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特表2023-501590CD70を標的化する遺伝子操作されたT細胞を使用する造血細胞悪性腫瘍のための療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】CD70を標的化する遺伝子操作されたT細胞を使用する造血細胞悪性腫瘍のための療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230111BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230111BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230111BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230111BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61P7/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K31/675
A61K31/7076
C12N5/10 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527744
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2020060718
(87)【国際公開番号】W WO2021095009
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/934,945
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/034,510
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アレクサンダー テレット
(72)【発明者】
【氏名】マリー-リー デケアン
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ビル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086EA18
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の態様は、CD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の集団を含む組成物、及びT細胞及びB細胞悪性腫瘍の治療のためにそれらを使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血細胞悪性腫瘍を治療するための方法であって、
(i)造血細胞悪性腫瘍を有するヒト患者を第1のリンパ球枯渇治療にかけること;
(ii)工程(i)の後に前記ヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量を投与することを含み、遺伝子操作されたT細胞の前記集団が、CD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、及び破壊されたCD70遺伝子を発現するT細胞を含み、且つ前記CARをコードするヌクレオチド配列が、前記破壊されたTRAC遺伝子に挿入される方法。
【請求項2】
工程(i)における前記第1のリンパ球枯渇治療が、前記ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)の前に、前記ヒト患者が、以下の特徴:
(a)パフォーマンス・ステータスのECOG>1への変化、
(b)臨床状態の著しい悪化、
(c)92%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、
(d)制御されない心不整脈、
(e)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、
(f)活動性感染症、及び
(g)任意の急性神経毒性
の1つ以上を示さない、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)が、工程(ii)の約2~7日前に実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞、任意選択により、約3×10~約9×10個のCAR+細胞である前記第1の用量で前記ヒト患者の静脈内に投与することによって実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)の前及び工程(i)の後に、前記ヒト患者が、以下の特徴:
(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化、
(b)活動性の制御されない感染症、
(c)臨床状態の著しい悪化、及び
(d)任意の急性神経毒性
の1つ以上を示さない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(iii)工程(ii)の後の急性毒性の発症について前記ヒト患者をモニターすることをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
急性毒性が、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、腫瘍溶解症候群、GvHD、オンターゲット・オフ腫瘍毒性、及び/又は制御されないT細胞増殖を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(iv)前記ヒト患者を第2のリンパ球枯渇治療にかけること、及び(v)工程(ii)の後に、前記ヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の前記集団の第2の用量を投与することをさらに含み、任意選択により、前記第2の用量が、前記第1の用量の約8週~約2年後に投与され、且つ任意選択により、前記ヒト患者が、工程(ii)の後に、以下:
(a)用量規制毒性(DLT)、
(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、
(c)グレード>1のGvHD、
(d)グレード≧3の神経毒性
(e)活動性感染症、
(f)血行動態的に不安定、及び
(g)臓器不全
の1つ以上を示さない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iv)における前記第2のリンパ球枯渇治療が、前記ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(v)が、工程(iv)の2~7日後に実施される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(v)が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞、任意選択により、約3×10~約9×10個のCAR+細胞である前記第2の用量で前記ヒト患者の静脈内に投与することによって実施される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法がさらに、(vi)前記ヒト患者を第3のリンパ球枯渇治療にかけること、及び(vii)前記ヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の前記集団の第3の用量を投与することを含み、任意選択により、前記ヒト患者が、3ヶ月で遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1、第2、及び第3の用量を受容し、且つ任意選択により、前記ヒト患者が、工程(v)の後に以下:
(a)用量規制毒性(DLT)、
(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、
(c)グレード>1のGvHD、
(d)グレード≧3の神経毒性
(e)活動性感染症、
(f)血行動態的に不安定、及び
(g)臓器不全
の1つ以上を示さない、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(vi)における前記第3のリンパ球枯渇治療が、前記ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(vii)が、工程(vi)の2~7日後に実施される、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(vii)が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞、任意選択により、約3×10~約9×10個のCAR+細胞である前記第3の用量で前記ヒト患者の静脈内に投与することによって実施される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒト患者が、安定な疾患又は疾患進行を示す、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量、前記第2の用量、及び/又は前記第3の用量が、1×10個のCAR細胞、3×10個のCAR細胞、1×10個のCAR細胞、3×10個のCAR細胞、又は1×10個のCAR細胞であり、任意選択により、遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量、前記第2の用量、及び/又は前記第3の用量が、1.5×10個のCAR細胞、4.5×10個のCAR細胞、6×10個のCAR細胞、7.5×10個のCAR細胞、又は9×10個のCAR細胞である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第2及び/又は前記第3の用量と同じである、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第2及び/又は前記第3の用量より少ない、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒト患者が、以前に抗癌療法を受けたことがある、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト患者が、再発性又は難治性造血細胞悪性腫瘍を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト患者が、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、及びT細胞白血病からなる群から任意選択により選択されるT細胞悪性腫瘍を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記CTCLが、セザリー症候群(SS)又は菌状息肉症(MF)であり、任意選択により、前記ヒト患者が、ステージIIb以上のMF、任意選択により転化した大細胞リンパ腫を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記PTCLが、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、成人T細胞白血病又はリンパ腫(ATLL)、又はPTCL非特定型(PTCL-NOS)である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト患者が、PTCL、ATLL、又はAITLを有し、且つ第一選択の全身療法が無効であった、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト患者が、ALCLを有し、且つブレウツキシマブベドチンを含む組み合わせ療法が無効であった、請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト患者が、ALKALCLを有し、且つ一方がブレンツキシマブベドチンを含む前の2つの選択療法が無効であった、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒト患者が、ALKALCLを有し、且つ前の1つの選択療法が無効であった、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト患者が、MF又はSSを有し、且つ前の全身療法又は前のモガムリズマブ療法が無効であった、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト患者が、任意選択によりびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)又はマントル細胞リンパ腫(MCL)であるB細胞悪性腫瘍を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト患者が、DLBCLを有し、且つ前の抗CD19 CAR-T細胞療法が無効であった、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト患者が、任意選択により急性骨髄性白血病(AML)である骨髄細胞悪性腫瘍を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト患者が、遺伝子改変T細胞の前記集団の前記第1の用量の前に少なくとも3ヶ月間モガムリズマブ治療を受けていない、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト患者が、CD70+腫瘍細胞を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者が、前記ヒト患者から得られる生体試料中に少なくとも10%のCD70腫瘍細胞を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記生体試料が、腫瘍組織試料であり、CD70+腫瘍細胞のレベルが、免疫組織化学(IHC)によって測定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生体試料が、血液試料又は骨髄試料であり、CD70+腫瘍細胞のレベルが、フローサイトメトリーによって決定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法がさらに、工程(i)の前に、任意選択によりT細胞悪性腫瘍、B細胞悪性腫瘍、又は骨髄細胞悪性腫瘍である造血細胞悪性腫瘍に関与するCD70+腫瘍細胞を有するヒト患者を同定することを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト患者が、抗サイトカイン療法にかけられる、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト患者が、以下の特徴:
(a)十分な臓器機能、
(b)以前に幹細胞移植(SCT)がないこと、
(c)以前に抗CD70薬剤又は養子性T細胞若しくはNK細胞療法がないこと、
(d)リンパ球枯渇療法に対して既知の禁忌がないこと、
(e)症候性であるか又は症候性であった現在又は過去の悪性貯留液を伴うT細胞又はB細胞リンパ腫がないこと、
(f)血球貪食性リンパ組織球症(HLH)がないこと、
(g)中枢神経系悪性腫瘍又は障害がないこと、
(h)不安定狭心症、不整脈、及び/又は心筋梗塞がないこと、
(i)糖尿病がないこと、
(j)制御されない感染症がないこと、
(k)免疫抑制性の療法を必要とする免疫不全障害又は自己免疫障害がないこと、並びに
(l)固形臓器移植がないこと
の1つ以上を有する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ヒト患者が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団のそれぞれの投与の後に毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされる、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト患者が、毒性の発症が観察される場合、毒性管理にかけられる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒト患者が、成人である、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
CD70に結合する前記CARが、細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞質内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞外ドメインが、CD70に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記scFvが、配列番号49を含む重鎖可変ドメイン(V)及び配列番号50を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記scFvが、配列番号48を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記CARが、配列番号46を含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記破壊されたTRAC遺伝子が、配列番号8又は9のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記破壊されたTRAC遺伝子が、配列番号8又は9の前記スペーサー配列によって標的化される領域又はその一部の欠失を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記破壊されたβ2M遺伝子が、配列番号12又は13のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記破壊されたCD70遺伝子が、配列番号4又は5のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/934,945号、及び2020年6月4日に出願された米国仮特許出願第63/034,510号に対する優先権の利益を主張する。先行出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、遺伝子改変T細胞を使用して、癌細胞をより特異的且つ効率的に標的化して死滅させる。T細胞が血液から回収された後、この細胞は、その表面上にCARを含むように操作される。CARは、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用してT細胞に導入され得る。これらの同種異系CAR T細胞が患者に注射されるとき、受容体は、T細胞が癌細胞を死滅させることを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、本明細書で開示されるCTX130細胞などの抗CD70CAR+T細胞が、皮下T細胞リンパ腫異種移植モデルにおいて長期間の腫瘍消失をもたらしたという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づく。例えば、本明細書に記載される抗CD70 CAR+T細胞(例えば、CTX130細胞)は、投与後の少なくとも90日間完全な腫瘍消失をもたらした。腫瘍量の著しい減少はまた、追加の皮下T細胞リンパ腫異種移植モデルにおいても観察された。さらに、CTX130細胞の分布、増殖、及び持続は、CAR-T細胞を受容するヒト対象において観察された。優れた治療有効性はまた、CTX130細胞治療を受けたヒトリンパ腫患者においても観察された。
【0004】
したがって、本開示は、いくつかの態様では、造血細胞悪性腫瘍(例えば、T細胞若しくはB細胞悪性腫瘍、又は骨髄細胞悪性腫瘍)を治療するための方法であって、(i)造血細胞悪性腫瘍を有するヒト患者(例えば、ヒト成人患者)を、第1のリンパ球枯渇治療にかけること;及び(ii)工程(i)の後にヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量を投与することを含む方法を提供する。遺伝子操作されたT細胞の集団は、CD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、及び破壊されたCD70遺伝子を発現するT細胞を含み、且つCARをコードするヌクレオチド配列は、破壊されたTRAC遺伝子に挿入される。場合により、遺伝子操作されたT細胞の集団は、本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞である。いくつかの実施形態では、工程(i)は、工程(ii)の約2~7日前に実施され得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、工程(i)における第1のリンパ球枯渇治療は、ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む。或いは又は加えて、工程(ii)は、遺伝子操作されたT細胞の集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞であり得る第1の用量でヒト患者の静脈内に投与することによって実施される。場合により、第1の用量は、約3×10~約9×10個のCAR+細胞の範囲であり得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、工程(i)前に、ヒト患者は、以下の特徴:(a)パフォーマンス・ステータスのECOG>1への変化、(b)臨床状態の著しい悪化、(c)92%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、(d)制御されない心不整脈、(e)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、(f)活動性感染症、及び(g)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)の1つ以上を示さない。
【0007】
いくつかの実施形態では、工程(ii)の前及び工程(i)の後に、ヒト患者は、以下の特徴:(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化;(b)活動性の制御されない感染症、(c)臨床状態の著しい悪化、及び(d)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)の1つ以上を示さない。
【0008】
本明細書で開示される方法のいずれかはさらに、工程(ii)の後に急性毒性の発症に関してヒト患者をモニターすることを含む。例示的な急性毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、腫瘍溶解症候群、GvHD、オンターゲット・オフ腫瘍毒性、制御されないT細胞増殖、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0009】
場合により、本明細書で開示される方法はさらに、ヒト患者を第2のリンパ球枯渇治療にかけること、及び工程(ii)の後にヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第2の用量を投与することを含み得る。場合により、第2の用量は、第1の用量の約8週~約2年後にヒト患者に投与される。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の第2の用量に適格なヒト患者は、工程(ii)の後に以下の1つ以上を示さない:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)グレード>1のGvHD、(c)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(d)グレード≧3の神経毒性;(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全。いくつかの例では、工程(iv)における第2のリンパ球枯渇治療は、ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の第2の用量は、第2のリンパ球枯渇治療の2~7日後にヒト患者に投与され得る。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第2の用量は、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞でヒト患者の静脈内に投与され得る。例えば、第2の用量は、約3×10~約9×10個のCAR+細胞の範囲であり得る。
【0010】
場合により、方法はさらに、ヒト患者を第3のリンパ球枯渇治療にかけること、及びヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第3の用量を投与することを含み得る。いくつかの例では、第3の用量は、第2の用量の約8週~約2年後にヒト患者に投与され得る。ヒト患者は、3ヶ月で遺伝子操作されたT細胞の集団の第1、第2、及び第3の用量を受容してもよく、遺伝子操作されたT細胞の第2の用量の後に以下の1つ以上を示さない:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全。いくつかの例では、第3のリンパ球枯渇治療は、ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間にわたって静脈内で同時投与することを含み得る。場合により、遺伝子操作されたT細胞の第3の用量は、第3のリンパ球枯渇治療の2~7日後にヒト患者に投与され得る。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第3の用量は、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞でヒト患者の静脈内に投与され得る。例えば、第3の用量は、約3×10~約9×10個のCAR+細胞の範囲であり得る。
【0011】
遺伝子操作されたT細胞の第2及び/又は第3の用量を受容するヒト患者のいずれかは、安定した疾患又は疾患進行を示し得る。
【0012】
いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、1×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約3×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約1×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約1.5×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約3×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約4.5×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約6×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約7.5×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約9×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約1×10個のCAR細胞である。
【0013】
場合により、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量は、遺伝子操作されたT細胞の集団の第2及び/又は第3の用量と同じである。他の場合、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量は、遺伝子操作されたT細胞の集団の第2及び/又は第3の用量より少ない。
【0014】
本明細書で開示される方法のいずれかにおいて、ヒト患者は、以前に抗癌療法を受けていてもよい。或いは又は加えて、ヒト患者は、再発性又は難治性造血細胞悪性腫瘍を有してもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、T細胞悪性腫瘍、例えば、再発性又は難治性T細胞悪性腫瘍を有する。いくつかの例では、ヒト患者は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を有する。そのようなヒト患者は、菌状息肉症(MF)、例えば、転化した大細胞リンパ腫を含むステージIIb以上のものを有し得る。或いは、ヒト患者は、セザリー症候群(SS)を有し得る。他の例では、ヒト患者は、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を有する。例としては、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫(AITL)、Alk陽性又はAlk陰性であり得る未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、くすぶり型サブタイプを除外し得る(非くすぶり型ATLL)成人T細胞白血病又はリンパ腫(ATLL);及び末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
いくつかの例では、ヒト患者は、PTCL、ATLL、又はAITLを有し、且つ第一選択の全身療法が無効であった。いくつかの例では、ヒト患者は、ALCLを有し、且つブレウツキシマブベドチンを含む組み合わせ療法が無効であった。いくつかの例では、ヒト患者は、ALKALCLを有し、且つ一方がブレンツキシマブベドチンを含む、前の2つの選択療法が無効であった。他の例では、ヒト患者は、ALKALCLを有し、且つ前の1つの選択療法が無効であった。さらに他の例では、ヒト患者は、MF又はSSを有し、且つ前の全身療法又は前のモガムリズマブ療法が無効であった。
【0017】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、B細胞悪性腫瘍、例えば、再発性又は難治性B細胞悪性腫瘍を有し得る。いくつかの例では、ヒト患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する。そのようなヒト患者は、前の抗CD19 CAR-T細胞療法が無効であった可能性がある。他の例では、ヒト患者は、マントル細胞リンパ腫(MCL)を有する。
【0018】
さらに他の実施形態では、ヒト患者は、骨髄細胞悪性腫瘍、例えば、再発性又は難治性骨髄細胞悪性腫瘍を有し得る。いくつかの例では、ヒト患者は、急性骨髄性白血病(AML)を有する。
【0019】
本明細書で開示される方法によって治療されることになるヒト患者のいずれかは、遺伝子改変T細胞の集団の第1の用量の前に少なくとも3ヶ月間モガムリズマブ治療を受けていない可能性がある。
【0020】
本明細書で開示される方法のいずれかにおいて、ヒト患者は、CD70+腫瘍細胞を有し得る。例えば、ヒト患者は、ヒト患者から得られる生体試料中に少なくとも10%のCD70腫瘍細胞を有し得る。場合により、生体試料は、腫瘍組織試料であり、CD70+腫瘍細胞のレベルは、免疫組織化学(ICH)によって測定される。他の場合、生体試料は、血液試料又は骨髄試料であり、CD70+腫瘍細胞のレベルは、フローサイトメトリーによって決定される。本明細書で開示される方法のいずれかはさらに、工程(i)の前に、T細胞又はB細胞悪性腫瘍に関与するCD70+腫瘍細胞を有するヒト患者を同定することを含み得る。
【0021】
或いは又は加えて、本明細書で開示される方法によって治療されることになるヒト患者は、抗サイトカイン療法にかけられ得る。いくつかの例では、ヒト患者は、以下の特徴の1つ以上を有する:(a)十分な臓器機能、(b)以前に幹細胞移植(SCT)がないこと、(c)以前に抗CD70薬剤又は養子性T細胞若しくはNK細胞療法がないこと、(d)リンパ球枯渇療法に対して既知の禁忌がないこと、(e)症候性であるか又は症候性であった現在又は過去の悪性貯留液を伴うT細胞又はB細胞リンパ腫がないこと、(f)血球貪食性リンパ組織球症(HLH)がないこと、(g)中枢神経系悪性腫瘍又は障害がないこと、(h)不安定狭心症、不整脈、及び/又は心筋梗塞がないこと、(i)糖尿病がないこと、(j)制御されない感染症がないこと、(k)免疫抑制性の療法を必要とする免疫不全障害又は自己免疫障害がないこと、並びに(l)固形臓器移植がないこと。
【0022】
本明細書で開示される方法のいずれかにおいて、ヒト患者は、遺伝子操作されたT細胞の集団のそれぞれの投与の後に毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされ得る。毒性の発症が観察される場合、ヒト患者は、毒性管理にかけられ得る。
【0023】
遺伝子操作されたT細胞は、CD70に結合するCARを発現し得る。CARは、細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞質内シグナル伝達ドメインを含み得る。場合により、細胞外ドメインは、CD70に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である。いくつかの例では、scFvは、配列番号49を含む重鎖可変ドメイン(V)及び配列番号50を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む。いくつかの例では、scFvは、配列番号48を含む。いくつかの特定の例では、CARは、配列番号46を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成され得る破壊されたTRAC遺伝子を有する。いくつかの例では、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムは、配列番号8又は9のスペーサー配列を含むガイドRNAを含み得る。いくつかの例では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号8のスペーサーによって標的化される領域、又はその一部の欠失を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成され得る破壊されたβ2M遺伝子を有する。いくつかの例では、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムは、配列番号12又は13のスペーサー配列を含むガイドRNAを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成され得る破壊されたCD70遺伝子を有する。いくつかの例では、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムは、配列番号4又は5のスペーサー配列を含むガイドRNAを含み得る。
【0027】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が以下の説明に記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明並びに添付の特許請求の範囲からも明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CAR(すなわち、3X KO(CD70)、CD70 CAR)T細胞における効率的な多重遺伝子編集を示すグラフを含む。
図2】CD4+及びCD8+T細胞の正常な集団が、TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞集団の間で維持されることを示すグラフを含む。
図3】TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞における強い細胞増殖を示すグラフを含む。生存細胞の総数は、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)及び2X KO(TRAC-/β2M-)抗CD70 CAR T細胞において定量化された。3X KO細胞は、CD70 sgRNA T7又はT8のいずれかにより生成された。
図4A】様々な癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフを含む。図4A:9種の異なる癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフ。
図4B】癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフを含む。図4B:様々なエフェクター:標的比でCD70欠損慢性骨髄性白血病(K562)細胞に対する三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(3KO(CD70)、CD70、CAR+)を使用して細胞死滅活性を示すグラフ。
図4C】癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフを含む。図4C:様々なエフェクター:標的比でのCD70発現多発性骨髄腫(MM.1S)細胞に対する同じ三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(3KO(CD70)、CD70、CAR+)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4D】癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフを含む。図4D:様々なエフェクター:標的比でのCD70発現T細胞リンパ腫(HuT78)細胞に対する同じ三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(3KO(CD70)、CD70、CAR+)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4E】癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフを含む。図4E:様々なエフェクター:標的比での高CD70発現T細胞リンパ腫細胞(MJ)、低CD70発現T細胞リンパ腫細胞(HuT78)、及び非CD70発現陰性対照細胞(K562)に対する同じ三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(3KO(CD70)、CD70、CAR+)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4F】MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な型の急性骨髄性白血病細胞株におけるTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(例えば、CTX130)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4G】MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な型の急性骨髄性白血病細胞株におけるTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(例えば、CTX130)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4H】MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な型の急性骨髄性白血病細胞株におけるTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(例えば、CTX130)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4H】MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な型の急性骨髄性白血病細胞株におけるTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(例えば、CTX130)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4J】MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な型の急性骨髄性白血病細胞株におけるTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(例えば、CTX130)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図4K】MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な型の急性骨髄性白血病細胞株におけるTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(例えば、CTX130)の細胞死滅活性を示すグラフ。
図5A】抗CD70 CAR+T細胞、例えば、CTX130細胞の抗腫瘍活性を示すグラフを含む。図5A:TRAC-/B2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞、例えば、CTX130細胞に暴露されたヒトT細胞リンパ腫異種移植モデル(例えば、HuT78腫瘍細胞)における腫瘍体積の減少を示すグラフ。
図5B】抗CD70 CAR+T細胞、例えば、CTX130細胞の抗腫瘍活性を示すグラフを含む。図5B:TRAC-/B2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞、例えば、CTX130細胞に暴露されたヒトT細胞リンパ腫異種移植モデル(例えば、Hh腫瘍細胞)における腫瘍体積の減少を示すグラフ。
図6】再発性又は難治性T細胞又はB細胞悪性腫瘍を有する成人対象へのCTX130細胞投与を評価する例示的な臨床試験デザインを示す模式図である。DLT:用量規制毒性;M:月;max:最大;min:最小。DLT評価期間は、CTX130注入後の最初の28日である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が以下の説明に記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明並びに添付の特許請求の範囲からも明白になるであろう。
【0030】
CD70は、II型膜タンパク質及び腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーメンバーCD27のためのリガンドであり、健康な組織発現分布は、ヒト及びマウスの両方において活性化リンパ球並びに樹状細胞及び胸腺上皮細胞のサブセットに限定される。
【0031】
その堅固に制御された正常組織発現とは対照的に、CD70は一般的に、末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、菌状息肉症(MF)を含むセザリー症候群(SS)、非くすぶり型急性成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫(AITL:PTCL-AITLとしても知られる)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含む複数のT細胞及びB細胞悪性腫瘍において高いレベルで発現される。CD70はまた、骨髄悪性腫瘍などの他の造血性悪性腫瘍においても発現される。
【0032】
T細胞及びB細胞悪性腫瘍などの造血細胞悪性腫瘍は、化学療法及び/又はチェックポイント阻害剤(CPI)などの従来の治療を使用して治療され得るが、患者は、治療後に十分に又は全く応答しないか、又は再発する場合がある。そのような患者は、延命効果が確立している治療選択肢がなく、新しい治療法の選択肢を必要としている。
【0033】
驚くべきことに、CTX130細胞などの本明細書で開示される抗CD70 CAR+T細胞は、皮下T細胞リンパ腫異種移植モデルにおいて腫瘍量を順調に減少させ、長期間(例えば、治療後90日)腫瘍増殖を消失させた長期のインビボ有効性を示した。
【0034】
したがって、本開示は、いくつかの態様では、T細胞、B細胞、及び骨髄細胞悪性腫瘍を治療するための抗CD70 CAR+T細胞(例えば、CTX130細胞)の治療的使用を提供する。抗CD70 CAR T細胞、そのようなものを生成する方法(例えば、CRISPR手法を介して)、並びに本明細書で開示される抗CD70 CAR+T細胞を作製するための構成要素及びプロセス(例えば、遺伝子編集のためのCRISPR手法及びそこで使用される構成要素)もまた、本開示の範囲内である。
【0035】
I.抗CD70同種異系CAR T細胞
本明細書では、T細胞悪性腫瘍、B細胞悪性腫瘍、又は骨髄細胞悪性腫瘍などの造血細胞悪性腫瘍を治療する際の使用のための抗CD70 CAR T細胞(例えば、CTX130細胞)が開示される。いくつかの実施形態では、抗CD70 CAR T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたB2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子、又はそれらの組み合わせを有する同種異系T細胞である。特定の例では、抗CD70 CAR T細胞は、抗CD70 CARを発現し、内在性TRAC、B2M、及びCD70遺伝子が破壊されている。当技術分野で知られる任意の好適な遺伝子編集方法、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はRNA誘導型CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)を使用するヌクレアーゼ依存性標的化編集が、本明細書で開示される抗CD70 CAR T細胞を作製するために使用され得る。
【0036】
抗CD70 CAR T細胞の例示的な遺伝子改変は、T細胞受容体アルファ定常(TRAC)、β2M、CD70、又はそれらの組み合わせの標的化された破壊を含む。TRAC座位を破壊することで、T細胞受容体(TCR)の発現の減少がもたらされ、移植片対宿主病(GvHD)の可能性を低減させることが意図される一方、β2M座位を破壊することで、主要組織適合複合体タイプI(MHC I)タンパク質の発現の減少がもたらされ、宿主拒絶反応の可能性を低減させることによって持続性を向上させることが意図される。CD70の破壊は、CD70の発現の減少をもたらし、これはCD70 CARの挿入の前に起こり得る細胞と細胞の兄弟殺しを妨げる。抗CD70 CARを加えることにより、改変T細胞がCD70発現腫瘍細胞に誘導される。
【0037】
抗CD70 CARは、CD70に特異的な抗CD70単鎖可変フラグメント(scFv)に続いて、細胞内共シグナル伝達ドメイン(例えば、4-1BB共刺激ドメイン)及びCD3ζシグナル伝達ドメインに融合されるヒンジドメイン及び膜貫通ドメイン(例えば、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン)を含み得る。
【0038】
(i)キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)とは、望ましくない細胞、例えば癌細胞などの疾患細胞によって発現される抗原を認識し、結合するように操作されている人工の免疫細胞受容体を指す。CARポリペプチドを発現するT細胞は、CAR T細胞と呼ばれる。CARは、MHCに制限されない様式において、選択された標的に対するT細胞の特異性及び反応性を再誘導する能力を有する。MHCに制限されない抗原認識は、抗原プロセシングに非依存的な抗原を認識する能力をCAR-T細胞に与え、それにより腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする。さらに、CARは、T細胞に発現する場合、有利には、内在性のT細胞受容体(TCR)のアルファ鎖及びベータ鎖と二量体化しない。
【0039】
様々な世代のCARが存在し、その各々が異なる構成要素を含む。第一世代のCARは、ヒンジ及び膜貫通ドメインを介して抗体に由来するscFvをT細胞受容体のCD3ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。第二世代のCARは、共刺激シグナルを供給するための追加の共刺激ドメイン、例えばCD28、4-1BB(41BB)又はICOSを組み込んでいる。第三世代のCARは、TCRのCD3ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメイン(例えば、CD27、CD28、4-1BB、ICOS又はOX40の組み合わせ)を含有する。(Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017-4023;Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151-155)。様々な世代のCARコンストラクトは、いずれも本開示の範囲内である。
【0040】
一般に、CARは、標的抗原(例えば、抗体の単鎖フラグメント(scFv)又は他の抗体フラグメント)を認識する細胞外ドメインを含む融合ポリペプチドであり、細胞内ドメインは、T細胞受容体(TCR)複合体(例えば、CD3ζ)のシグナル伝達ドメインを含み、これは、ほとんどの場合に共刺激ドメインである。(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505)。CARコンストラクトはさらに、細胞外ドメインと細胞内ドメインとの間にヒンジ及び膜貫通ドメインを含む場合があり、表面に発現するためにN末端にシグナルペプチドを含む場合がある。シグナルペプチドの例としては、MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号52)及びMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号53)が挙げられる。他のシグナルペプチドが使用されてもよい。
【0041】
(a)抗原結合細胞外ドメイン
抗原結合細胞外ドメインとは、CARが細胞表面に発現すると、細胞外液にさらされるCARポリペプチドの領域のことである。場合により、細胞表面発現を促進するために、シグナルペプチドがN末端に位置し得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFvであり、抗体重鎖可変領域(V)と抗体軽鎖可変領域(V)とを(いずれかの方向に)含み得る)であり得る。場合により、Vフラグメント及びVフラグメントは、ペプチドリンカーを介して連結され得る。リンカーは、いくつかの実施形態では、可動性のために一続きのグリシン及びセリン並びに可溶性を付与するために一続きのグルタミン酸塩及びリシンを含んだ親水性残基を含む。scFvフラグメントは、親抗体の抗原結合特異性を保持しており、そこからscFvフラグメントが誘導される。いくつかの実施形態では、scFvは、ヒト化Vドメイン及び/又はVドメインを含み得る。他の実施形態では、scFvのVドメイン及び/又はVドメインは、完全ヒト型である。
【0042】
抗原結合細胞外ドメインは、目的の標的抗原、例えば、腫瘍抗原などの病的抗原に特異的であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、通常、全く発現されない場合があるか、又は低レベルでのみ発現される場合がある非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞中において高レベルで発現されるタンパク質などの免疫原性分子を指す「腫瘍関連抗原」である。いくつかの実施形態では、腫瘍を内部に持つ宿主の免疫系によって認識される腫瘍関連構造は、腫瘍関連抗原と称される。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、ほとんどの種類の腫瘍によって広範に発現される場合、普遍的な腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、分化抗原、変異性抗原、過剰発現細胞抗原又はウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞に固有のタンパク質などの免疫原性分子を指す「腫瘍特異抗原」又は「TSA」である。腫瘍特異抗原は、腫瘍細胞中、例えば特定の種類の癌細胞中のみで発現される。
【0043】
いくつかの例では、本明細書で開示されるCARコンストラクトは、CD70に結合することができるscFv細胞外ドメインを含む。抗CD70 CARの例は、下の実施例で提供される。
【0044】
(b)膜貫通ドメイン
本明細書に開示されるCARポリペプチドは、膜にまたがる疎水性αヘリックスであり得る膜貫通ドメインを含有し得る。本明細書で使用する場合、「膜貫通ドメイン」とは、好ましくは、真核細胞膜である細胞膜内で熱力学的に安定な任意のタンパク質構造体を指す。膜貫通ドメインは、それ自体を含有するCARの安定性をもたらし得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARの膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインであり得る。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインであり得る。さらに他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8及びCD28膜貫通ドメインのキメラである。他の膜貫通ドメインが、本明細書に提供されるとおりに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、FVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIAS QPLSLRPEACRPAAGG AVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNR(配列番号54)又はIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLY(配列番号55)の配列を含有するCD8a膜貫通ドメインである。他の膜貫通ドメインを使用し得る。
【0046】
(c)ヒンジドメイン
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間に位置し得るか、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置し得る。ヒンジドメインは、ポリペプチド鎖において膜貫通ドメインを細胞外ドメイン及び/又は細胞質ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドであり得る。ヒンジドメインは、CAR若しくはそのドメインに可動性をもたらすか、又はCAR若しくはそのドメインの立体障害を防ぐように機能し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、最大で300個のアミノ酸(例えば、10~100個のアミノ酸又は5~20個のアミノ酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、CARの他の領域に1つ以上のヒンジドメインが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインであり得る。他のヒンジドメインが使用されてもよい。
【0048】
(d)細胞内シグナル伝達ドメイン
CARコンストラクトのいずれも、受容体の機能的末端である1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ及び任意選択的に1つ以上の共刺激ドメイン)を含む。抗原認識後、受容体がクラスター化し、シグナルが細胞に伝達される。
【0049】
CD3ζは、T細胞受容体複合体の細胞質シグナル伝達ドメインである。CD3ζは、T細胞が同種抗原と会合した後にT細胞に活性化シグナルを伝達する3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。多くの場合、CD3ζは、初代T細胞の活性化シグナルを提供するが、十分に適格な活性化シグナルではなく、共刺激シグナル伝達を必要とする。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARポリペプチドはさらに、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。例えば、CD3ζによって媒介される一次シグナル伝達とともにCD28及び/又は4-1BBの共刺激ドメインを使用して、十分な増殖/生存シグナルを伝達し得る。いくつかの例では、本明細書に開示されるCARは、CD28共刺激分子を含む。他の例では、本明細書に開示されるCARは、4-1BB共刺激分子を含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン及びCD28共刺激ドメインを含む。他の実施形態では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン及び4-1BB共刺激ドメインを含む。さらに他の実施形態では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD28共刺激ドメイン及び4-1BB共刺激ドメインを含む。
【0051】
本明細書に記載される方法は、CARを発現する遺伝子改変T細胞、例えば当技術分野において知られるか又は本明細書で開示される遺伝子改変T細胞を生成するために使用することができる2つ以上の好適なCARを包含すると理解されたい。実施例は、国際公開第2019/097305A2号パンフレット及び国際公開第2019/215500号パンフレットにおいて見出すことができ、以前の出願の各々の関連する開示は、本明細書で参照される目的及び主題に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
例えば、CARは、CD70(「CD70 CAR」又は「抗CD70 CAR」としても知られる)に結合する。CD70に結合する例示的なCARのアミノ酸配列は、配列番号46において提供される。下の表1における例示的な抗CD70 CARコンストラクトにおける構成要素のアミノ酸配列及びコードヌクレオチド配列も参照されたい。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
(ii)TRAC、B2M、及び/又はCD70遺伝子のノックアウト
本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞はさらに、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたB2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子、又はそれらの組み合わせを有し得る。TRAC座位を破壊することで、T細胞受容体(TCR)の発現の減少がもたらされ、移植片対宿主病(GvHD)の可能性を低減させることが意図される一方、β2M座位を破壊することで、主要組織適合複合体タイプI(MHC I)タンパク質の発現の減少がもたらされ、宿主拒絶反応の可能性を低減させることによって持続性を向上させることが意図される。CD70遺伝子の破壊は、抗CD70 CAR-T細胞を生成する際の兄弟殺しの影響を最小化することになる。さらに、CD70遺伝子の破壊は、結果として生じる操作されたT細胞の活力及び活性を予想外に増大させた。抗CD70 CARを加えることにより、改変T細胞がCD70発現腫瘍細胞に誘導される。
【0061】
本明細書で使用する場合、「破壊された遺伝子」という用語は、コードされている遺伝子産物の活性を実質的に減少させるか又は完全に排除するように、野生型の対応物に対して1つ以上の変異(例えば、挿入、欠失又はヌクレオチド置換など)を含む遺伝子を意味する。非コード領域、例えば、プロモーター領域、転写若しくは翻訳を調節する調節領域;又はイントロン領域に1つ以上の変異が位置し得る。或いは、コード領域に(例えば、エクソンに)1つ以上の変異が位置し得る。場合により、破壊された遺伝子は、コード化タンパク質を発現しないか、又は大幅に減少したレベルのコード化タンパク質を発現する。他の場合において、破壊された遺伝子は、機能的ではないか又は実質的に低減された活性を有する変異形態のコードされたタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、この遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体による、例えばフローサイトメトリーによる)のタンパク質を(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と称され得る。例えば、β2M遺伝子編集を有する細胞は、β2Mタンパク質が、β2Mタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出できない場合、β2Mノックアウト細胞とみなされ得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、野生型の対応物に対して変異したフラグメントを含むものと説明され得る。変異したフラグメントは、欠失、ヌクレオチド置換、付加又はこれらの組み合わせを含み得る。他の実施形態では、破壊された遺伝子は、野生型の対応物に存在するフラグメントに欠失があるものと説明することができる。場合により、欠失させたフラグメントの5’末端が、本明細書で開示されるような設計されたガイドRNA(オンターゲット配列として知られる)によって標的化される遺伝子領域内に位置してもよく、欠失させたフラグメントの3’末端が標的領域の範囲を超えてもよい。或いは、欠失させたフラグメントの3’末端が標的領域内に位置してもよく、欠失させたフラグメントの5’末端が標的領域の範囲を超えてもよい。
【0063】
場合により、本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞の破壊されたTRAC遺伝子は、欠失、例えば、TRAC遺伝子座のエクソン1内のフラグメントの欠失を含み得る。いくつかの例では、破壊されたTRAC遺伝子は、TRACのガイドRNA、TA-1の標的部位である、配列番号17のヌクレオチド配列を含むフラグメントの欠失を含む。下記の配列表を参照されたい。いくつかの例では、配列番号17のフラグメントは、抗CD70 CARをコードする核酸によって置換され得る。そのような破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号44のヌクレオチド配列を含み得る。
【0064】
本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞の破壊されたB2Mは、CRISPR/Cas技術を使用して作製され得る。いくつかの例では、下記の配列表に示されるB2MのgRNAを使用することができる。破壊されたB2M遺伝子は、配列番号31~36のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得る。下記の表4を参照されたい。
【0065】
或いは又は加えて、本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞の破壊されたCD70遺伝子は、CRISPR/Cas技術を使用して作製され得る。いくつかの例では、下記の配列表で提供されるCD70 gRNAを使用することができる。破壊されたCD70遺伝子は、配列番号37~42のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得る。下記の表5を参照されたい。
【0066】
(iii)例示的な抗CD70 CAR T細胞
いくつかの例では、抗CD70 CAR T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、B2M遺伝子、及びCD70遺伝子を有するCD70指向性T細胞であるCTX130細胞である。CTX130細胞は、CRISPR/Cas9(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質9)遺伝子編集構成要素(sgRNA及びCas9ヌクレアーゼ)を使用するエクスビボでの遺伝子改変を介して生成され得る。
【0067】
また、本明細書で開示される抗CD70 CAR並びに破壊されたTRAC、B2M、及びCD70遺伝子を発現する遺伝子操作された細胞(例えば、CRSPR-Cas9に媒介されて遺伝子編集された)を含む抗CD70 CAR T細胞の集団(例えば、CTX130細胞の集団)も本開示の範囲内であり;且つ抗CD70 CARをコードするヌクレオチド配列は、TRAC遺伝子座に挿入される。
【0068】
遺伝子破壊は、遺伝子編集(例えば、1つ以上のヌクレオチドを挿入するか又は欠失させるCRISPR/Cas遺伝子編集を使用する)を介した遺伝子改変を包含するものと理解されたい。本明細書で使用する場合、用語「破壊された遺伝子」は、コードされた遺伝子産物の活性を実質的に低減するか又は完全に消失させるために野生型対応物に対して1つ以上の変異(例えば、挿入、欠失、又はヌクレオチド置換など)を含有する遺伝子を指す。非コード領域、例えば、プロモーター領域、転写若しくは翻訳を調節する調節領域;又はイントロン領域に1つ以上の変異が位置し得る。或いは、コード領域に(例えば、エクソンに)1つ以上の変異が位置し得る。場合により、破壊された遺伝子は、コード化タンパク質を発現しないか、又は大幅に減少したレベルのコード化タンパク質を発現する。他の場合において、破壊された遺伝子は、機能的ではないか又は実質的に低減された活性を有する変異形態のコードされたタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、この遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体による、例えばフローサイトメトリーによる)のタンパク質を(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と称され得る。例えば、β2M遺伝子編集を有する細胞は、β2Mタンパク質が、β2Mタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出できない場合、β2Mノックアウト細胞とみなされ得る。
【0069】
特定の場合において、抗CD70 CAR+T細胞は、標的化された遺伝子を破壊するCRISPR技術、及びCARコンストラクトを送達するアデノ随伴ウイルス(AAV)形質導入を使用して生成されるCTX130細胞である。CRISPR-Cas9に媒介される遺伝子編集は、3つのガイドRNA(sgRNA)を含む:CD70遺伝子座を標的化するCD70-7 sgRNA(配列番号2)、TRAC遺伝子座を標的化するTA-1 sgRNA(配列番号6)、及びβ2M遺伝子座を標的化するB2M-1 sgRNA(配列番号10)。CTX130細胞の抗CD70 CARは、CD70に特異的な抗CD70単鎖抗体フラグメント(scFv)に続く4-1BBの細胞内共シグナル伝達ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインに融合されるCD8ヒンジ及び膜貫通ドメインで構成される。そのため、CTX130は、CRISPR/Cas9遺伝子編集構成要素(sgRNA及びCas9ヌクレアーゼ)を使用してエクスビボで遺伝子改変される同種異系のT細胞で構成されるCD70指向性T細胞免疫療法である。
【0070】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない可能性がある。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。
【0071】
或いは又は加えて、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない可能性がある。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのTRAC表面タンパク質を発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのTRAC表面タンパク質を発現しない。
【0072】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない可能性がある。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、90%~100%、又は95%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。
【0073】
いくつかの実施形態では、かなりの割合のCTX130細胞の集団は、2つ以上の遺伝子編集を含んでもよく、これにより2つ以上の遺伝子及び/又はタンパク質を発現しない一定の割合の細胞がもたらされる。
【0074】
例えば、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルの2つの表面タンパク質を発現しない可能性があり、例えば、検出可能なレベルのβ2M及びTRACタンパク質、β2M及びCD70タンパク質、又はTRAC及びCD70タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルの2つ表面タンパク質を発現しない。別の例では、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルの3つの標的表面タンパク質β2M、TRAC、及びCD70タンパク質の全てを発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M、TRAC、及びCD70表面タンパク質を発現しない。
【0075】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の集団は、本明細書に記載される編集であり得る2つ以上の遺伝子編集(例えば、2つ以上の遺伝子内における)を含み得る。例えば、CTX130細胞の集団は、ガイドRNA TA-1(表2、配列番号6~7も参照のこと)を使用するCRISPR/Cas技術を介して破壊されたTRAC遺伝子を含み得る。或いは又は加えて、CTX130細胞の集団は、B2M-1のガイドRNA(表2、配列番号10~11も参照のこと)を使用するCRISPR/Cas9技術を介して破壊されたβ2M遺伝子を含み得る。そのようなCTX130細胞は、β2M遺伝子内にインデルを含む場合があり、これらは表4に列挙されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む。例えば、CTX130細胞の集団は、ガイドRNA CD70-7(表2、配列番号2~3も参照のこと)を使用するCRISPR/Cas技術を介して破壊されたCD70遺伝子を含み得る。さらに、CTX130細胞の集団は、CD70遺伝子内にインデルを含む場合があり、これらは表5に列挙される1つ以上のヌクレオチド配列を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子内に欠失を含み得る。例えば、CTX130細胞は、TRAC遺伝子、又はその一部においてフラグメントAGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号17)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19個の連続した塩基対を含む配列番号17のフラグメントの欠失を含み得る。いくつかの実施形態では、CTX130細胞は、TRAC遺伝子内に配列番号17のフラグメントを含む欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号17の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号17を含む欠失を含む。
【0077】
さらに、CTX130細胞の集団は、本明細書で開示されるもの(例えば、配列番号46)などの抗CD70 CARを発現する細胞を含み得る。抗CD70 CARのコード配列は、例えば、ガイドRNA TA-1(表2、配列番号6~7も参照のこと)によって標的化される領域でTRAC遺伝子座に挿入され得る。そのような場合において、例示的な抗CD70 CARのアミノ酸配列は、配列番号46のアミノ酸配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の少なくとも30% 少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%は、抗CD70 CARを発現するCAR+細胞である。本明細書で参照される主題及び目的に対してその各々の関連する開示が参照により組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレット及び国際公開第2019/215500号パンフレットも参照されたい。
【0079】
特定の例において、本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞(例えば、CTX130細胞)は、≧30%のCAR+T細胞、≦0.4%のTCR+T細胞、≦30%のB2M+T細胞、及び≦2%のCD70+T細胞を有するT細胞の集団である。
【0080】
(v)医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作された抗CD70 CAR T細胞の集団のいずれか、例えば、CTX130細胞を含む医薬組成物、及び薬学的に許容される担体を提供する。そのような医薬組成物は、ヒト患者の癌治療に使用することができ、これも本明細書で開示される。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、適切な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に相当する、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を伴わない、対象の組織、臓器、及び/又は体液と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを指す。組成物としては、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩又は塩基付加塩を挙げることができる。例えば、Berge et al.,(1977)J Pharm Sci 66:1-19を参照されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はさらに、薬学的に許容される塩を含む。薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、酸付加塩が挙げられる(無機酸(例えば、塩酸又はリン酸)、又は酢酸、酒石酸、マンデル酸などといった有機酸を含むポリペプチドの遊離アミノ基から形成される)。いくつかの実施形態では、遊離カルボキシル基で形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄)又は有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される)。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、凍結保存溶液(例えば、CryoStor(登録商標)C55)中に懸濁させた、遺伝子操作された抗CD70 CAR-T細胞(例えば、CTX130細胞)の集団を含む。本開示に使用される凍結保存溶液は、アデノシン、ブドウ糖、デキストラン40、ラクトビオン酸、ショ糖、マンニトール、N-)2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)などの緩衝剤、1つ以上の塩(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウムなど)、1つ以上の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)又はこれらの組み合わせも含み得る。凍結保存溶液の構成成分は、滅菌水(注射品質)に溶解され得る。凍結保存溶液は、いずれも血清を実質的に含まない(常法では検出できない)ものであり得る。
【0084】
場合により、凍結保存溶液(例えば、血清を実質的に含まない)中に懸濁させた、CTX130細胞などの遺伝子操作された抗CD70 CAR-T細胞の集団を含む医薬組成物は、保存バイアルに入れられ得る。
【0085】
本明細書で開示されるとおりの凍結保存溶液中に任意選択により懸濁され得る、本明細書でさらに開示されとおりの遺伝子操作された抗CD70 CAR T細胞(例えば、CTX130細胞)の集団を含む、本明細書で開示される医薬組成物のいずれも、T細胞の生存及び生理活性に実質的に影響を及ぼさない環境において、例えば、細胞及び組織を保存するのに一般的に適用される条件下において、将来使用するために保存され得る。いくつかの例では、医薬組成物は、≦-135℃の液体窒素の気相中で保存され得る。細胞をそのような条件で一定期間保存した後、外観、細胞数、生存率、%CART細胞、%TCRT細胞、%B2MT細胞、及び%CD70T細胞に関する著しい変化は、観察されなかった。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、CTX130細胞などの本明細書で開示される抗CD70 CAR T細胞を含む、注入のための懸濁液であり得る。いくつかの例では、懸濁液は、≧30%のCAR+T細胞、≦0.4%のTCR+T細胞、≦30%のB2M+T細胞、及び≦2%のCD70+T細胞とともに約25~85×10細胞/ml(例えば、50×10細胞/ml)を含み得る。いくつかの例では、懸濁液は、約25×10個のCAR+細胞/mLを含み得る。特定の例では、医薬組成物は、それぞれCTX130細胞(例えば、生存細胞)などの約1.5×10個のCAR+T細胞を含むバイアル中に置かれ得る。他の例では、医薬組成物は、それぞれCTX130細胞(例えば、生存細胞)などの約3×10個のCAR+T細胞を含むバイアル中に置かれ得る。
【0087】
II.抗CD70 CAR T細胞の調製
当技術分野で知られる任意の好適な遺伝子編集方法、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はRNA誘導型CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)が、本明細書で開示される遺伝子操作された免疫細胞(例えば、CTX130細胞などのT細胞)を作製するために使用され得る。特定の例では、CTX130細胞などの遺伝子操作された免疫細胞は、アデノ随伴ウイルスベクター(AVV)をドナー鋳型として使用する相同組換えと組み合わせたCRISPR技術によって生成される。
【0088】
(i)遺伝子操作のためのCRISPR-Cas9に媒介される遺伝子編集システム
CRISPR-Cas9システムは、遺伝子編集のために使用されるRNA誘導型DNA標的化プラットフォームとして転用されている、原核生物に天然に存在する防御機構である。CRISPR-Cas9システムは、DNAヌクレアーゼであるCas9と、2つの非コードRNAであるcrisprRNA(crRNA)及びトランス活性化型RNA(tracrRNA)とに依拠するものであり、DNAを切断することを目的としている。CRISPRは、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピートの略称であり、例えば原核生物を感染又は攻撃したウイルスによって細胞に以前暴露された外来DNAと類似性を有するDNAのフラグメント(スペーサーDNA)を含有する細菌及び古細菌のゲノムに見られるDNA配列のファミリーである。例えば、同様のウイルスがその後の攻撃時に再導入すると、類似した外来DNAを検出及び破壊するために、これらのDNAのフラグメントが原核生物によって使用される。CRISPR遺伝子座の転写によってスペーサー配列を含むRNA分子の形成がもたらされるが、このRNA分子は、外来の外因性DNAを認識して切断することができるCas(CRISPR関連)タンパク質と結合し、標的となる。CRISPR/Casシステムの多数の種類及びクラスが記載されている(例えば、Koonin et al.,(2017)Curr Opin Microbiol 37:67-78を参照されたい)。
【0089】
crRNAは、典型的には、標的DNA内の20個のヌクレオチド(nt)の配列とのワトソン-クリック塩基対形成を介して、CRISPR-Cas9複合体の配列認識及び特異性を促進する。crRNA内の5’ 20ntの配列を変更することにより、CRISPR-Cas9複合体を特定の遺伝子座に標的化させることが可能になる。CRISPR-Cas9複合体は、標的配列がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる特定の短いDNAモチーフ(配列NGGを有する)の後にある場合、crRNAの最初の20ntと一致する配列を含むDNA配列のみに結合する。
【0090】
TracrRNAは、crRNAの3’末端とハイブリダイズしてRNA二重鎖構造を形成し、このRNA二重鎖構造にCas9エンドヌクレアーゼが結合して、触媒活性のあるCRISPR-Cas9複合体が形成され、次いでこのCRISPR-Cas9複合体によって標的DNAを切断することができる。
【0091】
CRISPR-Cas9複合体が標的部位でDNAに結合すると、Cas9酵素内の2つの独立したヌクレアーゼドメインがそれぞれPAM部位の上流でDNA鎖の一方を切断し、DNAの両鎖が塩基対で終端する(平滑末端)二本鎖切断(DSB)を残す。
【0092】
CRISPR-Cas9複合体が特定の標的部位でDNAに結合し、部位特異的なDSBが形成された後、次の重要な工程は、DSBの修復である。細胞は、DSBを修復するために、2つの主要なDNA修復経路、非相同末端連結(NHEJ)及び相同組み換え修復(HDR)を使用する。
【0093】
NHEJは、非分裂細胞を含む大部分の細胞型において高度に活性であるように見える頑健な修復機構である。NHEJは、誤りがちであり、多くの場合、DSBの部位において1~数百のヌクレオチド間で除去又は付加をもたらす可能性があるが、そのような修飾は、典型的には、<20ntである。得られた挿入及び欠失(インデル)は、遺伝子のコード領域又は非コード領域を破壊する可能性がある。或いは、HDRは、内因的又は外因的に提供される長い一続きの相同性ドナーDNAを使用して、高い忠実度でDSBを修復する。HDRは、分裂細胞においてのみ活性であり、大部分の細胞型において相対的に低い頻度で生じる。本開示の多くの実施形態では、NHEJが修復オペラントとして利用される。
【0094】
(a)Cas9
いくつかの実施形態では、Cas9(CRISPR関連タンパク質9)エンドヌクレアーゼは、本明細書に開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞を作製するためのCRISPR法において使用される。Cas9酵素は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するものであり得るが、他のCas9相同体も使用することができる。本明細書で提供されるとおり、野生型Cas9が使用され得るか、又はCas9の改変されたバージョン(例えば、Cas9の進化させたバージョン又はCas9オルソログ若しくは変異体)が使用され得ると理解されたい。いくつかの実施形態では、Cas9は、C末端及びN末端にSV40 large T抗原の核局在配列(NLS)を含むように改変されているストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9ヌクレアーゼタンパク質を含む。得られたCas9ヌクレアーゼ(sNLS-spCas9-sNLS)は、組換え大腸菌(E.coli)発酵によって生成され、クロマトグラフィーによって精製された162kDaのタンパク質である。spCas9のアミノ酸配列は、UniProt受入番号Q99ZW2として見出すことができ、本明細書では配列番号1として示される。
Cas9ヌクレアーゼのアミノ酸配列(配列番号1):
【0095】
【化1】
【0096】
(b)ガイドRNA(gRNA)
本明細書で記載されるとおりのCRISPR-Cas9に媒介される遺伝子編集は、ガイドRNA、すなわちgRNAの使用を含む。本明細書で使用する場合、「gRNA」は、特定の標的配列で遺伝子を編集するために、Cas9をCD70遺伝子又はTRAC遺伝子又はβ2M遺伝子内の特定の標的配列に誘導することができるゲノム標的化核酸を指す。ガイドRNAは、編集のための標的遺伝子内の標的核酸配列とCRISPR反復配列とにハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含む。
【0097】
CD70遺伝子を標的化する例示的なgRNAは、配列番号2において提供される。本明細書で参照される主題及び目的に対してその関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/215500号パンフレットも参照されたい。他のgRNA配列は、19番染色体上に位置するCD70遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:染色体19:6,583,183-6,604,103;Ensembl;ENSG00000125726)。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNA及びCas9は、CD70ゲノム領域に切断を生じさせてCD70遺伝子にインデルをもたらし、mRNA又はタンパク質の発現を破壊する。
【0098】
TRAC遺伝子を標的化する例示的なgRNAは、配列番号6において提供される。本明細書で参照される主題及び目的に対してその関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレットを参照されたい。他のgRNA配列は、14番染色体上に位置するTRAC遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:14番染色体:22,547,506~22,552,154;アンサンブル;ENSG00000277734)。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNA及びCas9は、TRACゲノム領域に切断を生じさせてTRAC遺伝子にインデルをもたらし、mRNA又はタンパク質の発現を阻害する。
【0099】
β2M遺伝子を標的化する例示的なgRNAは、配列番号10において提供される。本明細書で参照される目的及び主題に対してその関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレットも参照されたい。他のgRNA配列は、15番染色体上に位置するβ2M遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:15番染色体:44,711,477~44,718,877;Ensembl:ENSG00000166710)。いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、mRNA又はタンパク質の発現を破壊するβ2M遺伝子におけるインデルをもたらすβ2Mゲノム領域における切断をもたらす。
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
II型システムにおいて、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAを含む。II型のgRNAでは、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列が互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する。V型のgRNAでは、crRNAが二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合し、その結果、ガイドRNAと部位特異的ポリペプチドとが複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、この部位特異的ポリペプチドとの会合による複合体に標的特異性をもたらす。そのため、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を誘導する。
【0103】
当業者に理解されているように、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計される。Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照されたい。
【0104】
いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA)は、二重分子ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA)は、単一分子ガイドRNAである。
【0105】
二重分子ガイドRNAは、2つの鎖のRNA分子を含む。第1の鎖は、5’から3’の方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列及び最小CRISPR反復配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含む。
【0106】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(「sgRNA」と呼ばれる)は、5’から3’方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含む。任意選択のtracrRNA延長は、ガイドRNAに追加の機能性(例えば、安定性)を付与する要素を含み得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復と最小tracrRNA配列とを連結して、ヘアピン構造を形成する。任意選択のtracrRNA延長は、1つ以上のヘアピンを含む。V型システムにおける単一分子ガイドRNAは、5’から3’方向において、最小CRISPR反復配列及びスペーサー配列を含む。
【0107】
「標的配列」とは、PAM配列に隣接している標的遺伝子のことであり、Cas9によって改変される配列のことである。「標的配列」は、PAM鎖及び相補的な非PAM鎖を含有する二本鎖分子である「標的核酸」内のいわゆるPAM鎖上にある。当業者は、gRNAスペーサー配列が、目的の標的核酸の非PAM鎖に位置する相補的配列にハイブリダイズすることを認識している。そのため、gRNAスペーサー配列は、標的配列のRNA均等物である。
【0108】
例えば、CD70標的配列が5’-GCTTTGGTCCCATTGGTCGC-3’(配列番号15)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-GCUUUGGUCCCAUUGGUCGC-3’(配列番号5)である。別の例では、TRAC標的配列が5’-AGAGCAACAGTGCTGTGGCC-3’(配列番号17)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-AGAGCAACAGUGCUGUGGCC-3’(配列番号9)である。さらに別の例では、β2M標的配列が5’-GCTACTCTCTCTTTCTGGCC-3’(配列番号19)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-GCUACUCUCUCUUUCUGGCC-3’(配列番号13)である。gRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的な様式で目的の標的核酸と相互作用する。そのため、スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の標的配列に応じて変化する。
【0109】
本明細書のCRISPR/Casシステムでは、スペーサー配列は、このシステムで使用されるCas9酵素によって認識可能なPAMの5’に位置する標的核酸の領域にハイブリダイズするように設計されている。スペーサーは、標的配列と完全に一致し得るか、又はミスマッチを有し得る。各Cas9酵素は、標的DNAにおいて認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)は、標的核酸において、配列5’-NRG-3’(ここで、Rは、A又はGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列により標的化される標的核酸配列の3’の直近にある)を含むPAMを認識する。
【0110】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、20個の長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個未満の長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個超の長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれを超える長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれを超える長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’の直近に20個の塩基を有する。例えば、
【0111】
【化2】
【0112】
を含む配列では、標的核酸は、Nに対応する配列であってもよく、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであってもよく、下線が引かれたNRG配列は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)のPAMである。
【0113】
gRNA中のスペーサー配列は、目的の標的遺伝子の標的配列(例えば、ゲノム標的配列などのDNA標的配列)を定義する配列(例えば、20個のヌクレオチド配列)である。CD70遺伝子を標的化するgRNAの例示的なスペーサー配列は、配列番号4において提供される。TRAC遺伝子を標的化するgRNAの例示的なスペーサー配列は、配列番号8において提供される。β2M遺伝子を標的化するgRNAの例示的なスペーサー配列は、配列番号12において提供される。
【0114】
本明細書に開示されるガイドRNAは、crRNA内のスペーサー配列によって目的の任意の配列を標的化し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAのスペーサー配列と標的遺伝子内の標的配列との間の相補性の程度は、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%であり得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAのスペーサー配列及び標的遺伝子内の標的配列は、100%相補的である。他の実施形態では、ガイドRNAのスペーサー配列と標的遺伝子内の標的配列は、最大で10個のミスマッチ、例えば最大で9個、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、又は最大で1個のミスマッチを含有し得る。
【0115】
本明細書で提供されるとおりに使用され得るgRNAの非限定的な例は、本明細書で参照される目的及び主題に対して以前の出願の各々の関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレット、及び国際公開第2019/215500号パンフレットにおいて提供される。本明細書で提供されるgRNA配列のいずれかに関して、修飾を明確に示していないものは、未修飾の配列と任意の好適な修飾を有する配列の両方を包含することを意味する。
【0116】
本明細書に開示されるgRNAのいずれかにおけるスペーサー配列の長さは、CRISPR/Cas9システム及びさらに本明細書に開示される標的遺伝子のいずれかを編集するために使用される構成要素に依存し得る。例えば、異なる細菌種に由来する異なるCas9タンパク質は、様々な最適なスペーサー配列長を有する。したがって、スペーサー配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、又は50個超の長さのヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、18~24個の長さのヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、19~21個の長さのヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、20個の長さのヌクレオチドを含み得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、gRNAは、sgRNAであってもよく、sgRNA配列の5’末端に20個のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個未満のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20超のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に17~30個のヌクレオチドを有する可変長のスペーサー配列を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まない。他の実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1つ以上のウラシルを含み得る。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1~8個のウラシル残基、例えばsgRNA配列の3’末端に1、2、3、4、5、6、7又は8個のウラシル残基を含むことができる。
【0119】
sgRNAのいずれかを含む、本明細書に開示されるgRNAのいずれも未修飾であり得る。或いは、1つ以上の修飾されたヌクレオチド及び/又は修飾された主鎖を含み得る。例えば、sgRNAなどの修飾gRNAは、5’末端、3’末端のいずれか又は両方に位置し得る1つ以上の2’-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含むことができる。
【0120】
ある実施形態では、2つ以上のガイドRNAをCRISPR/Casヌクレアーゼシステムとともに使用することができる。各ガイドRNAは、CRISPR/Casシステムが2つ以上の標的核酸を切断するように、異なる標的化配列を含有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のガイドRNAは、Cas9 RNP複合体内での活性又は安定性などの同じ又は異なる特性を有し得る。2つ以上のガイドRNAが使用される場合、各ガイドRNAは、同じ又は異なるベクター上にコードされ得る。2つ以上のガイドRNAの発現を駆動するために使用されるプロモーターは、同じであるか又は異なる。
【0121】
2つ以上の好適なCas9及び2つ以上の好適なgRNAが、本明細書に記載される方法、例えば、当技術分野において知られるか又は本明細書で開示される方法に使用され得ることは理解されたい。いくつかの実施形態では、方法は、当技術分野において知られるCas9酵素及び/又はgRNAを含む。例は、例えば、本明細書で参照される目的及び主題に対して以前の出願の各々の関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレット及び国際公開第2019/215500号パンフレットにおいて見出され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNAは、表3の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むTRAC遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNA(例えば、配列番号6)は、表3の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むTRAC遺伝子においてインデルを生成する。
【0123】
【表10】
【0124】
いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNAは、表4の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むβ2M遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNA(例えば、配列番号10)は、表4の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むβ2M遺伝子においてインデルを生成する。
【0125】
【表11】
【0126】
いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNAは、表5の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むCD70遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNA(例えば、配列番号2)は、表5の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むCD70遺伝子においてインデルを生成する。
【0127】
【表12】
【0128】
(iii)CARコンストラクトをT細胞に送達するためのAAVベクター
CARコンストラクトをコードする核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して細胞に送達され得る。AAVは、宿主ゲノムに部位特異的に組込み、したがって、CARなどの導入遺伝子を送達することができる小型のウイルスである。逆位末端配列(ITR)は、AAVゲノム及び/又は目的の導入遺伝子に隣接して存在し、複製開始点として機能する。また、AAVゲノム中には、転写されるとAAVゲノムをカプセル化して標的細胞に送達するためのカプシドを形成するrepタンパク質及びcapタンパク質も存在する。これらのカプシド上の表面受容体によってAAVの血清型が付与され、カプシドがどの標的臓器に最初に結合するか、したがって、いずれの細胞にAAVが最も効率的に感染するかが決定される。現在知られているヒトAAVの血清型は、12種類である。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸を送達するのに使用するためのAAVは、AAV血清型6(AAV6)である。
【0129】
アデノ随伴ウイルスは、いくつかの理由のために遺伝子療法に最も頻繁に使用されるウイルスの1つである。第一に、AAVは、ヒトを含む哺乳動物に投与する際、免疫応答を誘発しない。第二に、AAVは、特に適切なAAV血清型の選択を考慮に入れると、標的細胞に効率的に送達される。最後に、AAVは、ゲノムが組み込むことなしに宿主細胞中で残存し得ることから、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有する。この形質により、AAVは、遺伝子療法の理想的な候補となる。
【0130】
CARをコードする核酸は、宿主T細胞内の目的のゲノム部位に挿入するように設計され得る。いくつかの実施形態では、標的ゲノム部位は、セーフハーバー遺伝子座内にあり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターによって運ぶことが可能なドナー鋳型を介して)遺伝子操作されたT細胞内のTRAC遺伝子を破壊してCARポリペプチドを発現させるために、TRAC遺伝子内の位置に挿入できるように設計され得る。TRACの破壊により、内在性TCRの機能の喪失がもたらされる。例えば、本明細書に記載されるものなどのエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のTRACゲノム領域を標的化する1つ以上のgRNAにより、TRAC遺伝子における破壊を生じさせることができる。この目的のために、TRAC遺伝子及び標的部位に特異的なgRNAのいずれか、例えば本明細書で開示されるものを使用することができる。
【0132】
いくつかの例では、相同組換え修復、すなわちHDR(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターの一部であり得るドナー鋳型を使用する)により、TRAC遺伝子内のゲノム欠失及びCARをコードするセグメントによる置換を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のTRACゲノム領域を標的化する1つ以上のgRNAにより、且つCARをコードするセグメントをTRAC遺伝子に挿入することにより、TRAC遺伝子の破壊を生じさせることができる。
【0133】
本明細書に開示されるとおりのドナー鋳型は、CARのコード配列を含有し得る。いくつかの例では、CARをコードする配列は、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を使用して、目的のゲノム位置、例えば、TRAC遺伝子で効率的なHDRを行うことができるように、2つの相同性領域に隣接し得る。この場合、標的遺伝子座に特異的なgRNAによって誘導されたCRISPR Cas9酵素により、DNAの両方の鎖を標的遺伝子座で切断することができる。続いて、HDRが発生して二本鎖切断(DSB)を修復し、CARをコードするドナーDNAを挿入する。これを正しく発生させるために、ドナー配列は、TRAC遺伝子などの標的遺伝子のDSB部位を取り囲む配列に相補的な隣接残基(以下では「相同性アーム」)を有するように設計されている。これらの相同性アームは、DSB修復のための鋳型として機能し、HDRを本質的に誤りのない機構とすることを可能にする。相同組み換え修復(HDR)の割合は、変異部位と切断部位との間の距離の関数であり、そのため、重複しているか又は近傍の標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接した余分な配列を含むことができるか、又はゲノム配列と異なる配列を含むことができ、これによって配列編集が可能になる。
【0134】
或いは、ドナー鋳型は、DNAの標的化された位置と相同性のある領域がなくてもよく、標的部位で切断された後にNHEJ依存的末端連結により組み込まれ得る。
【0135】
ドナー鋳型は、一本鎖及び/又は二本鎖のDNA又はRNAであってもよく、直鎖状又は環状形態で細胞に導入することができる。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に既知の方法により(例えば、エキソヌクレアーゼによる分解から)保護することができる。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖状分子の3’末端に付加し、且つ/又は自己相補的オリゴヌクレオチドを一方若しくは両方の末端に連結する。例えば、Chang et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959-4963;Nehls et al.,(1996)Science 272:886-889を参照されたい。外因性のポリヌクレオチドを分解から保護するための追加の方法としては、末端アミノ基の付加、並びに、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基などの修飾されたヌクレオチド間結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
ドナー鋳型は、例えば、複製開始点、プロモーター及び抗生物質耐性コード遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。さらに、ドナー鋳型は、裸の核酸として、リポソーム若しくはポロキサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として細胞に導入することができるか、又はウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))により送達することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、その発現が内在性プロモーターによって駆動することができるように、内在性プロモーターの近傍の部位(例えば、下流又は上流)に挿入することができる。他の実施形態では、ドナー鋳型は、CAR遺伝子の発現を制御するために、外因性プロモーター及び/又はエンハンサー、例えば構成的プロモーター、誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターを含み得る。いくつかの実施形態では、外因性プロモーターは、EF1αプロモーターである。他のプロモーターが使用されてもよい。
【0138】
さらに、外因性の配列は、転写又は翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナルも含み得る。
【0139】
III.造血細胞悪性腫瘍の治療
いくつかの態様では、本明細書において、造血細胞悪性腫瘍(例えば、T細胞若しくはB細胞悪性腫瘍、又は骨髄細胞悪性腫瘍)を有するヒト患者を、本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞のいずれかの集団を使用して治療するための方法が提供される。同種異系抗CD70 CAR T細胞療法は、二段階の治療(i)1回以上の用量の1つ以上のリンパ球枯渇剤を好適なヒト患者に与えることを含む、移植前処置(リンパ球枯渇治療)、及び(ii)本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の集団のヒト患者への投与を含む治療レジメン(抗CD70 CAR T細胞療法)を含み得る。該当する場合、複数の用量の抗CD70 CAR T細胞がヒト患者に与えられる場合があり、リンパ球枯渇治療は、抗CD70 CAR T細胞の各投与の前にヒト患者に適用され得る。
【0140】
(i)患者集団
ヒト患者は、診断、治療又は療法が望まれる任意のヒト対象であり得る。ヒト患者は、任意の年齢であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、成人である(例えば、少なくとも18歳の人間)。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、小児であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、≧60kgの体重を有する。
【0141】
本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、造血細胞悪性腫瘍(例えば、CD70+疾患細胞を含む)を有するか、それを有することが疑われるか、又はそれを有するリスクがあるヒト患者であり得る。いくつかの例では、ヒト患者は、T細胞悪性腫瘍を有するか、それを有すると疑われるか、又はそのリスクがある。いくつかの例では、ヒト患者は、B細胞悪性腫瘍を有するか、それを有すると疑われるか、又はそのリスクがある。いくつかの例では、ヒト患者は、骨髄細胞悪性腫瘍を有するか、それを有すると疑われるか、又はそのリスクがある。造血細胞悪性腫瘍を有すると疑われる対象は、造血細胞悪性腫瘍の1つ以上の症状、例えば、原因不明の体重減少、疲労、寝汗、息切れ、又は腫脹した腺を示し得る。造血細胞悪性腫瘍のリスクのある対象は、造血細胞悪性腫瘍のリスク因子、例えば、衰弱した免疫系、年齢、男性であること、又は感染症(例えば、エプスタイン・バーウイルス感染症)の1つ以上を有する対象であり得る。抗CD70 CAR T細胞(例えば、CTX130細胞)治療を必要とするヒト患者は、定期検診、例えば、身体検査、臨床検査試験、生検(例えば、骨髄生検及び/又はリンパ節生検)、磁気共鳴画像法(MRI)スキャン又は超音波検査によって同定され得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、T細胞悪性腫瘍、例えば、再発性又は難治性T細胞悪性腫瘍を有する。そのようなヒト患者は、CD70+疾患T細胞を有し得る。例としては、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、及びT細胞白血病が挙げられるが、これらに限定されない。場合により、T細胞悪性腫瘍は、菌状息肉症(MF)、例えば、転化した大細胞リンパ腫を含むステージIIb以上のもの、又はセザリー症候群(SS)を含み得るCTCLであり得る。
【0143】
場合により、T細胞悪性腫瘍は、PTCLである。例としては、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫(AITL)、Alk陽性又はAlk陰性であり得る未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、くすぶり型サブタイプを除外し得る(非くすぶり型ATLL)成人T細胞白血病又はリンパ腫(ATLL);及び末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、B細胞悪性腫瘍、例えば、再発性又は難治性B細胞悪性腫瘍を有し得る。そのようなヒト患者は、CD70+疾患B細胞を有し得る。いくつかの例では、ヒト患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する。そのようなヒト患者は、前の抗CD19 CAR-T細胞療法が無効であった可能性がある。他の例では、ヒト患者は、不十分な予後と関連する進行性のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)であるマントル細胞リンパ腫(MCL)を有する。
【0145】
さらに他の実施形態では、ヒト患者は、骨髄細胞悪性腫瘍、例えば、再発性又は難治性骨髄細胞悪性腫瘍を有し得る。いくつかの例では、ヒト患者は、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)(AML、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)とも称される)を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、CD70+白血病を有する。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、CD70+T細胞白血病を有する。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、CD70+リンパ腫を有する。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、CD70+T細胞リンパ腫を有する。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、当技術分野で知られる任意の方法によって同定され得るCD70発現腫瘍細胞(CD70発現腫瘍)を含む腫瘍を有するヒト患者であり得る。例えば、CD70発現腫瘍は、代表的な腫瘍の切除生検又はコア生検によって回収される組織における免疫組織化学(IHC)によって同定され得る。別の例では、CD70発現腫瘍は、末梢血液又は骨髄において回収される免疫表現型検査によって定義される腫瘍細胞におけるフローサイトメトリーによって同定され得る。特定の例では、本明細書で開示される方法によって治療されることになるヒト患者は、生体試料(例えば、リンパ節試料、血液試料又は骨髄試料などの組織試料)における全癌細胞中に少なくとも10%のCD70腫瘍細胞を含む腫瘍を有し得る。
【0148】
本明細書で開示される方法のいずれかはさらに、患者におけるCD70+腫瘍細胞の存在及び/又はレベルに基づく同種異系抗CD70 CAR T療法に好適なヒト患者を同定する工程を含み得る。同定する工程は、例えば、IHCを介して、候補患者から得られる生検試料におけるCD70+腫瘍細胞の存在及び/又はレベルを決定することによって実施され得る。或いは、同定する工程は、例えば、フローサイトメトリーを介して、候補患者から得られる血液試料又は骨髄試料におけるCD70+腫瘍細胞の存在及び/又はレベルを決定することによって実施され得る。
【0149】
本明細書に記載される方法によって治療を受けるヒト患者は、治療後に再発し、且つ/又は治療に対して抵抗性になっており、且つ/又は治療に対して反応を示さないヒト患者であり得る。非限定的な例としては、(a)再発性若しくは難治性造血細胞悪性腫瘍(例えば、T細胞若しくはB細胞悪性腫瘍、又は骨髄細胞悪性腫瘍)、(b)移植を必要とする場合があるステージIIB以上のSS若しくは菌状息肉症(MF)、(c)抗CD19 CAR T細胞療法に応答しない場合がある、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、(d)PTCL、ATLL(例えば、白血病性ATLL、リンパ腫ATLL)、若しくはAITLであって、第一選択の全身療法が無効であったもの、(e)ALCLであって、ブレウツキシマブベドチンを含む組み合わせ療法が無効であったもの、(f)ALK+ALCLであって、前の2つの選択療法(例えば、その一方は、ブレンツキシマブベドチンを含み得る)が無効であったもの、(g)ALK-ALCLであって、前の1つの選択療法が無効であったもの、又は(h)MF若しくはSSであって、場合により、前のモガムリズマブ療法を含み得る1つ以上の(例えば、少なくとも2つ)の前の全身療法が無効であったものを有する患者が挙げられる。
【0150】
本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、最近の前治療を有したヒト患者又は前治療を有しない患者であり得る。例えば、本明細書に記載されるとおりに治療されることになるヒト患者は、遺伝子改変T細胞の集団の第1の用量の前に少なくとも3ヶ月間モガムリズマブ治療を受けていない可能性がある。
【0151】
本明細書で開示される方法を使用して治療されるヒト患者のいずれかは、それに続く治療を受ける場合がある。例えば、ヒト患者は、抗サイトカイン療法にかけられる。別の例では、ヒト患者は、遺伝子操作されたT細胞の集団による治療の後に自系又は同種異系造血幹細胞移植にかけられる。
【0152】
患者が移植前処置(リンパ球枯渇治療)及び/又は治療レジメン(抗CD70 CAR T細胞療法)を受けるのに適格であるかどうかを判断するために、ヒト患者がスクリーニングされ得る。例えば、リンパ球枯渇治療に適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化、(b)臨床状態の著しい悪化(例えば、移植前処置及び/又は治療レジメンと関連するAEの潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化)、(c)92%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、(d)制御されない心不整脈、(e)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、(f)活動性感染症、及び(g)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)の1つ以上を示さない。
【0153】
別の例では、治療レジメンに適格なヒト患者は、以下の特徴の1つ以上を示さない:(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化、(b)活動性の制御されない感染症、(c)臨床状態の著しい悪化(例えば、同種異系CAR T細胞注入と関連するAEの潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化)、及び(d)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)。
【0154】
移植前処置及び/又は治療レジメンと関連するAEの潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化としては、血球減少の臨床的に意義のある悪化、トランスアミナーゼレベルの臨床的に意義のある増大(例えば、>3×ULN)、総ビリルビンの臨床的に意義のある増加(例えば、>2×ULN)、及び血清クレアチニンの臨床的に意義のある増加が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0155】
ヒト患者をスクリーニングして、そのようなスクリーニング結果に基づいて移植前処置及び/又は治療レジメンから除外してもよい。例えば、患者が以下の除外基準のいずれかを満たす場合、ヒト患者は、移植前処置及び/又は治療レジメンから除外され得る:(a)以前の同種異系幹細胞移植(SCT)、(b)スクリーニング時に自系SCTから60日未満であり且つ未回復の重篤な合併症を有すること、(c)任意の抗CD70標的化薬剤による以前の治療、(d)自系CD19 CAR T細胞を除く任意のCAR T細胞又は任意の他の改変T若しくはナチュラルキラー(NK)細胞による以前の治療、及び患者がDLBCLを有すること、(e)任意のリンパ球枯渇治療又は任意の治療レジメンの賦形剤のいずれかに対する既知の禁忌、(f)症候性であるか又は症候性であった現在又は過去の悪性貯留液を伴うT細胞又はB細胞リンパ腫、(g)血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の臨床徴候、(h)脳脊髄液(CSF)からの検出可能な悪性細胞又は脳転移を示す核磁気共鳴画像法(MRI)、(i)臨床的に意味のあるCNS病態の病歴又は存在、(j)スクリーニング前の6ヶ月以内の不安定狭心症、不整脈、又は心筋梗塞、(k)全身療法を必要とせずに12ヶ月を超えて寛解している治癒手法で治療されたものを除く以前の又は同時的な悪性腫瘍(場合により、適切に切除された基底細胞又は扁平細胞皮膚癌、頸部の生体内原位置の癌、又は完全に切除され、3年を超えて寛解している以前の悪性腫瘍は許容され得る)、及び(l)制御されない急性の生命を脅かす細菌、ウイルス、又は真菌感染症。
【0156】
リンパ球枯渇治療にかけられるヒト患者は、CTX130細胞などの本明細書で開示される抗CD70 CAR T細胞の1つ以上の用量を受容することに対する適格性についてスクリーニングされ得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞治療にとって適格なリンパ球枯渇治療にかけられるヒト患者は、以下の特徴の1つ以上を示さない:(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化、(b)活動性の制御されない感染症、(c)臨床状態の著しい悪化(例えば、同種異系CAR T細胞注入と関連するAEの潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化)、及び(d)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)。
【0157】
抗CD70 CAR T細胞のそれぞれの投与の後、ヒト患者は、サイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、神経毒性(例えば、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群又はICANS)、及び移植片対宿主病(GvHD)などの急性毒性についてモニターされ得る。加えて、以下の有害作用の1つ以上がモニターされ得る:低血圧、腎不全(例えば、腎尿細管様上皮細胞の抑制によって引き起こされ得る)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、遷延性血球減少症、及び/又は骨芽細胞の抑制。抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされ得る。
【0158】
ヒト患者が急性毒性の1つ以上の症状を示す場合、ヒト患者は毒性管理にかけられ得る。急性毒性の1つ以上の症状を示す患者に対する治療は、当技術分野において知られている。例えば、CRSの症状(例えば、心臓、呼吸器及び/又は神経的異常)を示すヒト患者に抗サイトカイン療法を施し得る。加えて、CRSの症状を示さないヒト患者に抗サイトカイン療法を施して、抗CD70 CAR T細胞の増殖を促進し得る。
【0159】
或いは又は加えて、ヒト患者が急性毒性の1つ以上の症状を示す場合、ヒト患者の治療を終了し得る。患者が1つ以上の有害事象(AE)の徴候を示す、例えば患者に異常な検査所見があり、且つ/又は患者が疾患進行の徴候を示す場合にも患者の治療を終了し得る。
【0160】
(ii)移植前処置(リンパ球枯渇療法)
本明細書で開示される治療方法に好適な任意のヒト患者は、対象の内在性リンパ球を減少又は枯渇させるためにリンパ球枯渇療法を受け得る。
【0161】
リンパ球枯渇は、内在性リンパ球及び/又はT細胞を破壊することを指し、一般に免疫移植療法及び免疫療法前に使用される。リンパ球枯渇は、放射線照射及び/又は化学療法によって達成することができる。「リンパ球枯渇剤」は、対象に投与したとき、内在性リンパ球及び/又はT細胞を減少、枯渇又は排除することが可能な任意の分子であり得る。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇剤は、薬剤を投与する前のリンパ球の数と比較して、リンパ球の数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、96%、97%、98%又は少なくとも99%だけ減少させるのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇剤は、対象のリンパ球の数が検出限界以下となるような、リンパ球の数を減少させるのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの(例えば、2、3、4、5つ以上の)リンパ球枯渇剤が投与される。
【0162】
いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇剤は、特異的にリンパ球を死滅させる細胞傷害性薬剤である。リンパ球枯渇剤の例としては、フルダラビン、シクロホスファミド、ベンダムスチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキサート、ダカルバジン、メルファラン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、リン酸エトポシド、ミトキサントロン、クラドリビン、デニロイキンジフチトクス、又はDAB-IL2が挙げられるが、これらに限定されない。場合により、リンパ球枯渇剤は、低線量の放射線照射と併用され得る。移植前処置のリンパ球枯渇効果は、通常の診療でモニターされ得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つ以上のリンパ球枯渇剤、例えば、フルダラビン及びシクロホスファミドを含む移植前処置を含む。本明細書に記載される方法によって治療を受けるヒト患者は、複数用量の1つ以上のリンパ球枯渇剤を移植前段階の適切な期間(例えば、1~5日間)に受容し得る。患者は、リンパ球枯渇期間中、リンパ球枯渇剤の1つ以上を1日当たり1回受容し得る。一例において、ヒト患者は、1日当たり約20~50mg/m(例えば、20mg/m又は30mg/m)のフルダラビンを2~4日間(例えば、3日間)及び1日当たり約300~600mg/m(例えば、500mg/m)のシクロホスファミドを2~4日間(例えば、3日間)受容する。別の例において、ヒト患者は、1日当たり約20~30mg/m(例えば、25mg/m)のフルダラビンを2~4日間(例えば、3日間)及び1日当たり約300~500mg/m(例えば、300mg/m又は400mg/m)のシクロホスファミドを2~4日間(例えば、3日間)受容する。必要があれば、シクロホスファミドの用量は、例えば、1,000mg/mまで増加されてもよい。
【0164】
次に、ヒト患者は、本明細書で開示されるとおりのリンパ球枯渇療法後の適切な期間内において、CTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞のいずれかを投与され得る。例えば、ヒト患者は、抗CD70 CAR+T細胞(例えば、例としてCTX130細胞)を投与する約2~7日(例えば、2、3、4、5、6、7日)前に1つ以上のリンパ球枯渇剤に晒され得る。
【0165】
CTX130細胞などの同種異系抗CD70 CAR-T細胞は、事前に調製することができるため、本明細書で開示されるとおりのリンパ球枯渇療法は、本明細書で開示される同種異系抗CD70 CAR-T細胞療法にヒト患者が好適であると同定された後の短い期間内(例えば、2週間以内)において、T細胞又はB細胞悪性腫瘍を有するヒト患者に適用され得る。
【0166】
本明細書に記載される方法は、抗CD70 CAR+T細胞を有するヒト患者に再投与することを包含する。そのような例において、ヒト患者は、再投与の前にリンパ球枯渇治療にかけられる。例えば、ヒト患者は、第1のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第1の用量に続いて、第2のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第2の用量にかけられ得る。別の例において、ヒト患者は、第1のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第1の用量、第2のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第2の用量、並びに第3のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第3の用量にかけられ得る。
【0167】
リンパ球枯渇工程のいずれかの前に(例えば、最初のリンパ球枯渇工程の前又はCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の再投与と関連するいずれかの後に続くリンパ球枯渇工程の前)、ヒト患者は、患者がリンパ球枯渇治療に適格であるかどうかを判断するための1つ以上の特徴についてスクリーニングされ得る。例えば、リンパ球枯渇前に、リンパ球枯渇治療に適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化、(b)臨床状態の著しい悪化(例えば、リンパ球枯渇治療と関連するAEの潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化)、(c)92%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、(d)制御されない心不整脈、(e)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、(f)活動性感染症、及び(g)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)の1つ以上を示さない。いくつかの例では、リンパ球枯渇治療と関連する有害事象の潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化としては、任意の血球減少の臨床的に意義のある悪化、トランスアミナーゼレベルの臨床的に意義のある増大(例えば、>3×ULN)、総ビリルビンの臨床的に意義のある増加(例えば、>2×ULN)、及び/又は血清クレアチニンの臨床的に意義のある増加が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0168】
リンパ球枯渇後、患者が抗CD70 CAR T細胞による治療に適格であるかどうかを判断するために、ヒト患者は、1つ以上の特徴についてスクリーニングされ得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞治療前及びリンパ球枯渇治療後、抗CD70 CAR T細胞治療に適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)パフォーマンス・ステータスの米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)>1への変化、(b)活動性の制御されない感染症、(c)臨床状態の著しい悪化(例えば、同種異系CAR T細胞注入と関連するAEの潜在的なリスクを増大させ得る臨床状態の著しい悪化)、及び(d)任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)の1つ以上を示さない。
【0169】
(iii)抗CD70 CAR T細胞の投与
本開示の態様は、T細胞又はB細胞悪性腫瘍を治療する方法であって、ヒト患者をリンパ球枯渇治療にかけること及びある用量の本明細書に記載される遺伝子操作されたT細胞(例えば、CTX130細胞)の集団をヒト患者に投与することを含む方法を提供する。
【0170】
抗CD70 CAR T細胞の投与は、所望の効果を生じさせることができるように、腫瘍部位などの所望の部位に遺伝子操作されたT細胞集団の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、遺伝子操作されたT細胞集団のヒト患者への配置(例えば、移植)を含み得る。対象の所望の位置に送達をもたらす任意の適切な経路によって遺伝子操作されたT細胞集団を投与することができるが、この場合、移植された細胞又はこの細胞の構成要素の少なくとも一部は、生存したままである。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間(例えば、24時間)という短い期間から数日、数年又はさらに対象の寿命(すなわち、長期の生着)という長さまでであり得る。例えば、本明細書に記載されるいくつかの態様では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団を、腹腔内又は静脈内経路などの全身性の投与経路を介して投与することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞集団を全身に投与し、これは、細胞の集団を標的部位、組織又は臓器に直接投与するのではなく、代わりに対象の循環系に入り、それにより代謝及び他の同様のプロセスを受けるように投与することを指す。好適な投与の様式としては、注射、注入、点滴又は経口摂取が挙げられる。注射としては、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、並びに胸骨内注射及び注入が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、経路は、静脈内である。
【0172】
有効量は、医学的状態(例えば、T細胞又はB細胞悪性腫瘍)の少なくとも1つ以上の徴候又は症状を予防又は軽減するのに必要な遺伝子操作されたT細胞集団の量を指し、所望の効果をもたらす、例えば、医学的状態を有する対象を治療するのに十分な量の遺伝子操作されたT細胞集団に関する。有効量としては、疾患の症状の発症を予防するか若しくは遅らせるか、疾患の症状の経過を変える(例えば、限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせる)か、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量も挙げられる。任意の所与の場合に関して、適切な有効量は、通常の実験を使用して当業者により決定できることが理解される。
【0173】
遺伝子操作されたT細胞集団の有効量は、CD70に結合するCARを発現する約1×10個のCAR+細胞~約1×10個のCAR+細胞、例えば、約3×10個の細胞~約1×10個の細胞を含み得る。
【0174】
遺伝子操作されたT細胞集団の有効量は、抗CD70 CARを発現する約3.0×10個の細胞~約9×10個の細胞(CAR細胞)、例えば、CARCTX130細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団は、少なくとも3.0×10個のCARCTX130細胞、少なくとも4×10個のCARCTX130細胞、少なくとも4.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも5.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも6×10個のCARCTX130細胞、少なくとも6.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも7×10個のCARCTX130細胞、少なくとも7.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも8×10個のCARCTX130細胞、少なくとも8.5×10個のCARCTX130細胞、又は少なくとも9×10個のCARCTX130細胞を含み得る。いくつかの例では、CARCTX130細胞の量は、1×10個の細胞を超えない場合がある。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3.0×10~約3×10個のCART細胞、例えば、約1×10~約1×10個のCART細胞又は約1×10~約3×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約1.5×10~約3×10個のCART細胞の範囲であり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3.0×10~約9×10個のCART細胞、例えば、約3.5×10~約6×10個のCART細胞又は約3.5×10~約4.5×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約4.5×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約4.5×10~約6×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約6×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約7.5×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。
【0177】
特定の例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約3.0×10個のCART細胞を含み得る。例えば、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約4.5×10個のCART細胞を含み得る。他の例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約6×10個のCART細胞を含み得る。いくつかの例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約7.5×10個のCART細胞を含み得る。さらに他の例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約9×10個のCART細胞を含み得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約7.5×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約6×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約4.5×10個のCART細胞の範囲であり得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団は、ある用量の遺伝子操作されたT細胞集団、例えば、約3.0×10個のCARCTX130細胞~約9×10個のCARCTX130細胞を含む用量、例えば、本明細書で開示される任意の用量又は用量の範囲を含み得る。いくつかの例では、有効量は、4.5×10個のCARCTX130細胞である。いくつかの例では、有効量は、6×10個のCARCTX130細胞である。いくつかの例では、有効量は、7.5×10個のCARCTX130細胞である。いくつかの例では、有効量は、9×10個のCARCTX130細胞である。
【0180】
いくつかの例では、CTCL、例えば、大細胞転化を伴う菌状息肉症(MF)を有する患者は、CTX130細胞の好適な用量、例えば、約3×10~約6×10個のCARCTX130細胞を与えられ得る。そのようなMF患者は、約3×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。或いは、MF患者は、約1×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、MF患者は、約3×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、MF患者は、約4.5×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、MF患者は、約6×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、MF患者は、約7.5×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、MF患者は、約9×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。
【0181】
いくつかの例では、CTCL、例えば、大細胞転化を伴う菌状息肉症(MF)を有する患者は、CTX130細胞の好適な用量、例えば、約9×10~約1×10個のCARCTX130細胞を与えられ得る。そのようなMF患者は、約9×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。或いは、MF患者は、約1×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、各々が約1.5×10個のCAR+CTX130細胞を含むバイアルである、医薬組成物の1つ以上のバイアルから投与される。いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、各々が約3×10個のCAR+CTX130細胞を含むバイアルである、医薬組成物の1つ以上のバイアルから投与される。いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、1.5×10の1倍以上のCAR+CTX130細胞、例えば、1.5×10の1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、又は6倍のCAR+CTX130細胞において対象に投与される。いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、医薬組成物の1つ以上の完全な又は部分的なバイアルから投与される。
【0183】
本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞療法の有効性は、訓練された臨床医によって判断され得る。抗CD70 CAR T細胞療法は、一例ではあるが、任意の1つ又は全ての徴候又は症状のCD70のレベルが有利な様式で変化する(例えば、少なくとも10%減少する)場合又はT細胞若しくはB細胞悪性腫瘍の他の臨床的に認められている症状又はマーカーが改善又は回復される場合、「有効」であるとみなされる。有効性は、入院又は医学的介入の必要性により評価されるとおり、対象が悪化しないことによっても測定され得る(例えば、T細胞又はB細胞悪性腫瘍の進行が止まるか又は少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、且つ/又は本明細書で記載される。治療は、ヒト患者におけるT細胞又はB細胞悪性腫瘍の任意の治療を含み、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を止めるか若しくは遅くすること;又は(2)疾患を軽減すること、例えば、症状の退行をもたらすこと;及び(3)症状の発症を予防するか若しくはその可能性を減少させることを含む。
【0184】
本明細書に記載される治療方法は、リンパ球枯渇を反復すること及び抗CD70 CAR T細胞の再投与を包含する。抗CD70 CAR T細胞のそれぞれの再投与の前に、患者は、別のリンパ球枯渇治療にかけられる。抗CD70 CAR T細胞の用量は、第1、第2、及び第3の用量に関して同じであり得る。例えば、第1、第2、及び第3の用量の各々は、1×10個のCAR細胞、3×10個のCAR細胞、1×10個のCAR細胞、1.5×10個のCAR+細胞、3×10個のCAR細胞、4.5×10個のCAR細胞、6×10個のCAR細胞、7.5×10個のCAR細胞、又は9×10個のCAR細胞であり得る。他の場合、抗CD70 CAR T細胞の用量は、投与の数が増加するにつれてCAR+細胞の数が増加する場合がある。例えば、第1の用量は、1×10個のCAR+細胞であり、第2の用量は、1×10個のCAR+細胞であり、第3の用量は、1×10個のCAR+細胞である。或いは、CAR+細胞の第1の用量は、CAR+細胞の第2及び/又は第3の用量より少なく、例えば、第1の用量は、1×10個のCAR+細胞であり、第2及び第3の用量は、1×10個のCAR+細胞である。いくつかの例では、抗CD70 CAR T細胞の用量は、それぞれのその後の用量に関して1.5×108個のCAR+細胞だけ増加し得る。
【0185】
患者は、抗CD70 CAR T細胞のそれぞれの投与の後に再投与について評価され得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞の第1の用量の後、ヒト患者は、患者が以下の1つ以上を示さない場合、抗CD70 CAR T細胞の第2の用量を受容するのに適格であり得る:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全。別の例では、抗CD70 CAR T細胞の第2の用量の後、ヒト患者は、患者が以下の1つ以上を示さない場合、CTX130の第3の用量を受容するのに適格であり得る:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりのヒト患者は、複数の用量の抗CD70 CAR T細胞(例えば、本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞)を与えられ得る、すなわち、再投与され得る。ヒト患者は、合計で最大3用量まで与えられ得る(すなわち、2回以下の再投与)。2つの連続した用量の間の間隔は、約8週~約2年であり得る。いくつかの例では、ヒト患者は、患者が、第1の用量(又は第2の用量)の後に部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)に達し、その後最後の用量の2年以内に進行した場合、再投与され得る。他の例では、ヒト患者は、患者が最近の投与の後にPR(ただしCRではない)又は安定な疾患(SD)に達したとき、再投与され得る。
【0187】
いくつかの場合、抗CD70 CAR T細胞の再投与は、抗CD70 CAR T細胞の第1の用量の12週後までに行われ得る。ヒト患者は、12週目に最大2回再投与され得る。患者が2つの用量を投与されるとき、第2の用量は、第1の用量の3~6週後又は9~12週後に投与され得る。患者が3つの用量を投与されるとき、第3の用量は、第1の用量の9~12週後に投与されてもよく、第2の用量は、第1の用量の3~6週後に投与されてもよい。
【0188】
抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、サイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、神経毒性、移植片対宿主病(GvHD)、及び/又はオンターゲット・オフ腫瘍毒性(例えば、活性化Tリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、骨芽細胞、及び/若しくは腎尿細管様上皮に対する抗CD70 CAR T細胞の活性に起因する)、並びに/又は制御されないT細胞増殖などの急性毒性についてモニターされ得る。加えて、以下の有害作用の1つ以上がモニターされ得る:低血圧、腎不全(例えば、腎尿細管様上皮細胞の抑制によって引き起こされ得る)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、遷延性血球減少症、及び/又は骨芽細胞の抑制。抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされ得る。毒性の発症が観察される場合、ヒト患者は、毒性管理にかけられ得る。急性毒性の1つ以上の症状を示す患者に対する治療は、当技術分野において知られている。例えば、CRSの症状(例えば、心臓、呼吸器及び/又は神経的異常)を示すヒト患者に抗サイトカイン療法を施し得る。加えて、CRSの症状を示さないヒト患者に抗サイトカイン療法を施して、抗CD70 CAR T細胞の増殖を促進し得る。
【0189】
本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞治療法は、以前の抗CD19 CAR T細胞療法、以前の第一選択全身療法、以前の組み合わせ療法、又は以前のモガムリズマブ療法など、以前に抗癌療法を受けたことがあるヒト患者に対して使用され得る。
【0190】
本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞治療法はまた、組み合わせ療法において使用され得る。例えば、本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞治療法は、T細胞又はB細胞悪性腫瘍を治療するか若しくは遺伝子操作されたT細胞集団の有効性を高めるために、且つ/又は遺伝子操作されたT細胞集団の副作用を低減するために他の治療剤とともに使用され得る。
【0191】
IV.造血細胞悪性腫瘍を治療するためのキット
本開示はまた、造血細胞悪性腫瘍、例えば、T細胞悪性腫瘍、B細胞悪性腫瘍、又は骨髄細胞悪性腫瘍を治療するための方法において、本明細書で記載されるとおりのCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の集団の使用のためのキットを提供する。そのようなキットには、1つ以上のリンパ球枯渇剤を含む第1の医薬組成物、任意の核酸又は遺伝子操作されたT細胞の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む第2の医薬組成物、及び薬学的に許容される担体を含む1つ以上の容器を含み得る。
【0192】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のための指示書を含み得る。添付される指示書は、ヒト患者において意図される活性を実現するために、第1及び/又は第2の医薬組成物を対象に投与することに関する説明を含み得る。キットはさらに、ヒト患者が治療を必要とするかどうかを同定することに基づいて、治療に好適なヒト患者を選択することに関する説明を含み得る。いくつかの実施形態では、指示書は、治療が必要なヒト患者に第1及び第2の医薬組成物を投与することに関する説明を含む。
【0193】
本明細書に記載されるCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の集団の使用に関する指示書は、一般に、意図される治療に関する投与量、投与スケジュール、及び投与経路などの情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)又は副単位用量であり得る。本開示のキットにおいて与えられる指示書は通常、ラベル又は添付文書上に記載された指示書である。ラベル又は添付文書は、遺伝子操作されたT細胞の集団が、対象における造血細胞(例えば、T細胞、B細胞、又は骨髄細胞)悪性腫瘍を治療し、発症を遅らせ、且つ/又は軽減するために使用されることを示す。
【0194】
本明細書で提供されるキットは、好適な包装の中にある。好適な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装などが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、鼻腔投与器具、又は注入器具などの特定の器具と組み合わせて使用するための包装も考えられる。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針が貫通可能なストッパーのある静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。容器にも無菌のアクセスポートがあり得る。医薬組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書で開示されるようなCTX130細胞などの抗CD70 CAR-T細胞の集団である。
【0195】
キットは、任意選択により、緩衝剤及び解説情報などの追加の構成要素を提供し得る。通常、キットは、容器及び容器上の又は容器に付随したラベル又は添付文書を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0196】
一般的技術
本開示の実施は、別段の指摘がない限り、当技術分野の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を利用することになる。こうした技術は、例えば下記の文献で十分に説明されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995);DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985;Transcription and Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986;Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986;and B.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.)。
【0197】
当業者であれば、さらなる詳述なしに、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈すべきであり、決して以下の本開示を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的のために又は主題に対して参照により組み込まれる。
【実施例
【0198】
記載される発明がより十分に理解され得るようにするために、以下の実施例が記載される。本出願で記載される実施例は、本明細書で提供される方法及び組成物を説明するために提供されるものであり、いかなる意味でもそれらの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0199】
実施例1:多重遺伝子ノックアウトを有するT細胞の生成。
この実施例は、2つ又は3つの遺伝子の発現を同時に欠くヒトT細胞を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集技術の使用を記載する。具体的には、T細胞受容体(TCR)遺伝子(TCRアルファ定常(TRAC)領域において編集された遺伝子)、β2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子、及び表面抗原分類70(CD70)遺伝子が、列挙された遺伝子の2つ以上においてT細胞欠損を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集によって編集された。以下の略称が、簡潔さ及び明確さのために使用される:
2X KO:TRAC/β2M
3X KO(CD70):TRAC/β2M/CD70
【0200】
活性化された初代ヒトT細胞は、Cas9:gRNA RNP複合体で電気穿孔された。ヌクレオフェクション混合物は、Nucleofector(商標)溶液、5×10細胞、1μMのCas9及び5μMのgRNA(Hendel et al.,Nat Biotechnol.2015;33(9):985-989,PMID:26121415に記載される)を含有した。二重ノックアウトT細胞(2X KO)の生成のために、細胞は、各々が上に示される濃度でCas9タンパク質並びに以下のsgRNA:TRAC(配列番号6)及びβ2M(配列番号10)の1つを含有する2つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。三重ノックアウトT細胞(3X KO)の生成のために、細胞は、各RNP複合体がCasタンパク質並びに以下のsgRNA:(a)TRAC(配列番号6)、β2M(配列番号10)、及びCD70(配列番号2又は66)の1つを含有する3つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号3、7、11、及び/又は67)。表6における配列も参照されたい。
【0201】
【表13】
【0202】
エレクトロポレーションの約1週間後、細胞は、未処理のままであるか又は酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)/イオノマイシンで一晩処理された。翌日、細胞をフローサイトメトリーのために処理して(例えば、Kalaitzidis D et al.,J Clin Invest 2017;127(4):1405-1413を参照のこと)、編集された細胞集団の細胞表面でTRAC、β2M、及びCD70の発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表7)。
【0203】
【表14】
【0204】
表8は、非常に効率的な多重遺伝子編集を示す。三重ノックアウト細胞に関して、生存細胞の80%が、TCR、β2M、及びCD70の発現を欠いた(表8)。
【0205】
【表15】
【0206】
T細胞における三重遺伝子編集が細胞の増殖に影響するかどうかを評価するため、細胞数を、二重及び四重遺伝子編集されたT細胞(未編集のT細胞が、対照として使用された)の間で編集後2週間にわたって数え上げた。5×10細胞が生成され、T細胞の各遺伝子型について蒔かれた。
【0207】
細胞増殖(拡大)は、エレクトロポレーション後の期間の試験にわたって継続した。同様の細胞増殖は、生存細胞の数によって示されるとおり、二重(β2M-/TRAC-)及び三重(β2M-/TRAC-/CD70-)ノックアウトT細胞の間で観察された(データは示さず)。これらのデータは、多重遺伝子編集が、T細胞増殖によって測定されるとおりのT細胞の活力に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0208】
実施例2:多重ノックアウトを有する抗CD70 CAR T細胞の生成。
この実施例は、TCR遺伝子、β2M遺伝子、及び/又はCD70遺伝子の発現を欠き、且つCD70を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する同種異系ヒトT細胞の産生を記載する。これらの細胞は、TCR/β2M/CD70/抗CD70 CAR又は3X KO(CD70)CD70 CAR+と呼ばれる。
【0209】
配列番号43のヌクレオチド配列を含む(配列番号46のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする、配列番号44におけるドナー鋳型を含む)組換えアデノ随伴アデノウイルスベクター、血清型6(AAV6)(MOI 50,000)が、Cas9:sgRNA RNP(1μM Cas9、5μM gRNA)とともに活性化された同種異系ヒトT細胞に送達された。以下のsgRNAを使用した:TRAC(配列番号6)、β2M(配列番号10)、及びCD70(配列番号2又は66)。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号3、7、11、及び/又は67)。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞をフローサイトメトリーのために処理して、編集された細胞集団の細胞表面でのTRAC、β2M、及びCD70発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表9)。
【0210】
【表16】
【0211】
T細胞比率アッセイ。次に、CD4+及びCD8+細胞の比率が、以下の抗体(表10)を使用するフローサイトメトリーによって、編集されたT細胞集団において評価された。
【0212】
【表17】
【0213】
高効率の遺伝子編集及びCAR発現は、編集された抗CD70 CAR T細胞集団において達成された。加えて、編集は、CD4/CD8 T細胞集団を不利に変化させなかった。図1は、三重ノックアウトCAR T細胞における非常に効率的な遺伝子編集及び抗CD70 CAR発現を示す。55%を超える生存細胞が、TCR、β2M、及びCD70の発現を欠き、抗CD70 CARも発現した。図2は、CD4/CD8 T細胞サブセットの正常な比率が、TRAC-/β2M-/CD70-/抗CD70 CAR+細胞において維持されたことを示し、これは、これらの多重遺伝子編集が、CD4/CD8 T細胞サブセットの比率によって測定されるとおり、T細胞の生態に影響を及ぼさないことを示唆している。
【0214】
実施例3:インビトロでの抗CD70 CAR T細胞の細胞増殖に対するCD70 KOの効果
CAR T細胞においてCD70遺伝子を破壊することの影響をさらに評価するため、抗CD70 CAR T細胞が、実施例2に記載されるとおりに生成された。具体的には、TRAC-/β2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞が、2つの異なるgRNA(T7(配列番号2)及びT8(配列番号66))を使用して生成された。エレクトロポレーションの後、細胞増殖は、編集後の2週間にわたって二重又は三重遺伝子編集されたT細胞を数え上げることによって評価された。5×10細胞が生成され、T細胞の各遺伝子型について蒔かれた。増殖は、生存細胞の数を計数することによって決定された。図3は、T7又はT8 gRNAのいずれかで生成された三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞が、二重ノックアウトTRAC/β2M/抗CD70 CART細胞と比較して高い細胞増殖を示したことを示す。これらのデータは、CD70遺伝子をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+T細胞に細胞増殖の優位性をもたらすことを示唆する。
【0215】
実施例4:CD70 KOは、複数の細胞型における細胞の死滅を増進する。
様々な癌細胞株におけるCD70発現。相対的なCD70発現を様々な癌細胞株において測定して、様々な癌型を死滅させる抗CD70 CART細胞の能力をさらに評価した。CD70発現は、Alexa Fluor 647抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355115)を使用するフローサイトメトリー分析によって測定された。癌細胞株は、図4AにおけるFITC抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355105)を使用するフローサイトメトリー分析(表11A、図4A)によってCD70発現について評価された。SKOV-3(卵巣)、HuT78(リンパ腫)、NCI-H1975(肺)及びHs-766T(膵臓)細胞株は、ACHNと同様であるか又はより高いが、A498より低いCD70発現のレベルを示した(表22、図4A)。
【0216】
急性骨髄性白血病(AML)は、高レベルのCD70を発現し得る。CD70発現は、フローサイトメトリー分析によっていくつかの急性骨髄性白血病細胞株:THP-1、MV-4-11、EOL-1、HL-60、Kasumi-1、及びKG1において測定された。表11Bは、これらの細胞がCD70を発現し、本明細書に記載される細胞死滅データによって実証されるとおり、全てが抗CD70 CAR T細胞によって標的化され得ることを示す。
【0217】
【表18】
【0218】
【表19】
【0219】
細胞の死滅。CD70発現細胞を選択的に死滅させる抗CD70 CAR+T細胞の能力が判定された。フローサイトメトリーアッセイを設計して、3X KO(CD70)(TRAC/B2M/CD70)抗CD70 CAR+T細胞によって、癌細胞懸濁液株(例えば、「標的細胞」と呼ばれるK562、MM.1S、HuT78及びMJ癌細胞)の死滅を試験した。使用された標的細胞株のうちの3つは、CD70発現癌細胞(例えば、MM.1S、HuT78、及びMJ)であったが、陰性対照癌細胞として使用された3つ目は、CD70発現を欠く(例えば、K562)。TRAC/B2M/CD70/抗CD70 CAR+T細胞は、CD70発現MM.1S、HuT78若しくはMJ細胞株又はCD70陰性K562細胞株のいずれかと共培養された。標的細胞は、5μM efluor670(eBiosciences)で標識され、洗浄され、96ウェルU底プレートにおいて1ウェル当たり50,000標的細胞の密度で播種された。標的細胞は、様々な比(0.5:1、1:1、2:1及び4:1 CAR+T細胞対標的細胞)でTRAC/B2M/CD70抗CD70 CAR+T細胞と共培養され、一晩インキュベートされた。標的細胞の死滅は、24時間の共培養後に判定された。細胞は洗浄され、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地が各ウェルに加えられた(死/瀕死細胞を数え上げるため)。次に、細胞は、フローサイトメトリーによって分析され、残留している生存標的細胞の量が定量化された。
【0220】
図4B図4C図4D、及び図4Eは、TRAC-/B2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞(例えば、CTX130)による選択的な標的細胞の死滅を実証している。3X KO(CD70)CAR+T細胞との24時間の共培養は、0.5:1の低いCAR+T細胞とCD70発現標的細胞比でさえ、T細胞リンパ腫細胞(HuT78)のほぼ完全な死滅をもたらした(図4D)。同様に、24時間の共培養は、試験された全てのCAR+T細胞と標的細胞の比で多発性骨髄腫細胞(MM.1S)のほぼ完全な死滅をもたらした(図4C)。同様に、24時間の共培養は、試験された全てのCAR+T細胞と標的細胞の比で高CD70発現T細胞リンパ腫細胞(MJ)の効率的な細胞溶解をもたらした。図4Eは、低発現CD70 T細胞リンパ腫細胞(HuT78)と比較した細胞溶解を示す。標的細胞の死滅は、TRAC-/B2M-CD70-/抗CD70 CAR+T細胞が、試験されたいずれのエフェクター:標的細胞比でも対照試料(例えば、癌細胞単独又はRNP T細胞を伴わない共培養物)のレベルを上回るCD70欠損K562細胞の死滅を誘導しなかったという点で選択的であることが見出された(図4B)。図4F~4Kは、TRAC-/B2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞(例えば、CTX130)が、様々なCD70発現AML細胞株を効率的に死滅させることができることを実証している。具体的には、24時間の共培養は、MV411(図4F)、EOL-1(図4G)、HL60(図4H)、Kasumi-1(図4H)、KG1(図4J)、及びTHP-1細胞(図4K)を含む様々な急性骨髄性白血病細胞株の効率的な死滅をもたらした。加えて、データは、急性骨髄性白血病細胞に対する抗CD70 CAR T細胞の死滅効果が、抗CD70 CAR T細胞の用量の増加とともに増大することを実証している。
【0221】
実施例5:CTX130細胞の有効性:皮膚T細胞リンパ腫腫瘍異種移植モデルにおける治療。
T細胞リンパ腫を除去する抗CD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下T細胞リンパ腫(Hu T78又はHh)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0222】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例2を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号46)を使用してTRAC遺伝子座からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70の発現を欠くヒト抗CD70 CAR+T細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号6)、β2M(配列番号10)、及びCD70(配列番号2)を標的化するsgRNAを含有する3種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する-/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するAAV6に送達されるDNA鋳型(配列番号43)(配列番号46のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)による相同組換え修復によって修復された。
【0223】
得られた改変T細胞は、TRAC-/β2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞(CTX130)である。CD70+T細胞リンパ腫細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5~8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg-PrkdcscidI12rgtm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5~7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において3×10個のT細胞リンパ腫細胞(HuT78又はHh)の皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25~75mm(約50mmの標的)に達したとき、マウスはさらに、表12に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表12に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+T細胞を受容した。
【0224】
【表20】
【0225】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後12日目までに、抗CD70 CAR T細胞で治療されたHuT78腫瘍は、5頭の治療されたマウスのうちの4頭において腫瘍体積の減少を示し始めた(図5A)。さらなる腫瘍は、30日目までに及び試験の残りの間に除去された(図5A)。HuT78腫瘍の増殖は、90日の試験期間にわたって著しく阻害された(図5A) 。抗CD70 CAR+T細胞による治療は、45日の期間にわたって試験された全てのマウスにおいてHh T細胞リンパ腫腫瘍の腫瘍増殖を効率的に遅らせた(図5B)。
【0226】
これらのデータは、抗CD70 CAR+細胞(CTX130)が、インビボでのヒトCD70+T細胞リンパ腫腫瘍の増殖を阻害し、確立されたHuT78及びHh T細胞リンパ腫異種移植に対して強力な活性を有することを実証している。
【0227】
実施例6:T細胞又はB細胞悪性腫瘍を有する成人対象における同種異系CRISPR-Cas9操作されたT細胞(CTX130)の安全性及び有効性の第1相非盲検多施設用量漸増及びコホート拡大試験。
CTX130は、CRISPR-Cas9(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質9)遺伝子編集構成要素(単一のガイドRNA[sgRNA]及びCas9ヌクレアーゼ)を使用する、エクスビボで遺伝子改変された同種異系T細胞で構成されるCD70指向性T細胞免疫療法である。改変は、T細胞受容体アルファ定常(TRAC)、ベータ2-ミクログロブリン(B2M)、及びCD70遺伝子座の標的化された破壊並びにアデノ随伴ウイルス(AAV)発現カセットを介するTRAC遺伝子座への抗CD70キメラ抗原受容体(CAR)導入遺伝子の挿入を含む。抗CD70 CAR(配列番号46)は、以前に特徴付けられた抗CD70ハイブリドーマIF6に由来する抗CD70単鎖可変フラグメント(配列番号48)、CD8膜貫通ドメイン(配列番号54)、4-1BB共刺激ドメイン(配列番号57)、及びCD3ζシグナル伝達ドメイン(配列番号61)で構成される。
【0228】
この試験では、適格なヒト患者は、リンパ球枯渇(LD)化学療法後にCTX130の静脈内(IV)注入を受ける。
【0229】
1.試験集団
用量漸増(パートA)は、以下の再発性/難治性T細胞又はB細胞悪性腫瘍を有する成人対象を含む:(a)末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)、(b)未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、(c)菌状息肉症(MF)を含むセザリー症候群(SS)、(d)成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、白血病性及びリンパ腫のサブタイプ、(e)血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫(AITL)、及び(f)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)。コホート拡大(パートB)は、DLBCL並びにパートAにおける登録のための同じ組み入れ及び除外基準を有する対象、並びに本明細書に記載されるT細胞リンパ腫を有する対象を含む。
【0230】
この試験において治療されることになる対象は、T又はB細胞リンパ腫、例えば、CTCL(大細胞リンパ腫、セザリー症候群への転化におけるものを含む、菌状息肉症ステージIIb以上を含む);PTCL:AITL、ALCL(Alk陽性及び陰性)、ATLL(くすぶり型サブタイプを除く)、及びPTCL-NOS);並びに自系CD19指向性CAR T細胞療法に失敗した後のDLBCLを有するものを含んでもよい。
【0231】
2.試験目的及び理論的根拠
第1相用量漸増試験の目的は、再発性又は難治性B細胞悪性腫瘍を有する対象において抗CD70同種異系CRISPR-Cas9操作されたT細胞(CTX130細胞)の安全性及び有効性を評価することである。
【0232】
選択された及び記載されたT又はB細胞リンパ腫(例えば、本明細書で開示されるもの)を有する対象においてアンメットメディカルニーズがある。選択されたT又はB細胞悪性腫瘍は、CD70の高い発現を有することが報告されており、したがって、CAR T細胞に誘導される療法のための潜在的な標的である(Baba et al.,(2008)J Virol 82 3843-52;Lens et al.,(1999)Br J Hematol 106,491-503;McEarchern et al.,(2007)Blood 109,1185-92;Shaffer et al.,(2011)Blood 117,4304-14)。
【0233】
CAR T細胞療法は、顕著な臨床的成功をもたらしたが、承認された製品は、自系であり、患者に特異的な細胞の回収及び製造を必要とする。これらの課題により、登録された対象のうち、自系CAR T細胞製品を決して受容しなかった対象がかなりの割合(1試験でおよそ30%)存在することになった(Schuster et al.,(2019)N Engl J Med 380,45-56)。加えて、それぞれの自系の製品の異質な性質は、研究される疾患徴候の大部分においてCAR T細胞の用量、毒性、及び/又は応答の間の相関を実証することを困難にした(Mueller et al.,(2017)Blood 130,2317-2325)。近年のデータは、出発材料、具体的には、単離されたT細胞の免疫表現型が、疾患応答に影響を及ぼす可能性があることを示唆している(Fraietta et al.,(2018)Nat Med 24,563-71)。これらの知見は、緊急の腫瘍縮小療法が必要なときにそれらの患者に対する同種異系CAR T治療手法の利点を支持する。
【0234】
CTX130は、健康なドナーのT細胞から製造され、製造工程にわたって一貫したCAR発現及び免疫表現型をもたらすことが意図される。加えて、健康なドナー細胞から開始された製造プロセスは、治療中に悪性T細胞を意図せずに伝達するリスクを大幅に減少させる。CAR T細胞で形質導入された悪性B細胞で再発したALLを有する対象の最近報告された症例はさらに、CARの挿入がTCR破壊と連関しないレンチウイルスの手法のこの潜在的なリスクを強調している(Ruella et al.,(2018)Nat Med 24,1499-503)。個々の対象の製造の失敗、スケジュール管理の複雑さ、ブリッジング化学療法と関連する毒性、及び対象に対する白血球除去のリスクは、同種異系CAR T細胞製品に適用されない。CTX130を直ちに投与する能力によって、対象は時宜を得て製品を受容することが可能になり、対象がブリッジング化学療法の必要性を回避する助けとなる。
【0235】
進行性の再発性悪性腫瘍を有する患者から作製される自系CAR T細胞は、早く枯渇する傾向がある可能性がある(Fraietta et al.,(2018)Nat Med 24,563-71;Mackall,(2019)Cancer Research,AACR annual meeting,Abstract PL01-05;Riches et al.,(2013)Blood 121,1612-21)。多重編集された同種異系CAR T細胞に基づく健康なドナーのTリンパ球の使用は、高度に正確な編集ツールであるCRISPR-Cas9により可能になる。
【0236】
CTX130に適用される4つの編集工程が、以下の様式において安全性及び有効性に対処する:
●安全性:内在性TCRを破壊するTRAC遺伝子座の欠失及び移植片対宿主病(GvHD)を抑制する宿主MHCシステムとその相互作用。
●T細胞活性:CD70標的化CARコンストラクトの挿入、B2M遺伝子座の欠失、及びCD70遺伝子座の欠失。
【0237】
CRISPR-Cas9は、相同組換えを介して欠失された遺伝子座としてCARコンストラクトの導入の連関を可能にする。AAVで送達されるDNAドナー鋳型及びHDRを使用するTRACゲノム遺伝子座でのCARの送達及び正確な挿入は、レンチウイルス及びレトロウイルス形質導入などの他の一般的な形質導入方法を使用するランダムな遺伝物質の挿入とは対照的である。TRAC遺伝子座でのCAR遺伝子の挿入は、CARを発現するほぼ全ての細胞でのTCRの除去をもたらす。内在性TCRのCRISPR-Cas9に媒介される破壊は、GvHDのリスクを著しく低減できるか又は除去できるが、MHCクラスIタンパク質の破壊は、CAR T細胞の持続を増大させると仮定される。CD70遺伝子座の欠失は、CTX130の持続を増大させ、活性化CAR T細胞上での発現の上昇を介して潜在的な相互作用を低減することが意図される。
【0238】
3.試験の目的
主要目的、パートA(用量漸増):再発性/難治性T又はB細胞悪性腫瘍を有する対象においてCTX130の用量漸増により安全性を評価すること及び推奨されるパートBの用量(RPBD)を決定すること。
【0239】
主要目的、パートB(コホート拡大):Lugano効果判定基準に従う奏効率(ORR)によって測定されるとおり、DLBCL(例えば、以前の自系CD19指向性CAR-T療法が無効であったもの)、及び上で開示されるT細胞リンパ腫の他の型を有する対象におけるCTX130の有効性を評価すること(Cheson et al.,(2014)J Clin Oncol 32,3059-68)。
【0240】
副次的目的(パートA及びB):経時的な奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪期間(TTP)を含むCTX130の活性を評価すること;サイトカイン放出症候群(CRS)及び移植片対宿主病(GvHD)を含む目的の有害事象(AE)を記載し、評価すること;並びに血中のCTX130の薬物動態(増殖及び持続)を特徴付けること。
【0241】
探索的目的(パートA及びB):疾患、臨床効果、抵抗性、又は安全性と関連するゲノム、代謝、及び/又はプロテオミクスバイオマーカーを同定すること;臨床効果に関連する可能性がある薬力学的活性を特徴付けること;さらにCTX130の有効性のキネティクスを記載すること、及び患者報告アウトカム(PRO)に対するCTX130の影響を記載すること。
【0242】
4.試験適格性
4.1 組み入れ基準
本試験に参加するのに適格であるとみなすには、対象は以下に列挙される組み入れ基準を満たさなければならない:
1.≧18歳及び体重≧60kg。
2.治験実施計画書に必要とされる試験手順を理解して遵守することができ、自発的に書面のインフォームドコンセント文書に署名することができる。
3.T細胞リンパ腫を有する対象については、以下のもののみが登録される:
●以下のサブセットを含むT細胞悪性腫瘍の確定診断:
a)PTCL-NOS、
b)ALCL、
c)MF≧ステージIIBを含むSS(例えば、移植を必要とする場合がある)、
d)ATLLの白血病性及びリンパ腫のサブタイプ、
e)血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)。場合により、スクリーニング期間の前又はその間に滲出を有した対象は除外され得る。
●PTCL-NOS、ATLL、又はAITLを有する対象は、1つ以上の選択全身療法が無効でなければならなかった。
●ALCLを有する対象は、組み合わせ化学療法及び/若しくはブレンツキシマブベドチンの組み合わせ又は単剤での療法が無効であったか、不適格であったか、又は拒否されなければならなかった。
o未分化リンパ腫キナーゼ陰性(ALK)ALCLを有する対象は、前の1つの選択療法が無効でなければならなかった。
o未分化リンパ腫キナーゼ陽性(ALK)ALCLを有する対象は、前の2つの選択療法が無効でなければならなかった。
●菌状息肉症(MF)又はセザリー症候群(SS)を有する対象は、少なくとも、以下の全身療法の少なくとも2つが無効でなければならなかった:ブレンツキシマブベドチン、ロミデプシン(又は他の指定のヒストンデアセチラーゼ[HDAC]阻害剤)、プララトレキサート、モガムリズマブ、又は化学療法。モガムリズマブが、登録の前の最後の療法であった場合、モガムリズマブの最後の投与とCTX130の注入の間が少なくとも3ヶ月でなければならない。
4.B細胞リンパ腫を有する対象に関して:自系CD19 CAR T細胞療法に適格であるが、それによる治療の試みが無効であった対象におけるDLBCL。
5.対象は、以下のいずれかの適用可能な現地の要件(例えば、臨床検査改善修正法案[CLIA]又は米国以外の場所において均等物)を満たす検査機関によって決定されるとおりのCD70発現腫瘍を有しなければならない:
●代表的な腫瘍病変の切除生検又はコア生検によって回収される組織における免疫組織化学(IHC)によるCD70の陽性(細胞の≧10%)。
●スクリーニング時に末梢血液又は骨髄において収集される免疫表現型検査によって定義される腫瘍細胞におけるフローサイトメトリーによるCD70の陽性(細胞の≧10%)。
6.登録前の3ヶ月以内及び進行後の最後の全身療法又は標的化療法後に実施された生検が利用可能である場合を除いて、スクリーニング時に腫瘍病変の新たに得られたコア生検又は切除生検からの組織を提供すること。
7.0~1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンス・ステータス(表13を参照のこと)。
8.本明細書に記載されるLD化学療法及びCAR T細胞注入を受ける判定基準を満たす。
9.十分な臓器機能:
●腎臓:クレアチニンクリアランス(CrCl)≧50mL/分
●肝臓:
oアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)<3×正常範囲上限(ULN);
o総ビリルビン<2×ULN(ジルベール症候群:総ビリルビン<3mg/dL及び正常な抱合ビリルビンに関して)。
●心臓:血行動態的に安定しており、心エコー像による左室駆出率(LVEF)≧45%。
●肺:パルスオキシメトリーによる室温での酸素飽和レベルが>92%であること。
●血液学:血小板数>25,000/mm及び好中球絶対数>500/mm
10.妊娠可能な女性患者(初経後、正常な子宮及び少なくとも1つの卵巣を有し、閉経後1年未満である)は、登録からCTX130注入後の少なくとも12ヵ月にわたって、高い効果のある許容可能な避妊方法を使用することに同意しなければならない。
11.男性患者は、登録からCTX130注入後の少なくとも12ヵ月にわたって、許容される高い効果のある避妊方法を使用することに同意しなければならない。
【0243】
【表21】
【0244】
4.2 除外基準
本試験に参加するのに適格となるためには、対象は以下に列挙される除外基準のいずれも満たさないことが必要となる:
1.以前の同種異系幹細胞移植(SCT)。
2.スクリーニングの時点で自系SCTから60日未満及び未回復の重篤な合併症を有する。
3.抗CD70標的化薬剤による以前の治療。
4.DLBCLを有する対象に関して、自系CAR19 CAR T細胞を除くCAR T細胞又は他の改変T若しくはナチュラルキラー(NK)細胞による以前の治療。
5.いずれかのLD化学療法剤又はCTX130製品の賦形剤のいずれかに対する既知の禁忌。
6.症候性であるか又は症候性であった現在又は過去の悪性貯留液を伴うT細胞又はB細胞リンパ腫。
7.血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の臨床徴候:発熱、二系統血球減少、高トリグリセリド血症又は低フィブリノーゲン血症及びフェリチン>500μg/Lの組み合わせ。
8.スクリーニング画像診断における潜在的な疾患の中枢神経系(CNS)の活動性の徴候。
9.てんかん発作、脳卒中、重度の脳損傷、小脳疾患、脊髄症(例えば、熱帯性痙性不全対麻痺症)、以前の療法による可逆性白質脳症(PRES)の病歴、又はCAR Tに関連する毒性を増加させる可能性のある別の状態などの臨床的に意味のある中枢神経系(CNS)病態の病歴又は存在。
10.スクリーニング前の6ヵ月以内の不安定狭心症、不整脈、又は心筋梗塞。
11.制御されない急性の生命を脅かす細菌、ウイルス、又は真菌感染症。
12.ヒト免疫不全ウイルス1型若しくは2型(HIV-1又はHIV-2)、又は活動性B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス感染の存在について陽性である。ウイルス量が検出できない(定量的ポリメラーゼ連鎖反応又は核酸試験による)と記録されている、B型又はC型肝炎感染症の前病歴を有する対象は容認される。
13.全身療法(許容される抗ホルモン療法)を必要としない治癒手法で治療され、12ヶ月を超えて寛解しているものを除く、以前の又は同時的な悪性腫瘍。
14.ステロイド及び/又は他の免疫抑制性の療法を必要とする原発性免疫不全障害又は活動性自己免疫疾患。
15.以前の固形臓器移植。
16.登録の14日前に放射線療法を含む抗腫瘍薬剤の以前の使用。治験薬に関して、休薬時間は、メディカルモニターと協議する必要がある。ステロイドの生理的用量の使用は、以前にステロイドを使用した対象については許容される。必要であれば、ATLLを有する対象については髄腔内予防が許容される。RANKL阻害剤であるデノスマブを受容するATLLを有する対象は、少なくとも4週間療法を受けるべきであり、補正された血清カルシウムレベルを安定化しなければならなかった;血清カルシウムレベルが、>11.5mg/dL若しくは>2.9mmol/Lであるか、又はイオン化したカルシウムのレベルが、>1.5mmol/Lである場合除外される。モガムリズマブのようなCCR-4指向性の抗体の使用は、CTX130注入の3ヶ月前に禁止される。
17.患者が試験に参加する能力を深刻に妨害し得る重大な精神障害の診断。
18.登録前28日以内に生ワクチン又は漢方医学の一部として漢方薬を受容したか又は市販の漢方薬以外のものを受容した。
19.妊娠中又は授乳中の女性。
【0245】
5.試験デザイン
5.1 治験計画
これは、再発性又は難治性T又はB細胞悪性腫瘍を有する18歳以上の対象における非盲検多コホート多施設用量漸増第1相試験である。試験は、用量漸増(パートA)、その後のコホート拡大(パートB)の2つのパートに分かれている。
【0246】
パートAにおいて、用量漸増は、以下のうちの1つを有する成人対象において開始する:
1.T細胞悪性腫瘍:
●PTCL-NOS、白血病性及びリンパ腫のATLL、又はAITLを有する対象は、1つ以上の選択全身療法が無効でなければならなかった。
●ALCLを有する対象は、組み合わせ化学療法及び/又はブレンツキシマブベドチンによる療法が無効であったか、不適格であったか、又は拒否されなければならなかった。
oALK-ALCLを有する対象は、前の1つの選択療法が無効でなければならなかった。
oALK+ALCLを有する対象は、前の2つの選択療法が無効でなければならなかった。
●MF又はSSを有する対象は、少なくとも1つの前の療法が無効でなければならなかった。SSを有する対象は、必要があれば、モガムリズマブ治療を含む前の全身療法が無効でなければならなかった。モガムリズマブが、登録の前の最後の療法であった場合、モガムリズマブの最後の投与とCTX130の注入の間が少なくとも3ヶ月の期間でなければならない。
2.B細胞悪性腫瘍:
●自系CD19 CAR T細胞療法による治療の試みが無効であった対象におけるDLBCL。
【0247】
用量漸増は、本明細書に記載される判定基準に従って実施される。
【0248】
パートBにおいて、拡大コホートは、自系CD19 CAR T細胞による以前の治療の試みが無効であったDLBCLを有する対象におけるRPBDでのCTX130の安全性及び有効性をさらに評価するために開始される。DLBCLを有する対象は、パートAにおける登録に必要な同じ組み入れ及び除外基準に従ってパートBに登録される。この拡大は、自系CD19 CAR T療法後の患者において18%未満のORRを拒絶するように設計される。
【0249】
5.1.1 試験デザイン
試験は、用量漸増(パートA)、その後のコホート拡大(パートB)の2つのパートに分かれている。試験の両方のパートは、3つの主要な段階:スクリーニング、治療、及び追跡調査からなる。試験スキームの概略図を図6に示す。
【0250】
試験の3つの主要な段階は、以下のとおりである:
段階1-治療に対する適格性を判断するためのスクリーニング(最大14日間)。
段階2-治療。
段階2A-LD化学療法:1日当たりフルダラビン30mg/m及びシクロホスファミド500mg/mIVで3日間の同時投与。両方の薬剤は、同じ日に開始され、3日間連続して投与される。LD化学療法は、CTX130注入の前に少なくとも48時間(ただし7日以下)で完了されなければならない。
段階2B-CTX130注入:LD化学療法の3日の過程の完了後に少なくとも48時間(ただし7日以下)投与される。
臨床的適格性-LD化学療法の開始及びCTX130の注入の両方の前に、本明細書で提供される判定基準に従って対象の臨床的適格性を再確認する必要がある。
段階3-追跡調査(最後のCTX130注入の5年後)
【0251】
CTX130注入期間後の間、対象は、CRS、神経毒性、GvHD、及び他のAEを含む急性毒性(1~28日目)についてモニターされる。毒性管理のガイドラインは、本明細書に記載される。パートA(用量増量)中、全対象は、CTX130注入後最初の7日間入院するが、現地の規制又は現場の慣習により必要とされる場合、それより長期間入院する。パートA及びパートBの両方において、対象は、CTX130注入後の28日間、治験現場の近辺の範囲内(すなわち、1時間の移動時間)に留まる必要がある。
【0252】
急性毒性の観察期間の後、対象は、CTX130注入後の最大5年間、身体検査、定期臨床検査評価及び画像診断評価、並びにAE評価によって引き続き追跡調査される。本試験の完了後、長期安全性及び生存期間を評価するために、対象はさらに10年間、別の長期の追跡調査試験に参加することが必要となる。
【0253】
5.2 CTX130用量漸増
CTX130細胞は、CAR+T細胞の数に基づいて固定用量スキームを使用してIV投与される。この試験において漸増される用量レベルは、表14において示される。全ての用量レベルに1×10個のTCR+細胞/kgの用量制限が課せられ得る。
【0254】
【表22】
【0255】
用量漸増は、標準的な3+3デザインを使用して実施され、その中で3~6名の対象は、本明細書に記載されるとおり、用量規制毒性(DLT)の発生に応じて各用量レベルで登録される。
【0256】
用量漸増は、以下の規則に従って実施される:
●3名の対象のうちの0名がDLTを経験する場合、次の用量レベルに漸増する。
●3名の対象のうちの1名がDLTを経験する場合、目下の用量レベルを6名の対象に拡大する。
o6名の対象のうちの1名がDLTを経験する場合、次の用量レベルに漸増する。
o6名の対象のうちの2名以上がDLTを経験する場合:
・用量レベル-1の場合、代替的な投薬計画を評価するか又はパートBコホート拡大のための推奨用量を決定できないことを申告する。
・用量レベル1の場合、用量レベル-1に漸減する。
・用量レベル2~4の場合、以前の用量レベルを最大耐用量(MTD)であると申告する。
●3名の対象のうちの2名以上がDLTを経験する場合:
o用量レベル-1の場合、代替的な投薬計画を評価するか又はパートBコホート拡大のための推奨用量を決定できないことを申告する。
o用量レベル1の場合、用量レベル-1に減少させる。
o用量レベル2~4の場合、以前の用量レベルをMTDであると申告する。
●DL2とDL3の間の中間の用量、例えば、1.5×10個のCARCTX130細胞が許容されることになる。
●DL3とDL4の間の中間の用量、例えば、4.5×10、6×10、又は7.5×10個のCAR CTX130細胞が許容されることになる。
●表14に列挙される最も高い用量を超える用量漸増はない。
【0257】
5.2.1 用量規制毒性(DLT)の定義
DLT評価期間は、CTX130注入とともに開始し、28日間継続する。全ての用量レベル(-1~4)において、対象1~3は、ずらされた様式で治療され、その結果、対象は、前の対象がDLT評価期間を完了してから(すなわち、少なくとも28日間ずらされる)CTX130を受容するだけである。各用量レベル間の投与はまた、少なくとも28日ずつずらされ得る。
【0258】
対象は、DLTを評価するためにCTX130を受容する必要がある。CTX130注入前の任意の時点で対象が毒性以外の理由のために試験を中断した場合、対象はDLTの評価を受けることはなく、この中断した対象と同じ用量レベルで代替の対象が登録されることになる。DLTが評価可能な対象(すなわち、CTX130を投与された対象)が、潜在的なDLTの徴候又は症状を有する場合、DLT評価期間は、DLTが申告される前に改善又は回復が可能になるように延長され得る。
【0259】
毒性は、CRS(ASTCT判定基準;米国移植細胞治療学会判定基準;Lee判定基準)、神経毒性(ICANS判定基準;免疫エフェクター細胞に関連する神経毒性症候群の判定基準、CTCAEバージョン5.0;Lee判定基準)、及びGvHD(MAGIC判定基準;Mount Sinai Acute GvHD International Consortium判定基準;Harris et al.,(2016)Biol Blood Marrow Transplant 22,4-10)を除いて、NCI有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン5.0に従って等級分けされ、記録される。CTX130との妥当な因果関係のないAEは、DLTであるとみなさないことになる。
【0260】
DLTは、
A.グレード4のCRS
B.ステロイド抵抗性のグレード≧2のGvHD(例えば、ステロイド治療[例えば、1mg/kg/日]の3日後の進行性疾患、又は治療の7日後に応答を有しないこと)ステロイド抵抗性ではなく、且つ14日以内にグレード1に回復するGvHDは、DLTとして定義されないことになる(GvHDの等級分けは、表34において提供される)
C.グレード3又は4の神経毒性(ICANS判定基準に基づく)
D.DLT期間中の死亡(疾患進行に起因するものを除く)
E.28日以内に≦グレード2に回復しない任意のグレード4の血液学的毒性
F.根底にある悪性腫瘍に関連しないか又はその進行が以下の例外を有してDLTとみなされる任意の期間の任意のグレード≧3のCTX130治療により発現する重要臓器毒性(例えば、肺、心臓)
として定義される。
【0261】
【表23】
【0262】
6.試験手順
用量漸増及び試験の拡大パートの両方は、3つの別々の段階からなる:(1)スクリーニング及び適格性の確認、(2)LD化学療法及びCTX130注入、並びに(3)追跡調査。スクリーニング期間中、対象は、本明細書に記載される適格性の判定基準に従って評価される。登録の後、対象は、LD化学療法に続いてCTX130の注入を受ける。治療期間が完了した後、対象は、腫瘍応答、疾患進行、及び生存について評価される。全ての試験期間にわたって、対象は、安全性に関して定期的にモニターされる。
【0263】
評価の完全なスケジュールは、表15及び表16において提供される。欠損した評価は、予定を変更され、可能な限り最初に予定された日と近い日に実施されるべきである。ただし、予定の変更が、医師の見解により、次の評価予定日に近すぎるため、医学的に不必要又は安全でないと判断された場合は例外とする。その場合、欠損した評価は中止されるべきである。
【0264】
このプロトコルの目的のために、0日目はない。全ての来院日及び期間は、CTX130注入の日としての1日目を使用して計算されることになる。
【0265】
6.2 免疫エフェクター細胞関連脳症(ICE)評価
認知神経科学的な評価は、ICE評価を使用して実施されることになる。ICE評価ツールは、CARTOX-10スクリーニングツールのわずかに改変されたバージョンであり、これは現在、受容性失語症に関する試験を含む(Neelapu et al.,(2018)Nat Rev Clin Oncol 15,47-62)。ICE評価は、認知機能の様々な領域:見当識、命名、命令の追従、記述、及び注意力(表17を参照のこと)を試験する。
【0266】
【表24】
【0267】
ICE評価は、スクリーニング時、1日目のCTX130の投与前、並びに2日目、3日目、5日目、7日目、及び28日目に実施される。対象がCNSの症状を示す場合、症状が回復するまでICE評価を約2日毎に継続して実施する必要がある。変動性を最小限に抑えるために、可能な限り、ICE評価ツールの実施に精通しているか又は訓練を受けた同一の研究スタッフによって評価が実施されるべきである。
【0268】
6.3 患者報告アウトカム
5つのPRO調査である欧州癌研究治療機関(EORTC)QLQ-C30、EuroQol EQ-5D-5L質問票、癌治療の機能評価-一般(FACT-G)、SS及びMFのためのSkindex-29質問票、並びにSS及びMFのための皮膚科関連の日常生活の質に関する評価指標(DLQI)質問票が、表15及び表16におけるスケジュールに従って施される。質問票は、臨床評価が実施される前に完了されるべきである(対象が最も慣れ親しんでいる言語で自記式)。
【0269】
EORTC QLQ-C30は、癌における生活の質を測定するために設計された質問票である。それは、5つの多項目機能尺度(身体、役割、社会、感情、及び認知機能)、3つの症状尺度(疲労、嘔気、痛み)、及び追加の単一症状項目(経済的影響、食欲不振、下痢、便秘、睡眠障害、及び生活の質)から構成される。EORTC QLQ-C30は、検証され、癌患者の中で広く使用されてきた(Wisloff et al.,(1996)Br J Haematol 92,604-13.;Wisloff and Hjorth,(1997)Br J Haematol 97,29-37)。それは、4段階の尺度(1=全くない、2=少し、3=かなり、4=極度)でスコア化される。EORTC QLQ-C30書類はまた、アンカーを伴う7段階の尺度を使用する2つの包括的尺度を含有する(1=非常に悪い及び7=良好)。
【0270】
EQ-5D-5Lは、健康状態の一般的な尺度であり、移動性、自己ケア、日常生活、痛み/不快感、及び不安/抑うつを含む5つのドメインを評価する質問票と視覚的アナログスケールを含有する。EQ-5D-5Lは、QLQ-C30と組み合わせて使用されている(Moreau et al.,(2019)Leukemia 33,12:2934-2946)。
【0271】
FACT-Gは、4つのドメインにおいて癌療法の影響を測定する検証された27項目の書類である:身体的、社会的/家族、感情的、及び機能的幸福。FACT-Gの総スコアは、全27項目に基づき、0~108の範囲であり、スコアが高いほど生活の質がより良好であることを示す(Cella et al.,(1993)J Clin Oncol 11,570-9)。
【0272】
Skindex-29は、3つのドメインにおいて生活の質に対する皮膚疾患の影響を測定するために設計される:症状(7項目)、感情(10項目)、及び機能(12項目)。全ての応答は、100の線形尺度に変換され、0(影響なし)から100(影響を常時経験した)までである。スコアは、3つのドメインに対応する3つの尺度スコアとして報告される;尺度スコアは、所与のドメインにおける項目に対する患者の応答の平均である(Chren,(2012)Dermatol Clin 30,231-6)。
【0273】
【表25】
【0274】
【表26】
【0275】
【表27】
【0276】
【表28】
【0277】
【表29】
【0278】
DLQIは、生活の質に対する皮膚疾患の影響を測定するために使用される10個の質問の質問票である。10個の質問は、以下のトピックを網羅する:症状、機能障害、買い物及び在宅ケア、衣服、社会及びレジャー、スポーツ、仕事又は勉強、親密な関係、性、及び治療。各質問は、0~3にスコア化され、0(生活の質に対する皮膚疾患の影響がないことを意味する)から30(生活の質に対する最大限の影響を意味する)の可能なスコア範囲を与える(Finlay and Khan,(1994)Clin Exp Dermatol 19,210-6)。
【0279】
6.4 B細胞及びT細胞リンパ腫疾患及び効果判定
疾患評価は、PTCL-NOS、ALCL、白血病性及びリンパ腫のATLL、AITL、及びDLBCLを有する対象に関してはLugano効果判定基準(Cheson et al.,(2014)J Clin Oncol 32,3059-68;第6.10節を参照のこと)に従う評価、及びSS又はMFを有する対象に関してはISCL効果判定基準(Olsen et al.,(2011)J Clin Oncol 29,2598-607;第6.11節を参照のこと)による評価に基づく。
【0280】
脳における疾患評価は、スクリーニング中の対象における脳障害を除外するためにMRIによって実施されるべきである。
【0281】
(Olsen et al.,(2011)J Clin Oncol 29,2598-607)に従って、SSを有する対象は必ず:
●Lugano判定基準に従って測定可能な疾患;体表面積の≧80%を有するSS及び血液障害に関する定義を満たす
●少なくとも80%の体表面積を覆う紅斑として定義される紅皮症
●ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はサザンブロット分析により同定される血液中のクローンT細胞受容体(TCR)再編成
●≧1000/μLの血液中のセザリー細胞の絶対数又は以下の2つの判定基準の1つ:
o10以上のCD4とCD8比を有するCD4+又はCD3+細胞の増加
o異常な表現型を有するCD4+細胞の増加(CD4+CD7-比≧40%又はCD4+CD26-比≧30%など)
を有する。
【0282】
有効性分析のために、疾患転帰は、非FDG(フルオロデオキシグルコース)要求性疾患のためのPET/CTイメージング又はCTイメージングに関して評価されるとおりの以下の腫瘍サブタイプに関するLugano効果判定基準を使用して等級分けされる:
●PTCL-NOS
●ALCL
●白血病性及びリンパ腫のATLL
●AITL
●DLBCL
【0283】
ATLL高カルシウム血症を有する対象に関して、紅斑は、活動性疾患が持続する限りPDとみなされず、施設のガイドラインに従って対症的に治療されるべきである。ATLL細胞の末梢血液レベルの変化は、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD52などのマーカーに基づく免疫表現型検査によってモニターされ、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)プロウイルス量は、探索的評価項目になる。
【0284】
リンパ節測定値が減少した状況におけるリンパ球増加の増大は、PDとみなされず、効果の指定は、リンパ節及びリンパ節外疾患の測定値に依存するべきである。
【0285】
非CTCLにおける皮膚病変に関する疾患測定は、本明細書に記載されるとおりの皮膚病変の効果判定に関するガイドラインに従うべきである。
【0286】
ISCL効果判定基準は、CT(又は必要が示される場合、PET/CT)イメージングに関して評価されるとおりのSS又はMFを有する対象について使用される。紅皮症紅斑は、最初の2ヶ月間は疾患進行とみなされない。
【0287】
T細胞リンパ腫疾患及び効果判定は、表15及び表16におけるスケジュールに従って実行されるべきであり、本明細書に記載される評価を含む。全ての応答カテゴリー(進行を含む)は、いずれかの新たな療法の開始の前の任意の時点で少なくとも1週間離れてなされた2つの連続した評価を必要とする。
【0288】
6.5 CTX130前の生検
T細胞リンパ腫サブタイプの病理組織学的診断は、現地及び中央検査機関の評価に基づく。
【0289】
対象は、スクリーニング時に腫瘍生検を受ける必要があるか、又は登録前の3ヶ月以内及び最後の全身療法若しくは標的化された療法後に生検が実施された場合、保存用の組織が提供され得る。保存用の組織が、中央検査機関の要件を満たすのに不十分な体積又は質のものである場合、生検は、スクリーニング中に実施される必要がある。骨生検及び他の脱灰組織は、下流のアッセイとの干渉のために許容されない。組織生検の一部は、分析のために中央検査機関に提出される。
【0290】
保存用の腫瘍組織試料は、腫瘍に固有であり且つTME特異的なバイオマーカーについて分析され得る(DNA、RNA、タンパク質、及び代謝産物の分析を含む)。
【0291】
6.6 全身PET/CT放射線疾患評価
スクリーニング時(すなわち、CTX130注入前の28日以内)及び疑わしいCR時に実施されることになる全身(頸部を含む)ポジトロン放出断層撮影(PET)/CT及びMRI脳スキャン。注入後スキャンは、表15及び表16における評価のスケジュールに従って、治験実施計画書に定義される効果判定基準(第6.10節及び第6.11節を参照のこと)に従って、並びに全てのベースラインのFDG要求性リンパ腫に関して臨床的に必要が示される場合、実施される。PET/CTによる非FDG要求性疾患は、CTによって追跡可能である。
【0292】
造影によるMRIは、CTが臨床的に禁忌であるとき又は現地の規制によって要求される場合、CT部分について使用され得る。PETを診断品質CTとともに実施できない場合、別の診断CTが実施されなければならない。
【0293】
可能な限り、放射線疾患評価のために使用される画像化モダリティ、装置、及びスキャンパラメーターは、試験の間一貫して保持されるべきである。有効性分析に関して、放射線疾患評価が、治験実施計画書に定義される効果判定基準に従って実施される。
【0294】
6.7 皮膚評価
皮膚評価は、表15及び表16に指定されるとおりに実施される。最初の皮膚疾患評価は、LD化学療法の3回目の投与の後及びCTX130注入の前に実施されるべきである。MF及びSSの予後は、皮膚病変及び真皮外疾患の種類及び程度に依存する(Olsen et al.,(2011)J Clin Oncol 29,2598-607)。コンセンサスガイドライン(ISCL、米国皮膚リンパ腫コンソーシアム USCLC]);皮膚、リンパ節、血液、及び内臓において腫瘍量を評価するためのスコア化方式を含むEORTCの皮膚リンパ腫タスクフォース;皮膚、リンパ節、血液、及び内臓における応答の定義;並びに複合性の包括的な応答スコアに基づく推奨は、第6.11節において示される。効果判定は、代表的な領域の写真の記録によって支持されるべきである。
【0295】
6.8 骨髄生検及び吸引
スクリーニング時の骨髄生検及び吸引回収は、全ての対象について実施される。対象がスクリーニング時のBM浸潤に関して陰性である場合、28日目にはBM生検及び吸引回収のみが行われる。そうでなければ、スクリーニング時にBM浸潤について陽性の対象に関するCRを確認するために追加のBM生検及び吸引回収が行われる。PET/CTスキャンで判定された際にCRを達成するBM障害の病歴を有する対象は、効果判定を確認するためにBM生検を有する。対象が再発の徴候を示す場合、生検は繰り返されるべきである。
【0296】
CTX130の存在に関する試料(PCRを介して検出される)が、BM分析が実施されるときに任意の時点で中央検査機関評価のために送られるべきである。CTX130注入後のBM吸引からの試料は、CTX130 PK及び探索的バイオマーカーのために送られるべきである。BM生検のための標準的な施設ガイドラインに従うべきである。余分な試料(入手可能であれば)は、探索的研究のために保管され得る。
【0297】
6.9 腫瘍生検
対象は、スクリーニング時に腫瘍生検を受ける必要があるか、又は登録前の3ヶ月以内及び最後の全身療法若しくは標的化された療法後に進行後の生検が実施された場合、保存用の組織が提供され得る。保存用の組織が、中央検査機関の要件を満たすのに不十分な体積又は質のものである場合、生検は、本明細書に記載されるとおりのスクリーニング中に実施される必要がある。
【0298】
腫瘍生検は、7日目(+2日;又は臨床的に実行可能である限りすぐ)及び28日目(±2日)に実施される。対象が試験中に再発が発生する場合、再発した腫瘍の生検を得て、中央検査機関に送るようにあらゆる試みがなされるべきである。
【0299】
生検は、測定可能であるが標的ではない病変から得るべきである。複数の生検が得られるとき、同様の組織からそれらを得る試みがなされるべきである。肝臓転移は一般に、望ましくない。骨生検及び他の脱灰組織は、下流のアッセイとの干渉のために許容されない。この試料は、CTX130の存在並びにDNA、RNA、タンパク質及び代謝産物の分析を含む腫瘍に固有の及びTME特異的なバイオマーカーについて分析される。
【0300】
6.10 Lugano効果判定基準、2014
以下のことが、Cheson et al.,(2014)J Clin Oncol 32,3059-68から適応させられる。
【0301】
診断:穿刺吸引は、最初の診断にとって不十分である。切開性又は切除生検は、これらの試験のために十分な組織を提供することが好ましい。コア針生検は、切除生検が不可能であるとき及び再発を記録するために検討され得る;しかしながら、診断用ではない試料は、切開性又は切除生検によって追跡されなければならない。
【0302】
ベースラインの部位障害:部位障害のための判定基準は、表18において要約される。
【0303】
【表30】
【0304】
画像診断:ポジトロン放出断層撮影(PET)-コンピューター断層撮影(CT)は、慣例上のフルオロデオキシグルコース(FDG)要求性組織構造の段階分けのために使用されるべきである。スキャンは、リンパ節及びリンパ節外の部位における病巣の位置を記述する視覚評価とともに報告されるべきである。画像は、固定的な標準化された取り込み値及び色表に調整され;且つ分布及び/又はCTの特徴に従って、生理的取り込み及び疾患の他のパターンから区別されるべきである。
【0305】
PET-CTスキャンは、以下のとおりに実施されるべきである:
●中間スキャンのために最後の化学療法投与後にできるだけ長く
●理想的には治療の終了時の化学療法後6~8週間(ただし、最低3週間)
●放射線療法後≧3ヶ月間
【0306】
造影CTスキャンは、リンパ節サイズのより正確な測定のため、及び腸をリンパ節腫脹からより正確に区別するため;並びに中央/縦隔血管の圧縮/血栓症の状況において含まれ得る。造影CTもまた、放射線計画のために好ましい。不定のFDG要求性組織構造は、CTスキャンにより段階分けされるべきである。
【0307】
CTにより段階分けされた対象に関して、疾患は、表19に従って評価されるべきである。
【0308】
【表31】
【0309】
腫瘍塊:複数のより小さいリンパ節とは対照的なCTによって決定されるとおりの胸椎のいずれかのレベルでの経胸壁直径の3分の1より10cm以上大きい単一のリンパ節腫瘤は、ホジキンリンパ腫(HL)に関する巨大腫瘤病変の定義である。胸部X線は、塊を判断するのに要求されない。HL及び非ホジキンリンパ腫(NHL)に関して、CTスキャンによる最長の測定値が記録されるべきである。
【0310】
総腫瘍体積の測定値は、PET及びCTにより潜在的な予後因子として探索されるべきである。
【0311】
脾臓肝臓及び骨髄障害:脾臓及び肝臓障害は、表20に記載されるとおりのPET-CTによって判断するのが最もよい。
【0312】
【表32】
【0313】
骨髄障害は、以下のとおりに判断され得る:
●HL、PET-CTが実施される場合、骨髄生検(BMB)は要求されない。
●DLBCL、PETが陰性の場合、BMBであり、不調和な組織構造を同定することが対象の管理にとって重要である。
●他のサブタイプ、スクリーニング/ベースライン時の免疫組織化学及びフローサイトメトリーとともに約2.5cmの片側BMBが推奨される。
●ベースライン時に障害がない場合、CRに関しては正常であり、完全代謝効果(CMR)に関しては骨髄におけるFDG要求性疾患のエビデンスがなければならない。
【0314】
段階分け方式:改変されたAnn Arbor段階分け方式が、疾患の程度の解剖学的な記述のために使用されるべきである(表21)。
【0315】
【表33】
【0316】
効果判定:PET-CTは、5点尺度を使用して、FDG要求性組織構造における効果判定のために使用されるべきである;CTは、低い又は可変のFDG要求性にとって好ましい。
【0317】
寛解後のサーベイランススキャンは、特に、DLBCL及びHLのために阻止されるが、反復試験が、治療後の不確かな所見の後に検討されてもよい。
【0318】
追跡調査のスキャンの適切な判断の使用は、残存する腹腔内又は後腹膜疾患を有する低悪性度のリンパ腫において検討されてもよい。
【0319】
効果に関する判定基準は、表22において要約される。
【0320】
【表34】
【0321】
【表35】
【0322】
【表36】
【0323】
6.11 皮膚リンパ腫効果判定基準に関する国際学会、2011
以下のことが、Olsen et al.,(2011)J Clin Oncol.29,18:2598-607から適応させられる。
【0324】
定義:使用されることになる斑点、プラーク、及び腫瘍の定義は、表23に概説される。
【0325】
【表37】
【0326】
【表38】
【0327】
診断:病理組織学的診断は、皮膚リンパ腫の専門知識を有する病理学者によって既存の疾患を表す皮膚生検において確認されるべきである。セザリー症候群(SS;TとB判定基準を満たすように定義される)に関して、紅皮症皮膚の生検が、示唆的な病理組織学的特徴のみを明らかにし得るが、診断的な病理組織学的特徴を明らかにし得ない場合、診断は、リンパ節生検又は血液中のクローンが皮膚のものと一致することを含むB判定基準の達成に基づき得る。初期の斑点段階の菌状息肉症(MF)に関して、光学顕微鏡検査による組織診断が確定しない場合、ISCLによって推奨されている診断判定基準が使用されるべきである。
【0328】
評価:
●前治療評価及び応答パラメーターのスコア化は、スクリーニング時ではなく、ベースライン(治療の1日目)になされるべきである。
●全ての応答は、期間中少なくとも4週目に存在するはずである。
【0329】
皮膚評価、スコア化、及び応答の定義:
重症度加重評価法(SWAT)又は改変されたSWAT(mSWAT)が、皮膚スコア化のために使用されるべきである。
【0330】
応答の定義は、表24に示される。
【0331】
【表39】
【0332】
リンパ節評価、スコア化、及び応答の定義:
末梢リンパ節:参加者の完全な腫瘍-リンパ節-転移-血液(TNMB)状態が特徴付けられるべきであり、コンピューター断層撮影(CT)イメージングが推奨され、考慮すべき観察者間の変動が存在することに注意する。核磁気共鳴画像法(MRI)は、CTの代替である。
【0333】
中心リンパ節:肥大した中心リンパ節のエビデンス(長軸における>1.5cmの直径又は短軸における>1.0cmの直径として定義される)、及び生検(すなわち、切除、穿刺吸引、又はコア生検)によるMF/SSを伴う障害の確証が存在する場合、全ての中心リンパ節が、末梢リンパ節と同じ方法でその後に追跡されるべきである(全ての肥大したリンパ節の最長の二次元測定値の積)。
【0334】
応答の定義は、表25に示される。
【0335】
【表40】
【0336】
内臓疾患評価、スコア化、及び応答の定義:ベースライン時の生検確認は、画像検査によって診断され得る肝臓及び脾臓障害を除いて、内臓疾患の全ての形態に関して推奨される。注目すべきことに、骨髄吸引/トレフィン生検は、評価又は応答判定のいずれかに必須であるとみなされない。内臓におけるCRをCTのみで確証するには限界がある場合があり、それらの場合、確認生検が必要であり得るか又はこれを欠くとCR判定を行うことができない。応答の定義は、表26に示される。
【0337】
【表41】
【0338】
血液評価、スコア化、及び応答の定義:フローサイトメトリーによって決定されるCD4CD26細胞の絶対数は、MF/SSにおける潜在的な血液障害の最も合理的な数量化できる尺度である。CD26対象において、CD4CD7T細胞は、モニターするための代替の集団になるであろう。
【0339】
血液中のCD4細胞に関する1,600/μLの正常範囲上限値に基づいて、250/μL未満のCD4/CD26又はCD4CD7細胞の絶対数は、これらのCD4サブセットに関する正常値であると考えられ、血液障害の欠如又は正常化を定義するためにも使用され得る(B)。或いは、セザリー細胞数の絶対値は、良質な塗抹標本が1名の有資格読影者によって解釈され、セザリー細胞が250/μL未満及び1000/μL超がB及びBの合理的な決定要因であるとき、任意選択の方法である。
【0340】
応答の定義は、表27に示される。
【0341】
【表42】
【0342】
包括的な応答スコアの定義:MF/SSに関するコンセンサスの包括的な応答スコアは、表28に示される。
【0343】
【表43】
【0344】
7.治療
7.1 リンパ球枯渇化学療法
全ての対象は、CTX130の注入の前にLD化学療法を受ける。LD化学療法は、
●3回の投与に関して1日当たりフルダラビン30mg/m IV及び
●3回の投与に関して1日当たりシクロホスファミド500mg/m IV
からなる。
【0345】
腎機能の中程度の障害(CrCl 50~70mL/分/1.73m)を有する成人対象は、少なくとも20%又は現地の添付文書に従って減らされたフルダラビンの用量を受容するべきである。
【0346】
両方の薬剤は、同じ日に開始され、3日間連続して投与される。対象は、試験登録の7日以内にLD化学療法を開始するべきである。
【0347】
LD化学療法に関連する保管、調製、投与、支持療法の指示、及び毒性管理に関するガイダンスについてはフルダラビン及びシクロホスファミドに対する現行の完全な添付文書を参照されたい。
【0348】
LD化学療法は、以下の徴候又は症状のいずれかが存在する場合に遅延され得る:
●パフォーマンス・ステータスのECOG>1への変化。
●LD化学療法に関連するAEの潜在的リスクを増大させる臨床状態の著しい悪化、例えば:
o任意の血球減少の臨床的に意義のある悪化、
oトランスアミナーゼレベルの臨床的に意義のある増大(例えば、>3×ULN)、
o総ビリルビンの臨床的に意義のある増加(例えば、>2×ULN)、又は
o血清クレアチニンの臨床的に意義のある増加。
●飽和レベル>92%を維持するために酸素補給を必要とすること。
●新たな制御されない心不整脈。
●血管収縮薬の支援を必要とする低血圧。
●活動性感染症:治療に応答しない細菌、真菌、又はウイルスの血液培養が陽性であること。
●任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)。
【0349】
7.2.CTX130の投与
CTX130の注入は、以下の徴候又は症状のいずれかが存在する場合に遅延されることになる:
●パフォーマンス・ステータスのECOG>1への変化。
●新たな活動性の制御されない感染症。
●同種異系CAR T細胞注入に関連するAEの潜在的リスクを増大させる臨床状態の著しい悪化、例えば:
oトランスアミナーゼレベルの臨床的に意義のある増大(例えば、>3×ULN)、
o総ビリルビンの臨床的に意義のある増加(例えば、>2×ULN)、又は
o血清クレアチニンの臨床的に意義のある増加。
●任意の急性神経毒性(例えば、≧2の急性神経毒性)。
【0350】
CTX130は、LD化学療法の完了後に少なくとも48時間(ただし7日以内)投与される。
【0351】
反復投与に由来し得る潜在的な臨床的有用性を考慮すると、現行の試験は、CTX130注入後の2ヶ月目に最大2回のCTX130の反復投与を可能にして、試験において最大3回の投与を有する。
【0352】
CTX130後の3ヶ月目の反復投与は、以下のシナリオにおいて行われ得る:
●進行性疾患-CTX130の注入後の2ヶ月目において、新規の病変又は>20%の増殖が観察される場合(Lugano及びISCL効果判定基準)、進行事象が臨床的に悪いシナリオとならない場合は再投与を検討する。
●安定した疾患又は部分奏効-再投与;完全寛解が3ヶ月目までに達成されていない場合は再投与が行われる。
●完全寛解-再投与なし。
【0353】
場合により、CTX130細胞による対象の2回以下の再投与が許容され得る。再投与に関して検討されるために、対象は、1)最初又は2回目のCTX130注入後に部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)を達成し、最後の投与から2年以内に、引き続いて進行していなければならなかったか、又は2)直近のCTX130注入の後の1ヶ月目の試験来院時に安定な疾患(SD)を達成しなければならなかった(再投与の決定は、局所的なCTスキャン/評価に基づくことになる)。対象が再投与され得る最も早い時点は、最初又は2回目のCTX130注入の6週後である。
【0354】
再投与に関して検討されるために、対象は、以下の判定基準を満たす必要がある:
o用量漸増の間にDLTがない(該当する場合)。
oCTX130注入後の72時間以内にグレード≦2(例えば、2)に回復しなかったグレード≧3(例えば、4)のCRSがない。
oCTX130注入後にグレード>1のGVHDがない。
oCTX130注入後にグレード≧2(例えば、≧3)のICANSがない。
oLD化学療法及びCTX130注入に関する判定基準を満たすこと(例えば、血行動態的に安定、活動性感染症がない)。
o組み入れ/除外基準のような全ての終末器官判定基準(例えば、肝臓、腎臓、心臓、肺、神経)を満たすこと。
【0355】
それぞれの投与イベントの前に、対象は、別の用量のLD化学療法を受ける。パートA及びBにおいて、対象は、試験において最大3用量を有するために、CTX130注入後の3ヶ月目に最大2回再投与され得る。パートAにおいて、対象が前の用量レベルでDLTを経験しなかったか又はDLTがDLT評価期間中に次のより高い用量レベルで観察されなかった場合、対象内の用量漸増が許容される。その用量が承認を得た場合、及び対象が利益を継続して有し、再投与の判定基準のいずれかに違反しない場合、対象内の用量漸増が次のより高い用量レベルまで1回のみ許容される。
【0356】
7.3.CTX130の注入後のモニタリング
CTX130注入の後、対象の生命徴候は、注入後及びいずれかの潜在的な臨床症状の回復まで2時間の間30分毎にモニターされるべきである。
【0357】
パートAの対象は、CTX130注入後に最小で7日間入院させられる。パートA及びパートBの両方において、対象は、CTX130注入後の少なくとも28日間、治験現場の近辺(すなわち、1時間の移動時間)に留まる必要がある。急性のCTX130関連毒性の管理は、試験現場でのみ行われるべきである。
【0358】
対象は、評価のスケジュールに従ってサイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、神経毒性、移植片対宿主病(GvHD)、及び他の有害事象(AE)の徴候についてモニターされる(表15及び表16)。CAR T細胞関連毒性の管理に関するガイドラインは、第8節に記載される。対象は、CTX130に関連する非造血系の毒性(例えば、発熱、低血圧、低酸素、進行中の神経毒性)がグレード1に戻るまで入院したままでなければならない。対象は、医療管理者によって必要であるとみなされる場合、さらに長い期間入院したままである可能性がある。
【0359】
7.4 以前及び同時の薬物療法
7.4.1 許容される薬物療法
本明細書に記載される禁止薬物を除く感染症を治療するためのIV抗生物質、増殖因子、血液成分などを含む最適な医療のために必要な支援手段が、試験期間全体にわたって与えられる。
【0360】
ビホスホネート(biposphonate)又はRANKL阻害剤などの骨吸収を阻害する薬物療法は、高カルシウム血症を含む対症療法のために医療管理者の指示に従って許容される。
【0361】
処方箋及び非処方箋薬物療法、並びに医療処置を含む全ての同時の療法が、CTX130注入後の3ヶ月にわたって署名されたインフォームドコンセントの日から記録されなければならない。CTX130注入後の最初の3ヶ月間、以下の選択された同時の薬物療法のみが収集される:ワクチン接種、抗癌治療(例えば、化学療法、放射線照射、免疫療法)、免疫抑制剤(ステロイドを含む)、及び任意の治験薬。
【0362】
7.4.2 禁止される薬物療法
以下の薬物療法は、下記のとおりの一定の試験期間に禁止される:
CTX130注入前の28日以内及びCTX130注入後の3ヶ月の禁止事項
●生ワクチン。
●漢方医学の一部としての漢方薬又は市販の漢方薬以外のもの。
新規の抗癌療法の開始までの試験全体にわたる禁止事項
●CRS又はICANSを治療することが推奨されない限り又は以前に医療管理者と協議し、承認された場合、任意の免疫抑制性の療法。
●薬理学的用量のコルチコステロイド療法(>10mg/日のプレドニゾン又は同じ用量の他のコルチコステロイド)及び他の免疫抑制剤は、新たな毒性の治療のため又はCTX130と関連するCRS又は神経毒性の管理の一部として医学的に必要を示されない限り、CTX130投与後に回避されるべきである。
●疾患進行前のLD化学療法以外の任意の抗癌療法(例えば、化学療法、免疫療法、標的化療法、放射線照射、又は他の治験薬)症状管理のための対症的な放射線療法は、範囲、線量、及び部位に応じて許容される。部位、線量、及び範囲は、定義され、判断に関して医療管理者と協議されるべきである。
CTX130注入後の最初の1ヶ月以内の禁止事項
●CRSの症状を悪化させる可能性に起因してCTX130注入後の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);CTX130後の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与には注意が払われるべきである。
●DLT評価期間(28日)の間、解熱剤(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン)を用いた対象による自己薬物療法。
CTX130による治療前の3ヶ月及び治療中、並びにCTX130注入後の6ヶ月までの禁止事項
●GvHDのリスクの増大に起因して、モガムリズマブのようなCCR-4指向性抗体。
【0363】
8.毒性管理
8.1 一般的なガイダンス
CTX130注入後、少なくとも28日間は対象を注意深くモニターしなければならない。著しい毒性が、自系CAR T細胞療法により報告されており、治験実施計画書ガイダンスに従って全ての有害事象(AE)の積極的なモニター及び治療が要求される。
【0364】
CD70指向性自系CAR T細胞療法での以前の経験に基づいて、以下の一般的な推奨事項が提供される:
●発熱はサイトカイン放出症候群(CRS)の最も一般的な初期症状である。しかしながら、対象は最初の症状として脱力感、低血圧又は錯乱を示す場合もある。
●CRSの診断は、臨床検査値ではなく臨床症状に基づいて行われるべきである。
●CRSに固有の管理に反応を示さない対象では、常に敗血症及び抵抗性感染症を考慮する。抵抗性又は緊急を要する細菌感染症並びに真菌又はウイルス感染症について対象を継続的に評価しなければならない。
●CAR T細胞注入後、CRS、HLH、及びTLSが同時に発生する可能性がある。全ての状態の徴候及び症状について対象を一貫して経過観察し、適切に管理しなければならない。
●ICANSは、CRSの発症時、CRSの回復中、又はCRSの回復後に発生する可能性がある。ICANSの等級分け及び管理は、CRSとは別々に実施される。
●トシリズマブは指示を受けたときから2時間以内に投与されなければならない。
【0365】
CTX130の安全性プロファイルは、試験全体にわたって継続的に評価される。
【0366】
8.2 毒性に特有のガイダンス
8.2.1 注入反応
投与後12時間以内に最も一般的に発生する一過性の発熱、悪寒、及び/又は嘔気を含む注入に関連する反応が、自系T細胞治験において報告されている。輸注反応が発生した場合、必要に応じてアセトアミノフェン(パラセタモール)及びジフェンヒドラミン塩酸塩(又は別のH1-抗ヒスタミン)が、CTX130注入後の6時間毎に繰り返し与えられ得る。対象にアセトアミノフェンによって緩和されない発熱が続く場合、必要に応じて非ステロイド系抗炎症薬が処方され得る。全身性ステロイドは、この介入によってCAR T細胞に有害な影響を及ぼす可能性があるため、生命を脅かす緊急事態の場合を除いて投与されるべきではない。
【0367】
8.2.2 感染症予防及び発熱反応
感染症予防は、施設の標準治療に従ってT細胞又はB細胞悪性腫瘍を有する患者に対して管理されるべきである。発熱反応がある場合、感染症の評価を開始し、治療する医師が医学的に指示し、決定されたとおりの抗生物質、輸液及び他の支持療法によって対象を適切に管理しなければならない。発熱が持続する場合、対象の医学的管理の全体を通してウイルス及び真菌の感染を考慮すべきである。CTX130注入後に対象が敗血症又は全身性菌血症を発症した場合、適切な培養及び医学的管理を開始しなければならない。さらに、CTX130注入後の28日以内に発熱したいずれの場合にもCRSを考慮に入れるべきである。
【0368】
ウイルス性脳炎(例えば、ヒトヘルペスウイルス[HHV]-6脳炎)は、CTX130を受容した後に認知神経科学的症状を経験する対象のための鑑別診断において考慮されなければならない。腰椎穿刺(LP)は、いずれかのグレード3以上の認知神経科学的毒性に関して必要であり、グレード1及びグレード2の事象に関して強く推奨される。腰椎穿刺が実施される場合は常に、感染症研究班が、(最小でも)以下の評価からのデータを調査することになる:HSV 1及び2、エンテロウイルス、ヒトパレコウイルス、VZV、CMV、及びHHV-6に関する定量的試験。腰椎穿刺は、症状発症後48時間以内に実施されなければならず、対象を適切に管理するために、LPから4日以内に感染症研究班からの結果が入手可能にならなければならない。
【0369】
8.2.3 腫瘍溶解症候群(TLS)
CAR T細胞療法を受ける対象は、TLSのリスクが高まる可能性がある。LD化学療法の開始からCTX130注入後28日までは、臨床検査及び症状によりTLSについて対象を注意深くモニターする必要がある。スクリーニング中及びLD化学療法の開始前に、TLSのリスクが増大した対象は、予防的にアロプリノール(又はフェブキソスタットなどのアロプリノールでない代替薬)及び/又はラスブリカーゼを受容するべきであり、経口/IVでの水分補給を増やす必要がある。CTX130注入の28日後又はTLSのリスクが過ぎ去ってから予防を中止することができる。
【0370】
現場は、施設の標準治療により又は公表されたガイドラインに従ってTLSをモニターし、TLSを治療するべきである(Cairo and Bishop,(2004)Br J Haematol,127,3-11)。ラスブリカーゼの投与を含むTLSの管理は、臨床的に必要である場合、直ちに開始すべきである。
【0371】
8.2.4 サイトカイン放出症候群(CRS)
CRSは、CAR T細胞を含む免疫療法と関連する毒性であり、サイトカイン、特に、IL-6及びIL-1の放出により引き起こされる(Norelli et al.,2018)。CRSは、CARが標的抗原に結合したことに反応して免疫系が過剰に活性化するために生じるものであり、急激なT細胞の刺激及び増殖によりマルチサイトカインの上昇がもたらされる(Frey et al.,2014;Maude et al.,2014a)。
【0372】
CRSの臨床症状は、軽度であり、体温の上昇に限定される場合があるか又は1つ若しくは複数の臓器系(例えば、心臓、胃腸管[GI]、肺、皮膚、中枢神経)及び複数の症状(例えば、高熱、疲労、食欲不振、嘔気、嘔吐、発疹、低血圧、低酸素、頭痛、せん妄、錯乱)を含み得る。CRSは、生命を脅かす場合がある。臨床的には、CRSは、全身性の感染症、又は重症の場合、敗血症性ショックと間違われる場合がある。多くの場合、最も早い徴候は体温の上昇であり、これは直ちに鑑別診断の精密検査及び適切な治療の時宜を得た開始を促すべきである。
【0373】
CRSの管理の目的は、CTX130の抗癌効果の可能性を維持しながら、生命を脅かす状態及び続発症を予防することである。症状は通常、血液悪性腫瘍における自系CAR T細胞療法の1~14日後に発生する。
【0374】
CRSは、臨床検査での測定値ではなく、臨床症状に基づいて同定され、治療されるべきである。CRSが疑われる場合、等級分けは、ASTCT(以前は米国骨髄移植学会議、ASBMTとして知られる)のコンセンサス勧告(表29;Lee et al.,(2019)Biol Blood Marrow Transplant 25,625-638)に従って適用されるべきであり、管理は、公表されているガイドラインから適応される表30の勧告に従って実施されるべきである(Lee et al.,(2014)Blood 124,188-95;Lee et al.,(2019)Biol Blood Marrow Transplant 25,625-638)。したがって、神経毒性の等級分けは、ICANSに関するASTCT判定基準により整列させられる。
【0375】
【表44】
【0376】
【表45】
【0377】
【表46】
【0378】
CRSの期間全体を通して、対象に解熱剤、IV輸液及び酸素からなる支持療法を施す必要がある。グレード≧2のCRSを示す対象は、心電図テレメトリー及びパルスオキシメトリーによって継続的にモニターする必要がある。グレード3のCRSを示す対象には、心機能を評価するために心エコー像の実施を検討する。グレード3又は4のCRSに関しては、集中治療の支持療法を検討する。重度のCRSの場合、症状(発熱、低血圧、低酸素)が類似しているため、潜在的な感染症の可能性が考慮されるべきである。CRSの回復は、発熱(体温≧38℃)、低酸素、及び低血圧の回復として定義される(Lee et al.,(2019)Biol Blood Marrow Transplant 25,625-638)。
【0379】
8.2.4.1 低血圧及び腎不全
CAR T細胞療法では、低血圧及び腎不全が報告されており、施設の診療ガイドラインに従って生理食塩水をIVでボーラス投与することによって治療する必要がある。適切であれば、透析を考慮する必要がある。
【0380】
8.2.5 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)
神経毒性は、自系CAR T細胞療法で治療されるB細胞悪性腫瘍を有する対象において記録されている。神経毒性は、CRSの発症時、CRSの回復中、又はCRSの回復後に発生する可能性があり、その病態生理は不明である。最近のASTCT(以前はASBMTとして知られる)コンセンサスはさらに、ICANSを内在性の若しくは注入されたT細胞及び/又は他の免疫エフェクター細胞の活性化又は関与をもたらす任意の免疫療法の後にCNSに関係する病的プロセスによって特徴付けられる障害として定義した(Lee et al.,(2019)Biol Blood Marrow Transplant 25,625-638)。徴候及び症状は進行性である可能性があり、失語症、意識レベルの変化、認知技能の機能障害、運動麻痺、てんかん発作、及び脳浮腫を含み得るが、これらに限定されない。ICANSの等級分け(表32)は、以前に自系CAR T細胞の治験で使用されたCAR T cell-therapy-associated TOXicity(CARTOX)ワーキンググループの判定基準に基づいて開発された(Neelapu et al.,(2018)Nat Rev Clin Oncol 15,47-62)。ICANSでは、免疫エフェクター細胞関連脳症(ICE)評価ツール(表17)と呼ばれる改変されたツールを使用することにより、意識レベル、てんかん発作の有無、運動所見、脳浮腫の有無の評価及び神経性領域の全体的な評価を組み入れている。
【0381】
任意の新たに発症した神経毒性の評価は、神経学的検査(ICE評価ツールを含む、表17)、脳核磁気共鳴画像法(MRI)、及び臨床的に必要であればCSFの検査を含むべきである。臨床的に実行可能である場合、神経毒性の間に実施される腰椎穿刺については、CSF試料は、探索的バイオマーカー及びCTX130の存在(PCRによる)に関して中央検査機関に送られるべきである。脳MRIが可能ではない場合、脳内出血を除外するために、全ての対象に非造影コンピューター断層撮影(CT)スキャンを受けさせる必要がある。臨床的に必要であれば、脳波も考慮に入れる必要がある。重症例では、気道保護のために気管内挿管が必要になる場合がある。
【0382】
CTX130注入後の少なくとも28日間又は神経学的症状が回復した時点で、特に、てんかん発作の病歴を有する対象に非鎮静性型の抗てんかん発作予防(例えば、レベチラセタム)が検討されるべきである(抗てんかん発作薬物療法が有害な症状に寄与しているとみなされない限り)。グレード≧2のICANSを示す対象は、心電図テレメトリー及びパルスオキシメトリーによって継続的にモニターする必要がある。重度又は生命を脅かす神経毒性に対しては、集中治療の支持療法を施すべきである。神経内科の受診を常に考慮すべきである。血小板及び凝固障害の徴候をモニターし、脳内出血のリスクを低減させるために血液製剤を適切に輸液すること。表32は、神経毒性の等級分けを提供し、表33は、管理ガイダンスを提供する。
【0383】
積極的なステロイド処置を3日を超えて受ける対象には、長期間のステロイドの使用による重症感染のリスクを軽減するために、抗真菌及び抗ウイルス予防が推奨されている。抗微生物の予防も考慮に入れる必要がある。
【0384】
【表47】
【0385】
【表48】
【0386】
発熱状態又は化学療法後に生じる可能性のある頭痛は非特異的症状である。頭痛単独では必ずしもICANSの症状ではない場合もあり、さらなる評価を行う必要がある。体調偏移及び筋力低下から生じる脱力感又は平衡感覚障害は、ICANSの定義から除外されている。同様に、これらの対象では、随伴する浮腫の有無にかかわらず、凝固障害によって頭蓋内出血が発生する可能性があり、ICANSの定義からも除外される。これらの及び他の神経毒性は、CTCAE v5.0に従って記録しなければならない。
【0387】
8.2.6 血球貪食性リンパ組織球症(HLH)
HLHは、自家CD19指向性CAR T細胞による治療の後に報告されている(Barrett et al.,(2014)Curr Opin Pediatr,26,43-49;Maude et al.,(2014)N Engl J Med,371,1507-1517;Maude et al.,(2015)Blood,125,4017-4023;Porter et al.,(2015)Sci Transl Med,7,303ra139;Teachey et al.,(2013)Blood,121,5154-5157。HLHは、活性化T細胞からのサイトカインの産生によって過剰なマクロファージの活性化をもたらす、CAR T細胞注入後の炎症反応の結果として生じる臨床症候群である。HLHの徴候及び症状には、発熱、血球減少、肝脾腫、高ビリルビン血症を伴う肝障害、フィブリノーゲンが著しく低下する凝固障害並びにフェリチン及びC反応性タンパク質(CRP)の顕著な上昇が含まれ得る。神経学的所見も観察されている(Jordan et al.,(2011)Blood,118,4041-4052;La Rosee,(2015)Hematology Am Soc Hematol Educ Program,190-196。
【0388】
CRS及びHLHは、臨床的特徴及び病態生理が重複した、類似する臨床症候群を有し得る。HLHは、CRSの発症時又はCRSが回復しているときに発生する可能性が高い。他のCRSのエビデンスの有無にかかわらず、原因不明の肝機能検査値の上昇又は血球減少がある場合、HLHを考慮すべきである。CRP及びフェリチンをモニターすることは、診断の支援し、臨床経過を明確にし得る。
【0389】
HLHが疑われる場合、
●フィブリノーゲンを含む凝固パラメーターを頻繁にモニターする。これらの試験は、評価スケジュールで指示されたものよりも頻繁に行われてもよく、検査所見に基づいて頻度を促進する必要がある。
●出血のリスクを低減するため、フィブリノーゲンは≧100mg/dLに維持しなければならない。
●血液製剤によって凝固障害を補正しなければならない。
●CRSとの重複を考慮して、対象をさらに表29のCRS治療ガイダンスに従って管理するべきである。
【0390】
8.2.7 遷延性血球減少症
場合によっては、CAR T細胞注入後に28日を超えて続くグレード3の好中球減少症及び血小板減少症が、自系CAR T細胞製品で治療された対象において報告されている(Kymriah US prescribing information [USPI],2018;Raje et al.,(2019)N Engl J Med 380,1726-37;Yescarta USPI,2019)。したがって、CTX130を受容する対象は、このような毒性についてモニターされ、適切な支援を受けなければならない。血小板及び凝固障害の徴候についてモニターし、内出血のリスクを低減させるために血液製剤を適切に輸液すること。長期間の好中球減少症の任意の対象に対して抗微生物及び抗真菌予防を検討しなければならない。
【0391】
活性化T及びBリンパ球上でのCD70の一過性の発現に起因して、ウイルス再活性化などの日和見感染症が発生する可能性がある。日和見感染症は、臨床症状が生じるときに考慮されるものとする。
【0392】
用量漸増の間、G-CSFは、グレード4のCTX130注入後の好中球減少症の場合に考慮され得る。コホート拡大の間、G-CSFは、医師の判断に従って注意して投与され得る。
【0393】
8.2.8 移植片対宿主病(GvHD)
GvHDは同種HSCTの状態において見られるものであり、免疫適格性のドナーのT細胞(移植片)がレシピエント(宿主)を異物と認識した結果として生じるものである。その後の免疫反応では、ドナーのT細胞が活性化し、異物である抗原保有細胞を排除するためにレシピエントを攻撃する。GvHDは、同種HSCTからの時間及び臨床症状の両方に基づいて、急性症候群、慢性症候群及びオーバーラップ症候群に分けられる。急性GvHDの徴候は、斑状丘疹状皮疹;胆汁うっ滞をもたらす小胆管の損傷に起因する黄疸を伴う高ビリルビン血症;悪心、嘔吐及び食欲不振;並びに水様性下痢又は血性下痢及び痙性腹痛を含み得る(Zeiser and Blazar,(2017)N Engl J Med,377,2167-2179)。
【0394】
提案されている臨床試験を裏付けるために、非臨床のGLPに準拠したGvHD及び忍容性試験が、2つのIV用量:マウス当たり4×10個のCTX130細胞の高用量(およそ1.6×10個の細胞/kg)及びマウス当たり2×10個の細胞(およそ0.8×10個の細胞/kg)の低用量で治療される免疫無防備状態のマウスにおいて実施された。両方の用量レベルが、体重に正規化した場合、提案された最も高い臨床用量を10倍を超えて上回る。CTX130で治療されたどのマウスも、12週の試験の間に致死的なGvHDを発症しなかった。剖検時に、単核細胞の浸潤が、一部の動物の腸間膜のリンパ節及び胸腺において観察された。最小から軽度の血管周囲の炎症もまた、一部の動物の肺において観察された。これらの所見は、軽度のGvHDと一貫しているが、これらのマウスにおける臨床症状において顕在化しなかった。
【0395】
さらに、TRAC遺伝子座でのCARの挿入の特異性により、T細胞がCAR+及びTCR+の両方である可能性は極めて低い。残りのTCR+細胞を、製造プロセス中に抗TCR抗体カラムの免疫親和性クロマトグラフィーにより除去し、最終生成物中≦0.4%のTCR+細胞を得る。全ての用量レベルに7×10個のTCR+細胞/kgの用量制限が課せられる。この制限値は、ハプロタイプ一致ドナーによるSCT中に重篤なGvHDを引き起こす可能性のある同種細胞の数に関して公表された報告書に基づいた1×10TCR+細胞/kgの制限値よりも低い(Bertaina et al.,(2014)Blood,124,822-826)。このような特定の編集、精製及び厳格な製品リリース基準によれば、CTX130後のGvHDのリスクは低いはずであるが、真の発生率は未知である。しかしながら、CAR T細胞の増殖は抗原に促進されるものであり、且つTCR-細胞でのみ起こる可能性が高いことを考えると、TCR+細胞の数が注入された数を上回り、認識可能な程度まで増加する可能性は低い。
【0396】
GvHDの診断及び等級分けは、表34に概説されるとおり、公表されている判定基準(Harris et al.,(2016)Biol Blood Marrow Transplant,22,4-10)に基づくべきである。
【0397】
【表49】
【0398】
全体的なGvHDのグレードは、最も重度の標的臓器障害に基づいて決定され得る。
●グレード0:ステージ1~4の臓器がまったくない。
●グレード1:肝臓、上部GI又は下部GI障害を伴わないステージ1~2の皮膚。
●グレード2:ステージ3の発疹及び/又はステージ1の肝臓及び/又はステージ1の上部GI及び/又はステージ1の下部GI。
●グレード3:ステージ0~3の皮膚及び/又はステージ0~1の上部GIを伴うステージ2~3の肝臓及び/又はステージ2~3の下部GI。
●グレード4:ステージ0~1の上部GIを伴うステージ4の皮膚、肝臓又は下部GI障害。
【0399】
感染症及び薬剤に対する反応性などの、GvHDを模倣する可能性のある潜在的な交絡因子を除外しなければならない。確認のため、治療を開始する前又は治療を開始した直後に皮膚生検及び/又はGI生検を入手する必要がある。肝臓障害がある場合、臨床的に実行可能であれば、肝生検を試みるべきである。
【0400】
急性GvHDの管理に関する推奨事項は、表35で概説される。治験終了時に対象間の比較ができるように、これらの推奨事項は、それらに従うことによって対象を危険にさらす恐れのある特定の臨床シナリオを除いて追従されるべきである。
【0401】
【表50】
【0402】
より重度のGvHDの対象に対して、第二選択療法を開始するという判断を直ちに下さなければならない。例えば、GvHDの症状が進行して3日後、グレード3のGvHDが持続して1週間後、又はグレード2のGvHDが持続して2週間後に二次療法が指示され得る。高用量のグルココルチコイド治療に忍容性のない可能性のある対象には、より早期の第二選択全身療法が指示され得る(Martin et al.,(2012)Biol Blood Marrow Transplant,18,1150-1163)。二次療法の選択及び開始時期は、臨床的判断及び現地における慣行に基づいてもよい。
【0403】
難治性の急性GvHD又は慢性GvHDの管理は、施設のガイドラインに従ってもよい。免疫抑制剤(ステロイドを含む)によって対象を治療する場合、現地のガイドラインに従って抗感染症予防対策を導入する必要がある。
【0404】
8.2.9 オンターゲット・オフ腫瘍毒性
8.2.9.1 活性化T及びBリンパ球、樹状細胞に対するCTX130の活性
活性化T及びBリンパ球は、一過的にCD70を発現し、樹状細胞、及び胸腺上皮細胞は、一定の程度までCD70を発現する。したがって、これらの細胞は、活性化CTX130に対する標的となる可能性がある。
【0405】
8.2.9.2 骨芽細胞に対するCTX130の活性
CTX130の活性は、ヒト初代骨芽細胞の細胞培養における非臨床試験において検出された。したがって、骨代謝回転は、カルシウムレベル並びに骨形成の評価において最も有用なマーカーであるとみなされる2つの骨芽細胞特異的マーカーであるI型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(PINP)及び骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)を介してモニターされる(Fink et al.,(2000)Osteoporosis 11,295-303)。血清中の両方のマーカーの評価に関する標準化されたアッセイが利用可能である。これらのペプチドマーカーの濃度は、骨芽細胞の活性及び新たな骨コラーゲンの形成を反映する。PINP及びBSAPは、試験のスクリーニング時、ベースライン、7日目、14日目、21日目、及び28日目、並びに3ヶ月目、6ヶ月目、及び12ヶ月目に中央検査機関の評価により測定される(表15)。試料は、骨代謝回転に対する概日リズムの強い影響のために指定の回収日の同じ時間(±2時間)に回収されることになる。
【0406】
8.2.9.3 腎尿細管様上皮に対するCTX130の活性
腎尿細管様上皮細胞に対するCTX130の活性は、初代ヒト腎臓上皮におけるCTX130の非臨床試験において検出された。したがって、対象は、48時間にわたって少なくとも0.3mg/dL(26.5μmol/L)及び/又は前の7日以内のベースライン値の1.5倍以上の血清クレアチニンの増加についてモニターすることによって、急性尿細管損傷に関してモニターされる必要がある。血清クレアチニンは、CTX130注入後の最初の7日間毎日、治療の8日目~14日目に1日おきに、続いて28日目まで1週間に2回評価される(表14)。急性尿細管損傷が疑われる場合、尿沈渣分析及び尿中のナトリウムの排泄分画を含む追加の試験が実施される必要があり、腎臓病専門医による療法指導が開始される必要がある。
【0407】
9.統計方法
9.1 対象数
パートA(用量漸増)において、対象数は、評価される用量レベルの数及びDLTの発生率に応じておよそ6~24名のDLTが評価可能な対象である。
【0408】
パートB(コホート拡大)において、サイモン2段階ミニマックスデザインを使用することができ、DLBCLを有する最大21名の対象を登録することができる。
【0409】
9.2 解析セット
パートA(用量漸増)
●DLTが評価可能なセットは、CTX130を受容し、注入後少なくとも28日間又はDLTを経験した後に追跡される全ての対象を含む。
パートA+パートB
●安全性解析セット(SAS):登録され、試験治療の少なくとも1回の投与を受けた全ての対象。対象は、受けた治療に従って分類され、受けた治療は、少なくとも1回受けた場合はその割り当てられた用量レベル/スケジュール、又は割り当てられた治療が受けられなかった場合は受けた最初の用量レベル/スケジュールとして定義される。SASは、安全性データの解析のための主要なセットである。
●最大の解析対象集団(FAS):登録され、CTX130注入を受け、少なくとも1回のベースライン及び1回のベースライン後スキャン評価を有する全ての対象。FASは、臨床効果評価のための主要解析セットである。
【0410】
9.3 評価項目
9.3.1 主要評価項目
●パートA(用量漸増):用量規制毒性(DLT)として定義される有害事象(AE)の発生率、及びRPBDの定義。
●パートB(コホート拡大):中央の放射線関連の独立審査によって評価されるとおり、DLBCLを有する対象に関するLugano効果判定基準(Cheson et al.,(2014)J Clin Oncol 32,3059-68)による(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])に従う奏効率(ORR)。
【0411】
9.3.2 副次的評価項目
8.3.2.1 有効性
パートA:PTCL-NOS、ALCL、白血病性及びリンパ腫のATLL、AITL、及びDLBCLを有する対象に関してはLugano効果判定基準(Cheson et al.,(2014)J Clin Oncol 32,3059-68)に従う有効性評価、並びにSS又はMFを有する対象に関してはISCL効果判定基準(Olsen et al.,2011)に従う有効性評価。
パートB:DLBCLを有する対象に関するLugano効果判定基準(Cheson et al.,(2014)J Clin Oncol 32,3059-68)に従う有効性評価:
●対象最良効果(完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定な疾患(SD)、進行性疾患(PD)、又は評価不能(NE))。
●CR又はPRを達成した対象のパーセンテージとして定義される奏効率(ORR)。
●CTX130注入日から最初の記録された奏効(PR/CR)までの間の時間として定義される奏効までの期間(TTR)。
●PR/CRの最初の客観的応答といずれかの原因による疾患進行又は死亡の日の間の時間として定義される奏効期間(DoR)。PR/CR事象を有した対象についてのみ報告される。
●CTX130を注入した日と、疾患が進行した日又はいずれかの原因により死亡した日との間の差として定義される無増悪生存期間(PFS)。
●CTX130注入日といずれかの原因による死亡日の間の時間として定義される、全生存期間(OS)。
●CR、PR、又はSDを達成した対象のパーセンテージとして定義される、病勢コントロール率(DCR)。
●CTX130注入日とPDの日の間の差として定義される無増悪期間(TTP)。
【0412】
9.3.2.2 安全性
●AEの発生率及び重症度並びに臨床的に意義のある臨床検査値異常。
【0413】
9.3.2.3 薬物動態
●経時的な血中のCTX130のレベル。
【0414】
9.3.2.4 探索的評価項目(パートA及びB)
●組織中のCTX130のレベル。
●血中のサイトカイン及び他の組織のレベル。
●抗CTX130抗体の発生率。
●CTX130増殖、CRS、及び応答に対する抗サイトカイン療法の影響。
●CTX130療法後の自系又は同種異系造血幹細胞移植(HSCT)の発生率。
●次の抗癌療法の発生率及び種類。
●CTX130注入日から最初の記録されたCRまでの時間として定義される完全奏効(CR)までの期間。
●CTX130注入日から疾患進行の最初のエビデンスまでの時間として定義される疾患進行(PD)までの時間。
●CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD52などのマーカー、並びにHTLV-1プロウイルス量に基づく免疫表現型検査によってモニターされるとおりのATLL細胞の末梢血液レベルの変化。
●効果判定及び中央審査との一致率。
●CTX130注入日とその後の第1の療法又はいずれかの原因による死亡の日の間の時間として定義されるその後の第1の療法がない生存期間。
●欧州癌研究治療機関(EORTC)QLQ-C30、EQ-5D-5L質問票、FACT-G、SS及びMFのためのSkindex-29質問票、並びにSS及びMFのための皮膚科関連の日常生活の質に関する評価指標(DLQI)質問票によって測定されるとおりのPROにおけるベースラインからの変化。
●ICFによって評価されるとおりの認知転帰におけるベースラインからの変化。
●他のゲノム、タンパク質、代謝、又は薬力学的評価項目。
【0415】
結果
これまでに本試験に参加した対象全員が、14日以内に段階1(適格性のスクリーニング)を完了している。適格性の判定基準を満たした後、2名の対象が、段階1を完了して24時間以内にリンパ球枯渇療法を開始した。全ての適格な対象が、スクリーニング期間(段階1)を完了し、8日未満でLD化学療法を開始し、1名の対象はスクリーニングを完了し、72時間以内にLD化学療法の投与を開始した。LD化学療法を受ける1名の対象が既に、LD化学療法の完了後の5日以内にCTX130のDL1用量の受容まで進行した。
【0416】
これまでこの試験において治療されたどの対象もDLTを示さなかった。同様に、DTLは、RCCを有する対象をCTX130を使用して治療する並行した試験において観察されなかった。例えば、2019年11月13日に出願された米国特許出願第62/934,961号明細書及び2020年6月4日に出願された米国特許出願第63/034,552号明細書を参照されたい。さらに、同種異系CAR-T細胞療法は、治療を受けたヒト対象において、注入後にCAR-T細胞の増殖及び持続を含む所望の薬物動態特性を示した。著しいCAR T細胞の分布、増殖及び持続が、DL1という早期に観察されている。Tに対して末梢血液中のCTX130の最大20倍の増殖が、現在まで評価された1名のT細胞リンパ腫対象において観察されており、CTX130細胞の持続は、注入後の最大14日までDL1の対象において検出された。CAR T細胞の分布、増殖及び持続の同様のパターンは、対応するCTX130 RCC試験において観察され、CTX130の87倍の増殖が観察されており、CTX130細胞は、注入後少なくとも28日間検出されている。
【0417】
この試験における適格な対象は、大細胞転化を伴うMFを有する。最初のT細胞リンパ腫対象から得られる結果が下に要約される。
●DL1用量を受容する対象は、皮膚T細胞リンパ腫効果判定のためのOlson/ISCL判定基準による写真に従って記録されるとおりの皮膚病変の著しい減少を経験した。さらに、同じ対象におけるCTX130注入の4週後のPET/CTスキャンは、リンパ節及び皮膚病変の劇的な減少を明らかにし、ほとんどの病変が完全に消失したため、正式の部分代謝効果と認定した。
【0418】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代替的な特徴へと置き換えてもよい。すなわち、明示的に別段の定めをした場合を除き、開示される各特徴は、一般的な一連の均等な又は同様の特徴の単なる一例である。
【0419】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に把握することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を各種の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更形態及び修正形態をなし得る。したがって、他の実施形態も請求項の範囲に含まれるものとする。
【0420】
均等物
いくつかの本発明の実施形態を本明細書で説明及び図示してきたが、当業者であれば、本明細書に記載される機能を実行し、且つ/又は結果及び/若しくは1つ以上の利点を得るために、様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定するであろう。また、そのような変更形態及び/又は修正形態の各々は、本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書で説明される全てのパラメーター、寸法、材料及び構成が例示的であることを意図し、実際のパラメーター、寸法、材料及び/又は構成が、本発明の教示が適用される特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、本明細書に記載された特定の本発明の実施形態に対する多く均等物を、日常の実験のみを用いて認識するか又は確認することが可能である。したがって、上述の実施形態は、単に例として提示されており、また添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求される以外の別の方法で実践され得ることを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は、本明細書で説明される各個別の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組み合わせは、こうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0421】
本明細書中で定義され、用いられる全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献中の定義及び/又は定義される用語の普通の意味を超えて優先されるものと理解されたい。
【0422】
本明細書に開示されている全ての参考文献、特許及び特許出願は、それぞれ引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合により文献の全体を包含する場合がある。
【0423】
不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0424】
本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、「及び/又は」という表現は、等位結合される要素、すなわち一部の場合に接続的に提示され、他の場合に離接的に提示される要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されたい。「及び/又は」とともに列挙される複数の要素は、同じように、すなわちそのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」の節によって具体的に特定される要素以外に、具体的に特定された要素に関連するか又は関連しないに関わらず、他の要素が任意選択的に提示され得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する参照は、「含む」などのオープンエンド用語とともに使用される場合、一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0425】
本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する際、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であり、すなわち要素のリストの少なくとも1つを含むが、2つ以上の数及び任意選択的に追加的な列挙されていない項目も含むものと解釈されるべきである。「~の1つのみ」若しくは「~の厳密に1つ」又は特許請求の範囲で使用されるときの「~からなる」などの反対を明らかに示す用語のみが、多数の要素又は要素のリストの厳密に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用する時、用語「又は」は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合のみ、排他的代替用語(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。「本質的に~からなる(Consisting essentially of)」は、特許請求の範囲内で使用される時、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0426】
本明細書で使用する場合、本明細書及び特許請求の範囲における、1つ以上の要素の列挙に関する「少なくとも1つ」という語句は、要素の列挙内の要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素であるが、要素の列挙内に具体的に列挙されたあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、且つ要素の列挙内の要素の任意の組み合わせを必ずしも除外しないことを意味するものと理解すべきである。この定義により、具体的に特定されるそれらの要素に関係するか否かに関わらず、「少なくとも1つ」という語句が意味する要素の列挙内に具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることも可能になる。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(換言すると「A又はBの少なくとも1つ」、換言すると「A及び/又はBの少なくとも1つ」は、一実施形態では、任意選択により2つ以上のAを含み、Bが存在しない(及び任意選択によりB以外の要素を含む)少なくとも1つを指すことができ、別の実施形態では、任意選択により2つ以上のBを含み、Aが存在しない(及び任意選択によりA以外の要素を含む)少なくとも1つを指すことができ、さらに別の実施形態では、任意選択により2つ以上のAを含む少なくとも1つ、且つ任意選択により2つ以上のBを含む少なくとも1つ(及び任意選択により他の要素を含む)を指すなどであり得る。
【0427】
用語「約」又は「およそ」は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち測定系の限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣習による許容標準偏差内にあることを意味し得る。或いは、「約」は、所与の値の最大±20%、好ましくは最大±10%、より好ましくは最大±5%、さらにより好ましくは最大±1%の範囲を意味し得る。或いは、特に生物学的系又はプロセスに関して、その用語は、1桁以内、好ましくは2倍以内の値を意味する場合がある。本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合、特に指示のない限り、用語「約」は、黙示的であり、これに関連して特定の値が許容誤差範囲内にあることを意味する。
【0428】
同様に、明確に反対に示されない限り、複数の工程又は行為を含む、本明細書で特許請求される任意の方法において、この方法の工程又は行為の順序は、必ずしもこの方法の工程又は行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F-4H】
図4H-4K】
図5A
図5B
図6
【配列表】
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【国際調査報告】