(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】改善されたバリア性を有する水性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/02 20060101AFI20230111BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230111BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230111BHJP
C09D 125/00 20060101ALI20230111BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230111BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230111BHJP
C08L 55/00 20060101ALI20230111BHJP
C08F 212/04 20060101ALI20230111BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20230111BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20230111BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20230111BHJP
C08F 257/02 20060101ALI20230111BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230111BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230111BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230111BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C08L25/02
C09D133/00
C09D5/00 Z
C09D125/00
C09D7/65
C09D7/63
C08L55/00
C08F212/04
C08F220/04
C08F220/10
C08F220/56
C08F257/02
B05D7/00 F
B05D7/24 302J
B05D7/24 302P
B32B27/30 A
D21H19/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528127
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2020081879
(87)【国際公開番号】W WO2021094437
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ゼイツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シーチャラン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ディーター
(72)【発明者】
【氏名】アミールポウヤン・サルダシュティ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
4J026
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4L055
【Fターム(参考)】
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4L055AG34
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4L055AH29
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4L055EA14
(57)【要約】
本特許請求に係る発明は、バリア性を改善するための水性組成物に関する。特に、本特許請求に係る発明は、紙及び紙製品をコーティングするためのポリマー系耐グリース性水性組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) エチレン性置換芳香族化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー、並びに(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーに由来する、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第1のポリマー;並びに
(ii) 部分中和酸官能性支持体樹脂と、オレフィン、モノビニリデン芳香族化合物、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、並びにその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第2のポリマー
を含み、
いずれの質量%も水性組成物の総質量に対するものである、水性組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の第1のポリマーの体積平均粒子径の少なくとも1種の第2のポリマーの体積平均粒子径に対する比が、約20:1~約2:1の範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で確定される前記水性組成物の粘度が、約100cp~約2500cpの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
試験方法に開示される方法に従って確定される前記水性組成物の固形分が、前記水性組成物の総質量に対して約20質量%~約70質量%の範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される第1のポリマーの質量平均分子量が約20kDa~約500kDaの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項6】
動的光散乱技術に従って確定される第1のポリマーの体積平均粒子径が、約90nm~約400nmの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項7】
No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で確定される第1のポリマーの粘度が、約100cp~約2500cpの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の第1のモノマーが、少なくとも1種の第2のモノマーと異なる、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項9】
エチレン性置換芳香族化合物が、スチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、デシルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の水性組成物。
【請求項10】
いずれも第1のポリマーの総質量に対して、第1のモノマーの量が約10質量%~約50質量%の範囲であり、第2のモノマーの量が約10質量%~約90質量の範囲%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項11】
いずれも第1のポリマーの総質量に対して、第1のモノマーの量が約10質量%~約40質量%の範囲であり、第2のモノマーの量が約20質量%~約90質量%の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項12】
いずれも第1のポリマーの総質量に対して、少なくとも1種の第1のモノマーの量が約10質量%~約30質量%の範囲であり、少なくとも1種の第2のモノマーの量が約70質量%~約90質量%の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項13】
部分中和酸官能性支持体樹脂が、変性アクリルコポリマーのアンモニウム塩、変性アクリルコポリマーのアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項14】
変性アクリルコポリマーが、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、及びそれらの混合物からなる群に由来する、請求項13に記載の水性組成物。
【請求項15】
ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される第2のポリマーの質量平均分子量が、約100kDa~約1000kDaの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項16】
動的光散乱技術に従って確定される第2のポリマーの体積平均粒子径が、約50nm~約200nmの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項17】
No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して20℃で確定される第2のポリマーの粘度が、約100cp~約5000cpの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項18】
ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される部分中和酸官能性支持体樹脂の質量平均分子量が、約2kDa~約20kDaの範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項19】
第2のポリマーの部分中和酸官能性支持体樹脂が、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、有機アミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される塩基で中和されている、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項20】
部分中和が、塩基による酸官能性支持体樹脂上の少なくとも約5mol%の酸性基の中和を意味する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項21】
第2のポリマーが、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約10質量%~約50質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約5質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項22】
少なくとも1種の第1のポリマーが、前記水性組成物の総質量に対して約10質量%~約90質量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項23】
少なくとも1種の第2のポリマーが、前記水性組成物の総質量に対して約10質量%~約90質量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項24】
ワックスを、前記水性組成物の総質量に対して約0.10質量%~約25質量%の範囲の量で更に含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項25】
ワックスが、水性エマルジョンである、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項26】
水性エマルジョンが、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フッ素化ワックス、エチレンコポリマーワックス、プロピレンコポリマーワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項25に記載の水性組成物。
【請求項27】
界面活性剤を更に含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項28】
界面活性剤が、アニオン性又は非イオン性である、請求項27に記載の水性組成物。
【請求項29】
界面活性剤が、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルベンゼンスルフェート、ホスフェート、ホスフィネート、脂肪族カルボキシレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項28に記載の水性組成物。
【請求項30】
界面活性剤が、少なくとも1種の脂肪アルコールエトキシレートを含む、請求項28に記載の水性組成物。
【請求項31】
界面活性剤が、少なくとも1種のアルキルスルホスクシネートエトキシレートを含む、請求項28に記載の水性組成物。
【請求項32】
界面活性剤が、少なくとも1種のアルキルスルホスクシネートエトキシレート及び少なくとも1種の脂肪アルコールエトキシレートを含む、請求項28に記載の水性組成物。
【請求項33】
界面活性剤が、約12個の炭素~約18個の炭素のアルキル鎖長、及び約10モルのエチレンオキシド単位~約80モルのエチレンオキシド単位のエトキシ化度を有する、少なくとも1種の脂肪アルコールを含む、請求項28に記載の水性組成物。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか一項に記載の水性組成物を含む少なくとも1つの層でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む、基材。
【請求項35】
紙又は板紙である、請求項34に記載の基材。
【請求項36】
請求項1から33のいずれか一項に記載の水性組成物を含む、コーティング紙又は物品。
【請求項37】
前記水性組成物が、コーティングされた紙1m
2当たり約2g~約30gの範囲のコーティング質量で含まれる、請求項36に記載のコーティング紙又は物品。
【請求項38】
ASTM WK20008に従って確定される3以上の耐ブロッキング性を、60℃及び60psiで24時間にわたって示す、請求項37に記載のコーティング紙又は物品。
【請求項39】
耐油性及び/又は耐グリース性を示す、請求項37に記載のコーティング紙又は物品。
【請求項40】
紙を作製する方法であって、セルロース繊維と請求項1から33のいずれか一項に記載の水性組成物とを接触させる工程を少なくとも含む、方法。
【請求項41】
セルロース繊維と前記水性組成物とを接触させる工程が、セルロース繊維を含むペーパーウェブを、前記水性組成物を含む水性分散体でコーティングすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
セルロース繊維と前記水性組成物とを接触させる工程が、(i) 前記水性組成物を含む水性分散体とセルロース繊維とを混合してスラリーを形成すること;並びに(ii) セルロース繊維及び前記水性組成物のスラリーからペーパーウェブを形成することを含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許請求に係る発明は、バリア性を改善するための水性組成物に関する。特に、本特許請求に係る発明は、ポリマー系耐グリース性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能でリサイクル性のある材料を使用する持続可能な包装材料は、特に食品サービス及び食品包装にますますかつ強く望まれている。紙又は板紙は、包装用途での最も持続可能な材料の1つであり、一般的には、包装の要求事項を満たすためのバリア性を付与する組成物でコーティングされる。バリア性は、水分、油、グリース、香気、及びいくつかの場合では細菌の浸透を減少させる上で重要である。したがって、製紙産業では、バリア性及び他の所望のかつ有益な属性を紙に付与するために、紙基材又は板紙基材に対してコーティング組成物及び表面サイジング技術を施すという流れが続いている。コーティング組成物によって紙に付与される特性としては、空気に対する気孔率の減少、耐水性、耐油性及び耐グリース性、表面強度の向上、紙の印刷の品質及び容易性が挙げられる。
【0003】
紙に耐油性及び耐グリース性を付与するために商業的に広く使用されているコーティング組成物は、フルオロケミカルを含む。そのようなコーティング組成物は、有効ではあるが、環境に優しいわけではなく、毒性による様々な健康及び安全性の問題を生じさせる。従来使用されている別の周知の種類のコーティングは、バリア性及び折りたたみ板紙を作製するための可撓性を付与するポリエチレン及びポリプロピレン等のプラスチックフィルムを有する組成物である。しかし、これらのフィルムは、良好なバリア性及び折りたたみ性を付与するが、コーティングされた紙製品のリサイクル性及びパルプ化性を制限する。水性コーティングは、リサイクル及び再パルプ化可能であることから、ポリエチレンコーティングに代わる環境に優しい代替物となる。しかし、当技術分野において公知の水性コーティングは、折り目に形成されるひび割れによってバリア性が減少することから、折りたたみ板紙には好適ではない。
【0004】
コーティングが有効であるためには、そのコーティングが、油及び/又はグリースによる浸透に対する耐性が可能な可撓性フィルムを構成しなければならない。更に、紙基材又は板紙基材が平坦なシートからラベル又は包装材料に変換された後で、これらの特性が損なわれないままであることが重要である。ブロッキング性、言い換えれば、板紙のロール中の層が互いに付着する傾向は、コーティング板紙の製造及び変換プロセスにおける別のハードルである。これらは、既存のバリアコーティング組成物における障壁の一部である。
【0005】
したがって、環境及び消費者にとって安全な耐油性及び耐グリース性紙の製造における使用に関する上術した欠点を克服しうる、改善されたコーティング組成物が求められている。また、低コストでリサイクル及び再パルプ化することもできる紙及び紙基材に、耐ブロッキング性及び折りたたみ性等の特性を付与することができる、改善されたコーティング組成物も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,461,60号
【特許文献2】米国特許第4,414,370号
【特許文献3】米国特許第4,529,787号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. Antonelli及びK. Tauer、Macromol. Chem. Phys. 2003、204巻、207~19頁
【非特許文献2】A. S. Sarac、Progress in Polymer Science 24、1149-1204(1999)
【非特許文献3】TAPPI T 441(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本特許請求に係る発明の目的は、環境に優しくかつ安全な、紙の耐油性及び耐グリース性のための改善された組成物を提供することにある。本特許請求に係る発明の別の目的は、良好なバリア性、耐ブロッキング性、及び折りたたみ性を紙に付与することができる、改善された組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、少なくとも1種の第1のポリマー及び少なくとも1種の第2のポリマーを含む、本明細書に開示の水性組成物が、改善された耐ブロック性、耐グリース性、折りたたみ性等のコーティング特性を紙又は紙基材に付与することがわかった。更に、本組成物は、改善された特性を付与するだけではなく、紙の印刷容易性、リサイクル性、及び再パルプ化性をも可能にし、環境にも優しい。
【0010】
したがって、一態様では、本特許請求に係る発明は、
(i) エチレン性置換芳香族化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー、並びに(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーに由来する、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第1のポリマー;並びに
(ii) 部分中和酸官能性支持体樹脂と、オレフィン、モノビニリデン芳香族化合物、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第2のポリマー
を含み、
いずれの質量%も水性組成物の総質量に対するものである、水性組成物に関する。
【0011】
本特許請求に係る発明の別の態様によれば、本明細書に記載の水性組成物を含む少なくとも1つの層でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む、基材が提供される。
【0012】
本特許請求に係る発明の別の態様によれば、本明細書に記載の水性組成物を含む、コーティング紙又は物品が提供される。
【0013】
本特許請求に係る発明の別の態様によれば、紙を作製する方法であって、セルロース繊維と本明細書に記載の水性組成物とを接触させる工程を少なくとも含む、方法が提供される。
【0014】
本明細書で特許請求される発明の他の目的、利点、及び用途は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本特許請求に係る発明は、本出願に記載の実施形態に限定されるべきではない。当業者には明らかなように、本出願の精神及び範囲から逸脱することなく修正及び変更を加えることができる。本開示の範囲内の機能的に同等な方法、配合物、及び装置が、本明細書に列挙されているものに加えて、上述した記載から当業者には明らかであろう。これらの修正及び変更は添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。本開示は、添付の特許請求の範囲の用語、及び該特許請求の範囲が権利を与えられる均等範囲全体によってのみ限定されるべきである。本開示が、当然変動しうる方法、試薬、化合物、又は組成物に限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語が、実施形態を記述することのみを目的としており、限定することを意図していないことが理解されるべきである。
【0016】
本明細書において使用される用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含まれる(comprised of)」は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包括的又は非限定的であり、更なる未記載のメンバー、要素、又は方法工程を排除しない。本明細書において使用される用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含まれる(comprised of)」が用語「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」、及び「からなる(consists of)」を含むことが認識されよう。
【0017】
更に、本明細書及び特許請求の範囲における用語「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等は、同様の要素を識別するために使用されており、経時的又は時系列的順序を記述するためには必ずしも使用されていない。このように使用される用語が適切な状況下で互換的であること、及び、本明細書に記載の主題の実施形態が本明細書に記載又は例示されている順序以外の順序で操作可能であることを理解すべきである。用語「(A)」、「(B)」、及び「(C)」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「(i)」、「(ii)」等が方法又は使用又はアッセイの段階に関する場合、段階間に時間又は時間間隔の一貫性は存在せず、すなわち、上記又は下記のように本出願に別途指示がない限り、段階は同時に行われてもよく、段階間に数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間、更には数年間の時間間隔があってもよい。
【0018】
本特許請求に係る発明においては、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群によって記載される場合、当業者は、その開示がマーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーの部分群によっても本明細書に記述されていることを認識するであろう。
【0019】
本特許請求に係る発明においては、本明細書に開示されるすべての範囲は、そのあらゆる可能な部分範囲及び部分範囲の組合せも包含する。本明細書全体を通じて規定される範囲は終値も含み、すなわち、1~10の範囲は、1及び10の両方が範囲に含まれることを示唆している。疑義を回避するために言えば、本出願人には、準拠法に従って任意の均等物の権利が与えられる。列挙される任意の範囲は、同範囲が少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分等に分割されることを十分に記述し可能にするものと容易に認識されうる。非限定的な例として、本明細書において説明される各範囲を下3分の1、中3分の1、及び上3分の1等に容易に分割することができる。当業者がやはり理解するように、「最大」、「少なくとも」、「超」、「未満」等のすべての文言は、記載される数を含むものであり、上記で説明したように部分範囲に引き続き分割可能な範囲を意味する。最後に、当業者が理解するように、範囲は個々の各メンバーを含む。したがって、例えば、1~3個のセルを有する群は、1個、2個、又は3個のセルを有する群を意味する。同様に、1~5個のセルを有する群は、1個、2個、3個、4個、又は5個のセルを有する群を指し、他も同様である。
【0020】
本明細書において説明される材料及び方法を記述する文脈での(特に以下の特許請求の範囲の文脈での)、用語「a」、「an」、「the」、及び同様の指示語の使用は、本明細書に別途指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。
【0021】
本明細書全体を通じて使用される用語「約」は、小さな変動を記述及び説明するために使用される。例えば、用語「約」は±5%以下、例えば±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下を意味する。本明細書のすべての数値は、明確に指示がある場合であれ、そうでない場合であれ、用語「約」により改変される。用語「約」により改変される値は、当然、当該の特定の値を含む。例えば、「約5.0」は5.0を必ず含む。
【0022】
以下の部分では、本主題の様々な態様を更に詳細に規定する。明らかに背反する指示がない限り、このように規定される各態様を任意の他の1つ又は複数の態様と組み合わせることができる。好ましいか又は有利であることが示される任意の特徴を、好ましいか又は有利であることが示される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0023】
本明細書全体を通じての「一実施形態(one embodiment)」又は「一の実施形態(an embodiment)」への言及は、当該実施形態に関して記載される特徴、構造、又は特性が本特許請求に係る発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じた様々な場所における語句「一実施形態では(in one embodiment)」又は「一実施形態では(in an embodiment)」の出現は、すべてが同じ実施形態を必ずしも意味してはいないが、意味することもある。更に、1つ又は複数の実施形態では、本開示から当業者には明らかなように、特徴、構造、又は特性を任意の好適な様式で組み合わせることができる。更に、当業者が理解するように、本明細書に記載の一部の実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含み、但し他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組合せは、本主題の範囲内であるように意図されており、かつ異なる実施形態を形成する。例えば、添付の特許請求の範囲では、特許請求される任意の実施形態を任意の組合せで使用することができる。
【0024】
本明細書に開示の実施形態は、実施の形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本特許請求に係る発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解すべきである。当業者には、本特許請求に係る発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本特許請求に係る発明の方法及び装置に様々な修正及び変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、本特許請求に係る発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある修正及び変更を含むように意図されており、上述した実施形態は例示を目的として示されるものであり、限定を目的として示されるものではない。本明細書に引用されるすべての特許及び刊行物は、その特定の教示に関して、組み込みに関する他の記載が具体的に示されない限り、記載の通り参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本明細書に別途指示がない限り、又は別途指示がない場合に文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載のすべての方法を任意の好適な順序で行うことができる。本明細書に示されるあらゆる例又は例示的文言(例えば「等の(such as)」の使用は、単に材料及び方法をより良く例示するように意図されており、別途特許請求されない限り、範囲を限定するものではない。
【0026】
本明細書において使用される用語「コーティング」は、紙に適用される任意の表面処理を意味する。本明細書において使用される用語「バリア性」は、空気、油、グリース等の様々な材料に対する紙の耐性の増加、及び表面強度の向上を意味する。本明細書に開示される用語「耐ブロッキング性」は、2つの表面に適用されたコーティングが、接触時に又は圧力が加えられる際に、それ自体に付着しない能力を意味する。本明細書に開示される用語「耐油性及び/又は耐グリース性」は、コーティング上の基材が、油/グリースによる表面の斑点若しくはしみの形成又は基材の浸透に耐える能力を意味する。
【0027】
本特許請求に係る発明においては、本明細書において使用される紙基材若しくは板紙基材又は紙製品は、少なくともその一部分が本特許請求に係る発明に従ってコーティングされた紙を含む、任意の製造品でありうる。本特許請求に係る発明は、1つの層又は複数の層でできた紙製品、例えば紙積層体、プラスチック積層体を包含する。本明細書において互換的に使用される用語「再パルプ化」又は「再パルプ化性」とは、コーティングされた紙基材又は板紙基材が、引き続く紙シート形成に向けて再湿潤化及び繊維化の操作を受けることができることである。本明細書において互換的に使用される用語「リサイクル」又は「リサイクル性」とは、使用済みの処理紙及び処理板紙が新たな紙及び板紙に加工される能力のことである。
【0028】
本明細書において使用される用語「紙ベース基材」又は「板紙基材」とは、手動又は機械で折りたたみ可能な任意の種類のセルロース繊維系製品を意味する。
【0029】
本明細書において使用される用語「水性」は、有機溶媒以外の主要分散媒としての著しい割合の水を意味する。
【0030】
モノマー又は繰り返し単位における(メタ)の使用は、任意選択のメチル基を示す。用語「コポリマー」は、コポリマーが、ラジカル重合により得ることができるブロックコポリマー又はランダムコポリマーを含むことを意味する。
【0031】
本特許請求に係る発明においては、本特許請求に係る発明のコーティングを、任意の従来のコーティング及び表面サイジング技術によって紙又は板紙に適用することができる。この技術としては、サイズプレス、タブ、ゲートロール、及びスプレーアプリケーターが挙げられるがそれらに限定されない。
【0032】
本特許請求に係る発明において使用される用語「質量%(% by weight)」又は「質量%(wt.%)」は、組成物の総質量に対するものである。更に、各成分中の以下に記載のすべての化合物の質量%の合計は100質量%となる。
【0033】
用語「置換されている」は、含まれる水素原子に対する1個又は複数の結合が、非水素原子又は非炭素原子に対する結合で置き換えられている、以下に定義の有機基(例えばアルキル基)を意味する。置換されている基は、(1個又は複数の)炭素又は水素に対する1個又は複数の結合が、ヘテロ原子に対する1個又は複数の二重結合又は三重結合を含む結合で置き換えられた、基も含む。したがって、置換されている基は、別途指定がない限り、1個又は複数の置換基で置き換えられている。一部の実施形態では、置換されている基は1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の置換基で置換されている。置換基の例としては、ハロゲン(すなわちF、Cl、Br、及びI);ヒドロキシル;アルコキシ基、アルケノキシ基、アルキノキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、及びヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;エーテル;ウレタン;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N-オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;ウレア;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;ニトリル(すなわちCN)等が挙げられる。本明細書において使用されるアルキル基は、1~20個の炭素原子、通常は1~12個の炭素、又は一部の実施形態では1~8個、1~6個、若しくは1~4個の炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基を含む。一部の実施形態では、アルキル基は、12~18個の炭素を有する直鎖及び/又は分岐アルキル基を含む。
【0034】
本明細書に記載のアルキル基は、3~8個の環員を有するシクロアルキル基を更に含む。直鎖アルキル基の例としては、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が挙げられる。分岐アルキル基の例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基が挙げられるがそれらに限定されない。一部の実施形態では、分岐アルキル基は少なくとも8個の炭素を有する。本明細書において使用されるシクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等であるがそれらに限定されない、環状アルキル基であり、架橋シクロアルキル基を含む。代表的な置換アルキル基は置換されていなくても置換されていてもよい。
【0035】
本特許請求に係る発明の一態様は、
(i) エチレン性置換芳香族化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー、並びに(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーに由来する、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第1のポリマー;並びに
(ii) 部分中和酸官能性支持体樹脂と、オレフィン、モノビニリデン芳香族化合物、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、並びにその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第2のポリマー
を含み、
いずれの質量%も水性組成物の総質量に対するものである、水性組成物に関する。
【0036】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、本明細書に開示の水性組成物は、基材にバリア性を付与するコーティングとして提供される。本特許請求に係る発明においては、基材として紙及び紙製品が挙げられるがそれらに限定されない。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、本明細書に開示の水性組成物は、紙及び紙製品にバリア性を付与するコーティングとして提供される。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、コーティングのための本明細書に開示の水性組成物の使用が提供される。本特許請求に係る発明においては、本明細書に開示の水性組成物は互換的にバリア組成物と呼ばれる。
【0037】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、紙コーティング組成物は、
(i) エチレン性置換芳香族化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー、並びに(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーに由来する、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第1のポリマー;並びに
(ii) 部分中和酸官能性支持体樹脂と、オレフィン、モノビニリデン芳香族化合物、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、並びにその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第2のポリマー
を含み、
いずれの質量%も水性組成物の総質量に対するものである、水性組成物である。
【0038】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、少なくとも1種の第1のポリマーは、水性組成物の総質量に対して約50質量%~約90質量%の範囲の量で存在する。
【0039】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、少なくとも1種の第2のポリマーは、水性組成物の総質量に対して約10質量%~約50質量%の範囲の量で存在する。
【0040】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、本明細書に記載の水性組成物は、エチレン性置換芳香族化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー、並びに(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーに由来する、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第1のポリマー;並びに約0.1質量%~約20質量%のワックスを含み、いずれの質量%も水性組成物の総質量に対するものである。
【0041】
本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、乾燥時の本明細書に開示の水性組成物は、吸水量約5g/m2/20分未満、及び基材の損傷をもたらさないために十分な耐ブロッキング性を示す。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、本明細書に開示の水性組成物でコーティングされた紙は、50℃及び60psiで24時間にわたって耐ブロッキング性を示し、すなわち、コーティング対紙(表対裏、F-B)積層、又はコーティング対コーティング(表対表、F-F)積層された、2枚の各シートに、ポリマー結合剤がコーティングされている。
【0042】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、少なくとも1種の第1のポリマーの体積平均粒子径の少なくとも1種の第2のポリマーの体積平均粒子径に対する比は、約20:1~2:1の範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、少なくとも1種の第1のポリマーの体積平均粒子径の少なくとも1種の第2のポリマーの体積平均粒子径に対する比は、約10:1~2:1の範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、少なくとも1種の第1のポリマーの体積平均粒子径の少なくとも1種の第2のポリマーの体積平均粒子径に対する比は、8:1~2:1の範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、少なくとも1種の第1のポリマーの体積平均粒子径の少なくとも1種の第2のポリマーの体積平均粒子径に対する比は、4:1~2:1の範囲又は3:1~2:1の範囲である。
【0043】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物の粘度は、約100cP~約2500cPの範囲である。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、水性組成物の粘度は、約100cP~約1500cPの範囲である。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、水性組成物の粘度は、約100cP~約500cPの範囲である。いずれもNo.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で測定される。
【0044】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物の固形分は、約20質量%~約70質量%の範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物の固形分は、約20質量%~約60質量%の範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物の固形分は、約40質量%~約60質量%の範囲である。いずれも水性組成物の総質量に対するものである。
【0045】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物に存在する第1のポリマーの質量平均分子量(Mw)は、少なくとも100kDa、例えば20kDa~500kDa、50kDa~250kDa、100kDa~200kDaでありうる。いずれもゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される。
【0046】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のポリマーの体積平均粒子径は、約90nm~約400nmの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーの体積平均粒子径は、約90nm~約300nmの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーの体積平均粒子径は、約100nm~約200nmの範囲である。いずれも動的光散乱技術によって測定される。
【0047】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のポリマーの粘度は、約100cP~約2500cPの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーの粘度は、約200cP~約2000cPの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーの粘度は、約200cP~約1000cPの範囲である。いずれもNo.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で測定される。
【0048】
本特許請求に係る発明においては、第1のポリマーの第1のモノマーは、当技術分野において公知の任意の芳香族モノマーを含みうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のモノマーはビニル芳香族モノマーである。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、第1のモノマーはエチレン性置換芳香族化合物である。エチレン性置換芳香族化合物の例としては、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α-及びp-メチルスチレン、α-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレン等のアルキルスチレン、並びにビニルトルエン、インデン、メチルインデン、又はその組合せを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0049】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のポリマーは、少なくとも40質量%以上、少なくとも45質量%以上、少なくとも50質量%以上、少なくとも55質量%以上、少なくとも60質量%以上、少なくとも65質量%以上、少なくとも70質量%以上、少なくとも75質量%以上、少なくとも80質量%以上、又は少なくとも5質量%以上の芳香族モノマーに由来しうる。
【0050】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーは、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下の芳香族モノマーに由来する。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、第1のポリマーは、40質量%~95質量%、40質量%~90質量%、45質量%~90質量%、45質量%~80質量%、又は50質量%~80質量%の芳香族モノマーに由来しうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーは、2質量%~40質量%、5質量%~40質量%、5質量%~35質量%、5質量%~30質量%、又は5質量%~25質量%の芳香族モノマーに由来しうる。
【0051】
本特許請求に係る発明においては、第1のポリマーの第2のモノマーは、当技術分野において公知の任意のエチレン性不飽和脂肪族モノマーを含みうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2のモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。アルキル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、3~6個の炭素原子を有するα,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸と1~12個の炭素原子を有するアルカノールとのエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、又はイタコン酸とC1~C12、C1~C10、C1~C8、又はC1~C4アルカノールとのエステルを挙げることができる。いくつかの例では、アルキル(メタ)アクリレートモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、又はその組合せを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0052】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のポリマーは、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上の第2のモノマーに由来しうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コポリマーは、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35%質量%以下の第2のモノマーに由来しうる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、コポリマーは、5質量%~60質量%、10質量%~60質量%、10質量%~50質量%、15質量%~600質量%、又は15質量%~50質量%の第2のモノマーに由来しうる。
【0053】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のモノマーの量は約10質量%~約50質量%の範囲であり、第2のモノマーの量は約10質量%~約90質量%の範囲であり、いずれも第1のポリマーの総質量に対するものである。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のモノマーの量は約10質量%~約40質量%の範囲であり、第2のモノマーの量は約20質量%~約90質量%の範囲であり、いずれも第1のポリマーの総質量に対するものである。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、少なくとも1種の第1のモノマーの量は約10質量%~約30質量%の範囲であり、少なくとも1種の第2のモノマーの量は約70質量%~約90質量%の範囲であり、いずれも第1のポリマーの総質量に対するものである。第2のモノマーは、少なくとも2種の異なるモノマーの混合物でありうる。
【0054】
本特許請求に係る発明においては、第1のポリマーは、更なるモノマーに更に由来しうる。更なるモノマーの例としては、カルボン酸モノマー、例えばα-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸/ジカルボン酸、β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸/ジカルボン酸、シトラコン酸、スチレンカルボン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、ジメタクリル酸、エチルアクリル酸、アリル酢酸、ビニル酢酸、マレイン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、及びシトラコン酸が挙げられるがそれらに限定されない。更なるモノマーの更なる例としては、α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸の無水物、例えば無水マレイン酸、イタコン酸無水物、及びメチルマロン酸無水物;(メタ)アクリロニトリル;ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニル及び塩化ビニリデン;C1~C18モノカルボン酸又はジカルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びステアリン酸ビニル;C3~C6モノカルボン酸若しくはジカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、若しくはマレイン酸のC1~C4ヒドロキシアルキルエステル、又は2~50モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、若しくはその混合物でアルコキシ化されたそれらの誘導体、或いは、これらの酸と2~50モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、若しくはその混合物でアルコキシ化されたC1~C18アルコールとのエステル(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びメチルポリグリコールアクリレート);並びにグリシジル基を含むモノマー(例えばグリシジルメタクリレート)挙げられるがそれらに限定されない。
【0055】
使用可能な更なるモノマー又はコモノマーの更なる例としては、直鎖1-オレフィン、分岐鎖1-オレフィン、又は環状オレフィン(例えばエテン、プロペン、ブテン、イソブテン、ペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、及びシクロヘキセン);ヒドロキシル基、アミノ若しくはジアルキルアミノ基、又は1個若しくは複数のアルコキシ化基等の更なる置換基を有していてもよいアルキル基中に1~40個の炭素原子を有するビニルアルキルエーテル及びアリルアルキルエーテル〔例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニル4-ヒドロキシブチルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-(ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、2-(ジ-n-ブチルアミン)エチルビニルエーテル、メチルジグリコールビニルエーテル、及び対応するアリルエーテル〕;スルホ官能性モノマー(例えばアリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、スチレンスルホネート、ビニルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びそれらの対応するアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、スルホプロピルアクリレート、並びにスルホプロピルメタクリレート);リン含有モノマー〔例えば、アルコールが重合性ビニル基又はオレフィン基を含む、アルコールの二水素リン酸エステル、リン酸アリル、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば2-ホスホエチル(メタ)アクリレート(PEM)、2-ホスホプロピル(メタ)アクリレート、3-ホスホプロピル(メタ)アクリレート、及びホスホブチル(メタ)アクリレート、3-ホスホ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)フマレート又はイタコネートのモノホスフェート又はジホスフェート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのホスフェート、(メタ)アクリレートのエチレンオキシド縮合物、H2C=C(CH3)COO(CH2CH2O)nP(O)(OH)2並びに類似のプロピレン及びブチレンオキシド縮合物(式中、nは1~50の量である)、ホスホアルキル
クロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2-アクリルアミド-2メチルプロパンホスフィン酸、α-ホスホノスチレン、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンホスフィン酸、(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレート、(ヒドロキシ)ホスフィニルメチルメタクリレート、並びにそれらの組合せ〕;アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート若しくはアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、又はそれらの四級化生成物〔例えば2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(N,N,N-トリメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリレートクロリド、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及び3-トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミドクロリド〕;C1~C30モノカルボン酸のアリルエステル;N-ビニル化合物〔例えばN-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾリン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルカルバゾール、2-ビニルピリジン、及び4-ビニルピリジン〕;モノアルキルイタコネート;モノアルキルマレエート;疎水性分岐エステルモノマー;シリル基を含むモノマー(例えばトリメトキシシリルプロピルメタクリレート)、酸残基部分中に合計8~12個の炭素原子を有し、かつ10~14個の炭素原子を合計で有する、分岐モノカルボン酸のビニルエステル、例えばビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルネオノナノエート、ビニルネオデカノエート、ビニルネオウンデカノエート、ビニルネオドデカノエート、及びそれらの混合物、並びに、共重合性界面活性剤モノマー(例えば商品名ADEKA REASOAPで販売されているモノマー)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0056】
また、コポリマーを生成するために使用される更なるモノマーとしては、架橋性モノマーを挙げることができるがそれらに限定されない。例えば、架橋性モノマーとしては、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、又は自己架橋性モノマー、例えば1,3-ジケト基を含むモノマー、若しくはシラン架橋剤を挙げることができる。1,3-ジケト基を含むモノマーの例としては、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート(AAEM)、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート;アセト酢酸アリル;アセト酢酸ビニル;並びにそれらの組合せが挙げられる。好適なシラン架橋剤の例としては、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、並びにポリビニルシロキサンオリゴマー、例えば、いずれもEvonik Degussa社(ドイツ・エッセン)から市販されている、ビニルトリメトキシシランに由来するポリビニルシロキサンオリゴマーDYNASYLAN(登録商標)6490及びビニルトリエトキシシランに由来するポリビニルシロキサンオリゴマーDYNASYLAN(登録商標)6498が挙げられる。本明細書に記載の架橋性モノマーとしてはジビニルベンゼン;1,4-ブタンジオールジアクリレート;メタクリル酸無水物;並びにウレア基を含むモノマー(例えばウレイドエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミドグリコール酸、及びメタクリルアミドグリコレートメチルエーテル)を更に挙げることができる。架橋性モノマーの更なる例としては、3~10個の炭素原子を有するα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のN-アルキロールアミド、及びそれと1~4個の炭素原子を有するアルコールとのエステル(例えばN-メチロールアクリルアミド及びN-メチロールメタクリルアミド);グリオキサール系架橋剤;2個のビニル基を含むモノマー;2個のビニリデン基を含むモノマー;並びに2個のアルケニル基を含むモノマーが挙げられる。他の例示的な架橋性モノマーとしては、二価アルコール及び三価アルコールとα,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸が利
用可能)とのジエステル又はトリエステル(例えばジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート)が挙げられる。2個の非共役エチレン性不飽和二重結合を含む当該モノマーの例としては、アルキレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、及びプロピレングリコールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、並びにメチレンビスアクリルアミドがある。いくつかの例では、コポリマーは0質量%~5質量%の1種又は複数の架橋性モノマーに由来しうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、架橋剤をコポリマーの質量に対して0.01質量%~5質量%の量で使用することができる。
【0057】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、本明細書に開示のコポリマー中の更なるモノマーは、コポリマーの総質量に対して約10質量%以下、7.5質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下の範囲で存在しうる。
【0058】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のポリマーは1種のみの第1のモノマー及び少なくとも1種の第2のモノマーに由来する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーは少なくとも1種の第1のモノマー及び1種のみの第2のモノマーに由来する。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、少なくとも1種の第1のモノマーは少なくとも1種の第2のモノマーと異なる。例えば、第1のポリマーはスチレン、アクリロニトリル、及び他のモノマーに由来しうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第1のポリマーはスチレンと、α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーの1種又は複数のエステル(例えばブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、又はその組合せ)と、α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーとに由来しうる。
【0059】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2のポリマーは、部分中和酸官能性支持体樹脂と、オレフィン、モノビニリデン芳香族化合物、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、並びにその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、部分中和酸官能性支持体樹脂は、変性アクリルコポリマーのアンモニウム塩、変性アクリルコポリマーのアミン塩、及びそれらの混合物から選択される。変性アクリルコポリマーの例としては、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、又はその組合せに由来するポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、酸官能性支持体樹脂又はソリッドグレードオリゴマーは、スチレン、アルキルスチレン、例えばα-メチルスチレン、3~6個の炭素原子を有するα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸、3~6個の炭素原子を有するα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と1~12個の炭素原子を有するアルカノールとの塩若しくはエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、若しくはイタコン酸とC1~C20、C1~C12、C1~C8、若しくはC1~C4アルカノールとのエステル;アルコキシ(メタ)アクリレート、又はそれらの組合せに由来しうる。α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の塩又はエステルの例としては、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、アルコキシ(メタ)アクリレート、例えばカルビトールメタクリレート、又はそれらの混合物を挙げることができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、ソリッドグレードオリゴマーは、スチレン-アクリルコポリマーのアンモニウム塩、スチレン-アクリルコポリマーのアミン塩、又はそれらの組合せである。
【0060】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される第2のポリマーの質量平均分子量は、約100kDa~約1000kDaの範囲である。例えば、第2のポリマーの質量平均分子量は、200kDa~1,000kDa、300kDa~900kDa、500kDa~900kDaである。
【0061】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2のポリマーの体積平均粒子径は、約50nm~約200nmの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第2のポリマーの体積平均粒子径は、約50nm~約150nmの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第2のポリマーの体積平均粒子径は、約50nm~約100nmの範囲である。いずれも動的光散乱技術によって測定される。
【0062】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2のポリマーの粘度は、約1000cP~約5000cPの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第2のポリマーの粘度は、約1000cP~約4000cPの範囲である。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第2のポリマーの粘度は、約1000cP~約2000cPの範囲である。いずれもNo.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して20℃で測定される。
【0063】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、組成物に存在する部分中和酸官能性支持体樹脂の質量平均分子量(Mw)は、20kDa以下、例えば2kDa~20kDa、2kDa~15kDa、2kDa~10kDaでありうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、組成物に存在するコポリマーの質量平均分子量は、20kDa以下、18kDa以下、15kDa以下、12kDa以下、10kDa以下、8kDa以下、又は7kDa以下でありうる。いずれもゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される。
【0064】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、組成物に存在する部分中和酸官能性支持体樹脂の数平均分子量(Mn)は2、0kDa以下、例えば2kDa~20kDa、2kDa~15kDa、2kDa~10kDaでありうる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、組成物に存在するコポリマーの数平均分子量は、20kDa以下、18kDa以下、15kDa以下、12kDa以下、10kDa以下、8kDa以下、又は7kDa以下でありうる。いずれもゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される。
【0065】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、部分中和とは、酸官能性樹脂上の約5mol%以上約95%以下の酸性基の中和を意味する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、部分中和とは、酸官能性樹脂上の約20mol%~約95mol%の酸性基の中和を意味する。様々な実施形態では、これは少なくとも約5mol%の酸性基、少なくとも約10mol%の酸性基、約10mol%~約95mol%の酸性基、約8mol%~約85mol%の酸性基、又は約15mol%~約50mol%の酸性基、又は約35mol%~約50mol%の酸性基を含みうる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、部分中和とは、酸官能性樹脂上の約30mol%の酸性基の中和を意味する。
【0066】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、部分中和酸官能性支持体樹脂は、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、有機アミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される塩基で中和されている。本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2のポリマーは、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約5質量%~約50質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約5質量%~約50質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、第2のポリマーは、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約10質量%~約50質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約10質量%~約40質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、第2のポリマーは、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約10質量%~約30質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約10質量%~約30質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む。
【0067】
部分中和酸官能性支持体樹脂は、第1のモノマー及び第2のモノマーの重合中に反応し、第2のポリマーに共有結合することができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、部分中和酸官能性支持体樹脂は第2のポリマーにグラフトされる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は組成物中の固形分の総質量に対して8質量%~40質量%、例えば10質量%~40質量%、10質量%~35質量%、15質量%~35質量%、20質量%~30質量%の部分中和酸官能性支持体樹脂に由来する。
【0068】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は5質量%~85質量%、例えば10質量%~70質量%、15質量%~65質量%、20質量%~60質量%、25質量%~50質量%のスチレンに由来する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物は5質量%~60質量%、例えば10質量%~60質量%、15質量%~65質量%、25質量%~60質量%、25質量%~50質量%、30質量%~45質量%のブタジエンに由来する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物は10質量%~40質量%、例えば10質量%~35質量%、15質量%~35質量%、又は20質量%~30質量%のソリッドグレードオリゴマーに由来する。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、コポリマーは、スチレン及び(メタ)アクリレートエステルに加えて、1種又は複数のモノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、及び/又はカルボン酸モノマー(例えば(メタ)アクリル酸)に由来しうる。
【0069】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第1のモノマーはスチレンを含み、第2のモノマーは(メタ)アクリレート系モノマーを含む。例えば、(メタ)アクリル酸系モノマーとしては(メタ)アクリル酸のエステル、例えばブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、又はメチルメタクリレートを挙げることができる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コポリマーは5質量%~85質量%、例えば10質量%~70質量%、15質量%~65質量%、20質量%~60質量%、又は25質量%~50質量%のスチレンに由来する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コポリマーは5質量%~60質量%、例えば10質量%~60質量%、15質量%~65質量%、25質量%~60質量%、25質量%~50質量%、又は30質量%~45質量%の(メタ)アクリレート系モノマーに由来する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コポリマーは10質量%~40質量%、例えば10質量%~35質量%、15質量%~35質量%、又は20質量%~30質量%のソリッドグレードオリゴマーに由来する。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、コポリマーは、スチレン及び(メタ)アクリレート系モノマーに加えて、1種又は複数のモノマー、例えば(メタ)アクリルアミド、カルボン酸モノマー(例えば(メタ)アクリル酸)、ホスフェート系モノマー(例えばPEM)、アセトアセトキシモノマー(例えばAAEM)、又は別の官能性モノマーに由来しうる。
【0070】
本明細書に開示の水性組成物は、当技術分野において知られている任意の重合方法によって調製することができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、本明細書に開示の組成物を、分散重合、ミニ乳化重合、又は乳化重合によって調製する。例えば、本明細書に開示の水性組成物を、第1のモノマー及び第2のモノマーをソリッドグレードオリゴマーの存在下でフリーラジカル水性乳化重合を使用して重合することによって調製することができる。乳化重合は、水、第1のモノマー、第2のモノマー、ソリッドグレードオリゴマー、任意選択で乳化剤、又はそれらの組合せを含む、水性エマルジョンでありうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、重合媒体は水性媒体である。水以外の溶媒をエマルジョン中で使用することができる。乳化重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、又は連続プロセスとして実施可能である。一実施形態では、一部のモノマーを重合温度に加熱して部分重合させることができ、続いて重合バッチの残りを連続的に、段階的に、又は濃度勾配の重ね合わせによって重合ソーンに供給することができる。当業者が容易に理解するように、プロセスでは1個の反応器を使用してもよく、一連の反応器を使用してもよい。例えば、不均一相重合技術に関する総説がM. Antonelli及びK. Tauer、Macromol. Chem. Phys. 2003、204巻、207~19頁に提供されている。
【0071】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2のポリマー及び部分中和酸官能性支持体樹脂を含む水性分散体が提供される。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、反応器に水、部分中和酸官能性支持体樹脂、及び任意選択で少なくとも1種の界面活性剤を最初に装入することによって、水性分散体を調製することができる。重合の開始を促進し、かつ一貫した粒子径を有するポリマーを生成することを促進するために、任意選択ではあるがシードラテックスが反応器に含まれてもよい。個々のモノマー反応に適した任意のシードラテックス、例えばポリスチレンシードを使用することができる。初期装入物はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤又は錯化剤を含んでもよい。緩衝剤等の他の化合物を反応器に加えて、乳化重合反応に望ましいpHを得ることができる。例えば、KOH又はピロリン酸四ナトリウム等の塩基又は塩基性塩を使用してpHを高めることができる一方、酸又は酸性塩を使用してpHを低下させることができる。次に初期装入物を反応温度又はその近傍の温度、例えば50℃~100℃、例えば55℃~95℃、58℃~90℃、61℃~85℃、65℃~80℃、又は68℃~75℃の反応温度に加熱することができる。
【0072】
初期装入の後、第2のポリマーの重合に使用すべき第1のモノマー及び第2のモノマー、並びに所望であれば他のモノマーを、1つ又は複数のモノマー供給流で反応器に連続的に供給することができる。これらのモノマーは、水性媒体中のプレエマルジョンとして、特にアクリレートモノマーを重合に使用する場合に供給することができる。開始剤供給流は、モノマー供給流を加えるときに反応器に連続的に加えてもよいが、開始剤がプロセスに使用される場合、モノマープレエマルジョンを加える前に開始剤溶液の少なくとも一部分を反応器に加えることが望ましいこともある。通常は、モノマー供給流及び開始剤供給流を所定の期間(例えば1.5~5時間)かけて反応器に連続的に加えて、モノマーの重合を引き起こし、それによってコポリマー分散体を生成させる。任意選択で、このときに界面活性剤をモノマー流又は開始剤供給流の一部として加えてもよいが、それらを別々の供給流で供給してもよい。更に、1種又は複数の緩衝液を、モノマー供給流若しくは開始剤供給流に含めるか、又は別の供給流で供給して、反応器のpHを改変又は維持することができる。
【0073】
モノマー供給流は、1種又は複数のモノマーを含みうる。第1のモノマー及び第2のモノマーを1つ又は複数の供給流で供給することができ、各供給流は、重合プロセスに使用される1種又は複数のモノマーを含む。例えば、スチレン及びアクリロニトリル(使用される場合)並びに他のモノマーを、別々のモノマー供給流で供給するか、又はプレエマルジョンとして加えることができる。また、特定のポリマー特性を付与するために、又は積層構造若しくは多相構造(例えばコア/シェル構造)を実現するために、特定のモノマーの供給を遅延させることが有利なこともある。
【0074】
第1のポリマー及び/又は第2のポリマーの分子量は、少量の分子量調整剤、例えば重合されるモノマーに対して0.01質量%~4質量%の分子量調整剤を加えることによって調整することができる。使用可能な調整剤としては、有機チオ化合物、例えばtert-ドデシルメルカプタン、アリルアルコール、及びアルデヒドが挙げられるがそれらに限定されない。
【0075】
開始剤供給流は、モノマー供給流中でモノマーの重合を引き起こすために使用される、少なくとも1種の開始剤又は開始剤系を含みうる。開始剤系は、水、及びモノマー反応を開始させるために適切な他の所望の成分を含んでもよい。開始剤は、乳化反応における使用について当技術分野において知られている任意の開始剤、例えばアゾ開始剤;過硫酸アンモニウム、カリウム、若しくはナトリウム;又は酸化剤及び還元剤を典型的に含む酸化還元系でありうる。一般的に使用される酸化還元開始系は、例えばA. S. SaracによってProgress in Polymer Science 24、1149-1204(1999)に記述されている。例示的な開始剤としては、アゾ開始剤、及び過硫酸ナトリウム水溶液が挙げられる。開始剤流は、1種又は複数の緩衝剤又はpH調整剤を任意選択で含んでいてもよい。
【0076】
モノマー及び開始剤に加えて、任意選択で、アニオン性又は非イオン性界面活性剤(すなわち乳化剤)を反応器に供給してもよい。界面活性剤を、反応器の初期装入で供給すること、モノマー供給流で供給すること、水性供給流で供給すること、プレエマルジョンで供給すること、開始剤流で供給すること、又はそれらの組合せが可能である。界面活性剤は、別個の連続流として反応器に供給してもよい。界面活性剤は、モノマー及び界面活性剤の総質量に対して1質量%~5質量%の量で供給することができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、界面活性剤を2質量%未満の量で供給する。
【0077】
重合が完了したときに、ポリマー分散体を化学的にストリッピングすることでその残留モノマー含有量を減少させることができる。このストリッピングプロセスは、化学的ストリッピング工程及び/又は物理的ストリッピング工程を含みうる。一部の実施形態では、酸化剤、例えば過酸化物、例えばt-ブチルヒドロペルオキシド、及び還元剤、例えばアセトン重亜硫酸ナトリウムを、又は別の酸化還元対を反応器に高温で所定の期間(例えば0.5時間)かけて連続的に加えることによって、ポリマー分散体を化学的にストリッピングする。好適な酸化還元対は、A. S. SaracによってProgress in Polymer Science 24、1149-1204(1999)に記述されている。必要であれば、任意選択の消泡剤を、ストリッピング工程の前又は間に加えてもよい。物理的ストリッピング工程では、水又は蒸気のフラッシを使用して、分散体中の非重合モノマーを更に除去することができる。ストリッピング工程が完了したときに、ポリマー分散体のpHを調整することができ、殺生物剤又は他の添加剤を加えることができる。カチオン性、アニオン性、及び/又は両性の界面活性剤又は高分子電解質を、ストリッピング工程後に又はそれよりも後に、所望される場合には生成物中に任意に添加して、カチオン性又はアニオン性ポリマー分散体を得てもよい。
【0078】
重合反応が完了し、ストリッピング工程が完了したときに、反応器の温度を低下させることができる。
【0079】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、得られるポリマー分散体(第1のポリマー、第2のポリマー、及び/又はその混合物)の粒子は体積平均粒子径50nm~400nm、例えば50nm~380nm、50nm~360nm、50nm~340nm、50nm~320nm、90nm~300nm、120nm~380nm、140nm~360nm、160nm~340nm、200nm~320nm、又は220nm~300nm、又は240nm~280nmを有する。一部の実施形態では、得られるコポリマー分散体の粒子は数平均粒子径50nm~300nm、例えば50nm~290nm、50nm~280nm、50nm~270nm、50nm~260nm、50nm~250nm、50nm~240nm、50nm~230nm、50nm~220nm、50nm~210nm、50nm~200nm、50nm~190nm、又は50nm~180nmを有する。粒子径測定は、Microtrac社製のnanoflex粒子径分析計を使用する動的光散乱測定を使用して行う。
【0080】
水性組成物は、水中に分散されたコポリマーの粒子を分散相として含む分散体として製造することができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、総固形分20質量%~70質量%、例えば25質量%~65質量%、35質量%~60質量%、又は40質量%~50質量%を有する水性組成物を調製することができる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物は、総固形分45質量%又は45質量%超を有しうる。水性分散体の固形分が比較的多いにもかかわらず、本明細書に開示の水性分散体は、23℃でブルックフィールド粘度100cP~2,500cP、例えば100cP~1,500cP又は500cP~1,500cPを有しうる。粘度は、No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で測定可能である。
【0081】
本明細書に記載の水性組成物は、ワックスを含みうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、ワックスは、水性組成物中に、水性組成物の総質量に対して0質量%~約25質量%の量で存在する。例えば、ワックスは水性組成物中に0質量%~約20質量%;0質量%~約15質量%;0質量%~約10質量%;0質量%~約5質量%;約1質量%~約25質量%;約1質量%~約20質量%;約1質量%~約15質量%;約1質量%~約10質量%;約5質量%~約25質量%;約5質量%~約20質量%;約5質量%~約15質量%;約5質量%~約10質量%;約10質量%~約25質量%;約10質量%~約20質量%;約10質量%~約15質量%の量で存在する。本特許請求に係る発明の一実施形態では、ワックスは、水性組成物中に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25質量%(その中の増分を含む)の量で存在する。本特許請求に係る発明の一実施形態では、ワックスは多相ポリマー結合剤中に約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25質量%(その中の増分を含む)の量で存在する。
【0082】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、ワックスは、本明細書においてワックスエマルジョンとも呼ばれる水性エマルジョンである。本特許請求に係る発明の一実施形態では、ワックスエマルジョンは、ポリマー固形分に対して少なくとも1質量%である。少なくとも1質量%には、ポリマー固形分に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25質量%(その中の増分を含む)が含まれる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、ワックスエマルジョンは約15質量%~約60質量%の固形分を有しうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、ワックスエマルジョンは約25質量%~40質量%の固形分を有しうる。非限定的な例では、固形分約15質量%~約60質量%を有する樹脂溶液において、pHはほぼ中性~9.5の範囲でありうるし、ブルックフィールド粘度は35cps~6,000cpsでありうる。
【0083】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、ワックスエマルジョンは、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フッ素化ワックス、エチレンプロピレンコポリマーワックス、又はそれらの2種以上の任意の組合せを含む。例示的な疎水性エマルジョンとしては、パラフィン/ポリエチレンワックスエマルジョン、アニオン性パラフィン/ポリエチレンワックスエマルジョン、パラフィンワックスエマルジョン、エトキシ化パラフィンワックスエマルジョン、及び界面活性剤で分散されたパラフィンワックスエマルジョンが挙げられるがそれらに限定されない。例示的な疎水性エマルジョンとしては、JONCRYL(登録商標)ワックス120、PETROLITE(商標)D-800、MICHEM(登録商標)62330、PETROLITE(商標)D-1038、JONCRYL(登録商標)ワックス26、UNITHOX(商標)D-300、UNITHOX(商標)D-550、及びUNITHOX(商標)75が挙げられるがそれらに限定されない。
【0084】
本明細書に記載の水性組成物は、界面活性剤を含みうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、界面活性剤はアニオン性又は非イオン性である。本特許請求に係る発明の一実施形態では、界面活性剤は、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルベンゼンスルフェート、ホスフェート、ホスフィネート、脂肪族カルボキシレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1種の脂肪アルコールアルコキシレートを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、この少なくとも1種の脂肪アルコールアルコキシレートは、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪アルコールプロポキシレート、及びその任意の組合せから選択される。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1種のエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1種の脂肪アルコールエトキシレートを含む。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1種又は複数のアルキルスルホスクシネートエトキシレートを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1種のアルキルスルホスクシネートエトキシレート及び少なくとも1種の脂肪アルコールエトキシレートを含む。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、界面活性剤は、約12個~約18個の炭素のアルキル鎖長、及び約10モル~約80モルのエチレンオキシド単位のエトキシ化度を有する、少なくとも1種の脂肪アルコールを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤を含む。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、界面活性剤はアニオン性界面活性剤を含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、アニオン性界面活性剤は、少なくとも1種のアルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルベンゼンスルフェート、ホスフェート、ホスフィネート、脂肪族カルボキシレート、又はそれらの2種以上の任意の組み合わせを含む。
【0086】
本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、界面活性剤は、水性組成物中に0質量%~約10質量%の量で存在する。これには、量が0質量%~約9質量%;0質量%~約8質量%;0質量%~約7質量%;0質量%~約6質量%;0質量%~約5質量%;0質量%~約4質量%;0質量%~約3質量%;0質量%~約2質量%;0質量%~約1質量%;約1質量%~約10質量%;約1質量%~約9質量%;約1質量%~約8質量%;約1質量%~約7質量%;約1質量%~約6質量%;約1質量%~約5質量%;約1質量%~約4質量%;約1質量%~約3質量%;約1質量%~約2質量%;約2質量%~約10質量%;約2質量%~約9質量%;約2質量%~約8質量%;約2質量%~約7質量%;約2質量%~約6質量%;約2質量%~約5質量%;約2質量%~約4質量%;約2質量%~約3質量%;約3質量%~約10質量%;約3質量%~約9質量%;約3質量%~約8質量%;約3質量%~約7質量%;約3質量%~約6質量%;約3質量%~約5質量%;約3質量%~約4質量%;約5質量%~約10質量%;約5質量%~約9質量%;約5質量%~約8質量%;約5質量%~約7質量%;又は約5質量%~約6質量%である場合が含まれる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、界面活性剤は、多相ポリマー結合剤中に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10質量%(その中の増分を含む)の量で存在する。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、界面活性剤は、多相ポリマー結合剤中に約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10質量%(その中の増分を含む)の量で存在する。
【0087】
樹脂溶液は、約15質量%~約60質量%の固形分を、pH 7.0~9.5及び35cps~6,000cpsのブルックフィールド粘度と共に有しうる。これには、約30質量%~約50質量%の固形分を、pH 8.0~9.0及び100cps~1,000cpsのブルックフィールド粘度と共に有する場合が含まれうる。
【0088】
本明細書に記載の水性組成物は、添加剤、顔料、他の水性樹脂溶液、レオロジー調整剤、湿潤剤、消泡剤、及び充填剤等であるがそれらに限定されない他の材料を含みうる。顔料の実例としては、クレイ、有機顔料、無機顔料が挙げられるがそれらに限定されない。例示的な他の水性樹脂溶液は、0質量%~約20質量%又は0質量%超~約20質量%で包含されうるカルボン酸リッチコポリマーを含む。これらのカルボン酸リッチコポリマーとしてはカルボン酸官能性モノマー、スチレン、及び(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーを挙げることができる。例えば、カルボン酸リッチコポリマーは5質量%~25質量%のカルボン酸官能性モノマー、最高で約70質量%までのスチレン、及び10質量%~90質量%の(メタ)アクリレートモノマーを含みうる。例示的なレオロジー調整剤としては、疎水変性エトキシ化ウレタン、疎水変性ポリエーテル、アルカリ膨潤性エマルジョン、疎水変性アルカリ膨潤性エマルジョン、クレイ、及びヒュームドシリカが挙げられるがそれらに限定されない。レオロジー調整剤は、配合物中で0質量%~約2質量%又は0質量%超~約2質量%で使用されうる。例示的な湿潤剤としては、アルコキシ化界面活性剤(すなわち、第一級ヒドロキシル基又はポリエチレングリコール及び/若しくはプロピレングリコールを末端とする二官能性ブロックコポリマー界面活性剤)、シリコーン界面活性剤、スルホスクシネート界面活性剤、及び星型アルコキシ化ポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。湿潤剤は、配合物中で0質量%~約4質量%又は0質量%超~約4質量%で使用されうる。例示的な消泡剤としては、油性消泡剤(すなわち鉱物油、植物油、又はホワイト油)、ケイ素系消泡剤(すなわちポリジメチルシロキサン及びそれらの誘導体)、水性エマルジョン系消泡剤、水性消泡剤エマルジョンであって油、ポリマー、及び有機変性シリコーンをベースとするもの、ポリエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール、並びに星型ポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。消泡剤は、配合物中で0質量%~約0.5質量%又は0質量%超~約0.5質量%で使用されうる。例示的な充填剤としては、ヒュームドシリカ、クレイ材料、すなわち剥離又は非剥離カオリン、タルク、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト
、及びサポナイト;炭酸カルシウム、天然雲母、並びにそれらの任意の2種以上の組合せが挙げられるがそれらに限定されない。充填剤は、配合物中で0質量%~約40質量%又は0質量%超~約40質量%で使用されうる。
【0089】
本明細書に記載の水性組成物は、基材にコーティングされて乾燥された場合、約5g/m2/20分(min)未満の吸水量を示す。フレキソコーティングでは、吸水量は、約16g/m2未満である。これには、吸水量約4.5g/m2/20分未満、吸水量約4g/m2/20分未満、吸水量約3.5g/m2/20分未満、吸水量約3g/m2/20分未満、吸水量約2.5g/m2/20分未満、吸水量約2g/m2/20分未満、又は吸水量約1g/m2/20分未満が含まれる。一部の実施形態では、吸水量は約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5.0g/m2/20分(その中の増分を含む)である。一部の実施形態では、吸水量は約0.5~約5.0g/m2/20分である。これには吸水量約0.5~約4.5g/m2/20分、約0.5~約4.0g/m2/20分、約0.5~約3.5g/m2/20分、約0.5~約3.0g/m2/20分、約0.5~約2.5g/m2/20分、約0.5~約2.0g/m2/20分、約1.0~約5.0g/m2/20分、約1.0~約4.5g/m2/20分、約1.0~約4.0g/m2/20分、約1.0~約3.5g/m2/20分、約1.0~約3.0g/m2/20分、又は約1.0~約2.5g/m2/20分が含まれる。
【0090】
本特許請求に係る発明の一態様は、本明細書に開示の水性組成物を含む少なくとも1つの層でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む、基材に関する。本特許請求に係る発明の一実施形態では、基材は紙又は板紙である。
【0091】
本明細書に開示の水性組成物を任意の基材に使用して、耐水性、耐湿性、耐グリース性、耐油性、及び/又は耐酸素性を付与することができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、基材は、セルロース系基材、例えば紙、板紙、又はボール紙でありうる。セルロース系基材としては、使い捨て若しくはリサイクル紙コップを例えば含む紙コップ、紙袋であって、例えばコーヒー、茶、粉末スープ、粉末ソース等の乾燥食品用のもの、例えば化粧品、洗浄剤、飲料等の液体用のもの;チューブ状ラミネートの基材;紙手提げ袋の基材;アイスクリーム、菓子(例えばチョコレートバー及びミューズリーバー)用のラミネート紙及び共押出紙;紙接着テープの基材;ボール紙コップ(例えば紙コップ)、ヨーグルトポット、スフレコップの基材;食事用トレー若しくは肉用トレーの基材;巻ボール紙容器(例えば缶、ドラム) の基材;外装用の湿潤強力カートン(例えばワインボトル、食品) の基材;コーティングボール紙の果物箱の基材;ファストフード用プレートの基材;クランプシェルの基材;飲料用カートン及び液体(例えば洗剤及び洗浄剤等)用のカートン、冷凍食品用カートン、氷包装(例えば氷コップ、アイスクリームコーンウェハース用の包装材料) の基材;紙ラベルの基材;又はフラワーポット及び植木鉢の基材を挙げることができる。
【0092】
本特許請求に係る発明の別の態様は、本明細書に開示の水性組成物を含む、コーティング紙又は物品に関する。本特許請求に係る発明の一実施形態では、本明細書に開示の水性組成物を含む、コーティング紙又は物品は、コーティング紙1m2当たり約2g~約30gの範囲のコーティング質量を有する。本特許請求に係る発明の一実施形態では、本明細書に開示の水性組成物を含む、コーティング紙又は物品は、コーティング紙1m2当たり約10g~約25gの範囲のコーティング質量を有する。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コーティング紙は、60℃及び60psiで24時間にわたって、ASTM WK20008に従って確定される3以上の耐ブロッキング性を示す。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コーティング紙は、60℃及び60psiで24時間にわたって、ASTM WK20008に従って確定される4以上の耐ブロッキング性を示す。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、コーティング紙は耐油性及び/又は耐グリース性を示す。
【0093】
本特許請求に係る発明の別の態様は、紙を作製する方法であって、セルロース繊維と本明細書に開示の水性組成物とを接触させる工程を少なくとも含む、方法に関する。本特許請求に係る発明の一実施形態では、セルロース繊維と水性組成物とを接触させる工程は、セルロース繊維を含むペーパーウェブを、水性組成物を含む水性分散体でコーティングすることを含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、セルロース繊維と本明細書に開示の水性組成物とを接触させる工程は、(i) 水性組成物を含む水性分散体とセルロース繊維とを混合してスラリーを形成すること;並びに(ii) セルロース繊維及び水性組成物のスラリーからペーパーウェブを形成することを含む。
【0094】
本特許請求に係る発明の別の実施形態では、水性組成物は、基材上にコーティングされる。例えば、水性組成物はペーパーウェブ上のコーティングとして提供されうる。水性組成物は、2g/m2以上、例えば3g/m2以上、4g/m2以上、5g/m2以上、6g/m2以上、7g/m2以上、8g/m2以上、9g/m2以上、10g/m2以上、11g/m2以上、12g/m2以上、13g/m2以上、14g/m2以上、15g/m2以上、16g/m2以上、17g/m2以上、18g/m2以上、19g/m2以上、20g/m2以上、21g/m2以上、22g/m2以上、23g/m2以上、24g/m2以上、25g/m2以上、26g/m2以上、27g/m2以上、28g/m2以上、又は29g/m2以上のコーティング質量を有しうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は、30g/m2以下、例えば29g/m2以下、28g/m2以下、27g/m2以下、26g/m2以下、25g/m2以下、24g/m2以下、23g/m2以下、22g/m2以下、21g/m2以下、20g/m2以下、19g/m2以下、18g/m2以下、17g/m2以下、16g/m2以下、15g/m2以下、14g/m2以下、13g/m2以下、12g/m2以下、11g/m2以下、10g/m2以下、9g/m2以下、8g/m2以下、7g/m2以下、6g/m2以下、5g/m2以下、4g/m2以下、又は3g/m2以下のコーティング質量を有しうる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、水性組成物は2g/m2~30g/m2、例えば3g/m2~30g/m2、4g/m2~30g/m2、5g/m2~30g/m2、又は10g/m2~25g/m2のコーティング質量を有しうる。コーティング質量は、セルロース系基材1平方メートル当たりのコーティングのグラムの単位で報告可能であり、適用されるコーティングの量、及びコーティングが適用されるセルロース系基材の表面積によって直接算出可能である。本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物を、コーティングされたセルロース系基材の質量に対して15質量%未満の量で適用することができる。一部の実施形態では、水性組成物は、基材の0.01質量%~5質量%、例えば0.1質量%~5質量%、0.5質量%~5質量%、0.1質量%~4質量%、0.1質量%~3質量%、0.1質量%~2.5質量%、又は0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上で存在しうる。
【0095】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は、厚さ0.40ミル以上、例えば0.5ミル以上、0.6ミル以上、0.7ミル以上、0.8ミル以上、0.9ミル以上、1ミル以上、1.1ミル以上、1.2ミル以上、1.3ミル以上、1.4ミル以上、1.5ミル以上、1.6ミル以上、1.7ミル以上、1.8ミル以上、1.9ミル以上を有しうる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は厚さ2ミル以下、例えば1.9ミル以下、1.8ミル以下、1.7ミル以下、1.6ミル以下、1.5ミル以下、1.4ミル以下、1.3ミル以下、1.2ミル以下、1ミル以下、0.9ミル以下、0.8ミル以下、0.7ミル以下、0.6ミル以下、又は0.5ミル以下を有しうる。一部の実施形態では、水性組成物は厚さ0.4ミル~2ミル、例えば0.5ミル~1.8ミル未満、0.6ミル~1.6ミル、又は0.7ミル~1.5ミルを有しうる。コーティング厚は、コーティングの密度、及びコーティングされたセルロース系基材の質量に基づいて算出可能である。
【0096】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、コーティングには、水性組成物が備えられている。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、コーティングは基材の1つ又は複数の表面に存在しうる。本特許請求に係る発明においては、基材は、紙コップ又は紙袋も意味する。紙コップは、内面、外面、下部、及び側部を有しうる。水性組成物は、紙コップの第1の表面及び/又は第2の表面に存在しうる。第1の表面は、側部の内面及び/又は下部の内面のうち1つ又は複数を含みうる。一部の実施形態では、内面の一部分のみ、例えば10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は全体がコーティングされる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、内面全体がコーティングされる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、第2の表面は側部の外面及び/又は下部の外面のうち1つ又は複数を含む。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、外面の一部分のみ、例えば10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は全体がコーティングされる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、外面全体がコーティングされる。
【0097】
水性組成物は、工場の抄紙機を使用して、又は印刷法によって、セルロース系基材にコーティングすることができる。
【0098】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は、基材、例えばセルロース繊維で形成されるペーパーウェブの全体に備えられる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、水性組成物は、基材の4質量%~30質量%、例えばいずれも基材の質量に対して5質量%~30質量%、5質量%~29質量%、5質量%~28質量%、5質量%~27質量%、5質量%~26質量%、5質量%~20質量%、又は4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、若しくは10質量%以上で存在しうる。
【0099】
水性組成物は、水性組成物を基材に添加するための当技術分野において知られている任意の方法を使用して、セルロース系基材等の基材に添加することができる。本特許請求に係る発明の一実施形態では、本方法は、セルロース繊維を含むペーパーウェブを、水性組成物を含む水性分散体でコーティングすることを含みうる。本特許請求に係る発明の別の実施形態では、本方法は、水性組成物を含む水性分散体をペーパーウェブに噴霧することを含みうる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、本方法は、水性組成物を含む水性分散体とセルロース繊維を含むスラリーとを混合して混合物を形成すること、並びにセルロース繊維及び水性組成物の混合物からペーパーウェブを形成することを含みうる。
【0100】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物は、水性組成物を含まない適用例との比較で、基材に耐水性、耐湿性、耐グリース性、耐油性、及び/又は耐酸素性を付与しうる。基材は、漏出又は着色の減少又は消失も示しうる。水性組成物を含む基材の、液体の水及び水蒸気に対する耐性は、参照により全体として本明細書に組み込まれるTAPPI T 441(2001)に記載のCobb法によって試験可能である。この方法によって、標準条件下で特定の時間内に紙、板紙、及び段ボールによって吸収される液体の水又は水蒸気の量が確定される。本特許請求に係る発明の一実施形態では、本明細書に記載のコーティング基材は、この試験法に記載の耐水性試験に合格するであろう。吸水性は、サイジング及び多孔性を含むがそれらに限定されない紙又は板紙の様々な特性の関数でありうる。
【0101】
本特許請求に係る発明の一実施形態では、水性組成物を含む基材は 20分時点で約0.01g/m2~20分時点で25g/m2、例えば25g/m2以下、20g/m2以下、15g/m2以下、10g/m2以下、又は5g/m2以下のCobb値を示しうる。水性組成物を含む基材は、25℃及び50RH%で測定した際に、24時間の水蒸気透過率(MVTR)35g/m2以下を示しうる。例えば、水性組成物を含む基材は、水蒸気透過率32g/m2以下、30g/m2以下、27g/m2以下、25g/m2以下、22g/m2以下、20g/m2以下、18g/m2以下、17g/m2以下、又は15g/m2以下を示しうる。本特許請求に係る発明の更に別の実施形態では、水性組成物を含む基材は、水蒸気透過率5g/m2以上又は10g/m2以上を示しうる。
【0102】
更に、本明細書に記載の水性組成物を含む基材は、完成紙製品に切断/成形される前に紙ロールに巻き付けられる際に、最小限のブロッキング傾向、すなわち、別のコーティング面に対するコーティング面の接着、又は押出コーティング紙の非コーティング面に対するコーティング面の接着を示しうる。耐ブロッキング性は、ASTM WK20008に記載のI.Cブロッキング試験機を使用して試験可能である。試料には以下のスケールに基づいて1~5の等級が与えられうる: 1- 非常に低い粘着性、2- 低粘着性、3- 高粘着性、4- 他着性、繊維引き裂け約25%、5- 繊維引き裂け25%超。本特許請求に係る発明においては、十分な耐ブロッキング性は、本実施例に記載の等級付け方式による等級5を意味する。本特許請求に係る発明においては、基材損傷の存在は目視で評価される。本特許請求に係る発明においては、「基材損傷なし」とは、目視で観察される基材損傷がないことを意味する。
【0103】
本明細書において参照されるすべての刊行物、特許出願、発行特許、及び他の文献は、それぞれの刊行物、特許出願、発行特許、又は他の文献が具体的かつ個別的に全体として参照により組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる文書に含まれる定義は、本開示中の定義と矛盾する限り排除される。
【0104】
実施形態
以下では、本開示を更に例示するために、実施形態のリストを示すが、本開示を以下に列挙される特定の実施形態に限定することは意図されていない。
【0105】
実施形態1
(i) エチレン性置換芳香族化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー、並びに(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーに由来する、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第1のポリマー;並びに
(ii) 部分中和酸官能性支持体樹脂と、オレフィン、モノビニリデン芳香族化合物、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、並びにその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、約10質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種の第2のポリマー
を含み、
いずれの質量%も水性組成物の総質量に対するものである、水性組成物。
【0106】
実施形態2
少なくとも1種の第1のポリマーの体積平均粒子径の少なくとも1種の第2のポリマーの平均粒子径に対する比が、約20:1~約2:1の範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0107】
実施形態3
No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で測定される水性組成物の粘度が、約100cP~約2500cPの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0108】
実施形態4
水性組成物の固形分が、水性組成物の総質量に対して約20質量%~約70質量%の範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0109】
実施形態5
ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される第1のポリマーの質量平均分子量が、約20kDa~約500kDaの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0110】
実施形態6
動的光散乱技術によって確定される第1のポリマーの体積平均粒子径が、約90nm~約400nmの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0111】
実施形態7
No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で測定される第1のポリマーの粘度が、約100cP~約2500cPの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0112】
実施形態8
少なくとも1種の第1のモノマーが、少なくとも1種の第2のモノマーと異なる、実施形態1に記載の水性組成物。
【0113】
実施形態9
エチレン性置換芳香族化合物が、スチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、デシルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態8に記載の水性組成物。
【0114】
実施形態10
いずれも第1のポリマーの総質量に対して、第1のモノマーの量が約10質量%~約50質量%の範囲であり、第2のモノマーの量が約10質量%~約90質量%の範囲である、実施形態1から9のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0115】
実施形態11
いずれも第1のポリマーの総質量に対して、第1のポリマーの第1のモノマーの量が約10質量%~約40質量%の範囲であり、第1のポリマーの第2のモノマーの量が約20質量%~約90質量%の範囲である、実施形態1から10のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0116】
実施形態12
いずれも第1のポリマーの総質量に対して、第1のポリマーの少なくとも1種の第1のモノマーの量が約10質量%~約30質量%の範囲であり、第1のポリマーの少なくとも1種の第2のモノマーの量が約70質量%~約90質量%の範囲である、実施形態1から11のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0117】
実施形態13
第2のポリマーの部分中和酸官能性支持体樹脂が、変性アクリルコポリマーのアンモニウム塩、変性アクリルコポリマーのアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1に記載の水性組成物。
【0118】
実施形態14
変性アクリルコポリマーが、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、及びそれらの混合物からなる群に由来する、実施形態13に記載の水性組成物。
【0119】
実施形態15
ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される第2のポリマーの質量平均分子量は、約100kDa~約1000kDaの範囲である。実施形態1に記載の水性組成物。
【0120】
実施形態16
光散乱技術によって確定される第2のポリマーの体積平均粒子径が、約50nm~約200nmの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0121】
実施形態17
No.2スピンドルを備えた粘度計を50rpmで使用して23℃で測定される第2のポリマーの粘度が、約1000cP~約5000cPの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0122】
実施形態18
ゲル浸透クロマトグラフィーに従って確定される部分中和酸官能性支持体樹脂の質量平均分子量が、約2kDa~約20kDaの範囲である、実施形態1に記載の水性組成物。
【0123】
実施形態19
部分中和酸官能性支持体樹脂が、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、有機アミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される塩基で中和されている、実施形態1に記載の水性組成物。
【0124】
実施形態20
部分中和が、塩基による酸官能性支持体樹脂上の少なくとも約5mol%の酸性基の中和を意味する、実施形態1に記載の水性組成物。
【0125】
実施形態21
第2のポリマーが、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約10質量%~約50質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約5質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む、実施形態1から20のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0126】
実施形態22
第2のポリマーが、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約10質量%~約40質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約20質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む、実施形態1から21のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0127】
実施形態23
第2のポリマーが、いずれも第2のポリマーの総質量に対して、約10質量%~約30質量%の量の部分中和酸官能性支持体樹脂、及び約70質量%~約90質量%の範囲の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む、実施形態1から22のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0128】
実施形態24
ワックスを、水性組成物の総質量に対して約0.10質量%~約25質量%の範囲の量で更に含む、実施形態1に記載の水性組成物。
【0129】
実施形態25
ワックスが、水性エマルジョンである、実施形態24に記載の水性組成物。
【0130】
実施形態26
水性エマルジョンが、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フッ素化ワックス、エチレンコポリマーワックス、プロピレンコポリマーワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態25に記載の水性組成物。
【0131】
実施形態27
界面活性剤を更に含む、実施形態1から26のいずれか一項に記載の水性組成物。
【0132】
実施形態28
界面活性剤がアニオン性又は非イオン性である、実施形態27に記載の水性組成物。
【0133】
実施形態29
界面活性剤が、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルベンゼンスルフェート、ホスフェート、ホスフィネート、脂肪族カルボキシレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態28に記載の水性組成物。
【0134】
実施形態30
界面活性剤が、少なくとも1種の脂肪アルコールエトキシレートを含む、実施形態28に記載の水性組成物。
【0135】
実施形態31
界面活性剤が、少なくとも1種のアルキルスルホスクシネートエトキシレートを含む、実施形態28に記載の水性組成物。
【0136】
実施形態32
界面活性剤が、少なくとも1種のアルキルスルホスクシネートエトキシレート及び少なくとも1種の脂肪アルコールエトキシレートを含む、実施形態28に記載の水性組成物。
【0137】
実施形態33
界面活性剤が、約12個の炭素~約18個の炭素のアルキル鎖長、及び約10モルのエチレンオキシド単位~約80モルのエチレンオキシド単位のエトキシ化度を有する、少なくとも1種の脂肪アルコールを含む、実施形態28に記載の水性組成物。
【0138】
実施形態34
実施形態1から32のいずれか一項に記載の水性組成物を含む少なくとも1つの層でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む、基材。
【0139】
実施形態35
紙又は板紙である、実施形態34に記載の基材。
【0140】
実施形態36
実施形態1から33のいずれか一項に記載の水性組成物を含む、コーティング紙又は物品。
【0141】
実施形態37
水性組成物が、コーティング紙1m2当たり約2g~約30gの範囲のコーティング質量で含まれる、実施形態36に記載のコーティング紙又は物品。
【0142】
実施形態38
ASTM WK20008に従って確定される3以上の耐ブロッキング性を60℃及び60psiで24時間にわたって示す、実施形態37に記載のコーティング紙。
【0143】
実施形態39
耐油性及び/又は耐グリース性を示す、実施形態36に記載のコーティング紙。
【0144】
実施形態40
紙を作製する方法であって、セルロース繊維と実施形態1から33のいずれか一項に記載の水性組成物とを接触させる工程を少なくとも含む、方法。
【0145】
実施形態41
セルロース繊維と水性組成物とを接触させる工程が、セルロース繊維を含むペーパーウェブを、水性組成物を含む水性分散体でコーティングすることを含む、実施形態40に記載の方法。
【0146】
実施形態42
セルロース繊維と水性組成物とを接触させる工程が、(i) 水性組成物を含む水性分散体とセルロース繊維とを混合してスラリーを形成すること;並びに(ii) セルロース繊維及び水性組成物のスラリーからペーパーウェブを形成することを含む、実施形態40に記載の方法。
【0147】
本特許請求に係る発明をその特定の実施形態に関して説明してきたが、ある程度の修正及び均等範囲は当業者には明らかであろうし、本特許請求に係る発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0148】
本特許請求に係る発明は以下の利点のうち少なくとも1つを伴う:
i) 本特許請求に係る発明は、本明細書に開示の組成物でコーティングされた紙基材又は、板紙基材に良好なバリア性及び耐ブロッキング性を付与する。
ii) 本特許請求に係る発明は、本明細書に開示の組成物でコーティングされた紙基材又は、板紙基材に改善された耐油性及び耐グリース性を付与する。
iii) 本特許請求に係る発明は、本明細書に開示の組成物でコーティングされた紙基材又は板紙基材に、室温近傍~約60℃の温度での耐グリース性を付与する。
iv) 本特許請求に係る発明は、本明細書に開示の組成物でコーティングされた紙基材又は板紙基材に、改善された温度折り目耐グリース性(temperature crease and fold grease resistance)を付与する。
v) 本特許請求に係る発明の組成物でコーティングされた紙基材又は板紙基材は、再パルプ化性及びリサイクル性がある。
vi) 本特許請求に係る発明は、フィルム形成中に、耐グリース性を改良する一方で、耐ブロッキング性も維持するという、より良好な梱包を実現する。
vii) 本特許請求に係る発明の水性組成物は、印刷に必要な低粘度での高固形分を実現し、それにより印刷を容易にする。
【実施例】
【0149】
本特許請求に係る発明の態様を以下の実施例によって更に十分に説明するが、以下の実施例は、本発明の特定の態様を示すために記載するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0150】
成分
水性組成物中で使用されたモノマーの略語は以下の通りである。
AAは、Aldrich Chemical社から得たアクリル酸の略語であり、
BAは、Aldrich Chemical社から得たブチルアクリレートの略語であり、
MAAは、Aldrich Chemical社から得たメタクリル酸の略語であり、
MMAは、Aldrich Chemical社から得たメチルメタクリレートの略語であり、
AMSは、Aldrich Chemical社から得たα-メチルスチレンであり、
2-EHAは、Aldrich Chemical社から得た2-エチルヘキシルアクリレートの略語であり、
HEAは、Aldrich Chemical社から得たヒドロキシエチルアクリレートの略語であり、
STYは、Aldrich Chemical社から得たスチレンの略語であり、
APSは、Aldrich Chemical社から得た過硫酸アンモニウムの略語であり、
tBHPは、Aldrich Chemical社から得たtert-ブチルヒドロペルオキシドの略語である。
Joncryl(登録商標)Wax 28は、BASF社から得たパラフィン/ポリエチレンワックスエマルジョンである。
FoamStar(登録商標)SI 2240は、BASF社から得た、広範な適合性を示すシリコーン系消泡剤化合物である。
Sterocoll(登録商標)FSは、BASF社から得た、アクリルコポリマーの水性分散体をベースとする増粘剤である。
【0151】
(実施例1A)
連続高温重合プロセスによって合成された第2のポリマーを含むポリマー樹脂、及び水性樹脂分散体の調製
本発明における使用に好適なポリマーを、均一又は不均一媒体中での付加重合によって調製することができる。したがって、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の一般的な技術を使用して本発明の好適なポリマーを生成することができる。
【0152】
Table 1(表1)は、本発明において使用されるポリマーの組成の概要を示す。これらのポリマーは、相対的に高い温度での連続フリーラジカル重合プロセスによって作製された。ここでは、重合は均一環境で行われる。高い反応温度によって、連鎖移動剤の使用なしに低分子量を実現することが可能になる。重合工程後、樹脂を脱揮発剤に供することで未反応モノマー及びプロセス溶媒を除去する。Table 1(表1)に示すポリマーが、いずれも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,461,60号;第4,414,370号;及び第4,529,787号に記載の高温連続重合プロセスによって調製されたことに留意されたい。
【0153】
【0154】
(実施例1B)
第2のポリマーを含む水性樹脂分散体の合成
Table 1(表1)に記載の酸官能性ポリマーを、撹拌及び加熱下でその酸性基の一部を塩基で中和することで、水に分散させた。例えば、P3 220グラム並びに脱イオン水473.7グラム及びアンモニア(29質量%活性)50.3グラムを、凝縮器及びオーバーヘッドスターラーを備えた反応容器に加えることで、固形分28.5質量%のP3の分散体を調製した。この混合物を撹拌下で88℃~92℃に加熱し、4時間保持した後、室温に冷却し、濾過してPD3を得た。
【0155】
Table 2(表2)は、このようにして調製されたポリマー分散体を記述する。2種以上の酸官能性ポリマーを含む分散体を、この方法によって、当該ポリマーの混合物から出発して作製することが可能である。このようにして、両出発樹脂を含む粒子が形成される。
【0156】
【0157】
(実施例2)
第2のポリマー及び部分中和酸官能性支持体樹脂を含むレオロジー制御アクリルエマルジョンポリマーの合成
凝縮器、温度計、窒素入口、及びオーバーヘッドスターラーを備えた反応容器に、脱イオン水(31.1グラム)及び実施例1Bの樹脂支持体分散体(PD3、93.4グラム、固形分28.5%)を加え、窒素流下で82℃に加熱した。過硫酸アンモニウム(0.66グラム)及び脱イオン水(51.2グラム)を加え、撹拌しながら3分間保持した。モノマー混合物(メチルメタクリレート17グラム、ブチルアクリレート38.8グラム、及び2-エチルヘキシルアクリレート24.9グラム)を90分かけて加えた後、1.3グラムの脱イオン水のフラッシを行い、30分間保持した。tert-ブチルヒドロペルオキシド(0.4グラム)及び脱イオン水(2.38グラム)を加え、10分間保持した。エリトルビン酸ナトリウム(1.4グラム)及び脱イオン水(3.2グラム)を15分かけて加え、10分間保持した。反応物を室温に冷却し、濾過した。以下の特性を有する、所望の樹脂強化エマルジョンポリマーが得られる: ブルックフィールドLV、No.3スピンドルによって30rpm、30秒で測定した25℃での粘度は1800cps;固形分は48質量%;Tg=-27℃;MFFT=5℃以下;酸価=64mg KOH/グラム;粒子径(体積平均径、dv)=81nm;及びMw=826kDa。
【0158】
(実施例3)
第1のポリマーを含む分散体の合成
凝縮器、温度計、窒素入口、及びオーバーヘッドスターラーを備えた反応容器に脱イオン水(217.9グラム)、ポリスチレン(7.6グラム、Aldrich Chemical社)、及びDSI(14.53グラム)を加え、窒素流下で90℃に加熱した。過硫酸ナトリウム(6.9グラム、Aldrich Chemical社)を加え、撹拌しながら3分間保持した。モノマー混合物(アクリル酸、Aldrich Chemical社、14.2グラム;アクリロニトリル、Aldrich Chemical社、68.54グラム;n-ブチルアクリレート、Aldrich Chemical社、338.8グラム;及びスチレン、Aldrich Chemical社、68.54グラム)を180分かけて加え、同時に過硫酸ナトリウム(42.1グラム)並びに混合物(TSPP 45グラム、Disponil SDS 15 7.83グラム、及び脱イオン水121.7グラム)を240分かけて加えた。供給の終わりに、tert-ブチルヒドロペルオキシド(10.77グラム)及びメタ重亜硫酸ナトリウム(10.77グラム)を加え、10分間保持した。残留未反応モノマーの蒸留後、反応物を室温に冷却し、濾過した。以下の特性を有する、所望の水性アクリル分散体ポリマーが得られた: ブルックフィールドRV、No.2スピンドルによって20rpmで測定された23℃での粘度は534cps;固形分は50質量%;Tg=-8℃;MFFT=-2℃以下;粒子径(体積平均径、dv)=170nm;及びMw=122kDa。
【0159】
(実施例4)
包装用コーティング配合物
実施例2(71.82グラム)、樹脂分散体PD2(15.66グラム)、Joncryl Wax 28(5.15グラム)、FoamStar SI 2240(0.10グラム)、及び脱イオン水(7.27グラム)を撹拌しながら順次加えることによってコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=150cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=41.3質量%を有していた。
【0160】
(実施例5)
包装用コーティング配合物
実施例2(55.35グラム)、実施例3(18.48グラム)、樹脂分散体PD2(16.10グラム)、Joncryl Wax 28(5.30グラム)、FoamStar SI 2240(0.10グラム)、及び脱イオン水(4.67グラム)を撹拌しながら順次加えることでコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=131cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=42.9質量%を有していた。
【0161】
(実施例6)
包装用コーティング配合物
実施例2(38.61グラム)、実施例3(38.61グラム)、樹脂分散体PD2(16.81グラム)、Joncryl Wax 28(5.53グラム)、FoamStar SI 2240(0.11グラム)、及び脱イオン水(0.33グラム)を撹拌しながら順次加えることでコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=152cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=45.6質量%を有していた。
【0162】
(実施例7)
包装用コーティング配合物
実施例3(74.65グラム)、樹脂分散体PD2(16.27グラム)、Joncryl Wax 28(5.35グラム)、FoamStar SI 2240(0.11グラム)、Sterocoll FS(0.47グラム)、及び脱イオン水(3.15グラム)を撹拌しながら順次加えることでコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=155cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=46.1質量%を有していた。
【0163】
(実施例8)
包装用コーティング配合物
実施例2(60グラム)、実施例3(40グラム)、及び脱イオン水(1.45グラム)を撹拌しながら順次加えることでコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=124cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=47.9質量%を有していた。
【0164】
(実施例9)
包装用コーティング配合物
実施例2(50グラム)及び実施例3(50グラム)を撹拌しながら順次加えることでコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=126cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=50.03質量%を有していた。
【0165】
(実施例10)
包装用コーティング配合物
実施例2(40グラム)及び実施例3(60グラム)を撹拌しながら順次加えることでコーティング組成物を調製した。この配合物を室温で20分間撹拌した。水性配合物は結果的な粘度=109cps(ブルックフィールドRV、No.2スピンドル、30rpm、23℃)及び固形分=48.96質量%を有していた。
【0166】
(実施例11)
コーティング基材の耐ブロッキング性の測定
コーティング適用
Pamarco社の自動プルーファーを使用して均一フレキソコーティングを指定のコーティング質量で基材に適用した。各コーティング層をオーブン中、60℃で1分間乾燥させた。
【0167】
別途指示がない限り、同じポリマー樹脂を使用して120* LPI(22.6 BCM)又は140†LPI(17.9BCM)ハンドプルーファーを2回通すことで、コーティングを適用した。コーティング質量を理論的25%転写で確定した。
【0168】
耐ブロッキング性
加圧下及び高温下におけるポリマー結合剤のそれ自体及び非コーティング紙への付着に対する耐性を確定するために、耐ブロッキング性試験を行った。試験では、標準的な温度、圧力、及び時間に供される際にコーティング基材が経験する粘着及び損傷の程度が測定される。紙の均一性によっては、コーティング紙料のロールは最大60psiの内圧を得ることがある。熱帯条件(30℃及び相対湿度95%)下で保管又は輸送される際に、コーティング紙層は互いに付着することがあり、最悪のシナリオでは、紙又はコーティングは著しく損傷することがある。耐ブロッキング性試験を50℃及び60psiで24時間行った。試料を1×3インチに切断し、2枚のシートをブロッキング試験装置内でコーティング対紙(表対裏、F-B)積層又はコーティング対コーティング(表対表、F-F)積層した。次にスプリングを層の上に取り付けて一定量の圧力を試料に加えた。湿潤条件が可能なオーブンに装置全体を50℃で24時間入れた。Koehler Instrument社のK53000 I.C.ブロッキング試験機をこの試験に使用した。ブロッキング試験が完了したときに、試料を取り出して試料の粘着及び損傷についてモニタリングした。等級付け方式をTable 3(表3)に記載する。耐ブロッキング性データをTable 4(表4)に示す。
【0169】
【0170】
【0171】
(実施例12)
コーティング基材の耐油性及び耐グリース性の測定
実施例11において調製された紙に対するコーティング試料で出発して、各試料の3つの複製物を切断し、試料を平坦状かつ折り目付きで試験した。試料を切断したときに、3つの試料にカートン折り目プルーファーを使用して折り目を付けた。試料をプルーファーに、コーティング側を下にして置いた後、内側に折りたたんだ。折りたたんだ紙タオルに2質量%スダンブルー/オレイン酸混合物1gを適用し、平坦なガラスパネルの中央に置いた。コーティング試験試料のコーティング側を、油で浸した紙タオル片の上に置いた。別のガラスプレートを試験試料の上に置いた。1時間、5時間、及び24時間の間隔後に、試料を評価して、試験コーティングを通じた青色染料の浸出によって判定される破壊モードを試料が経験したか否かを確認した。
【0172】
【0173】
【0174】
結果の考察
Table 4(表4)、Table 5(表5)、Table 6(表6)、及び実施例1から10の結果は、本特許請求に係る発明の水性組成物が、本明細書に開示の水性組成物でコーティングされた基材に、耐ブロッキング性、並びに改善された耐油性及び耐グリース性を付与することを示す。意外にも、組成物中の第1のポリマー及び第2のポリマーの両方のガラス転移温度Tgが0℃未満である際に、耐ブロッキング性がなお実現されることがわかった。Table 5(表5)及びTable 6(表6)は、コーティングを通じた油及びグリースの浸透に相関する、各時間枠でのコーティング面積パーセントの評価を示す。これらの表に記録された結果からは、本特許請求に係る発明の水性組成物が、面積パーセントで表される優れた折り目耐グリース性を示すということが示されている。面積当たりの値が低いほど、耐性は良好である。コーティング基材の改善された特性は、組成物の成分、特に本明細書に開示される水性組成物中の第1のポリマー及び第2のポリマーの相乗効果により生じる。第2のポリマーは、単独で用いられる場合、室温で耐グリース性を付与するが、高温では付与できない。一方、本明細書に開示の水性組成物は、室温及び高温の両方で、例えば60℃で良好な耐グリース性を付与する。
【0175】
水性組成物中の第1のポリマー及び第2のポリマーの体積平均粒子径の比によって、フィルム形成中に、第1のポリマーによる耐グリース性を改良する一方で、第2のポリマーによる耐ブロッキング性も維持するという、より良好な梱包が可能になる。更に、実施例1から10からは、本明細書に開示の水性組成物が、紙の印刷を容易にするために必要な、低粘度での高固形分を実現することを可能にすることがわかる。最終水性組成物の粘度が、別々の第1のポリマー及び第2のポリマーの粘度よりもはるかに低い値になったのは驚くべき結果であった。また、本明細書に開示の独自の組成物は、コーティング転写を耐水性と共に改善する。単独で使用される場合の第2のポリマーは、巻線棒でコーティングされる際の耐水性が良好であるが、フレキソ印刷によりコーティング質量を構築するために十分な転写を実現しない。
【0176】
試験法
分子量の確定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)スペクトルをWaters 2695機器で取得し、これを使用してポリマーの分子量を確定した。テトラヒドロフラン(THF)を40℃で移動相として使用し、RI検出器を使用した。ポリスチレン分子量標準物質に対して較正された溶出時間を使用して、すべての試料を数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及び多分散性(PDI)について分析した。
【0177】
数平均分子量(Mn)はポリマー中のすべてのポリマー鎖の統計的平均分子量であり、下記式により確定される:
Mn=(ΣNiMi)/ΣNi
式中、Miは鎖の分子量であり、Niは該分子量の鎖の数である。
【0178】
質量平均分子量(Mw)は下記式により確定される。
Mw=(ΣNiMi2)/ΣNi
【0179】
Mnに比べて、Mwは、分子量平均に対する寄与を確定する上で、鎖の分子量を考慮する。鎖が大きいほど、鎖のMwに対する寄与が大きい。
【0180】
比較的高い平均分子量(Mz)は下記式により確定されうる。
Mz=(ΣNiMi3)/ΣNi
【0181】
分散性指数又は多分散性指数(PDI)は、所与のポリマー試料中の分子量の分布の尺度である。ポリマーのPDIは下記式により計算される:
PDI=Mw/Mn
式中、質量平均分子量及び統計的平均分子量は上記定義の通りである。
【0182】
固形分の確定
分散体の試料約0.5g~約2gを140℃オーブン中で1時間乾燥させることで、分散体の固形分を重量測定法で測定した。
【0183】
粘度の確定
粘度をブルックフィールドLVによって20℃~25℃で測定した。
【0184】
体積平均粒子径を含む粒子径の確定
分散体の粒子径を、Microtrac社製のnano-flex粒子径分析計を使用して測定した。
【0185】
酸価の確定
酸価をASTM D664-95に従って電位差滴定によって測定した。
【0186】
ガラス転移温度の確定
ガラス転移温度(Tg)をASTM D3418-15に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0187】
最低フィルム形成温度(MFFT)の確定
MFFTをASTM D2354-10に従って測定した。
【国際調査報告】