(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】酸化ストレスを処理して酸化還元バランスを調節し、酸化ストレスによって誘発される細胞の損傷と死を防止する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/44 20060101AFI20230111BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230111BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20230111BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230111BHJP
A61K 31/095 20060101ALI20230111BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230111BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230111BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230111BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230111BHJP
C01B 32/156 20170101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K33/44
A61P39/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/41
A61K31/05
A61K31/095
A61P43/00 105
A61Q5/00
A61Q19/00
A61P17/02
A61P17/18
A61K8/19
A23L33/10
C01B32/156
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528301
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 US2020060388
(87)【国際公開番号】W WO2021097191
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522189816
【氏名又は名称】レドックス・バランス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】REDOX BALANCE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,スティーブン アール
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C084
4C086
4C206
4G146
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD94
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF14
4C083AB132
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD31
4C083EE13
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4C084NA05
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4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZC19
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA04
4C206CA19
4C206JA80
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4C206NA05
4C206ZA89
4C206ZB21
4C206ZC75
4G146AA09
4G146BA04
4G146CA11
4G146CA16
4G146CB13
4G146CB35
(57)【要約】
フラーレン化合物および製剤は、その抗酸化特性およびREDOXバランス(恒常性)特性のために、生物における酸化ストレスを低減するのに有用であることが教示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C60、または約70%のC60を含むC60/C70混合物のうちの1つを含む、有効なフラーレンの組成物を投与することを含む、それを必要とする生細胞において、酸化ストレスまたは酸化還元シグナル伝達を調節する方法であって、該組成物が、少なくとも1つの活性酸素種(ROS)を調節し、そして、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を模倣する、方法。
【請求項2】
組成物が、1~14%のフラーレンの混合物を含む、チャコールフラーレンスートで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物が、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素模倣物の添加をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
グルタチオンペルオキシダーゼ酵素模倣物が、エブセレン、および[2,2’-ジセレノビス-(N,N-ジメチルアミノ)メチルベンゼン]ビス(塩酸塩)塩からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
動物の生細胞において、酸化ストレス誘発性細胞死を防止するために十分な組成物が用いられる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
植物の生細胞において、酸化ストレス誘発性細胞死を防止するために十分な組成物が用いられる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの追加の抗酸化剤をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの追加のROS調節剤をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
CBDなどのカンナビジオール化合物の添加をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
組成物中のフラーレンが水溶性である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
フラーレンが機能化されている、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
フラーレンの組成物が極性であり、水に溶解している、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
フラーレンの組成物が非極性であり、少なくとも50%の多価不飽和である可食性の油に溶解している、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
e,e,e-C60フラーレン-トリス-マロン酸(C3)を製造する方法であって、以下の工程:
a)酢酸エチルを溶媒として、1,8-オクタンジオールおよびマロン酸/ジシクロヘキシルカルボジイミドを、1~100mMの濃度で用いて、トリスリンカーを調製する工程;
b)トルエン中、大環状三量体と、C60フラーレンとを、ヨウ素/1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンで、反応させる工程;および、
c)クロマトグラフィーにより、副生成物C3Vから、C3を精製する工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月15日に出願された米国特許出願US16/685,729号(非仮出願)の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
著作権の表示
本特許の開示の一部には、著作権保護の対象となるものが含まれている。著作権の所有者は、特許商標庁の特許のファイルまたは記録に記載されている特許文書または特許開示のいずれかによる複製に異議を唱えることはないが、それ以外の場合はすべての著作権を留保するものである。
発明の技術分野
本発明は、酸化ストレスまたは酸化還元シグナル伝達を調節するための組成物に関する。特に、酸化ストレスと酸化還元バランスを調節する、フラーレンの組成物、および関連する酵素模倣物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレスは、細胞の抗酸化能力が、活性酸素種(ROS)により圧倒されて、酸化還元の不均衡を引き起こしたときに発生する生物学的状態である。活性酸素種は、酸素で形成されるフリーラジカルの一種である。フリーラジカルは、1つまたは複数の不対軌道電子を含む化学種であり、そのため、不安定であり、他の分子と反応して、より低いエネルギー状態を有するより安定した化合物を形成しやすい。この安定した状態を達成するために、ROSは、細胞内のタンパク質、脂質、およびDNAと反応し得る。これは、酵素、細胞膜、およびDNAなどの細胞成分を不活性化させることによって、細胞損傷、さらには細胞死を引き起こす可能性がある。このように、ROSおよび酸化ストレスは、全体として、細胞死を引き起こしたり悪化させたりすることにより、心血管疾患や炎症性疾患、癌、および糖尿病などの疾患の発症および/または増大に関与することが示唆されている。
【0003】
ROSは、酸化的代謝の間に定期的に、そして炎症過程の間にはより強力なレベルで生成され得る。また、投与された製品に存在する可能性もある。酸化的代謝中に、電子は電子伝達系から失われ、酸素と結合して、スーパーオキシドラジカルアニオン(O2
-・)の形成をもたらす。炎症時に、NADPHオキシダーゼ複合体を含むマクロファージおよび好中球は、外来物質の破壊を助けるために、スーパーオキシドラジカルと過酸化水素を生成する。タバコの煙、紫外線、大気中の酸素への曝露などの環境要因、運動の際の過度の運動、および、アルコールや特定の食品の摂取も、ROSの過剰な生成をもたらす可能性がある。これらの要因の多くは回避または制限することができるが、ヒトのように、雑食性の食事は我々をさまざまな食品に曝露させ、その一部は腸の酸化ストレスの増加に寄与する可能性がある。胃腸粘膜におけるROSの制御されていない増加は、炎症性または虚血性の障害につながる可能性がある。酸化ストレスは、炎症性腸疾患(IBD)の開始と進行に役割を果たすと仮説として考えられている。炎症性の刺激がその細胞受容体に結合すると、特定の細胞内シグナル伝達経路の活性化が引き起こされ、炎症性メディエーターの産生がアップレギュレートされる。したがって、抗酸化ストレスメカニズムと抗酸化物質は、ROSの増殖を制限し、安定した酸化還元バランスを再確立するための鍵となる。
【0004】
細胞または生物全体の損傷、さらには死(アポトーシス)を防止するために、細胞内の酸化ストレスまたは酸化還元シグナル伝達を調節/低減することができる組成物を見出すことは有用であろう。
【0005】
バイオフラーレンの組成物は、「Multisubstituted Fullerenes and Methods for Their Preparation and Characterization」(多置換フラーレンおよびその製造および特性評価のための方法)とのタイトルで、Murphy, Wilson, Luの名において、Wilson 2000の特許第6,162,926号に詳細に報告されている。神経変性疾患へのバイオフラーレンの応用も報告されている。トランスフェクションまたは形質転換の標準的なゲノム実験におけるフラーレン添加物の使用の詳細が、広く説明されている。
【0006】
C60およびC70フラーレンの天然および人工の混合物は、どちらも存在する。炭素スート(soot)中のフラーレン濃度は、天然の100万分の1から、特別に設計された製造プロセスからのスートにおいてのはるかに高い濃度(1~14%)まで、さまざまである。この「生産されたままの」フラーレンスートは、通常、少なくとも70%のC60、および約25%のC70である。C76、C78、およびC84などの他のフラーレンも、5%未満で存在する(
図1を参照)。これらの構成物を水溶性にする方法においては、フラーレンへの基の付加がよく知られている(
図2)。バッキーボールへの極性基の付加には、例えば、ヒドロキシル基(ポリヒドロキシ-C60)、硫酸基(FC4S)(
図3を参照)、またはカルボキシル基(C3など)(
図4を参照)の付加が含まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、製剤中のC60およびC70のフラーレンの組み合わせが、酸化ストレスを低減し、酸化還元(redox)シグナル伝達を調節するという発見に関するものである。これにより、酸化的損傷による細胞傷害や細胞死が防止される。本発明の組成物の使用は、細胞の損傷を防ぐことを可能にし、したがって、本発明の組成物で処理すると、細胞または生物の寿命を延ばすことができる。
【0008】
したがって、一実施形態において、C60、または約70%以上のC60を含むC60/C70混合物のうちの1つを含む、有効なフラーレンの組成物を投与することを含む、それを必要とする生細胞において、酸化ストレスまたは酸化還元シグナル伝達を調節する方法であって、該組成物が、少なくとも1つの活性酸素種(ROS)を調節し、そして、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を模倣する方法、が提供される。
【0009】
別の実施形態において、e,e,e-C60フラーレン-トリス-マロン酸(C3)を製造する方法であって、以下の工程:
a)酢酸エチルを溶媒として、1,8-オクタンジオールおよびマロン酸/ジシクロヘキシルカルボジイミドを、1~100mMの濃度で用いて、トリスリンカーを調製する工程;
b)トルエン中、大環状三量体と、C60フラーレンとを、ヨウ素/1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンで、反応させる工程;および、
c)クロマトグラフィーにより、副生成物C3Vから、C3を精製する工程、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、C60およびC70の構造、ならびに、組成物中に含まれ得る他の主要でないフラーレンであるC76、C78、およびC84の構造を示している。
【0011】
【0012】
【
図3】
図3は、本発明の2つの典型的な水溶性C60化合物である、ポリヒドロキシC60、およびFC4Sの構造を示している。
【0013】
【0014】
【
図5】
図5Aは、
図5Bに示される水溶性の2:1複合体を形成するために使用されるγ-シクロデキストリンである。
図5Bは、2:1複合体を示す。
【0015】
【
図6】
図6は、C3大環状三量体中間体の合成のためのプロセスである。
【0016】
【
図7】
図7は、大環状三量体中間体を利用したC3の製造を示している。
【0017】
【
図8】
図8は、カンナビジオール(cannabidiol)(CBD)の構造を示している。
【0018】
【
図9】
図9Aは、グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物であるエブセレン(Ebselen)の構造を示している。
図9Bは、グルタチオンペルオキシダーゼ模倣化合物[2,2’-ジセレノビス-(N,N-ジメチルアミノ)メチルベンゼン]ビス(塩酸塩)塩を示している。
【0019】
【
図10】
図10Aは、水溶性フラーレンによる日焼け皮膚治療の治療前の結果を示している。
図10Bは、水溶性フラーレンによる日焼け皮膚治療の治療後の結果を示しており、皮膚の死および剥離の防止が示されている。
【0020】
【
図11】
図11Aは、水溶性C60誘導体FC4S(
図3)による、イボ治療の治療前の様子を示している。
図11Bは、水溶性C60誘導体FC4S(
図3)による、イボ治療の治療後の様子を示している。
【0021】
【
図12】
図12Aは、トマト植物を水溶性C60で処理した2週間後を示している。
図12Bは、トマト植物を水溶性C60で処理しなかった2週間後を示している。処理した植物は、処理しなかった植物の2倍の重量であった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、多くの異なる形態において実施形態に示され、図面に示され、本明細書で詳細に説明されるが、特定の実施形態は、そのような実施形態についての本開示が、原則の例として考えられるものと理解されるものであり、そして、示され説明された特定の実施形態に、本発明を限定することを意図するものではない。以下の説明では、同様の参照番号を使用して、図面のいくつかの図において、同一の、類似の、または対応する部分を説明している。本願の詳細な説明は、本明細書で使用される用語の意味を定義し、当業者が本発明を実施するために実施形態を具体的に説明する。
【0023】
定義
「約」および「本質的に」との用語は、±10パーセントを意味する。
【0024】
本明細書において、「a」または「an」との用語は、1つまたは1つより多いものとして定義される。本明細書において、「複数」との用語は、2つまたは2つより多いものとして定義される。本明細書において、「別の」との用語は、少なくとも2番目またはそれより後のものとして定義される。本明細書において、「含む」および/または「有する」との用語は、含むこと(すなわち、オープンな文言)と定義される。本明細書において、「結合した」との用語は、必ずしも直接ではなく、必ずしも機械的にではないが、接続されているものと定義される。
【0025】
「含む」との用語は、その構成する文言により本発明を特許請求することのみに、発明を限定することを意図するものではない。含むとの用語を使用する任意の発明は、「からなる」または「構成する」とのクレーム用語を使用して、1つまたは複数の請求項に分離することができ、そのように意図されている。
【0026】
本文書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「実施形態」、または同様の用語についての記載は、実施形態に関連して説明される、特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所でのそのような語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を意味するものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、これに限定されるものではないが、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0027】
本明細書において、「または」との用語は、包括的なものまたは任意の1つまたは任意の組み合わせを意味するものとして解釈されるべきである。したがって、「X、Y、またはZ」は、「X、Y、Z」、「X、Y」、「Y、Z」、「X、Z」などのいずれかを意味する。この定義の例外は、要素、機能、ステップ、または作用の組み合わせが、何らかの方法で本質的に相互に排他的である場合にのみ発生する。
【0028】
図面に示されている図は、本発明の特定の実施形態を簡便に説明することを目的としており、それによって限定されるものとみなされるべきではではない。動作の現在分詞に先行する「手段」との用語は、1つまたは複数の実施形態があるための所望の機能、すなわち、所望の機能を達成するための1つまたは複数の方法、デバイス、または装置であって、当業者が本明細書の開示を考慮してこれらまたはそれらの均等物から選択できる、所望の機能を示すものであるが、「手段」との用語の使用は、限定することを意図するものではない。
【0029】
本明細書において、「酸化ストレス」との用語は、活性酸素種(ROS)の生成および誘導と、生体または細胞(植物または動物)における活性酸素種の除去システムとの間の不均衡を意味し、過剰の活性酸素種をもたらすものである。この状態が悪化すると、生細胞の構成要素である核酸、タンパク質、脂質などが酸化され、細胞または生物全体に損傷を与える。内部または外部の供給源からの酸化ストレスにさらされると、細胞は、抗酸化タンパク質、またはグルタチオンペルオキシダーゼなどのフェーズII解毒酵素の発現を誘導することによって、生体の防御に向けて活動する。したがって、酸化ストレスは、細胞に損傷を与え、細胞死を引き起こしたり、生物全体を死に至らしめたりする可能性がある。
【0030】
本明細書において、「調節する」との用語は、「酸化ストレス応答」の調節を意味し、そして、活性酸素種(ROS)、酸素イオンを含む化学反応性分子(例えば、これに限定されるものではないが、スーパーオキシドアニオン(O2
-・)、ヒドロキシルアニオン(・-OΗ)、ペルオキシ亜硝酸(・OONO)、一酸化窒素(NO・)、および過酸化水素(H2O2)が挙げられる)の間の不均衡に対する、生物学的サンプル(例えば、生物中の1つ以上の細胞)における生理学的応答を意味する。酵素、抗酸化剤、およびその他の化合物を介した細胞のROSの調節は、ROSの分解を促進し、細胞を酸化還元バランスの整ったまたは恒常性のある状態に保つ。
【0031】
本明細書において、「酸化還元シグナル伝達」との用語は、細胞内酸化還元(レドックス)状態(酸化還元シグナル伝達)の変化が調節されることを意味し、DNA合成、酵素活性化、選択的遺伝子発現、細胞周期の調節、細胞増殖、および細胞死プログラムなどの事象を調節することが可能である。
【0032】
酸化ストレスおよびそれによるシグナル伝達経路は、長い間、知られているが、それらの詳細な操作上の生化学は、非常に複雑である。ハルピン(Harpin)として知られる市販の農業用製品(C. Oh, et. al. 2007. “Growth-enhancing effect of HrpN in Arabidopsis”. Plant Physiol. 145: 426 (2007))は、植物の酸化還元恒常性(レドックス・ホメオスタシス)を制御する遺伝子を発現させる。動物における同様の機能に関する知見は遅れている。最近、動物の酸化還元恒常性(レドックス・ホメオスタシス)に関するいくつかのデータが明らかになった(C. Lipina, et. al., “Modulation of cellular redox homeostasis by the endocannabinoid system,” Open Biology 150276 (2016))。エンドカンナビノイド(endocannabinoid)ROSシグナル伝達システムは、カンナビジオール(
図8、CBDとして知られる)化合物、およびその受容体を用い、正常な細胞において重要な機能を有する調節タンパク質と酵素の産生を制御する。CBDによって誘発されるROSの生成とスカベンジングの制御のメカニズム、システムのクロストーク、および異常と病状の伝播への影響に関する証拠は、明らかになり始めたばかりである。明らかに、本発明のフラーレンの製剤は、この枠組みの中で機能し、追加の有益な効果を提供する。
【0033】
本明細書において、「生細胞」との用語は、代謝活性を有する細胞を意味し、細胞が生体内にある再生可能な細胞が含まれる。細胞の死は、しばしばアポトーシスと称される。
【0034】
本明細書において、「C60/C70混合物」との用語は、C60およびC70のフラーレンの混合物であって、混合物中に少なくとも約70%のC60フラーレンが存在し、その残りの一部がC70である、フラーレンの混合物を意味する。また、一実施形態において、C76、C78、およびC84を含む他の形態のフラーレンが含まれる。フラーレンは、炭素が燃焼されたときに形成される、球形(ball-shaped)の基礎的な炭素の形態である。混合物は、天然に存在する場合もあれば、個々の成分のフラーレンから混合される場合もある。それらは機能化することもできる。ほとんどの生物学的用途(体液または血液の循環、細胞への侵入、および組織における分布)では、通常、水溶性の構成のものが望まれる。水溶性または非水溶性のどちらにもなる改変されたフラーレンは、よく知られている。分子を極性にすると水溶性になり、非極性にすると有機溶媒溶解性または油溶性になる。構成物は、所望により、置換または非置換にすることができ、極性または非極性にすることができることは注目すべきである。この組み合わせの重要な活性は、ROSスカベンジング抗酸化である。これは、その活性が、望ましくない酸化剤をクエンチすることによって触媒サイクルを実施し、次いで、グルタチオンなどの補因子によって還元されて元の状態に戻るという点で、酵素のようなものであることを意味する。このリサイクル効果により、本発明のフラーレンは、ビタミンCなどの他の抗酸化剤よりも1グラムあたりの活性がはるかに高くなる(最大250倍)。
【0035】
本明細書において、「活性酸素種」(ROS)との用語は、生細胞中の酸化剤である構成物を意味し、これに限定されるものではないが、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオン(O2
-・)、一重項酸素、一酸化窒素、ペルオキシラジカル、およびペルオキシ亜硝酸ラジカルアニオンが挙げられる。
【0036】
本明細書において、「スーパーオキシドジスムターゼ」(SOD)との用語は、O2
-・で示される式を有するスーパーオキシドアニオンを除去(スカベンジ)する酵素を意味する。正常な細胞においては、SODの発現が低下または排除されると、細胞は死に至るようになる。そのようなSODの低い条件下で、本発明のフラーレンは、SODを模倣し、欠落した天然に存在するSODと置き換わることによって、細胞が死ぬのを防止する。
【0037】
本明細書において、「グルタチオンペルオキシダーゼ酵素模倣物」との用語は、グルタチオンペルオキシダーゼとほぼ同じ活性プロファイルを有する構成のものを意味する。一実施形態において、模倣物は、エブセレン(Ebselen)である(
図9Aを参照)。他のグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物としては、例えば、[2,2’-ジセレノビス-(N,N-ジメチルアミノ)メチルベンゼン]ビス-(塩酸塩)塩が挙げられる(
図9Bを参照)。化合物は両方とも、Spector, Wilson, Zucker, US Patent 5,321,138 (1994) “Compounds Having Glutathione Peroxdase Activity and Use”の主題となっている。
【0038】
本明細書において、「酸化ストレス誘発性細胞死の調節」との用語は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を意味する。薬理学的有効性とは、患者に望ましい生物学的効果をもたらす治療の能力を意味する。生理学的安全性とは、治療の実施に起因する、毒性のレベル、または細胞、臓器、および/または生物レベルでの他の有害な生理学的影響(しばしば副作用と称される)、を意味する。一方、「有効でない」との用語は、少なくとも階層化されていない集団において、有害な作用がない場合であったとしても、処置によって、治療的に有用であるのに十分な薬理学的効果が提供されないことを示す。(しかしながら、発現プロファイルの1つまたは複数によって識別できるサブグループでは効果がない場合であっても、一般の集団での効果に基づいて、治療が有効であるとみなされることもあり得る)。「効果が低い」とは、処置が、治療的な有意性が低レベルの薬理学的有効性、および/または治療的に高レベルの有害な生理学的作用、例えば、より大きな肝毒性、をもたらすことを意味する。
【0039】
本開示の重要な観察は、本発明のフラーレン化合物が、SODと同様の方法で、ROSの調節によって酸化還元(レドックス)バランスまたは恒常性(ホメオスタシス)を維持することである。フラーレン化合物は、超抗酸化剤であるが、ROSの調節にフラーレンを使用することは、ビタミンCやEなどの抗酸化剤を大量に使用することとはまったく異なる。ビタミンCとEは、抗酸化剤(antioxidant)と酸化促進剤(prooxidant)の両方として機能する。最近、まとめられた研究であるA. Gorlach, et.al., “Reactive oxygen species, nutrition, hypoxia, and diseases: Problems solved?” Redox Biology, 6, 372-385 (2015)は、REDOXバランスの誤解とそこで報告された細胞シグナル伝達調節法を示した治療を強調している。
【0040】
酸化によって誘発される細胞損傷は、疾患状態および一般的な健康の両方において望ましくない。動物において、疾患状態および一般的な健康状態の例としては、これに限定されるものではないが、酸化ストレス誘発性の、筋肉疲労、筋肉の緊張、細胞の損傷またはダメージ、黄斑変性、白内障、日焼け、毛の問題(白髪、脱毛症)、炎症、乾癬、かゆみ、生殖能力の問題(精子および卵子の生命)、創傷治癒、虚血症、敗血症、再灌流傷害、不安、加齢などが挙げられる。ヒトの疾患の影響には、アルツハイマー病、ALS、パーキンソン病、および糖尿病も挙げられる。植物においては、酸化ストレスの影響を受ける状態としては、一般的な成長率と植物の健康、葉や針の落下の防止、凍結による損傷、昆虫による損傷、物理的傷害(芝草で発生するようなもの)、および収穫後の腐敗などが挙げられる。酸化ストレスを制御することで、生産性を向上し、また、収穫後の作物の腐敗を軽減するとともに、エッセンシャルオイルやカンナビス(cannabis)からのCBDなどの植物成分などの価値のある生成物を得られる。
【0041】
それらの酵素模倣、超抗酸化、およびフリーラジカル捕捉(スカベンジング)特性のために、いくつかのフラーレンC60製剤は、植物の健康および成長を改善する。そのような製剤の1つは、フラーレンを製造するために炭素の燃焼によって生成される炭(charcoal)であるフラーレンスートを用いる。このフラーレンスートは、植物と動物の両方に有益な特性を有している。
【0042】
炭(チャコール)自体がヒトの健康に有益であることはよく知られている。現在、炭は、さらなる医療用途のために研究されており、広く利用可能な健康補助剤である。炭は、植物の健康を改善するためにも使用されている。土壌添加剤として使用されるチャコールフラーレンスートは、毒素を吸収し、炭素とミネラルの組成を改善し、土壌の栄養分を強化することを我々は発見し、これらはすべて、肥沃性と生産性を改善し、ほとんどの作物について収量の増加と植物の健康の改善をもたらす。
【0043】
組成物または薬物の投与に関連して、疾患または病気に対して「有効」である薬物は、臨床的に適切な方法での投与が、少なくとも統計的に有意な割合の患者に対して有益な効果をもたらすことを示しており、それには、例えば、症状の改善、治癒、病気の兆候や症状の軽減、寿命の延長、生活の質の改善、または特定の種類の疾患や病気の治療に精通している医療専門家によって一般的に陽性と認識されるその他の効果、が挙げられる。
【0044】
本明細書において、非置換の形態の「フラーレン」との用語は、中空の球(sphere)または回転楕円体(spheroid)の形態の、炭素から完全に構成される化合物を意味する。各炭素原子は、1つの二重結合と2つの単結合によって、他の炭素原子に結合している。球状フラーレンは、一般に、五角形の面と六角形の面の混合物を有し、これに限定されるものではないが、例えば、C60、C70、C76、C78、C84の、多少の球状のフラーレンが挙げられる。フラーレンは、特に溶解性を制御するために、置換または非置換にすることができる。それらは、置換されたときにその抗酸化能力を保持し、それらは本開示に含まれる。管状フラーレンも存在し、カーボンナノチューブと称される。それらは本開示に含まれない。
【0045】
本明細書において、「C3」との用語は、e,e,e-C60フラーレン-トリス-マロン酸を意味する(
図4を参照)。この構成物を製造するための新しいプロセスが開示される。本明細書において、C3Vとの用語は、C3の製造における主要成分でない異性体副生成物を意味する。
【0046】
本明細書において、「抗酸化剤」との用語は、他の分子の酸化を遅らせるかまたは防ぐことができる分子を意味する。酸化は、酸化剤から別の物質に電子を移動させる化学反応である。そのような反応は、スーパーオキシドアニオンまたはペルオキシドによって促進および/または生成され得る。酸化反応は、フリーラジカルを生成する可能性があり、細胞に損傷を与える可能性のある連鎖反応を開始させる。酸化防止剤は、フリーラジカル中間体を除去することによってこれらの連鎖反応を終わらせ、それ自体が酸化されることによって他の酸化反応を抑制する。その結果、これらの「酸化された抗酸化剤」は、通常、それらを還元して元の状態に戻すために、チオール、アスコルビン酸、またはポリフェノールなどの還元剤を必要とする。抗酸化剤としては、これに限定されるものではないが、α-トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ポルフィリン、α-リポ酸、およびn-アセチルシステインが挙げられる。
【0047】
本明細書において、「有効量」との用語は、意図する薬理学的、治療的、または予防的な結果を生み出すための、薬剤の量を意味する。薬理学的に有効な量は、疾患または病気の1つまたは複数の徴候または症状の改善をもたらすか、または、疾患または病気の進行の停止や退行を引き起こす。例えば、治療有効量とは、細胞の寿命を延ばしたり、酸化剤による細胞の損傷を軽減したりする、治療剤の量を意味する。有効量は、意図する効果をもたらすのに十分な、単回または複数回の1日用量(またはより少ない頻度)で与えることができる。
【0048】
本明細書において、「極性」との用語は、水溶性である構成物を意味する。そのような化合物およびそれらを製造する方法はよく知られている。一実施形態において、シクロデキストリン(
図5Aを参照)を使用して、C60(
図5B)との複合体を作成し、それにより、複合体を水溶性にする。
【0049】
本明細書において、「非極性」とは、水に溶解しないフラーレンを意味する。細胞やあらゆる生物(動物や植物)で使用するために、フラーレンを油に溶解させることもできる。C60のみを含む市販の製品は、通常、オリーブオイルに溶解される。多価不飽和脂肪酸の量は、可溶化を最適化する上で重要であることが発見された。一実施形態において、可食性の油(食用油)は、本発明のフラーレンを溶解するために選択される。その油は、少なくとも50%の多価不飽和脂肪酸を含んでいる。トウモロコシ、綿実(cottonseed)、亜麻仁(flaxseed)、麻の実(hempseed)、大豆などの油はすべてこの基準を満たしている。一実施形態において、油は、麻(hemp)の油(ヘンプオイル)である。組成物は、投与のために、適切な賦形剤の添加剤など、および可食性の油により、製剤化される。
【0050】
C3の製造のための新規な化学プロセスは、元のプロセスを採用し、そして、化学、反応条件、材料、および溶媒を、実施可能でスケーラブルな製造プロセスに、変更および最適化したものである。重要な工程(および旧プロセスにおいて最も不良な工程)は、大環状リンカーの製造である。主要な基本的な改善は、(1)マロン酸ジクロリドからマロン酸への変更、(2)塩化メチレンから酢酸エチルへの溶媒の変更、および(3)初期反応条件の5倍(5×)以上の濃縮(溶媒および処理コストの潜在的な節約をもたらす)、である。本発明の最終化合物は、C3と称される化合物であり(
図4を参照)、これは、非常に耐性の高い水溶性フラーレンである。
【実施例】
【0051】
実施例1.C3の製造
メカニカルスターラー、N2フローアダプター、およびガラス栓を備えた5Lの3つ口R.B.フラスコに、1,8-オクタンジオール(14.6g、0.10mol)、マロン酸(10.4g、0.10mol)、およびEtOAc(3L)を入れた。すべての固体が溶解するまで、混合物を、室温で0.5時間、撹拌した。この溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、41.3g、0.20mol)、およびジメチルアミノピリジン(DMAP、3.67g、0.03mol)を加え、得られた白色の懸濁液を、室温で24時間、撹拌した。反応混合物を、減圧下で約半分の体積に濃縮し、次いで、濾過した。フィルターケーキを、酢酸エチル(2×300ml)で洗浄した。濾液を減圧下で少量に濃縮した。残渣を、1:1のトルエン:ヘキサン(約65ml)でスラリー化し、得られた固体(ほとんど純粋な二量体)を濾別し、濾液を濃縮した。残渣を、ヘキサン(0.5L)で開始し、次いで、10%EtOAc/ヘキサン(1L)、次いで、20%EtOAc/ヘキサン(2.0L)とするグラジエント溶出を用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィー(150g、5.5×15cm)によって精製した。生成物は、20%EtOAc/ヘキサンで溶出された。収量1.44g(6.7%)であった。
C60と大環状三量体(シクロ-[3]-オクチルマロネート)との反応:e,e,e-(C3-前駆体)、および、trans-4,trans-4,trans-4-(C3V-前駆体)三付加物の合成
ガス挿入口、250ml滴下漏斗、およびマグネチックスターラーを備えた乾燥3つ口フラスコにおいて、255mg(0.354mmol/1.0当量)のC60を、アルゴン下、400mlの乾燥トルエンに溶解した。続いて、205mg(0.319mmol/0.9当量)の大環状体、および、243mg(0.956mmol/2.7当量)のヨウ素を、溶液に加えた。次いで、404mg(397μl/2.65mmol/7.5当量)のDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)を入れた160mlの乾燥トルエンの溶液を、3時間かけて滴下して加えた。溶液の色は、濃いオレンジ色に変わった。室温で約10分間さらに撹拌した後、粗混合物を、シリカゲル(6×25cm)によるフラッシュクロマトグラフィーにかけた。微量のC60およびその他の不純物を、トルエンで溶出し、次いで、溶出液を、トルエン/酢酸エチル,98:2に変更し、トリスアダクトC3前駆体およびC3V前駆体を、一緒に明るいオレンジ色のバンドとして溶出した。C3-前駆体およびC3V-前駆体は、Nucleosil(トルエン/酢酸エチル,98:2)による分取HPLCによって、分離された。生成物画分をエバポレートし、CH2Cl2/ペンタンで沈殿させ、ペンタンで3回洗浄し、高真空中、60℃で乾燥した。
【0052】
実施例2.ヘア用スプレー
ポリヒドロキシ-C60またはFC4S(
図3)などの水溶性フラーレン化合物の製剤0.6mg/mLを用い、化合物を毛髪および露出した頭皮にスプレーすることによって、毛を若返らせることができる。適切な食事と栄養を取っている健康な個人において、毛髪は、数ヶ月の毎日の処置の間に、著しく改善される。毛の質感が向上し、より扱いやすくなり、また、より光沢が現れる。毛が最近になって細くなり灰色になり始めた個人において、新しい毛の成長を発生させることができる。多くの場合、新しい毛の成長は、元の毛の色である。化合物を継続して使用すると、既存の白髪も元の毛髪の色に戻る可能性があり、また、毛の状態と外観は改善され続ける。時間が経つにつれて、毛は目に見えて太くなり、徐々に髪の毛は、元の密度、色、状態、光沢に近づく。
【0053】
実施例3.ヘンプオイルスキンクリーム
C60を含むヘンプオイルの製剤(~1g/リットル)は、皮膚のただれ、擦り傷、切り傷、さらには染みに対する治療のためのスキンクリームとして、使用することができる。一例として、日焼け後の皮膚ダメージ(ピーリング)を防ぐために、C60スキントリートメントが使用される。
図10Aおよび
図10Bに、前後の結果を示す。別の例として、イボの除去に、水溶性または油溶性のC60が使用される。1日1~2回、数ヶ月間局所塗布した後、何年にもわたって成長していた大きなイボは後退し始め、徐々に消えていく。使用した別の製剤は、水溶性C60を含むアロエベラ(Aloe Vera)であった。
図11は、大きなイボの3ヶ月の治療前(A)と治療後(B)を示している。
【0054】
実施例4.ヒトの健康サプリメント
水溶性C60化合物であるポリヒドロキシ-C60またはFC4S(
図3)の製剤は、健康を改善するためのヒト用の健康サプリメント(補助食品)として使用することができる。超抗酸化物質(ビタミンCの約250倍強力)として、フラーレン・レドックス・バランス作用は、フリーラジカルを除去し、生死のシグナル伝達を安定させ、さまざまな健康上の利益をもたらす。典型的な配合は、水1ガロンあたり0.6~1グラムで、1日量は、20~100mLである。ヘンプオイルにC60を配合したものも使用できるが、通常、高用量(1リットルあたり~1グラム)である。さらに、他の抗酸化酵素の模倣物である、エブセレン(
図9A)、または[2,2’-ジセレノビス-(N,N-ジメチルアミノ)メチルベンゼン]ビス(塩酸塩)塩(
図9B)を、C60用量の~1/5で、加えることができる。エブセレンは、皮膚の局所塗布について、以前、特許が取得されている(Natterman、EU(欧州)特許番号:87106773.2号、1987年8月5日)。本発明の製剤に、他の抗酸化剤および/またはビタミンを添加することも適切である。さらなる健康サプリメントの製剤において、炭(チャコール)の健康サプリメントの利点と、超抗酸化レドックスバランスの利点を組み合わせて、チャコールフラーレンスートが使用される。チャコールフラーレンスートの典型的な製剤は、炭に約2%のフラーレンを加えたものであり得る。さらに、通常1~14%のフラーレンを含む炭(チャコール)である、フラーレン製造から生成された典型的なフラーレンスートを使用することができる。
【0055】
多くの健康上の利益は、これらのレジメン(治療計画)のすべてからもたらされ、その製剤は、また、より深刻な病気、例えば、パーキンソン病、ALS、またはアルツハイマー病、にも使用することができる。
【0056】
実施例5.フラーレン-CDB健康サプリメント
C60/C70天然混合フラーレンまたは他のフラーレンの製剤は、油中または水中で、カンナビジオール(
図8、CBD)と組み合わせて使用することができる。経口摂取すると、サプリメントは痛みを和らげ、全体的な健康を増進し、多くの状態を改善することができる。フラーレンとCBDの組み合わせは、レドックスバランス効果において相乗的に作用するため、CBD単独よりも、健康と医学的状態の改善に効果的である。
【0057】
実施例6.植物増強剤(エンハンサー)
水溶性C60化合物であるポリヒドロキシ-C60(
図3)の製剤は、発芽を促進するための種子の前処理のために、または植物を処理して成長を促進するために、使用することができる。成長用の培地に入れる前に1時間種子を浸すと、発芽が大幅に促進される。また、最初の植え付け前にクローンを処理すると、成長率が最大2倍に増加する。
図12Aおよび
図12Bに、結果を示す。同様の全体的な植物成長の強化は、水溶性フラーレンを、約2~5g/エーカーで、畑にある作物に葉面散布することによって、さらに達成することができる。また、収穫後、事前に処理した作物は、外観上、より長く新鮮な状態を維持していることも分かった。
【0058】
実施例7.土壌および植物の強化のためのフラーレンスート
植物にとって、フラーレンスートは、土壌組成における炭素スス(carbon soot)と、フラーレン超抗酸化活性との効果の組み合わせを利用する土壌添加剤であり、より速く成長し、より強い植物をもたらす。新しい発見は、フラーレンスート(フラーレンの製造プロセスにおいて炭素の燃焼によって生成される炭)に存在するフラーレンについて、有用な植物増強効果があるということである。炭自体は農業で広く使用されており、土壌の肥沃性と生産性に有益な効果があることが知られているが、「チャコールフラーレンスート」は、土壌養分としての炭の多大な利点と、フラーレンによる超抗酸化の植物の健康作用とが組み合わされて、ほとんどの作物の収量を増加させることが明らかになった。典型的な製剤の1つは、1~14%のフラーレンと、残部の典型的なアモルファスカーボンを含むフラーレンスートチャコールである。土壌強化処理には、土壌の上部数インチを~5%の炭(チャコール)に改変することが含まれる。この改変された層は、毒素を吸収し、利用可能な炭素養分含有量を改善し、スートとフラーレンの両方が、成長中の植物に、レドックスバランス効果をもたらす。
【0059】
図面
ここで図面を参照すると、
図1は、本発明のフラーレンの構造を示している。左から右に、C60、C70、C76、C78、およびC84が示されている。非置換で示されているが、これらの構成物は、置換されてよく、極性または非極性のいずれかにすることができる。一実施形態において、C60およびC70は、組成物中のすべてのフラーレンの95%を構成する。
【0060】
図2は、3つの置換を有するフラーレンの例である。より多くのまたはより少ない追加を利用することができるのは、明らかである。
【0061】
図3は、本発明の2つの水溶性置換C60の構成物(ポリヒドロキシル-C60、およびFC4S)の構造を示している。
【0062】
図4は、C3と命名された特定のC60の構成物を示している。
【0063】
図5Aは、
図5Bに示される水溶性2対1(二成分)複合体を形成するために使用されるγ-シクロデキストリン(市販のカプチゾール(Captisol)(登録商標))を示している。
図5Bは、複合体を示している。
【0064】
図6は、C3の合成に使用されるC3大環状三量体中間体を製造するプロセスである。
【0065】
図7は、C3大環状三量体中間体を利用したC3の製造を示している。
【0066】
図8は、カンナビジオール(CBD)の構造を示している。
【0067】
図9Aは、グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物であるエブセレン(Ebselen)の構造を示している。
図9Bは、グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物である[2,2’-ジセレノビス]-(N,N-ジメチルアミノ)メチルベンゼン]ビス(塩酸塩)塩を示している。
【0068】
図10Aは、水溶性フラーレンによる日焼け皮膚治療の治療前の結果を示している。
図10Bは、水溶性フラーレンによる日焼け皮膚治療の治療後の結果を示しており、皮膚の死および剥離の防止が示されている。
【0069】
図11Aは、治療前の大きなイボを示している。
図11Bは、イボを水溶性C60誘導体(
図3を参照)で治療した後の、イボのサイズの縮小を示している。
【0070】
図12Aは、トマト植物を水溶性C60で処理した2週間後を示している。
図12Bは、トマト植物を水溶性C60で処理しなかった2週間後を示している。処理した植物は、処理しなかった植物の2倍の重量であった。
【0071】
本発明に関係する当技術分野の当業者は、特に上述の教示を考慮することにより、その精神または特徴から逸脱することがない限り、本発明の原理を使用する他の実施形態を生じさせる変更を行うことができる。したがって、記載された実施形態は、すべての点で例示としてのみ考慮されるべきであり、限定的なものではなく、したがって、本発明の範囲は、上述の説明または図面によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示されるものである。結果として、本発明は特定の実施形態を参照して説明されているが、当業者に明らかな構造、配列、材料などの他の変更は、依然として、出願人によって請求される本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】