位が低下したことを示すと再起動され、繰り返される。スクレイパーパネル42が取り付けられた断熱蓋32が開放位置にあるとき、温かい周囲空気および水蒸気13は、熱的引力および圧力的引力の両方によって収集領域に引き込まれる。スクレイパーパネル42が取り付けられた断熱蓋33が閉止位置にあるとき、水蒸気13は瞬時に霜14として霜収集面9に付着する。収集エリア内に残った空気は冷却され、収集領域から液体水収集容器21内に落下して、空気フロート弁40を通過した後に冷却乾燥空気口39を通って外部周囲環境へと出ていく。スクレイパーパネル42が取り付けられた断熱蓋32が再び開くと、霜収集面9上に収集された霜14は、スクレイパーパネル42によって上方および外方へと掻き取られて霜収集面9から離れて落下し、最終的には液体水収集容器21内へと落ちていく。液体水収集容器21の底部には、タンクの底部が0℃超になるように、霜14が液体水22に溶け込むように、タンク熱シンク37が装着されている。上記プロセスは、水フロート弁38が液体水収集容器21の満杯を示した時点でプロセスが停止されるまで繰り返され、水フロート弁38が液体水収集容器21内の水位が低下したことを示した時点で再開される。液体水22は、液体水出口44を通って液体水収集容器21から除去され使用されてもよい。
【0073】
図8は、霜収集面を熱的に隔離する方法を開示する図7の細部の模式図である。図8の例示的な実施形態では、外部周囲温度とシステムの収集領域との間に存在するであろう非常に大きなdTのために、外部周囲温度からのシステムの収集領域の特別な熱的隔離が必要である。例えば、収集領域温度と外部周囲温度との間のdTは、70℃、80℃、90℃、またはより大きくてもよい。妥当なシステム全体サイズを維持するために、断熱シェル31の厚さを2.6センチメートルに制限する層状アプローチが考案されている。図8の層状アプローチの例示的な実施形態では、断熱シェル31は通常の冷凍断熱材料よりも少なくとも28センチメートル縮小されている。図8の例示的な実施形態では、周囲温度51と相互作用する周囲の外壁上に、グラスファイバー外部シェル45が、続いてエアロゲル46の0.7cmの層が、次いで厚さが合計0.68cmのポリコアパネル(Polycore panels)47の2つの千鳥層からなるエアポケットスペーサーパネルが、ある。ポリコアパネル47の後には、収集領域温度50に曝されるステンレス鋼内部構造シェル49に取り付けられた1cm厚のクライオゲンZ(Cryogen Z)48の層がある。前述した2.6センチメートルの層状アプローチが90℃dTを制限し、1平方メートルの表面積にわたって1時間あたりに伝達されるのは、僅か30ワットとなる。
【0074】
図9は、図7の細部の模式図であって、収集領域への水蒸気13の流れパターンをさらに詳述しており、断熱蓋(開放)32、断熱蓋(閉止)33、蓋シール34、断熱シェル31、スクレイパーアクチュエータ11、スクレイパー経路12、PCM封入タンク16、霜収集面9およびスクレイパーパネル42が詳述されている。
【0075】
図10は、図9の細部の模式図であって、霜14の掻き取りの流れをさらに詳述しており、断熱シェル31、PCM封入タンク16、霜収集面9、スクレイパー経路12、スクレイパーパネル42、および霜落下方向43が描かれている。
【符号の説明】
【0076】
1…入力エネルギー
2…圧縮機
3…ファン
4…スイッチ
5…温度センサ
6…凝縮コイル
7…膨張装置
8…蒸発コイル
9…霜収集面
10…スクレイパー
11…スクレイパーアクチュエータ
12…スクレイパー経路
13…水蒸気
14…霜
15…熱エネルギー
16…PCM封入タンク
17…低温PCM
18…ブレージングプレート熱交換器
19…流入導管
20…流出導管
21…液体水収集容器
22…液体水
23…タンク内部ブレーシング
24…蒸発器入口穴
25…蒸発器出口穴
26…PCMタンク充填開口
27…PCMタンク通気開口
28…温度センサチューブ
29…温度センサ導線
30…ボール弁
31…断熱シェル
32…断熱蓋(開放)
33…断熱蓋(閉止)
34…蓋シール
35…タンク断熱材
36…タンクシール
37…タンク熱シンク
38…水フロート弁
39…冷却乾燥空気口
40…空気フロート弁
41…冷却乾燥空気
42…スクレイパーパネル
43…霜落下方向
44…液体水出口
45…グラスファイバー外部シェル
46…エアロゲル
47…ポリコアパネル
48…クライオゲンZ
49…内部構造シェル
50…収集領域温度
51…周囲温度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気水蒸気を引き寄せて捕捉し有用な液体水に変換するためのシステムであって、
複数の低温相変化材料(Low Temperature Phase Change Material、LTPCM)タンク、チューブ、または容器であって、
個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器の外面熱伝導性であって、霜収集領域として、水の凝華、水蒸気の固体状態(霜)への瞬間的な変換、各外面上への凝華、のため滑らか仕上げを有しており
々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器の内容積のそれぞれは、凝華により大気中の水を回収するにあたって長期間の使用を可能にするため、溶融に抗う引き続いての冷却が必要となる前に固体状態に長期間維持するための熱特性を有するLTPCMの塊を含んでいる、複数のLTPCMタンク、チューブ、または容器と
個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内の前記LTPCMの温度を低下させ維持するための冷却システムと
前記冷却システム複数の蒸発器コイル熱交換器であって個々の蒸発器が、水蒸気または空気と直接接触しないように、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている、複数の蒸発器コイル熱交換器と、
前記LTPCMを所望の温度に維持し複数の前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器表面の温度を水の凝華用に維持するために、前記冷却システムを「オン」または「オフ」サイクルするタイミング機構と、
複数の前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器の配置であって、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器のそれぞれが、他の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器に近接して配置されているが、水蒸気の自由な流れまたは前記LTPCMタンク、チューブ、または容器の列の各外面の周りへの集まりを可能にするように間隔をあけているような、複数の前記LTPCMタンク、チューブおよび/または容器の配置と、
複数の前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器を包み込んで、複数の前記LTPCMタンク、チューブおよび/または容器の各表面を局所的な周囲温度および前記システム熱から熱的に保護可能な断熱チャンバと、
周囲温度またはシステム温度と、複数の前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器を包み込む前記断熱チャンバとの間の50℃を超える可能性がある熱差を隔てる、積み重ねられたエアポケット間隔付の断熱配置と、
複数の前記LTPCMタンク、チューブおよび/または容器包み込む前記断熱チャンバに出入りする大気水蒸気および/または大気空気の流れを許容、禁止または調節する、機械システムと
LTPCMタンク、チューブ、および/または容器の前記霜収集領域から取得した霜を除去するための時間指定された固定掻き取り経路を有する複数のスクレイパーと
複数の前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器を包み込む前記断熱チャンバの外側のスクレイパー駆動機構と、
複数の前記LTPCMタンク、チューブおよび/または容器を包み込む前記断熱チャンバの内側の複数の前記霜スクレイパーと、複数の前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器を包み込む前記断熱チャンバの外側の前記スクレイパー駆動機構と、を接続するスクレイパー電機子と、
前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器の前記霜収集領域上に凝華した霜が1ミリメートル未満の厚さに達したときに収集された霜を除去するための、前記霜スクレイパーのタイミング方法と、
前記LTPCMタンク、チューブ、および/または容器の前記霜収集領域から霜が掻き取られた後に掻き取られた霜を保持するための霜保持容器またはタンク、および霜捕捉開口部または機械的ポートと、そして
保持された霜を液体水に溶融させる、前記冷却システムの高温側と前記霜保持容器またはタンクとの間の界面と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記冷却システムは、冷媒冷却サイクルであって、
圧縮機と、
前記圧縮機の「オン」/「オフ」状態を制御するためにLTPCMボリュームに接続された温度検出スイッチと、
前記圧縮機に接続された凝縮ユニットと、
一方の端において前記凝縮ユニットに接続され、他方の端において、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入された複数の前記蒸発器コイル熱交換器に接続された、複数の膨張装置と、
個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入された複数の前記蒸発器コイル熱交換器に一方の端において接続され、かつ、前記圧縮機に他方の端において接続された、吸引ラインと、そして
前記冷媒冷却サイクルの閉ループ内の冷媒作動流体と、
を含む冷媒冷却サイクルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の前記膨張装置は、これも個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されたキャピラリーチューブである、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
複数の液体ラインの端部は、一方の端部において前記凝縮ユニットに接続され、他方の端部において、複数の前記キャピラリーチューブに接続されているとともに、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
1つもしくは複数のバルブが、前記凝縮ユニットに取り付けられている液体ラインの封入されていない端部と、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている前記液体ラインの他方の端部と、の間をインライン接続しており、
1つもしくは複数の前記バルブは、前記圧縮機が「OFF」にされる前に閉じて、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている複数の蒸発器コイル内の全ての冷媒を排出して、前記冷媒冷却サイクルの静的な熱が前記LTPCMの温度に悪影響を与えるのを妨げるように形成されおり、そして、
1つもしくは複数の前記バルブは、前記圧縮機が「ON」にされた後にのみ開いて、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている複数の前記蒸発器コイル内の全ての前記冷媒を排出状態に維持して、前記冷媒冷却サイクルの高圧側と低圧側を作り出す前記圧縮機の仕事を保持するように形成されている、請求項2から請求項4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
1つもしくは複数のバルブが、前記圧縮機に取り付けられている吸引ラインの封入されていない端部と、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている蒸発器コイルの他方の端部と、の間をインライン接続しており、
1つもしくは複数の前記バルブは、前記圧縮機が「OFF」にされる前に閉じて、
個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている複数の前記蒸発器コイル熱交換器内の全ての冷媒を排出して、静的な熱が前記LTPCMの温度に悪影響を与えるのを妨げるように形成されており、そして、
1つもしくは複数の前記バルブは、前記圧縮機が「ON」にされた後にのみ開いて、個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されている複数の前記蒸発器コイル内の全ての前記冷媒を排出状態に維持して、前記冷媒冷却サイクルの高圧側と低圧側を作り出す前記圧縮機の仕事を保持するように形成されている、請求項2から請求項5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
複数の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内の前記LTPCMの熱力学的特性はまた、複数の蒸発器コイル内を移動する間の冷媒の流れの温度および/または圧力に影響を与え、安定させ、保全して、前記圧縮機のエネルギー需要を低下させるように選択される、請求項2から請求項6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記冷却システムは、
スターリングチラーと、
チリングヘッドと、
再生器と、を備えるスターリングチラーサイクルであって、
前記システムの複数の前記蒸発器コイル熱交換器は、個々の蒸発器コイルのそれぞれが個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されており、閉ループであって、熱作動流体で満たされており、前記スターリングチラーの前記チリングヘッドに取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記冷却システムは、
ヒートシンクに取り付けられた「熱」側面を備えた熱電モジュールチラーと、
チリングマニホールドに取り付けられた前記熱電モジュールチラーの「冷」側面と、
を備える熱電チラーサイクルであって、
前記システムの複数の前記蒸発器コイル熱交換器、個々の蒸発器コイルのそれぞれが個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されており、閉ループあって熱作動流体で満たされており、前記チリングマニホールドに取り付けられている、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記冷却システムは、
電気音響トランスデューサと、
共振器と
生器と、
低温熱交換器と、
を備える電気音響トランスデューササイクルであって、
前記システムの複数の前記蒸発器コイル熱交換器は、個々の蒸発器コイルのそれぞれが個々の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器内に前記LTPCMによって埋め込まれ、浸漬され、および/または封入されており、ループであって、熱作動流体で満たされており、前記低温熱交換器に取り付けられている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
水の凝華プロセスからの熱エネルギーは、複数の前記LTPCMタンク、チューブ、または容器の表面を介して伝導され、LTPCMの個々の塊を介し、蒸発器コイルを介して前記冷却システムの作動流体の流れへと伝導され、最終的に前記冷却システムから含有されている高温相変化材料(HTPCM)塊へと排出され、分離もしくは補助加熱サイクルシステムに有用なエネルギーとして供給可能とされる、請求項1から請求項10の何れか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】