(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】容易で安全な方法で眼圧を低下させることができる眼疾患用インプラント装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527864
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 KR2020014288
(87)【国際公開番号】W WO2021101080
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0148783
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520224557
【氏名又は名称】マイクロト インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROT INC.
【住所又は居所原語表記】#157 Cancer Center,81,Irwon-ro Gangnam-gu,Seoul 06351,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジョン チョル
(57)【要約】
(要約)本発明は眼疾患用インプラント装置に関するもので、本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、眼房水を排出するための中空が形成されたチューブを含み、チューブの外面の一領域には前記チューブの長手方向と異なる方向に延びる1つ以上の翼が形成されることができる。また、チューブの一端が挿入される収容空間が設けられた本体を更に含むことができる。この時、チューブは前記一端が収容空間に挿入されて本体と結合されるか、一端が脱離されて本体から分離されることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼房水を排出するための中空が形成されたチューブを含み、
前記チューブの外面の一領域には前記チューブの長手方向と異なる方向に延びる1つ以上の翼が形成されることを特徴とする眼疾患用インプラント装置。
【請求項2】
前記翼は折り畳み可能に構成され、前記チューブがインジェクタによって眼球の前房に挿入される過程で展開されることによって、前記チューブが所定のポイントを超えて挿入されることを防止し、前記チューブの位置を固定する請求項1に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項3】
前記翼は直線棒状、先細り棒状、三角形または円形のうちの1つであることを特徴とする請求項2に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項4】
前記チューブの外面の一領域には前記チューブの眼球内位置を確認するための色付きマーカーが突出形成されることを特徴とする請求項1に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項5】
前記チューブは、前記チューブによる眼球内角膜内皮の損傷を防ぐために所定の曲率を有する曲線状に形成することを特徴とする請求項1に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項6】
前記チューブを挿入するための固定孔を含み、前記チューブの長手方向と異なる方向に延びて前記翼を形成する支持台を更に含む請求項1に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項7】
前記チューブの一端が挿入される収容空間が設けられた本体を更に含み、
前記チューブは前記一端が前記収容空間に挿入されて前記本体と結合されるか、前記一端が脱離されて前記本体から分離されることを特徴とする請求項1に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項8】
前記眼房水の排出量を調節するために前記チューブの中空に引き込み可能な芯材を更に含む請求項1に記載の眼疾患用インプラント装置。
【請求項9】
前記芯材は所定のポイントを基準に直径が変化することを特徴とする請求項8に記載の眼疾患用インプラント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼疾患用インプラント装置に関するもので、より詳細には、眼球内に挿入される過程で手術者が容易で安全に配置及び固定することができる構造を有し、必要または状況に応じてチューブと本体を結合または分離することができる眼疾患用インプラント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼圧降下剤を使用しても眼圧が調節されない緑内障患者は、眼の前房(anterior chamber)から房水(aqueous humor)が目外の結膜下に排出されるようにバイパスを形成して眼圧を低下させる。房水排出のためのバイパスまたは瘻孔を形成する緑内障濾過術のうち、線維柱帯切除術(Trabeculectomy)は手術後に再びバイパスが閉鎖される。そのため房水排出量が減少して眼圧調節に失敗することがある。一次手術に失敗して緑内障濾過術を再施行する場合には、手術後にバイパスが閉鎖される頻度が高くなり、手術成功率が低下する。
【0003】
また、緑内障の種類に応じて新生血管緑内障やブドウ膜炎による二次緑内障のように、いわゆる難治性緑内障の場合でも 線維柱帯切除術後にバイパスの閉鎖が頻繁に発生するなど、その結果が良くない。このように緑内障濾過手術に失敗した過去履歴がある目や難治性緑内障の場合には、バイパスの閉鎖を防止して手術成功率を高めるために緑内障インプラント装置を配置する手術(Glaucoma implant surgery)を行う。現在まで緑内障インプラントは眼圧を効果的に低下させるだけでなく、定められたチューブの内径に応じて予測可能な術後臨床経過を示す点で、特に治療が困難ないくつかの緑内障において線維柱帯切除術の代替として使用されてきた。
【0004】
しかしながら、緑内障インプラント手術に使用される既存の緑内障インプラントは、相対的に大きなサイズによる手術の難しさ、手術後露出、感染、大きな胴体による眼球運動障害、これによる複視など、様々な問題及び合併症を引き起こす恐れがある。従って、近年は小さなサイズの緑内障インプラントツール(MIGS;microinvasive glaucoma surgery)が開発されて、相対的に容易に緑内障インプラントを用いて眼圧を低下させながら、大きなサイズによる手術後の副作用を減少させることができるようにしている。
【0005】
小さなサイズの緑内障インプラントを用いた手術は結膜下で小さなサイズの緑内障インプラントを眼球の前房に挿入するだけで手術を仕上げることができる点などの長所がある。しかし、どのように眼球の前房内に1)容易で、2)安全に挿入できるかについてはまだ多くの議論の余地がある。通常、緑内障インプラント装置を配置する手術は、眼球の結膜組織またはテノン組織を剥離させた後、手術者が直接チューブを前房内に入れる方法と、インジェクタ(injector)を用いて注入する方法に区分することができる。
【0006】
手術者が直接チューブを前房に入れる方法は、房水を排出するための眼球内部の位置に緑内障インプラント装置を手術者が見ながら配置することができるが、緑内障インプラントを直接載置する過程で損傷する恐れがあり、手術を行う臨床医の高い熟練度が求められる短所がある。一方、インジェクタを用いた注入術は手術者の経験に大きく関係なく前房内にインプラントを挿入することができるが、この場合でも房水が排出できる正確な位置に緑内障インプラント装置を安定的に配置及び固定することは依然として困難な短所が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述のような問題点を解決するためのものであり、眼球内に配置または注入される過程で手術を行う臨床医がチューブの位置を正確に把握することができながらも、チューブが正確な位置で安定的に固定されるように構造化した眼疾患用インプラント装置を提供することにその目的がある。
【0008】
また、本発明は眼球内に配置または注入されたチューブによる眼球の損傷及び合併症を最小化するための構造を有し、必要または状況に応じてチューブと本体を結合または分離することができる眼疾患用インプラント装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、眼房水を排出するための中空が形成されたチューブを含み、チューブの外面の一領域には前記チューブの長手方向と異なる方向に延びる1つ以上の翼が形成されることができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る翼は折り畳み可能に構成され、チューブがインジェクタによって眼球の前房に挿入される過程で展開されることによって、チューブが眼球の前房に所定のポイントを超えて挿入されることを防止し、チューブの位置を固定することができる。
本発明の一実施形態に係る翼は直線棒状、先細り棒状、三角形または円形のうちの1つであり得る。
本発明の一実施形態に係るチューブの外面の一領域にはチューブの眼球内位置を確認するための色付きマーカーを突出形成することができる。
本発明の一実施形態に係るチューブは、チューブによる眼球内角膜内皮の損傷を防ぐために所定の曲率を有する曲線状に形成することができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、前記チューブを挿入するための固定孔を含み、前記チューブの長手方向と異なる方向に延びて前記翼を形成する支持台を更に含むことができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、チューブの一端が挿入される収容空間が設けられた本体を更に含むことができる。この時、チューブは前記一端が収容空間に挿入されて本体と結合されるか、一端が脱離されて本体から分離されることができる。
本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、眼房水の排出量を調節するためにチューブの中空に引き込み可能な芯材を更に含むことができる。
本発明の一実施形態に係る芯材は所定のポイントを基準に直径が変化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態として提供される眼疾患用インプラント装置によれば、チューブに形成されたマーカー及び翼を通じて眼球内に配置または注入される過程でチューブが正確な位置に載置すると共に、安定的に固定することができるので、臨床医の手術便宜性及び患者の手術安定性を確実に確保することができる。
【0014】
また、従来とは異なり、眼球表面の曲率に沿って曲線を形成するように作製されたチューブを通じて眼球内に配置または注入されたチューブによる角膜内皮の損傷及びそれによる角膜不全などの副作用を最小化することができる。
【0015】
更に、チューブと本体を選択的に結合または分離して使用することによって、臨床的状況、患者の状態などを考慮した最適の手術が可能である。即ち、従来に比べて効果的な眼房水の排出及び眼疾患の治療を行うことができる手術条件及び環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置が眼球内に挿入された様子を示す使用状態図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るチューブの側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るチューブの平面図である。
【
図4】本発明の他の一実施形態に係るチューブの平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るインジェクタを通じてチューブが眼球内に挿入される過程を示す使用状態図である。
【
図6A】本発明のまた他の実施形態に係るチューブの斜視図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係るチューブと本体の結合過程を形状化した概念図である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係るチューブと本体が結合された状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るチューブ内に引き込まれた芯材の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される用語について簡単に説明し、本発明について具体的に説明することにする。
【0018】
本発明の実施形態で使用される用語は、本発明における機能を考慮しつつ可能な限り現在広く使われる一般的な用語を選択しているが、それは当分野に従事する技術者の意図または判例、新たな技術の実現などによって変わってよい。なお、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、当該発明の説明で詳細にその意味を記載することとする。よって、本発明で使用される用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語の有する意味と本発明の全般にわたる内容に基づいて定義されるべきである。
【0019】
明細書全体でどの部分がどのような構成要素を「含む」とする時、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素を更に含むことができることを意味する。また、 明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、「その中間に他の構成要素を介して」連結されている場合も含む。
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現されることもあり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして図面で本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて類似した部分については類似した符号をつけた。
以下、添付した図面を参照して本発明を詳細に説明することにする。
図1は本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置が眼球内に挿入された様子を示す使用状態図である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、インジェクタを通じて眼球の内部に注入されることによって、角膜2により形成される眼球の前房(anterior chamber)1に一部が挿入される方式で
図1に示すように配置することができる。ここでインジェクタとは、内部に収容可能なインプラント装置を機械的外力で押し出すことによって、インプラント装置を眼球内に注入させる装置をいう。前述したインジェクタを用いた方式に加えて、インプラント装置は剥離された眼球の結膜組織またはテノン組織を通じて手術者が直接眼球の前房1に一部を挿入する方式で配置することもできる。
【0022】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るインプラント装置に含まれるチューブ10の剪断側の一部を眼球の前房1に配置することができ、チューブ10の残りの一部は眼球の結膜組織またはテノン組織に配置することができる。即ち、インプラント装置の挿入が行われると、眼球の前房1で生成される眼房水がチューブ10に形成された中空に沿って流れ、結膜組織またはテノン組織に排出されることによって、眼圧を調節することができる。
【0023】
チューブ10は生体適合性のある材料からなってもよく、及び/または変形可能な材料からなってもよい。一実施形態において、チューブ10はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネートポリウレタンなどのウレタン系の材料、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン系の材料、シロキサン/ウレタン化合物(siloxane based polyurethane)などからなることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
この時、図示されていないが、チューブ10の後方には眼圧を効果的に調節するために眼房水を一時的に収容する本体20を設けることができる。例えば、チューブ10が眼球の前房1に一部挿入された後に患者の状態変化、線維化速度などの臨床的状況を考慮して、剥離した結膜組織またはテノン組織を通じて本体20をチューブ10の後方に結合して配置することができる。あるいは、最初にチューブ10と本体20が結合された状態(即ち、チューブ10と本体20が一体で構成された状態)で剥離した眼球の結膜組織またはテノン組織を通じてチューブ10と本体20を一緒に眼球内に配置することができる。言い換えれば、臨床的必要または状況に応じてインプラント装置を眼球内に配置する前にチューブ10を本体20に予め結合するか、または先ずチューブ10を眼球内に配置した後に本体20に結合することができる。インプラント装置に含まれたチューブ10及び本体20の具体的な構造、形態及び結合関係等については、
図2~
図7を参照してより詳細に後述する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、眼疾患は眼圧の上昇によって発生する緑内障などを含むことができる。これらの緑内障は先天性緑内障、外傷性緑内障、緑内障疑症、高眼圧症、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、水晶体の偽剥離性を伴う水晶体嚢性緑内障、慢性単純緑内障、低眼圧緑内障、色素性緑内障、原発性閉鎖隅角緑内障、急性閉鎖隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、間欠性閉鎖隅角緑内障、目の外傷に続発する緑内障、目の炎症に続発する緑内障、薬物に続発する緑内障、新生血管緑内障またはブドウ膜炎による二次緑内障などを含むことができる。
図2は本発明の一実施形態に係るチューブ10の側面図であり、
図3及び
図4はそれぞれ、本発明の一実施形態に係るチューブ10の平面図である。
【0026】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る眼疾患用インプラント装置は、眼房水を排出するための中空が形成されたチューブ10を含み、チューブ10の外面の一領域にはチューブ10の長手方向と異なる方向に延びる1つ以上の翼11を形成することができる。更に、翼11はチューブ10の表面の一領域に取り付けてもよく、またはチューブ10と同じ材料で一体化して形成してもよい。眼房水を排出するためには前述のように、チューブ10の一部が眼球の前房1に位置し、残りの部分は結膜組織またはテノン組織に配置しなければならない。従って、チューブ10全体が眼球の前房1に完全に引き込まれる必要がある。即ち、チューブ10の翼11はチューブ10が眼球の前房1に完全に引き込まれる状況を防ぎ、チューブ10を正確な位置に安定的に固定する役割を果たす。
【0027】
一実施形態において、翼11は折り畳み可能に構成されて、チューブ10の長手方向または水平方向に折り畳んだり展開することができる。例えば、翼11が
図2に示すようにチューブ10の両側に形成される場合、翼11が完全に展開された状態では全体の容積及びサイズのためにチューブ10を注入することが容易でない。また、チューブ10をインジェクタに内蔵するためには、チューブ10の直径を一定の範囲内に制限しなければならない。従って、チューブ10がインジェクタに内蔵されて眼球内に注入されるようにするために、翼11はチューブ10に密着される方向に折り畳まれることができる。チューブ10に密着される方向に折り畳まれた翼11はチューブ10が注入される過程で徐々に展開されることができ、チューブ10が十分に眼球の前房1に引き込まれた後には
図1に示すように、完全に展開されてチューブ10を固定させることができる。即ち、翼11はチューブ10がインジェクタに内蔵された状態でチューブ10に密着されるように折り畳まれた状態を維持すると共に、チューブ10がインジェクタによって眼球の前房1に注入される過程で自然に展開されることによって、チューブ10が眼球の前房1に更に引き込まれることを阻止することができる。
【0028】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るチューブ10の外面の一領域にはチューブ10の眼球内位置を確認するための色付きマーカー12を突出形成することができる。即ち、臨床医がチューブ10を眼球の前房1に引き込む手術の過程で眼房水の排出を効果的に行うことができるほど十分にチューブ10が引っ込められたかどうかを容易に確認できるようにするため、チューブ10の前房にはマーカー12を形成することができる。この時、マーカー12はチューブ10が後方(即ち、結膜組織またはテノン組織方向)に抜けないようにチューブ10を固定するために突出形成することができる。例えば、マーカー12はチューブ10の外面の一領域を包みながら一部が三角形に突出する形態で形成することができる。三角形に突出した部分がチューブ10上に段差を形成するので、チューブ10が挿入された後にチューブ10が前後に動くのを最小化することができる。マーカー12の色は容易に認識するために蛍光色などであり得る。
【0029】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るチューブ10は、このチューブ10による眼球内角膜2内皮の損傷を防ぐために所定の曲率を有する曲線状に形成することができる。患者ごとに異なる眼球のサイズ、チューブ10注入の熟練度等によってチューブ10が眼球の前房1に引き込まれる過程でチューブ10の先端が眼球の前房1内の角膜2を刺して損傷させる問題が生じる恐れがある。角膜2の損傷は今後の角膜移植術までに必要な角膜不全などの合併症を引き起こす恐れがある。従って、チューブ10が眼球の前房1に引き込まれる過程でチューブ10の動きが自然に曲線を形成することができるように、チューブ10は所定の曲率(即ち、眼球表面の曲率)を有して
図2に示すように曲げられた形態で作製することができる。
【0030】
一方、本発明の一実施形態に係るチューブ10の長さは約5mm~10mmの範囲値を有し、臨床的状態に応じてチューブ10の長さを決定して手術に使用することができる。また、チューブ10の内径は約60μm~250μm、チューブ10の外径は約150μm~450μmの範囲値を有し、臨床的状態に応じて決定して手術に使用することができる。
【0031】
図3及び
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る翼11はチューブ10の挿入方向を妨げないように折り畳んだり展開することができる様々な形態で作製することができる。例えば、
図2(a)に示すように翼11は直線棒状であってもよいし、
図2(b)に示すように先細り棒状であってもよい。この時、展開する過程で眼球内部の損傷を最小化するために、翼11の端部の縁部は滑らかな曲線を形成するように作製することができる。このように翼11が直線棒状または先細り棒状である場合、翼11は
図2に示すようにチューブ10の長手方向中心軸を基準に折り畳んだり展開することができる。また、
図3(a)に示すように翼11は三角形でもよいし、
図3(b)に示すように半円形でもよい。このように翼11が三角形または半円形である場合、翼11は
図3に示すようにチューブ10の水平方向中心軸を基準に折り畳んだり展開することができる。
図3及び
図4は翼11の形態についての1つの例示に過ぎず、前述したようにチューブ10を安定的に固定することができる様々な形態に変形することができる。
図5は本発明の一実施形態に係るインジェクタを通じてチューブ10が眼球内に挿入される過程を示す使用状態図である。
【0032】
インジェクタを通じてチューブ10が眼球内に注入される前に、チューブ10を
図5(a)に示すようにインジェクタの内部に保持することができる。この時、直線棒状の翼11はチューブ10の外面に密着されるように折り畳まれた状態を維持することができる。即ち、インジェクタ内部の限られた直径によって翼11をチューブ10の長手方向中心軸を基準に折り畳んだ状態で保持することができる。
【0033】
臨床医のインジェクタ操作によってチューブ10が眼球内に注入されると、チューブ10はインジェクタの前端を通ってインジェクタの外部に抜け出るようになる。この時、インジェクタ内壁によって折り畳まれていた直線棒状の翼11は
図5(b)に示すように、インプラント挿入部周辺の表面(例えば、角膜輪部周囲など)に沿って徐々に展開することができる。翼11が完全に展開すると、翼11と眼球の前房1境界面との間に作用する対向力によってチューブ10はそれ以上眼球の前房1の内部に引き込まれず、現在の位置に固定されることができる。従って、翼11がチューブ10に形成される位置は眼房水の排出を効果的に行うことができるチューブ10の引き込み程度を考慮して決定することができる。即ち、本発明の一実施形態に係る翼11はチューブ10がインジェクタによって眼球の前房1に挿入される過程で展開することによって、チューブ10が所定のポイントを超えて挿入されることを防止し、チューブ10の位置を固定することができる。
図6Aは本発明の他の実施形態に係るチューブの斜視図であり、
図6Bは
図6Aに示すチューブの断面図である。
【0034】
図6A及び
図6Bを参照すると、本実施形態でチューブ10は、このチューブ10の長手方向と異なる方向に延びる支持台12に結合される。例えば、チューブ10は円形断面を有する支持台12の中央部分120に形成された固定孔を通過する形態で支持台12に結合されることができる。支持台12はチューブ10の長手方向と異なる方向に延びてチューブ10と交差し、チューブ10の外面に延びる支持台12の一部が翼13に該当する。
図2~
図5を参照して前述した翼11と同様に、本実施形態に係る翼13もチューブ10が眼球の前房に完全に引き込まれる状況を防ぎ、チューブ10を正確な位置に安定的に固定する役割を果たす。
【0035】
図2を参照して前述した実施形態と同様に、
図6A及び
図6Bに示す実施形態に係るチューブ10にも、このチューブ10が眼球内に十分に引き込まれたかどうかを容易に確認できるようにするためのマーカー(図示せず)を形成することができる。また、本実施形態に係るチューブ10もやはり眼球内角膜内皮の損傷を防ぐために、所定の曲率を有する曲線状を有することができる。
【0036】
一実施形態において、翼13の一領域には突出部130が形成される。突出部130は翼13の他の部分に比べて突出した部分、即ち支持台12の幅が他の部分に比べて大きい部分である。例えば、突出部130はチューブ10の両端の翼13の各末端に形成することができる。突出部は必要である場合、一実施形態によって更に糸でインプラントウィング13を固定する際に、固定された糸が滑らないようにする凹凸としての機能を果たす。
【0037】
一実施形態において、チューブ10の外径D1(即ち、支持台12の固定孔の直径)は約0.2mmであり、固定孔が形成された支持台12の中央部分120の外径D2は約0.4mmである。また一実施形態において、支持台12の長さL1は約1.4mmであり、突出部130の高さを含んだ支持台12の高さHは約0.25mmであり、突出部130の幅Wは約0.1mmである。支持台12の中央部分120の両端にそれぞれ形成された翼13の長さL2は0.5mmである。
【0038】
しかしながら、前述した数値は単に例示的なものであり、チューブ10及び支持台12の各部分の寸法は実施形態によって相異なる場合もあり、本明細書に記載した数値に限定されるものではない。
【0039】
本実施形態によれば、チューブ10の外面に翼を形成するための部材を取り付けたり固定する必要がなく、チューブ10と交差する支持台12にチューブ10を固定する方式で翼13を容易に形成することができる。翼13が形成されたチューブ10は、手術者が眼球の結膜組織またはテノン組織を剥離した後、これを通じて挿入する方式で眼球の前房1に一部が挿入されるように配置することができる。
【0040】
しかしながら、本実施形態に係るチューブ10は
図5を参照して説明したように、インジェクタを通じて眼球内に挿入することもできる。この場合、支持台12は圧力を加えて変形させることによって、インジェクタ内に挿入することができる柔軟な材料からなることができる。例えば、支持台12を押圧または巻き取った状態でチューブ10に密着してインジェクタ内に押し込むことができる。臨床医のインジェクタ操作によってチューブ10が眼球内に注入されると、チューブ10及び支持台12がインジェクタの先端を通じてインジェクタ外部に抜け出るようになり、支持台12が展開されながら翼13の役割を果たすことができる。
【0041】
図7Aは本発明の一実施形態に係るチューブ10と本体20の結合過程を形状化した概念図であり、
図7Bは本発明の一実施形態に係るチューブ10と本体20が結合された状態を示す斜視図である。
【0042】
本発明の一実施形態に係るインプラント装置は、チューブ10の一端が挿入される収容空間21が設けられた本体20を更に含むことができる。本体20はチューブ10の露出及び離脱を防止すると共に、眼房水を一時的に収容し、長期的にはチューブの後端を生体組織が成長しながら閉鎖することを防止するための構造物である。本体20はチューブ10の後方一領域と結合されることによって、時間の経過につれて身体組織がチューブ10の後端を塞ぎ眼圧を再び上昇させる副作用を最小化することができる。例えば、本体20は約1~3mmの直径を有する正方形の形態であり得るが、そのサイズまたは形態は臨床的状況に応じて様々に変化できる。
【0043】
例えば、
図7A及び
図7Bを参照すると、本体20は上部本体と下部本体に区分することができる。上部本体と下部本体にはチューブ10の後部一領域が挿入されるカーネル型収容空間21を設けることができる。上部本体と下部本体は相互結合または分離が可能であるので、上部本体と下部本体の結合を通じてチューブ10と本体20を容易に結合または分離させることができる。この時、上部本体と下部本体には相互結合または分離のための接着部材や締結部材22を設けることができる。接着部材は水に触れると接着力が発生し増加する水溶性接着剤であり、チューブ10から伝達される眼房水によって上部本体と下部本体との間の結合力を強化することができる。また、締結部材は凹凸形状等のような、接触を通じて結合力を発生させる物理的構造を有するように形成することができる。更に、場合によっては手術を容易に行うために、下部本体なしで上部本体のみを使用して強膜側チューブの端部を覆う方式で適用することができる。この場合、上部本体に医療用接着剤を用いるか、または縫合糸を用いて上部本体を強膜に固定する。
【0044】
また、一実施形態において、チューブ10の一端が挿入される本体20を用いてチューブ10の長手方向と異なる方向に延びる翼を形成することができる。即ち、本体20自体を
図6A及び6Bの支持台12のようにチューブ10と交差して延びる形状に構成することによって、チューブ10に結合された本体20がチューブ10の眼球前房に完全に引き込むことを防止し、チューブ10を正確な位置に固定する翼の役割を果たすこともできる。
図8は本発明の一実施形態に係るチューブ10内に引き込まれた芯材40の様子を示す平面図である。
【0045】
図8を参照すると、本発明の一実施形態に係るインプラント装置は、眼房水の排出量を調節するためにチューブ10の中空に引き込み可能な芯材40を更に含むことができる。芯材40は臨床医がインプラント装置の眼圧を容易に調節することができるように装置の内部に引き込まれる構成要素であり、外科用非吸収性手術縫合糸であり得、ナイロンまたはプロレン材料で作製することができる。例えば、芯材40がチューブ10の中空に引き込まれてチューブ10の後端に露出されると、臨床医はチューブ10の後端に露出された芯材40を調節して眼房水の排出量を調節することができる。即ち、臨床医は芯材40を用いて患者の状態に合わせて眼圧を適切に調節することができる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る芯材40は所定のポイントを基準に直径を変化することができる。芯材40は臨床医が容易に制御及び除去できるようにチューブ10及び本体20を通過して眼球外に露出されることができる。この時、一定の直径を有する芯材を用いると、眼球の内部を通過して外部に露出される芯材によって患者が激しい異物感を感じる問題が発生する恐れがある。この問題を解決するために、芯材40はチューブ10または本体20から露出するポイントから直径が徐々に減少するように作製することができる。例えば、チューブ10の中空に引き込まれた芯材40の直径は一定のサイズを有する反面、
図8(a)に示すうにチューブ10の後端を通って露出されたaポイントから芯材40の直径は徐々に減少する形態で作製することができる。また、
図8(b)に示すようにチューブ10の後端を通って露出されるaポイントで芯材40の直径が一度減少し、減少した直径を維持した後、bポイントで芯材40の直径が再度減少する形態で作製することができる。即ち、芯材40は所定のポイントを基準に直径が徐々に減少する方向に変化するように作製することができる。
【0047】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができるであろう。従って、 前述した実施形態は全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散されて実施されてもよく、同じく分散されていると説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0048】
本発明の範囲は前述した詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は眼疾患用インプラント装置に関するもので、より詳細には、眼球内に挿入される過程で手術者が容易で安全に配置及び固定することができる構造を有し、必要または状況に応じてチューブと本体を結合または分離することができる眼疾患用インプラント装置に関するものである。
【国際調査報告】