IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デューク ユニバーシティの特許一覧

特表2023-501579放射性ハロゲン補欠部分および放射標識生体分子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】放射性ハロゲン補欠部分および放射標識生体分子
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20230111BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230111BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20230111BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230111BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20230111BHJP
   C07B 59/00 20060101ALI20230111BHJP
   C07D 257/02 20060101ALN20230111BHJP
   C07D 207/46 20060101ALN20230111BHJP
   C07D 403/12 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C07F7/10 U
C07K16/28
C07K16/00
C12N15/115 Z
A61K51/06 200
A61K51/10 200
C07F7/22 T
C07B59/00
C07D257/02
C07D207/46
C07D403/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527723
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020060032
(87)【国際公開番号】W WO2021096968
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/934,740
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ザルツキー, マイケル ロッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイッドヤナタン, ガネサン
(72)【発明者】
【氏名】マクドゥーガルド, ダリル リン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C085
4H006
4H045
4H049
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB08
4C063CC45
4C063CC47
4C063EE05
4C085HH03
4C085KA03
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB17
4C085KB18
4C085KB19
4C085KB20
4C085KB82
4C085KB92
4C085LL18
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006CN80
4H045AA10
4H045BA56
4H045BA71
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA26
4H045FA10
4H045GA21
4H049VN01
4H049VN03
4H049VP01
4H049VP02
4H049VQ67
4H049VR24
4H049VU06
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】
本出願は、放射性ハロゲン補欠部分およびその前駆体、ならびにそのような放射性ハロゲン補欠部分を含む放射標識生体分子に関する。生体分子は、特定の細胞型への親和性を有し、がん細胞などのある特定の細胞を特異的に結合し得る。関連する生体分子としては、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ペプチド、他のタンパク質、ナノ粒子、アプタマーおよび前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするために使用される薬理学的部分が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化42】
(式中、
MCは、多座キレート部分であり;
は、H、エステルまたはカルボン酸であり;
Aは、-R-R-YまたはYであり;
Bは、H、アルコキシ基または非放射性ハロゲンであり;
は、直接結合、アルキル基または酸素含有部分であり;
は、直接結合または芳香族部分であり;
Yは、放射性ハロゲンまたは放射性ハロゲンの前駆体であり;
MMCMは、高分子コンジュゲーション部分であり;
は、直接結合またはリンカーである)
による放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項2】
MCが、環状多座キレート部分である、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項3】
MCが、非環状多座キレート部分である、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項4】
MCが、修飾DOTA部分である、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項5】
MCが、DOTA-トリス(t-Buエステル)またはDOTA-トリス(COOH)である、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項6】
MCが、修飾NOTA部分である、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項7】
MCが、NOTA-ビス(t-buエステル)またはNOTA-ビス(COOH)である、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項8】
MCが、金属を含む、請求項1から7のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項9】
前記金属が、非放射性ルテチウム、イットリウム、インジウムおよびガリウム、ならびに放射性177Lu、64Cu、67Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thからなる群から選択される、請求項8に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項10】
MCが、金属を含まない、請求項1から7のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項11】
MCが、その上に存在する窒素原子を介して接続している、請求項1から10のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項12】
以下の式:
【化43】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項13】
以下の式:
【化44】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項14】
以下の式:
【化45】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項15】
以下の式:
【化46】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項16】
以下の式:
【化47】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項17】
以下の式:
【化48】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項18】
以下の式:
【化49】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項19】
以下の式:
【化50】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項20】
以下の式:
【化51】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項21】
以下の式:
【化52】
によって表される、請求項1に記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項22】
Yが、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atからなる群から選択される、請求項1から21のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項23】
Yが、トリアルキルスズ部分、トリアルキルケイ素部分、トリアルキルゲルマニウム部分、HgX部分、Tl(OCOCF部分、ホウ酸(B(OH))、Bpin(ピバロイルボロネート)、アリールヨードニウム塩、ヨードニウムイリド、ジアゾニウム塩およびトリアゼンからなる群から選択され、
Xが、ハロゲン、CHCOOおよびCFCOOからなる群から選択される、請求項1から21のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項24】
前記多座キレート部分内で錯体を形成している金属をさらに含む、請求項12から21のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【請求項25】
前記金属が、非放射性ルテチウム、イットリウム、インジウムおよびガリウム、ならびに放射性177Lu、64Cu、67Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thからなる群から選択される、請求項24に記載の放射性ハロゲン補欠部分。
【請求項26】
前記CO Bu基が、前記部分がCOOH(酢酸)基をそのような位置に含むように脱保護されている、請求項12から25のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分。
【請求項27】
生体分子に結合している請求項1から26のいずれかに記載の放射性ハロゲン補欠部分を含む、放射標識生体分子または中間体。
【請求項28】
前記生体分子が、抗体、抗体断片、VHH分子、アプタマーまたはその変形体からなる群から選択される、請求項27に記載の放射標識生体分子または中間体。
【請求項29】
前記生体分子が、VHHである、請求項27に記載の放射標識生体分子または中間体。
【請求項30】
前記VHHが、HER2を標的とする、請求項29に記載の放射標識生体分子または中間体。
【請求項31】
前記生体分子が、カルバメートまたはウレア含有薬理学的部分を含む、請求項27に記載の放射標識生体分子または中間体。
【請求項32】
前記カルバメートまたはウレア含有薬理学的部分が、前立腺がんのPSMAを標的とするために使用される部分である、請求項31に記載の放射標識生体分子または中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生体分子を放射標識するのに有用な放射性ハロゲン補欠部分、ならびにそのような放射性ハロゲン補欠部分および放射標識生体分子を調製する方法に関する。本開示はまた、そのような放射性ハロゲン補欠部分の前駆体も提供する。放射性ハロゲン補欠部分は、細胞内に内在化することになる生体分子からの放射活性を効果的に保持し得、そのような部分および対応する放射標識生体分子は、疾患、特にがんの診断および処置に有用となる。
【背景技術】
【0002】
背景
放射性ヨウ素標識は、生体分子を放射標識する最も単純な方法の1つである。ヨウ素のいくつかの放射性同位体は、がんの画像化および標的化放射線療法に利用可能である。ヨウ素の放射性同位体は、アルカリ溶液として供給され、ヨウ素は、アルカリ溶液中に-1の酸化状態(I;ヨウ化物)で存在する。生体分子放射性ヨウ素標識のための標準方法は、抗体、他のタンパク質およびペプチドなどの生体分子中に存在するチロシンアミノ酸への求電子置換のために+1酸化状態へのヨウ素の酸化が必要である。このように放射性ヨウ素標識されたモノクローナル抗体(mAb)およびペプチドの課題としては、内在化、脱ヨウ素化、および両方のプロセスの結果として、腫瘍細胞からの放射活性の損失後、細胞内部のタンパク質分解に対するin vivoでのそれらの不安定性が挙げられる。放射性ヨウ素標識された抗体およびペプチドは、内在化(受容体およびある特定の抗原への結合の結果として起こり得る)後、細胞内部でタンパク分解により、膜アミノ酸輸送体によって細胞から効率的に輸送される放射性ヨードチロシンへと分解されることが広く認識されている。放出された放射性ヨードチロシンは、組織中に見出される脱ヨード酵素によって脱ヨウ素化され、遊離放射性ヨウ素は再分布し、ヨウ化ナトリウム共輸送体の発現を伴う臓器、特に甲状腺、胃および唾液腺に蓄積する。したがって、腫瘍中に保持される放射標識の量は減少し、同時に、正常組織における放射活性の取込みは増加する。
【0003】
抗体の不利益の1つは、血流におけるそれらの長い半減期であり、これは、全身投与後に高いバックグラウンドレベル、および結果として、低い腫瘍対バックグラウンド比をもたらす。さらに、従来の抗体は、固形腫瘍への拡散が幾分遅く、これにより、抗体が腫瘍量全体で均質に受容体/抗原に達し、結合することが妨げられる。
【0004】
当技術分野においていくつかの補欠作用物質が同定されているが、それらは不安定であり、商業的な量で製造するのが困難である。さらに、腫瘍細胞、特に脳転移への抗体の取込みは、抗体のサイズに起因して低く、これは、血液脳関門により課せられた送達の制限のため、脳の腫瘍について特に問題となる。したがって、標的化放射線療法および画像化用途のための放射標識生体分子に使用することができるさらなる補欠作用物質への必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、補欠作用物質、その前駆体、および生体分子(高分子とも呼ばれる)を放射性ハロゲン原子、特に放射性ヨウ素により放射標識するための組成物に関する。有利には、そのような方法、化合物および組成物は、in vivo投与後のin vivoにおける脱ハロゲン化に起因した放射性ハロゲンの損失を最小にし、生体分子の生物活性を維持し、がん細胞などの罹患細胞における保持を最大にし、および/または正常組織における放射活性の保持を最小にし得る。
【0006】
生体分子は、特定の細胞型への親和性を有する。つまり、生体分子は、がん細胞などのある特定の細胞を特異的に結合し得る。本発明のある特定の組成物は、放射標識生体分子を含む。そのような生体分子としては、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ペプチド、他のタンパク質、ナノ粒子およびアプタマーが挙げられる。本発明の目的のための生体分子のそのような例としては、ダイアボディ、scFv断片、DARPin、フィブロネクチンIII型をベースとするスキャフォールド、アフィボディ、VHH分子(単一ドメイン抗体断片(sdAb)およびナノボディとしても公知)、核酸またはタンパク質アプタマーおよびナノ粒子が挙げられる。加えて、抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびF(ab’)断片を含む、50kDa超のタンパク質などのより大きな分子は、本明細書に開示されている方法に使用することができる。さらに、50nm未満のサイズのナノ粒子は、本明細書に開示されている方法に使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されている原理は、本明細書により完全に記載されるように、VHH分子および他の種類の小タンパク質構築物(しかし、それらには限定されない)に特に関連する。
【0007】
そのため、本開示は、そのような放射標識している部分(本明細書で「放射性ハロゲン補欠部分」と呼ばれる)、およびそのような補欠部分を提供するための前駆体(本明細書で「放射性ハロゲン前駆体」と呼ばれる)を提供する。本開示は、そのような放射性ハロゲン補欠部分および1つまたはそれよりも多くの高分子を含む放射標識高分子(例えば、生体分子)をさらに提供する。一部のそのような実施形態では、これらの放射標識高分子は、標的化放射線治療剤である。本発明の補欠部分および放射標識高分子は、例えば、疾患を診断するため、および標的化放射線療法のために有用である。
【0008】
本開示は、限定なしに、以下の実施形態を含む。
【0009】
実施形態1:以下の式:
【化1】
(式中、MCは、多座キレート部分であり;Rは、H、エステルまたはカルボン酸であり;Aは、-R-R-YまたはYであり;Bは、H、アルコキシ基または非放射性ハロゲンであり;Rは、直接結合、アルキル基または酸素含有部分(例えば、-O-、-O-CH-、-O-CHCH-など)であり;Rは、直接結合または芳香族部分であり;Yは、放射性ハロゲンまたは放射性ハロゲンに変換され得る部分(本明細書において放射性ハロゲンへの「前駆体」とも呼ばれる)であり;MMCMは、高分子コンジュゲーション部分であり;Lは、直接結合またはリンカーである)
による放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体。
【0010】
実施形態2:MCが、環状多座キレート部分である、先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0011】
実施形態3:MCが、非環状多座キレート部分である、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0012】
実施形態4:MCが、修飾DOTA部分である、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0013】
実施形態5:MCが、DOTA-トリス(t-Buエステル)またはDOTA-トリス(COOH)である、先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0014】
実施形態6:MCが、修飾NOTA部分である、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0015】
実施形態7:MCが、NOTA-ビス(t-buエステル)またはNOTA-ビス(COOH)である、先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0016】
実施形態8:MCが、金属を含む、任意の先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0017】
実施形態9:金属が、非放射性金属(例えば、ルテチウム、イットリウム、インジウムまたはガリウムを含む)および放射性金属(例えば、177Lu、64Cu、67Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thを含む)からなる群から選択される、先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0018】
実施形態10:MCが、金属を含まない、実施形態の1~7のいずれかの放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0019】
実施形態11:MCが、その上に存在する窒素原子を介して接続するか、またはMCが、骨格炭素を介して接続する、任意の先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0020】
実施形態12:以下の式:
【化2】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0021】
実施形態13:以下の式:
【化3】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0022】
実施形態14:以下の式:
【化4】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0023】
実施形態15:以下の式:
【化5】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0024】
実施形態16:以下の式:
【化6】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0025】
実施形態17:以下の式:
【化7】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0026】
実施形態18:以下の式:
【化8】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0027】
実施形態19:以下の式:
【化9】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0028】
実施形態20:以下の式:
【化10】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0029】
実施形態21:以下の式:
【化11】
によって表される、実施形態1の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0030】
実施形態22:Yが、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atからなる群から選択される、任意の先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0031】
実施形態23:Yが、トリアルキルスズ部分、トリアルキルケイ素部分、トリアルキルゲルマニウム部分、HgX部分(X=ハロゲン、CHCOO、CFCOOなど)、Tl(OCOCF部分、ホウ酸(B(OH))、Bpin(ピバロイルボロネート)、アリールヨードニウム塩および中でもヨードニウムイリド(例えば、ジアゾニウム塩またはトリアゼンを含む)からなる群から選択される、実施形態1~22のいずれかの放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0032】
実施形態24:多座キレート部分内で金属が錯体を形成していない、実施形態12~23のいずれかの放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0033】
実施形態25:多座キレート部分内で錯体を形成している金属をさらに含む、実施形態12~23のいずれかの放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0034】
実施形態26:金属が、非放射性金属(例えば、ルテチウム、イットリウム、インジウムまたはガリウムを含む)および放射性金属(例えば、177Lu、64Cu、67Cu、111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thを含む)からなる群から選択される、実施形態12~23のいずれかの放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0035】
実施形態27:示されるCO Bu基のすべてが脱保護されている場合を含み、示されるCO Bu基のうちの1つまたはそれよりも多くが、脱保護されている(すなわち、COOH基で置き換えられている)、先行する実施形態のいずれか1つの放射性ハロゲン補欠部分または前駆体。
【0036】
実施形態28:生体分子に結合している任意の先行する実施形態の放射性ハロゲン補欠部分または前駆体を含む、放射標識生体分子または中間体。
【0037】
実施形態29:生体分子が、抗体、抗体断片、VHH分子、アプタマーまたはその変形体からなる群から選択される、先行する実施形態の放射標識生体分子または中間体。
【0038】
実施形態30:生体分子が、VHHである、任意の先行する実施形態の放射標識生体分子または中間体。
【0039】
実施形態31:前記VHHが、HER2を標的とする、先行する実施形態の放射標識生体分子または中間体。
【0040】
実施形態32:生体分子が、カルバメートまたはウレア含有薬理学的部分を含む、実施形態28の放射標識生体分子または中間体。
【0041】
実施形態33:カルバメートまたはウレア含有薬理学的部分が、前立腺がんのPSMAを標的とするために使用される部分である、先行する実施形態の放射標識生体分子または中間体。
【0042】
実施形態12~21に示される具体的な構造において、示されるキレート化部分の種類は限定されることが意図されず、例えば、放射性ハロゲン補欠部分または前駆体が、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、NHSエステルの代わりに、テトラフルオロフェノール(TFP)エステル、イソチオシアネート基、マレイミド基(または他のキレート化部分)を含む類似体を含むと示される場合もまた本明細書に包含されることに留意されたい。同様に、放射性ハロゲン補欠部分または前駆体が、TFPエステル、TFPエステルの代わりに、NHSエステル、イソチオシアネート基、マレイミド基(または他のキレート化部分)を含む類似体を含むと示される場合もまた、本明細書に包含される。
【0043】
ある特定の実施形態では、芳香族/アリール環が、開示される部分内に組み込まれることにさらに留意されたい。「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、各環が最大8員である安定な単環式、二環式または三環式炭素環を意味し、Huckel 4n+2則によって定義されるように、少なくとも1つの環は芳香族である。本明細書に示される実施形態では、芳香族/アリール環は、一般に、ホモ芳香族/ホモアリールであると示されるが、しかしながら、本開示は、複素芳香族/ヘテロアリール環もまた包含することが意図される。そのため、一部の実施形態では、本明細書で提供される式の芳香族/アリール環中に示される炭素原子の1個またはそれよりも多く(例えば、1~4個)は、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子で置き換えられていてもよい。一部の好ましい実施形態では、そのような環は、Nである1個のヘテロ原子を含み得る。例示的なアリール基としては、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルおよびビフェニルが挙げられ、例示的な芳香族基としては、これらに限定されないが、ベンゼン、インドール、フラン、ピリジンおよびピラジン、ならびにその置換誘導体が挙げられる。
【0044】
本開示のこれらのおよび他の特徴、態様および利点は、以下の詳細な記載を読むことで明らかになるであろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つまたはそれよりも多くの任意の組合せ、および本開示に示される任意の2つ、3つ、4つまたはそれよりも多い特徴または要素の組合せを、そのような特徴または要素が本明細書に記載の具体的な実施形態において明らかに組み合わせられているかに関わらず、含む。本開示は、全体論として読まれることが意図され、そのため、その様々な態様および実施形態のうちのいずれかにおいて、開示される発明の任意の分離可能な特徴または要素は、文脈が明らかにそうではないことを記述していない限り、組み合わせ可能であることが意図されるものとして考慮されるべきである。本発明の他の態様および利点は、以下から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本開示は、一般に、ある特定の放射性ハロゲン補欠部分、その前駆体、および放射性ハロゲン補欠部分を含む放射標識高分子を提供する。これらの部分、前駆体および放射標識高分子のある特定の関連する化学および生体成分は、Zalutskyらの米国特許第9,839,704号に開示されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2018/178936号に参照されるように、ある特定の例示的な放射性ハロゲン前駆体および放射性ハロゲン補欠部分は、以下の式:
MC-Cm-L-Cm-T (式X)
(式中、置換基は、そこで参照される通りに定義される(一般に、「MC」は、多座金属キレート部分を表し、「Cm」は、コンジュゲート部分、例えば、チオウレア、アミドまたはチオエーテルを表し、「L」は、結合、置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、必要に応じて一方もしくは両方の末端にNH、COもしくはSを有する置換もしくは非置換アルキニル鎖、またはポリエチレングリコール(PEG)鎖を表し、「T」は、放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体を表す))
に従って定義され得る。本出願は、本明細書の以下でより完全に概説されるように、参考文献に開示されるものなどのそのような部分を含む種々の補欠部分および放射標識高分子、ならびにそれらの前駆体のある特定の変更および強調される特徴を提供する。
【0047】
本明細書は、具体的には、構造が式Xの構造といくらか類似であるが、Cm-L-Cmリンカー官能基を含まない放射性ハロゲン前駆体部分および放射性ハロゲン補欠部分を提供する。本開示によると、放射性ハロゲン前駆体部分および放射性ハロゲン補欠部分は、本明細書で式Aと呼ばれる簡略化構造(以下に示す)で提供される。
MC-T (式A)
【0048】
MCは、多座金属キレート部分である。MCは、任意の多座キレート部分であり得、環状であってもまたは非環状であってもよい。MCの組成は、様々であり得る。MCは、錯体を形成していなくても(金属を欠く)、または金属の安定な(非放射性)もしくは放射性形態と錯体を形成していてもよい。一部の実施形態では、金属は、任意の電荷の金属であり、+2、+3、または+4電荷が好ましい。ある特定の実施形態では、金属は、ルテチウム、イットリウム、インジウム、アクチニウムまたはガリウムなどの3価金属(M+3)であり、ある特定の実施形態では、MCと錯体を形成し得る具体的な放射性金属としては、これらに限定されないが、177Lu、64Cu、67Cu 111In、90Y、225Ac、213Bi、212Pb、212Bi、67Ga、68Ga、89Zrおよび227Thからなる群から選択される放射性金属が挙げられる。このリストは、網羅的ではなく、これらの例示された放射性および非放射性金属は3価であるが、本発明に従って使用され得るある特定のMCは、他の価数の金属を結合し得、そのような金属およびそのような金属を含有するMCもまた、本明細書に包含されることに留意されたい。
【0049】
一部の実施形態では、MCは、8個またはそれよりも多い原子を含有し、カルボキシルまたはホスホネート基などの少なくとも3つの負電荷置換基を有する環からなる大環状リガンドである。MC基として好適な例示的な大環状リガンドとしては、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)および1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ(メチレンホスホン酸)(NOTP)が挙げられる。他の実施形態では、MCは、参照により本明細書に組み込まれるGali et al., Anticancer Research (2001), 21(4A), 2785-2792)に開示される通りのMeO-DOTAである。
【0050】
本開示は、官能化MC基、例えば、修飾DOTAまたは修飾NOTAを用いることの利点を特に認識する。1つの例示的な修飾DOTAは、DOTA-トリス(t-Buエステル)、すなわち、「T」への接続のために使用される場合の窒素原子以外の各窒素原子と関連するtert-ブチルアセテート基を含むDOTAである。MC-Tをもたらす反応に好適なそのような化合物はまた、トリ-tert-ブチル1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリカルボキシレートとも呼ばれる。tert-ブチル保護基の除去の際、脱保護形態がもたらされ、これは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリカルボン酸と呼ばれ得る。本開示のある特定の実施形態における使用が見出され得るさらなる修飾DOTAは、非環状類似体、例えば、DOTAの非環状類似体または修飾DOTAの非環状類似体である。反応してMC-Tを形成し得る、1つの例示的なtert-ブチルアセテート官能化非環状DOTAは、tert-ブチル(2-((2-((2-アミノエチル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)グリシネートである。tert-ブチル保護基の除去の際、脱保護形態がもたらされ、これは、(2-((2-((2-アミノエチル)(カルボキシ)アミノ)エチル)(カルボキシ)アミノ)エチル)グリシンと呼ばれ得る。同様に、一部の実施形態では、NOTAの修飾類似体が用いられ、これは、「T」への接続のために使用される場合の窒素原子以外の各窒素原子と関連するtert-ブチルアセテート基を含む。そのような修飾NOTAは、ジ-tert-ブチル1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジカルボキシレートであり得、これは、tert-ブチル基が結合していない窒素原子を介して反応してMC-Tをもたらし得る。
【0051】
理論に限定されることは意図しないが、そのようなアセテート置換基(または修飾DOTA/NOTA MC基の脱保護の際の酢酸置換基)により、DOTA/NOTA(またはその類似体)キレート形成部分のある程度の安定化がもたらされると考えられる。MC基と関連するtert-ブチルアセテート基を提供する本明細書のすべての図では、t-ブチルにより示されているが、脱保護形態(tert-ブチルアセテート基の代わりに酢酸基を含む)もまた、本明細書で包含されることが意図されることが理解される。
【0052】
ある特定のそのような修飾「MC」基は、それぞれ、各々の示される「MC」部分上に示される「T」に結合可能な1つの点と共に以下の式B-1、B-2およびB-3に示され、関連する放射性ハロゲン前駆体部分および放射性ハロゲン補欠部分、ならびにそれらを含む放射標識生体分子を提供する。
【化12】
【化13】
【0053】
本開示によると、MCは、任意の関連する原子を介して、例えば、(これらに限定されないが)MCと関連する炭素または窒素を介して、補欠/前駆体部分(「T」を含む)の残部に接続して、対応する放射性ハロゲン前駆体および補欠部分をもたらす。本明細書で言及される修飾DOTAおよびNOTA基について、MCは、有利には、修飾DOTA/NOTA上に存在する窒素を介して(上記の式B-1、B-2およびB-3に示されるように)、またはMC上の他の位置を介して(例えば、MC骨格炭素の1つを介して、を含む)、Tに接続し得る。
【0054】
Tは、放射性ハロゲン化テンプレートまたは放射性ハロゲン前駆体テンプレートである。Tは、例えば、以下に示される式Cの化合物(以下にさらに詳細に記載される通りのMMCMを含む化合物)であり得、MCへのその接続は、波線によって示されている。典型的には、開示される構造において、Tは、MCに、すなわち、Rに隣接して示される炭素原子とMC上の部分との間の直接結合により直接結合している(例えば、MCは、DOTA/NOTAまたは修飾DOTA/NOTAであり、以下に示される炭素原子は、骨格DOTA/NOTA構造の窒素原子に直接結合し得る)。
【化14】
【0055】
式Cにおいて、以下の定義が適用可能である:
=H、エステルまたはカルボン酸。
Aは、R-R-YまたはYである。
Bは、H、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ)基、またはハロゲン(例えば、Cl、F、IおよびBrからなる群から選択されるなどの非放射性ハロゲン)である。
=直接結合、アルキル基または酸素含有部分。本明細書に提供される通りの「酸素含有部分」のある特定の例としては、これらに限定されないが、-O-、-O-CH-、-O-CHCH-などが挙げられる。
=直接結合、アルキル基または芳香族部分(例えば、フェニル環)。
Y=a)放射性ハロゲン(例えば、18F、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、131Iおよび211Atから選択されるなど(その結果、示される部分は放射性ハロゲン補欠部分である);またはb)放射性ハロゲンの前駆体(その結果、示される部分は、放射性ハロゲン化に好適な前駆体であり、本明細書において「放射性ハロゲン前駆体部分」とも呼ばれる)。放射性ハロゲン化に好適な前駆体は、様々であり得、例えば、金属上に3つのC1~6アルキル基リガンドを含むアルキル金属部分(例えば、トリアルキルスズ部分、例えば、BuSnまたはMeSn、トリアルキルケイ素部分およびトリアルキルゲルマニウム部分)が挙げられる。放射性ハロゲン化に他の好適な前駆体としては、これらに限定されないが、HgX部分(X=ハロゲン、CHCOO、CFCOOなど)、Tl(OCOCF部分、ボロン酸(B(OH))、Bpin(ピバロイルボロネート)、アリールヨードニウム塩、ヨードニウムイリド、ジアゾニウム塩、トリアゼンなどが挙げられ、これは、さらに処理されて、放射性ハロゲン補欠部分がもたらされ得る。
MMCM=式Cの化合物/ラジカルを高分子にカップリングする高分子コンジュゲーション部分。
=直接結合またはリンカー。
【0056】
ある特定の実施形態では、Rは、-O-CH-であり、Rはフェニル環であり、その結果、R-Rは、式Cの中心フェニル環に結合しているベンジルオキシ基である。互いに対するフェニル環上の置換基の位置は、様々であり得る。他の置換基(A、BおよびMCへの接続)に対する芳香族環上のL-MMCMは、様々であり得る。ある特定の実施形態では、L-MMCM基は、MCへの接続に対してメタである。一部の実施形態では、化合物の中心フェニル環は、L-MMCMに対してオルトの(L-MMCMが接続した炭素が、2個の非置換炭素原子に対してオルトであるような)置換基を含まない。一部の好ましい実施形態では、Aは、MCに接続した炭素に対してオルトである。AがMCに接続した炭素に対してオルトである場合、一部のそのような実施形態では、Bは、A置換基に対してオルトであり、Hである。他の好ましい実施形態では、Aは、MCに接続した炭素に対してメタである。AがMCに接続した炭素に対してメタである場合、一部のそのような実施形態では、Bは、MCに接続した炭素に対してオルトであり(かつA置換基に対してメタである)、ある特定の実施形態では、Bは、アルコキシ(例えば、メトキシ)である。
【0057】
MMCMは、様々であり得、生体分子への接続に好適な任意の構成成分であり得る。一部の実施形態では、MMCMは、活性エステルである。活性エステルは、本明細書において、穏やかな条件、すなわち、高分子/生体分子の生体機能の損失をもたらさない条件下で、高分子/生体分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)上に存在するアミン基とコンジュゲートし得るエステルとして定義される。例示的なそのようなMMCM基としては、これらに限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルまたはテトラフルオロフェノール(TFP)エステル、イソチオシアネート基、またはマレイミド基が挙げられる。そのようなMMCMは、一般に、タンパク質またはペプチド上のアミン基のランダム(非部位特異的)標識化をもたらす。他の実施形態では、MMCMは、ソルターゼなどの酵素を使用して実施される部位特異的コンジュゲーションをもたらし、これは、タンパク質(タンパク質のN末端またはC末端のいずれか)上の1つの部位のみにコンジュゲーションをもたらす。ソルターゼの場合、MMCMは、例えば、トリペプチドGlyGlyGlyである。好適なコンジュゲーションを得るために用いられ得る酵素としては、特に限定されないが、例えば、トランスグルタミナーゼ(translugaminase)、リポ酸リガーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ、ならびに例えば、それらの全体が参照によりすべて本明細書に組み込まれる、Massa et al., Exp. Opin. Drug Del. 2016, 13(8), pp. 1149-1163;Zhang et al., Chem. Soc. Rev. 2018, 47, pp. 9106-9136;Falck et al., Antibodies 2018, 7(4), pp. 1-19;およびvan Berkel et al., Drug Disc. Today: Technologies 2018, 30, pp. 3-10に開示されるものなど他多数が挙げられる。
【0058】
MMCMは、芳香族環(L=直接結合)に直接結合し得、またはリンカー(L)を介して芳香族環に結合し得る。Lは、例えば、置換もしくは非置換アルキル鎖、置換もしくは非置換アルケニル鎖、置換もしくは非置換アルキニル鎖、または短いポリエチレングリコール(PEG)鎖(1~10個のエチレングリコールユニット)などのスペーサーであり得る。
【0059】
本開示によると、そのような放射性ハロゲン前駆体および補欠部分に関連するある特定の構造特徴は、本明細書の以下でより徹底的に概説されるように、種々の有利な機能を提供するものとして特定された。これらの特定された構造特徴の様々な組合せを含む放射性ハロゲン前駆体および補欠部分、ならびに放射標識生体分子が、本明細書で提供される。
【0060】
一実施形態では、Rは、有利には、以下の式C-1に示されるように、エステル基、例えば、CO Buである。そのような実施形態では、「T」上の芳香族環と「MC」基との間のこのR基は、特に脱保護後、この部位において遊離COOHをもたらして、金属錯体のさらなる安定化をもたらし得る。
【化15】
【0061】
一実施形態では、Tの中心芳香族環は、置換基Bとしてアルコキシ基、特に、メトキシ(OCH)基により官能化されている。このアルコキシ基は、フェニル環上の様々な位置において存在し得るが、アルコキシ基は、有利には、CHR-MC基が結合している炭素に対してオルトの炭素上にあり、その結果、アルコキシは、MC部分に比較的近接している。驚くべきことに、この基は、特に金属錯体エステル置換基の脱保護の際に、金属錯体(例えば、修飾DOTA基またはNOTA基)の追加の安定化をもたらし得ることが見出された。有利には、フェニル環上にアルコキシ基を含むそのような化合物は、芳香族環上に4つの置換基を有する。例えば、以下の式C-2を参照されたい。
【化16】
【0062】
一部実施形態では、ハロゲン化部位または前駆体部分は、式C-3に示されるように、中心アリール環に(直接または間接的に)結合している(例えば、これらに限定されないが、O-アルキル-部分を介して中心アリール環に接続していることを含む)芳香族環上に配置される。フェニル環上のハロゲンまたはトリアルキル金属部分の位置は様々であり得るが、ある特定の実施形態では、ハロゲンまたはトリアルキル金属部分は、分子の残部への接続に対してパラである。一部のそのような実施形態では、式C-3に示されるように、Bは、Hである。別の実施形態では、式C-4に示されるように、ハロゲン部位または前駆体部分は、中心アリール環に接続した芳香族環上にあり、芳香族環は、示されるように、中心アリール環に直接結合する。一部のそのような実施形態では、式C-4に示されるように、Bは、Hである。
【0063】
ハロゲン化部位または前駆体部分が、中心アリール環に結合している芳香族環上にある実施形態では、芳香族環は、他の置換基を含まないことがあり、または一部の実施形態では、ハロゲン化部位もしくは前駆体部分に関して様々な位置において1つもしくはそれよりも多くの追加の置換基を含み得ることに留意されたい。例えば、一部の実施形態では、芳香族環は、グアニジノメチルをさらに含む。したがって、例えば、以下の式C-3およびC-4は、Iでのみ置換された芳香族環により示されるが、本開示はこれに限定されず、他の置換基が、様々な実施形態においてその環上に存在していてもよい。特定の一実施形態では、アリール環が、Iおよびグアニジノメチル基の両方で置換された、式C-3の部分が提供される。
【化17】
【0064】
一部の実施形態では、ハロゲン化部位/前駆体部分は、式C-5およびC-6に明らかに示されるように、直接中心アリール環上にある(例えば、直接結合を介して接続している)。一部のそのような実施形態では、式C-5に示されるように、Bは、Hである。式C-5において、ヨウ素化部位は、キレート形成エステルの近位であり、これらの種類の構造は、有利には、キレート形成部分への弱電荷安定化を可能にし得る。一部のそのような実施形態では、式C-6に示されるように、Bは、有利には、OCHである。
【化18】
【化19】
【0065】
具体的な一実施形態では、以下の式D-1に従うDOTA-SIB放射性ハロゲン補欠部分が提供される。
【化20】
【0066】
示されるように、式D-1のこの放射性ハロゲン補欠部分は、Tの官能化フェニル環と修飾DOTAキレート部分(MC)上の窒素との間の単一の炭素を含む。式D-1において、Tの官能化フェニル環と修飾DOTAキレート部分上の窒素との間の炭素上のCO Bu基は、キレート形成錯体のさらなる電荷安定化(特に、脱保護後、修飾DOTA上の遊離COOH基をもたらす)をもたらす。さらに、中心アリール環上のメトキシ置換基は、修飾DOTAキレート形成部分についての追加の電荷安定化をもたらす。式D-1の放射性ハロゲン補欠部分において、ハロゲン化部位は、直接中心アリール(ベンゼン)環上にある。
【0067】
式D-2は、類似のNOTA-SIBハイブリッド放射性ハロゲン補欠部分を提供する。
【化21】
【0068】
別の具体的な実施形態では、以下の式D-3に従うDOTA-SIB放射性ハロゲン補欠部分が提供される。
【化22】
【0069】
示されるように、式D-3のこの放射性ハロゲン補欠部分は、Tの官能化フェニル環と修飾DOTAキレート部分(MC)上の窒素との間の単一の炭素を含む。式D-3において、Tの官能化フェニル環と修飾DOTAキレート部分上の窒素との間の炭素上のCO Bu基は、キレート形成錯体のさらなる電荷安定化(特に、脱保護後、修飾DOTA上の遊離COOH基をもたらす)をもたらす。中心アリール環に直近のO-アルキルサブユニットは、キレート形成部分MCに追加の電荷安定化をもたらす。この式D-3構造中のハロゲンは、中心芳香族環上ではなくO-アルキル-サブユニット上で置換された芳香族環上に配置される。
【0070】
再度、一般式C-3に関して、上で参照される通り、さらなる実施形態では、式D-3の化合物は、O-アルキル-サブユニット上で置換された芳香族環上に1つまたはそれよりも多くの追加の置換基をさらに含み得る。例えば、一実施形態では、式D-3のO-アルキル-サブユニット上で置換された芳香族環は、示されるIに加えて、グアニジノメチル基を含む(これは、環上のI置換基に対してオルトまたはメタであり得る)。具体的な一例が、式D-3’(式中、XおよびYは、芳香族環上の5つの位置のいずれかに配置され得る)として以下に示される。Xがヨウ素放射性同位体または別の放射性ハロゲン(またはその前駆体)である場合、Yは、グアニジノメチルであり、逆もまた同様である。N-ヒドロキシスクシンイミジルエステルは、全体を通して参照されるように、他の基、例えば、TFPエステル基で置き換えられ得る。
【化23】
【0071】
さらなる具体的な実施形態では、以下の式D-4に従うDOTA-SIB放射性ハロゲン補欠部分が提供される。
【化24】
【0072】
示されるように、式D-4のこの放射性ハロゲン補欠部分は、Tの官能化フェニル環と修飾DOTAキレート部分(MC)上の窒素との間の単一の炭素を含む。式D-4において、Tの官能化フェニル環と修飾DOTAキレート化部分上の窒素との間の炭素上のCO Bu基は、キレート形成錯体のさらなる電荷安定化(特に、脱保護後、官能化DOTA上の遊離COOH基をもたらす)をもたらす。式D-4のハロゲンは、修飾DOTAに近位であり、金属錯体への弱電荷安定化を可能にする。
【0073】
さらなる具体的な実施形態では、以下の式D-5に従うDOTA-SIB放射性ハロゲン補欠部分が提供される。
【化25】
【0074】
示されるように、式D-5のこの放射性ハロゲン補欠部分は、構造が式D-4の構造と同等であるが、(式D-4の環状形態ではなく)非環状修飾DOTAを含む。
【0075】
具体的な一部の実施形態では、例えば、以下の式D-6~D-8に示されるように、L-MCは、テトラフルオロフェノール(TFP)エステルである。再度、式D-7は、例えば、式D-3に関して上記のように、例示されるI置換基に加えて、-O-アルキル-フェニル基上の1つまたはそれよりも多くの追加の置換基(例えば、グアニジノメチル(guanidnomethyl)基)を含むように修飾され得る。
【化26】
【化27】
【0076】
式D1~D8に示されるように、エステル含有R置換基、例えば、CO Bu基が一般に好ましいが、他の実施形態では、以下の式D-9に示されるように、RがHである放射性ハロゲン補欠部分またはその前駆体が提供される。一部の実施形態では、そのような部分は、他の同等の化合物(例えば、R位にエステル基を含むもの)よりも少ないステップで調製することができる。
【化28】
【0077】
本開示は、上記の一般式および具体的な式D1~D6(放射性ヨウ素を含む放射性ハロゲン補欠部分として示される)に加えて、他のハロゲンとのD1~D6の類似体、例えば、放射性ヨウ素(I)が別の放射性ハロゲン(例えば、これに限定されないが、18Fを含む)で置き換えられたもの、および式D1~D6の部分(すなわち、放射性ハロゲン前駆体部分)の前駆体として役立つ類似体、例えば、Iが、アルキル金属部分(これに限定されないが、BuSn、例えば、BuSn)などの前駆体部分で置き換えられたものを包含することが理解される。上で参照されるように、前駆体は、例えば、トリアルキルスズ部分、トリアルキルケイ素部分、トリアルキルゲルマニウム部分、HgX部分(X=ハロゲン、CHCOO、CFCOOなど)またはTl(OCOCF部分などのアルキル金属部分、ボロン酸(B(OH))、Bpin(ピバロイルボロネート)、アリールヨードニウム塩および中でもヨードニウムイリド(例えば、ジアゾニウム塩またはトリアゼンを含む)を含み得、これは、放射性ハロゲン補欠部分をもたらすようにさらに処理され得る。
【0078】
本開示は、例えば、部位特異的な様式(本明細書の上で参照される式内に含まれる)で、生体分子とコンジュゲートし得る(MMCMを介して)放射性ハロゲン補欠部分および放射性(例えば、放射性ヨウ素)標識補欠部分を提供する方法をさらに提供する。本開示は、得られた放射性(例えば、ヨウ素放射性核種、臭素放射性核種、18Fまたは211At)標識生体分子をさらに提供する。関連する生体分子としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2018/178936号に一般に開示されるものが挙げられる。生体分子は、幅広く様々であり得る。一部の実施形態では、生体分子は、抗体、抗体断片、VHH分子、アプタマーまたはその変形体からなる群から選択される。特定の一例は、例えば、HER2を標的とするVHHなどのVHHである。一部の実施形態では、生体分子は、カルバメートまたはウレア含有薬理学的部分(例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするために使用される)を含む。そのような放射性標識生体分子は、例えば、タンパク質/ペプチドを適切なカルバメートまたはウレアで置き換え、例えば、タンパク質について記載されるのと同じ標識化テンプレートを使用することによって、本開示に従って提供され得る。例えば、それらの全体が参照によりすべて本明細書に組み込まれる、Yang et al., J. Med. Chem. 2016, 59, pp. 206-218;Chen et al., J. Med. Chem. 2008, 51, pp. 7933-7943;およびEiber et al., J. Nucl., Med. 2017, pp. 67S-76Sを参照されたい。
【0079】
本開示は、1つまたはそれよりも多くの薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤および/または担体と関連して、本明細書に開示される通りの放射標識生体分子(例えば、上で記載/示される標識生体分子)を含む医薬組成物をさらに提供する。本開示のさらなる態様では、がんを処置する方法であって、それを必要とする個体に、有効量の本明細書に開示される通りの放射標識生体分子および/または有効量の本明細書に開示される通りの医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0080】
以下の実施例は、例示として提供され、限定として提供されるものではない。
【実施例
【0081】
(実施例1)
トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-(tert-ブトキシ)-1-(5-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)カルボニル)-2-メトキシ-3-(トリブチルスタンニル)フェニル)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテートの調製
【0082】
a.ベンジル4-(ベンジルオキシ)-3-メチルベンゾエート
【化29】
【0083】
丸底フラスコに、4-ヒドロキシ-3-メチル安息香酸(2.0g、1当量、13mmol)、炭酸カリウム(7.3g、4.0当量、53mmol)、ベンジルブロミド(22g、16mL、10当量、0.13mol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(75mL)を添加した。反応混合物を80℃で16時間加熱し、その時点で、混合物を室温に冷却し、水および酢酸エチルで分配した。有機物を分離し、MgSOで脱水し、濃縮乾固した。粗製油状物を、50g SNAP ULTRA(登録商標)シリカゲルカラム(ヘキサン:EA、9:1)を使用して精製して、ベンジル4-(ベンジルオキシ)-3-メチルベンゾエート(4.0g、92%)を純粋な油状物として得た。LRMS(M+H)(333)、(M+Na)(355)。
【0084】
b.4-(ベンジルオキシ)-3-メチル安息香酸
【化30】
【0085】
100ml丸底フラスコに、ベンジル4-(ベンジルオキシ)-3-メチルベンゾエート(4.0g、1当量、12mmol)、1,4-ジオキサン(25mL)、水(25mL)および水酸化リチウム(1.2g、4.00当量、48mmol)を添加した。濁った混合物を25℃で16時間反応させて、この時点で、混合物を、ロータリーエバポレーターを使用して真空中で2分の1の体積に濃縮した。得られた粗製材料を水で希釈し、エーテルで抽出した。エーテル層を廃棄し、水性層を0~5℃に冷却し、濃HClを使用して混合物を酸性にした。得られた濁った白色混合物を酢酸エチル、酢酸エチル溶液で抽出し、MgSOで脱水し、濃縮乾固して、4-(ベンジルオキシ)-3-メチル安息香酸(2.7g、93%)をほぼ純粋な白色固体として得た。生成物を、さらなる精製なしに使用した。LRMS(M-H)(241)。
【0086】
c.2-(トリメチルシリル)エチル4-(ベンジルオキシ)-3-メチルベンゾエート
【化31】
【0087】
4-(ベンジルオキシ)-3-メチル安息香酸(2.6g、1当量、11mmol)、DMAP(0.13g、0.1当量、1.1mmol)、EDC(3.1g、1.5当量、16mmol)およびジクロロメタン(75mL)を、100ml丸底フラスコに添加し、得られた溶液を室温で約5分間撹拌した。この撹拌溶液に、2-(トリメチルシリル)エタン-1-オール(1.9g、1.5当量、16mmol)を添加し、反応物を25℃で16時間撹拌した。反応混合物を、飽和水とCHClとの間で分配した。有機物を分離し、無水NaSOで脱水した。揮発物を濃縮し、50g BIOTAGE SNAP ULTRAカラム(ヘキサン:EtOAc(1:1)を使用してクロマトグラフィーにかけて、2-(トリメチルシリル)エチル4-(ベンジルオキシ)-3-メチルベンゾエート(3.0g、82%)を透明な油状物として得た。LRMS(M+Na)(365)。
【化32】
【0088】
d.2-(トリメチルシリル)エチル4-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート
【0089】
丸底フラスコに、50mLエタノール中の2-(トリメチルシリル)エチル4-(ベンジルオキシ)-3-メチルベンゾエート(2.0g、1当量、5.8mmol)の溶液を添加した。次いで、均質溶液を、5分間ハウス真空下で脱気した。次いで、溶液を、パラジウム炭素(0.20g、0.032当量、0.19mmol)と混合し、脱気を繰り返した。5分後、バルーンを使用して、混合物を水素ガスでパージした。反応を、時折、バルーンを再充填しながら、2時間進行させた。TLCによって反応が完了していることが示され、混合物を真空下で脱気した。次いで、反応物をアルゴンでパージし、セライトを使用して、パラジウム触媒をろ別した。セライトをMeOHで洗浄し、ろ液を濃縮乾固して、2-(トリメチルシリル)エチル4-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート(1.3g、88%)を油状固体として得た。LRMS(M+H)(253+)、(M-H)(251)。
【0090】
e.2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-メチルベンゾエート
【化33】
【0091】
丸底フラスコに、TEA(1.2g、1.6mL、2当量、12mmol)、2-(トリメチルシリル)エチル4-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート(1.5g、1当量、5.9mmol)、ピリジン(1.4g、1.4mL、3当量、18mmol)およびアセトニトリル(50mL)を添加した。反応混合物を室温で撹拌し、無水酢酸(2.4g、2.2mL、4当量、24mmol)を投入した。反応物を、室温で16時間撹拌し、水と酢酸エチルとの間で分配した。有機物を分離し、MgSOで脱水し、濃縮乾固した。25g SNAP ULTRA(登録商標)シリカゲルカラム(ヘキサン:EA、9:1)を使用して粗製油状物を精製して、2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-メチルベンゾエート(1.5g、86%)を純粋な油状物として得た。LRMS(M+Na)(317)。
【0092】
f.2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-(ブロモメチル)ベンゾエート
【化34】
【0093】
オーブン乾燥した丸底フラスコに、2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-メチルベンゾエート(1.5g、1当量、5.1mmol)、1,2-ジクロロエタン(50mL)およびNBS(1.8g、2.0当量、10mmol)を添加した。得られた溶液を、室温で5分間撹拌した。この混合物を90℃に加熱し、AIBN(0.17g、0.2当量、1.0mmol)と混合し、反応物を2.5時間反応させた。2.5時間後、反応物を濃縮乾固して、油状固体を得た。Biotage 10g SNAP ULTRAカラム(ヘキサン:EtOAc 10:1)を使用して、粗生成物をクロマトグラフィーにかけて、2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-(ブロモメチル)ベンゾエート(1.8g、95%)を、約70%純度の低融点固体として得た。材料は、本質的に不安定であり、次の反応にそのまま使用した。
【0094】
g.2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)ベンゾエート
【化35】
【0095】
丸底フラスコに、2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-(ブロモメチル)ベンゾエート(1.8g、1当量、4.8mmol)、ヘプタン(100mL)およびトリ-tert-ブチルボレート(3.3g、3.0当量、14mmol)を添加し、溶液を5分間アルゴンでパージした。次いで、フラスコにクロロ(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体(0.24g、0.1当量、0.48mmol)を投入し、追加のアルゴンでパージした。次いで、溶液を、一酸化炭素で2分間パージし、ゴム製セプタムを使用して密封した。反応フラスコに、一酸化炭素を満たしたバルーンを取り付け、75℃で24時間加熱した。反応混合物を、セライトを通してろ過し、濃縮乾固し、25g SNAP Ultra Biotageカラム(ヘキサン:EtOAc(5:1))を使用して粗製黒色油状物を精製して、2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)ベンゾエート(562mg、30%)を油状物として得た。LRMS(M+H)(395)、(M+Na)(417)。
【0096】
h.2-(トリメチルシリル)エチル3-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシベンゾエート
【化36】
【0097】
丸底フラスコに、2-(トリメチルシリル)エチル4-アセトキシ-3-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)ベンゾエート(500mg、1当量、1.27mmol)およびメタノール(50mL)を投入した。溶液を、0~5℃に冷却し、アンモニアガスで3分間パージした。フラスコに、アルゴンを満たしたバルーンを取り付け、反応物を、4.0時間撹拌した。4時間後、tlc分析によって反応が完了したことが示され、反応混合物を濃縮乾固して、2-(トリメチルシリル)エチル3-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシベンゾエート(466mg、104%)を得、これは、精製なしに次のステップに持ち越した。LRMS(M+Na)(375)、(M-H)(351)。
【0098】
i.2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシベンゾエート
【化37】
【0099】
丸底フラスコに、2-(トリメチルシリル)エチル3-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシベンゾエート(400mg、1当量、1.13mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)を添加し、反応混合物を0~5℃に冷却した。次いで、反応溶液をNBS(606mg、3.0当量、3.40mmol)と混合し、反応物を室温で3.0時間撹拌した。tlc分析によって反応が完了したことが示され、次いで、反応物をEtOAcと水との間で分配した。EtOAc層を分離し、MgSOで脱水し、濃縮乾固して、2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシベンゾエート(533mg、109%)を粗製固体として、いくらかの残留DMFと共に得た。LRMS(M+Na)(453、455)、(M-H)(429、431)。
【0100】
j.2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-メトキシベンゾエート
【化38】
【0101】
丸底フラスコに、2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシベンゾエート(533mg、1当量、1.24mmol)、炭酸カリウム(854mg、5.0当量、6.18mmol)、ジメチルスルフェート(468mg、354μL、3.0当量、3.71mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)を投入した。反応混合物を50℃で2時間加熱し、その時点で、混合物を室温に冷却し、水と酢酸エチルとの間で分配した。有機物を分離し、MgSOで脱水し、濃縮乾固した。10g SNAP ULTRA(登録商標)シリカゲルカラム(ヘキサン:EA、9:1)を使用して粗製油状物を精製して、2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-メトキシベンゾエート(301mg、54.7%)を油状物として得た。LRMS(M+Na)(467、469)。
【0102】
k.トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(1-(3-ブロモ-2-メトキシ-5-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)-2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート
【化39】
【0103】
丸底フラスコに、2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-メトキシベンゾエート(300mg、1当量、674μmol)、NBS(180mg、1.5当量、1.01mmol)、AIBN(11.1mg、0.1当量、67.4μmol)および1,2-ジクロロエタン(20mL)を投入し、反応混合物を1.0時間加熱還流した。次いで、反応混合物を濃縮乾固し、得られた油状固体をエーテルと混合し、不溶物をろ別した。ろ液を濃縮して、2-(トリメチルシリル)エチル3-ブロモ-5-(1-ブロモ-2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-4-メトキシベンゾエートおよび出発材料の混合物である粗製油状物を得た。この材料を、トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(347mg、1当量、674μmol)、アセトニトリル(20mL)および炭酸カリウム(372mg、4.0当量、2.69mmol)と混合した。次いで、混合物を50℃で16時間加熱した。反応混合物をろ過して、過剰の炭酸カリウムを除去し、ろ液からのアセトニトリルの蒸発によって得られた粗生成物を、塩化メチレンに溶解し、ジクロロメタンおよびMeOHの9:1溶液を使用してシリカゲルのベッドでろ過した。溶液を濃縮して、所望の生成物トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(1-(3-ブロモ-2-メトキシ-5-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)-2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(445mg、69.0%)を粗製固体として得た。LRMS(M+H)、(957、959)、(M+Na)、(979、981)。
【0104】
l.トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-(tert-ブトキシ)-1-(2-メトキシ-3-(トリブチルスタンニル)-5-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート
【化40】
【0105】
丸底フラスコに、トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(1-(3-ブロモ-2-メトキシ-5-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)-2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(444mg、1当量、463μmol)、1,4-ジオキサン(20mL)および1,1,1,2,2,2-ヘキサブチルジスタンナン(1.34g、5.0当量、2.32mmol)を投入し、溶液を100℃で15分間撹拌した。次いで、反応混合物をビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(65.1mg、0.2当量、92.7μmol)と混合し、反応を合計で約6.0時間進行させた。反応混合物を氷上に注ぎ、EtOAcと水との間に分配した。セライトを通して黒色混合物をろ過し、ろ過ケーキを追加のEtOAcで洗浄した。有機物を分離し、MgSOで脱水し、続いて濃縮した。シリカゲルのパッドを通して粗製油状物をろ過し、(ヘキサン:EtOAc(5:1))で溶出して、トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-(tert-ブトキシ)-1-(2-メトキシ-3-(トリブチルスタンニル)-5-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(243mg、44.9%)をヘキサブチル二スズが夾雑した粗製油状物として得た。LRMS(M+Na)(1191、1189、1192、1187、1188)。
【0106】
m.トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-(tert-ブトキシ)-1-(5-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)カルボニル)-2-メトキシ-3-(トリブチルスタンニル)フェニル)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート
【化41】
【0107】
オーブン乾燥した丸底フラスコに、トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-(tert-ブトキシ)-1-(2-メトキシ-3-(トリブチルスタンニル)-5-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(200mg、1当量、171μmol)、無水テトラヒドロフラン(10mL)およびTBAF(179mg、0.68mL、4.0当量、685μmol)を添加した。反応物を室温で72時間撹拌し、TLCによってモニタリングした。72時間後、反応混合物を濃縮乾固した。粗製混合物を、無水ジクロロメタン(20mL)に再溶解し、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(98.5mg、5.0当量、856μmol)、DMAP(20.9mg、1当量、171μmol)およびEDC(328mg、10当量、1.71mmol)と混合した。得られた均質溶液を室温で64時間撹拌し、濃縮乾固した。得られた油状物を、酢酸エチルと水との間で分配した。水を分離し、廃棄し、有機物を追加の飽和NaClで洗浄した。有機物を無水NaSOで乾燥し、濃縮乾固した。粗製泡状固体を、フラッシュクロマトグラフィー(9:1 CHCl:MeOH)を使用してクロマトグラフィーにかけた。次いで、得られた画分を、分取TLCを使用して再度クロマトグラフィーにかけた。生成物を含有するバンドを単離し、9:1 CHCl:MeOH混合物と混合し、ろ過して、シリカゲルを除去した。真空中で溶媒を除去して、トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-(tert-ブトキシ)-1-(5-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)カルボニル)-2-メトキシ-3-(トリブチルスタンニル)フェニル)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(18mg、8.1%)を半固体として得た。LRMS(M+Na)、(1188、1186、1189、1187、1184)。
【0108】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。すべての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的かつ個々に、参照により組み込まれると示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。上述の発明は、理解の明確さを目的として、例示および実施例によってある程度詳細に記載されたものであるが、実施形態の範囲内で、ある種の変更および修正を行うことができることは明らかである。
【国際調査報告】