(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ヒトミルクオリゴ糖を含有する穀物組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/125 20160101AFI20230112BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230112BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230112BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20230112BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230112BHJP
A61K 36/8998 20060101ALI20230112BHJP
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A61K 36/88 20060101ALI20230112BHJP
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A61K 36/45 20060101ALI20230112BHJP
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A61K 36/736 20060101ALI20230112BHJP
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A61K 33/24 20190101ALI20230112BHJP
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A61K 47/36 20060101ALI20230112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L33/105
A23L5/00 N
A23L5/00 M
A23L7/10 Z
A61P3/02
A61K36/8998
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A61K36/73
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A61K36/185
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A61K36/81
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/14
A61K33/24
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/36
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517398
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2019075138
(87)【国際公開番号】W WO2021052584
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511149751
【氏名又は名称】クリスチャン.ハンセン・ハー・エム・オー・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェネバイン,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
4B035
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
若齢個体の健康な成長及び発達に必要である、少なくとも1つのヒトミルクオリゴ糖(HMO)と、他の成分と、を含有する、液体の添加によって即時に調製することができる穀物組成物を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の添加による即時調製のための穀物組成物であって、前記穀物組成物が、以下:
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて10~90重量%の穀物成分、
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて1~40重量%の繊維、
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて4~30重量%のタンパク質、
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて1~10重量%の脂肪、
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて2~15重量%の乾燥果実又は野菜、
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて1~10重量%の微量栄養素、
-前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて0.5~10重量%の添加物、
のうちの1つ以上を含み、
前記組成物が、前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて、最大15重量%の少なくとも1つのヒトミルクオリゴ糖又はヒトミルクオリゴ糖の混合物をさらに含む、穀物組成物。
【請求項2】
前記穀物組成物が、前記穀物組成物の乾燥重量に基づいて10~50重量%の乳成分をさらに含む、請求項1に記載の穀物組成物。
【請求項3】
前記乳成分が、乳清粉末、脱脂粉乳、全脂粉乳及びヨーグルト粉末からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項2に記載の穀物組成物。
【請求項4】
前記穀物組成物が、粉末、顆粒、フレーク、ペレット及び前記形態のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される形態で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項5】
前記液体が、水、ミルク及びジュースからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項6】
前記穀物成分が、穀粉、破砕穀物、粉砕穀物、細砕穀物及び前記形態のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される形態で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項7】
前記穀物成分が、大麦、オート麦、小麦、米、ライ麦、キビ、ソルガム及びトウモロコシからなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項8】
前記乾燥果実及び野菜が、粉末又はフレークの形態で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項9】
前記乾燥果実が、バナナ、ラズベリー、ブルーベリー、クロスグリ、モモ、アンズ、リンゴ及びナシからなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項10】
前記乾燥野菜が、ジャガイモ、トマト及び葉物緑色野菜からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項11】
前記微量栄養素が、鉄、亜鉛、セレン、カルシウム及びビタミンからなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項12】
前記添加物が、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マルトデキストリン、着色料及び甘味料からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つのヒトミルクオリゴ糖が、アセチル-N-ラクトサミン、シアリル化オリゴ糖及びフコシル化オリゴ糖からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項14】
前記アセチル-N-ラクトサミンが、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)及びラクト-N-フコペンタオースI(LNPFI)からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載の穀物組成物。
【請求項15】
前記シアリル化オリゴ糖が、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、シアリルラクト-N-テトラオースa(LST-a)、シアリルラクト-N-テトラオースb(LST-b)、シアリルラクト-N-テトラオースc(LST-c)及びジシアリルラクト-N-テトラオース(DSLNT)からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載の穀物組成物。
【請求項16】
前記フコシル化オリゴ糖が、2’-フコシルラクトース(2’-FL)及び3-フコシルラクトース(3-FL)からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載の穀物組成物。
【請求項17】
前記ヒトミルクオリゴ糖の混合物が、好ましくは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)からなる群から選択される、少なくとも5つの構造的に異なるHMOを含有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項18】
前記ヒトミルクオリゴ糖の混合物が、好ましくは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFPI)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)からなる群から選択される、少なくとも7つの構造的に異なるHMOを含有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【請求項19】
前記穀物組成物が、少なくとも1つの単糖をさらに含有し、前記少なくとも1つの単糖が、好ましくはL-フコース及びシアル酸からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の穀物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物組成物に関する。より具体的には、本発明は、液体の添加によって即時に調製することができる穀物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児の生後数ヶ月間の良好な栄養は、乳児の最適な発達、成長及び良好な健康のために不可欠である。小児が2歳に達した後、それ以前に起こった発育阻害を回復させることは非常に困難である(Martorellら、1994)。この点に関して、研究は、これが成長遅滞(growth faltering)、特定の微量栄養素の欠乏、及び下痢などの一般的な小児疾患のピーク年齢であることを示している。
【0003】
世界保健機関(WHO)は、世界的な公衆衛生勧告として、乳児の生後6ヶ月間、乳児にヒト母乳を与えるべきであり、ヒト母乳は、乳児の健康な成長及び発達のために必要な栄養を与えることに加えて、感染症及び他の疾患から乳児を保護することができると述べている。その後、6ヶ月を経て、その進化する栄養要求を満たすために、乳児は、母乳育児を最長2歳又はそれを超えて継続しながら、栄養的に適切及び安全な補完食品を摂取すべきである。6ヶ月齢前後で、乳児のエネルギー及び栄養素の必要性は母乳によって提供されるものを超え始め、それらの必要性を満たすために補完食品が必要である。この年齢の乳児はまた、他の食品に対して発達的に準備ができている。補完食品が6ヶ月齢前後に導入されない場合、又は不適切に与えられた場合、乳児の成長が遅滞する可能性がある。
【0004】
補完食品の中には、水、ミルク及び/又はジュースであり得る液体の添加のみで即時に調製することができるものがある。これらの即時調製食品には、穀物を含有するものが含まれる。若齢個体が固形食品の味及び食感を体験するのはこれが初めてであるため、この即時調製食品は、良好な耐容性及び消化される成分を含有し、同時に栄養を若齢個体にもたらすことが重要である。
【0005】
穀物は、優れたエネルギー源であることがよく知られており、乳児は、特に母乳育児が減少しているため、又は母乳育児がもはや利用できない場合には、進化する栄養要求を満たすためにそのエネルギー摂取量を増加させる必要がある。穀物はまた、かなりの量の糖質及びタンパク質を含有し、加えてビタミン及びミネラルの良好な供給源である。これに関して、穀物はまた、鉄強化のための良好な供給源である。乳児用穀物を消費する乳児及び幼児は、非摂取者と比較して高い鉄摂取量を有する(Finnら、2017)。穀物は、主にバクテロイデス個体群を増加させることによる「成体様」微生物叢の発達に関与する、非消化性糖質を提供する。離乳期に、小麦、ソルガム、米、又はオート麦のいずれかをインビトロで大腸に添加すると、乳児の腸内微生物叢の明確な変化が観察されており、乳児用穀物中の複合糖質の割合が高いほど、インビボで6ヶ月~10ヶ月齢の乳児の腸の微生物叢の発酵活性が高くなることが示されている(Klerksら、Nutrients.2019 Feb;11(2):473 Infant Cereals:Current Status,Challenges,and Future Opportunities for Whole Grains)。
【0006】
ヒト母乳は、相当量の糖質を含有する。ヒト母乳中に存在する糖質には、L-フコース及びN-アセチルノイラミン酸などの単糖類、二糖類ラクトース、並びに最大20g/Lのオリゴ糖、いわゆる「ヒトミルクオリゴ糖(HMO)」が含まれる。HMOは、ヒト母乳の3番目に豊富な成分である。ヒトミルク中には、150を超える構造的に異なるオリゴ糖が存在すると推測される。選択したHMOを表1に示す。これらのHMOの約10~13個の各々は、数百ミリグラム~グラム/リットルの濃度でヒトミルク中に存在する(Thurlら(2017)、Nutrition Reviews75(11)920-933)。HMOの中でも、中性HMOは、少なくとも1つのN-アセチルノイラミン酸(NeuAc)部分を含有する酸性HMOと同様に知られている。これらのオリゴ糖の構造的な複雑さ及び豊富さは、ヒトミルクに特有であり、例えば家畜化された乳畜のような他の哺乳動物のミルクには見出されていない。
【0007】
ヒトミルク中におけるこれらの複合オリゴ糖の存在は既に長い間知られており、これらのオリゴ糖の生理学的機能は何十年もの間医薬研究に供されてきた(Gura,T.(2014)Nature’s first functional food.Science 345(6198)747-749)。より豊富なヒトミルクオリゴ糖のいくつかについては、特定の機能が既に同定されている(Bode,L.(2012)Human milk oligosaccharides:every baby needs a sugar mama.Glycobiology22(9),1147-1162.、Bode L,Jantscher-Krenn E(2012)Structure-function relationships of human milk oligosaccharides.Adv Nutr3(3)383S-391S、Morrow AL,Ruiz-Palacios GM,Altaye M,Jiang X,Guerrero ML,Meinzen-Derr JK,Farkas T,Chaturvedi P,Pickering LK,Newburg DS(2004)Human milk oligosaccharides are associated with protection against diarrhea in breast-fed infants.J Pediatr145(3)297-303)。
【0008】
HMOはヒトによって消化されないため、これらの糖類の生理学的役割は数十年にわたって研究されてきた。HMOのプレバイオティクス効果は、100年超前に発見された。消費されると、HMOは、有益な細菌の増殖を助けることによってヒト腸内マイクロバイオームの組成を調節することができる。
【0009】
【0010】
HMOのいくつかの他の機能的効果、特に新生児の発達に対するそれらの効果が過去数年間に明らかにされた。HMOは、ヒトの細胞の表面糖タンパク質に結合することによってヒト細胞に付着する細菌及びウイルス性病原体による感染症のリスクを低減するためのデコイとして作用することが知られている。さらに、種々のHMOは抗炎症効果を有し、免疫調節因子として作用する。したがって、HMOは食物アレルギーを発症するリスクを低減することが提案された。新生児の中枢神経系の発達に対するシアリル化HMOの好ましい効果もまた強く論じられている(’’Prebiotics and Probiotics in Human Milk,Origins and functions of milk-borne oligosaccharides and bacteria’’,Academic Press(2017)editors:McGuire M.,McGuire M.,and Bode L.に総説されている)。
【0011】
HMOの有益な効果を利用するために、個々のHMOを栄養組成物、特に乳児用調製粉乳に添加する努力がなされている。しかしながら、異なるHMOと組み合わせた栄養組成物を補給することが、そのような組成物は、HMOの天然源、すなわち、ヒトミルクにより酷似しており、HMOの単一種のみを含有する組成物よりも、ヒトの健康及び発達に対するより良好な効果を有する可能性が高いため、より良好であろう。
【0012】
HMOが有する有益な効果を考慮して、及び約4ヶ月齢後の若齢個体へのHMOの補給を継続するために、食品産業において、1つ以上のヒトミルクオリゴ糖を含有する穀物組成物、特に、液体の添加によって即時に調製することができる1つ以上のヒトミルクオリゴ糖を含有する乾燥穀物組成物が必要であることが見出された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Martorell et al.,1994
【非特許文献2】Finn,et.al.,2017
【非特許文献3】Klerks,et.al.,Nutrients.2019 Feb;11(2):473 Infant Cereals:Current Status,Challenges,and Future Opportunities for Whole Grains
【非特許文献4】Thurl et al.(2017),Nutrition Reviews75(11)920-933
【非特許文献5】Gura,T.(2014)Nature’s first functional food.Science 345(6198)747-749
【非特許文献6】Bode,L.(2012)Human milk oligosaccharides:every baby needs a sugar mama.Glycobiology22(9),1147-1162.
【非特許文献7】Bode L,Jantscher-Krenn E(2012)Structure-function relationships of human milk oligosaccharides.Adv Nutr3(3)383S-391S
【非特許文献8】Morrow AL,Ruiz-Palacios GM,Altaye M,Jiang X,Guerrero ML,Meinzen-Derr JK,Farkas T,Chaturvedi P,Pickering LK,Newburg DS(2004)Human milk oligosaccharides are associated with protection against diarrhea in breast-fed infants.J Pediatr145(3)297-303
【非特許文献9】“Prebiotics and Probiotics in Human Milk,Origins and functions of milk-borne oligosaccharides and bacteria”,Academic Press(2017)editors:McGuire M.,McGuire M.,and Bode L.
【発明の概要】
【0014】
本発明は、若齢個体の健康な成長及び発達に必要である、1つ以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)及び他の成分を含有する穀物組成物に関する。
【0015】
より詳細には、本発明は、液体の添加によって即時に調製することができる、1つ以上の穀物、及び1つ以上のヒトミルクオリゴ糖、並びに他の成分を含有する新規な穀物組成物に関する。
【0016】
さらに、本発明の目的は、若齢個体用の穀物組成物を提供することであり、前記穀物組成物は、穀物組成物の乾燥重量に基づいて少なくとも0.05重量%の1つ以上のヒトミルクオリゴ糖を含む。
【0017】
本発明の別の目的は、少なくとも5つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖を含有する穀物組成物を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、少なくとも7つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖を含有する穀物組成物を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも7つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖と、シアル酸及びL-フコースからなる群から選択される少なくとも1つの単糖とを含有する穀物組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、若齢個体の健康な成長及び発達に必要である、1つ以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)及び他の成分を含有し、液体の添加によって即時に調製することができる、穀物組成物が提供される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「若齢個体」は、乳児、幼児、又は小児を指す。「乳児」、「幼児」、又は「小児」という用語が別々に使用されない限り、3つすべてが仮定され、用語「若齢個体」の中に含まれる。本明細書で使用される「乳児」という用語は、約4~12ヶ月齢の個体を指す。本明細書で使用される「幼児」という用語は、約1~3歳の年齢の個体を指す。本明細書で使用される「小児」という用語は、約3~11歳の年齢の個体を指す。
【0022】
若齢個体用の穀物組成物が、その年齢の栄養要求に従って調整される必要があることは、先行技術において周知である。カロリー量、タンパク質、糖質及び脂質は、若年個体の発達段階及び年齢に応じて、若齢個体の必要性に合わせて調整されなければならない。
【0023】
異なる発達段階及び年齢の若齢個体が必要とする栄養に応じるために、本発明は、液体の添加による即時調製のための調整可能な穀物組成物を提供する。そのような穀物組成物は、以下の成分:
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて10~90重量%の穀物成分と、
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて1~40重量%の繊維と、
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて4~30重量%のタンパク質と、
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて1~10重量%の脂肪と、
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて2~15重量%の乾燥果実又は野菜と、
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて1~10重量%の微量栄養素と、
-穀物組成物の乾燥重量に基づいて0.5~10重量%の添加物と、
のうちの1つ以上を含む。
【0024】
この組成物は、穀物組成物の乾燥重量に基づいて、最大15重量%の少なくとも1つのヒトミルクオリゴ糖又はヒトミルクオリゴ糖の混合物をさらに含む。
【0025】
本発明の一実施形態では、穀物組成物は、穀物組成物の乾燥重量に基づいて、少なくとも0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05%の1つ以上のヒトミルクオリゴ糖をさらに含む。
【0026】
本発明の別の実施形態では、穀物組成物は、穀物組成物の乾燥重量に基づいて、最大11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%の1つ以上のヒトミルクオリゴ糖を含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、穀物組成物は、穀物組成物の乾燥重量に基づいて10~50重量%の乳成分をさらに含んでもよい。そのような乳成分は、好ましくは、乳清粉末、脱脂粉乳、全脂粉乳及びヨーグルト粉末からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0028】
本発明の穀物組成物は、粉末、顆粒、フレーク、ペレット及び前記形態のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される形態で存在してもよい。通常、本発明に従って調製された穀物組成物は、若齢個体による消費の前に、所望の稠度が得られるまで液体と混合されなければならない。本発明の穀物組成物の即時調製に使用される液体は、好ましくは、水、ミルク及びジュースからなる群から選択される。
【0029】
本発明の穀物成分は、好ましくは、穀粉、破砕穀物、粉砕穀物、細砕穀物及び前記形態のうちの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される形態である。穀物成分は、好ましくは、大麦、オート麦、小麦、米、ライ麦、キビ、ソルガム及びトウモロコシからなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0030】
本発明の穀物組成物中に含有される果実及び野菜は、粉末又はフレークの形態で存在し得る乾燥果実及び野菜である。そのような乾燥果実は、好ましくは、バナナ、ラズベリー、ブルーベリー、クロスグリ、モモ、アンズ、リンゴ及びナシからなる群のうちの1つ以上から選択される。本発明の穀物組成物の乾燥野菜は、好ましくは、ジャガイモ、トマト及び葉物緑色野菜からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0031】
本発明による穀物組成物は、若齢個体における貧血率を低下させるのに役立つ微量栄養素を含有する。本発明の微量栄養素は、好ましくは、鉄、亜鉛、セレン、カルシウム及びビタミンからなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0032】
本発明の穀物組成物中に含まれる添加物は、好ましくは、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マルトデキストリン、着色料及び甘味料からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0033】
本発明の穀物組成物は、オリゴ糖、具体的には、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)をさらに含有する。ヒトミルクオリゴ糖は、腸のマイクロバイオームの発達に影響を与え、したがって、乳児の健康に好ましい影響を及ぼすことが示されている。研究はまた、それらがウイルス及び細菌感染から新生児を保護し、アレルギー及び炎症のリスクを低減し、脳の発達及び神経活動を促進することを示している。若齢個体におけるこれらのすべての好ましい効果、及び即時調製のための穀物成分を含有する穀物組成物に対する必要性を考慮して、1つ以上のHMOが本発明の穀物組成物中に含まれている。
【0034】
本発明の穀物組成物の少なくとも1つ以上のHMOは、微生物発酵によって生産されてもよく、HMOを合成することができる遺伝子操作された微生物は、培地(発酵ブロス)中で、前記遺伝子操作された微生物による前記HMOの合成を許容する条件下で培養される。前記少なくとも1つのヒトミルクオリゴ糖は、好ましくは、アセチル-N-ラクトサミン、シアリル化オリゴ糖及びフコシル化オリゴ糖からなる群から選択される。
【0035】
少なくとも1つ以上のアセチル-N-ラクトサミンは、好ましくは、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)及びラクト-N-フコペンタオースI(LNPFI)からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0036】
少なくとも1つ以上のシアリル化オリゴ糖は、好ましくは、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、シアリルラクト-N-テトラオースa(LST-a)、シアリルラクト-N-テトラオースb(LST-b)、シアリルラクト-N-テトラオースc(LST-c)及びジシアリルラクト-N-テトラオース(DSLNT)からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0037】
少なくとも1つ以上のフコシル化オリゴ糖は、好ましくは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)及び3-フコシルラクトース(3-FL)からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0038】
本発明の一実施形態では、穀物組成物は、少なくとも5つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖の混合物を含有し得る。そのような5つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖は、好ましくは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)からなる群から選択される。前記混合物の例示的な組成物において、5つの構造的に異なるHMOは、表2に示されている量で混合物中に存在する。表2に示されている混合物の各成分の量は平均量を表し、混合物の所与の各成分の量は、各成分について表2に示されている量に対して、約±10%、好ましくは約±5%の範囲で変動し得ることが理解される。
【0039】
【0040】
本発明のさらなる及び/又は代替的な実施形態では、穀物組成物は、少なくとも7つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖の混合物を含有し得る。そのような7つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖は、好ましくは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFPI)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)からなる群から選択される。前記混合物の例示的な組成物において、7つの構造的に異なるHMOは、表3に示されている量で混合物中に存在する。表3に示されている混合物の各成分の量は平均量を表し、混合物の所与の各成分の量は、各成分について表3に示されている量に対して、約±10%、好ましくは約±5%の範囲で変動し得ることが理解される。
【0041】
【0042】
本発明のさらなる及び/又は代替的な実施形態では、穀物組成物は、少なくとも7つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖と、シアル酸及びL-フコースからなる群から選択される少なくとも1つの単糖との混合物を含有し得る。そのような7つの構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖は、好ましくは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFPI)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)からなる群から選択される。前記混合物の例示的な組成物において、7つの構造的に異なるHMO及び2つの単糖は、表4に示されている量で混合物中に存在する。表4に示されている混合物の各成分の量は平均量を表し、混合物の所与の各成分の量は、各成分について表4に示されている量に対して、約±10%、好ましくは約±5%の範囲で変動し得ることが理解される。
【0043】
【0044】
本発明のさらなる及び/又は代替的な実施形態では、表5の第2の列による、5つの構造的に異なるHMOを含有する混合物の組成は、直接消費のための液体の添加により即時に調製された最終的な穀物組成物が、表5の第3の列に示されている濃度の混合物の化合物を含有し得るように、本発明の穀物組成物を補給するのに特に有利である。表5に示されている混合物の各成分の量は平均量を表し、混合物の所与の各成分の量は、各成分について表5に示されている量に対して、約±10%、好ましくは約±5%の範囲で変動し得ることが理解される。
【0045】
【0046】
本発明のさらなる及び/又は代替的な実施形態では、表6の第2の列による、7つの構造的に異なるHMOを含有する混合物の組成は、直接消費のための液体の添加により即時に調製された最終的な穀物組成物が、表6の第3の列に示されている濃度の混合物の化合物を含有し得るように、本発明の穀物組成物を補給するのに特に有利である。表6に示されている混合物の各成分の量は平均量を表し、混合物の所与の各成分の量は、各成分について表6に示されている量に対して、約±10%、好ましくは約±5%の範囲で変動し得ることが理解される。
【0047】
【0048】
本発明のさらなる及び/又は代替的な実施形態では、表7の第2の列による、7つの構造的に異なるHMO及び2つの単糖を含有する混合物の組成は、直接消費のための液体の添加により即時に調製された最終的な穀物組成物が、表7の第3の列に示されている濃度の混合物の化合物を含有し得るように、本発明の穀物組成物を補給するのに特に有利である。表7に示されている混合物の各成分の量は平均量を表し、混合物の所与の各成分の量は、各成分について表7に示されている量に対して、約±10%、好ましくは約±5%の範囲で変動し得ることが理解される。
【0049】
【0050】
本発明は、特定の実施形態に関して、及び実施例を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2などの用語は、類似の要素間で区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、順位付けか、又は他の任意の方法で順序を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換性があり、本明細書に記載される発明の実施形態は、本明細書に記載又は例示される以外の順序で実施可能であることを理解されたい。
【0051】
特許請求の範囲において使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではないことに留意されたい。他の要素又は工程を除外するものではない。したがって、言及されたような記載された特徴、整数、工程又は構成要素の存在を指定するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程若しくは構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0052】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な箇所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すものとは限らない。さらに、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者には明らかであるように、特定の特徴、構造、又は特性は、任意の好適な方式で組み合わせられ得る。
【0053】
同様に、本発明の代表的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、様々な本発明の態様のうちの1つ以上の理解を容易にする目的で、単一の実施形態又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。この開示方法は、特許請求された発明が、各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を示していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が示すように、本発明の態様は、任意の前述の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴を必要とし得る。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書にて、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0054】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、いくつかの特徴を含むが、他の実施形態に含まれる他の特徴は含まないにもかかわらず、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることが意図され、当業者によって理解されるように異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0055】
本明細書で提供される説明及び実施例において、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることが理解される。他の例では、説明の理解を容易にするために、周知の方法、構造及び技術は詳細に示されていない。
【0056】
次に、本発明を、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明によって説明する。本発明の他の実施形態は、本発明の真の趣旨又は技術的利点から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成することができ、本発明は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されることは明らかである。
【0057】
以下の実施例は、本発明の実施形態のみを示し、それらに限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
本発明の一実施形態に従って、以下の穀物組成物を調製した。
【0059】
穀物組成物の乾燥重量に基づいて、18.34重量%の量の米粉、キビ粉12.34重量%、トウモロコシ粉17.6重量%、脱脂粉乳9.20重量%、全脂粉乳7.35重量%、マルトデキストリン9.96重量%、ビタミン1.21重量%、鉄及び亜鉛の混合物1.51重量%、脂肪4.12重量%、バナナ粉末8.35重量%、バナナ香料0.82重量%、及び9.2重量%のHMOの混合物(表5による5つの構造的に異なるHMOを含むHMOの混合物)を含有する、即時調製のための粉末及びフレークの形態の100grの穀物組成物。
【0060】
[実施例2]
本発明の別の実施形態に従って、以下の穀物組成物を調製した。
【0061】
穀物組成物の乾燥重量に基づいて、14.62重量%の量の米粉、トウモロコシ粉17.62重量%、脱脂粉乳10.47重量%、ヨーグルト粉末7.38重量%、乳清粉末20.60重量%、マルトデキストリン10重量%、ビタミン1.21重量%、鉄及び亜鉛の混合物1.51重量%、脂肪5.15重量%、クロスグリ粉末1.54重量%、ブルーベリー粉末1.24重量%、ラスペリー粉末1.55重量%、ヨーグルト香料0.06重量%、リンゴフレーク1.03重量%、及び6.02重量%のHMOの混合物(表7による7つの構造的に異なるHMO及び2つの単糖を含むHMOの混合物)を含有する、即時調製のための粉末及びフレークの形態の100grの穀物組成物。
【0062】
[実施例3]
本発明の一実施形態に従って、以下の穀物組成物を調製した。
【0063】
穀物組成物の乾燥重量に基づいて、16.82重量%の量の米粉、キビ粉10.82重量%、トウモロコシ粉18.34重量%、全脂粉乳1.89重量%、マルトデキストリン21.18重量%、ビタミン1.21重量%、鉄及び亜鉛の混合物1.51重量%、脂肪7.12重量%、バジル香料0.41重量%、ペッパーフレーク2.16重量%、トマト粉末4.11重量%、ジャガイモフレーク5.15重量%、及び9.28重量%のHMOの混合物(表6による7つの構造的に異なるHMOを含むHMOの混合物)を含有する、即時調製のための粉末及びフレークの形態の100grの穀物組成物。
【国際調査報告】