(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】鋼製鍋底部及び鋼製鍋底部をコーティングするための方法
(51)【国際特許分類】
B22D 41/02 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B22D41/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528067
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 BR2020050464
(87)【国際公開番号】W WO2021092668
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】BR102019024046-6
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522188129
【氏名又は名称】サン-ゴバン ド ブラジル プロドゥトス インダストリアイス エ パラ コンストゥルサオ リミターダ
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN DO BRASIL PRODUTOS INDUSTRIAIS E PARA CONSTRUCAO LTDA.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リマ, ハイスラー, アポリナリオ, アモロッソ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス, ヴラドニルソン, ピーター, デ ソウザ
(72)【発明者】
【氏名】ギマランイシュ, ハミルトン, シーザー
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014BA02
(57)【要約】
本発明は、鋼製鍋の底部にモールドを配置するステップと、クランプ機構によってモールドを固定するステップと、鋼製鍋の底部及びモールドの下方に耐火材を付設するステップと、モールドに荷重を加えるステップと、耐火材からモールドを取り外すステップとを含む、鋼製鍋底部をコーティングする方法を提供する。本発明は、鍋の金属歩留まりの向上、及び通常は形成された渦によって引き込まれる非金属介在物の低減を可能にするので有効である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製鍋の底部をコーティングするための方法であって、
鋼製鍋(1)の底部にモールド(3)を配置するステップと、
クランプ機構によって前記モールド(3)を固定するステップと、
前記鋼製鍋の前記底部及び前記モールド(3)の下方に耐火材(5)を付設するステップと、
前記モールド(3)に荷重(4)を加えるステップと、
前記耐火材(5)から前記モールド(3)を取り外すステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記耐火材が耐火コンクリートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モールドが、傾斜部と、直線又は湾曲したプロファイルとを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記クランプ機構によって前記モールドを固定する前記ステップが、前記モールドを前記鋼製鍋の前記底部にて弁座上に支持する工程と、構造体をロックして荷重印加中の移動を防止する工程とを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モールドに加えられる前記荷重が、前記モールドの下の前記耐火材の結果として生じる浮力を補償するために前記モールドを部分的に満たす量の前記耐火材又は他の材料によって形成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
耐火材の付設中に前記モールドの前記底部のハッチによって前記鋼製鍋の前記底部から出口弁の周りに面取り部を形成するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
鋼製鍋の底部であって、
前記鋼製鍋の前記底部が耐火材(5)のコーティングによって形成され、厚さのより厚い領域から厚さのより薄い領域まで延びるプロファイルを備え、出口弁(2)が前記耐火材の底部のより薄い領域に配置されていることを特徴とする、鋼製鍋の底部。
【請求項8】
衝撃領域(16)を備え、
前記プロファイルの端部が前記衝撃領域の近くに配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の鋼製鍋の底部。
【請求項9】
前記プロファイルが厚さのより厚い領域に配置された前記出口弁(2)の2つの離れた端部から延びていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の鋼製鍋の底部。
【請求項10】
厚さのより薄い領域で前記出口弁(2)の弁座の周りに配置された少なくとも1つの面取り部(14、15)を備えることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の鋼製鍋の底部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、鋼製鍋の底部に取り付けるモールドを用いて鍋にコンクリート耐火材をコーティングし、特徴的な流線を導入することによって流れを改善することを可能にし、鋼の減少率を高め、渦及びドレイン(排液)に関連する現象を低減してスラグの通過を低減させる方法に関する。結果として、鍋の金属歩留まりの向上、及び通常は形成された渦によって巻き込まれる非金属介在物を低減させることが可能になる。
【背景技術】
【0002】
[0002]製鋼工程中、溶融金属が転炉から鋼製鍋に出湯される。
図1に示すように、鍋は、金属製のケーシング1からなる機器であり、その内面は溶鋼から生ずる高温に耐えるように耐火材で内張りされている。耐火レンガで構成された鍋5の底部は、通常、摩耗に耐えられるように厚さを増した溶鋼ジェット(衝撃)入射用の領域と、冶金工程を最適化するためのアルゴン注入用多孔質プラグを備えた耐火製品を含む別の領域と、溶鋼の通過を制御する仕切弁を含む流れ制御システム2で構成される別の領域とを有する。仕切弁は、2つの平板で構成され、平板には穴が開いており、整列すると溶鋼の通過が可能になる。
【0003】
[0003]更に、鍋は、鋼の化学的及び熱的な調整を行う冶金学的処理を受ける。次いで、鍋をキャスタタワーに取り付け、仕切弁を開いて溶鋼を分配器に流入させる。鍋底部の形状が不規則なために、空にするときに溶鋼の一部が残留してしまい、すべての溶鋼が鍋から流れ出ることができない。このように、この残留した溶鋼は再処理されるであろうスクラップとなるので、金属歩留まりが低下する。この問題は、エネルギーと時間の消費に関連するコストを意味する。
【0004】
[0004]鍋からの出湯の間に発生する別の問題として、渦の形成があり、これにより鋳造時間が長くなり、スラグが分配器に流れ込んでしまうことがある。また、鋳造の最後に、ドレイン現象の形成もある。このドレイン現象により、流動プロセスの最後の数分間にスラグが崩壊して、残りの溶鋼が流れなくなる。
【0005】
[0005]したがって、溶鋼の流れを良くして、金属歩留まりを良くし、手直しを減らし、鉄鋼の品質(介在物)を改善する技術開発が必要とされている。
【0006】
[0006]この流体力学的問題の一部を阻止するために、長年にわたっていくつかの技術が登場してきた。様々な提案の中で最もよく知られているのは、レンガの千鳥組みである。この解決策は、鍋の底部に沿って段差を設け、溶融炉からの溶鋼の落下位置を高くし、仕切弁領域を最も深くすることからなる。しかしながら、ほとんどのプロジェクトで適用されているこの解決策は、問題を部分的に改善するだけであり、約1~4%の鋼が依然として残留するため、あまり効率的ではない。
【0007】
[0007]一部の製鋼所では、鋳造中に鍋を傾けることも別の一般的な解決策として採用されている。この傾斜により、より多くの溶鋼の排出、金属柱の高さの増加、表面に浮かぶスラグの吸引の一部の回避が可能になる。この解決策は、金属製シムを使用して鍋を傾ける必要があるため安全性に欠け、また、溶鋼を分配器に導く長い管の取扱いの妨げにもなる。
【0008】
[0008]文献PI0307454-4及び国際公開第2003072285号は、鍋の底部に滞留する金属及び仕切弁システムを通過するスラグを減らすための新しい解決策を提案している。この解決策は、鍋の最下部にある仕切弁のレベルが異なるテラスで構成されている。説明によれば、これらのテラスは水平であり、表面に浮かぶスラグの一部を留めておく機能を有する。テラスの下では底部に傾斜をつけ、これにより、溶融金属柱の高さを上げて、溶融金属が優先的に仕切弁に流れ込むようにしている。サンプと呼ばれる仕切弁より上の場所は、溶融金属の貯留槽として機能し、その領域での溶融金属の滞留時間を増し、スラグの引き込みを回避している。また、同じ解決策でも、複数の面取り部をセットとして含む場合もあり、これは凹部と説明されている。このタイプの解決策は、米国特許第5196051号明細書にも説明されている。このように、渦の形成が防止される。しかしながら、これらの文献には、この主張を裏付ける流体力学的な研究が示されていない。
【0009】
[0009]米国特許第4746102号明細書は、基本的に仕切弁位置まで傾斜面で構成されている別のタイプの鍋底部を提案している。この解決策は、多くの溶融金属を排出することができるが、引き込み(渦)及びドレイン効果のために、出湯中におけるスラグの通過の低減を保証するものではない。
【0010】
[0010]最新技術の文献には、これらのバックグラウンドの製造工程が詳細に記載されていないため、既知の解決策は、設置場所で取り付けられる既製品で構成されていることを示している。
【0011】
[0011]最新技術によって既に知られている技術は、金属歩留まりを向上させる、又はスラグの通過を減らすことさえ可能であると主張しているが、それがどのように起こり得るのかを科学的に(水モデルや数値モデルで)提示していない。関与する現象の解釈に基づく、単なる経験による提案である。つまり、このような解決策は、そのような改善を保証するために、より多くの実績を必要とする。
【0012】
[0012]したがって、最新技術は、製鋼工程を改善することができ、設置が実用的で操業現場で実施することができる鋼製鍋底部コーティングを提供できる解決策を欠いている。更に、最新技術は、その耐用年数全体にわたって同じ特徴的なプロファイル(外形)を有する鍋底部コーティングを提供できる解決策を提示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[0013]本発明の目的は、溶鋼の流れを改善して、溶鋼の排出をより多くし、スラグの通過を低減させることを目指し、金属製モールドを用いて特徴的なプロファイルを有する一体型鍋底部コーティング(耐火コンクリート)を開発する方法を提供することである。
【0014】
[0014]本発明の更なる目的は、鍋の端点を結ぶ傾斜した流路を備えたコーティングを開発し、流れを仕切弁システムに円滑に導くことである。流路の傾斜は、湾曲した又は直線のプロファイルに形成することができる。流路の傾斜により、溶鋼の流れの加速が可能になり、仕切弁の位置でスラグを維持すること及び渦の破壊の一部を支援する。
【0015】
[0015]更に、本発明の目的は、現場でのコンクリート成形中に、仕切弁システムの近くに障壁を設置することを提案することである。この障壁は、渦の円運動特性を破壊する機能を有する。ここでは、この障壁は面取り部と呼ばれ、コンクリート打設中に作られるか、又は事前に成形されて現場で挿入される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[0016]上記の目的を達成するために、本発明は、鋼製鍋の底部にモールドを配置するステップと、クランプ機構によってモールドを固定するステップと、鋼製鍋の底部及びモールドの下方に耐火材を付設するステップと、モールドに荷重を加えるステップと、耐火材からモールドを取り外すステップとを含む、鋼製鍋底部をコーティングする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の態様による鍋底部を有する鋼製鍋の断面図である。
【
図3】本発明による異なる構成のプロファイル領域を示す。
【
図4】本発明による鋼製鍋底部コーティングの別の態様を示す。
【
図7】本発明による仕切弁内のモールド及び結合システムの長手方向断面を示す。
【
図8】本発明によるモールド用の支持システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0029]以下の説明は、鋼製鍋底部に適用される本発明の好ましい実施形態から始まる。しかしながら、当業者には明らかであるように、本発明はいかなる特定の態様にも限定されず、特定の鋼製鍋コーティング法にも限定されない。
【0019】
[0030]既に述べたように、
図1は、製鋼工程中に使用される鋼製鍋の図を示す。鍋は、耐火材で作られた鍋底部1を備える。更に、鍋は、溶鋼を流すための仕切弁として形成された弁座2を備える。
【0020】
[0031]一般に、鍋底部には、最も厚い耐火材を有して転炉からの溶鋼ジェットを受ける位置があり、よって鍋底部の最も高い箇所に配置される。この位置から、溶鋼が鍋の他の部分に広がり、溶鋼レベルが上昇する。しかしながら、鍋の一部の領域では、溶鋼が十分に流れない。この問題を解決するために、溶鋼の排出を改善するためのコーティングバックグラウンドが提案されている。
【0021】
[0032]
図2は、衝撃領域16及び弁座2を備える鋼製鍋に適用される、本発明による鋼製鍋底部コーティングの第1の態様を示す。本発明による鍋底部コーティングは、鍋底部の厚さが厚い領域から薄い領域へ延びるプロファイルの厚さ変動に起因して形成される特徴的な流路を形成するように決定された、印刷された特徴的なプロファイルを有する。
【0022】
[0033]鍋底部が衝撃受け部16と弁座2のみを備えるこの態様では、モールドはC字形であり、端部が、厚さの厚い領域にある衝撃領域16の側面に隣接する箇所から、鍋底部の上に実質的に円形になって、厚さの薄い領域にある弁座2を通り、厚さの厚い領域にある衝撃領域16の反対の側面に隣接する箇所まで突き出ている。この形式により、厚さの厚い領域にある衝撃領域16付近のデッドゾーンを厚さの薄い領域にある出口弁に相互接続することができる。
【0023】
[0034]鍋の他の領域に対する仕切弁の配置に応じて、可能な限り最適化し、鍋内に溶鋼を貯める可能性があるデッドゾーンをなくすために、プロファイルの形状を変えることができる。
【0024】
[0035]印刷されたプロファイルは、最終的には使用する鍋の種類に応じて、流れを改善するために異なる特徴的な形状を有するはずである。例えば、鍋は第2の出口弁領域を有してもよく、ここを通って溶鋼が鋳物内に漏れることになる。鍋によっては、また、鉄鋼精錬を改善するために不活性ガス注入のために一般的に使用される多孔質プラグを有する場合もある。
【0025】
[0036]したがって、モールドは、理想的には、(衝撃領域を除いて)鍋の底部をできるだけ占有するか、覆うべきであることが分かった。これにより、デッドゾーンを最大限に覆うことができ、弁座を通って転換されない金属鋼を捕捉することが可能になる。このように、モールドにより、仕切弁領域と共通する箇所を相互接続する窪みが生成される。
【0026】
[0037]
図3は、衝撃領域16、弁座2、及び多孔質プラグ19の位置を考慮して、異なる構成を有するプロファイルによって占有することができる鍋底部の領域を示す。鍋底部の異なる構成を考慮すると、2つの重要な領域を考慮することができ、流れ改善のための新しいプロファイルが配置される場所となる有用な改善領域17は、弁座2から最も遠い箇所がゼロ点であり、そこから弁座まで底部の厚さが減少し、より深い深さの領域を生成する。別の強調表示された領域は、重要領域18であり、弁座2及び多孔質プラグ19が配置され得る領域を表す。
【0027】
[0038]鍋に多孔質プラグ19がない場合、最終的な設計は簡単であり、すなわち、
図2のようにC字形のプロファイルで弁座2と離れた箇所を相互接続する。
【0028】
[0039]鍋の底部に多孔質プラグがある場合、特徴的な経路が多孔質プラグの上を通過しないようにプロファイルを合わせる必要がある。
図4は、鍋の底部にはプロファイルの端点間にプラグ19があるため、プラグ19の周りでずらす必要がある場合に使用される本発明の態様を示す。換言すれば、モールドに使用される特徴的なプロファイルは、多孔質プラグ19を鍋底部の厚さがより厚い領域内に保つように迂回する特徴的な曲線を形成することができる必要がある。
【0029】
[0040]鋼製鍋のコーティングを行うために、
図5に例示するようなモールド3を使用することが提案されている。図から分かるように、モールド3は、好ましくは曲線的な箱状の形状を有し、その断面形状は、鍋底部に印刷されるプロファイルに対応するものである。この態様では、モールド3は、
図2に示すプロファイルに対応するプロファイル形状10を有する。この曲線的なプロファイルにより、コンクリート5での応力集中の発生が防止される。更に、湾曲した形状はまた、衝撃領域に最も近いこの領域での流れの水頭損失を低減することにも役立つことが分かった。しかしながら、モールドは、台形又は直線タイプの形状など、端部をわずかに傾斜させたコーナー形状でも製造することができる。
【0030】
[0041]更に、モールドは、その長さに沿って変化し、かつ溶鋼の流れを改善するために鍋底部に適用することが望ましい高さ変化に対応した厚さを有する。
図6は、
図5によるモールドの一端の断面であり、その高さの変化を見ることができる。
【0031】
[0042]この他に、モールド3は、その上部領域にその固定及び支持のためのシステムを備え、その下部領域に後述するコンクリート打設用の固定システム及びハッチを備える。
【0032】
[0043]コーティング工程の開始時に、鍋1は耐火材改質のために自由解放される。
【0033】
[0044]次に、鋼製鍋の端点を仕切弁2システムに接続するように、モールド3を上方からクレーンによって挿入し、鋼製鍋1の底部の上に配置して弁2で結合する。
【0034】
[0045]次いで、モールド3をクランプしてコーティングを作製する。好ましくは、モールド3は、鋼製鍋1の底部で弁座2に取り付けられる。
【0035】
[0046]次いで、コーティングを本発明による特徴的なプロファイルに合わせるように、耐火材5を鍋1の底部に付設し、モールド3の下方の空間を充填する。好ましくは、使用される耐火材は耐火コンクリートである。
【0036】
[0047]所望のプロファイルを確実に形成するために、中空部又は凹状部を形成してモールド3の内部を部分的に荷重4で充填することが提案されている。荷重4は、構造物に十分な重量を与えるものであれば、コンクリート自体で作ることも、又はモールドと同じ材料(鋼、繊維、木材等)を充填することさえできる。この対応により、成形されるコンクリート5の浮力が補償される。モールド3は箱10形式、すなわち内部が空洞になっているため、生成される浮力が大きすぎて、モールドクランプ機構を破壊する可能性がある。したがって、コンクリートによって生成される浮力に対して、モールドの重量とのバランスを確保するために、充填されるべき部分容積4を計算する必要がある。
【0037】
[0048]モールド3は、溶鋼が優先的に流れることができるプロファイルを形成できるように傾斜部を有する。モールドのゼロ点は、弁座2からできるだけ離れているべきであり、それにより溶鋼をデッドゾーンから捕捉することができる。ゼロ点から、弁座2を基準として深さの違いがある。すなわち、モールド3のプロファイルによって生成されるコンクリートの高さには2つの優先レベルがあり、この高さの差が、モールド3によって形成された流路を通る流れを可能にし、厚さの厚い領域では離れた箇所から溶鋼を捕捉し、厚さの薄い領域では弁2に向かう優先的な流れを生成する。生成され加速された流れは、スラグをより長く維持する力を生み出し、ドレイン現象を回避することができる。
【0038】
[0049]耐火材の付設と鋼製鍋底部の成形を改善するために、耐火材が成形されるまでモールドをクランプしたままにする必要がある。この点に関して、本発明による方法は、クランプ機構の使用を提供する。
【0039】
[0050]
図7によれば、モールド3は、クランプされ弁座2にロックされている。弁の中央には中央ピン6が挿入されており、この中央ピン6はモールド3と結合しており、モールド3は、コンクリート打設中に移動しないように、クランプシステム9によってロックされることになる。
【0040】
[0051]好ましくは、
図8に見られるように、荷重4によってもたらされる内部バランスによって生じる重量に起因するモールド先端部3への応力を回避するために、モールドは支点11を有する。好ましくは、支点11は、モールド3の本体自体の延長部又は突出部によって単純に形成され、中央には支持ピン12を通過させるための小穴が設けられている。しかしながら、支点は、ピン12で固定できるように、モールドに嵌合又は取り付けられた部品によって形成することができる。
【0041】
[0052]このように、支持システムにより、荷重を加えている間、モールドを水平に保つことができる。理想的な高さ調整ができるように、ピン12には、クランプ中や耐火材付設の準備中に調整を可能にする穴13があり、その後、モールドは鍋底部で支持される。
【0042】
[0053]コンクリートが完成すると、空隙を避けてコンクリートを振動させるように注意しながら、支持ピン12を取り外す。代替的に、高さ調整システムは、高さ調整を可能にする他の任意のシステム、例えば、回転してモールドを上昇させるねじシステムなどを使用することができる。
【0043】
[0054]したがって、本発明は、鋼製鍋底部に直接適用することができる実用的な設置を可能にし、製鋼工程中の改善を可能にする方法を提供する。
【0044】
[0055]好ましくは、本発明によるコーティングバックグラウンドは、渦現象の形成を防止するための渦防止システムを含んでもよい。この目的のために、モールド3は、
図5に見られるように、弁座に対応する開口部の近くに配置された開放点又はハッチ20を備えることができ、これによりコンクリート打設の間にコンクリートは上昇することができる。より具体的には、ハッチ20を使用すると、コンクリート打設の間に、この開放点でコンクリートのレベルが上昇し、面取り部を形成する。この段階で、外部振動機を使用してコンクリートの均質化を確実にすることができる。
【0045】
[0056]鍋の底部のコーティングは、印刷された特徴的なプロファイルに加えて、弁座付近にある面取り部14及び15によって形成された渦防止システムを備えることになり、これにより流れの乱れが生成され、渦の形成が防止される。
【0046】
[0057]既に述べたように、渦は、スラグを弁内に吸引することができる流体力学的現象である。渦防止システムは、少なくとも1つの面取り部14を備えることができ、好ましくは、システムは、2つの面取り部14及び15を備える。それで、本発明は、溶鋼の流れを増加させ、渦現象の発生を防止することができる方法及び鍋底部コーティングを提供する。
【0047】
[0058]
図9、
図10及び
図11は、本発明のコーティング方法を異なる鍋底部に適用した場合の他の態様を示す。各コーティング底部は、渦防止システム、特徴的な流路、及び事前成形された衝撃受け部16を備える。衝撃受け部は、底部よりも高い位置にあり、溶鋼の流れを助ける。衝撃受け部の縁部は凸状であり、これにより鍋の端部での流れが促進され、鋭い角によって引き起こされる破損を防止する。衝撃受け部は、事前に特別な形状に成形することによって作られ、制御された環境で硬化及び乾燥される。この作業は、衝撃領域で使用するための高強度プレキャスト(より高い機械的要求)を得ることを目的としている。
【0048】
[0059]
図9~
図11に示す各バックグラウンドは、異なるプロファイルを有するが、
図3に示す対応する領域内にあることに留意されたい。したがって、それぞれのバックグラウンドを成形する際には、それぞれの状況において所望のプロファイルを作成するために、異なる特徴的なプロファイルを有するモールドを使用しなければならない。
【0049】
[0060]したがって、本発明は、鍋底部コーティングの方法、及び製鋼工程を改善することができる形状を有し、現場での、又は既製品の製造のいずれかで、より簡単に成形できるモールドを提供する。
【0050】
[0061]具体的には、
図11は、衝撃領域16、弁座2、及び多孔質プラグ19を備えた鍋の底部に適用される本発明の態様を示す。この構成では、衝撃領域16は鋼製鍋の壁に隣接して配置され、弁座2は衝撃領域の片側に隣接して配置される。多孔質プラグ19は、衝突領域の他方の側に近接して配置される。このように、使用されるプロファイルは、多孔質プラグ16により近い端部を有し、弁座2まで延びる。更に、より有効に利用するために、プロファイルは、最大数のデッドゾーンを獲得するために大きな面積を有する。このように、溶鋼は多孔質プラグ19の近くの領域から弁座に流れることができる。渦の影響を低減するために、面取り部14及び15が弁座2の近くに設置されている。
【0051】
[0062]
図12は、多孔質プラグ19が衝撃領域16に隣接して配置され、弁座2が鋼製鍋の壁に近接するように構成された鋼製鍋に適用された本発明の一態様を示す。この場合、プロファイルは、本発明の第1の態様と同様にC字形であり、その端部はそれぞれ衝撃領域16の一方の側に配置されている。プロファイルが多孔質プラグ19の周りを通過することにも留意されたい。
【0052】
[0063]本発明は、設置場所で鍋底部コーティングを行うための簡単で実用的な方法を提供することに加えて、既製品の製造を可能にする。モールド3を、プロファイルが印刷されることになる事前成形品に適用することができ、所望の位置に設置することができる。
【0053】
[0064]したがって、本発明は、様々な構成の鍋において鉄鋼の利用を改善するための簡単で実用的な方法を可能にすることが分かる。更に、本発明は、設置場所でのコーティングの適用と既製品の製造の両方において有効であることが分かる。
【0054】
[0065]同様の流体として水を使用して流れをシミュレートした1/8スケール物理モデルでの実験で、本発明の利点が観察された。なお、湾曲した流路によって生成される優先的な流れは、水が空になる最後の時点で、表面の崩壊を防ぐ維持する力が観察された(ドレイン現象)。通常の流線は、表面(スラグ)を含む様々な方向から引っ張る。底部に湾曲した空洞を作ることにより、周辺から弁座2への優先的な加速が得られる。溶鋼状の流体として水を用いた物理モデル実験では、直線的な底部(現行)と本発明が提案する底部の2つの構成を比較した。弁を通って流れる水を分析することにより、ドレイン現象の形成の瞬間を観察した。この瞬間に鍋内に残留した水量が記録される。本発明が提案するバックグラウンドでは、鍋内に残留した水量が75%削減されており、これは金属歩留まり向上に影響を及ぼす。
【0055】
[0066]本発明の別の利点は、鍋操作中の表面摩耗のタイプに関する。先に説明された別の特許文献で観察された1つの問題は、耐火コーティング寿命の終わりまで同じ設計をどのように保証するかという点である。湾曲した空洞10を持つことで、水モデルでの試験中に、空洞内で流動優先性が得られる。その結果、空洞内で優先的に摩耗が起こり、常に湾曲した底部形状を確保することができる。換言すれば、本発明によって提案されるこのタイプの解決策は、コーティングの寿命が終わるまで同じ機能を維持するのに役立つ。
【0056】
[0067]したがって、本発明は、鉄鋼の製造プロセスを改善することができる設置を可能にし、実用的な設置であり、そして作業現場で行うことができる鋼製鍋底部コーティングの方法を提供する。
【0057】
[0068]本発明の保護範囲内に入る多数の変形が許容される。したがって、本発明が上記の特定の構成又は実施形態に限定されないことが補強される。
【国際調査報告】