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特表2023-501773イントロデューサシースおよびイントロデューサシースを導入する方法
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  • 特表-イントロデューサシースおよびイントロデューサシースを導入する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】イントロデューサシースおよびイントロデューサシースを導入する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
A61M25/06 550
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520033
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2019076558
(87)【国際公開番号】W WO2021063489
(87)【国際公開日】2021-04-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514222743
【氏名又は名称】クリアストリーム・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】リビングストン,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】カバナ,ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】ケイヒル,リサ
(72)【発明者】
【氏名】レドモンド,ジャック
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA15
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB37
4C267BB38
4C267CC08
4C267GG24
4C267GG34
(57)【要約】
患者の身体のアクセス部位を通して身体に挿入するためのイントロデューサシース(10)。本イントロデューサシースは、アクセス部位に挿入して血管内作業を実行するための長手方向シース部材(11)と、長手方向シース部材の外面(lid)を覆って配置された放射線不透過性マーカー要素(12)とを備える。放射線不透過性マーカー要素は、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と接触していない第1の位置から、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と当接する第2の位置に、長手方向シース部材の長手方向長さの少なくとも一部分に沿って移動可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体のアクセス部位を通して前記身体内に挿入するためのイントロデューサシースであって、
前記アクセス部位に挿入して血管内作業を行うための長手方向シース部材と、
前記長手方向シース部材の外面を覆って配置された放射線不透過性マーカー要素とを備えるイントロデューサシースであり、
前記放射線不透過性マーカー要素は、前記放射線不透過性マーカー要素が前記アクセス部位と接触していない第1の位置から、前記放射線不透過性マーカー要素の前記アクセス部位への挿入が妨げられるように、前記放射線不透過性マーカー要素が前記アクセス部位と当接する第2の位置に、前記長手方向シース部材の長手方向長さの少なくとも一部分に沿って移動可能である、イントロデューサシース。
【請求項2】
前記長手方向シース部材が、その遠位部に固定して配置された第2の放射線不透過性マーカー要素をさらに備える、請求項1に記載のイントロデューサシース。
【請求項3】
前記第2の放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材の遠位端に配置された、請求項2に記載のイントロデューサシース。
【請求項4】
前記放射線不透過性マーカー要素を前記第2の位置に対して付勢するように構成された付勢要素をさらに備える、請求項1、2、または3に記載のイントロデューサシース。
【請求項5】
前記付勢要素の弛緩状態において、前記放射線不透過性マーカー要素が前記長手方向シース部材の遠位端と位置合わせされるように前記付勢要素が構成された、請求項4に記載のイントロデューサシース。
【請求項6】
前記付勢要素がばねである、請求項4または5に記載のイントロデューサシース。
【請求項7】
前記長手方向シース部材の近位端に配置されたシースハブをさらに備え、前記ばねが、前記シースハブと前記放射線不透過性マーカー要素との間に配置された、請求項6に記載のイントロデューサシース。
【請求項8】
前記ばねがニチノールから作られた、請求項6または7に記載のイントロデューサシース。
【請求項9】
前記放射線不透過性マーカー要素が、第1の放射線不透過性部分と第2の非放射線不透過性部分とを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項10】
前記第1の放射線不透過性部分が、前記放射線不透過性マーカー要素の遠位部に配置された、請求項9に記載のイントロデューサシース。
【請求項11】
前記放射線不透過性マーカー要素が放射線不透過性材料のみから構成された、請求項1~8のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項12】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材の長手方向軸に平行なその長手方向長さに沿ってテーパがつけられた、請求項1~11のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項13】
前記放射線不透過性マーカー要素の遠位部がその近位部よりも幅広である、請求項1~12のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項14】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記アクセス部位を取り囲むように構成された、請求項1~13のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項15】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材の外面に接触する、請求項1~14のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項16】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材に対して前記放射線不透過性マーカー要素をスライドさせることによって、前記長手方向シース部材の長手方向長さに沿って移動可能である、請求項1~15のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項17】
イントロデューサシースを患者の身体のアクセス部位に挿入する方法であって、
長手方向シース部材を前記アクセス部位に挿入するステップであって、前記長手方向シース部材が前記イントロデューサシース内に備えられ、前記イントロデューサシースが、前記長手方向シース部材の外面を覆って配置された放射線不透過性マーカー要素を有する、ステップと、
前記放射線不透過性マーカー要素が前記アクセス部位と接触していない第1の位置から、前記放射線不透過性マーカー要素の前記アクセス部位への挿入が妨げられるように、前記放射線不透過性マーカー要素が前記アクセス部位と当接する第2の位置に、前記放射線不透過性マーカー要素を移動させるステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記イントロデューサシースが、付勢要素をさらに備え、前記付勢要素が、前記放射線不透過性マーカー要素を前記第1の位置から前記第2の位置へ付勢する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線不透過性マーカー要素の前記アクセス部位への挿入が妨げられるように、前記放射線不透過性マーカー要素と前記アクセス部位との間の当接を維持しながら、前記長手方向シース部材の挿入深さを変更するステップをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者の身体のアクセス部位を通して身体に挿入するためのイントロデューサシース、および、患者の身体のアクセス部位にイントロデューサシースを挿入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イントロデューサシースは、血管内処置を行うために、アクセス部位を通してカテーテルまたは他のデバイスを血管内に安全に導入するために使用することができる。アクセス部位は、上腕部、大腿部、または任意の他の適切なアクセス部位の場合がある。
【0003】
血管内処置を行うとき、医師はイントロデューサシースを再配置する必要がある場合がある。しかしながら、これによって、意図せずシースを引き抜いてしまうことがあり、これは、アクセスのやり直しなど、潜在的により大きな複雑さを伴って処置を長引かせる可能性がある。
【0004】
当該技術で知られている現状のイントロデューサシースでは、医師ができることは、アクセス部位を見て確認し、イントロデューサシース先端を透視して確認することだけである。例えば、特開平8-47538およびWO2016/094068A1は両方とも、遠位端に放射線不透過性マーカーが配置されたシースを開示している。これらのデバイスでは、医師は、透視下でアクセス部位の位置を簡便で正確に決定することができず、その結果、上記の問題が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の点から、医師が血管内処置中にアクセス部位の位置を簡便で信頼性高く確認することができる改良型イントロデューサシースに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、本開示をより良く理解することができるように、かつ、本開示を実際に実行することができる方法を示すために、添付の図面を単なる例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示によるイントロデューサシースの一実施形態の側面図である。
図2】第1の構成の図1のイントロデューサシースの図である。
図3A】第2の構成の図1のイントロデューサシースの図である。
図3B】カテーテルがイントロデューサシースを通って患者の身体のアクセス部位に挿入されるときの、第2の構成の図1のイントロデューサシースの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一態様では、患者の身体のアクセス部位を通して身体に挿入するためのイントロデューサシースが提供される。イントロデューサシースは、アクセス部位に挿入して血管内作業を行うための長手方向シース部材を備えてもよい。イントロデューサシースは、長手方向シース部材の外面を覆って配置された放射線不透過性マーカー要素をさらに備えてもよい。放射線不透過性マーカー要素は、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と接触しない第1の位置から、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と当接する第2の位置に、長手方向シース部材の長手方向長さの少なくとも一部分に沿って移動可能であってもよい。
【0009】
本開示を通して、「イントロデューサシース」という用語は、カテーテルまたは他の血管内デバイスを患者の体内に挿入することを可能にするデバイスを指す場合がある。
本開示を通して、「アクセス部位」という用語は、そこを通って体外から血管または他の管へアクセスすることができる、人または動物の体の上の任意の点を指す場合がある。例えば、アクセス部位は、身体の皮膚の切開部であってもよい。
【0010】
本開示を通して、「長手方向シース部材」という用語は、人または動物の体の管に挿入するのに適する中空の細長い物体を指す場合がある。長手方向シース部材は、そこを通してカテーテルまたは他の細長いデバイスなどの別の物体を挿入することができるように構成される。
【0011】
本開示を通して、「血管内作業」という用語は、例えば、経皮経管血管形成術などの、人または動物の体の管内で実行される任意の処置を指す場合がある。
本開示を通して、「放射線不透過性」という用語は、物質がX線または同様の放射線に対して不透過である特性を指す場合がある。本書で言及されるいかなる放射線不透過性材料/物体も、医者が透視中に材料/物体を容易に識別することができる程度に放射線不透過性である。使用することができる放射線不透過性材料の例には、硫酸バリウム、ビスマス化合物、酸化ジルコニウム、鉛、金、銀、ステンレス鋼、白金、イリジウム、タングステン、またはタンタルが含まれる。特定の実施形態では、本明細書で言及される放射線不透過性材料/物体のいずれも、少なくとも1000ハウンスフィールド単位(HU:Hounsfield Unit)、任意選択的に、少なくとも5000ハウンスフィールド単位(HU)、さらに任意選択的に、少なくとも10000ハウンスフィールド単位(HU)、さらに任意選択的に、少なくとも20000ハウンスフィールド単位(HU)の放射線濃度を有する。
【0012】
本開示を通して、「覆って配置された」という用語は、放射線不透過性マーカー要素が長手方向シース部材を完全に、または部分的にだけ囲む構成を指す場合がある。放射線不透過性マーカー要素は、長手方向シース部材と完全に接触していてもよく、部分的に接触していてもよく、または接触していなくてもよい。
【0013】
長手方向シース部材がアクセス部位に挿入されると、放射線不透過性マーカー要素が、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と接触していない第1の位置から、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と当接する第2の位置に、長手方向シース部材の長手方向長さの少なくとも一部分に沿って移動可能であるようにイントロデューサシースは構成される。
【0014】
イントロデューサシースは、長手方向シース部材の遠位部に固定して配置された第2の放射線不透過性マーカー要素をさらに備えてもよい。
第2の放射線不透過性マーカー要素は、長手方向シース部材の遠位端に配置されてもよい。
【0015】
イントロデューサシースは、放射線不透過性マーカー要素を第2の位置に付勢するように構成された付勢要素を備えてもよい。
本開示を通して、「付勢要素」という用語は、変形時に、物体を特定の方向に移動させるように、または物体を特定の位置に押圧するように、物体に復元力を及ぼす要素を指す場合がある。
【0016】
付勢要素の弛緩状態において、付勢要素は、放射線不透過性マーカー要素が長手方向シース部材の遠位端と位置合わせされるように構成されてもよい。
付勢要素はばねであってもよい。
【0017】
イントロデューサシースは、長手方向シース部材の近位端に配置されたシースハブをさらに備えてもよく、ばねは、シースハブと放射線不透過性マーカー要素との間に配置される。
【0018】
ばねの端部はそれぞれ、シースハブおよび放射線不透過性マーカー要素に固定して取り付けられてもよい。
ばねはニチノールから作られてもよい。
【0019】
放射線不透過性マーカー要素は、第1の放射線不透過性部分と第2の非放射線不透過性部分とを備えてもよい。
第1の放射線不透過性部分は、放射線不透過性マーカー要素の遠位部に配置されてもよい。特定の実施形態では、第1の放射線不透過性部分は、放射線不透過性マーカー要素の遠位に配置される。
【0020】
放射線不透過性マーカー要素は放射線不透過性材料のみから構成されてもよい。
放射線不透過性マーカー要素は、長手方向シース部材の長手方向軸に平行なその長手方向長さに沿ってテーパがつけられてもよい。
【0021】
放射線不透過性マーカー要素は細長くてもよい。特定の実施形態では、放射線不透過性マーカー要素は、その長手方向長さに沿ってテーパがつけられてもよい。
放射線不透過性マーカー要素は、その近位部よりも幅広い遠位部を有してもよい。放射線不透過性マーカー要素は、その近位端よりも幅広い遠位端を有してもよい。
【0022】
放射線不透過性マーカー要素は、アクセス部位を取り囲むように構成されてもよい。
放射線不透過性マーカー要素は、長手方向シース部材の外面に接触してもよい。
放射線不透過性マーカー要素は、長手方向シース部材に対して放射線不透過性マーカー要素をスライド(換言すれば、摺動)させることによって、長手方向シース部材の長手方向長さに沿って移動可能であってもよい。
【0023】
長手方向シース部材の挿入深さが変更されるとき、放射線不透過性マーカー要素はアクセス部位との当接を維持して、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、イントロデューサシースは構成されてもよい。
【0024】
本開示の第2の態様では、イントロデューサシースを患者の身体のアクセス部位に挿入する方法が提供される。本方法は、長手方向シース部材をアクセス部位に挿入するステップであって、長手方向シース部材がイントロデューサシース内に備えられる、ステップを含んでもよい。イントロデューサシースは、長手方向シース部材の外面を覆って配置された放射線不透過性マーカー要素を有してもよい。本方法は、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と接触していない第1の位置から、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、放射線不透過性マーカー要素がアクセス部位と当接する第2の位置に、放射線不透過性マーカー要素を移動させるステップをさらに含んでもよい。
【0025】
イントロデューサシースは、付勢要素をさらに備えてもよい。付勢要素は、放射線不透過性マーカー要素を第1の位置から第2の位置へ付勢することができる。
本方法は、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、放射線不透過性マーカー要素とアクセス部位との間の当接を維持しながら、長手方向シース部材の挿入深さを変更するステップをさらに含んでもよい。
【0026】
本方法のさらなる実施様態では、イントロデューサシースは、長手方向シース部材の近位端に配置されたシースハブと、シースハブと放射線不透過性マーカー要素との間に配置されたばねとをさらに備える。ばねは、放射線不透過性マーカーを長手方向シース部材の遠位端に向けて付勢するように構成されてもよい。ばねは、第2の位置に放射線不透過性マーカー要素を配置することによって張力がかけられてもよい。
【0027】
本開示のさらなる態様では、本開示を通して説明されるようなイントロデューサシースと、カテーテルとを備えるシステムが提供される。カテーテルは、カテーテルの遠位部に第3の放射線不透過性マーカー要素を備える。
【0028】
図1は、イントロデューサ(換言すれば、導入器)シース10の側面図である。イントロデューサシース10は、患者の体内にカテーテルまたは他のデバイスを導入して血管内処置を行うことを可能にするために、身体のアクセス部位を通して患者の体内に挿入するのに適している。アクセス部位は、例えば、上腕部または大腿部のアクセス部位であってもよい。
【0029】
イントロデューサシース10は、長手方向シース部材11を備える。長手方向シース部材11は、遠位部11a、遠位端11b、および近位端11cを有する。長手方向シース部材11は、カテーテルまたは他の血管内デバイスがその中を通って配置されることを可能にする内腔を備えるチューブである(後述)。
【0030】
イントロデューサシース10が患者の体内に導入されるとき、長手方向シース部材11は、アクセス部位を通って患者の体内に入り、これは、イントロデューサシース10の中で患者の身体に入る唯一の部分であり得る。
【0031】
イントロデューサシース10は、長手方向シース部材11の外面11dを覆って配置された放射線不透過性マーカー要素12をさらに備える。放射線不透過性マーカー要素12は、長手方向シース部材11の長手方向長さに沿って移動可能である。イントロデューサシース10がアクセス部位を通って患者の体内に挿入されるとき、(図2および図3でより詳細に説明するように)放射線不透過性マーカー要素12は、放射線不透過性マーカー要素12がアクセス部位と接触していない第1の位置から、放射線不透過性マーカー要素のアクセス部位への挿入が妨げられるように、放射線不透過性マーカー要素12がアクセス部位と当接する第2の位置に移動することができる。
【0032】
血管内処置は、通常、医師が患者の血管内のデバイスを確認することを可能にする透視下で実行される。放射線不透過性マーカー12が第2の位置にあり、アクセス部位と当接しているとき、医師は、血管内処置を実行している間、アクセス部位の位置を透視下で簡便で正確に確認することができる。
【0033】
放射線不透過性マーカー要素12は長手方向シース部材11の外面11dを覆って配置されているので、医師は、放射線不透過性マーカーを紛失することなく、または接着剤の使用を必要とせずに、放射線不透過性マーカー要素12をアクセス部位と当接する位置まで容易に移動させて、アクセス部位の位置を正確に示すことができる。さらに、イントロデューサシース10を再配置するとき、放射線不透過性マーカー12は、アクセス部位と当接するように簡便に再配置することができ、放射線不透過性マーカー要素12が落下する、または紛失する危険はない。
【0034】
したがって、イントロデューサシース10によって、医師は、血管内処置中にアクセス部位を簡便で信頼性高く特定(locate)することができる。
長手方向シース部材11は、第2の放射線不透過性マーカー要素15をさらに備える。第2の放射線不透過性マーカー要素15は、長手方向シース部材11の遠位部11aに配置される。
【0035】
第2の放射線不透過性マーカー要素15によって、医師は、透視下で長手方向シース部材11の遠位部11aを可視化することができ、したがって、血管内処置が実行されている間、アクセス部位に配置された放射線不透過性マーカー要素12と、患者の体内の長手方向シース部材11の遠位部11aに配置された第2の放射線不透過性マーカー要素15との間の距離を簡便に決定することができる。
【0036】
これによって、医師は、イントロデューサシース10の体内への侵入深さを簡便で正確に決定して、血管内処置中に偶発的にシースを引き抜くことを最小限にすることができる。
【0037】
図1では、第2の放射線不透過性マーカー要素15は、長手方向シース部材11の最も遠位の部分に相当する遠位端11bに配置される。これは、長手方向シース部材の患者の体内への侵入深さを最も正確に示すことができる。
【0038】
放射線不透過性マーカー要素12は、遠位部12cおよび近位部12dを有する。放射線不透過性マーカー要素12は、長手方向シース部材11の外面11dの周りに配置して長手方向シース部材11の外面11dに接触することができるように内腔をさらに画定する。放射線不透過性マーカー要素12は、放射線不透過性マーカー要素12を長手方向シース部材11に対してスライドさせることによって、長手方向シース部材11の長手方向長さに沿って移動可能である。
【0039】
図1では、放射線不透過性マーカー要素12は、長手方向シース部材11を取り囲み(encircle)、その結果、放射線不透過性マーカー要素12は、放射線不透過性マーカー要素12が長手方向シース部材11の遠位端11bを通り過ぎるように長手方向シース部材11に沿って遠位方向にスライドされない限り、長手方向シース部材11から除去することができない。
【0040】
放射線不透過性マーカー要素12は、第1の放射線不透過性部分12aおよび第2の非放射線不透過性部分12bを備える。第1の放射線不透過部分12aは、放射線不透過マーカー要素12の遠位部12cに配置され、その結果、アクセス部位の位置をより正確に示す。図1の実施形態では、第2の放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性マーカー要素の最も遠位の端部に配置される。第2の非放射線不透過性部分12bは、放射線不透過性マーカー要素の近位部12dの方に配置される。
【0041】
第1の放射線不透過部分12aは、例えば、白金イリジウム化合物などの任意の放射線不透過性材料で構成されてもよい。第2の非放射線不透過性部分12bは、PEBAX(登録商標)などのポリエーテルブロックアミドから作られてもよい。
【0042】
放射線不透過性マーカー要素12は、放射線不透過性マーカー要素12の遠位部12cが放射線不透過性マーカー要素12の近位部12dより幅が広くなるように、その内腔の軸に沿って(すなわち、シース部材11の長手方向長さに沿って)テーパがつけられている。テーパをつけることによって、放射線不透過性マーカー要素12をアクセス部位により容易に保持および配置することができる。
【0043】
イントロデューサシース10は、放射線不透過性マーカー要素12の近位部12dに接続されたばね14を含んでもよい。本実施形態のばね14は、圧縮ばね、より詳細には、圧縮コイルばねであるが、他の実施形態では、任意の適切なばねが使用されてもよい。さらに他の実施形態では、ばね14ではなく、アクセス部位との接触を維持するために放射線不透過性マーカー要素に力を加える任意の構成部品が使用されてもよい。ばね14は、放射線不透過性マーカー要素12を長手方向シース部材11の遠位端11bに向けて付勢するように構成される。イントロデューサシース10が患者の体内に挿入されると、ばね14は、放射線不透過性マーカー要素12がアクセス部位と当接するように、放射線不透過性マーカー要素12を第2の位置に付勢する(図3参照)。
【0044】
ばね14によって、医師が、放射線不透過性マーカー要素12をアクセス部位の位置に手動でスライドさせて、そこに保持する必要性が除去される。これによって、アクセス部位の位置およびイントロデューサシース10の患者の体内への侵入深さをより信頼性高く簡便に決定することができる。放射線不透過性マーカー要素12は、長手方向シース部材11が体内の異なる深さに移動するときでも、アクセス部位との当接を維持することができる。
【0045】
ばね14は、弛緩状態(図示せず)において、放射線不透過性マーカー要素12が長手方向シース部材11の遠位端11bと位置合わせされるように、詳細には、第1の放射線不透過部12aが長手方向シース部材の遠位端11bと位置合わせされるように構成されてもよい。これによって、放射線不透過性マーカー12は、長手方向シース部材11が挿入される全長さでアクセス部位と当接している状態を保つことができる。
【0046】
長手方向シース部材11の近位端11cは、シースハブ13に接続される。シースハブ13は、イントロデューサシース10を他の医療デバイスに接続することを可能にし、カテーテルまたは他のデバイスを長手方向シース部材11の内腔に導入し、アクセス部位を通して患者の体内に導入することを補助する。
【0047】
ばね14の近位端は、シースハブ13に固定して接続される。したがって、ばね14は、シースハブ13と放射線不透過性マーカー要素12との間に配置され、放射線不透過性マーカー要素12をシースハブ13から遠位方向に離れるように付勢する。
【0048】
ばね14は、ばね14のための弾力的な材料特性を提供するニチノールなどの超弾性材料から作られてもよい。他の実施形態では、ステンレス鋼などの他の弾性(すなわち、弾力的に変形可能な)材料がばねのために使用される。
【0049】
図2は、患者の体内へのアクセス部位A、およびアクセス部位Aを通って患者の体内に入っている図1のイントロデューサシース10を示す。イントロデューサシース10は、放射線不透過性マーカー要素12がアクセス部位Aと接触していない、放射線不透過性マーカー要素12が長手方向シース部材の長手方向長さに沿う第1の位置にある第1の構成で示されている。
【0050】
この第1の位置では、アクセス部位Aは放射線不透過性マーカー要素12によって塞がれていないので、医師はアクセス部位Aを目で見ることができ、それによって、医師は長手方向シース部材11をアクセス部位Aに簡便に挿入することができる。
【0051】
放射線不透過性マーカー要素12を第1の位置に配置するために、医師は、放射線不透過性マーカー要素12を長手方向シース部材11の長手方向長さに沿って近位方向にスライドさせる。これによって、ばね14は圧縮され、放射線不透過性マーカー要素12に遠位方向に付勢力を及ぼす。
【0052】
イントロデューサシース10がアクセス部位Aに適切に挿入されると、医師は、放射線不透過性マーカー要素12を離すことができる。圧縮されたばね14によって及ぼされる付勢力は、放射線不透過性マーカー要素12を、アクセス部位Aと当接するまで長手方向シース部材11の遠位端11bの方へ長手方向シース部材11の長手方向長さに沿って移動させる。そのとき、イントロデューサシース10は、放射線不透過性マーカー要素12が長手方向シース部材11の長手方向長さに沿う第2の位置にある第2の構成になり、これは、図3Aおよび図3Bに示される。
【0053】
図3Aは、放射線不透過性マーカー要素12のアクセス部位Aへの挿入が妨げられるように放射線不透過性マーカー要素12がアクセス部位Aと当接する第2の構成における図1のイントロデューサシース10を示す。
【0054】
ばね14はまだ圧縮された状態にあり、患者の身体に当たって付勢するように放射線不透過性マーカー要素12に力を及ぼす。
放射線不透過性マーカー要素12の遠位部12cは、アクセス部位Aよりも直径が大きい。したがって、放射線不透過性マーカー要素12は、アクセス部位Aを通って患者の体内に入らずに、アクセス部位Aと当接するように患者の身体に対して付勢される。
【0055】
放射線不透過性マーカー要素12の遠位部12cの直径がより大きいことにより、放射線不透過性マーカー要素12は、第2の位置においてアクセス部位Aを取り囲む(encompass)。これによって、イントロデューサシース10が回転または再配置されるときでも、アクセス部位Aの位置をより正確に決定することができる。
【0056】
血管内処置を実行するとき、通常、医師が患者の体内のデバイスおよび手術器具を確認することができるように、透視下で処置が実行される。このような処置の過程で、イントロデューサシース10は、しばしば、イントロデューサシース10の侵入深さ、侵入角度、または回転角度を変更するために再配置しなければならない場合がある。
【0057】
イントロデューサシース10が第2の構成にあるとき、医師は、放射線不透過マーカー要素12と患者の体内の第2の放射線不透過マーカー要素15との間の距離を透視下で簡便で信頼性高く測定することができ、それによって、長手方向シース部材11の患者の体内への侵入深さを決定することができる。侵入深さの決定は、例えば、医師が透視画像を示す画面で距離を測定することによって行うことができる。これに代えて、コンピュータによって透視画像に基づく距離の自動測定がなされ、次いで、医師に対して侵入深さを表示してもよい。血管内処置中に、長手方向シース部材11の患者の体内への侵入深さを知ることによって、医師は、偶発的にシースを引き抜くことを避けることができる。
【0058】
イントロデューサシース10によって、イントロデューサシース10が移動または再配置されるときでさえ、長手方向シース部材11の侵入深さを正確で信頼性高く決定することができる。長手方向シース部材11の少なくとも一部分が患者の体内に配置されている限り、ばね14は、放射線不透過性マーカー要素12をアクセス部位Aと当接するように遠位方向に付勢する。したがって、医師は、放射線不透過性マーカー要素12がアクセス部位Aと当接したままで、イントロデューサシース10の侵入の深さ、侵入角度、または回転角度を変更するように、イントロデューサシース10を再配置することができる。
【0059】
図3Bは、第2の構成にある図1のイントロデューサシース10、およびイントロデューサシース10を通って患者の体内に導入されているカテーテル16を示す。
イントロデューサシース10が患者の身体に配置されると、医師は、シースハブ13を使用して、カテーテル16または他のデバイスを長手方向シース部材11の内腔に導入し、アクセス部位Aを通して患者の体内に導入することができる。カテーテル16は、長手方向シース部材11の内腔内をスライド可能に移動することができるように、長手方向シース部材11の内腔より小さい外径を有する細い可撓性チューブである。カテーテル16は、ドレナージ、流体または気体の投与、あるいは手術器具によるアクセスなど、いくつかの異なる血管内処置のために使用することができる。カテーテル16の使用を必要とする外科的処置は、例えば、バルーン血管形成、血管造影、バルーン中隔裂開、およびカテーテルアブレーションを含んでもよい。
【0060】
カテーテル16は、カテーテル16の遠位部16aに配置された第3の放射線不透過性マーカー要素17を備える。第3の放射線不透過性マーカー要素17によって、血管内作業が実行されている間、医師は、透視下でカテーテル16の遠位部16aの位置を見ることができる。
【0061】
さらに、医師は、カテーテル16の遠位部16aに配置された第3の放射線不透過性マーカー17と長手方向シース部材11の遠位部11aに配置された第2の放射線不透過性マーカー要素15との間の距離、およびカテーテル16の遠位部16aに配置された第3の放射線不透過性マーカー17とアクセス部位Aと当接する放射線不透過性マーカー要素12との間の距離を簡便で信頼性高く決定することができる。言い換えれば、医師は、カテーテル16の侵入深さを簡便で信頼性高く決定することができ、それは、血管内作業の実行を助けるとともに、偶発的なカテーテルの引き抜きを防ぐ。
【0062】
当業者には、様々な修正は明らかであろう。例えば、医師が、アクセス部位において放射線不透過性マーカー要素12を手動で移動および保持することができるように、イントロデューサシース10はばね14を備えなくてもよい。ばね14は、シースハブ13に取り付けられる必要もない。ばね14は、例えば、放射線不透過性マーカー要素に付勢力を与えるために、長手方向シース部材11に接続されてもよい。
【0063】
放射線不透過性マーカー要素12は、非放射線透過性部分を有しない第1の放射線透過性部分12aのみから構成されてもよい。
ばね14は、弾性ゴム要素または磁気付勢要素などの任意の他の付勢要素に置き換えられてもよい。
【0064】
放射線不透過マーカー要素12の第1の放射線不透過部分12aは、放射線不透過マーカー要素12の遠位端に直接配置されなくてもよく、むしろ、遠位端と第1の放射線不透過部分12aとの間に非放射性透過性材料の部分があってもよい。
【0065】
同様に、第2の放射線不透過性マーカー15は、長手方向シース部材11の遠位端11bに配置されなくてもよく、むしろ、長手方向シース部材11の遠位部11a内のどこかに配置されてもよい。
【0066】
この利点は、これによって、放射線不透過性マーカー要素12と第2の放射線不透過性マーカー要素15とが一致したときでも、患者の体内にある長手方向シース部材11の一部分がまだあって、シースの引き抜きが生じることがないように、シースの引き抜きに対する安全マージンが得られることである。
【0067】
上記のすべては、完全に本開示の範囲内にあり、上記で開示された特定の組合せに限定されることなく、上述した特徴の1つまたは複数の組合せが適用される代替の実施形態の基礎を形成すると考えられる。
【0068】
このことを考慮すると、本開示の教示を実施する多くの代替案が存在する。当業者であれば、本技術分野における共通の一般知識に照らして、開示された、または上記から得られた本開示のいくつかまたはすべての技術的効果を保持しながら、本開示の範囲内でそれ自体の状況および要件に合わせるように上記の開示を修正し、それに適合させることができることは予想される。このような均等物、修正物、または適合物はすべて、本開示の範囲に含まれる。
図1
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体のアクセス部位を通して前記身体内に挿入するためのイントロデューサシースであって、
前記アクセス部位に挿入して血管内作業を行うための長手方向シース部材と、
前記長手方向シース部材の外面を覆って配置された放射線不透過性マーカー要素とを備えるイントロデューサシースであり、
前記放射線不透過性マーカー要素は、前記放射線不透過性マーカー要素が前記アクセス部位と接触していない第1の位置から、前記放射線不透過性マーカー要素の前記アクセス部位への挿入が妨げられるように、前記放射線不透過性マーカー要素が前記アクセス部位と当接する第2の位置に、前記長手方向シース部材の長手方向長さの少なくとも一部分に沿って移動可能である、イントロデューサシース。
【請求項2】
前記長手方向シース部材が、その遠位部に固定して配置された第2の放射線不透過性マーカー要素をさらに備える、請求項1に記載のイントロデューサシース。
【請求項3】
前記第2の放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材の遠位端に配置された、請求項2に記載のイントロデューサシース。
【請求項4】
前記放射線不透過性マーカー要素を前記第2の位置に対して付勢するように構成された付勢要素をさらに備える、請求項1、2、または3に記載のイントロデューサシース。
【請求項5】
前記付勢要素の弛緩状態において、前記放射線不透過性マーカー要素が前記長手方向シース部材の遠位端と位置合わせされるように前記付勢要素が構成された、請求項4に記載のイントロデューサシース。
【請求項6】
前記付勢要素がばねである、請求項4または5に記載のイントロデューサシース。
【請求項7】
前記長手方向シース部材の近位端に配置されたシースハブをさらに備え、前記ばねが、前記シースハブと前記放射線不透過性マーカー要素との間に配置された、請求項6に記載のイントロデューサシース。
【請求項8】
前記ばねがニチノールから作られた、請求項6または7に記載のイントロデューサシース。
【請求項9】
前記放射線不透過性マーカー要素が、第1の放射線不透過性部分と第2の非放射線不透過性部分とを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項10】
前記第1の放射線不透過性部分が、前記放射線不透過性マーカー要素の遠位部に配置された、請求項9に記載のイントロデューサシース。
【請求項11】
前記放射線不透過性マーカー要素が放射線不透過性材料のみから構成された、請求項1~8のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項12】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材の長手方向軸に平行なその長手方向長さに沿ってテーパがつけられた、請求項1~11のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項13】
前記放射線不透過性マーカー要素の遠位部がその近位部よりも幅広である、請求項1~12のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項14】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記アクセス部位を取り囲むように構成された、請求項1~13のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項15】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材の外面に接触する、請求項1~14のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【請求項16】
前記放射線不透過性マーカー要素が、前記長手方向シース部材に対して前記放射線不透過性マーカー要素をスライドさせることによって、前記長手方向シース部材の長手方向長さに沿って移動可能である、請求項1~15のいずれか一項に記載のイントロデューサシース。
【国際調査報告】