(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ヒドロゲルと蜂蜜との組み合わせを含む創傷被覆材、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61L 15/40 20060101AFI20230111BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20230111BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20230111BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61L15/40 100
A61L15/44 100
A61L15/28 100
A61L15/26 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528587
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 IL2020051200
(87)【国際公開番号】W WO2021100045
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522192517
【氏名又は名称】シオン バイオテキスト メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レブ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホーレンベルグ、ユリア
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA12
4C081CA28
4C081CB03
4C081CC09
4C081CD08
4C081CD31
4C081DA12
(57)【要約】
本開示は、架橋ヒドロゲル足場を含み、抗菌活性蜂蜜が埋め込まれた創傷被覆材組成物であって、該活性が、該創傷被覆材による過酸化水素生成速度の検出によって決定され、該創傷被覆材が、少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤をさらに含み、該光開始剤及び/又はUV架橋剤の総量が、創傷被覆材の総重量の0.2%w/w以下である、創傷被覆材を提供する。創傷被覆材を調製する方法及び創傷に関して創傷被覆材を使用する方法も本明細書に開示され、調製する方法は、ヒドロゲル形成モノマー(複数可)、蜂蜜、及び少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤を含むヒドロゲル形成混合物を混合して均質な混合物を形成することと、該均質な混合物が固化するまで、均質な混合物をUV照射に供することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ヒドロゲル足場を含み、抗菌活性蜂蜜が埋め込まれた創傷被覆材組成物であって、前記活性が、前記創傷被覆材による過酸化水素生成速度の検出によって決定され、前記創傷被覆材が、少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤をさらに含み、前記光開始剤及び/又はUV架橋剤の総量が、前記創傷被覆材の総重量の0.2%w/w以下である、創傷被覆材組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの光開始剤を含み、前記光開始剤が、前記創傷被覆材の総重量の0.2%w/w以下の量である、請求項1に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光開始剤と少なくとも1つのUV架橋剤の両方を含み、前記少なくとも1つの光開始剤の量が最大約0.1%w/wである、請求項1又は2に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項4】
前記架橋ヒドロゲル足場の検出可能な量の非架橋モノマー単位が存在しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項5】
12rpmでTバースピンドルを使用する粘度計によって決定される33,000を超える粘度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項6】
12rpmでTバースピンドルを使用する粘度計によって決定される333,000を超える粘度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項7】
前記架橋ヒドロゲルが、スルホナート含有モノマー単位で構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項8】
前記スルホナート含有モノマー単位が、AMPSを含むか、又はAMPSである、請求項7に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項9】
前記架橋ヒドロゲルがヒアルロン酸(HA)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項10】
前記蜂蜜を、前記創傷被覆材の総重量の少なくとも5%w/wの量で含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項11】
前記蜂蜜を、前記創傷被覆材の総重量の少なくとも5%w/w及び50%w/wの量で含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項12】
前記蜂蜜が、最大0.2%w/wの金属イオン含有量を有する淡色蜂蜜である、請求項1~11のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項13】
前記過酸化水素生成速度が、製造業者の指示に従った過酸化水素ストリップ試験の使用によって決定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項14】
支持マトリックス内又は支持マトリックス上に埋め込まれている、請求項1~12のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項15】
前記支持マトリックスが、医学的に許容可能なポリマー積層体(例えばポリウレタン)又は布地(織布又は不織布)である、請求項13に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項16】
前記被覆材の重量から少なくとも700重量%の生理食塩水又は水を保持する能力を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項17】
架橋ヒドロゲル足場を含み、抗菌活性蜂蜜が埋め込まれた創傷被覆材組成物を製造する方法であって、
ヒドロゲル形成モノマー(複数可)、蜂蜜、及び少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤を含むヒドロゲル形成混合物を混合して均質な混合物を形成すること、及び
前記均質な混合物が固化するまで、前記均質な混合物をUV照射に供すること
を含む、方法。
【請求項18】
前記ヒドロゲル形成混合物が、前記創傷被覆材組成物の総重量の0.2%w/w以下である量の前記光開始剤及び/又はUV架橋剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドロゲル形成混合物が少なくとも一つの光開始剤を含み、前記光開始剤が前記創傷被覆材の総重量の0.2%w/w以下の量である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒドロゲル形成混合物が、前記少なくとも一つの光開始剤と少なくとも一つのUV架橋剤の両方を含み、前記少なくとも一つの光開始剤の量が最大約0.1%w/wである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記UV架橋剤がスルホナート含有モノマー単位を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スルホナート含有モノマー単位が、AMPSを含むか、又はAMPSである、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロゲル形成混合物がヒアルロン酸(HA)を含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記蜂蜜が、前記創傷被覆材の総重量の少なくとも5%w/wの量である、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記蜂蜜が、前記創傷被覆材の総重量の5%~50%w/wの量である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記蜂蜜が、最大0.2%w/wの金属イオン含有量を有する淡色蜂蜜である、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記均質な混合物を前記UV照射の前に支持マトリックスと接触させることを含む、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
創傷の処置に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の創傷被覆材組成物。
【請求項29】
創傷を処置する方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の創傷被覆材を前記創傷上に配置することを含む、方法。
【請求項30】
創傷感染を予防する方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の創傷被覆材を創傷上に配置することを含む、方法。
【請求項31】
前記創傷被覆材を上に配置する前に、前記創傷が感染を発症する素因があると同定される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~15のいずれか一項に記載の創傷被覆材と、創傷感染の予防又は処置における前記創傷被覆材の使用説明書とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、創傷被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の主題の背景として関連すると考えられる参考文献を以下に列挙する。
-Ahmad Oryan et al「Biological properties and therapeutic activities of honey in wound healing:A narrative review and meta-analysis」Journal of Tissue Viability(2016)25(2),98-118
-Abu-Jdayil A,Al-Majeed Ghzawi A,Al-Malah KIM,Zaitoun S「Heat effect on rheology of light-and dark-colored honey」Journal of Food Engineering(2000)51(1),33-38
-F C Biluca,F D Betta,G Pirassol de Oliveira,L M Pereira,L Valdemiro Gonzaga,A C Oliveira Costa,F Fett「5-HMF and carbohydrates content in stingless bee honey by CE before and after thermal treatment」Food Chemistry(2014)159,244-249
-Dag A,Afik O Yeselson Y,Schaffer A,Shafir S「Physical,chemical and palynological characterization of avocado(Persea americana Mill.)honey in Israel」International Journal of Food Science and Technology(2005)40,1-8
-Petrov,V「Mineral constituents of some Australian honeys as determined by atomic absorption spectrophotometry」.Journal of Apicultural Research(1970)9,95-101.
-Priscila Missio da Silva et al.「Honey:Chemical composition,stability and authenticity」Food Chemistry(2016)196,309-323
-Neil Burton et al.「Free radical production and quenching in honeys with wound healing potential」Journal of Antimicrobial Chemotherapy(2006)58,773-777
-中国特許出願公開第108144109号明細書
-Kanarat Nalampang et al「Design and Preparation of AMPS-Based Hydrogels for Biomedical Use as Wound Dressings」Chiang Mai J.Sci.(2007)34(2),183-189
-A Golon,N Kuhnert「Characterization of「caramel-type」thermal decomposition products of selected monosaccharides including fructose,mannose,galactose,arabinose and ribose by advanced electrospray ionization mass spectrometry methods」.Food Funct.(2013)4(7),1040-50.
-I Simkovic,I Surina,M Vrican「Primary reactions of sucrose thermal degradation」J.Anal.Appl.Pyrolysis(2003)70,493-504
-El Sohaimy SA,Masry SHD,Shehataa MG「Physicochemical characteristics of honey from different origins」Annals of Agricultural Sciences(2015)60(2),279-287
-S.Durmaza and O.Okay「Acrylamide/2-acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid sodium salt-based hydrogels:synthesis and characterization」Polymer(2000)41,3693-3704
-Oroian M,Amariei S,Leahu A,Gutt G「Multi-Element Composition of Honey as a Suitable Tool for Its Authenticity Analysis」Pol.J.Food Nutr.Sci.,(2015)65(2),93-100
-White Jr.JW「Honey」Advances in Food Research(1978)24,287-374
-国際特許出願公開番号WO2015/059501
-Al Waili NS et al.「Honey for Wound Healing,Ulcers,and Burns;Data Supporting Its Use in Clinical Practice」The Scientific World JOURNAL(2011)11,766-787
【0003】
本明細書における上記の参考文献の承認は、これらが本開示の主題の特許性に何らかの意味で関連することを意味すると推測されるべきではない。
【0004】
背景
蜂蜜は、抗菌、抗炎症及び抗酸化活性を有し、デブリードマン作用に寄与し、創傷再生を刺激し、創傷治癒過程を促進すると説明されている。この活性は、創傷滲出液と蜂蜜固有のグルコースオキシダーゼとの相互作用による過酸化水素の徐放、高重量オスモル濃度、酸性度、フェノールの高含有量、リンパ球及び抗体産生などによって説明することができる[Oryan et al.2016]。
【0005】
蜂蜜の生物学的活性を保存するために、蜂蜜は可能な限り低温で保存、処理、及び処理されるべきである。蜂蜜の種類及び起源の関数として、蜂蜜の温度安定性は変化し得る。40℃を超える温度では、ほとんどの種類の蜂蜜の生物学的活性が影響を受ける。これらの温度では、毒性5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などの望ましくない生成物の形成が起こる[例えば、Biluca et al,2014]。これらの要素は、糖の還元末端上のカルボン酸基と、蜂蜜中に存在するアミノ酸及びタンパク質の遊離アミノ基との反応(メイラード反応)に起因して生じる。[da Silva et al.,2016]。
【0006】
創傷、潰瘍及び熱傷の処置などの臨床診療におけるその使用を支持するデータも入手可能である[Al Waili et al.2011]。
【0007】
過酸化水素を生成するグルコースオキシダーゼは、55℃までの温度で安定なままであるが、55~70℃で分解する。他の活性特性は、既に37℃で影響を受ける可能性がある[Oryan et al.,2016]。
【0008】
蜂蜜含浸創傷被覆材は、いくつかの蜂蜜のフリーラジカル産生に重点を置いて記載された[Burton et al.,2006]。
【0009】
中国特許第108144109号明細書は、相互貫入ネットワーク架橋構造を有する蜂蜜含有ヒドロゲル被覆材を記載している。相互貫入ネットワーク架橋構造を有するヒドロゲル被覆材は、強度が高く、水を吸収した後に容易に崩壊しないと記載されている。ヒドロゲルは、効率的な瞬時吸収速度及び持続可能な吸収能力を有するとさらに説明され、より多くの染み出しを有する創傷に使用することができる。この公報によれば、蜂蜜内部の金属イオンがヒドロゲルの架橋に関与し、蜂蜜を希釈分離することは困難である。架橋反応は、40℃~60℃の高温(蜂蜜中の酵素が破壊される温度)で起こる。蜂蜜含有ヒドロゲル被覆材は、耐酸化性(これは蜂蜜の高温処理によるものである)及び静菌活性を示し、創傷に対して湿った治癒環境を提供し、ヒドロゲル被覆材は、医療用品を調製するために使用することができ、良好な市場予測を有することが記載されている。
【0010】
シートヒドロゲル技術は、プロセスの完全な制御下で、流体吸収、湿潤治癒環境維持及び他の特性を有する高度な創傷ケアのための製品を開発及び製造することを可能にする[Nalampang.,et al.2007]。UV下での架橋(フリーラジカル重合)は、ヒドロゲルの低温処理製造を提供し、それにより蜂蜜をヒドロゲルに導入させる。しかしながら、この処理は、化学的光開始剤及び架橋剤の使用を必要とし、ヒドロゲル生体適合性を悪化させる可能性がある。
【0011】
ヒドロゲルの不連続層が上に配置されたバッキング層を含む創傷被覆材は、国際公開第2015/059501号に記載されており、ヒドロゲルの不連続層はヒドロゲルの不連続な島の形態である。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、ヒドロゲルの製造の低温処理に蜂蜜を組み込むことにより、ヒドロゲル内の蜂蜜の酵素活性を維持しながら、化学的光開始剤及び架橋剤の量又は必要性を有意に減少させることができ、それによって改善された生体適合性を有する創傷被覆材を提供するという知見に基づいている。実際、架橋前の蜂蜜の存在は、大量の架橋剤及び重合開始剤(例えば、UV光開始剤)を使用する必要性を克服し、それによってより安全な創傷被覆材を提供することを可能にした。
【0013】
したがって、本開示は、以下でさらに説明するように、生物学的に活性な蜂蜜(例えば、創傷治癒特性を有すると認識される蜂蜜)を含有し、改善された生体適合性及び改善された一次創傷ケアを有する創傷被覆材組成物を提供することを目的とする。
【0014】
具体的には、架橋ヒドロゲル足場を含み、抗菌活性蜂蜜が埋め込まれた創傷被覆材組成物が本明細書に開示され、該活性は、該創傷被覆材による過酸化水素生成速度の検出によって決定され、創傷被覆材組成物は、少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤を含み、該光開始剤及び/又はUV架橋剤の総量は、創傷被覆材の総重量の0.2%w/w以下である。
【0015】
また、架橋ヒドロゲル足場を含み、抗菌活性蜂蜜が埋め込まれた創傷被覆材組成物を製造する方法であって、ヒドロゲル形成モノマー(複数可)、蜂蜜、及び少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤を含む混合物を混合して均質な混合物を形成することと、均質な混合物が固化するまで、均質な混合物をUV照射に供することとを含む方法も本明細書中に開示される。1つの好ましい場合において、ヒドロゲル形成混合物は、創傷被覆材組成物の総重量の0.2%w/w以下である量の前記光開始剤及び/又はUV架橋剤を含む。
【0016】
さらに、創傷、例えば感染創傷を処置する方法が本明細書に開示され、この方法は、本明細書に開示される創傷被覆材組成物を創傷上に配置することを含む。
【0017】
本明細書に開示されるさらなる方法は、創傷感染の予防に関し、この方法は、本明細書に開示される創傷被覆材組成物を、例えば術後に感染を発症する素因がある創傷上に配置することを含む。
【0018】
本開示はまた、本明細書に開示される創傷被覆材組成物と、創傷被覆材におけるその使用説明書とを含むキットを提供する。
【0019】
最後に、本明細書に開示される創傷被覆材として使用することができる抗菌性架橋ヒドロゲルを提供する方法であって、架橋性ヒドロゲル形成モノマー及び蜂蜜を含む混合物を混合し、混合物が固化するまで混合物をUV放射線に曝露することを含む方法が本明細書に開示される。
【0020】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、それを実際にどのように実行することができるかを例示するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、モノマー含有量を規定するLMesitran薬用蜂蜜のTGA結果を提供し、
図1Aは、温度(℃)に対するLMesitran薬用蜂蜜のTG、すなわち重量%(重量%)を提供し、図は、5℃/分の加熱速度である。
【
図1B】
図1Bは、モノマー含有量を規定するLMesitran薬用蜂蜜のTGA結果を提供し、
図1Bは、DTG、すなわち、温度に対するLMesitran薬用蜂蜜の時間での重量変化%(%/分)を提供し、図は、5℃/分の加熱速度である。
【
図2A】
図2Aは、ヒアルロン酸のTGA結果を提供し、
図2Aは、温度(℃)に対するヒアルロン酸のTG、すなわち重量%(重量%)を提供する。図は5℃/分の加熱速度である。
【
図2B】
図2Bは、ヒアルロン酸のTGA結果を提供し、
図2Bは、温度(℃)に対するヒアルロン酸のDTGを提供する。両方の図は5℃/分の加熱速度である。
【
図3A】
図3AはAMPSのTGA結果を提供し、
図3Aは、温度(℃)に対するAMPSのTG、すなわち重量%(重量%)を提供する。図は5℃/分の加熱速度である。
【
図3B】
図3BはAMPSのTGA結果を提供し、
図3Bは温度(℃)に対するAMPSのDTG、すなわち時間での重量変化%(%/分)を提供する。図は5℃/分の加熱速度である。
【
図4A】
図4A、組成物#2(
図4A)からのサンプルのTGA(重量%(重量%)対T(℃))分析結果を提供する。5℃/分の加熱速度である。
【
図4B】
図4Bは、組成物#3(
図4B)からのサンプルのTGA(重量%(重量%)対T(℃))分析結果を提供する。5℃/分の加熱速度である。
【
図4C】
図4Cは、組成物#4(
図4C)からのサンプルのTGA(重量%(重量%)対T(℃))分析結果を提供する。5℃/分の加熱速度である。
【
図4D】
図4Dは、組成物#5(
図4D)及び組成物#6(
図4E)からのサンプルのTGA(重量%(重量%)対T(℃))分析結果を提供する。5℃/分の加熱速度である。
【
図4E】
図4Eは、組成物#6(
図4E)からのサンプルのTGA(重量%(重量%)対T(℃))分析結果を提供する。5℃/分の加熱速度である。
【
図5】
図5は、様々な剪断速度での、蜂蜜を含有するヒドロゲル(表5の組成物#8参照)の粘度を示すグラフを提供する。
【
図6A】
図6Aは、手術部位感染(SSI)を防ぐための本開示による術後膝被覆材の写真画像であり、手術直後(
図6A)に被覆材を適用した。
【
図6B】
図6Bは、手術部位感染(SSI)を防ぐための本開示による術後膝被覆材の写真画像であり、患者がSSI発症のリスクなしに退院した4日後(
図6B)に被覆材を適用した。
【
図7B】
図7Bは、感染した手術部位の、本開示による創傷被覆材による1日の処置後(
図7B)の写真画像である。
【
図7D】
図7Dは、感染した手術部位の、SSI処置後に使用された創傷治癒促進系による1ヶ月の相補的処置後(
図7D)の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、架橋ヒドロゲル足場と、足場内に埋め込まれた蜂蜜とを含む創傷被覆材として使用することができる組成物を提供し、創傷被覆材組成物は、蜂蜜由来の酵素の活性に起因すると考えられる抗菌活性を示した。さらに、抗菌活性は、以下でさらに論じるように、創傷被覆材による過酸化水素生成速度の検出によってアッセイ又は確認することができる。
【0023】
驚くべきことに、蜂蜜の存在下では、創傷被覆材組成物は、UV光開始剤の存在下で、蜂蜜の非存在下で必要とされる量よりも有意に低い量で形成される(例えば、表1Cのデータを参照)。
【0024】
また、創傷被覆材組成物を製造する方法も本明細書に開示され、その方法は、ヒドロゲル形成モノマー(複数可)、蜂蜜、及び少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤を含む混合物を混合して均質な混合物を形成することと、均質な混合物が固化するまで、均質な混合物をUV照射に供することとを含む。少なくとも1つの光開始剤及び/又は少なくとも1つのUV架橋剤の量は、好ましくは、混合物(及び最終的な組成物)の総重量の0.2%w/w以下である。
【0025】
ある量(及び比較的少ない量)の光開始剤及び/又は架橋剤の存在下でのモノマーのUVへの曝露は、蜂蜜の生物学的機能性、具体的にはその治癒特性を損なうことなく、モノマーの架橋を引き起こすことが想定されている。これに関連して、蜂蜜を含めることにより、蜂蜜の非存在下で必要とされる量と比較して、固体創傷被覆材への架橋を引き起こすために使用される開始剤及び/又は架橋剤の量を有意に減少させることが可能になることが分かったことに留意されたい。これは、蜂蜜が存在しない場合、開始剤及び架橋剤のいずれか又は両方の量がより高いことを示す以下の表1Cでも強調される。換言すれば、蜂蜜の非存在下で十分に固化するためには、それぞれ又は両方のより高い量が必要である。例えば、蜂蜜が存在しない場合、無限粘度(すなわち、十分に固化させること)に達するために、開始剤及び架橋剤の総量は0.9%w/wであった。約10%w/w~約20%w/wの間の蜂蜜及び約0.2%w/wの総量の開始剤及び架橋剤の存在下で同じ粘度が達成された。
【0026】
創傷被覆材中に残存する開始剤及び/又は架橋剤の量を最小限に抑えたいという要望があり、蜂蜜を含めることにより、その量を有意に減少させることができるので、本明細書に開示される知見は予想外であり、有益な製品を提供する。
【0027】
さらに、蜂蜜の存在下では、これらの少量の開始剤及び/又は架橋剤でさえ、すべてのモノマーが架橋されていることが見出された。これは、一旦皮膚に適用されると、組成物中に有意な量の遊離モノマーを有するという欠点があるため、創傷被覆材の1つの重要な特徴と考えられる。換言すれば、創傷被覆材は、好ましくは、上記架橋ヒドロゲル足場の検出可能な量の非架橋モノマー単位を含有しない。
【0028】
蜂蜜が、微量の少なくとも1つの光開始剤及び/又は架橋剤と共に存在することにより、少量の開始剤及び/又は架橋剤にもかかわらず、望ましい粘度に達することが可能になる。
【0029】
創傷被覆材組成物の粘度は、一般に入手可能な粘度計を含む従来の手段によって決定することができる。
【0030】
いくつかの例では、粘度は、約12rpmの回転速度でT-BAR T-F HBDV-E(又は本明細書で定義されるスピンドルR7などのもの)を使用して決定される。
【0031】
いくつかの場合では、本明細書に開示される創傷被覆材組成物の粘度は、少なくとも15,000cPs、時には少なくとも30,000cPs、時には少なくとも50,000cPsである。時には少なくとも100,000cPs、時には少なくとも200,000cPs、時には少なくとも300,000cPs、時には、333,000cPsを超える。
【0032】
創傷被覆材組成物の粘度は、例えば、蜂蜜の治癒特性が、抗菌活性を提供し、湿った創傷状態を維持し、すべて一緒に創傷の感染を防ぐための保護バリアを提供することを助けるという事実によるものであることを用いて決定することができる。抗菌活性は、過酸化水素の酵素的産生に起因する。また、蜂蜜の抗菌活性は、蜂蜜の低pHレベル及び微生物の増殖を妨げるのに十分な高糖含量(高浸透圧)に関連し得ることも報告されている。これは、例えば、マヌカハニーなどの非過酸化蜂蜜に見られる。さらに、抗菌活性は、メチルグリオキサール(MGO)などの植物化学成分の存在に起因し得る。
【0033】
蜂蜜中の抗菌剤(因子)は、主に過酸化水素実体であり、その濃度は、蜂によって合成されるグルコースオキシダーゼと花の花粉に由来するカタラーゼとの相対レベルによって決定される。
【0034】
ほとんどの種類の蜂蜜は、グルコースをグルコン酸及びH2O2に酸化する酵素グルコースオキシダーゼの活性化のために、希釈されるとH2O2を生成し、したがって抗菌活性に寄与する。しかし、場合によっては、また本明細書で提供される非限定的な例によっても明らかなように、蜂蜜の過酸化物活性は、熱又はカタラーゼの存在によって容易に破壊され得る。
【0035】
蜂蜜は、カタラーゼの存在下(グルコースオキシダーゼの非存在下)でもその抗菌活性を保持し得るので、このタイプの蜂蜜は「非ペルオキシド蜂蜜」と見なされる。シリング酸メチルやメチルグリオキサールなど、いくつかの成分が非ペルオキシド活性に寄与することが知られている(例えばマヌカ蜂蜜)。
【0036】
蜂蜜の色と抗菌効力との間の相関が議論された[Albaridi NA.Antibacterial Potency of Honey.Int J Microbiol.2019;2019:2464507.Published 2019 Jun 2.doi:10.1155/2019/2464507]。蜂蜜の色は、明るい黄色から琥珀色及び暗い赤みがかった琥珀色、ほぼ黒色までの範囲である。蜂蜜の色は、ポリフェノール、ミネラル、花粉などの存在する様々な成分を反映している可能性があり、フラボノイドなどの色素の量が多い濃色蜂蜜は、フェノール化合物のレベルが高く、これは、その高い抗菌活性との良好な相関を有することが示されている。
【0037】
蜂蜜の抗菌活性を決定する方法は様々であり、ほとんどは過酸化水素の産生のレベル又は速度に集中している。例えば、過酸化水素生成速度は、製造業者の指示に従って使用される過酸化水素試験ストリップの使用によって決定することができる。例えば、試験ストリップを試験される溶液に浸漬し、規定の時間(典型的には数秒)後に、所定のカラースケールに対してストリップの色を識別することができる。
【0038】
蜂蜜の色はまた、ハチミツ鉱物含有量と相関する。明るい色の蜂蜜は、通常、最大0.2%の金属イオン及び他のコロイド状物質を含み、一方、暗い色の蜂蜜は、1%以上の金属イオンを含むことができる。現在の研究では、単葉のアボガド蜂蜜が濃色蜂蜜のモデルとして使用されており、アカシア蜂蜜が淡色蜂蜜として使用されている。蜂蜜に存在する主な鉱物であるカリウム含有量は、蜂蜜の色素沈着と相関し、淡色蜂蜜では441ppm、濃色蜂蜜では1676ppmの平均レベルに達する。単葉のアボガド蜂蜜は平均3800ppmのカリウムを含有し得るが、アカシア蜂蜜は約550ppmのカリウムを含有する。
【0039】
いくつかの例では、蜂蜜は淡色蜂蜜である。拘束されることではないが、淡色蜂蜜は、より低いバイオバーデンを有し、したがって、滅菌検証及び他の要件のために、濃色蜂蜜よりも実現可能であり得る。
【0040】
いくつかの例では、蜂蜜は、最大0.2%の金属イオン含有量を有するものである。
【0041】
蜂蜜の色に関係なく、創傷治癒のために、したがって本明細書に開示される創傷被覆材内で使用することができる様々な種類の蜂蜜が存在する。これらには、レプトスペルマム・スコパリウム(leptospermum scoparium)の蜂蜜(例えば、マヌカ、Medihoney-濃色)、ソバの蜂蜜(例えば、Principelle-濃色)、アカシアの蜂蜜(淡色)、ハキリバチの蜂蜜(淡色)、ケスミの蜂蜜(淡い琥珀色)、ハキリバチの蜂蜜(淡色)、ユーカリの蜂蜜(淡い琥珀色)、ポリフローラルの蜂蜜(各種)、医療グレードの蜂蜜(例えば、Revamil(登録商標)、Vetramil(登録商標)、L-Mesitran(登録商標)、後者は40%の医療グレードの蜂蜜、ラノリン、プロピレングリコール、PEG4000、ビタミンC、ビタミンEを含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本開示の文脈において、医療グレードの蜂蜜又は薬用蜂蜜は、創傷への適用に適しているか又は適していることが知られている任意の蜂蜜を包含すると理解されるべきである。そのような蜂蜜は、典型的には、創傷治癒効果を有するものとして認識される。
【0043】
いくつかの場合では、蜂蜜は、酸素過酸化物の生成又はグルコース酸化物の存在に起因して抗菌活性を有すると認識されているものである。
【0044】
いくつかの場合では、蜂蜜は、医学的又は薬学的に許容可能な親油性物質、例えば油、ワックスなどの担体と混合される。
【0045】
いくつかの場合では、医療グレード(薬用)の蜂蜜は、既知の農薬や殺虫剤の痕跡がなく、微生物の含有量も管理された多花性の蜂蜜である。
【0046】
蜂蜜の量は、使用される開始剤及び/又は架橋剤の量及び所望の粘度レベルに応じて変化し得る。
【0047】
いくつかの例では、創傷被覆材組成物は、組成物中に、少なくとも1%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも5%w/wの蜂蜜、時には少なくとも8%w/w、時には、少なくとも10%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも12%w/wの蜂蜜、時には少なくとも14%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも15%w/wの蜂蜜、時に少なくとも18%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも20%w/wの蜂蜜、時には少なくとも22%w/w、時には、少なくとも24%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも26%w/wの蜂蜜、時には少なくとも28%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも30%w/wの蜂蜜、時に少なくとも32%w/wの蜂蜜;時には、少なくとも34%w/wの蜂蜜、時には少なくとも36%w/w、時には、少なくとも38%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも40%w/wの蜂蜜、時には少なくとも42%w/wの蜂蜜、時には、少なくとも44%w/wの蜂蜜、時に少なくとも46%w/wの蜂蜜又は実に50%w/wまでの蜂蜜を含む。
【0048】
いくつかの場合では、蜂蜜の量は、5%w/w~50%w/wの範囲内の任意の量;時には、5%w/w~40%w/wの間の任意の量;時には、10%w/w~40%w/wの間の任意の量;時には、20%±15%w/wの量である。
【0049】
本明細書に開示される創傷被覆材(組成物自体並びに支持マトリックス上の組成物)は、架橋ヒドロゲル足場を含み、足場内に活性蜂蜜が埋め込まれている。熱が架橋の推進力である熱誘導架橋とは対照的に、ヒドロゲルの架橋は、蜂蜜及び開始剤及び/又は架橋剤の存在下でのUV照射の結果である。
【0050】
架橋の様式(種類)は、最終製品、すなわち創傷被覆材組成物において、抗菌活性(熱架橋によって低減又は排除されたであろう)の有無からだけでなく、場合により、少なくとも微量(すなわち、0.2%w/w未満)の光開始剤及び/又はUV架橋剤の存在によっても明らかであり得る。微量の光開始剤及びUV架橋剤のいずれか又は両方は、ピコモルの範囲内であり得、本開示に従って生成されるヒドロゲルと熱重合によって生成されるヒドロゲル(そのような薬剤が必要ない場合)とを区別するためのフィンガープリントの1つの形態と見なすことができる。
【0051】
本明細書で論じられるように、機能的/生物学的に活性な蜂蜜による創傷被覆材の抗菌活性によって、さらなるフィンガープリントが提供される。
【0052】
創傷被覆材の形成に使用することができ、したがって本開示の創傷被覆材中に存在することができる光開始剤は、当技術分野において周知である。それでも、拘束されるものではないが、光開始剤は、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、エチル(2,4,6トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(10%-25%);2-ヒドロキシ-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどの1つ又は組み合わせであり得る。
【0053】
創傷被覆材の形成に使用することができ、したがって本開示の創傷被覆材中に存在することができるUV架橋剤もまた、当技術分野において周知である。それでも、拘束されるものではないが、UV架橋剤は、メタクリロキシエチルビニルカルボナート、NVP-AAM077四ナトリウム水和物、N,N-メチレンビスアクリルアミド、テトラエチレングリコールポリ(エチレングリコール)メチルエーテルモノメタクリラート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリラート;エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリラート(Miramer M280)、4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン(Genocure ACMO)の1つ又は組み合わせであり得る。
【0054】
いくつかの場合では、本明細書に開示される創傷被覆材は、少なくとも微量の光開始剤又はUV架橋剤を含有する。
【0055】
本開示の文脈において、少なくとも微量について言及する場合、それは、検出可能な量、及び組成物を形成する材料(支持マトリックスを除く)の総重量の0.2%w/wを超えない量として理解されるべきである。
【0056】
いくつかの場合では、微量は、0.19%w/wを超えない量、時には0.18%w/wを超えない量、時には0.17%w/wを超えない量、時には0.16%w/wを超えない量、時には0.15%w/wを超えない量;時には0.1%を超えない量;時には0.09%を超えない量;時には0.08%を超えない量;時には0.07%を超えない量;時には0.06%を超えない量;時には0.05%を超えない量である。
【0057】
いくつかの場合では、創傷被覆材組成物は、少なくとも微量の光開始剤を含む。
【0058】
いくつかの場合では、創傷被覆材組成物は、少なくとも1つの光開始剤と少なくとも1つのUV架橋剤の両方を含み、少なくとも1つの光開始剤の量は最大約0.1%w/wである。
【0059】
いくつかの場合では、本明細書に開示される創傷被覆材は、少なくとも微量の光開始剤及びUV架橋剤の両方を含有し、合わせた量は0.2%を超えない。
【0060】
創傷被覆材のヒドロゲル成分は、UV照射によって架橋可能な異なる種類のヒドロゲル形成モノマーから形成することができる。典型的には、UV照射によって架橋ヒドロゲルを提供することを目的とする場合、スルホナート含有モノマー単位を使用し、すなわちヒドロゲルはスルホナート含有ヒドロゲルである。
【0061】
いくつかの例では、ヒドロゲルのモノマー単位は、反応性親水性モノマーとして同定されたものである。
【0062】
いくつかの例では、ヒドロゲルのモノマー単位は、吸水/膨潤能力を有する医学的に許容可能なヒドロゲルを形成すると認識されるものである。
【0063】
いくつかの例では、ヒドロゲルのモノマー単位は、少なくとも2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を含む。
【0064】
ヒドロゲルは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。例えば、ヒドロゲルはAMPSホモポリマーであり得る。
【0065】
さらに、例えば、ヒドロゲルはコポリマーであり得る。例えば、ビニルモノマーを含むスルホナート。例えば、AMPSは、以下の様々なビニルモノマーと反応することが知られている:アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、2-ヒドロキシプロピルメタクリラート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド。
【0066】
いくつかの例では、創傷被覆材は、他のバイオポリマー、すなわちヒドロゲル自体を形成した架橋ポリマー以外のバイオポリマーも含む。
【0067】
いくつかの例では、創傷被覆材はヒアルロン酸(HA)を含む。HAは、とりわけ抗菌活性を有することが知られているポリマーである。HAを蜂蜜含有ヒドロゲルにうまく組み合わせて、強化創傷被覆材を得た。理論に拘束されるものではないが、HA(同様にまた、いくつかの他の多糖類、例えば、カロブガム、既知の市販のガラクトマンナン多糖類)は、創傷部から創傷被覆材へ分泌される流体の吸収を促進/改善し得る。HAの量は様々であり得るが、典型的には、創傷被覆材(水を含む)の総重量の5%を超えない。HAの量は、創傷被覆材の総重量の0.1%~2%w/wの範囲にあるときもあれば、創傷被覆材の総重量の0.5%~1.5%w/wの範囲にあるときもある。
【0068】
創傷被覆材は、その水又は生理食塩水の保持能力によって特徴付けることができる。このパラメータは、創傷からの押出物を吸収する被覆材の能力に関連する。いくつかの例では、創傷被覆材は、液体材料と接触する前の被覆材の重量から少なくとも700重量%の水性液体(生理食塩水又は水)保持能力を有する。
【0069】
本明細書に開示される創傷被覆材はまた、支持マトリックスを含有してもよく、すなわち、ヒドロゲルと蜂蜜との組み合わせは、支持マトリックス内又は支持マトリックス上に埋め込まれる。支持マトリックスは、滅菌ポリマー又は滅菌布地であり得る。例えば、支持マトリックスは、ポリウレタンラミネートであり得る。支持マトリックスが布地である場合、それは織布又は不織布であり得る。
【0070】
創傷被覆材は、最初にヒドロゲル形成モノマー(複数可)を光開始剤(複数可)及び/又はUV架橋剤(複数可)と溶解させてモノマー成分を形成し、次いでこれを均質な混合物が得られるまで蜂蜜含有成分と混合することによって調製される。混合はホモジナイザで行うことができる。
【0071】
追加のポリマーが使用される場合、これらは、典型的には、すべての成分が均一に混合されるまでモノマー含有成分に添加される。
【0072】
成分の混合物は、好ましくは均質な混合物である。
【0073】
重合及びヒドロゲル形成のために、混合物が固化するまで、混合物を制御された条件下でUV照射に曝露する。時には、混合物を最初に支持マトリックスと接触させ、その後にのみUV光に曝露する。例えば、支持マトリックスを混合物に浸漬することができ、混合物を支持マトリックス上にブラッシング又は噴霧することができる。
【0074】
制御された条件下でのUV照射に言及する場合、架橋が起こるのに十分な条件として理解されるべきである。条件は、使用されるモノマー(複数可)、光開始剤(複数可)、UV架橋剤(複数可)、蜂蜜、追加のポリマーのいずれか1つのタイプ及び/又は濃度によって決定される。
【0075】
いくつかの例では、硬化/重合は、230V/50Hz、400W水銀ランプの使用によるUV光への曝露を含む。露光時間は様々であるが、典型的には数ミリ秒から数秒程度である。
【0076】
水銀UVランプの出力は、主にUVCスペクトルである。これは効果的な硬化を提供するのに十分であった。様々なUV波長に対する水銀UVランプの出力を含む使用条件は、ランプ製造業者の仕様で利用可能である。
【0077】
一旦調製されると、創傷被覆材は、その後、専用のパッケージ、典型的には滅菌パッケージ内に保存され得る。
【0078】
必要に応じて、創傷被覆材は創傷を処置するために使用される。これに関連して、処置は、予防的(preventative/prophylactic)処置、すなわち望ましくない状態の発生の予防も包含すると理解されるべきである。
【0079】
いくつかの例では、創傷被覆材は、細菌感染症に感染していると診断された創傷を処置するために使用される。いくつかの他の例では、創傷被覆材は、感染症を有するとまだ特定されていないが、感染症を発症する素因がある創傷を処置するために使用される。
【0080】
限定されるものではないが、本明細書に開示される創傷被覆材は、開放創、手術創、床擦れ、虫刺され及び皮膚疾患による二次炎症を処置するために使用することができる。1つの特定の例では、創傷被覆材は外科手術で使用するためのものである。
【0081】
いくつかの場合では、創傷被覆材は、手術部位感染(SSI)などの術後合併症を処置又は予防するために手術部位に適用するために使用される。
【0082】
創傷の処置は、創傷を新鮮な創傷被覆材で定期的に交換することを含み得る。交換の頻度は、創傷が処置される時間、処置される創傷の状態、創傷被覆材を形成する成分の組成、並びに医師によって一般的に考慮される任意の他の考慮事項によって決定される。
【0083】
非限定的な例
創傷被覆材組成物の調製
材料
モノマー:
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、Lubrizol Chemical社製のナトリウム塩(AMPS)、特に、水に溶解した58%w/wのモノマーを含むAMPS 2408A、CAS番号15214-89-8。
ヒアルロン酸、合成源(HA)からの分子量約1,420,000Da及び化学的清浄度93%超のナトリウム塩、Xi’an Pincredit Bio-tech Co.,Ltd製、CAS番号9067-32-7
CP Kelco製の清澄化カロブ(イナゴマメ)ガム化粧品グレード、CAS番号9000-40-2
高アシルジェランガム(1-2x106ダルトン)化粧品グレード、CP Kelco製、CAS番号71010-52-1
Dow製メチルセルロース(Methocel A40M)食品グレード改質セルロース、Cas番号9004-67-5
キサンタンガム(KELTROL Advanced Performanceキサンタンガム、化粧品グレード)CP Kelco製、Huber Company CAS番号11138-66-2
【0084】
光開始剤:
低圧光開始剤としての、RAHNグループ(スイス)製の2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(GENOCURE DMHA)、CAS番号7473-98-5。
中圧光開始剤としての、RAHNグループ(スイス)製のエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(GENOCURE TPO-L)、CAS番号4434-11-7。
広域スペクトルの光開始剤としての、RAHNグループ(スイス)製のジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド10%-25%(GENOCURE LTM)、CAS番号75980-60-8
LMesitran製の特別に処理された薬用蜂蜜、広域スペクトル光開始剤としてのCAS番号8028-66-8
【0085】
架橋剤
メルク社製エチレングリコールジメタクリラート、CAS番号25852-47-5
ポリエチレングリコール(400)ジアクリラート(Miramer M280)、RAHNグループ(スイス)製、CAS番号26570-48-9
4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン(Genocure ACMO)、RAHNグループ(スイス)製、CAS番号5117-12-4
【0086】
活性物質
超吸収剤としてのヒアルロン酸、ナトリウム塩。
抗菌剤としてのL-Mesitran(登録商標)薬用蜂蜜。
【0087】
その他の成分
各種製造元による1,2,3-プロパントリオール(グリセロール)、溶媒としてCAS番号56-81-5
溶媒として精製水。
【0088】
方法及び結果
ヒドロゲル中の最適な蜂蜜含有量の決定
硬化プロセスに影響を及ぼす蜂蜜の最適含有量は、以下の表1に記載されるように、粘度測定(100%含有量に添加されたAMPS)によって予め決定されている。
【0089】
様々な試験した混合物のすべての成分を合わせ、均一で透明になるまで均質化した。次いで、混合物をUVに1秒間曝露して(詳細についてはセクション「ヒドロゲルプロトコルの硬化(重合)」を参照)、架橋ヒドロゲルを形成した。これらのヒドロゲル試料を収集し、それらの粘度を測定した。
【0090】
1000cPs未満の低粘度は、Comecta社製「キャノンフェンスケ」不透明粘度計(これに関連して、Tianguang Fan(2001年10月26日)http://www.prrc.nmt.edu/groups/petrophysics/media/pdf/viscometer.pdfによって記載されるようなCANNON-FENSKE粘度計を使用した粘度測定を参照されたい。)を用いて測定した。
【0091】
以下のスピンドルを備えたMYR VR-3000ブルックフィールド型粘度計を使用して、1000cPsを超える粘度を測定した:
-1,000~3,333cPsの粘度については、12rpmでスピンドルR2;
-3,333~8,333cPsの粘度については、12rpmでスピンドルR3;
-8,333~33,333cPsの粘度については、12rpmでスピンドルR5;
-33,333~333,333cPsの粘度については、12rpmでスピンドルR7;
【0092】
高粘度については、液体が依然としてニュートン説として挙動する場合、粘度を様々な剪断速度でチェックし、平均した。挙動が高剪断速度である粘度範囲にわたって非ニュートン粘度になったとき(粘度が有意に変化しないとき)、平均した。
【0093】
一般に、ヒドロゲル系におけるニュートン挙動から非ニュートン挙動への移行は、約1000mPas~10,000mPasの間で起こる。この範囲では、粘度挙動は依然としてニュートンと見なすことができる。表1Aは、10%の蜂蜜、0.15%のリンカーを含み、開始剤を含まない製剤の粘度を提供する。
【表1A】
【0094】
非ニュートン挙動では、平均粘度からの偏差は、剪断速度の増加と共に劇的に増加する。したがって、10,000mPasより高い粘度では、より高い剪断速度の結果にわたって粘度を平均化すべきである。表1Bは、10%の蜂蜜を含むが、リンカー及び0.05%の開始剤を含まない製剤の粘度を提供する。挙動は非ニュートン性であった。
【表1B】
【0095】
理論に束縛されるものではないが、粘度の増加は、重合プロセスの開始を証明すべきであると考えられる。粘度が高いほど、重合度が高いことを示す。しかし、重合の特定の段階で、ヒドロゲルは粘弾性及びずり減粘挙動を発現し、剛性になった(粘度は無限に高くなった(表1Bには示さず))。したがって、定常粘度試験は、重合プロセスのみを示すために使用した。
【0096】
一定量のモノマーAMPS及びHA(53.15%のAMPS及び1%のHA、示された量の蜂蜜、リンカー及び開始剤(及びプロセス水で100%まで充填)を含むヒドロゲル製剤の初期調整に使用した粘度測定の結果を表1Cに示す。
【表1C】
【0097】
表1Cは、蜂蜜が光開始剤及び/又は架橋剤を部分的に置き換え得ることを示す。5%の蜂蜜濃度では、影響は無視できる程度であった(0.05%の開始剤、0%のリンカー及び5%の蜂蜜を含む混合物の粘度は、18cPsから100cPsに増加した)。10%及び20%の蜂蜜では、重合プロセスがより顕著であった。20%の蜂蜜を含有するヒドロゲルは、そのより良好な治療特性のために好ましい(下記参照)。すべての製剤において、蜂蜜の存在下で十分な固化を可能にするために、開始剤及び架橋剤の合計量が0.2%w/w以下であり得ることが示されている。これは、蜂蜜の非存在下(「0」蜂蜜)での同じ固化に必要なこれらの薬剤のはるかに高い量を考慮すると、特に独特である。
【0098】
蜂蜜の選択
蜂蜜の作用機序をよりよく理解するために、2種類の蜂蜜(L-Mesitran淡色蜂蜜及びアボガド濃色蜂蜜)を、モノマー混合物の一部について調べ、各混合物の粘度を確認した。
【0099】
具体的には、室温又は50℃の加熱下で単量体混合物に蜂蜜を加えた。加熱の場合、混合物を均一になるまで混合しながら50℃に維持した。光開始剤又は架橋剤を各混合物に添加しなかった。
【0100】
粘度は、各混合物の温度が25℃に達したときに決定した。蜂蜜を添加する前に、各混合物の粘度は10~11cPs(硬化前のベースライン)であった。蜂蜜(しかし、開始剤又は架橋剤なし)で硬化した後の粘度を表2に示す。
【表2】
【0101】
表2は、アボガド蜂蜜を含む混合物の粘度が、L-メシトラン薬用蜂蜜を含む混合物の粘度よりも高かったことを示す。しかし、50℃で混合した場合、蜂蜜濃度の増加は、得られる粘度に影響を及ぼさなかった。粘度の差は、アボガド蜂蜜が金属イオンを含有し(医療用蜂蜜には存在しない)、これらのイオンが、架橋剤又は開始剤が存在しない場合であっても、高温、すなわち50℃でモノマー(AMPS)架橋/重合プロセスを誘導し、しかし、フリーラジカルは、もはや蜂蜜によって形成されないという事実にあると考えられる。結果として、行われる唯一の重合プロセスは、金属イオンによって誘導されるものである。
【0102】
結果はまた、金属イオン含有量がない又は低い薬用蜂蜜では、低温条件下での架橋のレベルが20%の蜂蜜でより高いことを示す。これは、蜂蜜中の酵素によるH2O2の産生に対する加熱の阻害効果によって説明され得、したがって加熱下での架橋レベルも低下する。換言すれば、加熱は、一方では十字裏張りを減少させ、他方では蜂蜜に存在する酵素の活性を減少させる二重の損傷効果を有するようである。上記の結果は、以下の実験において20%の蜂蜜で作業することを示唆した。
【0103】
表3は、室温(RT)又は50℃で混合した場合のアボガド蜂蜜を用いて調製したヒドロゲル混合物の粘度を表す。
【表3】
【0104】
表3は、蜂蜜の非存在下では、架橋及びヒドロゲル形成が低い(低粘度)が、蜂蜜の存在下では、金属イオン(濃色蜂蜜中に存在する)の存在下でさえ、架橋が存在することを示す。興味深いことに、同じ濃度の架橋剤では、加熱は架橋プロセスに対する酵素の寄与を減少させた。これは、蜂蜜に本質的に存在する酵素に対する加熱の影響によるものであり得、すなわちおそらく加熱が蜂蜜内の酵素の機能性/活性を本質的に損傷したためである。
【0105】
蜂蜜混合物中のペルオキシド含有量を決定するためのプロトコル
このアッセイの目的は、混合物中に形成されたペルオキシドの量を決定することである。含有量が高いほど、蜂蜜含有製剤の抗菌活性は高くなる。ペルオキシドは、蜂蜜内の酵素活性によって形成される。酵素は、例えば、典型的には熱重合に入れられる加熱によって損傷を受けないことが望ましい。
【0106】
プロトコル:
・ヒドロゲル混合物50gを取る(剛性ヒドロゲルであってもよい);
・40grの水を添加し、均一になるまで混合し、又は、剛性ヒドロゲルを使用する場合は水が完全に吸収されるまで待機する;
・30℃で1時間インキュベートする;
・溶液/ゲルのpH値が2~12であることを確認する。そうでない場合、水酸化ナトリウム又はクエン酸を用いてpHを調整する。
・QUANTOFIX(登録商標)Peroxide 25のストリップを一つ取る
・試験ストリップを試験溶液に1秒間浸漬する。
・過剰な液体/ゲルを振り落とす。
・15秒待つ。
・カラースケールと比較する。過酸化水素が存在する場合、試験フィールドは青色に変わる。
【0107】
結果:
30℃で1時間インキュベートした後の過酸化水素含有量を表4に示す。この点に関して試験した組成物は、0.05%の光開始剤、0.15%のリンカー、53.15%のAMPS、1%のHA及び指定の蜂蜜を含み、水を100%まで添加した。
【表4】
【0108】
結果は、10%のアカシア蜂蜜では、室温で2~5の既に良好な生成があるが、同じ濃度で50℃では、ペルオキシド生成がなく、これは、ペルオキシド生成に必要な酵素活性が加熱によって損なわれたことを示している。
【0109】
結果はまた、濃色蜂蜜及び淡色蜂蜜の両方が室温でより良好なH2O2 産生を有し、活性は、加熱時に損傷を受ける酵素活性から生じることを示す。
【0110】
特に、結果は、ペルオキシド放出が重合開始剤又はリンカーの存在を必要とせず、蜂蜜の存在にのみ依存することを示す。
【0111】
ヒドロゲル-ヒアルロン酸(HA)調製
最終製剤はまた、創傷から分泌された任意の流体の吸収を促進/改善するためにヒアルロン酸(HA)を含む。この目的のために、以下の調製プロトコルを行った:
プレミックスI:3%のHAを水中に分散させる。完全に溶解し均一になるまで約24時間待機する。L-Mesitran薬用蜂蜜を添加し、均一になるまで混合する。
プレミックスII:AMPSを主混合反応器に添加する。光開始剤及び架橋剤を添加し、均一かつ透明になるまで均質化する。プレミックスIIの表面に油状の斑点が出ないようにする。
【0112】
混合しながら、プレミックスIをプレミックスIIに徐々に加える。均一になるまで均質化する。ゆっくりと混合したままにし、硬化ステーションに供給されるまでUV光から保護する(時間の前に望ましくない架橋を避けるため)。
【0113】
以下に記載されるように、硬化のためにUV光に供する。
【0114】
上記のプロトコルに従って、8つのヒドロゲル組成物を分析のために調製した。組成物1~8を表5に提供する。
【0115】
蜂蜜中の金属含有量は、淡色蜂蜜では0.04%から、濃色蜂蜜では0.2%の範囲である[Oryan et al.2016]。L-Mesitranアカシア薬用蜂蜜は、その低含有量の鉱物及び金属イオンを含む様々な理由のために選択され、したがって、より良好な抗菌活性を有すると考えられ、同様にまた、濃色蜂蜜と比較してバイオバーデンが低い(したがって、滅菌プロセスがより実現可能である)ために選択された。
【表5】
【0116】
組成物4、5及び6は、同じ量の光開始剤を含んでいた。組成物3、5及び6は、同量の架橋剤を含む。
【0117】
組成物6は、最終/好ましい組成物を表す。組成物3は、光開始剤が水で置き換えられている点で組成物6とは異なる(すなわち、組成物3中に光開始剤は存在しない)。組成物4は組成物6とは異なり、架橋剤は水で置き換えられている(すなわち、組成物4中に架橋剤は存在しない)。組成物5は、Lmesitran薬用蜂蜜が水で置き換えられている点で、組成物6とは異なる。組成物2は、架橋剤及び光開始剤を含まないという点で組成物6とは異なる。組成物7及び8は、蜂蜜が部分的に水で置き換えられている点で組成物4とは異なる。
【0118】
ヒドロゲルのUV硬化(重合)
表面上のゲルの深さ/厚さが0.9~1.3mmの間であるように、ヒドロゲルを基材表面上に分布させた。次いで、表面張力による流れ及びゲルの深さの変化を防ぐために、13グラム/平方メートルの重量の密度を有する不織布材料でゲルを覆った。硬化は、230V/50Hz、400Wの水銀ランプ(Hoenleグループ製、ドイツ)に約1秒間露光することにより行った。様々なUV波長に対する水銀UVランプの出力は、製造業者の仕様で利用可能である。
【0119】
水銀UVランプの出力は、主にUVCスペクトルである。これは効果的な硬化を提供するのに十分であった。
【0120】
硬化レベルの決定
表4に詳述した組成物を、2つの独立した技術:以下に記載の熱重量分析[Golon and Kuhnert,2013;Simkovic et al.,2003]及びFlory-Rehner法[Durmaza and Okay,2000]を使用してモノマー含有量(すなわち、架橋のレベル)について試験した。
【0121】
熱重量分析(TGA)
各ヒドロゲル組成物中のモノマー含有量(すなわち、硬化のレベル)を決定するために、ヒドロゲル組成物に対して熱分解分析を行った。ヒドロゲルの熱分解は、SDTQ600 TGA装置を使用して全体的な質量損失に関して観察された。
【0122】
10mgの試料をアルミナ製のオープンパンに均一にゆるく分配し、マイクロ炉に導入した。加熱速度は5℃/分であった。温度変化は、室温(25℃)から200℃の最終温度まで制御した。重量損失、加熱時間及び試料温度を試験中に連続的に記録した。
【0123】
分解温度は、TGA装置ソフトウェアの示差熱重量分析(DTG)に基づいて見出され、DTGデータの極値点で固定された。ある分解温度の下限及び上限は、DTGの極値(分解)点に最も近いDTG曲線変曲点、又は試験領域の限界(RT又は200℃)である。
【0124】
ヒドロゲル試料の正確な分析のために、主な原料(モノマー及びLMesitran薬用蜂蜜)を試験前に分析して、それらの分解温度を検証した。
【0125】
図1A~1B、
図2A~2B及び
図3A~3Bは、それぞれ原料LMesitran薬用蜂蜜、ヒアルロン酸(HA)及びAMPSのTGA(TG及びDTG)の結果を表す。TGA分析からのデータを以下の表5にも要約する。
【0126】
具体的には、
図1A~1Bは、LMesitran薬用蜂蜜が3つの主要な要素:約90℃で分解し、水と推定される第1の要素(糖の分解を防ぐために、試験前に試料を乾燥させなかった)、約130℃で分解し、果糖と推定される第2の要素[A Golon,(2013).ibid]、及び約190℃で分解し、スクロースと推定される第3の要素[I Simkovic,et al.2003 ibid]が含まれていることを示している。
【0127】
正確な分解点はTG分析では明らかではなかった。理解されるように、化学的に清浄な物質は、正確な特定の温度で分解する。しかし、蜂蜜は、おそらくいくらかの不純物に起因するか、又は蜜ろう、植物部分、蜂及び他の昆虫組織、農薬などの有機物の組み合わせを含むLMesitran薬用蜂蜜の天然起源に起因する温度範囲で分解される。また、天然単糖の中には、高温で連続的に分解して、特性の異なる他の種類の糖を形成するものがある(例えば、フルクトースのラクトースへの分解)。しかしながら、DTG結果から分解点を検出することができた。
【0128】
図2A~
図2Bに示すように、HAの分解もゆるやかであった。これは、HAが分解する比較的狭い温度範囲を提供するはずの合成起源及び相対化学純度にもかかわらずであった。ゆるやかな分解は、HAの高い吸湿性に起因する可能性があり、乾燥試料でも比較的高い含水量をもたらす。
【0129】
AMPSモノマーの分解点は、
図3A~3Bから比較的高い精度で決定された。
【0130】
表6は、分解温度及びこれらの分解温度で分解する可能性がある要素をまとめたものである。
【表6】
【0131】
さらに、164℃~199℃の温度範囲での組成物2~6のTGAも決定し、結果をそれぞれ
図4A~
図4Eに示す。
【0132】
DTG分析に基づいて推定した分解温度は、組成物2及び組成物3(それぞれ
図4A及び
図4B)については186℃、組成物4(
図4C)については188℃、組成物5及び組成物6(それぞれ
図4D及び
図4E)については190℃であった。これらの小さな差は、標準的な実験誤差の範囲内で考慮することができ、及び/又は組成物中の不純物などから生じる。
【0133】
5℃/分の加熱速度では、乾燥AMPSモノマー試料の23.8806%が164℃~199℃の温度で崩壊する(
図3A~
図3Bを参照)。組成物2~6は30.83%のAMPS乾燥モノマーを含むため、AMPSによる硬化前の組成物2~6の質量減少は7.36%であると予想された。同じ実験条件下で、LMesitran薬用蜂蜜は、163℃~199℃の温度でその重量の8.6612%が減少した。したがって、20%のLMesitran薬用蜂蜜を製剤(組成物2、3、4)に添加した場合、硬化前のこれらの組成物のサンプルでは、約1.73%の追加の重量減少が予想された。硬化による蜂蜜の濃度変化は無視できると仮定して、硬化後のヒドロゲル試料中のAMPSモノマーの濃度を以下のように決定した。
【数1】
式中、C
AMPS,iは硬化後の試料i中のAMPSモノマーの濃度であり、i=2,3,4,5は、表4に記載の組成物番号であり、C
iは、164℃~199℃の温度における組成物iの重量減少のパーセンテージであり、i
H(組成物2、3、4については0.2(20%)、組成物5については0)は、硬化前の組成物i中のLMesitran薬用蜂蜜の画分であり、C
H,0は、LMesitran薬用蜂蜜試料の重量減少であり(詳細については
図1を参照)、C
AMPS,0は、AMPSモノマー試料の重量減少であり(
図4参照)、i
AMPS=0.3083(すべての組成物について)は、硬化前の組成物i中のAMPSモノマーの画分である。
【0134】
164℃~199℃の温度範囲での組成物2~6のTGA結果を決定し、結果を表7に示す。
【表7】
【0135】
見られるように、組成物に光開始剤を添加しなかった場合、約50%w/wのモノマーが重合した(組成物2のモノマーは30.83%から15.2%に減少し、組成物3のモノマーは14.9%に減少した)。0.15%の架橋剤を組成物に添加すると、AMPSモノマーの含有量は組成物2の15.2%から組成物3の14.9%に減少し、したがって開始剤を少なくとも部分的に蜂蜜で置き換えることができる。0.05%の光開始剤を添加すると、AMPSモノマーの濃度は、組成物2~4で15.2%から減少し、組成物4ではゼロ(0%)になる。蜂蜜を配合物に添加せず、0.15%の化学的リンカー及び0.05%の化学的開始剤を使用した場合、モノマーの濃度は、0.05%の化学的開始剤を含み化学的リンカーを含まない配合物よりも高く、すなわち、組成物5中のモノマーの濃度は4.5であったが、組成物4ではわずか4.0%であった。したがって、化学的リンカーは、化学的リンカーよりもさらに効果的であり得るLMesitran薬用蜂蜜によって完全に置き換えることができる。
【0136】
組成物6に関して、蜂蜜の存在による試料重量の予想される減少は1.73%であったが、実際の結果は1.699%の重量減少であったことに留意されたい。この小さな差は、実験誤差に起因する可能性がある。
【0137】
Flory-Rehner法
Flory-Rehner法を使用してヒドロゲル中のモノマー含有量を決定するために、試験試料を試験前に1%未満の湿度まで乾燥させた。モノマー蒸発のリスクを低減するために、組成物を40℃で乾燥させた。具体的には、100grの試料を40℃のインキュベータ内で10日間乾燥させ、デシケータ内で室温まで12時間冷却し、秤量した。秤量後、試料を再び40℃でインキュベートした。試料の重量を5日ごとに確認した(15、20、25日目など)。2つの結果として生じる試験(15日目と10日目、又は20日目と15日目など)間の重量差がスケールの精度内にある場合、試料は以下の試験の準備ができていた。乾燥時間は、天候、LMesitran薬用蜂蜜中の含水量及び他のパラメータの関数として変化し得る。ほとんどの場合、乾燥時間は15日であった(しかし、20日、さらには25日に達することができる)。
【0138】
乾燥ヒドロゲル組成物(100gr)の試料を、1Lの精製水を含む容器に室温で入れ、25分間混合した。次いで、水を新鮮な1Lの精製水と交換し、さらに25分間混合した。手順の後、試料を乾燥させ、秤量し、洗浄し、再び乾燥させた。乾燥試料の重量が変化しなくなるまで手順を繰り返した。
【0139】
これらの条件下で、HAモノマーは完全に蒸発することができ、蜂蜜はモノマーと共にヒドロゲルから完全に溶解することができる。これらの可能な効果は、試験結果を分析する際に考慮されるべきである。
【0140】
乾燥前後の試料の重量を測定し、硬化前の乾燥配合物中のモノマー濃度を推定し、結果を表8に示す。
【0141】
表8において、推定含有量(グラム)は、硬化前の組成物中の要素の濃度に、製造業者の仕様による含有量(AMPSについては30.83%及びHAについては0.93%)及びサンプル重量を乗じたものである。濃度は、乾燥試料重量に対して硬化前に推定した。試験に使用した蜂蜜は、重量の変化が停止し、蜂蜜バッチの含水量が9%になるまで40℃で乾燥させた。
【0142】
湿潤試料中のAMPSモノマーの濃度は、硬化前のAMPS 2405Aの53.15%(表4に詳述)、又は乾燥AMPSモノマーの30.83%に等しかった。湿潤試料中のHAモノマーの濃度は、硬化前のHAの1%(表4に詳述)に等しいか、又は乾燥HAの0.93%よりも上であった。
【表8】
【0143】
組成物5中のAMPS及びHAの合計推定(理論)含有量は(97.8+2.9=100.7%)、すなわち少なくとも24.7%であり、これは乾燥中に蒸発した、0.93grのHAの0.23grであることに留意されたい。これは最悪の場合の推定に基づいており、上記によれば、光開始剤及び架橋剤は乾燥中に完全に蒸発し、AMPSは比較的高い分解温度のために蒸発しなかった(分解温度は164℃~197℃であるが、乾燥温度は40℃であった。
【0144】
表5に記載の試料を洗浄し、上記の手順に従って3~5回乾燥させた。試料中のモノマー含有量を以下のように推定した:
WAMPS,m=Wd-Ww-WH、(2)
式中、
WAMPS,m-硬化後のAMPSモノマー推定含有量
Wd-乾燥後の試料重量
Ww-洗浄後の乾燥試料重量
WH-乾燥残留物としての蜂蜜含有量
【0145】
ヒドロゲル中のAMPSモノマーの濃度waは、乾燥前の総初期試料重量(W)からのWAMPS,mのパーセンテージとして定義される。
【0146】
表9は、試料(2~8)についてFlory-Rehner法を用いて推定した硬化後のAMPSモノマー含有量を示す。
【表9】
【0147】
なお、Flory-Rehner法を用いて推定した硬化後のAMPSモノマーの濃度は、TGAを用いて推定した濃度よりも高かったが(詳細は表4参照)、一般的な傾向は維持されている。したがって、より高いモノマー濃度は、取り扱い中の重量損失及び他の実験誤差を指すことができる。
【0148】
抗菌活性
抗菌活性の試験では、20%の蜂蜜、0.05%の光開始剤、0.15%のリンカー、1%のHA、53.15%のAMPSに、100%まで水を添加した組成物から創傷被覆材を調製した。
【0149】
記載された方法は、手術部位感染(SSI)の予防及び処置のために試験された活性抗菌包帯の製造を可能にする。SSIは患者の約10%で発症する。
【0150】
高リスク群の患者におけるSSI予防には、手術直後の滅菌ヒアルロン酸及び蜂蜜ベースのヒドロゲル包帯による手術部位の被覆が含まれ、24時間以内から最大4日間(創傷状態に応じて)再適用される。
【0151】
図6A~
図6Bは、手術直後に被覆材を適用し(
図6A)、手術から12時間後に一度再適用したSSI予防被覆材の例を表す。手術の4日後、患者は、SSI発症のリスクなしに退院した(
図6B)。ヒドロゲル被覆材が適用されたすべての試験において、SSIは発生しなかったことに留意されたい。
【0152】
本明細書中に開示される創傷被覆材によるSSI処置は、手術部位が清潔になり、炎症が観察されなくなるまでの被覆材の適用及び定期的な交換を含んだ。
【0153】
図7A~
図7Dは、手術後3ヶ月間SSIに罹患した患者のSSI処置の結果を表す。処置前(手術後3ヶ月)の手術部位の状態を
図7Aに示し、処置1日後の手術部位の状態を
図7Bに示し、ヒドロゲルによる処置終了時(約1週間の処置)の手術部位の状態を
図7Cに示す。処置段階(1週間)後、手術部位の治癒を、蜂蜜ベースのL-Mesitran Soft Gelを使用して加速させた。
図7Dは、治癒段階が開始された1ヶ月後の手術部位の状態を表す。
【0154】
図6A~
図6B及び
図7A~
図7Dに示される結果は、20%の蜂蜜、0.05%の光開始剤、0.15%のリンカー、1%のHA、53.15%のAMPSから形成された創傷被覆材が、炎症の発症を予防すること(
図6B)並びに既に発症したSSIを治癒することにおいて非常に有効であったことを明確に示している。
【0155】
生体適合性
ヒドロゲルの生体適合性は、NAMSA研究所によって確認され、以下に記載されるように、良好な生体適合性を示した。
【0156】
細胞傷害性
細胞毒性試験は、ISO 10993-5(医療機器の生物学的評価-第5部:インビトロ細胞傷害性試験)の要件に基づいて実施した。L-929マウス線維芽細胞のサブコンフルエント単層を含む6ウェル組織培養プレートの培養ウェルを試験に使用した。試験品セクション(ヒドロゲルと、20%の蜂蜜と、0.05%の開始剤と、0.15の架橋剤とを含む創傷被覆材)、陰性対照としての高密度ポリエチレン、又は陽性対照としてのラテックスのいずれかをトリプリケートのウェルに投与した。各物品(試験品又は対照のそれぞれ)をL-929細胞と直接接触させた。24~26時間インキュベートした後、培養物を顕微鏡(100倍)で、物品に近接した異常な細胞形態及び細胞溶解について調べた。試験品は、L-929細胞に対して軽度の細胞毒性を示し、規制要件を満たすと判定された。
【0157】
肌感度
試験品を、モルモットにおける遅延皮膚接触感作を誘発する可能性についてさらに評価した。この試験は、ISO 10993-10[医療機器の生物学的評価、第10部:刺激及び皮膚感作の試験]の要件に基づいて行われた。
【0158】
10匹の動物の無傷の皮膚に、閉塞様式で、週に3回、3週間にわたって6時間(±30分)、試験品のパッチを当てた。対照品を同様に5匹の動物にパッチした。2週間の回復期間の後、10匹の試験動物及び5匹の対照動物に、閉塞様式で試験品及び対照品をパッチした。パッチ除去の24時間後及び48時間後に皮膚反応の証拠についてすべての部位を観察した。試験品は、モルモットにおいて遅延皮膚接触感作を引き起こす証拠を示さなかった。
【0159】
皮膚刺激性
生成物をウサギにおける一次皮膚刺激性について評価した。この試験は、ISO 10993-10,医療機器の生物学的評価、第10部:刺激及び皮膚感作の試験のガイドラインに従って実施した。試験品及び対照品の2つの25mm×25mm切片を3匹のウサギのそれぞれの皮膚に局所的に適用し、最低23時間及び最高24時間その場に置いた。単回の試料適用の除去の1、24、48及び72時間後に、紅斑及び浮腫について部位を等級分けした。試験品で処置した動物の皮膚に紅斑及び浮腫は観察されなかった。
【0160】
試験品の一次刺激性指数は0.0と算出された。試験品の応答を無視できるものとして分類した。
【国際調査報告】