(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ワークピースのレーザ加工の方法、加工光学ユニット及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/067 20060101AFI20230111BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20230111BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20230111BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B23K26/067
B23K26/064 Z
C03B33/09
C03C23/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527981
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2020079873
(87)【国際公開番号】W WO2021094072
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】102019217577.5
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フラム
(72)【発明者】
【氏名】マルテ クムカー
【テーマコード(参考)】
4E168
4G015
4G059
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD18
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA39
4E168DA60
4E168EA04
4E168EA05
4E168EA07
4E168JA14
4G015FA06
4G015FA09
4G015FC14
4G059AA01
4G059AB05
4G059AB17
4G059AC30
(57)【要約】
本発明は、ワークピース(23’)のレーザ加工の方法であって、好ましくはパルスレーザビームを、2つの異なる偏光状態の1つをそれぞれ有する複数の部分ビーム(22’)間で分割することと、また連続相互作用領域(25)の複数の少なくとも部分的に重なる部分領域(25A’)に複数の部分ビーム(22’)を集束させることにより、ワークピース(23’)を加工することとを含み、それぞれの場合に異なる偏光状態を有する部分ビーム(22’)は、連続相互作用領域(25)の隣接する部分領域(25A’)内に集束される、方法に関する。本発明は、ワークピース(23’)のレーザ加工のための加工光学ユニット及びまたそのような加工光学ユニットを有するレーザ加工装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(23、23’、23’’、59、101、107)のレーザ加工の方法であって、
好ましくはパルスレーザビーム(12、3)を、2つの異なる偏光状態(s、p)の1つをそれぞれ有する複数の部分ビーム(22、22’、22’’、5a、5b)間で分割すること、
連続相互作用領域(25、59、103、109)の複数の少なくとも部分的に重なる部分領域(25A、25A’、25A’’、59A)に前記複数の部分ビーム(22、22’、22’’)を集束させることにより、前記ワークピース(23、23’、23’’、59、101、107)を加工すること
を含み、それぞれの場合に異なる偏光状態(s、p)を有する部分ビーム(22、22’、22’’)は、前記連続相互作用領域(25、59、103、109)の隣接する部分領域(25A、25A’、25A’’、59A)内に集束される、方法。
【請求項2】
前記レーザビーム(3)は、前記複数の部分ビーム(22、22’、22’’、5a、5b)間の前記分割中、好ましくは回折ビームスプリッタ光学ユニット(9)及び少なくとも1つの好ましくは複屈折偏光子素子(6、1a)を通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビーム(3)の前記分割中、少なくとも1つの複屈折偏光子素子(1a、1b)において、横方向オフセット(Δx)及び/又は角度オフセット(Δα)は、好ましくは、前記連続相互作用領域(25、59、103、109)の隣接する部分領域(25A、25A’、25A’’、59A)内に集束される、異なる偏光状態(s、p)を有する2つの部分ビーム(22、22’、22’’、5a、5b)間で生成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビーム(3)の前記分割中、少なくとも1つの複屈折偏光子素子、特に複屈折レンズ素子(6)において、縦方向オフセット(Δz)は、好ましくは、前記連続相互作用領域(25、59、103、109)の隣接する部分領域(25A、25A’、25A’’、59A)内に集束される、異なる偏光状態(s、p)を有する2つの部分ビーム(22、22’、22’’、5a、5b)間で生成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記連続相互作用領域(25、59、103、109)の少なくとも2つの部分領域(25A’、59A)は、縦方向(Z)で互いに対してオフセットされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザ加工中、前記連続相互作用領域(25、59、103、109)及び前記ワークピース(3、59、101、107)は、互いに対して移動され、前記移動は、好ましくは、フィード方向(27、105B、105B’)に沿って行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記相互作用領域は、前記ワークピース(23、23’、101、107)の材料をアブレーションするためのアブレーション領域(25、103、109)を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アブレーション領域(25、103)は、前記ワークピース(23、23’、101)の入口側表面(23A、102)又は前記ワークピース(107)の出口側表面(108)に形成され、前記レーザ加工中、好ましくは、事前定義された特に3次元の表面形状(102B、108B)は、前記入口側表面又は前記出口側表面(102、108)において生成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記相互作用領域は、前記ワークピース(23’’、59)の材料の構造修正のための修正領域(25、59)を形成し、前記ワークピース(23’’、59)は、好ましくは、前記レーザビーム(3)に対して透明な材料、特にガラスからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピース(23’’、59)は、前記ワークピース(23’’、59)の体積において前記レーザ加工中に形成された修正輪郭(33、61)に沿った前記構造修正後に分離され、前記分離は、好ましくは、機械的分離プロセス、熱分離プロセス又はエッチングプロセスによって行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ワークピース(23、59、101、107)のレーザ加工のための加工光学ユニット(10)であって、
好ましくは回折ビームスプリッタ光学ユニット(9)及び好ましくはパルスレーザビーム(12、3)を、2つの異なる偏光状態(s、p)の1つをそれぞれ有する複数の部分ビーム(22、22’、22’’、5a、5b)間で分割するための少なくとも1つの好ましくは複屈折偏光子素子(6、1a、1b)と、また、
連続相互作用領域(25、59、103、109)の複数の少なくとも部分的に重なる部分領域(25A、25A’、25A’’、59A)に前記複数の部分ビーム(22、22’、22’’)を集束させるための集束光学ユニット(6、7)と
を含み、前記加工光学ユニット(10)は、それぞれの場合に異なる偏光状態(s、p)を有する部分ビーム(22、22’、22’’、5a、5b)を前記連続相互作用領域(25、59、103、109)の隣接する部分領域(25A、25A’、25A’’、59A)内に集束させるように構成される、加工光学ユニット(10)。
【請求項12】
異なる偏光状態(s、p)を有する2つの部分ビーム(22、22’、22’’)間で横方向オフセット(Δx)及び/又は角度オフセット(Δα)を生成するための少なくとも1つの複屈折偏光子素子(1a、1b)を有する、請求項11に記載の加工光学ユニット。
【請求項13】
異なる偏光状態(s、p)を有する2つの部分ビーム(22、22’、22’’)間で縦方向オフセット(Δz)を生成するための少なくとも1つの複屈折偏光子素子、特に複屈折レンズ素子(6)を有する、請求項11又は12に記載の加工光学ユニット。
【請求項14】
レーザ加工装置(13)であって、
請求項11~13のいずれか一項に記載の加工光学ユニット(10)と、また、
レーザビーム(12)を生成するための、特にガウスビームプロファイルを有するレーザビーム(12)を生成するためのレーザ源、特に超短パルスレーザ源(11)と
を含むレーザ加工装置(13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースのレーザ加工の方法、ワークピースのレーザ加工のための加工光学ユニット及びまたそのような加工光学ユニットを含み、且つレーザ源、好ましくは超短パルスレーザ光源を含むレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピースのレーザ加工中、特にレーザアブレーション、レーザ切断、表面構造化、レーザ溶接、レーザ穴あけ中など、入力レーザビームを複数の部分ビームに分割して、異なる位置においてワークピース上に衝突又は集束させることが好都合である。分割は、偏光子素子において行うことができ、入力レーザビームから、典型的にはそれぞれの場合に2つの異なる偏光状態の1つを有する2つの部分ビーム、例えば互いに垂直に偏光された2つの部分ビームが出力レーザビームとして形成される。空間的にオフセットされた複数の入力レーザビームが偏光子素子上に衝突することが可能である。この場合、入力レーザビームの各々は、それぞれの場合に2つの異なる偏光状態の1つを有する部分ビームのペアに分割される。
【0003】
(特許文献1)は、2つの直線偏光部分ビームを生成するための偏光ビームオフセット素子を有するレーザ切断ヘッドを記載しており、前記ビームオフセット素子は、レーザビームのビーム経路に配置される。偏光ビームオフセット素子は、レーザビームの発散又は収束ビーム経路セクションに配置される。ビームオフセット素子は、複屈折材料から形成することができる。集束、拡大光学ユニット及びビーム経路の集束光学ユニットの下流に配置されたビームオフセット素子を使用することにより、2つの部分ビームを焦点面に部分的に重ね合わせることができる。
【0004】
(特許文献2)は、加工光学ユニットを含むワークピース加工のためのレーザ加工装置を開示しており、入力レーザビームは、偏光子において2つの垂直に偏光された部分ビームに分割される。加工光学ユニットは、第1の部分ビームよりも第2の部分ビームのための経路長が長く、その結果、第2の部分ビームは、第1の部分ビームよりも長い伝播時間を有する。第2の部分ビームは、第1の部分ビームに対して少なくとも1つの幾何学的ビーム特性において変更される。変更された第2の部分ビームは、両方の部分ビームが共通の出力レーザビームを形成するような方法で第1の部分ビーム上に重ね合わされる。
【0005】
(特許文献3)は、パルスレーザによって誘電体又は半導体材料を切断する方法を記載しており、レーザビームは、2つの部分ビームに分割され、互いに対してある距離だけオフセットされた2つの空間的に分離されたゾーンで材料上に衝突する。その距離は、2つの相互にオフセットされたゾーン間で事前定義された方向に延びる直線的なマイクロフラクチャを材料内に生成するために、閾値を下回る値に設定される。ベッセルビームの形態で材料上に空間分布を生成するために、2つの部分ビームに対してビーム成形が実行され得る。
【0006】
(特許文献4)は、入力ビームを準非回折ビーム、例えばベッセルビームに変換するためのビーム成形光学素子を含むパルスレーザアセンブリにより、少なくとも1つのガラス物品をレーザ切断するためのシステムを記載している。レーザアセンブリは、準非回折ビームを互いに1μm~500μmで離間された複数の部分ビームに変換するためのビーム変換素子も含む。
【0007】
(特許文献5)は、少なくとも1つの入力レーザビームを、互いに垂直に偏光された部分ビームのペアに分割するための複屈折偏光子素子及びまた偏光子素子の下流に配置され、且つ部分ビームを焦点ゾーンに集束させるのに役立つ集束光学ユニットを含む、ワークピース加工のための加工光学ユニットについて記載しており、加工光学ユニットは、互いに垂直に偏光された部分ビームの少なくとも部分的に重なる焦点ゾーンを生成するように構成される。加工光学ユニットは、焦点面内の事前定義された輪郭に沿って少なくとも部分的に重なる焦点ゾーンの複数のペアを生成するように構成することができ、それぞれの場合において、直接隣接するペアの互いに垂直に偏光された2つの部分ビームの焦点ゾーンは、少なくとも部分的に互いに重なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2015/128833A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2015/5114032A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2018/020145A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2016/089799A1号パンフレット
【特許文献5】独国特許出願第102019205394.7号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】https://de.wikipedia.org/wiki/Polarisator
【非特許文献2】https://www.b-halle.de/produkte/Polarisatoren.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、レーザ加工の方法、加工光学ユニット並びに3次元ワーク加工、特にワークピースの表面及び/又はエッジの加工を可能にするそのような加工光学ユニットを含むレーザ加工装置を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明によれば、ワークピースのレーザ加工の方法によって達成され、方法は、好ましくはパルスレーザビーム、特に超短パルスレーザビームを、(特にペアで)2つの異なる偏光状態の1つをそれぞれ有する複数の部分ビーム間で分割することと、また連続相互作用領域の複数の少なくとも部分的に重なる部分領域(又は焦点ゾーン)に複数の部分ビームを集束させることにより、ワークピースを加工することとを含み、それぞれの場合に異なる偏光状態を有する部分ビームは、連続相互作用領域の隣接する部分領域内に集束される。レーザビームは、例えば、固体レーザ、特にディスクレーザ又はファイバーレーザで生成することができる。
【0012】
この用途の意味の範囲内において、異なる偏光状態を有する部分ビームは、偏光方向が互いに90°の角度に配向される直線偏光部分ビームを意味すると理解される。しかしながら、異なる偏光状態を有する部分ビームは、反対の回転方向を有する円偏光部分ビーム、すなわち2つの左及びそれぞれ右の円偏光部分ビームを意味することも理解される。互いに垂直に配向された偏光方向を有する直線偏光部分ビームの、反対の回転方向を有する円偏光部分ビームへの変換は、例えば、適切に配向された遅延プレート(λ/4プレート)を用いて行うことができる。
【0013】
例えば、シングルモードレーザによって生成され、且つガウスビームプロファイルを有する(パルス)レーザビームが2つ以上の部分ビームに分割され、部分ビームが少なくとも部分的に重ね合わされる場合、これにより、部分ビームが同じ又は類似の偏光を有すると、望ましくない干渉効果を生じる可能性がある。したがって、部分ビームの集束中、集束ゾーン又は集束断面を一緒に任意に近づけることができないため、部分ビームは、一般に、ワークピース上で互いから離間された集束ゾーン又は部分領域に集束される。
【0014】
それぞれの場合に異なる偏光状態を有する部分ビームを、直接隣接する部分領域又は焦点ゾーン上に集束させる間、(部分的な)重ね合わせは、それぞれの部分ビームの偏光状態が、関連するビーム断面全体又はそれぞれの焦点ゾーンにわたって均一であることを条件として、異なる位置又は角度範囲からのレーザ放射の干渉効果を引き起こさない。したがって、それぞれの部分ビームの偏光は、位置に依存する方式でビーム断面又は焦点ゾーン/部分領域にわたって可能な限り変化を少なくするべきである。この場合、隣接する焦点ゾーンは、互いに任意に近接し、部分的又は場合により完全に重なり、更に特に両方とも横方向、すなわち部分ビームの伝播方向に対して垂直に、且つ縦方向、すなわち部分ビームの伝播方向に均一な焦点ゾーンを形成する。
【0015】
部分領域は、通常、連続相互作用領域に沿って並んでおり、すなわち、各部分領域(相互作用領域の両端の部分領域を除く)は、正確に2つの隣接する部分領域に隣接し、これらの2つの隣接する部分領域と部分的に重なる。したがって、連続相互作用領域の場合、隣接する部分領域は、通常、更に隣接する部分領域のそれぞれ異なって偏光された部分ビームと重ならない程度にのみ重なり、その結果、同一に偏光された部分ビームの重ね合わせが生じない。連続相互作用領域は、事前定義された連続輪郭を形成し、これは、(湾曲した)マルチスポット焦点輪郭又は直線輪郭の場合にはマルチスポット焦点線とも呼ばれる。
【0016】
異なる偏光状態を有する完全に又は部分的に重なる部分ビームを使用する代わりに、干渉効果が実質的に発生しないような大きさの時間オフセットを有する完全に又は部分的に重なる部分ビームを使用することも可能である。これは、通常、時間オフセットが少なくともパルス持続時間の大きさのオーダー又はコヒーレンス長の大きさのオーダーに対応する場合である。ここでの最小値として、一般に、2つの値(パルス持続時間及びそれぞれコヒーレンス長)のそれぞれのより小さい値の50%が時間オフセットとして選択される。
【0017】
各々が2つの異なる偏光状態の1つを有する、複数の部分ビーム間でのレーザビームの分割は、通常、加工光学ユニットにおいて行われる。
【0018】
一変形形態では、レーザビームは、複数の部分ビーム間の分割中、好ましくは回折ビームスプリッタ光学ユニット及び少なくとも1つの好ましくは複屈折偏光子素子を通過する。ワークピースの(好ましくは透明な)材料の作業体積内の複数の部分領域又は焦点ゾーン(スポット)間でビーム分割を行うため、(例えば、回折)ビームスプリッタ光学ユニットにより、レーザビームは、複数の部分ビーム間で分割することができる。偏光子光学ユニット又は偏光子素子を使用することなく作業体積内に生成される焦点ゾーンは、更に上述した干渉効果を回避するために互いから離間される。偏光子光学ユニット又は偏光子素子は、このような方法において、焦点ゾーン間のギャップを埋め、連続相互作用領域を生成するために、ビームスプリッタ光学ユニットによって生成されたそれぞれの入力レーザビームを、それぞれの場合に異なる偏光状態を有する2つの部分ビームに分割するのに役立つ。したがって、一般に連続遷移を有する、すなわち部分ビーム間又は焦点ゾーン/部分領域間の強度分布内にゼロを有しないビーム形状又は強度分布は、連続相互作用領域に沿って生じる。
【0019】
言うまでもなく、上記の説明とは対照的に、レーザビームは、最初に偏光子素子を通過し、その後にのみ、ビームスプリッタ素子又はビームスプリッタ光学ユニットを通過することができる。ビームスプリッタ光学ユニットは、例えば、回折光学素子の形態で構成することができるが、例えば、いくつかの他のタイプのビームスプリッタ光学ユニットは、例えば、幾何学的ビームスプリッタ光学ユニットも伴うこともできる。
【0020】
以下の説明では、多くの場合、1つのみの複屈折偏光子素子が言及されるが、原則として、2つ以上の(複屈折)偏光子素子も加工光学ユニット内に設けられ得る。例として、この場合、(超短パルス)レーザ源によって生成され、且つ加工光学ユニットに入るレーザビームは、それぞれ関連する複屈折偏光子素子の入力レーザビームを構成する2つ以上の部分ビームに分割することができるか、又は任意選択的に複数のレーザ源のレーザビームを入力レーザビームとして使用することができる。
【0021】
一変形形態では、複数の部分ビーム間のレーザビームの分割中、複屈折偏光子素子において、横方向オフセット(位置オフセット)及び/又は角度オフセットは、連続相互作用領域の隣接する部分領域上に集束される2つの部分ビーム間で生成される。この場合、複屈折偏光子素子は、横方向(位置)オフセット若しくは角度オフセットを生成するか、又は互いに垂直に偏光された2つの部分ビーム間で角度オフセットと位置オフセットとの組み合わせを生成するように構成することができる。
【0022】
典型的には、複屈折結晶の形態の複屈折偏光子素子を用いて、入力レーザビームの適切な偏光が与えられると、例えば非偏光入力レーザビーム又は未定義の若しくは円偏光を有する入力レーザビームが与えられると、入力レーザビームのその偏光成分への標的化された空間分割が可能になる。複屈折偏光子素子の構成に応じて、明確に定義された純粋な位置オフセット、明確に定義された純粋な角度オフセット又は位置オフセットと角度オフセットとの組み合わせを、異なる偏光状態を有する2つの部分ビーム間で生成することができる。
【0023】
(角度オフセットなしで)位置オフセットを生成するために、複屈折偏光子素子は、例えば、平行に整列されたほぼ平面のビーム入口及びビーム出口面を有することができる。この場合、複屈折結晶の光軸は、通常、ビーム入口面に対してある角度で配向される。入力レーザビームがビーム入口面に垂直に衝突すると、ビーム出口面において純粋な位置オフセットが生成される。
【0024】
(位置オフセットなしで)角度オフセットを生成するために、複屈折偏光子素子は、ビーム入口面に対してある角度で傾斜したビーム出口面を有することができる。この場合、複屈折結晶の光軸は、通常、ビーム入口面に対して平行に整列される。この場合、ビーム出口面において、2つの部分ビームが、同じ位置において且つ定義された角度オフセットで複屈折結晶から出現する。
【0025】
位置オフセットと角度オフセットとの組み合わせを生成するために、例えば従来のプリズム偏光子の形態の偏光子素子、例えばニコルプリズム、ロションプリズム、グラントンプソンプリズム又は他のいくつかのタイプのプリズム偏光子を使用することができる(例えば、「(非特許文献1)」又は「(非特許文献2)」を参照されたい)。
【0026】
更なる変形形態では、複数の部分ビーム間のレーザビームの分割中、複屈折偏光子素子、特に複屈折レンズ素子において、縦方向オフセットは、好ましくは、連続相互作用領域の隣接する部分領域上に集束される2つの部分ビーム間で生成される。例として、複屈折画像化光学素子、特にレンズ素子を使用して、部分ビーム間の縦方向オフセットを生成することができる。複屈折レンズ素子は、集束方式(例えば、収束レンズとして)又はビーム拡大方式(例えば、発散レンズとして)で構成することができる。前者の場合、レンズ素子は、加工光学ユニットの集束光学ユニットを形成することができる。しかしながら、非複屈折レンズ素子(集束レンズ)が集束光学ユニットとして使用される場合、それは、有利であることがわかっている。複屈折レンズ素子が集束効果を有する場合、前記複屈折レンズ素子は、集束光学ユニットの一部を形成することができる。本出願において、集束光学ユニットという用語は、多くの場合、最も高い屈折力を有し、且つ典型的には集束レンズ(対物レンズ)の形態で構成される光学素子を指す。
【0027】
レーザ加工のタイプに依存することに加えて、加工光学ユニットのビーム経路における複屈折偏光子素子の配置は、横方向又は縦方向の位置オフセット及び/又は角度オフセットが生成されることを意図されるかどうかに依存する。加工光学ユニットにおける複屈折偏光子素子の配置の例については、導入部で引用した(特許文献5)を参照する必要があり、その全体が参照により本出願の内容に組み込まれる。言うまでもなく、連続相互作用領域の焦点ゾーン又は部分領域の縦方向及び横方向の両方のオフセットは、複屈折偏光子素子の適切な選択によって生成することができる。
【0028】
連続相互作用領域の部分領域又は焦点ゾーンは、通常、加工光学ユニットの焦点面に対応する共通面に位置し得る。
【0029】
好ましくは、連続相互作用領域の少なくとも2つの部分領域は、縦方向(例えば、Z方向)にオフセットされ、すなわち、それらは、共通の焦点面に位置しない。この変形形態では、連続相互作用領域は、通常、線形形状から逸脱し、すなわち、相互作用領域は、縦方向に延びるおおむね湾曲した輪郭を形成する。横方向(例えば、X方向)の部分領域の追加のオフセットを実現することにより、連続相互作用領域が、X-Z平面内に実質的に任意の所望の幾何学的形状又は輪郭を形成することが可能である。原則として、部分ビームの横方向オフセットを2方向(例えば、X方向及びY方向)に生成することも可能であり、すなわち、連続相互作用領域は、必ずしも1つの平面に位置する必要はない。
【0030】
更なる変形形態では、レーザ加工中、連続相互作用領域及びワークピースは、互いに対して移動され、その移動は、好ましくは、フィード方向に沿って行われる。相対的移動のため、相互作用領域は、例えば、ワークピースの材料をアブレーションするか、又はワークピースの材料を構造的に変更することができる、加工経路に沿って移動される。レーザ加工中のフィード方向は、一定になるように選択できるが、レーザ加工中のフィード方向を変更することも可能である。最も単純な場合に行われることは、相互作用領域が位置する平面(例えば、XZ平面)に対して横断方向、特に垂直に延びる方向でのワークピース及び相互作用領域の相互に対する直線的フィードである。
【0031】
レーザ加工又はワークピース加工は、例えば、レーザアブレーション、レーザ切断、表面構造化、レーザ溶接、レーザ穴あけなどであり得る。言うまでもなく、レーザ加工のタイプに応じて、例えばレーザアブレーション中にワークピース材料の複数の層を連続的にアブレーションするために、相対移動を何度も繰り返すことができる。
【0032】
一変形形態では、相互作用領域は、ワークピースの材料をアブレーションするためのアブレーション領域を形成する。この場合、ワークピースは、例えば、層ごとにアブレーションされているワークピースの材料によって加工することができる。この場合、連続相互作用領域は、線形であり、焦点面内に広がることができる。フィード方向に沿った、線形相互作用領域及びワークピースの互いに対する移動の結果として、ワークピースのそれぞれの層をアブレーションすることができる。また、ワークピースにおいてV字形状又はU字形状の溝を生成するために、例えばV字形状又はU字形状のプロファイルの、アブレーションすべき輪郭に適合された幾何学的形状又はプロファイルを有する相互作用領域を生成することが可能である。そのような適合されたプロファイルを有する相互作用領域は、V字形状又はU字形状の溝を生成し、且つ任意選択的にワークピースを2つのセグメントに分離するために、複数の連続するアブレーションステップでワークピースの体積内に一層深く沈みこむことができる。相互作用領域のプロファイルは、レーザ加工中に任意選択的に変更することができる。特に、それぞれの場合に材料がアブレーションされる連続的なアブレーションステップ中、相互作用領域のより急勾配なプロファイルを徐々に選択することができ、すなわち縦方向プロファイルの伸長が増大する。例として、この場合、V字形状のプロファイルは、ワークピースにV字形状の溝を生成するために、連続するアブレーションステップにおいてより急勾配になるように徐々に選択することができる。
【0033】
更なる変形形態では、アブレーション領域は、ワークピースの入口側表面又はワークピースの出口側表面に形成され、レーザ加工中、好ましくは、事前定義された特に3次元の表面形状が入口側表面又は出口側表面において生成される。この変形形態では、レーザ加工により、例えばくさび形状の表面、円筒形の表面又は自由曲面を形成するために、表面形状又は表面の幾何学的形状の修正は、後者を事前定義された表面形状に適合させるために実行される。この目的のために、相互作用領域のプロファイル又は幾何学的形状は、事前定義された表面形状、より正確には事前定義された表面形状の断面プロファイルに適合され、相互作用領域は、表面において事前定義された表面形状を生成するために、加工経路に沿ってワークピースに対して移動される。このようにして、事実上任意の所望の形状を有する表面を作製することができる。レーザ加工後、表面の加工後修正を行うことができ、例として表面を研磨することができる。
【0034】
ワークピースの出口側表面においてアブレーション領域が形成される場合、ワークピースは、レーザビームの波長に対して透明である。裏面アブレーションレーザ加工の場合、入口側加工とは対照的に、アブレーション生成物が加工ゾーンまでのビーム伝播に影響を与えないことが有利である。透明ワークピースの場合、入口側表面及び出口側表面は、この目的のために、ワークピースをそれぞれの保持装置から取り外したり回転させたりすることなく加工することができる。透明ワークピースは、特に、ガラスからなるワークピースであり得る。
【0035】
更なる変形形態では、相互作用領域は、ワークピースの材料の構造修正のための修正領域を形成し、ワークピースは、好ましくは、レーザビームに対して透明な材料、特にガラスからなる。この変形形態例では、レーザ加工中、ワークピースの材料は、アブレーションされず、むしろワークピース材料の構造修正が行われる。そのような構造修正は、超短パルスレーザ放射の照射中の化学結合の再配列、マイクロクラックの形成などからなり得る。構造修正は、特に、ガラス材料のクラックを生成又は促進する可能性がある。ガラス材料は、例えば、石英ガラス又は他のタイプの(光学)ガラスであり得る。透明材料の場合、構造修正は、表面又は表面近くの体積領域に限定されず、むしろワークピースの体積内の任意の所望の位置に実際に導入され得る。しかしながら、ワークピースの表面における構造修正も同様に可能であり、例として、構造修正は、表面の研磨(局所的な溶融)に影響を与える可能性がある。
【0036】
相互作用領域の部分領域又は焦点ゾーンの幾何学的形状がクラックに対する好ましい方向を事前定義又は定義する場合、それは、有利であり得る。これは、例えば、クラックが楕円形状又は長円形状の焦点ゾーンの長い軸に沿って起こることが好ましいため、焦点ゾーンの長円形状又は楕円形状によって達成することができる。
【0037】
更なる変形形態では、ワークピースは、ワークピースの体積においてレーザ加工中に形成された修正輪郭に沿った構造修正後に分離され、この分離は、好ましくは、機械的分離プロセス、熱分離プロセス又はエッチングプロセスによって行われる。この変形形態では、構造修正は、ワークピースの材料に事前の損傷を起こすのに役立ち、この場合、ワークピースは、通常、構造修正が完了した後にのみ分離される。機械的分離プロセスの場合、例えば、ワークピースを2つのセグメントに分離又は分割するために、ワークピース上に力又は機械的応力を与えることができる。熱分離プロセスの場合、ワークピースを加熱して、ワークピースの材料に機械的応力をもたらす温度勾配を生成することができ、前記機械的応力は、分離を引き起こす。ワークピースの熱処理は、例えば、ワークピースの材料によって吸収されるレーザ放射を用いて行うことができる。このレーザは、大部分の材料、とりわけ石英ガラスによって吸収される約10μmの波長のレーザ放射を生成するため、これは、例えば、CO2レーザのレーザ放射に当てはまる。熱処理又は熱分離プロセスの場合、例えば、CO2レーザビームをワークピースの表面上に放射することができる。ワークピースを2つのセグメントに分離することは、例えば、構造修正後、ワークピースをエッチング浴に置くエッチングプロセスによって行うこともできる。
【0038】
修正輪郭がワークピースの体積内に可能な限り遠く延びる場合、それは、分離に有利である。修正構造は、理想的には、ワークピースの上面をワークピースの下側に接続する。後者は、連続相互作用領域の適切な3次元プロファイルによって達成することができ、この場合、ワークピースの厚さ全体にわたって広がる。ワークピースの縦方向又は厚さ方向における部分領域又は焦点ゾーンの可能な最大の拡張を生成するために、レーザビーム、より正確には部分ビームがベッセル形状ビームプロファイルを有することも可能である。この場合、修正輪郭を生成するために、部分領域が互いに対して縦方向に必ずしもオフセットされていない線形相互作用領域を使用することも可能である。
【0039】
本発明は、ワークピースのレーザ加工のための加工光学ユニットにも関し、加工光学ユニットは、好ましくは回折ビームスプリッタ光学ユニット及び好ましくはパルスレーザビームを、(特にペアで)2つの異なる偏光状態の1つをそれぞれ有する複数の部分ビーム間で分割するための少なくとも1つの好ましくは複屈折偏光子素子と、また連続相互作用領域の複数の少なくとも部分的に重なる部分領域に複数の部分ビームを集束させるための集束光学ユニットとを含み、加工光学ユニットは、それぞれの場合に異なる偏光状態を有する部分ビームを連続相互作用領域の隣接する部分領域内に集束させるように構成される。この場合にも、部分領域は、典型的には、連続相互作用領域に沿って並んでいる。
【0040】
一実施形態では、加工光学ユニットは、異なる偏光状態を有する2つの部分ビーム間で横方向(位置)オフセット及び/又は角度オフセットを生成するための少なくとも1つの複屈折偏光子素子を有する。横方向オフセット及び/又は角度オフセットを実現するための様々な可能性に関して、方法に関連して上記の説明を参照する必要がある。
【0041】
それぞれの加工用途に応じて、角度オフセットを生成するが、わずかな位置オフセットのみを生成する複屈折偏光子素子(例えば、ビームスプリッタ用途若しくはレーザアブレーションの場合の2fセットアップ)又は位置オフセットを生成するが、わずかな角度オフセットのみを生成する複屈折偏光子素子(例えば、ガラス分離若しくはガラス切断中にベッセル様ビームプロファイルを使用する場合の4fセットアップ)のいずれかを使用することが好都合であり得る。
【0042】
更なる実施形態では、加工光学ユニットは、好ましくは、連続相互作用領域の隣接する部分領域に集束される、異なる偏光状態を有する2つの部分ビーム間で縦方向オフセットを生成するための少なくとも1つの複屈折偏光子素子、特に複屈折レンズ素子を有する。更に上述されたように、異なって偏光された部分ビーム間の縦方向オフセットは、複屈折レンズ素子によって生成することができる。
【0043】
更に上述されたように、複屈折レンズ素子は、原則として、集束光学ユニットを形成することができ、すなわち、加工光学ユニットは、好ましくは、連続相互作用領域の隣接する部分領域に集束される、相互作用領域の集束ゾーン又は部分領域内に部分ビームを集束させるための更なる集束素子を有しない。
【0044】
この場合、部分領域又は焦点ゾーンのサイズ又は直径は、複屈折レンズ素子の焦点距離によって事前定義され、レンズ素子を作製するために利用可能な複屈折材料は、限られた数のみであるため、部分領域又は焦点ゾーン間の縦方向オフセットは、この場合、事前定義される。
【0045】
したがって、集束光学ユニットが、非複屈折集束素子、特に非複屈折材料からなる更なるレンズ素子を有するか、又は非複屈折材料から構成された集束レンズからなる場合、それは、有利であることがわかっている。この場合、複屈折レンズ素子と組み合わせて、集束光学ユニットの所望の有効焦点距離を定義することができ、部分ビームの所望の縦方向オフセットを事前定義又は設定することができる。
【0046】
本発明は、更に上述された加工光学ユニットと、またレーザビーム、特にガウスビームプロファイルを有するレーザビームを生成するためのレーザ源、特に超短パルスレーザ源とを含むレーザ加工装置にも関する。レーザ光源は、ガウスビームプロファイルを有するシングルモードレーザビームを生成するように構成されることが好ましいが、これは、絶対に必要というわけではない。
【0047】
加工光学ユニットは、例えば、ワークピースに対して移動可能であるレーザ加工ヘッド又はレーザ加工ヘッドのハウジング内に収容することができる。代替的又は追加的に、レーザ加工装置は、部分ビームをワークピース又はワークピース上の異なる位置に整列するために、スキャナデバイスを含むことができる。更に上述された光学ユニットに加えて、加工光学ユニットは、更なる光学ユニットを有することもできる。レーザ加工装置は、例えば、移動デバイス、例えばフィード方向に沿ってワークピースを移動させる、特に変位させるためのリニアドライブを有することもできる。
【0048】
本発明の更なる利点は、説明及び図面から明らかである。同様に、上記の特徴及び更に説明される特徴は、それぞれの場合において、それら自体で又は任意の所望の組み合わせにおいて複数として使用することができる。図示及び説明される実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明を概説するための例示的な特徴のものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1a~bは、互いに垂直に偏光された2つの部分ビーム間で角度オフセット及びそれぞれ位置オフセットを生成するための2つの複屈折偏光子素子の概略図を示す。
【
図2】
図2a~bは、互いに垂直に偏光された2つの部分ビームの焦点ゾーン間で縦方向オフセットを生成するための複屈折レンズ素子を備えた加工光学ユニットの概略図を示し、
図2cは、2つの焦点ゾーンの追加の横方向オフセットを生成するための、
図1aに示された偏光子素子を備えた、
図2bと同様の加工光学ユニットの概略図を示す。
【
図3】
図3a~bは、ワークピース上のアブレーションレーザ加工の概略図を示す。
【
図4】
図4a~bは、修正輪郭に沿ってワークピースを分離するためにワークピース材料を修正するレーザ加工の概略図を示す。
【
図5】
図5a~bは、エッチングプロセスの準備においてワークピース材料を修正するレーザ加工の概略図を示す。
【
図6】
図6a~bは、ワークピースの表面加工のためのアブレーションレーザ加工の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の図面の説明では、同一又は機能的に同一の構成要素に対して同一の参照記号が使用される。
【0051】
図1a、bは、それぞれ複屈折結晶の形態の複屈折偏光子素子1a、1bを概略的に示す。偏光子素子1a、1bのための結晶材料として、例えば、アルファ-BBO(アルファ-ホウ酸バリウム)、YVO4(バナジン酸イットリウム)、水晶などの様々な複屈折材料を使用することができる。
図1aからの複屈折偏光子素子1aは、くさび形状に構成され、すなわち、入力レーザビーム3の入口のための平面ビーム入口面2a及び偏光子素子1aの平面ビーム出口面2bは、互いに対してある(くさび)角度で配向される。結晶材料の光軸4は、ビーム入口面2aに平行に配向される。
【0052】
ビーム入口面2aに対して垂直に複屈折偏光子素子1aに入る非偏光又は円偏光入力レーザビーム3は、2つの部分ビーム5a、5bに分割され、これらは、互いに垂直であり(それぞれs偏光及びp偏光)、すなわちビーム入口面2aに対してある角度で傾斜しているビーム出口面2bにおいて2つの異なる偏光状態の1つを有する。
図1aでは、一般的に慣例として、s偏光部分ビーム5aは、ドットによって識別される一方、第2のp偏光部分ビーム5bは、両方向矢印によって識別される。第1のp偏光部分ビーム5aは、複屈折偏光子素子1aからの出現時に第2のs偏光部分ビーム5bよりも少ない程度に屈折され、その結果、角度オフセットΔαが第1の部分ビーム5aと第2の部分ビーム5bとの間で生じる。この場合、第1及び第2の部分ビーム5a、5bは、ビーム出口面2bでの同じ位置において複屈折偏光子素子1aから出現し、すなわち、角度オフセットΔαは、2つの部分ビーム5a、5b間で生成されるが、位置オフセットは、生成されない。
【0053】
図1bに示される偏光子素子1bの場合、ビーム入口面2a及びビーム出口面2bは、互いに平行に整列され、結晶材料の光軸4は、ビーム入口面2aに対して45°の角度に配向される。この場合、ビーム入口面2aに対して垂直に衝突する入力ビーム3は、ビーム入口面2aにおいて、通常の光線の形態の第1の部分ビーム5aと、異常な光線の形態の第2の部分ビーム5bとに分割される。2つの部分ビーム5a、5bは、平行に、すなわち角度オフセットなしで出現するが、ビーム出口面2bにおいて位置オフセットΔxを伴う。
【0054】
したがって、
図1a及び
図1bに示される2つの複屈折偏光子素子1a、1bは、
図1aに示される偏光子素子1aが角度オフセットΔα(位置オフセットなし)を生成し、
図1bに示される偏光子素子1bが位置オフセットΔx(角度オフセットなし)を生成する点で根本的に異なる。言うまでもなく、例えば、
図1aに示されるくさび形状の偏光子素子1aは、一般に、2つの複屈折光学素子を含む従来のプリズム偏光子の場合のように、位置オフセットΔx及び角度オフセットΔαの両方を生成するようにも構成され得る。
【0055】
図2a~cは、コリメートされた入力レーザビーム3が放射される、複屈折の集束レンズ素子6の形態の偏光子素子をそれぞれ示す。入力レーザビーム3は、複屈折レンズ素子6において、互いに垂直である(それぞれs偏光及びp偏光)2つの部分ビーム5a、5bに分割される。
図2aに示される例では、第1のs偏光部分ビーム5aは、複屈折レンズ素子6から出現すると、第2のp偏光部分ビーム5bよりも大きい程度に屈折され、その結果、縦方向(位置)オフセットΔzが第1の部分ビーム5aの焦点ゾーン8aと第2の部分ビーム5a、5bの焦点ゾーン8bとの間で生成される。2つの焦点ゾーン8a、8bは、図示を簡略化するために
図2a~cにおいて点状に示されているが、縦方向(Z方向)に重なっている。複屈折レンズ素子6は、偏光子素子1a、1bのように、複屈折結晶から形成される。
【0056】
図2bでは、複屈折集束レンズ素子6は、
図2aのように、入力レーザビーム3を2つの部分ビーム5a、5b間で分割する。複屈折レンズ素子6においてより大きい程度に屈折される第1の部分ビーム5aは、更なる非複屈折レンズ素子7において第2の部分ビーム5bよりもより少ない程度に屈折され、その結果、縦方向オフセットΔzも同様に2つの焦点ゾーン8a、8b間で生成される。しかしながら、
図2bに示される例の場合、第1の部分ビーム5aの焦点ゾーン8aは、第2の部分ビーム5bの焦点ゾーン8bよりも、縦方向Zにおいて複屈折レンズ素子4から更に離れている。
【0057】
図2cに示される例の場合、
図1aからのくさび形状の複屈折偏光子素子1aは、入力レーザビーム3のビーム経路において複屈折レンズ素子6の直接下流に配置される。くさび形状の偏光子素子1aは、2つの部分ビーム5a、5bの焦点ゾーン8a、8bの追加の横方向オフセットΔxを生成する。
【0058】
図2a~cに示されるレンズ素子6、7及びくさび形状の偏光子素子1aは、回折ビームスプリッタ光学ユニット9も含む加工光学ユニット10の一部である。加工光学ユニット10は、超短パルスレーザ源の形態のレーザ源11を更に含むレーザ加工装置13の一部である。レーザ源11は、示される例では、ガウスビームプロファイルを有し、且つ加工光学ユニット10に入るレーザビーム12を生成する。回折ビームスプリッタ光学ユニット9において、レーザビーム12は、例えば、互いに平行に整列され、且つ複屈折レンズ素子7のためのそれぞれの入力レーザビーム3を形成する複数の光線ビームに分割される。図示を簡略化するために、単一の入力レーザビーム3のみが
図2a~cに示され、前記入力レーザビームは、2つの部分ビーム5a、5b間で分割される。
【0059】
図2aに示される例の場合、回折ビームスプリッタ光学ユニット9は、複屈折レンズ素子6の上流において入口側焦点距離f’の距離で配置される。この場合、複屈折レンズ素子6は、加工光学ユニット10の集束光学ユニットを形成し、部分ビーム5a、5bをその出口側焦点距離fの距離にほぼ集束させる。対照的に、
図2b、cに示される例の場合、集束は、更なる非複屈折レンズ素子7によって実質的に行われる。複屈折レンズ素子6は、(
図2cに示されるくさび形状の偏光子素子1aとまさに同様に)ほぼ入口側焦点距離fの距離において更なるレンズ素子7の上流に配置され、前記更なるレンズ素子は、複屈折レンズ素子6よりも著しく高い屈折力を有し、したがって以降では集束レンズ又は集束光学ユニットとも呼ばれる。ビーム経路における複屈折レンズ素子6、くさび形偏光子素子1a及び回折ビームスプリッタ素子9の配置の順序は、原則として任意であるが、
図2cに示される例の場合、それらは、典型的には、ほぼ集束レンズ7から入口側焦点距離f’の距離に配置する必要がある。
【0060】
図2a~cに示される加工光学ユニット10又はレーザ加工装置13を用いて、2つの部分ビーム5a、5bは、少なくとも部分的に重なる2つの隣接する集束ゾーン8a、8bに集束させることができる。複数の入力レーザビーム3は、ビームスプリッタ光学ユニット9によって生成することができ、偏光子素子1a、6において部分ビーム5a、5bの複数のペアに分割され、焦点ゾーン8a、8bの対応するペアに集束される。このようにして、ワークピースを加工するための連続相互作用領域は、以下で更に詳細に説明されるように、部分的に重なる焦点ゾーン8a、8bから形成することができる。
【0061】
焦点ゾーン8a、8bの横方向オフセットΔx及び縦方向オフセットΔzの両方を生成する可能性により、空間又はX-Z平面内のほぼ任意の3次元曲線を記述する連続相互作用領域を形成することができる。特に、連続相互作用領域は、以下で更に詳細に説明されるように、縦方向Δzにおいて互いにオフセットされた複数の焦点ゾーン8a、8b又は部分領域を有することができる。
【0062】
以下の例では、ワークピースのレーザ加工は、加工経路に沿った連続相互作用領域の移動、すなわちアブレーション及び/又は修正領域を形成する相互に隣接する連続相互作用領域の累積によって行われる。図示を簡略化するために、以下の例では、連続相互作用領域の移動に対してワークピースの線形フィードが行われると想定している。言うまでもなく、一般に、加工経路の他のフィード形状/コースが可能である。特に、ここで、ワークピースだけでなく、加工光学ユニット又は加工光学ユニットが配置されるレーザ加工ヘッドも移動させることが可能である。
【0063】
フィード方向に互いに続く修正領域/アブレーション領域に関して、入射レーザ放射の幾何学的形状、例えばレーザ放射のビーム断面の角度範囲は、修正領域/アブレーション領域がフィード方向に並んでいる場合、以前に導入された修正領域及び/又は以前に加工されたアブレーション領域が、後続の修正領域/アブレーション領域の形成にわずかな影響のみを及ぼすように選択することができる。
【0064】
図3aは、プレート形状のワークピース23の上面23Aにおいて、ワークピース材料のアブレーションが、プレート形状のワークピース23の上面23A上に集束される複数の部分ビーム22によって実行され、線形連続相互作用領域25が形成される、レーザアブレーションプロセスの形態のレーザ加工を示す。相互作用領域25では、部分ビーム22が集束される部分領域25A(集束ゾーン)は、XYZ座標系のX方向に交互の異なる偏光状態(例えば、s及びそれぞれp)で互いに隣り合って並んでおり、隣接する部分領域25Aが部分的に重なっている。交互の偏光状態(例えば、s及びそれぞれp)は、相互作用領域25内の明るい領域及び暗い領域によって示され、隣接する部分ビーム22の干渉を回避する。
【0065】
図3aでは、レーザ放射の伝播方向(縦方向)に対応するZ方向の部分領域25Aのオフセットは、存在せず、すなわち、部分領域25Aは、縦方向Zに垂直に配向された(焦点)平面にある。
図3aに示される矢印27は、Y方向でのワークピース23の変位の形態において、並び方向(X方向)に対する横断方向の相互作用領域25の相対移動を明らかにしている。線形フィードの場合、レーザ加工により、連続相互作用領域25の幅及び部分領域25A(すなわち焦点内)での部分ビーム22のアブレーション力に対応する深さを有するアブレーションストリップ29を生じさせる。
【0066】
図3bは、同様に、材料がプレート形状のワークピース23’の上面23Aからアブレーションされるレーザアブレーションプロセスの形態のレーザ加工を示す。
図3aのように、
図3bでも、複数の部分ビーム22’は、この目的のためにプレート形状のワークピース23上に集束され、連続相互作用領域25が形成される。
図3aとは対照的に、部分領域25A’は、横方向(X方向)だけでなく、更に縦方向(Z方向)にもオフセットされ、
図3bでの例としてV字形状の形式に配置される。Y方向での、すなわち相互作用領域25のV字形状プロファイルがまたがる平面(
図3bでのXZ平面)に対してY方向、すなわち横断方向でのワークピース23’の相対移動により、連続相互作用領域25のV字形状を有する、アブレーションされた切開部31がもたらされる。
図3bに示される例の場合でも、直接隣接する部分ビーム22’の(再び明るい領域及び暗い領域によって示される)交互の偏光状態は、隣接する部分ビーム22’の干渉の影響を受けない均一なアブレーションを引き起こす。
図3bに示されるアブレーションされた切開部31を生成するために、ワークピース23’は、複数の連続するアブレーションステップにおいてY方向に変位させることができ、連続するアブレーションステップ中、V字形状のプロファイルを有する相互作用領域25は、Z方向に変位し、すなわちワークピース23’上に更に沈み込む。代替的又は追加的に、V字形状の相互作用領域25の幾何学的形状は、アブレーションレーザ加工中に変更することができ、例としてV字形状の相互作用領域25の延長を縦方向Zに徐々に拡大することが可能であり、すなわち、V字形状の相互作用領域25は、連続するアブレーションステップ中に更に尖るようになる。
図3a、bにおいてアブレーション方式で加工されたワークピース23、23’の材料は、例えば、金属材料、ガラス材料などであり得る。
【0067】
図4aは、プレート形状のワークピース23’’の材料の構造修正を生成するためのレーザ加工を示し、前記構造修正は、ワークピース23’’の上面23Aから(透明な)ワークピース23’’内に入射レーザ放射又は部分ビーム22’’の伝播方向(Z方向)に沿って延びる。この目的のために、連続相互作用領域25は、複数の部分ビーム22’’の部分的に重なる細長い部分領域25A’’(焦点ゾーン)の並びによって形成され、前記部分領域は、互いに隣接して(
図4aでのY方向に)延びる。
図3aのように、Z方向に部分領域25A’’のオフセットは、存在しない。交互の偏光状態(s及びそれぞれp)は、再び明るい領域と暗い領域とによって示されている。例として、
図4aは、部分ビーム22’’に課せられる適切な位相によって引き起こされる4つの細長い部分領域25A’’を示し、したがって例えばベッセルビーム又は逆ベッセルビームの細長い焦点ゾーン又は部分領域25A’’の形成をもたらす。細長い部分領域25A’’は、例えば、アキシコン又は回折光学素子を有し得る、加工光学ユニット10のビーム成形光学ユニットによって生成することができる。そのようなビーム成形光学ユニットの詳細については、上記で更に引用した(特許文献5)を参照すべきである。ワークピース23’’の体積にも構造修正を生成するために、後者では、レーザビーム12又はレーザビーム12の波長に対して透明な材料、図示の例ではガラスから形成される。
【0068】
並び方向に沿った、すなわちY方向での相対移動中、これは、単一の部分領域25A’’の幅を有する狭いストリップ33の材料修正を引き起こす。Z方向のストリップ33の深さは、細長い焦点ゾーン又は部分領域25A’’の長さによって支配される。加工に使用される部分ビーム22のビーム断面を示す点線の半円によって
図4aに示されるように、部分ビーム22は、好ましくは、先端角度部分又は角度範囲に制限され、その結果、レーザビームの妨害、したがってフィード中に既に生成された修正の結果としての相互作用の妨害は、発生しない。示される例では、ワークピース23’’の材料の構造修正は、修正されたストリップ33内のガラス材料を弱めるマイクロクラックの形成につながる。
【0069】
図4bは、どのようにワークピース23’’が支持体37上に部分的に堆積又は配置され、力(矢印35)がワークピース23’’の非堆積側に与えられるかを示す。修正輪郭を表す修正ストリップ33の下方において、ワークピース23’’の厚さ全体にクラック39が形成され、その結果、ワークピース23’’が2つのセグメントに分離される。
【0070】
図5aは、プレート形状のワークピース57の(透明な)材料における連続相互作用領域59の部分領域59Aの屈曲又は湾曲した(線形から逸脱する)並びを示す。
図4a、bのように、材料修正は、連続相互作用領域59によって生成され、ワークピース57を通してその上面57Aからその下面57Bまで湾曲した方式で延びる。相互作用領域59の隣接する部分領域又は焦点ゾーン59Aは、ワークピース57及び相互作用領域59(矢印27)の相対移動の結果として、修正平面61の形態の連続的な/中断されていない屈曲した修正輪郭が材料内に形成されるように部分的に重なる。
【0071】
図5bは、エッチング槽63(エッチング浴)内の修正されたワークピース57を示し、ここで、ワークピース57の材料は、示された例の修正平面61の領域においてエッチング方式で除去される。これにより、結果として、
図4a、bのように、ワークピース57の2つのセグメントへの分離がもたらされる。
【0072】
更に上述された修正ベースの分離方法の場合、セグメントの分離は、直接若しくはレーザ加工後に自動的に行うことができるか、又は更なるプロセス、例えば
図4a、bに関連して説明された機械的分離プロセス、
図5a、bに関連して説明されたエッチングプロセス若しくは図に示されていない熱分離プロセスにより導入することができる。
【0073】
更に上述されたアブレーション又は分離レーザ加工に加えて、更に上述されたマルチスポット配置を用いて又は(少なくとも1つの)連続相互作用領域、すなわち成形ツールとして機能するレーザ放射若しくはレーザ加工装置13を用いて表面加工を実行することも可能である。
図6aは、例として、ワークピース101のレーザビーム入口側加工を示し、
図6bは、ワークピース107のレーザビーム出口側加工を示す。
【0074】
成形ツールとしての連続相互作用領域(マルチスポット配置)によるビーム入口側加工の場合、主にアブレーション又は局所修正方法が考慮される。修正方法には、例えば、局所溶融による研磨及び存在する表面張力の使用が含まれる。
【0075】
図6aは、ワークピース101上のレーザ入口側アブレーションのためのマルチスポットレーザ成形切断エッジの使用を示す。ワークピース101の上面102は、任意選択的に、第1の加工ステップで粗く事前構造化される。これにより、例えば低減した精度のスループットが最適化されたレーザ加工プロセスで行うことができ、レーザ成形ツールを用いて又はレーザ加工により、求められる自由曲面102Bに変換されることを意図した粗く構造化された表面102Aがもたらされる。求められる自由曲面102Bに適合された連続相互作用領域103の形態のマルチスポット焦点曲線又は焦点線は、粗く構造化された上面102Aの上の正確な位置に導入され、(湾曲した)焦点線103の領域でワークピース101の材料をアブレーションするために、後者(矢印105A)上に下げられる。まさに更に上記のように、焦点線103の点又は円は、互いに隣接し、且つ異なる偏光成分を有する部分領域を明確にし、その結果、隣接する部分領域間の干渉が回避される。
【0076】
下降に続いて、マルチスポット焦点曲線又は相互作用領域103とワークピース101との間の相対移動(矢印105B)が行われ、その結果、上面102の表面102Aが所望の形状を獲得する。更に、表面102Bの粗さの低減は、任意選択的に、焦点線の方向(矢印105C)でのマルチスポット焦点曲線103のスポットのオフセット(例えば、SLM(「空間光変調器」)-制御)によって行われ得る。代替的又は追加的に、マルチスポット焦点曲線又は相互作用領域103は、全体として、小さい角度範囲での粗さを低減するために、ワークピース101の周りを回転させることができる。加えて、プロセスパラメータは、例えば、レーザミリング又はアブレーションステップ後、例えば研削(より細かい焦点線)及びその後の研磨(局所溶融)と同等の表面品質を達成するために、加工プロセスの過程で適合させることができる。
【0077】
図6bは、ワークピース107のレーザ出口側加工のための、すなわちその下面108におけるマルチスポットレーザ成形エッジの使用を示す。加工ステップは、
図6aに示される加工プロセス(レーザ出口側表面108Aを粗く構造化すること、求められる自由曲面108Bに対応するマルチスポット焦点線又はマルチスポット焦点曲線109を形成すること、マルチスポット焦点曲線109を上昇させるか又は任意選択的にワークピース107を下降させること(矢印105A’)、マルチスポット焦点曲線109とワークピース107との間の相対移動を実行すること(矢印105B’)、任意選択的に粗さを低減すること(矢印105C’))に実質的に類似している。レーザ放射のエネルギーがワークピース107のレーザ出口側108Aまでの入口面及び体積を通過できるようにするために、ワークピース107のレーザ出口側(下面108)の加工は、入口側(上面102)の対応する光学的品質を伴うワークピース107の透明性と、ワークピース107の体積の透明性とを前提としている。
【0078】
一般に、これらの条件下において、出口側では、レーザ成形ツールを使用して入口側と同様の加工プロセスを実現することが可能であり、ワークピース107の体積及び入口面の残りの伝播に影響を与える特性は、ビーム成形中に考慮に入れることができる。高いアブレーションレートのために設計されたレーザ成形ツールを使用する裏面アブレーション加工方法の場合、入口側加工とは対照的に、アブレーション生成物が加工ゾーンまでビーム伝播に影響を与えないことが有利である。
【0079】
補足的に、複数の連続相互作用領域をレーザ加工中に同時に生成することもでき、前記相互作用領域は、それぞれの場合に互いから離間されることに留意されたい。これに関して、例えば、複数のアブレーション領域又は同じ相対移動のために平行に延びる材料の修正を(例えば、ワークピースをマーキングするためのワークピース内で)同時に形成することができる。
【0080】
アブレーション又は修正の幾何学的形状は、レーザビーム又は部分ビーム22、22’、22’’のビーム成形によって決定される。隣接する焦点ゾーン又は有効領域25A、25A’、25A’’の空間勾配は、適切な光学システム又は加工光学ユニットによって生成することができる。時間勾配の生成は、パルスグループの形成又は超短パルスレーザビーム12のパルス成形によって実行することができる。急速加工の場合、同時に単一のレーザパルス/単一のレーザパルスグループのみを用いた単一のアブレーション又は修正形状を生成することが可能であり、その結果、この場合、ワークピース上の位置は、一度のみ移動される。
【符号の説明】
【0081】
1a 複屈折偏光子素子
1b 複屈折偏光子素子
2a ビーム入口面
2b ビーム出口面
3 入力レーザビーム
4 結晶材料の光軸
5a 第1の部分ビーム
5b 第2の部分ビーム
6 複屈折レンズ素子
7 非複屈折レンズ素子
8a 焦点ゾーン
8b 焦点ゾーン
9 回折ビームスプリッタ光学ユニット
10 加工光学ユニット
11 レーザ源
12 レーザビーム
13 レーザ加工装置
22 部分ビーム
23 ワークピース
25 相互作用領域
25A 部分領域
29 ストリップ
33 ストリップ
35 矢印
37 支持体
39 クラック
57 ワークピース
57A 上面
57B 下面
59 相互作用領域
59A 部分領域
61 修正平面
63 エッチング槽
101 ワークピース
102 上面
102A 表面
102B 自由曲面
103 相互作用領域
105A 矢印
105A’ 矢印
105B 矢印
105B’ 矢印
105C 矢印
105C’ 矢印
107 ワークピース
108 下面
108A レーザ出口側表面
108B 自由曲面
109 マルチスポット焦点曲線
【国際調査報告】