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特表2023-501654ポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528089
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020082350
(87)【国際公開番号】W WO2021099297
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/937,679
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20153087.0
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バトナーガル, アトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ゴスチー, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, デーヴィッド ビー.
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
本発明は、低い黄色度指数(YI)を有するポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法に関する。本開示は、この方法から得られるPSU、並びにこのPSUが組み込まれた物品にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 4,4’-イソプロピリデンジフェノールを含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー(a1);
- 反応混合物(R)中の成分(a2)の総重量を基準として、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)と4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)とからなる群から選択される少なくとも1種のジハロゲン化合物を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(a2);
- 少なくとも1種の炭酸塩成分;
- 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を含む溶媒;
を含む反応混合物(R)中で縮合することによって、ポリスルホン(PSU)ポリマーを調製する方法であって、
前記PSUポリマーが、移動相として塩化メチレンを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される70,000g/mol~200,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)と、4未満の多分散指数(PDI)(PDIはMw/Mnである)とを有し、
前記方法が、前記反応混合物(R)を温度Tまで加熱し、任意選択的に前記反応混合物(R)の温度を反応温度Tまで上げる前に少なくとも20分間この温度に維持する工程を含み、前記温度T及びTが、140℃<T<T<215℃であり、
前記縮合終了時のPSUの量が、前記PSUと前記溶媒の総重量を基準として少なくとも30重量%である、方法。
【請求項2】
モノマー(a1)が少なくとも50モル%の4,4’-イソプロピリデンジフェノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマー(a2)が少なくとも50重量%の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度をTからTまで上げる工程が、5分から5時間まで変化する時間にわたって行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも不等式(1)又は(2):
・140℃<T<190℃ (1)
・180<T<215℃ (2)
(ただし、不等式(1)と(2)の両方が満たされる場合、T<Tであることを条件とする)
が満たされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の不等式:T<T-5℃が満たされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物(R)が、水と共沸混合物を形成するあらゆる物質を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
成分(a1):(a2)のモル比が1.01~1.05である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ASTM D4001-93に準拠して光散乱を伴うGPCによって測定される70,000g/mol~200,000g/molの重量平均分子量(Mw)と、4未満の多分散指数(PDI)(PDIはMw/Mnである)とを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリスルホン(PSU)ポリマー。
【請求項10】
x-rite Color i7分光光度計を使用してASTM E313に従って測定される、6.0未満の黄色度指数(YI)を有する、請求項9に記載のPSU。
【請求項11】
前記PSUの総重量を基準として、1ppm(wt)から300ppm(wt)未満のDMIの含有量を有する、請求項9又は10に記載のPSU。
【請求項12】
前記PSUの総重量を基準として、400ppm(wt)未満のポリマーに結合した塩素の含有量を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のPSU。
【請求項13】
前記PSUポリマーの総重量を基準として、1.15重量%未満の環状オリゴマー及び環状二量体を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載のPSU。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載のPSUポリマーを含む熱可塑性組成物。
【請求項15】
請求項14の熱可塑性組成物又は請求項10~13のいずれか一項に記載のPSUポリマーを含む成形品、繊維、フィルム、膜、又は発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月19日に出願された米国仮特許出願第62/937679号及び2020年1月22日に出願された欧州特許出願公開第20153087.0号に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、低い黄色度指数(YI)を有するポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法に関する。本開示は、この方法から得られるPSU、並びにこのPSUが組み込まれた物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリスルホン(PSU)ポリマーは、高性能熱可塑性プラスチックの分類に属しており、優れた機械的特性を特徴とする。PSUは、特にSolvay Specialty Polymers LLCからUDEL(登録商標)の商品名で市販されている。
【0004】
PSU、さらに大きくはポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、水酸化物法又は炭酸塩法による重縮合反応によって調製することができる。水酸化物法では、ジヒドロキシ成分と水酸化物から塩が形成され;次いで、形成された無水ジフェノレートジアニオンが、その後芳香族ジハロゲン化合物と反応する。水酸化物法は、通常、第1の理由として化学量論を注意深く監視する必要があるため、第2の理由としてプロセスが二段階合成であるため、そして第3の理由として強塩基の使用は化学量論の逸脱に対する耐性が低く、ポリマー分子量の増加に悪影響を及ぼし得るため、あまり好ましくない。炭酸塩法に関する限り、芳香族ジヒドロキシル化合物と芳香族ジハロゲン化合物は、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、又は炭酸カリウム(KCO)の存在下で、極性非プロトン性溶媒中で一緒に反応する。文献によれば、炭酸塩法では、極性非プロトン性溶媒としては、通常、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。また、典型的には、水と共沸混合物を形成する溶媒(例えばトルエン)の追加の使用も説明されており、それにより重合中に副生成物として形成された水は、重合の全体にわたって共沸蒸留により連続的に除去することができる。
【0005】
複数の特許文献には、様々な溶媒及び装置で行われる縮合プロセスによるPAESポリマーの調製について記載されている。
【0006】
欧州特許出願公開第0412499A1号明細書(DEGUSSA)には、ジハロゲン成分が4,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンであり、ジヒドロキシ成分が4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、及び4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンを含む、PAESポリマーを形成する方法が記載されている。縮合は、炭酸ナトリウムの存在下でジフェニルスルホン(DPS)中で行われる。
【0007】
国際公開第01/66620号パンフレット(SOLVAY)には、色が改善されたポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)が記載されている。ポリマーは、極性非プロトン性溶媒と、水と共沸混合物を形成する溶媒とを含む溶媒混合物中で炭酸塩プロセスによって調製される。極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン(DPS)、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、スルホラン、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)から選択される。
【0008】
特開平3-294332号公報(Ube Industries)は、ジハロゲン成分が4,4’-ジクロロジフェニルスルホンであり、ジヒドロキシ成分がヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ビフェノール、及びジヒドロキシルジフェニルエーテルから選択される、色が薄い熱可塑性スルホンポリマーの調製方法に関する。より正確には、実施例には、水と共沸混合物を形成する溶媒としてのトルエンの存在下、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)中の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに基づくスルホンポリマーの調製が記載されている。
【0009】
米国特許出願公開第2009/0275725A1号明細書(BASF)には、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N-エチル-ピロリジノン(NEP)、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される塩基性非プロトン性溶媒中で行われる、DIN 6167に準拠した黄色度指数を有するポリスルホンの調製方法が記載されており、この発明は、特殊な機器、すなわち壁の近くを通過する積極的な搬送スターラーの使用に基づいている。
【0010】
米国特許出願公開第2012/029106A1号明細書(BASF)には、4,4’-ジヒドロキシビフェニルと4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの反応に基づいて低塩素含有量のポリビフェニルスルホンポリマー(PPSU)を製造する方法が記載されており、この反応は、NMP中でモル過剰のジヒドロキシモノマーを用いて行われる。
【0011】
特開平05-86186号公報(Mitsui)は、重合溶媒としてDMIを用いてビフェノールと4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとを重縮合することにより製造されるポリエーテルスルホンに関する。この文献には、実施例2において、DMIとトルエン中の強塩基化学(KOH)を使用したPSUポリマーの調製が記載されており、これによれば、全ての成分が反応混合物に添加されると、混合物は150℃の処理温度で4時間加熱される。縮合終了時のPSUの量は、PSUと溶媒の総重量を基準として26.9重量%になる。
【0012】
本発明者らは、文献に記載されている全ての調製方法が、それらの分子量、及び光学特性、より正確にはそれらの黄色度指数に関して改善することができるスルホンポリマーを与えることに気付いた。
【0013】
本発明の目的は、機械的特性を損なうことなしに、黄色度指数(YI)が低いポリスルホンポリマーを調製する方法を提供することである。本発明の方法は、特に、溶媒としての1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)の使用に基づいている。
【発明の概要】
【0014】
本開示の一態様は、ポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法に関する。出願人は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を含む溶媒中で行われる本発明の方法が、その機械的特性を損わずに、さらに驚くべきことにはその曲げ強さを向上させる、低い黄色度指数(YI)を有するPSUを得ることを可能にすることを見出した。本発明のPSUは、有利なことに、低レベルの環状二量体も示す。これにより、本発明の方法により得られるPSUは、膜の製造に非常に適したものになる。
【0015】
本発明の方法は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)である溶媒中、1つの炭酸塩成分の存在下で、4,4’-イソプロピリデンジフェノールを含む芳香族ジヒドロキシモノマー(a1)を、芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(a2)と反応させる工程を含む。本発明の方法は、特に、反応混合物(R)を温度Tまで加熱し、任意選択的に反応混合物(R)の温度を反応温度Tまで上げる前に少なくとも20分間この温度に維持する工程を含み、温度T及びTは、140℃<T<T<215℃である。本発明者らは、DMI中での重縮合プロセスがそのような工程を含む場合に、PSUポリマーが、望まれる分子量(Mw)及び多分散指数(PDI)を有することに加えて、低い黄色度指数を有利に示すことに気付いた。この方法から得られるPSUポリマーは、好ましくは少量の環状二量体及び少量の残留溶媒も示し、これにより、そのようなポリマーは、例えば、中空繊維及び膜の製造に非常に適したものになる。この方法で得られたPSUポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される70,000g/mol~200,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)と、4未満の多分散指数(PDI)(PDIはMw/Mnである)とを有する。
【0016】
有利には、本発明の方法は、水と共沸混合物を形成する溶媒の使用を必要としない。
【0017】
本開示の別の態様は、本発明の方法によって得られるポリスルホン(PSU)ポリマーである。
【0018】
本開示は、本発明のPSUを含む物品、又はこのPSUを含むポリマー組成物にも関する。本発明のPSUポリマーは、溶剤ベースのプロセスを使用する多孔質中空繊維及び平膜の製造に特によく適している。PSUポリマーは、有利なことには、腎臓透析、水処理、バイオ処理、食品及び飲料処理、並びに産業ガス分離などの、様々な膜濾過用途に使用することができる。本発明の方法に従って調製された色が少ないPSUは、興味深いことに優れた外観を示し、このため、例えば、レンズ、フィルター、及び他の光学製品においてなど、色、特に黄色が許容されない用途のために、透明なカバーや蓋のために、並びに色が少ない透明性が望まれるか必要とされる容器、ガラス、及び物品において、よく適している。これらは、有利なことには色を持たないため、本発明のPSUポリマーは、望みの色をより効率的に実現するために染色又は着色することができる。したがって、本発明のポリマーは、特に白色及び明るい色の物品が望まれる場合に、充填及び着色される用途にも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的は、低い黄色度指数(YI)を有するポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法を提供することである。本発明の方法は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を含む溶媒中で、好ましくは水と共沸混合物を形成する溶媒の非存在下で行われる。本発明の方法は、実施が簡単で安価であるという利点を示す。この方法に従って調製されたPSUポリマーは、分子量分布が狭いため、低く狭い多分散指数(PDI)を有し、多くの用途、特に膜の製造において使用することができる。
【0020】
本開示は、より正確には、70,000g/mol~200,000g/molの重量平均分子量(Mw)と4未満の多分散指数(PDI)とを有するポリスルホン(PSU)ポリマーの調製方法に関する。方法は、
- 4,4’-イソプロピリデンジフェノールを含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー(a1);
- 反応混合物(RG)中の成分(a2)の総重量を基準として、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)と4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)とからなる群から選択される少なくとも1種のジハロゲン化合物を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(a2);
- 少なくとも1種の炭酸塩成分;
- 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を含む溶媒;
を含む反応混合物(RG)中で縮合する工程を含み、
縮合終了時のPSUの量は、PSUとDMIの総重量を基準として少なくとも30重量%である。この方法は、反応混合物(R)を温度Tまで加熱し、任意選択的に反応混合物(R)の温度を反応温度Tまで上げる前に少なくとも20分間この温度に維持する工程を含み、温度T及びTは、140℃<T<T<215℃である。
【0021】
本発明の方法は、限られた時間で高収率のPSUポリマーをもたらし、工業プラントで実施することができる。本発明の方法から得られるPSUは、低い黄色度指数(YI)を示すだけでなく、驚くべきことに、良好な機械的特性(特に実施例に示されるように弾性率及び曲げ強さ)を示す。本発明のPSUは、好ましくは、PSUの総重量を基準として、400ppm(wt)未満のポリマーに結合した塩素の含有量を有する。
【0022】
「(コ)ポリマー」又は「ポリマー」という表現は、本明細書では、実質的に100モル%の同じ繰り返し単位を含有するホモポリマー及び少なくとも50モル%、例えば少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%の同じ繰り返し単位を含むコポリマーを指定するために用いられる。
【0023】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態では、要素又は成分は、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 本明細書での端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0024】
本発明の方法によって得られるPSUポリマーは、その重量平均分子量(Mw)及びその多分散指数(本明細書では「PDI」又は「PDI指数」)(多分子性指数とも呼ばれる場合もある)によって特徴付けられる。多分散性又は多分子性は、ポリマー内の様々な高分子の分子量分布に対応する。PDI指数は、比Mw/Mnに対応し、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、上述した通りに決定される。
【0025】
本発明のPSUは、有利には、
- 重量平均分子量(Mw)が、70,000g/mol~200,000g/mol、例えば75,000g/mol~190,000g/mol、又は80,000g/mol~180,000g/molの範囲であり、
- PDIが4未満、例えば3.8未満又は3.6未満である、
ことを特徴とする。
【0026】
本発明のPSUの重量平均分子量(Mw)は、移動相として塩化メチレンを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明のポリスルホン(PSU)は、式(L):
【化1】
(式中、
- Rは、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
- hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の繰り返し単位(RPSU)を含む。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、Rは、上の式(L)中の各位置において、独立して1個以上のヘテロ原子を任意選択的に含む、C1~C12部位;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基からなる群から選択される。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、各Rについてhはゼロであり、これは芳香族環が無置換であることを意味する。言い換えると、この実施形態によれば、繰り返し単位(RPSU)は、式(L’):
【化2】
の単位である。
【0030】
別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPSU)は、式(L’’):
【化3】
の単位である。
【0031】
本発明のPSUポリマーは、したがって、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーである場合、これは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、PSU中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L)、(L’)、及び/又は(L’’)の繰り返し単位(RPSU)である。
【0033】
ポリスルホン(PSU)がコポリマーである場合、それは、繰り返し単位(RPSU)とは異なる繰り返し単位(R*PSU)、例えば式(M)、(N)、及び/又は(O):
【化4】
の繰り返し単位から構成することができる。
【0034】
本発明のPSUは、70,000g/mol~200,000g/molの範囲のMwを示す。そのような分子量は、モノマー(a1):(a2)のモノマー比を調整することによって得ることができる。活性化芳香族ハロゲン化物又は脂肪族ハロゲン化物、例えば塩化メチルや塩化ベンジルなどを使用して望まれるMwに到達させた後に、縮合を停止することができる。
【0035】
本発明の縮合は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を含む溶媒中で行われる。本発明の方法は、好ましくは、溶媒の総重量を基準として少なくとも50重量%のDMI、少なくとも60重量%のDMI、少なくとも70重量%のDMI、少なくとも80重量%のDMI、少なくとも90重量%のDMI、又は少なくとも95重量%のDMIを含む溶媒中で行われる。1種以上の追加の極性非プロトン性溶媒を使用することもできる。それらは、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロベンゼン、及びスルホランからなる群から選択することができる。驚くべきことに、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)中で行われた本発明の方法によって得られたPSUポリマーの黄色度指数は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で行われる縮合プロセスによって得られるPSUポリマーと比較して低いことが見出された。
【0036】
本発明の縮合は、好ましくは、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)から本質的になる溶媒中で行われる。
【0037】
本発明の方法は、アルカリ金属炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO)及び炭酸水素カリウム(KHCO)の群の中で選択される、又はアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カリウム(KCO)及び炭酸ナトリウム(NaCO)の群の中で選択される、炭酸塩成分の存在下で行われる。好ましくは、本発明の方法は、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、又は両方のブレンドの存在下で行われる。一実施形態によれば、本発明の方法は、例えば、約100μm未満、例えば45μm未満、30μm未満、又は20μm未満の体積平均粒子サイズを有する無水KCOを含む、低粒子サイズのアルカリ金属炭酸塩の存在下で行われる。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、約100μm未満、例えば45μm未満、30μm未満、又は20μm未満、以下の体積平均粒子サイズを有するKCOを、反応混合物中の塩基性成分の総重量を基準として50重量%以上含む炭酸塩成分の存在下で行われる。使用される炭酸塩の体積平均粒子サイズは、例えば、クロロベンゼン/スルホラン(60/40)中の粒子の懸濁液について、MalvernのMastersizer2000を用いて決定することができる。
【0038】
本発明の方法の一実施形態によれば、モノマー(a1)は、モノマー(a1)の総重量を基準として少なくとも50重量%の4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、例えば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の4,4’-イソプロピリデンジフェノールを含む。好ましくは、モノマー(a1)は、本質的に4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)からなる。
【0039】
本発明の方法の別の実施形態によれば、モノマー(a2)は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)のうちの少なくとも1つを含む4,4’-ジハロスルホンであり、好ましくは4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)を含む。
【0040】
本発明の方法のさらに別の実施形態によれば、モノマー(a2)は、モノマー(a2)の総重量を基準として少なくとも50重量%の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、例えば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%のDCDPSを含む。
【0041】
本発明の縮合によれば、反応混合物の成分は概して同時に反応する。反応混合物(R)の温度がプロセスに沿って調整される一方で、反応は中間生成物を単離せずに行われる。
【0042】
成分(a1):(a2)のモル比は、0.9~1.2、例えば0.92~1.15又は0.95~1.1とすることができる。
【0043】
成分(a1):(a2)のモル比は、好ましくは、1.005~1.2、又は1.009~1.15である。過剰の成分(a1)を使用すると、特に高転化率において、これはポリマーに結合している塩素の含有量の低減に寄与することから好ましい。特に好ましい一実施形態では、成分(a1):(a2)のモル比は、1.01~1.08、特に1.01~1.05、非常に好ましくは1.015~1.04である。これにより、分子量を特に効果的に制御することができる。
【0044】
炭酸塩成分:ジヒドロキシモノマー(a1)のモル比は、1.0~1.2、例えば1.01~1.15、又は1.02~1.1とすることができる。炭酸塩成分:ジヒドロキシモノマー(a1)のモル比は、好ましくは1.05以上、例えば1.06又は1.08である。
【0045】
本発明の方法は、反応混合物(R)を温度Tまで加熱し、任意選択的に反応混合物(R)の温度を反応温度Tまで上げる前に少なくとも20分間この温度に維持する工程を含み、温度Tは反応温度Tよりも低い。より正確には、温度T及びTは、次の不等式が満たされるような温度である:
140℃<T<T<215℃。
【0046】
一実施形態によれば、温度をTからTまで上げる工程は、5分から5時間まで変化する時間にわたって、例えば段階的に又は連続的に行われる。ここで、「段階的に」(又は「逐次的に」)という用語は、順番に、例えば一連の逐次的な温度上昇(例えば2℃/分又は5分ごとに5℃)であり、各温度上昇の合間に中断があることを意味する。「連続的に」という用語は、反応温度Tに到達する方向に徐々に(例えば反応混合物がTに到達するまで毎分1℃ずつ)行われることを意味する。
【0047】
一実施形態によれば、温度をTからTに上げる工程は、140℃±5℃の温度Tから195℃±5℃の温度Tまで、1時間±10分の時間かけて行われる。
【0048】
いくつかの実施形態では、反応混合物(R)は、温度Tで少なくとも30分間、例えば少なくとも40分間、少なくとも50分間、又は1時間以上維持される。反応混合物(R)は、温度Tで4時間未満、好ましくは3時間未満維持することができる。
【0049】
温度Tは、反応温度Tよりも低い。好ましくは、温度Tは、反応温度Tよりも少なくとも5℃低く、その結果、以下の不等式T<T-5℃を満たす。より好ましくは、温度Tは反応温度よりも少なくとも10℃低く、その結果、次の不等式T<T-10℃を満たす。さらに好ましくは、温度Tは反応温度よりも少なくとも15℃低く、その結果、次の不等式T<T-15℃を満たす。
【0050】
本発明によれば、反応温度Tは215℃未満である。好ましくは、温度Tは210℃未満である。より好ましくは、Tは208℃未満である。さらに好ましくは、温度Tは205℃未満である。
【0051】
温度Tは140℃超である。好ましくは、温度Tは145℃超である。より好ましくは、温度Tは150℃超である。さらに好ましくは、温度Tは155℃超である。
【0052】
いくつかの実施形態では、温度Tは、140~190℃、例えば145~185℃、150~180℃、又は155~175℃に含まれる。
【0053】
好ましい一実施形態によれば、反応温度(R)は、1時間±10分の時間、170℃±5℃である温度Tで維持される。
【0054】
いくつかの実施形態では、温度Tは、180~215℃、例えば185~210℃、188~208℃、190~205℃に含まれる。
【0055】
好ましい一実施形態によれば、反応混合物(R)は、反応混合物(R)の温度を195℃±5℃で少なくとも1時間で、ある反応温度Tまで上げる前に、170℃±5℃である温度Tで1時間±10分間維持される。
【0056】
好ましい実施形態では、不等式(1)又は(1):
・140℃<T<190℃ (1)、及び/又は
・180℃<T<215℃ (2)
(ただし、不等式(1)と(2)の両方が満たされる場合には、T<Tであることを条件とする)
のうちの少なくとも1つは以下を満たす。
【0057】
別の好ましい実施形態では、不等式(3)又は(4):
・150℃<T<190℃ (3)、及び/又は
・180℃<T<210℃ (4)
(ただし、不等式(3)と(4)の両方が満たされる場合には、T<Tであることを条件とする)
のうちの少なくとも1つは以下を満たす。
【0058】
いくつかの実施形態では、反応時間は1~10時間、好ましくは9時間未満、さらにより好ましくは8時間未満の範囲である。
【0059】
本発明によれば、炭酸塩成分は、例えば反応の開始時に反応混合物に一度に反応混合物に添加することができ、或いは重縮合反応中に一定時間にわたって添加することができる。この一定時間は、5分~5時間、好ましくは10分~2時間、より好ましくは1時間未満の範囲であってよい。一実施形態によれば、炭酸塩成分は、30分±5分の時間にわたって反応混合物(R)に添加される。
【0060】
本発明によれば、炭酸塩成分が一定時間にわたって反応混合物(R)に添加される場合、それは、反応混合物(R)に逐次的に添加することができ、或いは連続的に添加することができる。本方法との関係において、「逐次的に」という用語は、順次の、例えば添加の合間に中断を伴う反応容器への一連の逐次的な添加(少なくとも2回の添加)を意味し、「連続的に」という用語は、反応混合物に含まれる反応物の変換に向かって徐々に行われることを意味する。反応容器内の成分の1つの連続供給は、例えば滴下することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、望まれる分子量に到達した後、塩化アルキル、好ましくは塩化メチルが反応混合物(R)に添加される。
【0062】
いくつかの実施形態では、反応条件は、転化率(C)が少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%であるように選択される。本発明との関係において、転化率(C)は、反応した反応性基(すなわちヒドロキシ基及びクロロ基)のモル比である。
【0063】
一実施形態によれば、本発明の方法は、水と共沸混合物を形成する溶媒の非存在下で行われる。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、極性非プロトン性溶媒としてDMIを少なくとも部分的に含む溶媒中で行われ、水と共沸混合物を形成する溶媒の非存在下で使用される。水と共沸混合物を形成する溶媒としては、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。全てのこれらの共沸剤は、米国では危険な大気汚染物質として分類されている。いくつかの好ましい方法では、反応混合物(R)は、水と共沸混合物を形成するあらゆる物質を含まない。従来技術の方法では、重縮合中に共沸剤を使用することが必要であると説明されているが、成分(a1)と成分(a2)との反応から形成された水を反応器から除去するために、驚くべきことに、本発明の方法において、水と共沸混合物を形成するそのような溶媒の使用が不要であることが見出された。これは、本発明の方法をより簡単且つ高コスト効率にし、全体的として低い溶媒含有率のポリマーをもたらし、これは、多くの用途、特に膜製造において最も有用である。また、共沸溶媒を使用せずにポリマーを製造する実機操業は、共沸溶媒を回収して再利用するための二次的操作を必要としないことから、はるかに単純化され、効率的であり、コスト効率が高い。この実施形態によれば、水と共沸混合物を形成する溶媒の量は、反応混合物中の溶媒の総重量を基準として、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満である。
【0064】
無機成分、例えば、塩化ナトリウム又は塩化カリウム又は過剰の塩基は、PSUの単離の前又は後に、溶解及び濾過、ふるい分け、又は抽出などの適切な方法によって除去することができる。
【0065】
本発明によれば、縮合終了時のPSUの量は、PSUと溶媒の総重量を基準として、少なくとも30重量%、例えば少なくとも35重量%、少なくとも37重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%である。
【0066】
反応の終わりに、PSUポリマーは、PSU溶液を得るために他の成分(塩、塩基、…)から分離することができる。例えばPSUポリマーを他の不溶性成分から分離するために濾過を使用することができる。
【0067】
そのようなプロセスから得られるPSUポリマーは、低レベルの環状二量体又は環状オリゴマーを有利に示す。環状二量体及びオリゴマーは、式(C):
【化5】
(式中、
- nは2~10の整数であり、
- Y及びXは結合を形成する)に従って表すことができる。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、PSUは、1.15重量%未満の、例えば式(C)による環状オリゴマー及び環状二量体を含む。例えば、PSUは、PSUポリマーの総重量を基準として、1.13重量%未満、1.10重量%未満、1.05重量%未満、さらには1.0重量%未満の環状オリゴマー及び環状二量体を含む。
【0069】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析すると、PSUの溶出後、重合反応溶媒が存在する場合はその溶出前に、オリゴマーが2つの主要分解成分として溶出することから、反応混合物中のオリゴマー含有量を評価することができる。SECクロマトグラフィーは、溶離液として塩化メチレンを用いて、Polymer laboratoriesから入手可能なP1 gel 5μm mixed-D、300×7.5mmカラムを使用して実行することができる。
【0070】
一実施形態によれば、本発明の方法は、特定のMw及びPDIのPSUを得ることができるだけでなく、そのようにして得られたPSUは、4,000g/mol未満の分子量を有するオリゴマーを、PSUポリマーの総重量を基準として1重量%未満、例えば4,000g/mol未満、3,000g/mol未満、又は2,000g/mol未満の分子量を有するオリゴマーを0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、さらには0.5重量%未満含む。
【0071】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、以下も有するPSUを得ることを可能にする:
- TA Instruments ARES G2レオメーター(380℃、1.6mmのギャップ、振動時間掃引解析では5.0%のひずみで10.0rad/sの周波数を使用)を使用して、25mmのディスクで、10分の時点の粘度に対する40分の時点の粘度の比率で測定される、1.0未満、例えば0.99未満又は0.98未満のVR40溶融安定性、
- ASTM法D790(6つの試験片で2mm/分、室温、50.8mmのスパン又はゲージ、5mmの荷重半径)に従って測定される、少なくとも110.0MPa、少なくとも110.2MPa、少なくとも110.5MPa、又は少なくとも110.8MPaの曲げ強さ、及び/又は
- ASTM638に従って測定される、少なくとも2.50GPa、例えば少なくとも2.55GPa、少なくとも2.60GPa、又は少なくとも2.65GPaの弾性率。
【0072】
PSUポリマー、組成物、及び物品
本発明は、70,000g/mol~200,000g/molの重量平均分子量(Mw)と、4未満の多分散指数(PDI)とを有するPSUにも関する。
【0073】
一実施形態によれば、このPSUは、特に1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を含む溶媒中で、上述した調製方法から得られる。
【0074】
いくつかの実施形態では、PSUは、PSUの総重量を基準として、300ppm(wt)未満のDMIの含有量、例えば200ppm(wt)未満のDMI、100ppm(wt)未満、50ppm(wt)未満のDMI、又は10ppm(wt)未満のDMIを有し得る。
【0075】
いくつかの別の実施形態では、PSUは、PSUの総重量を基準として、1ppm(wt)から300ppm(wt)未満のDMI含有量、例えば1~200ppm(wt)のDMI、1~100ppm(wt)、1~50ppm(wt)のDMI、又は1~10ppm(wt)のDMIを有し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明のPSUは、x-rite Color i7分光光度計を使用してASTM E313に従って測定される、6.0未満の黄色度指数(YI)、例えば5.9以下のYIを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明のPSUは、好ましくは、PSUの総重量を基準として、400ppm(wt)未満、例えば300ppm(wt)未満、200ppm(wt)未満、100ppm(wt)未満、50ppm(wt)未満、さらには20ppm(wt)未満の、ポリマーに結合している塩素の含有量を有する。
【0078】
いくつかの別の実施形態では、本発明のPSUは、PSUの総重量を基準として、少なくとも1ppm(wt)のポリマーに結合している塩素の含有量、例えば1~300ppm(wt)のポリマーに結合している塩素、1~200ppm(wt)のポリマーに結合している塩素、1~100ppm(wt)のポリマーに結合している塩素、1~50ppm(wt)のポリマーに結合している塩素、又は1~10ppm(wt)のポリマーに結合している塩素を有する。
【0079】
そのような有利な特徴は、上記プロセス、DMIの使用、水と共沸混合物を形成する溶媒の好ましい不在、縮合中の反応混合物中の反応性物質の最小限の濃度(反応終了時の反応混合物(RG)中の最小濃度によって評価される)によって得ることができる。
【0080】
別の実施形態によれば、本発明のPSUは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを示す:
- TA Instruments ARES G2レオメーター(380℃、1.6mmのギャップ、振動時間掃引解析では5.0%のひずみで10.0rad/sの周波数を使用)を使用して、25mmのディスクで、10分の時点の粘度に対する40分の時点の粘度の比率で測定される、1.0未満、例えば0.99未満又は0.98未満のVR40溶融安定性、
- ASTM法D790(6つの試験片で2mm/分、室温、50.8mmのスパン又はゲージ、5mmの荷重半径)に従って測定される、少なくとも110.0MPa、少なくとも110.2MPa、少なくとも110.5MPa、又は少なくとも110.8MPaの曲げ強さ、及び/又は
- ASTM638に従って測定される、少なくとも2.50GPa、例えば少なくとも2.55GPa、少なくとも2.60GPa、又は少なくとも2.65GPaの弾性率。
【0081】
本発明は、上述した本発明のPSUを含む熱可塑性組成物(C)、及び少なくとも本発明のPSUを含むポリマー組成物(C)を含む物品にも関する。そのような組成物は、成形品、繊維、フィルム、膜、又は発泡体の製造に使用することができる。本発明は、本発明の熱可塑性組成物(C)又はPSUポリマーを含む成形品、繊維、フィルム、膜、又は発泡体にも関する。
【0082】
熱可塑性組成物(C)は、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の量でPSUを含み得る。
【0083】
熱可塑性組成物(C)は、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、50重量%超、例えば55重量%超、60重量%超、65重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、95重量%超、又は99重量%超の量でPSUを含み得る。
【0084】
一実施形態によれば、熱可塑性組成物(C)は、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、1~99重量%、例えば3~96重量%、6~92重量%、又は12~88重量%の範囲の量のPSUを含む。
【0085】
熱可塑性組成物(C)は、任意選択的に、紫外光安定剤、熱安定剤、酸捕捉剤(すなわち、酸化亜鉛、酸化マグネシウム)、酸化防止剤、顔料、加工助剤、滑剤、難燃剤、及び/又は導電性添加剤(すなわち、カーボンブラック及びカーボンナノフィブリル)からなる群から選択される1つ以上の追加の添加剤をさらに含み得る。
【0086】
熱可塑性組成物(C)は、PSU以外のポリマー、例えば別のスルホンポリマー、例えばポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、若しくはポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、例えばポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)若しくはPEEKとポリ(ジフェニルエーテルケトン)とのコポリマー(PEEK-PEDEKコポリマー)、ポリエーテルイミド(PEI)、及び/又はポリカーボネート(PC)も更に含み得る。
【0087】
熱可塑性組成物(C)は、難燃剤、例えばハロゲン及びハロゲンフリー難燃剤をさらに含み得る。
【0088】
熱可塑性組成物(C)は、ガラス繊維、例えばE-ガラス繊維又はASTM D2343に従って測定される少なくとも76、好ましくは少なくとも78、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも82GPaの弾性率(引張弾性率とも呼ばれる)を有する高弾性率ガラス繊維を含み得る。ポリマー組成物(C)は、R、S、及びTガラス繊維からなる群から選択される高弾性率ガラス繊維も、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、例えば、少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも26重量%、又は少なくとも28重量%の量で含み得る。熱可塑性組成物(C)は、円形断面ガラス繊維及び/又は非円形断面ガラス繊維(例えば、フラット、長方形、繭形状のガラス繊維)を含み得る。
【0089】
熱可塑性組成物(C)は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、そのような方法としては、溶融混合プロセスが挙げられるが、それらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも上にポリマー成分を加熱し、それによって熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態において、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~400℃、約300~360℃又は約310~340℃の範囲である。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、ブラッドベリ(Bradbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分の全てを押出機へと、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投入するための手段を備えた押出機が使用される。ポリマー組成物の成分は、溶融混合装置に供給され、その装置において溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給されてもよいし、又は別々に供給されてもよい。
【0090】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態では、成分は、所望量の各成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態では、最初のサブセットの成分が、最初に一緒に混合され得、1種以上の残りの成分が、さらなる混合のために混合物に添加され得る。明確にするために、それぞれの成分の全所望量は、単一量として混合される必要はない。例えば、1種以上の成分について、部分量が最初に添加及び混合され得、その後に、残りの一部又は全てが添加及び混合され得る。
【0091】
熱可塑性ポリマー組成物(C)は、多様な用途に有用な物品の製造に好適であり得る。例えば、本発明のPSUポリマーは、溶剤ベースのプロセスを使用する多孔質中空繊維及び平膜の製造によく適している。それらは、腎臓透析、水処理、バイオ処理、食品及び飲料処理、並びに産業ガス分離などの、様々な膜濾過用途に使用することができる。本発明の方法に従って調製された色が少ないPSUは、優れた外観を有しており、例えば、レンズ、フィルター、及び他の光学製品においてなど、色、特に黄色が許容されない用途で使用するために、透明なカバーや蓋のために、並びに色が少ない透明性が望まれるか必要とされる容器、ガラス、及び物品において、よく適している場合がある。従来技術の樹脂の黄色又はベージュの外観がないため、本発明の改良された樹脂は、望みの色を実現するために、より容易に染色又は着色することもできる。したがって、本発明の樹脂は、特に白色及び明るい色の物品が望まれる場合に、充填及び着色される用途にも有用な場合がある。
【0092】
いくつかの態様において、成形された物品は、射出成形、押出成形、回転成形、又はブロー成形などの、任意の好適な溶融加工方法を用いてポリマー組成物から製造され得る。
【0093】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0094】
ここで、以下の非限定的な実施例において例示的な実施形態を説明する。
【実施例
【0095】
本開示は、ここで、以下の実施例に関連してより詳細に記載されるが、それらの目的は、例示的であるに過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図してない。
【0096】
出発原料
4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)ポリカーボネートグレード(純度>99.5%)
4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)純度>99.7%
炭酸カリウム(KCO)、d90<45μm、Sigma Aldrichから市販
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、Sigma Aldrichから市販(純度≧99.0%)
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、TCI Americaから市販(純度>99%)
塩化メチル(MeCl)、Mathesonから市販、(純度99.9%)
シュウ酸二水和物(COOH)・2HO、SigmaAldrichから市販
メタノール(純度100%)、Brenntagから市販
トルエン、Fisher Chemicalから市販(純度≧99.5%)
【0097】
以下のポリマーを調製した:
PSU#1(比較)、85,035g/molのMwと3.19のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってNMP中で調製した:
【0098】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、103.1740g(0.4519mol)のビスフェノールA、129.7799g(0.4519mol)のDCPDS、65.5861g(0.4745mol)のKCO、及び200.00gのNMPを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、195℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。195℃に達した後、望みのMwに到達するまで反応をその温度で保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を、1.27gのシュウ酸二水和物を含む600gのNMPで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。結果を表1に示す。
【0099】
PSU#2(比較)、66,562g/molのMwと2.76PDIとを有するポリスルホン(PSU)を、縮合をNMP中ではなくDMI中で行ったことを除いて、実施例1と全く同じプロセスに従って調製した:
【0100】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.70mol)のビスフェノールA、201.01g(0.70mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、190℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。195℃に達した後、望みのMwに到達するまで反応をその温度で保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を、1,351gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。結果を表1に示す。
【0101】
PSU#3(比較):153,966g/molのMwと6.76のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、特開平3-294332A2号公報(UBE)に概略的に記載されているプロセスに従って調製した。
【0102】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、79.90g(0.35mol)のビスフェノールA、100.51g(0.35mol)のDCPDS、53.21g(0.385mol)のKCO、441.01gのDMI、及び24.28gのトルエンを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で15分間パージした後、190℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。190℃に達した後、反応をその温度で5時間保持した。反応混合物を130℃まで冷却し、30分間1g/分の速度で反応混合物を通して塩化メチルをスパージングした。反応混合物を440gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。結果を表1に示す。
【0103】
PSU#4(比較):84,013g/molのMwと3.12のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、縮合を異なる温度設定で行ったことを除いて、実施例1に従ってNMP中で調製した:
【0104】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、103.1740g(0.4519mol)のビスフェノールA、129.7799g(0.4519mol)のDCPDS、65.5861g(0.4745mol)のKCO、及び200.00gのNMPを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、170℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。170℃に達した後、反応をその温度で1時間保持し、次いで195℃まで上昇させた。195℃に達した後、望みのMwに到達するまで反応をその温度で保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を、600gのNMPで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。結果を表1に示す。
【0105】
PSU#5(本発明):71,082g/molのMwと3.64のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下の通りにDMI中で調製した:
【0106】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、103.1740g(0.4519mol)のビスフェノールA、129.7799g(0.4519mol)のDCPDS、65.5861g(0.4745mol)のKCO、及び270.59gのDMIを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、195℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。195℃に達した後、望みのMwに到達するまで反応をその温度で保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を、529.41gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。収率:>90%。結果を表1に示す。
【0107】
PSU#6(本発明):86,687g/molのMwと3.27のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下の通りにDMI中で調製した:
【0108】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、103.1740g(0.4519mol)のビスフェノールA、129.7799g(0.4519mol)のDCPDS、及び200.00gのDMIを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、170℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。150℃に達した後、65.5861g(0.4745mol)のKCOを30分かけて4回に分けて投入した。170℃に達した後、反応をその温度で1時間保持し、次いで195℃まで上昇させた。195℃に達した後、望みのMwに到達するまで反応をその温度で保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を600gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。収率:>90%。結果を表1に示す。
【0109】
PSU#7(本発明):84,069g/molのMwと3.46のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下の通りにDMI中で調製した:
【0110】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、170℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。170℃に達した後、反応をその温度で1時間保持し、次いで195℃まで上昇させた。195℃に達した後、少なくとも75,000g/molのMwに到達するまで反応を温度Tで保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を404.0gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。収率:>90%。結果を表2に示す。
【0111】
PSU#8(本発明):79,028g/molのMwと3.42のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0112】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが200℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表2に示す。
【0113】
PSU#9(本発明):80,555g/molのMwと3.53のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0114】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが205℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表2に示す。
【0115】
PSU#10(本発明):73,626g/molのMwと3.48のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0116】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが210℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表2に示す。
【0117】
PSU#11(本発明):79,328g/molのMwと3.55のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0118】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが190℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表2に示す。
【0119】
PSU#12(本発明):85,368g/molのMwと3.56のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0120】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、温度Tが170℃で3時間保持であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表2に示す。
【0121】
PSU#13(本発明):85,368g/molのMwと3.56のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0122】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、103.52g(0.749mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが150℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表3に示す。
【0123】
PSU#14(本発明):88,377g/molのMwと3.60のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0124】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、103.52g(0.749mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが180℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表3に示す。
【0125】
PSU#15(本発明):86,243g/molのMwと3.55のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下のプロセスに従ってDMI中で調製した:
【0126】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、103.52g(0.749mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが160℃であったことを除いてPSU#8と同じであった。結果を表3に示す。
【0127】
PSU#16(比較):59,849g/molのMwと3.12のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下の通りにDMI中で調製した:
【0128】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、309.77gのDMI、及び102.60gのMCBを入れた。撹拌と窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で30分間パージした後、195℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。195℃に達した後、望みのMwに到達するまで反応をその温度で保持した。望みの分子量に到達した後、30分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状MeClをスパージングすることによって重合を停止した。反応混合物を、343gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を、1:30のポリマー対非溶媒の比率でメタノール中で析出させて白色固体を得た。その後、単離した白色固体をメタノールで6回洗浄し、真空濾過し、120℃の真空ベーキングオーブン中で24時間乾燥した。分子量とその分布はSECによって測定した。収率:>90%。結果を表3に示す。
【0129】
PSU#17(比較):62,876g/molのMwと3.19のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下の通りにDMI中で調製した:
【0130】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、106.42g(0.770mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが200℃であったことを除いてPSU#16と同じであった。結果を表3に示す。
【0131】
PSU#18(比較):6,997g/molのMwと6.01のPDIとを有するポリスルホン(PSU)を、以下の通りにDMI中で調製した:
【0132】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、159.80g(0.700mol)のビスフェノールA、201.01g(0.700mol)のDCPDS、101.58g(0.735mol)のKCO、及び309.77gのDMIを入れた。残りのプロセスは、反応温度Tが175℃であったことを除いてPSU#16と同じであった。結果を表3に示す。
【0133】
PSU#19(比較):共沸混合物(トルエン)を含む強塩基化学(aqKOH)を使用して、特開平05-86186号公報(Mitsui)に概略的に記載されているプロセスに従ってポリスルホン(PSU)を調製する試み:オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、57.07g(0.250mol)のビスフェノールA、300.75gのDMI、125mlのトルエン、及び70.132g(0.500mol)の40%水酸化カリウム水溶液を入れた。窒素ガスの流れを、浸漬管を通して確立した。混合物を一定の窒素の流れの下で130℃まで加熱した。トルエンを反応器に戻しながら、共沸脱水を130℃で4時間行った。4時間脱水した後、50gのトルエン中の71.790g(0.250mol)のDCDPS溶液を、滴下漏斗を使用して反応器に添加した。トルエンを除去しながら、反応器の内容物を150℃まで加熱した。重合を150℃で4時間行った。重合時間の終わりに、淡黄色のわずかに粘稠な溶液が得られた。反応器の内容物を室温まで冷却し、Waringブレンダーを使用して高速撹拌されている1250gのメタノールの中に取り出した。ポリマー粉末を濾過し、1250gの水が入っているビーカーの中に入れて撹拌した。1NのHClをゆっくりと添加し、pHを3~4に調整した。ポリマー粉末を濾過により単離した。ポリマー粉末を、毎回1250gのDI水を使用してWaringブレンダーで2回洗浄した。1250gのメタノールで最後の洗浄を行ってから、ポリマーを150℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。結果を表3に示す。
【0134】
ポリマーの特性評価
分子量及び環状二量体含有量の決定
塩化メチレンを移動相として用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2本の5μmのmixed Dサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを分離のために用いた。254nmの紫外線検出器を、クロマトグラムを得るために使用する。1.5ml/分の流量及び移動相中の0.2w/v%溶液の20μLの注入量を選択した。
【0135】
較正は、Agilent Technologiesから入手したポリスチレンの10個の狭い較正標準を使用して行った(ピーク分子量範囲:371000~580)
【0136】
較正曲線:
1)タイプ:相対的な、狭い較正標準による較正
2)フィット:3次回帰。
【0137】
積分及び計算:Waters製のEmpower Pro GPC ソフトウェアを使用して、データ、較正及び分子量計算を取得する。ピーク積算開始点及び終了点は、ベースライン全体上の有意な差から手作業で決定する。
【0138】
圧縮成形による溶融安定性及び機械的特性の決定
DSM Xplore(登録商標)マイクロコンパウンダーで、以下の条件を使用して、様々なポリマー組成の単離された粉末からポリマーストランドを製造した:
バレル温度(上、中、下):360℃
スクリュー速度75~100rpm
保持時間3~5分
【0139】
ポリマーストランドを12.7mm以下のペレットへと切断した。
【0140】
以下の条件下で45gのポリマーを圧縮成形することにより、ペレット化されたポリマーから102mm×102mm×3.2mmのプラークを作製した:
・338℃で予熱、
・2041kg-fで338℃/15分間
・2268kg-fで338℃/x分間
・2041kg-fで40分かけて30℃まで冷却。
【0141】
102mm×102mm×3.2mmの圧縮成形されたプラークを、6つの12.7mm×63.5mmの曲げ試験片及び平行平板試験用の25mmのディスクへと機械加工した。
【0142】
様々なポリマー組成の曲げ試験片に対して、6つの試験片で、2mm/分で室温(すなわち23℃)でASTM法D790に従って曲げ試験を行った。この方法では、50.8mmのスパン又はゲージ、5mmの荷重半径を利用した。6つの試験片の平均が示される。
【0143】
溶融安定性は、TA Instruments ARES G2レオメーターを使用して25mmのディスクで測定した。読み取りは、1.6mmのギャップで、380℃で10分及び40分の保持時間後に行った。振動時間掃引解析では、5.0%のひずみで10.0rad/sの周波数を使用した。溶融安定性、VR40は、10分時点の粘度に対する40分時点の粘度の比率によって測定される。
【0144】
圧縮成形による黄色度指数の決定
以下の条件下で、様々なポリマー組成の単離された粉末6gから50.8mm×50.8mm×1.6mmのプラークを作製した:
・338℃で予熱、
・454kg-fで338℃/20分間
・499kg-fで338℃/2分間
・454kg-fで40分かけて30℃まで冷却
【0145】
様々なポリマー組成の圧縮成形したプラークに対して、x-rite Color i7分光光度計を使用してASTM E313に従って黄色度指数分析を行った。4つの読み取り値の平均が示される。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【国際調査報告】