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特表2023-501779一体型でモジュール式のモータまたは発電機、並びに同軸の流体流れを備える小型でモジュール式のポンプまたはタービン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】一体型でモジュール式のモータまたは発電機、並びに同軸の流体流れを備える小型でモジュール式のポンプまたはタービン
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20230112BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H02K7/14 B
H02K7/18 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524573
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 US2020056972
(87)【国際公開番号】W WO2021086742
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】16/668,665
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505259295
【氏名又は名称】フローサーブ マネージメント カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャッジ・スコット・シー.
(72)【発明者】
【氏名】ドリース・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハブリラ・ニール
(72)【発明者】
【氏名】オレクソン・ジュニア・デヴィッド
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB02
5H607DD02
5H607FF30
(57)【要約】
同軸のポンプまたはタービンモジュールは、ロータに取り外し可能な形で固定された径方向または軸方向の永久磁石および/または誘導コイルを含む磁石構造体を有する一体型でモジュール式のモータまたは発電機と、モジュールハウジングに取り外し可能に固定されているステータハウジングとを有する。作動流体は、モジュールハウジングとステータハウジングとの間に形成されている環の中に対称に分配されている流路を通って軸方向に誘導される。ステータハウジングは、作動流体によって、または流路の通路間を流れる冷却流体によって冷却される。流路は、ステータハウジングの実質的に全長および背面にわたって延在し得る。複数のモジュールを組み合わせて多段装置にすることができ、ロータ速度は対応する可変周波数ドライブによって独立して制御される。実施形態は、案内翼および/またはディフューザを含む。ロータは、回転シャフトに固定されるか、固定シャフトの周りに回転することが可能である。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型のモータまたは発電機を有するシールレスポンプまたはタービンモジュールであって、前記モジュールは、
前記モジュールの近位端に位置する入口であって、前記モジュールの中心軸にある入口と、
前記モジュールの遠位端に位置する出口であって、前記モジュールの中心軸にある出口と、
前記モジュールを取り囲むモジュールハウジングと、
前記モジュールハウジング内に懸架されているロータと、
前記ロータの回転を駆動するように構成されている前記モジュールハウジング内のモータ、または前記ロータの回転によって駆動されるように構成されている前記モジュールハウジング内の発電機と
を備え、前記モータまたは発電機は、
シールされているステータハウジング内のステータであって、前記ロータに向けられてる少なくとも1つの電磁石を有するステータと、前記ステータハウジングは、前記モジュールハウジングに対して取り外し可能に、軸方向に、径方向に、回転式に固定され、
前記ステータハウジングに形成され、前記ステータハウジングが前記モジュールハウジングに固定されるときに前記モジュールハウジングと共にシールを形成するように構成されている電気ポートであって、シールされている通路を提供する電気ポートと、前記通路を通して導電体が前記少なくとも1つの電磁石と前記モジュールハウジングの外部の装置との間を相互接続可能であり、
軸方向に固定され、前記ロータと回転式に協働するために取り外し可能に拘束されている磁石構造体に組み立てられた複数の磁気デバイスであって、前記ロータが回転すると前記磁石構造体によって前記少なくとも1つの電磁石の近くを通るように構成されている磁気デバイスと、
前記ステータハウジングの周りに対称に分配されている流路と
を有し、
前記モジュールは、作動流体が前記流路内で前記ステータを流れ去ると前記ステータハウジングの周りに対称に分散されるように、前記作動流体の流れを前記入口から前記流路を経て前記出口へ誘導するように構成されている、
モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュールであって、前記流路は、前記ステータハウジングを取り囲む環状流路である、モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のモジュールであって、前記流路は、前記ステータハウジングの周りに対称に配置されている複数の流路を含む、モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ロータは、回転シャフトによって懸架され、前記ロータは、前記シャフトに固定されている、モジュール。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ロータは、固定シャフトによって懸架され、前記ロータは、前記シャフトの周りを回転するように構成されている、モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュールであって、前記ロータは、一対のベアリングによって前記固定シャフト上で支持され、一方のベアリングは前記ロータを軸方向の位置に保持し、もう一方のベアリングは前記ロータを径方向に支持する、モジュール。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のモジュールであって、前記ロータは、単一の一方向スラストベアリングによって前記固定シャフト上で軸方向と径方向に支持されている、モジュール。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ロータは、プロセス流体によって潤滑される少なくとも1つのベアリングによって前記固定シャフト上に支持されている、モジュール。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記固定シャフトは、ねじ付きの装着部品によって、前記ステータハウジングと前記モジュールハウジングの少なくとも一方に固定されている、モジュール。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記磁気デバイスは、永久磁石である、モジュール。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記磁気デバイスは、かご形コイルである、モジュール。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記流路は、前記ステータハウジングの表面の少なくとも50%以上に及び、前記モジュールを通って前記入口から前記出口へ流れる前記作動流体の少なくとも90%は、前記ステータハウジングと直接熱接触した状態で流される、モジュール。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記モジュールは、前記入口から前記出口へ流れる前記作動流体がすべて前記流路を通って流されるように構成されている、モジュール。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のモジュールであって、
前記流路と前記ステータハウジングとの間に挟まれている断熱材、
前記断熱材と前記ステータハウジングとの間に形成されている冷却流体経路
をさらに備え、前記冷却流体経路は、前記ステータハウジングと熱連通し、前記ステータハウジングと前記冷却流体経路を流れる冷却流体との間で熱交換が可能なように構成されている、モジュール。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ステータは、前記ロータとは独立して、前記ロータの回転方向とは反対方向に回転するように構成されている、モジュール。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ロータと協働するが別個のディフューザモータによって駆動されるために前記ロータとは独立して回転可能なディフューザをさらに備える、モジュール。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ステータの前記電磁石は、前記ロータの径方向の周縁部を向き、前記磁気デバイスは、前記ロータの径方向の周の近くに固定されている、モジュール。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記ステータの前記電磁石は、前記ロータの側面に向けられ、前記磁気デバイスは、前記ロータの側面、または前記ロータの側面と同軸で近位にあるディスクに固定されている、モジュール。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載のモジュールであって、前記磁石構造体は、シールされ、それによって前記作動流体が前記磁気デバイスに到達することが排除される、モジュール。
【請求項20】
複数の相互接続されているモジュールを含む多段装置であって、各々の前記モジュールは、
前記モジュールの近位端に位置する入口であって、前記モジュールの中心軸にある入口と、
前記モジュールの遠位端に位置する出口であって、前記モジュールの中心軸にある出口と、
前記モジュールを取り囲むモジュールハウジングと、
前記モジュールハウジング内に懸架されているロータと、
前記ロータの回転を駆動するように構成されている前記モジュールハウジング内のモータ、または前記ロータの回転によって駆動されるように構成されている前記モジュールハウジング内の発電機と
を備え、前記モータまたは発電機は、
シールされているステータハウジング内のステータであって、前記ロータに向けられている少なくとも1つの電磁石を有するステータと、前記ステータハウジングは、前記モジュールハウジングに対して取り外し可能に、軸方向に、径方向に、回転式に固定され、
ステータハウジングに形成され、前記ステータハウジングが前記モジュールハウジングに固定されるときに前記モジュールハウジングと共にシールを形成するように構成されている電気ポートであって、シールされている通路を提供する電気ポートと、前記通路を通して導電体が前記少なくとも1つの電磁石と前記モジュールハウジングの外部の装置との間を相互接続可能であり、
軸方向に固定され、前記ロータと回転式に協働するために取り外し可能に拘束されている磁石構造体に組み立てられた複数の磁気デバイスであって、前記ロータが回転すると前記磁石構造体によって前記少なくとも1つの電磁石の近くを通るように構成されている、磁気デバイスと、
前記ステータハウジングの周りに対称に分配されている流路と
を有し、
前記モジュールは、前記作動流体が前記流路内で前記ステータを流れていくときに前記ステータハウジングの周りに対称に分散されるように、前記作動流体の流れを前記入口から前記流路を経て前記出口へ誘導するように構成されている、
装置。
【請求項21】
請求項20の装置であって、前記モジュールの前記モータまたは発電機のうちの少なくとも2つは、独立して制御され、前記対応するロータを別々の速度で回転させることができる、装置。
【請求項22】
請求項21の装置であって、前記独立して制御される2つのモータまたは発電機は、別個の可変周波数ドライブによって制御される、装置。
【請求項23】
請求項20から22のいずれか一項に記載の装置であって、前記モジュールは、前記装置に含まれる前記モジュールの少なくとも1つが故障しても前記装置全体がポンプまたはタービンとして機能し続けることができるように構成されている、装置。
【請求項24】
請求項20から23のいずれか一項に記載の装置であって、少なくとも2つの前記モジュールに共有のサポートを提供する制御電子機器をさらに含む、装置。
【請求項25】
請求項20から24のいずれか一項に記載の装置であって、相互接続されている前記複数のモジュールは、少なくとも3つの相互接続されているモジュールを含む、装置。
【請求項26】
請求項20から25のいずれか一項に記載の装置であって、各々の前記モジュールの前記磁石構造体は、シールされ、それによって前記作動流体が前記磁気デバイスに到達することが排除される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、あらゆる目的のために全体が援用される、2019年10月30日に出願された米国出願第16/668,665号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ポンプおよびタービンに関し、さらに詳細には、一体型でシールレスのポンプおよびタービンに関する。
【背景技術】
【0003】
ターボポンプおよびターボタービンは、物理的な設計が酷似していることが多いため、ポンプとタービンとの違いは、構造ではなく主に使用態様の問題になることがある。したがって、タービンまたはポンプに関して本明細書で考察する本発明の特徴および先行技術の特徴は、本文で特に明記しない限り、等しく両者を指すものと理解されたい。
【0004】
従来のターボポンプの設計では、流体の流れおよび圧力は、「回転翼」とも呼ばれるロータによって発生し、ロータは、据え付けのポンプのケーシング内で回転している。ロータを駆動するのに必要なトルクは、外部モータによってもたらされ、ポンプハウジング内で回転する回転シャフトを介してロータに伝達される。同様に、従来のタービン設計の場合、流体の流れと圧力はロータに適用される。ロータは、タービンの場合は「ランナー」とも呼ばれ、据え付けのタービンケーシング内でロータを回転させ、ロータによって発生した回転とトルクは、回転シャフトを介して外部発電機に伝達される。
【0005】
これらの手法の難点の1つは、回転シャフトが据え付けのポンプまたはタービンのケーシングを貫通している場所で圧力境界を維持するために動的シールを使用する必要があるという点である。これらのシールは、漏れやその他の故障モードの原因である。また、振動の問題を回避するために、ポンプとモータまたはタービンと発電機とを取り付けて互いに同列になるようにするために、剛性のベースプレートが必要である。剛性のベースプレートを使用していても、ポンプまたはタービンにノズルの負荷がかかると、モータまたは発電機と機械的シールとの位置合わせに問題が生じるおそれがある。
【0006】
これらの難点は、シャフトシールを含まない設計で回避される。例えば磁気カップリングドライブは、ポンプまたはタービンのシャフトに動的シールを必要としない。なぜなら、モータまたは発電機は、ハウジング内に位置する製品潤滑ベアリングで支持されている内部シャフトにポンプハウジングを介して磁気結合されるからである。ただし、これらの設計では、モータまたは発電機をロータシャフトにできる限り効率的に結合するために、モータまたは発電機とロータハウジングとを慎重に位置合わせする必要が依然としてある。また、磁気結合に使用する構成要素により、設計には複雑さとコストが加わる。
【0007】
動的シャフトシールを完全に回避する別の手法は、一体型の設計を用いることであり、その場合、モータまたは発電機は、ロータと同じハウジング内に収まっているためシャフトシールは必要ない。このような一体型のいわゆる「シールレスモータ」または「シールレス発電機」の手法のいくつかは、放射状場のモータまたは発電機の設計を用いるものであり、それによって磁石は、ロータの外径またはその近くに装着され、ロータは、薄壁の「缶」の中にシールされ、シールされた缶の外側にある電磁ステータがロータを包囲している。ただし、放射状場の設計では、必然的にロータハウジングの直径および長さを大幅に長くする必要がある。一体型ポンプの設計に対する別の手法は、軸方向場のモータまたは発電機の設計を実装することであり、それによってディスクまたは「パンケーキ」状の永久磁石、ブラシレスDCモータまたは発電機がロータハウジング内に収まり、高出力密度を実現し、可能な限り最も小型で軽量な単段のポンプまたはタービンユニットができる。
【0008】
ただし、一体型のシールレスモータポンプまたはシールレス発電機タービンのモータまたは発電機のコイルを冷却することは困難なことがある。通常は、作動流体の一部を水面下のベアリングの溝にシャントし、かつ/またはモータまたは発電機のコイルから生じる熱を抽出するための別の適切な経路にシャントするために、ハウジング内に特別な流路を設ける必要がある。シャントされた作動流体は、ステータの壁からの対流によって加熱され、ステータから熱を持ち去って、シャントされていない作動流体とともに排出される。
【0009】
残念ながら、シャントされた流体がステータの壁に隣接する通路、中空の回転シャフト、シャフトベアリング、および/またはその他の適切なチャネルを通る際に、流体の加熱および/または吐出圧力から吸引圧力へ移行することで起こる圧力低下が組み合わさることで相変化が起こる可能性がある。流体が気相に曝露された結果、モータ/発電機の過熱および/またはベアリングの故障を引き起こすおそれがある。さらに、ポンプ出力またはタービン入力の特定の一部を冷却流に転用するという要件は、必然的にポンプまたはタービンの効率を低下させる。
【0010】
機械的に一体型のモータまたは発電機を含む本発明以前のポンプおよびタービンの別の欠点は、各ポンプまたはタービンの設計が、それに対応する一体型のモータまたは発電機の設計を必然的に必要としている点である。したがって、新しいポンプまたはタービンの設計を導入する時は、新しいモータまたは発電機のトルクおよび電気的要件が既存の設計と比較して変わらないままであってもその新しいモータまたは発電機の設計も導入しなければならない。また、このような複数のポンプまたはタービンを同時に製造し、かつ/またはサポートする必要がある場合は、別個のモータまたは発電機の設計のために、別々の製造および/または在庫を維持する必要がある。
【0011】
上記の問題に加えて、一体型のポンプおよびタービンと一体型ではないポンプおよびタービンの両方の設計にみられる別の一般的な問題が、新しい用途の要件を満たすために既存のポンプまたはタービンの設計の容量をどのように増大するかということであり、これには一般に、ロータの物理的な形状およびサイズを設計し直し、ロータを高速で動作させ、かつ/または別のロータを追加することが必要である。
【0012】
ポンプによって生じる全揚程は、ロータの直径とその回転速度によって決まるが、ある特定のロータの直径および速度に対する流量は、ロータの幅によって決定される。ある特定のロータの設計では、ロータの最高速度は、モータが発生させ得るトルクの量によって制限される。同じく回転速度も、モータを駆動するのに使用されるインバータの周波数限度と、ロータの入口で使用できるNPSH(正味吸込みヘッド)の両方によって制限される。
【0013】
同様に、発電機タービンの場合、発電機は、インバータまたは発電機に関連する他の制御電子機器を制御した状態で、回転磁石と発電機コイルとの間の電磁結合に従ってタービンロータに「負荷」をかける。それによって発電機の最大出力は、ロータが発電機に送出できる最大トルクに左右され、このトルクは、ある特定の流体の流れでは、ロータの直径および幅に左右される。
【0014】
したがって、ポンプまたはタービンの出力を増大させる1つの手法は、ロータのサイズと、モータまたは発電機の容量を増大させることである。ただし、この手法から生じる追加のサイズおよびかさばりは問題となるおそれがある。
【0015】
ロータのケーシングおよびポンプまたはタービンの他の構成要素のサイズとかさばりは、流体圧力または発電機の出力が大きいことが求められる場合、直径の小さいロータを使用して高速で運転することによって低減することができる。ただし、ロータはモータまたは発電機の構成要素でもあるため、この手法は、シールレスモータまたは発電機の設計には有効ではない。特に、軸方向シールレス設計では、直径が小さいロータほど、永久磁石または誘導磁石を取り付けるのに利用できるディスク領域が小さくなり、それによってモータで発生させられ得るトルク、または発電機で生み出せる電力が制限される。別の制限は、様々な圧力および流量で送出できるシールレスモータの設計(磁気ロータおよび磁気ステータ)と、様々な圧力および流量で効率的に動作するシールレス発電機の設計を比較的利用できないことである。
【0016】
したがって、軸方向モータのシールレスポンプまたはタービンの場合、ロータがもたらすポンプヘッドまたはタービンの出力は、ロータの直径を大きくすることによってのみ増大させることができる。ただし、この手法では、大きい構成要素および高い流体圧力を収容するために大きく厚みのあるロータケーシングおよびその他の構造構成要素を使用する必要があるため、機器のかさが増す。
【0017】
ロータの数を増やすことによって出力を高めることも、ポンプまたはタービンの設計にとって問題となるおそれがある。一体型ではない多段ポンプまたはタービンでは、単一の大きなモータが共通シャフトを介して複数のロータにトルクをもたらすか、単一の大きな発電機共通シャフトを介して複数のロータからトルクを受ける。この手法では通常、大きくかさばるモータまたは発電機が必要であり、さらに、ロータの段数が増すにつれてシャフトの直径を大きくし、長さを長くする必要があり、それによって全ロータのトルクと重量を合わせたものに適応できる。
【0018】
水平配置で構成されていようと垂直配置で構成されていようと、ロータの段を複数有するこれらの長いシャフトは、大きなベアリングを必要とし、ベアリングが故障する可能性が増す。また、多段ポンプの長いシャフトは、シャフトのたわみおよび危険速度に関連する様々な回転力学上の問題を引き起こすおそれがある。これらの問題やその他の理由から、各々の多段ポンプ設計は、指定した最大段数のみに適用可能であり、様々な段数に対する要件に適応するように安易に規模を変更できるものではない。代わりに、既存の設計の規模を変更するには、通常新たなポンプまたはタービンの設計が必要になる。
【0019】
さらに、細長いシャフト、多段の手法では、全ロータが同一速度で回転する必要があり、これによって設計の効率および/またはNPSH(正味吸込みヘッド)の性能が制限されるおそれがある。また、多段ポンプのいずれか1段が故障すると、ポンプまたはタービン全体が即座に完全に故障してしまう。
【0020】
当然ながら、多段で一体型または一体型ではないポンプまたはタービンを設計し実装する1つの代替案は、単に、複数の単段ポンプまたはタービンを直列および/または並列に相互接続することである。ポンプの場合、直列の各ポンプの出力は次のポンプの入力になり、これによって圧力がさらに上昇するが、並列に構成されたポンプの出力は合算されて出力流量が増加する。タービンの場合、流体は直列か並列のいずれかでロータを通って流れ、タービン発電機の電気出力は、直列および/または並列で合算されて、電圧および/または電流の総出力が高くなる。
【0021】
ただし、複数のポンプまたはタービンを多段装置に組み合わせるというこの手法では、かさばる複雑な流体相互接続またはマニホールドを使用する必要があり、その結果、過度のスペースが消費される。また、ポンプまたはタービンの数が増えるにつれて、ホースおよび/または他の流体接続の数が増え、それに伴い漏れおよび/または他の故障モードの機会が増えるため、装置の信頼性が低下する。
【0022】
シールレスディスクモータポンプは、共通のハウジング内に2つ以上のモータを含む可能性があることが示唆されている。ただし、シールレスディスクモータの設計の流体相互接続要件およびモータ/発電機の冷却要件は、この手法を最大で2段階のみに制限する傾向がある。
【0023】
例えば、図1を参照すると、提案した1つの手法は、単一のシールレスモータ設計100内に2つの遠心ポンプ段を含み、それにより各段は、それ自体のモータ102で駆動され、2つの段は背中合わせに配置され、それによって2つのモータ102は、ケーシング112内の共通の中央スペース内に含まれ、共通のプロセス流路104によって冷却されることが可能である。図1に示した例では、2つのロータ106は反対方向を向き、各ロータは、背面に装着された永久磁石110を含む。
【0024】
この手法のいくつかのバージョンでは、モータ102は、別個の可変周波数ドライブ(「VFD」)114によって制御され、各々のロータ106は、別個の固定シャフト108の周りに回転する。他のバージョンでは、モータは、共通のコントローラおよび/またはシャフトを共有する。2つのモータ102を同じ容積内に配置することにより、この手法での冷却経路104は、単段一体型モータの設計の冷却経路よりもわずかに複雑なだけであり、流れが冷却経路へ迂回することによる効率の損失が最小に抑えられる。ただし、この手法は、その性質上2段のみに制限され、2段の制限を超えて設計を拡張する明確な手法はない。
【0025】
したがって、必要なのは、小型でモジュール式である一体型の「シールレス」ポンプまたはシールレスタービンの設計であり、それによってポンプまたはタービンモジュールを3つ以上、好ましくは任意の大きな数まで、その間をかさばる流体相互接続なしに直列に組み合わせることができる。実施形態でさらに好ましいことは、各モジュール内のモータまたは発電機を冷却するためのプロセス流体が、主要流路からほとんど反れないかまったく反れないこと、モジュールのロータが別々に回転すること、および/またはモジュールのモータ/発電機を別々に制御できることである。またさらに望ましいことは、ポンプまたはタービンのモジュールと一体型のモータまたは発電機は、それ自体もモジュール式とすべきことであり、それによって、同じモータまたは発電機の設計を異なるポンプまたはタービンの設計に組み入れることが可能になる。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、流れが「同心」となる設計である極めて小型のモジュールとして構成されている「シールレス」モータポンプまたはシールレス発電機タービンである。開示したモジュール式の設計により、ポンプまたはタービンモジュールを3つ以上、好ましくは任意の大きな数まで、各モジュールのロータがそれ自体のシャフトまたはその他の支持体で別々に回転している状態で、その間をかさばる流体相互接続なしに直列に組み合わせることができる。実施形態では、各モジュール内のモータまたは発電機を冷却するためのプロセス流体が、主要流路からほとんど反れないかまったく反れない。様々な実施形態では、モジュールモータまたは発電機のロータは、別個に制御可能である。そして実施形態では、ポンプまたはタービンモジュールと一体型のモータまたは発電機は、それ自体がモジュール式であるため、同じモータまたは発電機の設計を異なるポンプまたはタービンの設計に組み入れることが可能になる。
【0027】
本発明によれば、モータまたは発電機のコイルハウジング、すなわちステータハウジングは、モジュールの外側のハウジング、すなわちモジュールハウジングによって同心状態で囲まれ、それによって両者の間に、モータまたは発電機コイルを取り囲みモータまたは発電機の主軸を中心とする環状空間ができる。作動流体は、モジュールを軸方向に入り、実質的に主軸に沿って位置している近位入口を通り、モジュールから、同じく実質的に主軸に沿って位置している遠位出口を通って軸方向に排出される。モジュール内で、作動流体は、ステータハウジングの周りに沿って対称に配置された実質的に同じ複数の流路、またはステータハウジングを取り囲んでいる単一の環状流路を通って、モータまたは発電機コイルを取り囲んでいるステータハウジングを対称に流れていく。モータまたは発電機コイルを取り囲む領域に流路が対称に分布していることで、モジュールハウジングの直径がモータまたは発電機のステータハウジングよりも適度に大きいだけの小型の設計になる。
【0028】
比較的低温の作動流体を用いて使用するのに適している様々な実施形態では、複数の流路または単一の環状流路は、モータまたは発電機コイルのハウジングと直接熱接触していて、それによってモータまたは発電機コイルを直接冷却する。これらの実施形態のいくつかでは、作動流体の80%より多くがモータまたは発電機のコイルハウジングと熱接触し、モータまたは発電機のコイルハウジングの少なくとも20%が作動流体と熱接触している。様々な実施形態では、作動流体の90%より多くがモータまたは発電機のコイルハウジングと熱接触し、モータまたは発電機のコイルハウジング表面の少なくとも50%が作動流体と熱接触している。
【0029】
高温の作動流体を用いて使用するのに適している多段の実施形態では、複数の実質的に同じ流路の各々とモータまたは発電機コイルのハウジングとの間に断熱材が設けられる。これらの実施形態のいくつかでは、モータまたは発電機コイルハウジングの周りの環状空間に冷却流体が流れ、その結果、冷却流体はモータまたは発電機コイルのハウジングと直接接触し、それによってモータまたは発電機コイルを冷却し、高温の作動流体による残余の加熱から保護する。
【0030】
高温の作動流体が単一の環状流路を流れるという他の実施形態では、環状流路とモータまたは発電機コイルのハウジングとの間に断熱材が設けられ、これらの実施形態のいくつかでは、断熱材の下に設けられた冷却環または冷却路を通って別個の冷却流体が流れる。
【0031】
実施形態では、本発明の同心設計は、各段がロータと関連するモータまたは発電機の両方を含む多段のポンプまたはタービンを形成するために、単独または複数の同じモジュールと直列で使用できる極めて小型のモジュールとして実現される。このモジュール式の設計により、装置の設計、操作、およびメンテナンスに余計な複雑さや煩雑さが加わることなく、モジュールを任意の段数で組み合わせることが可能になる。特に、各モジュールのロータは、専用のシャフトまたはその他の支持体で支持されているため、段数が多くても、シャフトのサイズ、シャフトのたわみ、回転力学、ベアリングの負荷、モータの並び、または段どうしの並びに関していかなる問題も生じない。
【0032】
いくつかの実施形態では、各モジュールのロータは、回転シャフトに固定されている。他の実施形態では、各モジュールのシャフトは固定され、ロータは、シャフトの周り、例えばベアリング上を回転する。例えば、各モジュールのシャフトは、ロータのハブを通って挿入され、モジュールハウジングにねじ締めされることが可能で、特別な工具がなくても簡単に組み立ておよびメンテナンスがしやすくなる。
【0033】
特定の実施形態は、ロータとステータの構成が逆になっているモジュールを含み、それにより、ロータとステータの両方が互いに独立して反対方向に回転できる。いくつかの実施形態は、個別に回転するステータおよび/またはディフューザを含む。これらの実施形態のいくつかでは、ディフューザは、米国特許出願第15/101,460号の開示と同様の方法で実現され、同文献を参照してその全容をあらゆる目的のために本願に援用する。
【0034】
さらに他の実施形態では、開示したモジュールは、シャフトを含んでいない。代わりに、ロータの前方の摩耗リングの隙間が径方向および軸方向の主要ベアリングとして作用する。これにより、トルクがモータの電磁石ステータコイルからロータに直接伝達されるか、電磁エネルギーがロータから発電機に伝達され、回転シャフトを使用することはない。
【0035】
いくつかの実施形態では、開示したポンプまたはタービンのモジュールは、径方向のモータまたは発電機の設計を含み、それによって複数の永久磁石がロータの周またはその近くに装着され、ロータは、電磁石ステータに取り囲まれる。他の実施形態では、開示したモジュールは、軸方向の「ディスク」または「パンケーキ」状のモータまたは発電機を含み、それによって複数の永久磁石はロータの後ろ側に装着され、ロータが回転すると、軸方向に隣接するステータの電磁石コイルの近くを通過する。永久磁石のモータまたは発電機を含むいくつかの実施形態は、モジュールの同期動作速度が3600rpmより上に上昇することを可能にする可変速度ドライブをさらに含む。
【0036】
他の実施形態は、ポンプまたはタービンの動作中にステータの電磁石によって電流が誘導される「かご形」ロータコイルなどの非永久磁石を利用する誘導モータまたは誘導発電機を含む。
【0037】
実施形態では、モータまたは発電機のコイルは、静的なシール方法を用いて作動流体からシールされ、それによって動的な機械的シールの必要性がなくなり、そうしなければそこから生じるであろう位置合わせ、漏れ、および/またはメンテナンスの問題を回避する。
【0038】
遠心設計を有する様々な実施形態は、半径流ロータを含む。これらの実施形態のいくつかは、特定の速度が最大約2000USユニット、4000USユニット、さらには5000USユニットであるロータを含む。他の実施形態は、半径磁束のモータまたは発電機の設計であり、かつより高い特定速度の混合流ロータの設計である段を含む。
【0039】
実施形態では、ロータは、各々のモジュール式段に設けられた製品潤滑ベアリングによって軸方向および径方向に配置され、これにより、各段のベアリングは、その段からの負荷のみに対処するように設計することができる。この手法で、多段配置で段の負荷が合算されることによるベアリングへの過負荷のリスクが完全になくなり、特大のベアリングを使用する必要がないため、より小型の設計になる。実施形態においてベアリングの潤滑剤として作動流体を使用することで、外部の油潤滑システムの必要性もなくなり、ポンプ設計全体が大幅に簡易化する。実施形態では、別個の軸方向ベアリングと径方向ベアリングの代わりに、径方向ベアリングと一方向スラストベアリングを組み合わせたものを使用する。
【0040】
様々な実施形態では、多段装置のモータまたは発電機は、別個に制御可能である。実施形態は、複数の可変周波数ドライブ(VFD)を含み、これらの実施形態のいくつかでは、各段のモータまたは発電機は、専用のVFDによって独立して制御される。これらの実施形態のいくつかで重要な利点の1つは、低い正味吸込みヘッド(「NPSH」)およびオフピーク状態に対応するために、第1の段が装置のそれ以外の部分よりも低速で実行できることである。いくつかの用途では、最終段のみの速度を変更することが、出力の圧力および/または流れを正確に制御するのに有用な手法となる。
【0041】
各段に個別のVFDドライブを設けることは、フェイルセーフの冗長性としての役割を果たすこともでき、それによって、1つの段が故障しても残りは動作し続け、装置は機能し続ける。ポンプまたはタービンの段が故障した後に継続する機能は、揚程および流量が少ないことがあるか、故障した段の揚程および流量の損失を補償するために残りの段の速度を上げることができる。この手法では、オペレータが段の故障に気付いた後にシステムを安全に運転停止する時間ができるまで、可能性として少ない揚程および流量でポンプまたはタービンが作動し続けるという故障シナリオを作成する。それとは対照的に、従来のポンプまたはタービンの1つの段が故障すると、装置全体が故障し、パフォーマンスが完全に失われ、システムが突然制御不能な状態で運転停止する。適切なVFDと共にセンサレスモータを使用することで、様々な実施形態の各段に対して計装の要件も少なくなる。
【0042】
様々な実施形態では、各モジュールに含まれているモータまたは発電機は、設計がモジュール式で、ある特定のモータまたは発電機の設計を複数の異なるポンプまたはタービンの設計に組み入れることができる。特に、モータまたは発電機に含まれている複数の永久磁石または他の磁気デバイスは、ポンプまたはタービンのロータと協働するように軸方向と回転方向に拘束できる取り外し可能なモジュール式の磁石構造体に含まれる。磁石構造体を軸方向および回転方向に拘束することは、磁石構造体をロータに対して軸方向と回転方向の両方で拘束することができる先行技術で公知のなんらかの手段によって可能である。実施形態は、磁石構造体と、磁石構造体をロータに回転式に固定する1つ以上のピンとを軸方向に拘束するスナップリングを含む。他の実施形態は、磁石構造をロータにねじ込む装着部品、またはねじもしくはボルトによる装着部品を含み、それによって磁石構造体は、軸方向と回転方向の両方に拘束される。これらの実施形態のいくつかは、ステータとポンプまたはタービンの外部環境との間に電気リードおよび/または制御線が延在する通路ができるように、モータまたは発電機ハウジングとポンプまたはタービンハウジングとの間にシールされている導管を形成できる電気ポートをさらに有する。
【0043】
実施形態では、ステータコイルが入っているモータまたはタービンの磁石構造体および/またはステータ部分は、モジュール式であり、完全にシールされているため、互いに近いポンプまたはタービンのハウジングに機械的に装着する必要があるだけである。様々な実施形態では、本発明のシールされているモジュール式の磁石構造体および/またはシールされているモジュール式のステータアセンブリは、異なる組み合わせで実現でき、新しいポンプまたはタービンモジュールを設計するたびに磁石構造体および/またはステータアセンブリの新たな具体例を構成する必要がなくなる。
【0044】
本発明の第1の概括的態様は、一体型のモータまたは発電機を有するシールレスポンプまたはタービンモジュールである。モジュールは、モジュールの近位端に位置する入口であって、モジュールの中心軸にある入口と、モジュールの遠位端に位置する出口であって、モジュールの中心軸にある出口と、モジュールを取り囲むモジュールハウジングと、モジュールハウジング内に懸架されたロータと、ロータの回転を駆動するように構成されたモジュールハウジング内のモータ、またはロータの回転によって駆動されるように構成されたモジュールハウジング内の発電機とを含む。
【0045】
モータまたは発電機は、シールされているステータハウジング内のステータであって、ステータは、ロータの方を向いた少なくとも1つの電磁石を有し、前記ステータハウジングは、モジュールハウジングに対して取り外し可能に、軸方向に、径方向に、回転式に固定される、ステータと、電気ポートであって、ステータハウジングに形成され、ステータハウジングがモジュールハウジングに固定されるときにモジュールハウジングと共にシールを形成するように構成され、電気ポートは、シールされている通路となり、この通路を通して導電体を、少なくとも1つの電磁石とモジュールハウジングの外部の装置との間を相互接続するために誘導できる、電気ポートと、磁石構造体に組み立てられた複数の磁気デバイスであって、軸方向に固定され、ロータと回転式に協働するために取り外し可能に拘束され、磁気デバイスは、ロータが回転すると磁石構造体によって少なくとも1つの電磁石の近くを通るように構成される、磁気デバイスと、ステータハウジングの周りに対称に分布する流路とを有する。
【0046】
さらに、モジュールは、作動流体が流路内でステータを流れていくときにステータハウジングの周りに対称に分散されるように、作動流体の流れを入口から流路を経て出口へ誘導するように構成される。
【0047】
実施形態では、流路は、ステータハウジングを取り囲む環状流路である。
【0048】
上記の実施形態のいずれでも、流路は、ステータハウジングの周りに対称に配置された複数の流路を含むことができる。
【0049】
上記の実施形態のいずれでも、ロータは、回転シャフトによって懸架することができるか、ロータは、シャフトに固定することができるか、またはロータは、固定シャフトによって懸架されることができ、かつロータは、シャフトの周りを回転するように構成することができる。
【0050】
ロータが固定シャフトによって懸架され、ロータがシャフトの周りを回転するように構成されている実施形態では、ロータは、一対のベアリングによって固定シャフト上で支持されることができ、一方のベアリングがロータを軸方向の位置に保持し、もう一方のベアリングがロータを径方向に支持するか、あるいはロータは、単一の一方向スラストベアリングによって固定シャフト上で軸方向と径方向に支持することができる。これらの実施形態のいずれでも、ロータは、プロセス流体によって潤滑される少なくとも1つのベアリングによって固定シャフト上に支持することができる。これらの実施形態のいずれでも、固定シャフトは、ねじ付きの装着部品によって、ステータハウジングとモジュールハウジングの少なくとも一方に固定することができる。
【0051】
上記の実施形態のいずれでも、磁気デバイスは、永久磁石、またはかご形コイルとすることができる。
【0052】
上記の実施形態のいずれでも、流路は、ステータハウジングの表面の少なくとも50%以上に及ぶことができ、モジュールを通って入口から出口へ流れる作動流体の少なくとも90%は、ステータハウジングと直接熱接触した状態で流れるようにされる。
【0053】
上記の実施形態のいずれでも、モジュールは、入口から出口へ流れる作動流体がすべて流路を通って流れることを求めるように構成することができる。
【0054】
上記の実施形態のいずれも、流路とステータハウジングとの間に挟まれた断熱材、および断熱材とステータハウジングとの間に形成された冷却流体経路をさらに含むことができ、冷却流体経路は、ステータハウジングと熱連通し、ステータハウジングと冷却流体経路を流れる冷却流体との間で熱交換が可能なように構成される。
【0055】
上記の実施形態のいずれでも、ステータは、ロータとは独立して、ロータの回転方向とは反対方向に回転するように構成できる。
【0056】
上記の実施形態のいずれも、ロータと協働するが別個のディフューザモータによって駆動されるためにロータとは独立して回転することが可能なディフューザをさらに含むことができる。
【0057】
上記の実施形態のいずれでも、ステータの電磁石は、ロータの径方向の周の方を向くことができ、磁気デバイスは、ロータの径方向の周の近くに固定することができる。あるいはステータの電磁石は、ロータの側面の方を向くことができ、磁気デバイスは、ロータの側面、またはロータの側面と同軸で近位にあるディスクに固定することができる。
【0058】
そして上記の実施形態のいずれでも、磁石構造体はシールされることが可能で、それによって作動流体が磁気デバイスに到達しないようにする。
【0059】
本発明の第2の包括的態様は、複数の相互接続したモジュールを含む多段装置である。各々のモジュールは、モジュールの近位端に位置する入口であって、モジュールの中心軸にある入口と、モジュールの遠位端に位置する出口であって、モジュールの中心軸にある出口と、モジュールを取り囲むモジュールハウジングと、モジュールハウジング内に懸架されたロータとを含む。
【0060】
各々のモジュールは、ロータの回転を駆動するように構成されたモジュールハウジング内のモータ、またはロータの回転によって駆動されるように構成されたモジュールハウジング内の発電機をさらに含む。モータまたは発電機は、シールされているステータハウジング内のステータであって、ロータに向けられている少なくとも1つの電磁石を有するステータと、前記ステータハウジングは、モジュールハウジングに対して取り外し可能に、軸方向に、径方向に、回転式に固定でき、ステータハウジングに形成され、ステータハウジングがモジュールハウジングに固定されるときにモジュールハウジングと共にシールを形成するように構成されている電気ポートと、電気ポートは、シールされた通路を提供し、この通路を通して導電体を、少なくとも1つの電磁石とモジュールハウジングの外部の装置との間を相互接続可能であり、軸方向に固定され、ロータと回転式に協働するために取り外し可能に拘束されている磁石構造体に組み立てられた複数の磁気デバイスであって、ロータが回転すると磁石構造体によって少なくとも1つの電磁石の近くを通るように構成されている磁気デバイスと、ステータハウジングの周りに対称に分配されている流路とを有する。
【0061】
さらに、各々のモジュールは、作動流体が流路内でステータを流れ去るとステータハウジングの周りに対称に分散されるように、作動流体の流れを入口から流路を経て出口へ誘導するように構成されている。
【0062】
この包括的態様の実施形態では、モジュールのモータまたは発電機のうちの少なくとも2つは、対応するロータを別々の速度で回転させるように、独立して制御され得る。そしてこれらの実施形態のいくつかでは、独立して制御される2つのモータまたは発電機は、別個の可変周波数ドライブによって制御される。
【0063】
この概括的態様の上記の実施形態のいずれでも、モジュールは、装置に含まれるモジュールの少なくとも1つが故障しても装置全体がポンプまたはタービンとして機能し続けることができるように構成され得る。
【0064】
この概括的態様の上記の実施形態のいずれも、少なくとも2つのモジュールに共有のサポートを提供する制御電子機器をさらに含むことができる。
【0065】
この概括的態様の上記の実施形態のいずれでも、相互接続した複数のモジュールは、少なくとも3つの相互接続したモジュールを含むことができる。
【0066】
そして、この概括的態様の上記の実施形態のいずれでも、各々のモジュールの磁石構造体は、シールされることが可能で、それによって作動流体が磁気デバイスに到達しないようにする。
【0067】
本明細書に記載の特徴および利点は、包括的ではなく、特に、図面、明細書、および特許請求の範囲の観点から、多くの追加の特徴および利点が当業者には明らかであろう。さらに、本明細書で使用されている言語は、主に読みやすさと説明目的のために選択されており、発明の主題の範囲を限定するものではないことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図1は、専用の冷却流で冷却されている先行技術の2段一体型のモータポンプを縮尺通りに描いた断面図である。
【0069】
図2A図2Aは、径方向モータ設計を有する本発明の単段モジュールの簡易断面図である。
【0070】
図2B図2Bは、軸方向モータ設計を有する本発明の2段の実施形態を縮尺通りに描いた側面断面図である。
【0071】
図2C図2Cは、図2Bとほぼ同じ実施形態のロータアセンブリの1つを縮尺通りに描いた側面分解断面図である。
【0072】
図2D図2Dは、縮尺通りに描いた図2Cのロータアセンブリを縮尺通りに描いた分解斜視図である。
【0073】
図2E図2Eは、図2Cのロータアセンブリを縮尺通りに描いた分解斜視断面図である。
【0074】
図2F図2Fは、図2Bの実施形態とほぼ同じ実施形態のステータアセンブリの1つを縮尺通りに描いた正面斜視図である。
【0075】
図2G図2Gは、図2Fのステータアセンブリを縮尺通りに描いた側面斜視図である。
【0076】
図2H図2Hは、環状空間を通る環状流路を含む実施形態の簡易断面図である。
【0077】
図2I図2Iは、図2Hとほぼ同じだが、断熱材の追加の同心層および同心冷却環状通路を含んでいる断面図である。
【0078】
図2J図2Jは、モータまたは発電機のコイルハウジングの周りに均等に分布し、そこから絶縁されている複数の流路を含む実施形態の簡易断面図である。
【0079】
図3図3は、図2とほぼ同じだが、別個の冷却流路(縮尺通りに描いていない冷却路)を含んでいる実施形態を縮尺通りに描いた断面図である。
【0080】
図4図4は、図2とほぼ同じだが、プロセス流路に案内翼を含んでいる実施形態を縮尺通りに描いた断面図である。
【0081】
図5図5は、図2C図2Gのポンプの外部ハウジングを縮尺通りに描いた斜視図である。
【0082】
図6A図6Aは、モジュール式モータの設計を有する本発明の2段の実施形態を縮尺通りに描いた側面断面図である。
【0083】
図6B図6Bは、図6Aの実施形態のロータと磁石構造とのアセンブリの1つを縮尺通りに描いた側面断面図である。
【0084】
図6C図6Cは、図6Bのロータおよび磁石構造を縮尺通りに描いた側面分解断面図である。
【0085】
図6D図6Dは、図6Cのロータおよび磁石構造の側面および正面から見た縮尺通りに描いた分解斜視図である。
【0086】
図6E図6Eは、図6Dのロータおよび磁石構造の側面および背面から見た縮尺通りに描いた分解斜視図である。
【0087】
図6F図6Fは、図6Aのステータアセンブリの1つを側面および正面から見た縮尺通りに描いた分解斜視図であり、後部プレートを取り外した状態で示した図である。
【0088】
図6G図6Gは、図6Fのステータアセンブリを側面および正面から縮尺通りに描いた分解斜視図であり、後部プレートを所定場所で溶接した状態で示した図である。
【0089】
図6H図6Hは、図6Gの溶接した後部プレートを備えたステータアセンブリを側面および背面から見た縮尺通りに描いた分解斜視図である。
【0090】
図6I図6Iは、図6A図6Hのポンプの外部ハウジングを縮尺通りに描いた斜視図である。
【0091】
図7A図7Aは、図6A図6Hのポンプとは異なる設計だが、図6A図6Hのポンプモジュールに含まれている同じモジュール式のステータおよび磁石構造体の設計を取り入れている4つのモジュールポンプを縮尺通りに描いた斜視図である。
【0092】
図7B図7Bは、図7Aのポンプの単一のモジュールを縮尺通りに描いた側面から見た縮尺通りに描いた断面図である。
【0093】
図7C図7Cは、図7Bのモジュールを縮尺通りに描いた側面から見た縮尺通りに描いた分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本発明は、流れが「同心」となる設計であるモジュールとして構成されている「シールレス」モータポンプまたはシールレス発電機タービンである。例として、本発明のポンプの実施形態200を図2Aに示している。図からわかることは、モータコイル212のハウジング204、すなわちステータハウジング204は、モジュールのハウジング218に取り囲まれ、両者の間に環状空間202を形成している。本発明によれば、作動流体は、複数の流路の間または単一の環状流路を通って環状空間202に沿って分散される。作動流体の環状空間202への分散は、ステータハウジング204に対して対称とすることができる。図2Aの実施形態では、環状空間202は、作動流体が入口222から出口224へ流れる環状流路202として機能する。
【0095】
図2Aの実施形態では、環状流路202は、モータコイル212のハウジング204と直接熱接触している。この構成は、作動流体が比較的低温の用途に適している。図示した実施形態では、作動流体は、ロータ206によって、モジュールのモータコイルハウジング204の外側に沿って環状流路202を通過するように誘導され、その結果、モータコイル212は、ロータ206の排出によって直接冷却され、別個の専用の冷却流体を必要としない。
【0096】
実施形態では、本発明の同心設計は、自己完結型で極めて小型のモジュールとして実現され、このモジュールは、図2Aに示したように単独で使用するか、図2Bに示したように多段のポンプまたはタービンを形成するために複数の同じモジュールを組み合わせて使用することができる。このモジュール式の手法により、装置の設計、操作、およびメンテナンスに余計な複雑さや煩雑さが加わることなく、設計を任意の段数に拡張することが可能になる。特に、段数が多くても、シャフトのサイズ、シャフトのたわみ、回転力学、ベアリングの負荷、モータの並び、または段どうしの並びに関していかなる問題も生じない。
【0097】
さらに詳細には、図2Bは、2段ポンプの実施形態220を示しており、各段200のモータ212の中心軸は、ロータ206が回転する中心である据え付けのシャフト208と実質的に同一線上にあり、それによってロータ206から来るプロセス流体は、各段200のステータハウジング204とポンプハウジング218との間に形成された環状流路202を通ってステータハウジング204の外側を軸方向に流れる。説明の便宜上、図2Bには2つの段200のみを示しているが、任意の段数のポンプ200に実施形態を拡張できることが理解されるであろう。
【0098】
いくつかの多段の実施形態では、各段200のロータ206は、各段200のロータ速度を別々に制御できるように独立して駆動される。例えば、別個の可変周波数ドライブ(「VFD」)216を、ポンプの各段200の制御専用にすることができる。
【0099】
図2Bの実施形態では、ポンプ220の各段200で、複数の永久磁石210がロータ206の後ろ側に直接装着され、ロータ206が回転したときに、隣接するステータ212の電磁コイル212の近くを通過させられる。他の実施形態のロータ206は、ポンプまたはタービンの動作中にステータの電磁石212によって電流が誘導される「かご形」ロータコイルなどの非永久磁石210を利用する誘導モータを含む。これによりトルクが電磁石モータコイル212からロータ206に直接伝達されるか、または電磁エネルギーがロータから発電機コイルに伝達され、シャフトの回転を利用することがない。実施形態では、モータコイル212は、静的なシール方法(図示せず)を用いて作動流体からシールされ、それによって動的な機械的シールの必要性がなくなり、そうしなければそこから生じるであろう位置合わせ、漏れ、および/またはメンテナンスの問題を回避する。
【0100】
図2Bの実施形態では、各段のロータ206の軸方向および半径方向の位置決めは、製品潤滑ベアリング214によって行われる。各ロータの段200に個別のベアリング214を使用することにより、各段200のベアリング214を、その段からの負荷のみを扱うように設計でき、多段構成220で合わさった段の負荷からベアリングに過負荷がかかる危険性は完全になくなる。実施形態においてベアリング214の潤滑剤として作動流体を使用することで、外部の油潤滑システムの必要性がなくなり、全体的なポンプの設計およびメンテナンスが大幅に簡易化される。
【0101】
図2C図2Eはそれぞれ、図2Bとほぼ同じ実施形態のロータアセンブリの1つの側面分解断面図、分解斜視図、および分解斜視断面図である。図示した実施形態では、磁石210は、磁石構造体252に含まれ、磁石構造体は、磁石の「地鉄」236および磁石構造体のカバープレート238をさらに含む。組み立てられた磁石構造体252は、ロータ206に設けられた環状キャビティ240に設置される。
【0102】
図2Fおよび図2Gはそれぞれ、図2B図2Eの実施形態のステータアセンブリの1つの正面斜視図および側面斜視図である。ステータコイル(図示せず)は、コイルキャビティ250内のフォーム242に巻かれ、ステータカバープレート244で覆われる。コイル212からの電気リードは、コイルキャビティ250の内部からポンプまたはタービンハウジング200にシールされたステータ後部フランジを通って延在する電気ポート246を通って誘導される。実施形態では、ステータコイル212は、コイルキャビティ250内で注封される。
【0103】
図2Aなどのいくつかの実施形態では、各段のロータ206は、回転シャフト208に固定されている。図2Bなどの他の実施形態では、各段のシャフト208は、ロータ206のハブを通って挿入され、モータまたは発電機のコイルハウジング204に固定され、ロータ206は、シャフト208周りに、例えばベアリング214上で回転する。この手法により、特別な工具がなくても簡単に組み立ておよびメンテナンスがしやすくなる。同様の実施形態では、シャフト208はねじ切りされるか、そうでなければポンプまたはタービンのモジュールハウジング218によって、またはポンプまたはポンプのモジュールハウジング218とモータまたは発電機ステータハウジング204との任意の組み合わせによって支持される。
【0104】
特定の実施形態は、ロータとステータの構成が逆になっているモジュール200を含み、これによってロータ206とステータ212の両方が、互いに反対方向に独立して回転できる。いくつかの実施形態は、複数のロータ206を含み、このロータは、共通の固定シャフトまたは回転シャフト208に固定され、ステータおよび/または個別に回転するディフューザと組み合わされている。これらの実施形態のいくつかでは、ディフューザは、米国特許出願第15/101,460号の開示と同様の方法で実現され、同文献を参照してその全容をあらゆる目的のために本願に援用する。
【0105】
さらに他の実施形態では、シャフト208がなく、代わりに各ロータ206の前方の摩耗リングの隙間が径方向および軸方向の主要ベアリングとして作用する。これにより、トルクがモータの電磁石ステータコイル212からロータに直接伝達されるか、電磁エネルギーがロータ206から発電機のコイル212に伝達され、回転シャフトを使用することはない。
【0106】
図2Hは、図2Aとほぼ同じ環状流路を有する実施形態の簡易断面図であり、この断面は、モータの主軸に垂直なポンプモータコイル212を通って切り取られている。
【0107】
図2A図2Hの実施形態は、比較的低温の作動流体を使用する場合に適しており、環状流路202は、作動流体をモータまたは発電機のコイルハウジング212と直接熱接触させ、それによってモータまたは発電機コイルを冷却する。図2A図2Hでは、作動流体の80%より多くがモータまたは発電機のコイルハウジング212と熱接触し、モータまたは発電機のコイルハウジング212の少なくとも20%が環状流路202と熱接触している。様々な実施形態では、作動流体の90%より多くがモータまたは発電機のコイルハウジング204と熱接触し、モータまたは発電機のコイルハウジング表面204の少なくとも50%が環状流路202と熱接触している。
【0108】
図2Iを参照すると、高温の作動流体が予想されるいくつかの実施形態では、図2Hの設計は、環状流路202とモータまたは発電機コイル212のハウジング204との間に追加で同心層の断熱材228を含めることによって修正される。これらの実施形態のいくつかでは、断熱材228とコイルハウジング204との間に同心の冷却環状通路234がさらに設けられ、この通路を通して水や冷却油などの冷却流体を入口230から出口232に流すことができる。
【0109】
図2Jを参照すると、他の実施形態では、作動流体は、ステータハウジング204の周に沿った環状空間202内に対称に配置された複数の実質的に同じ流路226どうしの間に分散される。図2Jの実施形態では、流路226は、モジュールハウジング壁218によって形成される。図2Jの実施形態は、図2Iと同様に、断熱材228の同心環状層および同心冷却環状通路234をさらに含む。
【0110】
図3を参照すると、実施形態では、少量の作動流体が、別個の冷却経路300を通って迂回し、そこで冷却され、次にステータハウジング204と熱接触している同心環状冷却通路234を通って流れ、モータコイル212を冷却する。同様の実施形態では、水または冷却油などの別個の冷却流体が、作動流体を迂回させることなく冷却経路300を通って流れる。
【0111】
様々な実施形態でのモータまたは発電機コイル212の流体冷却により、システムが高温の動作油で動作することが可能になり、作動流体の温度が上がらなくとも、システムがポンプまたはタービン全体でより高い性能限界およびより高い出力密度を実現することも可能になる。
【0112】
図4を参照すると、実施形態は、流路が環状である場合は環状流路202内、または流路内の他のいずれかの場所に案内翼400を含む。図示した実施形態では、案内翼400は、モータまたは発電機コイル212の端部で同心流路の区分内のプロセス流体の流れを制御し、その際流路は、モジュールの中心軸に向かって径方向内側に曲がる。案内翼400は、流れが中心軸に到達し、出口224を通って軸方向に流れ出て次の段200に入るまで、流路を複数の別個であるが対称的な経路に分割する。実施形態では、案内翼400は、流路内のプロセス流体をモータまたは発電機ステータハウジング204の極めて近くに誘導する。
【0113】
案内翼400は、電力ケーブルを、シールされているモータまたは発電機212から流体通路202を通して、ポンプケーシング218から可変周波数制御装置216に配線するために使用できるケーシング壁となることも可能である。実施形態では、案内翼400は、モータまたは発電機コイル212を冷却するための追加の対流表面積をもたらし、かつ/または外部の冷却流体供給源に接続している一体型の冷却通路300に対する空間をもたらすフィンとしても作用する。
【0114】
図5は、図2C図2Gのポンプの外観の斜視図である。
【0115】
図6Aを参照すると、様々な実施形態610では、モータまたは発電機は、設計がモジュール式で、ある特定のモータまたは発電機の設計を複数の異なるポンプまたはタービンの設計に組み入れることができる。図6の例では、モータのロータと協働する複数の磁気デバイス210は、取り外し可能な磁石構造体600に組み込まれ、磁石構造体は、ポンプ200のロータ206に固定でき、そこから取り外せる。磁石構造体600をロータに装着するのは、磁石構造体600をロータに対して軸方向と回転方向の両方で拘束することができる先行技術で公知のなんらかの手段によって可能である。いくつかの実施形態は、磁石構造をロータにねじ込んで装着する部品を含み、この部品が、磁石構造を軸方向と回転方向の両方で拘束する。図6の実施形態では、磁石構造体600は、ボルト602によってロータ206に装着され、このボルトが磁石構造体600をロータ206に対して軸方向と回転方向の両方で拘束する。
【0116】
図6Aの実施形態は、シールされた導管となる電気ポート608(図6Hを参照)をさらに含み、この導管は、ステータコイル212が入っているステータハウジング204内のボイド250からステータハウジング204の後部フランジ248を通って延在し、それによってステータコイル212とポンプ200の外部環境との間に電気リード606および/または制御線が延在する通路ができる。ステータハウジング204は、後端がボルト締めされてシールされているフランジ248を有していることが図からわかる。フランジ248は、雌型ソケット604を有し、このソケットの中に電気ポート608が挿入され、このソケットとともに電気ポート608はOリングシールを形成する。
【0117】
実施形態では、ステータコイルが入っているモータまたはタービンの磁石構造体600および/またはステータ部分204は、モジュール式で、完全にシールされているため、互いに近いポンプまたはタービンのハウジング200に機械的に装着する必要があるだけである。様々な実施形態では、本発明のシールされているモジュール式の磁石構造体600および/またはシールされているモジュール式のステータアセンブリ204は、異なる組み合わせで実現でき、新しいポンプまたはタービンモジュールを設計するたびに磁石構造体600および/またはステータアセンブリ204の新たな具体例を構成する必要がなくなる。
【0118】
図6Bは、組み立てられた状態で示した図6Aのロータ206および磁石構造体600のうちの1つの拡大断面図である。図6Cは、図6Bのロータ206および磁石構造体600の断面分解図である。図6Dおよび図6Eは、図6Bのロータ206および磁石構造体600の正面分解斜視図および背面分解斜視図である。図6Fは、図6Aのステータアセンブリの1つを正面から見た拡大分解斜視図であり、ポンプハウジングの後部フランジ248との関係で示している。プロセス流体の出口流路に位置している案内翼400は、後部フランジ248に固定されていて、モジュールの後部プレート244は、内部を見せるために取り除かれていることがわかる。図6Gは、後部プレート244が所定場所で溶接され、それによってシールされているステータモジュールを完成させている点を除いて図6Fと同じである。図6Hは、図6Gのステータアセンブリの後部から見た拡大分解斜視図である。ステータコイルリード606の導管として機能する電気ポート608は、図にはっきりと見えている。図6Iは、図6Aのポンプ610を完全に組み立てたものの斜視図である。
【0119】
図7Aは、図6A図6Hのポンプと大幅に異なる4モジュールポンプの設計700の斜視図である。図7Bは、図7Aのポンプの単一のモジュール708の断面図であり、図7Cは、図7Bのモジュール708の分解断面図である。図からわかることは、図示した設計にはディフューザ702が含まれていること、そして後部フランジ248、ポンプロータ206、ステータハウジング204およびポンプハウジング218はすべて、図6A図6Hに示した設計とはかなり異なっているということである。それにもかかわらず、図7A図7Cのポンプ700は、図6A図6Hに含まれているものと本質的に同じモジュール式のモータ構成要素を内蔵している。唯一の小さな相違は、図示した実施形態では、磁石構造体600を軸方向に拘束するためにスナップリング704が使用され、磁石構造体600を回転方向に拘束するためにピン706が使用されているという点である。ただし、設計をわずかに変更するだけで、図6A図6Hのように磁石構造を拘束するためにボルトを使用することができることは自明である。
【0120】
図2B図4図6Aおよび図6Hには、ポンプモジュール200を2つしか示していないが、図7のポンプ700は、モジュールを5つ含んでいる。概して、実施形態では、開示したポンプまたはタービンの段200は、ポンプまたはタービン200設計、動作、およびメンテナンスに余計な複雑さや煩雑さが加わることなく、いくつでも直列に組み合わせることができることが容易にわかる。特に、開示した設計に従って段数が増えても、シャフトのサイズ、シャフトのたわみ、ロータの力学、ベアリングの負荷、モータの並び、または段200どうしの並びに関していかなる問題も生じない。
【0121】
特定の実施形態は、2つ以上の段どうしで共有される駆動電子機器を少なくともいくつか含む。例えば、いくつかの実施形態では、AC電力は、一般的な一連の大型電子機器によってDC電力に変換され、必要に応じて個々のポンプまたはタービンの段に分配される。他の実施形態は、複数の可変周波数ドライブ(「VFD」)216を含み、これらの実施形態のいくつかでは、ポンプまたはタービンの各段200のモータまたは発電機コイル212は、専用のVFD216または他のコントローラによって独立して制御される。これらの実施形態のいくつかにおける重要な利点の1つは、低い正味吸込みヘッド(「NPSH」)およびオフピーク状態に対応するために、第1の段がポンプのそれ以外の部分よりも低速で実行できることである。いくつかの用途では、最終段のみの速度を変更することが、出力の圧力および/または流れを正確に制御するのに有用な手法となる。
【0122】
各段200に個別のVFDドライブ216を設けることは、フェイルセーフの冗長性としての役割を果たすこともでき、それによって、1つの段が故障しても残りは動作し続け、ポンプは機能し続ける。ポンプ段が故障した後に継続する機能は、揚程および流量が少ないことがあるか、故障した段の揚程および流量の損失を補償するために残りの段の速度を上げることができる。この手法では、オペレータが段の故障に気付いた後にシステムを安全に運転停止する時間ができるまで、可能性として少ない揚程および流量でポンプが作動し続けるという故障シナリオを作成する。それとは対照的に、従来のポンプまたはタービンの1つの段が故障すると、通常はポンプまたはタービン全体が故障し、パフォーマンスが完全に失われ、システムが突然制御不能な状態で運転停止する。
【0123】
図2Aの実施形態では、モータは、ロータの周に沿って取り付けられた永久磁石を含む径方向モータだが、図示した他の実施形態は、ロータ206の背面の後ろに配置されている永久磁石210を組み込んでいるディスクまたは「パンケーキ」スタイルのロータ206を含んでいる。他の実施形態では誘導モータが使用される。いくつかの実施形態は、ポンプ段200の同期動作速度が3600rpmより上に上昇することを可能にする可変速度ドライブを含む。
【0124】
図示した実施形態では、ポンプ段200は、半径流ロータ206を有する遠心設計である。これらの実施形態のいくつかは、特定の速度が最大約2000USユニット、いくつかの実施形態では最大4000USユニット、さらには5000USユニットであるロータを含む。他の実施形態は、径方向の磁束のロータ設計であるポンプ段200を含む。
【0125】
図示した実施形態では、別個の軸方向ベアリングと径方向ベアリングの代わりに、径方向ベアリングと一方向スラストベアリング214を組み合わせたものを使用する。図示した実施形態は、ロータ206のハブを通って挿入されポンプ段のハウジング218にねじ締めされた据え付けのシャフト208を含み、これによって特別な工具がなくても簡単に組み立ておよびメンテナンスがしやすくなる。適切なVFDドライブ216と共にセンサレスモータを使用することで、図示した実施形態の各段200に対して計装の要件も少なくなる。
【0126】
本発明の特定の実施形態は、ロータとステータの構成が逆になっているモジュール式段200を含み、それにより、ロータとステータの両方が互いに独立して反対方向に回転できる。そして、いくつかの実施形態は、例えばロータおよびディフューザを駆動する別個のモータを用いて、個別に回転するステータおよび/またはディフューザを含む。これらの実施形態のいくつかでは、ディフューザは、米国特許出願第15/101,460号の開示と同様の方法で実現される。
【0127】
先行技術で公知のように、ターボポンプとターボタービンは、物理的設計が酷似していることが多いため、ポンプとタービンとの違いは、構造ではなく主に使用の問題になることがある。したがって、図示した実施形態はポンプだが、タービンまたはポンプに関して本明細書で考察する本発明の特徴は、本文で特に明記しない限り、平等に両者を指すものと理解されたい。
【0128】
本発明の実施形態の上記の説明は、例示および説明の目的で提示している。本出願の各頁およびその全内容は、その特徴、識別、番号がどのようなものであっても、明細書内の形態または配置に関係なくあらゆる目的で本明細書の核心部分であるとみなされる。本明細書は、網羅的であること、または開示した正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。本開示に照らして、多くの修正および変形が可能である。
【0129】
本明細書は限られた数の形態で示されているが、本発明の範囲はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その趣旨から逸脱しない限り、様々な変更および修正を受け入れることが可能である。本明細書に提示した開示は、本発明の範囲内に収まる特徴のすべての可能な組み合わせを明示的に開示するものではない。様々な実施形態に関して本明細書に開示した特徴は概して、本発明の範囲を逸脱しないかぎり、自己矛盾しない任意の組み合わせに入れ替え、組み合わせることが可能である。特に、以下の従属請求項に提示した制限は、従属請求項が互いに論理的に両立しない場合を除き、本開示の範囲から逸脱しない限り、任意の数および任意の順序で、それに対応する独立請求項と組み合わせることができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図7A
図7B
図7C
【国際調査報告】