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特表2023-501542アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を調製する方法、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物、及び当該組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を調製する方法、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物、及び当該組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/00 20060101AFI20230111BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230111BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C01G49/00 D
B01J37/08 ZAB
B01J23/83 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022527178
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2020081977
(87)【国際公開番号】W WO2021094495
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】19208736.9
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーメニンク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ショーネボーン,マルコス
【テーマコード(参考)】
4G002
4G169
【Fターム(参考)】
4G002AA06
4G002AA09
4G002AB02
4G002AD04
4G002AE05
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA21C
4G169BA36A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BB12C
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC13A
4G169BC21A
4G169BC25A
4G169BC38A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC44A
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD03A
4G169BE08C
4G169CA03
4G169CA13
4G169DA06
4G169EC02X
4G169EC03X
4G169EC06X
4G169EC07X
4G169EC08X
4G169EC23
4G169EC25
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
(57)【要約】
本開示は、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を調製する方法、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物、及び排出規制の用途における触媒系における、上述のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を調製する方法であって、
(i)ドープされたアルミナを提供する工程であって、前記ドープされたアルミナが、
a.アルミナと希土類酸化物とを含むものか、
b.アルミナとアルカリ土類酸化物を含むものか、あるいは
c.アルミナと希土類酸化物及びアルカリ土類酸化物の混合物とを含むもの
であり、前記ドープされたアルミナが、
(A)ベーマイトを含むベーマイト懸濁液を調製する工程と、
(B)塩の水溶液を調製する工程であって、前記塩の水溶液が、
a.希土類塩か、
b.アルカリ土類塩か、あるいは、
c.希土類塩とアルカリ土類塩との混合物
を含む工程と、
(C)前記ベーマイト懸濁液を前記塩の水溶液と化合させて、ベーマイト塩の混合物を生成する工程と、
(D)前記ベーマイト塩の混合物を乾燥させて、前記ベーマイト塩の混合物の乾燥体を生成する工程と、
(E)前記ベーマイト塩の混合物の前記乾燥体をか焼して、前記ドープされたアルミナを生成する工程と
を少なくとも含む方法により提供される工程と、
(ii)前記ドープされたアルミナを、水溶性の希土類塩、水溶性のアルカリ土類塩、水溶性のアルカリ塩、水溶性のBi3+の塩、水溶性のPb2+の塩、及び水溶性の遷移金属塩のうちの1つ、又はそれらの塩の混合物を含む水溶性の含浸溶液で含浸させて、前記ドープされたアルミナの含浸体を生成する工程と、
(iii)前記ドープされたアルミナの前記含浸体をか焼する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記ベーマイト懸濁液は、シリカ、チタニア、水溶性のアルカリ土類金属塩、水溶性の希土類金属塩、ジルコニウム、又はそれらの混合物を更に含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩の水溶液は、水と、水溶性の希土類塩、水溶性のアルカリ土類塩、又はそれらの混合物とを少なくとも含む
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドープされたアルミナの前記含浸は、初期湿潤含浸を含む
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドープされたアルミナの細孔容積のうちの80~100%は、前記水溶性の含浸溶液で含浸される
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性の塩は、
(a)希土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、好適には原子番号が57~60の希土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、更に好適にはLaの酢酸塩又は硝酸塩、
(b)アルカリ土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、好適にはSr、Ba、及びCaのうちの1以上の酢酸塩又は硝酸塩、更に好適にはSrの酢酸塩又は硝酸塩、並びに
(c)Pb2+及びBi3+のうちの1以上の酢酸塩又は硝酸塩
のうちの1以上の塩と、
(d)クエン酸鉄アンモニウム、乳酸チタンアンモニウム、酢酸ジルコニウム、又はそれらの混合物を含む1以上の水溶性の遷移金属塩
のうちの1以上の塩と
の混合物を含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドープされたアルミナの前記含浸体は、500℃~1100℃の温度、好適には700℃~1000℃の温度で、それぞれ0.5時間以上、更に好適には0.5~5時間にわたってか焼される
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により調製された
アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項9】
(i)50重量パーセント以上のドープされたアルミナと、
(ii)5~50重量パーセントの化学式ABOのペロブスカイト型酸化物と
を含み、
Aは、希土類元素、アルカリ土類元素、アルカリ元素、Pb2+、Bi3+、又はそれらの混合物を含み、
Bは、遷移金属の混合物を含む遷移金属を含み、
ABOの結晶子サイズは、850℃で3時間か焼した後において5nm未満であり、700℃で4時間か焼した後において2nmであることに特徴づけられる
アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物の複合体。
【請求項10】
重み付けされた強度比Rは、
10未満、好適には8未満であり、
波長が1.54Åの銅のKα線の発光によって得られた、2θが約32度及び2θが約46度での前記組成物のX線回析パターンの反射から算出され、
R=[(I32/I46)]/m (式1)
であり、
32が、約32度での前記反射の強度であり、
46が、約46度での前記反射の強度であり、
が、
ペロブスカイトの質量/((ABOとして算出された)ペロブスカイトの質量+アルミナの質量)
である式1から算出される
請求項8又は9に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項11】
Aは、
1つのアルカリ土類元素、好適には1以上のSr、Ba、Caと、
1つの希土類元素、更に好適には原子番号が57~60の元素と
の混合物を含む
請求項8~10のいずれか一項に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項12】
Bは、2つの別個の遷移金属の混合物、好適にはFeと元素周期表のIVa族の元素との混合物を含む
請求項8~11のいずれか一項に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項13】
比表面積が、50~300m/g、好適には100~200m/gであり、細孔容積が、0.1~1.5ml/g、好適には0.5~1.0ml/gであることによって更に特徴づけられる
請求項8~12のいずれか一項に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により得られる
請求項8~13のいずれか一項に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項15】
前記ドープされたアルミナは、LaAlOを含まない
請求項8~14のいずれか一項に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物。
【請求項16】
排出規制の用途のための触媒系、特にNOxトラップ触媒における
請求項8~14のいずれか一項に記載のアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を調製する方法、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物、及び排出規制の用途の触媒系における該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リーンバーンエンジンの排気ガス中におけるNOx含有量を減ずるためには、指定のNOx後処理システムが必要となる。大部分が化学量論的な条件の下で作動する三元触媒のように、NOxのNへの還元は、現行の酸化条件の下では不可能だからである。したがって、例えば、希薄条件の下で硝酸塩/亜硝酸塩として、NOxを貯蔵可能な材料を含む特殊な排気ガスの後処理触媒が開発されている。簡潔な化学量論的な条件又は十分な作動条件を適用することによって、貯蔵されたNOxは窒素に変換でき、貯蔵材料は再生される。当該触媒は、一般的には(リーン)NOxトラップ触媒と称される。NOxトラップ触媒は、温度が高くなると効率が高くなるゼオライトベースの選択的接触還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)触媒の上流に設置できる。
【0003】
NOxトラップ触媒は、特に、低温から中温の領域においてNOxを貯蔵するための貯蔵成分として、CeOを通常含む。弱点は、DeNOxの工程、例えば、濃厚な排気ガスの組成物の再生の間に、還元剤の大部分が、セリアの酸化還元活性のために消費されることである。上述により、Ce3+がCe4+に還元されるため、実質的な燃費の悪化(fuel penalty)が引き起こされる。
【0004】
したがって、作動条件の下で酸化還元が活性化しない、低温から中温の範囲においてNOxを貯蔵可能な材料の開発の要求がある。
【0005】
化学式がABOの酸化還元活性のないペロブスカイト(Aは、希土類、アルカリ土類、アルカリ、Pb2+、及びBi3+を含む陽イオンである一方、Bは、遷移金属を含む陽イオンである)は、魅力ある代替物である。しかしながら、当該化合物は、塊状の状態においてNOxと反応するのに必要な表面積を通常有していない。
【0006】
ペロブスカイト及び排気ガス排出の触媒系におけるペロブスカイトの使用は、特許文献1に開示されている。当該特許においては、ランタン系のペロブスカイトがアルミナ又はオキシ水酸化アルミニウムで生成された担体上にある複合体が開示されている。複合体は、沈殿工程によって生成される。当該工程により、従来技術よりも有利なペロブスカイトが生成される。特許文献1においては、ペロブスカイトが担体上に可能な限り微細に分散されうること、換言すると、微粒子の形態で提供されうると述べられているという点では、ペロブスカイトの結晶化度が低いことの必要性及び重要性は段落3に教示されている。しかしながら、特定の触媒用途に必要な低い結晶化度は、特許文献1に記載された方法では得られない。
【0007】
特許文献2は、ペロブスカイトが混合された酸化物の担体を調製するための2段階の工程を開示している。実施例5においては、LaAlOの粉末は、第1工程において、γ-アルミナ及び硝酸ランタンから調製される。当該LaAlOは、ペロブスカイト前駆物質の化合物の水溶液と混合され、乾燥され、か焼される。したがって、LaAlOは、ペロブスカイトの材料の触媒成分と共存する。
【0008】
特許文献3は、ペロブスカイトが混合された酸化物の担体を調製するための2段階の工程を開示している。実施例1においては、γ-アルミナは、第1の工程において、硝酸ランタンに含浸される。安定化されたアルミナは、ペロブスカイト前駆物質の化合物の水溶液で3回含浸され、乾燥され、か焼される。結晶子サイズは報告されていないものの、X線回折パターンにおける比較的鋭い反射は、ペロブスカイトの結晶子が5nmより大きいことを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0046163号明細書
【特許文献2】米国特許第4921829号
【特許文献3】米国特許第5882616号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述によって、特性が改善された、ペロブスカイト構造がアルミナ担体上にある均一なペロブスカイト型酸化物の複合体を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1態様によると、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)ドープされたアルミナを提供する工程であって、ドープされたアルミナが、
a.アルミナと希土類酸化物とを含むものか、
b.アルミナとアルカリ土類酸化物とを含むものか、あるいは
c.アルミナと希土類酸化物及びアルカリ土類酸化物の混合物とを含むもの
であり、ドープされたアルミナが、
(A)ベーマイトを含むベーマイト懸濁液を調製する工程と、
(B)塩の水溶液を調製する工程であって、塩の水溶液が、
a.希土類塩か、
b.アルカリ土類塩か、あるいは
c.希土類塩とアルカリ土類塩との混合物
を含む工程と、
(C)ベーマイト懸濁液を塩の水溶液と化合させて、ベーマイト塩の混合物を生成する工程と、
(D)ベーマイト塩の混合物を乾燥させて、ベーマイト塩の混合物の乾燥体を生成する工程と、
(E)ベーマイト塩の混合物の乾燥体をか焼して、ドープされたアルミナを生成する工程と
を含む方法によって提供される工程と、
(ii)ドープされたアルミナの提供物を、水溶性の希土類塩、水溶性のアルカリ土類塩、水溶性のアルカリ塩、水溶性のBi3+の塩、水溶性のPb2+の塩、及び水溶性の遷移金属塩のうちの1つ、又はそれらの塩の混合物を含む水溶性の含浸溶液で含浸させて、ドープされたアルミナの含浸体を生成する工程と、
(iii)ドープされたアルミナの含浸体をか焼して、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を得る工程と
を含む。
【0012】
ベーマイトは、分子式がAlOOH*xHOの任意のアルミナとして定義され、xは0~0.5であり、ベーマイトと擬ベーマイトとを含む。
【0013】
ベーマイト懸濁液は、シリカ、チタニア、水溶性のチタン若しくはジルコニウムの塩、又はそれらの混合物を更に含むことができる。
【0014】
ベーマイト懸濁液は、ベーマイト前駆物質と少なくとも水とを、好適には2:98~20:80の比率で含む。ベーマイト懸濁液は、pHを調整する添加物、例えばカルボン酸又はアンモニアを選択的に含む。
【0015】
更に好適には、ベーマイト懸濁液は、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって調製される。
【0016】
ドープされたアルミナを調製するための塩の水溶液は、好適には水と、水溶性の希土類塩、水溶性のアルカリ土類塩、又はそれらの混合物とを少なくとも含む。希土類塩は、好適には原子番号が57~60の元素の酢酸塩又は硝酸塩であり、最も好適にはLaの酢酸塩である。アルカリ土類塩は、好適にはアルカリ土類の酢酸塩又はアルカリ土類の硝酸塩である。アルカリ土類塩は、好適にはCa、Sr、又はBaの酢酸塩であり、最も好適にはSrの酢酸塩である。
【0017】
ドープされたアルミナ(か焼後の)は、希土類酸化物、アルカリ土類酸化物、又はそれらの混合物の最大含有量が、20重量パーセント以下の含有量、好適には12重量パーセント未満の含有量、最も好適には10重量パーセント未満の含有量である。アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物において存在する希土類酸化物、アルカリ土類酸化物、又はそれらの混合物のうちの50重量パーセント以上、好適には90重量パーセント以上、最も好適には100重量パーセントは、希土類塩、アルカリ土類塩、又はそれらの混合物としてベーマイト懸濁液に添加される。酸化物は、か焼により塩から生成される。ドープされたアルミナは、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を得るべく、ドープされたアルミナを水溶性の含浸溶液で含浸する工程において、均一に分散された核生成部位を提供する。
【0018】
特に、ドープされたアルミナ(か焼後の)がランタンの酸化物を含む場合、ランタンの酸化物の最大含有量は、20重量パーセント以上の含有量、好適には12重量パーセント未満の含有量、最も好適には10重量パーセント未満の含有量である。ランタンの酸化物は、か焼によりランタンの塩から生成される。ランタンの酸化物の含有量が少ないため、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物においては、LaAlOが生成されない。
【0019】
ベーマイト塩の混合物は、好適には噴霧乾燥されて、ベーマイト塩の混合物の乾燥体を生成する。
【0020】
ベーマイト塩の混合物の乾燥体は、好適には450℃~1200℃の温度、好適には500℃~600℃の温度で、0.5時間以上、より好適には0.5~5時間にわたってか焼されて、ドープされたアルミナを生成する。温度及び時間は、独立して選択される。
【0021】
ドープされたアルミナの含浸は、当該技術分野で既知の任意の含浸方法によって、好適には初期湿潤含浸によって実施できる。上述の方法は一般的に、ドープされたアルミナの細孔容積の80~100%を水溶性の含浸溶液で含浸させる。
【0022】
水溶性の含浸溶液は、ペロブスカイト型酸化物の化学式ABOの特定の化学量論的な比率にしたがって、水溶性の塩の混合物を含む。
【0023】
水溶性の含浸溶液の上述の1以上の水溶性塩は、好適には希土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、好適には原子番号が57~60の希土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、更に好適にはLaの酢酸塩又は硝酸塩、アルカリ土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、好適にはSr、Ba、及びCaの酢酸塩又は硝酸塩、更に好適にはSrの酢酸塩又は硝酸塩、Pb2+及び/又はBi3+の酢酸塩又は硝酸塩、並びに、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸チタンアンモニウム、酢酸ジルコニウム、又はそれらの混合物を含む水溶性の遷移金属塩である。更に好適には、水溶性の塩は、酢酸ジルコニウム、クエン酸鉄アンモニウム、及び乳酸チタンアンモニウムである。
【0024】
本開示の第1態様の工程(ii)は、水溶性の塩の混合物を含む水溶性の含浸溶液を提供する。水溶性塩の塩は、
(a)希土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、好適には原子番号が57~60の希土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、更に好適にはLaの酢酸塩又は硝酸塩、
(b)アルカリ土類元素の酢酸塩又は硝酸塩、好適にはSr、Ba、及びCaのうちの1以上の酢酸塩又は硝酸塩、更に好適にはSrの酢酸塩又は硝酸塩、並びに
(c)Pb2+及びBi3+のうちの1以上の酢酸塩又は硝酸塩
のうちの1以上の塩と、
(d)例えば、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸チタンアンモニウム、クエン酸鉄アンモニウム、酢酸ジルコニウム、又はそれらの混合物を含む、Fe、Ti、及び/又はZrの遷移金属塩などの1つ以上の水溶性の遷移金属の塩
のうちの1以上の塩と
の混合物を含むことができる。
【0025】
代替的には、水溶性の含浸溶液は、1つの水溶性の塩、例えばクエン酸鉄アンモニウムのみを含むことができる。
【0026】
ドープされたアルミナの使用により、好適には、1つの含浸工程のみが適用されて、含浸により、負荷容量の高いドープされたアルミナの含浸体を得る。
【0027】
ドープされたアルミナの含浸体は、好適には500℃~1100℃の温度で、最も好適には700℃~1000℃の温度でか焼される。か焼は、0.5時間以上、更に好適には0.5~5時間、例えば3時間の期間にわたって実行できる。温度及び時間は、独立して選択される。工程(ii)において得られた均一に分散された含浸体により、ペロブスカイトの結晶子サイズが非常に低い、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物が得られる。
【0028】
本開示の第2態様によると、本開示の方法にしたがって調製されたアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物が提供される。
【0029】
本開示の第3の態様によると、
(i)50重量パーセント以上、好適には75~95重量パーセントのドープされたアルミナと、
(ii)化学式I
ABO (I)
の5~50重量パーセント、好適には5~25重量パーセントのペロブスカイト型酸化物と
を含み、
Aは、希土類元素、アルカリ土類元素、アルカリ元素、Pb2+、Bi3+、又はそれらの混合物を含み、
Bは、遷移金属の混合物を含む1つ以上の遷移金属を含み、
ABOの結晶子サイズは、好適には850℃で3時間か焼した後において5nm未満、好適には4nm~5nmであり、700℃で4時間か焼した後において2nm未満であることに特徴づけられる
アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物の複合体が提供される。
【0030】
アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物の重み付けされた強度比は、10未満、好適には8未満であることによって特徴づけられる。重み付けされた強度比は、式1によって決定される。波長が1.54Åの銅のKα線の発光を用いたペロブスカイト構造のX線回折パターンは、2θが約32度で強い反射を含む。
【0031】
遷移アルミナのX線回折パターンは、2θが約46で強い反射を含む。
【0032】
重み付けされた強度比R(式1参照)は、アルミナ担体上のペロブスカイト材料の結晶化度の尺度である。
R=[(I32/I46)]/m (式1)
32:約32度での反射強度
46:約46度での反射強度
:ペロブスカイトの質量/((ABOとして算出された)ペロブスカイトの質量+アルミナの質量)
【0033】
ドープされたアルミナは、本開示の第1態様の下で定義され、調製される。アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物は、好適には80重量パーセント以上のドープされたアルミナを含む。
【0034】
好適には、式Iによるペロブスカイト型酸化物のAは、アルカリ土類元素、更に好適には1以上のSr、Ba又はCaと、希土類元素、更に好適には原子番号が57~60の元素との混合物を含む。最も好適には、Aは、SrとLaとの混合物を含む。
【0035】
好適には、式Iによるペロブスカイト型酸化物のBは、2つの別個の遷移金属の混合物、好適にはFeと元素周期表のIVa族の1以上の元素との混合物を含む。更に好適には、Bは、Fe、Ti、及びZrの混合物を含む。
【0036】
成分A及び成分Bは、3つの酸化物の陰イオンとの荷電平衡が達成されるが故に、モル比が重みづけされた個々の成分の酸化状態の合計が+6に等しくなるように独立して選択される。
【0037】
ペロブスカイト型酸化物は、好適にはアルミナの基質において均一に分散され、双方ともアルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物を生成する。理論に結びつくものではないが、ペロブスカイト型酸化物の小さな結晶の均一な分散が、アルミナ基質が拡散隔壁として作用することを可能にし、アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の複合体の有益な特性を生じさせると出願人は考える。
【0038】
アルミナが担持されたペロブスカイト型酸化物の組成物のBET比表面積は、50m/g~300m/g、好適には100m/g~200m/gにでき、細孔容積は、0.1ml/g~1.5ml/g、好適には0.5ml/g~1.0ml/gにできる。
【0039】
次に、本開示を、以下の非限定的な実施例及び図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、700℃で4時間か焼した後、及び850℃で3時間か焼した後の実施例1のX線回折パターンを示しており、アスタリスク(*)を付した反射は、ペロブスカイト型酸化物のX線パターンの反射を示している。
図2図2は、700℃で4時間か焼した後、及び850℃で3時間か焼した後の実施例2のX線回折パターンを示しており、X線回折パターンであり、アスタリスク(*)を付した反射は、ペロブスカイト型酸化物のX線パターンの反射を示す。
図3図3は、700℃で4時間か焼した後、及び850℃で3時間か焼した後の実施例2及び比較例1のX線回析図を示している。
図4図4は、700℃で4時間か焼した後、及び850℃で3時間か焼した後の実施例2及び比較例2のX線回折パターンを示しており、アスタリスク(*)を付した反射は、ペロブスカイト型酸化物のX線パターンの反射を示し、ハッシュ(#)を付した反射は、SrAlのX線パターンの反射を示し、プラス(+)を付した反射は、SrCOのX線パターンの反射を示している。
図5図5は、700℃の温度で4時間か焼した後の実施例3及び比較例3のX線回折パターンを示しており、アスタリスク(*)を付した反射は、ペロブスカイト型酸化物のX線パターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
均一性は、走査電子顕微鏡(SEM:scanning-electron-microscope)の断面の画像処理によって測定され、選択的に、ドープされたアルミナ及びペロブスカイト型酸化物の領域の大きさを明らかにするエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray Analysis)の元素マッピングと共に測定される。
【0042】
(022)反射(Fm-3cの空間群における)を解析するDebye‐Scherrer法を用いて、ペロブスカイト型酸化物の結晶サイズを決定する。結晶サイズは、850℃で3時間のか焼後に測定した場合に5nm未満であり、700℃で3時間のか焼後に測定した場合に2nm未満である。
【0043】
比表面積及び細孔容積は、カンタクローム(Quantachrome)社のQuadrasorbのような一般的な容積測定装置を用いたN物理吸着により、液体窒素の温度で測定される。比表面積は、BET理論(DIN ISO9277)を用いて決定され、細孔容積は、DIN66131によって決定される。
【実施例
【0044】
[実施例1]
(20重量パーセントのペロブスカイトLa0.5Sr0.5Fe0.5Ti0.5を用いた複合体)
10重量パーセントのLaを含むガンマアルミナは、ランタンの酢酸塩の水溶液を、5重量パーセントのベーマイトの懸濁液と水中において混合することによって調製した。次いで、混合物を噴霧乾燥し、500℃で1時間か焼した。
【0045】
Laがドープされたアルミナは、Srの酢酸塩、クエン酸鉄アンモニウム、及びTyzor LA(チタン溶液)の混合溶液で初期湿潤含浸によって含浸させ、か焼後に4.8重量パーセントのSrO、3.8重量パーセントのFe、及び3.8重量パーセントのTiOの負荷に達した。生成物は、それぞれ850℃で3時間、700℃で4時間か焼した。
【0046】
図1は、850℃で3時間のか焼後、及び700℃で4時間のか焼後に実施例1によって得られた材料のX線回折パターンを示している。
【0047】
[実施例2]
(20重量パーセントのペロブスカイトLa0.5Sr0.5Fe0.5Zr0.5を使用した複合体)
7.8重量パーセントのLaを含むガンマアルミナを、ランタンの酢酸塩の水溶液を5重量パーセントのベーマイトの懸濁液と水中において混合することによって調製した。次いで、混合物を噴霧乾燥し、500℃で1時間か焼した。
【0048】
ドープされたアルミナは、クエン酸鉄アンモニウム及びSrの酢酸塩の混合溶液で初期湿潤含浸によって含浸させて、3.4重量パーセントのFe、5.3重量パーセントのZrO、4.4重量パーセントのSrOの負荷に達した。生成物は、それぞれ850℃で3時間、700℃で4時間か焼した。
【0049】
850℃で3時間のか焼後、及び700℃で4時間のか焼後に得られた材料のX線回折パターンは、図2に示している。
【0050】
[比較例1]
(20重量パーセントのペロブスカイトLa0.5Sr0.5Fe0.5Ti0.5を含む複合体)
当該複合体は、特許文献2の実施例5により調製した。
【0051】
最初に、425gの硝酸ランタン六水和物の400mlの水溶液に、100.9gのγアルミナを添加して、LaAlOの粉末を合成した。得られた混合物は、蒸発させ、乾燥させた。次いで、混合物は、大気中において、600℃で3時間、更に900℃で8時間か焼され、LaAlOの粉末を得た。
【0052】
次の工程においては、LaAlOの粉末は、ストロンチウム、鉄、及びジルコニウムの硝酸塩の水溶液と混合されて、か焼された複合体において、3.4重量パーセントのFe、5.3重量パーセントのZrO、4.4重量パーセントのSrO、及び更なる6.9重量パーセントのLaの負荷に達した。得られた混合物は、大気中において、110℃で10時間乾燥させ、それぞれ700℃で4時間、850℃で3時間か焼された。
【0053】
850℃で3時間のか焼後、及び700℃で4時間のか焼後に得られた材料のX線回折パターンは、図3に示している。
【0054】
当該結果は、アルミナがない点、ペロブスカイトの結晶サイズが大きい点、及び比表面積が実質的に小さい点で、得られた生成物が本開示の組成物と異なることを示している。
【0055】
[比較例2]
(20重量パーセントのペロブスカイトLa0.5Sr0.5Fe0.5Ti0.5を用いた複合体)
当該複合体は、特許文献3の実施例6により調製した。
【0056】
25gのγアルミナのビーズは、多量のランタン、ストロンチウム、鉄、及びジルコニウムの硝酸塩を含む水溶液で2回含浸させて、か焼された複合体、5gのエタノール、及び10gのクエン酸において、6.9重量パーセントのLa、3.4重量パーセントのFe、5.3重量パーセントのZrO、及び4.4重量パーセントのSrOの負荷に達した。得られた材料は、(溶液を除去すべく)最初の含浸の後に真空下で乾燥させた。2回目の含浸後、生成物は、それぞれ700℃で4時間、850℃で3時間か焼した。
【0057】
850℃で3時間のか焼後、及び700℃で4時間のか焼後に得られた材料のX線回折パターンは、図4に示している。
【0058】
粉末X線回折パターンは、本開示の組成物とは顕著に異なる相を明らかにしている。詳細には、ストロンチウムは、ペロブスカイト構造の一部を生成しないが、代わりに700℃でのか焼後にSrCOの形態において存在し、850℃でのか焼後にSrAlの形態において存在している。したがって、当該手順は、所望の組成物を生成するのに適していないと結論づけできる。当該結果は、以下の表1に含まれている。
【0059】
【表1】
【0060】
[実施例3]
(10重量パーセントのペロブスカイトLaFeOを用いた複合体)
11.7重量パーセントのLaを含むγアルミナは、ランタンの酢酸塩の水溶液を5重量パーセントのベーマイトの懸濁液と水中において混合することによって調製した。次いで、混合物を噴霧乾燥し、500℃で1時間か焼した。
【0061】
ドープされたアルミナは、クエン酸鉄アンモニウムの水溶液での初期湿潤含浸によって含浸されて、3.3重量パーセントのFeの負荷に達した。生成物は、それぞれ850℃で3時間、700℃で4時間か焼した。
【0062】
700℃、4時間のか焼後に得られた材料のX線回折パターンは、図5に示している。
【0063】
[比較例3]
(10重量パーセントのペロブスカイトLaFeOを含む複合体)
当該複合体は、特許文献1の実施例3により調製した。
【0064】
75mlの水中における2.2gの酢酸鉄と75mlの水中における4.46gの酢酸ランタンとの混合物を混合し、27gのランタンがドープされたアルミナ(PURALOX TH100/150 L4として市販されている)と150mlの水とを混合することによって調製した分散液に添加した。11.2gの25%NH溶液が当該混合物に添加されて、pHが10に達した。1.5時間撹拌した後、沈殿を濾過し、得られた粉末を700℃で4時間か焼した。
【0065】
700℃で4時間のか焼後に得られた材料のX線回折パターンは、図5に示している。
【0066】
実施例3と比較例3とによる材料のX線回折パターンの比較により、ペロブスカイトの相の結晶化度の違いが明確に示されている。
【0067】
結晶性のペロブスカイトの相は、図2においてアスタリスクによって示されるように、比較例3について検知できるが、ペロブスカイトの反射は非常に弱い。したがって、ペロブスカイトの相は、大部分がX線非晶質な状態で存在すると結論づけできる。
【0068】
当該結果は、以下の表2に含まれている。
【0069】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】