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特表2023-501610電動モータの制御装置を較正するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電動モータの制御装置を較正するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527793
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 AT2020060403
(87)【国際公開番号】W WO2021092641
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】A50974/2019
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フランセスコ・ドゥチ
(72)【発明者】
【氏名】ピルミン・プロイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・モーダー
(72)【発明者】
【氏名】リュディガー・タイシュマン
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505DD03
5H505DD06
5H505HB01
5H505JJ03
5H505LL38
(57)【要約】
本発明は、電動モータ(2)の制御装置(1)特にインバータ制御装置を較正するための方法およびシステムであって、以下の作業ステップすなわち、力の流れの一部である電動モータ(2)を運転するステップと、力の流れが特にもっぱら圧電素子(11a、11b、11c)にかかるように力の流れに組み入れられている圧電素子(11a、11b、11c)を使って力測定を実行するステップと、力測定から導き出された少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの分力の変化、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分、特にトルク成分の変化(ΔM、ΔM、ΔF)に基づいて、制御装置(1)の制御特性(5)を適合させるステップと、を備える方法およびシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(2)特に三相モータの制御装置(1)特にインバータ制御装置を較正するための方法(100)であって、以下の作業ステップすなわち、
‐力の流れの一部である前記電動モータ(2)を運転するステップ(101)と、
‐力の流れが特にもっぱら圧電素子(11a、11b、11c)にかかるように力の流れに設けられている圧電素子(11a、11b、11c)を使って力測定を実行するステップ(102)と、
‐力測定から導き出された少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの該分力の変化、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分、特に該トルク成分の変化(ΔM、ΔM、ΔF)に基づいて、前記制御装置(1)の制御特性(5)を適合させるステップ(103)と、
を備える方法(100)。
【請求項2】
電動モータ(2)特に三相モータを管理するための方法(200)であって、以下の作業ステップすなわち、
‐力の流れの一部である前記電動モータ(2)を運転するステップ(201)と、
‐力の流れが特にもっぱら圧電素子(21a、21b、21c)にかかるように力の流れに設けられている圧電素子(21a、21b、21c)を使って力測定を実行するステップ(202)と、
‐力測定から導き出された少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの該分力の変化、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分、特に該トルク成分の変化(ΔM、ΔM、ΔF)に基づいて、前記電気機械(2)の少なくとも1つの制御パラメータ(I、I;U、I、f)を調節するステップ(203)と、
を備える方法(200)。
【請求項3】
前記電動モータ(2)は三相同期機であり、少なくとも1つの前記制御パラメータは、磁極ホイール電流特に複素ベクトル図におけるその縦成分(I)と横成分(I)である、請求項1または2に記載の方法(100、200)。
【請求項4】
前記電動モータ(2)は三相非同期機であり、少なくとも1つの前記制御パラメータは、固定子電圧(U)および/または固定子周波数(f)であるか、または、少なくとも1つの前記制御パラメータは、固定子電流(I)および/または固定子周波数(f)である、請求項1または2に記載の方法(100、200)。
【請求項5】
制御特性を適合させるためのまたは少なくとも1つの制御パラメータ(I、I;U、I、f)を調節するための少なくとも1つの基準は、以下のグループすなわち、
トルクおよび/または力の変化の調和振動の強度、および/または
所与の周波数スペクトルにわたるトルクおよび/または力の変化の振動の強度の積分、
から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項6】
制御特性を適合させるためのまたは少なくとも1つの制御パラメータ(I、I;U、I、f)を調節するための少なくとも1つの基準は、以下のグループすなわち、
トルク要求の10%からトルク要求の90%までのトルクの立ち上がり時間、
トルク要求の時点からトルクの立ち上がりまでの遅延時間(T)、および/または
トルク要求の100%の値の過振動の強度(ΔI)、
から選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項7】
分力とトルク成分は、個々の前記圧電素子(11a、11b、11c;21a、21b、21c)の測定信号に基づいた方程式系を使って決定される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項8】
個々の前記圧電素子(11a、11b、11c;21a、21b、21c)の測定信号は、導き出されるべきそれぞれの前記分力および/または前記トルク成分への寄与割合に分解される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項9】
特に、導き出されるべきそれぞれの前記分力および/または前記トルク成分に対する個々の前記圧電素子の寄与すべてが考慮される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項10】
前記電動モータ(2)は、該電動モータ(2)からまたは該電動モータ(2)へ力の流れを伝達するシャフト(3a、3b)とともに運転され、前記圧電素子(11a、11b、11c;21a、21b、21c)は、前記シャフト(3a)の第1の部分と前記シャフト(3b)の第2の部分との間に設けられていて、前記圧電素子(11a、11b、11c;21a、21b、21c)を使って力特に剪断力が、前記第1の部分(3a)と前記第2の部分(3b)との間で測定可能なようになっている、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項11】
前記圧電素子(11a、11b、11c;21a、21b、21c)は、前記電動モータ(2)と該電動モータ(2)を支持するための支持装置(6)との間で力特に剪断力を測定する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項12】
前記電動モータ(2)は、該電動モータからまたは該電動モータへ力の流れを伝達するシャフト(3)とともに運転され、前記圧電素子(11a、11b、11c;21a、21b、21c)から成る測定システムは、前記シャフト(3)の回転質量および/またはシャフト(3)と前記電動モータ(2)全体の回転する部分の回転質量を変えることはない、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項13】
力の流れの一部である電動モータ(2)特に三相モータの制御装置(1)特にインバータ制御装置を較正するためのシステム(10)であって、
‐力測定を実行するための圧電素子(11a、11b、11c)であって、該圧電素子(21a、21b、21c)は、力の流れが特にもっぱら前記圧電素子にかかるように力の流れに設けられている圧電素子(11a、11b、11c)と、
‐少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの該分力の変化、および/または、少なくとも1つのトルク成分、特に少なくとも1つの該トルク成分の変化を、力測定から導き出すために設備されている評価手段(12)と、
‐力測定から導き出された少なくとも1つの前記分力、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つの前記トルク成分(ΔM、ΔM、ΔF)に基づいて、前記制御装置(1)の制御特性(5)を適合させるために設備されている手段(13)と、
を備えるシステム(10)。
【請求項14】
特に車両における、力の流れの一部である電動モータ(2)特に三相モータを管理するためのシステム(20)であって、
‐力測定を実行するために設備されている圧電素子(21a、21b、21c)であって、該圧電素子(21a、21b、21c)は、力の流れが特にもっぱら前記圧電素子にかかるように力の流れに設けられている圧電素子(21a、21b、21c)と、
‐少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの該分力の変化、および/または、少なくとも1つのトルク成分、特に少なくとも1つの該トルク成分の変化を、力測定から導き出すために設備されている評価手段(22)と、
‐力測定から導き出された少なくとも1つの前記分力、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つの前記トルク成分(ΔM、ΔM、ΔF)に基づいて、前記電気機械(2)の少なくとも1つの制御パラメータ(I、I;U、I、f)を調節するために設備されている制御手段(23)と、
を備えるシステム(20)。
【請求項15】
電動モータのための試験台であって、該試験台は、前記電動モータのための少なくとも1つの支持装置(6)と負荷(4)とを備え、前記電動モータは前記支持装置(6)と前記試験台の前記負荷(4)との間の力の流れに設置可能であり、さらに前記試験台は、請求項13に記載のシステム(10)を備える試験台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータ特に三相モータの制御装置特にインバータ制御装置を較正するための方法に関し、当該方法では、電動モータは力の流れの一部として運転され、圧電素子を使って力測定が実行され、圧電素子は、力の流れが特にもっぱら圧電素子にかかるように力の流れに設けられている。さらに本発明は、電動モータ特に三相モータを管理するための方法に関し、電動モータは力の流れの一部として運転され、力の流れが特にもっぱら圧電素子にかかるように力の流れに設けられている圧電素子を使って、力測定が実行される。その上本発明は、上述の方法を実行するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力網またはバッテリのような固定式の電圧システムから、直流、交流または三相交流のような可変の電圧システムを生み出せる電源供給器を、電動モータの運転に用いることが、従来技術から知られている。
【0003】
特に三相モータにとって必要なのは、電力供給からの直流電圧を、出力要求に応じて適切な交流電圧に変換することである。それゆえ、電動モータを制御するために一般的には、いわゆるインバータ制御装置が使用される。
【0004】
さらに従来技術から知られているのは、圧電素子を有する測定フランジを使って、シャフトの力もしくはトルクを測定すること、または、シャフトの軸受装置と軸受装置の支持装置との間に作用する反力によって、シャフトの力もしくはトルクを決定することであり、軸受装置は特に電気機械によって形成される。これはたとえば、特許文献1に記述されている。さらに特許文献2からは、様々な圧電素子の力測定の方程式系に基づいて、トルク成分を決定することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/144172号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2019/144171号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来技術から、本発明の課題は、電動モータの制御装置を較正するための改善された方法およびシステムと、電動モータを管理するための改善された方法およびシステムとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に記載の方法およびシステムによって解決される。有利な形態は、従属請求項で定義される。
【0008】
本発明の第1の態様は、電動モータの制御装置特にインバータ制御装置を較正するための方法であって、以下の作業ステップすなわち、
力の流れの一部である電動モータを運転するステップと、
力の流れが特にもっぱら圧電素子にかかるように力の流れに組み入れられている圧電素子を使って力測定を実行するステップと、
力測定から導き出された少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの分力の変化、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分、特にトルク成分の変化に基づいて、制御装置の制御特性を適合させるステップと、
を備える方法に関する。
【0009】
その際好適には電動モータは、電動モータからもしくは電動モータへ力の流れを伝達するシャフトを備えるか、またはシャフトと協働する。さらに好適には、本方法はコンピュータ化されている。
【0010】
本発明の第2の態様は、電動モータ特に三相モータを管理するための方法であって、以下の作業ステップすなわち、
力の流れの一部である電動モータを運転するステップと、
力の流れが特にもっぱら圧電素子にかかるように力の流れに設けられている圧電素子を使って力測定を実行するステップと、
力測定から導き出された少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの分力の変化、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分、特にトルク成分の変化に基づいて、電気機械の少なくとも1つの制御パラメータを調節するステップと、
を備える方法に関する。
【0011】
好適には電動モータは、電動モータからもしくは電動モータへ力の流れを伝達するシャフトを備えるか、またはシャフトと協働する。さらに好適には、本方法はコンピュータ化されている。
【0012】
本発明の第3の態様は、力の流れの一部である電動モータ特に三相モータの制御装置特にインバータ制御装置を較正するためのシステムに関する。好適には本システムは、
力測定を実行するための圧電素子であって、圧電素子は、力の流れが特にもっぱら圧電素子にかかるように力の流れに設けられている圧電素子と、
少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの分力の変化、および/または、少なくとも1つのトルク成分、特に少なくとも1つのトルク成分の変化を、力測定から評価するために設備されている評価手段と、
力測定から導き出された少なくとも1つの分力、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分に基づいて、制御装置の制御特性を適合させるために設備されている手段と、
を備える。
【0013】
好適には電動モータは、電動モータからもしくは電動モータへ力の流れを伝達するシャフトを備えるか、またはシャフトと協働する。
【0014】
本発明の第4の態様は、力の流れの一部である電動モータ特に三相モータを管理するためのシステムであって、
力測定を実行するために設備されている圧電素子であって、圧電素子は、力の流れが特にもっぱら圧電素子にかかるように力の流れに設けられている圧電素子と、
少なくとも1つの分力、特に少なくとも1つの分力の変化、および/または、少なくとも1つのトルク成分、特に少なくとも1つのトルク成分の変化を、力測定から導き出すために設備されている評価手段と、
力測定から導き出された少なくとも1つの分力、および/または、力測定から導き出された少なくとも1つのトルク成分に基づいて、電気機械の少なくとも1つの制御パラメータを調節するために設備されている制御手段と、
を備えるシステムに関する。
【0015】
好適には電動モータは、電動モータからもしくは電動モータへ力の流れを伝達するシャフトを備えるか、またはシャフトと協働する。
【0016】
本発明の第5の態様は、電動モータのための試験台に関し、試験台は、支持装置と、負荷をかけるための装置特に動力計と、を備え、電動モータは支持装置と試験台の負荷との間の力の流れに設置可能であり、さらに試験台は、電動モータの制御装置を較正するためのシステムを備える。
【0017】
本発明の主旨における力の流れは好適には、作用点特に導入の箇所から、力および/またはトルクが反力および/または反作用モーメントによって受容される1つ以上の箇所までの、機械システムにおける力および/またはトルクの経路である。好適には力の流れは、力特にシャフトの回転方向に対して横方向の力、および/または、トルク特に回転軸回りのトルクから構成される。
【0018】
本発明の主旨における出力の流れは、好適には導入の箇所から、出力が取り出される1つ以上の箇所までの、機械システムにおける出力の伝達経路である。
【0019】
本発明の主旨における圧電素子は好適には、圧電素子に接する2つの面を介して作用する力を測定するために設備されている測定素子である。好適には圧電素子は、圧電クリスタルと電荷除去部もしくは電気相互接続部とから成る。
【0020】
本発明の主旨における電動モータは、好適には電気工学上のエネルギー変換器であり、当該エネルギー交換器は、好適には運動エネルギー特に回転を電気エネルギーに変換する、または逆に電気エネルギーを運動エネルギーに変換する。
【0021】
本発明の主旨における較正は好適には、制御装置に制御データを印加することである。好適には較正は、電動モータの制御を調整および/または最適化する際に使用される。
【0022】
本発明の主旨における手段は、ハードウェア技術的および/またはソフトウェア技術的に形成されていてよく、特に、好適にはメモリおよび/またはバスシステムとデータ接続もしくは信号接続された、特にデジタルの処理ユニット特にマイクロプロセッサユニット(CPU)、および/または、1つ以上のプログラムもしくはプログラムモジュールを備えてよい。CPUは、メモリシステム内に格納されたプログラムとして実装されているコマンドを遂行し、データバスからの入力信号を検知し、および/または、出力信号をデータバスに出力するために形成されていてよい。メモリシステムは、1つ以上の特に様々な記憶媒体、特に光学、磁気、固体および/またはその他の不揮発性の媒体を備えてよい。プログラムは、ここで記述される方法を具現化するような、もしくは実施できるような性質のものであってよいので、CPUは、そのような方法のステップを実施でき、それによって特に電動モータを較正または制御できる。
【0023】
本発明の主旨における制御特性は好適には、制御装置が電動モータを制御または管理するやり方である。好適には制御特性は、制御装置のデータメモリ内に格納されていて、割り当て規則を実行に移すコンピュータプログラムによって、確定されている。この場合割り当て規則は、割り当て関数として、また表としても保存されていてよい。さらに好適には制御特性は、閉ループのコントローラに影響される。
【0024】
電動モータのためのほとんどのインバータ制御装置は、初めて取り付けられた後に電流と電圧とを測定することによって、インバータ制御装置の較正を自動的に実行する。この方法は簡単ではあるが、満足のいく結果をもたらさないことが度々ある。これに対して手動での較正は、特に、バッテリの充電が少ない状態のような特別な条件下で、出力を10から20%改善させる。
【0025】
普通の手動での較正では、特定の境界条件下で複数の運転ポイントにおいて、効率的もしくは効果的なトルクが測定され、制御特性が適合される。この場合の問題は、そのような手動での較正法を完了するためには、長くて数週間の長い時間がかかるということである。その上、変更されたインバータ制御調節の測定された唯一の効果は、効率的なトルクである。それに対して、特に効率損失に責任がある動的なトルクモードは確認できない。
【0026】
本発明は、制御特性の作成もしくは適合時に、または制御パラメータの調節時にも、圧電素子を使って実行される力測定を考慮に入れることによって、電動モータの較正とひいては管理とを改善するためのアプローチを追求する。
【0027】
圧電素子を使った力測定によって、分力またはトルク成分のダイナミクスを決定できる。特にトルクリップルおよび/もしくはいわゆるコギングトルクはこのやり方で決定でき、制御装置の制御特性において、または制御装置による電動モータの管理の際直接的に考慮に入れることができる。
【0028】
圧電素子が、電動モータと負荷をかけるための装置特に動力計もしくはその保持装置との間の力の流れに直接的に設けられていることによって、測定は特定の運転ポイントに限定されないままである。むしろ、電動モータの全運転の間、あらゆる運転ポイントで力測定を行うことができる。較正するための方法と管理するための方法は、試験台の使用に限定されないままである。むしろ力測定を実行する圧電素子は、電動モータが取り付けられている駆動トレインたとえば車両に、直接的に設けることもできる。これによって力測定を、電動モータの管理に連続的に用いることができる。
【0029】
特に、本発明に係る方法を使って、電動モータの制御装置の較正と最適化を、自動的に実行できる。この場合、精度の高い動的応答の測定と振動測定とを達成できる。これら2つの基準に関して最適化することによって、それ以上に、電動モータの制御の本質的な改善を達成できる。特にトルクリップルとたとえば廃熱によるエネルギー損失とを軽減でき、特に、ハードウェア適合なしに制御機器に適合させることによって達成できる最小限にまでエネルギー損失を軽減できる。
【0030】
本発明の第1の態様と第2の態様の方法に関して以下に記述される特徴および有利な形態の利点は、本発明の別の態様にも適当に当てはまり、かつ、その逆も当てはまる。
【0031】
本方法の有利な一形態において、電動モータは三相同期機または三相非同期機であり、制御特性は、少なくとも1つの制御パラメータのPIコントローラまたはPIDコントローラのP項および/もしくはI項によって確定されている。
【0032】
本方法の有利なさらなる一形態において、電動モータは三相同期機であり、少なくとも1つの制御パラメータは、磁極ホイール電流特に複素ベクトル図におけるその縦成分と横成分である。これは、特に磁極ホイール電流の横成分はトルク生成を担当しているので、特に有利である。電動モータによって生じるトルクリップルまたはコギングトルクは、このやり方で特に補整できる。
【0033】
有利なさらなる一形態において、電動モータは三相非同期機であり、少なくとも1つの制御パラメータは、固定子電圧および/または定常周波数であるか、または、少なくとも1つの制御パラメータは、固定子電流および/もしくは固定子周波数である。これによっても、トルクリップルおよび/またはコギングトルクのような、電動モータの構成によって呼び起こされる有害な影響を、特に良好に補整できる。
【0034】
有利なさらなる一形態において、制御特性を適合させるためのまたは少なくとも1つの制御パラメータを調節するための少なくとも1つの基準は、以下のグループすなわち、
トルクおよび/または力の変化の調和振動の強度、および/または、
所与の周波数スペクトルにわたるトルクおよび/または力の変化の振動の強度の積分
から選択されている。
【0035】
周波数分解された振動分析に関するそのような基準によって、個別の周波数領域または広域の周波数スペクトルの振動挙動について述べることができる。最適化の枠内において、個別の振動および/または統合された振動の強度が下がる。好適にはそのような分析は、電動モータの定置式運転において行われる。
【0036】
本方法の有利なさらなる一形態において、制御特性を適合させるためのまたは少なくとも1つの制御パラメータを調節するための少なくとも1つの基準は、以下のグループすなわち、
トルク要求の10%からトルク要求の90%までのトルクの立ち上がり時間、
トルク要求の時点からトルクの立ち上がりまでの遅延時間、および/または
トルク要求の100%の値の過振動の強度、
から選択されている。
【0037】
動的振動経過に関するそのような基準によって、トルク要求に対する駆動トレインの反応、特にその振動挙動について述べることができる。最適化の枠内において、過振動の強度が下がり、および/または遅延時間の長さおよび/またはトルクの立ち上がり時間が短くなる。
【0038】
本方法の有利なさらなる一形態において、分力とトルク成分とは、個々の圧電素子の測定信号に基づいた方程式系を使って決定される。好適には、個々の圧電素子の測定信号は、導き出されるべきそれぞれの分力および/またはトルク成分への寄与割合に分解される。さらに好適には特に、決定されるべきそれぞれの分力および/またはトルク成分に対する個々の圧電測定素子の寄与すべてが考慮される。それぞれ決定されるべき分力および/またはトルク成分に従って解かれる方程式系を使用することによって、複数の圧電素子の測定を考慮できる。その上、多成分センサもしくは圧電素子の測定すべてを、決定されるべき分力および/またはトルク成分で割合に応じて考慮できる。これによって特に、測定に関与していない圧電素子を介する力のサブ接続を減らすことができ、または回避することすらできる。
【0039】
本方法の有利なさらなる一形態において、電動モータは、電動モータからまたは電動モータへ力の流れを伝達するシャフトとともに運転され、圧電素子は、シャフトの第1の部分とシャフトの第2の部分との間に設けられていて、圧電素子を使って力特に剪断力が、第1の部分と第2の部分とで測定可能なようになっている。直接的にシャフト内でまたはシャフトに接して測定することによって、特に容易な測定構造体を実現できる。
【0040】
本方法の有利なさらなる一形態において、圧電素子は、電動モータと電動モータを支持するための支持装置との間で力、特に剪断力を測定する。この形態において、圧電素子は、電動モータと支持装置との間に設けられている。従ってこの形態における力測定は、空間に固定された基準系つまり駆動トレイン試験台もしくはそのベースプレートまたは車両に対して行われる。この場合圧電素子は、電動モータが支持装置にどのように支承されるかによって、横効果、縦効果もしくはまた剪断効果を有して使用されてよい。力センサをこのように設けることによって、シャフトの回転質量はほぼ変わらない。特に、シャフトにかかるトルクに対する反作用モーメントが測定される。
【0041】
本方法の有利なさらなる一形態において、電動モータは、電動モータからまたは電動モータへ力の流れを伝達するシャフトとともに運転され、圧電素子から成る測定システムは、シャフトの回転質量および/またはシャフトと電動モータ全体の回転する部分の回転質量を変えることはない。
【0042】
好適には本方法は、コンピュータ上で実施される。それゆえ本発明のさらなる態様は、コンピュータによって実施されると、コンピュータに本方法のステップを実施させる指令を含むコンピュータプログラムと、そのようなコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読取可能な媒体とに関する。
【0043】
さらなる特徴と利点は、図に関する以下の記述からもたらされる。少なくとも部分的に概略的に示されるのは以下である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】電動モータの制御装置を較正するためのシステムの一実施例である。
図2】電動モータの制御装置を較正するための方法の一実施例である。
図3】電動モータを管理するためのシステムの一実施例である。
図4】電動モータを管理するための方法の一実施例である。
図5】制御装置を較正するためのシステムまたは電動モータを管理するためのシステムの一実施例の圧電素子を有する第1の測定構造体である。
図6】制御装置を較正するためのシステムまたは電動モータを管理するためのシステムの一実施例の圧電素子を有する第2の測定構造体である。
図7】制御装置を較正するためのシステムまたは電動モータを管理するためのシステムの一実施例の圧電素子を有する第3の測定構造体である。
図8】制御装置を較正するための方法または電動モータを管理するための方法によって決定された、電動モータの振動の周波数スペクトルのグラフである。
図9】制御装置を較正するための方法または電動モータを管理するための方法によって決定された周波数スペクトルのさらなるグラフである。
図10】トルクの時間経過のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、電動モータ2のインバータ制御装置1を較正するためのシステム10の一実施例と、較正されるべきインバータ制御装置1と、制御されるべき電動モータ2と、の全体を示している。
【0046】
以下において本発明は、三相同期機または三相非同期機2のこのインバータ制御装置1に基づいて記述され、制御パラメータとして、磁極ホイール電流I、Iまたは固定子電圧U、固定子周波数fと固定子電流Iが使用される。しかしながら、記述されるシステムと方法は、別の制御装置1と電動モータ2に関しても使用できる。
【0047】
示されたインバータ制御装置1には、制御特性5が保存されている。この制御特性5を使って、入力値IN1、IN2に基づいて電動モータが、制御パラメータI、I、I、f、Uを使って制御装置1によって制御される。
【0048】
入力パラメータIN1、IN2は、たとえばトルク要求、回転数要求またはブレーキモーメントの要求である。
【0049】
インバータ制御装置を較正するためのシステム10は好適には、圧電素子11a、11b、11cと、評価手段12と、制御特性5を適合させるために設備されている手段13と、を備える。
【0050】
圧電素子11a、11b、11cは、電動モータ2を含む力の流れに設けられてもしくは取り付けられていて、電動モータ2に作用するかまたは電動モータ2によって及ぼされる力の変化またはトルクの変化を、圧電素子が測定できるようになっている。様々な圧電素子11a、11b、11cによるこの測定に基づいて、評価手段12は、少なくとも1つの分力および/またはトルク成分ΔM、ΔM、ΔF;ΔF、ΔF、ΔMの変化を算定できる。本願の記述と図とにおいて、本発明は純粋に例示的に、2つのトルク成分ΔM、ΔMと1つの分力ΔFの算出に関して説明される。さらなる例として代替的に、特に2つの分力ΔF、ΔFと1つのトルク成分ΔMの変化も算出されてよい。
【0051】
制御特性5を適合させるための手段13は、たとえばNVHに関する基準またはダイナミクスに関する基準のような様々な基準に基づいて、制御特性5を較正できる。この場合、これらの基準に関して最適化することは可能であり、または、制御特性をたとえば特定のインバータ制御装置1に関して調整することも可能である。
【0052】
図2は、制御装置を較正するための方法のブロック図100を示している。そのような方法は特に、図1で示された制御装置を較正するためのシステム10を使って実施可能である。このためにシステム10は好適には、ハードウェア技術的にまたはソフトウェア技術的に実装されている手段またはモジュールを備える。
【0053】
第1の作業ステップ101において、電動モータは、力の流れの一部として運転される。その際電動モータ2は、インバータ制御装置1を使って制御される。このためにインバータ制御装置1は、ドライバーの希望または車両(図示略)による要求を反映する入力パラメータIN1、IN2に基づいて、制御パラメータI、I;I、f、Uの電気的な電圧信号を生成する。圧電素子11a、11b、11cを使って、力測定が実行される102。この力測定から、個々の分力および/またはトルク成分ΔM、ΔM、ΔFもしくはその時間変化を導き出すことができる。この時間変化は、トルクリップルおよび/またはコギングトルクについての情報を包有する。
【0054】
このトルクリップルまたはコギングトルクを補整するために、インバータ制御装置に保存されている制御特性5を、さらなる作業ステップ103で適合させ、もしくは変更する103。
【0055】
図1のシステム10は好適には、電動式の駆動トレインのための試験台で使われる。この場合、評価手段12と制御特性を適合させるための手段13は、試験台の一部であってよい。データ信号は、規定の記憶速度好適には100kHzで記録され、高速フーリエ変換分析が施されて、ロータの回転周波数に応じた振動強度を同定できるようになる。
【0056】
圧電素子11a、11b、11cを動的な力センサもしくはトルクセンサとして使用することは、特に重要である。圧電素子は、そのような動的測定のために、十分な時間分解能を提供する。
【0057】
制御特性5もしくはその可変パラメータ、特にそこに保存されたPIコントローラのI項は好適には、基準を最適化するように変更される。この場合、最適化の目標がNVHに関する基準とダイナミクスに関する基準である場合には、これらは互いに矛盾するので、通常の場合では最良の妥協を見出さなくてはならない。
【0058】
好適には較正するための方法と場合によっては最適化では、いわゆるモデルベースの較正法もしくは最適化法が使われる。
【0059】
この場合、制御特性5の可変パラメータと基準の値との間の関連性を再現するモデルが作成される。このモデルはたとえば、試験台での試験で意図的に、最適の状態のためにもしくは最適の状態間での妥協のために特に有望な領域を目指すために、使われてよい。
【0060】
制御特性の最適化は、好適には以下のように経過する。まず、インバータ制御装置の可変パラメータ、特に制御パラメータI、I;U、I、fのPIコントローラのP項またはI項の可変パラメータのための試験計画が作成される。可変パラメータのこの調節に基づいて、図1で示された構造体全体で試験が実行される。試験中にそれぞれ達成された運転経過もしくは個々の運転ポイントが、基準を使って査定される。この査定に基づいて、制御特性が適合される。
【0061】
これらの基準は、全く原則的に、NVHに関する基準とダイナミクスに関する基準とに分類できる。
【0062】
NVHに関する基準では、特に様々な調和振動と超高速でフーリエ変換されたトルク信号特にその積分の振幅解析とが、特に適切である。
【0063】
ダイナミクスに関する基準ではたとえば、いわゆるT90/T10立ち上がり時間が重要である。これは、トルク要求の変化時に、要求されたトルクの10%から90%まで達するのにトルクが必要とする時間である。考えられ得るさらなる基準は、図10に関して下で記述されるように、遅延時間Tと過振動強度Iである。
【0064】
分力F(t)、F(t)とトルク成分M(t)と分力F(t)とトルク成分M(t)、M(t)は、個々の圧電素子11a、11b、11cの優先方向を的確に設けることと、個々の測定信号S1、S2、S3を合計することで、それ自体既知のやり方で算出できる。
【0065】
これらのパラメータを決定するための別の方法も、使用してよい。たとえば、個々の圧電素子11a、11b、11cの測定信号または測定信号から導き出された、つまり測定された力F、…、Fの分解特に直交分解。
【0066】
この場合たとえば、決定されるべきパラメータM、F、Fは方程式系の解であり、各測定信号には、以下のような方程式が当てはまる。
S1 = a11 ・ M + a12 ・ Fx + a13 ・ Fy
S2 = a21 ・ M + a22 ・ Fx + a23 ・ Fy
S3 = a31 ・ M+ a32 ・ Fx + a33 ・ Fy

SN = aN1 ・ M
【0067】
この場合S1、S2、…、Si、…、SNは、個々の圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの測定信号である。各計数aは、たとえば測定素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nのそれぞれのポジションや、基準系におけるそれぞれの優先方向の向き、それぞれの測定素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの感度や、固定手段を介する力のサブ接続による起こり得る信号損失のような、複数のファクタに依存する。
【0068】
トルクMのためのそのような方程式系と、第1の横分力Fと、第2の横分力Fと、を分解するためには、優先方向が1つの平面にあるまたは1つの平面に対して平行にあるように方向づけられている、少なくとも3つの圧電素子11a、11b、11cの測定信号が必要となる。その上、優先方向のうちの少なくとも2つは、平行にも逆平行にも方向づけられていてはならない。
【0069】
N=3すなわち3つの圧電素子11a、11b、11cを有する、記述されたこのような一般的な場合には、上で表わされた方程式系の解は一義的である。さらなる測定素子が測定システム1に追加されれば、決定されるべき3つのパラメータM、F、Fを有する方程式系は過剰決定されているが、しかしながら、測定精度をさらに改善することができる。
【0070】
N=4の場合では、異なる4つの方程式系F(S1, S2, S3)、F(S1, S2, S4)、F(S1, S3, S4)、F(S2, S3, S4)を立てることができる。それから、決定されるべき個々のパラメータM、F、Fのために決定される値を加算して平均化でき、すなわち、圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nが4つの場合には4で割ることができる。同様に、最小化タスクを使って解かれる過剰決定方程式系F(S1, S2, …, SN)を立てることができる。
【0071】
方程式系の一般的な解が見つかると、決定されるべきパラメータM、F、Fの算定は、マトリックス乗法に限定できる。これは、3つの行と、測定信号S1、S2、S3、…、SNが利用できるだけの列とを有する。マトリックス素子もしくは係数は、決定されるべきパラメータM、F、Fに対する個々のセンサのそれぞれの寄与を表現している。
【0072】
【数1】
【0073】
測定信号S1、S2、Si、…、SNを、決定されるべきそれぞれのパラメータM、F、Fに寄与する成分に分解するためには、圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの位置と優先方向の向きとを知っていることが必要である。
【0074】
幾何学的パラメータは、駆動トレイン試験台の構成図と、圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの優先方向の知識のどちらかから決定できる。
【0075】
しかしながら、圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの優先方向の向きは、較正測定を使って優先方向を正確に測定することによっても決定できる。好適には圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nはこのために、平らな2つのプレートの間に挟み込まれる。次のステップにおいて、既知の方向を有する外部の横方向の力が加えられる。導入された横方向の力の量と方向とに比例した個々の測定信号S1、S2、Si、…、SNの大きさから、圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの優先方向によって張設される平面における、圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの優先方向を決定できる。
【0076】
同様に、個々の圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの優先方向を知っていれば、規定のトルクMを加え、かつ、個々の測定信号S1、S2、Si、…、SNを測定することで、回転軸Dからの圧電素子11a、11b、11c、…、11i、…、11Nの距離を決定できる。
【0077】
図3は、力の流れの一部である電動モータ2を管理するためのシステム20の一実施例を示している。
【0078】
図1で示されたシステム10とは異なって、圧電素子21a、21b、21cを使った力測定から導き出された分力および/またはトルク成分ΔM、ΔM、ΔFが、特に制御装置である制御手段23において直接考慮される。従ってこれらは、好適には入力値として、図3で示される制御特性5に保存されており、特性マップと制御関数において適当に考慮されている。
【0079】
それに応じて図3に記載のシステム20は、図1に記載のシステム10と比べても、制御特性5が根本的に変更されるという主旨において、制御特性5を適合させるための手段自体を備えていない。
【0080】
システム20は特に、ハードウェア技術的にまたはソフトウェア技術的に実装されている手段またはモジュールを備え、当該手段またはモジュールは、図4で示される電動モータ2を管理するための方法200を以下のように実施するために設備されている。
【0081】
電動モータ2は、力の流れの一部として、特に車両で運転される201。この運転の間、再び力測定が圧電素子21a、21b、21cを使って実行される202。
【0082】
ここでも圧電素子21a、21b、21cは、力の流れが特にもっぱら圧電素子21a、21b、21cにかかるように、電動モータ2にもかかる力の流れに設けられている。
【0083】
制御手段もしくは制御装置23に保存されており、かつ、特に特性マップまたは制御関数として保存されている制御特性5に基づいて、電気機械2の制御パラメータI、I;U、I、fが調節され203、別の入力値IN1、IN2の他に、力測定に基づいて評価手段22によって算定される分力および/またはトルク成分ΔM、ΔM、ΔFもしくはその変化が、入力値として考慮される。
【0084】
図5から図7までは、電動モータ2にかかる力および/またはトルクを決定するための様々な測定構造体を示している。そのような測定構造体は、たとえば図1で示された実施例における、インバータ制御装置1を較正するためのシステム10でも、たとえば図3で示された実施例における、電動モータ2を管理するためのシステム20でも、使用できる。
【0085】
図5から図7まではそれぞれ、駆動トレインの一部分もしくは部分図を示しており、電動モータ2は、支持装置6特にベースプレートによって支持されている。電動モータ2は、たとえばシャフト3、3aを駆動するか、またはシャフト3、3aによって駆動される。
【0086】
その際シャフト3、3a、3bはそれぞれ、延長線が3つの図すべてで一点鎖線として示されている回転軸D回りに回転する。
【0087】
図5において、3つの圧電素子11a、11b、11cは、第1の部分シャフト3aのフランジと第2の部分シャフト3bのフランジとの間に設けられている。
【0088】
その際圧電素子11a、11b、11cは、好適には力接続的もしくは摩擦接続的に、フランジの間で端面に保持されるので、力はすべて、圧電素子11a、11b、11cの端面を介して作用する。この場合好適には圧電素子11a、11b、11cは、力の流れに関して力のメイン接続を形成する。さらに好適には、力のサブ接続はわずかしか存在しないか、または存在すらしない。
【0089】
第1の部分シャフト3aは、電動モータのロータ(図示されず)と回転不能に接続されているか、または接続可能である。第2の部分シャフト3bは、負荷4と回転不能に接続されているか、または接続可能である。負荷4は試験台に、たとえば1つ以上の動力計によって形成されてよい。
【0090】
力の流れは、電動モータ2から第1の部分シャフト3aと圧電素子11a、11b、11cと第2の部分シャフト3bとを介して負荷4へ延びるか、またはその逆に延びる。
【0091】
圧電素子11a、11b、11cでの力測定で決定される分力および/またはトルク成分は、少なくともほぼ、第1の部分シャフト3aを介して電動モータ2にもかかる分力および/またはトルク成分に相当する。
【0092】
図6に記載の測定構造体では、圧電素子11a、11b、11cは、電動モータ2と、電動モータ2のための支持装置もしくは軸受6として使われる支持装置6と、の間に設けられている。従って図6で示される測定構造体においては、力の流れは、たとえばベースプレートによって形成される支持装置6から圧電素子11a、11b、11cと電動モータ2とシャフト3とを介して、特に1つ以上の動力計によって形成される負荷4へ延びる。
【0093】
この測定構造体においても、力および/またはトルクは、好適にはもっぱら圧電素子11a、11b、11cの端面を介して圧電素子11a、11b、11cに導入され、圧電素子11a、11b、11cは好適には、力接続的特に摩擦接続的に、電動モータ2と支持装置6との間に固定されている。この測定構造体でも、この力のメイン接続は、圧電素子11a、11b、11cを介して行われ、好適には、別の要素を介する力のサブ接続はわずかに存在するだけであるか、または存在しない。
【0094】
しかしながら、図6に記載の測定構造体においては、電動モータ2にかかる分力および/またはトルク成分は直接的に測定されるのではなく、電動モータ2のカウンタ軸受である支持装置6が提供する反力もしくは反作用モーメントを介して間接的に測定される。これには、図5に記載の測定構造体に比べて、圧電素子11a、11b、11cもしくは圧電素子11a、11b、11cを構成部材とする測定装置が、シャフト3の回転質量もしくはその慣性モーメントに影響を及ぼさず、それによって力測定に影響がないという利点がある。その上、ステータとの直接接続の場合には、測定信号の品質は、圧電素子11a、11b、11cの測定構造体による弾性とシャフトの付加的な質量とによって損なわれることがなく、それゆえ特に直接的かつ不動である。
【0095】
図7に記載の測定構造体は、ほぼ図6の測定構造体に相当する。この測定構造体でも、反力の力測定が行われる。
【0096】
しかしながら、この場合支持装置6は、ベースプレートまたはフロアプレートではなく、負荷をかけるための装置特に動力計またはギア装置であり、当該装置はシャフト3によって運転され、そのハウジングまたは構造物7で電動モータが支持される。たとえば要素7は、ベルハウジングである。
【0097】
この場合力の流れは、装置6から、ベルハウジング7と圧電素子11a、11b、11cと電動モータ2とシャフト3とを介して、再び装置6へ延びる。示された場合では、装置6はギア装置によって形成され、当該ギア装置は、好適には1つ以上の動力計とも回転不能に接続されている。
【0098】
図8は、電動モータ2の運転時におけるトルク変化もしくはトルク振動の振幅の高速フーリエ変換分析を示す、周波数分析のグラフを示している。トルク変化は、上で記述された方法100、200とシステム10、20とを使って決定されたものである。
【0099】
その際ニュートンメートルでのトルク振動の振幅は、ヘルツでの電動モータ2のロータのそれぞれの回転数に依存して表示される。
【0100】
測定時に使用された電動モータ2は、48のスリットもしくはスロットを有する4極ペアの三相同期機であった。上で記述された測定システム10、20と方法100、200とを使って、トルクリップルのピークは、特に周波数が48または4の倍数の時に現れることが確認できた。
【0101】
図9も高速フーリエ変換分析のグラフであり、0から220Hzの周波数スペクトルに対する、電動モータ2のロータのトルク振動振幅の振幅が描写されている。この場合、2つの較正状態が描写されている。すなわち、ベース較正BCと、較正するための方法100を使って最適化された較正OCとである。
【0102】
この場合、制御特性5を最適化するための基準として特に、電動モータ2の振動系の4番目と8番目と24番目と48番目の調和振動の強度と、周波数に依存する強度の積分の値とが使われる。
【0103】
ベース較正BCと比較して、最適化された較正は、それぞれの振動モードの振幅があまり際立っていない。
【0104】
図10は、時間に依存したシャフトのトルクの時間経過を示している。トルク要求は時点t=0で行われ、シャフトの回転数は一定に保たれる。
【0105】
トルク要求からトルクの立ち上がりまでの遅延時間Tと、トルク要求の値の10%からトルク要求の値Mの90%まで達する立ち上がり時間Tと、トルク要求の新たに調節された値Mに関する過振動強度ΔIとが、認識できる。Mは、時間的なトルク経過の実際値を示している。
【0106】
記述された実施例は単なる例に過ぎず、保護範囲と使用法と構造とを全く制限するものではないことを指摘しておきたい。むしろ当業者には、先の記述によって、少なくとも1つの実施例を変換するための手引きが与えられ、請求項および同等の請求項の特徴の組み合わせからもたらされる保護範囲から逸脱することなく、特に記述された構成部材の機能と配置とを顧慮した種々の変更を行ってよい。特に、個々の実施例を互いに組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0107】
1 制御装置
3、3a、3b シャフト
4 負荷
5 制御特性
6 支持装置
10 較正するためのシステム
11a、11b、11c 圧電素子
12 評価手段
13 適合させるための手段
20 管理するためのシステム
21a、21b、21c 圧電素子
22 評価手段
23 制御手段
D 回転軸
IN1、IN2 入力パラメータ
磁極ホイール電流の縦成分
磁極ホイール電流の横成分
固定子電圧
固定子周波数
固定子電流
遅延時間
立ち上がり時間
ΔI 過振動強度
トルク要求
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】