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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】指向性乾燥接着剤のための間接金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20230111BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230111BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20230111BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/00
B29C43/02
C09J201/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527774
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020060570
(87)【国際公開番号】W WO2021097334
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/936,325
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケルスト、カペラ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】カトコスキー、マーク・アール
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F206
4J040
【Fターム(参考)】
4F202AA33
4F202AE08
4F202AE10
4F202AF01
4F202AF16
4F202AG01
4F202AG05
4F202AH59
4F202AJ02
4F202AJ09
4F202AR12
4F202CA09
4F202CA11
4F202CA17
4F202CA19
4F202CB01
4F202CD02
4F202CD22
4F202CD24
4F202CD26
4F202CD28
4F202CK12
4F202CK32
4F202CS10
4F204AA33
4F204AE08
4F204AE10
4F204AF01
4F204AG05
4F204AJ09
4F204AR12
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F206AA33
4F206AE08
4F206AE10
4F206AF01
4F206AF16
4F206AG01
4F206AG05
4F206AH59
4F206AJ02
4F206AJ09
4F206AR12
4F206JA07
4F206JL02
4F206JN41
4F206JQ81
4J040PA21
4J040QB04
(57)【要約】
本発明は、金型と深く傾斜した形状及びアンダーカットされたウェッジ構造を必要とする指向性ヤモリに着想を得た接着剤を鋳造するための金型を作製する方法とを提供する。耐久性のある金型は大量生産のために使用することができる。一例では、接着剤の大量生産のために圧縮成形が使用される。現在生産するのに通常24時間かかるものは、圧縮成形によって、5分で生産することができる。圧縮成形により、1日あたりの接着パッチの生産量を1つから数千に増やすことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層の金属スタックから金型を作製するステップを含む、バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造するための金型を作製する方法。
【請求項2】
初期層を有する前記金型を作製するステップをさらに含み、
前記初期層は、娘型層に均一な膜を作製するためにスパッタリングされ、前記娘型層には、電気めっきによって電気めっき表面層が構築され、前記電気めっき表面層にはバッキングプレートが置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
指向性乾燥接着剤ウェッジを鋳造するための装置を使用して、バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造する方法であって、
前記装置は、金型と、ベースとを有し、
前記金型は、平面に画定された厚さhの形状のアレイを特徴付け、前記形状のアレイは、指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造または形成することができ、前記形状は、前記平面に直交して画定され、前記形状はそれぞれ、前記平面に対して鋭角を有する三角形であり、辺の1つは鋭角λをなし、隣接する三角形の先端部は距離sだけ離間し、それぞれの三角形の2つの側辺は2βだけ離間し、
前記ベースは前記形状のアレイの前記平面を取り囲み、前記ベースは厚さAを有し、前記厚さAは前記厚さhよりも大きく、前記ベースは指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイのバッキング層を鋳造または形成することができる、方法。
【請求項4】
前記バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイの鋳造は、射出成形、圧縮成形、圧縮鋳造、熱成形、またはそれらの組み合わせによって行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
hは60マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲であり、Aは50マイクロメートル~150マイクロメートルの範囲であり、λは55度~65度の範囲であり、sは50マイクロメートル~60マイクロメートルの範囲であり、βは7度~8度の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
指向性乾燥接着剤ウェッジを鋳造するための装置であって、
金型と、ベースとを有し、
前記金型は、平面に画定された厚さhの形状のアレイを特徴付け、前記形状のアレイは、指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造または形成することができ、前記形状は、前記平面に直交して画定され、前記形状はそれぞれ、前記平面に対する鋭角を有する三角形であり、辺の1つは鋭角λをなし、隣接する三角形の先端部は距離sだけ離間し、それぞれの三角形の2つの側辺は2βだけ離間し、
前記ベースは前記形状のアレイの前記平面を取り囲み、前記ベースは厚さAを有し、前記厚さAは前記厚さhよりも大きく、前記ベースは、指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイのバッキング層を鋳造または形成することができる、装置。
【請求項7】
hは60マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲であり、Aは50マイクロメートル~150マイクロメートルの範囲であり、λは55度~65度の範囲であり、sは50マイクロメートル~60マイクロメートルの範囲であり、βは7度~8度の範囲である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記金型は間接金型法によって作製される、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性ヤモリに着想を得た接着剤を鋳造するための型に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性ヤモリに着想を得た接着剤には、ヤモリの毛の生えた脚のように、初期状態では接着性を有していないが、剪断荷重がかかると接着性を発揮するという特性がある。この特性は、登山ロボットに対して有用であり、ほとんど力をかけずに足を置いたり離したりすることができる一方で、一歩踏み出すときに滑らかな表面にしっかりと密着したり、物体の表面を掴むこともできる。一般的な用途では、荷重の方向及び条件に応じて、剪断応力では60kPa、法線応力では10kPaを受ける。このような有用な特性にもかかわらず、それらの接着剤があまり使用されていない理由の1つは、現在、数サイクルしか使用できない型を使用して、厳密な手作業で極少量しか生産されていないためである。したがって、当該技術分野では、指向性を有し制御可能なヤモリに着想を得た接着剤のための、耐久性のある型を開発する必要がある。本発明は、この必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、深く傾斜した形状及びアンダーカットされたウェッジ構造を必要とする指向性ヤモリに着想を得た接着剤を鋳造するための金型と、その作製方法とを提供する。指向性ヤモリに着想を得た接着剤を作製するための従来の取り組みでは、ワックスまたはエポキシの耐久性のない型を使用していた。これらの型の寿命は非常に限られており、最終的な接着剤の大量生産には適していない。
【0004】
指向性接着剤には、テーパ形状、高いアスペクト比、及び滑らかな表面仕上げという困難な組み合わせを有する微細な傾斜形状が必要である。本明細書で提供される金型によって生み出されるウェッジ形状は、従来の製造方法における使い捨てのワックス型及びエポキシ型から鋳造されたものと同様の形状及び表面仕上げを示す。また、同一レベルの接着力及び剪断応力を有する。金型、及び当該金型から鋳造された接着剤は、成形サイクルを繰り返しても劣化しない。
【0005】
一態様では、本発明は、指向性乾燥接着剤ウェッジを鋳造するための金型として定義され、金型は間接金型法によって作製される。金型は、厚さhを有する平面内に画定された形状のアレイを特徴付け、形状のアレイは、指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造または形成することができる。形状は、平面に直交するように画定される。各形状は、平面に対する鋭角を有する三角形である。辺の1つは鋭角λをなす。隣接する三角形の先端部は距離sだけ離間し、それぞれの三角形の2つの側辺は2βだけ離間している。金型はさらに、形状のアレイの平面を囲むベースを特徴付け、ベースは厚さAを有し、Aはhより大きい。ベースは、指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイのバッキング層を鋳造または形成することができる。
【0006】
金型の寸法に関して、一実施形態は以下のように定義する。
hは、60マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲であり、好ましくは約100マイクロメートルであり、
Aは、50マイクロメートル~150マイクロメートルの範囲であり、好ましくは約50マイクロメートルであり、
λは、55度~65度の範囲であり、好ましくは約60度であり、
rは、0.5マイクロメートル~2マイクロメートルの範囲であり、好ましくは約1マイクロメートルであり、
sは、50マイクロメートル~60マイクロメートルの範囲であり、好ましくは約50マイクロメートルであり、及び/または、
βは、7度~8度の範囲であり、好ましくは約7.5度である。
【0007】
別の実施形態では、好ましい寸法は、好ましい値から±10パーセントの範囲であり得る。
【0008】
別の態様では、本発明は、金型を使用して、バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造する方法である。バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイの鋳造は、射出成形、圧縮鋳造、熱成形、またはそれらの組み合わせによって行われ得る。鋳造技術は、シリコーン、未架橋高分子、カレンダーシリコーンゴム(calendar silicone rubber)もしくはポリマーシート、熱加硫タイプのシリコーンゴム、または他の熱硬化材料の直接注入であり、熱硬化法は、圧縮鋳造または射出成形であり得る。金型に流し込み、常温で硬化させることも可能である。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、金属層の金属スタックから金型を作製することによって、バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造するための金型を作製する方法である。金型は、娘型層に均一な膜を作製するためにスパッタリングされる初期層を有し、娘型層には、電気めっきによって電気めっき表面層が構築され、電気めっき表面層にはバッキングプレートが配置される。
【0010】
電気めっきの金属は、電気めっきが可能な金属であり、かつ硬い金属が選択される。電気めっきの表面は、バッキングプレートにろう付け可能なものか、またははんだ付け可能なものである必要がある。はんだは、熱膨張係数が類似し、反りのない任意のものであってよい。バッキングプレートは、スタックと熱的に互換性があり、はんだ付け/ろう付けができるものである必要がある。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、乾燥接着剤金型を製造する方法である。本方法は、ウェッジの裏側に金属バッキングを取り付けるステップと、ウェッジにリリース金属(release metal)の薄層をスパッタリングするステップと、リリース金属層に、ウェッジの先端部の高さよりも厚い厚さまで金属を電気めっきするステップと、はんだが浮いた状態で上部型プレートを金属バッキングと平行に位置合わせするべく、電気めっき表面に上部型プレートを浮かせるためにはんだを使用するステップと、乾燥接着金型を形成するために、電気めっき金属からウェッジを取り外すステップと、を含む。
【0012】
金属の選択肢は、スタック全体について非常に広範である(例えば、銅、ニッケルなど)。初期層は、スパッタリングされて娘型(daughter mold)上に均一な薄膜を作成し、そこから電気めっきが重ねられる必要がある。次の手順で選択される電気めっき金属は、電気めっきが可能であり、硬いものである。電気めっきの表面は、バッキングプレートにろう付け可能なものか、またははんだ付け可能なものである必要がある。はんだは、熱膨張係数が類似し、反りのない任意のものであってよい。バッキングプレートは、スタックと熱的に互換性があり、はんだ付け/ろう付けができるものである必要がある。
【0013】
別の実施形態では、バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造するための金型を製造する方法が提供され、金型は、金属層の金属スタックから作製される。金型は初期層を有し、初期層は、娘型層に均一な膜を作製するためにスパッタリングされ、娘型層には、電気めっきによって電気めっき表面層が構築され、電気めっき表面層にはバッキングプレートが配置される。
【0014】
さらに別の実施形態では、指向性乾燥接着剤ウェッジを鋳造するための装置を使用して、バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造する方法が提供される。装置は、厚さhを有する平面内に画定された形状のアレイを特徴付ける金型を有する。形状のアレイは、指向性乾燥接着剤ウェッジのアレイを鋳造または形成することができる。形状は、平面に直交して画定される。形状はそれぞれ、平面に対する鋭角を有する三角形である。辺の1つは鋭角λをなす。隣接する三角形の先端部は距離sだけ離間し、それぞれの三角形の2つの側辺は2βだけ離間している。金型はさらに、形状のアレイの平面を囲むベースを特徴付け、ベースは厚さAを有し、Aはhより大きく、ベースは指向性乾燥接着ウェッジのアレイのバッキング層を鋳造または形成することができる。
【0015】
バッキング層を備えた指向性乾燥接着剤ウェッジのこのアレイの鋳造は、射出成形、圧縮成形、圧縮鋳造、熱成形、またはそれらの組み合わせによって行われる。hは60マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲、好ましくは約100マイクロメートルであり、Aは50マイクロメートル~150マイクロメートルの範囲、好ましくは約50マイクロメートルであり、λは55度~65度の範囲、好ましくは約60度であり、rは0.5マイクロメートル~2マイクロメートルの範囲、好ましくは約1マイクロメートルであり、sは50マイクロメートル~60マイクロメートルの範囲、好ましくは約50マイクロメートルであり、及び/または、βは7度~8度の範囲、好ましくは約7.5度である。
【0016】
さらに別の実施形態では、本明細書で定義されるように、指向性乾燥接着剤ウェッジを鋳造するための装置が提供される。金型は間接金型法によって作製される。
【0017】
さらに別の実施形態では、後処理によって先端部の形状を変更する方法が提供される。
【0018】
さらに別の実施形態では、後処理された形状をワックス型で複製する方法が提供される。
【0019】
本発明の実施形態の利点は、大量生産に使用することができる耐久性のある型である。全金属製の金型の別の利点は、接着剤用のポリマーを高圧及び高温で処理できるので、新たなポリマーを使用できるという点である。
【0020】
さらに別の利点は、ワックスやSU-8/石英の型では利用できない化学薬品や処理によって、金型を洗浄可能な点である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の例示的な実施形態による、ヤモリに着想を得た接着剤を示す図である。荷重がかかっていないときには、ヤモリに着想を得た接着剤は、接触面積が小さく接着性を有さないが、剪断加重をかけると、接触面積が増加し、接着性が発生する。ウェッジは、以下のようにラベルを付した寸法で、荷重のかかっていない形状に成形される:ウェッジ高さh=90μm、ウェッジ間隔s=50μm、ウェッジ傾斜角(荷重がかかっていない状態)λ=15°、ウェッジ先端部の半角β=7.5°、ウェッジ先端部の半径rtip≒1μm。これらの寸法は、集合的に、金型製造の課題となる。
図2】本発明の例示的な実施形態による、型(ワックスまたは金属)の等角図である。A=150μmは、ウェッジのベースから基準平面までのバッキング層の厚さであり、B=250μmは、ウェッジとバッキング層との合計の厚さである。
図3】本発明の例示的な実施形態による、金型プロセスの複数のステップにおける断面図(ノンスケール)を示す図である。(A)シリコーンゴムのポジ型をワックスで鋳造する。(B)チタン及びプラチナをスパッタリングする。(C)銅を電気めっきする。(D)6mmの銅ブロックにはんだ付けする。(E)分解して金型表面を露出させる。参照符号は明細書中の文章と対応する。
図4】本発明の例示的な実施形態による、金型による10番目の鋳物の、上部の微視的断面を示す図である。下側の画像は、比較のために、ワックス型から鋳造された、カプトン(登録商標)フィルムのバッキングを備えたウェッジの断面を示している。画像は、VHX-6000(キーエンス社)によって、倍率200倍、暗視野の「リング」照明で撮影した。表1は、2つのケースについて、図1で定義されている幾何学的パラメータを比較している。
図5】本発明の例示的な実施形態による、金型からの10番目の鋳物(左)及びワックス型(右)から得られたウェッジの先端部を示す図である。表面粗さ(Ra)は、ウェッジの先端部に平行な100μmの線に沿って測定した。線510は代表的な線である。測定された粗さは、金型から鋳造されたサンプルと、ワックス型から鋳造されたサンプルとの両方とも、0.25~0.71μmの範囲であった。画像は、VHX-6000(キーエンス社)によって、倍率500倍、明視野の「同軸」照明で撮影した。
図6】本発明の例示的な実施形態による、0°(法線)から90°(接線)の範囲の引き剥がし角で測定した、フィルムのバッキングを備えた接着剤サンプルから得られた剪断応力及び接着応力の限界曲線を示す図である。金型による1番目及び10番目のサンプルの測定された限界曲線を、使い捨てのワックス型の限界曲線と比較している。
図7】本発明の例示的な実施形態による、金型の圧縮成形のステップを含むフロー図である。本明細書に詳細に記載されているように、図7におけるラベルA、Bなどは、以下に対応する:A=セットアップ及び準備、B=プレス、C=硬化、D=プレスの解除、E=部品の取り外し、F=圧縮成形部品。
図8】本発明の例示的な実施形態による、5分で硬化したNuSil(登録商標)MED4950を用いた圧縮成形による金型で鋳造された接着剤を、室温で24時間の硬化時間をかけて硬化したSylgard(登録商標)170を用いたワックス型と比較した一連の比較限界曲線を示す図である。フィルムのバッキングを備えた接着剤サンプルについての、0°(法線)から90°(接線)の範囲の引き剥がし角で測定した剪断応力及び接着応力の限界曲線。金型による1番目及び10番目のサンプルについての測定された限界曲線は、使い捨てのワックス型の限界曲線と比較している。
図9】本発明の例示的な実施形態による、上部の微視的断面が、金型での圧縮成形によってNuSil(登録商標)MED4950から作製されたウェッジであることを示す図である。下の画像は、比較のために、ワックス型から鋳造された、カプトン(登録商標)フィルムのバッキングを備えたSylgard(登録商標)170から作製されたウェッジの断面を示している。画像は、VHX-6000(キーエンス社)によって、倍率200倍、暗視野の「リング」照明で撮影した。
図10】本発明の例示的な実施形態による、上部の微視的断面が、ニッケル金型から得られたことを示す図である。下側の画像は、比較のために、ワックス型から鋳造された、カプトン(登録商標)フィルムのバッキングを備えたウェッジの断面を示している。画像は、VHX-6000(キーエンス社)によって、倍率200倍、暗視野の「リング」照明で撮影した。
図11】本発明の例示的な実施形態による、NuSil(登録商標)MED 4950材料による100,000サイクルにわたる圧縮成形の耐久性を示す図である。接着剤は、その最大剪断応力の85%緩和まで荷重をかけられ、100,000サイクルにわたって繰り返された。
図12】本発明の例示的な実施形態による、一人用の後処理プロセスにおける複数のステップのフロー図である。本明細書に記載されているように、図12におけるラベルA、Bなどは、以下に対応する:A=初期鋳造、B=離型、C=ランナーの取り外し、D=未充填PDMSのスピンコート、E=ウェッジにウェーハを下向きに配置、F-H=インクを付ける表面の位置決め、I=インキング、J=インク付きウェッジ、K=硬化、L=硬化、M=ランナーをウェーハに戻す。
図13】本発明の例示的な実施形態による、後処理されたウェッジの形状を複製するための複数のステップのフロー図である。本明細書に記載されているように、図13におけるラベルA、Bなどは、以下に対応する:A=開始ウェッジ、B=ワックスの加熱、C=平行性の保証と冷却、D=硬化ワックス、E=後処理された形状のワックス型、F=新たなワックス型への鋳造、及び、G=後処理。
【発明を実施するための形態】
【0022】
異方性接着剤の形状及び製造
【0023】
接着剤の特徴は、初期状態では接着性を有していないが、剪断荷重を加えるとファンデルワールス力による接着力を生じることである(図1)。この性質は、ヤモリの接着システムと類似している。オン・オフの制御可能な接着性は、図1における下の画像に示すように、曲がることによって略連続的な接触を形成する、長く、テーパ状の、角度の付いたウェッジを有することによってもたらされる。屈曲の量、したがって接着の量は、加えられた剪断力の大きさに比例する。剪断荷重を解放すると、ウェッジが元の形状に戻り、接着は解消される。
【0024】
非対称または角度のついた微視的特徴を必要とする指向性接着剤も実証されている。これらの接着剤は、図1に見られるような張り出しやテーパの範囲を有しておらず、指向性がそれほど強くない。すなわち、接着剤には、通常、接着するためにある程度の予荷重が必要であり、及び/または、剥離するためにある程度の剥離力が必要である。特に、図1の形状は、ほとんどのリソグラフィー技術を排除している。
【0025】
角度のついたリソグラフィーの代替手段として、マイクロスケールでのダイレクト3Dプリンティングが有望視されている。例えば、2光子リソグラフィーはヤモリの毛のようなさらに要求の厳しい微視的形状を再現するために、サブミクロンのボクセルを実現することができる。しかしながら、このプロセスは非常に時間がかかるため、適度な接着性を示すUV硬化ポリマーの茎(stalk)のサンプルは少量(1×1mm未満)にとどまった。
【0026】
これらの例では、傾斜した、非対称の、及び/またはテーパ状の微視的形状の必要性から、製造上の課題が生じている。さらに、得られる型すなわちポジ形状は、SU-8フォトレジストなどの材料またはポリシリコンウェーハから作成されるが、これらは、プラスチックまたはエラストマー部品の大量生産に通常使用される金型ほど耐久性がない。
【0027】
リソグラフィーの別の代替手段は、直接微細加工または放電加工であるが、オーバーハング形状及び非常に鋭い溝の底部(先端部の半径≦1μm)が必要とされるので、多くのアプローチが不可能になる。必要とされるスケール及び同様の形状で金属に直接溝を形成できる1つの手法として、回折格子やその他の光学部品の作成に従来から使用されているシングルポイントダイヤモンド切削加工がある。ダイヤモンド切削加工は、マイクロウェッジに必要な溝と同様の溝を備えたアルミニウム型を作成するために使用されている。しかしながら、ほとんどの溝面は、図1のものよりも深く、狭く、オーバーハングしていないように見える。さらに、指向性接着に必要なプロファイルに最も近いものが示した接着性能は、比較的低かった。
【0028】
間接金型法
【0029】
リソグラフィー、3D積層造形、または金属微細加工技術を使用して、図1で定義された指向性接着機能を生成できる耐久性のある金型を作成することは困難であるが、別のアプローチとして、間接金型法を使用することができる。間接金型法では、耐久性のない金型を使用してポジ形状を作成し、次に電気めっき、金属スプレー、またはその他のプロセスを使用して、耐久性を有する第2世代の金型を作成することができる。LIGAは、X線またはUVリソグラフィーを使用して高アスペクト比の形状を作成した後、それを電気めっきして耐久性を有する金型を作成する。同様のプロセスが、マイクロ流体チャネル及びデバイス用の金型を作成するために使用されている。しかしながら、図1に見られる鋭く角度の付いたテーパ形状は、当該技術分野では見られない。
【0030】
金型の製作工程
【0031】
金型の作成は、図1に示す接着剤の型を作成するために使用されたものと同様の、ワックスの直接機械加工から始まる。このプロセスを、文脈上ここで簡単に要約する。図2は型を示している。ウェッジ形状及び余分なシリコーン用のチャネルは、上面で厚さ6mmのソフトワックス層にカットされる。ソフトワックス層は、厚さ約40mmのハードワックスのブロックで支えられている。ウェッジ用の狭く角度の付いた溝は、インデンティングと直交加工(orthogonal machining)とのハイブリッドである加工軌道を有する、研磨され、PTFEコーティングが施されたミクロトーム刃(D554X、C.L.Sturkey社)を使用して作成される。既に作成されている溝に損傷を与えることを防ぐため、主に圧縮状態で刃に荷重をかけ、チップ材料を継続的に前方に押し出す。シリコーンゴムを型に流し込んだ後、バッキング材を入れ、ウェッジの先端部との平行性を確保するためにバッキング材を位置合わせする。用途に応じて、バッキング材は硬いプレートまたは薄いフィルムのいずれかであり得る。
【0032】
残念ながら、ワックス型は1、2回の鋳造サイクルで精度が落ちる。エポキシ(Epox-Acast 670HT、Smooth-On社)から第2世代の娘型を作成するためのポジとしてキャストシリコーンゴムを使用することにより、やや耐久性のある型を作成することができる。エポキシ型は、オーブン硬化中の反りを防ぐためにアルミニウムまたはカーボンファイバーの縦方向及び横方向のスパー(spar)によって内部で支持され、離型を容易にするためにパリレンコーティングが施されている。ある金型は50サイクルより長く持続するが、他の金型は10サイクル以下しか持続しない。
【0033】
残りのステップの別の出発点として、SU-8の型から鋳造したシリコーンゴム製のウェッジを使用する方法もある。このウェッジは若干異なる形状を有しているが、ワックスから鋳造したものと同様の性能を発揮する。
【0034】
金型の製作プロセス
【0035】
金型製作プロセスの主なステップを図3に示す。以下に記載するように、図3のラベルA、Bなどは、A=初期鋳造、B=スパッタリング、C=電気めっき、D=はんだ付け、E=分解に対応する。
【0036】
初期鋳造(A)
【0037】
このプロセスは、UVテープを備えた厚さ2mm、直径150mmのステンレス鋼ウェーハまたは石英をバッキング材として使用して、微細加工したワックス型にシリコーンゴムを鋳造するステップから始まる。ウェーハをプライマー(PR-1200、ダウコーニング社)で処理することにより、シリコーンへの接着を促進する。ウェッジの上部とバッキングとの間の平行性を維持することが重要である。ウェーハは、その後のステップのための頑丈で導電性の基準面を提供する。
【0038】
スパッタリング(B)
【0039】
離型及び真空脱ガスの後、ウェーハ及びウェッジに5nmのチタンと195nmのプラチナとをスパッタリングする。チタンは良好な初期接着を提供し、プラチナはその後の電気めっきのための均一なシード層を提供する。スパッタリングは、3mTorr(約4mPa)のほぼ真空中で行う。
【0040】
電気めっき(C)
【0041】
銅は、200μmの厚さに電気めっきされている。この層はウェッジの高さの約2倍であるが、耐久性を有する型のためには薄すぎる。さらに、電気めっきプロセスによって裏面がやや非平面になるので、次のステップが必要になる。
【0042】
はんだ付け(D)
【0043】
銅の裏面を、洗浄し、厚さ6mmの銅または真鍮のベースブロックに炉ではんだ付けするためのフラックスで準備する。ウェッジの先端部との平行性を維持するために、ウェーハをベースブロックの基準面として使用し、その隙間をインジウムはんだの薄層によって埋めることができるようにする。実験では、低温インジウムはんだは、他の鋳造可能な金属フィラーと比べて、不均一な冷却や収縮に関連する問題をほとんど発生させなかった。
【0044】
分解(E)
【0045】
ベースブロックを研磨して表面を滑らかにし、シリコンウェッジ及びウェーハを金型表面から引き離す。スパッタリング及び電気めっきにより、金属表面がシリコーンにしっかりと接着しているので、このステップにはある程度の労力が必要である。現在、最良の解決策は、溶剤(Digesil NC-X、RPM Technology社)を使用してシリコーンを攻撃することである。最後にアセトン及びエタノールで濯ぐと、型を使用する準備が整う。
【0046】
使い捨てのワックス型と使用が限られたSU-8型でこれまでに使用されたものと同一のプロセスに従って、接着剤サンプルを鋳造する準備が整った。本発明者らは、離型を容易にするために離型剤を使用する必要があることを見出していない。
【0047】
結果
【0048】
最初のテストは、微視的スケールで、金型から鋳造された接着剤が、ワックス型から得られるような鋭く角度の付いたウェッジのプロファイルを維持するかどうかを確認することである。図4は、金型及びワックス型から鋳造されたウェッジの比較顕微鏡画像を示している。PDMS材料を垂直に切断し、顕微鏡下に試料を置いてプロファイルを調べることによって、これらの画像を取得する。
【0049】
表1は、2つの顕微鏡画像のそれぞれから測定した幾何学的パラメータを示している。高さ及び傾斜角の測定値にはばらつきがあるが、これがワックス加工プロセスにおけるばらつきに起因しているのか、あるいは金型製作のばらつきに起因しているのかは明らかではない。いずれの場合も、接着剤の性能はこれらのパラメータの小さなばらつきに大きく影響されることはない。
【0050】
表1.金型及びワックス型から鋳造された図4のサンプルの幾何学的パラメータ(図1で定義)のそれぞれの比較。20個のウェッジについて200倍の倍率で顕微鏡画像から測定された寸法。μは平均であり、σは標準偏差である。
【0051】
【表1】
【0052】
ウェッジの性能は、特にウェッジの先端面、すなわち、被着面と接触する面の表面仕上げにも依存する。
【0053】
図5は、金型及びワックス型から鋳造されたサンプルの500倍の倍率でのウェッジの画像を示している。どちらの場合も、ウェッジの先端部に平行な100μmの線(図5に示す代表的な線510)に沿って測定した表面仕上げ(Ra)は、0.25μm~0.71μmの範囲であった。
【0054】
金型から鋳造されたウェッジが、ワックス型から鋳造されたウェッジと同様の表面仕上げ及び形状を有することを確認した後、決定的なテストは、それらが同様の接着力を生じるか否かである。図6は、ワックス型からのウェッジと比較した、金型による1番目及び10番目の鋳物からのウェッジの限界曲線を示している。経験的限界曲線は、接着剤のパッチ(通常は約6×6mmの正方形)を滑らかな表面に接触させた後、接着剤が接触を失ったときの法線及び接線の力成分を記録しながら、表面に対して略垂直から略接線までの範囲の離脱角でパッチを引き離すことによって作成される。したがって、各ポイントは、その方向において接着剤によってサポートされる接着応力を表す。横軸に剪断応力、縦軸に接着剤(ネガティブ)の法線応力をとってプロットすると、接着剤の限界曲線が得られる。同等の荷重条件下では、法線応力と剪断応力との組み合わせが経験的限界曲線の内側である場合には接着剤は維持され、それを超える力が加わると接着剤は破損する。2つの成形プロセスで得られた接着剤の材質、形状、表面仕上げが同一である場合、それぞれの測定された限界曲線は同一になる。
【0055】
同一の接着剤及び表面であっても、テストごとに多少のばらつきがある。したがって、特に純粋な接線方向に近づく荷重条件(すなわち、純粋な剪断)の場合、データにはある程度のばらつきがある。それにもかかわらず、図6のデータを調べると、2つの結果が得られている。1つ目は、1番目の鋳物と10番目の鋳物との結果が互いに区別できないことであり、これは、金型が劣化しておらず、ウェッジの先端部を画定する溝の底にシリコーンが詰まっていないことを示している。2つ目のポイントは、金型の結果が一般的な使い捨てのワックス型の結果に匹敵することである。
【0056】
圧縮成形
【0057】
本発明の別の実施形態では、接着剤を大量生産するために圧縮成形を使用する。現在生産するのに通常24時間かかるものは、圧縮成形によって5分で生産できるようになる。圧縮成形により、1日あたりの接着パッチの生産量を1個から数千個に増やすことができる。圧縮成形は、未加硫のシリコーンゴムを金型のキャビティに挿入し、高圧及び高温を加えて、金型の目的の形状にゴムを硬化させるプロセスである。ここでの圧縮成形の課題は、アンダーカットのある微細な構造を有する薄いシートである。
【0058】
熱を加えない場合には硬化時間は24時間かかるが、圧縮成形を使用すると、同一の材料を5分で硬化させることができる。硬化時間が短縮されると、接着剤の大量生産がより現実的になる。接着剤のコストが下がり、職人の製品ではなく一般の人々が利用しやすくなるためには、接着剤の処理能力は、数時間単位ではなく数分単位であることが必要とされる。
【0059】
圧縮成形は、圧力をかけなければ金型に充填できなかった材料や、室温で硬化できなかった材料まで、利用可能な接着剤材料を拡大する。これらの新たな材料の特性から得られる利点は、1時間あたり数千サイクルの使用を必要とする用途の場合は特に、接着剤の寿命を延ばすことにつながる。本発明の目的のために検討したNuSil(登録商標)は、過去に使用されてきたSylgard(登録商標)と同様のデュロメータを有するように選択した。同様のデュロメータ硬さを維持することの重要性は、汚れや他の粒子と遭遇した場合にウェッジがほぼ同一の硬さであることを保証することである。汚れがウェッジを埋め込んだり、破ったりすることはない。
【0060】
圧縮成形材料
【0061】
シリコーンゴムには、様々なデュロメータ、混合中及び硬化後の特性がある(表2)。これらの材料のうち、いくつかは、より脆く、亀裂がより容易に伝播する傾向があるが、他の材料は、裂けることなく長さの最大400倍の強度を得ることができる。様々なNuSil(登録商標)シリコーンゴムを準備し、ワックス型またはエポキシ型に流し込んだ現在のSylgard(登録商標)170と比較するために使用した。
【0062】
表2.様々なシリコーンゴムの材料特性。
【0063】
【表2】
【0064】
材料特性の比較を表3に示す。指向性接着剤の型を作るために、様々な材料が使用されてきた。金型材料の寿命は降伏強度と相関しているようであり、成形プロセスによって微細な形状に応力が発生し、時間の経過とともに徐々に変形したり、特に離型中に形状が破損したりする可能性がある。
【0065】
表3.様々な金属の材料特性。
【0066】
【表3】
【0067】
材料の寿命は引裂強度や引張強度に相関しているようであり、微小な裂け目やクラックが接着剤またはウェッジの先端部に伝わると、接着剤の劣化またはより劇的な接着不良を引き起こす。
【0068】
Sylgard(登録商標)170(Dow Corning,Inc.社)、Dragon Skin30、Mold Star30(Smooth-On Polymers,Inc.社)、及び、いくつかの宇宙環境に適したRTVシリコーン(SCV2-2590など)を使用すると、良好な結果及びキャスタブル材料が得られる。より強靭な材料の使用はこれまで行われていない。NuSil(登録商標)MED4950の限界曲線を見て、それをワックス型で鋳造されたSylgard(登録商標)170と比較すると、それらは議論の余地のないものである(図9)。
【0069】
金型の改良
【0070】
圧縮成形により、本明細書で提供される金型は、より耐久性があり、より迅速に製造されるように改善される。
【0071】
型の微細な形状は注意深く扱わないと壊れやすく、注意を払ったとしても、離型によって形状に応力が加わり変形が生じる可能性がある。半永久的な金型のための理想的な材料を検討することにより、耐久性があり、寿命が長く、繰り返し使用可能な型を実現することができる。型の作成に最適な材料についてのより良いアイディアを得るためには、材料の降伏強度及びヤング率を調べる必要がある。表3を見ると、ワックス型は、圧縮成形材料に対する降伏強度を有しておらず、ウェッジが壊れる前に充填することができないことがわかる。金型は耐久性に優れ、鋳造サイクル、特に、一般的にウェッジが破損する原因となる離型によって変形する可能性が低くなる。エポキシはワックスよりもかなり強力であるが、金属ほど強くはない。
【0072】
銅及びニッケルは、蒸着すると内部応力が高くなるアルミニウムよりも強く、かつ耐久性があり、極めて柔らかい金属であるスズよりも優れている。電気めっきされた金属はいずれもエポキシより丈夫である。そこで、発明者らは、銅の結果が良好であったためニッケルを検討したが、これらは両方とも型のコーティングに広範に使用されている。
【0073】
表3で観察できるように、ニッケルは銅よりも降伏強度が高く、ヤング率は略2倍である。これらの特性は、圧縮成形または離型中にウェッジが簡単に曲がったり折れたりしないようにするために有利である。金型プロセスに対する別の改善点は、最初のウェーハをステンレス鋼から石英に変更したことである。ステンレス鋼は、元のウェッジから分離するために大きな力を必要とする。石英ウェーハは透明であるため、ウェッジを注入及び鋳造する前に、薄いUVテープ層を追加している。プロセスが完了すると、UVテープがUV光に曝され、ウェーハは、ほとんど、あるいはまったく力を加えることなく分離される。これにより、離型プロセスが大幅に改善された。
【0074】
圧縮金型製造プロセス
【0075】
圧縮成形によって接着パッチを作成する主なステップを図7に示す。図7におけるラベルA、Bなどは、以下に記載のように対応する:A=セットアップ及び準備、B=プレス、C=硬化、D=プレスの解除、E=部品の取り外し、F=圧縮成形部品。
【0076】
セットアップ及び準備(A)
【0077】
このプロセスは、ミキシングガンまたは手作業で材料を混合することから始まる。材料は2つの部分から形成されているので、手作業で混合する場合は、折り畳み及び重ね合わせの手法を使用することができる。パン職人が用いる折り畳み及び重ね合わせ技法は、材料を2つの円筒の間に通して転がし、3分の1に折り畳んで再び円筒の間に通して転がす。20回折り畳むと、材料は混合され、薄く伸ばされて接着領域(76mmx127mmインチx1mmの厚さ)の大部分を覆う準備が整う。この材料を、バッキング層とともに金型上に配置する。圧力を均一にし、プレス機への出し入れを容易にするために、厚さ2.5cmの2枚の平坦なステンレス鋼プレートを上部及び下部に設ける。
【0078】
プレス(B)
【0079】
油圧プレスはすぐに作動し、形状内に押し込まれる前に材料が硬化しないことを保証する。
【0080】
硬化(C)
【0081】
プラテン(圧盤)は3.4MPaの圧力をかけ、圧縮成形中は100℃の温度に保たれる。この温度及び圧力で5分間保持した後、プレスは解除される。
【0082】
プレスの解除(D)
【0083】
その後、油圧を解除し、スタックをプラテンから取り外す。材料及びバッキングを有する金型を、バケツの冷水でクエンチするか、または室温まで冷却する。
【0084】
部品の取り外し(E)
【0085】
金型及び材料が完全に冷却されると、バッキングの角部を保持して部品の取り外しをサポートする。
【0086】
圧縮成形部品(F)
【0087】
圧縮成形部品は完全に硬化しており、すぐに使用することができる。
【0088】
結果
【0089】
限界曲線は、同一の接着剤及び表面を使用した場合でも、テストごとにばらつきがあることを示している(図8)。したがって、特に純粋に接線方向(すなわち、純粋な剪断)に近い荷重条件の場合には、データにはある程度のばらつきがある。それにもかかわらず、図8のデータを調べると、2つの結果が明らかになる。第1のポイントは、NuSil(登録商標)のウェッジが同等の接着結果をもたらすことである。この材料はより丈夫であり、したがって接着剤の寿命を延ばす。特に、離型中の接着剤全体の裂けが少なくなる。第2のポイントは、ニッケル型の結果が一般的な使い捨てのワックス型及び銅型の結果と同等であり、型の耐久性を高めていることである(図9及び11)。
【0090】
後処理
【0091】
ヤモリ接着剤の後処理により、滑らかな表面への接着性を向上させることができる。
【0092】
ウェッジの先端部は、最初の金型から変形したり、欠けたり、あるいは全体的に粗くなっていたりすることがある。これは、ワックス型において見られる。主な理由は、石英粒子が蓄積し、PDMSが金型に完全に流れ込まないため、またはPDMSウェッジが薄すぎて離型するときに破れるためであり得る。金型は、ウェッジのキャビティに欠陥がある場合にも、状況を悪化させる可能性がある。
【0093】
本発明者らは、ウェッジの先端部の滑らかさを向上させる後処理プロセスを特定した。限界曲線が拡大され、接着性が向上する。後処理されたウェッジを作成するプロセスは非常に正確であり、ずれがあると、ウェッジが永久に接着されてしまうか、あるいは先端部が未充填のPDMS混合物を受け取らず、最初の状態のままになる。今回のような形状を作成するための機械加工技術はない。本発明者らは、以下に説明するプロセスを経た後、後処理されたウェッジの先端部が、接着性をより向上させるために保存されることを発見した。
【0094】
後処理プロセスの主なステップを図12に示す。図12におけるラベルA、Bなどは、以下に記載のように対応する:A=初期鋳造、B=離型、C=ランナーの取り外し、D=未充填PDMSのスピンコート、E=ウェッジにウェーハを下向きに配置、F-H=インク表面の位置決め、I=インク、J=インク付きウェッジ、K=硬化、L=硬化、M=ランナーをウェーハに戻す。
【0095】
初期鋳造(A)
【0096】
最初に、型にウェッジを鋳造し、ウェーハの裏面に薄い下地テープ層を貼る。
【0097】
離型(B)
【0098】
ウェッジを型から外し、検査する。
【0099】
ランナーの取り外し(C)
【0100】
ランナーを注意深く切り出し、下地テープ層に貼り付けたまま取り外す。取り外したランナーは後のステップのために保存する。
【0101】
未充填PDMSのスピンコート(D)
【0102】
透明な石英またはシリコンウェーハを取り、未充填のPDMSを中央に配置する。ウェーハをスピンコーターに入れ、通常4000RPMで60秒間、1~3μmまでスピンダウンする。
【0103】
ウェッジにウェーハを下向きに配置(E)
【0104】
取り外し可能なタブを備えた2セットのシムを有するテープスタックがある。スピンコートされたウェーハをスタックの一番上に配置する。
【0105】
インクを付ける表面の位置決め(F-H)
【0106】
これらのステップは、左側のシムタブを取り外した後、右側のシムタブを取り外し、その後、左右の2番目のシムのペアを取り外していることを示している。これにより、インクを塗ったウェーハがウェッジの先端部にゆっくりと正確に接触しやすくなる。
【0107】
インキング(I)
【0108】
ウェッジを、インクを塗ったウェーハと接触させ、重い研磨されたウェイトをスタック上に10秒間置く。
【0109】
インク付きウェッジ(J)
【0110】
ウェッジにインクを塗り、オーバーインク(インクのつけすぎ)の簡単な検査を行う。
【0111】
硬化(K)
【0112】
次に、インクを塗ったウェッジをクリーンなウェーハの上に配置し、平坦な花崗岩のプレートを逆さまにして平坦な研磨されたウェイトを乗せる。インクを塗る際のポイントは、各ステップを通した位置合わせ及び圧力である。
【0113】
硬化(L)
【0114】
ウェッジを、24~48時間後にクリーンなウェーハから取り外す。ウェッジにインクをつけすぎないように制御及び維持するテープスタックを取り外す。
【0115】
ランナーをウェーハ上に戻す(M)
【0116】
ランナーを正しい位置に戻し、ウェッジと揃うように注意深く配置する。
【0117】
ウェッジを後処理し、複製または使用できるようにする。複製型を製造する方法は、上記の金型(図7)による複製、または図13のワックス型による複製の2つの方法がある。
【0118】
ワックス複製プロセス
【0119】
ワックスに捕捉された後処理されたウェッジの形状を複製する複製プロセスの主な手順を図13に示す。目的は、機械では達成できない形状を有するワックス型を作成することである。機械で達成できない理由は、形状がアンダーカットされた状態で、先端部がさらにアンダーカットされているためである。図13の方法は、形状をワックスでカプセル化することにより、この問題を克服している。図13におけるラベルA、Bなどは、以下に記載のように対応する:A=開始ウェッジ、B=ワックスの加熱、C=平行性の保証と冷却、D=硬化ワックス、E=後処理された形状のワックス型、F=新たなワックス型への鋳造、及び、G=後処理。
【0120】
開始ウェッジ(A)
【0121】
最初に、ウェッジを型に鋳造し、ウェーハの裏面に薄い下地テープ層を貼る。
【0122】
ワックスの加熱(B)
【0123】
ウェッジを約100℃の平坦なホットプレートに配置した後、ウェッジの上にワックスブロックを配置する。ワックスが溶け始めたら、ワックスが溝及びアンダーカットされた部分に入るまでさらに30秒待つ。
【0124】
平行性の保証と冷却(C)
【0125】
ワックスが溝に溶け込んだ後、スタックを取り外し、平坦な花崗岩の表面に配置する。溶けたワックス面に配置した平坦なウェイトと花崗岩の表面との間の平行性を確保するために、ブロックの周囲にシムを配置する。その後、スタックを室温で冷却する。
【0126】
硬化ワックス(D)
【0127】
ワックスが完全に冷却され、固まる。ウェイト及びシムを取り外す。ワックスとウェーハとの平行性を検査する。平行でない場合は、ワックスを再加熱し、冷却する。
【0128】
後処理された形状のワックス型(E)
【0129】
次に、ポジ型とウェーハとを取り外す。これにより、後処理された形状のワックス型が得られる。このプロセスには8分もかからない。
【0130】
新たなワックス型への鋳造(F)
【0131】
次に、通常のワックス型と同様に、後処理された形状のワックス型にシリコーンゴムを鋳造し、下地のバッキング材を付けて一晩硬化させる。
【0132】
後処理されたウェッジ(G)
【0133】
その結果、後処理を必要とせずに、後処理された形状の硬化したウェッジが得られる。この耐久性の低い型により、後処理された形状の迅速なテスト及び複製を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】