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特表2023-501611CD70を標的化する遺伝子操作されたT細胞を使用するCD70+固形腫瘍療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】CD70を標的化する遺伝子操作されたT細胞を使用するCD70+固形腫瘍療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230111BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230111BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230111BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230111BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K35/17 Z
A61P35/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K14/705
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527794
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2020060720
(87)【国際公開番号】W WO2021095011
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/934,975
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/034,563
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アレクサンダー テレット
(72)【発明者】
【氏名】マリー-リー デケアン
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ビル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA02
4C085BB11
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の態様は、CD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作されたT細胞の集団を含む組成物、及びCD70+固形腫瘍の治療のためにそれらを使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD70+固形腫瘍を治療するための方法であって、
(i)CD70+固形腫瘍を有するヒト患者を第1のリンパ球枯渇治療にかけること;及び
(ii)工程(i)の後に前記ヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量を投与することを含み、遺伝子操作されたT細胞の前記集団が、CD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、及び破壊されたCD70遺伝子を発現するT細胞を含み、且つ前記CARをコードするヌクレオチド配列が、前記破壊されたTRAC遺伝子に挿入される、方法。
【請求項2】
工程(i)における前記第1のリンパ球枯渇治療が、前記ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)の前に、前記ヒト患者が、以下の特徴:
(a)臨床状態の著しい悪化、
(b)90%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、
(c)制御されない心不整脈、
(d)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、
(e)活動性感染症、及び
(f)グレード≧2の急性神経毒性
の1つ以上を示さない、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)が、工程(ii)の約2~7日前に実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞、任意選択により、約3×10~約9×10個のCAR細胞である前記第1の用量で前記ヒト患者の静脈内に投与することによって実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)の前及び工程(i)の後に、前記ヒト患者が、以下の特徴:
(a)活動性の制御されない感染症、
(b)工程(i)前の臨床状態と比較した前記臨床状態の悪化、及び
(c)グレード≧2の急性神経毒性
の1つ以上を示さない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(iii)工程(ii)の後の急性毒性の発症について前記ヒト患者をモニターすることをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
急性毒性が、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、腫瘍溶解症候群、GvHD、オンターゲット・オフ腫瘍毒性、及び制御されないT細胞増殖を含み、任意選択により、前記神経毒性が、免疫エフェクター細胞関連神経毒性(ICANS)であり、且つ任意選択により、前記オンターゲット・オフ腫瘍毒性が、活性化Tリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、骨芽細胞及び/又は腎尿細管様上皮に対する遺伝子操作されたT細胞の前記集団の活性を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(iv)前記ヒト患者を第2のリンパ球枯渇治療にかけること、及び(v)前記ヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の前記集団の第2の用量を投与することをさらに含み、任意選択により、前記第2の用量が、前記第1の用量の約8週~約2年後、任意選択により、約8~10週又は約14~18週間後に前記ヒト患者に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(vi)前記ヒト患者を第3のリンパ球枯渇治療にかけること、及び(vii)前記ヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の前記集団の第3の用量を投与することをさらに含み、任意選択により、前記第3の用量が、前記第2の用量の約8週~約2年後、任意選択により、約8~10週又は約14~18週間後である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト患者が、工程(ii)の後及び/又は工程(v)の後に、以下:
(a)用量規制毒性(DLT)、
(b)工程(ii)及び/又は工程(v)の後の72時間以内に≦グレード2に回復しないグレード≧3のCRS、
(c)グレード>1のGvHD、
(d)グレード≧3のICANS、
(e)活動性感染症、
(f)血行動態的に不安定、及び
(g)臓器不全
のうちの1つ以上を示さない、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(iv)における前記第2のリンパ球枯渇治療、工程(vi)における前記第3のリンパ球枯渇治療、又は両方が、前記ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(v)が、工程(iv)の2~7日後に実施され、及び/又は工程(vii)が、工程(vi)の2~7日後に実施される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(v)及び/又は工程(vii)が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞である前記第2の用量及び/又は前記第3の用量で前記ヒト患者の静脈内に投与することによって実施される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の用量及び/又は前記第3の用量が、約3×10~約9×10個のCAR+細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト患者が、工程(ii)及び該当する場合工程(v)の後に、部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)に達し、その後2年以内に進行した、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒト患者が、工程(ii)及び該当する場合工程(v)の後に、PR又は安定な疾患(SD)に達した、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト患者が、工程(v)及び該当する場合工程(vii)の前の再発(replase)時に、CD70固形腫瘍を有すると確認される、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト患者が、安定な疾患又は疾患進行を示す、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量、前記第2の用量、及び/又は前記第3の用量が、1×10個のCAR細胞、3×10個のCAR細胞、1×10個のCAR細胞、又は1×10個のCAR細胞であり、任意選択により、遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量、前記第2の用量、及び/又は前記第3の用量が、1.5×10個のCAR細胞、4.5×10個のCAR細胞、6×10個のCAR細胞、7.5×10個のCAR細胞、又は9×10個のCAR細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第2及び/又は前記第3の用量と同じである、請求項9~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第1の用量が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団の前記第2及び/又は前記第3の用量より少ない、請求項9~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト患者が、成人である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒト患者が、以前に抗癌療法を受けたことがある、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CD70+固形腫瘍が、再発性又は難治性である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト患者が、CD70+腫瘍細胞を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト患者が、前記ヒト患者から得られる生体試料中にCD70+腫瘍細胞を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法がさらに、工程(i)の前に、CD70+腫瘍細胞を有するヒト患者を同定することを含む、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒト患者が、抗サイトカイン療法にかけられる、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト患者が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団での治療後に自系又は同種異系造血幹細胞移植にかけられる、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト患者が、以下の特徴:
(a)カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)≧80%、及び
(b)十分な臓器機能、
(c)以前に抗CD70による治療又は養子性T細胞若しくはNK細胞療法がないこと、
(d)リンパ球枯渇療法に対して禁忌がないこと、
(e)悪性腫瘍の中枢神経系(CNS)徴候がないこと、
(f)以前の中枢神経系障害がないこと、
(g)胸水又は腹水又は心臓周囲の注入がないこと、
(h)不安定狭心症、不整脈、及び/又は心筋梗塞がないこと、
(i)糖尿病がないこと、
(j)制御されない感染症がないこと、
(k)免疫抑制療法を必要とする免疫不全障害又は自己免疫障害がないこと、
(l)肝臓ワクチン又は漢方薬がないこと、並びに
(m)固形臓器移植又は骨髄移植がないこと
のうちの1つ以上を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト患者が、遺伝子操作されたT細胞の前記集団のそれぞれの投与の後に毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされる、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト患者が、毒性の発症が観察される場合、毒性管理にかけられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CD70に結合する前記CARが、細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞質内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞外ドメインが、CD70に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記scFvが、配列番号49を含む重鎖可変ドメイン(V)及び配列番号50を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記scFvが、配列番号48を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記CARが、配列番号46を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記破壊されたTRAC遺伝子が、配列番号8又は9のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記破壊されたTRAC遺伝子が、配列番号8又は9の前記スペーサー配列によって標的化される領域又はその一部の欠失を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記破壊されたβ2M遺伝子が、配列番号12又は13のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記破壊されたCD70遺伝子が、配列番号4又は5のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記CD70+固形腫瘍が、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、及び/又はそれらの組み合わせである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/934,975号、及び2020年6月4日に出願された米国仮特許出願第63/034,563号に対する優先権の利益を主張する。先行出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、遺伝子改変T細胞を使用して、癌細胞をより特異的且つ効率的に標的化して死滅させる。T細胞が血液から回収された後、この細胞は、その表面上にCARを含むように操作される。CARは、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用してT細胞に導入され得る。これらの同種異系CAR T細胞が患者に注射されるとき、受容体は、T細胞が癌細胞を死滅させることを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、抗CD70 CAR+T細胞が様々な皮下固形腫瘍異種移植モデルにおいて腫瘍量を減少させたという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づく。また、本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞は、腫瘍細胞への再暴露後に腫瘍増殖を妨げた長期間のインビボ有効性を示すことが実証された。腫瘍量の著しい減少はまた、抗CD70 CAR T細胞の再投与後に観察された。さらに、CTX130細胞の分布、増殖、及び持続は、CAR-T細胞を受容するヒト対象において観察された。優れた治療有効性はまた、CTX130細胞治療を受容したRCC(代表的なCD70+固形腫瘍)を有するヒト患者においても観察された。
【0004】
したがって、本開示の態様は、CD70+固形腫瘍を治療するための方法であって、(i)CD70+固形腫瘍を有するヒト患者をリンパ球枯渇治療にかけること、及び(ii)工程(i)の後にヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団を投与すること(CAR T細胞療法とも称される)を含む方法を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書において、CD70+固形腫瘍を治療するための方法であって、(i)CD70+固形腫瘍を有するヒト患者を第1のリンパ球枯渇治療にかけること;及び(ii)工程(i)の後にヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量を投与することを含み、遺伝子操作されたT細胞の集団が、CD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含み、且つ破壊されたβ2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子、及び破壊されたTRAC遺伝子を含み、CARをコードするヌクレオチド配列が挿入される方法が提供される。いくつかの例において、遺伝子操作されたT細胞の集団は、本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞である。
【0006】
いくつかの実施形態では、工程(i)における第1のリンパ球枯渇治療は、ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、工程(i)前に、ヒト患者は、以下の特徴:(a)臨床状態の著しい悪化、(b)90%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、(c)制御されない心不整脈、(d)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、(e)活動性感染症、及び(f)グレード≧2の急性神経毒性の1つ以上を示さない。
【0008】
いくつかの実施形態では、工程(i)は、工程(ii)の約2~7日前に実施される。いくつかの実施形態では、工程(ii)は、遺伝子操作されたT細胞の集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞である第1の用量でヒト患者の静脈内に投与することによって実施される。いくつかの例において、第1の用量は、約3×10~約9×10個のCAR+細胞の範囲であり得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、工程(ii)の前及び工程(i)の後に、ヒト患者は、以下の特徴:(a)活動性の制御されない感染症、(b)工程(i)前の臨床状態と比較した臨床状態の悪化、及び(c)グレード≧2の急性神経毒性の1つ以上を示さない。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法はさらに、工程(ii)の後に急性毒性の発症に関してヒト患者をモニターすることを含む。いくつかの実施形態では、急性毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性(例えば、ICANS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、GvHD、オンターゲット・オフ腫瘍毒性、及び/又は制御されないT細胞増殖を含む。オンターゲット・オフ腫瘍毒性は、活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、骨芽細胞及び/又は腎尿細管様上皮に対する遺伝子操作されたT細胞の集団の活性を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法はさらに、(iv)ヒト患者を第2のリンパ球枯渇治療にかけること、及び(v)工程(ii)の数週後にヒト患者に遺伝子操作されたT細胞の集団の第2の用量を投与することを含む。場合により、ヒト患者は、工程(ii)の後に以下の:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全のうちの1つ以上を示さない。遺伝子操作されたT細胞の集団の第2の用量は、第1の用量の約8週~約2年後に対象に投与され得る。場合により、第2の用量は、第1の用量の約6~10週後に対象に投与され得る。他の場合、第2の用量は、第1の用量の約14~18週後に対象に投与され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、工程(iv)における第2のリンパ球枯渇治療は、ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間にわたって静脈内で同時投与することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、工程(v)は、工程(iv)の2~7日後に実施される。いくつかの実施形態では、工程(v)は、遺伝子操作されたT細胞の集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞である第2の用量でヒト患者の静脈内に投与することによって実施される。いくつかの例において、第1の用量は、約3×10~約9×10個のCAR+細胞の範囲であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、(vi)ヒト患者を第3のリンパ球枯渇治療にかけること、及び(vii)ヒト患者に工程(ii)の約8週~約2年(例えば、約14~18週)後に遺伝子操作されたT細胞の集団の第3の用量を投与することを含み得る。場合により、遺伝子操作されたT細胞の集団の第2の用量は、工程(ii)の約8週~約2年(例えば、約8~10週)後に投与される。或いは又は加えて、遺伝子操作されたT細胞の集団の第3の用量は、第2の用量の約8週~約2年後に対象に投与され得る。場合により、第3の用量は、第2の用量の約8~10週後に対象に投与され得る。他の場合、第3の用量は、第2の用量の約14~18週後に対象に投与され得る。
【0015】
いくつかの例では、ヒト患者は、工程(v)の後に以下の:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全のうちの1つ以上を示さない。
【0016】
いくつかの実施形態では、工程(vi)における第3のリンパ球枯渇治療は、ヒト患者に1日当たり30mg/mのフルダラビン及び500mg/mのシクロホスファミドを1~3日間静脈内で同時投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、工程(vii)は、工程(vi)の2~7日後に実施される。いくつかの実施形態では、工程(vii)は、遺伝子操作されたT細胞の集団を、約1×10個のCAR細胞~約1×10個のCAR細胞であり得る第3の用量でヒト患者の静脈内に投与することによって実施される。いくつかの例において、第2の用量は、約3×10~約9×10個のCAR+細胞の範囲であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、安定な疾患又は疾患進行を示す。
【0019】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約1×10個のCAR細胞、約3×10個のCAR細胞、約1×10個のCAR細胞、又は約1×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約1.5×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約3×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約4.5×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約6×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約7.5×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約9×10個のCAR細胞である。いくつかの例では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量、第2の用量、及び/又は第3の用量は、約1×10個のCAR細胞である。
【0020】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量は、遺伝子操作されたT細胞の集団の第2及び/又は第3の用量と同じである。いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞の集団の第1の用量は、遺伝子操作されたT細胞の集団の第2及び/又は第3の用量より少ない。
【0021】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、成人である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、以前に抗癌療法を受けている。いくつかの実施形態では、以前の抗癌療法は、チェックポイント阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、血管内皮因子(VEGF)阻害剤、又はその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、CD70+固形腫瘍は、再発性であるか又は難治性である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、CD70+腫瘍細胞を有する。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、ヒト患者から得られる生体試料中にCD70+腫瘍細胞を有する。したがって、本明細書で開示される方法のいずれかは、場合により、工程(i)の前に、CD70+腫瘍細胞を有するヒト患者を同定することをさらに含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、抗サイトカイン療法にかけられる。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、遺伝子操作されたT細胞の集団による治療の後に自系又は同種異系造血幹細胞移植にかけられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、以下の特徴:(a)カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)≧80%、(b)十分な臓器機能、(c)以前に幹細胞移植(SCT)がないこと、(d)以前に抗CD70薬剤又は養子性T細胞若しくはNK細胞療法がないこと、(e)リンパ球枯渇療法に対して既知の禁忌がないこと、(f)症候性であるか又は症候性であった現在又は過去の悪性貯留液を伴うT細胞又はB細胞リンパ腫がないこと、(g)血球貪食性リンパ組織球症(HLH)がないこと、(h)中枢神経系悪性腫瘍又は障害がないこと、(i)不安定狭心症、不整脈、及び/又は心筋梗塞がないこと、(j)糖尿病がないこと、(k)制御されない感染症がないこと、(l)免疫抑制性の療法を必要とする免疫不全障害又は自己免疫障害がないこと、並びに(m)固形臓器移植又は骨髄移植がないことのうちの1つ以上を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、遺伝子操作されたT細胞の集団のそれぞれの投与の後に毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされる。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、毒性の発症が観察される場合、毒性管理にかけられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、CD70に結合するCARは、細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞質内シグナル伝達ドメインを含み、細胞外ドメインは、CD70に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態では、scFvは、配列番号49を含む重鎖可変ドメイン(V)及び配列番号50を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、配列番号48を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号46を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号8又は9のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号8のスペーサー配列によって標的化される領域、又はその一部の欠失を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、破壊されたβ2M遺伝子は、配列番号12又は13のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、破壊されたCD70遺伝子は、配列番号4又は5のスペーサー配列を含むガイドRNAを含むCRISPR/Cas9遺伝子編集システムによって生成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、CD70+固形腫瘍は、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CAR(すなわち、3X KO、CD70 CAR)T細胞における効率的な多重遺伝子編集を示すグラフを含む。
図2】CD4+及びCD8+T細胞の正常な集団が、TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞集団の間で維持されることを示すグラフを含む。
図3】TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞における強い細胞増殖を示すグラフを含む。生存細胞の総数は、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)及び2X KO(TRAC-/β2M-)抗CD70 CAR T細胞において定量化された。3X KO細胞は、CD70 sgRNA T7又はT8のいずれかにより生成された。
図4】2X KO(TRAC/β2M)抗CD70 CAR T細胞と比較した3X KO(TRAC/β2M/CD70)抗CD70 CART細胞によるA498細胞の強い細胞の死滅を示すグラフを含む。
図5】連続的な再チャレンジの後の抗CD70 CAR T細胞によるA498細胞の死滅を示すグラフを含む。3X KO(TRAC/β2M/CD70)及びCTX130細胞(CTX130)抗CD70 CAR+T細胞の開発ロットが利用された。
図6A-6C】CD70+腎細胞癌細胞の存在下でのサイトカイン分泌に関するCTX130細胞の開発ロット(ロット01)の試験からの結果を示すグラフを含む。CTX130細胞は、CD70+(A498;図6A又はACHN;図6B)又はCD70-(MCF7;図6C)標的細胞とともに指定の比率で共培養された。未編集のT細胞が対照T細胞として使用された。IFN-γ(左)及びIL-2(右)レベルが決定された。生物学的な三つ組の平均±標準偏差が示される。
図7A-7C】複数のT細胞と標的細胞比でのCD70高(A498;図7A)、CD70低(ACHN;図7B)、及びCD70陰性(MCF7;図7C)細胞株に対する細胞死滅活性に関するCTX130細胞の開発ロット(ロット01)の試験からの結果を示すグラフを含む。各データ点は、三つ組からのデータ±標準偏差を表す。負の値は、ゼロとして示される。
図8A-8H】様々な型の癌細胞上でのCD70の発現及びそのようなものに対する抗CD70 CAR-T細胞の細胞傷害性を示すグラフを含む。図8A:示されるとおりの5種の異なる癌細胞株における相対的なCD70発現。図8B:示されるとおりの3種の異なる癌細胞株における相対的なCD70発現。図8Cは、9種の異なる癌細胞株における相対的なCD70発現を示すグラフである。図8Dは、様々なレベルのCD70発現を有する追加の固形腫瘍細胞株に対して三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞を使用して細胞死滅活性を示すグラフである(4:1、1:1、又は0.25:1 エフェクター:標的細胞比)。図8Eは、24時間又は96時間の共培養期間の後の固形腫瘍細胞株に対して三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞を使用して細胞死滅活性を示すグラフである。図8F~8Hは、様々なエフェクター:標的比でCD70欠損慢性骨髄性白血病(K562)細胞(図8F)、CD70発現多発性骨髄腫(MM.1S)細胞(図8G)、及びCD70発現T細胞リンパ腫(HuT78)細胞(図8H)に対して三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞(3KO(CD70)、CD70 CAR+)を使用して細胞死滅活性を示すグラフを含む。
図9A】様々な皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルにおいてCTX130細胞を試験した結果を示すグラフを含む。図9A:皮下A498-NOGモデル。腫瘍体積は、試験の期間に週に2回測定された。各点は、平均腫瘍体積±標準誤差を表す。
図9B】様々な皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルにおいてCTX130細胞を試験した結果を示すグラフを含む。図9B:皮下786-O-NSGモデル。腫瘍体積は、試験の期間に週に2回測定された。各点は、平均腫瘍体積±標準誤差を表す。
図9C】様々な皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルにおいてCTX130細胞を試験した結果を示すグラフを含む。図9C:皮下Caki-2-NSGモデル。腫瘍体積は、試験の期間に週に2回測定された。各点は、平均腫瘍体積±標準誤差を表す。
図9D】様々な皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルにおいてCTX130細胞を試験した結果を示すグラフを含む。図9D:皮下Caki-1-NSGモデル。腫瘍体積は、試験の期間に週に2回測定された。各点は、平均腫瘍体積±標準誤差を表す。
図10】腫瘍再チャレンジを伴う皮下A498異種移植モデルにおいてCTX130細胞の有効性を試験した結果を示すグラフを含む。腫瘍はおよそ51mmの平均サイズまで増殖させられ、その後担腫瘍マウスは、2つの群(N=5/群)に無作為化された。群1は、未治療のままであったが、群2は、7×10個のCAR+CTX130細胞を受容し、群3は、8×10個のCAR+TRAC-B2M-抗CD70 CAR T細胞を受容した。25日目に、腫瘍の再チャレンジが開始され、5×10個のA498細胞が治療されたマウスの左側腹部及び新たな対照群(群4)に注入された。腫瘍体積は、試験の期間に週に2回測定された。各点は、平均腫瘍体積±標準誤差を表す。
図11】CTX130細胞の再投与を伴う皮下A498異種移植モデルにおいてCTX130細胞の有効性を試験した結果を示すグラフを含む。平均腫瘍サイズがおよそ453mmの平均サイズに達したとき、マウスは、未治療のままにされたか又はマウス当たり8.6×10個のCAR+CTX130細胞を静脈内注射された(N=5)。群2のマウスは、それぞれ17日目及び36日目にマウス当たり8.6×10個のCAR+CTX130細胞の第2及び第3の用量で治療された。群3のマウスは36日目にマウス当たり8.6×10個のCAR+CTX130細胞の第2の用量で治療された。腫瘍体積は、試験の期間に週に2回測定された。各点は、平均腫瘍体積±標準誤差を表す。
図12A】3X KO(TRAC-/B2M-/CD70-)抗CD70 CAR T細胞に暴露されたヒト卵巣腫瘍異種移植モデル(例えば、SKOV-3腫瘍細胞)における腫瘍体積の減少を評価するために設計された実験からの結果を示すグラフを含む。
図12B】3X KO(TRAC-/B2M-/CD70-)抗CD70 CAR T細胞に暴露されたヒト非小細胞肺腫瘍異種移植モデル(例えば、NCI-H1975腫瘍細胞)における腫瘍体積の減少を評価するために設計された実験からの結果を示すグラフを含む。
図12C】3X KO(TRAC-/B2M-/CD70-)抗CD70 CAR T細胞に暴露されたヒト膵臓腫瘍異種移植モデル(例えば、Hs766T腫瘍細胞)における腫瘍体積の減少を評価するために設計された実験からの結果を示すグラフを含む。
図12D】3X KO(TRAC-/B2M-/CD70-)抗CD70 CAR T細胞に暴露されたヒト胃腫瘍異種移植モデル(例えば、SNU-1腫瘍細胞)における腫瘍体積の減少を評価するために設計された実験からの結果を示すグラフを含む。
図13】CD70+固形腫瘍を有する成人対象へのCTX130細胞投与を評価する例示的な臨床試験設計を示す模式図である。DLT:用量規制毒性;M:月;max:最大;min:最小。DLT評価期間は、CTX130注入後の最初の28日である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が以下の説明に記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明並びに添付の特許請求の範囲からも明白になるであろう。
【0032】
CD70は、II型膜タンパク質及び腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーメンバーCD27のためのリガンド(Goodwin,(1993)Cell,73,447-456)であり、健康な組織発現分布は、ヒト及びマウスの両方において活性化リンパ球並びに樹状細胞及び胸腺上皮細胞のサブセットに限定される(Hintzen,(1994)The Journal of Immunology,152,1762-1773;Grewal,(2008)Expert Opin Ther Targets,12,341-51;Coquet et al.(2013)J Exp Med,210,715-728;Tesselaar et al.,(2003)J Immunol,170,33-40)。CD27を発現したT細胞と樹状細胞の表面上で発現されるCD70のライゲーションは、T細胞活性化及びTNF/TNFR対の増殖特性に寄与する共刺激シグナルを生成する(Watts,(2005)Immunol,23,23-68)。加えて、CD70はそれ自体、活性化リンパ球上で上方制御されるシグナル伝達分子であり、制御されないT細胞増殖を制限するチェックポイントとして作用し得る(O’Neill et al.,(2017)J Immunol,199,3700-3710)。CD27は、構成的に発現されたT細胞表面受容体であり、リンパ球のCD27-CD70に媒介される刺激は、CD70の制限された空間的及び時間的発現パターンによって主に制御される。通常、CD70は、活性化リンパ球の表面に最大で数日間残存する(Hintzen,(1994)The Journal of Immunology,152,1762-1773;Lens,(1999)British Journal of Hematology,106,491-503;Nolte,(2009)Immunological Reviews,229,216-31)。
【0033】
その堅固に制御された正常組織発現とは対照的に、CD70は一般的に、多くの固形腫瘍において高いレベルで発現される(Flieswasser et al.,Cancers,11 1161,1-13,2019;Grewal,(2008)Expert Opin Ther Targets,12,341-51;Wajant,2016 Expert Opin Ther Targets,20,959-73)。正常組織におけるCD70の限定的な発現パターン及び様々な悪性腫瘍におけるその広範な発現は、それを抗体に基づく療法のための魅力的な標的にする。
【0034】
驚くべきことに、本明細書で開示されるとおりの抗CD70 CAR+T細胞は、様々な皮下CD70陽性固形腫瘍異種移植モデルにおいて腫瘍量を順調に減少させ、腫瘍細胞への再暴露後に腫瘍増殖を妨げた長期間のインビボ有効性を示した。具体的には、抗CD70 CAR+T細胞は、卵巣、肺、膵臓、及び胃の異種移植モデルにおいて腫瘍量を著しく減少させた。腫瘍量の著しい減少はまた、抗CD70 CAR T細胞の再投与後に観察された。
【0035】
したがって、本開示は、いくつかの態様では、CD70陽性固形腫瘍を治療するための抗CD70 CAR+T細胞(例えば、CTX130細胞)の治療的使用を提供する。抗CD70 CAR T細胞、そのようなものを生成する方法(例えば、CRISPR手法を介して)、並びに本明細書で開示される抗CD70 CAR+T細胞を作製するための構成要素及びプロセス(例えば、遺伝子編集のためのCRISPR手法及びそこで使用される構成要素)もまた、本開示の範囲内である。
【0036】
I.抗CD70同種異系CAR T細胞
本明細書では、CD70発現癌(例えば、CD70+固形腫瘍)を治療する際の使用のための抗CD70 CAR T細胞(例えば、CTX130細胞)が開示される。いくつかの実施形態では、抗CD70 CAR T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたB2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子、又はそれらの組み合わせを有する同種異系T細胞である。特定の例では、抗CD70 CAR T細胞は、抗CD70 CARを発現し、内在性TRAC、B2M、及びCD70遺伝子が破壊されている。当技術分野で知られる任意の好適な遺伝子編集方法、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はRNA誘導型CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)を使用するヌクレアーゼ依存性標的化編集が、本明細書で開示される抗CD70 CAR T細胞を作製するために使用され得る。
【0037】
抗CD70 CAR T細胞の例示的な遺伝子改変は、T細胞アルファ定常(TRAC)、β2M、CD70、又はそれらの組み合わせの標的化された破壊を含む。TRAC座位を破壊することで、T細胞受容体(TCR)の発現の減少がもたらされ、移植片対宿主病(GvHD)の可能性を低減させることが意図される一方、β2M座位を破壊することで、主要組織適合複合体タイプI(MHC I)タンパク質の発現の減少がもたらされ、宿主拒絶反応の可能性を低減させることによって持続性を向上させることが意図される。CD70の破壊は、CD70の発現の減少をもたらし、これはCD70 CARの挿入の前に起こり得る細胞と細胞の兄弟殺しを妨げる。抗CD70 CARを加えることにより、改変T細胞がCD70発現腫瘍細胞に誘導される。
【0038】
抗CD70 CARは、CD70に特異的な抗CD70単鎖可変フラグメント(scFv)に続いて、細胞内共シグナル伝達ドメイン(例えば、4-1BB共刺激ドメイン)及びCD3ζシグナル伝達ドメインに融合されるヒンジドメイン及び膜貫通ドメイン(例えば、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン)を含み得る。
【0039】
(i)キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)とは、望ましくない細胞、例えば癌細胞などの疾患細胞によって発現される抗原を認識し、結合するように操作されている人工の免疫細胞受容体を指す。CARポリペプチドを発現するT細胞は、CAR T細胞と呼ばれる。CARは、MHCに制限されない様式において、選択された標的に対するT細胞の特異性及び反応性を再誘導する能力を有する。MHCに制限されない抗原認識は、抗原プロセシングに非依存的な抗原を認識する能力をCAR-T細胞に与え、それにより腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする。さらに、CARは、T細胞に発現する場合、有利には、内在性のT細胞受容体(TCR)のアルファ鎖及びベータ鎖と二量体化しない。
【0040】
様々な世代のCARが存在し、その各々が異なる構成要素を含む。第一世代のCARは、ヒンジ及び膜貫通ドメインを介して抗体に由来するscFvをT細胞受容体のCD3ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。第二世代のCARは、共刺激シグナルを供給するための追加の共刺激ドメイン、例えばCD28、4-1BB(41BB)又はICOSを組み込んでいる。第三世代のCARは、TCRのCD3ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメイン(例えば、CD27、CD28、4-1BB、ICOS又はOX40の組み合わせ)を含有する。(Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017-4023;Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151-155)。様々な世代のCARコンストラクトは、いずれも本開示の範囲内である。
【0041】
一般に、CARは、標的抗原(例えば、抗体の単鎖フラグメント(scFv)又は他の抗体フラグメント)を認識する細胞外ドメインを含む融合ポリペプチドであり、細胞内ドメインは、T細胞受容体(TCR)複合体(例えば、CD3ζ)のシグナル伝達ドメインを含み、これは、ほとんどの場合に共刺激ドメインである。(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505)。CARコンストラクトはさらに、細胞外ドメインと細胞内ドメインとの間にヒンジ及び膜貫通ドメインを含む場合があり、表面に発現するためにN末端にシグナルペプチドを含む場合がある。シグナルペプチドの例としては、MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号52)及びMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号53)が挙げられる。他のシグナルペプチドが使用されてもよい。
【0042】
(a)抗原結合細胞外ドメイン
抗原結合細胞外ドメインとは、CARが細胞表面に発現すると、細胞外液にさらされるCARポリペプチドの領域のことである。場合により、細胞表面発現を促進するために、シグナルペプチドがN末端に位置し得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFvであり、抗体重鎖可変領域(V)と抗体軽鎖可変領域(V)とを(いずれかの方向に)含み得る)であり得る。場合により、Vフラグメント及びVフラグメントは、ペプチドリンカーを介して連結され得る。リンカーは、いくつかの実施形態では、可動性のために一続きのグリシン及びセリン並びに可溶性を付与するために一続きのグルタミン酸塩及びリシンを含んだ親水性残基を含む。scFvフラグメントは、親抗体の抗原結合特異性を保持しており、そこからscFvフラグメントが誘導される。いくつかの実施形態では、scFvは、ヒト化Vドメイン及び/又はVドメインを含み得る。他の実施形態では、scFvのVドメイン及び/又はVドメインは、完全ヒト型である。
【0043】
抗原結合細胞外ドメインは、目的の標的抗原、例えば、腫瘍抗原などの病的抗原に特異的であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、通常、全く発現されない場合があるか、又は低レベルでのみ発現される場合がある非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞中において高レベルで発現されるタンパク質などの免疫原性分子を指す「腫瘍関連抗原」である。いくつかの実施形態では、腫瘍を内部に持つ宿主の免疫系によって認識される腫瘍関連構造は、腫瘍関連抗原と称される。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、ほとんどの種類の腫瘍によって広範に発現される場合、普遍的な腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、分化抗原、変異性抗原、過剰発現細胞抗原又はウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞に固有のタンパク質などの免疫原性分子を指す「腫瘍特異抗原」又は「TSA」である。腫瘍特異抗原は、腫瘍細胞中、例えば特定の種類の腫瘍細胞中のみで発現される。
【0044】
いくつかの例では、本明細書で開示されるCARコンストラクトは、CD70に結合することができるscFv細胞外ドメインを含む。抗CD70 CARの例は、下の実施例で提供される。
【0045】
(b)膜貫通ドメイン
本明細書に開示されるCARポリペプチドは、膜にまたがる疎水性αヘリックスであり得る膜貫通ドメインを含有し得る。本明細書で使用する場合、「膜貫通ドメイン」とは、好ましくは、真核細胞膜である細胞膜内で熱力学的に安定な任意のタンパク質構造体を指す。膜貫通ドメインは、それ自体を含有するCARの安定性をもたらし得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARの膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインであり得る。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインであり得る。さらに他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8及びCD28膜貫通ドメインのキメラである。他の膜貫通ドメインが、本明細書に提供されるとおりに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、FVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGG AVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNR(配列番号54)又はIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLY(配列番号55)の配列を含有するCD8a膜貫通ドメインである。他の膜貫通ドメインが使用されてもよい。
【0047】
(c)ヒンジドメイン
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間に位置し得るか、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置し得る。ヒンジドメインは、ポリペプチド鎖において膜貫通ドメインを細胞外ドメイン及び/又は細胞質ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドであり得る。ヒンジドメインは、CAR若しくはそのドメインに可動性をもたらすか、又はCAR若しくはそのドメインの立体障害を防ぐように機能し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、最大で300個のアミノ酸(例えば、10~100個のアミノ酸又は5~20個のアミノ酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、CARの他の領域に1つ以上のヒンジドメインが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインであり得る。他のヒンジドメインが使用されてもよい。
【0049】
(d)細胞内シグナル伝達ドメイン
CARコンストラクトのいずれも、受容体の機能的末端である1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ及び任意選択的に1つ以上の共刺激ドメイン)を含む。抗原認識後、受容体がクラスター化し、シグナルが細胞に伝達される。
【0050】
CD3ζは、T細胞受容体複合体の細胞質シグナル伝達ドメインである。CD3ζは、T細胞が同種抗原と会合した後にT細胞に活性化シグナルを伝達する3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。多くの場合、CD3ζは、初代T細胞の活性化シグナルを提供するが、十分に適格な活性化シグナルではなく、共刺激シグナル伝達を必要とする。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARポリペプチドはさらに、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。例えば、CD3ζによって媒介される一次シグナル伝達とともにCD28及び/又は4-1BBの共刺激ドメインを使用して、十分な増殖/生存シグナルを伝達し得る。いくつかの例では、本明細書に開示されるCARは、CD28共刺激分子を含む。他の例では、本明細書に開示されるCARは、4-1BB共刺激分子を含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン及びCD28共刺激ドメインを含む。他の実施形態では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン及び4-1BB共刺激ドメインを含む。さらに他の実施形態では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD28共刺激ドメイン及び4-1BB共刺激ドメインを含む。
【0052】
本明細書に記載される方法は、CARを発現する遺伝子改変T細胞、例えば当技術分野において知られるか又は本明細書で開示される遺伝子改変T細胞を生成するために使用することができる2つ以上の好適なCARを包含することが理解されるはずである。実施例は、国際公開第2019/097305A2号パンフレット及び国際公開第2019/215500号パンフレットにおいて見出すことができ、以前の出願の各々の関連する開示は、本明細書で参照される目的及び主題に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
例えば、CARは、CD70(「CD70 CAR」又は「抗CD70 CAR」としても知られる)に結合する。CD70に結合する例示的なCARのアミノ酸配列は、配列番号46において提供される。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
(ii)TRAC、B2M、及び/又はCD70遺伝子のノックアウト
本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞はさらに、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたB2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子、又はそれらの組み合わせを有し得る。TRAC座位を破壊することで、T細胞受容体(TCR)の発現の減少がもたらされ、移植片対宿主病(GvHD)の可能性を低減させることが意図される一方、β2M座位を破壊することで、主要組織適合複合体タイプI(MHC I)タンパク質の発現の減少がもたらされ、宿主拒絶反応の可能性を低減させることによって持続性を向上させることが意図される。CD70遺伝子の破壊は、抗CD70 CAR-T細胞を生成する際の兄弟殺しの影響を最小化することになる。さらに、CD70遺伝子の破壊は、結果として生じる操作されたT細胞の活力及び活性を予想外に増大させた。抗CD70 CARを加えることにより、改変T細胞がCD70発現腫瘍細胞に誘導される。
【0062】
本明細書で使用する場合、「破壊された遺伝子」という用語は、コードされている遺伝子産物の活性を実質的に減少させるか又は完全に排除するように、野生型の対応物に対して1つ以上の変異(例えば、挿入、欠失又はヌクレオチド置換など)を含む遺伝子を意味する。非コード領域、例えば、プロモーター領域、転写若しくは翻訳を調節する調節領域;又はイントロン領域に1つ以上の変異が位置し得る。或いは、コード領域に(例えば、エクソンに)1つ以上の変異が位置し得る。場合により、破壊された遺伝子は、コード化タンパク質を発現しないか、又は大幅に減少したレベルのコード化タンパク質を発現する。他の場合において、破壊された遺伝子は、機能的ではないか又は実質的に低減された活性を有する変異形態のコードされたタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、この遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体による、例えばフローサイトメトリーによる)のタンパク質を(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と称され得る。例えば、β2M遺伝子編集を有する細胞は、β2Mタンパク質が、β2Mタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出できない場合、β2Mノックアウト細胞とみなされ得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、野生型の対応物に対して変異したフラグメントを含むものと説明され得る。変異したフラグメントは、欠失、ヌクレオチド置換、付加又はこれらの組み合わせを含み得る。他の実施形態では、破壊された遺伝子は、野生型の対応物に存在するフラグメントに欠失があるものと説明することができる。場合により、欠失させたフラグメントの5’末端が、本明細書で開示されるような設計されたガイドRNA(オンターゲット配列として知られる)によって標的化される遺伝子領域内に位置してもよく、欠失させたフラグメントの3’末端が標的領域の範囲を超えてもよい。或いは、欠失させたフラグメントの3’末端が標的領域内に位置してもよく、欠失させたフラグメントの5’末端が標的領域の範囲を超えてもよい。
【0064】
場合により、本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞の破壊されたTRAC遺伝子は、欠失、例えば、TRAC遺伝子座のエクソン1内のフラグメントの欠失を含み得る。いくつかの例では、破壊されたTRAC遺伝子は、TRACのガイドRNA、TA-1の標的部位である、配列番号17のヌクレオチド配列を含むフラグメントの欠失を含む。下記の配列表を参照されたい。いくつかの例では、配列番号17のフラグメントは、抗CD70 CARをコードする核酸によって置換され得る。そのような破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号44のヌクレオチド配列を含み得る。
【0065】
本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞の破壊されたB2Mは、CRISPR/Cas技術を使用して作製され得る。いくつかの例では、下記の配列表に示されるB2MのgRNAを使用することができる。破壊されたB2M遺伝子は、配列番号31~36のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得る。下記の表4を参照されたい。
【0066】
或いは又は加えて、本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞の破壊されたCD70遺伝子は、CRISPR/Cas技術を使用して作製され得る。いくつかの例では、下記の配列表で提供されるCD70 gRNAを使用することができる。破壊されたCD70遺伝子は、配列番号37~42のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得る。下記の表5を参照されたい。
【0067】
(iii)例示的な抗CD70 CAR T細胞
いくつかの例では、抗CD70 CAR T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、B2M遺伝子、及びCD70遺伝子を有するCD70指向性T細胞であるCTX130細胞である。CTX130細胞は、CRISPR/Cas9(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質9)遺伝子編集構成要素(sgRNA及びCas9ヌクレアーゼ)を使用するエクスビボでの遺伝子改変を介して生成され得る。
【0068】
また、本明細書で開示される抗CD70 CAR並びに破壊されたTRAC、B2M、及びCD70遺伝子を発現する遺伝子操作された細胞(例えば、CRSPR-Cas9に媒介されて遺伝子編集された)を含む抗CD70 CAR T細胞の集団(例えば、CTX130細胞の集団)も本開示の範囲内であり;且つ抗CD70 CARをコードするヌクレオチド配列は、TRAC遺伝子座に挿入される。
【0069】
遺伝子破壊は、遺伝子編集(例えば、1つ以上のヌクレオチドを挿入するか又は欠失させるCRISPR/Cas遺伝子編集を使用する)を介した遺伝子改変を包含することが理解されるはずである。本明細書で使用する場合、用語「破壊された遺伝子」は、コードされた遺伝子産物の活性を実質的に低減するか又は完全に消失させるために野生型対応物に対して1つ以上の変異(例えば、挿入、欠失、又はヌクレオチド置換など)を含有する遺伝子を指す。非コード領域、例えばプロモーター領域、転写若しくは翻訳を調節する調節領域又はイントロン領域に1つ以上の変異が位置し得る。或いは、コード領域に(例えば、エクソンに)1つ以上の変異が位置し得る。場合により、破壊された遺伝子は、コード化タンパク質を発現しないか、又は大幅に減少したレベルのコード化タンパク質を発現する。他の場合において、破壊された遺伝子は、機能的ではないか又は実質的に低減された活性を有する変異形態のコードされたタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体によって、例えば、フローサイトメトリーによって)のタンパク質を、(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と称され得る。例えば、β2M遺伝子編集を有する細胞は、β2Mタンパク質が、β2Mタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出できない場合、β2Mノックアウト細胞とみなされ得る。
【0070】
本明細書で提供される例は、編集されたT細胞を作製すること、及びCD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように編集T細胞を操作し、それにより抗CD70 CARを発現し、内在性TRAC、β2M、及びCD70遺伝子が破壊された抗CD70 CAR T細胞を生成することについて記載する。
【0071】
特定の場合において、抗CD70 CAR+T細胞は、標的化された遺伝子を破壊するCRISPR技術、及びCARコンストラクトを送達するアデノ随伴ウイルス(AAV)形質導入を使用して生成されるCTX130細胞である。CRISPR-Cas9に媒介される遺伝子編集は、3つのガイドRNA(sgRNA)を含む:CD70遺伝子座を標的化するCD70-7 sgRNA(配列番号2)、TRAC遺伝子座を標的化するTA-1 sgRNA(配列番号6)、及びβ2M遺伝子座を標的化するB2M-1 sgRNA(配列番号10)。CTX130細胞の抗CD70 CARは、CD70に特異的な抗CD70単鎖抗体フラグメント(scFv)に続く4-1BBの細胞内共シグナル伝達ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインに融合されるCD8ヒンジ及び膜貫通ドメインで構成される。そのため、CTX130は、CRISPR/Cas9遺伝子編集構成要素(sgRNA及びCas9ヌクレアーゼ)を使用してエクスビボで遺伝子改変される同種異系のT細胞で構成されるCD70指向性T細胞免疫療法である。
【0072】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない可能性がある。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。
【0073】
或いは又は加えて、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない可能性がある。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのTRAC表面タンパク質を発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのTRAC表面タンパク質を発現しない。
【0074】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない可能性がある。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、90%~100%、又は95%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。
【0075】
いくつかの実施形態では、かなりの割合のCTX130細胞の集団は、2つ以上の遺伝子編集を含んでもよく、これにより2つ以上の遺伝子及び/又はタンパク質を発現しない一定の割合の細胞がもたらされる。
【0076】
例えば、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルの2つの表面タンパク質を発現しない可能性があり、例えば、検出可能なレベルのβ2M及びTRACタンパク質、β2M及びCD70タンパク質、又はTRAC及びCD70タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルの2つ表面タンパク質を発現しない。別の例では、CTX130細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルの3つの標的表面タンパク質β2M、TRAC、及びCD70タンパク質の全てを発現しない可能性がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%、又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M、TRAC、及びCD70表面タンパク質を発現しない。
【0077】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の集団は、本明細書に記載される編集であり得る2つ以上の遺伝子編集(例えば、2つ以上の遺伝子内における)を含み得る。例えば、CTX130細胞の集団は、ガイドRNA TA-1(表2、配列番号6~7も参照のこと)を使用するCRISPR/Cas技術を介して破壊されたTRAC遺伝子を含み得る。或いは又は加えて、CTX130細胞の集団は、B2M-1のガイドRNA(表2、配列番号10~11も参照のこと)を使用するCRISPR/Cas9技術を介して破壊されたβ2M遺伝子を含み得る。そのようなCTX130細胞は、β2M遺伝子内にインデルを含む場合があり、これらは表4に列挙されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む。例えば、CTX130細胞の集団は、ガイドRNA CD70-7(表2、配列番号2~3も参照のこと)を使用するCRISPR/Cas技術を介して破壊されたCD70遺伝子を含み得る。さらに、CTX130細胞の集団は、CD70遺伝子内にインデルを含む場合があり、これらは表5に列挙される1つ以上のヌクレオチド配列を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子内に欠失を含み得る。例えば、CTX130細胞は、TRAC遺伝子、又はその一部においてフラグメントAGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号17)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19個の連続した塩基対を含む配列番号17のフラグメントの欠失を含み得る。いくつかの実施形態では、CTX130細胞は、TRAC遺伝子内に配列番号17のフラグメントを含む欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号17の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号17を含む欠失を含む。
【0079】
さらに、CTX130細胞の集団は、本明細書で開示されるもの(例えば、配列番号46)などの抗CD70 CARを発現する細胞を含み得る。抗CD70 CARのコード配列は、例えば、ガイドRNA TA-1(表2、配列番号6~7も参照のこと)によって標的化される領域でTRAC遺伝子座に挿入され得る。そのような場合において、例示的な抗CD70 CARのアミノ酸配列は、配列番号46のアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の少なくとも30% 少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%は、抗CD70 CARを発現するCAR+細胞である。本明細書で参照される主題及び目的に対してその各々の関連する開示が参照により組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレット及び国際公開第2019/215500号パンフレットも参照されたい。
【0081】
特定の例において、本明細書で開示される抗CD70 CAR-T細胞(例えば、CTX130細胞)は、≧30%のCAR+T細胞、≦0.4%のTCR+T細胞、≦30%のB2M+T細胞、及び≦2%のCD70+T細胞を有するT細胞の集団である。
【0082】
(iv)医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作された抗CD70 CAR T細胞の集団のいずれか、例えば、CTX130細胞を含む医薬組成物、及び薬学的に許容される担体を提供する。そのような医薬組成物は、ヒト患者の癌治療に使用することができ、これも本明細書で開示される。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、適切な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に相当する、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を伴わない、対象の組織、臓器、及び/又は体液と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを指す。組成物としては、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩又は塩基付加塩を挙げることができる。例えば、Berge et al.,(1977)J Pharm Sci 66:1-19を参照されたい。
【0084】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はさらに、薬学的に許容される塩を含む。薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、酸付加塩が挙げられる(無機酸(例えば、塩酸又はリン酸)、又は酢酸、酒石酸、マンデル酸などといった有機酸を含むポリペプチドの遊離アミノ基から形成される)。いくつかの実施形態では、遊離カルボキシル基で形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄)又は有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される)。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、凍結保存溶液(例えば、CryoStor(登録商標)C55)中に懸濁させた、遺伝子操作された抗CD70 CAR-T細胞(例えば、CTX130細胞)の集団を含む。本開示に使用される凍結保存溶液は、アデノシン、ブドウ糖、デキストラン40、ラクトビオン酸、ショ糖、マンニトール、N-)2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)などの緩衝剤、1つ以上の塩(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウムなど)、1つ以上の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)又はこれらの組み合わせも含み得る。凍結保存溶液の構成成分は、滅菌水(注射品質)に溶解され得る。凍結保存溶液は、いずれも血清を実質的に含まない(常法では検出できない)ものであり得る。
【0086】
場合により、凍結保存溶液(例えば、血清を実質的に含まない)中に懸濁させた、CTX130細胞などの遺伝子操作された抗CD70 CAR-T細胞の集団を含む医薬組成物は、保存バイアルに入れられ得る。
【0087】
本明細書で開示されるとおりの凍結保存溶液中に任意選択により懸濁され得る、本明細書でさらに開示されとおりの遺伝子操作された抗CD70 CAR T細胞(例えば、CTX130細胞)の集団を含む、本明細書で開示される医薬組成物のいずれも、T細胞の生存及び生理活性に実質的に影響を及ぼさない環境において、例えば、細胞及び組織を保存するのに一般的に適用される条件下において、将来使用するために保存され得る。いくつかの例では、医薬組成物は、≦-135℃の液体窒素の気相中で保存され得る。細胞をそのような条件で一定期間保存した後、外観、細胞数、生存率、%CART細胞、%TCRT細胞、%B2MT細胞、及び%CD70T細胞に関する著しい変化は、観察されなかった。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、CTX130細胞などの本明細書で開示される抗CD70 CAR T細胞を含む、注入のための懸濁液であり得る。いくつかの例では、懸濁液は、≧30%のCAR+T細胞、≦0.4%のTCR+T細胞、≦30%のB2M+T細胞、及び≦2%のCD70+T細胞とともに約25~85×10細胞/ml(例えば、50×10細胞/ml)を含み得る。いくつかの例では、懸濁液は、約25×10個のCAR+細胞/mlを含み得る。特定の例では、医薬組成物は、それぞれCTX130細胞(例えば、生存細胞)などの約1.5×10個のCAR+T細胞を含むバイアル中に置かれ得る。他の例では、医薬組成物は、それぞれCTX130細胞(例えば、生存細胞)などの約3×10個のCAR+T細胞を含むバイアル中に置かれ得る。
【0089】
II.抗CD70 CAR T細胞の調製
当技術分野で知られる任意の好適な遺伝子編集方法、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はRNA誘導型CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)が、本明細書で開示される遺伝子操作された免疫細胞(例えば、CTX130細胞などのT細胞)を作製するために使用され得る。特定の例では、CTX130細胞などの遺伝子操作された免疫細胞は、アデノ随伴ウイルスベクター(AVV)をドナー鋳型として使用する相同組換えと組み合わせたCRISPR技術によって生成される。
【0090】
(i)CRISPR-Cas9に媒介される遺伝子編集システム
CRISPR-Cas9システムは、遺伝子編集のために使用されるRNA誘導型DNA標的化プラットフォームとして転用されている、原核生物に天然に存在する防御機構である。CRISPR-Cas9システムは、DNAヌクレアーゼであるCas9と、2つの非コードRNAであるcrisprRNA(crRNA)及びトランス活性化型RNA(tracrRNA)とに依拠するものであり、DNAを切断することを目的としている。CRISPRは、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピートの略称であり、例えば原核生物を感染又は攻撃したウイルスによって細胞に以前暴露された外来DNAと類似性を有するDNAのフラグメント(スペーサーDNA)を含有する細菌及び古細菌のゲノムに見られるDNA配列のファミリーである。例えば、同様のウイルスがその後の攻撃時に再導入すると、類似した外来DNAを検出及び破壊するために、これらのDNAのフラグメントが原核生物によって使用される。CRISPR遺伝子座の転写によってスペーサー配列を含むRNA分子の形成がもたらされるが、このRNA分子は、外来の外因性DNAを認識して切断することができるCas(CRISPR関連)タンパク質と結合し、標的となる。CRISPR/Casシステムの多数の種類及びクラスが記載されている(例えば、Koonin et al.,(2017)Curr Opin Microbiol 37:67-78を参照されたい)。
【0091】
crRNAは、典型的には、標的DNA内の20個のヌクレオチド(nt)の配列とのワトソン-クリック塩基対形成を介して、CRISPR-Cas9複合体の配列認識及び特異性を促進する。crRNA内の5’ 20ntの配列を変更することにより、CRISPR-Cas9複合体を特定の遺伝子座に標的化させることが可能になる。CRISPR-Cas9複合体は、標的配列がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる特定の短いDNAモチーフ(配列NGGを有する)の後にある場合、crRNAの最初の20ntと一致する配列を含むDNA配列のみに結合する。
【0092】
TracrRNAは、crRNAの3’末端とハイブリダイズしてRNA二重鎖構造を形成し、このRNA二重鎖構造にCas9エンドヌクレアーゼが結合して、触媒活性のあるCRISPR-Cas9複合体が形成され、次いでこのCRISPR-Cas9複合体によって標的DNAを切断することができる。
【0093】
CRISPR-Cas9複合体が標的部位でDNAに結合すると、Cas9酵素内の2つの独立したヌクレアーゼドメインがそれぞれPAM部位の上流でDNA鎖の一方を切断し、DNAの両鎖が塩基対で終端する(平滑末端)二本鎖切断(DSB)を残す。
【0094】
CRISPR-Cas9複合体が特定の標的部位でDNAに結合し、部位特異的なDSBが形成された後、次の重要な工程は、DSBの修復である。細胞は、DSBを修復するために、2つの主要なDNA修復経路、非相同末端連結(NHEJ)及び相同組み換え修復(HDR)を使用する。
【0095】
NHEJは、非分裂細胞を含む大部分の細胞型において高度に活性であるように見える頑健な修復機構である。NHEJは、誤りがちであり、多くの場合、DSBの部位において1~数百のヌクレオチド間で除去又は付加をもたらす可能性があるが、そのような修飾は、典型的には、<20ntである。得られた挿入及び欠失(インデル)は、遺伝子のコード領域又は非コード領域を破壊する可能性がある。或いは、HDRは、内因的又は外因的に提供される長い一続きの相同性ドナーDNAを使用して、高い忠実度でDSBを修復する。HDRは、分裂細胞においてのみ活性であり、大部分の細胞型において相対的に低い頻度で生じる。本開示の多くの実施形態では、NHEJが修復オペラントとして利用される。
【0096】
(a)Cas9
いくつかの実施形態では、Cas9(CRISPR関連タンパク質9)エンドヌクレアーゼは、本明細書に開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞を作製するためのCRISPR法において使用される。Cas9酵素は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するものであり得るが、他のCas9相同体も使用することができる。本明細書で提供されるとおり、野生型Cas9が使用され得るか、又はCas9の改変されたバージョン(例えば、Cas9の進化させたバージョン又はCas9オルソログ若しくは変異体)が使用され得ることが理解されるはずである。いくつかの実施形態では、Cas9は、C末端及びN末端にSV40 large T抗原の核局在配列(NLS)を含むように改変されているストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9ヌクレアーゼタンパク質を含む。得られたCas9ヌクレアーゼ(sNLS-spCas9-sNLS)は、組換え大腸菌(E.coli)発酵によって生成され、クロマトグラフィーによって精製された162kDaのタンパク質である。spCas9のアミノ酸配列は、UniProt受入番号Q99ZW2として見出すことができ、本明細書では配列番号1として示される。
Cas9ヌクレアーゼのアミノ酸配列(配列番号1):
【0097】
【化1】
【0098】
(b)ガイドRNA(gRNA)
本明細書で記載されるとおりのCRISPR-Cas9に媒介される遺伝子編集は、ガイドRNA、すなわちgRNAの使用を含む。本明細書で使用する場合、「gRNA」は、特定の標的配列で遺伝子を編集するために、Cas9をCD70遺伝子又はTRAC遺伝子又はβ2M遺伝子内の特定の標的配列に誘導することができるゲノム標的化核酸を指す。ガイドRNAは、編集のための標的遺伝子内の標的核酸配列とCRISPR反復配列とにハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含む。
【0099】
CD70遺伝子を標的化する例示的なgRNAは、配列番号2において提供される。本明細書で参照される主題及び目的に対してその関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/215500号パンフレットも参照されたい。他のgRNA配列は、19番染色体上に位置するCD70遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:染色体19:6,583,183-6,604,103;Ensembl;ENSG00000125726)。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNA及びCas9は、CD70ゲノム領域に切断を生じさせてCD70遺伝子にインデルをもたらし、mRNA又はタンパク質の発現を破壊する。
【0100】
TRAC遺伝子を標的化する例示的なgRNAは、配列番号6において提供される。本明細書で参照される主題及び目的に対してその関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレットも参照されたい。他のgRNA配列は、14番染色体上に位置するTRAC遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:14番染色体:22,547,506~22,552,154;アンサンブル;ENSG00000277734)。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNA及びCas9は、TRACゲノム領域に切断を生じさせてTRAC遺伝子にインデルをもたらし、mRNA又はタンパク質の発現を阻害する。
【0101】
β2M遺伝子を標的化する例示的なgRNAは、配列番号10において提供される。本明細書で参照される目的及び主題に対してその関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレットも参照されたい。他のgRNA配列は、15番染色体上に位置するβ2M遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:15番染色体:44,711,477~44,718,877;Ensembl:ENSG00000166710)。いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、mRNA又はタンパク質の発現を破壊するβ2M遺伝子におけるインデルをもたらすβ2Mゲノム領域における切断をもたらす。
【0102】
【表8】
【0103】
【表9】
【0104】
II型システムにおいて、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAを含む。II型のgRNAでは、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列が互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する。V型のgRNAでは、crRNAが二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合し、その結果、ガイドRNAと部位特異的ポリペプチドとが複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、この部位特異的ポリペプチドとの会合による複合体に標的特異性をもたらす。そのため、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を誘導する。
【0105】
当業者に理解されているように、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計される。Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照されたい。
【0106】
いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA)は、二重分子ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA)は、単一分子ガイドRNAである。
【0107】
二重分子ガイドRNAは、2つの鎖のRNA分子を含む。第1の鎖は、5’から3’の方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列及び最小CRISPR反復配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含む。
【0108】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(「sgRNA」と呼ばれる)は、5’から3’方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含む。任意選択のtracrRNA延長は、ガイドRNAに追加の機能性(例えば、安定性)を付与する要素を含み得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復と最小tracrRNA配列とを連結して、ヘアピン構造を形成する。任意選択のtracrRNA延長は、1つ以上のヘアピンを含む。V型システムにおける単一分子ガイドRNAは、5’から3’方向において、最小CRISPR反復配列及びスペーサー配列を含む。
【0109】
「標的配列」とは、PAM配列に隣接している標的遺伝子のことであり、Cas9によって改変される配列のことである。「標的配列」は、PAM鎖及び相補的な非PAM鎖を含有する二本鎖分子である「標的核酸」内のいわゆるPAM鎖上にある。当業者は、gRNAスペーサー配列が、目的の標的核酸の非PAM鎖に位置する相補的配列にハイブリダイズすることを認識している。そのため、gRNAスペーサー配列は、標的配列のRNA均等物である。
【0110】
例えば、CD70標的配列が5’-GCTTTGGTCCCATTGGTCGC-3’(配列番号15)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-GCUUUGGUCCCAUUGGUCGC-3’(配列番号5)である。別の例では、TRAC標的配列が5’-AGAGCAACAGTGCTGTGGCC-3’(配列番号17)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-AGAGCAACAGUGCUGUGGCC-3’(配列番号9)である。さらに別の例では、β2M標的配列が5’-GCTACTCTCTCTTTCTGGCC-3’(配列番号19)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-GCUACUCUCUCUUUCUGGCC-3’(配列番号13)である。gRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的な様式で目的の標的核酸と相互作用する。そのため、スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の標的配列に応じて変化する。
【0111】
本明細書のCRISPR/Casシステムでは、スペーサー配列は、このシステムで使用されるCas9酵素によって認識可能なPAMの5’に位置する標的核酸の領域にハイブリダイズするように設計されている。スペーサーは、標的配列と完全に一致し得るか、又はミスマッチを有し得る。各Cas9酵素は、標的DNAにおいて認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)は、標的核酸において、配列5’-NRG-3’(ここで、Rは、A又はGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列により標的化される標的核酸配列の3’の直近にある)を含むPAMを認識する。
【0112】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、20個の長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個未満の長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個超の長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれを超える長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれを超える長さのヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’の直近に20個の塩基を有する。例えば、
【0113】
【化2】
【0114】
を含む配列では、標的核酸は、Nに対応する配列であってもよく、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであってもよく、下線が引かれたNRG配列は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)のPAMである。
【0115】
gRNA中のスペーサー配列は、目的の標的遺伝子の標的配列(例えば、ゲノム標的配列などのDNA標的配列)を定義する配列(例えば、20個のヌクレオチド配列)である。CD70遺伝子を標的化するgRNAの例示的なスペーサー配列は、配列番号4において提供される。TRAC遺伝子を標的化するgRNAの例示的なスペーサー配列は、配列番号8において提供される。β2M遺伝子を標的化するgRNAの例示的なスペーサー配列は、配列番号12において提供される。
【0116】
本明細書に開示されるガイドRNAは、crRNA内のスペーサー配列によって目的の任意の配列を標的化し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAのスペーサー配列と標的遺伝子内の標的配列との間の相補性の程度は、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%であり得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAのスペーサー配列及び標的遺伝子内の標的配列は、100%相補的である。他の実施形態では、ガイドRNAのスペーサー配列と標的遺伝子内の標的配列は、最大で10個のミスマッチ、例えば最大で9個、最大で8個、最大で7個、最大で6個、最大で5個、最大で4個、最大で3個、最大で2個、又は最大で1個のミスマッチを含有し得る。
【0117】
本明細書で提供されるとおりに使用され得るgRNAの非限定的な例は、本明細書で参照される目的及び主題に対して以前の出願の各々の関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレット、及び国際公開第2019/215500号パンフレットにおいて提供される。本明細書で提供されるgRNA配列のいずれかに関して、修飾を明確に示していないものは、未修飾の配列と任意の好適な修飾を有する配列の両方を包含することを意味する。
【0118】
本明細書に開示されるgRNAのいずれかにおけるスペーサー配列の長さは、CRISPR/Cas9システム及びさらに本明細書に開示される標的遺伝子のいずれかを編集するために使用される構成要素に依存し得る。例えば、異なる細菌種に由来する異なるCas9タンパク質は、様々な最適なスペーサー配列長を有する。したがって、スペーサー配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、又は50個超の長さのヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、18~24個の長さのヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、19~21個の長さのヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、20個の長さのヌクレオチドを含み得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、gRNAは、sgRNAであってもよく、sgRNA配列の5’末端に20個のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個未満のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20超のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に17~30個のヌクレオチドを有する可変長のスペーサー配列を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まない。他の実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1つ以上のウラシルを含み得る。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1~8個のウラシル残基、例えばsgRNA配列の3’末端に1、2、3、4、5、6、7又は8個のウラシル残基を含むことができる。
【0121】
sgRNAのいずれかを含む、本明細書に開示されるgRNAのいずれも未修飾であり得る。或いは、1つ以上の修飾されたヌクレオチド及び/又は修飾された主鎖を含み得る。例えば、sgRNAなどの改変gRNAは、5’末端、3’末端のいずれか又は両方に位置し得る1つ以上の2’-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含むことができる。
【0122】
ある実施形態では、2つ以上のガイドRNAをCRISPR/Casヌクレアーゼシステムと共に使用することができる。各ガイドRNAは、CRISPR/Casシステムが2つ以上の標的核酸を切断するように、異なる標的化配列を含有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のガイドRNAは、Cas9 RNP複合体内での活性又は安定性などの同じ又は異なる特性を有し得る。2つ以上のガイドRNAが使用される場合、各ガイドRNAは、同じ又は異なるベクター上にコードされ得る。2つ以上のガイドRNAの発現を駆動するために使用されるプロモーターは、同じであるか又は異なる。
【0123】
2つ以上の好適なCas9及び2つ以上の好適なgRNAが、本明細書に記載される方法、例えば、当技術分野において知られるか又は本明細書で開示される方法に使用され得ることは理解されるはずである。いくつかの実施形態では、方法は、当技術分野において知られるCas9酵素及び/又はgRNAを含む。例は、例えば、本明細書で参照される目的及び主題に対して以前の出願の各々の関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/097305A2号パンフレット及び国際公開第2019/215500号パンフレットにおいて見出され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNAは、表3の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むTRAC遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNA(例えば、配列番号6)は、表3の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むTRAC遺伝子においてインデルを生成する。
【0125】
【表10】
【0126】
いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNAは、表4の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むβ2M遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNA(例えば、配列番号10)は、表4の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むβ2M遺伝子においてインデルを生成する。
【0127】
【表11】
【0128】
いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNAは、表5の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むCD70遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNAは、表5の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むCD70遺伝子においてインデルを生成する。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNA(例えば、配列番号2)は、表5の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むCD70遺伝子においてインデルを生成する。
【0129】
【表12】
【0130】
(ii)CARコンストラクトをT細胞に送達するためのAAVベクター
CARコンストラクトをコードする核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して細胞に送達され得る。AAVは、宿主ゲノムに部位特異的に組込み、したがって、CARなどの導入遺伝子を送達することができる小型のウイルスである。逆位末端配列(ITR)は、AAVゲノム及び/又は目的の導入遺伝子に隣接して存在し、複製開始点として機能する。また、AAVゲノム中には、転写されるとAAVゲノムをカプセル化して標的細胞に送達するためのカプシドを形成するrepタンパク質及びcapタンパク質も存在する。これらのカプシド上の表面受容体によってAAVの血清型が付与され、カプシドがどの標的臓器に最初に結合するか、したがって、いずれの細胞にAAVが最も効率的に感染するかが決定される。現在知られているヒトAAVの血清型は、12種類である。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸を送達するのに使用するためのAAVは、AAV血清型6(AAV6)である。
【0131】
アデノ随伴ウイルスは、いくつかの理由のために遺伝子療法に最も頻繁に使用されるウイルスの1つである。第一に、AAVは、ヒトを含む哺乳動物への投与時に免疫応答を誘発しない。第二に、AAVは、特に適切なAAV血清型の選択を考慮に入れると、標的細胞に効率的に送達される。最後に、AAVは、ゲノムが組み込むことなしに宿主細胞中で残存し得ることから、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有する。この形質により、AAVは、遺伝子療法の理想的な候補となる。
【0132】
CARをコードする核酸は、宿主T細胞内の目的のゲノム部位に挿入するように設計され得る。いくつかの実施形態では、標的ゲノム部位は、セーフハーバー遺伝子座内にあり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターによって運ぶことが可能なドナー鋳型を介して)遺伝子操作されたT細胞内のTRAC遺伝子を破壊してCARポリペプチドを発現させるために、TRAC遺伝子内の位置に挿入できるように設計され得る。TRACの破壊により、内在性TCRの機能の喪失がもたらされる。例えば、本明細書に記載されるものなどのエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のTRACゲノム領域を標的化する1つ以上のgRNAにより、TRAC遺伝子における破壊を生じさせることができる。この目的のために、TRAC遺伝子及び標的部位に特異的なgRNAのいずれか、例えば本明細書で開示されるものを使用することができる。
【0134】
いくつかの例では、相同組換え修復、すなわちHDR(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターの一部であり得るドナー鋳型を使用する)により、TRAC遺伝子内のゲノム欠失及びCARをコードするセグメントによる置換を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のTRACゲノム領域を標的化する1つ以上のgRNAにより、且つCARをコードするセグメントをTRAC遺伝子に挿入することにより、TRAC遺伝子の破壊を生じさせることができる。
【0135】
本明細書に開示されるとおりのドナー鋳型は、CARのコード配列を含有し得る。いくつかの例では、CARをコードする配列は、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を使用して、目的のゲノム位置、例えば、TRAC遺伝子で効率的なHDRを行うことができるように、2つの相同性領域に隣接し得る。この場合、標的遺伝子座に特異的なgRNAによって誘導されたCRISPR Cas9酵素により、DNAの両方の鎖を標的遺伝子座で切断することができる。続いて、HDRが発生して二本鎖切断(DSB)を修復し、CARをコードするドナーDNAを挿入する。これを正しく発生させるために、ドナー配列は、TRAC遺伝子などの標的遺伝子のDSB部位を取り囲む配列に相補的な隣接残基(以下では「相同性アーム」)を有するように設計されている。これらの相同性アームは、DSB修復のための鋳型として機能し、HDRを本質的に誤りのない機構とすることを可能にする。相同組み換え修復(HDR)の割合は、変異部位と切断部位との間の距離の関数であり、そのため、重複しているか又は近傍の標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接した余分な配列を含むことができるか、又はゲノム配列と異なる配列を含むことができ、これによって配列編集が可能になる。
【0136】
或いは、ドナー鋳型は、DNAの標的化された位置と相同性のある領域がなくてもよく、標的部位で切断された後にNHEJ依存的末端連結により組み込まれ得る。
【0137】
ドナー鋳型は、一本鎖及び/又は二本鎖のDNA又はRNAであってもよく、直鎖状又は環状形態で細胞に導入することができる。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に既知の方法により(例えば、エキソヌクレアーゼによる分解から)保護することができる。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖状分子の3’末端に付加し、且つ/又は自己相補的オリゴヌクレオチドを一方若しくは両方の末端に連結する。例えば、Chang et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959-4963;Nehls et al.,(1996)Science 272:886-889を参照されたい。外因性のポリヌクレオチドを分解から保護するための追加の方法としては、末端アミノ基の付加、並びに、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基などの修飾されたヌクレオチド間結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
ドナー鋳型は、例えば、複製開始点、プロモーター及び抗生物質耐性コード遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。さらに、ドナー鋳型は、裸の核酸として、リポソーム若しくはポロキサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として細胞に導入することができるか、又はウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))により送達することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、その発現が内在性プロモーターによって駆動することができるように、内在性プロモーターの近傍の部位(例えば、下流又は上流)に挿入することができる。他の実施形態では、ドナー鋳型は、CAR遺伝子の発現を制御するために、外因性プロモーター及び/又はエンハンサー、例えば構成的プロモーター、誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターを含み得る。いくつかの実施形態では、外因性プロモーターは、EF1αプロモーターである。他のプロモーターが使用されてもよい。
【0140】
さらに、外因性の配列は、転写又は翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナルも含み得る。
【0141】
III.CD70発現腫瘍の治療
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD70を標的化するように設計されたキメラ抗原受容体(CAR)により操作される。CD70は、T細胞の増殖及び生存に関与する共刺激受容体であるCD27に対するリガンドとして最初に同定された。CD70は、ウイルス感染中の流入領域リンパ節において少ないパーセンテージの活性化T細胞及び抗原提示細胞上においてのみ見出される。乳癌、胃癌、卵巣癌、及び神経膠芽腫などの固形癌を含むがこれらに限定されない多くのヒト腫瘍もまた、CD70を発現する。正常組織におけるその限定的な発現パターン(Flieswasser et al.,Cancers,(2019)11:1611)及び多くの癌における過剰発現のために、CD70は、魅力的な治療標的である。本明細書に提供されるとおりに治療され得る癌(例えば、固形腫瘍)の他の非限定的な例としては、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、甲状腺癌、上咽頭癌、非小細胞肺(NSCLC)、神経膠芽腫、リンパ腫、及び/又は黒色腫が挙げられる。
【0142】
いくつかの態様では、本明細書において、CD70発現腫瘍(例えば、CD70+固形腫瘍)を有するヒト患者を、本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞のいずれかの集団を使用して治療するための方法が提供される。
【0143】
そのような治療方法は、1回以上の用量の1つ以上のリンパ球枯渇剤を好適なヒト患者に与えることを含む、移植前処置(リンパ球枯渇治療)、及び本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の集団のヒト患者への投与を含む治療レジメン(抗CD70 CAR T細胞療法)を含み得る。該当する場合、複数の用量の抗CD70 CAR T細胞がヒト患者に与えられる場合があり、リンパ球枯渇治療は、抗CD70 CAR T細胞の各投与の前にヒト患者に適用され得る。
【0144】
(i)患者集団
ヒト患者は、診断、治療又は療法が望まれる任意のヒト対象であり得る。ヒト患者は、任意の年齢であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、成人である(例えば、少なくとも18歳の人間)。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、小児であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、≧60kgの体重を有する。
【0145】
本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、CD70+固形腫瘍(例えば、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、及び/又はそれらの組み合わせ)を有するか、有することが疑われるか、又は有するリスクがあるヒト患者であり得る。CD70+固形腫瘍を有すると疑われる対象は、癌の1つ以上の症状、例えば、疲労、皮膚の下で感じられる場合がある肥厚のしこり若しくは領域、原因不明の体重減少若しくは体重増加を含む体重変化、皮膚の変化(例えば、皮膚の黄変、黒化若しくは発赤、治癒しない糜爛、又は既存のほくろに対する変化)、排便若しくは排尿習慣の変化、長引く咳若しくは呼吸困難、嚥下困難、嗄声、食後の遷延性の消化不良若しくは不快感、遷延性の原因不明の筋肉痛若しくは関節痛、遷延性の原因不明の熱若しくは寝汗、又は原因不明の出血若しくは内出血を示し得る。
【0146】
CD70+固形腫瘍のリスクがある対象は、CD70+固形腫瘍に関するリスク因子、例えば、年齢、喫煙、肥満、高血圧、日光への過剰な暴露、化学物質及び/若しくはウイルスへの暴露、家族歴、又は遺伝的条件の1つ以上を有する対象であり得る。抗CD70 CAR T細胞(例えば、CTX130細胞)治療を必要とするヒト患者は、通例の医学的試験、例えば、臨床検査、生検、画像検査(例えば、核磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン、超音波検査、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、及びX線)によって同定され得る。
【0147】
本明細書で提供されるとおりに治療され得るCD70+固形腫瘍の例としては、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、甲状腺癌、上咽頭癌、非小細胞肺(NSCLC)、神経膠芽腫、及び/又は黒色腫が挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、当技術分野で知られる任意の方法によって、例えば、免疫組織化学(IHC)又はフローサイトメトリーなどの免疫アッセイによって同定され得るCD70発現腫瘍細胞(CD70発現腫瘍)を含む腫瘍を有するヒト患者であり得る。
【0149】
本明細書で開示される方法のいずれかはさらに、患者におけるCD70+腫瘍細胞の存在及び/又はレベルに基づく同種異系抗CD70 CAR T療法に好適なヒト患者を同定する工程を含み得る。
【0150】
本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、進行性固形腫瘍、例えば、切除不能な又は転移性の固形腫瘍を有するヒト患者であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、治療後に再発し、且つ/又は治療に対して抵抗性になっており、且つ/又は治療に対して反応を示さない固形腫瘍を有し得る。本明細書に記載される方法によって治療されることになるヒト患者は、最近の前治療を有したヒト患者であり得る。或いは、ヒト患者は、前治療を受けていなくてもよい。
【0151】
本明細書で開示される方法を使用して治療されるヒト患者のいずれかは、それに続く治療を受ける場合がある。例えば、ヒト患者は、抗サイトカイン療法にかけられる。別の例では、ヒト患者は、遺伝子操作されたT細胞の集団による治療の後に自系又は同種異系造血幹細胞移植にかけられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、再発性又は難治性CD70+固形腫瘍を有する。本明細書で使用する場合、「難治性CD70+固形腫瘍」は、治療に応答しないか又は抵抗性になるCD70+固形腫瘍を指す。本明細書で使用する場合、「再発性CD70+固形腫瘍」は、完全奏効の期間の後に再発するCD70+固形腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、治療後に再発が起こる。他の実施形態では、治療中に再発が起こる。応答の欠如は、定期的な医療行為によって判断され得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、再発性CD70+固形腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、難治性CD70+固形腫瘍を有する。
【0153】
患者が移植前処置(リンパ球枯渇治療)及び/又は治療レジメン(抗CD70 CAR T細胞療法)を受けるのに適格であるかどうかを判断するために、ヒト患者がスクリーニングされ得る。例えば、リンパ球枯渇治療に適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)臨床状態の著しい悪化、(b)90%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、(c)制御されない心不整脈、(d)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、(e)活動性感染症、及び(f)グレード≧2の急性神経毒性の1つ以上を示さない。別の例では、治療レジメンに適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)活動性の制御されない感染症、(b)リンパ球枯渇治療前の臨床状態と比較して臨床状態が悪化していること、及び(c)グレード≧2の急性神経毒性(例えば、ICANS)の1つ以上を示さない。
【0154】
ヒト患者をスクリーニングして、そのようなスクリーニング結果に基づいて移植前処置及び/又は治療レジメンから除外してもよい。例えば、患者が以下の除外基準のいずれかを満たす場合、ヒト患者は、移植前処置及び/又は治療レジメンから除外され得る:(a)任意の抗CD70標的化薬剤による前治療、(b)任意のCAR T細胞又は任意の他の改変されたT若しくはナチュラルキラー(NK)細胞による前治療、(c)任意のリンパ球枯渇治療又は任意の治療レジメンの賦形剤のいずれかに対する前のアナフィラキシー反応、(d)脳転移を示す脳脊髄液(CSF)又は核磁気共鳴画像法(MRI)に由来する検出可能な悪性細胞、(e)臨床的に意味のあるCNS病理の病歴又は存在、(f)スクリーニング前の6ヶ月以内の不安定狭心症、不整脈、又は心筋梗塞、及び(g)制御されない急性の生命を脅かす細菌、ウイルス、又は真菌感染症。場合により、ヒト患者は、6.5%又は48mmol/mlのHBA1cレベルを有する糖尿病を有しない。
【0155】
リンパ球枯渇治療にかけられるヒト患者は、CTX130細胞などの本明細書で開示される抗CD70 CAR T細胞の1つ以上の用量を受容することに対する適格性についてスクリーニングされ得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞治療にとって適格なリンパ球枯渇治療にかけられるヒト患者は、以下の特徴の1つ以上を示さない:(a)活動性の制御されない感染症、(b)臨床状態の悪化、及び(c)グレード≧2の急性神経毒性(例えば、ICANS)。
【0156】
抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、サイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、神経毒性、移植片対宿主病(GvHD)、オンターゲット・オフ腫瘍毒性、及び/又は制御されないT細胞増殖などの急性毒性についてモニターされ得る。オンターゲット・オフ腫瘍毒性は、活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、骨芽細胞及び/又は腎尿細管様上皮に対する遺伝子操作されたT細胞の集団の活性を含み得る。抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされ得る。
【0157】
ヒト患者が急性毒性の1つ以上の症状を示す場合、ヒト患者は毒性管理にかけられ得る。急性毒性の1つ以上の症状を示す患者に対する治療は、当技術分野において知られている。例えば、CRSの症状(例えば、心臓、呼吸器及び/又は神経的異常)を示すヒト患者に抗サイトカイン療法を施し得る。加えて、CRSの症状を示さないヒト患者に抗サイトカイン療法を施して、抗CD70 CAR T細胞の増殖を促進し得る。
【0158】
或いは又は加えて、ヒト患者が急性毒性の1つ以上の症状を示す場合、ヒト患者の治療を終了し得る。患者が1つ以上の有害事象(AE)の徴候を示す、例えば患者に異常な検査所見があり、且つ/又は患者が疾患進行の徴候を示す場合にも患者の治療を終了し得る。
【0159】
(ii)移植前処置(リンパ球枯渇療法)
本明細書で開示される治療方法に好適な任意のヒト患者は、対象の内在性リンパ球を減少又は枯渇させるためにリンパ球枯渇療法を受け得る。
【0160】
リンパ球枯渇は、内在性リンパ球及び/又はT細胞を破壊することを指し、一般に免疫移植療法及び免疫療法前に使用される。リンパ球枯渇は、放射線照射及び/又は化学療法によって達成することができる。「リンパ球枯渇剤」は、対象に投与したとき、内在性リンパ球及び/又はT細胞を減少、枯渇又は排除することが可能な任意の分子であり得る。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇剤は、薬剤を投与する前のリンパ球の数と比較して、リンパ球の数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、96%、97%、98%又は少なくとも99%だけ減少させるのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇剤は、対象のリンパ球の数が検出限界以下となるような、リンパ球の数を減少させるのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの(例えば、2、3、4、5つ以上の)リンパ球枯渇剤が投与される。
【0161】
いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇剤は、特異的にリンパ球を死滅させる細胞傷害性薬剤である。リンパ球枯渇剤の例としては、フルダラビン、シクロホスファミド、ベンダムスチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキサート、ダカルバジン、メルファラン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、リン酸エトポシド、ミトキサントロン、クラドリビン、デニロイキンジフチトクス、又はDAB-IL2が挙げられるが、これらに限定されない。場合により、リンパ球枯渇剤は、低線量の放射線照射と併用され得る。移植前処置のリンパ球枯渇効果は、通常の診療でモニターされ得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つ以上のリンパ球枯渇剤、例えば、フルダラビン及びシクロホスファミドを含む移植前処置を含む。本明細書に記載される方法によって治療を受けるヒト患者は、複数用量の1つ以上のリンパ球枯渇剤を移植前段階の適切な期間(例えば、1~5日間)に受容し得る。患者は、リンパ球枯渇期間中、リンパ球枯渇剤の1つ以上を1日当たり1回受容し得る。一例において、ヒト患者は、1日当たり約20~50mg/m(例えば、30mg/m)のフルダラビンを2~4日間(例えば、3日間)及び1日当たり約300~600mg/m(例えば、500mg/m)のシクロホスファミドを2~4日間(例えば、3日間)受容する。一例において、ヒト患者は、1日当たり約20~50mg/m(例えば、20mg/m又は30mg/m)のフルダラビンを2~4日間(例えば、3日間)及び1日当たり約300~600mg/m(例えば、500mg/m)のシクロホスファミドを2~4日間(例えば、3日間)受容する。別の例において、ヒト患者は、1日当たり約20~30mg/m(例えば、25mg/m)のフルダラビンを2~4日間(例えば、3日間)及び1日当たり約300~600mg/m(例えば、300mg/m又は400mg/m)のシクロホスファミドを2~4日間(例えば、3日間)受容する。必要があれば、シクロホスファミドの用量は、例えば、1,000mg/mまで増加されてもよい。
【0163】
次に、ヒト患者は、本明細書で開示されるとおりのリンパ球枯渇療法後の適切な期間内において、CTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞のいずれかを投与され得る。例えば、ヒト患者は、抗CD70 CAR+T細胞(例えば、例としてCTX130細胞)を投与する約2~7日(例えば、2、3、4、5、6、7日)前に1つ以上のリンパ球枯渇剤に晒され得る。
【0164】
CTX130細胞などの同種異系抗CD70 CAR-T細胞は、事前に調製することができるため、本明細書で開示されるとおりのリンパ球枯渇療法は、本明細書で開示される同種異系抗CD70 CAR-T細胞療法にヒト患者が好適であると同定された後の短い期間内(例えば、2週間以内)において、CD70+腫瘍を有するヒト患者に適用され得る。
【0165】
本明細書に記載される方法は、抗CD70 CAR+T細胞を有するヒト患者に再投与することを包含する。そのような例において、ヒト患者は、再投与の前にリンパ球枯渇治療にかけられる。例えば、ヒト患者は、第1のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第1の用量に続いて、第2のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第2の用量にかけられ得る。別の例において、ヒト患者は、第1のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第1の用量、第2のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第2の用量、並びに第3のリンパ球枯渇治療及びCTX130の第3の用量にかけられ得る。
【0166】
リンパ球枯渇工程のいずれかの前に(例えば、最初のリンパ球枯渇工程の前又はCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の再投与と関連するいずれかの後に続くリンパ球枯渇工程の前)、ヒト患者は、患者がリンパ球枯渇治療に適格であるかどうかを判断するための1つ以上の特徴についてスクリーニングされ得る。例えば、リンパ球枯渇前に、リンパ球枯渇治療に適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)臨床状態の著しい悪化、(b)90%超の飽和レベルを維持するために酸素補給を必要とすること、(c)制御されない心不整脈、(d)血管収縮薬の支援を必要とする低血圧、(e)活動性感染症、及び(f)グレード≧2の急性神経毒性の1つ以上を示さない。
【0167】
リンパ球枯渇後、ヒト患者が抗CD70 CAR T細胞による治療に適格であるかどうかを判断するために、ヒト患者は、1つ以上の特徴についてスクリーニングされ得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞治療前及びリンパ球枯渇治療後、抗CD70 CAR T細胞治療に適格なヒト患者は、以下の特徴:(a)活動性の制御されない感染症、(b)臨床状態の悪化、及び(c)グレード≧2の急性神経毒性の1つ以上を示さない。
【0168】
(iii)抗CD70 CAR T細胞の投与
本開示の態様は、CD70+固形腫瘍を治療する方法であって、ヒト患者をリンパ球枯渇治療にかけること及びある用量の本明細書に記載される遺伝子操作されたT細胞(例えば、CTX130細胞)の集団をヒト患者に投与することを含む方法を提供する。
【0169】
抗CD70 CAR T細胞の投与は、所望の効果を生じさせることができるように、腫瘍部位などの所望の部位に遺伝子操作されたT細胞集団の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、遺伝子操作されたT細胞集団のヒト患者への配置(例えば、移植)を含み得る。対象の所望の位置に送達をもたらす任意の適切な経路によって遺伝子操作されたT細胞集団を投与することができるが、この場合、移植された細胞又はこの細胞の構成要素の少なくとも一部は、生存したままである。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間(例えば、24時間)という短い期間から数日、数年又はさらに対象の寿命(すなわち、長期の生着)という長さまでであり得る。例えば、本明細書に記載されるいくつかの態様では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団を、腹腔内又は静脈内経路などの全身性の投与経路を介して投与することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたT細胞集団を全身に投与し、これは、細胞の集団を標的部位、組織又は臓器に直接投与するのではなく、代わりに対象の循環系に入り、それにより代謝及び他の同様のプロセスを受けるように投与することを指す。好適な投与の様式としては、注射、注入、点滴又は経口摂取が挙げられる。注射としては、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、並びに胸骨内注射及び注入が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、経路は、静脈内である。
【0171】
有効量は、医学的状態(例えば、癌)の少なくとも1つ以上の徴候又は症状を予防又は軽減するのに必要な遺伝子操作されたT細胞集団の量を指し、所望の効果をもたらす、例えば、医学的状態を有する対象を治療するのに十分な量の遺伝子操作されたT細胞集団に関する。有効量としては、疾患の症状の発症を予防するか若しくは遅らせるか、疾患の症状の経過を変える(例えば、限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせる)か、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量も挙げられる。任意の所与の場合に関して、適切な有効量は、通常の実験を使用して当業者により決定できることが理解される。
【0172】
遺伝子操作されたT細胞集団の有効量は、約1×10個の細胞~約1.0×10個のCAR+細胞、例えば、抗CD70 CARを発現する約3.0×10個の細胞~約1.0×10個の細胞(CAR細胞)、例えば、CAR CTX130細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団は、抗CD70 CARを発現する約3.0×10個のCAR+細胞~約9×10個の細胞、例えば、CARCTX130細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団は、少なくとも3.0×10個のCARCTX130細胞、少なくとも4×10個のCARCTX130細胞、少なくとも4.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも5.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも6×10個のCARCTX130細胞、少なくとも6.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも7×10個のCARCTX130細胞、少なくとも7.5×10個のCARCTX130細胞、少なくとも8×10個のCARCTX130細胞、少なくとも8.5×10個のCARCTX130細胞、又は少なくとも9×10個のCARCTX130細胞を含み得る。いくつかの例では、CARCTX130細胞の量は、1×10個の細胞を超えない場合がある。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3.0×10~約3×10個のCART細胞、例えば、約1×10~約1×10個のCART細胞又は約1×10~約3×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約1.5×10~約3×10個のCART細胞の範囲であり得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3.0×10~約9×10個のCART細胞、例えば、約3.5×10~約6×10個のCART細胞又は約3.5×10~約4.5×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約4.5×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約4.5×10~約6×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約6×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約7.5×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。
【0175】
特定の例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約3.0×10個のCART細胞を含み得る。例えば、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約4.5×10個のCART細胞を含み得る。他の例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約6×10個のCART細胞を含み得る。いくつかの例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約7.5×10個のCART細胞を含み得る。さらに他の例では、有効量の本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)は、約9×10個のCART細胞を含み得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約9×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約7.5×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約6×10個のCART細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりの遺伝子操作されたT細胞集団(例えば、CTX130細胞)の有効量は、約3×10~約4.5×10個のCART細胞の範囲であり得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、有効量の遺伝子操作されたT細胞集団は、ある用量の遺伝子操作されたT細胞集団、例えば、約3.0×10個のCARCTX130細胞~約9×10個のCARCTX130細胞を含む用量、例えば、本明細書で開示される任意の用量又は用量の範囲を含み得る。いくつかの例では、有効量は、4.5×10個のCARCTX130細胞である。いくつかの例では、有効量は、6×10個のCARCTX130細胞である。いくつかの例では、有効量は、7.5×10個のCARCTX130細胞である。いくつかの例では、有効量は、9×10個のCARCTX130細胞である。
【0178】
いくつかの例では、進行性CD70+固形腫瘍(例えば、切除不能な又は転移性のCD70+固形腫瘍)又は再発性/難治性CD70+固形腫瘍を有する患者は、好適な用量のCTX130細胞、例えば、約3×10~約6×10個のCARCTX130細胞が与えられ得る。そのような固形腫瘍患者は、約3×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。或いは、固形腫瘍患者は、約1×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、固形腫瘍患者は、約3×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、固形腫瘍患者は、約4.5×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、固形腫瘍患者は、約6×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、固形腫瘍患者は、約7.5×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。別の例では、固形腫瘍患者は、約9×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。
【0179】
いくつかの例では、進行性CD70+固形腫瘍(例えば、切除不能な又は転移性のCD70+固形腫瘍)又は再発性/難治性CD70+固形腫瘍を有する患者は、好適な用量のCTX130細胞、例えば、約9×10~約1.0×10個のCARCTX130細胞が与えられ得る。そのような固形腫瘍患者は、約9×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。或いは、固形腫瘍患者は、約1.0×10個のCARCTX130細胞が投与され得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、各々が約1.5×10個のCAR+CTX130細胞を含む医薬組成物の1つ以上のバイアルから投与される。いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、各々が約3×10個のCAR+CTX130細胞を含む医薬組成物の1つ以上のバイアルから投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与されるCTX130細胞の好適な用量は、1.5×10の1倍以上のCAR+CTX130細胞、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、又は6倍のCAR+CTX130細胞である。いくつかの実施形態では、CTX130細胞の好適な用量は、医薬組成物の1つ以上の完全な又は部分的なバイアルから投与される。
【0181】
本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞療法の有効性は、訓練された臨床医によって判断され得る。抗CD70 CAR T細胞療法は、一例ではあるが、任意の1つ又は全ての徴候又は症状のCD70のレベルが有利な様式で変化する(例えば、少なくとも10%減少する)場合又はCD70+固形腫瘍の他の臨床的に認められている症状又はマーカーが改善又は回復される場合、「有効」であるとみなされる。有効性は、入院又は医学的介入の必要性により評価されるとおり、対象が悪化しないことによっても測定され得る(例えば、CD70+固形腫瘍の進行が止まるか又は少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、且つ/又は本明細書で記載される。治療は、ヒト患者におけるCD70+固形腫瘍の任意の治療を含み、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を止めるか若しくは遅くすること;又は(2)疾患を軽減すること、例えば、症状の退行をもたらすこと;及び(3)症状の発症を予防するか若しくはその可能性を減少させることを含む。
【0182】
本明細書に記載される治療方法は、リンパ球枯渇を反復すること及び抗CD70 CAR T細胞の再投与を包含する。抗CD70 CAR T細胞のそれぞれの再投与の前に、患者は、別のリンパ球枯渇治療にかけられる。抗CD70 CAR T細胞の用量は、第1、第2、及び第3の用量に関して同じであり得る。例えば、第1、第2、及び第3の用量の各々は、1×10個のCAR+細胞、1×10個のCAR+細胞、3×10個のCAR+細胞、1×10個のCAR+細胞、1.5×10個のCAR+細胞、4.5×10個のCAR細胞、6×10個のCAR細胞、7.5×10個のCAR細胞、9.8×10、又は1×10個のCAR+細胞である。他の場合、抗CD70 CAR T細胞の用量は、投与の数が増加するにつれてCAR+細胞の数が増加する場合がある。例えば、第1の用量は、1×10個のCAR+細胞であり、第2の用量は、1×10個のCAR+細胞であり、第3の用量は、1×10個のCAR+細胞である。或いは、CAR+細胞の第1の用量は、CAR+細胞の第2及び/又は第3の用量より少なく、例えば、第1の用量は、1×10個のCAR+細胞であり、第2及び第3の用量は、1×10個のCAR+細胞である。いくつかの例では、抗CD70 CAR T細胞の用量は、それぞれのその後の用量に関して1.5×10CAR+細胞だけ増加し得る。
【0183】
患者は、抗CD70 CAR T細胞のそれぞれの投与の後に再投与について評価され得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞の第1の用量の後、ヒト患者は、患者が以下の1つ以上を示さない場合、抗CD70 CAR T細胞の第2の用量を受容するのに適格であり得る:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全。別の例では、抗CD70 CAR T細胞の第2の用量の後、ヒト患者は、患者が以下の1つ以上を示さない場合、CTX130の第3の用量を受容するのに適格であり得る:(a)用量規制毒性(DLT)、(b)72時間以内にグレード2に回復しないグレード4のCRS、(c)グレード>1のGvHD、(d)グレード≧3の神経毒性、(e)活動性感染症、(f)血行動態的に不安定、及び(g)臓器不全。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるとおりのヒト患者は、複数の用量の抗CD70 CAR T細胞(例えば、本明細書で開示されるとおりのCTX130細胞)を与えられ得る、すなわち、再投与され得る。ヒト患者は、合計で最大3用量まで与えられ得る(すなわち、2回以下の再投与)。2つの連続した用量の間の間隔は、約8週~約2年であり得る。いくつかの例では、ヒト患者は、患者が、第1の用量(又は第2の用量)の後に部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)に達し、その後最後の用量の2年以内に進行した場合、再投与され得る。他の例では、ヒト患者は、患者が直近の投与の後にPR(ただしCRではない)又は安定な疾患(SD)に達したとき、再投与され得る。下の実施例11も参照されたい。
【0185】
CTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の再投与は、抗CD70 CAR T細胞の第1の用量の約8週~約2年後に行われ得る。例えば、抗CD70 CAR T細胞の再投与は、抗CD70 CAR T細胞の第1の用量の約8~10週後に行われ得る。他の例では、抗CD70 CAR T細胞の再投与は、抗CD70 CAR T細胞の第1の用量の約14~18週後に行われ得る。患者が2つの用量を投与されるとき、第2の用量は、前の用量の8週~2年(例えば、8~10週又は14~18週)後に投与され得る。いくつかの例では、患者は、3つの用量が投与され得る。第3の用量は、第1の用量の14~18週後に投与されてもよく、第2の用量は、第1の用量の6~10週後に投与されてもよい。場合により、2つの連続した用量の間の間隔は、約6週~10週であり得る。
【0186】
抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、サイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、神経毒性(例えば、ICANS)、移植片対宿主病(GvHD)、オンターゲット・オフ腫瘍毒性、及び/又は制御されないT細胞増殖などの急性毒性についてモニターされ得る。オンターゲット・オフ腫瘍毒性は、活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、骨芽細胞及び/又は腎尿細管様上皮に対する遺伝子操作されたT細胞の集団の活性を含み得る。以下の潜在的な毒性の1つ以上もまたモニターされ得る:低血圧(hytotension)、腎不全、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、遷延性血球減少症、及び/又は薬物性肝障害。抗CD70 CAR T細胞の各投与の後、ヒト患者は、毒性の発症に関して少なくとも28日間モニターされ得る。毒性の発症が観察される場合、ヒト患者は、毒性管理にかけられ得る。急性毒性の1つ以上の症状を示す患者に対する治療は、当技術分野において知られている。例えば、CRSの症状(例えば、心臓、呼吸器及び/又は神経的異常)を示すヒト患者に抗サイトカイン療法を施し得る。加えて、CRSの症状を示さないヒト患者に抗サイトカイン療法を施して、抗CD70 CAR T細胞の増殖を促進し得る。
【0187】
本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞治療法は、以前に抗癌療法を受けたことがあるヒト患者に対して使用され得る。例えば、本明細書に記載されるとおりの抗CD70 CAR T細胞は、チェックポイント阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、血管内皮増殖因子阻害剤、又はそれらの組み合わせで以前に治療されたことがある患者に投与され得る。
【0188】
本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞治療法はまた、組み合わせ療法において使用され得る。例えば、本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞治療法は、CD70+固形腫瘍を治療するか若しくは遺伝子操作されたT細胞集団の有効性を高めるために、且つ/又は遺伝子操作されたT細胞集団の副作用を低減するために他の治療剤とともに使用され得る。
【0189】
IV.CD70発現腫瘍を治療するためのキット
本開示はまた、CD70+固形腫瘍を治療するための方法において、本明細書で記載されるとおりのCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の集団の使用のためのキットを提供する。そのようなキットには、1つ以上のリンパ球枯渇剤を含む第1の医薬組成物、任意の核酸又は遺伝子操作されたT細胞の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む第2の医薬組成物、及び薬学的に許容される担体を含む1つ以上の容器を含み得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のための指示書を含み得る。添付される指示書は、ヒト患者において意図される活性を実現するために、第1及び/又は第2の医薬組成物を対象に投与することに関する説明を含み得る。キットはさらに、ヒト患者が治療を必要とするかどうかを同定することに基づいて、治療に好適なヒト患者を選択することに関する説明を含み得る。いくつかの実施形態では、指示書は、治療が必要なヒト患者に第1及び第2の医薬組成物を投与することに関する説明を含む。
【0191】
本明細書に記載されるCTX130細胞などの抗CD70 CAR T細胞の集団の使用に関する指示書は、一般に、意図される治療に関する投与量、投与スケジュール、及び投与経路などの情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)又は副単位用量であり得る。本開示のキットにおいて与えられる指示書は通常、ラベル又は添付文書上に記載された指示書である。ラベル又は添付文書は、遺伝子操作されたT細胞の集団が、対象におけるCD70+固形腫瘍を治療し、発症を遅らせ、且つ/又は軽減するために使用されることを示す。
【0192】
本明細書で提供されるキットは、好適な包装の中にある。好適な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装などが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、鼻腔投与器具、又は注入器具などの特定の器具と組み合わせて使用するための包装も考えられる。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針が貫通可能なストッパーのある静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。容器にも無菌のアクセスポートがあり得る。医薬組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書で開示されるようなCTX130細胞などの抗CD70 CAR-T細胞の集団である。
【0193】
キットは、任意選択により、緩衝剤及び解説情報などの追加の構成要素を提供し得る。通常、キットは、容器及び容器上の又は容器に付随したラベル又は添付文書を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0194】
一般的技術
本開示の実施は、別段の指摘がない限り、当技術分野の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を利用することになる。こうした技術は、例えば下記の文献で十分に説明されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995);DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985;Transcription and Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986>>;Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986≫;及びB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.)。
【0195】
当業者であれば、さらなる詳述なしに、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈すべきであり、決して以下の本開示を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的のために又は主題に対して参照により組み込まれる。
【実施例
【0196】
記載される発明がより十分に理解され得るようにするために、以下の実施例が記載される。本出願で記載される実施例は、本明細書で提供される方法及び組成物を説明するために提供されるものであり、いかなる意味でもそれらの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0197】
実施例1:多重遺伝子ノックアウトを有するT細胞の生成。
この実施例は、2つ又は3つの遺伝子の発現を同時に欠くヒトT細胞を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集技術の使用を記載する。具体的には、T細胞受容体(TCR)遺伝子(TCRアルファ定常(TRAC)領域において編集された遺伝子)、β2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子、及び表面抗原分類70(CD70)遺伝子が、列挙された遺伝子の2つ以上においてT細胞欠損を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集によって編集された。以下の略称が、簡潔さ及び明確さのために使用される:
2X KO:TRAC/β2M
3X KO(CD70):TRAC/β2M/CD70
【0198】
活性化された初代ヒトT細胞は、Cas9:gRNA RNP複合体で電気穿孔された。ヌクレオフェクション混合物は、Nucleofector(商標)溶液、5×10細胞、1μMのCas9及び5μMのgRNA(Hendel et al.,Nat Biotechnol.2015;33(9):985-989,PMID:26121415に記載される)を含有した。二重ノックアウトT細胞(2X KO)の生成のために、細胞は、各々が上に示される濃度でCas9タンパク質並びに以下のsgRNA:TRAC(配列番号6)及びβ2M(配列番号10)の1つを含有する2つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。三重ノックアウトT細胞(3X KO)の生成のために、細胞は、各RNP複合体がCasタンパク質並びに以下のsgRNA:(a)TRAC(配列番号6)、β2M(配列番号10)、及びCD70(配列番号2又は66)の1つを含有する3つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号3、7、11、及び/又は67)。表6における配列も参照されたい。
【0199】
【表13】
【0200】
エレクトロポレーションの約1週間後、細胞は、未処理のままであるか又は酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)/イオノマイシンで一晩処理された。翌日、細胞をフローサイトメトリーのために処理して(例えば、Kalaitzidis D et al.,J Clin Invest 2017;127(4):1405-1413を参照のこと)、編集された細胞集団の細胞表面でTRAC、β2M、及びCD70の発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表7):
【0201】
【表14】
【0202】
表8は、非常に効率的な多重遺伝子編集を示す。三重ノックアウト細胞に関して、生存細胞の80%が、TCR、β2M、及びCD70の発現を欠いた(表8)。
【0203】
【表15】
【0204】
T細胞における三重遺伝子編集が細胞の増殖に影響するかどうかを評価するため、細胞数を、二重及び四重遺伝子編集されたT細胞(未編集のT細胞が、対照として使用された)の間で編集後2週間にわたって数え上げた。5×10細胞が生成され、T細胞の各遺伝子型について蒔かれた。
【0205】
細胞増殖(拡大)は、エレクトロポレーション後の期間の試験にわたって継続した。同様の細胞増殖は、生存細胞の数によって示されるとおり、二重(β2M-/TRAC-)及び三重(β2M-/TRAC-/CD70-)ノックアウトT細胞の間で観察された(データは示さず)。これらのデータは、多重遺伝子編集が、T細胞増殖によって測定されるとおりのT細胞の活力に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0206】
実施例2:多重ノックアウトを有する抗CD70 CAR T細胞の生成。
この実施例は、TCR遺伝子、β2M遺伝子、及び/又はCD70遺伝子の発現を欠き、且つCD70を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する同種異系ヒトT細胞の産生を記載する。これらの細胞は、TCR/β2M/CD70/抗CD70 CAR又は3X KO(CD70)CD70 CARと呼ばれる。
【0207】
配列番号43のヌクレオチド配列を含む(配列番号46のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする、配列番号44におけるドナー鋳型を含む)組換えアデノ随伴アデノウイルスベクター、血清型6(AAV6)(MOI 50,000)が、Cas9:sgRNA RNP(1μM Cas9、5μM gRNA)とともに活性化された同種異系ヒトT細胞に送達された。以下のsgRNAを使用した:TRAC(配列番号6)、β2M(配列番号10)、及びCD70(配列番号2又は66)。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号3、7、11、及び/又は67)。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞をフローサイトメトリーのために処理して、編集された細胞集団の細胞表面でのTRAC、β2M、及びCD70発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表9):
【0208】
【表16】
【0209】
T細胞比率アッセイ。次に、CD4+及びCD8+細胞の比率が、以下の抗体(を使用するフローサイトメトリーによって、編集されたT細胞集団において評価された表10)。
【0210】
【表17】
【0211】
高効率の遺伝子編集及びCAR発現は、編集された抗CD70 CAR T細胞集団において達成された。加えて、編集は、CD4/CD8 T細胞集団を不利に変化させなかった。図1は、三重ノックアウトCAR T細胞における非常に効率的な遺伝子編集及び抗CD70 CAR発現を示す。55%を超える生存細胞が、TCR、β2M、及びCD70の発現を欠き、抗CD70 CARも発現した。図2は、CD4/CD8 T細胞サブセットの正常な比率が、TRAC-/β2M-/CD70-/抗CD70 CAR+細胞において維持されたことを示し、これは、これらの多重遺伝子編集が、CD4/CD8 T細胞サブセットの比率によって測定されるとおり、T細胞の生態に影響を及ぼさないことを示唆している。
【0212】
実施例3:インビトロでの抗CD70 CAR T細胞の細胞増殖に対するCD70 KOの効果
CAR T細胞においてCD70遺伝子を破壊することの影響をさらに評価するため、抗CD70 CAR T細胞が、実施例2に記載されるとおりに生成された。具体的には、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)抗CD70 CAR T細胞が、2つの異なるgRNA(T7(配列番号2)及びT8(配列番号66))を使用して生成された。エレクトロポレーションの後、細胞増殖は、編集後の2週間にわたって二重又は三重遺伝子編集されたT細胞を数え上げることによって評価された。5×10細胞が生成され、T細胞の各遺伝子型について蒔かれた。増殖は、生存細胞の数を計数することによって決定された。図3は、T7又はT8 gRNAのいずれかで生成された三重ノックアウトTRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞が、二重ノックアウトTRAC/β2M/抗CD70 CART細胞と比較して高い細胞増殖を示したことを示す。これらのデータは、CD70遺伝子をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+T細胞に細胞増殖の優位性をもたらすことを示唆する。
【0213】
実施例4:CD70ノックアウトを有する抗CD70 CAR T細胞の細胞を死滅させる機能
細胞死滅アッセイを使用して、TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞及びTRAC/β2M/抗CD70 CART細胞のCD70接着腎細胞癌(RCC)由来細胞株(A498細胞)を死滅させる能力を評価した。接着細胞を、ウェル当たり50,000細胞で96ウェル中に播種し、37℃で一晩置いた。翌日、編集された抗CD70 CAR T細胞を、指定の比率で標的細胞を含有するウェルに加えた。指定されたインキュベーション期間の後、CAR T細胞を、吸引によって培養物から除去し、100μLのCell titer-Glo(Promega)をプレートの各ウェルに加えて、残留している生存細胞の数を評価した。次に、ウェル当たりの放出された光の量を、プレートリーダーを使用して定量化した。細胞は、24時間の共インキュベーション後にRCC由来細胞の強力な細胞の死滅を示した(図4)。抗CD70 CAR T細胞は、CD70がノックアウトされた場合により高い効力を示したが、これは、低いT細胞:A498比(1:1及び0.5:1)で明白に目に見え、ここで、細胞溶解は、TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞については90%を超えたままであるが、TRAC/β2M/抗CD70 CART細胞については細胞溶解が90%未満に落ちる。このことは、CD70遺伝子をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+T細胞により高い細胞死滅の能力をもたらすことを示唆する。
【0214】
実施例5:CD70のノックアウトは連続的な再チャレンジ時に抗CD70 CART細胞の死滅を維持した。
上で生成された抗CD70 CART細胞は、CD70+腎臓癌細胞株A498で連続的に再チャレンジされ、それらのCD70+腎臓癌細胞株A498を死滅させる能力について評価された。
【0215】
A498細胞は、T25フラスコ中に蒔き、2つ(TRAC/β2M)又は3つ(TRAC/β2M/CD70)のgRNA編集のいずれかを含有する10×10個の抗CD70 CART細胞とともに2:1(T細胞対A498)の比で混合された。3つの編集を有する抗CD70 CAR+T細胞は、CTX130とも称される。
【0216】
各チャレンジの2日又は3日後、細胞は計数され、洗浄され、新鮮なT細胞培地中で再懸濁され、1個のA498細胞当たり2個の抗CD70 CART細胞の同じ比(2:1、CART細胞:標的)で翌日に再チャレンジされた。CD70+ A498細胞による抗CD70 CART細胞のチャレンジは、13回繰り返された。A498細胞に対するそれぞれの暴露の後の3~4日後(及び次の再チャレンジの前)、一定分量の培養物を採取し、2:1(CAR T細胞:標的細胞)の比でA498標的細胞を死滅させるCAR T細胞の能力について分析した。細胞の死滅は、Cell titer-glo(Promega)を使用して測定された。A498による最初のチャレンジの前に、2X KO(TRAC/β2M)及び3X KO(TRAC/β2M/CD70)を有する抗CD70 CAR+T細胞の各々が、100%に近づいているA498細胞の標的細胞の死滅を示した。しかしながら、チャレンジ9によって、2X KO(TRAC/β2M)抗CD70 CART細胞は、40%未満のA498細胞の標的細胞の死滅を誘導した一方で、3X KO(TRAC/β2M/CD70)抗CD70 CART細胞は、60%を超える標的細胞死滅を示した(図5)。3X KO(TRAC/β2M/CD70)抗CD70 CART細胞に関する標的細胞の死滅は、A498細胞による13回の再チャレンジ後でさえ60%を超えたままであり、これらのCAR+T細胞が枯渇に耐性であったことを実証している。
【0217】
実施例6:CD70+細胞の存在下での抗CD70 CAR+T細胞(CTX130)によるサイトカイン分泌の測定
この試験の目的は、CD70発現細胞の存在下でエフェクターサイトカインを分泌するCTX130の能力を評価することであった。
【0218】
標的癌細胞株(A498、ACHN及びMCF7)は、ATCC(HTB-44、CRL-1611及びHTB-22)から得られた。標的細胞株上でのCD70の発現が評価された。簡潔には、CTX130又は対照T細胞(未編集T細胞)を、U底96ウェルプレートにおいて0.125:1から最大4:1のT細胞と標的細胞の様々な比で標的細胞株と共培養した。細胞を、各実験において記載されるとおり、合計200μLの標的細胞培地中において24時間培養した。アッセイを、IL-2及びIL-7の添加を含有しない培地中で実施して、補助的なサイトカインの非存在下でのT細胞活性化を評価した。
【0219】
CD70陽性又はCD70陰性標的細胞との共培養の後にCTX130又は対照T細胞(抗CD70 CAR発現を有しない未編集T細胞)がエフェクターサイトカインインターフェロン-γ(INFγ)及びインターロイキン-2(IL-2)を特異的に分泌する能力は、本明細書に記載されるとおりのLuminexに基づくMILLIPLEXアッセイを使用して評価された。A498及びACHN細胞株をCD70標的株として使用し、MCF7細胞株をCD70-標的株として使用した。アッセイは、細胞傷害性アッセイと組み合わせて実施されたため、プロトコルは以下のとおりであった:標的細胞を、一晩播種し(96ウェルプレート当たり50,000個の標的細胞)、続いて様々な比(0.125:1、0.25:1、0.5:1、1:1、2:1及び4:1のT細胞と標的細胞)でCTX130又は対照T細胞と共培養した。24時間後、プレートを遠心分離し、上清を回収し、さらに処理するまで-80℃で保管した。IL-2及びIFNγを、以下のとおりに定量化した:MILLIPLEX(登録商標)キット(Millipore、カタログ#HCYTOMAG-60K)を使用して、それぞれ磁性微粒子、HCYIFNG-MAG(Millipore、カタログ#HCYIFNG-MAG)及びHIL2-MAG(Millipore、カタログ#HIL2-MAG)を使用してIFN-γ及びIL-2分泌を定量化した。アッセイは、製造業者のプロトコルに従って実施された。要約すると、MILLIPLEX(登録商標)標準及び品質管理(QC)試料を再構成し、10,000pg/mL~3.2pg/mLの実用標準の連続希釈を調製した。MILLIPLEX(登録商標)標準、QC及び細胞上清を各プレートに添加し、アッセイ培地を用いて上清を希釈した。全ての試料を、HCYIFNG-MAG及びHIL2-MAGビーズとともに2時間インキュベートした。インキュベーションの後、自動磁気プレート洗浄機を使用してプレートを洗浄した。ヒトサイトカイン/ケモカイン検出抗体溶液を各ウェルに添加して1時間インキュベートし、続いてストレプトアビジン-フィコエリトリンで30分間インキュベートした。続いてプレートを洗浄し、試料を150μLのシース液で再懸濁させ、プレート振盪機上で5分間撹拌した。xPONENT(登録商標)ソフトウェアを備えたLuminex(登録商標)100/200(商標)機器を使用して試料を読み取り、データの取得及び分析を、MILLIPLEX(登録商標)Analystソフトウェアを使用して完了させた。未知の試料中で測定されたサイトカイン濃度を計算するために、中央蛍光強度(MFI)データが、5パラメーターのロジスティック曲線適合法を用いて自動的に分析される。
【0220】
CTX130がCD70陽性及びCD70陰性細胞の存在下でサイトカインを分泌するかどうかを決定するために、開発ロット01を、A498、ACHN又はMCF7細胞と24時間共培養した。CTX130細胞は、CD70+細胞(A498及びACHN)との共培養の後にIFNγ及びIL-2の両方を分泌したが、CD70陰性細胞(MCF7)と共培養したときはそれらを分泌しなかった(図6A~6C、表11~16)。未編集の対照T細胞は、試験された細胞株に対して特異的なエフェクターサイトカイン分泌を示さなかった。
【0221】
【表18】
【0222】
【表19】
【0223】
【表20】
【0224】
【表21】
【0225】
【表22】
【0226】
【表23】
【0227】
これらの結果は、CTX130細胞が、CD70を発現する腎細胞癌の存在下でIFNγ及びIL-2を分泌することによってエフェクター機能を示すが、CD70陰性細胞株MCF7の存在下ではそれを示さないことを実証する。
【0228】
実施例7:抗CD70 CAR+T細胞(CTX130)によるCD70+細胞の選択的な死滅
この試験の目的は、インビトロでCD70発現細胞を選択的に溶解するCTX130の能力を評価することであった。
【0229】
CD70陽性又はCD70陰性標的細胞を特異的に死滅させるCTX130又は対照T細胞(抗CD70 CAR発現を有しない未編集T細胞)の能力を、CellTiter-Glo発光細胞生存率に基づく細胞傷害性アッセイを使用して評価した。A498及びACHN細胞株をCD70陽性標的株として使用し、MCF7細胞株をCD70陰性標的株として使用した(全てがATCCから得られた)。開発ロット01からのT細胞を、これらの実験において使用した。
【0230】
不透明な壁で仕切られた96ウェルプレート(Corning、Tewksbury、MA)のウェル当たり50,000個のヒト標的細胞(CD70陽性A498及びACHN、CD70陰性MCF7)を、一晩蒔いた。翌日、細胞を、様々な比(0.125:1、0.25:1、0.5:1、1:1、2:1及び4:1のT細胞と標的細胞)で24時間T細胞と共培養した。標的細胞を、未編集T細胞(TCR+、B2M+、CAR-)、又はCTX130細胞とインキュベートした。T細胞をPBSにより手動で洗い流した後、残留している生存標的細胞を、CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイ(CellTiter-Glo(登録商標)2.0アッセイ、Promega G9242)を使用して定量化した。蛍光は、Synergy H1プレートリーダー(Biotek Instruments、Winooski、VT)を使用して測定された。CellTiter-Glo分析のために細胞を処理する前に、上清を、共培養の後のサイトカイン分泌の定量化のために回収した。
【0231】
次に、細胞溶解のパーセントを、相対発光単位(RLU)を使用する以下の式を使用して計算した:
%細胞溶解=((エフェクターを有しない標的細胞のRLU-エフェクターを有する標的細胞のRLU))/(エフェクターを有しない標的細胞のRLU)×100
【0232】
CTX130の開発ロット(ロット01)は、CD70+細胞株A498及びACHNに対する細胞死滅活性について試験された。CTX130ロットは、高く(A498;図7A)及び低く(ACHN;図7B)CD70を発現する細胞の両方に対して特異的に強力な細胞死滅活性を示したが、CD70-MCF7細胞(図7C)と共培養した場合はそれを示さなかった。CAR発現がない場合、対照の未編集T細胞は、CD70+細胞を比較的低い効率で死滅させた。表17~19に示されるデータも参照されたい。
【0233】
【表24】
【0234】
【表25】
【0235】
【表26】
【0236】
これらの結果は、CTX130細胞が、CD70に特異的な様式でインビトロにおいて癌細胞株を溶解させることができたことを実証した。
【0237】
実施例8:CD70 KOは、複数の細胞型における細胞の死滅を増進する。
(a)様々な癌細胞株におけるCD70発現。
相対的なCD70発現を様々な癌細胞株において測定して、様々な癌型を死滅させる抗CD70 CART細胞の能力をさらに評価した。CD70発現は、Alexa Fluor 647抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355115)を使用するFACS分析によって測定された。図8Aは、他の腎臓癌細胞株A498、786-O、cacki-1及びCaki-2と比較した、FACSによって測定されるとおりのACHN細胞における相対的なCD70の発現を示す。さらに、非腎臓癌細胞株は、Alexa Fluor 647抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355115;図8B)又はFITC抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355105;図8C)のいずれかを使用するFACS分析(表20、図8A~8C)によってCD70発現について評価された。SNU-1(腸癌細胞)は、A498と同様であった高レベルのCD70発現を示した(図8B)。SKOV-3(卵巣)、HuT78(リンパ腫)、NCI-H1975(肺)及びHs-766T(膵臓)細胞株は、ACHNと同様であるか又はより高いが、A498より低いCD70発現のレベルを示した(表20、図8C)。
【0238】
【表27】
【0239】
細胞死滅アッセイ。多重に遺伝子編集された抗CD70 CAR+細胞の様々な固形腫瘍を死滅させる能力は、細胞死滅アッセイを使用して判定された。細胞の死滅を定量するため、細胞は洗浄され、培地は、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地で置き換えられた(死/瀕死細胞を数え上げるため)。最後に、25mLのCountBrightビーズ(Life Technologies)を、各ウェルに加えた。次に、細胞は、フローサイトメトリーによって処理された。
1)細胞/mL=((生存標的細胞イベントの数)/(ビーズイベントの数))×((ロットの割り当てられたビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料の体積))
2)合計の標的細胞は、細胞/mLに細胞の総体積を掛けることによって計算された。
3)次に、細胞溶解のパーセントが、以下の式:
%細胞溶解=(1-((試験試料中の標的細胞の総数)/(対照試料中の標的細胞の総数))×100
により計算された。
【0240】
実際に、TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CAR(3X KO(CD70)、CD70 CAR)は、驚くべきことに、共培養のたった24時間後に多数の固形腫瘍細胞株の強力な細胞死滅を示したことが見出された(図8Dは、3X KO CAR+T細胞による死滅を示す)。3X KO、CD70 CAR+T細胞は、4:1のエフェクター:標的細胞比で腎臓、膵臓、及び卵巣腫瘍細胞(A498、ACHN、SK-OV-3、及びHs-766T)の>60%を死滅させ、1:1のエフェクター:標的細胞比で>50%を死滅させた(図8D)。中程度から低いCD70発現を有した癌細胞株(NCI-H1975、Calu-1及びDU 145)の細胞の死滅は、共培養の24時間以内で4:1のエフェクター:標的細胞比で>30%の死滅を有して依然として効率的であった(図8E)。3X KO CD70 CAR+T細胞に対するより長い暴露(すなわち、96時間)は、全ての細胞型、特に、SKOV-3、Hs-766T、及びNIC-H1975細胞全体にわたって癌細胞死滅の増加をもたらし、死滅は、1:1のエフェクター:標的細胞比で>80%であった(図8E)。
【0241】
(b)さらなるCD70発現細胞株の選択的な死滅
CD70発現細胞を選択的に死滅させる抗CD70 CAR+T細胞の能力が判定された。フローサイトメトリーアッセイを設計して、3X KO(CD70)(TRAC/B2M/CD70)抗CD70 CAR+T細胞によって、癌細胞懸濁液株(例えば、「標的細胞」と呼ばれるK562、MM.1S及びHuT78癌細胞)の死滅を試験した。使用された標的細胞株のうちの2つは、CD70発現癌細胞(例えば、MM.1S及びHuT78)であったが、陰性対照癌細胞として使用された3つ目は、CD70発現を欠く(例えば、K562)。TRAC/B2M/CD70/抗CD70 CAR+T細胞は、CD70発現MM.1S若しくはHuT78細胞株又はCD70陰性K562細胞株のいずれかと共培養された。標的細胞は、5μM efluor670(eBiosciences)で標識され、洗浄され、96ウェルU底プレートにおいて1ウェル当たり50,000標的細胞の密度で播種された。標的細胞は、様々な比(0.5:1、1:1、2:1及び4:1 CAR+T細胞対標的細胞)でTRAC/B2M/CD70抗CD70 CAR+T細胞と共培養され、一晩インキュベートされた。標的細胞の死滅は、24時間の共培養後に判定された。細胞は洗浄され、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地が各ウェルに加えられた(死/瀕死細胞を数え上げるため)。次に、細胞は、フローサイトメトリーによって分析され、残留している生存標的細胞の量が定量化された。
【0242】
図8F~8Hは、TRAC-/B2M-/CD70-抗CD70 CAR+T細胞による選択的な標的細胞の死滅を実証している。3X KO(CD70)CAR+T細胞との24時間の共培養は、0.5:1の低いCAR+T細胞とCD70発現標的細胞比でさえ、T細胞リンパ腫細胞(HuT78)のほぼ完全な死滅をもたらした(図8H)。同様に、24時間の共培養は、試験された全てのCAR+T細胞と標的細胞の比で多発性骨髄腫細胞(MM.1S)のほぼ完全な死滅をもたらした(図8G)。標的細胞の死滅は、TRAC-/B2M-/抗CD70 CAR+T細胞が、試験されたいずれのエフェクター:標的細胞比でも対照試料(例えば、癌細胞単独又はRNP T細胞を伴わない共培養物)のレベルを上回るCD70欠損K562細胞の死滅を誘導しなかったという点で選択的であることが見出された(図8F)。
【0243】
SNU-1細胞の死滅は、視覚的な評価によって評価された。CAR+T細胞への長い暴露後の標的細胞の死滅もまた、SNU-1癌細胞についての顕微鏡観察によって評価された。SNU-1細胞は、6ウェルプレートにおいて1ウェル当たり100万細胞の密度で蒔かれ、3X KO(CD70)、抗CD70 CART細胞と4:1のエフェクター:標的比で混合された。共培養物は、6日間インキュベートされ、生存癌細胞の存在が顕微鏡観察によって評価された。全ての胃癌標的細胞(SNU-1)は、対照ウェルと比較して、TRAC/β2M/CD70/抗CD70 CART細胞を含有するウェルにおいて除去されたが、これは、癌細胞が、長期間の共培養により抗CD70 CART細胞によって完全に除去されたことを示している。
【0244】
実施例9:抗CD70 CART細胞の有効性:NOGマウスにおける皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルの治療。
高レベルのCD70を発現する腎癌細胞を除去するCD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。これらのモデルは、皮下A498-NOGモデル、皮下786-O-NSGモデル、皮下Caki-2-NSGモデル、及び皮下Caki-1-NSGモデルを含んだ。CTX130細胞は、本明細書に記載されるとおりに生成された。
【0245】
それぞれの皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルに関して、500万個の指定の細胞型の細胞を、NOG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/JicTac)マウスの右側腹部に皮下注射した。平均腫瘍サイズがおよそ150mmの平均サイズに達したとき、マウスは、治療されないままであったか又はマウス毎に8×10個のCARCTX130(TRAC/B2M-/CD70/抗CD70 CAR+T細胞)細胞を静脈内注射された。皮下A498-NOGモデルにおいて、マウスの追加の群は、マウス毎に7.5×10個のCAR+TRACB2M抗CD70 CAR-T細胞が注射された。
【0246】
CTX130細胞は、皮下A498-NOGモデル(図9A)及び皮下Caki-2-NSGモデル(図9C)において腫瘍増殖を完全に除去した。TRAC/B2M/抗CD70 CAR+T細胞を注射されたマウスにおける腫瘍増殖は、未治療の対照マウスのものと同様であった(図9A)。CTX130細胞は、皮下786-O-NSGモデル(図9B)及び皮下Caki-1-NSGモデル(図9D)において腫瘍増殖を著しく低減した。
【0247】
まとめると、これらの結果は、CTX130細胞が皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデルの4つの型において腫瘍増殖を低減したことを実証している。
【0248】
腫瘍再チャレンジモデル腎細胞癌腫瘍異種移植モデル
CTX130の有効性はまた、再チャレンジを伴う皮下A498異種移植モデルにおいて試験された。簡潔には、500万個のA498細胞が、NOD(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/JicTac)マウスの右側腹部において皮下注射された。腫瘍はおよそ51mmの平均サイズまで増殖させられ、その後担腫瘍マウスは、2つの群(N=5/群)に無作為化された。群1は、未治療のままであったが、群2は、7×10個のCAR+CTX130細胞を受容し、群3は、8×10個のCAR+TRAC-B2M-抗CD70 CAR T細胞を受容した。25日目に、腫瘍の再チャレンジが開始され、5×10個のA498細胞が治療されたマウスの左側腹部及び新たな対照群(群4)に注入された。
【0249】
図10に示されるとおり、CTX130細胞で治療されたマウスは、左側腹部へのA498細胞の注射による再チャレンジ後に腫瘍増殖を示さなかったが、抗CD70 CAR T細胞で治療されたマウスは、左側腹部に注射されたA498細胞の腫瘍増殖を示した。これらの結果は、CTX130細胞が、他の抗CD70 CAR+T細胞(CAR+ TRAC- B2M- 抗CD70 CAR T細胞)より腫瘍細胞への再暴露後により高いインビボ有効性を保持することを実証している。
【0250】
CTX130再投与腎細胞癌腫瘍異種移植モデルの有効性
CTX130の有効性はまた、再投与を伴う皮下A498異種移植モデルにおいて試験された。簡潔には、500万個のA498細胞が、NOG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/JicTac)マウスの右側腹部において皮下注射された。平均腫瘍サイズがおよそ453mmの平均サイズに達したとき、マウスは、未治療のままにされたか又はマウス当たり8.6×10個のCAR+CTX130細胞を静脈内注射された(N=5)。群2のマウスは、それぞれ17日目及び36日目にマウス当たり8.6×10個のCAR+CTX130細胞の第2及び第3の用量で治療された。群3のマウスは36日目にマウス当たり8.6×10個のCAR+CTX130細胞の第2の用量で治療された。
【0251】
図11において示されるとおり、CTX130細胞を1日目に投与され、続いて17日目及び36日目に再投与されたマウスは、36日目に1回のみ再投与されたマウスより少ない腫瘍増殖を示した。これらの結果は、CTX130細胞の再投与が、腫瘍増殖の抑制を増強したことを実証している。
【0252】
実施例10:抗CD70 CART細胞の有効性:NOGマウスにおけるCD70+固形腫瘍異種移植モデルにおける治療
CD70を発現する腫瘍細胞を除去する抗CD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウス皮下腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0253】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例3を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号45;配列番号46)を使用してTRAC遺伝子座からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号6)、β2M(配列番号10)、及びCD70(配列番号2)を標的化するsgRNAを含有する3種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC遺伝子座でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する-/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するドナー鋳型(配列番号43;配列番号44)(配列番号46のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)を含むAAV6に送達されるDNA鋳型による相同組換え修復によって修復された。
【0254】
得られた改変T細胞は、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)抗CD70 CAR+T細胞である。CD70+腫瘍細胞株によって引き起こされる疾患を回復させる抗CD70 CAR+T細胞の能力は、本明細書に記載される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。
【0255】
卵巣腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する卵巣腺癌細胞を除去する抗CD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下卵巣癌(SKOV-3)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0256】
CD70+卵巣癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させる抗CD70 CAR+T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、(12頭の)5~8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg-PrkdcscidI12rgtm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5~7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10個のSKOV-3卵巣癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25~75mm(約50mmの標的)に達したとき、マウスはさらに、表21に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表21に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+T細胞を受容した。
【0257】
【表28】
【0258】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後9日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、未治療の動物における腫瘍と比較して、腫瘍体積の減少を示し始めた。注射後17日目までに、抗CD70 CAR T細胞で治療されたマウスにおけるCD70+卵巣癌腫瘍は、完全に除去された。腫瘍増殖のこの完全退縮は、注射後44日間を通して治療された動物において維持され、その後、抗CD70 CART細胞で治療された5頭のマウスのうちの4頭は、最後の観察(69日目)まで腫瘍がないままであった(図9A)。これらのデータは、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)抗CD70 CAR+細胞が、ヒト卵巣腫瘍を治療するのにインビボで非常に強力であることを実証している。
【0259】
非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する肺腺癌細胞を除去するCD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下肺癌(NCI-H1975)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0260】
CD70+肺癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5~8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg-PrkdcscidI12rgtm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5~7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10個のNCI-H1975肺癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25~75mm(約50mmの標的)に達したとき、マウスはさらに、表22に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表22に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+T細胞を受容した。
【0261】
【表29】
【0262】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後12日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、未治療の動物における腫瘍と比較して、腫瘍体積の減少を示し始めた。治療された動物における腫瘍のこの完全退縮は、注射後33日間を通して継続する。抗CD70 CAR T細胞による治療は、注射後40日目までの間、確立されたH1975肺癌異種移植片に対して強力な活性をもたらした(<100mmの腫瘍サイズを有する40日目までの全てのマウスにおいて、腫瘍再増殖が抑制された)が、その後、腫瘍が増殖し始めた。(図9B)。これらのデータは、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)抗CD70 CAR+細胞が、インビボでヒトCD70+肺癌腫瘍に対して強力な活性を有することを実証している。
【0263】
膵臓腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する膵臓癌細胞を除去するCD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下膵臓癌(Hs 766T)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0264】
CD70+膵臓癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5~8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg-PrkdcscidI12rgtm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5~7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10個のHs766T膵臓癌細胞の皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25~75mm(約50mmの標的)に達したとき、マウスはさらに、表23に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表23に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+T細胞を受容した。
【0265】
【表30】
【0266】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後15日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、全ての未治療の動物において腫瘍体積の減少を示し始めた。抗CD70 CAR+T細胞による治療は、試験された全てのマウスにおいてCD70+膵臓癌腫瘍のサイズを効率的に減少させ(<37mm)、試験の期間(67日目まで)にさらなる増殖の形跡を有しなかった(図9C)。これらのデータは、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)抗CD70 CAR+細胞が、確立されたHs766T膵臓癌異種移植片に対する強力な活性及び治療開始後60日を超える耐久性のある応答を有してインビボでヒトCD70+膵臓癌腫瘍の退縮を誘導することを実証している。
【0267】
胃腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する卵巣腺癌細胞を除去する抗CD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下胃癌(SNU-1)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0268】
CD70+卵巣癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、(12頭の)5~8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg-PrkdcscidI12rgtm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5~7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10個のSNU-1胃癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25~75mm(約50mmの標的)に達したとき、マウスはさらに、表24に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表24に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+T細胞を受容した。
【0269】
【表31】
【0270】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後10日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、腫瘍体積の減少を示し始めた。注射後20日目までに、抗CD70 CAR T細胞で治療されたマウスにおけるCD70+胃癌腫瘍は、腫瘍サイズのさらなる著しい減少を経た。注射後60日目までに、CD70+胃癌腫瘍は、腫瘍増殖の完全な退縮を示した(図9D)。これらのデータは、3X KO(TRAC-/β2M-/CD70-)抗CD70 CAR+細胞が、ヒト胃腫瘍を治療するのにインビボで非常に強力であることを実証している。
【0271】
実施例11:CD70発現癌を有する成人対象における同種異系CRISPR-Cas9操作されたT細胞(CTX130)の安全性及び有効性の第1相非盲検多施設用量漸増及びコホート拡大試験。
CTX130は、CRISPR-Cas9(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質9)遺伝子編集構成要素(単一のガイドRNA[sgRNA]及びCas9ヌクレアーゼ)を使用する、エクスビボで遺伝子改変された同種異系T細胞で構成されるCD70指向性T細胞免疫療法である。改変は、T細胞受容体アルファ定常(TRAC)、ベータ2-ミクログロブリン(B2M)、及びCD70遺伝子座の標的化された破壊並びにアデノ随伴ウイルス(AAV)発現カセットを介するTRAC遺伝子座への抗CD70キメラ抗原受容体(CAR)導入遺伝子の挿入を含む。抗CD70 CAR(配列番号46)は、以前に特徴付けられた抗CD70ハイブリドーマIF6に由来する抗CD70単鎖可変フラグメント(配列番号48)、CD8膜貫通ドメイン(配列番号54)、4-1BB共刺激ドメイン(配列番号57)、及びCD3ζシグナル伝達ドメイン(配列番号61)で構成される。
【0272】
1.試験概要
1.1 試験集団
用量漸増及びコホート拡大は、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性であり得るCD70発現癌、例えば、CD70+固形腫瘍を有する成人対象を含む。
【0273】
用量漸増及びコホート拡大は、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性であり得るCD70発現膵臓癌を有する成人対象を含む。
【0274】
用量漸増及びコホート拡大は、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性であり得るCD70発現胃癌を有する成人対象を含む。
【0275】
用量漸増及びコホート拡大は、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性であり得るCD70発現肺癌を有する成人対象を含む。
【0276】
用量漸増及びコホート拡大は、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性であり得るCD70発現卵巣癌を有する成人対象を含む。
【0277】
用量漸増及びコホート拡大は、CD70発現前立腺癌を有する成人対象を含む。
【0278】
場合により、対象は、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性であり得る腎細胞癌(RCC)、例示的なCD70+固形腫瘍を有する。
【0279】
1.2 投与の様式
対象は、リンパ球枯渇(LD)化学療法後にCTX130の静脈内(IV)注入を受けた。
【0280】
1.3 対象参加の期間
対象は、およそ5年間この研究に参加する。本試験の完了後、安全性及び生存期間を評価するために、全ての対象はさらに10年間、別の長期の追跡調査試験に参加することが必要となる。
【0281】
2.試験の目的
第1相用量漸増試験の目的は、CD70+固形腫瘍、例えば、進行性(例えば、切除不能又は転移性)、再発性、又は難治性CD70+固形腫瘍を有する対象において抗CD70同種異系CRISPR-Cas9操作されたT細胞(CTX130)の安全性及び有効性を評価することである。
【0282】
CAR T細胞療法は、ヒト悪性腫瘍を治療するために使用される養子性T細胞療法(ACT)である。CAR T細胞療法は、再発性/難治性非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者及び急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する小児患者における長続きする寛解を含む非常に大きい臨床的成功をもたらしたが、固形腫瘍の徴候におけるそれらの治験使用は、まだ妥当な臨床効果を示していない。加えて、最近承認されたACTは自系であり、患者に特異的な細胞の回収及び製造を必要とし、操作されたT細胞からの残りの混入している腫瘍細胞の再導入をもたらした(Ruella et al.,(2018)Nat Med,24,1499-1503)。さらに、それぞれの自系の製品の異質な性質は、研究される疾患徴候の大部分においてCAR T細胞の用量、毒性、及び/又は応答の間の相関を実証することを困難にした(Mueller et al.,(2017)Blood 130,2317-2325)。また、慢性リンパ性白血病(CLL)を有する患者における低い奏効率及び自系CAR T細胞療法で治療されたB細胞ALLを有する患者における奏効の欠如は、消耗したT細胞表現型に部分的に起因している(Fraietta et al.,(2018)Nat Med,24,563-571;Riches et al.,(2013)Blood,121,1612-21;Mackall,(2019)Cancer Research,AACR annual meeting,Abstract PL01-05;Long et al.,(2015)Nat Med,21,581-90;Walker et al.,(2017)Mol Ther,25,2189-2201;Zheng et al.,(2018)Drug Discov Today,23,1175-1182)。
【0283】
最終的に、回収、輸送、製造、及び患者の担当医への輸送は、多くの時間がかかり、結果として、一部の患者は、治療を待つ間に疾患進行又は死亡を経験した。同種異系の既製のCAR T細胞製品は、即時の可用性、製造の失敗がないこと、及び健康なドナーからの化学療法未処置のT細胞などの利点を提供することができ、したがって、自系CAR T細胞療法と比較してより一貫した製品である。
【0284】
CRISPR-Cas9編集により、内在性T細胞受容体(TCR)及び主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIタンパク質の破壊が達成され得る。TCRノックアウトは、移植片対宿主病(GvHD)のリスクを著しく低減するか又は除去することが意図されるが、MHCノックアウトは、CAR T細胞の持続を増大させるように設計される。CD70+固形腫瘍を有する対象におけるこのファースト・イン・ヒューマン試験は、このCRISPR-Cas9で改変された同種異系CAR T細胞手法の安全性及び有効性を評価する。
【0285】
CTX130は、CD70指向性の遺伝子改変された同種異系T細胞免疫療法であり、健康なドナーの細胞から製造される。したがって、結果として生じる製造された細胞は、一貫した信頼性の高い品質の最終生成物を各対象に提供することを目的としている。さらに、AAV及び相同組換え修復(HDR)を使用してTRAC部位にCARを正確に送達及び挿入することによるCTX130の製造には、レンチウイルス及びレトロウイルスベクターのランダムな挿入に関連するリスクが存在しない。
【0286】
CTX130に適用される4つの編集工程は、以下の様式において安全性及び有効性に対処する:
●安全性:内在性TCRを破壊するTRAC遺伝子座の欠失及び移植片対宿主病(GvHD)を抑制する宿主MHCシステムとその相互作用。
●T細胞活性:CD70標的化CARコンストラクトの挿入、B2M遺伝子座の欠失、及びCD70遺伝子座の欠失。
【0287】
CRISPR-Cas9は、相同組換えを介して欠失された遺伝子座としてCARコンストラクトの導入の連関を可能にする。AAVで送達されるDNAドナー鋳型及びHDRを使用するTRACゲノム遺伝子座でのCARの送達及び正確な挿入は、レンチウイルス及びレトロウイルス形質導入などの他の一般的な形質導入方法を使用するランダムな遺伝物質の挿入とは対照的である。TRAC遺伝子座でのCAR遺伝子の挿入は、CARを発現するほぼ全ての細胞でのTCRの除去をもたらす。内在性TCRのCRISPR-Cas9に媒介される破壊は、GvHDのリスクを著しく低減できるか又は除去できるが、MHCクラスIタンパク質の破壊は、CAR T細胞の持続を増大させると仮定される。CD70遺伝子座の欠失は、CTX130の持続を増大させ、活性化CAR T細胞上での発現の上昇を介して潜在的な相互作用を低減することが意図される。
【0288】
CTX130は、CD70指向性の遺伝子改変された同種異系T細胞免疫療法であり、健康なドナーの細胞から製造される。したがって、結果として生じる製造された細胞は、一貫した信頼性の高い品質の最終生成物を各対象に提供することを目的としている。さらに、AAV及び相同組換え修復(HDR)を使用してTRAC部位にCARを正確に送達及び挿入することによるCTX130の製造には、レンチウイルス及びレトロウイルスベクターのランダムな挿入に関連するリスクが存在しない。CAR T細胞で形質導入された悪性B細胞で再発したALLを有する対象の最近報告された症例はさらに、CARの挿入がTCR破壊と連関しないレンチウイルスの手法のこの潜在的なリスクを強調している(Ruella et al.,(2018)Nat Med 24,1499-503)。個々の対象の製造の失敗、スケジュール管理の複雑さ、ブリッジング化学療法と関連する毒性、及び対象に対する白血球除去のリスクは、同種異系CAR T細胞製品に適用されない。CTX130を直ちに投与する能力によって、対象は時宜を得て製品を受容することが可能になり、対象がブリッジング化学療法の必要性を回避する助けとなる。
【0289】
最後に、CD70は、CD27受容体の膜結合型リガンドであり、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーに属する。CD70は、いくつかの血液悪性腫瘍において発現される。CD70はまた、腎細胞癌及び神経膠芽腫などの非造血系の悪性腫瘍によって高度に発現される。
【0290】
3.試験の目的
主要目的、パートA(用量漸増):推奨されるパートBの用量(RPBD)を決定するためにCD70+固形腫瘍を有する対象においてCTX130の用量漸増により安全性を評価すること。
【0291】
主要目的、パートB(コホート拡大):固形癌効果判定基準(RECIST 1.1)に従う奏効率(ORR)によって測定されるとおりにCD70+固形腫瘍を有する対象においてCTX130の有効性を評価すること。
【0292】
副次的目的(パートA及びB):経時的な奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪期間(TTP)を含むCTX130の活性を評価すること;経時的なCTX130の有効性をさらに特徴付けること;さらにCTX130の安全性を評価し、サイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群及びGvHDを含む特記される有害事象(AESI)を記載し、評価すること;及び血中のCTX130の薬物動態(PK)(増殖及び持続)を特徴付けること。
【0293】
探索的目的(パートA及びB):疾患、臨床効果、抵抗性、安全性、又は薬力学的(PD)活性と関連するゲノム、代謝、及び/又はプロテオミクスバイオマーカーを同定すること;さらにCTX130の有効性のキネティクスを記載すること、及び患者報告アウトカム(PRO)に対するCTX130の影響を記載すること。
【0294】
4.試験適格性
4.1 組み入れ基準
本試験に参加するのに適格であるとみなすには、対象は以下に列挙される組み入れ基準を満たさなければならない:
1.≧18歳及び体重≧60kg。
2.治験実施計画書に必要とされる試験手順を理解して遵守することができ、自発的に書面のインフォームドコンセント文書に署名することができる。
3.進行性、再発性、又は難治性CD70+固形腫瘍と診断されている
o腫瘍組織が入手可能であること。
oRECISTv1.1に従って施設の放射線科医によって評価されるとおりの測定可能な疾患を有すること。o以前に放射線を照射された領域に位置している標的病変は、進行がそのような病変において示される場合、測定可能であるとみなされる。
o生検に好適な少なくとも1つの非標的病変を有する。
4.スクリーニング期間に評価されるとおりのカルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)≧80%。
5.本明細書に記載されるLD化学療法及びCAR T細胞注入を受けるために治験実施計画書に指定される判定基準を満たす。
6.十分な臓器機能:
●腎臓:クレアチニンクリアランス(CrCl)≧50mL/分
●肝臓:
oアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)<3×正常範囲上限(ULN);
o総ビリルビン<2×ULN(ジルベール症候群、総ビリルビン<3mg/dL);及び正常な抱合ビリルビン、
o正常の下限の>90%のアルブミン。
●心臓:血行動態的に安定しており、心エコー像による左室駆出率(LVEF)≧45%。
●肺:パルスオキシメトリーによる室温での酸素飽和レベルが>90%であること。
●血液学:スクリーニング前に血液細胞の注入を伴わずに血小板数>100,000/mm、好中球絶対数>1500/mm、及びヘモグロビン(HgB)>9g/dL
●凝固:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)又はPTT≦1.5×ULN
7.妊娠可能な女性患者(初経後、正常な子宮及び少なくとも1つの卵巣を有し、閉経後1年未満である)は、登録から最後のCTX130注入後の少なくとも12ヵ月にわたって、高い効果のある避妊方法(治験実施計画書において指定される)を使用することに同意しなければならない。
8.男性患者は、登録から最後のCTX130注入後の少なくとも12ヶ月にわたって、効果的な避妊方法(治験実施計画書において指定される)を使用することに同意しなければならない。
【0295】
4.2 除外基準
本試験に参加するのに適格となるためには、対象は以下に列挙される除外基準のいずれも満たさないことが必要となる:
1.任意の抗CD70標的化薬剤による以前の治療。
2.CAR T細胞又は任意の他の改変されたT若しくはナチュラルキラー(NK)細胞による以前の治療。
3.いずれかのLD化学療法剤又はCTX130製品の賦形剤のいずれかに対する既知の禁忌。
4.陽性スクリーニングMRI又は既往歴によって証明されるとおりのそれらの悪性度の中枢神経系(CNS)症状を有する対象。
5.てんかん発作、脳卒中、重度の脳損傷、小脳疾患、以前の療法による可逆性白質脳症(PRES)の病歴、又はCAR T細胞に関連する毒性を増加させる可能性のある別の状態などの臨床的に意味のあるCNS病態の病歴又は存在。
6.進行中の臨床的に意義のある胸水若しくは腹水若しくは心臓周囲の注入又は過去2ヶ月の胸水若しくは腹水の病歴。
7.スクリーニング前の6ヵ月以内の不安定狭心症、臨床的に重大な不整脈又は心筋梗塞。
8.7.0%又は48mmol/mLの目下のヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルを有する糖尿病。
9.制御されない急性の生命を脅かす細菌、ウイルス、又は真菌感染症。
10.ヒト免疫不全ウイルス1型若しくは2型、又は活動性B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス感染の存在について陽性である。ウイルス量が検出できない(定量的ポリメラーゼ連鎖反応又は核酸試験による)と記録されている、B型又はC型肝炎感染症の前病歴を有する対象は容認される。
11.全身療法を必要としない治癒手法で治療され、12ヶ月を超えて寛解しているもの、又は転移性疾患に発展するリスクの低い任意の他の局所的な悪性腫瘍を除く、以前の又は同時的な悪性腫瘍。
12.ステロイド及び/又は任意の他の免疫抑制療法を必要とする原発性免疫不全障害又は活動性自己免疫疾患。
13.以前の固形臓器移植又は骨髄移植。
14.登録前の14日以内の放射線療法を含む抗腫瘍又は治験薬の使用。ステロイドの生理的用量の使用は、臨床的に必要な場合及びメディカルモニターと協議してステロイドの使用歴のある対象について許容される。
15.登録前28日以内に生ワクチン又は漢方医学の一部として漢方薬を受容したか又は市販の漢方薬以外のものを受容した。
16.対象が試験に参加する能力を深刻に妨害し得る重大な精神障害の診断。
17.妊娠中又は授乳中の女性。
【0296】
5.試験デザイン
5.1 治験計画
これは、CD70+固形腫瘍を有する対象においてCTX130の安全性及び有効性を評価する単アーム非盲検多施設第1相試験である。試験は、用量漸増(パートA)、その後のコホート拡大(パートB)の2つのパートに分かれている。
【0297】
パートAにおいて、用量漸増は、例えば、切除不能又は転移性のCD70+固形腫瘍を有する成人対象において始まる。対象は、CPI及び血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤の両方に進行した可能性がある。用量漸増は、本明細書に記載される判定基準に従って実施される。
【0298】
パートBにおいて、拡大コホートは、最適なサイモン2段階デザインを使用してCTX130の安全性及び有効性をさらに評価するために開始される。第1段階において、対象は、パートBコホート拡大のためにCTX130の推奨用量で治療される(パートAにおいて決定されるMTD又はMTD未満)。
【0299】
5.1.1 試験デザイン
試験は、用量漸増(パートA)、その後のコホート拡大(パートB)の2つのパートに分かれている。試験の両方のパートは、3つの主要な段階:スクリーニング、治療、及び追跡調査からなる。試験スキームの概略図を図13に示す。
【0300】
3つの主要な段階は、以下のとおりである:
段階1 - 治療に対する適格性を判断するためのスクリーニング(最大14日間)。
段階2 - LD化学療法及びCTX130の注入。
段階2A - LD化学療法:1日当たりフルダラビン30mg/m及びシクロホスファミド500mg/mを静注(IV)で3日間の同時投与。両方の薬剤は、同じ日に開始され、3日間連続して投与される。LD化学療法は、CTX130注入の前に少なくとも48時間(ただし7日以下)で完了されなければならない。
段階2B - CTX130注入
臨床的適格性-LD化学療法の開始及びCTX130の注入の両方の前に、対象の臨床的適格性を再確認する必要がある。
段階3-追跡調査(最後のCTX130注入の5年後)。
CTX130注入期間後の間、対象は、CRS、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)、GvHD、及び他のAEを含む急性毒性(1~28日目)についてモニターされる。毒性管理のガイドラインは、本明細書に記載される(第8節を参照のこと)。パートA(用量増量)中、全対象は、CTX130注入後最初の7日間入院するが、現地の規制又は現場の慣習により必要とされる場合、それより長期間入院する。パートA及びパートBの両方において、対象は、CTX130注入後の28日間、治験現場の近辺の範囲内(すなわち、1時間の移動時間)に留まる必要がある。
【0301】
対象は、最大5年間この試験に参加する。本試験の完了後、長期安全性及び生存期間を評価するために、対象はさらに10年間、別の長期の追跡調査試験に参加することが必要となる。
【0302】
5.2 CTX130の用量漸増
CTX130の以下の用量は、CART細胞の数に基づいて、用量レベル1(DL1)で開始してこの試験(表25)において評価され得る。全ての用量レベルに1×10個のTCR細胞/kgの用量制限が課せられ得る。
【0303】
【表32】
【0304】
用量漸増は、標準的な3+3デザインを使用して実施され、その中で3~6名の対象は、本明細書に記載されるとおり、最初の投与の後に用量規制毒性(DLT)の発生に応じて各用量レベルで登録される。DLT評価期間は、最初のCTX130注入とともに開始し、28日間継続する。用量レベル1(及び必要があれば、用量レベル-1)において、対象は、ずらされた様式で治療されることになり、その結果、対象は、前の対象がDLT評価期間を完了してから(例えば、28日間ずらされる)CTX130のみを受容することになる。用量レベル-1への用量の減少が必要となる用量レベル1でのDLTの場合には、用量レベル-1での全ての対象の投与もまた、28日間ずらされることになる。DLTが用量レベル1で発生しない場合、用量漸増は、用量レベル2に進行することになり、それぞれの対象間の投与は、14日間ずらされることになる。DLTが最初の2つの用量レベル(用量レベル1及び2)で発生しない場合、次の用量レベル(用量レベル3及び4)で、投与は、それぞれの対象間で7日間ずらされることになる。
【0305】
用量漸増は、以下の規則に従って実施される:
○3名の対象のうちの0名がDLTを経験する場合、次の用量レベルに漸増する。
○3名の対象のうちの1名がDLTを経験する場合、目下の用量レベルを6名の対象に拡大する。
○6名の対象のうちの1名がDLTを経験する場合、次の用量レベルに漸増する。
○6名の対象のうちの2名以上がDLTを経験する場合:
■用量レベル-1の場合、代替的な投薬計画を評価するか又はパートBコホート拡大のための推奨用量を決定できないことを申告する。
■用量レベル1の場合、用量レベル-1に漸減する。
■用量レベル2又は3の場合、以前の用量レベルをMTDであると申告する。
○3名の対象のうちの2名以上がDLTを経験する場合:
○用量レベル-1の場合、代替的な投薬計画を評価するか又はパートBコホート拡大のための推奨用量を決定できないことを申告する。
○用量レベル1の場合、用量レベル-1に減少させる。
○用量レベル2又は3の場合、以前の用量レベルをMTDであると申告する。
○DL2とDL3の間の中間の用量、例えば、1.5×10個のCART細胞が許容され得る。
○DL3とDL4の間の中間の用量、例えば、4.5×10個のCART細胞、6×10個のCART細胞、又は7.5×10個のCART細胞が許容されてもよく、これは、DL4の安全性及び有効性データの審査に基づき得る。
○この試験において表25に列挙される最も高い用量を超える用量漸増はない。
【0306】
5.2.1 最大耐用量の定義
MTDは、DLTが対象の33%未満において観察される最も高い用量である。MTDは、この試験において決定され得ない。パートBの拡大コホートに移行する決定は、MTDの非存在下でなされてもよいが、用量が、試験のパートAにおいて試験された最大用量(又はMAD)であるか又はそれ未満であることを条件とする。
【0307】
5.2.2 DLTの定義
毒性は、CRS(ASTCT判定基準;米国移植細胞治療学会判定基準;Lee判定基準)、神経毒性(ICANS判定基準;免疫エフェクター細胞に関連する神経毒性症候群の判定基準、CTCAEバージョン5.0;Lee判定基準)、及びGvHD(MAGIC判定基準;Mount Sinai Acute GvHD International Consortium判定基準;Harris et al.,(2016)Biol Blood Marrow Transplant 22,4-10)を除いて、国立癌研究所(NCI)有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン5.0に従って等級分けされ、記録される。CTX130との妥当な因果関係のないAEは、DLTであるとみなさない。
【0308】
DLTは、
A.7日以内にステロイド治療(例えば、1mg/kg/日)に応答しない場合、グレード>2のGvHD(GvHDの等級分けは、表31に提供される)。
B.CTX130の注入の直後の28日以内に発生するCTX130に関連するグレード3~5の毒性であるが、以下の一覧は例外である:
以下は、DLTであるとみなされない:
○72時間以内の適切な医療介入によりグレード≦2まで改善するCRSの等級分け方式に従うグレード3又は4のCRS
○適切な医療介入により72時間以内に解決するグレード3又は4の発熱
○7日未満続くグレード3の疲労
○14日以内にグレード≦2まで改善するグレード3又は4の肝機能異常試験。
○7日以内にグレード≦2まで改善する心臓以外の重要な臓器(例えば、肺、腎臓)に関するグレード3の毒性
○72時間以内にグレード≦2まで改善するグレード3の心臓毒性
○72時間以内にグレード≦2まで解決するグレード3の神経毒性
○疾患進行に起因する死亡
○ステロイド抵抗性ではなく且つ14日以内にグレード1まで解決するGvHD
【0309】
5.3 パートA及びパートBにおけるCTX130による反復投与
この試験は、CTX130細胞による対象の2回以下の再投与を可能にすることになる。再投与に関して検討されるために、対象は、1)最初又は2回目のCTX130注入後に部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)を達成し、最後の投与から2年以内に、進行に関する公式のRECIST判定基準を満たすことなく引き続いて進行していなければならなかったか又は2)直近のCTX130注入の後の3ヶ月目の試験来院時にPR(ただしCRではない)又は安定な疾患(SD)を達成しなければならなかった(再投与の決定は、局所的なCTスキャン/評価に基づくことになる)。
【0310】
対象が再投与され得る最も早い時点は、最初又は2回目のCTX130注入の2ヶ月後である。
【0311】
CTX130により再投与されるために、対象は、以下の判定基準を満たすこととする:
■生検に受け入れられる病変が利用可能である場合、再発時に、腫瘍は、CD70+であると確認される(現地又は中央での評価に基づく)
■用量漸増の間にDLTの前歴がない(該当する場合)
■CTX130注入後の72時間以内にグレード≦2まで回復しないグレード≧3のCRSの前歴がない
■CTX130注入後にグレード>1のGvHDの前歴がない
■CTX130注入後にグレード≧2のICANSの前歴がない
■本明細書(第4節を参照のこと)に記載されるとおりの最初の試験の組み入れ基準(#1、#2、#4~8)及び除外基準(#2[CAR T細胞による前治療を除く]~17)を満たす。
■この実施例に記載されるとおりのLD化学療法及びCTX130注入に関する判定基準を満たす。
【0312】
再投与される対象は、最初の投与と同様に追跡されるべきである。脳MRIを含む全てのスクリーニング評価が繰り返されなければならない。
【0313】
追加の再投与の考慮事項は、以下のものを含む:
■疾患再発/進行を示すCTスキャンは、腫瘍効果判定に関する新たなベースラインとして役立つことになる。再投与は、そのスキャンの28日以内に行われる必要がある。
■対象が3ヶ月目来院時にPRのままであり、再投与される場合、最初のベースラインスキャンは、腫瘍効果判定のために使用され続けることになる。
■再投与を経る用量漸増コホートにおける対象は、安全であるとみなされている最も高いCTX130用量を受容することになる。
■拡大コホートにおける対象は、推奨されるパートBの用量で再投与されることになる。
【0314】
それぞれの投与イベントの前に、対象は、別の用量のLD化学療法を受けてもよい。
【0315】
6.試験手順
用量漸増及び試験の拡大パートの両方は、3つの別々の段階からなる:(1)スクリーニング及び適格性の確認、(2)LD化学療法及びCTX130注入、並びに(3)追跡調査。スクリーニング期間中、対象は、本明細書に記載される適格性の判定基準に従って評価される。登録の後、対象は、LD化学療法に続いてCTX130の注入を受ける。治療期間が完了した後、対象は、腫瘍応答、疾患進行、及び生存について評価される。全ての試験期間にわたって、対象は、安全性に関して定期的にモニターされる。
【0316】
評価の完全なスケジュールは、表26及び表27において提供される。欠損した評価は、予定を変更され、可能な限り最初に予定された日と近い日に実施されるべきである。ただし、予定の変更が、医師の見解により、次の評価予定日に近すぎるため、医学的に不必要又は安全でないと判断された場合は例外とする。その場合、欠損した評価は中止されるべきである。
【0317】
このプロトコルの目的のために、0日目はない。全ての来院日及び期間は、CTX130注入の日としての1日目を使用して計算されることになる。
【0318】
【表33】
【0319】
【表34】
【0320】
【表35】
【0321】
【表36】
【0322】
【表37】
【0323】
【表38】
【0324】
6.1 対象のスクリーニング
6.1.1 カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス
パフォーマンス・ステータスは、対象の全体的な幸福及び日々の活動を実施する能力を決定する0~100の範囲のスコアを有するカルノフスキー尺度を使用して表26において概説される時点で評価される。スコアが高いほど、日常動作を実行する能力がより良好であることを意味する。
【0325】
カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス尺度は、表28に示され、目下の試験におけるパフォーマンス・ステータスを決定するために使用される(Peus et al.,(2013)BMC Med Inform Decis Mak.,13:72)。
【0326】
【表39】
【0327】
6.1.2 脳MRI
CNS転移を除外するために、脳MRIがスクリーニング時(すなわち、CTX130注入前の28日以内)に実施されることになる。このMRIの取得、加工、及び転送の要件は、画像化マニュアルにおいて概説されることになる。
【0328】
6.1.3 心エコー像
経胸壁心エコー像(左室駆出率の評価のための)は、適格性を確認するスクリーニング時に訓練された医療従事者によって実施され、読み取られることになる。CRS中の心臓症状の場合、医学的に適切な評価が、施設のガイドラインに従って開始されるべきである。
【0329】
6.1.4.心電図
12誘導心電図(ECG)は、スクリーニング中、治療の1日目の各LD化学療法の前、1日目のCTX130投与の前、及び42日目に得られる。QTc及びQRS間隔は、ECGから決定される。追加のECGが得られてもよい。
【0330】
6.1.5 疾患及び効果判定
疾患評価は、RECIST v1.1判定基準(Eisenhauer et al.,(2009) European Journal of Cancer 45,228-247)に従い且つ本明細書、例えば、第6.2節に記載される評価に基づく。有効性分析のために、疾患予後が、RECIST v1.1効果判定基準を使用して等級分けされる。疾患及び効果判定は、表29及び表30におけるスケジュールに従って実行されるべきであり、本明細書に記載される評価を含む。全ての応答カテゴリー(進行を含む)は、いずれかの新たな療法の開始の前の任意の時点で少なくとも1週間離れてなされた2つの連続した評価を必要とする。
【0331】
6.1.6 放射線疾患評価(CT又はMRI)
可能な限り、同じCT装置及び試験パラメーターが使用されるべきである。MRIは、CTが禁忌の場合、メディカルモニターとの協議の後に実施される。
【0332】
ベースラインCTは、RECIST v1.1(例えば、第6.2節)により、表26における評価のスケジュール毎にスクリーニング時(すなわち、CTX130注入前の28日以内)、CTX130注入の6週間後(42日目)、並びにCTX130注入後の3ヶ月目(84日目)、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目、15ヶ月目、18ヶ月目、及び24ヶ月目に、臨床的必要性に応じて、実施されることになる。スキャンは、目的の決定のために現地で且つ中央で評価される。
【0333】
CTスキャンは、介在性のギャップを伴わずに(連続的に)5mmのスライスで取得されるべきである。対象が造影剤注入によるCT IVに関して禁忌を有する場合、胸部の非造影CT並びに腹部及び骨盤の造影核磁気共鳴画像法(MRI)が得られてもよい。MRIは、ギャップがない(連続的な)5mmのスライスの厚さで取得されなければならない。各対象を、全ての撮影時間において、同じスキャナーで同一の取得プロトコルを使用して画像化するようにあらゆる試みを行う必要がある。
【0334】
加えて、対象が試験外の理由のためにフルオロデオキシグルコース(FDG)-ポジトロン放出断層撮影(PET)/CTスキャンを受ける場合、スキャンのCT成分を使用して、疾患応答を評価してもよい可能性がある。
【0335】
可能な限り、放射線疾患評価のために使用される画像化モダリティ、装置、及びスキャンパラメーターは、試験の間一貫して保持されるべきである。
【0336】
6.1.7 腫瘍生検
対象は、スクリーニング時に腫瘍生検を受ける必要があるか、又は登録前の3ヶ月以内及び最後の全身療法若しくは標的化された療法後に進行後の生検が実施された場合、保存用の組織が提供され得る。保存用の組織が、中央検査機関の要件を満たすのに不十分な体積又は質のものである場合、生検は、スクリーニング中に実施される必要がある(この実施例における開示を参照のこと)。
【0337】
腫瘍生検もまた、7日目(+2日;又は臨床的に実行可能である限りすぐ)及び42日目(±2日)に実施されることになる。対象が試験中に再発が発生する場合、再発した腫瘍の生検を得て、中央検査機関に送るようにあらゆる試みがなされるべきである。
【0338】
生検は、RECIST 1.1分析に従って、測定可能であるが標的ではない病変から得るべきである。複数の生検が得られるとき、同様の組織からそれらを得る試みがなされるべきである。肝臓転移は一般にあまり望ましくない。骨生検及び他の脱灰組織は、下流のアッセイとの干渉のために許容されない。この試料は、CTX130の存在並びにDNA、RNA、タンパク質及び代謝産物の分析を含む腫瘍に固有の及びTME特異的なバイオマーカーについて分析される。
【0339】
6.1.8 患者報告アウトカム
4つの患者報告アウトカム(PRO)調査が、表26及び表27におけるスケジュールに従って施される:欧州癌治療研究機構(EORTC)QLQ-C30、EuroQol-5 Dimension-5 Level(EQ-5D-5L)、及びFACT-General(FACT-G)質問票。質問票は、臨床評価が実施される前に完了されるべきである(対象が最も慣れ親しんでいる言語で自記式)。
【0340】
EORTC QLQ-C30は、癌患者の生活の質を測定するために設計された質問票である。それは、5つの多項目機能尺度(身体、役割、社会、感情、及び認知機能)、3つの症状尺度(疲労、嘔気、痛み)、及び追加の単一症状項目(経済的影響、食欲不振、下痢、便秘、睡眠障害、及び生活の質)から構成される。EORTC QLQ-C30は、検証され、癌患者の中で広く使用されてきた(Wisloff et al.,(1996)Br J Haematol 92,604-613;Wisloff and Hjorth,(1997)Br J Haematol 97,29-37)。それは、4段階の尺度(1=全くない、2=少し、3=かなり、4=極度)でスコア化される。EORTC QLQ-C30書類はまた、アンカーを伴う7段階の尺度を使用する2つの包括的尺度を含有する(1=非常に悪い及び7=良好)。
【0341】
EQ-5D-5Lは、健康状態の一般的な尺度であり、移動性、自己ケア、日常生活、痛み/不快感、及び不安/抑うつを含む5つのドメインを評価する質問票と視覚的アナログスケールを含有する。
【0342】
FACT-G質問票は、癌治療を経る患者において健康に関連する生活の質を評価するために設計される。それは、身体、社会/家族、感情、及び機能のドメインに分けられる(Cella et al.,(1993)J Clin Oncol 11:570-79)。
【0343】
6.1.9 免疫エフェクター細胞関連脳症(ICE)評価
認知神経科学的な評価は、ICE評価を使用して実施される。ICE評価ツールは、CARTOX-10スクリーニングツールのわずかに改変されたバージョンであり、これは現在、受容性失語症に関する試験を含む(Neelapu et al.,(2018)Nat Rev Clin Oncol 15,47-62)。ICE評価は、認知機能の様々な領域:見当識、命名、命令の追従、記述、及び注意力(表29A)を試験する。
【0344】
【表40】
【0345】
ICE評価は、スクリーニング時、1日目のCTX130の投与前、並びに2日目、3日目、5日目、8日目、42日目、及び56日目に実施される。CNS症状が42日目を超えて持続する場合、ICE評価は、症状のグレード1又はベースラインへの回復までおよそ2日毎に実施されるように継続するべきである。変動性を最小限に抑えるために、可能な限り、ICE評価ツールの実施に精通しているか又は訓練を受けた同一の研究スタッフによって評価が実施されるべきである。
【0346】
6.1.10.臨床検査
臨床検査試料は、この試験に開示されるとおりの評価のスケジュールに従って回収され、分析されることになる。適用可能な現地の要件(例えば、臨床検査改善修正法案)を満たす現地の検査機関は、以下の表29Bに列挙される全ての試験を分析するために利用される。
【0347】
【表41】
【0348】
6.2 固形癌効果判定基準バージョン1.1(RECIST v1.1)
以下は、E.A.Eisenhauer,et al:New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(version 1.1).European Journal of Cancer 45(2009)228-247から適応させられる。
【0349】
ベースライン時の病変の分類
測定可能な病変
少なくとも1つの観点で正確に測定され得る病変。
●CT又はMRI(スライス厚5~8mm)によって評価されるときに最長径がスライス厚の2倍であり且つ少なくとも10mm以上の病変。
●胸部X線によって測定されるときに少なくとも20mmの最長径を有する病変。
●キャリパーによって測定されるときに10mm以上の最長径を有する表面型病変。
●CTによって測定されるときに15mm以上の短軸を有する悪性リンパ節。
注記:最も短い軸は悪性リンパ節に関する直径として使用され、全ての他の測定可能な病変に関しては最も長い軸が直径として使用される。
【0350】
測定不能な疾患
測定不能な疾患としては、測定可能とみなすには小さすぎる病変(短軸が10~14.9mmの結節を含む)及び胸水又は心膜液貯留、腹水、炎症性乳房疾患、軟髄膜疾患、皮膚又は肺のリンパ管性合併症、キャリパーで正確に測定できない臨床病変、再現性のある画像化技術によって測定不可能な身体検査によって同定される腹部腫瘤などの適切に測定不可能な疾患が挙げられる。
●骨疾患:骨疾患は、CT又はMRIによって評価され得る軟組織成分を除いて測定不能であり、ベースライン時の測定可能性の定義を満たす。
●以前の局所治療:以前に放射線照射された病変(又は他の局所治療にかけられた病変)は、それが治療の完了後に進行していない限り、測定不能である。
【0351】
正常部位
●嚢胞性病変:単純嚢胞は、悪性病変としてみなされるべきではなく、標的又は非標的疾患のいずれかとして記録されるべきではない。嚢胞性転移となると考えられる嚢胞性病変は、それらが上の特定の定義を満たす場合、測定可能な病変であり得る。非嚢胞性病変もまた存在する場合、これらは標的病変として好ましい。
●正常なリンパ節:短軸が10mm未満のリンパ節は正常とみなされ、測定可能又は測定不能な疾患のいずれかとして記録又は追跡されるべきではない。
【0352】
腫瘍評価の記録
疾患の全ての部位は、ベースライン時に評価されなければならない。ベースライン評価は、試験開始前のできるだけ近くになされるべきである。十分なベースライン評価のためには、必要な全てのスキャンが治療前28日以内になされる必要があり、全ての疾患が適切に記録されなければならない。ベースライン評価が不十分である場合、その後の状態は一般に判定保留であるはずである。
【0353】
標的病変
1つの臓器当たり最大2つの病変まで、全ての関連する臓器を代表する合計5つの病変までの全ての測定可能な病変が、ベースライン時に標的病変として同定されるべきである。標的病変は、サイズ(最長の病変)及び正確な反復測定に関する適合性に基づいて選択されるべきである。短軸が記録されるべきである病理学的リンパ節の場合を除いて、各病変に関する最長径を記録する。ベースライン時の全ての標的病変に関する直径(非リンパ節病変に関しては最長径、リンパ節病変に関しては短軸)の合計は、試験時に実施される評価との比較のための基盤である。
●2つの標的病変が合体している場合、合体した質量の測定値が使用される。大きい標的病変が分裂している場合、部分の合計が使用される。
●小さくなる標的病変に関する測定値は、記録され続ける必要がある。標的病変が小さくなりすぎて測定できない場合、病変が消失したとみなされる場合は0mmが記録されるべきであり;それ以外の場合は、5mmのデフォルト値が記録されるべきである。
注記:リンパ節病変が10mm未満(正常)に縮小するとき、実測値が依然として記録されるべきである。
【0354】
非標的疾患
全ての測定不能な疾患は、標的ではない。標的病変として同定されない全ての測定可能な病変もまた、非標的疾患として含まれる。測定値は必要ではないが、評価は、存在しない、判定保留、存在する/増加していない、増加したとして説明される。1つの臓器における複数の非標的病変が、症例報告書上の単一の項目として記録され得る(例えば、「複数の拡大した骨盤リンパ節」又は「複数の肝臓転移」)。
【0355】
各評価時の客観的応答状態。
疾患部位は、一貫した造影剤の投与及びスキャンのタイミングを含む、ベースラインと同じ手法を使用して評価されなければならない。変更が必要な場合は、放射線科医と相談して、代替が可能かどうかを判断しなければならない。そうでない場合、その後の客観的な状態は判定保留である。
【0356】
標的疾患
●完全奏効(CR):リンパ節疾患を除く全ての標的病変の完全な消失。全ての標的リンパ節は、正常サイズに縮小しなければならない(短軸<10mm)。全ての標的病変が評価されなければならない。
●部分奏効(PR):ベースラインより全ての測定可能な標的病変の直径の合計の30%以上の縮小。短い直径が標的リンパ節に関する合計において使用されるが、全ての他の標的病変に関する合計においては、最長径が使用される。全ての標的病変が評価されなければならない。
●安定:CR、PR又は進行の対象にはならない。全ての標的病変が評価されなければならない。安定は、合計が最下点から20%未満しか増大しない稀な場合にのみPRに続く可能性があるが、以前に記録された30%の縮小はもはや維持されないほどである。
●客観的進行(PD):測定可能な標的病変の直径の合計が観察された最小の合計より20%増大し(療法中に合計の減少が観察されない場合はベースラインと比較して)、最小で5mmの絶対的な増大を有する。
●判定保留。進行が記録されておらず、且つ
○1つ以上の測定可能な標的病変が評価されていないか
○又は使用される評価方法がベースライン時に使用されたものと一貫していなかったか
○又は1つ以上の標的病変を正確に測定できないか(例えば、小さすぎて測定できないためでない限り見えにくい)
○又は1つ以上の標的病変が切除されたか又は放射線照射され、再発しなかったか又は増大しなかった。
【0357】
非標的疾患
●CR:全ての非標的病変の消失及び腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節が「正常な」サイズにならなければならない(<10mm短軸)。
●非CR/非PD非標的病変の残存及び/又は正常範囲を超える腫瘍マーカーレベル。
●PD:先在している病変の明白な進行。一般に、全体的な腫瘍量は、療法の中断に値するほど十分に増大しなければならない。標的疾患におけるSD又はPRの存在下で、非標的疾患における明白な増大に起因する進行は稀であるはずである。
●判定保留:進行が決定されておらず、1つ以上の非標的部位が評価されなかったか又は評価方法がベースライン時に使用されたものと一貫していなかった。
【0358】
新規の病変
いずれかの新規の明白な悪性病変の出現は、PDを示す。例えば、そのサイズの小ささのために、新規の病変が不確かである場合、継続的な評価が原因を明らかにする。反復評価により病変が確認された場合、進行は、最初の評価日に記録されなければならない。以前にスキャンされなかった領域で同定される病変は、新規の病変であるとみなされる。
【0359】
補助的な調査
●CRの判定が、サイズは縮小したが完全に消失しなかった残存病変に依存する場合、残存病変を生検又は穿刺吸引で調査することが推奨される。疾患が同定されない場合、客観的な状態はCRである。
●進行の判定が壊死による増加の可能性のある病変に依存する場合、病変は、状態を明らかにするために生検又は穿刺吸引で調査され得る。
【0360】
自覚的進行
疾患進行の客観的なエビデンスを伴わずに治療の中断を必要とする対象は、腫瘍評価CRF上でPDとして報告されるべきではない。治療の中断後も客観的な進行を記録するように、あらゆる試みがなされるべきである(表30を参照のこと)。
【0361】
【表42】
【0362】
非標的疾患のみを有する患者の登録に関しては、表31が使用される。
【0363】
【表43】
【0364】
7.試験治療
7.1 リンパ球枯渇化学療法
全ての対象は、CTX130の注入の前にLD化学療法を受ける。
LD化学療法は、
・3回の投与に関して1日当たりフルダラビン30mg/m2 IV及び
・3回の投与に関して1日当たりシクロホスファミド500mg/m2 IV
からなる。
【0365】
腎機能の中程度の障害(クレアチニンクリアランス 50 70ml/分/1.73m)を有する成人対象は、少なくとも20%又は現地の添付文書に従って減らされたフルダラビンの用量を受容するべきである。
【0366】
両方の薬剤は、同じ日に開始され、3日間連続して投与される。対象は、試験登録の7日以内にLD化学療法を開始するべきである。LD化学療法は、CTX130注入前に少なくとも48時間(ただし7日以内)で完了されなければならない。
【0367】
LD化学療法は、以下の徴候又は症状のいずれかが存在する場合に遅延されることになる:
・LD化学療法に関連するAEの潜在的リスクを増大させる臨床状態の著しい悪化。
・飽和レベル>91%を維持するために酸素補給を必要とすること。
・新たな制御されない心不整脈。
・血管収縮薬の支援を必要とする低血圧。
・活動性感染症:治療に応答しない細菌、真菌、又はウイルスに関する血液培養が陽性であるか、又は活動性感染症が強く疑われるが培養は陰性である。
- 以前に血液細胞の注入を伴わずに血小板数≦100,000/mm3、好中球絶対数≦1500/mm3、及びヘモグロビン(HgB)≦9g/dL
・グレード≧2の急性神経毒性。
【0368】
リンパ球枯渇の目的は、注入後にCAR T細胞の大幅な増殖を可能にすることである。いくつかの自系CAR T細胞治験では、様々な用量にわたるフルダラビン及びシクロホスファミドからなるLD化学療法を利用することに成功している。LD化学療法を使用するための論理的根拠は、インターロイキン7(IL-7)及びインターロイキン15(IL-15)などのサイトカインの有効性を増強する制御性T細胞及び他の「サイトカインシンク」として機能する免疫系の競合要素を排除することにある(Dummer et al.,(2002)J Clin Invest 110,185-192;Gattinoni et al.,(2005)J Exp Med 202,907-912)。さらに、ナイーブT細胞の総数が特定の閾値未満に減少すると、ナイーブT細胞が増殖し、メモリー様T細胞に分化し始めると考えられている(Dummer et al.,(2002)J Clin Invest 110,185-192)。この治験実施計画書において使用される提案されたLD化学療法投与量は、アキシカブタジンシロルーセルの承認申請目的の臨床試験において使用される用量と一貫している。
【0369】
7.2 CTX130の投与
CTX130は、CRISPR-Cas9で改変された同種異系T細胞からなり、凍結保存溶液(CryoStor CS5)中で懸濁され、6mlの注入バイアル中で供給される。CTX130の均一用量(%CART細胞に基づく)は、単回のIV注入として投与される。全体的な用量は、複数のバイアルに含有され得る。解凍して20分以内に各バイアルの注入が行われるべきである。注入は、中心静脈カテーテルを通して行われることが好ましいはずである。白血球フィルターを使用してはならない。
【0370】
CTX130注入の開始前に、現場の薬局は、治療される特定の対象毎に2用量のトシリズマブ及び緊急用具が確実に利用できるようにしなければならない。対象は、CTX130注入のおよそ30~60分前の経口アセトアミノフェン(すなわち、パラセタモール又は現場の処方集に従うその同等品)及びIV又は経口のジフェンヒドラミン塩酸塩(又は現場の処方集に従う別のH1-抗ヒスタミン)を用いて現場の実務標準に従って前投薬されるべきである。予防的な全身性のコルチコステロイドは、それらがCTX130の活性に支障をきたすため、投与されるべきではない。
【0371】
CTX130の注入は、以下の徴候又は症状のいずれかが存在する場合に遅延され得る:
・新たな活動性の制御されない感染症。
・増大した毒性のリスクに対象を置くLD化学療法の開始前の状態と比較した臨床状態の悪化。
・グレード≧2の急性神経毒性。
【0372】
CTX130は、LD化学療法の完了後に少なくとも48時間(ただし7日以内)投与される。
【0373】
7.3 CTX130の注入後のモニタリング
CTX130注入の後、対象の生命徴候は、注入後及びいずれかの潜在的な臨床症状の回復まで2時間の間30分毎にモニターされるべきである。
【0374】
パートAの対象は、CTX130注入後に最小で7日間入院させられる。パートA及びパートBの両方において、対象は、CTX130注入後の少なくとも28日間、治験現場の近辺(すなわち、1時間の移動時間)に留まる必要がある。急性のCTX130関連毒性の管理は、試験現場でのみ行われるべきである。
【0375】
対象は、評価のスケジュールに従ってサイトカイン放出症候群(CRS)、腫瘍溶解症候群(TLS)、移植片対宿主病(GvHD)、及び他の有害事象(AE)の徴候についてモニターされる(表26及び表27)。CAR T細胞関連毒性の管理に関するガイドラインは、第8節に記載される。対象は、CTX130に関連する非造血系の毒性(例えば、発熱、低血圧、低酸素、進行中の神経毒性)がグレード1に戻るまで入院したままでなければならない。対象は、医療管理者によって必要であるとみなされる場合、さらに長い期間入院したままである可能性がある。
【0376】
7.4 以前及び同時の薬物療法
7.4.1 許容される薬物療法及び手順(同時の治療)
本明細書に記載される禁止薬物を除く感染症を治療するためのIV抗生物質、エリスロポエチン類似体、血液成分などを含む最適な医療のために必要な支援手段が、試験期間全体にわたって与えられる。
【0377】
処方箋及び非処方箋薬物療法、並びに医療処置を含む全ての同時の療法が、CTX130注入後の3ヶ月にわたって署名されたインフォームドコンセントの日から記録されなければならない。CTX130注入後の最初の3ヶ月間、以下の選択された同時の薬物療法のみが収集される:ワクチン接種、抗癌治療(例えば、化学療法、放射線照射、免疫療法)、免疫抑制剤(ステロイドを含む)、及び任意の治験薬。
【0378】
7.4.2 禁止される/制限される薬物療法及び処置
以下の薬物療法は、下記のとおりの一定の試験期間に禁止される:
●登録前の28日以内及びCTX130注入後の3ヶ月
- 生ワクチン
- 漢方医学の一部としての漢方薬又は市販の漢方薬以外のもの
●新規の抗癌療法の開始までの試験全体にわたって
- CRS又は免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の治療のために本明細書に記載されるとおりに推奨される場合或いは以前にメディカルモニターと協議し承認された場合を除いて、いずれかの免疫抑制療法。
- 薬理学的用量のコルチコステロイド療法(>10mg/日のプレドニゾン又は同じ用量の他のコルチコステロイド)及び他の免疫抑制剤は、新たな毒性の治療のため又は本明細書に記載されるとおりのCTX130と関連するCRS又は神経毒性の管理の一部として医学的に必要を示されない限り、CTX130投与後に回避されるべきである。
- 疾患進行前のLD化学療法以外の任意の抗癌療法(例えば、化学療法、免疫療法、標的化療法、放射線照射、又は他の治験薬)症状管理のための対症的な放射線療法は、範囲、線量、及び部位に応じて許容され、その判断に関しては定義され、メディカルモニターに報告されるべきである。
●CTX130注入後の最初の1ヶ月以内の禁止事項
- CRSの症状悪化の可能性による顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)CTX130注入後の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与には注意が必要であり、投与前にメディカルモニターに相談しなければならない。
●CTX130注入後の最初の28日以内の禁止事項(DLT評価期間)
- 解熱剤(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン)を用いた対象による自己薬物療法。
【0379】
8.毒性管理
8.1 一般的なガイダンス
LD化学療法の前に、感染症予防(例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤)が、免疫無防備状態の状況のccRCC患者のために施設の標準治療に従って開始されるべきである。
【0380】
CTX130注入後、少なくとも28日間は対象を注意深くモニターしなければならない。著しい毒性が、自系CAR T細胞療法により報告されている。
【0381】
自系CD70 CAR T細胞療法での以前の経験に基づいて、以下の一般的な推奨事項が提供される:
●発熱はサイトカイン放出症候群(CRS)の最も一般的な初期症状である。しかしながら、対象は最初の症状として脱力感、低血圧又は錯乱を示す場合もある。
●CRSの診断は、臨床検査値ではなく臨床症状に基づいて行われるべきである。
●CRSに固有の管理に反応を示さない対象では、常に敗血症及び抵抗性感染症を考慮する。抵抗性又は緊急を要する細菌感染症並びに真菌又はウイルス感染症について対象を継続的に評価しなければならない。
●CAR T細胞注入後、CRS、HLH、及びTLSが同時に発生する可能性がある。全ての状態の徴候及び症状について対象を一貫して経過観察し、適切に管理しなければならない。
●神経毒性は、CRSの発症時、CRSの回復中、又はCRSの回復後に発生する可能性がある。神経毒性の等級分け及び管理は、CRSとは別々に実施される。
●トシリズマブは指示を受けたときから2時間以内に投与されなければならない。
【0382】
自系CAR T細胞で観察される毒性に加えて、GvHDの徴候が、CTX130の同種異系の性質のために注意深くモニターされる。
【0383】
CTX130の安全性プロファイルは、試験全体にわたって継続的に評価される。
【0384】
8.2 毒性に特有のガイダンス
8.2.1 CTX130注入に関連する反応
投与後12時間以内に最も一般的に発生する一過性の発熱、悪寒、及び/又は嘔気を含む注入に関連する反応が、自系T細胞治験において報告されている。CTX130は、5%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する十分に確立された凍結保存媒体であるCryoStor CS5とともに製剤化される。DMSOと関連するヒスタミン放出は、嘔気、嘔吐、下痢、潮紅、発熱、悪寒、頭痛、呼吸困難、又は発疹などの有害作用をもたらす可能性がある。最も重度の症例において、それはまた、気管支痙攣、アナフィラキシー、血管拡張及び低血圧、並びに精神状態の変化を引き起こす可能性がある。
【0385】
輸注反応が発生した場合、必要に応じてアセトアミノフェン(パラセタモール)及びジフェンヒドラミン塩酸塩(又は別のH1-抗ヒスタミン)が、CTX130注入後の6時間毎に繰り返し与えられ得る。
【0386】
対象にアセトアミノフェンによって緩和されない発熱が続く場合、必要に応じて非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が処方され得る。全身性ステロイドは、この介入によってCAR T細胞に有害な影響を及ぼす可能性があるため、生命を脅かす緊急事態の場合を除いて投与されるべきではない。
【0387】
8.2.2 感染症予防及び発熱反応
感染症予防は、施設の標準治療に従って免疫無防備状態のccRCC患者に対して管理されるべきである。
【0388】
発熱反応がある場合、感染症の評価を開始し、治療する医師が医学的に指示し、決定されたとおりの抗生物質、輸液及び他の支持療法によって対象を適切に管理しなければならない。発熱が持続する場合、対象の医学的管理の全体を通してウイルス及び真菌の感染を考慮すべきである。CTX130注入後に対象が敗血症又は全身性菌血症を発症した場合、適切な培養及び医学的管理を開始しなければならない。さらに、CTX130注入後の28日以内に発熱したいずれの場合にもCRSを考慮に入れるべきである。
【0389】
ウイルス性脳炎(例えば、ヒトヘルペスウイルス[HHV]-6脳炎)は、CTX130を受容した後に認知神経科学的症状を経験する対象のための鑑別診断において考慮されなければならない。腰椎穿刺(LP)は、いずれかのグレード3以上の認知神経科学的毒性に関して必要であり、グレード1及びグレード2の事象に関して強く推奨される。腰椎穿刺が実施される場合は常に、感染症研究班が、(最小でも)以下の評価からのデータを調査することになる:HSV 1及び2、エンテロウイルス、ヒトパレコウイルス、VZV、CMV、及びHHV-6に関する定量的試験。腰椎穿刺は、症状発症後48時間以内に実施されなければならず、対象を適切に管理するために、LPから4日以内に感染症研究班からの結果が入手可能にならなければならない。
【0390】
8.2.3 腫瘍溶解症候群(TLS)
CAR T細胞療法を受ける対象は、腫瘍細胞が自発的又は療法に応答してその内容物を血流に放出して、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、及び血液尿素窒素の上昇という特徴的所見をもたらすときに発生するTLSのリスクが高まる可能性がある。これらの電解質及び代謝障害は、腎不全、心不整脈、てんかん発作、及び多臓器不全に起因する死を含む臨床的な毒性作用に進行する可能性がある(Howard et al.,2011)。TLSは、血液悪性腫瘍及び固形腫瘍において報告されている。ほとんどの固形腫瘍は、TLSのリスクが低い。血液悪性腫瘍、特に、TLSのリスクが高い(>5%)ALL、急性骨髄性白血病、及びCLLなどの白血病型、並びに非皮膚性T細胞リンパ腫、特に、成人T細胞白血病/リンパ腫及びDLBCLを有する患者において最も頻繁に観察されている(Coiffier et al.,2008)。追加のリスク因子としては、ULNより高い乳酸デヒドロゲナーゼレベル、高い腫瘍量、及び高い複製指数を有する腫瘍が挙げられる。腎機能障害を有する患者もまた、TLSを発症するリスクが高い。
【0391】
LD化学療法の開始からCTX130注入後28日までは、臨床検査及び症状によりTLSについて対象を注意深くモニターする必要がある。スクリーニング中及びLD化学療法の開始前に、TLSのリスクが増大した対象は、予防的にアロプリノール(又はフェブキソスタットなどのアロプリノールでない代替薬)及び/又はラスブリカーゼを受容するべきであり、経口/IVでの水分補給を増やす必要がある。CTX130注入の28日後又はTLSのリスクが過ぎ去ってから予防を中止することができる。
【0392】
現場は、施設の標準治療により又は公表されたガイドラインに従ってTLSをモニターし、TLSを治療するべきである(Cairo and Bishop,(2004)Br J Haematol,127,3-11)。ラスブリカーゼの投与を含むTLSの管理は、臨床的に必要である場合、直ちに開始すべきである。
【0393】
8.2.4 サイトカイン放出症候群(CRS)
CRSは、CAR T細胞を含む免疫療法と関連する毒性であり、サイトカイン、特に、IL-6及びIL-1の放出により引き起こされる(Norelli et al.,(2018)Nat Med 24(6):739-748)。CRSは、CARが標的抗原に結合したことに反応して免疫系が過剰に活性化するために生じるものであり、急激なT細胞の刺激及び増殖によりマルチサイトカインの上昇がもたらされる(Frey et al.,(2014)Blood 124,2296);Maude et al.,(2014)Cancer J 20,119-122)。CRSは、CD19-、BCMA-、CD123-、及びメソセリン-指向性CAR T細胞、並びに抗NY-ESO 1及びMART 1-標的化TCR改変T細胞を含む抗原標的化薬剤と無関係の臨床試験において観察されている(Frey et al.,2014;Hattori et al.,2019;Maude et al.,2018;Neelapu et al.,2017;Raje et al.,2019;Tanyi et al.,2017)。CRSは、同種異系CAR T細胞療法による初期相試験においても観察されている自系CAR T細胞療法で報告される主要な毒性である(Benjamin et al.,2018)。
【0394】
CRSの臨床症状は、軽度であり、体温の上昇に限定される場合があるか又は1つ若しくは複数の臓器系(例えば、心臓、胃腸管、肺、皮膚、中枢神経)及び複数の症状(例えば、高熱、疲労、食欲不振、嘔気、嘔吐、発疹、低血圧、低酸素、頭痛、せん妄、錯乱)を含み得る。CRSは、生命を脅かす場合がある。臨床的には、CRSは、全身性の感染症、又は重症の場合、敗血症性ショックと間違われる場合がある。多くの場合、最も早い徴候は体温の上昇であり、これは直ちに鑑別診断の精密検査及び適切な治療の時宜を得た開始を促すべきである。
【0395】
CRSの管理の目的は、CTX130の抗癌効果の可能性を維持しながら、生命を脅かす状態及び続発症を予防することである。症状は通常、血液悪性腫瘍における自系CAR T細胞療法の1~14日後に発生する。
【0396】
CRSは、臨床検査での測定値ではなく、臨床症状に基づいて同定され、治療されるべきである。CRSが疑われる場合、等級分けは、米国移植細胞治療学会(ASTCT;以前は米国骨髄移植学会議、ASBMTとして知られる)のコンセンサス勧告(表32A;Lee et al.,2019)に従って適用されるべきであり、管理は、公表されているガイドラインから適応される表32Bの勧告に従って実施されるべきである(Lee et al.,2014;Lee et al.,2019)。したがって、神経毒性の等級分けは、ICANSに関するASTCT判定基準により整列させられることになる。
【0397】
【表44】
【0398】
【表45】
【0399】
【表46】
【0400】
CRSの期間全体を通して、対象に解熱剤、IV輸液及び酸素からなる支持療法を施す必要がある。グレード≧2のCRSを示す対象は、心電図テレメトリー及びパルスオキシメトリーによって継続的にモニターする必要がある。グレード3のCRSを示す対象には、心機能を評価するために心エコー像の実施を検討する。グレード3又は4のCRSに関しては、集中治療の支持療法を検討する。重度のCRSの場合、症状(例えば、発熱、低血圧、低酸素)が類似しているため、潜在的な感染症の可能性が考慮され得る。CRSの回復は、発熱(体温≧38℃)、低酸素、及び低血圧の回復として定義される(Lee et al.,(2018)Biol Blood Marrow Transplant 25(4):625-638)。
【0401】
低血圧及び腎不全
CAR T細胞療法では、低血圧及び腎不全が報告されており、施設の診療ガイドラインに従って生理食塩水をIVでボーラス投与することによって治療する必要がある。適切であれば、透析を考慮する必要がある。
【0402】
8.2.5 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)
神経毒性は、自系CAR T細胞療法で治療されるB細胞悪性腫瘍を有する対象において記録されている。したがって、対象は、現在の治験においてCAR T細胞療法と関連する神経毒性の徴候及び症状についてモニターされることになる。神経毒性は、CRSの発症時、CRSの回復中、又はCRSの回復後に発生する可能性があり、その病態生理は不明である。最近のASTCT(以前はASBMTとして知られる)コンセンサスはさらに、ICANSを内在性の若しくは注入されたT細胞及び/又は他の免疫エフェクター細胞の活性化又は関与をもたらす任意の免疫療法の後にCNSに関係する病的プロセスによって特徴付けられる障害として定義した(Lee et al.,2019)。神経毒性の病態生理は不明のままであるが;サイトカイン放出、CAR TのCSFへの輸送、及び血液脳関門の透過性の増大の組み合わせに起因する可能性があると考えられている(June et al.,2018)。
【0403】
徴候及び症状は進行性である可能性があり、失語症、意識レベルの変化、認知技能の機能障害、運動麻痺、てんかん発作、及び脳浮腫を含み得るが、これらに限定されない。ICANSの等級分け(表34)は、以前に自系CAR T細胞の治験で使用されたCAR T cell-therapy-associated TOXicity(CARTOX)ワーキンググループの判定基準に基づいて開発された(Neelapu et al.,(2018)Nat Rev Clin Oncol 15,47-62)。ICANSでは、ICE(免疫エフェクター細胞関連脳症)評価ツール(表29)と呼ばれる改変されたツールを使用することにより、意識レベル、てんかん発作の有無、運動所見、脳浮腫の有無の評価及び神経性領域の全体的な評価を組み入れている。
【0404】
任意の新たに発症した神経毒性の評価は、神経学的検査(ICE評価ツールを含む、表29)、脳核磁気共鳴画像法(MRI)、及び臨床的に必要であればCSFの検査を含むべきである。神経毒性の間に実施される腰椎穿刺については、CSF試料は、サイトカイン分析及びCTX130の存在に関して中央検査機関に送られるべきである。余分な試料(入手可能であれば)は、探索的研究のために保管されることになる。感染原因は、可能な限り腰椎穿刺を実施することによって除外されるべきである(特に、グレード3又は4のICANSを有する対象に関して)。脳MRIが可能ではない場合、脳内出血を除外するために、全ての対象に非造影コンピューター断層撮影(CT)スキャンを受けさせる必要がある。臨床的に必要であれば、脳波も考慮に入れる必要がある。重症例では、気道保護のために気管内挿管が必要になる場合がある。
【0405】
CTX130注入後の少なくとも28日間又は神経学的症状が回復した時点で、特に、てんかん発作の病歴を有する対象に非鎮静性型の抗てんかん発作予防(例えば、レベチラセタム)が検討され得る(抗てんかん発作薬物療法が有害な症状の要因となっていない限り)。グレード≧2のICANSを示す対象は、心電図テレメトリー及びパルスオキシメトリーによって継続的にモニターする必要がある。重度又は生命を脅かす神経毒性に対しては、集中治療の支持療法を施すべきである。神経内科の受診を常に考慮すべきである。血小板及び凝固障害の徴候をモニターし、脳内出血のリスクを低減させるために血液製剤を適切に輸液すること。表34は、神経毒性の等級分けを提供し、表35は、管理ガイダンスを提供する。
【0406】
【表47】
【0407】
【表48】
【0408】
発熱状態又は化学療法後に生じる可能性のある頭痛は非特異的症状である。頭痛単独では必ずしもICANSの症状ではない場合もあり、さらなる評価を行う必要がある。体調偏移及び筋力低下から生じる脱力感又は平衡感覚障害は、ICANSの定義から除外されている。同様に、これらの対象では、随伴する浮腫の有無にかかわらず、凝固障害によって頭蓋内出血が発生する可能性があり、ICANSの定義からも除外される。これらの及び他の神経毒性は、CTCAE v5.0に従って記録しなければならない。
【0409】
8.2.6 血球貪食性リンパ組織球症(HLH)
HLHは、自系CAR T細胞による治療の後に報告されている(Barrett et al.,(2014)Curr Opin Pediatr,26,43-49;Maude et al.,(2015)Blood,125,4017-4023;Porter et al.,(2015)Sci Transl Med,7,303ra139;Teachey et al.,(2013)Blood,121,5154-5157)。HLHは、活性化T細胞からのサイトカインの産生によって過剰なマクロファージの活性化をもたらす、CAR T細胞注入後の炎症反応の結果として生じる臨床症候群である。HLHの徴候及び症状には、発熱、血球減少、肝脾腫、高ビリルビン血症を伴う肝障害、フィブリノーゲンが著しく低下する凝固障害並びにフェリチン及びC反応性タンパク質(CRP)の顕著な上昇が含まれ得る。神経学的所見も観察されている(Jordan et al.,(2011)Blood,118,4041-4052;La Rosee,(2015)Hematology Am Soc Hematol Educ Program,190-196。
【0410】
CRS及びHLHは、臨床的特徴及び病態生理が重複した、類似する臨床症候群を有し得る。HLHは、CRSの発症時又はCRSが回復しているときに発生する可能性が高い。他のCRSのエビデンスの有無にかかわらず、原因不明の肝機能検査値の上昇又は血球減少がある場合、HLHを考慮すべきである。CRP及びフェリチンをモニターすることは、診断の支援し、臨床経過を明確にし得る。可能であれば、余分な骨髄試料は通例の実施の後に中央検査機関に送られるべきである。
【0411】
HLHが疑われる場合、
●フィブリノーゲンを含む凝固パラメーターを頻繁にモニターする。これらの試験は、評価スケジュールで指示されたものよりも頻繁に行われてもよく、検査所見に基づいて頻度を促進する必要がある。
●出血のリスクを低減するため、フィブリノーゲンは≧100mg/dLに維持しなければならない。
●血液製剤によって凝固障害を補正しなければならない。
●CRSとの重複を考慮し、表32BのCRS治療ガイダンスに従って適切なモニタリング強度でグレード3のCRSに従って管理すること。HLHの追加の治療に関する施設のガイドラインに従うこと。
【0412】
8.2.7 血球減少
場合によっては、CAR T細胞注入後に28日を超えて続くグレード3の好中球減少症及び血小板減少症が、自系CAR T細胞製品で治療された対象において報告されている(Kymriah US prescribing information[USPI],2017;Raje et al.,(2019)N Engl J Med 380,1726-37;Yescarta USPI,2017)。したがって、CTX130を受容する対象は、このような毒性についてモニターされ、適切な支援を受けなければならない。血小板及び凝固障害の徴候についてモニターし、内出血のリスクを低減させるために血液製剤を適切に輸液すること。長期間の好中球減少症の任意の対象に対して抗微生物及び抗真菌予防を検討しなければならない。
【0413】
活性化T及びBリンパ球上でのCD70の一過性の発現に起因して、ウイルス再活性化などの日和見感染症が発生する可能性があり、臨床症状が生じたときは考慮する必要がある。
【0414】
用量漸増の間、G-CSFは、グレード4のCTX130注入後の好中球減少症の場合に考慮され得る。コホート拡大の間、G-CSFは、医師の判断に従って注意して投与され得る。
【0415】
8.2.8 移植片対宿主病(GvHD)
GvHDは同種HSCTの状態において見られるものであり、免疫適格性のドナーのT細胞(移植片)がレシピエント(宿主)を異物と認識した結果として生じるものである。その後の免疫反応では、ドナーのT細胞が活性化し、異物である抗原保有細胞を排除するためにレシピエントを攻撃する。GvHDは、同種HSCTからの時間及び臨床症状の両方に基づいて、急性症候群、慢性症候群及びオーバーラップ症候群に分けられる。急性GvHDの徴候は、斑状丘疹状皮疹;胆汁うっ滞をもたらす小胆管の損傷に起因する黄疸を伴う高ビリルビン血症;悪心、嘔吐及び食欲不振;並びに水様性下痢又は血性下痢及び痙性腹痛を含み得る(Zeiser and Blazar,(2017)N Engl J Med,377,2167-2179)。
【0416】
提案されている臨床試験を裏付けるために、非臨床の優良試験所基準(GLP)に準拠したGvHD及び忍容性試験が、2つのIV用量:マウス当たり4×10個のCTX130細胞の高用量(およそ1.6×10個の細胞/kg)及びマウス当たり2×10個の細胞(およそ0.8×10個の細胞/kg)の低用量で治療される免疫無防備状態のマウスにおいて実施された。両方の用量レベルが、体重に正規化した場合、提案された最も高い臨床用量を10倍を超えて上回る。CTX130で治療されたどのマウスも、12週の試験の間に致死的なGvHDを発症しなかった。剖検時に、単核細胞の浸潤が、一部の動物の腸間膜のリンパ節及び胸腺において観察された。最小から軽度の血管周囲の炎症もまた、一部の動物の肺において観察された。これらの所見は、軽度のGvHDと一貫しているが、これらのマウスにおける臨床症状において顕在化しなかった。
【0417】
さらに、TRAC遺伝子座でのCARの挿入の特異性により、T細胞がCAR+及びTCR+の両方である可能性は極めて低い。残りのTCR+細胞を、製造プロセス中に抗TCR抗体カラムの免疫親和性クロマトグラフィーにより除去し、最終生成物中≦0.4%のTCR+細胞を得る。全ての用量レベルに1×10個のTCR+細胞/kgの用量制限が課せられる。この制限値は、ハプロタイプ一致ドナーによるSCT中に重度のGvHDを引き起こすことができる同種異系細胞の数に関して公表された報告書に基づく(Bertaina et al.,(2014)Blood,124,822-826)。この特定の編集、精製、及び厳格な製品リリース基準によれば、CTX130後のGvHDのリスクは低いはずであるが、真の発生率は未知である。しかしながら、CAR T細胞の増殖は抗原に促進されるものであり、且つTCR-細胞でのみ起こる可能性が高いことを考えると、TCR+細胞の数が注入された数を上回り、認識可能な程度まで増加する可能性は低い。
【0418】
GvHDの診断及び等級分けは、表36に概説されるとおり、公表されている判定基準(Harris et al.,(2016)Biol Blood Marrow Transplant,22,4-10)に基づくべきである。
【0419】
【表49】
【0420】
全体的なGvHDのグレードは、最も重度の標的臓器障害に基づいて決定され得る。
●グレード0:ステージ1~4の臓器がまったくない。
●グレード1:肝臓、上部GI又は下部GI障害を伴わないステージ1~2の皮膚。
●グレード2:ステージ3の発疹及び/又はステージ1の肝臓及び/又はステージ1の上部GI及び/又はステージ1の下部GI。
●グレード3:ステージ0~3の皮膚及び/又はステージ0~1の上部GIを伴うステージ2~3の肝臓及び/又はステージ2~3の下部GI。
●グレード4:ステージ0~1の上部GIを伴うステージ4の皮膚、肝臓又は下部GI障害。
【0421】
感染症及び薬剤に対する反応性などの、GvHDを模倣する可能性のある潜在的な交絡因子を除外しなければならない。確認のため、治療を開始する前又は治療を開始した直後に皮膚生検及び/又はGI生検を入手する必要がある。肝臓障害がある場合、臨床的に実行可能であれば、肝生検を試みるべきである。
【0422】
急性GvHDの管理に関する推奨事項は、表37で概説される。治験終了時に対象間の比較ができるように、これらの推奨事項は、それらに従うことによって対象を危険にさらす恐れのある特定の臨床シナリオを除いて追従され得る。
【0423】
【表50】
【0424】
より重度のGvHDの対象に対して、第二選択療法を開始するという判断を直ちに下さなければならない。例えば、GvHDの症状が進行して3日後、グレード3のGvHDが持続して1週間後、又はグレード2のGvHDが持続して2週間後に二次療法が指示され得る。高用量のグルココルチコイド治療に忍容性のない可能性のある対象には、より早期の第二選択全身療法が指示され得る(Martin et al.,(2012)Biol Blood Marrow Transplant,18,1150-1163)。二次療法の選択及び開始時期は、臨床的判断及び現地における慣行に基づいてもよい。
【0425】
難治性の急性GvHD又は慢性GvHDの管理は、施設のガイドラインに従ってもよい。免疫抑制剤(ステロイドを含む)によって対象を治療する場合、現地のガイドラインに従って抗感染症予防対策を導入する必要がある。
【0426】
8.2.9.オンターゲット・オフ腫瘍毒性
活性化T及びBリンパ球、樹状細胞に対するCTX130の活性
活性化T及びBリンパ球は、一過的にCD70を発現し、樹状細胞、及び胸腺上皮細胞は、一定の程度までCD70を発現する。したがって、これらの細胞は、活性化CTX130に対する標的となる可能性がある。感染症及び血球減少の管理は、本明細書で開示される。
【0427】
骨芽細胞に対するCTX130の活性
CTX130の活性は、ヒト初代骨芽細胞の細胞培養における非臨床試験において検出された。したがって、骨代謝回転は、カルシウムレベル並びに骨形成の評価において最も有用なマーカーであるとみなされる2つの骨芽細胞特異的マーカーであるI型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(PINP)及び骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)を介してモニターされることになる(Fink et al.,2000)。血清中の両方のマーカーの評価に関する標準化されたアッセイが利用可能である。これらのペプチドマーカーの濃度は、骨芽細胞の活性及び新たな骨コラーゲンの形成を反映する。
【0428】
PINP及びBSAPは、本明細書に開示されるとおりの試験のスクリーニング時、ベースライン、7日目、15日目、22日目、及び28日目、並びに3ヶ月目、6ヶ月目、及び12ヶ月目に中央検査機関の評価により測定されることになる。試料は、骨代謝回転に対する概日リズムの強い影響のために指定の回収日の同じ時間(±2時間)に回収されることになる。
【0429】
腎尿細管様上皮に対するCTX130の活性
腎尿細管様上皮細胞に対するCTX130の活性は、初代ヒト腎臓上皮におけるCTX130の非臨床試験において検出された。したがって、対象は、48時間にわたって少なくとも0.3mg/dL(26.5μmol/L)及び/又は前の7日以内のベースライン値の1.5倍以上の血清クレアチニンの増加についてモニターすることによって、急性尿細管損傷に関してモニターされる必要がある。血清クレアチニンは、本明細書に開示されるとおり、CTX130注入後の最初の7日間毎日、治療の8日目~15日目に1日おきに、続いて28日目まで1週間に2回評価されることになる。急性尿細管損傷が疑われる場合、尿沈渣分析及び尿中のナトリウムの排泄分画を含む追加の試験が実施される必要があり、腎臓病専門医による療法指導が開始される必要がある。
【0430】
8.2.10.制御されないT細胞増殖
CAR T細胞によるインビボでの標的腫瘍抗原の認識時に、活性化及び増殖が観察されている(Grupp et al NEJM 2013)。自系CAR T細胞は、末梢血液、骨髄、脳脊髄液、腹水及び他の区画において検出されている(Badbaran et al Cancer 2020)。対象が制御されないT細胞増殖の徴候を発症する場合、臨床研究からの試料は、T細胞の起源を決定するハプロタイピングのために中央検査機関に提出される必要がある。
【0431】
9.安全性の評価
9.1 有害事象パラメーターの定義
9.1.1 有害事象
優良臨床試験基準(GCP)E6(R2)に関する医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドラインは、
「医薬品が投与された患者又は臨床試験対象におけるあらゆる好ましくない医療上の出来事で、当該治療との因果関係の有無を問わない。したがって、AEは、医薬品(治験薬)の使用と時間的に関連し、好ましくなく且つ意図しない徴候(例えば、異常な検査所見を含む)、症状又は疾患であってもよく、当該医薬品(治験薬)との関連の有無は問わない。」としてAEを定義する。
【0432】
AEを定義する追加の判定基準はまた、対象の先在している状態の性質、重症度、頻度、又は期間のいずれかの臨床的に意義のある悪化を含む。有害事象は、治療の前、治療中又は治療後に発生する可能性があり、治療による発現(すなわち、CTX130注入後に発生する)又は治療によらない発現のいずれかであり得る。治療によらない発現のAEは、書面のインフォームドコンセントが得られた後であるが、対象がCTX130を受容する前に発生するいずれかの新たな徴候若しくは症状、疾患、又は他の好ましくない医学的事象である。
【0433】
ベースラインから悪化しなかった記録された先在する状態のための緊急を要しない又は予め計画された治療又は医学的/外科的処置(試験に登録されている対象の前に計画された)は、AE(重篤又は重篤ではない)とみなされない。しかしながら、予め計画された緊急を要しない処置又は定期的に予定された治療中に発生する好ましくない医学的事象は、AE又はSAEとして記録されるべきである。試験治療薬の注入のための入院又は施設の方針若しくはこの治験実施計画書で定義されるとおりの予防措置は、AEとみなされない。さらに、対象がCTX130注入後に計画された入院を有する場合、他のSAE判定基準を満たす医学的に重要な事象と関連しない限り、観察のためのその入院の延長だけではSAEとして報告されるべきではない。
【0434】
9.1.1.1 異常な検査所見
臨床的に意義のあるとみなされる異常な検査所見は、有害事象として報告されるべきである。可能な限り、これらは、その異常値そのものではなく臨床診断として報告されるべきである。臨床的意義を有しない異常な検査結果は、AEとしての報告を要求されない。
【0435】
9.1.1.2 疾患進行
疾患進行は、転帰であり、AEとして報告されるべきではない。対象が、AEが重篤であると認定する入院又は介入を必要とする場合、症状は、SAE(例えば、局所的進行に起因する脾臓破裂)として報告されるべきである。
【0436】
9.1.2 重篤な有害事象
重篤な有害事象(SAE)は、いずれかの用量で:
●死亡をもたらす
●生命を脅かす
任意の好ましくない医療上の出来事である。
【0437】
この定義は、対象が、それが発生したときの事象からすぐに死に至るリスクがあることを意味する。より重度の形態で発生した場合に死亡を引き起こしたかもしれない事象は含まれない。
●入院又は目下の入院の延長を必要とする。
一般に、入院は、対象が、外来患者の環境では適切ではない観察及び/又は治療のための病院又は救急病棟(通常、少なくとも一泊の滞在を要する)にいることを示す。
●持続的な又は重大な能力障害/無能力をもたらす。
●先天性異常/出生時欠損をもたらす。
●他の重要な/重大な医学的事象
【0438】
他の状況、例えば、直ちに生命を脅かすか又は死亡若しくは入院に至ったりはしないが、対象を危険にさらす可能性のある重要な医学的事象或いは上の定義に列挙される他の転帰の1つを予防するための介入を必要とし得る状況において、迅速な報告が適切かどうかを判断するには、医学的及び科学的判断が行使されるべきである。
【0439】
9.1.3 特記される有害事象
AESI(重篤又は重篤ではない)は、進行中のモニタリング及び迅速なコミュニケーションが適切であり得る製品又はプログラムに特異的な科学的及び医学的懸念の1つである。
【0440】
同じ薬理学的クラスとみなされる自系CAR T細胞の報告された臨床経験に基づいて、以下が、特記される有害事象(AESI)として同定される:
1.CTX130注入に関連する反応。
2.グレード≧3の感染症及び寄生
3.腫瘍溶解症候群(TLS)。
4.サイトカイン放出症候群(CRS)。
5.免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)。
6.血球貪食性リンパ組織球症(HLH)。
7.移植片対宿主病(GvHD)。
8.制御されないT細胞増殖
【0441】
上に列挙されるAESIに加えて、治験責任医師がCTX130と関連する可能性があるか又は関連すると判定するいずれかの新規の自己免疫障害は、CTX130注入後に常に報告されるべきである。
【0442】
9.2 有害事象の評価
9.2.1 因果関係の評価
それぞれのAE及びCTX130、LD化学療法、並びにいずれかの治験実施計画書に規定された試験処置の間の関連性(全てが個別に評価される)が、評価されるものとする。以下が、考慮されるものとする:(1)事象と治療又は処置の投与のタイミングの間の時間的関連、(2)もっともらしい生物学的機構、及び(3)因果関係の評価を行うときの事象(例えば、同時の療法、根底にある疾患)の他の潜在的な原因。
【0443】
関連性の評価は、以下の定義に基づいてなされる:
●関連する:試験治療又は処置とAEの間に明白な因果関係がある。
●関連する可能性がある:試験治療又は処置とAEの間に因果関係を示唆するいくつかのエビデンスがあるが、他の潜在的な原因も存在する。
●関連しない:試験治療又は処置とAEの間の明白な因果関係を示唆するエビデンスがない。
【0444】
AE/SAEとCTX130の間の関連性が、「起こり得る」と判定される場合、その事象は、規制報告の目的のためにCTX130に関連するとみなされる。
【0445】
以下の試験のいずれかが満たされる場合、事象は、CTX130の使用と「関連しない」とみなされる:
●CTX130の投与とその事象(例えば、製品に関連するとみなされるAEに関してCTX130の投与の前、又はかなり後のいずれかに発生した事象)の発生の間の不合理な時間的関連性。
●IPと事象の間の因果関係が、生物学的にあり得ない
●事象に関する明らかにより可能性の高い代替の説明が存在する(例えば、併用薬物による典型的な有害反応及び/又は典型的な疾患関連事象)。
【0446】
個々のAE/SAEの報告は、「関連しない」判定基準が満たされない場合、CTX130の使用に「関連する」とみなされる。SAEが、いずれかの試験介入と関連しないと評価される場合、別の原因が、症例報告書(CRF)において提供されなければならない。
【0447】
9.2.1.1 治験実施計画書の処置及び/又は他の原因との関連性
SAEがCTX130又はLD化学療法による治療と関連しないと判定される場合、治験実施計画書の処置に対するSAEの関連性の評価が提供され得る。SAE報告書に対する別の原因が、下に定義される判定基準に基づいて提供されるものとする:
・治験実施計画書に関連する処置/介入:試験中に必要とされる処置又は介入(例えば、採血、既存薬の休薬)の結果として発生した事象であって、対象の診療記録に別の原因が存在しないもの。これは、治療下で発現したSAEと同様に、非治療下で発現したSAE(すなわち、CTX130の投与前に発生するSAE)にも適用される。
【0448】
9.2.2 重症度の評価
重症度は、CRS、ICANS、及びGvHDを除いて、NCI CTCAE 5.0に従って等級分けされ、それぞれ表32、表34、及び表36の判定基準に従って等級分けされる。CTCAEグレード又は治験実施計画書で指定された判定基準が利用可能ではない事象に関する重症度の判定は、表38に記載されるとおりのグレード1~5の重症度分類を使用して、医学的判断に基づいてなされる(そして、CRFに記録する)べきである。
【0449】
9.2.3 有害事象転帰
AE又はSAEの転帰は、以下のとおりに分類され、報告される:
●致死的。
●未回復/未解決。
●回復/解決。
●続発症を伴う回復/解決。
●回復中/解決中。
●不明
【0450】
死亡及び致死的/グレード5の事象を記録し、報告する場合、死亡は対象の転帰であり、致死的は事象の転帰であることに留意し、死亡の原因であったSAEを記載しなければならない。AEのために試験を中止した対象は、転帰が決定されるまで追跡される。
【0451】
【表51】
【0452】
表32A、32B、34、及び36、並びに、例えば、本明細書で開示されるCRS、ICANS、及びGvHDに関する有害事象等級分け判定基準も参照されたい。
【0453】
10.停止規則及び試験終了
10.1 治験に関する停止規則
試験は、以下の事象の1つ以上が発生する場合、中断され得る:
●CTX130に起因する生命を脅かす(グレード4)毒性であって、管理不能であり、予想外であり、且つLD化学療法に関連しないもの。
●注入の30日以内のCTX130に関連する死亡。
●少なくとも15名の対象がCTX130を受容した後、対象の>20%においてステロイド抵抗性であるグレード>2のGvHDの発生。
●少なくとも15名の対象が登録された後、対象の>35%において発生した対象に対して予想外の臨床的に意義のある又は許容されないリスクの判定(例えば、7日以内にグレード≦2まで回復しないグレード3の神経毒性)。
●新規の悪性腫瘍(以前に治療された悪性腫瘍の再発/進行とは異なる)。
【0454】
パートB(コホート拡大)は、最適なサイモン2段階デザインを使用して実施される単アーム試験である。第1段階において、22名の対象は、CTX130で治療されることになる。7名以上の対象が、CTX130注入後に客観的応答(CR又はPR)を達成する場合、第2段階において追加の48名の治療される対象(合計70名)を含むように登録者数を拡大することが決定され得る。第1段階の後に治験を終了することが決定された場合、登録は中止され、利用可能な全てのデータが審査され、必要に応じて保健当局に通知される。
【0455】
登録が永久に中止された場合、試験に既に登録されている対象は、LD化学療法及びCTX130の注入を続行してはならない。CTX130による治療を既に受けている対象は、引き続き試験に参加し、治験実施計画書に従って追跡され続けるか、又は長期の安全性追跡調査試験への移行が必要となる。
【0456】
10.2 個々の対象に関する停止規則
個々の対象に関する停止規則は、以下のとおりである:
●試験関連治療又は追跡調査を続けている間に対象を危険にさらす任意の医学的状態。
●対象が、適格性判定基準を満たさなかったかことが見出されるか又はLD化学療法の開始の前に主要な治験実施計画書の逸脱を有する場合。
【0457】
10.3 試験の終了の定義
試験の終了は、最後の対象が、60ヶ月目の来院(治験実施計画書で定義された最後の評価)を完了するか又は追跡調査不能、同意の撤回、又は死亡とみなされる時点として定義される。
【0458】
10.4 試験終了
この試験は、安全性の懸念、予想される登録者数の目標を満たさないこと、及び/又は管理上の理由のために任意の時点で中断される場合がある。この試験が早期に終了される場合、CTX130を受容した対象は、CTX130注入後の最大15年間別々の長期の追跡調査試験に参加することが要求される。
【0459】
11.統計方法
11.1 一般的な方法
試験データは、体内動態、人口及びベースライン特性、安全性、並びに臨床的な抗腫瘍活性について要約される。
【0460】
カテゴリーデータは、度数分布(対象の数及びパーセンテージ)によって要約され、連続的なデータは、記述統計学(平均、標準偏差[SD]、中央値、最小値、及び最大値)によって要約されることになる。
【0461】
用量漸増期に治療される対象は、別段の指定がない限り、拡大期に同じ用量のCTX130を受容する対象とともにプールされることになる。全ての要約、リスト、図面、及び解析は、用量レベルによって実施されることになる。
【0462】
主要解析時間は、パートBにおいて71名の対象が3ヶ月の疾患効果判定を完了したとき又は追跡調査不能、試験からの棄権、又は死亡のいずれか最初に発生する(最大の解析対象集団[FAS]において定義される)ときとして定義される。試験データは、主要解析時間に基づく主要な臨床試験報告書(CSR)において解析され、報告されることになる。主要解析時間から試験の終了までに積み重ねられた追加のデータが報告されることになる。統計解析の完全な詳細は、統計解析計画書(SAP)において指定されることになる。
【0463】
11.2 試験の目的及び仮説
パートAの主要目的は、切除不能な又は転移性ccRCCを有する対象においてCTX130の漸増用量の安全性を評価することである。
【0464】
パートBの主要目的は、RECIST v1.1に従ってORRによって測定されるとおり、切除不能な又は転移性ccRCCを有する対象においてCTX130の有効性を評価することである。
【0465】
11.3 試験評価項目
11.3.1 主要評価項目
パートA(用量漸増):用量規制毒性(DLT)の発生率、及びRPBDの定義。
パートB(コホート拡大):固形癌効果判定基準(RECIST 1.1)に従う完全奏効(CR)+部分奏効(PR)として定義される奏効率(ORR)。
【0466】
11.2.2 パートA及びBの副次的評価項目
11.2.2.1 RECIST 1.1効果判定基準に従う有効性
・ORR:治験責任医師によって評価されるとおりのRECIST v1.1に従うCR又はPRの最良総合効果を達成した対象の割合。
・最良総合効果:CR、PR、SD、進行性疾患(PD)、又は評価不能(NE)。
・奏効までの期間(TTR):CTX130注入日から最初の放射線検査で記録された奏効(PR/CR)までの間の時間。
・奏効期間(DoR):PR/CRの最初の客観的応答といずれかの原因による疾患進行又は死亡の日の間の時間。これは、PR/CR事象を有した対象についてのみ報告されることになる。
・無増悪生存期間(PFS):CTX130注入日といずれかの原因による疾患進行又は死亡の日の間の差。進行せず、データカットオフ日においてもなお試験に参加している対象は、最後のRECIST評価日をもって打ち切られることになる。
・全生存期間(OS):CTX130注入日といずれかの原因による死亡日の間の時間。データカットオフ日に生存している対象は、対象の生存が確認された最後の日をもって打ち切られることになる。
【0467】
11.2.2.2 安全性
AE及び臨床的に意義のある臨床検査値異常の発生率及び重症度は、Lee判定基準(Lee et al.,(2014)Blood 124,188-195)に従って等級分けされるCRS、ICANS(Lee et al.,(2018)Biol Blood Marrow Transplant 25(4):625-638)及びCTCAE v5.0に従って等級分けされる神経毒性、並びにMAGIC判定基準(Harris et al.,(2016)Biol Blood Marrow Transplant,22,4-10)に従って等級分けされるGvHDを除いて、CTCAEバージョン5.0に従って要約され、報告される。
【0468】
11.2.2.3 薬物動態
血液及び他の組織における経時的なCTX130のレベルは、μgのDNA当たりのCARコンストラクトのコピーを測定するPCRアッセイを使用して評価される。細胞表面上のCARタンパク質の存在を確認するためのフローサイトメトリーを使用する補完的な分析もまた実施され得る。
【0469】
そのような分析は、血液中のCTX130の存在を確認し、他の細胞性の免疫表現型をさらに特徴付けるために使用され得る。
【0470】
11.2.3 パートA及びBの探索的評価項目
●組織中のCTX130のレベル。腫瘍生検又はCSF中でのCTX130の増殖及び持続は、治験実施計画書に指定される試料採取に従って回収されるこれらの試料のいずれかにおいて評価され得る。
●抗CTX130抗体の発生率。
●リンパ球集団の免疫プロファイリング。
●CTX130製品の投与後のサイトカインプロファイル。
●抗サイトカイン療法がCRSの治療効果、CTX130の増殖、及び臨床効果に与える影響。
●次の(CTX130の後)抗癌療法の発生率及び種類。
●CRまでの時間:CTX130注入日から記録されたCRまでの時間。
●CTX130注入日から疾患進行の最初のエビデンスまでの時間として定義される疾患進行までの時間。
●第1又は第2の次の療法がない状態での生存:CTX130注入日と第1の次の療法若しくはいずれかの原因による死亡の日の間、又はPFS。
●EORTC QLQ-C30、EQ-5D-5L、FKSI-19、及びFACT-G質問票によって測定されるとおりのPROにおけるベースラインからの変化
●ICFによって測定されるとおりの認知転帰におけるベースラインからの変化
●他のゲノム、タンパク質、代謝、又は薬力学的評価項目。
【0471】
11.3 解析セット
以下の解析セットが、データの提示のために評価され、使用されることになる:
パートA(用量漸増)
●DLTが評価可能なセットは、CTX130を受容し、最初の注入後のDLT評価期間を完了したか又はDLTを経験した後に早期に中断した全ての対象を含むことになる。
パートA+パートB
●安全性解析セット(SAS):登録され、試験治療の少なくとも1回の投与を受けた全ての対象。対象は、受けた治療に従って分類されることになり、受けた治療は、少なくとも1回受けた場合はその割り当てられた用量レベル/スケジュール、又は割り当てられた治療が受けられなかった場合は受けた最初の用量レベル/スケジュールとして定義される。SASは、安全性データの解析のための主要なセットとなる。
●最大の解析対象集団(FAS):登録され、CTX130注入を受け、少なくとも1回のベースライン及び1回のベースライン後スキャン評価を有する全ての対象。FASは、臨床効果評価のための主要解析セットとなる。
【0472】
11.4 対象数及び検出力の考慮事項
パートA(用量漸増)対象数は、評価される用量レベルの数及びDLTの発生率に応じておよそ6~18名の評価可能な対象である。
【0473】
パートB(コホート拡大)は、最適なサイモン2段階デザインを使用して実施される単アーム試験となる。第1段階において、少なくとも23名の対象が登録され、CTX130で治療されることになる。5名以上の対象が、客観的応答(CR又はPR)を達成する場合、第2段階において追加の48名の治療される対象(合計71名)を含むように試験を拡大することが決定され得る;そうでなければ、登録は休止されることになる。71名の対象の対象数が、80%の検出力(α=0.05、両側検定)を有して、ORRが15%の過去の奏効率に等しいという帰無仮説を棄却することになり(Barata et al.,2018;Nadal et al.,2016;Powles et al.,2018)、真のORRが30%であると仮定する。
【0474】
11.5 統計解析
パートA
用量規制毒性は、医薬品規制用語集(MedDRA)の主要な器官別大分類(SOC)及び/又は基本語(PT)、CTCAE v5.0に基づく最悪のグレード、AEの種類、並びに用量レベルによって列挙され、それらの発生率が要約されることになる。DLTが評価可能なセットは、パートAにおいてDLTを評価するための主要解析セットとなる。
【0475】
パートB
ORRの主要評価項目は、パートA及びBの両方においてRPBDでCTX130を受容した対象について評価されることになる。FASは、有効性のための主要解析セットとなる。奏効率が要約されることになり、95%の信頼区間(CI)が計算されることになる。
【0476】
疾患評価の治験責任医師による審査に基づくORRの感受性解析もまた実施されることになる。
【0477】
一般的な有効性分析
生存時間評価項目は、適宜カプラン・マイヤー法を使用して分析されることになる。カプラン・マイヤー法に基づく中央値及び他の変位値(第1四分位数及び第3四分位数を含む)の推定値が計算されることになり、関連する95%CIが提供されることになる。カプラン・マイヤー法に基づく特定の時点での生存率が生成されることになる。分析されることになる生存時間評価項目としては、以下のものが挙げられる:
●奏効期間:レスポンダーのみの中で、DoRは、奏効の最初の発生日から疾患進行又は死亡が記録された日のいずれか早い日までとして計算されることになる。疾患進行又は死亡を伴わない対象は、最後の評価可能な効果判定日で打ち切られることになる。
●無増悪生存期間:試験治療の最初の日から客観的な腫瘍進行又は死亡が記録されるまでの期間として定義される。疾患進行又は死亡を伴わない対象は、最後の評価可能な効果判定日で打ち切られることになる。
●全生存期間:CTX130注入日といずれかの原因による死亡日の間の時間として定義される。データカットオフ日に生存している対象は、対象の生存が確認された最後の日をもって打ち切られることになる。
【0478】
一般的な安全性解析
SASは、安全性データの全てのリスト及び要約のために使用されることになる。安全性データは、用量レベルによって要約されることになる。
【0479】
有害事象
AEは、CRS(ASTCT判定基準)、神経毒性(ICANS及びCTCAE v5.0)、及びGvHD(MAGIC判定基準)を除いて、CTCAE v5.0に従って等級分けされることになる。治療により発現した有害事象(TEAE)の発生率は、SOC及び/又はPTによるMedDRA、重症度(CTCAE v5.0に基づく)、並びに試験治療との関連に従って要約されることになる。全てのTEAEの概要が作成されることになる。
【0480】
開始及び終了時間にかかわらず全てのAEが列挙されることになり、TEAEかどうかを示す印が、リストにおいて提示されることになる。
【0481】
臨床検査値異常
●CTCAE v5.0によって網羅される臨床検査に関して、臨床検査データは適宜等級分けされることになる。CTCAEによって網羅される臨床検査に関して、グレード0は、1以上として等級分けされない全ての非欠測値に関して割り当てられることになる。
●以下の概要は、血液学及び化学の臨床検査に関して別々に作成されることになる:
- 実測値(及び/又はベースラインからの変化)又は経時的な臨床検査パラメーターの度数に関する記述統計学
- 最悪の治療中CTCAEグレードの表
- 対応するCTCAEグレード及び臨床検査正常範囲に対する分類を示すように目印を付けられた値を有する全ての臨床検査データのリスト
【0482】
上記の表及びリストに加えて、経時的な臨床検査における実測値又は変化の散布図又は箱ひげ図などの重要な安全性パラメーターの図示は、SAPにおいて指定され得る。
【0483】
11.5 中間解析
11.5.1 有効性の中間解析
無益性に関する1つの中間解析が実施され、DSMBによって審査される。中間解析は、22名の対象が治療され、3ヶ月間の評価可能な応答データを有するときまでに行われる。CTX130に対する真の奏効率が、標準治療と異ならない場合、この分析時での無益性による中止の可能性は70%である。
【0484】
11.6.3 バイオマーカー分析
抗CTX130抗体の発生率、血液中のCTX130 CAR+T細胞のレベル、及び血清中のサイトカインのレベルが要約される。
【0485】
腫瘍、血液、場合によっては骨髄及び吸引液(治療により発現したHLHを有する対象においてのみ)、並びに場合によってはCSF試料(治療により発現した神経毒性を有する対象においてのみ)は、CTX130の臨床効果、抵抗性、安全性、疾患、薬力学的活性、又は作用機序を示し得るゲノム、代謝、及び/又はプロテオミクスバイオマーカーを同定するために回収されることになる。
【0486】
CTX130レベルの分析(薬物動態分析)
形質導入されたCD70指向性CART細胞のレベルの分析は、表26及び表27に記載されるスケジュールに従って回収される血液試料に対して実施されることになる。CRSの徴候又は症状を経験している対象において、追加の血液試料は、計画された回収の間に48時間毎に抜き取られる必要がある。血液中のCTX130の増殖及び持続の時間経過は、CARコンストラクトのコピーを測定するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイを使用して記載されることになる。より感受性のゲノム技術又は細胞表面上のCARタンパク質の存在を確認するためのフローサイトメトリーを使用する補完的な分析もまた実施され得る。
【0487】
血液、CSF(治療により発現した神経毒性を有する対象においてのみ)、骨髄(治療により発現したHLHを有する対象においてのみ)又はCTX130注入後に実施される腫瘍生検に由来するCTX130レベルの分析のための試料が、中央検査機関に送られるべきである。血液、CSF、骨髄又は腫瘍組織中でのCTX130の増殖及び持続は、治験実施計画書に指定される試料採取に従って回収されるこれらの試料のいずれかにおいて評価され得る。
【0488】
サイトカイン
CRP、IL-1β、sIL-1Rα、IL-2、sIL-2Rα、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL-17a、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、及びGM-CSFを含むがこれらに限定されないサイトカインが、中央検査機関において分析されることになる。複数の以前のCAR T細胞臨床試験において実施された相関分析が、近年の概説(Wang et al.,2018)において要約されるとおり、重度のCRSに関する潜在的な予測的マーカーとしてこれらのサイトカイン、及びその他のものを同定した。サイトカインのための血液は、表26及び表27に記載されるとおりの指定された時点で回収されることになる。CRSの徴候又は症状を経験する対象において、症状の発症時に行われる最初の試料回収、及び追加の試料が、回復まで12時間毎(±5時間)に抜き取られる必要がある。
【0489】
抗CTX130抗体
CARコンストラクトは、ヒト化scFvから構成される。血液は、この試験で提供される開示に従って潜在的な免疫原性に関して評価するために試験全体にわたって回収される。
【0490】
探索的研究のバイオマーカー
探索的研究は、治療の臨床効果、抵抗性、安全性、疾患、薬力学的活性、及び/又は作用機序を示し得るか又は予測し得る分子(ゲノム、代謝、及び/又はプロテオミクス)バイオマーカー及び免疫表現型を同定するために実施され得る。試料は、表26及び表27に従って回収されることになる。探索的研究を支援するために、血液、腫瘍、骨髄、及びCSF試料の回収に対する指示に関する臨床検査マニュアルを参照されたい。
【0491】
追加のバイオマーカーの調査は、血液細胞及び製品、腫瘍組織、並びに他の対象に由来する組織の評価を含み得る。これらの評価は、それらの組織に由来するDNA、RNA、タンパク質、及び他の生体分子を評価し得る。そのような評価により、患者の疾患、CTX130に対する応答、及びIPの作用機序に関連する因子の理解を知らせる。
【0492】
結果
これまでに本試験に参加した対象全員が、14日以内に段階1(適格性のスクリーニング)を完了している。適格性の判定基準を満たした後、3名の対象が、段階1を完了して24時間以内にリンパ球枯渇療法を開始した。全ての適格な対象が、スクリーニング期間(段階1)を完了し、8日未満でLD化学療法を受け、2名の対象はスクリーニングを完了し、72時間以内にLD化学療法の投与を開始した。LD化学療法を受ける全ての対象が、LD化学療法の完了後の2~3日以内にCTX130のDL1用量の受容まで進行した。
【0493】
これまでこの試験において治療されたどの対象もDLTを示さなかった。同様に、DTLは、T又はB細胞悪性腫瘍を有する対象をCTX130を使用して治療する並行した試験において観察されなかった。例えば、2019年11月13日に出願された米国特許出願第62/934,945号明細書及び2020年6月4日に出願された米国特許出願第63/034,510号明細書を参照されたい。さらに、同種異系CAR-T細胞療法は、治療を受けたヒト対象において、注入後にCAR-T細胞の増殖及び持続を含む所望の薬物動態特性を示した。著しいCAR T細胞の分布、増殖及び持続が、DL1という早期に観察されている。Tに対して末梢血液中のCTX130の最大87倍の増殖が、現在まで評価された1名のRCC対象において観察されており、CTX130細胞の持続は、注入後の少なくとも28日のDL1の対象において検出され得る。CAR T細胞の分布、増殖及び持続の同様のパターンは、対応するT又はB細胞悪性腫瘍試験において観察され、CTX130の20倍の増殖が観察されており、CTX130細胞は、注入後14日まで検出されている。
【0494】
この試験における適格な対象は、明細胞RCCを有し、一部は、サルコイド分化の少数の画分を有する。最初の2名のRCC対象から得られる結果が下に要約される。
●DL1用量を受容する第1の対象は、CTX130注入後の42日目のCTスキャンにより新規の病変又は既存の病変の進行を伴わずにそれらの腫瘍病変のRCC安定化を経験した。加えて、溶解性の骨転移は、同じCTスキャンにおいて再石灰化の明白な徴候を示した。対象は、12週目において安定な疾患のままであった。
●DL1用量を受容する第2の対象は、42日目にRECIST 1.1に従って少なくとも部分奏効を経験し、胸膜下の1つの標的病変及び胸郭内の3つの非標的病変が劇的に減少した。
【0495】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代替的な特徴へと置き換えてもよい。すなわち、明示的に別段の定めをした場合を除き、開示される各特徴は、一般的な一連の均等な又は同様の特徴の単なる一例である。
【0496】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に把握することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を各種の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更形態及び修正形態をなし得る。したがって、他の実施形態も請求項の範囲に含まれるものとする。
【0497】
均等物
いくつかの本発明の実施形態を本明細書で説明及び図示してきたが、当業者であれば、本明細書に記載される機能を実行し、且つ/又は結果及び/若しくは1つ以上の利点を得るために、様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定するであろう。また、そのような変更形態及び/又は修正形態の各々は、本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書で説明される全てのパラメーター、寸法、材料及び構成が例示的であることを意図し、実際のパラメーター、寸法、材料及び/又は構成が、本発明の教示が適用される特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、本明細書に記載された特定の本発明の実施形態に対する多く均等物を、日常の実験のみを用いて認識するか又は確認することが可能である。したがって、上述の実施形態は、単に例として提示されており、また添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求される以外の別の方法で実践され得ることを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は、本明細書で説明される各個別の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組み合わせは、こうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0498】
本明細書中で定義され、用いられる全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献中の定義及び/又は定義される用語の普通の意味よりも優先されるものと理解されたい。
【0499】
本明細書に開示されている全ての参考文献、特許及び特許出願は、それぞれ引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合により文献の全体を包含する場合がある。
【0500】
不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0501】
本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、「及び/又は」という表現は、等位結合される要素、すなわち一部の場合に接続的に提示され、他の場合に離接的に提示される要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されたい。「及び/又は」と共に列挙される複数の要素は、同じように、すなわちそのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」の節によって具体的に特定される要素以外に、具体的に特定された要素に関連するか又は関連しないに関わらず、他の要素が任意選択的に提示され得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する参照は、「含む」などのオープンエンド用語と共に使用される場合、一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0502】
本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する際、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であり、すなわち要素のリストの少なくとも1つを含むが、2つ以上の数及び任意選択的に追加的な列挙されていない項目も含むものと解釈されるべきである。「~の1つのみ」若しくは「~の厳密に1つ」又は特許請求の範囲で使用されるときの「~からなる」などの反対を明らかに示す用語のみが、多数の要素又は要素のリストの厳密に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用する時、用語「又は」は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合のみ、排他的代替用語(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。「本質的に~からなる(Consisting essentially of)」は、特許請求の範囲内で使用される時、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0503】
本明細書で使用する場合、本明細書及び特許請求の範囲における、1つ以上の要素の列挙に関する「少なくとも1つ」という語句は、要素の列挙内の要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素であるが、要素の列挙内に具体的に列挙されたあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、且つ要素の列挙内の要素の任意の組み合わせを必ずしも除外しないことを意味するものと理解すべきである。この定義により、具体的に特定されるそれらの要素に関係するか否かに関わらず、「少なくとも1つ」という語句が意味する要素の列挙内に具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることも可能になる。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(換言すると「A又はBの少なくとも1つ」、換言すると「A及び/又はBの少なくとも1つ」は、一実施形態では、任意選択により2つ以上のAを含み、Bが存在しない(及び任意選択によりB以外の要素を含む)少なくとも1つを指すことができ、別の実施形態では、任意選択により2つ以上のBを含み、Aが存在しない(及び任意選択によりA以外の要素を含む)少なくとも1つを指すことができ、さらに別の実施形態では、任意選択により2つ以上のAを含む少なくとも1つ、且つ任意選択により2つ以上のBを含む少なくとも1つ(及び任意選択により他の要素を含む)を指すなどであり得る。
【0504】
用語「約」又は「およそ」は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち測定系の限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣習による許容標準偏差内にあることを意味し得る。或いは、「約」は、所与の値の最大±20%、好ましくは最大±10%、より好ましくは最大±5%、さらにより好ましくは最大±1%の範囲を意味し得る。或いは、特に生物学的系又はプロセスに関して、その用語は、1桁以内、好ましくは2倍以内の値を意味する場合がある。本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合、特に指示のない限り、用語「約」は、黙示的であり、これに関連して特定の値が許容誤差範囲内にあることを意味する。
【0505】
同様に、明確に反対に示されない限り、複数の工程又は行為を含む、本明細書で特許請求される任意の方法において、この方法の工程又は行為の順序は、必ずしもこの方法の工程又は行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6B】
図6C
図7A-7C】
図8A-8B】
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
【配列表】
2023501611000001.app
【国際調査報告】