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特表2023-501780架橋フルオロポリマーを含む電気通信物品及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】架橋フルオロポリマーを含む電気通信物品及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/44 20060101AFI20230112BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230112BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20230112BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230112BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230112BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230112BHJP
【FI】
H01B3/44 C
C08L27/12
C09D127/18
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525565
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2020058660
(87)【国際公開番号】W WO2021091864
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,366
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/124451
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ナイヨン
(72)【発明者】
【氏名】グ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツァー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ソー キュー.
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ツァイ-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ヨン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
5G305
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD151
4J002BD171
4J002BD181
4J002DF019
4J002DJ018
4J002DK009
4J002DL008
4J002ED076
4J002EK007
4J002EN037
4J002EN047
4J002EN067
4J002EU196
4J002EX077
4J002FA048
4J002FA108
4J002FB118
4J002FD018
4J002FD019
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD156
4J002FD157
4J002GH00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J038GA01
4J038GA02
4J038GA09
4J038GA15
4J038HA446
4J038HA486
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA02
4J038MA05
4J038MA14
4J038PB09
4J038PC02
5G305AA02
5G305AB01
5G305BA09
5G305CA38
(57)【要約】
架橋フルオロポリマー層を備える電気通信物品が記載される。典型的な実施形態において、架橋フルオロポリマー層は、基材、パターン化(例えば、フォトレジスト)層、絶縁層、不動態化層、クラッド、保護層、又はそれらの組み合わせである。また、電気通信物品の作製方法及びパターン化フルオロポリマー層の形成方法も記載されている。フルオロポリマーは、好ましくは、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含む。例示的な電気通信物品としては、集積回路、プリント回路基板、アンテナ、及び光ファイバケーブルが挙げられる。フルオロポリマー組成物も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋フルオロポリマー層を備える電気通信物品であって、前記フルオロポリマーは、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位、及び硬化部位を含む、電気通信物品。
【請求項2】
前記架橋フルオロポリマー層が、基材、パターン化(例えば、フォトレジスト)層、絶縁層、不動態化層、クラッド、保護層、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の電気通信物品。
【請求項3】
前記物品が、集積回路又はプリント回路基板である、請求項1又は2に記載の電気通信物品。
【請求項4】
前記物品が、アンテナである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項5】
前記物品が、コンピュータデバイス(スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップ)又は屋外構造物のアンテナである、請求項4に記載の電気通信物品。
【請求項6】
前記物品が、光ケーブルである、請求項1又は2に記載の電気通信物品。
【請求項7】
前記架橋フルオロポリマー層が、
i)2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95未満の誘電率(Dk)、
ii)0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001、0.0009、0.0008、0.0007、0.0006未満の誘電損失、
又はそれらの組み合わせを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項9】
前記全フッ素化モノマーが、テトラフルオロエテン(TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項10】
前記フルオロポリマーの前記不飽和ペルフルオロアルキルエーテルが、一般式
-O-(CF-CF=CF
[式中、nは1又は0であり、Rはペルフルオロアルキル基又はペルフルオロエーテル基である]を有する、請求項9に記載の電気通信物品。
【請求項11】
前記架橋フルオロポリマーが、
i)過酸化物及びエチレン性不飽和化合物、
ii)電子供与性基及びエチレン性不飽和基を含む1つ以上の化合物、又は
iii)アミノオルガノシランエステル化合物又はエステル等価物
から選択される硬化剤で架橋されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項12】
前記硬化剤が、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項13】
前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリル又はアルケニルから選択される、請求項11又は12に記載の電気通信物品。
【請求項14】
前記架橋フルオロポリマーが、アミン硬化剤で架橋されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項15】
前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量に基づいて、40~60重量%のTFEの重合単位を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項16】
前記架橋フルオロポリマーが、5、4、3、2、1、若しくは0.1重量%以下の、非フッ素化若しくは部分フッ素化モノマーから誘導される重合単位を含み、及び/又は5、4、3、2、1、若しくは0.1重量%以下のエステル含有結合を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項17】
前記架橋フルオロポリマーが、3-エトキシペルフルオロ2-メチルヘキサン又は3-メトキシペルフルオロ4-メチルペンタンに不溶性である、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項18】
前記架橋フルオロポリマー層が、結晶性フルオロポリマー粒子を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項19】
パターン化フルオロポリマー層の形成方法であって、
フルオロポリマーフィルムを基材に適用することと、
化学線への曝露によって、前記フルオロポリマーフィルムの一部分を選択的に架橋させることと、
前記フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記フルオロポリマーフィルムと化学線源との間に1つ以上の開口部を有するマスクを提供することと、前記マスクの少なくとも1つの開口部を通して前記フルオロポリマーフィルムを化学線に曝露することと、を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去することが、前記未架橋部分を溶媒に溶解させることを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記基材が、前記溶媒に実質的に不溶性である、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、フッ素化溶媒である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記フルオロポリマーフィルムを前記基材に適用することが、
コーティング溶液を前記基材に適用することであって、前記コーティング溶液が、
フッ素化溶媒と、
フルオロポリマーと、
化学線の存在下で前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる硬化剤と、を含む、ことと、
前記フッ素化溶媒を除去することと、を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記基材が、前記コーティング溶液の前記フッ素化溶媒に実質的に不溶性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去するための前記フッ素化溶媒と、前記コーティング溶液の前記フッ素化溶媒とが、同一又は異なるフッ素化溶媒である、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記基材が、ケイ素含有基材又は金属(例えば、銅)基材である、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記フルオロポリマーが、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記フルオロポリマーが、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を更に含む、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記化学線が、紫外線又は電子線である、請求項19~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記フッ素化ポリマー及び硬化剤が、請求項7~18のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項19~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記フッ素化溶媒が、部分フッ素化エーテルである、請求項19~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記フッ素化溶媒が、式:
2p+1-O-C2q+1
[式中、qは1~5の整数であり、pは5~11の整数である]を有する、請求項19~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記C2p+1-単位が、分枝状である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記フッ素化溶媒が、1000未満のGWPを有する、請求項19~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、前記パターン化フルオロポリマー層に電極材料を適用することを更に含む、請求項19~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記基材が、集積回路、プリント回路基板、又はアンテナの構成要素である、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
パターン化フルオロポリマー層を形成するために使用するための組成物であって、
少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含むフルオロポリマーと、
前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、を含む、組成物。
【請求項39】
フッ素化溶媒を更に含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、請求項7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項38又は39に記載の組成物。
【請求項41】
電気通信物品の作製方法であって、
少なくとも80、85、又は90重量%の重合した全フッ素化モノマーと、硬化部位とを含むフルオロポリマーと、前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、を含むフィルム又はコーティング溶液を提供することと、
前記フィルム又はコーティング溶液を電気通信物品の構成要素に適用することと、を含む、方法。
【請求項42】
熱、化学線、又はそれらの組み合わせへの曝露によって、前記フルオロポリマーを架橋させることを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記コーティング溶液が、フッ素化溶媒を更に含む、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、請求項7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記構成要素が、集積回路、プリント回路基板、アンテナ、又は光ケーブルの構成要素である、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記架橋フルオロポリマー層が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項47】
前記フルオロポリマーフィルム又はコーティング溶液が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項19~37又は41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項38~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
熱伝導性フィラーを更に含む、請求項1~48のいずれか一項に記載の電気通信物品、方法、又は組成物。
【請求項50】
前記シリカが、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、グラスバブルズ、又はそれらの組み合わせである、請求項46~49のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
【請求項51】
前記ヒュームドシリカ又は溶融シリカが、少なくとも500nm、1ミクロン、1.5ミクロン、又は2ミクロンの凝集体粒径を有する、請求項46~50のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
【請求項52】
前記シリカが疎水性表面処理を含み、前記疎水性表面処理は、任意に、フッ素化アルコキシシラン化合物を含む、請求項46~51のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
【請求項53】
前記シリカが、前記フィルム、組成物、又は前記コーティング溶液の重量%固形分の総量に基づいて、少なくとも10、20、30、40、50、60、又は70重量%の量で存在する、請求項46~53のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
【請求項54】
熱伝導性フィラーを更に含む、請求項46~53のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
【請求項55】
少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含むフルオロポリマーと、
前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、
シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせと、を含む、組成物。
【請求項56】
フッ素化溶媒を更に含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、請求項7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項53又は54に記載の組成物。
【請求項58】
前記シリカが、請求項50~54のいずれか一項によって更に特徴付けられる、請求項56又は57に記載の組成物。
【請求項59】
少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含むフルオロポリマーと、
前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、
熱伝導性フィラーと、を含む、組成物。
【請求項60】
フッ素化溶媒を更に含む、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、請求項7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、請求項59又は60に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
一実施形態において、架橋フルオロポリマー層を備える電気通信物品(electronic telecommunication articles)が記載される。典型的な実施形態において、架橋フルオロポリマー層は、基材、パターン化(例えば、フォトレジスト)層、絶縁層、不動態化層、クラッド、保護層、又はそれらの組み合わせである。
【0002】
別の実施形態において、フルオロポリマーを含むフィルム又はコーティング溶液を提供することと、フィルム又はコーティング溶液を電気通信物品の構成要素に適用することと、を含む、電気通信物品の作製方法が記載される。コーティング溶液は、典型的に、フッ素化溶媒を更に含む。本方法は、熱、化学線、又はそれらの組み合わせへの曝露によって、フルオロポリマーを架橋させることを更に含む。
【0003】
別の実施形態において、フルオロポリマーフィルムを基材に適用することと、化学線への曝露によって、フルオロポリマーフィルムの一部分を選択的に架橋させることと、フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去することと、を含む、パターン化フルオロポリマー層の形成方法が記載される。
【0004】
これらの実施形態の各々において、フルオロポリマーは、好ましくは、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含む。
【0005】
例示的な電気通信物品としては、集積回路、プリント回路基板、アンテナ、及び光ファイバケーブルが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】集積回路(integrated circuit、IC)の製造の例示的な実施形態において、フォトリソグラフィによってパターン化フルオロポリマー層を形成する概略断面図である。
図2】集積回路を含む例示的なプリント回路基板(printed circuit board、PCB)の斜視図である。
図3A】例示的なフルオロポリマー不動態化層及び絶縁層の断面図である。
図3B】例示的なフルオロポリマー不動態化層及び絶縁層の断面図である。
図4】モバイルコンピュータデバイスの例示的なアンテナの平面図である。
図5A】通信タワーの例示的なアンテナの斜視図である。
図5B】通信タワーの例示的なアンテナの斜視図である。
図6】例示的な光ファイバケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここでは、電気通信物品で使用するための特定のフルオロポリマー組成物(例えば、フィルム及びコーティング)について述べる。本明細書で使用するとき、電子は、電磁スペクトル(例えば、電子(electon)、光子)を使用するデバイスを指すのに対して、通信は、有線、無線、光学、又は他の電磁システムによる、サイン、信号、メッセージ、単語、文章、画像、及び音声、又はあらゆる性質の情報の送信である。
【0008】
ポリイミド材料は、電気通信業界で広く使用されている。ポリ-オキシジフェニレン-ピロメリトイミドの構造「カプトン」は、以下のとおりである。
【化1】
【0009】
ポリイミドフィルムは、室温で1Hzで2.78~3.48の範囲内の誘電率値及び0.01~0.03の誘電損失を有する良好な絶縁特性を示した。
【0010】
ペルフルオロポリマーは、第5世代のセルラーネットワーク技術(「5G」)物品にとって特に重要なポリイミドよりも実質的に低い誘電率及び誘電損失特性を有し得る。例えば、本明細書に記載の架橋フルオロポリマー組成物は、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、又は1.95未満の誘電率(Dk)を有し得る。いくつかの実施形態において、誘電率は、少なくとも2.02、2.03、2.04、2.05である。更に、本明細書に記載の架橋フルオロポリマー組成物は、低い誘電損失、典型的には、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001、0.0009、0.0008、0.0007、0.0006、0.0005、0.0004、0.0003未満を有し得る。いくつかの実施形態において、誘電損失は、少なくとも0.00022、0.00023、0.00024、0.00025である。誘電特性(例えば、一定及び損失)は、実施例に記載の試験方法に従って決定することができる。非フッ素原子の数が増加する(例えば、炭素-水素及び/又は炭素-酸素結合の数が増加する)につれて、誘電率及び誘電損失はまた、典型的には増加する。
【0011】
しかしながら、ペルフルオロポリマーは、ポリイミドの代わりに使用されておらず、様々な電気通信物品は、化学線、より好ましくは、紫外線への曝露によって架橋され得るペルフルオロポリマー材料の欠如が少なくとも部分的にある。架橋ペルフルオロポリマー材料は、未架橋ペルフルオロポリマー材料と比較して改善された機械的特性を有し得る。したがって、記載のペルフルオロポリマー組成物は、様々な電気通信物品においてポリイミドの代わりに使用するのに好適である。
【0012】
一実施形態において、電気通信物品は、集積回路である、又は言い換えれば、シリコンチップ若しくはマイクロチップ、すなわち、半導体材料(シリコン)ウェハ上の様々な電気及び電子構成要素(抵抗器、コンデンサ、トランジスタなど)の製作によって形成される微視的電子回路アレイである。
【0013】
一実施形態において、本明細書に記載のフルオロポリマー組成物を使用して、パターン化(例えば、フォトレジスト)層を形成することができる。本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、様々な製作技術においてネガティブフォトレジストとして使用することができる。いくつかの実施形態において、(例えば、犠牲)フォトレジスト材料はエッチング除去され、完成物品内に残らない。他の実施形態において、フォトレジスト材料は、完成物品中に存在し得る。様々な集積回路設計が文献に記載されている。
【0014】
図1を参照すると、一実施形態において、フルオロポリマーフィルム100を基材(例えば、シリコンウェハ120又はその不動態化(例えば、SiO)層125でコーティングされた表面)に適用することと、化学線への曝露によって、フルオロポリマーフィルムの一部分を選択的に架橋させることと、フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去することと、を含む、パターン化フルオロポリマー層の形成方法が記載される。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は、フルオロポリマーフィルム100と化学(例えば、電子線又はUV)線源140との間に1つ以上の開口部を有するマスク(例えば、フォトマスク)130を提供することと、マスクの少なくとも1つの開口部を通してフルオロポリマーフィルムを化学線に曝露することと、を更に含む。
【0016】
当該技術分野において既知のとおり、マスクは、化学線エネルギー(例えば、UV光)伝達部分及び化学線エネルギー(例えば、UV光)が非透過性である部分を含む。フォトマスクは、典型的には、基材の表面上に非透過性マスクパターンを有する透明基材を備える。基材は、典型的には、(例えば、高純度石英)ガラスであり、用いられるフォトリソグラフィプロセスの照明(すなわち、波長及び強度)に対して透明である。マスクは、典型的には、マスク材料の選択的堆積又は選択的エッチングによって調製される。一般的な非光透過性マスク材料としては、当該技術分野において既知のとおり、クロム金属、酸化鉄、モリブデンシリサイドなどが挙げられる。
【0017】
曝露後、フルオロポリマーフィルムは、硬化した又は言い換えれば架橋フルオロポリマー150の部分と、未硬化又は言い換えれば未架橋フルオロポリマー175と、を含むパターン化フルオロポリマー層を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、未架橋部分を溶媒160に溶解することによって、未架橋フルオロポリマーフィルムの部分を除去すること(例えば、フルオロポリマーフィルムをフッ素化溶媒で洗浄すること)を更に含む。硬化した又は言い換えれば架橋フルオロポリマー150の部分は、パターン化フルオロポリマー層として基材の表面上に残る。本実施形態において、溶媒と接触する基材又はその(例えば、SiO)コーティングされた表面は、フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去するために利用される溶媒に実質的に不溶性である。好ましい実施形態において、溶媒はフッ素化溶媒である。
【0019】
いくつかの実施形態において、特に、薄いフルオロポリマーフィルムを基材に適用することが望ましい場合、本方法は、コーティング溶液(例えば、スピンコーティング)を基材に適用することを含み、コーティング溶液は、フッ素化溶媒及びフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、好ましくは、主に、全フッ素化モノマーの重合単位、及び硬化部位を含む。コーティングは、化学(例えば、UV)線の存在下で硬化部位と反応し、それによって、フルオロポリマーを架橋させる硬化剤を更に含む。本方法は、典型的には、フッ素化溶媒を(例えば、蒸発によって)除去することを含む。本実施形態において、溶媒と接触する基材又はその(例えば、SiO)コーティングされた表面は、コーティング溶液のフッ素化溶媒に実質的に不溶性である。フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去するためのフッ素化溶媒と、コーティング溶液のフッ素化溶媒とが、同一又は異なるフッ素化溶媒であり得る。更に、本方法は、典型的には、フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去するために利用されるフッ素化溶媒及び/又はコーティング溶液のフッ素化溶媒をリサイクル又は言い換えれば再利用することを含む。
【0020】
他の実施形態において、未硬化部分175は、レーザアブレーションなどの他の無溶媒法で除去され得る。
【0021】
パターン化フルオロポリマー層を使用して、パターン化電極材料の回路などの他の層を製作することができる。好適な電極材料及び堆積方法は、当該技術分野において既知である。そのような電極材料としては、例えば、無機若しくは有機材料、又は2つの複合材料が挙げられる。例示的な電極材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、PEDOT)又はドープされた共役ポリマー、更には、グラファイト、又はAu、Ag、Cu、Al、Ni、若しくはその混合物などの金属の粒子の分散体又はペースト、並びにCu、Cr、Pt/Pd、Ag、Au、Mg、Ca、Li、若しくは混合物、又はインジウムスズ酸化物(indium tin oxide、ITO)、F-ドープドITO、GZO(gallium doped zinc oxide)(ガリウムドープド酸化亜鉛)、又はAZO(aluminium doped zinc oxide)(アルミニウムドープド酸化亜鉛)などの金属酸化物などのスパッタコーティング又は蒸着された金属が挙げられる。有機金属前駆体もまた、液相から使用及び堆積され得る。
【0022】
別の実施形態において、フルオロポリマー(例えば、フォトレジスト)層は、プリント回路基板(PCB)の製造において金属(例えば、銅)基材上に配置され得る。プリント回路基板の例示的な斜視図を図2に示す。プリント回路基板(又はPCB)は、非導電性基材上に積層された(例えば、銅)金属シートからエッチングされた導電性経路、トラック、又は信号トレースを使用して、電子構成要素を機械的に支持及び電気的に接続するために使用される。そのような基板は、典型的には、ガラス繊維強化(glass fiber reinforced)(ガラス繊維)エポキシ樹脂又は紙強化フェノール樹脂(paper reinforced phenolic resin)などの絶縁材料から作製される。電気の経路は、典型的には、前述のように、ネガティブフォトレジストから作製される。したがって、本実施形態において、架橋フルオロポリマーは、(例えば、銅)金属基材の表面上に配置される。未架橋フルオロポリマーの部分を除去して、導電性(例えば、銅)経路を形成する。架橋フルオロポリマー(例えば、フォトレジスト)は、存在したままで、プリント回路基板の導電性(例えば、銅)経路間に配置される。はんだは、これらの基板の表面上に構成要素を取り付けるために使用される。いくつかの実施形態において、プリント回路基板は、図2に示されるように、集積回路200を更に備える。プリント回路基板アセンブリは、コンピュータ、コンピュータプリンタ、テレビ、及び携帯電話を含むほぼ全ての電子物品における用途を有する。
【0023】
別の実施形態において、本明細書に記載の架橋フルオロポリマーフィルムを、集積回路の製造における、絶縁層、不動態化層、及び/又は保護層として利用することができる。
【0024】
図3Aを参照すると、一実施形態において、薄いフルオロポリマーフィルム300(例えば、典型的には、50、40、又は30nm未満の厚さを有する)は、電極パターン化360シリコンチップ320上に配置された不動態化層310(例えば、SiO)上に配置され得る。
【0025】
図3Bを参照すると、別の実施形態において、薄いフルオロポリマーフィルム300(例えば、典型的には、少なくとも100、200、300、400、500nmの厚さを有する)は、電極パターン化360シリコンチップ320上に配置され得る。本実施形態において、フルオロポリマー層は、不動態化層及び絶縁層の両方として機能し得る。不動態化とは、環境の電気的及び化学的条件からトランジスタ表面を隔離することによって電気的安定性を提供するための薄いコーティングの使用である。
【0026】
別の実施形態において、本明細書に記載の架橋フルオロポリマーフィルムは、アンテナの基材として利用することができる。送信機のアンテナは、受信器のアンテナがエネルギーを捕捉し、それを電気に変換する間に、空間に(例えば、高周波)エネルギーを放出する。
【0027】
アンテナのパターン化電極はまた、フォトリソグラフィから形成することができる。スクリーン印刷、フレキソ印刷、及びインクジェット印刷を利用して、当該技術分野において既知のとおり、電極パターンを形成することもできる。(例えば、モバイル)コンピューティングデバイス(スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップ)のための様々なアンテナ設計が、文献に記載されている。1つの代表的な分割リングモノポールアンテナは、以下の寸法をミクロンで有する図4に示されている。
【表1】
【0028】
本明細書に記載の低誘電性フルオロポリマーフィルム及びコーティングはまた、セルタワーの送信機アンテナ及び他の(例えば、屋外)構造の絶縁層及び保護層として利用することができる。セルタワーに使用されるアンテナの2つの主要な種類がある。図5Aは、任意の方向に送信/受信するために使用される代表的な全方向性(例えば、ダイポール)アンテナを示す。図5Bは、円形及び長方形の種類のホーンアンテナなどの特定の所望の方向のみを送信/受信するために使用される代表的な指向性アンテナである。
【0029】
別の実施形態において、本明細書に記載の低誘電性フルオロポリマー組成物はまた、光ファイバケーブルで利用され得る。図6を参照すると、光ファイバケーブルは、典型的には、5つの主要な構成要素を含む:典型的には、高純度(例えば、シリカ)ガラス620であるコア、クラッド630、コーティング(例えば、第1の内側保護層)640、強化ファイバ650、及び外側ジャケット(すなわち、第2の外側保護層)660。クラッドの機能は、光波がファイバを透過するようにコア内で反射を引き起こすために、コア界面でより低い屈折率を提供することである。クラッド上のコーティングは、典型的には、ファイバコアを補強するために存在し、ショックを吸収し、過剰なケーブルの屈曲に対する余分な保護を提供する。本明細書に記載の低誘電性フルオロポリマー組成物は、クラッド、コーティング、外側ジャケット、又はそれらの組み合わせとして使用することができる。
【0030】
他の実施形態において、本明細書に記載の低誘電性フルオロポリマーフィルム及びコーティングはまた、可撓性ケーブル及び磁石ワイヤ上の絶縁フィルムとして利用することができる。例えば、ラップトップコンピュータでは、(ラップトップが開閉されるごとに屈曲する必要がある)メインロジックボードをディスプレイに接続するケーブルは、銅導体を有する本明細書に記載の低誘電性フルオロポリマー組成物であり得る。
【0031】
電気通信物品は、典型的には、ウェハ及びチップ製造に使用される機器のシーリング構成要素ではない。
【0032】
当業者は、本明細書に記載の低誘電性フルオロポリマー組成物を、特にポリイミドの代わりに、様々な電気通信物品で利用することができ、そのような有用性は、本明細書に記載の特定の物品に限定されないことを理解する。
【0033】
本明細書に記載のフルオロポリマーは、主に又は排他的に、2つ以上の全フッ素化コモノマーから誘導される(例えば、繰り返し)重合単位を含むコポリマーである。コポリマーは、2つ以上のモノマーの同時重合から生じるポリマー材料を指す。いくつかの実施形態において、コモノマーは、テトラフルオロエテン(tetrafluoroethene、TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロ(例えば、アルケニル、ビニル)アルキルエーテルを含む。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルは、一般式:
-O-(CF-CF=CF
[式中、nは、1(アリルエーテル)又は0(ビニルエーテル)であり、Rは、酸素原子が1個以上介在していてもよいペルフルオロアルキル残基を表す]から選択される。Rは、10個以下の炭素原子、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含有していてもよい。好ましくは、Rは、8個以下の、より好ましくは6個以下の炭素原子及び最も好ましくは3又は4個の炭素原子を含有する。一実施形態において、Rは3個の炭素原子を有する。別の実施形態において、Rは1個の炭素原子を有する。Rは、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、環式単位を含んでいても含んでいなくてもよい。Rの具体例としては、以下を含むがこれらに限定されない1つ以上のエーテル官能基を有する残基が挙げられる。
-(CF)-O-C
-(CF-O-C
-(CFr3-O-CF
-(CF-O)-C
-(CF-O)-C
-(CF-O)-CF
-(CFCF-O)-C
-(CFCF-O)-C
-(CFCF-O)-CF
【0035】
の他の具体例としては、エーテル官能基を含有しない残基が挙げられ、-C、-C、-C、-CF[式中、C及びC残基は、分枝状であっても、直鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
好適なペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)及びペルフルオロアルキルアリルエーテル(PAAE)の具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、CF=CF-O-CF-O-C5、CF=CF-O-CF-O-C
【化2】
及びそれらのアリルエーテル同族体が挙げられるが、これらに限定されない。アリルエーテルの具体例としては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-(CF-O-CFが挙げられる。
【0037】
更なる例としては、欧州特許出願第1,997,795(B1)号に記載のビニルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
上記のような全フッ素化エーテルは、例えば、Anles Ltd.(St.Petersburg,Russia)及び他の企業から市販されているか、あるいは米国特許第4,349,650号(Krespan)若しくは欧州特許第1,997,795号に記載の方法に従って、又は当業者に知られているその改変によって調製することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルは、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3ジオキソールなどの不飽和環状ペルフルオロアルキルエーテルを含む。他の実施形態において、フルオロポリマーは、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3ジオキソールなどの不飽和環状ペルフルオロアルキルエーテルを実質的に含まない。実質的に含まないとは、量がゼロである、又は十分に低いことを意味し、そのようなフルオロポリマー特性はほぼ同じである。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエテン(TFE)と、上記の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルのうちの1種以上と、を含む全フッ素化コモノマーから主に又は排他的に誘導される。本明細書で使用するとき、「主に」は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも80、85、又は90重量%のフルオロポリマーの重合単位が、テトラフルオロエテン(TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルなどのそのような全フッ素化コモノマーから誘導されることを意味する。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、又は97重量%、又はそれ以上のそのような全フッ素化コモノマーを含む。フルオロポリマーは、少なくとも40、45、又は50重量%のTFEから誘導される重合単位を含有し得る。いくつかの実施形態において、TFEから誘導される重合単位の最大量は、60重量%以下である。
【0041】
フルオロポリマーは、典型的には、フルオロポリマーの総重合モノマー単位に基づいて、少なくとも10、15、20、25、30、45、又は50重量%の量で、不飽和ペルフルオロアルキルエーテル(PAVE)(例えば、PMVE、PAAE、又はそれらの組み合わせ)のうちの1つ以上から誘導される重合単位を含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、フルオロポリマーの総重合モノマー単位に基づいて、50、45、40、又は35重量%以下の不飽和ペルフルオロアルキルエーテル(PMVE、PAAE、又はそれらの組み合わせ)のうちの1つ以上から誘導される重合単位を含む。TFEから誘導される単位と上記の全フッ素化アルキルエーテルから誘導される単位のモル比は、例えば、1:1~5:1であり得る。いくつかの実施形態において、モル比は1.5:1~3:1の範囲である。
【0042】
フルオロポリマーは熱可塑性であってもよいが、好ましい実施形態において、フルオロポリマーは非晶質である。本明細書で使用するとき、非晶質フルオロポリマーは、本質的に結晶化度を含まない、又は窒素流及び10℃/分の加熱速度下で、DIN EN ISO 11357-3:2013-04に従って示差走査熱量計によって決定されるように有意な融点(ピーク最大値)を有さない材料である。典型的には、非晶質フルオロポリマーは、26℃未満、20℃未満、又は0℃未満、例えば、-40℃~20℃、又は-50℃~15℃、又は-55℃~10℃のガラス転移温度(Tg)を有する。フルオロポリマーは、典型的には、約2~約150、例えば、10~100、又は20~70のムーニー粘度(121℃でML1+10)を有し得る。環状全フッ素化アルキルエーテル単位を含有する非晶質ポリマーについて、ガラス転移温度は、典型的には、少なくとも70℃、80℃、又は90℃であり、220℃、250℃、270℃、又は290℃までの範囲であり得る。MFI(297℃/5kg)は、0.1~1000g/10分である。
【0043】
他の実施形態において、フルオロポリマーは、150℃又は100℃未満の融点を有し得る。
【0044】
フルオロポリマーは、好ましくは、1つ以上の硬化部位を含有する硬化性フルオロポリマーである。硬化部位は、硬化剤又は硬化系の存在下で反応してポリマーを架橋する官能基である。硬化部位は、典型的には、硬化部位又はその前駆体を既に含有する官能性コモノマーである、硬化部位モノマーを共重合させることによって導入される。架橋の1つの指標は、乾燥及び硬化したコーティング組成物がコーティングのフッ素化溶媒に可溶ではなかったことである。
【0045】
硬化部位は、硬化部位モノマー、すなわち、以下に記載されるような官能性モノマー、官能性連鎖移動剤、及び出発分子(starter molecule)を使用することによって、ポリマー中に導入することができる。フルオロエラストマーは、2つ以上のクラスの硬化剤に反応性である硬化部位を含有し得る。
【0046】
硬化性フルオロエラストマーはまた、ペンダント基として主鎖中に硬化部位を含有し得る、又は末端位置で硬化部位を含有し得る。フルオロポリマー主鎖内の硬化部位は、好適な硬化部位モノマーを使用することによって導入することができる。硬化部位モノマーは、硬化部位として作用することができる1つ以上の官能基、又は硬化部位に変換可能な前駆体を含有するモノマーである。
【0047】
いくつかの実施形態において、硬化部位は、ヨウ素原子又は臭素原子を含む。
【0048】
ヨウ素含有硬化部位末端基は、重合においてヨウ素含有連鎖移動剤を使用することによって導入することができる。ヨウ素含有連鎖移動剤については、以下でより詳細に説明する。ヨウ素末端基を導入するために、以下に記載されるようなハロゲン化レドックス系を使用することができる。
【0049】
ヨウ素硬化部位に加えて、他の硬化部位、例えばBr含有硬化部位又は1つ以上のニトリル基を含有する硬化部位もまた存在してもよい。Br含有硬化部位は、Br含有硬化部位モノマーによって導入され得る。
【0050】
硬化部位コモノマーの例としては、例えば以下:
(a)例えば以下の式を有するものを含む、ブロモ-又はヨード-(ペル)フルオロアルキル-(ペル)フルオロビニルエーテル:
ZRf-O-CX=CX
[式中、各Xは同じであっても異なっていてもよく、H又はFを表し、ZはBr又はIであり、Rfは、任意に塩素原子及び/又はエーテル酸素原子を含有する、C1~C12(ペル)フルオロアルキレンである]を有するものが挙げられる。好適な例としては、ZCF-O-CF=CF、ZCFCF-O-CF=CF、ZCFCFCF-O-CF=CF、CFCFZCF-O-CF=CF、又はZCFCF-O-CFCFCF-O-CF=CF[式中、ZはBr又はIを表す]、
(b)以下の式を有するものなどの、ブロモ-又はヨードペルフルオロオレフィン:
Z’-(Rf)-CX=CX
[式中、各Xは、独立してH又はFを表し、Z’はBr又はIであり、Rfは、任意に塩素原子を含有する、C~C12ペルフルオロアルキレンであり、rは、0又は1である]を有するもの、並びに、
(c)臭化ビニル、ヨウ化ビニル、4-ブロモ-1-ブテン、及び4-ヨード-1-ブテンなどの、非フッ素化ブロモ及びヨード-オレフィンが挙げられる。
【0051】
具体例としては、XがHである(b)による化合物、例えばXがHであり、RfがC1~C3ペルフルオロアルキレンである化合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例としては、ブロモ-若しくはヨード-トリフルオロエテン、4-ブロモ-ペルフルオロブテン-1、4-ヨード-ペルフルオロブテン-1、又はブロモ-若しくはヨード-フルオロオレフィン、例えば1-ヨード,2,2-ジフルオロエテン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエテン、4-ヨード-3,3,4,4,-テトラフルオロブテン-1、及び4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブテン-1、6-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロヘキセン-1が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、硬化部位は、塩素原子を含む。そのような硬化部位モノマーは、一般式:CX=CY[式中、X、Xは、独立してH及びFであり、Yは、H、F、又はClであり、Yは、Cl、少なくとも1つのCl置換基を有するフルオロアルキル基(R)、少なくとも1つのCl置換基を有するフルオロエーテル基(OR)、又は-CF-ORである]のものを含む。フルオロアルキル基(R)は、典型的には、部分又は完全フッ素化C~Cアルキル基である。塩素原子を有する硬化部位モノマーの例としては、CF=CFCl、CF=CF-CFCl、CF=CF-O-(CF-Cl[n=1~4]、CH=CHCl、CH=CClが挙げられる。
【0053】
典型的には、フルオロポリマー中のヨウ素若しくは臭素若しくは塩素又はそれらの組み合わせの量は、フルオロポリマーの総重量に対して、0.001~5重量%、好ましくは0.01~2.5重量%、又は0.1~1重量%又は0.2~0.6重量%である。一実施形態において、硬化性フルオロポリマーは、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0.001~5重量%、好ましくは、0.01~2.5重量%、又は0.1~1重量%、より好ましくは、0.2~0.6重量%のヨウ素を含有する。
【0054】
組成物は、任意に、ハロゲン硬化部位を有しない第2のフルオロポリマーを更に含み得る。ハロゲン硬化部位を有しないフルオロポリマーの量は、典型的には、全てのフルオロポリマーの50、45、40、35、30、25、20、15、10、又は5重量%未満である。したがって、組成物は、適切な架橋が達成されるように、ハロゲン硬化部位を有する十分な量のフルオロポリマーを有する。
【0055】
一実施形態において、組成物は、テトラフルオロエテン(TFE)及び2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3ジオキソールなどの1つ以上の不飽和環状ペルフルオロアルキルエーテルを含む2つ以上の全フッ素化コモノマーから主に又は排他的に誘導される第2のフルオロポリマーを更に含む。そのようなフルオロポリマーは、「TEFLON(商標)AF」、「CYTOP(商標)」、及び「HYFLON(商標)」として市販されている。
【0056】
いくつかの実施形態において、第2のフルオロポリマーは、ニトリル含有硬化部位を含有する。異なる硬化部位を有するフルオロポリマーの組み合わせが利用される場合、組成物は、異なる硬化系に反応性である異なる硬化部位を含有する二重硬化として特徴付けられ得る。
【0057】
ハロゲン硬化部位(ヨウ素、臭素、及び塩素)を有するフルオロポリマーは、UV硬化に好ましいが、熱的又は電子線硬化の場合、代替的に、ニトリル含有硬化部位を有するフルオロポリマーを用いてもよい。
【0058】
ニトリル含有硬化部位を有するフルオロポリマーは、米国特許第6,720,360号などに記載されていることが既知である。
【0059】
ニトリル含有硬化部位は、他の硬化系、限定されるものではないが例えば、ビスフェノール硬化系、過酸化物硬化系、トリアジン硬化系、及び特にアミン硬化系に対して反応性であってもよい。ニトリル含有硬化部位モノマーの例は、以下の式:
CF=CF-CF-O-Rf-CN、
CF=CFO(CFCN、
CF=CFO[CFCF(CF)O](CFOCF(CF)CN、
CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCN、
[式中、rは、2~12の整数を表し、pは、0~4の整数を表し、kは、1又は2を表し、vは、0~6の整数を表し、uは、1~6の整数を表し、Rfは、ペルフルオロアルキレン又は二価ペルフルオロエーテル基である]に対応する。ニトリル含有フッ素化モノマーの具体例としては、ペルフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)、CF=CFO(CFCN、及びCF=CFO(CFOCF(CF)CNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態において、ニトリル含有硬化部位コモノマーの量は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、典型的には、少なくとも0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5重量%であり、典型的には、10重量%以下である。ニトリル硬化部位のための好適な硬化剤は、当該技術分野において既知であり、(例えば、フッ素化)アミジン、アミドキシム、及び参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/094758(A1)号に記載されている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な硬化剤としては、例えば、ビス-テトラホスホニウムペルフルオロアジペート、メチルスルホン、テトラブチルホスホニウムトルイ-ヘキサフルオロイソプロポキシドトリフルオロメトキシ、及びテトラフルオロプロピルアミジンが挙げられる。
【0061】
一実施形態において、ニトリル含有硬化部位を有するフルオロポリマーは、国際公開第2018/107017号に記載されるように、硬化剤として過酸化物及びエチレン性不飽和化合物と組み合わせることができる。本実施形態において、好適な有機過酸化物は、硬化温度でフリーラジカルを生成するものである。例としては、ジアルキルペルオキシド又はビス(ジアルキルペルオキシド)、例えば、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を有するジ-tert-ブチルペルオキシドが挙げられる。具体例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン)、及びジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)-ブチル]カーボネートが挙げられる。概ね、フルオロポリマー100部当たり約1~5部の過酸化物を使用することができる。
【0062】
他の実施形態において、組成物は、ニトリル含有硬化部位を有するフルオロポリマーを実質的に含まない。本実施形態において、組成物はまた、ニトリル基と反応する硬化剤を含まない。
【0063】
他の実施形態において、ハロゲン化連鎖移動剤を利用して、末端硬化部位を提供することができる。連鎖移動剤は、成長するポリマー鎖と反応し、連鎖成長を停止させることができる化合物である。フルオロエラストマーの製造に関して報告されている連鎖移動剤の例としては、式RIを有するものが挙げられ、式中、Rは、1~12個の炭素原子を有する、x価のフルオロアルキル又はフルオロアルキレン基であり、これは、1個以上のエーテル酸素が介在していてもよく、また、塩素原子及び/又は臭素原子を含有してもよい。RはRfであってもよく、Rfは、エーテル酸素により1回以上介在されていていてもよいx価の(ペル)フルオロアルキル又は(ペル)フルオロアルキレン基であってもよい。例としては、1個以上のカテナリー(catenary)エーテル酸素を含有していてもよい、α-ωジヨードアルカン、α-ωジヨードフルオロアルカン、及びα-ωジヨードペルフルオロアルカンが挙げられる。「α-ω」は、ヨウ素原子が、分子の末端位置にあることを表す。このような化合物は、一般式X-R-Yによって表すことができ、X及びYはIであり、Rは上記のとおりである。具体例としては、ジヨードメタン、α-ω(又は1,4-)ジヨードブタン、α-ω(又は1,3-)ジヨードプロパン、α-ω(又は1,5-)ジヨードペンタン、α-ω(又は1,6-)ジヨードヘキサン、及び1,2-ジヨードペルフルオロエタンが挙げられる。他の例としては、以下の式:
【化3】
[式中、Xは、F、H、及びClから独立して選択され、R及びR’は、F及び1~3個の炭素を有する一価ペルフルオロアルカンから独立して選択され、Rは、F、又は1~3個の炭素を含む部分フッ素化若しくは全フッ素化アルカンであり、R’’は、1~5個の炭素を有する二価フルオロアルキレン又は1~8個の炭素及び少なくとも1つのエーテル結合を有する二価フッ素化アルキレンエーテルであり、kは0又は1であり、n、m、及びpは、0~5の整数から独立して選択され、n+mは少なくとも1であり、p+qは少なくとも1である]のフッ素化ジヨードエーテル化合物が挙げられる。
【0064】
フルオロポリマーは、少なくとも1種の改質モノマーから誘導される単位を含有してもよく、又は含有しなくてもよい。改質モノマーは、ポリマー構造中に分岐部位を導入することができる。典型的には、改質モノマーは、ビスオレフィン、ビスオレフィンエーテル又はポリエーテルである。ビスオレフィン及びビスオレフィン(ポリ)エーテルは、全フッ素化されていてもよく、部分フッ素化されていてもよく、又は非フッ素化であってもよい。好ましくは、これらは、全フッ素化されている。好適な全フッ素化ビスオレフィンエーテルとしては、以下の一般式で表されるものが挙げられる。
CF=CF-(CF-O-(Rf)-O-(CF-CF=CF
[式中、n及びmは、互いに独立して1又は0のいずれかであり、Rfは、1個以上の酸素原子が介在していてもよい、最大30個の炭素原子を含む、全フッ素化された、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の、脂肪族又は芳香族の炭化水素残基を表す]。特定の好適な全フッ素化ビスオレフィンエーテルは、以下の式で表されるジ-ビニルエーテルである。
CF=CF-O-(CF-O-CF=CF
[式中、nは1~10、好ましくは、2~6の整数であり、例えば、nは、1、2、3、4、5、6、又は7であり得る]。より好ましくは、nは、例えば1、3、5、又は7などの奇数を表す。
【0065】
更なる具体例としては、以下の一般式に従うビスオレフィンエーテルが挙げられる。
CF=CF-(CF-O-(CF-O-(CF-CF=CF
[式中、n及びmは、独立して1又は0のいずれかであり、pは1~10又は2~6の整数である]。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、又は7、好ましくは、1、3、5、又は7を表すように選択され得る。
【0066】
更なる好適な全フッ素化ビスオレフィンエーテルは、以下の式で表すことができる。
【化4】
[式中、Raf及びRbfは、1~10個の炭素原子、特に、2~6個の炭素原子の、異なる直鎖状又は分枝状ペルフルオロアルキレン基であり、これは、1個以上の酸素原子が介在していても介在していなくてもよい]。Raf及び/又はRbfはまた、全フッ素化フェニル又は置換フェニル基であってもよく、nは、1~10の整数であり、mは、0~10の整数であり、好ましくは、mは0である。更に、p及びqは、独立して1又は0である。
【0067】
別の実施形態において、全フッ素化ビスオレフィンエーテルは、直前に記載された式によって表すことができる[式中、m、n、及びpはゼロであり、qは1~4である]。
【0068】
改質モノマーは、当該技術分野において既知の方法で調製することができ、また、例えば、Anles Ltd.(St.Petersburg,Russia)から市販されている。
【0069】
好ましくは、改質剤は使用されないか、又は少量だけ使用される。典型的な量としては、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0~5重量%、又は0~1.4重量%が挙げられる。改質剤は、例えば、フルオロポリマーの総重量に基づいて約0.1重量%~約1.2重量%又は約0.3重量%~約0.8重量%の量で存在し得る。改質剤の組み合わせもまた使用することができる。
【0070】
フルオロポリマーは、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマー及びこれらの組み合わせを含有してもよいが、好ましくはない。典型的な部分フッ素化コモノマーとしては、1,1-ジフルオロエテン(フッ化ビニリデン、VDF)及びフッ化ビニル(VF)又はトリフルオロクロロエテン又はトリクロロフルオロエテンが挙げられるが、これらに限定されない。非フッ素化コモノマーの例としては、エテン及びプロペンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのコモノマーから誘導される単位の量は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0~8重量%を含む。いくつかの実施形態において、そのようなコモノマーの濃度は、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、7、6、5、4、3、2、又は1%以下である。
【0071】
好ましい実施形態において、硬化性フルオロポリマーは、全フッ素化コモノマーから(排他的に)誘導される繰り返し単位だけを含むが、硬化部位モノマー、及び必要であれば改質モノマーから誘導される単位を含有し得るペルフルオロエラストマーである。硬化部位モノマー及び改質モノマーは、部分フッ素化されていてもよく、非フッ素化であってもよく、又は全フッ素化されていてもよく、好ましくは、全フッ素化されている。ペルフルオロエラストマーは、69~73、74、又は75重量%のフッ素(ペルフルオロエラストマーの総量に基づいて)を含有し得る。フッ素含有量は、コモノマー及びそれらの量を適宜選択することによって達成することができる。
【0072】
そのような高度にフッ素化された非晶質フルオロポリマーは、典型的には、水素含有有機液体において、室温及び標準圧力で、少なくとも1重量%の程度までしか溶解しない(例えば、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、「MEK」)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、「THF」)、酢酸エチル、又はN-メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidinone、「NMP」)のいずれにも溶解しない)。
【0073】
フルオロポリマーは、バルク、懸濁、溶液、又は水性乳化重合などの当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。当該技術分野で説明されているように、例えば、3H-ペルフルオロ-3-[(3-メトキシ-プロポキシ)プロパン酸を含む様々な乳化剤を使用することができる。例えば、重合プロセスは、モノマー単独の、又は有機溶媒若しくは水中の溶液、エマルション若しくは分散体としての、フリーラジカル重合によって実施することができる。シード重合は、使用されてもよく、使用されなくてもよい。使用可能な硬化性フルオロエラストマーとしては、市販のフルオロエラストマー、特に、ペルフルオロエラストマーも挙げられる。
【0074】
フルオロポリマーは、単峰性又は二峰性又は多峰性の分子量分布(weight distribution)を有し得る。フルオロポリマーは、コアシェル構造を有していても、有していなくてもよい。コアシェルポリマーとは、重合の終わりに近づくと、典型的にはコモノマーの少なくとも50モル%が消費された後に、コモノマーの組成、又はコモノマーの比、又は反応速度を変更して、異なる組成のシェルを形成させるポリマーのことである。
【0075】
フルオロポリマーのフッ素含有量は、典型的には、フルオロポリマーの少なくとも60、65、66、67、68、69、又は70重量%、典型的には、76、75、74、又は73重量%以下である。
【0076】
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、1つ以上のエチレン性不飽和硬化剤を含有する。エチレン性不飽和硬化剤は、典型的には、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、少なくとも1、1.5、又は2重量%の量で存在する。より少ない量の架橋を有する組成物について、エチレン性不飽和硬化剤は、少なくとも0.005、0.1、0.2、0.3、0.5重量%などのより少ない量で存在し得る。エチレン性不飽和硬化剤の最大量は、典型的には、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、10、9、8、7、6、又は5重量%以下である。
【0077】
硬化剤のエチレン性不飽和基は、典型的には、(メタ)アクリレートRCH=CHCOO-及び(メタ)アクリルアミドRCH=CHCONH-[式中、Rは、水素又はメチルである]を含む(メタ)アクリル、ビニルを含むアルケニル(CH=CH-)、又はアルキニルである。
【0078】
有用なマルチ(メタ)アクリレート硬化剤としては、次のものが挙げられる。
(a)ジ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなど、
(b)トリ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなど、
(c)より多官能性の(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど。
【0079】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、少なくとも2つ又は3つのエチレン性不飽和基を含む。エチレン性不飽和基の最大数は、典型的には、3、4、5、又は6である。本実施形態において、エチレン性不飽和基は、好ましくは、アルケニル基である。したがって、いくつかの実施形態における組成物、組成物は、(メタ)アクリレート基を実質的に含まない。
【0080】
エチレン性不飽和硬化剤は、直鎖状、分枝状であり得る、又は環状基を含み得る。エチレン性不飽和硬化剤は、脂肪族又は芳香族であり得る。有用なエチレン性不飽和硬化剤の例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、トリアリル-ホスファイト、(N,N’)-ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホラミド、(N,N,N,N)-テトラアルキルテトラフタルアミド、(N,N,N’,N-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリル-フタレート、及びトリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレートが挙げられる。いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate、TAIC)の場合など、複素環式である。
【0081】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、シラン又はシロキサンなどのシリコーン含有部分を含む。硬化剤がシリコーン含有部分を含む場合、硬化剤はまた、基材へのフルオロポリマーの接着を促進することができる。
【0082】
シリコーン含有部分を含む好適なエチレン性不飽和硬化剤としては、例えば、ジアリルジメチルシラン及び1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む。好適な硬化剤としては、例えば、(メタ)アクリロイルアルコキシシラン、例えば、3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシランが挙げられる。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリロイアルコキシシランの量は、高度に架橋されたフルオロポリマーを達成するために、少なくとも2、3、4、又は5重量%である。
【0084】
好適なアルケニルアルコキシシランとしては、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス-イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、及びアリルトリエトキシシランが挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和硬化剤は、一般式:
-L-SiR(OR3-m
[式中、Xは、(メタ)アクリル又はビニルなどのエチレン性不飽和基であり、
は、1~12個の炭素原子を有する有機の二価結合基であり、
Rは、独立して、C~Cアルキルであり、最も典型的には、メチル又はエチルであり、
は、独立して、H又はC~Cアルキルであり、最も典型的には、メチル又はエチルであり、
mは、0~2の範囲である]を有し得る。
【0086】
典型的な実施形態において、Lはアルキレン基である。いくつかの実施形態において、Lは、1、2、又は3個の炭素原子を有するアルキレン基である。他の実施形態において、Lは、フェニル又は(例えば、C~C)アルキルフェニルなどの芳香族基を含む、又はそれらからなる。
【0087】
組成物は、直前に記載されたような単一のエチレン性不飽和硬化剤又はエチレン性不飽和硬化剤の組み合わせを含み得る。
【0088】
本明細書に記載の組成物は、電子供与性基又はその前駆体を更に含む。電子供与性基は、アミノアルケン又はビニルアニリンの場合などの同じ化合物上に存在してもよく、又は電子供与性基は、別個の化合物として存在してもよい。
【0089】
フルオロポリマー及び/又は硬化剤は、発色団、すなわち、特定の頻度で光を吸収する原子又は基を含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマー及び/又は硬化剤は、独立して、十分な吸光度を有していなくてもよいが、互いに組み合わせて十分な吸光度を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー、硬化剤、又はそれらの組み合わせは、190nm~400nmの範囲の波長で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0の吸光度を有する。いくつかの実施形態において、そのような吸光度は、少なくとも200nm、210nm、220nm、230nm、又は240nmの波長でのものである。いくつかの実施形態において、そのような吸光度は、350、340、330、320、310nm、又は290nm以下の波長でのものである。他の実施形態において、フルオロポリマー、硬化剤、又はそれらの組み合わせは、150nm~200nmの範囲の波長で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0の吸光度を有する。
【0091】
理論に拘束されることを意図するものではないが、好適な波長及び強度の化学(例えば、UV)線に曝露されると、フルオロポリマーの硬化部位のハロゲン原子が励起され、イオン化されることが推測される。イオン化ハロゲン原子は、前者のハロゲン原子の代わりにプロトン化硬化部位をレンダリングする電子供与性基と反応する。そのようなプロトン化硬化部位は、硬化剤のエチレン性不飽和基と共有結合する。
【0092】
他の電子供与性基を利用することができるが、電子供与性基を含む化合物は、典型的には、アミン又はその前駆体である。好適なアミンとしては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アミンは、脂肪族であっても芳香族であってもよい。アミン化合物はまた、アミン硬化剤を利用して(例えば、ニトリル)硬化部位を有するフルオロポリマーを(例えば、熱的に)硬化させることによって、架橋フルオロポリマー層を提供するために利用され得る。
【0093】
例示的なアミン化合物としては、ジアミノヘキサン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン(TMDAB);N,N-ジメチルアニリン;トリエチレンテトラミン;及びジエチレントリアミンが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミン基は、少なくとも3、4、5、又は6個の(例えば、炭素)原子を有するアルキレン基によって離間される。典型的には、(例えば、炭素)原子の数は、12個以下である。アミン化合物が不十分な鎖長を有する場合、それは、効果の低い電子供与性基であり得る。化合物が電子供与体又はその前駆体であるという条件で、アルキレン基は、任意に、シロキサンなどの置換基を含み得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、電子供与体化合物は、化合物が最初にフルオロポリマーと組み合わされる場合、電子供与体ではないことを意味する電子供与体前駆体として特徴付けられ得る。しかしながら、前駆体化合物は、硬化前又は硬化中に(例えば、アミン)電子供与体を形成するために分解又は別様に反応する。
【0095】
電子供与体前駆体としては、複素環式第二級アミンなどの窒素含有求核化合物;グアニジン;40℃~330℃の温度でin situで分解してグアニジンを生成する化合物;40℃~330℃の温度でin situで分解して第一級アミン又は第二級アミンを生成する化合物;式R-NH-R[式中、Rは、H-、C~C10脂肪族炭化水素基、又はα位に水素原子を有するアリール基であり、Rは、C~C10脂肪族炭化水素基、α位に水素原子を有するアリール基、-CONHR、-NHCO、又は-OH’であり、Rは、C~C10脂肪族炭化水素基である]の求核化合物;及び式HN=CRNR[式中、R、R、Rは、独立して、H-、アルキル又はアリール基であり、R、R及びReのうちの少なくとも1つはH-ではない]の置換アミジンが挙げられる。
【0096】
本明細書で使用するとき、「複素環式第二級アミン」は、環内に含有される少なくとも1つの第二級アミン窒素を有する芳香族又は脂肪族環状化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3-ピロリン、及びピロリジンが挙げられる。
【0097】
グアニジンは、グアニジン由来の化合物、すなわち、ジフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンアセテート、アミノブチルグアニジン、ビグアニジン、イソペンチルグアニジン、ジ-σ-トリルグアニジン、o-トリルビグアニド、及びトリフェニルグアニジンなどであるがこれらに限定されない、-NHCNHNH-基を含有する化合物である。
【0098】
40℃~330℃の温度でin situで分解して、第一級又は第二級アミンのいずれかを生成する他の化合物としては、二置換又は多置換尿素(例えば、1,3-ジメチル尿素);N-アルキル又は-ジアルキルカルバメート(例えば、N-(tert-ブチルオキシカルボニル)プロピルアミン);二置換又は多置換チオ尿素(例えば、1,3-ジメチル-チオ尿素);アルデヒド-アミン縮合生成物(例えば、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン);N,N’-ジアルキルフタルアミド誘導体(例えば、N,N’-ジメチルフタルアミド);及びアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
直前に記載されたように熱活性化電子供与体前駆体化合物が利用される場合、組成物は、典型的には、硬化前及び/又は硬化中に加熱される。
【0100】
別の種類のアミン電子供与体としては、下記式
【化5】
及び
【化6】
のビス(アミノフェノール)及びビス(アミノチオフェノール)、並びに下記式
【化7】
のテトラアミンが挙げられ、式中、Aは、SO、O、CO、炭素原子1~6個のアルキル、炭素原子1~10個のペルフルオロアルキル、又は2つの芳香環を連結する炭素-炭素結合である。上記の式中のアミノ基及びヒドロキシル基は、A基に対してメタ位及びパラ位に互換的に存在する。
【0101】
いくつかの実施形態において、アミン電子供与体化合物は、アジリジン化合物である。いくつかの実施形態において、アジリジン化合物は、少なくとも2つのアジリジン基を含む。アジリジン化合物は、3、4、5、6、又は6超個のアジリジン基を含み得る。アジリジン化合物は、以下の構造:
【化8】
[式中、Rは、Yの原子価を有するコア部分であり、
Lは、結合、二価原子、又は二価結合基であり、
、R、R、及びRは、独立して、水素又はC~Cアルキル(例えば、メチル)であり、
Yは、典型的には、2、3、又はそれ以上である]によって表すことができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、Rは、-SO-である。いくつかの実施形態において、R-Lは、マルチ(メタ)アクリレート化合物の残基である。いくつかの実施形態において、Lは、1つ以上の(例えば、隣接又はペンダント)酸素原子で任意に置換されたC~Cアルキレンであり、それによって、エーテル又はエステル結合を形成する。典型的な実施形態において、Rはメチルであり、R、R、及びRは水素である。
【0103】
代表的なアジリジン化合物としては、トリメチロールプロパントリ-[β-(N-アジリジニル)-プロピオネート、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジン)プロピオネート];1-(アジリジン-2-イル)-2-オキサブタ-3-エン;及び4-(アジリジン-2-イル)-ブタ-1-エン;及び5-(アジリジン-2-イル)-ペンテ-1-エンが挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態において、ポリアジリジン化合物は、米国特許第3,235,544号(Christena)に記載されるように、ジビニルスルホンをアルキレン(例えば、エチレン)イミンと反応させることによって調製することができる。代表的な化合物は、ジ(2-プロピレンイミノエチル)スルホンであり、以下のように示される。
【化9】
【0105】
上記のポリアジリジン化合物は、化合物がコーティング組成物に添加される時点で少なくとも2つのアジリジン基を含む。他の実施形態において、ポリアジリジン化合物は、化合物が組成物に添加される時点で2つのアジリジン基を含まず、更に、in-situでポリアジリジンを形成する。例えば、単一のアジリジン基及び単一(メタ)アクリレート基を含む化合物は、(メタ)アクリレート基の反応によって二量体を形成又はオリゴマー化し、それによって、ポリアジリジン(polyazirdine)(すなわち、ジアジリジン)化合物を形成することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの(例えば、第一級、第二級、第三級)アミン基及び少なくとも1つのオルガノシラン(例えば、アルコキシシラン)基を含む電子供与体化合物を含む。そのような化合物は、本明細書に記載のフルオロエラストマーを独立して架橋する結合を改善し、それによって、第2のフルオロポリマー架橋機構を提供することができる。アミノ置換オルガノシランと組み合わせてエチレン性不飽和硬化剤を使用することにより、より低濃度の硬化剤及び電子供与体化合物を利用して、高度に架橋されたフルオロポリマーを提供することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、アミンは、ケイ素原子上に少なくとも1つ、好ましくは2つ又は3つのエステル基又はエステル等価物基を有するアミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物として特徴付けられ得る。エステル等価物は当業者に周知であり、例えば、R’’OHによって熱的に及び/又は触媒作用で置換可能な、シランアミド(RNR’Si)、シランアルカノエート(RC(O)OSi)、Si-O-Si、SiN(R)-Si、SiSR及びRCONR’Si化合物などの化合物が含まれる。R及びR’は独立に選択され、水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、並びにアルコキシアルキル、アミノアルキル、及びアルキルアミノアルキルなどの置換類似体を挙げることができる。R’’は、Hではない場合を除いて、R及びR’と同一でもよい。これらエステル等価物はまた、エチレングリコール、エタノールアミン、エチレンジアミン(例えば、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン)、及びこれらのアミドから誘導されるもののように、環式化合物であってもよい。
【0108】
別のエステル等価物のこのような環式化合物の例として、以下がある。
【化10】
【0109】
この環式化合物の例では、R’は、上記の文により定義づけられるが、アリールではない場合がある。3-アミノプロピルアルコキシシランは、加熱により環化することが周知であり、これらRNHSi化合物は本発明で有用であろう。好ましくは、アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物は、メトキシなどのエステル基を有し、これは容易にメタノールとして揮発される。アミノ置換オルガノシランは、少なくとも1つのエステル等価物を有さなくてはならず、例えば、トリアルコキシシランであってよい。
【0110】
例えば、アミノ置換オルガノシランは、式
(ZN-L-SiX’X’’X’’’)[式中、
Zは、水素、アルキル、又は置換アリール若しくはアルキル、例えばアミノ置換アルキルであり、Lは、二価の直鎖C1~12アルキレンでもよく、又はC3~8シクロアルキレン、3~8員環のヘテロシクロアルキレン、C2~12アルケニレン、C4~8シクロアルケニレン、3~8員環ヘテロシクロアルケニレン、又はヘテロアリーレン単位を含んでもよく、X’、X’’及びX’’’のそれぞれは、C1~18アルキル、ハロゲン、C1~8アルコキシ、C1~8アルキルカルボニルオキシ、又はアミノ基であるが、但しX’、X’’、及びX’’’のうちの少なくとも1つは不安定基である]を有してもよい。更に、X’、X’’及びX’’’のうちの任意の2つ又は全ては、共有結合を介して連結されてもよい。アミノ基はアルキルアミノ基であってよい。
【0111】
Lは、二価の芳香族であってもよく、又は1つ以上の二価の芳香族基若しくはヘテロ原子基が介在してよい。芳香族基は複素環式芳香族を含んでよい。ヘテロ原子は、好ましくは、窒素、硫黄又は酸素である。Lは、C1~4アルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C1~4アルコキシ、アミノ、C3~6シクロアルキル、3~6員環のヘテロシクロアルキル、単環式アリール、5~6員環のヘテロアリール、C1~4アルキルカルボニルオキシ、C1~4アルキルオキシカルボニル、C1~4アルキルカルボニル、ホルミル、C1~4アルキルカルボニルアミノ、又はC1~4アミノカルボニルで任意に置換される。Lは、更に、-O-、-S-、-N(Rc)-、-N(Rc)-C(O)-、-N(Rc)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Rc)-、-N(Rc)-C(O)-N(Rd)-、-O-C(O)-、-C(O)-O-、又は-O-C(O)-O-が任意に介在している。Rc及びRdのそれぞれは、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アミノアルキル(第一級、第二級、又は第三級)、又はハロアルキルである。
【0112】
アミノ置換オルガノシランの例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A-1110)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(SILQUEST A-1100)、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピ)n-メチルアミン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A-1120)、SILQUEST A-1130、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SILQUEST A-2120)、ビス-(γ-トリエトキシシリルプロピル)アミン(SILQUEST A-1170)、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリブトキシシラン、6-(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、p-(2-アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、DYNASYLAN1146などのオリゴマーアミノシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、及び以下の環式化合物が挙げられる。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0113】
ビス-シリル尿素[RO)Si(CH)NR]C=Oは、アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物の別の例である。
【0114】
いくつかの実施形態において、硬化剤は、潜在的官能性を有するアミノ基を含み得る。そのような硬化剤の一例は、以下のようなブロックされたアミン基である:
-N=C(R)(R
[式中、R及びRは、独立して、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基から選択される]。典型的な実施形態において、R1は、メチルであり、Rは、少なくとも2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基である。Rは、典型的には、有機基(例えば、500、450、400、350、300、又は250g/モル未満の分子量を有する)である。
【0115】
ブロックされたアミンは、コーティングされている基材の表面に吸着された水によって、又は湿度から提供される水分によって活性化され得る。脱ブロッキングは分単位で始まり、概ね、数時間(例えば、2時間)以内に完了する。脱ブロッキング中、-N=C(R)(R)基は、-NHに変換され、その後、フルオロポリマーの(例えば、ニトリル硬化部位)と反応し得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、硬化剤は、ブロックされたアミン基及びアルコキシシラン基を含む。そのようなブロックされたアミン硬化剤は、次の一般式:
(RO)-Si-(CH-N=C(R1)(R2)
[式中、R及びRは、前述のように、独立して、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基から選択される。Rは、独立して、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基から選択され、mは、1~4の整数であり、各Rは、独立して、C1又はC2アルキル基である]によって特徴付けられ得る。
【0117】
ブロックされたアミン基及びアルコキシシラン基を含む1つの例示的な硬化剤は、以下のように示されるN-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピル-トリエトキシシランである。
【化15】
【0118】
そのような硬化剤は、Gelestから、及び3Mから「3M(商標)Dynamer(商標)Rubber Curative RC5125」として入手可能である。ブロックされたアミンは、電子供与体前駆体の追加の例である。
【0119】
いくつかの実施形態において、アミン硬化剤は、アジリジン基及びアルコキシシラン基を含む。そのような化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第3,243,429号から既知である。アジリジンアルコキシシラン化合物は、一般構造:
【化16】
[式中、R”は、水素又はC~Cアルキル(例えば、メチル)であり、
Xは、結合、二価原子、又は二価結合基であり、
nは、0、1、又は2であり、
mが、1、2、又は3であり、
合計又はn+mは、3である]を有し得る。
【0120】
1つの代表的な化合物は、3-(2-メチルアジリジニル)エチルカルボキシルプロピルトリエトキシシランである。
【0121】
様々な他の好適なアジリジン架橋剤は、参照により本明細書に組み込まれる、2014年5月22日に公開された国際公開第2014/075246号、及び「NEW GENERATION OF MULTIFUNCTIONAL CROSSLINKERS」(https://www.pstc.org/files/public/Milker00.pdf参照)に記載されていることが既知である。
【0122】
組成物は、単一の(例えば、アミン)電子供与体化合物を含む、又はアミン電子供与体化合物の組み合わせが存在し得る。
【0123】
(例えば、アミン)電子供与体化合物の量は、典型的には、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%の固形分(すなわち、コーティング組成物の溶媒を除く)である。いくつかの実施形態では、(例えば、アミン)電子供与体化合物の量は、5、4.5、4、3.5、又は3重量%以下の固形分である。
【0124】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー組成物は、アミン官能基を有しないアルコキシシラン化合物を更に含む。いくつかの実施形態において、そのようなアルコキシシランは、化学式:
Si(OR
[式中、Rは、前述のように、独立して、アルキルであり、
は、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリル、又はORであり、
mは、1~3の範囲であり、前述のように、典型的には2又は3である]を有する「非官能性」として特徴付けられ得る。
【0125】
式RSi(ORの好適なアルコキシシランは、テトラ-、トリ-、又はジアルコキシシラン、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含むが、これらに限定されない。代表的なアルコキシシランとしては、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0126】
好ましくは、アルコキシシランのアルキル基は、1~6個、より好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。本明細書で使用するのに好ましいアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される。本明細書で使用するのに好ましいアルコキシシランは、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)を含む。コーティング組成物の作製方法で利用される有機官能基を有しないアルコキシシランは、Mitsuibishi Chemical Companyから商品名「MS-51」で入手可能な部分的に加水分解されたテトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS)の場合など、部分的に加水分解され得る。
【0127】
存在する場合、(アミン/電子供与体)官能基を有しないアルコキシシラン化合物(例えば、TESO)の量は、典型的には、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%の固形分(すなわち、コーティング組成物の溶媒を除く)である。いくつかの実施形態では、官能基を有しないアルコキシシラン化合物の量は、5、4.5、4、3.5、又は3重量%以下の固形分である。
【0128】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、有機過酸化物の非存在下で、アミンなどの電子供与体化合物と組み合わせたエチレン性不飽和化合物を含む(例えば、UV)硬化系を含む。有機過酸化物は電子受容体であり、したがって、イオン化ハロゲン原子と競合し、それによって、フルオロポリマーの架橋を低減する。いくつかの実施形態において、組成物はまた、架橋を低減する他の電子受容体を実質的に含まない。
【0129】
他の実施形態において、アミノオルガノシランエステル化合物又はエステル等価物は、参照により本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/US2019/036460号に記載されるように、フルオロポリマーを(例えば、UV)硬化及び/又は熱硬化させることができるエチレン性不飽和化合物の非存在下で利用することができる。
【0130】
フルオロポリマー(コーティング溶液)組成物は、少なくとも1種の溶媒を含む。溶媒は、フルオロポリマーを溶解させることができる。溶媒は、典型的には、コーティング溶液組成物の総重量に基づいて、少なくとも約25重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、溶媒は、コーティング溶液組成物の総重量に基づいて、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、又はそれ以上の量で存在する。
【0131】
フルオロポリマー(コーティング溶液)組成物は、典型的には、総コーティング溶液組成物の重量に基づいて、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.03、0.04、0.04、0.05、0.06、0.7、0.8、0.9、又は1重量%のフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、少なくとも2、3、4、又は5重量%のフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、少なくとも6、7、8、9、又は10重量%のフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、典型的には、総コーティング溶液組成物の重量に基づいて、50、45、40、35、30、25、又は20重量%以下のフルオロポリマーを含む。
【0132】
溶媒及びフルオロポリマーの最適な量は、最終用途によって決まり得、様々であり得る。例えば、薄いコーティングを提供するためには、溶媒中の非常に希薄なフルオロポリマー溶液、例えば、0.01重量%~5重量%の量のフルオロポリマーが望ましいことがある。また、スプレーコーティングによる用途には、高粘度の溶液よりも低粘度の組成物が好ましいことがある。溶液中のフルオロポリマーの濃度は、粘度に影響を及ぼし、適宜調整され得る。本開示の利点は、高濃度のフルオロポリマーを含むにもかかわらずなお低粘度の透明な液体組成物をもたらす溶液もまた調製できることである。
【0133】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、液体であり得る。液体は、例えば、室温(20℃+/-2℃)で2,000mPas未満の粘度を有し得る。他の実施形態において、フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、ペーストである。ペーストは、例えば、室温(20℃+/2℃)で2,000~100,000mPasの粘度を有し得る。
【0134】
溶媒は周囲条件で液体であり、典型的には50℃を超える沸点を有する。好ましくは、溶媒は、容易に除去することができるように、200℃未満の沸点を有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100℃未満の沸点を有する。
【0135】
溶媒は、部分フッ素化又は全フッ素化されている。したがって、溶媒は非水性である。様々な部分フッ素化又は全フッ素化溶媒は、ペルフルオロカーボン(perfluorocarbon、PFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)、ペルフルオロポリエーテル(perfluoropolyether、PFPE)、及びヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)、並びにフッ素化ケトン及びフッ素化アルキルアミンを含むことが既知である。
【0136】
いくつかの実施形態において、溶媒は、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100未満の地球温暖化係数(GWP、100年ITH)を有する。GWPは、典型的には、0超であり、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、又は80であり得る。
【0137】
本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)によって規定され、後続の報告において改訂されているが、特定の積分期間(integration time horizon、ITH)にわたる、1キログラムのCO放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
式中、Fは化合物の単位質量当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度による大気中の放射線束の変化)であり、Cは初期時点における化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、xは対象の化合物である。
【0138】
いくつかの実施形態において、溶媒は、部分フッ素化エーテル又は部分フッ素化ポリエーテルを含む。部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、直鎖状、環状、又は分枝状であってもよい。好ましくは、分枝状である。好ましくは、部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、非フッ素化アルキル基及び全フッ素化アルキル基を含み、より好ましくは、全フッ素化アルキル基は分枝状である。
【0139】
一実施形態において、部分フッ素化エーテル又はポリエーテル溶媒は、式:
Rf-O-R
[式中、Rfは、全フッ素化又は部分フッ素化アルキル又は(ポリ)エーテル基であり、Rは、非フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である]に相当する。典型的には、Rfは、1~12個の炭素原子を有し得る。Rfは、第一級、第二級、又は第三級フッ素化又は全フッ素化アルキル残基であってもよい。これは、Rfが第一級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子は2個のフッ素原子を含有し、フッ素化又は全フッ素化アルキル鎖の別の炭素原子に結合していることを意味する。その場合、RfはR -CF-に相当し、このポリエーテルは、一般式:R -CF-O-Rで表すことができる。
【0140】
Rfが第二級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、1個のフッ素原子、並びに部分及び/又は全フッ素化アルキル鎖の2個の炭素原子にも連結しており、Rfは(R )CF-に相当する。このポリエーテルは、(R )CF-O-Rに相当するであろう。
【0141】
Rfが第三級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、部分及び/又は全フッ素化アルキル鎖の3個の炭素原子にも連結しており、Rfは(R )-C-に相当する。このポリエーテルは、(R )-C-ORに相当する。R 、R 、R 、R 、R 、R は、Rfの定義に対応し、エーテル酸素が1個以上介在していてもよい全フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である。これらは、直鎖状又は分枝状又は環状であってもよい。また、ポリエーテルの組み合わせを使用してもよく、第一級、第二級及び/又は第三級アルキル残基の組み合わせもまた使用してもよい。
【0142】
部分フッ素化アルキル基を含む溶媒の例としては、COCHFCF(CAS番号3330-15-2)が挙げられる。
【0143】
Rfが全フッ素化(ポリ)エーテルを含む溶媒の例は、COCF(CF)CFOCHFCF(CAS番号3330-14-1)である。
【0144】
いくつかの実施形態において、部分フッ素化エーテル溶媒は、式:
CpF2p+1-O-CqH2q+1
[式中、qは、1~5の整数、例えば、1、2、3、4、又は5であり、pは、5~11の整数、例えば、5、6、7、8、9、10、又は11である]に相当する。好ましくは、C2p+1は分枝状である。好ましくは、C2p+1は分枝状であり、qは1、2又は3である。
【0145】
代表的な溶媒としては、例えば、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン及び3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ヘキサンが挙げられる。このような溶媒は、例えば、3M Company(St.Paul,MN)からNOVECという商品名で市販されている。
【0146】
フッ素化(例えば、エーテル及びポリエーテル)溶媒は、単独で、又はフルオロケミカル溶媒若しくは非フルオロケミカル溶媒であり得る他の溶媒と組み合わせて使用してもよい。非フルオロケミカル溶媒をフッ素化溶媒と組み合わせると、非フルオロケミカル溶媒の濃度は、典型的には、溶媒の総量に対して、30、25、20、15、10、又は5重量%未満である。代表的な非フルオロケミカル溶媒としては、アセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、及びNMPなどのケトン;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及びメチルテトラヒドロフルフリルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチルなどのエステル;デルタ-バレロラクトン及びガンマ-バレロラクトンなどの環状エステルが挙げられる。
【0147】
いくつかの実施形態において、組成物は、結晶性フルオロポリマー粒子を更に含む。
【0148】
一実施形態において、そのようなコーティング組成物は、結晶性フルオロポリマー粒子を含有するラテックスを、非晶質フルオロポリマー粒子を含有するラテックスとブレンドすることによって調製される。フルオロポリマー粒子は、典型的には、小さい平均粒径、例えば400nm未満を有するが、特に適用されたコーティングが硬化後に擦られる場合にはより大きくなり得る。例えば、フルオロポリマー粒径範囲は、約50~約1000nm、又は約50~約400nm、又は約50~約200nmであり得る。
【0149】
ラテックスは、1~2分間ボルテックス混合するなどの任意の好適な様式によって組み合わせることができる。本方法は、ラテックス粒子の混合物を凝固させることを更に含む。凝固は、例えば、ブレンドラテックスを冷却(例えば、凍結)することによって、又は好適な塩(例えば、塩化マグネシウム)を添加することによって実行され得る。冷却は、半導体製造及び塩の導入が望ましくない場合がある他の用途で使用されるコーティングにとって特に望ましい。本方法は、任意に、非晶質フルオロポリマー粒子及び結晶性フルオロポリマー粒子の凝固混合物を洗浄することを更に含む。洗浄ステップは、混合物から乳化剤又は他の界面活性剤を実質的に除去し得、実質的にアグロメレートしていない乾燥粒子の十分に混合されたブレンドを得るのを助けることができる。いくつかの実施形態において、得られる乾燥粒子混合物の界面活性剤レベルは、例えば、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満であり得る。本方法は、凝固ラテックス混合物を乾燥させることを更に含む。凝固ラテックス混合物は、空気乾燥又はオーブン乾燥などの任意の好適な手段によって乾燥させることができる。一実施形態において、凝固ラテックス混合物は、100℃で1~2時間乾燥させることができる。
【0150】
乾燥した凝固ラテックス混合物を、非晶質フルオロポリマー粒子を溶解するのに好適な溶媒中に溶解させて、非晶質フルオロポリマーの溶液中に結晶性フルオロポリマー粒子の均質な分散体を含有する安定なコーティング組成物を形成することができる。
【0151】
コーティング溶液を利用して、コーティング組成物の層を基材の表面に適用し、コーティング組成物を乾燥させる(すなわち、蒸発によってフッ素化溶媒を除去する)ことによって、基材上にコーティングを提供することができる。
【0152】
いくつかの実施形態において、本方法は、乾燥層を擦り(例えば、バフ研磨、研磨)、それによって、結晶性サブミクロンフルオロポリマー粒子を含有する非晶質フルオロポリマーバインダー層を形成することを更に含む。
【0153】
コーティング表面におけるサブミクロン結晶性フルオロポリマー粒子は、非晶質フルオロポリマーからなる下地コーティング上に配置された薄い連続的又はほぼ連続的なフルオロポリマー表面層を形成する。好ましい実施形態において、薄い結晶性フルオロポリマー層は、下地コーティング上に比較的均一に塗抹され、フルオロポリマー粒子が単にフィブリル化を受けた場合(例えば、配向又は他の延伸によって)より薄く、より均一であるように見える。
【0154】
表面の平均粗さ(Ra)は、平均平面から測定された表面高さ偏差の絶対値の算術平均である。いくつかの実施形態において、Raは、擦る前に少なくとも40又は50nm、最大100nmの範囲である。いくつかの実施形態において、擦った後の表面は、少なくとも10、20、30、40、50、又は60%滑らかである。いくつかの実施形態において、Raは、擦った後は35、30、25、又は20nm未満である。
【0155】
コーティング形成時又はその後にコーティングされた物品が使用されるとき、又は使用されそうなときに、様々な擦り技術を用いることができる。チーズクロス、又は他の適切な織布、不織布、若しくはニット布を使用して、コーティングを数回単に拭き取る又はバフ研磨することは、多くの場合、所望の薄層を形成するのに十分である。当業者は、多くの他の擦り技術が用いられ得ることを理解するであろう。擦りはまた、硬化したコーティングのヘイズを低減することができる。
【0156】
異なる結晶性フルオロポリマー粒子の混合物を含む様々な結晶性フルオロポリマー粒子が用いられ得る。結晶性フルオロポリマー粒子は、典型的には、高い結晶化度、したがって、窒素流及び10℃/分の加熱速度下で、DIN EN ISO 11357-3:2013-04に従って示差走査熱量計によって決定されるような有意な融点(ピーク最大値)を有する。
【0157】
例えば、結晶性フルオロポリマー粒子は、少なくとも100、110、120、又は130℃のTmを有するフルオロポリマーの粒子を含み得る。いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマー粒子は、350、340、330、320、310、又は300℃以下のTmを有するフルオロポリマーの粒子を含み得る。
【0158】
結晶性フルオロポリマー粒子は、典型的には、約50重量パーセントを超えるフッ素含有量を有する。また、フルオロポリマー粒子は、約50~約76重量パーセント、約60~約76重量パーセント、又は約65~約76重量パーセントのフッ素含有量を有するフルオロポリマーの粒子を含み得る。
【0159】
代表的な結晶性フルオロポリマーとしては、例えば、3M(商標)Dyneon(商標)PTFE分散体TF5032Z、TF5033Z、TF5035Z、TF5050Z、TF5135GZ、及びTF5070GZ;並びに3M(商標)Dyneon(商標)Fluorothermoplastic Dispersions PFA6900GZ、PFA6910GZ、FEP6300GZ、及びTHV340Zなどの全フッ素化フルオロポリマーが挙げられる。
【0160】
他の好適なフルオロポリマー粒子は、Asahi Glass、Solvay Solexis、及びDaikin Industriesなどの供給業者から入手可能であり、当業者に周知である。
【0161】
市販の水性分散体は、通常、最大5~10重量%の濃度で非イオン性及び/又はイオン性界面活性剤を含有する。これらの界面活性剤は、凝固ブレンドを洗浄することによって実質的に除去される。1、0.05、又は0.01重量%未満の残留界面活性剤濃度が存在し得る。非イオン性/イオン性界面活性剤の含有量がそれほど高くないため、「重合したままの」水性フルオロポリマーラテックスを使用する方がより便利な場合がよくある。
【0162】
前述のように、結晶性フルオロポリマーは、DSCによって決定され得る融点を有する。結晶化度は、フルオロポリマーの重合モノマーの選択及び濃度に依存する。例えば、PTFEホモポリマー(100%TFE単位を含有する)は、340℃を超える融点(Tm)を有する。不飽和(ペル)フルオロアルキルエーテルなどのコモノマーの添加は、Tmを低減する。例えば、フルオロポリマーが、約3~5重量%のそのようなコモノマーの重合単位を含有する場合、Tmは、約310℃である。更に別の例として、フルオロポリマーが、約15~20重量%のHFPの重合単位を含有する場合、Tmは、約260~270℃である。更に別の例として、フルオロポリマーが、30重量%の(ペル)フルオロアルキルエーテル(例えば、PMVE)又は結晶化度を低減する他のコモノマーの重合単位を含有する場合、フルオロポリマーは、DSCを介して検出可能な融点をもはや有さず、したがって、非晶質であるものとして特徴付けられる。
【0163】
いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマー粒子は、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は約100重量%のTFEの重合単位を含有する。更に、結晶性フルオロポリマー粒子は、典型的には、非晶質フルオロポリマーよりも低い濃度の不飽和(ペル)フルオロアルキルエーテル(例えば、PMVE)を含む。典型的な実施形態において、結晶性フルオロポリマー粒子は、30、25、20、15、10、又は5重量%未満の(ペル)フルオロアルキルエーテル(例えば、PMVE)の重合単位を含有する。
【0164】
いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、及びビニリデンフルオライド(「VDF」、「VF2」)として既知の構成モノマーから形成されたコポリマーである。これらの構成成分のモノマー構造を以下に示す。
TFE:CF=CF (1)
VDF:CH=CF (2)
HFP:CF=CF-CF (3)
【0165】
いくつかの実施形態において、結晶性フルオロポリマーは、様々なモル量で、少なくとも2つの構成モノマー(HFP及びVDF)、及びいくつかの実施形態において、3つの全ての構成モノマーからなる。
【0166】
Tmは、TFE、HFP、及びVDFの量に依存する。例えば、約45重量%のTFEの重合単位、約18重量%のHFPの重合単位、及び約37重量%のVDFの重合単位を含むフルオロポリマーは、約120℃のTmを有する。更に別の例として、約76重量%のTFEの重合単位、約11重量%のHFPの重合単位、及び約13重量%のVDFの重合単位を含むフルオロポリマーは、約240℃のTmを有する。HFP/VDFの重合単位を増加させることにより、TFEの重合単位を低減しながら、フルオロポリマーは非晶質になる。結晶性及び非晶質フルオロポリマーの概要は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(第7版,2013 Wiley-VCH Verlag.10.1002/14356007.a11 393 pub 2)章:Fluoropolymers,Organicに記載される。
【0167】
結晶性フルオロポリマー粒子及び非晶質フルオロポリマー粒子は、様々な比率で組み合わされ得る。例えば、コーティング組成物は、固形分の総重量パーセント(すなわち、溶媒を除く)に基づいて、約5~約95重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約95~約5重量パーセントの非晶質フルオロポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、約10~約75重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約90~約25重量の非晶質フルオロポリマーを含有する。
【0168】
いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、約10~約50重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約90~約50重量パーセントの非晶質フルオロポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、約10~約30重量パーセントの結晶性フルオロポリマー粒子及び約90~約70重量パーセントの非晶質フルオロポリマーを含有する。
【0169】
硬化性フルオロエラストマーを含有する組成物は、当該技術分野において既知の添加剤を更に含有してもよい。例としては、酸受容体が挙げられる。かかる酸受容体は、無機酸受容体、又は無機酸受容体及び有機酸受容体のブレンドであることができる。無機受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、第二リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。有機受容体としては、エポキシ、ステアリン酸ナトリウム、及びシュウ酸マグネシウムが挙げられる。特に好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛が挙げられる。酸受容体のブレンドも同様に使用することができる。酸受容体の量は、概して、使用される酸受容体の性質に依存する。典型的には、使用される酸受容体の量は、フッ素化ポリマー100部当たり0.5~5部である。
【0170】
フルオロポリマー組成物は、安定剤、界面活性剤、紫外線(「UV」)吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、フィラー、及び加工助剤などの、フルオロポリマーの加工及びコンパウンド化において典型的に利用される更なる添加剤を含有してもよいが、但し、意図される使用条件で十分な安定性を有することを条件とする。添加剤の特定の例としては、カーボンブラック、グラファイト、ススなどの炭素粒子が挙げられる。更なる添加剤としては、顔料、例えば酸化鉄、二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。他の添加剤としては、粘土、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、シリカ、ガラス繊維、又は当該技術分野で既知の及び使用されている他の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー組成物は、シリカ、ガラス繊維、熱伝導性粒子、又はそれらの組み合わせを含む。任意の量のシリカ及び/又はガラス繊維及び/又は熱伝導性粒子が存在し得る。いくつかの実施形態において、シリカ及び/又はガラス繊維の量は、組成物の全固形分の少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3重量%である。いくつかの実施形態において、シリカ及び/又はガラス繊維の量は、組成物の全固形分の5、4、3、2、又は1重量%以下である。少濃度のシリカを利用して、コーティング組成物を増粘することができる。更に、少濃度のガラス繊維を使用して、フルオロポリマーフィルムの強度を改善することができる。他の実施形態において、ガラス繊維の量は、組成物の全固形分の少なくとも5、10、15、20、25、35、40、45、又は50重量%であり得る。ガラス繊維の量は、典型的には、55、50、45、40、35、25、20、15、又は10重量%以下である。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、少なくとも100、150、200、250、300、350、400、450、500ミクロンの平均長さを有する。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、少なくとも1、2、又は3mm、典型的には、5又は10mm以下の平均長さを有する。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、少なくとも1、2、3、4、又は5ミクロン、典型的には、10、15、30、又は25ミクロン以下の平均直径を有する。ガラス繊維は、少なくとも3:1、5:1、10:1、又は15:1のアスペクト比を有し得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー組成物は、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子を含まない。他の実施形態において、フルオロポリマー組成物は、(例えば、シリカ及び/又は熱伝導性)無機酸化物粒子を含む。いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ及び/又は熱伝導性)無機酸化物粒子の量は、組成物の全固形分の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50重量%である。いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ及び/又は熱伝導性)無機酸化物粒子の量は、組成物の全固形分の90、85、80、75、70、又は65重量%以下である。シリカ及び熱伝導性粒子の様々な組み合わせを利用することができる。いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ及び熱伝導性)無機酸化物粒子の総量、又は特定の種類のシリカ粒子(例えば、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、グラスバブルズなど)若しくは熱伝導性粒子(例えば、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物)の量は、組成物の全固形分の60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、又は5重量%以下である。誘電特性を更に低減するために、より高い濃度の(例えば、シリカ)無機酸化物粒子が好ましい場合がある。したがって、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子を含む組成物は、架橋フルオロポリマー単独よりも更に低い誘電特性を有し得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子及び/又はガラス繊維は、7、6.5、6、5.5、5、4.5、又は4以下の1GHzでの誘電率を有する。いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子及び/又はガラス繊維は、0.005、004、0.003、0.002、又は0.0015以下の1GHzでの誘電正接を有する。
【0174】
いくつかの実施形態において、組成物は、主にシリカを含む無機酸化物粒子又はガラス繊維を含む。いくつかの実施形態において、シリカの量は、典型的には、少なくとも50、60、70、75、80、85、又は90重量%の無機酸化物粒子又はガラス繊維であり、いくつかの実施形態において、シリカの量は、典型的には、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又はそれ以上(例えば、少なくとも99.5、99.6、又は99.7)重量%のシリカである。より高いシリカ濃度は、典型的には、より低い誘電率を有する。いくつかの実施形態において、(例えば、溶融)シリカ粒子は、少濃度の他の金属/Al、Fe、TiO、KO、CaO、MgO、及びNaOなどの金属酸化物(meta oxide)を更に含み得る。いくつかの実施形態において、そのような金属/金属酸化物(例えば、Al、CaO、及びMgO)の総量は、独立して、30、25、20、15、又は10重量%以下である。いくつかの実施形態において、無機酸化物粒子又はガラス繊維は、Bを含み得る。Bの量は、最大25重量%の無機酸化物粒子又はガラス繊維の範囲であり得る。他の実施形態において、(例えば、ヒュームド)シリカ粒子は、少濃度のCr、Cu、Li、Mg、Ni、P、及びZrなどの追加の金属/金属酸化物を更に含み得る。いくつかの実施形態において、そのような金属又は金属酸化物の総量は、5、4、3、2、又は1重量%以下である。いくつかの実施形態において、シリカは、石英として記載されてよい。非シリカ金属又は金属酸化物の量は、誘導結合プラズマ質量分析の使用によって決定することができる。(例えば、シリカ)無機酸化物粒子は、典型的には、フッ化水素酸中に溶解され、低温でHSiFとして蒸留される。
【0175】
いくつかの実施形態において、無機粒子は、「アグロメレート」として特徴付けられ得、電荷又は極性によって一緒に保持された粒子などの一次粒子間の弱い会合を意味する。アグロメレートは、典型的には、コーティング溶液の調製中に一級粒子などのより小さな実体に物理的に分解される。他の実施形態において、無機粒子は、「アグリゲート」として特徴付けられ得、焼結、電気アーク、火炎加水分解、又はプラズマなどのプロセスによって調製された共有結合粒子又は熱結合粒子などの強力な結合粒子又は融合粒子を意味する。アグリゲートは、典型的には、コーティング溶液の調製中に一級粒子などのより小さな実体に物理的に分解されない。「一次粒径」は、単一の(アグリゲートしていない、アグロメレートしていない)粒子の平均直径を指す。
【0176】
(例えば、シリカ)粒子は、球形、楕円形、直鎖状、又は分枝状などの様々な形状を有し得る。溶融及びヒュームドシリカアグリゲートは、より一般的には、分枝状である。アグリゲートサイズは、一般的に、別個の部分の一次粒径の少なくとも10倍である。
【0177】
他の実施形態において、(例えば、シリカ)粒子は、グラスバブルズとして特徴付けられ得る。グラスバブルは、ソーダライムホウケイ酸ガラスから調製され得る。本実施形態において、ガラスは、約70パーセントのシリカ(二酸化ケイ素)と、15パーセントのソーダ(酸化ナトリウム)と、9パーセントのライム(酸化カルシウム)と、更に少量の様々な他の化合物とを含有し得る。
【0178】
いくつかの実施形態において、無機酸化物粒子は、1ミクロン未満の平均粒径又は中央粒径を有する(例えば、シリカ)ナノ粒子として特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子の平均粒径又は中央粒径は、500又は750nmである。他の実施形態において、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子の平均粒径は、少なくとも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ミクロンであり得る。いくつかの実施形態において、平均粒径は、30、25、20、15、又は10ミクロン以下である。いくつかの実施形態において、組成物は、100ナノメートル以下の粒子を有する(例えば、コロイド状シリカ)ナノ粒子をほとんど又は全く含まない。(例えば、コロイド状シリカ)ナノ粒子の濃度は、典型的には、(10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1重量%)未満である。無機酸化物(例えば、シリカ粒子)は、単一のピークを有する粒径の正規分布、又は2つ以上のピークを有する粒子の分布を含み得る。
【0179】
いくつかの実施形態において、1重量%以下の(例えば、シリカ)無機酸化物粒子は、3又は4ミクロン以上の粒径を有する。いくつかの実施形態において、1重量%以下の(例えば、シリカ)無機酸化物粒子は、5又は10ミクロン以上の粒径を有する。他の実施形態において、5、4、3、2、又は1重量%以下の粒子は、45ミクロン超の粒径を有する。いくつかの実施形態において、1重量%以下の粒子は、75~150ミクロンの範囲の粒径を有する。
【0180】
いくつかの実施形態において、平均粒径又は中央粒径は、別個の非アグリゲート、非アグロメレート粒子の平均直径又は中央直径を指す「一次粒径」を指す。例えば、コロイド状シリカ又はグラスバブルズの粒径は、典型的には、好ましい実施形態における平均粒径又は中央粒径であり、平均粒径又は中央粒径は、アグリゲートの平均直径又は中央直径を指す。無機粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡を使用して測定することができる。フルオロポリマーコーティング溶液の粒径は、動的光散乱法を使用して測定することができる。
【0181】
いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ)無機粒子は、2.18~2.20g/ccの範囲の比重を有する。
【0182】
ヒュームド及び溶融(例えば、シリカ)粒子の場合など、アグリゲートした粒子は、同じサイズの一次粒子よりも小さい表面積を有し得る。いくつかの実施形態において、(例えば、シリカ)粒子は、約50~500m/gの範囲のBET表面積を有する。いくつかの実施形態において、BET表面積は450、400、350、300、250、200、150、又は100m/g未満である。
【0183】
いくつかの実施形態において、無機ナノ粒子は、コロイド状シリカとして特徴付けられ得る。未修飾コロイド状シリカナノ粒子は、一般的に、ナノ粒子表面上にヒドロキシル官能基又はシラノール官能基を含み、典型的には、親水性として特徴付けられることが理解される。
【0184】
いくつかの実施形態において、(例えば、シリカアグリゲート)無機粒子及び特にコロイド状シリカナノ粒子は、疎水性表面処理で表面処理される。一般的な疎水性表面処理には、アルコキシルシラン(alkoxylsilane)(例えば、オクタデシルトリエトキシシラン)、シラザン、又はシロキサンなどの化合物が含まれる。様々な疎水性ヒュームドシリカは、AEROSIL(商標)、Evonik、及び様々な他の供給業者から市販されている。代表的な疎水性ヒュームドシリカとしては、AEROSIL(商標)グレードR972、R805、RX300、及びNX90Sが挙げられる。
【0185】
いくつかの実施形態において、(例えば、シリカアグリゲート)無機粒子は、フッ素化アルコキシシランシラン化合物で表面処理される。そのような化合物は、典型的には、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロポリエーテル基を含む。ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロポリエーテル基は、典型的には、4、5、6、7、8個以下の炭素原子を有する。アルコキシシラン基は、アルキレン、ウレタン、及び-SON(Me)-を含む様々な二価結合基でアルコキシシラン基に結合することができる。いくつかの代表的なフッ素化アルコキシシランは、米国特許第5274159号及び国際公開第2011/043973号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。他のフッ素化アルコキシシランは、市販されている。
【0186】
フルオロポリマー組成物は、ポリマー、少なくとも1つのエチレン性不飽和硬化剤を含む硬化剤、電子供与性基を有する少なくとも1つの化合物、任意による添加剤、及びフッ素化溶媒を混合することによって調製され得る。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、最初にフッ素化溶媒に溶解され、硬化剤及び電子供与体化合物を含む他の添加剤がその後添加される。
【0187】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマー組成物は、熱伝導性粒子を含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、熱伝導性無機粒子は、好ましくは、非導電性材料である。好適な非導電性熱伝導性材料としては、金属酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、ケイ酸塩、ホウ化物、炭化物、及び窒化物などのセラミックスが挙げられる。好適なセラミックフィラーとしては、例えば、酸化ケイ素、酸化亜鉛、アルミナ三水和物(ATH)(水和アルミナ、酸化アルミニウム、及び三水酸化アルミニウムとしても既知)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び酸化ベリリウムが挙げられる。他の熱伝導性フィラーとしては、グラファイトなどの炭素系材料、並びにアルミニウム及び銅などの金属が挙げられる。異なる熱伝導性材料の組み合わせを利用することができる。このような材料は、導電性ではなく、すなわち、0eVを超える電子バンドギャップ、いくつかの実施形態において、少なくとも1、2、3、4、又は5eVである電子バンドギャップを有する。いくつかの実施形態において、このような材料は、15又は20eV以下の電子バンドギャップを有する。本実施形態において、組成物は、任意に、0eV未満又は20eVを超える電子バンドギャップを有する、低濃度の熱伝導性粒子を更に含んでもよい。
【0189】
好ましい実施形態において、熱伝導性粒子は、>10W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。いくつかの代表的な無機材料の熱伝導率は、以下の表に記載される。
【表2】
【0190】
いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも15又は20W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。他の実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも25又は30W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。更に他の実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも50、75、又は100W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。更に他の実施形態において、熱伝導性粒子は、少なくとも150W/m・Kのバルク熱伝導率を有する材料を含む。典型的な実施形態において、熱伝導性粒子は、約350又は300W/m・K以下のバルク熱伝導率を有する材料を含む。
【0191】
熱伝導性粒子は、多数の形状、例えば、不規則又は板状であり得る球体及び針状形状で利用可能である。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子は、結晶であり、典型的には、幾何学的形状を有する。例えば、窒化ホウ素六方晶は、Momentiveから市販されている。更に、アルミナ三水和物は、六角形のプレートレットとして記載される。異なる形状を有する粒子の組み合わせを利用することができる。熱伝導性粒子は、概ね、100:1、75:1、又は50:1未満のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、熱伝導性粒子は、3:1、2.5:1、2:1、又は1.5:1未満のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、概ね対称(例えば、球形、半球形)粒子が用いられ得る。
【0192】
窒化ホウ素粒子は、3Mから「3M(商標)Boron Nitride Cooling Fillers」として市販されている。
【0193】
いくつかの実施形態において、窒化ホウ素粒子は、少なくとも0.05、0.01、0.15、0.03g/cm、最大約0.60、0.70、又は0.80g/cmの範囲のかさ密度を有する。窒化ホウ素粒子の表面積は、<25、<20、<10、<5、又は<3m/gであり得る。表面積は、典型的には、少なくとも1又は2m/gである。
【0194】
いくつかの実施形態において、窒化ホウ素(例えば、プレートレット)粒子の粒径d(0.1)は、約0.5~5ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態において、窒化ホウ素(例えば、プレートレット)粒子の粒径d(0.9)は、少なくとも5、最大20、25、30、35、40、45、又は50ミクロンの範囲である。
【0195】
フッ素化溶媒を含む本明細書に記載のコーティング組成物は、「安定」であり、コーティング組成物が密封容器内で室温で少なくとも24時間保存されたときに均質なままであることを意味する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、1週間以上安定である。「均質」とは、新たに振盪し、100mLのガラス容器に入れ、室温で少なくとも4時間静置したときに、可視的に分離された沈殿物又は可視的な分離層を示さないコーティング組成物を指す。
【0196】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、最初に他の固体成分と、特に本明細書に記載の電子供与体(例えば、アミン)化合物及びエチレン性不飽和硬化剤、並びに存在する場合(例えば、シリカ)無機粒子と組み合わされる。フルオロポリマー及びアミン化合物は、従来のゴム加工設備において組み合わせることができ、固体混合物、すなわち、当該技術分野において「コンパウンド」とも呼ばれる追加の成分を含有する固体ポリマーを提供することができる。典型的な設備は、ゴム用ロール機、バンバリーミキサなどの密閉式ミキサ、及び混合押出成形機が挙げられる。混合中に、構成成分及び添加剤を、得られるフッ素化ポリマー「コンパウンド」又はポリマーシート全体にわたって均一に分散させる。次いで、コンパウンドを、好ましくは、例えばより小さい小片に切り出すことによって微粉砕し、その後溶媒中に溶解させる。
【0197】
本明細書に記載のフルオロポリマーコーティング溶液組成物は、基材をコーティングするのに好適である。フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、溶媒及びフルオロポリマーの含有量並びに任意による添加剤の有無に応じて、様々な粘度を有するように配合され得る。フルオロポリマーコーティング溶液組成物は、典型的には、フルオロポリマーの溶液を含有するか又はその溶液であり、液体又はペーストの形態であり得る。とはいうものの、組成物は、分散又は懸濁した材料を含有することがあるが、これらの材料は、好ましくは、添加剤であり、本明細書に記載されている種類のフルオロポリマーではない。好ましくは、組成物は液体であり、より好ましくは、本明細書に記載の溶媒中に溶解した本明細書に記載の1種以上のフルオロポリマーを含有する溶液である。
【0198】
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、基材をコーティングするのに好適であり、(溶媒含有量によって)粘度を調整して、スプレーコーティング又は印刷(これらに限定されないが例えば、インク印刷、3D印刷、スクリーン印刷)、塗装、含浸、ローラーコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、及び溶媒キャスティングが挙げられるがこれらに限定されない、様々なコーティング方法によって適用可能にすることができる。
【0199】
コーティングされた基材及び物品は、フルオロポリマー組成物を基材に適用し、溶媒を除去することによって調製することができる。硬化は、溶媒を除去すると、溶媒を除去する間に、又は溶媒を除去した後に起こり得る。溶媒は、例えば、蒸発、乾燥のために、又は溶媒を気化させることによって、減少又は完全に除去され得る。溶媒の除去後、組成物は「乾燥」として特徴付けられ得る。
【0200】
本明細書に記載の架橋フルオロポリマーの作製方法は、フルオロポリマーを(例えば、UV又は電子線)化学線照射で硬化させることを含む。フルオロポリマー組成物、基材、又はその両方は、硬化放射線に対して透過性である。いくつかの実施形態において、UV硬化と熱(例えば、ポスト)硬化との組み合わせが利用される。硬化は、硬化フルオロエラストマーを形成するのに有効な温度でかつ有効な時間行われる。条件の最適化は、フルオロエラストマーをその機械的特性及び物理的特性に関して検査することによって試験することができる。硬化は、加圧下で又は加圧なしでオーブン内で実施され得る。硬化プロセスを確実に完全に終了させるために、高温及び又は高圧で後硬化サイクルを適用してもよい。硬化条件は、使用される硬化系によって決まる。
【0201】
いくつかの実施形態において、組成物は、UV硬化によって硬化される。本明細書に記載の組成物のフルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に結合したビニリデンフルオライド(VDF)(すなわち、CH=CF)又はVDFの重合単位をほとんど又は全く含まない。VDFの重合単位は、米国特許出願公開第2006/0147723号に記載されるように、脱フッ化水素化(すなわち、HF脱離反応)を受けることができる。反応は、フルオロポリマーに含有されるHFP基に結合した重合VDF基の数によって制限される。次いで、脱フッ化水素化の結果として生成された二重結合は、アミノアルコキシシランと(マイケル付加を介して)反応し、それによって、フッ素化ペンダントアルコキシシラン基をフルオロポリマー主鎖上にグラフト化することができる。UV光で照射されると、そのようなペンデント基は、多官能性(メタ)アクリレート化合物とフリーラジカル共重合することができる。
【0202】
しかしながら、本明細書に記載の組成物のフルオロポリマーが、HFP基に結合したVDF(すなわち、CH=CF)の重合単位をほとんど又は全く含まないため、フルオロポリマーは、直前に記載された反応スキームの影響を受けない。以下の実施例によって明らかなように、アミン化合物単独は、フリーラジカル光開始剤の非存在下でUV硬化を開始することができる。フリーラジカル光開始剤を含めることは、典型的には、フルオロポリマーの架橋を増加させない。この結果は、フルオロポリマーがフリーラジカル機構を介して架橋されないことを示唆している。
【0203】
従来のフリーラジカル開始剤は必要ではないが、組成物は、任意に光開始剤を更に含み得る。他の実施形態において、組成物は、そのようなフリーラジカル光開始剤を含むフリーラジカル開始剤を実質的に含まない。
【0204】
いくつかの実施形態において、UV線は、少なくとも190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、又は240nmの波長で十分な強度を有し得る。いくつかの実施形態において、UV線は、350nm、340nm、330nm、320nm、310nm、又は290nm以下の波長で十分な強度を有し得る。いくつかの実施形態において、(例えば、UV)化学線は、(例えば、アミン)電子供与体の存在下で、波長誘導単一電子移動反応がC-I結合間で起こり得るように、270~290nmの範囲の波長で十分な強度を有する。いくつかの実施形態において、UV線は、(例えば、アミン)電子供与体の存在下で、波長誘導単一電子移動反応がC-Cl結合又はC-Br結合間で起こり得るように、240nm未満(150~200nm)の範囲の波長で十分な強度を有する。
【0205】
UV光源は、様々な種類とすることができる。ブラックライトなどの低強度光源により、概して、0.1又は0.5mW/cm(ミリワット/平方センチメートル)から、10mW/cmの範囲の強度が得られる(米国国立標準技術研究所(United States National Institute of Standards and Technology)により承認された、例えば、UVIMAP UM 365 L-S線量計(Electronic Instrumentation&Technology,Inc.,Sterling,VA製)により測定)。高光度光源は、概ね、10、15又は20mW/cm超の強度を、最大450mW/cm以上の範囲の強度をもたらす。いくつかの実施形態において、高強度光源は、最大500、600、700、800、900又は1000mW/cmの強度をもたらす。エチレン性不飽和モノマーを重合するためのUV光は、発光ダイオード(LED)、蛍光ブラックライト、キセノン-アークランプ並びに中及び低圧水銀ランプ(殺菌ランプを含む)のようなアークランプ、マイクロ波駆動ランプ、レーザー、又はそれらの組み合わせなどの様々な光源によって提供することができる。組成物はまた、FusionUVSystemsInc.から入手可能なより高い強度光源で重合することもできる。紫外線又は青色光を発するランプが典型的に好ましい。重合及び硬化のためのUV曝露時間は、使用される光源の強度に応じて変化し得る。例えば、低強度光源を用いた完全硬化は、約30~300秒の範囲の曝露時間で達成することができるが、高強度光源による完全硬化は、約5~20秒の範囲のより短い曝露時間で達成することができる。高強度光源による部分硬化は、典型的には、約2秒~約5又は10秒の範囲の曝露時間で達成することができる。いくつかの実施形態において、後硬化は、170℃~250℃の温度で0.1~24時間にわたって実施することができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、フルオロポリマーの後硬化は、任意に、より低い温度で実施され得る。より低い温度での後硬化は、感熱性基材をコーティングするのに適している。いくつかの実施形態において、後硬化は、100、110、120、130、135、又は140℃から最大170℃までの範囲の温度で5~10分間から24時間行われる。いくつかの実施形態において、温度は、169、168、167、166、165、164、163、162、161、又は160℃以下である。いくつかの実施形態において、温度は、135、130、125、又は120℃以下である。好ましい実施形態において、硬化後、フルオロポリマーは、少なくとも80、85、90、95、又は100重量%超を、95重量%のフッ素化溶媒中に5グラムのフルオロポリマーの重量比で、フッ素化溶媒(例えば、3-エトキシペルフルオロ2-メチルヘキサン)中に(25℃で、12時間以内で)溶解できないように、十分に架橋される。
【0207】
組成物は、基材の含浸、基材上への印刷(例えば、スクリーン印刷)、又は基材のコーティング、例えば、これらに限定はされないがスプレーコーティング、塗装ディップコーティング、ローラーコーティング、バーコーティング、溶媒キャスティング、ペーストコーティングなど、に使用することができる。基材は、有機、無機、又はそれらの組み合わせであってもよい。好適な基材は、任意の固体表面を含むことができ、とりわけ、ガラス、プラスチック(例えば、ポリカーボネート)、複合材料、金属(ステンレス鋼、アルミニウム、炭素鋼)、合金、木材、紙から選択される基材を含み得る。コーティングは、組成物が顔料、例えば、二酸化チタン又はグラファイト若しくはススのような黒色フィラーを含有する場合は着色されていてもよく、又は顔料又は黒色フィラーが存在しない場合は無色であってもよい。
【0208】
コーティング前に基材の表面を前処理するために、接着剤(bonding agent)及びプライマーを使用してもよい。例えば、金属表面へのコーティングの接着は、接着剤又はプライマーを適用することによって改善させることができる。例としては、市販のプライマー又は接着剤、例えば、CHEMLOKという商品名で市販されているものが挙げられる。
【0209】
本明細書に記載の組成物のコーティングを含有する物品としては、含浸された布地、例えば保護服が挙げられるが、これらに限定されない。含浸された布地の別の例は、本明細書に記載の(例えば、シリカ含有)フルオロポリマー組成物を含浸させたグラススクリムである。布地は織布又は不織布を含み得る。他の物品としては、腐食性環境に曝される物品、例えば、化学処理において使用されるシール及びシール部品並びにバルブ、例えば、これらに限定はされないが化学反応器、型、例えばエッチング用の化学処理設備の部品若しくはライニング、又は特に腐食性物質若しくは炭化水素燃料若しくは溶媒;燃焼機関、電極、燃料輸送、酸及び塩基用容器並びに酸及び塩基用輸送システム、電気セル、燃料セル、電解セル用のバルブ、ポンプ及び管類並びにエッチングにおいて又はそのために使用される物品が挙げられる。
【0210】
本明細書に記載のコーティング組成物の利点は、コーティング組成物が厚い又は薄いコーティング又はフルオロポリマーシートの調製に使用可能であることである。いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したフルオロポリマーは、0.1ミクロン~1又は2ミルの厚さを有する。いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したフルオロポリマーの厚さは、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、又は0.6ミクロンである。いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したフルオロポリマーの厚さは、少なくとも1、2、3、4、5、又は6ミクロンである。
【0211】
典型的な実施形態において、乾燥及び硬化した(すなわち、架橋)組成物は、低誘電率(Dk)、典型的には、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90未満を有する。いくつかの実施形態において、誘電率は、少なくとも2.02、2.03、2.04、2.05である。乾燥及び硬化した(すなわち、架橋)組成物は、低誘電損失、典型的には、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001、0.0009、0.0008、0.0007、0.0006、0.0005、0.0004、0.0003未満を有する。いくつかの実施形態において、誘電損失は、少なくとも0.00022、0.00023、0.00024、0.00025である。
【0212】
乾燥及び硬化したコーティングは、国際出願PCT/US2019/036460号に記載の熱湯試験によると、2、及び好ましくは3又は4を示すコーティングによる証拠として、様々な基材(例えば、ガラス、ポリカーボネート)への良好な接着性を示し得る。好ましい実施形態において、乾燥及び硬化したコーティングは、以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の摩耗試験によると、2、及び好ましくは、3又は4を示すコーティングによる証拠として耐久性がある。いくつかの実施形態において、熱湯試験に供された後の摩耗試験によると、コーティングは耐久性がある。
【0213】
乾燥及び硬化したコーティングは、銅などの金属に対する良好な接着性を示し得る。例えば、いくつかの実施形態において、銅箔へのT型剥離は、実施例に記載の試験方法によって決定されるように、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、又は0.6N/mmから少なくとも1N/mm(すなわち、10N/cm)、1.5N/mm、2N/mm、又は2.5N/mmまでの範囲である。
【0214】
いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したコーティングは、以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の黒油性マーカー耐性試験、すなわち、マーカー流体ビーズに従って、良好な疎水性及び疎油性の特性を有し、ペーパータオル又は布で簡単に取り除くことができる。
【0215】
いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したコーティングは、接触角測定によって決定されるように(実施例に記載の試験方法に従って決定されるように)、良好な疎水性及び疎油性を有する。いくつかの実施形態において、水との静的、前進、及び/又は後退接触角は、少なくとも100、105、110、115、120、125、及び典型的には、130度以下であり得る。いくつかの実施形態において、ヘキサデカンとの前進及び/又は後退接触角は、少なくとも60、65、70、又は75度であり得る。いくつかの実施形態において、コーティングは、(以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の試験方法に従って決定されるように)熱湯試験に供された後、又は熱湯試験及び摩耗試験に供された後に、そのような接触角を示す。
【0216】
いくつかの実施形態において、以前に引用された国際出願PCT/US2019/036460号に記載の酸/塩基腐食試験に従って、乾燥及び硬化したコーティングは、良好な腐食耐性を示す(すなわち、腐食しない)。
【0217】
いくつかの実施形態において、乾燥及び硬化したコーティング(例えば、フィルム)は、実施例に記載の水分取り込み試験方法によって決定されるように、低吸水率、例えば、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1未満を示す。
【0218】
いくつかの実施形態において、組成物は、実施例に記載の試験方法によって決定されるように、例えば、150、100、50、40、30、20、又は10未満の低い熱膨張係数を示す。いくつかの断熱層の使用では、熱膨張係数はそれほど重要ではなく、最大175、200、又は225の範囲であり得る。
【0219】
本明細書で使用するとき、「部分フッ素化アルキル」という用語は、炭素鎖に結合した全てではないがいくつかの水素がフッ素で置換されているアルキル基を意味する。例えば、FHC-基又はFHC-基は、部分フッ素化メチル基である。残りの水素原子が他の原子、例えば塩素、ヨウ素及び/又は臭素などの他のハロゲン原子で部分的又は完全に置換されているアルキル基もまた、少なくとも1つの水素がフッ素で置換されている限り、「部分フッ素化アルキル」という用語に包含される。例えば、式FClC-又はFHClC-の残基もまた、部分フッ素化アルキル残基である。
【0220】
「部分フッ素化エーテル」は、少なくとも1つの部分フッ素化基を含有するエーテル、又は1つ以上の全フッ素化基及び少なくとも1つの非フッ素化基若しくは少なくとも1つの部分フッ素化基を含有するエーテルである。例えば、FHC-O-CH、FC-O-CH、FHC-O-CFH、及びFHC-O-CFが、部分フッ素化エーテルの例である。残りの水素原子が他の原子、例えば塩素、ヨウ素及び/又は臭素などの他のハロゲン原子で部分的又は完全に置換されているエーテル基もまた、少なくとも1つの水素がフッ素で置換されている限り、「部分フッ素化アルキル」という用語に包含される。例えば、式FClC-O-CF又はFHClC-O-CFのエーテルもまた、部分フッ素化エーテルである。
【0221】
本明細書では、「全フッ素化(perfluorinated)アルキル」又は「ペルフルオロ(perfluoro)アルキル」という用語を使用して、そのアルキル鎖に結合した全ての水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基を表す。例えば、FC-は、ペルフルオロメチル基を表す。
【0222】
「全フッ素化エーテル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されているエーテルである。全フッ素化エーテルの例は、FC-O-CFである。
【0223】
以下の実施例は、記載されている特定の実施例及び実施形態に本開示を限定することを意図せずに、本開示を更に説明するために提供するものである。
【実施例
【0224】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。
【表3-1】
【表3-2】
【0225】
フッ素化エーテルジエンの調製
米国特許第5384374号に記載されるように、1500の平均分子量及び1.8の平均ヒドロキシル官能性を有するフッ素化エーテルジオール(HO-CH-CF-O-(CFCF)CF-CH-OH(0.16mol))を、ナトリウムメトキシド(0.34mol)と反応させ、その後、臭化アリル(40g、0.36mol)と、60℃で冷却管を有する250mLの3口フラスコ内で一晩反応させた。反応後、反応混合物を水で洗浄し、淡黄色の液体をrotavaporの前にCaCl上で乾燥させて、臭化アリルの残留物を全て除去した。
【0226】
基本手順-多官能性アルケン/アミノシランエステル光架橋剤を有するペルフルオロエラストマーPFEコーティング溶液の調製:
ペルフルオロエラストマーPFE-1及びPFE-2溶液を、ガムを別々に小片に切断し、それらをHFE溶媒(HFE-7300又はHFE-7500)に添加して、HFE溶液中に10重量%のPFE(10gのPFE及び90gのHFE)を作製することによって調製した。容器をPTFEテープ及びパラフィンフィルムで密封した。溶液を一晩(約12時間)激しい振盪に供して、完全に均質にした。
【0227】
全てのアミノシラン、開始剤をHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成した(例えば、0.5gのTAICを9.5gのHFEに添加して、バイアル瓶中に5重量%の懸濁液を形成した)。PFE溶液に、アミン(例えば、アミノシラン)、アルケン、及び任意に光開始剤を添加した。例えば、試料(5%TAIC、1%APES、2%TMOS)を、0.3157gのTAIC懸濁液(HFE中5重量%)、0.0606gのAPES懸濁液(HFE中5重量%)、及び0.1224gのTMOS溶液(7500中5重量%)を3gのPFE-1溶液(PFE-1中10重量%)に添加することによって調製した。多くのシランは、HFE中の溶液ではなく、懸濁液を形成する。そのような懸濁液を、1000rpmで10秒間ボルテックスシェーカーを使用して均質化して、十分に分散したスラリーを形成した後、PFE-HFE溶液に添加した。また、式の百分率(例えば、5%、3%、1%)は、PFEの固形分に基づく質量分率であった(例えば、PFE-1+5%APES+2%1173は次を意味する:PFE-1/APESの固形分=95:5及びPFE-1/1173の固形分=98:2)。
【0228】
基本手順-フッ素化アルケン/アミノシランエステル光架橋剤を有するペルフルオロエラストマーPFEコーティング溶液の調製:
上記と同様の方法で、ペルフルオロエラストマーPFE-1及びPFE-2溶液を、ガムを別々に小片に切断し、それらをHFE溶媒に入れて、ガラスジャー内にHFE中のPFEの10重量%溶液を得ることによって調製した。ガラスジャーをテフロンテープ及びパラフィンフィルムで密封した。完全に均質になるまで溶液を一晩(約12時間)激しい振盪に供した。ほとんどのアルケンをHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成した。アルケンとHFE溶液との間に急速な相分離がある場合、及びアルケン試料が室温で固体であり、HFE-7500中に完全に分散しない場合、代わりにアルケンをメタノール又はメトキシプロパノール中に溶解した。これらのアルケンとしては、4,4’-ビス((1,2,2-トリフルオロビニル)オキシ)-1,1’-ビフェニル(メタノール中に溶解)、クロロ-1,2-フェニレンジアクリレート(メタノール中に溶解)、ペルクロロ-1,2-フェニレンジアクリレート(メトキシプロパノール中に溶解)、2,4,6-トリブロモベンゼン-1,3,5-トリイルトリアクリレート(メトキシプロパノール中に溶解))が挙げられる。アルケンに加えて、全てのシラン及び光開始剤をHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成した。PFEに、アルケン又は多官能性アルケン、及び表に示されるように、シラン及び開始剤を含む他の化学物質を添加した。
【0229】
25GHzでのスプリットポスト誘電体共振器測定
全てのスプリットポスト誘電体共振器測定は、25GHzの周波数近くで、標準IEC61189-2-721に従って行った。各薄材料又はフィルムを2つの固定誘電体共振器間に挿入した。ポストの共振周波数及び品質係数は、試験体の存在によって影響され、これにより、複素誘電率(誘電率及び誘電損失)の直接計算が可能になる。我々の測定で使用されるスプリット誘電体共振器固定具の幾何学形状は、QWED社(Warsaw Poland)によって設計された。この25GHz共振器は、方位角電界成分のみを有するTE01dモードで動作するため、電界は誘電体界面で連続したままになる。スプリットポスト誘電体共振器は、試験体の平面内の誘電率成分を測定する。これらの誘電体共振器測定の各々において、ループ結合(臨界結合された)を使用した。この25GHzスプリットポスト共振器測定システムを、Keysight VNA(Vector Network Analyzer Model PNA 8364C 10MHz~50GHz)と組み合わせた。計算は、QWEDの商業用分析スプリットポスト共振器ソフトウェアを用いて行い、25GHzでの各試験体の複素誘電率を決定するための強力な測定ツールを提供した。
【0230】
熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)測定
TA InstrumentからのThermomechanical Analyzer (TMA)TMA Q400を使用してCTE測定を実施した。フィルム試料を長方形形状(4.5mm×24mm)に切断し、テンションクランプに取り付けた。試料を、3.00℃/分の傾斜率を使用して少なくとも150℃に加熱し、次いで、同じ速度で室温に冷却した。次いで、試料を再び目標温度に加熱した。第2のサイクルから計算されたCTEを報告した。
【0231】
水分取り込み測定
吸水率測定は、TA Instrumentからの蒸気吸収分析装置Q500SAを使用して行った。試料を、プログラム可能なチャンバ内に位置する石英パンに置いた。各測定で約5mgの試料を使用した。重量が20分を超えて変化しなくなるまで、最初に試料をチャンバ内で乾燥した。次いで、重量平衡が達成されるまで、試料を60℃及び湿度50%の条件下に置いた。試料の重量増加/元の重量に基づいて、吸水率値を計算した。
【0232】
T型剥離測定
フィルムは、24℃で20分間、Cu箔を積層した。積層された試料を、T型剥離測定のために0.5インチ幅のストリップに切断した。ASTM D1876標準法を使用してINSTRON電気機械ユニバーサル試験機を使用して、測定を実施した。
【0233】
静的接触角
静的接触角測定は、KRUSS(Germany)からの液滴形状分析装置DSA100上で脱イオン水を使用して行った。報告された値は、液滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定の平均であった。静的測定では、液滴容積は5μLであった。
【0234】
表2.硬化したフルオロポリマーの架橋収率
架橋収率研究では、3gの溶液をPETフィルム上に堆積させることによって試料を調製した。コーティングされたフィルムを周囲温度で2時間及び50℃で20分間乾燥した。試料を完全に乾燥した後、PETフィルム試料を木製又はステンレス鋼のボードに置き、単一の500ワットのHバルブ又は500ワットのDバルブUVランプ下で、(表に示されるように)毎分30フィートの速度で5~10回の実行で硬化した。UV硬化後、多くの試料もまた、(表に示されるように)オーブン内で120℃で5分間熱硬化した。同じ試料のいくつかもまた、UV硬化なしで熱硬化条件に供した。
【0235】
UV硬化した試料(厚さ1~2ミル)をPETフィルムから剥離し、秤量し、次いで、バイアル瓶内でHFEで溶解した。硬化したPFE試料/HFE溶媒の質量比は、5/95であった。バイアル瓶を一晩(約12時間)激しい振盪に供した後、以下の表に記載されるように、任意の観察を記録した。HFE溶液中の沈殿した試料(すなわち、架橋PFE)を収集し、乾燥し、秤量した。場合によっては、ゲル(すなわち、架橋PFEがより少ない)を収集し、乾燥し、秤量した。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0236】
分散した結晶性フルオロポリマー粒子を有するフルオロポリマー溶液の調製:
ペルフルオロエラストマーラテックスPFE-1を、表11に記載の重量比で、それぞれ、結晶性フルオロポリマーラテックスPFA、PTFEと、又はTHVと混合した。溶液を、1~2分間ボルテックス混合した。その後、十分に混合された溶液を-20℃の温度で4時間凍結し、次いで、取り出して、温水で解凍した。解凍後、沈殿物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄した。得られた固形分を、100℃のオーブン内で1~2時間乾燥した。乾燥した凝固固形分をHFEと混合して、HFE中の10重量%の溶液を形成した。TAIC及びAPSもまた、表11に示されるように、HFE組成物に添加した。各組成物をシェーカー内に3~4時間置いて、安定して十分に分散した均質組成物を得た。
【0237】
3gの溶液をPETフィルム上に堆積させることによって試料を調製した。コーティングされたフィルムを周囲温度で2時間及び50℃で20分間乾燥した。試料を完全に乾燥した後、PETフィルム試料を木製又はステンレス鋼のボードに置き、単一の500ワットのHバルブ下で、(表に示されるように)毎分30フィートの速度で5~10回の実行で硬化した。UV硬化後、いくつかの試料もまた、(表11に示されるように)オーブン内で120℃で5分間熱硬化した。
【0238】
UV硬化した試料(厚さ1~2ミル)をPETフィルムから剥離し、秤量し、次いで、バイアル瓶内でHFEで溶解した。硬化したPFE試料/HFE溶媒の質量比は、5/95であった。バイアル瓶を一晩(約12時間)激しい振盪に供した後、以下の表に記載されるように、任意の観察を記録した。HFE溶液中の沈殿した試料(すなわち、架橋PFE)を収集し、乾燥し、秤量した。
【表13】
【0239】
表12.PFE-1のUV硬化に対するアミノシランエステルの効果
ペルフルオロエラストマーPFE-1溶液を、ガムを別々に小片に切断し、それらをHFE溶媒(HFE-7300又はHFE-7500)に添加して、上記のように、HFE溶液中に10重量%のPFE(10gのPFE及び90gのHFE)を作製することによって調製した。アミノシラン、アルコキシシラン、及び1173をHFE中に溶解又は分散させて、1重量%又は5重量%の溶液又は懸濁液を形成し、上記のように、PFE-1溶液と組み合わせた。
【表14】
【表15】
【0240】
実施例12-1~13-1の組成物のいくつかを、Hバルブの代わりにDバルブで硬化させ、同様の架橋結果を提供した。
【0241】
基本手順-無機フィラーを有する配合フルオロポリマー(Compounded Fluoropolymer、CFP):
配合フルオロポリマー(CFP)を、従来のゴム加工設備を使用して、表14に従って、100gのペルフルオロエラストマーをフィラーと組み合わせて、ペルフルオロエラストマー及びフィラーの十分に混合された固体混合物を提供することによって調製した。グラスバブルズを、使用前にフッ素化疎水性表面処理で処理した。
【表16】
【0242】
SRC220表面処理グラスバブルズ
9gの3M Stain Resistant Additive SRC220(水性フッ素化ポリウレタン分散体、15%固形分)を50gのDI水に添加し、5分間撹拌し、溶液を18ゲージの針シリンジを有する60mLシリンジに移すことによって、溶液を調製した。
【0243】
1ガロンサイズのLodige Popenmierミキサに、900gのiM16Kグラスバブルズを添加した。400rpmの混合速度で混合しながら表面処理溶液を噴霧した。室温で15分間混合した後、混合容器を120~130℃まで1.5時間加熱した。
【0244】
PFE-3及びCQ0382又はCQ1082からのコーティングの基本手順:
PFEコーティング溶液を、一般に上記のように調製して、HFE中の9重量%溶液を得た。溶融シリカフィラーを、高速ミキサでHFE中に別々に分散させて、50重量%の固形分分散体を形成した。PFE溶液及び溶融シリカ分散体を互いに混ぜ合わせ、続いて、硬化剤、アルコキシシラン、及びガラス繊維を添加した。PFE複合材料フィルムを、300μm~350μmの間隙を有するコンマバーコーターで溶液をコーティングすることによって得た。得られたコーティングを剥離ライナー上にコーティング(フッ素化剥離コーティングでプレコート)し、次いで、100℃のオーブン内で乾燥させて、溶媒を除去した。次いで、フィルムをライナーから分離し、テフロンコーティングされた金属トレイに置き、160℃~200℃でベークして、系を架橋した。得られたフィルムの厚さは、230μm~290μmの範囲であった。異なる試験方法でフィルムを特性決定した。成分(すなわち、固形分)の濃度及び結果を表15~表17にまとめる。
【表17】
【表18】
【表19】
【0245】
PFE-3及び溶融シリカ(SF550)からのコーティングの基本手順:
HFE中の溶融シリカを含むPFE-3の溶液を、PFE-3ガム(20g、小片に切断)、3M溶融シリカ(8.6g、FS550)、及びHFE(290g)を使用して、一般に上記のように調製した。安定したコーティング溶液は、6.45重量%のPFE-3を有し、PFE-3とFS550との重量比は、70/30であった。同様に、PFE-3と溶融シリカとの重量比が80/20の6.45%のコーティング溶液を、20gのPFE-3、6.0gのFS550、及び290gのHFEを使用して調製した。
【0246】
全ての架橋剤(例えば、BTESPA)をHFE中に溶解して、5%又は10%の溶液を形成した。3%~5%のBTESPA架橋剤を、PFE量に基づいて、PFE-3/FS550溶液中に配合した。アルコキシシラン化合物を、以下に示すようにFS550の重量に基づいて、PFE-3/FS550溶液と共に配合した。完全に混合した後、溶液を、異なる厚さでRLフィルム又はDuPont PFAフィルムのいずれかにコーティングし、次いで、オーブン内で140℃で5時間硬化した。剥離ライナー上のコーティングを試験前にライナーから除去し、PFAフィルム上のコーティングをPFAフィルム上で直接試験した。CTEをライナーから剥離されたフィルムから試験した。配合及び試験結果を表18及び表19にまとめる。いくつかの例では、水分取り込み(23℃/5~95%RH)を測定した。試料18.6の水分取り込みは、0.11%であった。
【表20】
【表21】
【0247】
配合フルオロポリマーからのコーティング:
コーティング溶液配合物の場合、全てのCFP(20g、小片に切断)を最初にHFE(180g)に溶解して、密封ガラス瓶内で一晩激しく振盪した後、10%溶液を得た。全ての架橋剤(例えば、BTESPA)をHFE中に溶解して、5%又は10%の溶液を得た。全ての架橋剤を、表20に示すようにCFPの総重量に基づいて、CFP溶液中に配合した。完全に混合した後、溶液を、異なる厚さでRLフィルム又はDuPont PFAフィルム又はFEPフィルムのいずれかにコーティングし、次いで、試験前にオーブン内で140℃で5時間硬化した。剥離ライナー上のコーティングを試験前にライナーから除去し、PFAフィルム上のコーティングをPFAフィルム上で直接試験した。CTEをライナーから剥離されたフィルムから試験した。結果を表20及び表21にまとめる。例のいくつかでは、水分取り込み(23℃/5~95%RH)を測定した。良好な水分取り込みを示した2つの例は、20.12及び20.14であり、それぞれ、0.15%及び0.13%の水分取り込みを有した。
【表22】
【表23】
【0248】
UVによって硬化された配合フルオロポリマーコーティング:
(例えば、シリカ)無機フィラーを有する配合フルオロポリマーの10%コーティング溶液は、密封ガラス瓶内で室温で一晩激しく振盪した後、20gのPFE-1系CFPガム(小片に切断)及び180gのHFEから、一般に上記のように調製した。架橋剤(BTESPA及びTAIC)をHFE中に分散させて、5%溶液を得た。全ての架橋剤(BTESPA及びTAIC)を、以下に示すようにCFPの総重量に基づいて、CFP溶液中に配合した。完全に混合した後、溶液を、異なる厚さでDuPont PFAフィルム又はFEPフィルムのいずれかにコーティングした。コーティングを最初に100℃のオーブンで5分間乾燥させ、次いで、30fpmで10回通過させることにより、窒素下で100%の電力でHバルブUVにより硬化した。結果を表22にまとめる。
【表24】
【0249】
PFE-3及びシリカ粒子からのコーティングの基本手順:
PFEコーティング溶液を、一般に上記のように調製して、HFE-7300中の5重量%のPFE-3溶液を得た。溶融シリカフィラーを、高速ミキサでHFE中に別々に分散させて、50重量%の固形分分散体を形成した。
【0250】
ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン(BTMSPA)をHFE-7300中に溶解又は分散させて、10重量%の溶液又は懸濁液を形成した。表23に示されるように、PFE-3溶液に、BTMSPA及びシリカ粒子を添加した。HFE-7300溶液中のBTMSPAを、1000回転/分(rpm)で10秒間ボルテックスシェーカーを使用して均質化して、十分に分散したスラリーを形成した後、PFE-3/HFE-7300溶液に添加した。式に示される百分率(例えば、5%、2%)は、PFE-3の固形分に基づく質量分率であった。例えば、PFE-3+5% BTMSPAは、PFE-3/APESの固形分=95:5を意味する。上記の調製溶液を、典型的には、2500rpmで1~2分間ボルテックス下で撹拌した。全ての上記の調製溶液を、No.24マイヤーロッドで清浄なPET剥離ライナー又は銅箔上にコーティングし、得られたコーティングを、通常165℃で20分間~1時間硬化した。硬化したフィルムをライナーから剥離し、Dk、Df、水分取り込み、及びCTEについて評価した。
【表25】
【0251】
ペルフルオロエラストマー-ペルフルオロポラスティック(perfluoropolastic)ナノ粒子分散体コーティング溶液の調製の基本手順:PFE-PFA又はPFE-PTFE凝固及び分散液調製
ペルフルオロエラストマーPFE-3(30.5重量%)を、PFAラテックス(30重量%のPFA-2ラテックス)と、又はPTFEラテックス(55重量%のTFM-2ラテックスの希釈から得られた30重量%)と、表24に記載の比率で共凝固した。ラテックス溶液を混合し、20分間ローラー上に置いた。その後、十分に混合された溶液を、冷蔵庫で一晩凍結した。それらを取り出し、温水又は60℃のオーブンで解凍した。溶融後、沈殿物を濾過し、脱イオン(DI)水で少なくとも3回洗浄した。得られた固形分を、55~65℃の空気循環オーブン内で一晩乾燥した。乾燥したPFE/PFA-2及びPFE/PTFE共凝固固形分を、5~20重量%溶液中で別々にHFE-7300と混合した。それらをシェーカー又はローラーに80サイクル/分の速度で一晩以上置いて、HFE-7300中に安定して十分に分散した溶液を得た(表24)。
【0252】
コーティング、電気特性測定、及び銅結合接着性測定のために、任意に、アミノシランエステル又はフッ素化アミジン硬化剤と、球形シリカ、ファイバガラス粒子、及び窒化ホウ素粒子を含む無機フィラーと、を有するペルフルオロポリマーコーティング溶液の調製の基本手順:
フルオロポリマー材料を小片に切断し、それらを別々のガラスジャーに入れ、HFE-7300溶媒をガラスジャーの各々に添加することによって、PFE-3、PFE-3/PFA-2、又はPFE-3/PTFEをHFE-7300中に溶解/分散した。容器をPTFEテープ及びパラフィンフィルムで十分に密封した。次いで、溶液を一晩(約12時間)激しく振盪して、HFE-7300中に5~8重量%のPFE-3(例えば、5gのPFE-3及び95gのHFE-7300)、HFE-7300中に10重量%のPFE-3/PTFE又はPFE-3/PFA-2の完全に均質な溶液を得た。
【0253】
コーティング用の全フッ素化ポリマーHFE溶液を調製するために、表24に記載の百分率で、PFE-3、PFE-3/PTFE、又はPFE-3/PFA-2分散液に、BTMSPA、アミノシラン、又はフッ素化アミジン硬化剤を別々に添加した。無機フィラーを含有するコーティング溶液の場合、無機フィラー又は混合フィラーを、ガラスジャー内で別々に秤量し、無機フィラー又は混合フィラーの各々に、少量のHFE溶媒を添加し、1~2分間ボルテックスした。HFE-7300フィラー又は混合フィラースラリーに、表24に記載の比率で、上記の調製されたフルオロポリマーHFE溶液及び硬化剤の量を個別に添加した。
【0254】
上記の無機フィラー含有フルオロポリマー-HFE溶液を調製する代替的方法は、最初にフルオロポリマーPFE-3、PFE-3/PFA-2、又はPFE-3/PTFEを1つ以上の無機フィラーと比率で混合し、その後、HFE-7300の量を追加して、表24に記載の特定の重量%の溶液濃度にした。得られた調製溶液を、シェーカー又はローラーに80サイクル/分の速度で一晩以上置いた。得られた溶液は均質であった。アミノシランBTMSPA又は他の硬化剤を、表24に記載の比率で、新たに調製したフルオロポリマー-無機フィラー-HFE-7300溶液に添加した。また、式の百分率(例えば、5%、2%)は、PFE-3の固形分に基づく質量分率であった。例えば、PFE-3+5% BTMSPAは、PFE-3/APESの固形分=95:5を意味する。上記の調製溶液を、典型的には、2500rpmで1~2分間ボルテックス下で撹拌した。全ての上記の調製溶液を、No.24マイヤーロッドで3M剥離ライナー上にコーティングし、又は溶液をライナー上に単純に注いで、より厚いコーティング試料を得、得られたコーティングを、通常、室温で一晩乾燥し、又は120~165℃で20~105分間硬化した。硬化したフィルムをライナーから剥離し、銅への接着、表24に示されたDk/Df測定及びCTE測定に利用可能であった。
【0255】
ペルフルオロポリマー溶液を剥離ライナー上にコーティングし、室温で一晩乾燥し、又は120~165℃で30~105分間硬化した。平均15~40ミクロンの厚さを有する得られたフィルムをライナーから剥離し、その後、表に示される温度及び1~2トンの圧力下で、通常30分間、結合させるためサンドイッチ構造内のCu箔に対して積層した。
【表26】
【0256】
無機フィラーを有するペルフルオロポリマーコーティング溶液の調製の基本手順:
共凝固ペルフルオロポリマー及び1つ以上の無機フィラー(例えば、シリカナノ粒子、石英ファイバ、及び窒化ホウ素)を含有する溶液は、フルオロポリマー樹脂と呼ばれ、HFE-7300中に溶解/分散された。溶液を以下の段階的手順で調製した:乾燥無機及びフルオロポリマー樹脂を容器内で混ぜ合わせ、HFE-7300を添加した。次いで、容器を密封し、溶液が完全に混合されてコーティングする準備ができていると決定されるまで、ローラー上に置いて一晩以上緩やかに撹拌した。次いで、その後、溶液を剪断混合容器に移し、2500~3500rpmで3~4分間混合した。十分に混合された溶液に、BTMSPAを添加した(溶液中の5質量%の樹脂)。BTMSPAを添加した後、溶液を完全に混合するためにボルテックスし、次いで、シェーカー上に30~60分間置いた。次いで、No.24マイヤーロッド及びテープガイドを使用して、溶液を剥離ライナー上にコーティングして、フィルム厚さを制御する。フィルムを室温で空気乾燥し、その後、剥離ライナーから除去し、165℃で1時間熱硬化した。これで、硬化した試料の試験の準備ができた。
【表27】
【表28】
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋フルオロポリマー層を備える電気通信物品であって、前記フルオロポリマーは、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位、及び硬化部位を含む、集積回路、プリント回路基板、アンテナ、又は光ケーブルである電気通信物品。
【請求項2】
前記架橋フルオロポリマー層が、基材、パターン化(例えば、フォトレジスト)層、絶縁層、不動態化層、クラッド、保護層、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の電気通信物品。
【請求項3】
前記アンテナが、コンピュータデバイス(スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップ)又は屋外構造物のアンテナである、請求項に記載の電気通信物品。
【請求項4】
前記架橋フルオロポリマー層が、
i)2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95未満の誘電率(Dk)、
ii)0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001、0.0009、0.0008、0.0007、0.0006未満の誘電損失、
又はそれらの組み合わせを有する、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項5】
前記フルオロポリマーが、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を更に含む、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項6】
前記全フッ素化モノマーが、テトラフルオロエテン(TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルから選択される、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項7】
前記フルオロポリマーの前記不飽和ペルフルオロアルキルエーテルが、一般式
-O-(CF-CF=CF
[式中、nは1又は0であり、Rはペルフルオロアルキル基又はペルフルオロエーテル基である]を有する、請求項に記載の電気通信物品。
【請求項8】
前記架橋フルオロポリマーが、
i)過酸化物及びエチレン性不飽和化合物、
ii)電子供与性基及びエチレン性不飽和基を含む1つ以上の化合物、又は
iii)アミノオルガノシランエステル化合物又はエステル等価物
から選択される硬化剤で架橋されている、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項9】
前記硬化剤が、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項10】
前記架橋フルオロポリマーが、アミン硬化剤で架橋されている、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量に基づいて、40~60重量%のTFEの重合単位を含む、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項12】
前記架橋フルオロポリマーが、5、4、3、2、1、若しくは0.1重量%以下の、非フッ素化若しくは部分フッ素化モノマーから誘導される重合単位を含み、及び/又は5、4、3、2、1、若しくは0.1重量%以下のエステル含有結合を含む、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項13】
前記架橋フルオロポリマーが、3-エトキシペルフルオロ2-メチルヘキサン又は3-メトキシペルフルオロ4-メチルペンタンに不溶性である、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項14】
前記架橋フルオロポリマー層が、結晶性フルオロポリマー粒子を更に含む、請求項1記載の電気通信物品。
【請求項15】
前記架橋フルオロポリマー層が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気通信物品。
【請求項16】
前記架橋フルオロポリマー層が、熱伝導性フィラーを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気通信物品
【請求項17】
前記シリカが、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、グラスバブルズ、又はそれらの組み合わせである、請求項15に記載の電気通信物品
【請求項18】
前記ヒュームドシリカ又は溶融シリカが、少なくとも500nm、1ミクロン、1.5ミクロン、又は2ミクロンの凝集体粒径を有する、請求項17に記載の電気通信物品
【請求項19】
前記シリカが疎水性表面処理を含み、前記疎水性表面処理は、任意に、フッ素化アルコキシシラン化合物を含む、請求項15に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
【請求項20】
前記シリカが、前記フィルム、組成物、又は前記コーティング溶液の重量%固形分の総量に基づいて、少なくとも10、20、30、40、50、60、又は70重量%の量で存在する、請求項15に記載の電気通信物品
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0222
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0222】
「全フッ素化エーテル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されているエーテルである。全フッ素化エーテルの例は、FC-O-CFである。
本発明は以下の態様を包含する。
(項目1)
架橋フルオロポリマー層を備える電気通信物品であって、前記フルオロポリマーは、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位、及び硬化部位を含む、電気通信物品。
(項目2)
前記架橋フルオロポリマー層が、基材、パターン化(例えば、フォトレジスト)層、絶縁層、不動態化層、クラッド、保護層、又はそれらの組み合わせである、項目1に記載の電気通信物品。
(項目3)
前記物品が、集積回路又はプリント回路基板である、項目1又は2に記載の電気通信物品。
(項目4)
前記物品が、アンテナである、項目1~3のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目5)
前記物品が、コンピュータデバイス(スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップ)又は屋外構造物のアンテナである、項目4に記載の電気通信物品。
(項目6)
前記物品が、光ケーブルである、項目1又は2に記載の電気通信物品。
(項目7)
前記架橋フルオロポリマー層が、
i)2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95未満の誘電率(Dk)、
ii)0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、0.001、0.0009、0.0008、0.0007、0.0006未満の誘電損失、
又はそれらの組み合わせを有する、項目1~6のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目8)
前記フルオロポリマーが、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を更に含む、項目1~7のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目9)
前記全フッ素化モノマーが、テトラフルオロエテン(TFE)及び1つ以上の不飽和ペルフルオロアルキルエーテルから選択される、項目1~8のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目10)
前記フルオロポリマーの前記不飽和ペルフルオロアルキルエーテルが、一般式
-O-(CF -CF=CF
[式中、nは1又は0であり、R はペルフルオロアルキル基又はペルフルオロエーテル基である]を有する、項目9に記載の電気通信物品。
(項目11)
前記架橋フルオロポリマーが、
i)過酸化物及びエチレン性不飽和化合物、
ii)電子供与性基及びエチレン性不飽和基を含む1つ以上の化合物、又は
iii)アミノオルガノシランエステル化合物又はエステル等価物
から選択される硬化剤で架橋されている、項目1~10のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目12)
前記硬化剤が、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目13)
前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリル又はアルケニルから選択される、項目11又は12に記載の電気通信物品。
(項目14)
前記架橋フルオロポリマーが、アミン硬化剤で架橋されている、項目1~13のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目15)
前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量に基づいて、40~60重量%のTFEの重合単位を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目16)
前記架橋フルオロポリマーが、5、4、3、2、1、若しくは0.1重量%以下の、非フッ素化若しくは部分フッ素化モノマーから誘導される重合単位を含み、及び/又は5、4、3、2、1、若しくは0.1重量%以下のエステル含有結合を含む、項目1~15のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目17)
前記架橋フルオロポリマーが、3-エトキシペルフルオロ2-メチルヘキサン又は3-メトキシペルフルオロ4-メチルペンタンに不溶性である、項目1~16のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目18)
前記架橋フルオロポリマー層が、結晶性フルオロポリマー粒子を更に含む、項目1~17のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目19)
パターン化フルオロポリマー層の形成方法であって、
フルオロポリマーフィルムを基材に適用することと、
化学線への曝露によって、前記フルオロポリマーフィルムの一部分を選択的に架橋させることと、
前記フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去することと、を含む、方法。
(項目20)
前記フルオロポリマーフィルムと化学線源との間に1つ以上の開口部を有するマスクを提供することと、前記マスクの少なくとも1つの開口部を通して前記フルオロポリマーフィルムを化学線に曝露することと、を更に含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去することが、前記未架橋部分を溶媒に溶解させることを含む、項目19又は20に記載の方法。
(項目22)
前記基材が、前記溶媒に実質的に不溶性である、項目19~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記溶媒が、フッ素化溶媒である、項目21又は22に記載の方法。
(項目24)
前記フルオロポリマーフィルムを前記基材に適用することが、
コーティング溶液を前記基材に適用することであって、前記コーティング溶液が、
フッ素化溶媒と、
フルオロポリマーと、
化学線の存在下で前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる硬化剤と、を含む、ことと、
前記フッ素化溶媒を除去することと、を含む、項目19~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記基材が、前記コーティング溶液の前記フッ素化溶媒に実質的に不溶性である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記フルオロポリマーフィルムの未架橋部分を除去するための前記フッ素化溶媒と、前記コーティング溶液の前記フッ素化溶媒とが、同一又は異なるフッ素化溶媒である、項目19~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記基材が、ケイ素含有基材又は金属(例えば、銅)基材である、項目19~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記フルオロポリマーが、少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位を含む、項目19~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記フルオロポリマーが、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位を更に含む、項目19~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記化学線が、紫外線又は電子線である、項目19~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記フッ素化ポリマー及び硬化剤が、項目7~18のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、項目19~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記フッ素化溶媒が、部分フッ素化エーテルである、項目19~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記フッ素化溶媒が、式:
2p+1 -O-C 2q+1
[式中、qは1~5の整数であり、pは5~11の整数である]を有する、項目19~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記C 2p+1 -単位が、分枝状である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記フッ素化溶媒が、1000未満のGWPを有する、項目19~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記方法が、前記パターン化フルオロポリマー層に電極材料を適用することを更に含む、項目19~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記基材が、集積回路、プリント回路基板、又はアンテナの構成要素である、項目19~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
パターン化フルオロポリマー層を形成するために使用するための組成物であって、
少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含むフルオロポリマーと、
前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、を含む、組成物。
(項目39)
フッ素化溶媒を更に含む、項目38に記載の組成物。
(項目40)
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、項目7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、項目38又は39に記載の組成物。
(項目41)
電気通信物品の作製方法であって、
少なくとも80、85、又は90重量%の重合した全フッ素化モノマーと、硬化部位とを含むフルオロポリマーと、前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、を含むフィルム又はコーティング溶液を提供することと、
前記フィルム又はコーティング溶液を電気通信物品の構成要素に適用することと、を含む、方法。
(項目42)
熱、化学線、又はそれらの組み合わせへの曝露によって、前記フルオロポリマーを架橋させることを更に含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記コーティング溶液が、フッ素化溶媒を更に含む、項目41又は42に記載の方法。
(項目44)
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、項目7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、項目41~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記構成要素が、集積回路、プリント回路基板、アンテナ、又は光ケーブルの構成要素である、項目41~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記架橋フルオロポリマー層が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、項目1~18のいずれか一項に記載の電気通信物品。
(項目47)
前記フルオロポリマーフィルム又はコーティング溶液が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、項目19~37又は41~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記組成物が、シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせを更に含む、項目38~40のいずれか一項に記載の組成物。
(項目49)
熱伝導性フィラーを更に含む、項目1~48のいずれか一項に記載の電気通信物品、方法、又は組成物。
(項目50)
前記シリカが、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、グラスバブルズ、又はそれらの組み合わせである、項目46~49のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
(項目51)
前記ヒュームドシリカ又は溶融シリカが、少なくとも500nm、1ミクロン、1.5ミクロン、又は2ミクロンの凝集体粒径を有する、項目46~50のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
(項目52)
前記シリカが疎水性表面処理を含み、前記疎水性表面処理は、任意に、フッ素化アルコキシシラン化合物を含む、項目46~51のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
(項目53)
前記シリカが、前記フィルム、組成物、又は前記コーティング溶液の重量%固形分の総量に基づいて、少なくとも10、20、30、40、50、60、又は70重量%の量で存在する、項目46~53のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
(項目54)
熱伝導性フィラーを更に含む、項目46~53のいずれか一項に記載の電気通信物品、組成物、又は方法。
(項目55)
少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含むフルオロポリマーと、
前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、
シリカ、ガラス繊維、又はそれらの組み合わせと、を含む、組成物。
(項目56)
フッ素化溶媒を更に含む、項目55に記載の組成物。
(項目57)
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、項目7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、項目53又は54に記載の組成物。
(項目58)
前記シリカが、項目50~54のいずれか一項によって更に特徴付けられる、項目56又は57に記載の組成物。
(項目59)
少なくとも80、85、又は90重量%の全フッ素化モノマーの重合単位と、ニトリル、ヨウ素、臭素、及び塩素から選択される硬化部位と、を含むフルオロポリマーと、
前記硬化部位と反応し、それによって、前記フルオロポリマーを架橋させる1つ以上の硬化剤と、
熱伝導性フィラーと、を含む、組成物。
(項目60)
フッ素化溶媒を更に含む、項目59に記載の組成物。
(項目61)
前記フルオロポリマー及びフッ素化溶媒が、項目7~18及び32~35のいずれか一項に従って更に特徴付けられる、項目59又は60に記載の組成物。
【国際調査報告】