(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】非侵襲的な細胞培養物の監視のための細胞培養容器及び監視システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527707
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 US2020057308
(87)【国際公開番号】W WO2021096665
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】サンソン,マーク クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスデオ,ニキル バーブラーム
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,ジョセフ クリストファー
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029FA15
(57)【要約】
細胞培養物の非侵襲的測定のための、細胞培養容器、細胞培養物監視システム、及びラマン分光分析システムが提供される。上記容器は:閉鎖系として動作する細胞培養チャンバ;上記細胞培養チャンバの境界を画定して、上記細胞培養チャンバの内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、壁;並びに上記壁に配置されて、上記細胞培養チャンバの上記内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、窓を含む。上記細胞培養チャンバは、上記細胞培養物及び細胞培養培地のうちの少なくとも一方を格納するために構成された、内部空間を含む。上記窓はポリマーを含み、上記外部に配置された監視モジュールを介した上記細胞培養物の監視を、上記監視モジュールを上記細胞培養物又は上記細胞培養培地と物理的に接触させることなく、可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養物の非侵襲的測定のために構成された、細胞培養容器であって、前記容器は:
閉鎖系として動作するよう構成された細胞培養チャンバであって、前記細胞培養チャンバは、前記細胞培養物及び細胞培養培地のうちの少なくとも一方を格納するために構成された内部空間を備える、細胞培養チャンバ;
前記細胞培養チャンバの境界を画定して、前記細胞培養チャンバの前記内部空間を前記細胞培養チャンバの外部から隔てる、壁;並びに
前記壁に配置されて、前記細胞培養チャンバの前記内部空間を前記細胞培養チャンバの外部から隔てる、窓であって、前記窓はポリマーで構成され、前記外部に配置された監視モジュールを介した前記細胞培養物の監視を、前記監視モジュールを前記細胞培養物又は前記細胞培養培地と物理的に接触させることなく、可能にするよう構成される、窓
を備える、細胞培養容器。
【請求項2】
前記窓の外側に配置され、前記窓を通して前記細胞培養物の様相を監視するために構成された、監視モジュールを更に備える、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記監視モジュールは分析物モニタを備える、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記分析物モニタは、1つ以上の励起波長の光を放出して、前記細胞培養チャンバ内の培地層から放出された光をキャプチャするよう構成された、スペクトル素子を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記スペクトル素子は、前記培地層に対してラマン分光分析を実施するよう構成される、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記分析物モニタは、導波路及び検出器を備える、請求項3~5のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記分析物モニタは、回折格子及びレンズを更に備える、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
前記分析物モニタは、ファイバプローブ及び検出器を備える、請求項3~7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記分析物モニタは、前記細胞培養チャンバ内のグルコース、ラクトース、及びグルタミンのうちの少なくとも1つを監視するよう構成される、請求項3~8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
前記窓は、前記監視モジュールによる前記細胞培養容器内の分析物の検出に干渉しない放出スペクトルを有する材料で構成される、請求項1~9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項11】
前記窓は、シリコーン、又はポリジメチルシロキサン、又は炭素‐炭素共有結合を有しないポリマーで構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の容器。
【請求項12】
前記壁は、前記壁に形成された開口を備え、前記窓は前記開口に配置される、請求項1~11のいずれか1項に記載の容器。
【請求項13】
前記窓は、前記壁の前記開口を密閉するためのガスケットとして機能するよう構成され、前記窓は、前記ポリマー製窓の圧縮、前記ポリマー製窓と前記開口との間のプレスフィット、前記壁に対する前記ポリマー製窓のラミネーション、熱封止、又は接着剤を用いた前記開口若しくは前記壁に対する前記窓の接着のうちの少なくとも1つによって、前記開口を密閉する、請求項12に記載の容器。
【請求項14】
前記容器は、フラスコ、多層フラスコ、シェーカーフラスコ、スピナーフラスコ、バイオプロセスバッグ、バイオリアクタ、培地バッグ、ボトル、クライオチューブ、及び管材のうちの少なくとも1つである、請求項1~13のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
前記容器の外部に保持用特徴部分を更に備え、前記保持用特徴部分は、前記監視モジュールと協働して、前記監視モジュールが前記窓を介して前記細胞培養物又は前記細胞培養培地を監視できる位置に、前記監視モジュールを維持するよう構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第120条の下で、2019年11月14日出願の米国仮特許出願番号第62/935,215号、及び2019年11月21日出願の米国仮特許出願番号第62/938,687号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に細胞培養物の監視に関し、より具体的には、細胞培養容器を用いた非侵襲的な細胞培養物の監視、及び光学窓を有する細胞培養容器とラマン分光光学デバイスとを含む細胞培養物監視システムに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞培養物は、細胞増殖のための人工環境を提供するために広く使用されている。細胞は懸濁液中で増殖でき、又は細胞培養容器内の表面に付着できる。細胞培養物の処理は、細胞の増殖並びに健康(コンフルエンス及び形態)の監視、並びに細胞増殖に好適な環境(例えばpH、グルコース、及び乳酸レベル)の保証という、2つの主要なアクティビティを含む。低い収率、高い人件費、集中的な手作業のワークフロー、及び処理が実施されることが多い高コストのクリーンルーム環境を原因として、細胞培養物の生産コストは極めて高い。細胞培養物の監視方法は、収率の上昇及びコストの削減のための重要な要素である。
【0004】
細胞の観察及び分析物の測定の両方のための現行の方法は、時間がかかる場合があり、また容器への直接のアクセスを必要とする場合があり、これは容器の環境の無菌性を損なうリスクがある。科学者は裸眼又は顕微鏡で細胞のコンフルエンスを観察することが多い。残念ながらこれらの方法は容器への直接のアクセスを必要とし、これによって細胞増殖が遅延又は停止することが多い。更に、直接アクセスする方法では、プロセスの自動化が困難又は不可能である。細胞培養物処理は従来、プローブセンサ、ピペット、ドローオフチューブ、又はパッチといった部品を利用する侵襲的又は半侵襲的方法で監視される(例えば特定の分析物の存在)。
【0005】
例えば、容器から培地を吸引することによって監視するという行為は、細胞の増殖プロセスに悪影響を及ぼし得る複数の方法で細胞を妨害する可能性があるため、理想的ではない。これには一般に容器を開ける必要があり、これは汚染物質の導入につながり得る。また、細胞は、インキュベータ内で維持されている理想的な温度未満への温度の低下を受ける場合があり、これは場合によっては細胞に対する意図しない影響を有する可能性がある。更に、付着性細胞培養容器の場合、操作者が容器を取り扱う際に、培地が容器又は増殖基質の表面上を動いてしまう場合がある。この運動は、例えば供給中の、表面からの細胞の離脱、及びこれに続く細胞の喪失につながる恐れがある。更に、ドローオフ法では、容器からわずかなパーセンテージの培地を取り出す必要があり、これによってシステム内の材料の組成又は量が変化する。頻繁な測定が必要な場合、これは、相当な体積の培地の減少につながる可能性があり、これにより、補償のための培地の追加が必要になり、分析されていないバッチの他の容器に比べて、試料採取された容器の培養条件が更に変更される。このような条件の変動は、予測不可能な結果、及びある1つのバッチ内の容器間での結果のばらつきにつながる。
【0006】
監視に使用される別の分析技法は、ラマン分光分析及びプローブの使用を伴う。ラマン分光分析は、物質を単色光で照明して、散乱光中の個々の波長及びその強度を測定することにより、物質中の様々な分子の実体及び濃度を決定するための、光散乱を用いる分析技法である。この分析ツールは、分子の構造フィンガープリントに基づいて、該分子のタイプ及び濃度を特定するために、化学分野で一般的に使用され、水性及び他の液体環境の分析、並びに固体、ゲル、気体、及び粉体の分析に好適である。ラマン分光分析は、システム内の振動及び回転モートに基づく技法である。例えば典型的なラマン分光分析システムでは、試料中の分子を光学的に励起するレーザで試料が照明され、光のごく一部が、励起波長よりわずかに低い又は高い波長で弾性散乱される。この周波数のシフトは、最終状態のエネルギが低い場合にはストークスシフトと呼ばれ、散乱した光子が高い周波数にシフトする場合は反ストークスシフトと呼ばれる。
【0007】
ラマン分光分析システムは従来、光源及び検出器から離間した試料のラマンスペクトルの測定を容易にするプローブを含む。プローブは、第1の光ファイバ(即ち「ポンプ」又は「励起」ファイバ)を介して光源に光学的に接続され、第2の光ファイバ(即ち「受光」「戻り」又は「放出」ファイバ)を介して検出器に光学的に接続される。ラマン分光計は、標本、液体、又は粉体に浸漬できるプローブと共に市販されており、そこでラマンプローブは、試料へのポンプファイバ及び試料からの受光ファイバとを連結できる。ラマンプローブは、試験される標本と接触して配置された端部に、収集用光学部品を有する。この収集用光学部品は典型的にはボール(即ち球形)である。ボール状光学部品は製造が容易かつ安価であり、ボールレンズでない他の単一の光学部品に比べて比較的多量の光を収集できる。しかしながらボールレンズはまた、ボールの前面又は遠位面に非常に近接した光を収集する。換言すれば、光学部品の焦点は、光学部品の前面に近接している。これは、例えば閉鎖系である細胞培養容器の壁を通して成分を分析しようとするときなど、観察対象を妨害又は汚染しないようにするときに、ボールレンズをプローブの端部で使用して障壁を通して標本を観察することを試みる場合には、欠点となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の細胞培養法は、細胞増殖環境内の侵襲的又は非侵襲的部品との、何らかの接触を必要とするため、システムは閉鎖系として動作できない。従って、閉鎖系の非侵襲的監視のための、改良された細胞培養物監視デバイス、システム、及び方法に対する需要が存在する。このような閉鎖系の非侵襲的監視によって、細胞培養培地組成物並びに細胞の増殖及び健康のより良好な制御のために自動化を使用できるようになり、また増殖全体を通して無菌性を維持できるようになるため、クリーンルームの必要及びコストを削減できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態によると、細胞培養物の非侵襲的測定を可能にする細胞培養容器が提供される。上記容器は、閉鎖系として動作可能な細胞培養チャンバと、上記細胞培養チャンバの境界を画定して、上記細胞培養チャンバの内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、壁とを含む。上記細胞培養チャンバは、上記細胞培養物及び細胞培養培地のうちの少なくとも一方を格納するための内部空間を有する。上記容器はまた、上記壁に配置されて、上記細胞培養チャンバの上記内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、窓を含む。上記窓はポリマーを含み、上記外部に配置された監視モジュールを介した上記細胞培養物の監視を、上記監視モジュールを上記細胞培養物又は上記細胞培養培地と物理的に接触させることなく、可能にする。
【0010】
いくつかの実施形態によると、上記容器は更に、上記窓を通して上記細胞培養物の様相を監視するための、上記窓の外側に配置された監視モジュールを含む。上記監視モジュールは分析物モニタを含むことができ、上記分析物モニタは、1つ以上の励起波長の光を放出して、上記細胞培養チャンバ内の培地層から放出された光をキャプチャできる、スペクトル素子を含むことができる。いくつかの実施形態では、上記スペクトル素子は、上記培地層に対してラマン分光分析を実施できる。いくつかの実施形態の一態様として、上記分析物モニタは、上記細胞培養チャンバ内のグルコース、ラクトース、及びグルタミンのうちの少なくとも1つを監視する。
【0011】
本開示の1つ以上の実施形態によると、上記窓は、上記監視モジュールによる上記細胞培養容器内の分析物の検出に干渉しない放出スペクトルを有する材料を含む。いくつかの実施形態では、上記窓はポリジメチルシロキサン等のシリコーン材料を含む。上記窓は、炭素‐炭素共有結合を有さないポリマーを含んでよい。
【0012】
本開示の実施形態によると、細胞培養物の非侵襲的監視のための細胞培養物監視システムが提供される。上記システムは、閉鎖系として動作するように配設された細胞培養チャンバを有する細胞培養容器を含み、上記細胞培養チャンバは、上記細胞培養物及び細胞培養培地のうちの少なくとも一方を格納するための内部空間を有する。上記システムは更に:上記細胞培養チャンバの境界を画定して、上記細胞培養チャンバの上記内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、壁;及び光学素子を介して上記内部空間内へと光を送達することによって、上記内部空間内の上記細胞培養物又は上記細胞培養培地を分析するために、上記細胞培養チャンバの外部に配置された監視システムを含み、ここで上記光は、上記光学素子の第1の表面を通って上記光学素子に入り、上記光学素子の第2の表面を通って上記光学素子を出るものであり、上記第1の表面及び上記第2の表面のうちの少なくとも一方は非球面形状を有する。
【0013】
1つ以上の実施形態によると、標本の非侵襲的監視のために構成されたラマン分光分析システムが提供される。上記システムはプローブを含み、上記プローブは:少なくとも1つの送達用光ファイバ及び少なくとも1つの収集用光ファイバを含む光ファイバデバイスであって、上記送達用光ファイバは、上記光ファイバデバイスの遠位端を介して標本に光を送達するよう構成され、上記収集用光ファイバは上記標本からの散乱光を収集するよう構成される、光ファイバデバイス;並びに上記光ファイバデバイスの上記遠位端に配置されて、上記送達用光ファイバからの光を集束させるよう構成された、光ビーム成形素子であって、上記光は、上記光ビーム成形素子の第1の表面を通って入り、上記光ビーム成形素子の第2の表面を通って出る、光ビーム成形素子を含む。上記システムは更に、上記プローブに光学的又は電気的に結合され、上記プローブから信号を受信するよう構成された、検出器を含み、ここで上記第1の表面及び上記第2の表面のうちの少なくとも一方は非球面形状を有する。
【0014】
上述の方法及びシステムの更なる応用範囲は、以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲、及び図面から明らかになるだろう。「発明を実施するための形態」及び具体例は例示のみを目的として与えられるものである。というのは、本記載の精神及び範囲内での様々な及び変更及び修正は当業者には明らかとなるはずであるためである。
【0015】
本開示の性質及び利点の更なる理解は、以下の図面を参照することで実現できる。添付の図面では、同様の部品又は特徴は同一の参照用標識を有する場合がある。更に、同一のタイプの様々な部品が、参照用標識の後にダッシュを付けたもの、及び同様の複数の部品を区別する第2の標識によって、区別される場合がある。明細書中で第1の参照用標識のみが使用されている場合、本説明は、第2の参照用標識とは無関係に、同じ第1の参照用標識を有する同様の部品のうちのいずれにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態による、容器内の細胞培養物の非侵襲的測定のための、1つ以上の監視用窓を有する細胞培養容器の概略図
【
図2】本開示の実施形態による、監視用プローブ、及び細胞培養容器の壁の監視用窓の断面図
【
図3】本開示の実施形態による、容器、監視用窓、及び細胞培養物成分のラマンスペクトル測定値の例示的なグラフ
【
図4】本開示の実施形態による、グルコース及び乳酸の測定のためのスペクトルゾーンを伴う
図3の例示的なグラフ
【
図5A】本開示の実施形態による、細胞培養容器にはめ込まれた監視用窓の周縁部分の断面図、及び監視用窓の反りを軽減する方法
【
図5B】本開示の実施形態による、細胞培養容器にはめ込まれた監視用窓の周縁部分の断面図、及び監視用窓の反りを軽減する方法
【
図5C】本開示の実施形態による、細胞培養容器にはめ込まれた監視用窓の周縁部分の断面図、及び監視用窓の反りを軽減する方法
【
図5D】本開示の実施形態による、細胞培養容器にはめ込まれた監視用窓の周縁部分の断面図、及び監視用窓の反りを軽減する方法
【
図6】
図5A~5Dに示されている実施形態による、監視用窓に生じる変形の例のグラフ
【
図7】本開示の実施形態による、遠隔監視をサポートする、細胞培養物の非侵襲的測定のための監視用層の例の斜視図
【
図9】本開示の実施形態による、遠隔監視をサポートする、細胞培養物の非侵襲的測定のための積層細胞培養容器システムの例の斜視図
【
図10】本開示の実施形態による、監視用層の陥凹部の例
【
図12】
図11のプローブに示されているような球面レンズの概略図
【
図13】本開示の実施形態による、非球面光学素子の概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
単数形「ある(a、an)」、及び「その、上記(the)」は、文脈が明らかにそうではないことを示している場合を除き、複数の指示物を含む。同一の特性を列挙する全ての範囲の終点は独立して組み合わせ可能であり、列挙される終点は包括的である。全ての参考文献は、参照により本明細書に援用される。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「有する(have、having)」、「含む(include、including)、「備える、含む(comprise、comprising)」等は、それらの非限定的な意味で使用され、概ね「含むが、これらに限定されない(including、but not limited to)」ことを意味する。
【0019】
本明細書中で使用される全ての学術用語及び技術用語は、特に指定がない限り、当該分野で一般的に使用されている意味を有する。本明細書中で提供される定義は、本明細書中で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0020】
本発明の開示は以下に、最初は一般的に、その後、いくつかの例示的な実施形態に基づいて詳細に記載される。個々の例示的な実施形態において互いに組み合わせて示される特徴は、必ずしも全てが実現されない。特に、個々の特徴が省略される場合もあり、又は同一の例示的な実施形態の図示されている他の特徴、若しくは他の例示的な実施形態の他の特徴と、他の何らかの方法で組み合わせられる場合もある。
【0021】
細胞を妨害することなく、特定の測定をリアルタイムで完了できる細胞培養システム、換言すれば閉鎖系は、無菌の細胞増殖環境の維持を容易にすることができる。例えば、細胞培養チャンバの外部の監視システムは、細胞への直接接触及び増殖環境の汚染を伴わない、細胞増殖及び健康といった細胞ステータスの測定のための非侵襲的方法を提供できる。本明細書中で使用される場合、用語「閉鎖系(closed system)」は、システムの内容物が周囲雰囲気へと開かれていないシステムを指す。上記システムは、キャップ等の閉鎖装置を含んでよく、これは周囲雰囲気からの汚染物質の導入を制限又は防止する。上記システムは、上記システムの内容物の無菌性を保証するために密閉されていてよいが、これは必須ではない。
【0022】
本開示の実施形態は、容器の壁に設けられた窓を介した閉鎖系の監視を可能とする、細胞培養容器及びシステムを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養物システムは、画定された窓を有する容器を提供し、監視システムはこの窓を介して、細胞培養チャンバの内部を分析する。例えば、1つ以上の実施形態の一態様は、液体培地と生物学的構成要素又は細胞とを内包する閉鎖系の内部の様相を監視するための外部監視技術を可能にするポリマー製窓を、システム内に含む。赤外(IR)及びラマン分光分析といった特定の分析法は、細胞培養物に関連する特定の因子の測定、例えば細胞培養物中のグルコース及び乳酸の測定が可能であることが、当該技術分野において公知である。しかしながらこれらの方法では一般に、インサイチュで、又はプローブのために設計されたポートを通してプローブを押し込むことによって、細胞培養培地にプローブを挿入する必要がある。ポリマー製窓を介して分光学的な読み取りを行うことは、ポリマーによって生成されるバックグラウンドノイズを理由として、実用的でないことが示されている。例えば、ポリマー中の炭素‐炭素結合は、グルコース及び乳酸に起因する信号の感度を不明瞭にする可能性のあるバックグラウンド信号を導入する場合がある。それにもかかわらず、本開示の実施形態は、それを通してグルコース等の培地成分及び乳酸等の細胞培養廃棄物を光学的に監視できる及び/又は読み取ることができる、監視(例えばラマン分光分析)用のポリマー製窓の使用、並びにこのような窓を含む容器、並びにこれらの窓を介した測定に使用されるプロセス及び方法を対象とする。本明細書中で使用される場合、「監視用プローブ(monitoring probe)」又は「監視モジュール(monitoring module)」は、容器内の培地層の様相を測定するために使用されるいずれのデバイスを含み、例えば、分析物モニタ又はプローブ、ラマン分光分析プローブを含むスペクトルプローブ、又は細胞培養の当業者によって使用される他のモニタ若しくはプローブを含んでよい。本明細書中で使用される場合、用語「培地層(media layer)」は、固体、液体、又は気体形態のいずれであるかに関係なく、培地のうち、容器内にあり、所望の監視標的である部分を意味する。培地層は、容器内の細胞培養物又は細胞培養培地(これらの成分を含む)を含む。
【0023】
図1は細胞培養容器100の例を示し、これは、容器100の内部の細胞培養空間104を取り囲む1つ以上の側壁102によって形成される。上記細胞培養容器は、1つの側壁102に窓106aを備える。窓を容器上に所望の通りに配置でき、所与の細胞培養システムの仕様に基づいて最適な場所を選択してよいことを例示するために、容器100は多数の窓106a、106b、及び106cを伴って図示されている。場合によっては、ある所与の容器に複数の窓を設けることができ、これにより、監視の場所をいつでも自由に選択でき、単一のプローブを用いて、異なる時点において様々な窓を介して細胞培養空間104を監視できるか、又は複数の監視用プローブが様々な窓を介して細胞培養空間を同時に監視できる。監視用プローブ107は、窓106aを介して細胞培養空間104内の培地層の1つ以上の様相を測定するために、窓106aに隣接して位置決めされる。検出システム108は、プローブ107によって得られた測定値を分析するための、検出器及び/又は処理ユニットを含んでよい。プローブ107は、信号キャリア109を介して検出システム108に接続される。信号キャリア109は、信号をプローブ107から検出システム108まで搬送するいずれの手段とすることができ、例えば電極、光ファイバ、又は無線信号を含む。実施形態によると、プローブ107はラマン分光分析プローブとすることができる。
【0024】
図2は、本開示の1つ以上の実施形態による、監視用プローブ(
図2の例ではラマンプローブ)と、例示的な容器(例えばCorning CellStack(登録商標))の窓との間の境界の拡大図である。
図2では、細胞培養容器の壁112には開口114が設けられ、そこに窓116が設けられる。ラマンプローブ120は、細胞培養容器の内部を分光学的に監視するために、このプローブのレンズ122が窓116に隣接するように位置決めされる。
【0025】
1つ以上の実施形態のある態様として、窓は、分光分析中にポリマーによって生成されるバックグラウンド信号を低減する組成を有する、1つ以上のポリマーを含んでよい。特に、所望の監視標的である閉鎖系内の成分に対応するスペクトルエリアにおいて、バックグラウンド信号を低減する。例えばポリマー製窓は、監視されている培地層中に溶解した、炭素‐炭素共有結合を含有する有機分子の測定感度を低減する可能性がある、容器の壁のこの領域におけるバックグラウンド信号の生成を回避するために、炭素‐炭素共有結合をほとんど又は全く含有しない1つ以上のポリマーから形成されていてよい。炭素‐炭素結合が存在しないことにより、閉鎖系の監視における関心対象である有機培地成分(例えばグルコース及び乳酸等)によって検出信号が生成され得る領域において、分光分析中にポリマーによって生成されるバックグラウンド信号が低減又は排除される。このようなポリマー材料の例は、シリコーン又はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。本明細書に記載されるように、PDMSは、いくつかの実施形態に従ってグルコース及び乳酸を測定する際の窓として好適であることが示されている。しかしながら、実施形態はこれらの材料に限定されず、炭素‐炭素共有結合が削減された、又は炭素‐炭素共有結合を含まない、いずれのポリマーも好適となり得る。よって、PDMSに具体的に言及する場合、いくつかの実施形態では、PDMSをこのような他の好適なポリマーに置き換えることができることが意図されている。
【0026】
図3は、
図2に示されているCellSTACKの例におけるラマンスペクトルオーバレイ測定値を示す。示されているスペクトルには、シリコーン製窓(PDMS)、容器のポリスチレン製壁、並びにDMEM培地(即ちグルコース及び乳酸を含まない)からのバックグラウンドが含まれる。また、グルコースの溶液及び乳酸の溶液から生成される信号も図示されている。容器の壁の窓を介して測定されたグルコース及び乳酸のスペクトルをDMEMと比較すると、DMEMスペクトルにピークのないゾーンがあることが示され、これにより、バックグラウンドを伴わないグルコース及び乳酸の定量化が可能となる。例えば
図4は、本開示の実施形態による、密閉された一体型シリコーン製窓の使用によって、細胞培養容器の壁を介したラマン分光分析で測定した場合にグルコース及び乳酸の定量化を可能とする、スペクトルゾーンA、B、C、D、及びEを示す。換言すれば、グルコース及び乳酸のスペクトルは、ポリマー製窓のバックグラウンドスペクトルよりも上で識別可能であり、従って本開示の実施形態の窓は、容器内のグルコース及び乳酸の監視を損なうことなく使用可能である。
【0027】
図3及び4に示されている測定は、ラマン分光器と、一体化されたシリコーン製窓(即ちPDMS)を備えた容器とを用いて実施された。窓の製作に使用されるPDMSはDow C6‐150であり、0.005~0.020インチの窓の厚さが評価され、これらは全て、容器においてラマン窓(Raman window)として機能する良好な能力を示した。いくつかの例では、分光器と容器内の培地層との間の材料の量の削減という点で、窓が薄いほど動作をわずかに良好にすることができる。細胞の培養を行う者にとって、グルコース及び乳酸は特に興味深いものであるため、容器の壁の窓を介してグルコース及び乳酸の測定を実施した。しかしながら、本開示の実施形態による窓及び細胞培養システムを用いて他の成分も測定できるため、実施形態はグルコース及び乳酸の検出に限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器全体を窓と同一の材料(例えばシリコーン又はPDMS)で作製できる。しかしながら、容器材料の物理的及び科学的な特徴又は要件を理由として、容器を窓と異なる材料から作製することが有利である場合がある。例えば:ポリスチレンが例えばローラーボトル、試験管、ペトリ皿、フラスコ、CellSTACKS、及びHYPERStacksに;ポリカーボネートが振盪フラスコに;ポリエステルが振盪フラスコ及び培地ボトルに;ポリプロピレンが試験管及びクライオバイアルに使用されることがある。容器に対して、窓のポリマーとは異なるポリマーを使用することが望ましい場合、ポリマー製窓は、例えば接着剤の使用、適合性ポリマーによる熱封止、又は圧縮封止(この場合、PDMSのエラストマ特性によって圧縮シールの生成が可能となる)を含む、当該技術分野で公知の組み立て密閉方法を用いて壁に組み付けることができる。
【0029】
シリコーンはエラストマであるため、本開示の実施形態は、窓が、容器に設けられた開口内でガスケットとして作用し、開口を密閉して閉鎖系の完全性を維持するという追加の利点を提供する。これは、容器の材料とポリマー製窓の材料との間に熱封止を形成する等の特定のタイプの密閉方法に適合しないポリマー又は他の材料から容器が作製されている場合に、特に有利である。1つ以上の実施形態によると、ポリマー又はシリコーン製窓は開口内のシリコーンの圧縮はめ込み、ラミネーション、接着剤、又は当該技術分野で公知の他の方法を用いて、容器の壁に接合できる。それを通して目標の成分を効果的に監視できる密閉された窓を有することによって、閉鎖系は、汚染又は外部のプローブに対して閉鎖されたままとなり;容器の移動又は開放は必要なく;凍結溶液を解凍せずに(例えば細胞の生存率に関して)監視でき;プローブの較正は最小限しか又は全く必要なく;監視をリアルタイムで実施でき、例えば容器をインキュベータから取り出す必要が回避され、溶液を除去して分析対象のシステムを変更する必要も回避される。更に、シリコーン製窓は安価に製造でき、ガンマ線照射又は電子ビーム照射といった業界標準のプロセスによって滅菌できる。よってこのような窓は実用的であり、使い捨て容器を含む全ての細胞培養容器に好適である。更に、エラストマポリマー製窓を用いた容器では、監視ユニットのプローブの遠位の光学部品を窓自体に押し付けることによって、光学部品と、細胞培養チャンバの内部の分析対象の物体との間の距離を最小限に抑えることができる。
【0030】
場合によっては、容器の開口内へのポリマー製窓のはめ込みによって、ポリマー製窓が反る可能性がある。例えばポリマー製窓は、開口内にはめ込むために圧縮されることがあり、及び/又は窓の周縁部分に配置されるシーリングリング若しくは保持機構によって圧縮されることがある。このようなポリマーの圧縮はポリマー製窓内に応力を誘発し、これが窓の反り又は曲がりを引き起こす可能性がある。これにより、それを通して監視が実施される窓が、平坦な表面を有さなくなるリスクが発生する。窓がこのように反っている場合、監視結果が影響を受ける恐れがあり、及び/又は窓付近での若しくは窓に対するプローブの正確な配置が損なわれる恐れがある。従って、本開示の実施形態は、ポリマー製窓と細胞培養容器との間にシールを備えることなく、窓のたわみ又は反りを最小限に抑えるための態様を提供する。
【0031】
図5A、5B、5C、及び5Dは、1つ以上の実施形態による、細胞培養容器132a、132b、132c、及び132dそれぞれに接合される窓130a、130b、130c、及び130dの周縁部分の拡大断面図を示す。監視用プローブ138は窓の外側に、窓130a~130dの観察用部分に隣接して示されており、各窓130a~130dの周縁部分は、圧縮リング134によって細胞培養容器132a~132dの縁部に押し付けられることになる位置で示されている。本出願人は、圧縮リング134と細胞培養容器132a~132dとの間での窓の周縁部分の圧縮によって、監視用プローブ138に面する窓の観察用部分が反る、又はたわむ可能性があることを発見した。また本出願人は、窓の周縁部分と圧縮リング134及び細胞培養容器の縁部との接合を制御することによって、窓内の応力を制御できることを発見した。例えば
図5Aでは、窓130aの観察用部分は、周縁部分を圧縮リング134と容器の縁部133との間で圧縮する前は平坦であるが、容器の内縁部のテーパ136aの角度に応じて、窓130aの観察用部分は反る場合があり、これにより、窓130aを圧縮リング134と容器132aとの間で圧縮した後には、上記観察用部分は平坦でなくなる。一例として、容器の開口の内縁部の21°の単一のテーパ136aは、窓に湾曲を誘発することが分かった。ここでテーパの角度は、容器の縁部と、
図5A~5Dに対して垂直な線(即ち容器の内面133に対して垂直であり、
図5A~5Dを示すページの平面内にある線)との間の角度である。しかしながら、実施形態の態様によると、この湾曲は予防又は補正できる。
図5B、5C、及び5Dは、誘発された湾曲を軽減するために窓の形状を制御する実施形態の例を示す。
【0032】
図5Bでは例えば、容器132bの縁部に複合テーパを設ける。本明細書中で使用される場合、「複合テーパ(compound taper)」は、2つ以上の別個のテーパ角度又は可変角度のテーパを含む、一定でない角度を有するテーパを意味する。
図5Bでは、複合テーパは、
図5Aのテーパ136aに対応する第1の角度の外側テーパ136bと、上記第1の角度とは異なる第2の角度の内側テーパ136b’とを含む。いくつかの実施形態では、内側テーパ136b’は外側テーパ136bより小さい。一実施形態では、内側テーパ136b’は10°であり、外側テーパ136bは21°である。これらの角度は単なる例として与えられており、上記複合テーパは、所望の結果を達成するための具体的な窓及び容器の構成に基づいて調整できることが理解される。1つ以上の実施形態によると、外側テーパ136b又は内側テーパ136b’の角度は、90°未満かつ0°超、約45°以下かつ約2°以上、約30°以下かつ約5°以上、約25°以下かつ約10°以上、約21°以下かつ約10°以上である。
【0033】
図5Cでは、窓130cの反りは、少なくとも圧縮リング134の下の部分において窓130cの剛性を増大させることによって、低減される。剛性の増大は、窓の組成を周縁部分において変更して、材料の剛性を増大させることによって、達成できる。あるいは、又は更に、剛性は、周縁部分の物理的形状を変更することによって増大させることができる。例えば
図5Cに示されているように、窓130cの周縁部分は、窓130cの観察用部分に比べて厚さが増大した部分137を有する。厚さが増大した部分137は、このセクションの剛性、及び窓130cの周縁部分の圧縮によって発生する応力を変化させる。その結果、窓130cの観察用部分は、圧縮リング134と容器132cとの間に封止された後であっても、良好な平坦性を維持できる。いくつかの好ましい実施形態では、剛性は周縁部分のみに生成され、これによって、剛性の変化が窓の中央部分の監視の感度の変化をもたらすのを回避する。
【0034】
図5Dは、窓の反りに対する別の解決策の例を示す。具体的には、窓130dを、事前に形成された負方向のたわみ139又は湾曲を有するように形成できる。即ち、窓130dが圧縮リング134と容器132dとの間で圧縮される前、窓130dの観察用部分は平坦でなくわずかにたわんでいる。この負方向のたわみ139は、圧縮リングによる圧縮時に窓130dが湾曲する傾向を相殺するものであり、これによって最終製品は、所望の程度の平坦性を有する窓を有することになる。換言すれば、負方向のたわみ139は、窓の周縁部分が圧縮リングによって圧縮されたときに、より平坦になる。いくつかの実施形態では、負方向のたわみ139は、窓の観察用部分を、容器132dの内部に向かってたわませることができる。他の実施形態では、圧縮リング134によって誘発される反りが窓を容器の内側に向かってたわませる場合、負方向のたわみは、窓の観察用部分を、容器の外部に向かってたわませることができる。いくつかの好ましい実施形態では、窓に形成されるたわみの程度は、圧縮リングによって誘発される反りの程度に対応させることができる。例えば
図5Aの構成の例では、窓は変形して上向きに約50μmたわんだ。よって、所望の平坦性を有する最終的な窓を生成するために、同程度の変形を相殺するための約50μmの負方向のたわみが示されている。このたわみの量は単なる例として与えられているものであり、最終的な窓において誘発される反りを十分に相殺するように、たわみの量を調整できることが理解される。いくつかの例では、負方向のたわみ又は湾曲は、約10μm~約1000μm、最大約500μm、最大約400μm、最大約300μm、最大約200μm、最大約100μm、又は約10μm~約50μmであってよい。
【0035】
図6は、
図5A~5Dに示されている実施形態による、監視用窓の反りの例をプロットしたグラフを示す。「オリジナル(original)」構成は、
図5Aに示されている実施形態に対応し、最も高い変形(約50μm)を有する。複合テーパ(
図5Bに対応)は、オリジナル構成より小さな変形(約44μm)を有し;剛性が増大された領域を有する窓は、更に小さな変形(約28μm)を有し;負方向のたわみを有する窓は、最小の変形(約6μm以下)を有し、ほとんど平坦である。よって、これらの特徴が窓に平坦性の改善を提供することを確認できる。
【0036】
1つ以上の実施形態によると、監視用窓は、窓の付近又は容器上に配置された1つ以上の保持用特徴部分によって、容器内に組み込まれ、ここで上記1つ以上の保持用特徴部分は、プローブを、上記プローブが窓を介して閉鎖系を監視できる位置において、容器に「クリッピング(clip)」できるか、又は着脱可能に取り付けることができる。いくつかの実施形態の別の態様によると、プローブを、閉鎖系の正確な監視に好適な場所に位置合わせする、位置合わせ用特徴部分を設けることができる。保持用特徴部分及び位置合わせ用特徴部分は、組み合わせて又は別個に設けることができ、またいくつかの実施形態では、保持用特徴部分自体が位置合わせ用特徴部分である。いくつかの実施形態では、プローブは手持ち型であってもよく、位置合わせ用特徴部分を用いて手持ち型プローブを位置合わせできる。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「容器(vessel)」は、静的条件で使用されるか動的(例えば灌流)条件で使用されるかにかかわらず、及び付着性細胞に使用されるか懸濁細胞に使用されるかにかかわらず、いかなる細胞培養容器も含む。例えば好適な容器としては、Tフラスコ、多層フラスコ、CellSTACKS、Cell Factories(登録商標)、HYPERFlasks(登録商標)、シェーカーフラスコ、スピナーフラスコ、バイオプロセスバッグ、及びバイオリアクタ、並びに配合及び品質の確認に使用されるクライオチューブ、培地バッグ及びボトル等の補助容器が挙げられる。窓は、灌流容器と共に使用できるもの等の管材経路内に配置することもでき、管材自体の中に形成しても、又は管材内に接続若しくはオーバーモールドされた器具に組み込んでもよい。管材自体の中に組み込まれる場合、窓は管材(例えばシリコーン製管材)の壁が薄いセクションから形成できる。動的供給を可能にする制御システムを備えた容器に関しては、供給システムの微調整された制御を可能にすることによる、リアルタイムの測定が有利となり得る。
【0038】
本明細書に記載の細胞培養容器は、培養中に細胞が付着する平面を一般に含む、付着性細胞培養容器であってよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞が懸濁液中で培養される、懸濁細胞培養容器であってよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、懸濁液中で表面又はキャリアに付着した細胞を培養するために構成されていてよい。このようなキャリアとしては例えば、付着した細胞を放出するために溶解又は消化可能であってよい、マイクロキャリアが挙げられる。細胞培養物のための複数の層を備えた積層細胞培養容器を使用してもよく、これは、単層容器又は皿上において、細胞増殖のための面積の増大を提供する。積層細胞培養容器では、1つ以上の層は、閉鎖系の外部の監視モジュールによって監視できる監視用層であってよい。上記監視用層は、積層容器の上部又は底部に位置決めされていてよく、また、積層細胞培養容器内の他の細胞培養層の間にあってもよく、積層の様々な層の細胞培養物の測定を行うことができる。
【0039】
本明細書に記載されているように、細胞培養容器は監視用層を含んでよく、これは、スペクトル分析技術並びに/又は光学技術(例えばマイクロレンズ及び導波路)によって、監視用層内にあり、かつ閉鎖系の一部である細胞又は培地を監視できるようにするよう構成される。本開示の実施形態は更に、スペクトル分析技術及び光学技術のうちの少なくとも一方を含む監視モジュールを含む。以下で更に詳細に説明されるように、監視モジュールは、監視モジュールに組み込まれたスペクトル分析技術並びに/又は光学技術を含んでよい。本開示の実施形態は、スペクトルインターロゲーション(spectral interrogation)による細胞のコンフルエンスの監視及び分析物の測定を可能にし、このスペクトルインターロゲーションは、細胞培養物システムの閉鎖された性質を維持する容器の窓を介してシグネチャ波長の照明、受光、及び処理を行い、窓自体のバックグラウンドスペクトルよりも上で識別可能にすることができる。
【0040】
いくつかの実施形態によると、細胞培養容器は、少なくとも1つの陥凹部を含む監視用層を含んでよく、上記少なくとも1つの陥凹部は、監視モジュールのうちの少なくとも1つを受承するよう構成される。監視モジュールは、光学技術(例えばマイクロレンズ及び導波路)並びにスペクトル分析技術のうちの少なくとも一方を含むことができる。本明細書中で使用される場合、スペクトル分析技術はラマン分光分析を含み、従って監視モジュールはラマン分光プローブを含むことができる。
【0041】
本開示の実施形態は、細胞培養チャンバの外部に配置された監視モジュールによる、細胞培養容器の閉鎖系操作を提供する。本開示の実施形態は、容器に設けられた監視用窓を介した、閉鎖系細胞培養容器の監視を提供する。監視用窓は、従来の容器に比べて監視を改善できる。
【0042】
本開示の実施形態は、監視用層から遠隔地のユーザへの細胞ステータスの伝送を可能にする。いくつかの実施形態の一態様は、監視モジュールから遠隔地のユーザに監視データを伝送するための通信用部品を含む。この構成は、単回使用のための容器、又は複数回使用のための積層容器で実装してよい。閉鎖系は、例えばインキュベータ内に保持することによって、リアルタイム細胞ステータスデータの取得中にも無菌状態を保持し、細胞を継続的に増殖させることができる。
【0043】
本明細書に記載の監視用層は、ポリスチレン製であってよい。監視用層は監視モジュールと合わせて、細胞増殖エリアの2つの監視機能、即ち細胞のコンフルエンス及び分析物の測定を可能にすることができる。コンフルエンスモニタは、監視モジュール内に形成されたミラーを備えるデュアルレンズシステムを採用してよく、取り付けられたカメラは、光、画像キャプチャ、拡大、及びユーザへの画像の送達を提供できる。分析物モニタは、スペクトル分析技術システムを含んでよく、更に、監視モジュール内の回折格子及びレンズを備える導波路システムを含んでよい。励起及び放出用のファイバは、監視モジュールに取り付けることができ、またスペクトルセンサシステムに接続してよい。実施形態は、細胞コンフルエンスの監視及び分析物測定の監視のうちの一方又は両方を含んでよい。
【0044】
例示的なコンフルエンスモニタは、照明及び画像キャプチャのために細胞培養チャンバの細胞増殖表面へと光を反射するためのミラーを備える、デュアルレンズシステムを採用してよい。カメラは、光及び画像のキャプチャ機能を提供できる。光波又はビームはレンズを通ってミラーまで進むことができ、細胞増殖エリア内のあるエリアに集束する。そして、照明された画像は、レンズを通過した後、カメラによって受像される。
【0045】
例示的な分析物モニタは、導波路アレイを含んでよい。上記モニタはデュアル光ポートを採用してよく、ここで一方のポートは励起光のためのものであってよく、もう一方のポートは放出光のためのものであってよい。励起光は光導体(例えば導波路)に沿って回折格子及びレンズまで進むことができ、そこで光は回折格子から細胞培養チャンバの培地内へと反射される。放出ファイバは、培地の励起状態から光を受け取って、励起光をスペクトルセンサ(例えば検出器)へと送達することにより、放出又は吸着スペクトルを生成できる。スペクトルセンサは、2D検出器アレイシステムを含んでよい。
【0046】
図7は、本開示の1つ以上の実施形態による監視をサポートする、細胞培養チャンバの非侵襲的測定のための監視用層の斜視図を示す。監視用層200は、細胞培養チャンバ210を取り囲む外壁230と、外壁230から細胞培養チャンバ210の内部に向かって内向きに延在する少なくとも1つの陥凹部215とを含む。
図7に示されている監視用層200は4つの陥凹部215を含んでいるが、本開示の実施形態による監視用層200は、いずれの個数の陥凹部215を含んでよいことを理解されたい。以下で更に詳細に説明されるように、陥凹部215は、監視モジュール250(例えば
図4のプローブ107)を受承するよう構成される。従って、陥凹部215と監視モジュール250とは、対応する形状を有してよい。以下で更に詳細に説明されるように、監視用層200は保持用特徴部分も含んでよく、これは監視モジュール250と協働して、監視モジュール250を陥凹部215内に維持する。任意に、監視用層200は1つ以上の位置合わせ用特徴部分430を含んでよく、位置合わせ用特徴部分430は、保持用特徴部分とは別個のものであっても、保持用特徴部分と一体化されていてもよい。監視用層200は、幅広い温度範囲で動作するよう構成されていてよく、例えば監視用層200は、細胞増殖用に構成されたインキュベータ内で動作できる。いくつかの例では、監視用層200は、
図9に示されているような積層細胞培養容器の一部であってよい。
【0047】
図8は、本開示の実施形態による監視モジュールを示す。本明細書に記載されているように、監視モジュール250は、監視用層200の陥凹部215の内壁410cに接触するよう構成された前面240を有する、ヘッド部分258を含んでよい。監視モジュール250は更に、コンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256のうちの少なくとも一方を含む。監視モジュール250は、コンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256のうちの少なくとも一方を含んでもよく、あるいはコンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256を両方とも含んでもよいことを理解されたい。コンフルエンスモニタ255は、監視用層200の細胞培養チャンバ210内の細胞ステータスを測定するよう構成されていてよく、又は監視用層200の上若しくは下に位置決めされた細胞培養層310の細胞培養チャンバ305内の細胞ステータスを測定するよう構成されていてよい(
図9を参照)。同様に、分析物モニタ256は、監視用層200の細胞培養チャンバ210内の分析物を監視するよう構成されていてよく、又は監視用層200の上若しくは下に位置決めされた細胞培養層310の細胞培養チャンバ305内の分析物を監視するよう構成されていてよい。監視モジュール250がコンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256を両方とも含む場合、両方のモニタ255、256は、監視用層200の細胞培養チャンバ210を監視するよう構成されていてよく、又は両方のモニタ255、256は、監視用層200の上若しくは下に位置決めされた細胞培養層310の少なくとも1つの細胞培養チャンバ305を監視するよう構成されていてよい。任意に、監視モジュール250がコンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256を両方とも含む場合、コンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256のうちの一方が、監視用層200の細胞培養チャンバ210を監視するよう構成されていてよく、コンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256のうちのもう一方が、監視用層200の上若しくは下に位置決めされた細胞培養層310の少なくとも1つの細胞培養チャンバ305を監視するよう構成されていてよい。
【0048】
本開示の実施形態によると、監視モジュール250は、監視用層200の陥凹部215の形状に対応する形状を有してよく、これによって監視モジュール250を陥凹部215内に受承できる。陥凹部215及び監視モジュール250は、監視モジュール250の分析物モニタ及び/又はコンフルエンスモニタを、容器に設けられたポリマー製窓に対面して位置決めできるように設計され、これにより、窓を介して容器内の培地層を測定できる。
図10に示されているように、陥凹部215は、側壁410a及び410b並びに内壁410cを有してよい。側壁410a、410bは、陥凹部215が等脚台形の形状を有するように、監視用層200の外壁230から陥凹部215の内壁410cまで、約90°より大きな角度αで延在してよい。監視モジュール250のヘッド部分258は、対応する等脚台形の形状を有してよく、又はヘッド部分258の前面240が陥凹部215の内壁410cの幅以下の幅を有する場合には長方形の形状を有してよい。あるいは、側壁410a、410bは、監視用層200の外壁230に対して垂直に、かつ互いに対して平行に、延在してよい。従って、
図8に示されているもののような監視モジュール250のヘッド部分258は、外壁230に対して垂直に延在する側壁410a、410bによって形成される形状に対応する、長方形の形状を有してよい。あるいは側壁410a、410bは凹状であってよく、監視モジュール250のヘッド部分258は、陥凹部215の凹状の側壁410a、410b内に受承されるよう構成された、丸みを帯びた特徴を有してよい。監視用層200の陥凹部215及び監視モジュール250のヘッド部分258の上述の形状は、単なる例として意図されている。陥凹部215はいかなる形状を有していてもよく、監視モジュール250は、監視モジュール250が陥凹部215に受承され得るように、またヘッド部分258の前面240が陥凹部215の内壁410cに接触するように、対応するいずれの形状を有してよい。
【0049】
コンフルエンスモニタ255は、細胞培養チャンバ104、210、305内の細胞の細胞ステータスを光学的にキャプチャでき、分析物モニタ256は、細胞培養チャンバ104、210、305内の分析物ステータスを光学的にキャプチャできる。コンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256は、細胞ステータスデータ又は分析物ステータスデータ等のデータを、モニタから遠隔地へ、有線通信ネットワーク又は無線通信ネットワークを介して伝送するための、通信用部品を含んでよい。例えば、各モニタの通信用部品は、Wi‐Fiトランシーバを含んでよい。
【0050】
図9は、本開示の実施形態による、細胞培養チャンバ104、210、305の非侵襲的測定のために監視モジュール250と組み合わせて使用できる、積層細胞培養容器システム300の斜視図を示す。積層細胞培養容器システム300は、複数の細胞培養層310と、少なくとも1つの監視用層200とを、上述のような1つ以上のポリマー製窓と共に含んでよい。
【0051】
図示されているように、積層細胞培養容器システム300は、いずれの個数の細胞培養層310、及びいずれの個数の監視用層200を含んでよい。
図9に示されているように、細胞培養容器システム300は、監視用層200の下の細胞培養層310、及び監視用層200の上の細胞培養層310を含んでよい。細胞培養容器システム300が複数の監視用層200を含む場合、システム300は、複数の監視用層200のうちのいずれの2つの間に、いずれの個数の細胞培養層310を含んでよい。例えば、細胞培養容器システム300は、各監視用層200の間に1~50個の細胞培養層310、例えば各監視用層200の間に2~40個の細胞培養層310、又は3~35個の細胞培養層310、又は5~30個の細胞培養層310、又は10~25個の細胞培養層310、及びこれらの間の全ての個数の細胞培養層310を含んでよい。同一の積層細胞培養容器システム300内において、複数の監視用層200の異なる組の間の細胞培養層310の個数は異なっていてよいことを理解されたい。更に、積層細胞培養容器システム300は、細胞増殖用に設計された温度のインキュベータ内等、幅広い温度範囲にわたって動作するよう構成できる。
【0052】
図10は更に、本開示の実施形態による例示的な保持用特徴部分を示す。図示されているように、監視用層200の外壁230は、陥凹部215の側壁410a及び410bによって形成された開口の縁部に、クリップ420を含む。クリップ420は、監視モジュール250上の対応するレセプタにはめ込まれるよう構成され、これによって監視モジュール250を陥凹部215内に維持する。陥凹部215のベース部分410dは、
図7に示されているように、隆起したチャネル430を含むことができる。この隆起したチャネル430は、監視モジュール250の底部上の対応するノッチにはめ込まれるよう構成され、これによって監視モジュール250を陥凹部215内に維持する。別の選択肢として、保持用特徴部分は、監視モジュール250の少なくとも1つの表面上の、付勢式保持クリップ(図示せず)であってよい。この付勢式保持クリップは、電話線コネクタ及びイーサネットケーブル・コネクタと同様の設計及び機能を有してよい。陥凹部は少なくとも1つのクリップ用溝(図示せず)を含んでよく、これは、監視モジュール250の表面上の対応する付勢式保持クリップを受承し、上記付勢式保持クリップと共に監視モジュール250の運動を制限して、監視モジュール250を陥凹部215内に維持する。
【0053】
本開示の実施形態によると、コンフルエンスモニタ255及び分析物モニタ256は、層間測定及び監視を含む、細胞培養チャンバ104、210、305内の細胞の細胞ステータス及び培地の分析物ステータスを、容器に設けられたポリマー製窓を介してキャプチャできる。場合によっては、単一のコンフルエンスモニタ255が、複数の積層細胞培養チャンバ104、210、305の細胞の細胞ステータスを監視してよく、又は単一の分析物モニタ255が、積層細胞培養チャンバ104、210、305の培地の分析物ステータスを監視してよい。
【0054】
本開示の実施形態によると、コンフルエンスモニタ255は、細胞培養チャンバ104、210、305内の細胞の測定を、いずれの光学的手段によって行うことができる。例えばコンフルエンスモニタ255は、細胞培養チャンバ104、210、305内の細胞を監視するための2D撮像アレイを含んでよい。あるいはコンフルエンスモニタ255は、少なくとも1つのミラー及び少なくとも1つのカメラを備えたマルチレンズ(例えばデュアルレンズ)システムを含んでよい。ある例示的なコンフルエンスモニタは、1つ以上の光経路、レンズ、及びミラーを含んでよく、これらは、細胞を観察するために多数の照明オプション(例えば反射光照明、落射照明、暗視野照明、明視野照明等)を使用するように構成できる。光ビームはカメラから第1のレンズを通して伝送でき、この第1のレンズにおいて上記光ビームを屈折させて、ミラーに向かって集束させることができる。光ビームがミラーに接触すると、光ビームは、いずれの角度、例えば約90°で反射されて、第2のレンズを通して細胞培養チャンバ104、210、305内へと向けられ、これによって細胞のコンフルエンスを測定できる。カメラは、照明された細胞をキャプチャして、上記細胞のリアルタイムのコンフルエンスを生成でき、これを用いて細胞増殖を経時的に監視できる。このような光学的構成を通して、コンフルエンスモニタは、監視用層100、200の上又は下の少なくとも1つの細胞培養チャンバ104、210、305を撮像するように設計される。細胞培養チャンバ104、210、305内の培地が画像の品質に影響を及ぼす可能性があるため、コンフルエンスモニタ255は、監視用層200の上の細胞培養チャンバ305の測定を行うことにより、細胞培養チャンバ305の、培地が比較的少ない側の細胞を撮像できる。
【0055】
任意に、コンフルエンスモニタ255は、光ビームを細胞培養チャンバ104、210、305に向けるため、及び細胞の画像をカメラ又は検出器に伝送するために、ファイバプローブ(例えばデュアルクラッドファイバ、2つのマルチモードファイバ(multi‐mode fiber:MMF)、又はマルチコアファイバ)を含んでよい。更に、細胞のコンフルエンスを監視するための画像の拡大を、監視モジュール250の外部で実施してよい。例えば、ライトパイプをコンフルエンスモニタ255内で使用して、細胞表面の画像を、拡大することなく、監視モジュール250に対して遠隔地にある外部の顕微鏡に転送できる。
【0056】
本開示の実施形態によると、コンフルエンスモニタ255は、細胞培養チャンバ104、210、305内の培地の組成をいずれのスペクトル的手段(例えばラマン分光分析)で測定することによって、細胞の健康の測定を行うことができる。いくつかの実施形態によると、分析物モニタ256は、導波路(例えばライトパイプ)及び検出器を含んでよい。導波路は、細胞培養チャンバ104、210、305内の培地へと光を送達する。任意に、分析物モニタ256は、導波路から励起光を受光して、この励起光を細胞培養チャンバ104、210、305内の培地へと向けることができる、回折格子及びレンズを含んでよい。励起光は多数の方法で生成され得る。培地の組成に基づいて、別個の放出スペクトルが放出されて、検出器によってキャプチャされることになる。検出器は、キャプチャされた放出又は吸着スペクトルをユーザに伝送してよい。ユーザはソフトウェアを用いて、上記放出又は吸着スペクトルに基づいて、培地の組成を決定してよい。分析物モニタによって測定され得る分析物のいくつかの例としては、グルコース、ラクトース、及びグルタミンが挙げられる。
【0057】
本開示の実施形態によると、分析物モニタ256は、発光ダイオード(light emitting diode:LED)又はレーザを含んでよい。LED又はレーザは、分析物モニタ256内のフォトダイオード検出器と対にすることができる。
【0058】
分析物モニタ256は、監視用層100、200の細胞培養チャンバ104、210を撮像するように設計できる。しかしながら上述のように、分析物モニタ256は、監視用層200の上又は下の少なくとも1つの細胞培養チャンバ305を監視するように設計されていてよい。回折格子及びレンズを利用して、導波路内の光を、監視用層200の上又は下の少なくとも1つの細胞培養チャンバ305に向けることができる。分析物モニタ256にとっては、クリーンな放出スペクトルを生成するために、通過する他の材料を可能な限り少なくしながら、励起光を培地中へと伝送することが好ましい。しかしながら上述のように、本開示の実施形態はポリマー製窓を提供し、これは、上記ポリマー製窓の独自の特徴によって、標的の分析物の分光分析による検出が依然として可能なまま、窓を介した監視を実施できるようにする。
【0059】
本開示の実施形態は、スペクトル分析技術(例えばラマン分光分析)を用いて細胞培養物を監視するための、光学デバイス、システム、及び方法に関する。ラマン分光分析は、細胞培養物の複数の様相を監視する、有用な方法である。一般にラマン分光分析システムは、複数の光ファイバに結合されたプローブを含む。これらのファイバは少なくとも1つの励起ファイバを含み、これは上記プローブを、場合によっては1つ以上のフィルタ、スイッチ、又は他の光学部品を介して、出力波長が約200nm~約1550nmのレーザを含んでよい放射源に光学的に結合する。ファイバは少なくとも1つの放出ファイバも含み、これは上記プローブを、場合によっては1つ以上のフィルタ、スイッチ、又は他の光学部品を介して、検出器に光学的に結合する。従って上記プローブは、放射源からの放射を、励起ファイバを介して、分析対象の試料へと送達し、試料によって散乱させられた放射はプローブによって回収されて、少なくとも1つの放出ファイバを介して検出器に戻される。
【0060】
例として
図11は、従来のラマン分光分析プローブ10を示す。プローブ10は、レンズ開口18において円筒状のプローブ先端11内に着座した球面レンズ14を含む。プローブ先端とレンズとの間のシールを、上記開口において、溶接又はろう接、及びエポキシ又は他の接着剤の使用によって形成できる。ガスケット、Oリング、及び他の密閉手段等の要素が、漏れ防止システムを提供するために存在してよく、また提供されていてよい。
図12に示されているように、Oリング42、43を用いて球面レンズ14を密閉してよい。
図11に関して、Oリング43は、プローブ先端11の遠位端のレンズ開口18の周りに着座するように、プローブ先端11の内側に配置される。レンズ14もまたプローブ先端11の内側に配置され、これによりレンズ14はOリング43の上部に着座し、レンズの一部はレンズ開口18を通って延在して、プローブ先端11の外側となる。このようにしてレンズ14は所定の位置に保持され、レンズ14とプローブ先端11との間のシールが形成される。更にOリング42を、プローブ先端11のレンズ14の上部に着座させる。
【0061】
図11及び12の球面レンズ14は、液体又は粉体であってよい試験対象の標本上に配置されるか、又は上記標本中に浸漬される。上述のように、光44は、
図11及び12中のもののような球面レンズの近位表面を通って伝送され、球面レンズ14は、
図12の焦点46によって示されているように、球体の遠位表面45に極めて近い位置に光を収集する。遠位表面45からの焦点46の距離は、レンズの直径又は有効瞳径に依存することになる。直径又は瞳径が広いと、光を収集できるレンズ14の遠位端からの距離(即ち、分析を実行できるプローブからの距離)を増大させることができる。球面レンズの直径は、例えば3mmであってよい。しかしながら、Oリング42及び43の存在によって、光の伝送に使用可能な球面レンズ14の表面積は減少する。よって、Oリング又は他の手段で密閉された球面レンズを提供するという現実は、レンズが焦点を合わせる距離を更に制限する。このような制限により、容器の壁を通した観察のための、プローブの端部の球面レンズの使用が妨げられる。プローブを分析対象の培地中に挿入する必要がある場合、システムの汚染又は物理的妨害のリスクはより高くなる。
【0062】
本開示の実施形態によると、ラマン分光計プローブが、容器の壁又は窓を介して細胞培養物を分析するために該ラマンプローブを使用できる十分に大きな距離から、光を収集することを可能にする、カスタム光学部品が提供される。
図11及び12の球形のレンズとは対照的に、光学部品は1つ以上の非球面表面を有する。この非球面表面は、球面レンズに比べて、収集角度の損失を最小限に抑える。
図13に示されているように、光学部品50はプローブチューブ54内に設けられ、非球面形状の近位表面51と、遠位表面52とを含む。非球面表面によって提供される光学系により、プローブを用いて、容器の壁56に設けられた窓55を介して、焦点57にある成分を分析できる。窓を介して成分を分析することにより、成分及び/又はその環境(例えば細胞培養物及び周囲の培地)は、分析によって汚染又は妨害されることがなくなる。
【0063】
球面レンズとは対照的に、本開示の実施形態による非球面レンズ又は非球面表面は、球体若しくは円柱の一部ではない表面プロファイルを有する要素、又は表面のジオメトリが球体から逸脱している要素である。非球面表面は、一定の半径を有する球体とは異なり、レンズの中心から半径方向に変化する、又は光軸からの距離と共に変化する曲率半径を有する表面となり得る。
【0064】
図13では、近位表面51は非球面表面であり、遠位表面52は球面である。しかしながら、実施形態はこの構成に限定されない。いくつかの実施形態では、遠位表面52が非球面であり、近位表面51が非球面でない。他の実施形態では、近位表面51及び遠位表面52の両方が非球面である。光学部品50の好適な材料としては、散乱がないか又は最小限であり、発光がほとんど又は全くない材料が挙げられる。好適な材料としては、シリカ(例えば溶融シリカ)及びサファイアが挙げられる。いくつかの実施形態によると、光学部品は、株式会社住田光学ガラス製のK‐FIR98UV又はK‐FIR100UVを含む。
【0065】
1つ以上の実施形態によると、光学部品50は、例えば溶接若しくはろう接、エポキシ若しくは他の接着剤、又はガスケット、Oリング、及び他の密閉手段といった要素を含む、当該技術分野で公知のいずれの従来の手段を用いて、プローブチューブ内に密閉、又はプローブチューブに固定できる。いくつかの実施形態によると、光学部品50を、プローブチューブ54にはまるように成形できる。
【0066】
本明細書で開示される実施形態によると、非球面光学部品50はプローブの遠位端に設けられ、上記プローブは、容器の壁又は窓を介して容器内の系を分析するために、容器に向かって保持又は位置決めされる。1つ以上の実施形態によると、容器は、窓の付近又は容器上に配置された1つ以上の保持用特徴部分を有し、ここで上記1つ以上の保持用特徴部分は、プローブを、上記プローブが窓又は容器の壁を介して閉鎖系を監視できる位置において、容器に「クリッピング」できるか、又は着脱可能に取り付けることができる。このように、閉鎖系の分析を可能にするために、光学部品を容器の内部から好適な距離に位置決めできる。いくつかの実施形態の別の態様によると、プローブを、閉鎖系の正確な監視に好適な場所に位置合わせする、位置合わせ用特徴部分を設けることができる。保持用特徴部分及び位置合わせ用特徴部分は、組み合わせて又は別個に設けることができ、またいくつかの実施形態では、保持用特徴部分自体が位置合わせ用特徴部分である。いくつかの実施形態では、プローブは手持ち型であってもよく、位置合わせ用特徴部分を用いて手持ち型プローブを位置合わせできる。
【0067】
ある代替実施形態では、非球面光学部品が容器自体に設けられる。例えば、非球面光学部品を容器の壁内に成形でき、又は容器の壁に設けられた窓に隣接して固定できる。このようにして、容器の閉鎖系を、汚染のリスクがないように閉鎖されたままとすることができる。
【0068】
本開示の1つ以上の実施形態は、閉鎖系内での細胞の培養及び監視を可能とする細胞培養システムを提供する。いくつかの実施形態の一態様は、細胞培養容器であって、上記容器の1つ以上の壁で囲まれた細胞培養チャンバを有する、細胞培養容器と、細胞培養物又は細胞培養培地の分析のために上記細胞培養チャンバの外部に配置された監視システムとを含む。上記監視システムは、スペクトル分析システム(例えばラマン分光分析)。容器は透明にすることができ、又は少なくとも監視システムが放出する光若しくは放射のスペクトルに対して透明にすることができる。
【0069】
本明細書に記載の説明は、添付の図面との関連で、例示的な構成を説明するものであり、実装され得る又は特許請求の範囲内である全ての例を表すものではない。本明細書中で使用される場合、用語「例示的な(exemplary)」は、「例、実例、又は例示として役立つ(serving as an example、instance、or illustration)」ことを意味しており、「好ましい(preferred)」又は「他の例によりも有利である(advantageous over other examples)ことを意味するものではない。「発明を実施するための形態」は、ここで説明される技法の理解を提供するために、具体的な詳細を含む。しかしながらこれらの技法は、これらの具体的詳細を用いずに実践される場合もある。いくつかの例では、公知の構造及びデバイスは、ここで説明されている例のコンセプトを不明瞭にすることを避けるために、ブロック図の形式で示されている。
【0070】
また、特許請求の範囲を含む本明細書中で使用される場合、項目のリスト(例えば「…のうちの少なくとも1つ(at least one of ...)」又は「…のうちの1つ以上(one or more of ...)」といった句の後に続く項目のリスト)の中で使用される「又は(or)」は、包括的なリストを示し、従って例えば「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ(at least one of A, B, or C)」は、A、又はB、又はC、又はAB、又はAC、又はBC、又はABC(即ちA及びB及びC)を意味する。また、本明細書中で使用される場合、句「…に基づく/基づいて(based on)」は、限定された条件のセット(closed set of conditions)に対する言及として解釈されないものとする。例えば「条件Aに基づく(based on condition A)」と説明されたある例示的なステップは、本開示の範囲から逸脱することなく、条件A及び条件Bの両方に基づくものであってよい。換言すれば、句「…に基づく/基づいて」は、「少なくとも部分的に…に基づく/基づいて(based at least in part on)」と同義として解釈されるものとする。
【0071】
本開示は、限定的な個数の実施形態しか含んでいないが、本開示の利益を得る当業者は、本開示の範囲を逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するだろう。
【0072】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0073】
実施形態1
細胞培養物の非侵襲的測定のために構成された、細胞培養容器であって、上記容器は:
閉鎖系として動作するよう構成された細胞培養チャンバであって、上記細胞培養チャンバは、上記細胞培養物及び細胞培養培地のうちの少なくとも一方を格納するために構成された内部空間を備える、細胞培養チャンバ;
上記細胞培養チャンバの境界を画定して、上記細胞培養チャンバの上記内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、壁;並びに
上記壁に配置されて、上記細胞培養チャンバの上記内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、窓であって、上記窓はポリマーで構成され、上記外部に配置された監視モジュールを介した上記細胞培養物の監視を、上記監視モジュールを上記細胞培養物又は上記細胞培養培地と物理的に接触させることなく、可能にするよう構成される、窓
を備える、細胞培養容器。
【0074】
実施形態2
上記窓の外側に配置され、上記窓を通して上記細胞培養物の様相を監視するために構成された、監視モジュールを更に備える、実施形態1に記載の容器。
【0075】
実施形態3
上記監視モジュールは分析物モニタを備える、実施形態1又は2に記載の容器。
【0076】
実施形態4
上記分析物モニタは、1つ以上の励起波長の光を放出して、上記細胞培養チャンバ内の培地層から放出された光をキャプチャするよう構成された、スペクトル素子を備える、実施形態1~3のいずれか1つに記載の容器。
【0077】
実施形態5
上記スペクトル素子は、上記培地層に対してラマン分光分析を実施するよう構成される、実施形態4に記載の容器。
【0078】
実施形態6
上記分析物モニタは、導波路及び検出器を備える、実施形態3~5のいずれか1つに記載の容器。
【0079】
実施形態7
上記分析物モニタは、回折格子及びレンズを更に備える、実施形態6に記載の容器。
【0080】
実施形態8
上記分析物モニタは、ファイバプローブ及び検出器を備える、実施形態3~7のいずれか1つに記載の容器。
【0081】
実施形態9
上記分析物モニタは、上記細胞培養チャンバ内のグルコース、ラクトース、及びグルタミンのうちの少なくとも1つを監視するよう構成される、実施形態3~8のいずれか1つに記載の容器。
【0082】
実施形態10
上記窓は、上記監視モジュールによる上記細胞培養容器内の分析物の検出に干渉しない放出スペクトルを有する材料で構成される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の容器。
【0083】
実施形態11
上記窓はシリコーンで構成される、実施形態1~10のいずれか1つに記載の容器。
【0084】
実施形態12
上記窓はポリジメチルシロキサンで構成される、実施形態10又は11に記載の容器。
【0085】
実施形態13
上記窓は、炭素‐炭素共有結合を有しないポリマーで構成される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の容器。
【0086】
実施形態14
上記壁は、上記壁に形成された開口を備え、上記窓は上記開口に配置される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の容器。
【0087】
実施形態15
上記窓は、上記壁の上記開口を密閉するためのガスケットとして機能するよう構成される、実施形態14に記載の容器。
【0088】
実施形態16
前記窓は、上記ポリマー製窓の圧縮、上記ポリマー製窓と上記開口との間のプレスフィット、上記壁に対する上記ポリマー製窓のラミネーション、熱封止、又は接着剤を用いた上記開口若しくは上記壁に対する上記窓の接着のうちの少なくとも1つによって、上記開口を密閉する、実施形態14又は15に記載の容器。
【0089】
実施形態17
上記容器は、フラスコ、多層フラスコ、シェーカーフラスコ、スピナーフラスコ、バイオプロセスバッグ、バイオリアクタ、培地バッグ、ボトル、クライオチューブ、及び管材のうちの少なくとも1つである、実施形態1~16のいずれか1つに記載の容器。
【0090】
実施形態18
上記容器は管材で構成され、上記窓は、上記管材の壁が薄いセクション、上記管材内に接続又はオーバーモールドされた器具のうちの少なくとも1つの中に配置される、実施形態17に記載の容器。
【0091】
実施形態19
上記容器の外部に保持用特徴部分を更に備え、上記保持用特徴部分は、上記監視モジュールと協働して、上記監視モジュールが上記窓を介して上記細胞培養物又は上記細胞培養培地を監視できる位置に、上記監視モジュールを維持するよう構成される、実施形態1~18のいずれか1つに記載の容器。
【0092】
実施形態20
上記保持用特徴部分は、上記監視モジュールの少なくとも1つの対応するレセプタと協働するよう構成された、少なくとも1つのクリップを備える、実施形態19に記載の容器。
【0093】
実施形態21
上記保持用特徴部分は、上記監視モジュールの対応するノッチ又は対応する隆起したチャネルとそれぞれ協働するよう構成された、隆起したチャネル又はノッチを備える、実施形態19又は20に記載の容器。
【0094】
実施形態22
上記監視モジュールは、レンズを備えた遠位端を有するプローブを備え、上記プローブは、上記細胞培養チャンバの監視時に上記レンズが上記窓に対面するように構成される、実施形態2~21のいずれか1つに記載の容器。
【0095】
実施形態23
上記細胞培養チャンバの監視時、上記レンズは上記窓と物理的に接触する、実施形態22に記載の容器。
【0096】
実施形態24
上記窓は、上記監視モジュールに対面するよう配設された外側表面を備え、上記外側表面は略平坦である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の容器。
【0097】
実施形態25
上記窓の外側表面上の上記窓の周縁部の少なくとも一部分に沿って配置された、圧縮リングを更に備え、上記窓の少なくとも一部分は、上記圧縮リングと上記壁との間に配置される、実施形態1~24のいずれか1つに記載の容器。
【0098】
実施形態26
上記圧縮リングは、上記壁と同一の材料で作製される、実施形態25に記載の容器。
【0099】
実施形態27
上記壁は、上記容器の上記外部の外側表面、及び上記容器の内部の内側表面を備え、上記外側表面及び上記内側表面は壁厚によって隔てられており、
上記壁は更に、上記壁厚を通る上記開口を備え、上記開口は、上記内側表面と上記外側表面との間に延在する端面によって画定され、上記窓は上記開口内に配置される、実施形態25又は26に記載の容器。
【0100】
実施形態28
上記端面は、上記壁の上記内側表面に隣接する内側部分、及び上記壁の上記外側表面に隣接する外側部分を備える、実施形態27に記載の容器。
【0101】
実施形態29
上記端面は上記内側部分においてテーパを備え、上記端面と上記窓の中心に対して垂直な線との間の角度は、90°未満かつ0°超、約45°以下かつ約2°以上、約30°以下かつ約5°以上、約25°以下かつ約10°以上、約21°以下かつ約10°以上である、実施形態28に記載の容器。
【0102】
実施形態30
上記端面は上記内側部分において複合テーパを備え、上記複合テーパは、上記壁の上記内側表面に近い第1のテーパと、上記第1のテーパに比べて上記外側部分に近い第2のテーパとを備える、実施形態27~29のいずれか1つに記載の容器。
【0103】
実施形態31
上記第1のテーパは第1の角度であり、上記第2のテーパは第2の角度であり、上記第1の角度は上記第2の角度より小さい、実施形態30に記載の容器。
【0104】
実施形態32
上記第2の角度は上記第1の角度の約1.5~約3倍であるか、又は上記第1の角度の約2~約2.5倍である、実施形態31に記載の容器。
【0105】
実施形態33
上記第1の角度は約10°であり、上記第2の角度は約21°である、実施形態31に記載の容器。
【0106】
実施形態34
上記窓は、上記窓の上記内側表面の周縁の少なくとも一部分に沿った、内側周縁領域を備え、上記内側周縁領域は、上記窓の上記内側周縁領域に取り囲まれた領域よりも、高いヤング率及び大きな厚さのうちの少なくとも一方を備える、実施形態24に記載の容器。
【0107】
実施形態35
上記窓は、上記壁の上記開口内に固定される前に湾曲を有するよう構成され、上記湾曲は、上記窓が上記壁の上記開口内に固定されると減少する、実施形態1~34のいずれか1つに記載の容器。
【0108】
実施形態36
上記湾曲は、上記窓の内側に向かう、上記窓の最大100μm又は最大50μmの変形を含む、実施形態35に記載の容器。
【0109】
実施形態37
上記窓は、約0.005インチ~約0.020インチ(即ち約0.12mm~約0.5mm)の厚さを備える、実施形態1~36のいずれか1つに記載の容器。
【0110】
実施形態38
上記壁は、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ガラス、及びポリプロピレンのうちの少なくとも1つで構成される、実施形態1~37のいずれか1つに記載の容器。
【0111】
実施形態39
上記細胞培養チャンバを備える複数の細胞培養層を更に備える、実施形態1~38のいずれか1つに記載の容器。
【0112】
実施形態40
上記複数の細胞培養層は、上記壁及び上記窓を備える少なくとも1つの監視用層を備える、実施形態39に記載の容器。
【0113】
実施形態41
上記細胞培養チャンバは、付着性細胞及び懸濁細胞のうちの少なくとも一方を培養するために構成される、実施形態1~40のいずれか1つに記載の容器。
【0114】
実施形態42
上記細胞培養チャンバは、細胞培養中に細胞を付着させるために構成された少なくとも1つの表面を備える、実施形態41に記載の容器。
【0115】
実施形態43
上記少なくとも1つの監視用層は、上記壁に少なくとも1つの陥凹部を備え、これによって上記壁は上記内部空間に向かって凹む、実施形態40又は41に記載の容器。
【0116】
実施形態44
上記監視モジュールは、上記少なくとも1つの陥凹部のうちの少なくとも1つの中に配置される、実施形態43に記載の容器。
【0117】
実施形態45
上記監視モジュールから遠隔地へとデータを伝送するよう構成された、通信用部品を更に備える、実施形態2~44のいずれか1つに記載の容器。
【0118】
実施形態46
上記監視モジュールは、中に上記監視モジュールが配置される上記陥凹部を備える上記細胞培養層の上又は下に位置決めされた上記細胞培養層の上記細胞培養チャンバを監視するよう構成される、実施形態2~45のいずれか1つに記載の容器。
【0119】
実施形態47
上記少なくとも1つの陥凹部は、上記少なくとも1つの監視モジュールのヘッド部分の前面と接触するよう構成された内壁を備える、実施形態43~46のいずれか1つに記載の容器。
【0120】
実施形態48
複数の監視用層を更に備える、実施形態40~47のいずれか1つに記載の容器。
【0121】
実施形態49
上記複数の監視用層のうちの2つの間に1~50個の上記細胞培養層、上記複数の監視用層のうちの2つの間に2~40個の上記細胞培養層、上記複数の監視用層のうちの2つの間に3~35個の上記細胞培養層、上記複数の監視用層のうちの2つの間に5~30個の上記細胞培養層、又は上記複数の監視用層のうちの2つの間に10~25個の上記細胞培養層を更に備える、実施形態48に記載の容器。
【0122】
実施形態50
細胞培養物又は細胞培養環境を監視する方法であって:
実施形態1~49のいずれか1つに記載の容器を提供するステップ;
上記細胞培養物又は上記細胞培養環境の様相を測定するよう構成された測定部分を備える、監視モジュールを提供するステップであって、上記測定部分は、上記容器の窓を介して上記容器の内部の上記様相を測定するために配置される、ステップ
を含む、方法。
【0123】
実施形態51
細胞培養物の非侵襲的監視のために構成された細胞培養物監視システムであって、上記システムは:
閉鎖系として動作するように構成された細胞培養チャンバを備える細胞培養容器であって、上記細胞培養チャンバは、上記細胞培養物及び細胞培養培地のうちの少なくとも一方を格納するための内部空間を備える、細胞培養容器;
上記細胞培養チャンバの境界を画定して、上記細胞培養チャンバの上記内部空間を上記細胞培養チャンバの外部から隔てる、壁;並びに
光学素子を介して上記内部空間内へと光を送達することによって、上記内部空間内の上記細胞培養物又は上記細胞培養培地を分析するよう構成された、上記細胞培養チャンバの外部に配置された監視システム
を備え、
上記光は、上記光学素子の第1の表面を通って上記光学素子に入り、上記光学素子の第2の表面を通って上記光学素子を出るものであり、上記第1の表面及び上記第2の表面のうちの少なくとも一方は非球面形状を有する、細胞培養物監視システム。
【0124】
実施形態52
上記第1の表面は非球面形状を有する、実施形態51に記載の細胞培養物監視システム。
【0125】
実施形態53
上記第2の表面は非球面形状を有する、実施形態51に記載の細胞培養物監視システム。
【0126】
実施形態54
上記第1の表面及び上記第2の表面はいずれも非球面形状を有する、実施形態51に記載の細胞培養物監視システム。
【0127】
実施形態55
上記監視システムはラマン分光分析システムを備える、実施形態51~54のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0128】
実施形態56
上記監視システムは、上記光学素子を備えた遠位端を有するプローブを備え、上記プローブは、上記細胞培養チャンバの監視時に上記光学素子の上記第2の表面が上記細胞培養チャンバに対面するように構成される、実施形態51~55のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0129】
実施形態57
上記光学素子の上記第2の表面は、上記細胞培養容器又は上記内部空間と直接接触する、実施形態56に記載の細胞培養物監視システム。
【0130】
実施形態58
上記光学素子は上記細胞培養容器から離間している、実施形態56に記載の細胞培養物監視システム。
【0131】
実施形態59
上記壁は監視用窓を備え、上記監視用窓は、上記監視システムを用いて、上記監視用窓を介して上記細胞培養物又は上記細胞培養培地を監視するために構成される、実施形態51~58のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0132】
実施形態60
上記監視用窓は、上記壁の残りの部分と同一の材料から作製される、実施形態59に記載の細胞培養物監視システム。
【0133】
実施形態61
上記監視用窓は、上記壁の上記残りの部分の材料とは異なる材料から作製される、実施形態59に記載の細胞培養物監視システム。
【0134】
実施形態62
上記窓は、シリコーン、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエステル、ガラス、及びポリプロピレンのうちの少なくとも1つで構成される、実施形態59~61のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0135】
実施形態63
上記窓の厚さは、上記壁の上記残りの部分の厚さ未満である、実施形態59~62のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0136】
実施形態64
上記監視システムは、上記細胞培養チャンバ内の分析物を分析するよう構成される、実施形態51~63のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0137】
実施形態65
上記分析物は、グルコース、ラクトース、及びグルタミンのうちの少なくとも1つである、実施形態64のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0138】
実施形態66
上記窓は、上記監視モジュールによる上記細胞培養容器内の上記分析物の検出に干渉しない放出スペクトルを有する材料で構成される、実施形態59~65のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0139】
実施形態67
上記監視用窓は、炭素‐炭素共有結合を有しないポリマーで構成される、実施形態59~66のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0140】
実施形態68
上記監視用窓は、シリコーン及びポリジメチルシロキサンのうちの少なくとも一方で構成される、実施形態59~67のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0141】
実施形態69
上記細胞培養容器は、フラスコ、多層フラスコ、シェーカーフラスコ、スピナーフラスコ、バイオプロセスバッグ、バイオリアクタ、培地バッグ、ボトル、クライオチューブ、及び管材のうちの少なくとも1つである、実施形態51~68のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0142】
実施形態70
上記光学素子は上記細胞培養容器に固定される、実施形態51~69のいずれか1つに記載の細胞培養物監視システム。
【0143】
実施形態71
上記光学素子は、上記細胞培養容器の上記壁内に成形される、実施形態70に記載の細胞培養物監視システム。
【0144】
実施形態72
標本の非侵襲的監視のために構成されたラマン分光分析システムであって、
上記システムは:
プローブであって:
少なくとも1つの送達用光ファイバ及び少なくとも1つの収集用光ファイバを含む、光ファイバデバイスであって、上記送達用光ファイバは、上記光ファイバデバイスの遠位端を介して標本に光を送達するよう構成され、上記収集用光ファイバは上記標本からの散乱光を収集するよう構成される、光ファイバデバイス;並びに
上記光ファイバデバイスの上記遠位端に配置されて、上記送達用光ファイバからの光を集束させるよう構成された、光ビーム成形素子であって、上記光は、上記光ビーム成形素子の第1の表面を通って入り、上記光ビーム成形素子の第2の表面を通って出る、光ビーム成形素子
を備える、プローブ;並びに
上記プローブに光学的又は電気的に結合され、上記プローブから信号を受信するよう構成された、検出器
を備え、
上記第1の表面及び上記第2の表面のうちの少なくとも一方は非球面形状を有する、ラマン分光分析システム。
【0145】
実施形態73
上記ラマン分光分析システムは、閉鎖系である細胞培養物システム内の細胞培養物の成分を分析するために構成され、上記ラマン分光分析システムは、上記細胞培養容器の壁を介して、又は上記細胞培養容器の上記壁に配置された窓を介して、上記成分を分析するよう構成される、実施形態72に記載のラマン分光分析システム。
【符号の説明】
【0146】
10 ラマン分光分析プローブ、プローブ
11 プローブ先端
14 球面レンズ
18 レンズ開口
42、43 Oリング
44 光
45、52 遠位表面
46、57 焦点
50 光学部品
51 近位表面
54 プローブチューブ
55、106a、106b、106c、116、130a、130b、130c、130d 窓
56 壁
100、132a、132b、132c、132d 細胞培養容器
102、410a、410b 側壁
104 細胞培養空間
107 監視用プローブ
108 検出システム
109 信号キャリア
112 細胞培養容器の壁
114 開口
120 ラマンプローブ
122 レンズ
133 容器の縁部、容器の内面
134 圧縮リング
136a テーパ
136b 外側テーパ
136b’ 内側テーパ
137 厚さが増大した部分
138 監視用プローブ
139 負方向のたわみ
200 監視用層
210、305 細胞培養チャンバ
215 陥凹部
230 外壁
250 監視モジュール
240 前面
255 コンフルエンスモニタ
256 分析物モニタ
258 ヘッド部分
310 細胞培養層
410c 内壁
410d ベース部分
420 クリップ
430 位置合わせ用特徴部分、隆起したチャネル
【国際調査報告】