(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】生理的パラメータ検出システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20230112BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20230112BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20230112BHJP
A61B 5/0205 20060101ALI20230112BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61B5/02 310K
A61B5/113
A61B5/02 310V
A61B5/029
A61B5/0205
A61B5/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522656
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 AU2020051107
(87)【国際公開番号】W WO2021072493
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522149599
【氏名又は名称】3 エイム アイピー プロプライエトリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルジウロ、ガエターノ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレオッツィ、エミリオ
(72)【発明者】
【氏名】エスポジート、ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ビフルコ、パオロ
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA03
4C017AA04
4C017AA08
4C017AA11
4C017AA14
4C017AB02
4C017AB04
4C017AC03
4C017BB12
4C017BC08
4C017BC11
4C038VA04
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
対象体の生理的パラメータを検出するための装置100は、対象体の器官の力変位を表す第1の信号を生成するように構成される力センサ102、及び力センサ102と連係する変位センサ104を有する。変位センサ104は、対象体の器官の変位速度を表す第2の信号を生成するように構成される。カプラ106は、力センサ102及び変位センサ104のうちの1つに配設され、力センサ102及び変位センサ104を器官と機械的に連結するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の生理的パラメータを検出するための装置であって、
前記対象体の器官の力変位を表す第1の信号を生成するように構成された力センサと、
前記力センサに関連付けられ、且つ前記対象体の前記器官の変位速度を表す第2の信号を生成するように構成された変位センサと、
前記力センサ及び前記変位センサのうちの1つに配設され、前記力センサ及び前記変位センサを前記器官と機械的に連結するように構成されたカプラと
を有する装置。
【請求項2】
前記力センサが第1の力検出抵抗器(FSR)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変位センサが圧電センサを有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記カプラが、前記力センサの最大平面面積より小さい最大平面面積を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記カプラの前記最大平面面積が、前記変位センサの最大平面面積と近似する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記力センサが前記変位センサに取り付けられる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記力センサが、前記カプラの動作可能な後面へ連結される動作可能な前面と、前記変位センサの動作可能な前面へ連結される動作可能な後面とを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記力センサ及び前記変位センサがそれぞれ、前記カプラの動作可能な後面へ連結される動作可能な前面を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記力センサ及び前記変位センサが、前記カプラの前記動作可能な後面に、同心に配設される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記カプラが、前記器官と接触するように構成された動作可能な前面を有し、前記動作可能な前面が、ドーム型、マッシュルーム型、コーン型、及びピラミッド型のうちの1つである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記カプラが、円筒形又は直方体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記カプラが、硬質プラスチック材料及び導電性材料のうちの少なくとも1つを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記硬質プラスチック材料が、アクリル樹脂を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置の動作可能な後面へ加えられる力を測定するように構成された第2の力センサをさらに有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第2の力センサが力検出抵抗器(FSR)である、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の力センサが、前記変位センサの動作可能な後面へ連結される、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置を前記対象体の前記器官へ固定するように構成された固定デバイスをさらに有する、請求項1から16までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記固定デバイスが、
a)ストラップ、
b)ベルト、
c)接着パッチ
のうちの少なくとも1つを有する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに有する、請求項1から18までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1の信号に基づいて、前記変位センサから受信した前記第2の信号を較正するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記生理的パラメータが、心拍、血圧、子宮収縮、胎動、呼吸、前記対象体の心臓弁の開放時間、前記対象体の心臓弁の閉鎖時間、前記対象体の心臓の収縮レベル、前記対象体の前記心臓の一回拍出量、心拍出量、及び血液の脈波伝播時間のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記生理的パラメータが血圧であり、測定される前記パラメータが、中心血圧及び末梢血圧のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
対象体の生理的パラメータを測定する方法であって、
前記対象体の第1の位置で皮膚へ機械的に連結された第1の力センサから第1の信号を受信することと、
前記第1の位置から離れた前記対象体の第2の位置で皮膚へ機械的に連結された第2の力センサから第2の信号を受信することと、
前記第1及び第2の信号の比較に基づいて前記生理的パラメータを決定することと
を含む方法。
【請求項24】
前記比較が、前記第1の信号と前記第2の信号との差を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の力センサ及び前記第2の力センサのうちの1つ又は複数が、力検出抵抗器(FSR)である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記生理的パラメータが、血圧、子宮収縮、及び胎動のうちの少なくとも1つを含む、請求項23から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記生理的パラメータが血圧であり、前記方法が、中心血圧及び末梢血圧のうちの少なくとも1つを測定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の位置が、前記対象体の上側胸部上にあり、前記第2の位置が、前記対象体の下側胸部上にあり、測定される前記生理的パラメータが中心血圧である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の位置が、前記対象体の胸部上にあり、前記第2の位置が、前記対象体の大腿動脈及び鎖骨下動脈のうちの1つの近傍にあり、測定される前記生理的パラメータが末梢血圧である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の位置及び前記第2の位置から離れた第3の位置で、前記皮膚へ機械的に連結された第3の力センサから第3の信号を受信することと、
前記第1の信号と前記第2の信号と前記第3の信号との比較に基づいて前記生理的パラメータを決定することと
をさらに含む、請求項23から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第3の力センサがFSRである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサのうちの1つ又は複数を前記対象体の前記皮膚へ機械的に連結すること
をさらに含む、請求項23から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
対象体の生理的パラメータを測定するためのシステムであって、
前記対象体の前記皮膚の第1の位置で力変位を表す第1の信号を生成するように構成された第1の力センサと、
前記対象体の前記皮膚の第2の位置で力変位を表す第2の信号を生成するように構成された第2の力センサと、
前記第1の信号と前記第2の信号との比較に基づいて前記対象体の前記生理的パラメータを決定するように構成された少なくとも1つのプロセッサと
を有するシステム。
【請求項34】
前記比較が、前記第1の信号と前記第2の信号との差を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記第1の力センサ及び前記第2の力センサのうちの少なくとも1つが力検出抵抗器(FSR)である、請求項33又は34に記載のシステム。
【請求項36】
前記生理的パラメータが、血圧、子宮収縮、及び胎動のうちの少なくとも1つを含む、請求項33から35までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記生理的パラメータが血圧であり、測定される前記パラメータが、中心血圧及び末梢血圧のうちの1つである、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記第1の位置が、前記対象体の上側胸部上にあり、前記第2の位置が、前記対象体の下側胸部上にあり、測定される前記生理的パラメータが中心血圧である、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1の位置が、前記対象体の胸部上にあり、前記第2の位置が、前記対象体の大腿動脈及び鎖骨下動脈のうちの1つの近傍にあり、前記生理的パラメータが末梢血圧である、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記第1の位置及び前記第2の位置から離れた、前記対象体の前記皮膚の第3の位置で、力変位を表す第1の信号を生成するように構成された第3の力センサをさらに有し、前記生理的パラメータが、前記第1の信号と前記第2の信号と第3の信号との比較に基づいて決定される、請求項33から39までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記第3の力センサがFSRである、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記第1の力センサ及び前記第2の力センサのうちの1つ又は複数が、請求項1から22までのいずれか一項に記載の装置の第1の力センサである、請求項33から41までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
対象体の少なくとも1つのパラメータを検出するための装置であって、
撓みにより変化するインピーダンスを有する可撓性センサ部材と、
前記可撓性センサ部材を取り囲む可撓性支持体であって、前記対象体の表面の形状の変化によって可撓性センサが撓むように、前記対象体の前記表面の近傍に前記可撓性センサ部材の接触面を維持するように構成された可撓性支持体と
を有する装置。
【請求項44】
前記可撓性センサ部材が力検出抵抗器(FSR)を含む、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記支持体が、ファブリック支持体及びエラストマ支持体のうちの少なくとも1つである、請求項43又は44に記載の装置。
【請求項46】
前記支持体が、ストラップ及び接着パッチのうちの少なくとも1つを含む、請求項43から45までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記支持体が、前記対象体によって着用される衣類を含む、請求項43から45までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項48】
前記衣類が、シャツ、ベスト、ジャケット、及びコートのうちの少なくとも1つを含む、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記対象体の前記表面が、前記対象体の胸部の皮膚であり、前記可撓性支持体は、呼吸による前記胸部の膨張及び収縮によって前記可撓性センサが撓むように、前記皮膚の近傍に前記接触面を維持するように構成されている、請求項43から48までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記可撓性センサ部材の前記インピーダンスに基づいて前記少なくとも1つのパラメータを生成するように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに有する、請求項43から49までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項51】
前記少なくとも1つのパラメータが呼吸である、請求項43から50までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項52】
対象体の少なくとも1つのパラメータを検出する方法であって、
対象体の器官の近傍の第1の位置に可撓性センサを配置することと、
可撓性センサ部材のインピーダンスに基づいて前記少なくとも1つのパラメータを決定することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月18日付で出願したオーストラリア仮特許出願第2019903937号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に信号の検出に関するものであり、より具体的には、対象体(subject)の少なくとも1つの生理的パラメータに関する信号を検出するためのセンサ・アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0003】
設置されると容量に関する信号を測定するための、特に、生体の生理的パラメータを測定及び監視するための様々なセンサ及びシステムが存在するが、測定されているパラメータを表す有用な信号を連続的に及び確実に提供することは、依然として困難である。さらに、パラメータを測定するセンサ/システムを生体が快適に収容することができながら、それを行うこともまた、特に対象体が長期間にわたってセンサ/システムを着用する必要がある場合に、困難である。
【0004】
生体において、筋肉の収縮度を検出する力検出抵抗器(FSR:force-sensitive resistor;力覚抵抗器)の使用が報告されている。
【0005】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品などのいずれについての議論も、これら事項のいずれか又は全てが先行技術基準の一部を形成する、又はそれが添付の請求項の各々の優先日以前に存在した、本開示が関連する技術分野における技術常識であったことを承認するとはみなされない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様(aspect)によれば、対象体の生理的パラメータを検出するための装置であって、対象体の器官の力変位(force displacement)を表す第1の信号を生成するように構成される力センサ、対象体の器官の変位速度(displacement velocity)を表す第2の信号を生成するように構成される、力センサと連係する変位センサ、並びに力センサ及び変位センサを器官と機械的に連結するように構成される、力センサ及び変位センサのうちの1つに配設されるカプラを有する、装置が提供される。
【0007】
力センサは、第1の力検出抵抗器(FSR)を含み得る。変位センサは、圧電センサを含み得る。器官は、皮膚であり得る。
【0008】
カプラは、力センサの最大平面面積(maximum planar surface area)より小さい最大平面面積を有し得る。さらに、カプラの最大平面面積は、変位センサの最大平面面積と近似し得る。
【0009】
力センサは、変位センサに取り付けられ得る。
【0010】
力センサは、カプラの動作可能な後面へ連結される動作可能な前面、及び変位センサの動作可能な前面へ連結される動作可能な後面を有し得る。
【0011】
別の実施例では、力センサ及び変位センサはそれぞれ、カプラの動作可能な後面へ連結される動作可能な前面を有し得る。力センサ及び変位センサは、カプラの動作可能な後面に同心円状に配設され得る。
【0012】
カプラは、器官と接触するように構成される前面を有し得る。前面は、ドーム型又はマッシュルーム型又はコーン型又はピラミッド型であり得る。その代わりに、カプラは、円筒形又は直方体(cuboid;立方体を含む直方体)であり得る。カプラは、アクリル樹脂などの硬質プラスチック材料、及び導電性材料のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0013】
装置は、装置の動作可能な後面へ加えられる力を測定するように構成される第2の力センサをさらに有し得る。第2の力センサは、力検出抵抗器(FSR)であり得る。第2の力センサは、変位センサの動作可能な後面へ連結され得る。
【0014】
装置は、装置を対象体の器官へ留めるように構成される固定デバイスをさらに有し得る。固定デバイスは、a)ストラップ、b)ベルト、c)接着パッチのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0015】
装置は、第1の信号及び第2の信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される、少なくとも1つのプロセッサをさらに有し得る。少なくとも1つのプロセッサは、第1の信号に基づいて、変位センサから受信した第2の信号を較正するように構成され得る。
【0016】
生理的パラメータは、心拍などの心臓パラメータ、中心血圧又は末梢血圧(peripheral blood pressure)などの血圧、子宮収縮、胎動、呼吸、心音などの体内音、対象体の心臓弁の開放時間、対象体の心臓弁の閉鎖時間、対象体の心臓の収縮レベル、対象体の心臓の一回拍出量、心拍出量、及び血液の脈波伝播時間のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0017】
本開示の別の態様によると、対象体の生理的パラメータを測定する方法であって、対象体の第1の位置で皮膚へ機械的に連結される第1の力センサから第1の信号を受信すること、第1の位置から離れた、対象体の第2の位置で皮膚へ機械的に連結される第2の力センサから第2の信号を受信すること、並びに第1及び第2の信号の比較に基づいて生理的パラメータを決定することを含む、方法が提供される。
【0018】
比較は、第1の信号と第2の信号との差を含み得る。
【0019】
第1の力センサ及び第2の力センサのうちの1つ又は複数は、力検出抵抗器(FSR)であり得る。
【0020】
生理的パラメータは、心拍などの心臓パラメータ、中心血圧又は末梢血圧などの血圧、子宮収縮、胎動、呼吸、心音などの体内音、対象体の心臓弁の開放時間、対象体の心臓弁の閉鎖時間、対象体の心臓の収縮レベル、対象体の心臓の一回拍出量、心拍出量、及び血液の脈波伝播時間のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0021】
第1の位置は、剣状突起又はその付近などの、対象体の上部胸郭(上側胸部)上にあり得る。第2の位置は、対象体の下部胸郭(下側胸部)上にあり得る。測定される生理的パラメータは、中心血圧であり得る。
【0022】
別の実施例では、第1の位置は、対象体の胸郭上にあり得る。第2の位置は、対象体の大腿動脈及び鎖骨下動脈のうちの1つ、又は他の末梢動脈の近傍にあり得る。そのような場合に測定される生理的パラメータは、末梢血圧であり得る。
【0023】
方法は、第1の位置及び第2の位置から離れた第3の位置で、皮膚へ機械的に連結される第3の力センサから第3の信号を受信すること、並びに第1の信号と第2の信号と第3の信号との比較に基づいて生理的パラメータを決定することをさらに含み得る。第3の力センサは、FSRであり得る。
【0024】
方法は、第1のセンサ及び第2のセンサのうちの1つ又は複数を対象体の皮膚へ機械的に連結することをさらに含み得る。
【0025】
本開示の別の態様によると、対象体の生理的パラメータを測定するためのシステムであって、対象体の皮膚の第1の位置で力変位を表す第1の信号を生成するように構成される第1の力センサ、対象体の皮膚の第2の位置で力変位を表す第2の信号を生成するように構成される第2の力センサ、並びに第1の信号と第2の信号との比較に基づいて対象体の生理的パラメータを決定するように構成される、少なくとも1つのプロセッサを有する、システムが提供される。
【0026】
比較は、第1の信号と第2の信号との差を含み得る。
【0027】
第1の力センサ及び第2の力センサのうちの少なくとも1つは、力検出抵抗器(FSR)であり得る。
【0028】
生理的パラメータは、心拍などの心臓パラメータ、又は中心血圧若しくは末梢血圧などの血圧、子宮収縮、胎動、呼吸、心音などの体内音、対象体の心臓弁の開放時間、対象体の心臓弁の閉鎖時間、対象体の心臓の収縮レベル、対象体の心臓の一回拍出量、心拍出量、及び血液の脈波伝播時間を含み得る。
【0029】
第1の位置は、剣状突起又はその付近などの、対象体の上部胸郭上にあり得る。第2の位置は、対象体の下部胸郭上にあり得る。測定される生理的パラメータは、中心血圧であり得る。
【0030】
別の実施例では、第1の位置は、対象体の胸郭上にあり得る。第2の位置は、対象体の大腿動脈及び鎖骨下動脈のうちの1つ、又は他の末梢動脈の近傍にあり得る。そのような場合に測定される生理的パラメータは、末梢血圧であり得る。
【0031】
システムは、第1の位置及び第2の位置から離れた対象体の皮膚の第3の位置で、力変位を表す第1の信号を生成するように構成される第3の力センサをさらに有し得る。次いで、生理的パラメータは、第1の信号と第2の信号と第3の信号との比較に基づいて決定され得る。第3の力センサは、FSRであり得る。
【0032】
第1の力センサ及び第2の力センサのうちの1つ又は複数は、上記の装置の第1の力センサであり得る。
【0033】
本開示の別の態様によると、対象体の少なくとも1つのパラメータを検出するための装置であって、撓みと共に変化するインピーダンスを有する可撓性センサ部材、及び可撓性センサ部材を囲み、対象体の表面の、半径などの形状の変化が可撓性センサを撓ませるように、対象体の表面の近傍の可撓性センサ部材の接触面を維持するように構成される、可撓性支持体を有する、装置が提供される。
【0034】
可撓性センサ部材は、力検出抵抗器(FSR)を含み得る。
【0035】
支持体は、ファブリック支持体(fabric carrier;布製支持体)及びエラストマ支持体のうちの少なくとも1つであり得る。支持体は、ストラップ又は接着パッチを含み得る。支持体は、対象体によって着用される衣類を含み得る。衣類は、シャツ又はベスト又はジャケット又はコートを含み得る。
【0036】
対象体の表面は、対象体の胸郭における皮膚などの、皮膚であり得る。可撓性支持体は、皮膚の膨張及び収縮(例えば、呼吸による胸郭の膨張及び収縮)が可撓性センサを撓ませるように、皮膚の近傍の接触面を維持するように構成され得る。
【0037】
装置は、可撓性センサ部材のインピーダンスに基づいて少なくとも1つのパラメータを生成するように構成される、少なくとも1つのプロセッサをさらに有し得る。
【0038】
パラメータは、心拍などの心臓パラメータ、又は中心血圧若しくは末梢血圧などの血圧、又は子宮収縮、胎動、呼吸、心音などの体内音、対象体の心臓弁の開放時間、対象体の心臓弁の閉鎖時間、対象体の心臓の収縮レベル、対象体の心臓の一回拍出量、心拍出量、及び/又は血液の脈波伝播時間を含み得る。
【0039】
本開示の別の態様によると、対象体の少なくとも1つのパラメータを検出する方法であって、対象体の器官の近傍の第1の位置に上記の可撓性センサを配置すること、及び可撓性センサ部材のインピーダンスに基づいて少なくとも1つのパラメータを決定することを含む、方法が提供される。
【0040】
本開示の実施例が、ここで、添付図面を参照して、実例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a】センサ・アセンブリの第1の実施例の概略図である。
【
図1b】センサ・アセンブリの第2の実施例の概略図である。
【
図1c】センサ・アセンブリの第3の実施例の概略図である。
【
図1d】センサ・アセンブリの第4の実施例の概略図である。
【
図3】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図4】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図5】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図6】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図7】センサ・アセンブリから受信した信号を処理するための、信号処理連鎖を示す図である。
【
図8】
図1又は
図2のセンサ・アセンブリの力センサから力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路を示す図である。
【
図9】
図1又は
図2のセンサ・アセンブリの力センサから力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路を示す図である。
【
図10】
図1又は
図2のセンサ・アセンブリの力センサから力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路を示す図である。
【
図11】
図2のセンサ・アセンブリの力センサ及び第2の力センサの特性に基づいて力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路の回路図である。
【
図12】
図2のセンサ・アセンブリの力センサ及び第2の力センサの特性に基づいて力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路の回路図である。
【
図13】
図2のセンサ・アセンブリの力センサ及び第2の力センサの特性に基づいて力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路の回路図である。
【
図14】
図1a又は
図1bのセンサ・アセンブリの変位センサから調整された速度信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理連鎖のブロック線図である。
【
図15a】
図1a又は
図1bのセンサ・アセンブリの変位センサから調整された速度信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、処理回路の第1の実施例を示す図である。
【
図15b】
図1a又は
図1bのセンサ・アセンブリの変位センサから調整された速度信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、処理回路の第2の実施例を示す図である。
【
図16】複数のセンサ・アセンブリから受信した信号を処理するための、信号処理連鎖を示す図である。
【
図17】
図3に示されたように、対象体の胸骨上に位置づけられた
図1aのセンサ・アセンブリによって記録された、力と時間の関係を示すプロットである。
【
図18】
図3に示されたように、対象体の胸骨上に位置づけられた
図1aのセンサ・アセンブリによって記録された、力と時間の関係を示すプロットである。
【
図19】対象体の胸骨上窩及び心尖にそれぞれ配置された、センサ・アセンブリの力センサからの2つの力信号の和のプロットである。
【
図20】
図1aのセンサ・アセンブリの力センサから導出された力信号と、
図1のセンサ・アセンブリの変位センサから導出された変位速度信号の積分とを比較するプロットである。
【
図21】心電図(ECG:electrocardiogram)を、
図1のセンサ・アセンブリから導出された力信号及び変位信号と比較するプロットである。
【
図22】ECG及びECGから導出された呼吸信号を伴う、
図1aのセンサ・アセンブリの力センサから導出された力信号、及び力信号から導出された呼吸信号を示すプロットである。
【
図23】心臓音信号、ECG、及び光電式容積脈波計(PPG:photophethysmogram)を伴う、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された力及び加速度計信号を示すプロットである。
【
図24】
図1aのセンサ・アセンブリから導出された呼吸と関連する生データを示すプロットである。
【
図26】センサ・アセンブリの実施例の断面図である。
【
図27】
図26に示されるセンサ・アセンブリの実施例の平面図である。
【
図28】対象体の胸郭上に配設された
図26の一対のセンサ・アセンブリを示す図である。
【
図29】
図26のセンサ・アセンブリから導出された呼気信号の図である。
【
図30】センサ・アセンブリのさらなる実施例の断面図である。
【
図31】センサ・アセンブリの別の実施例の断面図である。
【
図32】安静時の対象体での、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された脈波伝播時間(PTT:pulse transit time)のプロットである。
【
図33】対象体による身体運動後の、
図1aのセンサ・アセンブリから導出されたPTTのプロットである。
【
図34】安静時の対象体での、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された心臓活動のプロットである。
【
図35】対象体による低強度の身体運動後の、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された心臓活動のプロットである。
【
図36】対象体によるより高強度の身体運動後の、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された心臓活動のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示の実施例は、器官、筋肉、血流、及び流体の移動、すなわち消化、嚥下、呼吸などによる皮膚表面の変位によって及ぼされる、力及びそれらが伝播する速さの局所的測定値から生理機構を監視するための、検出システム及び方法に関する。
【0043】
一部の実施例は、心収縮及び血液のポンプ作用によって生成される反動力を測定する、いわゆる「フォースカルジオグラフィ(FCG:Forcecardiography)」のために、胸郭上又は上腹部の対象体の皮膚と機械的に連結される、力検出抵抗器(FSR)などの力センサを使用する。実施例は、したがって、対象体の各心周期の機械的事象の連続的及び非侵襲的監視を可能にし得る。特に対象体の皮膚と機械的に連結された複数の力センサを使用することによって、心周期の各段階の識別及び持続期間、心臓弁の開放及び閉鎖時間、心臓収縮レベル、一回拍出量、心拍出量、脈波伝播時間、並びに中心動脈圧などの、生理的パラメータについての情報を得ることができる。次に、心不全、機械的同期不全(例えば、脚ブロックの結果として)、心臓弁の病状(例えば、大動脈弁及び僧帽弁逆流、狭窄)などであるがこれらに限定されない、心疾患及び/又は機能不全に関する情報を得ることができる。
【0044】
末梢血管脈拍点又は主な脈管(すなわち、頸脈、橈骨動脈脈拍など)の近傍に設けられる場合に、力センサは、血液の運動及び流れの力及びそれらが伝播する速さを測定するために使用され得る。そのような流れは、静脈還流、並びに呼吸による静圧の変化を含み得る。そのようにして、実施例は、末梢の四肢の力測定値から呼吸数を推測することを可能にする。
【0045】
一部の実施例は、対象体の皮膚の力変位及びそのような変位の速さ又は速度を同時に測定するために、変位センサ(圧電センサなど)との組合せで、1つ又は複数の力センサ(例えば、FSR)を使用し、その両方が対象体の皮膚と機械的に連結される。力センサに加えられる圧縮力(力センサの信号のDCベースライン)及び動的力(力センサの信号のAC成分)は、変位センサによって生成される変位速度信号を較正するために使用され、皮膚の変位の速さ又は速度並びに力変位それ自体の、正確で連続的な直接測定を可能にし得る。そのようにして、皮膚のみの運動から、脈拍及び、したがって、心拍の正確で連続的な測定値を得ることができる。
【0046】
本明細書に記載されるセンサ・アセンブリは、生体の、例えば、心臓活動及び呼吸活動などの生理的パラメータを測定するために特別に開発されたが、当業者であれば、本開示の主題であるセンサ・アセンブリが、力がセンサ・アセンブリの基礎となる部分によって加えられる、他の目的で使用され得ることを理解するであろう。したがって、本明細書に記載されるセンサ・アセンブリは、ソフト・ロボティクス又はそのような力が加えられる他の無生物を対象体とする目的などの、工業的用途において使用され得る。
【0047】
図1aは、対象体の少なくとも1つの生理的パラメータを検出するためのセンサ・アセンブリ100の第1の実施例の断面図である。センサ・アセンブリ100は、力センサ102、変位センサ104、及び機械的カプラ106を有する。力センサ102及び変位センサ104は、カプラの前面108へ加えられる任意の力が力センサ102及び変位センサ104の両方に伝達されるように、カプラ106に配設される。
【0048】
カプラ106は、硬質プラスチック又はゴムなどの硬質材料を含む。一部の実施例では、カプラ106は、アクリル樹脂を含み得る。他の実施例では、カプラ106は、部分的に又は全体的に導電性であり得る。例えば、カプラ106は、部分的に又は全体的に、銀又は塩化銀などの導電性材料を含み得る。対象体の表面に面し、好ましくはそれと接触して設置されるように構成される、カプラ106の前面108は、皮膚などの対象体の順応性のある表面に沈み込むように、ドーム型であり得る。ドーム型の前面108を設けることは、対象体から力センサ102及び変位センサ104への機械的変位のカップリングを改善するのに役立つ。同様の効果をもたらす前面108のための他の形状には、コーン型、マッシュルーム型などが含まれる。
【0049】
カプラ106は、一般に、センサ・アセンブリ100の対象体に面する平面に平行な平面で見た場合に、円形断面を有する。カップリング運動(力及び変位)に加えて、カプラ106は、生体電位電極として構成される場合があり、並びに生体電位を測定する(例えば、心電図(ECG)、筋電図(EMG:electromyography)、脳波記録(EEG:electroencephalography)など)ために処理回路(図示せず)へ電気的に連結され得る。
【0050】
力センサ102は、可撓性媒体を含む力センサ支持体110を介して、カプラ106の後面へ取り付けられる。力センサ102は、接着、貼合せ、又は別様によって、支持体110へ取り付けられる。力センサ102への電気的接続は、力センサ102をセンサ支持体110へ据え付けるための据付点としても働く、2つ以上の電極112を使用して行われる。力センサ102は、力検出抵抗器(FSR)又はロード・セルである。以下により詳細に説明されるように、力センサ102の特性は、力センサへ加えられている力信号に応じて変化し、その変化は、カプラ106の前面108と接触する器官の力変位を表す。そのような特性は、例えば、力センサ102のインピーダンス、又は出力電流若しくは電圧である。力センサ102がFSRである場合に、力センサ102の抵抗の変化は、より詳細に以下に説明されるように、それから出力電圧が発生され得る、力変位を表す。
【0051】
実施例では、使用において対象体に対向する力センサ102の前面は、約5mm~10mm、例えば、7mm、8mm、又は9mmの表面積を有する。
【0052】
力センサ102及び変位センサ104は、任意選択の硬質中間層114を介して共に取り付けられる。硬質中間層114は、力センサ102の後面に設けられる。硬質中間層114は、真鍮、硬質プラスチック、又は同様の硬質材料を含み得る。一部の実施例では、硬質中間層114は両面PCBであり、力センサ102がPCBの第1の面(すなわち、使用において対象体に面する面)に取り付けられ、変位センサ104が反対側のPCBの第2の面に取り付けられ得る。
【0053】
いずれの場合においても、変位センサ104は、
図1aに示されるように力センサ102の後面へ機械的に連結される。したがって、カプラ106と接触する器官の運動によるカプラ106の変位は、変位センサ104を運動させる。変位センサ104は、センサ104の変位の速さ又は速度を表す速度信号を生成する。対象体の皮膚などの器官へ機械的に連結される場合に、この速度信号は、器官の変位速度と比例する。
【0054】
実施例では、変位センサ104の対象体に面する前面は、約5mm~10mm、例えば、7mm、8mm、又は9mmの表面積を有する。
【0055】
有利には、力及び変位センサ102、104の表面積は、力センサ102から変位センサ104への変位の均一な伝達を確実なものとするために、実質的に一致する。したがって、力及び変位センサ102、104はまた、好ましくは、同様の理由で、アセンブリ100の中心の動作可能な垂直軸に沿って軸方向に整列する。
【0056】
任意選択の保護カバー116が、変位センサ104の後面の周りに設けられ得る。保護カバー116は、空気若しくは他の気体で満たされる流体ギャップ、又は真空によって後面から分離され得る。そうすることで、保護カバー116は、アセンブリ100の動作可能な、対象体に面していない後側への衝撃から変位センサ104を保護する。
【0057】
力センサ102及び変位センサ104に加えて、センサ・アセンブリ100は、任意選択で、加速度計120を有し得る。加速度計120は、1つ又は複数の軸における加速度を測定するように構成される。例えば、加速度計120は、少なくとも、センサ・アセンブリ100が使用において定着させられる、対象体の表面に垂直な軸における加速度を測定するように構成され得る。好ましくは、加えて、加速度計120は、センサ・アセンブリ100が使用において定着させられる、対象体の表面に平行な1つ又は複数の平面における加速度を測定して、そのような平面又は軸におけるセンサ・アセンブリの運動を測定する。機械的連結がカプラ106へ行われる(直接又は間接的に)場合に、加速度120は、センサ・アセンブリ100の任意位置に位置づけられ得る。例えば、加速度計120は、保護カバー116の後部へ連結され得る。
【0058】
ハウジング118は、粉塵、砂、水、及び/又はアセンブリ100の動作に影響を及ぼし得るいずれかの他の物質などの砕屑物から、アセンブリ100の要素を保護するために、並びにアセンブリ100内への異物の侵入を防ぐために、センサ・アセンブリ100を包み込む。カプラ106の動作可能な前面108は、ハウジング118の開口部を通って延びる。その代わりに、ハウジング118は、カプラ106の前面108を覆って延び、それと適合する可撓性部分(図示せず)を少なくとも含み、それによって、力センサ102、変位センサ104及びカプラ106を完全に包み込むことができる。
【0059】
動作中に、センサ・アセンブリ100のカプラ106の前面108は、対象体の皮膚などの対象体の表面と接触して設置され、センサ・アセンブリ100は、ベルト、接着パッチ、接着テープなどの1つ又は複数の固定デバイス(図示せず)によって対象体に対して固定される。そのようなテープは、キネシオロジ・テープとしても公知のスポーツ用テープが製造される材料から製造され得る。力及び変位センサ102、104がカプラ106へ機械的に連結され、カプラ106が対象体の表面へ機械的に連結されて、センサ・アセンブリ100は、同時に力変位及び変位速度信号を生成するように構成される。これらの信号は、次に、以下により詳細に説明されるように、機械的な生理的事象の連続的及び非侵襲的監視を可能にするために使用される。
【0060】
図1bは、
図1aに示されるセンサ・アセンブリ100の変形である、センサ・アセンブリ200の別の実施例の断面図である。
図1aに関連して、
図1bにおいて同様の符号は、そうではないことが明示されない限り、同様の部分を指す。
【0061】
センサ・アセンブリ100の要素に加えて、
図1bのセンサ・アセンブリ200は、力センサ102と同様で、同様の特徴を有する、第2の力センサ202をさらに有する。第2の力センサ202は、変位センサ104の後方に動作可能に、例えば保護カバー116の動作可能な外面へ取り付けられる。力センサ102と同様に、第2の力センサ202は、第2のセンサ202に加えられる力を表す信号を生成する(能動的又は受動的に)ように構成される。したがって、第2の力センサ202は、例えば、センサ・アセンブリ200を対象体の表面へ適用するために使用される1つ又は複数の固定デバイスにより、アセンブリ200の動作可能な後部へ加えられる力を測定するために使用される。
【0062】
この測定される外力信号は、支持体の圧迫力(すなわち、センサ・アセンブリ200の後部へ固定デバイスによって加えられる力)及び対象体の表面弾力(すなわち、検出されている対象体の表面がどれほど弾性であるか)を補正するために、使用されることが可能である。例えば、アセンブリ200の外部支持体又は操作者から加えられる圧力を知ることにより、アーチファクトの除外が可能になる。例えば、センサの突発的なノッキング又はシアリング、すなわち、運動中に、力センサ102の圧力の加わり方が変わる場合があり、それは、次に、力センサ102からの信号におけるアーチファクトを作り出し得る。加えて、対象体の走行などの活動によって引き起こされる律動的な運動は、ベースラインの変動、及び力センサ102からの信号に対する関連するアーチファクトを印象づけ得る。そのようなアーチファクトは、以下により詳細に説明されるように、2つの力センサ102、202、及び変位センサ104の各々から導出される信号を使用して、消去され得る(リアルタイムに又は処理後に)。
【0063】
ここで、図面の
図1c及び
図1dを参照すると、センサ・アセンブリ100及び200のさらなる実施例が例示される。繰り返すが、これまでの図面に関連して、同様の符号は、そうではないことが明示されない限り、同様の部分を指す。
【0064】
両方の実施例では、カプラ106は、ハウジング118内に受容されるカラー109を含み、カプラ106のドーム型面108は、ハウジング118における開口(図示せず)を通って突出する。開口は、カラー109のものより小さい直径を有し、その結果、カラー109は、ハウジング118に対して拘束されるカプラ106を保持するのに役立ち、ハウジング118からのカプラ106の分離を防ぐ。
【0065】
さらに、両方の実施例では、その基部、すなわち、センサ支持体110と接触するカプラ106の部分でのカプラ106の直径(「基部直径」と呼ぶ)は、力センサ102のものより小さい。しかしながら、カプラ106が、変位センサ104の全表面積にわたって、その力を分散させることが望ましく好ましい。そのようにして、カプラ106の基部直径は、変位センサ104の直径に近似する。通常は、カプラ106の基部直径は、力センサ102の直径のおよそ70%~90%、例えば、約80%である。
【0066】
図面の
図1dに示される実施例では、センサ・アセンブリ200は、後部圧力アプリケータ又はカプラ111をさらに含む。通常は、このカプラ111には、使用において、それによってセンサ・アセンブリ200が対象体の器官へ定着させられる構成要素、例えば、ストラップ、ベルト、テープなど(図示せず)が据えられる。この構成要素は、カプラ111を介して変位力を力センサ202へ加え、対象体の器官に関連するセンサ・アセンブリ200の運動などの外部要因により、センサ・アセンブリ200によって記録されるアーチファクトを取り除くのに役立つ。
【0067】
カプラ111は、平面状の構造物として示されているが、カプラ111が、カプラ106のものと同様のドーム型を含む、任意の好適な形状を有し得ることが理解されよう。繰り返すが、カプラ111は、力センサ202のものより小さい、通常は、力センサ202の直径のおよそ70%~90%、例えば、約80%の直径を有する。
【0068】
上記で指示されるように、ドーム型のカプラ106は、皮膚などの対象体の順応性のある表面に沈み込むのを助ける。ドーム型の前面108を有するカプラ106を設けることにより、したがって、対象体から力センサ102及び変位センサ104への機械的変位のカップリングが改善される。
【0069】
上記のセンサ・アセンブリ100、200は、力及び変位センサを、互いに対して重ねられた「サンドイッチ」配置で有する。しかしながら、本開示の実施例は、そのような配置に限定されない。例えば、他の実施例では、力及び変位センサは、平面構成で配設される、例えば、互いの隣に配設される、又は同心円状に配設される(一方が他方の中に)場合があり、共通の基板に又は異なる別個の基板に配設され得る。各実施例では、各力センサ及び変位センサは、好ましくは、対象体から各センサへの力の機械的伝達を確実なものとするように、
図1aから
図1dのカプラ106、111などのカプラへ機械的に連結される(直接的に又は間接的に)。
【0070】
図2aから
図2gは、
図1a及び
図1bに示されたカプラ106の代わりに設けられ得る、
図1aから
図1dのカプラ106のいくつか変形を示す。前述のように、同様の符号は、そうではないことが明示されない限り、同様の部分を指す。
【0071】
図2aは、ドーム型の前面203、並びに力センサ102と接触するように構成されるドーム型の後面205を有する、マッシュルーム型のカプラ201を有するセンサ・アセンブリ100の断面図である。ドーム型の後面205を設けることにより、カプラ201と力センサ102との間に、より小さい接触表面積ができ、それによって、単位面積当たりのセンサへ加えられる力を増大させ、それは、次に、カプラ201の前面へ加えられる力に対するセンサ102の感度を高める。
【0072】
図2bは、
図1dのセンサ・アセンブリ202に関連する上記の力センサ202に対して作用するカプラ111を含むこと以外は
図2aのものと同様である、センサ・アセンブリ100の実施例を示す。
【0073】
図2c及び
図2dは、それぞれ、
図2a及び
図2bのカプラ201と同様に、ドーム状の前面206、並びに力センサ208との接触のために構成されるドーム状の後面208を有する、カプラ204の斜視図(拡大)及び側面図を提供する。任意選択で、カプラ204は、弾性又はエラストマ連結具などの1つ又は複数の固定具210で、ハウジング118及び力センサ102に対して定位置に保持される。他の実施例では、カプラ204は、ハウジング118の後部の圧力によって定位置に保持され、対象体の表面及び支持体(図示せず)と接触し得る。
図2dに示されるように、ドーム型の後面208を設けることにより、カプラ204と力センサ102との間に、小さい接触表面積ができ、それによって、単位面積当たりのセンサへ加えられる力を増大させ、それは、次に、カプラ204の前面へ加えられる力に対するセンサ102の感度を高める。カプラ106に関連して上記のように、ドーム型の前面206を設けることにより、対象体から力センサ102及び変位センサ104への機械的変位のカップリングが改善されることが見出された。同様の効果をもたらす前面206及び後面208のための他の形状には、コーン型、マッシュルーム型などが含まれる。
【0074】
図2e及び
図2fは、カプラ204の変形である、さらなるカプラ112を示す。カプラ212は、ボール又は球体214を有し、ボール又は球体214は、ボール214の周辺部の周りに延びるリップ216によってハウジング118内に支持される。リップ216は、ハウジング118の一部を形成し得る。任意選択で、ガスケット又はOリングなどの封止部218が、塵埃及び他の有害物の侵入を防ぐために、ボール214とリップ216との間に設けられる。
【0075】
図2gは、ボール214が両側マッシュルーム状の又は中間がくびれた連結部材222と取り替えられた、カプラ212の変形であるカプラ220を示す。連結部材222の中間がくびれた部分は、リップ216によってカプラ220における定位置に係合及び保持され、リップ216はまた、ハウジング118からの連結部材222の分離も防ぐ。
【0076】
上記のセンサ・アセンブリ100、200はそれぞれ、変位センサ104を有する。しかしながら、本開示の実施例が、力及び変位センサの組合せを使用することに限定されないことが留意される。例えば、様々な生理的パラメータを検出するために対象体の異なる位置に位置づけられる複数の力センサを使用するための、様々な新規の技術が以下に説明される。そのような技術は、同時の変位検出を必要としない。そのような技術は、上記のセンサ・アセンブリ100、200を使用することができる、又は代わりに、力センサ及びカプラのみを有するセンサ・アセンブリを使用することができる。そのようなセンサ・アセンブリは、任意の想定可能な連結配置、例えば、
図1aから
図2gのうちのいずれか1つに示される配置のうちの1つを有し得る。例えば、実施例は、変位センサ104を省くこと以外は上記で示された、センサ・アセンブリ100の変形を使用し得る。
【0077】
図3から
図6は、生きたヒト対象体300へ固定される、
図1aのセンサ・アセンブリ100、
図1bのセンサ・アセンブリ200、又はその変形などの、センサ・アセンブリの様々な配置を示す。
【0078】
図3では、単一のセンサ・アセンブリ302が、チェスト・ベルト304を使用して、剣状突起に対して固定される。チェスト・ベルト304は、センサ・アセンブリ302の後部から外部圧力を加え、剣状突起又はその付近でセンサ・アセンブリ302を維持するように構成される。
【0079】
図4では、複数のセンサ・アセンブリ402は、接着パッチ404を使用して、対象体300の皮膚へ固定される。チェスト・ベルト304と同様に、各接着パッチ404は、センサ・アセンブリ402の後部から外部圧力を加えて、対象体300の所定位置、通常は対象体の胸郭でそれを維持するように構成される。
【0080】
図5は、複数のセンサ・アセンブリ502が、センサ・アセンブリ502の後部から外部圧力を加えて、対象体300に対する所定位置にそれらを維持するように構成される、共通の接着パッチ504で対象体300の胸部へ固定される、さらなる配置を示す。加えて又は代わりに、複数のセンサ・アセンブリ502は、任意の好適な方式で対象体300の背部へ固定され得る。対象体の胴周りに複数のセンサ・アセンブリ502を設けることによって、胸部の領域の力の断層撮影が、センサ・アセンブリ502のセンサから導出されるデータから生成され得る。
【0081】
図6は、単一のセンサ・アセンブリ602が、対象体300の手首604にある橈骨静脈又は動脈に対して固定される、さらなる配置を示す。センサ・アセンブリ602は、リスト・ストラップ606(又は接着剤若しくは他の手段)によって手首604の定位置に保持される場合があり、リスト・ストラップ606はまた、センサ・アセンブリ602の後部へ外力を加えて、アセンブリ602と手首606との間の接触を維持する。
【0082】
図7は、生体から生成される、力センサ102、変位センサ104、第2の力センサ202、及び任意選択の加速度計120のパラメータにおける信号及び/又は偏差を処理するための、実例の信号処理連鎖700を例示するブロック線図である。下記の実例では、力センサ102及び第2の力センサ202は、力検出抵抗器(FSR)FSR1及びFSR2として以下に記載され、その抵抗は、それへ加えられる力に比例する。しかしながら、実施例が、力センサとしてのFSRの使用に限定されず、他のロード・セル又は力センサが、本開示の範囲から逸脱することなく、FSRの代わりに使用され得ることが理解されよう。同様に、下記の実例では、変位センサ104は、一部の実例において、変位における変化に応じて電圧を発生させる圧電センサPZTとして記載される。しかしながら、ここでも実施例は、変位センサ104としての圧電センサの使用に限定されない。他の実例の変位センサには、抵抗性、誘導性、容量、渦電流、超音波、磁気抵抗、及び光学エンコーダ変位センサが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本開示の一部の実施例が、動作のために力センサ102のみ、又は力センサ102、並びに変位センサ104、第2の力センサ202、及び加速度120のうちの1つ若しくは複数を必要とするので、変位センサ104、第2の力センサ202、及び加速度計120は、破線で
図7に示される。
【0084】
信号処理連鎖700は、呼吸、血液の駆出における脈波、力パラメータ、速度パラメータ、心音、及び血圧を含むが、これらに限定されない、1つ又は複数の生理的パラメータの表示を作成するための、信号調整ステージ702、アナログ-デジタル変換ステージ704、及びフィルタリング・ステージ706を有する。
【0085】
信号調整ステージ702中に、力センサ102の抵抗FSR1は、ハードウエア(処理回路)によって又は処理後にソフトウエアによって、出力電圧Vnに変換される。
【0086】
そのような変換を実行するための実例のハードウエアは、
図8から
図10に示される。
図8を参照すると、力センサ102の抵抗FSR1は、分圧器802の1つの末端を形成し、その出力は、力センサ102の抵抗FSR1に比例する出力電圧Vnを発生させるために、非反転増幅器804の入力へ供給される。別の実例では、
図9を参照すると、力センサ102の抵抗FSR1における変化は、トランス・インピーダンス増幅器902を使用して変換され、抵抗FSR1は、増幅器902の可変入力インピーダンスとして構成される。さらなる実施例では、
図10に示されるように、力センサ102は、電流ミラー1002内に統合され、力センサ102の抵抗FSR1は、電流ミラー1002のバイアス抵抗器として構成される。
【0087】
上記のように、第2の力センサ202は、任意の固定デバイス又は対象体自身によってセンサ・アセンブリ200の後(対象体に面していない)側へ加えられる、変化する力を較正するために使用され得る。
図7を再び参照すると、信号調整回路は、第2の力センサ202の抵抗FSR2に基づいて力センサ102の抵抗にさらにバイアスを掛けるために、信号調整702中に実施される。
図11から
図13はそれぞれ、そのような機能のために好適なハードウエア・レイアウトの実例を例示する。
【0088】
図11は、増幅器1102の非反転入力へカップリングされるバイアス電圧V2を有する、
図9のトランス・インピーダンス増幅器の配置の変形であり、バイアス電圧V2は、第2の力センサ202の抵抗FSR2を通した電流シンクによって変更されている。
【0089】
図12は、さらなるステージ1204を有する、トランス・インピーダンス・ステージ1202を有する
図9の配置のさらなる変形を示し、ステージ1204は、第2の力センサ202の抵抗FSR2に比例する電流をステージ1202の反転入力に送り込むように構成され、したがって、抵抗FSR2が増加するにつれて出力電圧Vnを低下させる。
図11及び
図12の両方におけるDC電圧V1並びに受動的抵抗器R1及びR2の値は、使用される電源及び出力電圧Vnの所望の動作範囲により設定される。
【0090】
図13は、第2の力センサ202の抵抗FSR2がトランス・インピーダンス・ステージ1302の帰還ループに設けられる、さらなる変形を示す。ステージ1302の利得は、抵抗FSR2及びしたがって、センサ・アセンブリ200の後面へ加えられる圧力に比例する。ここでも、抵抗R1は、使用される電源及び出力電圧Vnの所望の動作範囲により設定される。
【0091】
上記のハードウエアによる解決手段のいずれもが、代わりに、リアルタイムで、又はセンサ102、104、202のうちの2つ以上からの信号の記録後に、ソフトウエアにおいて実施され得ることが理解されよう。
【0092】
第1のセンサ102を較正することに加えて、第1のセンサ102から導出される信号が、肉の伸展性を決定して、例えば、組織を区別(脂肪/筋肉割合など)するために、使用され得ることもまた理解されよう。そのような測定値は、対象体の皮下脂肪の量を決定するために使用され得る。
【0093】
上記のように、一部の実施例では、変位センサ104は、変位における変化に応じて電流を発生させるように構成される圧電センサを含む。そのような場合に、変位センサ104から出力される信号のDCオフセット及びAC電圧振幅は、調節又は較正される必要があり得る。そうするために、信号調整ステージ702は、
図14、
図15a、及び
図15bに示されるものなどの処理回路を実施することによって、変位センサ104から出力される信号を調整する。
【0094】
図14を参照すると、変位センサ104(PZT)は、変位における変化によるAC電圧振幅を調節するために、電流源1402(デジタルに制御される)を使用して分極される。その後に続く電圧増幅器1404は、DCオフセットの調節のために設けられる。
【0095】
図15aは、変位センサ104のための信号調整702の実例の実施を示す。
図14のように、電流が変位センサ104に送り込まれ、得られた高域通過フィルタリング信号V1がDCオフセットを調節するために電圧増幅器ステージ1502へ与えられる。帰還抵抗R7及び増幅器ステージ1502の非反転入力の入力インピーダンスR3は、変位センサ104(PZT)のインピーダンスと一致するように選ばれることが留意される。
【0096】
図15bは、変位センサ104のための信号調整回路1502の別の実例の実施を示す。図面の
図15aに関連して、同様の符号は、そうではないことが明示されない限り、同様の部分を指す。この信号調整回路1502は、ミラーの定理を利用して、下記の等式に基づいて変位センサ104によって検出される入力インピーダンス(R
IN)を増加させる。
【数1】
【0097】
これにより、力センサ102からの信号との比較に役立つための呼吸信号の帯域の下限である、目的の最も低周波でさえも、高域通過応答によって誘導される起こり得る位相変位を低減するように選択される、高域通過カットオフ周波数を低減することによって、信号調整回路1502の全体的な低周波応答が改善される。一部の適用では、カットオフ周波数は、約0.01~0.05Hzの範囲に設定されることになる。
【0098】
特別に製作した回路を必要とせずに、異なる変位センサ104を使用することが可能であるために、信号調整回路1502は、選択される変位センサ104の特定の静電容量に基づいて同調可能であり得る。ブートストラップ構成において表面実装デバイス(SMD:surface mounted device)の抵抗器を使用して、より小さい抵抗値が用いられ、回路1502の費用を減らすことができる。実例として、100MΩの抵抗器R1、100Ωの抵抗器R3、及び100kΩのトリマが、回路1502において使用される場合があり、その結果、100MΩのインピーダンスRINが、R2が0に設定される(30nFの変位センサ104の静電容量に対して0.05Hzのカットオフ周波数をもたらすために)場合に、変位センサ104によって「確認」される。RINは、R2を調節することにより、トリマ抵抗を増大させることによって1011Ωまで増加され得る。
【0099】
図7を再び参照すると、信号調整ステージ702中に、カプラ106へ加えられる力を表す調整された力信号Vn、及びカプラ106での変位速度を表す調整された変位信号Vdが生成される。任意選択で、カプラ106での加速度を表す加速度信号Vaもまた、生成され得る。これらのアナログ信号は、その後、アナログ-デジタル変換(ADC:analogue-to-digital conversion)ステージ704によって1つ又は複数のADC708を使用して、それぞれ、力F、変位速度V、及び加速度Aのデジタル表示へ変換され得る。一部の実施例では、単一のADC708が行われ、調整された信号Vn、Vd、Vaは、多重化器(図示せず)を介してADCへ与えられ得る。他の実施例では、調整された信号Vn、Vd、Vaは、
図7に示されるように、別個のADC708へ与えられ得る。
【0100】
デジタル信号F、V、Aは、その後、対象体の生理的パラメータを表す1つ又は複数の出力を発生させるために、力、速度及び(任意選択の)加速度計信号F、V、Aをフィルタリングするための1つ又は複数のフィルタ710、712、714、716を実施するように構成される、デジタル・フィルタ・ステージ706へ与えられる。そのようなパラメータは、アセンブリ100、200が測定中に配置される生体の位置に特有である。例えば、
図3から
図5に示されるように対象体の胸郭上の位置に位置づけられる場合に、デジタル・フィルタ・ステージ706は、呼吸及びパルス・カルジオグラフィ(pulse cardiography)に加えて、心臓活動に係わるデータ(例えば、サイズモカルジオグラフィ(seizmocardiography)、心音など)を抽出するように動作可能である。アセンブリ100、200が手首に位置づけられた状態では、デジタル・フィルタ・ステージ706は、呼吸及び脈拍に係わるデータを抽出することのみ可能であり得る。
【0101】
対象体からの呼吸信号702は、低域通過フィルタ710を使用して力信号Fを低域通過フィルタリングすることによって、抽出される。低域通過フィルタ710は、例えば、約0.5Hzの低域通過閾値を有し得る。
【0102】
脈波信号は、帯域通過フィルタ712で力信号Fを帯域通過フィルタリングすることによって、力信号から生成される。帯域通過フィルタは、例えば、約0.5Hz~約8Hzの通過帯域を有し得る。
【0103】
監視されている生体の器官に特有の力及び速度パラメータは、それぞれ、さらなる帯域通過フィルタ714で信号F、Vを帯域通過フィルタリングすることによって、力及び速度信号F、Vの各々から抽出される。心臓の力及び速度パラメータに関して、例えば、帯域通過フィルタ714は、約8Hz~約40Hzの通過帯域を有し得る。
【0104】
体内音もまた、約150Hz、約200Hz、約Hz、約250Hz、又は約300Hzの上側閾値との組合せで、約20Hz、約30Hz、約40Hz、又は約50Hzの下側閾値を有する帯域通過フィルタ716を使用して、力及び速度信号F、Vから抽出されることが可能である。一部の実施例では、帯域通過フィルタ716は、約40Hz~約300Hzの通過帯域を有し得る。センサ・アセンブリ100、200の位置に応じて、体内音は、心音(例えば、血液の奔流、弁の運動)、腸音(例えば、ガスの変位)、呼吸、いびき、嚥下、及び胎児の音(胎動、胎児心音、胎児呼吸、胎児のガスの変位などを含む)、気管などの気道周りの筋肉収縮のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0105】
気道の大きさの減少もまた、頸部領域から発する音における変化を監視することによって、監視され得る。例えば、頸部での喘鳴又はより高い音若しくは振動は、低呼吸(息づかいにおける部分的低下)、無呼吸、又は喘息並びに他の肺及び呼吸状態を指示し得る。
図23に関連して以下に論じられるように、体内音はまた、加速度計120から受信される信号から抽出され得る。体内音は、力、速度及び加速度信号F、V、Aのうちの2つ以上の組合せを基に生成され得る。
【0106】
抽出された体内音は、臨床医がその音を聞くための1つ又は複数のスピーカ又はヘッドセットへ出力され得る。そのようにして、センサ・アセンブリ100、200は、体内音の高分解デジタル表示を提供するデジタル聴診器として働くことができる。そのような抽出された体内音は、人間の耳でより聞き易いように、周波数を変調及び/又は転換され得る。例えば、抽出された体内音は、人間の可聴範囲の中央に周波数を転換され得る。
【0107】
デジタル・フィルタ・ステージ706の様々なフィルタ710、712、714、716が、力及び速度信号F、Vから情報を抽出するために実施され得るフィルタの実例としてのみ、提供されることが留意される。フィルタ710、712、714、716、718のうちの1つ又は複数が省かれ、又は他のフィルタが、抽出されることになる生理的パラメータ及び対象体のアセンブリ100、200の位置に応じて、追加され得る。
【0108】
複数のセンサ・アセンブリが対象体の異なる位置に設けられる場合に、そのようなアセンブリから生成される力、速度及び加速度計信号の各々は、
図7に関連する上記のものと同様の方式でフィルタリングされ得る。例えば、同様の符号が同様の部分を指す、
図16に示されるように、デジタルの力、速度及び加速度信号F1-FN、V1-VN、A1-ANは、それぞれ、N個のセンサ・アセンブリ1602、1604からデジタル・フィルタ・ステージ1606へ与えられ得る。簡略化のために、センサ・アセンブリ1602、1604は、力、速度及び加速度信号を生成するための信号調整及びA/D変換回路を含む。
【0109】
センサ・アセンブリ1602、1604のうちの1つ又は複数から個々の力及び速度信号をフィルタリングすることに加えて、デジタル・フィルタ・バンク1606はまた、フィルタリングの前又は後に、センサ・アセンブリ1602、1604のうちの2つ以上からの力及び/又は速度信号を合成するように構成される。例えば、フィルタ・バンク1606は、対象体の異なる位置に位置づけられるセンサ・アセンブリ1602、1604のうちの2つからの力信号F1、FNを合成して、血圧信号1610を生成するように構成される、帯域通過フィルタ及び合成モジュール1608を有し得る。信号F1、FNは、合成される前に帯域通過フィルタリングされ得る、又は信号が合成され、帯域通過フィルタが合成された信号へ適用されて、血圧信号1610を生成し得る。
【0110】
フィルタ・バンク1606は、本開示の範囲から逸脱することなく任意の方式で、フィルタリングの前又は後に、受信される信号の任意の組合せを合成するように構成される。
【0111】
上記を考慮して、
図17から
図25は、ヒト対象体の様々な位置に固定される実例のセンサ・アセンブリ100、200によって抽出される様々な信号を、グラフで例示する。
【0112】
図17は、対象体300の胸骨に位置づけられ、剣状突起でベルト304によって留められた
図3のセンサ・アセンブリ300から取得された、抽出された力信号1702をグラフで例示する。同時に測定された対応するECG信号1704もまた、比較のために示される。P波成分1706、QRS複合波1708、及びT波成分1710を含むが、これらに限定されない、様々な心臓パラメータが、力信号1702において識別され得ることが確認され得る。そのようにして、センサ・アセンブリ300は、不整脈(例えば、心房細動)などの疾患の診断において使用され得る。心臓周期の各段階の持続期間、心臓弁の開放及び閉鎖時間1712、1714、心臓収縮レベル、一回拍出量、心拍出量、及び脈波伝播時間を含む、さらなるパラメータもまた、この力信号1702から抽出され得る。
【0113】
図18は、剣状突起又はその付近で、ベルト304の代わりに接着パッチで同様の位置に位置づけられた、
図3に示されるものと同様のセンサ・アセンブリから取得された、抽出された力信号1802をグラフで例示する。同時に測定された対応するECG信号1804もまた、比較のために示される。
図17と同様に、力信号1802が、ECG信号1804のものと対応する、様々な心臓に関する指標をもたらすことが確認され得る。
【0114】
図19は、
図4に示されるセンサ・アセンブリ402の力センサによって生成された力信号の和である、合成信号1902をグラフで例示し、センサ・アセンブリ404のうちの1つは、胸骨上窩又はその付近で上部胸郭上に設置され、その他のセンサ・アセンブリ402は、心尖又はその付近で下部胸郭上に設置される。対応するECG信号1904もまた、参照のために示される。得られた合成信号1902が、心臓を通る中心動脈圧の推定値を表し、それから、ピーク反射及び駆出波P1、P2を含む様々なパラメータが、推定され得ることが確認され得る。したがって、本明細書に記載のセンサ・アセンブリを使用した力及び/又は速度の示差的測定値が、中心動脈圧だけでなく、対象体の様々な部位間の血圧勾配の決定を可能にすることが理解されよう。例えば、胸骨上窩及び大腿動脈(又は鎖骨下動脈若しくは他の末梢動脈)で2つ以上のセンサ・アセンブリを使用した力及び/又は速度の測定値は、末梢血圧を決定するために比較され得る。
【0115】
図20は、
図3に示されるように剣状突起又はその付近に位置づけられた、センサ・アセンブリ100の力センサ102(FSR)から生成された力信号2002、及びセンサ・アセンブリ100の変位センサ104(PZT)から生成された変位速度信号の積分信号2004をグラフで例示する。この図は、速度信号の積分2004と力信号2002との実質的な類似を例示し、速度は、力変位の一階微分である。したがって、力信号2002が、特に圧電センサを使用する場合に、センサ・ドリフトを判別するために、センサの動作前に又は監視中にリアルタイムで、速度信号2004を較正するために使用され得ることが確認され得る。P波が、プロットにおいてそれぞれの円2006、2008によって強調されて、力信号2002及び積分信号2004の両方において見ることができることもまた、
図20から確認され得る。さらに、重複切痕もまた、
図20の各プロットにおいて大矢印2010、2012によって強調されて、信号2002、2004の両方において確認され得る。
【0116】
図21は、
図6に示されるように橈骨動脈又はその付近で対象体300の手首604に位置づけられた、センサ・アセンブリ602の力センサ(FSR)から生成された力信号2102、及び変位センサ(PZT)から生成された変位速度信号2104をグラフで例示する。対応するECG信号2106もまた、比較のために示される。プロットの各々における円は、各信号2102、2104、2106において見ることができる、測定されたP波を強調する。大矢印は、力及び速度信号2102、2104の各々における重複切痕を特定する。P波が、手首604で測定された力及び速度信号2102、2104から受信された信号から見ることができることが、
図20から確認され得る。
【0117】
図22は、例えば、
図7に関連する上記の低域通過フィルタ710を使用した、低域通過フィルタリングによって、それぞれの力及びECG信号2106、2108から抽出した呼吸信号2102、2104をグラフで例示する。
【0118】
上述のように、センサ・アセンブリ100、200は、センサ・アセンブリ100、200の加速度を測定するように構成される、1つ又は複数の加速度計を設けられ得る。
図23は、
図3に示されるように剣状突起又はその付近に位置づけられた、センサ・アセンブリ100の加速度計120から導出された加速度計信号2302、及び力センサ102から導出された力信号2304をグラフで例示する。比較のために、記録された心臓音2306、光電式容積脈波計(PPG:photoplethysmogram)2308及びECG2310の信号もまた示される。加速度計120で受信された信号2302が、同様の特徴を有する記録された心臓音信号2306と同様の特性を有することが、この図から確認され得る。そのようにして、加速度計2302が、
図7に関連して上記のように、体内音を表す音信号を生成するために使用されることが可能であることが確認され得る。
【0119】
図24は、
図1aのセンサ・アセンブリ100から抽出された生データをグラフで例示する。
図24では、ECG信号2402が参照のために与えられ、トレース2404は、変位センサ104によって記録された呼吸の5つの周期を示し、トレース2406は、力センサ102によって記録された呼吸の5つの周期を示す。
【0120】
図23と同様に、
図25は、
図1aのセンサ・アセンブリ100から抽出された、音のデータ及びサイズモカルジオグラム(seismocardiogram;振動性心臓図)をグラフで例示する。
図25では、トレース2502は、呼吸のアーチファクトが信号からフィルタリングされた後の、力センサ102からの生データを表し、トレース2504は、呼吸のアーチファクトの除去後の、変位センサ104からの生データを表す。トレース2506は、
図7の信号調整回路を使用して変位センサ104から抽出された、サイズモカルジオグラムである。トレース2508は、変位センサ104から抽出された音のプロットである。トレース2510は、比較の目的で与えられたECG信号である。したがって、好適な信号調整によって、信号が体内音を表す変位センサ104から抽出され、ECG装置を必要とすることなくサイズモカルジオグラムを提供することができることが確認され得る。したがって、センサ・アセンブリ100、200を着用する対象体は、活動を行いながら監視されることが可能であり、対象体の身体へECG装置を装着させるために活動の完了を待つ必要がない。
【0121】
図26及び
図27は、可撓性支持体層2304に少なくとも部分的に包み込まれた可撓性センサ2302を有する、センサ・アセンブリ2300のそれぞれ断面及び平面図である。
図1aのアセンブリ100の力センサ102と同様に、力センサ2302はFSRである場合があり、そのインピーダンスが可撓性センサ2302の撓み又は曲がりで変化する。可撓性支持体層2304は撓むことができ、したがって、センサ2302が、センサ2302が適用される対象体の表面の湾曲に適合することを可能にする。
【0122】
可撓性支持体層2304は、好ましくは、可撓性でありながら、層2304が適合し得る対象体の表面に垂直な方向に、実質的に延びることができない材料から製作される。そのようにして、支持体層2304及び、したがって、可撓性センサ2302の撓みは、可撓性センサ2302(FSRの場合)の抵抗における変化を導き、又は、そうではない場合に、可撓性センサ2302の特性における変化を導く。センサ・アセンブリ2300は、対象体に対する位置にセンサ・アセンブリ2300を維持するための、固定化デバイス2306をさらに有する。例えば、固定化デバイス2306は、対象体によって着用される衣類などの、センサ・アセンブリ2300を支持体へ装着するための据付点である。衣類は、シャツ、ストラップ、ベルト、ベストなどであり得る。同様に、センサ・アセンブリ2300は、固定化デバイス2306がない状態で衣類のポケットに着用されることが可能である。センサ・アセンブリ100、200に関連して上記の調整若しくは信号処理モジュール又は回路のいずれもが、同様に、可撓性センサ2302からの信号を調整又は生成するために、使用されることが可能である。
【0123】
使用において、センサ・アセンブリ2300は、経時的に変化する曲率半径を有する対象体2500の表面で固定された位置に位置づけられる。例えば、
図28に示されるように、センサ・アセンブリ2300は、対象体2500の胸郭へ固定される。息づかい中の胸郭の膨張は、可撓性センサ2302を撓ませ、したがって、可撓性センサ2302の特性(抵抗又はその他)を変化させる。
【0124】
図29は、
図28に示されるように、対象体2500によって着用されるシャツの縫い目に一体化されたセンサ・アセンブリ2300の可撓性センサ2302から生成された、明確に周期的な息づかいの信号をグラフで例示する。
【0125】
図30は、センサ・アセンブリ2300の変形であるセンサ・アセンブリ2700の概略断面図を示し、
図26及び
図27に関連して、同様の符号は、そうではないことが明示されない限り、同様の部分を指す。センサ・アセンブリ2700は、可撓性変位センサ2702をさらに有し、可撓性変位センサ2702は、センサ2702の変位の速さ又は速度を表す速度信号を生成するように構成される。変位センサ2702は、可撓性支持体層2304の後面へ連結される。変位センサ2702は、任意選択で、さらなる可撓性支持体層2704に、少なくとも部分的に包み込まれる。実施例では、変位センサ2702は、圧電センサである。
【0126】
図31は、センサ・アセンブリ2700の変形であるセンサ・アセンブリ2800の概略断面図を示し、
図30に関連して、同様の符号は、そうではないことが明示されない限り、同様の部分を指す。センサ・アセンブリ2800は、加えて、変位センサ2702へ取り付けられる、
図1bに示されるアセンブリ200の力センサ202と同様の第2の力センサ2802を有する。第2の力センサ2802は、任意選択で、センサ・アセンブリ2700の可撓性支持体層2304と同様の可撓性支持体層2704に、少なくとも部分的に包み込まれる。力センサ202と同様に、力センサ2802は、外部圧力がアセンブリ2800へ加えられると、抵抗が変化する。したがって、そのような外部から加えられる力(及び関連するアーチファクト)が判別され、それに応じて、可撓性センサ2302が較正され得る。
【0127】
センサ・アセンブリ2700、2800の動作は、それぞれセンサ・アセンブリ100、200のものと同様であり、そのため、ここでは再び詳細に説明されない。
【0128】
図32及び
図33は、センサ・アセンブリ100、200が、対象体の血圧が上昇した状態で、脈波伝播時間(PTT)及びPTTにおける振動を測定するために使用され得ることを例示する。
【0129】
センサ・アセンブリ100、200は、健常な対象体の胸壁に、及び対象体の右総腸骨動脈上に設置された。トレース3202は、呼吸アーチファクトの除去後に、腸骨稜で変位センサ104によって検出される脈波の速度を表し、トレース3204は、呼吸アーチファクトの除去後に、対象体の心臓の尖部の近傍において、対象体の胸壁で変位センサ104によって検出される脈波の速度を表す。
【0130】
図32では、トレース3202及び3204は、対象体が身体的運動、より具体的には腕立て伏せを始める前に測定される。対象体が身体的運動を始める前に、腸骨-尖部の時間差は、健常な対象体の123/68の安静時の血圧に基づいて、およそ146msであったことが留意される。
図33は、PTTの時間差が、身体的運動及び144/79への対象体の血圧の上昇後に、実質的に減少することを示す。身体的運動後に、腸骨-尖部の時間差は、およそ59msへ減少する。これは、センサ・アセンブリ100、200が、センサ・アセンブリ100、200が対象体へ装着されながら、PTTを検出するために使用されることが可能であることを実証する。
【0131】
図34から
図36は、健常な対象体による身体的運動中に、心臓活動、より具体的には、心臓の一回拍出量を測定するための、センサ・アセンブリ100、200の使用を例示する。
図34は、健常な対象体が安静時の様々なパラメータを示す。
図35は、対象体が最初に低強度の重量挙げを始めた状態でのパラメータを示し、
図36は、対象体が次に高強度の重量挙げを始めた状態での同じパラメータを示す。
【0132】
この試験では、センサ・アセンブリ100、200は、対象体の胸壁へ装着された。対象体は、次に2つの異なる努力レベルを達成するために、2種の異なる強度で重量を挙げることを求められた。これらの図では、トレース3402は、センサ・アセンブリ100、200の力センサ102によって測定された低周波フォース・カルジオグラム(FCG:force cardiogram)を表す。トレース3404は、センサ・アセンブリ100、200の力センサ102によって測定された高周波FCGを表す。トレース3406は、センサ・アセンブリ100、200の変位センサ104によって測定された呼吸努力を表す。トレース3408は、標準的なECGを表し、比較の目的で与えられる。
【0133】
結果は、明確に、対象体の心臓の努力レベルに比例する、低周波及び高周波FCGの両方における振幅の一貫した増大を実証する。特に、身体的運動の前に測定されたFCGの値に関して、低周波FCGの振幅は、低強度の重量挙げに反応して2倍になり、高強度の重量挙げに反応して3倍になった。反対に、高周波FCGは、変位センサ104によって抽出されるサイズモカルジオグラムと強く相関することが知られており、低強度の重量挙げに反応しておよそ1.5倍に増加し、高強度の重量挙げに反応してほぼ2倍になった。これらの結果は、2種のFCG成分が、心臓機構についての異なる情報を保有し、低周波FCGが、高周波FCGより強く一回拍出量と相関することを実証する。
【0134】
本明細書に記載のセンサ・アセンブリのうちの1つ又は複数は、様々な状況において対象体を現場で監視するための医療デバイス内に、任意の組合せで統合され得る。例えば、センサ・アセンブリは、対象体の1つ又は複数の生理的パラメータ(上記のもののいずれかなど)を監視するように構成される、マットレス、シート若しくは椅子の内又はその上に取り付けられることが可能である。加えて、センサ・アセンブリは、ベッド又はマットレス上のセンサ・アセンブリに対する対象体の運動及び位置を検出並びに監視するように構成され得る。そのような監視は、床ずれの防止に有利であり得る(センサ・アセンブリがマットレスなどに一体化される場合に)。
【0135】
本開示の実施例が、多数の人間及び動物の疾患並びに状態の診断及び監視において、そのような疾患及び状態が、皮膚の力、変位、及び/又は加速度の測定値によって診断及び監視され得る場合に、使用され得ることが理解されよう。心臓状態及び疾患の非限定的な実例として、無害性心雑音、硬化症、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心室瘤、僧帽弁逸脱(MVP:mitral valve prolapse)、孤立性のクリック及び心雑音、僧帽弁逆流、僧帽弁狭窄症(MS:mitral stenosis)、三尖弁逆流(TR:tricuspid regurgitation)、僧帽弁逆流、大動脈弁逆流症、大動脈狭窄、肥大型閉塞性心筋症、心筋症、心膜炎、肺高血圧症、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、肺動脈弁狭窄、大動脈縮窄、ファロー四徴症、冠疾患、心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、肺塞栓症、肺性心などが挙げられる。
【0136】
肺うっ血を含む、肺疾患及び肺の状態もまた、診断され得る。本開示の実施例はまた、例えば、気管若しくはその付近で、又は対象体の頸部周りの他の位置で、本明細書に記載の1つ又は複数のセンサ・アセンブリを設置することによって、睡眠時無呼吸などの睡眠障害を診断及び監視するために使用され得る。センサ・アセンブリは、任意選択で呼吸に加えて、いびき、嚥下、気道(例えば、気管)周りの筋肉収縮、気道の大きさの減少を監視するように構成され得る。
【0137】
動脈及び/又は静脈の状態(石灰化、虚脱など)は、監視される動脈又はその付近の皮膚に、本明細書に記載の1つ又は複数のセンサ・アセンブリを設置することによって、診断及び監視され得る。一部の実施例では、例えば、センサ・アセンブリは、左右両側それぞれの動脈に位置づけられる場合があり、動脈の一方若しくは他方(又は両方)の状態を決定するために、左右の動脈間の比較が行われ得る。
【0138】
上記の実施例のいずれにおいても、センサ・アセンブリは、短又は長期使用のためにウエアラブル・デバイス内に統合される場合があり、力、速度及び/又は加速度測定値は、収集及び記憶される場合があり、その結果、状態及び疾患が経時的に監視され得る。
【0139】
本明細書に記載のセンサ・アセンブリはまた、妊娠中の子宮収縮を監視するために使用され得る。妊娠している対象体は、子宮の近傍の皮膚上の位置に、1つ又は複数のセンサ・アセンブリを着用し、収縮が皮膚の力変位を引き起こし、対応する信号がセンサ・アセンブリの力及び変位センサ、並びに任意選択の加速度計から導出され得る。
【0140】
本明細書に記載のセンサ・アセンブリは、ヒト又は動物対象体を測定、診断及び監視するために使用され得るだけでなく、そのような対象体における胎動を監視するためにも使用され得る。例えば、センサ・アセンブリ100、200などの1つ又は複数のセンサ・アセンブリは、ヒト又は動物対象体それ自体に関連した上記のものと同様の方式で、動物又はヒト対象体の子宮における胎児の運動、呼吸及び心臓信号を監視するために、胃の周辺の位置に設置され得る。
【0141】
本明細書に記載の実施例では、特に
図3から
図5を参照して、センサ・アセンブリは胴の前部へ固定される。例えば、
図4は、前面の聴診位置に位置づけられているセンサ・アセンブリを示す。1つ又は複数のセンサ・アセンブリが、本開示の範囲から逸脱することなく、例えば、胴の背部の標準的な聴診置位で、動物又はヒト対象体の胴の背部へ固定され得ることが理解されよう。
【0142】
特に図に関連して本明細書に記載の様々な動作が、他の回路又は他のハードウエア構成要素によって実施され得ることを、特に本開示により恩恵を受ける当業者は理解されたい。所与の方法の各動作が実行される順番は、変更される場合があり、本明細書に例示されるシステムの様々な要素は、追加、再配列、組合せ、省略、改変などが行われ得る。本開示が、全てのそのような改変及び変更を包含することが意図され、したがって、上記の説明は、制限的ではなく例示的な意味で解釈されるべきである。
【0143】
同様に、本開示が特定の実施例を参照するが、ある改変又は変更が、本開示の範囲及び適用範囲から逸脱することなく、それらの実施例に行われ得る。さらに、特定の実施例に関して、本明細書に記載の任意の利益、利点、又は課題への解決手段が、決定的な、必要な、又は本質的な特徴若しくは要素であるとみなされることは、意図されない。
【0144】
同様に、本開示の利益を有するさらなる実施例が当業者に明らかであり、そのような実施例は本明細書に含まれるとみなされるべきである。
【0145】
多くの適用のために、実施例は、DSP(デジタル信号プロセッサ:Digital Signal Processor)、ASIC(特定用途向け集積回路:Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(フィールド・プログラム可能ゲート・アレイ:Field Programmable Gate Array)で実施され得る。したがって、コードは、従来のプログラム・コード又はマイクロコード、或いは、例えば、ASIC若しくはFPGAを設定又は制御するためのコードを含み得る。コードはまた、再プログラム可能論理ゲート・アレイなどの再構成可能装置を動的に構成するためのコードを含み得る。同様に、コードは、Verilog(商標)又はVHDL(超高速集積回路ハードウエア記述言語:Very high speed integrated circuit Hardware Description Language)などのハードウエア記述言語のためのコードを含み得る。当業者であれば理解するように、コードは、互いに通信する複数の連結された構成要素間でやり取りされ得る。適宜、実施例はまた、アナログ・ハードウエアを構成するために、フィールド(再)プログラム可能アナログ・アレイ又は同様のデバイスで動作するコードを使用して、実施され得る。
【0146】
本明細書で使用される場合に、用語モジュールは、カスタム定義回路などの専用のハードウエア構成要素によって少なくとも部分的に実施され得る、及び/或いは1つ若しくは複数のソフトウエア・プロセッサ又は好適な汎用プロセッサなどで動作する適切なコードによって少なくとも部分的に実施され得る、機能単位又はブロックを指すために使用されることに留意されたい。モジュールは、それ自体が、他のモジュール又は機能単位を含み得る。モジュールは、共に配置される必要がなく、異なる集積回路で提供され得る、及び/若しくは異なるプロセッサで動作する、複数の構成要素又はサブモジュールによって提供され得る。
【0147】
数字の変動及び/又は改変が、本開示の広く一般的な範囲から逸脱することなく、上記の実施例へ行われ得ることが、当業者によって理解されよう。本実施例は、したがって、全ての点において例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の生理的パラメータを検出するための装置であって、
前記対象体の器官の力変位を表す第1の信号を生成するように構成された力センサ
であって、前記第1の信号が0.5Hz~300Hzの通過帯域を有する、力センサと、
前記力センサに関連付けられ、且つ前記対象体の前記器官の変位速度を表す第2の信号を生成するように構成された変位センサと、
前記力センサ及び前記変位センサのうちの1つに配設され、前記力センサ及び前記変位センサを前記器官と機械的に連結するように構成されたカプラと
を有する装置。
【請求項2】
前記力センサが第1の力検出抵抗器(FSR)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変位センサが圧電センサを有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記カプラが、前記力センサの最大平面面積より小さい最大平面面積を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記カプラの前記最大平面面積が、前記変位センサの最大平面面積と近似する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記力センサが前記変位センサに取り付けられる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記力センサが、前記カプラの動作可能な後面へ連結される動作可能な前面と、前記変位センサの動作可能な前面へ連結される動作可能な後面とを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記力センサ及び前記変位センサがそれぞれ、前記カプラの動作可能な後面へ連結される動作可能な前面を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記力センサ及び前記変位センサが、前記カプラの前記動作可能な後面に、同心に配設される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記カプラが、前記器官と接触するように構成された動作可能な前面を有し、前記動作可能な前面が、ドーム型、マッシュルーム型、コーン型、及びピラミッド型のうちの1つである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記カプラが、円筒形又は直方体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記カプラが、硬質プラスチック材料及び導電性材料のうちの少なくとも1つを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記硬質プラスチック材料が、アクリル樹脂を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置の動作可能な後面へ加えられる力を測定するように構成された第2の力センサをさらに有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第2の力センサが力検出抵抗器(FSR)である、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の力センサが、前記変位センサの動作可能な後面へ連結される、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置を前記対象体の前記器官へ固定するように構成された固定デバイスをさらに有する、請求項1から16までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記固定デバイスが、
a)ストラップ、
b)ベルト、
c)接着パッチ
のうちの少なくとも1つを有する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに有する、請求項1から18までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1の信号に基づいて、前記変位センサから受信した前記第2の信号を較正するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサが、第2の力センサから受信した第3の信号に基づいて、前記第1の信号及び前記第2の信号を較正するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記生理的パラメータが、心拍、血圧、子宮収縮、胎動、呼吸、前記対象体の心臓弁の開放時間、前記対象体の心臓弁の閉鎖時間、前記対象体の心臓の収縮レベル、前記対象体の前記心臓の一回拍出量、心拍出量、及び血液の脈波伝播時間のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から
21までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記生理的パラメータが血圧であり、測定される前記パラメータが、中心血圧及び末梢血圧のうちの少なくとも1つを含む、請求項
22に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
【
図1a】センサ・アセンブリの第1の実施例の概略図である。
【
図1b】センサ・アセンブリの第2の実施例の概略図である。
【
図1c】センサ・アセンブリの第3の実施例の概略図である。
【
図1d】センサ・アセンブリの第4の実施例の概略図である。
【
図3】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図4】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図5】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図6】ヒト対象体での様々な配置における、センサ・アセンブリの実施例を示す図である。
【
図7】センサ・アセンブリから受信した信号を処理するための、信号処理連鎖を示す図である。
【
図8】
図1又は
図2のセンサ・アセンブリの力センサから力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路を示す図である。
【
図9】
図1又は
図2のセンサ・アセンブリの力センサから力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路を示す図である。
【
図10】
図1又は
図2のセンサ・アセンブリの力センサから力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路を示す図である。
【
図11】
図2のセンサ・アセンブリの力センサ及び第2の力センサの特性に基づいて力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路の回路図である。
【
図12】
図2のセンサ・アセンブリの力センサ及び第2の力センサの特性に基づいて力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路の回路図である。
【
図13】
図2のセンサ・アセンブリの力センサ及び第2の力センサの特性に基づいて力信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理回路の回路図である。
【
図14】
図1a又は
図1bのセンサ・アセンブリの変位センサから調整された速度信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、実例としての処理連鎖のブロック線図である。
【
図15a】
図1a又は
図1bのセンサ・アセンブリの変位センサから調整された速度信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、処理回路の第1の実施例を示す図である。
【
図15b】
図1a又は
図1bのセンサ・アセンブリの変位センサから調整された速度信号を生成するための、
図7の信号処理連鎖の信号調整ステージによって実施される、処理回路の第2の実施例を示す図である。
【
図16】複数のセンサ・アセンブリから受信した信号を処理するための、信号処理連鎖を示す図である。
【
図17】
図3に示されたように、対象体の胸骨上に位置づけられた
図1aのセンサ・アセンブリによって記録された、力と時間の関係を示すプロットである。
【
図18】
図3に示されたように、対象体の胸骨上に位置づけられた
図1aのセンサ・アセンブリによって記録された、力と時間の関係を示すプロットである。
【
図19】対象体の胸骨上窩及び心尖にそれぞれ配置された、センサ・アセンブリの力センサからの2つの力信号の和のプロットである。
【
図20】
図1aのセンサ・アセンブリの力センサから導出された力信号と、
図1のセンサ・アセンブリの変位センサから導出された変位速度信号の積分とを比較するプロットである。
【
図21】心電図(ECG:electrocardiogram)を、
図1のセンサ・アセンブリから導出された力信号及び変位信号と比較するプロットである。
【
図22】ECG及びECGから導出された呼吸信号を伴う、
図1aのセンサ・アセンブリの力センサから導出された力信号、及び力信号から導出された呼吸信号を示すプロットである。
【
図23】心臓音信号、ECG、及び光電式容積脈波計(PPG:photophethysmogram)を伴う、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された力及び加速度計信号を示すプロットである。
【
図24】
図1aのセンサ・アセンブリから導出された呼吸と関連する生データを示すプロットである。
【
図25】図
1aのセンサ・アセンブリから導出された音及びサイズモカルジオグラ
ムに関するデータを示すプロットである。
【
図26】センサ・アセンブリの実施例の断面図である。
【
図27】
図26に示されるセンサ・アセンブリの実施例の平面図である。
【
図28】対象体の胸郭上に配設された
図26の一対のセンサ・アセンブリを示す図である。
【
図29】
図26のセンサ・アセンブリから導出された呼気信号の図である。
【
図30】センサ・アセンブリのさらなる実施例の断面図である。
【
図31】センサ・アセンブリの別の実施例の断面図である。
【
図32】安静時の対象体での、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された脈波伝播時間(PTT:pulse transit time)のプロットである。
【
図33】対象体による身体運動後の、
図1aのセンサ・アセンブリから導出されたPTTのプロットである。
【
図34】安静時の対象体での、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された心臓活動のプロットである。
【
図35】対象体による低強度の身体運動後の、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された心臓活動のプロットである。
【
図36】対象体によるより高強度の身体運動後の、
図1aのセンサ・アセンブリから導出された心臓活動のプロットである。
【国際調査報告】