(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ウイルスベクターの調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20230111BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C12N15/86 Z
C12N15/10 120Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528165
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020064150
(87)【国際公開番号】W WO2021119221
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503393010
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Repligen Corporation
【住所又は居所原語表記】41Seyon Street,Building#1,Suite100,Waltham,Massachusetts02139,United StatesOfAmerica
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドウッタ、アミット、クマー
(72)【発明者】
【氏名】ペイサー、ジェームズ、ローランド
(57)【要約】
本開示は、一般に、プロセス濾過システム、より詳細には、接線流濾過を利用するシステムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターの調製方法であって、
第1の保持液チャネルおよび第1の透過チャネルを含む第1のフィルターを通して前記ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を流動させることと、
前記第1のフィルターの前記第1の保持液チャネルから接線流濾過フィルターの第2の保持液チャネル中に保持液を流動させることと、
前記第1のフィルターの前記第1の保持液チャネルからの前記保持液を再可溶化することとを備え、
前記溶液が、前記ウイルスベクターの実質的な沈殿を引き起こすのには十分であるが、前記不純物の実質的な沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含み、
前記ウイルスベクターが前記接線流濾過フィルターの第2の透過チャネルに移行する、方法。
【請求項2】
前記塩がリン酸カルシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再可溶化が前記保持液にEDTA食塩水を加えることをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接線流濾過フィルターが交互接線流(ATF)フィルターまたは接線流デプスフィルターを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
容器を通して前記溶液を流動させることをさらに含み、(a)前記容器が前記塩を前記溶液中に混合し、(b)前記容器が滞留時間の狭い分布を特徴とし、(c)前記溶液が、前記容器から前記第1のフィルターに向かって流動する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2のフィルターをさらに含み、前記第2のフィルターが、前記第1の保持液チャネルと流体連通している第3の保持液チャネルを含み、前記第2のフィルターが、前記第1の保持液チャネルと流体連通している第3の透過チャネルを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の保持液チャネルの上流にある第1の混合機および前記第3の保持液チャネルの上流にある第2の混合機をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のフィルターおよび前記第2のフィルターがフラットシートカセット、渦巻形繊維フィルターまたは中空繊維フィルターをそれぞれ含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスベクターを濃縮する方法であって、
前記ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を中空繊維フィルターの第1の保持液チャネルに流動させることと、
前記中空繊維フィルターの前記第1の保持液チャネルから接線流フィルターの第2の保持液チャネルに保持液を流動させることとを備え、
前記溶液が、前記ウイルスベクターの実質的な沈殿を引き起こすのには十分であるが、前記不純物の実質的な沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含み、
前記実質的に沈殿した不純物が前記接線流フィルターの第2の保持液チャネル内に保持され、
前記ウイルスベクターが前記接線流フィルターの透過チャネルに移行する、方法。
【請求項10】
前記塩がリン酸カルシウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記保持液にEDTA食塩水を加えることによって、前記中空繊維フィルターの前記第1の保持液チャネルからの前記保持液を再可溶化することをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記接線流フィルターが交互接線流(ATF)フィルターまたは接線流フィルターを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
容器を通して前記溶液を流動させることをさらに含み、(a)前記容器が前記塩を前記溶液中に混合し、(b)前記容器が滞留時間の狭い分布を特徴とし、(c)前記溶液が、前記容器から前記中空繊維フィルターに向かって流動する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ウイルスベクターを精製する方法であって、
前記ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を接線流フィルターの供給チャネルに流動させることを備え、
前記溶液が、前記不純物の実質的な沈殿を引き起こすのには十分であるが、前記ウイルスベクターの実質的な沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含み、
前記実質的に沈殿した不純物が前記接線流フィルターの透過液に移行せず、
前記ウイルスベクターが前記接線流フィルターの前記透過液に移行する、方法。
【請求項15】
前記実質的に沈殿した不純物を含む前記溶液をコンテナから廃棄物に流動させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記塩が四級アンモニウム化合物を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記塩がセチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)を含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
容器を通して前記溶液を流動させることをさらに含み、(a)前記容器が前記塩を前記溶液中に混合し、(b)前記容器が滞留時間の狭い分布を特徴とし、(c)前記溶液が前記容器からコンテナに流動する、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記容器がコイル状流れ反転反応器(coiled flow inversion reactor)または撹拌タンク反応器である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記接線流フィルターが交互接線流(ATF)フィルターまたは接線流フィルターである、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本出願は、35USC§119の下で、2019年12月10日出願された米国特許仮出願第62/946,082号の優先権の利益を主張し、これは、参照によりその全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、プロセス濾過システム、より詳細には、接線流濾過を利用するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
濾過は、典型的には、流体溶液、混合液または懸濁液を分離する、浄化する、改変する、および/または濃縮するために行われる。バイオテクノロジーおよび医薬品産業では、濾過は、新薬、診断および他の生物学的生成物の生成、処理および試験の成功にきわめて重要である。例えば、動物または微生物細胞培養を使用する生物学的製剤の製造のプロセスにおいて、培養培地からのある特定の構成成分の浄化、選択的除去および濃縮のために、またはさらなる処理より前に培地を改変するために、濾過は行われる。濾過は、高細胞濃度での灌流において培養を維持することによって生産性を増強するために使用することもできる。
【0004】
生物製剤の製造プロセスは、実質的なプロセス強化を通じて進歩してきた。組換えタンパク質、ウイルス様粒子(VLP)、遺伝子療法粒子およびワクチンを生成するための真核生物と微生物の両方の細胞培養は、今や、100e6細胞/ml以上を達成する細胞増殖技法を含む。これは、代謝老廃物を除去し、かつさらなる栄養素で培養をリフレッシュにする細胞保持装置を使用して達成される。細胞保持の最も一般的な手段のうちの1つは、交互接線流(ATF)を使用する中空繊維濾過を使用してバイオリアクター培養を灌流することである。商業的規模のプロセスと開発規模のプロセスの両方とも、ダイヤフラムポンプを制御して、中空繊維フィルターを通してATFを行う装置を使用する(例えば、米国特許第6,544,424号を参照されたい)。
【0005】
ウイルスベクターの下流精製はバッチ方式で行われることが多い。バッチ方式の精製は、低い生産性、生成物の質のばらつき、広い機器設置面積および高い生成費用をもたらし得る。ウイルスベクターの多カラムベースの連続的クロマトグラフィー精製が報告されているが、この方法は、弁の複雑な切り替えおよび高確率のプロセス障害をともない得る。これらの多カラムベースの方法は、生成の費用を高める高価な樹脂を必要とすることも多い。
【0006】
沈殿ベースの精製はクロマトグラフィー精製よりも安価である。そのような精製はバッチ方式について以前に報告されており、これは、前述の不利な点のすべてを有する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、ウイルスベクターの連続的下流精製のための沈殿の使用を記載する。この方法は、多カラムクロマトグラフィープロセスよりも頑強かつ安価である。
【0008】
本開示は、その様々な態様において、一般に、ウイルスベクターの調製方法ならびに関連した装置およびシステムに関する。本明細書に記載のものを含めて、本開示による実施形態は、特に、ウイルスベクターの調製および精製に使用するためのプロセスの有効性および効率を高めることができる。
【0009】
一態様では、ウイルスベクターの調製方法は、ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を中空繊維フィルターのシステムを通して接線流濾過機の供給チャネルへ流動させることを含むことができる。溶液は、ウイルスベクターの沈殿を引き起こすのには十分であるが、不純物の沈殿を引き起こすのには不十分な量の塩を含むことができる。中空繊維フィルターのシステムから得られた保持液を再可溶化させることができる。ウイルスベクターは接線流濾過後に透過液に移行することができる。
【0010】
ここかまたは他で記載される様々な実施形態では、塩はリン酸カルシウムでもよい。再可溶化のステップは、EDTA食塩水を加えることを含むことができる。接線流濾過は、交互接線流濾過または接線流デプス濾過を含むことができる。方法は、容器を通して溶液を流動させることを含むことができ、ここで、(a)容器は塩を溶液中に混合し、(b)容器は滞留時間の狭い分布を特徴とする。
【0011】
一態様では、ウイルスベクターを精製する方法は、ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を接線流濾過機の供給チャネルへ流動させることを含むことができる。溶液は、不純物の沈殿を引き起こすのには十分であるが、ウイルスベクターの沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含むことができる。沈殿した不純物は透過液に移行することができないが、ウイルスベクターは透過液に移行することができる。
【0012】
様々な実施形態では、保持液を捨てることができる。塩は四級アンモニウム化合物を含むことができる。塩はセチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)を含むことができる。方法は容器を通して溶液を流動させることを含むことができ、ここで、(a)容器は塩を溶液中に混合することができ、(b)容器は滞留時間の狭い分布を特徴とし得る。容器は、コイル状流れ反転反応器(coiled flow inversion reactor)でもよいし、撹拌タンク反応器でもよい。接線流濾過機は、交互接線流(ATF)濾過でもよいし、接線流デプス濾過機でもよい。
【0013】
一態様では、ウイルスベクターの調製方法は、第1の保持液チャネルおよび第1の透過チャネルを含む第1のフィルターを通してウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を流動させることを含むことができる。保持液は、第1のフィルターの第1の保持液チャネルから接線流濾過フィルターの第2の保持液チャネル中に流動することができる。第1のフィルターの第1の保持液チャネルから保持液を再可溶化させることができる。溶液は、ウイルスベクターの実質的な沈殿を引き起こすのには十分であるが、不純物の実質的な沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含むことができる。ウイルスベクターは接線流フィルターの第2の透過チャネルに移行する。
【0014】
様々な実施形態では、塩はリン酸カルシウムでもよい。再可溶化は、保持液にEDTA食塩水を加えることをさらに含むことができる。接線流フィルターは交互接線流(ATF)フィルターまたは接線流デプスフィルターを含むことができる。溶液は容器を通って流動することができ、ここで、(a)容器は塩を溶液中に混合し、(b)容器は滞留時間の狭い分布を特徴とし、(c)溶液は容器から第1のフィルターに向かって流動する。第2のフィルターが含まれてもよい。第2のフィルターは第1の保持液チャネルと流体連通している第3の保持液チャネルを含むことができる。第2のフィルターは、第1の保持液チャネルと流体連通している第3の透過チャネルを含むことができる。第1の混合機は第1の保持液チャネルの上流にあってもよい。第2の混合機は第3の保持液チャネルの上流にあってもよい。緩衝液は、第2の混合機に流動することができる。第1のフィルターおよび第2のフィルターは、フラットシートカセット、渦巻形繊維フィルターまたは中空繊維フィルターをそれぞれ含むことができる。
【0015】
一態様では、ウイルスベクターを濃縮する方法は、ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を中空繊維フィルターの第1の保持液チャネルに流動させることを含むことができる。保持液は、中空繊維フィルターの第1の保持液チャネルから接線流フィルターの第2の保持液チャネルに流動することができる。溶液は、ウイルスベクターの実質的な沈殿を引き起こすのには十分であるが、不純物の実質的な沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含むことができる。実質的に沈殿した不純物は、接線流フィルターの第2の保持液チャネル内に保持され得る。ウイルスベクターは接線流フィルターの透過チャネルに移行することができる。
【0016】
様々な実施形態では、塩はリン酸カルシウムでもよい。保持液にEDTA食塩水を加えることによって、第1の中空繊維フィルターの第1の保持液チャネルから保持液を再可溶化させることができる。接線流フィルターは、交互接線流(ATF)フィルターまたは接線流フィルターを含むことができる。溶液は容器を通って流動することができ、ここで、(a)容器は塩を溶液中に混合し、(b)容器は滞留時間の狭い分布を特徴とし、(c)溶液は容器から中空繊維フィルターに向かって流動する。
【0017】
一態様では、ウイルスベクターを精製する方法は、ウイルスベクターおよび不純物を含む溶液を接線流フィルターの供給チャネルに流動させることを含むことができる。溶液は、不純物の実質的な沈殿を引き起こすのには十分であるが、ウイルスベクターの実質的な沈殿を引き起こすのには不十分である量の塩を含むことができる。実質的に沈殿した不純物は、接線流フィルターの透過液に移行することができない。ウイルスベクターは、接線流濾過機の透過液に移行することができる。
【0018】
様々な実施形態では、溶液を流動させることは、コンテナから廃棄物への実質的に沈殿した不純物を含むことができる。塩は四級アンモニウム化合物を含むことができる。塩はセチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)を含むことができる。溶液は容器を通って流動することができ、ここで、(a)容器は塩を溶液中に混合し、(b)容器は滞留時間の狭い分布を特徴とし、(c)溶液は容器からコンテナに流動する。容器は、コイル状流れ反転反応器でもよいし、撹拌タンク反応器でもよい。接線流フィルターは、交互接線流(ATF)フィルターでもよいし、接線流フィルターでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態による、ウイルスベクターを精製するためのシステムの概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、ウイルスベクターを濃縮するためのシステムの概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、連続的にウイルスベクターを精製し不純物を沈殿させるためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[概説]
ウイルスベクターの沈殿ベースの連続的精製では、反応器および濾過システムが使用される。反応器は連続的撹拌タンク反応器(CSTR)でもよいし、コイルドコイル反応器(CCR)でもよい。濾過システムは、交互接線流(ATF)フィルター、接線流フィルター(TFF)または接線流デプスフィルター(TFDF)として操作することができる。方法は、(i)ウイルスベクターを精製する、(ii)ウイルスベクターを濃縮する、または(iii)ウイルスベクター供給物から不純物を除去するために、使用することができる。例示的フィルターとしては、例えば、TFDFの操作について約1kda~約15μmに及ぶ孔径、またはTFFもしくはATF方式の一方もしくは両方で操作されるTFDFフィルターについてより大きな孔径を有する中空繊維フィルターを挙げることができる。本明細書に記載の様々な実施形態では、ATF方式で操作するTFFは、フィルターに沿った保持液チャネル内の流動方向の変化が理由で、(非ATFと比較して)ファウリングが少ない可能性がある。これは、フィルター性能を高める可能性がある。本明細書に記載の様々な実施形態では、TFDFは、より速い流速を可能にし得るが、TFFまたはATFよりも濾過能力が低い可能性がある。
【0021】
ある特定の実施形態では、溶液は混合され、得られた材料は、重力、誘起圧力(例えば、マグレブ、ペリスタルティックもしくはダイヤフラム/ピストンポンプ)または他の力を介して、システムを通って流動する。材料は、生成物または存在する不純物のいずれかの沈殿動態に依存する速度でシステムを通って移動する。ATF、TFF、TFDFなどを含む濾過システムに材料が一旦到達すると、圧力システムが材料を濾過システムに送り込む。いくつかの実施形態では、圧力システムはダイヤフラムポンプを含むことができる。
【0022】
ある特定の実施形態では、あり得る不純物は、宿主細胞のタンパク質および流加培地で使用される栄養素からなり得る。
【0023】
ある特定の実施形態では、システムは、反応器、例えばコイルドコイル反応器、すなわち、コイル状流れ反転反応器、または連続的撹拌タンク反応器を含む。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、コイル状流れ反転反応器は、半径方向混合を増強し、狭い滞留時間分布を作り出すように働くと考えられる。コイルドコイル反応器または連続的撹拌タンク反応器の使用は、沈殿動態に依存し得る。いくつかの実施形態では、混合された材料は、不純物を除去するために、一連のスタティックミキサーおよび中空繊維フィルターに流れ込むと思われる。膜の細孔サイズは変動する可能性があり、ウイルスベクターのサイズおよびシステム中に存在する沈殿物に依存する可能性がある。一連のスタティックミキサーおよび中空繊維フィルターを通って材料が流動している間に、廃棄物がシステムから除去され、緩衝液が加えられる。そのようなシステムの得られた保持液は沈殿物を含み、これは、濾過システムを通って流動する前に、再可溶化される。濾過システムの一部は、ATF、TFFまたはTFDFの操作を含むことができ、かつ中空繊維、フラットシートカセットフィルターまたは渦巻形繊維フィルターを含むことができる。
【0024】
ある特定の実施形態では、システムは、反応器、例えばコイルドコイル反応器、すなわち、コイル状流れ反転反応器、または連続的撹拌タンク反応器を含む。ウイルスベクターはそのような反応器中に沈殿し、得られた混合物は中空繊維フィルターを通って流動する。得られた保持液は沈殿物を含み、かつ再可溶化されて、濾過システムを通って流動することができる。濾過システムの一部は、ATF、TFFまたはTFDFの操作を含むことができ、かつ中空繊維、フラットシートカセットフィルターまたは渦巻形繊維フィルターを含むことができる。
【0025】
ある特定の実施形態では、システムは、反応器、例えばコイルドコイル反応器、すなわち、コイル状流れ反転反応器、または連続的撹拌タンク反応器を含む。不純物を含む溶液を前記反応器中で混合し、不純物を沈殿させる。得られた混合物は沈殿した不純物をシステムから除去し、得られた溶液は濾過システムを通って流動する。濾過システムの一部は、ATF、TFFまたはTFDFの操作を含むことができ、かつ中空繊維、フラットシートカセットフィルターまたは渦巻形繊維フィルターを含むことができる。
【0026】
ある特定の実施形態では、システムは、タンパク質、ナノ粒子およびウイルス(例えば、AAV、レンチウイルス;ウイルス様粒子、マイクロ粒子、マイクロキャリア、ミクロスフェア、ナノ粒子など)に使用される。
【0027】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターが沈殿させられる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ウイルスベクターを沈殿させることは、沈殿したウイルスベクターが保持液中にある状態で、濾過を介して溶液からウイルスベクターを取り出すことを可能にすると考えられる。この方法は、ウイルスベクターの精製、ウイルスベクターの濃縮、または同様のプロセスに使用される。
【0028】
いくつかの実施形態では、不純物が沈殿させられる。次いで沈殿した不純物が混合液から除去され、得られた溶液は濾過システムを通って流動する。
【0029】
いくつかの実施形態では、純粋でないウイルスベクターが、バイオリアクター、特にコイルドコイル反応器または連続的撹拌タンク反応器内で沈殿剤(すなわち、リン酸カルシウム、硫酸アンモニウム)と混合される。沈殿剤はウイルスベクターを特異的に沈殿させる。溶液は、一連のスタティックミキサーおよび中空繊維フィルターを通って流動する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、このシリーズは、ウイルスベクターの沈殿とシステムからのそうしたウイルスベクターの取り出しの両方を増大させるために使用される。沈殿物を含む保持液はフィルターから収集され、ウイルスベクターを再可溶化するために、溶液(すなわち、0.1M EDTA食塩水)が加えられる。純粋なウイルスベクターを生成するために、再可溶化された溶液は濾過される。
【0030】
いくつかの実施形態では、希釈したウイルスベクターが、反応器、特にコイルドコイル反応器または連続的撹拌タンク反応器内で沈殿剤(すなわち、リン酸カルシウム)と混合される。沈殿剤はウイルスベクターを特異的に沈殿させる。溶液は中空繊維フィルターを通って流動する。得られた保持液は沈殿したウイルスベクターを含み、得られた透過液は廃棄物として除去される。沈殿物が再可溶化され、濾過されて、濃縮されたウイルスベクターが得られる。
【0031】
ある特定の実施形態では、純粋でないウイルスベクターが、反応器、特にコイルドコイル反応器または連続的撹拌タンク反応器内で沈殿剤(すなわち、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)、ドミフェン臭化物など)と混合される。沈殿剤は溶液中の不純物を特異的に沈殿させる。混合後、不純物が混合液から除去され、ここで、ウイルスベクターを含む溶液が濾過され、精製された生成物が得られる。
【0032】
ある特定の実施形態では、微量の不純物を除去するために、さらなる下流処理が必要になり得る。いくつかの実施形態では、記載されるシステムで使用する前に、細胞培養液を浄化しなければならない。連続的な浄化システムに接続されている場合は、上流のバイオリアクターを記載されるシステムに直接統合することができる。
【0033】
図1は、ウイルスベクターを調製および精製するための例示的システムを図示する。システム100は、第1および第2の混合機108、109ならびに第1および第2の中空繊維フィルター110、111のシステム(例えば、中空繊維と混合機の直列の組み合わせは、ATFまたはTFFで操作することができる「ステージ」と呼ぶことができる)に接続する反応器106、例えばコイルドコイル反応器を含む。2つのステージが図示されるが、任意の数のステージを使用することができる(例えば、0、1、2、3、4、10個など)。使用されるステージの数は、収率要件に依存する。ステージの数の増加は生成物の収率を増大するが、システムの費用も高める。純粋でないウイルスベクター102および塩104(例えば、リン酸カルシウム、硫酸アンモニウム、別の沈殿剤など)が反応器106に加えられて、システム100を通って流動するための溶液を形成する、および/または該溶液中に混ぜ入れられる。溶液は、反応器106から第1の中空繊維フィルター110の上流に位置する第1の混合機108に流動することができる。第1の混合機108は、(以下に述べるように)下流の透過液と溶液を混合するように構成される。第1の混合機108の生成物は第1の中空繊維フィルター110に流動することができる。第1の中空繊維110は、第1の透過チャネル116を通して、一部の不純物を廃棄物に濾過して取り除く。第1の中空繊維フィルター110の第1の保持液チャネルは、第2の中空繊維フィルター111の上流に位置する第2の混合機109と流体連通している。第2の混合機109は、第1の保持液チャネルからの保持液を緩衝液118と混合して、第2の混合機109に加えられるウイルスベクターを沈殿させるのを補助するように構成される。第2の混合機109の生成物は第2の中空繊維フィルター111に流動することができる。第2の中空繊維フィルター111は、第2の透過チャネル117を通して一部の不純物(例えば、望まれない種)および非沈殿ウイルスベクターを濾過して取り除き、これは、前述のようにさらに処理するために第1の混合機108に流動することができる。様々な実施形態では、フィルターの孔径は沈殿物および生成物の粒度に依存し得る。緩衝液流量対入口供給流量の比は所望の生成物の収率に依存し得る。緩衝液流量対入口供給流量の比の増加は、生成物収率を増大することができるが、さらなる緩衝液を必要とする可能性があり、生成物を希釈する可能性がある。第2の中空繊維フィルター111の第2の保持液チャネルはコンテナ112と流体連通しており、その結果、第2の保持液チャネルの生成物はコンテナ112に流動することができる。沈殿したウイルスベクターを含むコンテナ112は、食塩水120(例えば、約0.1M EDTA食塩水など)を加えることによって、溶液に実質的に再可溶化され得る。コンテナ112内で再可溶化された溶液は、第3のフィルター114(例えば、ATF、TFF、TFDFの操作におけるフィルター)を通って流動することができる。第3のフィルター114は、第3の透過チャネル122を通して、実質的に精製されたウイルスベクターを濾過して取り出す。
【0034】
図2は、ウイルスベクターを濃縮するための例示的システムを図示する。システム200は、中空繊維フィルター208に接続する反応器206、例えばコイルドコイル反応器を含む。1つの中空繊維フィルター208が図示されるが、任意の数のフィルターを使用することができる(例えば、2、3、4、10個など)。希釈したウイルスベクター202および塩204(例えば、リン酸カルシウム、硫酸アンモニウム、別の沈殿剤など)が反応器206に加えられて、システム200を通って流動するための溶液を形成する、および/または該溶液中に混ぜ入れられる。溶液は、反応器206から中空繊維フィルター208に流動することができる。中空繊維フィルター208は、透過チャネル214を通して一部の不純物および非沈殿ウイルスベクター(例えば、望まれない種)を濾過して取り除き、これは、廃棄物に流動することができる。中空繊維フィルター208の第1の保持液チャネルはコンテナ210と流体連通しており、その結果、実質的に沈殿したウイルスベクターは第1の保持液チャネルからコンテナ210に流動することができる。沈殿したウイルスベクターを含むコンテナ210は、食塩水220(例えば、約0.1M EDTA食塩水など)を加えることによって、溶液に再可溶化され得る。コンテナ210内で再可溶化された溶液は、(例えば、ATF方式、TFF方式、TFDF方式などで操作される)接線フィルター212を通って流動することができる。接線フィルター212は、第2の透過チャネル222を通して、実質的に濃縮されたウイルスベクターを濾過して取り出す。接線フィルター212は、コンテナ210にさらなる流体を加えることなく第2の透過チャネル222を通して濃縮されたウイルスベクターを生成するように連続的に作動することができ、これは、接線フィルター212の保持液がコンテナ210と接線フィルター212の間の流動を往復運動させることができるからである。このようにして、接線フィルター212は、さらなる処理ステップおよび/または機器なしで、第2の透過チャネル222から生成された濃縮されたウイルスベクターを増幅し続けることができる。
【0035】
図3は、溶液中の不純物を沈殿させ、溶液のウイルスベクターを精製するための例示的システムを図示する。システム300は、反応器306、例えばコイルドコイル反応器を含む。(本明細書に記載されるような)中空繊維フィルターは図示されていないが、反応器306とインラインで任意の数のフィルターを使用することができる(例えば、1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、50、100個など)。純粋でないウイルスベクター302(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター)および塩304(例えば、CTAB、ドミフェン臭化物、別の沈殿剤など)が反応器306に加えられて、システム300通って流動するための溶液を形成する、および/または該溶液中に混ぜ入れられる。溶液の不純物(例えば、望ましくない材料)は反応器306内で実質的に沈殿し、混合溶液は反応器306からコンテナ308に流動することができる。沈殿した不純物を含むコンテナ308は接線フィルター310(例えば、ATF、TFF、TFDFなど)を通って流動することができる。接線フィルター310は、透過チャネル322を通して、実質的に精製されたウイルスベクターを濾過して取り出す。沈殿した不純物は接線フィルター310の保持液チャネル内に保持され、かつ維持されるかまたはコンテナ308に戻される。コンテナ308は、コンテナ308から沈殿した不純物を受け取る(例えば、「流出させる」)ための廃棄物チャネル324を含む。廃棄物チャネル324は、ポンプ、重力、計量弁、時限弁、手動弁、開放流路、制限流路、フィルター、これらの組み合わせなどを使用して、流動され得る。接線フィルター310は、透過チャネル322を通して精製されるウイルスベクターを生成するように連続的に作動することができ、これは、接線フィルター310の保持液がコンテナ308と接線フィルター310の間の流動を往復運動させることができるからである。沈殿した不純物が反応器306からコンテナ308に流動すると、沈殿した不純物はコンテナ308から廃棄物チャネル324にさらに流動する。したがって、フィルター310が負荷過大にならない、流体がフィルターに流れ出ない、かつ実質的に一定の質量流量を維持するように、実質的に一定の体積の流体がコンテナ308に維持され得る。反応器306からコンテナ308への流量の比、廃棄物チャネル324への沈殿した不純物の流量、およびコンテナ308からフィルター310の保持液への流体の流量は、さらなる処理ステップおよび/または機器なしで、透過チャネル322を通して精製されるウイルスベクターを生成するシステム300の連続操作が維持されるように調整することができる。
【0036】
[結論]
前述の開示は、本開示による濾過システムのいくつかの例示的実施形態を提示した。これらの実施形態は制限を意図したものではなく、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなしに上記のシステムおよび方法に様々な付加または改変を行うことができることが、当業者によって容易に理解されるであろう。さらに、前述の開示は、主として交互接線流濾過システムおよびその適用に焦点を合わせたが、本開示の原理は、中空繊維TFFおよびTFDFならびに他の濾過システムを含めて、他のシステムに適用可能であることが当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】