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特表2023-501627LSD1阻害剤によりLSD1関連疾患及び障害を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】LSD1阻害剤によりLSD1関連疾患及び障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20230111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P43/00 111
A61P35/02
A61K31/203
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527859
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042410
(87)【国際公開番号】W WO2021095840
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/934,923
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501170688
【氏名又は名称】アステックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一ツ町 裕子
(72)【発明者】
【氏名】町田 卓充
(72)【発明者】
【氏名】山田 真生
(72)【発明者】
【氏名】キール ハロルド
(72)【発明者】
【氏名】オガネシアン アラム
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
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4C206ZC20
4C206ZC75
(57)【要約】
LSD1関連の疾患又は障害の治療を必要とする患者のLSD1関連の疾患又は障害を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間又は2週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LSD1関連の疾患又は障害の治療を必要とする患者のLSD1関連の疾患又は障害を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記投与スケジュールは2週間のサイクルに基づき、前記サイクルは1回行なわれるか、または2回以上繰り返される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩が、1週間の間1日1回投与される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩が、経口投与される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
LSD1関連の疾患又は障害の治療を必要とする患者のLSD1関連の疾患を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む方法。
【請求項6】
前記投与スケジュールは3週間のサイクルに基づき、サイクルが1回行なわれるか、2回以上繰り返される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩が、2週間の間1日1回投与される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩が、経口投与される請求項5に記載の方法。
【請求項9】
急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、28日間のサイクルの間の特定の複数の日に1日1回、単剤として前記患者に投与することを含む方法。
【請求項10】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間毎日投与し、これに1週間の休止期間が続く請求項9に記載の方法。
【請求項11】
急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、21日間のサイクルの間の特定の複数の日に1日1回、単剤として前記患者に投与することを含む方法。
【請求項12】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間毎日投与し、これに1週間の休止期間が続く請求項11に記載の方法。
【請求項13】
急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、28日間のサイクルの間の特定の複数の日に、患者に投与することを含む方法。
【請求項14】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間毎日投与し、これに1週間の休止期間が続く、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする急性骨髄白血病(AML)を治療する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、21日間のサイクルの間の特定の複数の日に、患者に投与することを含む方法。
【請求項16】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間毎日投与し、これに1週間の休止期間が続く、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
急性骨髄白血病(AML)と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む方法。
【請求項18】
急性骨髄白血病(AML)と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間を含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む方法。
【請求項19】
急性骨髄白血病(AML)と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、1週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで、前記患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
急性骨髄白血病(AML)と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法であって、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、2週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで、前記患者に投与することを含む方法。
【請求項21】
AMLの再発又は死のリスクが、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%又は少なくとも約25%低減される請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は1週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含むスケジュールで投与されるよう調製される、使用。
【請求項23】
急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は2週間の間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される、使用。
【請求項24】
急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、1週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される、使用。
【請求項25】
急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、2週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の特定の投薬レジメンに従ってLSD1阻害剤によりLSD1関連の疾患又は障害を有する患者を治療する方法に関する。本発明のいくつかの態様は、LSD1阻害剤、そのようなLSD1阻害剤の製造方法、そのようなLSD1阻害剤を含有する医薬組成物を含む組成物、並びにそれらの種々の用途を包含する。
【背景技術】
【0002】
ヒストンのメチル化による修飾は遺伝子の発現を制御するエピジェネティックなメカニズムの1つであり、細胞の維持、増殖、分化等の様々なプロセスの制御を行っている。
【0003】
これらヒストンのメチル化修飾を制御する酵素の1つであるLSD1(KDM1A)は、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)依存のヒストン脱メチル化酵素であり、主に、ヒストンH3の4番目のリジン残基(K4)と9番目のリジン残基(K9)の脱メチル化を行う酵素である(非特許文献1)。LSD1はこの機能を発揮することで様々な遺伝子の転写を正または負に調節し、各正常組織において幹細胞の自己再生や細胞の分化を制御していると考えられている。
【0004】
一般的に、細胞の自己再生能や分化の異常は細胞のがん化につながると考えられており、従って、このプロセスに重要な役割を果たしているLSD1の制御異常は細胞のがん化の原因となる可能性がある。実際に、様々なタイプの固形がんや血液がんにおいて、LSD1の過剰発現やその予後との相関が数多く報告されている(非特許文献2)。また、いくつかのがん種由来の細胞株や非臨床モデルにおいて、LSD1を阻害することによる細胞の分化誘導、増殖阻害、in vivoでの抗腫瘍効果が報告されており(非特許文献3、4)、LSD1ががん治療の重要な標的分子の1つであることが強く示唆されている。これらLSD1が関与するがん種、例えば小細胞肺がん(SCLC)や急性骨髄白血病(AML)は、生存期間が極めて短いがん種であり、既存の治療方法によって患者にとって満足な治療効果を達成できていない。
【0005】
以上のことから、LSD1を阻害する薬剤は、現在治療法の存在しない難治性がんに対して、新しいメカニズムによる有効な治療手段を提供できるものと期待される。
【0006】
さらには、いくつかの報告によれば、LSD1が神経細胞のプログラムや機能に関わっていることから、アルツハイマー病、ハンチントン病、Rett症候群、及び他の脳神経疾患(非特許文献2)や、LSD1機能の関与が示唆されているヘルペスウイルス感染症(非特許文献5)や鎌状赤血球症(非特許文献6)など、がん以外の疾患に対する治療の標的にもなり得ることが報告されている。
【0007】
LSD1阻害剤が臨床試験で投与されたといういくつかの報告がある。LSD1阻害剤は、FADに共有結合するLSD1阻害剤と、基質ヒストンH3と競合するLSD1阻害剤の、2つのグループに分類される。前者の共有結合のタイプの場合、最も典型的な投与スケジュールは連続的な毎日投与であった。例えば、共有結合のタイプのLSD1阻害剤であるGSK-2879552(GlaxoSmithKline株式会社)は、急性骨髄白血病の第1相試験及び骨髄異形成症候群の第1/2相試験のために、連続的に毎日投与された(非特許文献7)。別の共有結合のタイプのLSD1阻害剤であるINCB-59872(Incyte社)は、固形腫瘍、非小細胞肺がん (NSCLC)及び結腸癌の第1/2相試験のために21日間のサイクルで連続的に毎日投与され、鎌状赤血球病の第1相試験のために連続的に毎日投与された(非特許文献8)。他の典型的な投与スケジュールは、1日又は2日のインターバルで間欠投与を含んでいた。例えば、別の共有結合のタイプのLSD1阻害剤であるORY-1001/RO7051790(Oryzon Genomics)は、急性骨髄白血病の第1/2a相試験のために、5日間の連続投与とその後の2日間のインターバル期間の4回のサイクルから成る4週間の投与スケジュールで投与された(非特許文献9)。上述のINCB-59872試験の場合、鎌状赤血球病の第1相試験のために一日おき(Quaque otra Die:QOD)の投与スケジュールも適用された(非特許文献10)。他方、基質ヒストンH3と競合し、かつ薬物動態学に長い半減期を有する(~71時間、すなわち約3日)ユニークなLSD1阻害剤であるCC-90011は、28日(4週間)のサイクルで一週間に一回の投与スケジュールで使用された(非特許文献11)。
【0008】
本明細書中におけるすべての引用文献の開示は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報WO2017/090756
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Biochim. Biophys. Acta, 1829(10),P.981-986(2013)
【非特許文献2】Epigenomics,7(4),P.609-626(2015)
【非特許文献3】Cancer Cell,21(4),P.473-487(2012)
【非特許文献4】Cancer Cell,28(1),P.57-69(2015)
【非特許文献5】Sci.Transl.Med.,6(265),265ra169(2014)
【非特許文献6】Nat.Med.,19(3),P.291-294(2013)
【非特許文献7】NCT02177812
【非特許文献8】NCT02959437
【非特許文献9】ASH 2016(4060)
【非特許文献10】NCT03132324
【非特許文献11】Annals of Oncology, Volume 30, Issue Supplement 5,2019年10月、mdz256.003、https://doi.org/10.1093/annonc/mdz256.003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
化合物4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(以下、「化合物A」と称する)は有力なLSD1阻害剤として知られている(特許文献1)。この化合物は基質ヒストンH3と競合するLSD1阻害剤である。化合物Aのための投与スケジュール又は投与レジメンは当該技術分野ではこれまで説明されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様は、特定の投与スケジュールを利用して、有効量の化合物Aを投与することにより、LSD1関連の疾患又は障害の治療を必要とする患者のLSD1関連の疾患又は障害を治療する方法を包含する。
【0013】
本発明者らは、化合物Aの連続投与が抗腫瘍結果を示すが、同時に、骨髄抑制及び/又は体重減少のような1つまたは複数の好ましくない事象又は副作用が起こり得ることを発見した。本発明者らが広範囲な研究を行なった結果、化合物Aを特定の期間連続投与し、その後、化合物Aを投与しない特定の長さの時間の休止期間を設けることにより、好ましくない事象や副作用を少なくしつつ抗腫瘍効果が達成されることを発見した。本発明はこの予想外の驚くべき発見に基づいている。
【0014】
ある実施形態では、LSD1関連の疾患又は障害を有する患者を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間の連続的な毎日投与と、これに続く1週間の休止期間とからなる投与スケジュールで、前記患者に投与することを含む。
【0015】
別の実施形態では、LSD1関連の疾患又は障害を有する患者を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間の連続的な毎日投与と、これに続く1週間の休止期間とからなる投与スケジュールで、前記患者に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、1週間ON+1週間OFFの投与レジメンを受けたグループIのサンプル中の血小板の数を示すグラフである。左側の中抜きのバーは、試験化合物A 0mg/kg(対照としての溶媒)で処理された動物からの値を示す。右側の塗りつぶしたバーは試験化合物A 16mg/kgで処理した動物からの値を示す。「Week」カラムの「1」、「2」、「3」及び「4」は、8日目、15日目、22日目、及び29日目に得られたサンプルからの値をそれぞれ示す。エラーバー:平均からの標準偏差、NE:検査しなかった。
図1B図1Bは、1週間ON+1週間OFFの投与レジメンを受けたグループIのサンプル中の好中球の数を示すグラフである。左側の中抜きのバーは、試験化合物A 0mg/kg(対照としての溶媒)で処理された動物からの値を示す。右側の塗りつぶしたバーは試験化合物A 16mg/kgで処理した動物からの値を示す。「Week」カラムの「1」、「2」、「3」及び「4」は、8日目、15日目、22日目、及び29日目に得られたサンプルからの値をそれぞれ示す。エラーバー:平均からの標準偏差、NE:検査しなかった。
図2A図2Aは、2週間ON+1週間OFFの投与レジメンを受けたグループIIのサンプル中の血小板の数を示すグラフである。左側の中抜きのバーは、試験化合物A 0mg/kg(対照としての溶媒)で処理された動物からの値を示す。右側の塗りつぶしたバーは試験化合物A 16mg/kgで処理した動物からの値を示す。「Week」カラムの「2」及び「3」は、15日目及び22日目に得られたサンプルからの値をそれぞれ示す。エラーバー:平均からの標準偏差。
図2B図2Bは、2週間ON+1週間OFFの投与レジメンを受けたグループIIのサンプル中の好中球の数を示すグラフである。左側の中抜きのバーは、試験化合物A 0mg/kg(対照としての溶媒)で処理された動物からの値を示す。右側の塗りつぶしたバーは試験化合物A 16mg/kgで処理した動物からの値を示す。「Week」カラムの「2」及び「3」は、15日目及び22日目に得られたサンプルからの値をそれぞれ示す。エラーバー:平均からの標準偏差。
図3図3は、異常な好中球系骨髄球(矢印で示す)の写真である。
図4A図4Aは異常な巨核球の写真である。
図4B図4Bは異常な巨核球の写真である。
図5図5は、対照群、連続群、グループIの群、およびグループIIの群の腫瘍体積を示すグラフである。***:p<0.001、Dunnett t検定、N.S.:有意差なし、Aspin-Welch t検定、エラーバー:SE:標準誤差
図6図6は、対照群、連続群、グループIの群、およびグループIIの群の体重変化を示すグラフである。エラーバー:SE:標準誤差
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のいくつかの態様は、連続的な毎日投与の期間とそれに続く投薬のない特定の休止期間とを含む投与スケジュールで抗腫瘍剤を投与することによる、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法を包含する。ある実施形態では、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(「化合物A」)又はその塩を治療を必要とする患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、化合物A又はその塩を、1週間の連続的な毎日の投薬とそれに続く1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、化合物A又はその塩を、2週間の連続的な毎日の投薬とそれに続く1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与することを含む。
【0018】
4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルは、以下の構造で描かれる:
【化1】
【0019】
本出願では、上記化合物は「化合物A」と記載される。化合物Aは、国際出願WO2017/090756の実施例化合物37として説明されており、国際公開公報の開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。化合物Aは当該技術分野で公知の任意の方法により製造されてもよく、国際出願WO2017/090756に記載された方法が含まれるが、これに限定されない。上記国際公開公報の開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
本明細書で説明する新規な治療方法は、抗腫瘍結果を達成しつつ、例えば体重減少及び/又は骨髄抑制などの、副作用、有害反応、又は有害事象を含む1つまたは複数の好ましくない所見(observation)を減少させる効果を示す。例証的な実施形態では、抗腫瘍剤が連続投与で1週又は2週の期間投与された後、1週間の持続時間で休止期間が続く。この驚くべき予想外の発見により、副作用を低減しつつ化合物Aをより長期間投与することが可能となったが、これは最終的にはより長い生存期間及び/又はより長い無増悪生存期間に寄与する。
【0021】
連続投与の1週間の期間とそれに続く1週間の休止期間とを含む本明細書で説明する投与スケジュールは、1又は複数の好ましくない事象又は副作用の減少の点からの利点を実証した。
【0022】
あるいは、連続投与の2週間の期間とそれに続く1週間の休止期間とを含む本明細書で説明するスケジュールは、毒性の低減を含む薬物安全性の点からの利点を実証した。
【0023】
本発明では、投与スケジュールが、1週間又は2週間の連続投与と、それに続く1週間の休止期間とを含む限り、特に限定されない。1週間(7日)の連続投与とそれに続く1週間(7日)の休止期間とからなる2週間(14日)の投与スケジュールを1サイクルと定義した場合、このサイクルは疾患又は障害を治療するために1回行なわれてもよいし、2回以上繰り返されてもよい。すなわち、投与は1サイクルで行われてもよいし、1よりも多いサイクルで行われてもよく、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル、もしくはそれより多いサイクルの特定の投与スケジュールで行われてもよい。いくつかの実施形態では、投与は数回のサイクルを含む長期間に行なわれる。例えば投与は、約13~15の治療又は投与のサイクルで6か月の期間、約25又は26の治療又は投与のサイクルで1年の期間、約75~100の投与のサイクルで3年間、またはそれより長い間実行することができる。2週間(14日)の投与とそれに続く1週間(7日)の休止期間とからなる3週間(21日)の投与スケジュールを1サイクルと定義した場合、このサイクルは疾患又は障害を治療するために1回行なわれてもよいし、2回以上繰り返されてもよい。すなわち、投与は1サイクルで行われてもよいし、1よりも多いサイクルで行われてもよく、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル、もしくはそれより多いサイクルの投与スケジュールで行われてもよい。いくつかの場合、投与はもっと多いサイクルで行われる。例えば投与は、約10サイクルで6か月の期間、約20サイクルで1年の期間、約50~60サイクルで3年の期間、又はそれより多いサイクルでより長い投与期間実行することができる。
【0024】
さらに、本発明の投与スケジュールにおいて、1週間又は2週間の連続投与と、それに続く1週間の休止期間とからなるスケジュールで投与を継続する限り、投与をその後中止してもよく、また、投与を一定期間の休薬日(投与がない)の後に再開してもよい。同様に、本発明の投与スケジュールは、複数の休薬日期間を有するスケジュールを含んでいてもよい。1つの休薬日を有する投与スケジュールの1つの実施形態では、休薬日の前の投与期間と、休薬日の後の投与期間に、「1週間又は2週間の連続投与と、それに続く1週間の休止期間」が満たされれば十分である。2つの休薬日の期間を有する投与スケジュールの別の実施形態では、休薬日の第1の期間の前と、休薬日の2つの期間の間と、休薬日の第2の期間の後に、「1週間又は2週間の連続投与と、それに続く1週間の休止期間」 が満たされれば十分である。2つまたはそれよりも多い休薬日の期間を有する投与スケジュールの別の実施形態では、休薬日の最初の期間の前と、休薬日の隣接する2つの期間の間と、休薬日の最後の期間の後に、「1週間又は2週間の連続投与と、それに続く1週間の休止期間」が満たされれば十分である。休薬日の期間は特に限定されないが、患者の状態などに従って適切に設定することができる。例えば、休薬日の期間は1~35日の範囲内であってよい。あるいは、休薬日の期間は1~12か月の範囲内であってよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、化合物A又はその塩は毎日1回又は2回以上投与される。好ましい実施形態では、化合物A又はその塩は1日当たり1回投与される。
【0026】
化合物A又はその塩の典型的な日用量は、体重1キログラム当たり100ピコグラムから体重の100ミリグラムの範囲であってよく、より典型的には体重1キログラム当たり10ナノグラムから25ミリグラムであってよい。より典型的には、化合物A又はその塩の日用量は、体重1キログラム当たり100ナノグラムからの20ミリグラムの範囲にあるが、必要とされた場合、より高い用量又はより低い用量で投与されてもよい。例えば、日用量は、体重1キログラム1マイクログラムから20ミリグラムであり、より典型的には体重1キログラム当たり10マイクログラムから20ミリグラムであり、より典型的には体重1キログラム当たり100マイクログラムから20ミリグラムであってよい。
【0027】
投薬量は、患者の体表面積に対する物の投与量(mg/m)で表してもよい。化合物A又はその塩の典型的な日用量は、3700pg/mから3700mg/mの範囲にあるが、必要とされた場合、より高い用量又はより低い用量で投与されてもよい。例えば、日用量は、370ng/mから925mg/m、より典型的には3700ng/mから740mg/mであるが、必要とされた場合、より高い用量又はより低い用量で投与されてもよい。例えば、例えば37μg/mから740mg/m、より典型的には370μg/mから740mg/m、又は3700μg/mから740mg/mであってよい。
【0028】
本発明の化合物A又はその塩は、単回の用量、例えば0.05~3000mgで経口に投与されてもよい。典型的には、範囲は10~1000mgであってよい。用量の典型的な例は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、及び1000mgを含む。用量は、例えば1mg、5mg、10mg、20mg又は50mgの増分/減分で上記の範囲(0.05~3000mg)の任意の用量から段階的に増加されてもよい、減少させてもよい。
【0029】
本発明に使用される化合物A又はその塩を含有する医薬組成物は、公知技術に従って製剤化することができる。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton、PA, USAを参照されたい。医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、気管支内投与、舌下投与、眼内投与、耳内投与、直腸内投与、膣内投与、又は経皮的投与のための任意の適切な形式であってもよく、これらのうち、経口投与での実施形態が好ましい。組成物が非経口投与を意図する場合、組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下投与用に製剤化されてもよいし、又は注射、注入(infusion)又は他の送達形式により標的の器官又は組織直接送達するために製剤化されてもよい。送達はボーラス注射、短期間注入、又は長期間注入によるものであってもよいし、受動送達又は適切な注入ポンプ又はシリンジドライバーを介したものであってもよい。
【0030】
本発明に使用される化合物A又はその塩は、結晶であってもよい。単一の結晶であっても多形結晶混合物であっても化合物A又はその塩の範囲内に包含される。結晶は、当該技術分野で公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。化合物A又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれも本発明化合物又はその塩に包含される。
【0031】
同位元素(例えば、H、14C、35S、125Iなど)などで標識された化合物Aも、本発明に使用される化合物A又はその塩の範囲に包含される。
【0032】
本発明に使用される化合物Aの塩とは、有機化学の分野で用いられる慣用的な塩を意味する。そのような塩の例としては、塩基付加塩及び酸付加塩が挙げられる。化合物Aの塩は好ましくは薬学的に許容される塩である。
【0033】
塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられる。
【0034】
酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、ギ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等が挙げられる。
【0035】
化合物Aの塩の1つの例は、安息香酸塩(benzoic acid salt又はbenzoate salt)である。化合物Aの塩の別の例は、メシル酸塩、エシル酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩又はトシラート塩である。
【0036】
本発明に使用される化合物A又はその塩は、その優れたLSD1阻害活性により、LSD1が関与する疾患の予防及び治療のための医薬として有用である。本発明の投与スケジュールはLSD1が関与する疾病を治療するのに有用である。
【0037】
「LSD1が関与する疾患又は障害」若しくは「LSD1の発現及び/又は活性により特徴付けられる」疾患及び障害は、本明細書では互換的に使用され、LSD1の機能を欠失、抑制及び/又は阻害することによって、発症率が低下、症状が寛解、緩和、及び/又は完治する疾患が挙げられる。このような疾患として、例えば、悪性腫瘍等が挙げられるがこれに限定はされない。化合物A又はその塩により治療される悪性腫瘍の種類は特に限定されない。そのような悪性腫瘍の例としては、例えば、頭頚部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨肉腫、軟部肉腫、白血病、骨髄異形性症候群、慢性骨髄増殖性疾患、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍、中皮腫等が挙げられる。好ましい例としては、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、白血病、骨髄異形性症候群が挙げられる。より好ましくは、例は肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌など)および白血病を含む。より好ましくは、例は小細胞肺癌(SCLC)および急性骨髄白血病(AML)を含む。
【0038】
本発明の化合物A又はその塩は医薬として用いるにあたっては、必要に応じて薬学的担体を配合し、予防又は治療目的に応じて適切な剤形とすることができる。剤形の例としては、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられる。これらのうち、経口剤が好ましい。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0039】
薬学的担体としては、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられてもよい。例えば、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
【0040】
経口用固形製剤は以下のように調製される。本発明の化合物Aに賦形剤に、任意に結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、得られた混合物は当業者に公知の方法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0041】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、無水ケイ酸等が挙げられる。結合剤としては、水、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、α-デンプン液、ゼラチン液、D-マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、精製タルク、ステアリン酸塩ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。矯味・矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0042】
経口用液体製剤を調製する場合は、化合物Aに矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて、得られた混合物は当業者に公知の方法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる
【0043】
矯味・矯臭剤としては、前記に挙げられたものでよく、緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム等が、安定剤としては、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。必要により、腸溶性コーティング又は、効果の持続を目的として、経口製剤に公知の方法により、コーティングを施すこともできる。このようなコーティング剤にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、Tween80(登録商標)等が挙げられる。
【0044】
注射剤を調製する場合は、化合物AにpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加してもよい。得られた混合物は、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製剤化することができる。
【0045】
使用可能なpH調節剤及び緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。使用可能な安定化剤の例としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。使用可能な局所麻酔剤の例としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。使用可能な等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D-マンニトール、グリセリン等が挙げられる。
【0046】
上記の各投与単位形態中に配合されるべき化合物Aの量は、これを適用すべき患者の症状により、或いはその剤形等により一定ではないが、一般に、投与単位形態あたり、経口剤では0.05~1000mg、注射剤では0.01~500mg、坐剤では1~1000mgとするのが望ましい。
【0047】
また、上記投与形態を有する薬剤の日用量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重50kg)の場合の化合物Aの日用量は、0.05~5000mg、好ましくは0.1~1000mgとすればよく、これを1日1回又は2~3回程度に分けて投与するのが好ましい。
【0048】
本発明の投与スケジュールは、化合物A又はその塩の単剤投与のために適用することができる。本発明の投与スケジュールは、他の薬と併用した化合物Aまたはその塩の投与のために適用することができる。化合物Aまたはその塩が他の薬と組み合わせて投与される場合、化合物Aまたはその塩は、それらの他の薬と同じ日に、又は同じタイミングで投与することもできるし、又は、化合物Aは他の薬と異なる日に、又は異なるタイミングで投与することもできる。そのような他の薬は、本発明の化合物A又はその塩の投与スケジュール中に、連続的に、散発的に又は間欠的に投与することができる。
【0049】
化合物A又はその塩を1つまたは複数の他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用すると、抗腫瘍結果が増強される。本発明は、そのような併用様式で化合物Aまたはその塩を使用した投与スケジュールを包含する。化合物A又はその塩と、1つまたは複数の他の抗腫瘍剤との組み合わせの形式は、単一の製剤(つまり配合剤)であってもよいし、併用投与される別個2以上の製剤の形態であってもよい。
【0050】
本発明において抗腫瘍効果は、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍成長の停滞や生存期間の延長などとして評価することができる。
【0051】
ある実施形態では、投与スケジュールは、化合物A又はその塩と1つまたは複数の他の抗腫瘍剤との組み合わせを含む抗腫瘍剤を投与することを含む。別の実施形態では、投与スケジュールは、化合物A又はその塩を有効成分として含有する、抗腫瘍剤のための抗腫瘍効果増強剤を投与することを含む。
【0052】
他の抗腫瘍剤としては、特に制限はされないが、例えば、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、分子標的薬、プラチナ系薬剤、植物アルカロイド系薬剤が挙げられる。
【0053】
代謝拮抗剤としては、5-フルオロウラシル(5-FU)、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(FdUrd)、テガフール、テガフール・ウラシル配合剤(例:ユーエフティー)、テガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤(例:ティーエスワン)、ペメトレキセド、トリフルリジン、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤(例:ロンサーフ)、ゲムシタビン、カペシタビン、ネララビン、クロファラビン、シタラビン、DNAメチル化阻害剤(アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン等)等が挙げられ、好ましくはシタラビン、又はアザシチジン、デシタビン、グアデシタビン等のDNAメチル化阻害剤であり、より好ましくはシタラビン、アザシチジン、デシタビン、又はグアデシタビンである。代謝拮抗剤の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,268,800号にも記載されている。
【0054】
抗腫瘍性抗生物質としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン等のアントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質、マイトマイシンC、ブレオマイシン等が挙げられ、好ましくはアントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質であり、より好ましくはダウノルビシンである。
【0055】
分子標的薬としては、例えば、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体、ヒトMDM2(mouse double minute 2)(HDM2;human double minute 2)阻害剤、若しくはHDAC阻害剤が挙げられる。
【0056】
オールトランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体として、好ましくはトレチノイン(ATRA)、又はタミバロテンであり、より好ましくはトレチノイン(ATRA)である。1つの実施形態では、ATRAは休止期間を設けず21日間のサイクル又は28日間のサイクルで毎日投与される。1つの実施形態では、ATRAは1日2回投与される。
【0057】
ヒトMDM2(HDM2)阻害剤は、好ましくはRG7388(RO5503781)、AMG-232、DS-3032b、RG7112(RO5045337)、SAR405838、MK-8242、若しくはいずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際出願第WO2018/178691号及び米国特許出願公開第2019/0055215号に記載されている(2S,3S)-3-(4-クロロフェニル)-3-[1-(4-クロロフェニル)-7-フルオロ-5-[(1S)-1-ヒドロキシ-1-(オキサン-4-イル)プロピル]-1-メトキシ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドル-2-イル]-2-メチルプロパン又は(2S,3S)-3-(4-クロロフェニル)-3-[1-(4-クロロフェニル)-7-フルオロ-5-[(1S)-1-ヒドロキシ-1-(オキサン-4-イル)プロピル]-1-メトキシ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドル-2-イル]-2-メチルプロパン酸などの1-メトキシイソインドリンであり、より好ましくはRG7388である。
【0058】
HDAC阻害剤としては、ボリノスタット、パノビノスタット、ロミデプシン、ベリノスタット等が挙げられる。
【0059】
分子標的薬として、好ましくは全トランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体、ヒトMDM2(HDM2)阻害剤、若しくはHDAC阻害薬であり、より好ましくはトレチノイン(ATRA)又はRG7388である。
【0060】
プラチナ系薬剤としては、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン等が挙げられ、好ましくはカルボプラチン、又はシスプラチンである。
【0061】
植物アルカロイド系薬剤としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エリブリン等の微小管阻害薬、イリノテカン(SN-38)、ノギテカン、エトポシド等のトポイソメラーゼ阻害薬が挙げられ、好ましくはパクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン系微小管阻害薬、又はイリノテカン(SN-38)、ノギテカン、エトポシド等のトポイソメラーゼ阻害薬であり、より好ましくはパクリタキセル、イリノテカン(SN-38)、又はエトポシドである。
【0062】
1つ又は複数の他の抗腫瘍剤は、好ましくは代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、分子標的薬、プラチナ系薬剤、又は植物アルカロイド系薬剤であり、より好ましくは代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、全トランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体、ヒトMDM2(HDM2)阻害剤、HDAC阻害剤、プラチナ系薬剤、又は植物アルカロイド系薬剤であり、より好ましくは代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、全トランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体、ヒトMDM2(HDM2)阻害剤、プラチナ系薬剤、又は植物アルカロイド系薬剤であり、より好ましくは代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、全トランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体、ヒトMDM2(HDM2)阻害剤、プラチナ系薬剤、トポイソメラーゼ阻害薬、又はタキサン系微小管阻害薬であり、より好ましくはシタラビン、DNAメチル化阻害剤、アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質、全トランス型レチノイン酸(ATRA)又はその誘導体、プラチナ系薬剤、トポイソメラーゼ阻害薬、又はタキサン系微小管阻害薬であり、より好ましくはシタラビン、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン、ダウノルビシン、トレチノイン(ATRA)、RG7388、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、イリノテカン(SN-38)、又はエトポシドである。
【0063】
1つ又は複数の他の抗腫瘍剤には、それらの薬物送達システム(DDS)の製剤も含まれる。例えば、「パクリタキセル」はアルブミン懸濁型パクリタキセル(例:アブラキサン)及びパクリタキセルミセル(例:NK105)等、「シスプラチン」はシスプラチンミセル(例:NC-6004)等を含む。
【0064】
本発明の投与スケジュールはさらに、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の予防にも適用可能である。本発明の投与スケジュールはさらに、外科手術前又は外科手術後の投与、若しくは補助薬化学療法(アジュバント療法)又は補助薬化学療法後の補助薬化学療法(ポストアジュバント療法)としての投与にも適用可能である。
【0065】
請求項にかかわらず、本発明の態様及び典型的な実施形態を以下の節により説明する:
【0066】
項[1].ある実施形態において、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の予防及び/又は治療を必要とする患者のLSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間の連続的な毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで患者に投与することを含む。
【0067】
項[2].別の実施形態において、項[1]に記載の方法は、1週間の連続的な毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む2週間のサイクルに基づく投与スケジュールを含むことができ、サイクルは1回行なわれるか、または2回以上繰り返される。
【0068】
項[3].別の実施形態では、項[1]又は[2]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を1週間の間1日1回投与することを含む。
【0069】
項[4].別の実施形態では、項[1]、[2]又は[3]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を経口投与することを含む。
【0070】
項[5].別の実施形態では、項[1]、[2]、[3]又は[4]に記載の方法は、腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0071】
項[6].別の実施形態では、項[1]、[2]、[3]、[4]又は[5]に記載の方法は、悪性腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0072】
項[7].別の実施形態では、項[1]、[2]、[3]、[4]又は[5]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、体重1キログラム当たり10ナノグラムから20ミリグラムの範囲の日用量で投与することを含む。
【0073】
項[8].別の実施形態では、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を有する患者を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間の連続的な毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで患者へ投与することを含む。
【0074】
項[9].別の実施形態では、項[8]に記載の方法、3週間のサイクルに基づく投与スケジュールを含むことができ、サイクルが1回又は2回以上繰り返される。
【0075】
項[10].別の実施形態では、項[8]又は[9]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を2週間の間、1日1回投与することを含む。
【0076】
項[11].別の実施形態では、項[8]、[9]又は[10]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を経口投与することを含む。
【0077】
項[12].別の実施形態では、項[8]、[9]、[10]又は[11]に記載の方法は、腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0078】
項[13].別の実施形態では、項[8]、[9]、[10]、[11]又は[12]に記載の方法は、悪性腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0079】
項[14].別の実施形態では、項[8]、[9]、[10]、[11]、[12]又は[13]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、体重1キログラム当たり10ナノグラムから20ミリグラムの範囲の日用量で投与することを含む。
【0080】
項[15].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、28日間のサイクルの間の特定の複数の日に1日1回、単剤として患者に投与することを含む。
【0081】
項[16].別の実施形態において、項[15]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間毎日投与し、これに1週間の休止期間が続くことを含む。
【0082】
項[17].別の実施形態において、急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、21日間のサイクルの間の特定の複数の日に1日1回、単剤として患者に投与することを含む。
【0083】
項[18].別の実施形態では、項[17]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を2週間投与し、これに1週間の休止期間が続くことを含む。
【0084】
項[19].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、28日間のサイクルの間の特定の複数の日に、患者に投与することを含む。
【0085】
項[20].別の実施形態では、項[19]に記載の方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を1週間毎日投与し、これに1週間の休止期間が続くことを含む。
【0086】
項[21].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)の治療を必要とする患者の急性骨髄白血病(AML)を治療する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、21日間のサイクルの間の特定の複数の日に、患者に投与することを含む。
【0087】
項[22].別の実施形態では、項[21]に記載の方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間投与し、これに1週間の休止期間が続くことを含む。
【0088】
項[23].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む。
【0089】
項[24].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML) と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、2週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間を含む投与スケジュールで前記患者に投与することを含む。
【0090】
項[25].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML) と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、1週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで、患者に投与することを含む。
【0091】
項[26].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)と診断された患者のAMLの再発又は死のリスクを低減する方法は、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はそれ塩を、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、2週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで、患者に投与することを含む。
【0092】
項[27].別の実施形態では、請求項15~18のいずれか一つに記載の方法は、AMLの再発又は死のリスクを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%又は少なくとも約25%減らすことができる。
【0093】
項[28].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、医薬は1週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される。
【0094】
項[29].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は2週間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される。
【0095】
項[30].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、1週間の毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される。
【0096】
項[31].別の実施形態では、急性骨髄白血病(AML)を治療するための医薬の製造のための、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む化合物の使用であって、前記医薬は、1日2回のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて、2週間の間の毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで投与されるよう調製される。
【0097】
項[32].本発明のいくつかの態様は、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の予防及び/又は治療を必要とする患者のLSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物を包含し、医薬組成物は4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含有し、1週間の連続的な毎日投与とその後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで患者に投与される。
【0098】
項[33].別の実施形態では、項[32]に記載された医薬組成物は薬学的担体を含有する。
【0099】
項[34].別の実施形態では、項[32]又は[33]に記載された医薬組成物は、2週間のサイクルに基づく投与スケジュールで投与され、サイクルは1回行われるか、又は2回以上繰り返される。
【0100】
項[35].別の実施形態では、項[32]、[33]、又は[34]に記載された医薬組成物は、1週間の間1日1回投与される。
【0101】
項[36].別の実施形態では、項[32]、[33]、[34]、又は[35]に記載された医薬組成物は経口組成物である。
【0102】
項[37].別の実施形態では、項[32]、[33]、[34]、[35]、又は[36]に記載された医薬組成物は、腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0103】
項[38].別の実施形態では、項[32]、[33]、[34]、[35]、[36]、又は[37]に記載された医薬組成物は、悪性腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0104】
項[39].別の実施形態では、項[32]、[33]、[34]、[35]、[36]、[37]、又は[38]に記載された医薬組成物は、体重1キログラム当たり10ナノグラムから20ミリグラムの範囲の日用量で投与される。
【0105】
項[40].本発明のいくつかの態様は、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の治療を必要とする患者のLSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療するための医薬組成物を包含し、医薬組成物は4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含有するとともに、医薬組成物は2週間の連続する毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで患者に投与される。
【0106】
項[41].別の実施形態では、項[40]に記載された医薬組成物は、さらに薬学的担体を含有する。
【0107】
項[42].別の実施形態では、項[40]又は[41]に記載の医薬組成物は、3週間のサイクルに基づく投与スケジュールで投与され、サイクルは1回行われるか、又は2回以上繰り返される。
【0108】
項[43].別の実施形態では、項[40]、[41]又は[42]に記載の医薬組成物は、1週間の間1日1回投与される。
【0109】
項[44].別の実施形態では、項[40]、[41]、[42]、又は[43]に記載の医薬組成物は経口組成物である。
【0110】
項[45].別の実施形態では、項[40]、[41]、[42]、[43]、又は[44]に記載の医薬組成物は、腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0111】
項[46].別の実施形態では、項[40]、[41]、[42]、[43]、[44]又は[45]に記載の医薬組成物は、悪性腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療するために使用される。
【0112】
項[47].別の実施形態では、項[40]、[41]、[42]、[43]、[44]、[45]又は[46]に記載の医薬組成物は、体重1キログラム当たり10ナノグラムから20ミリグラムの範囲の日用量で投与される。
【0113】
項[48].別の実施形態では、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の予防及び/又は治療のための薬物の製造のための方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含有する組成物を調製することを含み、薬物は、1週間の連続的な毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで患者に投与される。
【0114】
項[49].別の実施形態では、薬物を調製する方法は、項[48]に記載の組成物を調製することを含み、組成物は2週間のサイクルに基づく投与スケジュールで投与され、サイクルは1回行われるか、又は2回以上繰り返される。
【0115】
項[50].別の実施形態では、薬物を調製する方法は、項[48]又は[49]に記載の組成物を調製することを含み、組成物は1週間の間1日1回投与される4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含む。
【0116】
項[51].別の実施形態では、薬物を調製する方法は、項[48]、[49]、又は[50]に記載の組成物を調製することを含み、組成物は4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含有し、経口投与用である。
【0117】
項[52].別の実施形態では、薬物を調製する方法は、腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害の治療に使用される項[48]、[49]、[50]又は[51]に記載の組成物を調製することを含む。
【0118】
項[53].別の実施形態では、薬物を調製する方法は、悪性腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害の治療に使用される項[48]、[49]、[50]、[51]、又は[52]に記載の組成物を調製することを含む。
【0119】
項[54].別の実施形態では、薬物を調製する方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を含有し、体重1キログラム当たり10ナノグラムから20ミリグラムまでの範囲の日用量で投与される、項[48]、[49]、[50]、[51]、又は[52]に記載の組成物を調製することを含む。
【0120】
項[55].ある実施形態では、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、2週間の連続的な毎日投与と、その後の1週間の休止期間とを含む投与スケジュールで、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はそれの塩を、LSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害の治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0121】
項[56].別の実施形態では、項[55]に記載の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、3週間のサイクルに基づく投与スケジュールで、スケジュールを1回行うか又は2回以上繰り返して、有効量の4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を患者に投与することを含む。
【0122】
項[57].別の実施形態では、項[55]又は[56]に記載の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を2週間の間1日1回投与することを含む。
【0123】
項[58].別の実施形態では、項[55]、[56]、又は[57]に記載の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を経口投与することを含む。
【0124】
項[59].別の実施形態では、項[55]、[56]、[57]又は[58]に記載のLSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療することを含む。
【0125】
項[60].別の実施形態では、項[55]、[56]、[57]、[58]又は[59]に記載のLSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、悪性腫瘍の存在により特徴付けられる疾患又は障害を治療することを含む。
【0126】
項[61].別の実施形態では、項[55]、[56]、[57]、[58]、[59]又は[60]に記載のLSD1の発現により特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法は、体重1キログラム当たり10ナノグラムから20ミリグラムの範囲の日用量で4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル又はその塩を投与することを含む。
実施例
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。本発明は実施例により十分に説明されているが、当業者により種々の変更や修飾が可能であろうことは理解される。したがって、そのような変更や修飾が本発明の範囲を逸脱するものでない限り、それらは本発明に包含される。
参照例1.試験化合物Aが造血幹細胞に影響しないため、間欠的投薬は化合物Aのためのより有効な治療方法である
【0128】
化合物Aの塩酸塩(参照例1では、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルの塩酸塩を使用した。この化合物を便宜上「試験化合物A」と称する。)の連続的投薬により、ラット、イヌ及びサルにおいて重度の血小板減少症および好中球減少症が誘発された(データ非図示)。しかしながら、それらの毒性は投薬の停止後に回復した。したがって、試験化合物Aの間欠的投薬による毒性とその可逆性を、試験化合物Aを経口投与した6週齢の雄のCrl:CD(SD)ラット(日本チャールズ・リバー株式会社)にて評価した。事前試験群 (1週間ON+1週間OFFの投薬レジメン)の場合、1サイクルの試験化合物Aの投与を行なった。グループI(1週間ON+1週間OFFの投薬レジメン)の場合、2サイクルの試験化合物Aの投与を行い、各サイクルは7日連続(1週間)で1日1回の投与期間と7日(1週間)の休止期間とから成るものとした。グループII(2週間ON+1週間OFFの投薬レジメン)の場合、試験化合物Aを14日連続(2週間)で1日1回投与し、7日(1週間)の休止期間とした。休止期は回復のための無投薬期間である。試験化合物Aは5mg/mLのヒプロメロース溶液で懸濁した。対照の場合、試験化合物Aを含有しない溶媒(vehicle)を動物に投与した。
【0129】
試験化合物Aを、各々5mL/kgの投薬体積で、0mg/kg(対照としての溶媒)、4mg/kg (事前試験群用のみ)、及び16mg/kg (グループIおよびグループII用)の用量で投与した。すべてのラットについて、血液検査及び骨髄スメア検査を行なった。事前試験群については、8日目と15日目にサンプルを採集した。グループIについては、試験化合物Aで処理した動物は8日目、15日目、22日目及び29日目にサンプルを採集し、溶媒で処理した動物用は8日目と29日目にサンプルを採集した。グループIIについては、試験化合物Aで処理した動物及び溶媒で処理した動物の両方で、15日目と22日目にサンプルを採集した。
【0130】
血液検査では、各ラットをイソフルラン麻酔下で開腹し、針付きのディスポーザブル注射筒を使用して下大静脈から採血した。採集した血液は、ADVIA2021iMulti-Species血液学システムを使用して血液検査を行うために、EDTA-2Kを含有する容器に約1mLの体積として分注した。血液採集後、死体を解剖し、ラットから骨髄を採集した。骨髄液を採集し、ラット血漿と混合し、Wedge法でスメアスライド(塗抹標本スライド)を製造するために使用した。骨髄スメアサンプルをMay-Grunwald Giemsa染色で染色し、顕微鏡検査に供した。細胞の種類の代表的な比率を維持するために、種々の顕微鏡視野の各々で、全細胞のうち約200個の細胞の数(百分率)を計測した。
【0131】
これらの研究のすべての動物実験プロトコルは、大鵬薬品工業株式会社の動物実験用ガイドライン(Guidelines for Animal Experiment of Taiho Pharmaceutical Co., Ltd.)に基づいて動物実験委員会で判断し、研究所所長により承認された。動物の取り扱いはこれらのガイドラインに従って適切に行った。
【0132】
4mg/kgの試験化合物Aで処理したラットでは、血小板の減少 (血小板減少症)及び好中球の減少 (好中球減少症)は試験化合物Aの処理によっては誘導されなかった (データ非図示)。したがって、4mg/kgは間欠性投薬毒性の評価には不十分であった。
【0133】
図1A、1B、2A及び2Bは、末梢血サンプルの血液分析の結果を示す。血液学では、16mg/kgの試験化合物Aで処理したグループIのラットは、1週間後に血小板と好中球の減少を示した( 図1A (血小板)及び図1B (好中球)、「1 week」のカラム、右側の塗りつぶしたバー)。16mg/kgの試験化合物Aで処理したグループIIのラットも、2週間後に血小板と好中球の減少を示した(図2A (血小板)及び図2B(好中球)、「2 week」のカラム、右側の塗りつぶしたバー)。他方、グループI及びグループIIのいずれのラットでも、1週間の試験化合物Aの投薬の停止又は休止後に、血小板と好中球の数は劇的に回復した (リバウンドして上昇した) (図1A (血小板)及び図1B (好中球)、「2 week」のカラム、右側の塗りつぶしたバー)。
;図2A (血小板)及び図2B (好中球)、「3 week」のカラム、右側の塗りつぶしたバー。)
【0134】
図3、4A及び4Bは、スメア分析の結果を示す。この診察では、骨髄芽球、他の前駆細胞、及び幹細胞は、試験化合物Aによる処理の影響を受けなかった。骨髄球、後骨髄球、及び成熟した好中球などの好中球系細胞は、投与期間(1週間又は2週間)の最後に減少した(データ非図示)。さらに、異常な形をした好中球系骨髄球が現われた(図3)。対照的に、好中球系列の前骨髄細胞は同じ期間に増加した。しかしながら、好酸球系列及び好塩基球系列のような他の骨髄球系列では増加は見出されなかった。これらの知見は、試験化合物Aが好中球系列における前骨髄細胞から骨髄球への骨髄分化ステップに影響を及ぼすことを示した。さらに、血小板系列では、正常な巨核球は重度に減少して脆弱となるか、形態が異常な巨核球(図4A及び4B)が投薬期間の最後に著しく増加した(データ非図示)。投薬の1週間の停止後、好中球系列の細胞(特に成熟した好中球)は著しく増加し、異常な巨核球は消失した。
【0135】
これらの結果は、試験化合物Aがラットにおいて骨髄抑制を誘発し、好中球系列及び血小板系列の骨髄分化ステップに影響を及ぼすことを示唆した。しかしながら、試験化合物Aは造血幹細胞、前駆細胞及び骨髄芽球には影響しなかった。したがって、これらの骨髄抑制結果は1週間の投薬の停止後に消失した。最後に、停止期間(少なくとも1週間)を設けた間欠的投薬レジメンは、試験化合物Aの連続投与により誘発される骨髄抑制を管理及び制御するために試験化合物Aにとって重要である。
参照例2.マウスにおける間欠投与スケジュールの抗腫瘍効果及び体重変化(1週間ON+1週間OFF及び2週間ON+1週間OFFは試験化合物Aによって生じる毒性を回避しつつ抗腫瘍結果を示す非常に有用な方法である)
【0136】
(参照例2において、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル)の安息香酸塩を使用した。この化合物を便宜上「試験化合物A」と称する。ヒト小細胞肺癌(NCI-H1417、アメリカンタイプカルチャーコレクション)細胞を、雄SCIDマウス(日本チャールズ・リバー株式会社)の右胸部に移植した。腫瘍の移植後、腫瘍の長軸(mm)と短軸(mm)を測定し、腫瘍体積 (TV)を計算した。その後、各群の平均TVが同等になるようマウスを群分けした。群分け (n=5)を行った日を0日目とした。試験化合物Aを以下のように調製した:0mg/kg/日(化合物を含まない溶媒)、100mg/kg/日および150mg/kg/日。1日目から、化合物を経口で、0mg/kg/日で3週間1日1回投与するか(対照)、100mg/kg/日で3週間連続して1日1回投与するか(連続群:3週間ONレジメン)、150mg/kg/日で連続して7日間1日1回投与し、その後7日間(1週間)の休止期間を設け、その後150mg/kg/日で連続して7日間1日1回投与するか(グループI:1週間ON+1週間OFFレジメン)、100mg/kg/日で2週間1日1回投与し、その後7日間(1週間)の休止期間を設けた(グループII:2週間ON+1週間OFFレジメン)。化合物Aの投薬量は各投薬スケジュールの最大耐用量(MTD)である。評価期間は21日に設定し、最終評価日を22日目と設定した。
【0137】
TV (mm)= (長軸×短軸) /2
【0138】
投薬期間中の抗腫瘍効果の指標として、TVを各グループで経時的に測定した(図5)。
【0139】
投与期間中の毒性の指標として、体重(BW)は経時的に測定し、0日目の体重に対する平均体重変化[BWC(%)]を下記の式により最終評価日まで計算した(n:一週間に2回行った体重測定の日;採集測定日は、最終評価日である22日目に相当する。)図6は結果を示す。
【0140】
BWC(%)=[(n日目のBW))-(0日目のBW)]/(0日目の体重)×100
【0141】
図5は抗腫瘍結果を示す。0日目と比較して、連続群、グループI群、グループII 群では22日目に平均TV値の退縮が観察されたが、対照群では投与期間に平均TVが4倍を超えて増大した。対照群を除くすべての群の平均TV値は、投薬期間で同等であった。効果の評価アセスメントは以下の通りであった:投与群の平均TV値は、対照群の平均TV値よりも統計学的に優位に低かった(Dunnett‘s t検定、p<0.001)(符号***は、対照群から統計学的有意差が観察されたことを示す。)。他方、間欠投与群 (グループI群及びグループII群)の各々と対照群との間の抗腫瘍効果を比較した場合、群間には統計学的有意差は観察されなかった (Aspin-Welch t検定)。したがって、抗腫瘍結果はあり、その効果はすべての化合物を投与された群間で同じであることが決定された。
【0142】
図6は体重変化を示す。体重に対する化合物の投与の影響に関しては、連続群で体重減少が観察された。他方、グループI及びグループIIなどの間欠的投薬群は、22日目に体重減少を示さなかった。したがって、1週間ON+1週間OFFレジメンおよび2週間ON+1週間OFFのような間欠的投薬スケジュールは、連続的な毎日投薬レジメン (3週間ON)と比較して体重減少を改善した。
【0143】
抗腫瘍結果は間欠的投薬群と連続的毎日投薬群との間で同じであるため、上記の結果により、間欠的レジメンがより毒性の少ない投薬スケジュールであることが明らかとなった。
【0144】
1週間ON+1週間OFFレジメン及び2週間ON+1週間OFFレジメンのような間欠性投薬スケジュールにより試験化合物Aを投与する方法は、臨床治療での化合物の投与に起因する毒性を回避しつつ抗腫瘍結果を示す、非常に有用な方法になると十分に予想される。
参照例3.再発性又は難治性の急性骨髄白血病に罹患している被験者におけるオールトランス型レチノイン酸と組み合わせた試験化合物Aに関する研究
【0145】
(参照例3では、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル)又はその薬学的に許容される塩を使用する。また、この化合物を便宜上「試験化合物A」と称する。)
【0146】
これは、再発したか又は先の治療に対して難治性(r/r)の急性骨髄白血病(AML)に罹患している参加者における、単剤として投与した試験化合物Aと、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせて投与した試験化合物Aの、安全性、薬物動態学、薬物動力学、及び予備臨床活性を評価するための多施設2部制の第1相試験である。試験期間は約30か月であると予想される。
【0147】
【表1】
研究設計
【0148】
試験タイプ:介入
【0149】
推定の登録者数:50名の参加者
【0150】
割り当て:非無作為化
【0151】
介入モデル:逐次割り当て
【0152】
マスキング:なし(オープンラベル)
【0153】
主目的:治療
【0154】
公式タイトル: 再発性又は難治性 (r/r)の急性骨髄白血病(AML)に罹患している被験者における、試験化合物Aの、単剤としての又はオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と組み合わせての安全性、薬物動態学、及び予備活性の第1相試験
【0155】
【表2】
評価項目
【0156】
主要な評価項目:
【0157】
1. 安全性:治療により出現した有害事象(TEAE)を有する参加者の数[時間枠:約30か月]
【0158】
2. 安全性:有害事象(AE)を有する参加者の数[時間枠:約30か月]
【0159】
副次的評価項目:
【0160】
1. 奏功率:
パート2における完全寛解(CR)、不完全な血球数回復を有する完全寛解(CRi)、部分的寛解(PR)、及び部分的な血液回復を有する完全緩解(CRh)の参加者数[時間枠:約30か月]
【0161】
2. 全体生存期間:
任意の原因による死までの最初の投薬日からの時間[時間枠:約30か月]
【0162】
3. 薬物動態パラメータ:
曲線下面積(AUC)[時間枠:サイクル1及びサイクル2の8日目まで (1サイクル当たり28日)]
【0163】
4. 薬物動態パラメータ:
最大血漿濃度(Cmax)[時間枠:サイクル1及びサイクル2の8日目まで(1つのサイクル当たり28日) ]。
【0164】
5. 薬物動態パラメータ:
最小血漿濃度(Cmin)[時間枠:サイクル1及びサイクル2の8日目まで(1つのサイクル当たり28日) ]。
【0165】
6. 薬物動態パラメータ:
最大血漿濃度に達する時間(Tmax)[時間枠:サイクル1及びサイクル2の8日目まで (1つのサイクル当たり28日) ]。
【0166】
7. 薬物動態パラメータ:
半減期(t1/2)[時間枠:サイクル1及びサイクル2の8日目まで (1つのサイクル当たり28日)]。
適格性基準
【0167】
試験に適格な年齢:
18歳以上
【0168】
試験に適格な性別:
すべて
【0169】
ジェンダーベース:なし
【0170】
健康なボランティアの受け入れ:なし
試験対象/除外基準
【0171】
試験対象基準:
【0172】
1. 少なくとも12週間の計画された平均寿命を有し、治療の1つの完全なサイクル(4週)を完了するのに安定な状態にある。
【0173】
2. 世界保健機関(WHO)2016基準によるAMLの組織学的確認をしており、他のすべての利用可能な従来の療法が失敗している者。
【0174】
3. 登録時>5%の末梢血又は骨髄の芽球数を有する。
【0175】
4. 以下の疾患を有する:
【0176】
a. アントラサイクリン及びシタラビン併用療法を含むがこれに限定されない標準導入化学療法に難治性である、又は
【0177】
b. アントラサイクリンおよびシタラビン療法、又は幹細胞移植(SCT)の後に再発した、又は
【0178】
c. 低メチル化剤を単独で又は組み合わせて含むフロントラインレジメンの後で難治性であるか又は再発した。
【0179】
5. 0から1までの米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)の全身状態を有する。
【0180】
6. 血清クレアチニン≦1.5× 正常上限値 (ULN)又は≧60mL/分の計算されたクレアチニンクリアランス(標準コッククロフトゴールト式)により実証される充分な腎機能を有する
【0181】
7. 下記により実証される適切な肝機能を有する:
【0182】
a. アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT) <3×正常上限値(ULN)
【0183】
b. AST及びALT <5×ULN (白血病の器官関与により考慮される場合)
【0184】
8. 出産の可能性がある女性(臨床試験促進グループ[TCFG]の推薦による)は妊娠していてはならならず、授乳中であってはならず、かつスクリーニングで妊娠試験が陰性でなければならない。
【0185】
除外基準:
【0186】
1. 公知の臨床的に活性な中枢神経系(CNS)白血病。
【0187】
2. BCR-ABL陽性の白血病。
【0188】
3. 急性前骨髄球性白血病(M3AML又はAPML又はAPL)の診断。
【0189】
4. 内分泌療法に対して安定であるか又は応答性の乳癌又は前立腺癌を除く、現在有効な療法を必要とする二次性悪性腫瘍。
【0190】
5. グレード3以上の移植片対宿主病(GVHD)、又は下記のいずれかによる治療を必要とするGVHD:
【0191】
a.カルシニューリン阻害剤、又は
【0192】
b.5mg/日を超えるプレドニゾン(注: 他の適応のための任意の用量のプレドニゾンが許容される)。
【0193】
6.血清総ビリルビン≧1.5×ULN (直接ビリルビンが>2.5×ULNであるジルベール症候群の患者を除く)、又は肝硬変、又は慢性肝炎チャイルド・ピュー クラスB又はC。
【0194】
7. 公知の活性のヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)又はC型肝炎ウイルス(HCV)感染。不活性の肝炎キャリアー状態又は抗ウイルス薬で治療された低ウイルス性肝炎タイターは許容される。ウイルスへの暴露のリスクが考えられる被験者は、血液検査で陰性を確認すべきである。
【0195】
8. 調査者の見解で、プロトコルに対して患者の非遵守の可能性を高くする活発なアルコール又は他の物質の乱用又は中毒などの公知の重要な精神病又は他の状態。
【0196】
9. ニューヨーク心臓協会(NYHA)基準(クラスIII又はIV病期分類)により心不全となる任意の原因(例えば心筋症、虚血性心疾患、重要な弁の機能不全、高血圧性心疾患、又はうっ血性心不全)の心筋損傷。
【0197】
10. >480ミリ秒の測定可能なQTc間隔での12リード心電図検査のスクリーニング (Fridericia又はBazettの補正による)。
【0198】
11. 活発で制御不能な感染症。治療(抗生物質、抗真菌剤、又は抗ウイルス治療)を受けている感染症を有する参加者は、登録前の≧72時間に、熱がなく、血行力学的に安定していなければならない。
【0199】
12. >2L/分(LPM)の酸素を必要とする非AML関連性の肺疾患。
【0200】
13. 総白血球数が20,000/μL又は>50%の芽球(blast)の高い疾病負荷の増殖性AML(骨髄又は末梢血で)
【0201】
14. 参加者を死の切迫した危険にさらす他の状態。
【0202】
15. 研究治療の最初の投薬の2週間以内に任意の調査療法で治療された。
【0203】
16. 経口の薬を飲みこむ能力がない。
【0204】
17. ATRA、任意のその成分、又は他のレチノイドに対する既知の過敏症。
【0205】
18. パラオキシ安息香酸エステルに対する既知の感受性。
図1A
【図
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】