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特表2023-501791膜-電極アセンブリー、その製造方法、及びそれを含む燃料電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】膜-電極アセンブリー、その製造方法、及びそれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230112BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230112BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20230112BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M8/10 101
H01M8/1004
H01M4/88 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526809
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2020019004
(87)【国際公開番号】W WO2021137518
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179675
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】コン ナクウォン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS01
5H018BB06
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE06
5H018EE07
5H018EE08
5H018EE10
5H018EE12
5H018EE16
5H018EE17
5H018EE18
5H018HH01
5H018HH03
5H126AA02
5H126BB06
5H126JJ03
(57)【要約】
両面にパターン化された構造を有する電極により、増加した活性面積、向上した流体管理能力、及び減少したガス伝達抵抗を有する膜-電極アセンブリー、その製造方法、及びそれを含む燃料電池が開示される。本発明の膜-電極アセンブリーは、第1電極;第2電極;及び、前記第1及び第2電極の間の高分子電解質膜を含み、前記第1電極は、前記高分子電解質膜に向く第1面及びその反対側の第2面を有し、前記第1面は、第1パターン化された構造(patterned structure)を有し、前記第2面は、第2パターン化された構造を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極;
第2電極;及び
前記第1及び第2電極の間の高分子電解質膜
を含み、
前記第1電極は、前記高分子電解質膜に向く第1面及びその反対側の第2面を有し、
前記第1面は、第1パターン化された構造(patterned structure)を有し、前記第2面は、第2パターン化された構造を有する、
膜-電極アセンブリー。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第1及び第2パターン化された構造の間の中間層(intermediate layer)を含み、前記中間層の厚さは、前記第1電極の厚さの10~90%である、請求項1に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項3】
前記第1パターン化された構造は、前記第2パターン化された構造と異なる、請求項1に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項4】
前記第1及び第2パターン化された構造の少なくとも一つは、前記第1又は第2面の全領域にわたって散在している(scattered)複数の凸部(projected parts)を有する、請求項1に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項5】
前記凸部のそれぞれは、1~50μmの高さを有し、前記凸部のそれぞれの下面の外接円の直径は10~1000μmである、請求項4に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項6】
前記第1パターン化された構造が前記凸部を有する、請求項4に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項7】
前記第1及び第2パターン化された構造の少なくとも一つは、前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン(projected pattern)、及び前記凸パターンに接している(adjoining)凹パターン(recessed pattern)を含む、請求項1に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項8】
前記凸パターンは、1~50μmの高さ及び10~1000μmの幅を有する、請求項7に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項9】
前記第1及び第2パターン化された構造の少なくとも一つは、互いに平行に配列された複数の前記凸パターンを含む、請求項7に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項10】
前記凸パターンは、ジグザグ(zigzag)形態を有する、請求項7に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項11】
前記第1電極はカソードであり、
前記第2電極はアノードである、請求項1に記載の膜-電極アセンブリー。
【請求項12】
第1凹パターン(recess pattern)を有する第1離型フィルム上に触媒分散液を塗布する段階;
塗布された前記触媒分散液を、第2凹パターン又は複数のホールを有する第2離型フィルムで覆う段階;
前記触媒分散液の少なくとも表面を乾燥させて電極を形成する段階;
前記第2離型フィルムを除去する段階;
前記電極を高分子電解質膜上に転写(transfer)する段階;及び
前記第1離型フィルムを除去する段階
を含む、膜-電極アセンブリーの製造方法。
【請求項13】
前記第1凹パターンは、前記第1離型フィルムの面と平行な方向に延長された少なくとも一つの溝(groove)を含み、
前記溝の深さは、1~50μmである、請求項12に記載の膜-電極アセンブリーの製造方法。
【請求項14】
前記第2凹パターンは、前記第1凹パターンと異なる、請求項12に記載の膜-電極アセンブリーの製造方法。
【請求項15】
前記第2離型フィルムは、複数の前記ホールを有する、請求項12に記載の膜-電極アセンブリーの製造方法。
【請求項16】
前記第2離型フィルムは10~100μmの厚さを有し、前記ホールは10~1000μmの直径を有する、請求項15に記載の膜-電極アセンブリーの製造方法。
【請求項17】
前記第2異型フィルムを除去した直後に前記電極を乾燥させる段階をさらに含む、請求項12に記載の膜-電極アセンブリーの製造方法。
【請求項18】
請求項1の膜-電極アセンブリー;及び
前記第1電極の前記第2パターン化された構造上に配置される分離板を含み、
前記第2パターン化された構造は、前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン、及び前記凸パターンに接している凹パターンを含み、
前記分離板は、前記膜-電極アセンブリーに向く第3面及びその反対側の第4面を有し、
前記第3面は、流路(fluid path)として機能する溝形態(groove-shaped)のチャネル部分(channel part)、及び非チャネル部分(non-channel part)を含み、
前記非チャネル部分が前記凹パターンに対応するように前記膜-電極アセンブリーと前記分離板とが整列された、燃料電池。
【請求項19】
前記第2パターン化された構造の前記凸パターンは、前記チャネル部分と同じ形態を有する、請求項18に記載の燃料電池。
【請求項20】
前記第2パターン化された構造の前記凸パターンは、前記チャネル部分の幅よりも大きくない幅を有する、請求項19に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜-電極アセンブリー、その製造方法、及びそれを含む燃料電池に関し、より具体的には、両面にパターン化された構造を有する電極により、増加した活性面積、向上した流体管理能力、及び減少したガス伝達抵抗を有する膜-電極アセンブリー、その製造方法、及びそれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
膜-電極アセンブリー(Membrane-Electrode Assembly:MEA)と分離板(separator)[‘バイポーラプレート(bipolar plate)’ともいう。]とからなる単位セル(unit cell)の積層構造を用いて電気を発生させる高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)は、高いエネルギー効率性と環境にやさしい特徴から、化石エネルギーを代替できる次世代エネルギー源として注目されている。
【0003】
前記膜-電極アセンブリーは、一般に、アノード(anode)(‘燃料極’ともいう。)、カソード(cathode)(‘空気極’ともいう。)、及びそれらの間における高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)を含む。
【0004】
水素ガスのような燃料がアノードに供給されると、アノードでは水素の酸化反応によって水素イオン(H)と電子(e)が生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質膜(PEM)を通じてカソードに伝達され、生成された電子は、外部回路を通じてカソードに伝達される。カソードに供給される空気中の酸素が前記水素イオン及び前記電子と結合して還元されることによって水が生成される。
【0005】
通常の膜-電極アセンブリーの電極と高分子電解質膜(PEM)はなめらかな表面(smooth surface)を有するため、電極と高分子電解質膜のそれぞれの活性面積が前記電極の投影面積(projected area)と実質的に同一である。このため、電極と高分子電解質膜の活性面積を増加させるには電極の大きさを増加させるしかないが、これはコスト高を招く。
【0006】
また、流路(fluid path)として機能する流動チャネル(flow channel)部分(すなわち、溝)及びその他の部分である非チャネル(non-channel)部分を含む分離板を膜-電極アセンブリーに加圧して締め付ける際に、前記非チャネル部分に対応する電極部分が圧縮され、流体(例えば、酸素、水素、水など)の移動を妨害する問題が発生する。
【0007】
特に、カソードで還元されるべき酸素は前記カソードに供給される空気(air)の約20%に過ぎないだけでなく、酸素の還元反応によって生成される水が前記カソード内の酸素拡散を妨害する不具合がある。このため、カソードでは、活性面積を増やして水の排出を円滑にし、酸素伝達抵抗を下げることが特に要求される。
【0008】
電極と高分子電解質膜の活性面積を増加させるために、高分子電解質膜の表面に凹凸を形成することが提案されている。しかしながら、この方法は、一般的な電極形成方法であるデカル転写(decal transfer)方法を利用できず、触媒分散液を前記高分子電解質膜上に直接コートすることを要求するという問題がある。しかも、高分子電解質膜上に直接コートされる前記触媒分散液の触媒分散状態が良好でない場合には、前記高分子電解質膜のパターン化された溝(patterned grooves)内に前記触媒が浸透できなくなるが、これは、電極と高分子電解質膜との界面抵抗を増加させる。
【0009】
一方、カソードの酸素伝達抵抗を最小化するために、互いに離隔した複数個のサブ電極からなるカソードを形成することが提案されている。しかしながら、サブ電極の間における電解質膜の露出は、膜-電極アセンブリーの活性面積の損失及び耐久性の低下を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、上のような関連技術の制限及び欠点に起因する問題点を防止できる膜-電極アセンブリー、その製造方法、及びそれを含む燃料電池に関する。
【0011】
本発明の一観点は、両面にパターン化された構造を有する電極により、増加した活性面積、向上した流体管理能力、及び減少したガス伝達抵抗を有する膜-電極アセンブリーを提供することである。
【0012】
本発明の他の観点は、両面にパターン化された構造を有する電極により、増加した活性面積、向上した流体管理能力、及び減少したガス伝達抵抗を有する膜-電極アセンブリーを製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の観点は、優れた性能及び高い耐久性を有する燃料電池を提供することである。
【0014】
上に言及された本発明の観点の他にも、本発明の別の特徴及び利点が、以下に説明されるか、これらの説明から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上のような本発明の一観点によって、第1電極;第2電極;及び、前記第1及び第2電極間の高分子電解質膜を含み、前記第1電極は、前記高分子電解質膜に向く第1面及びその反対側の第2面を有し、前記第1面は、第1パターン化された構造(patterned structure)を有し、前記第2面は、第2パターン化された構造を有する、膜-電極アセンブリーが提供される。
【0016】
前記第1電極は、前記第1及び第2パターン化された構造の間の中間層(intermediate layer)を含むことができ、前記中間層の厚さは、前記第1電極の厚さの10~90%であってよい。
【0017】
前記第1パターン化された構造は、前記第2パターン化された構造と異なってよい。
【0018】
前記第1及び第2パターン化された構造の少なくとも一つは、前記第1又は第2面の全領域にわたって散在している(scattered)複数の凸部(projected parts)を有してよい。
【0019】
前記凸部のそれぞれは、1~50μmの高さを有してよく、前記凸部のそれぞれの下面の外接円の直径は、10~1000μmであってよい。
【0020】
前記第1パターン化された構造が前記凸部を有してよい。
【0021】
前記第1及び第2パターン化された構造の少なくとも一つは、前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン(projected pattern)、及び前記凸パターンに接している(adjoining)凹パターン(recessed pattern)を含んでよい。
【0022】
前記凸パターンは、1~50μmの高さ及び10~1000μmの幅を有してよい。
【0023】
前記第1及び第2パターン化された構造の少なくとも一つは、互いに平行に配列された複数の前記凸パターンを含んでよい。
【0024】
前記凸パターンは、ジグザグ(zigzag)形態を有してよい。
【0025】
前記第1電極がカソードでよく、前記第2電極がアノードでよい。
【0026】
本発明の他の観点によって、第1凹パターン(recess pattern)を有する第1離型フィルム上に触媒分散液を塗布する段階;塗布された前記触媒分散液を、第2凹パターン又は複数のホールを有する第2離型フィルムで覆う段階;前記触媒分散液の少なくとも表面を乾燥させて電極を形成する段階;前記第2離型フィルムを除去する段階;前記電極を高分子電解質膜上に転写(transfer)する段階;及び、前記第1離型フィルムを除去する段階を含む、膜-電極アセンブリーの製造方法が提供される。
【0027】
前記第1凹パターンは、前記第1離型フィルムの面と平行な方向に延長された少なくとも一つの溝(groove)を含んでよく、前記溝の深さは1~50μmであってよい。
【0028】
前記第2凹パターンは、前記第1凹パターンと異なってよい。
【0029】
前記第2離型フィルムは、複数の前記ホールを有してよい。
【0030】
前記第2離型フィルムは、10~100μmの厚さを有してよく、前記ホールは、10~1000μmの直径を有してよい。
【0031】
前記方法は、前記第2異型フィルムを除去した直後に前記電極を乾燥させる段階をさらに含んでよい。
【0032】
本発明の他の観点によって、上述した膜-電極アセンブリー;及び、前記第1電極の前記第2パターン化された構造上に配置される分離板を含み、前記第2パターン化された構造は、前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン及び前記凸パターンに接している凹パターンを含み、前記分離板は、前記膜-電極アセンブリーに向く第3面及びその反対側の第4面を有し、前記第3面は、流路(fluid path)として機能する溝形態(groove-shaped)のチャネル部分(channel part)、及び非チャネル部分(non-channel part)を含み、前記非チャネル部分が前記凹パターンに対応するように前記膜-電極アセンブリーと前記分離板とが整列された、燃料電池が提供される。
【0033】
前記第2パターン化された構造の前記凸パターンは、前記チャネル部分と同じ形態を有してよい。
【0034】
前記第2パターン化された構造の前記凸パターンは、前記チャネル部分の幅よりも大きくない幅を有してよい。
【0035】
上のような本発明に関する一般的な叙述は、本発明を例示又は説明するためのもので、本発明の権利範囲を制限するものではない。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高分子電解質膜との接触面がパターン化された構造を有するだけでなく、その反対面もパターン化された構造を有する電極を提供することにより、前記高分子電解質膜及び前記電極の活性面積を全て増加させることができる。すなわち、両面にパターン化された構造を有する電極により、本発明の膜-電極アセンブリーは増加した活性面積及び向上した流体管理能力を有し、本発明の燃料電池は優れた性能及び高い耐久性を有することが可能である。
【0037】
また、本発明の電極は、一般的な電極形成方法であるデカル転写法によっても形成可能であるので、量産(mass production)に有利である。
【0038】
特に、カソードの両面ともにパターン化された構造を導入することにより、カソード内の酸素伝達抵抗を最小化し、カソード内の水管理能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
添付の図面は、本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明と一緒に本発明の原理を説明する。
【0040】
図1】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの断面を概略的に示す図である。
【0041】
図2】本発明の一実施例に係る両面パターン化された電極(double-sided patterned electrode)の断面を概略的に示す図である。
【0042】
図3】(a)~(c)は、本発明のパターン化された構造(patterned structure)の様々な例を示す図である。
【0043】
図4】(a)~(c)は、本発明の凸部又は凸パターンの様々な例を示す縦断面である。
【0044】
図5a】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5b】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5c】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5d】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5e】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5f】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5g】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
図5h】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーの製造方法を説明するための断面図である。
【0045】
図6】本発明の一実施例に係る燃料電池の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下では添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、下で説明される実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示的目的で提示されるだけで、本発明の範囲を制限しない。
【0047】
図1は、本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリー1000の断面を概略的に示し、図2は、本発明の一実施例に係る両面パターン化された電極(double-sided patterned electrode)1210の断面を概略的に示す。
【0048】
図1に例示するように、本発明の膜-電極アセンブリー1000は、第1電極1210、第2電極1220、及び前記第1及び第2電極1210,1220の間の高分子電解質膜1100を含む。
【0049】
本発明によれば、前記第1電極1210は、両面パターン化された電極である。図1には、前記第1電極1210だけが両面パターン化された電極であり、前記第2電極1220は両面ともなめらかな表面を有する電極である膜-電極アセンブリー1000が例示されているが、本発明は、これに限定されず、前記第2電極1220も前記第1電極1210と同様に、両面パターン化された電極であってもよい。
【0050】
図2に例示するように、前記第1電極1210は、前記高分子電解質膜1100に向く第1面及びその反対側の第2面を有し、前記第1面は、第1パターン化された構造1211を有し、前記第2面は、第2パターン化された構造1212を有する。
【0051】
本発明の前記第1パターン化された構造1211は、前記第1電極1210と前記高分子電解質膜1100の両者の活性面積とも増加させることにより、膜-電極アセンブリー1000及び燃料電池の性能を向上させることができる。
【0052】
本発明の前記第2パターン化された構造1212は、前記第1電極1210内でのガス伝達抵抗を減少させることにより、膜-電極アセンブリー1000及び燃料電池の性能を向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施例によれば、図2に例示するように、前記第1電極1210は、前記第1及び第2パターン化された構造1211,1212の間の中間層(intermediate layer)1213を含むことができる。前記中間層1213の厚さT2は、前記第1電極1210の厚さT1の10~90%であってよい。前記中間層1213の厚さT2の比率が10%未満であると、前記第1電極1210に供給されたガスが前記第1電極1210を容易く通過して前記第2電極1220に伝達され、膜-電極アセンブリー1000の性能及び耐久性の低下を招くことがある。一方、前記中間層1213の厚さT2の比率が90%を超えると、前記第1及び第2パターン化された構造1211,1212のパターンの大きさが過度に減少するため、本発明の目的とする効果がわずかとなることがある。
【0054】
図2には、前記第1パターン化された構造1211が前記第2パターン化された構造1212と異なる膜-電極アセンブリー1000が例示されているが、本発明は、これに限定されず、前記第1パターン化された構造1211と前記第2パターン化された構造1212とが同一であってもよい。
【0055】
図3の(a)~(c)は、本発明のパターン化された構造(patterned structure)の様々な例を示す。
【0056】
図3の(a)に例示するように、前記第1及び第2パターン化された構造1211,1212の少なくとも一つは、前記第1又は第2面の全領域にわたって散在している複数の凸部1211a,1212aを有してよい。
【0057】
例えば、図2に例示するように、前記高分子電解質膜1100と接触する前記第1パターン化された構造1211が、前記第1電極1210の前記第1面の全領域にわたって散在している複数の凸部1211aを含むことができる。
【0058】
前記凸部1211aのそれぞれは1~50μmの高さを有してよく、前記凸部1211aのそれぞれの下面の外接円の直径は10~1000μmであってよい。
【0059】
図3の(b)及び(c)にそれぞれ例示するように、前記第1及び第2パターン化された構造1211,1212の少なくとも一つは、前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン1211a,1212a及び該凸パターン1211a,1212aに接している凹パターンを含むことができる。
【0060】
例えば、前記第2パターン化された構造1212が、前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン1212a、及び前記凸パターン1212aに接している凹パターン1212bを含むことができる。
【0061】
前記凸パターン1212aは、1~50μmの高さ及び10~1000μmの幅を有してよい。
【0062】
前記第1及び第2パターン化された構造1211,1212の少なくとも一つは、図3(b)に例示しているように、互いに平行に配列された複数の前記凸パターン1211a,1212aを含むか、図3(c)に例示しているように、ジグザグ(zigzag)形態の凸パターン1211a,1212aを含むことができる。
【0063】
例えば、前記第2パターン化された構造1212が、互いに平行に配列された複数の前記凸パターン1212aを含むか、ジグザグ形態の凸パターン1212aを含むことができる。特に、燃料電池スタック(stack)において分離板に向くことになる前記第2パターン化された構造1212が、前記分離板の流動チャネル(flow channel)に対応する形態及び大きさの凸パターン1212aを含むことが好ましいが、その具体的理由は後述する。
【0064】
図4の(a)~(c)は、本発明の凸部/凸パターン1211a,1212aの様々な例を示す縦断面である。
【0065】
図1及び図2には、前記凸部/凸パターン1211a,1212aが半円又は長方形の縦断面を有するとしているが、本発明はそれらに限定されず、前記凸部/凸パターン1211a,1212aが任意の形態の縦断面を有してよい。例えば、前記凸部/凸パターン1211a,1212aの縦断面は、部分的に曲線を有する形態[例えば、図4の(a)に例示された形態]であるか、任意の多角形[例えば、図4の(b)及び(c)に例示された形態]であってよい。
【0066】
前述したように、カソードで還元されるべき酸素は前記カソード(cathode)に供給される空気(air)の約20%に過ぎないだけでなく、酸素の還元反応によって生成される水が前記カソード内における酸素拡散を妨害する問題がある。このため、カソードでは、活性面積を増やし、水の排出を円滑にし、酸素伝達抵抗を下げることが特に要求される。したがって、本発明の一実施例によれば、両面パターン化された電極である前記第1電極1210がカソードで、前記第2電極1220がアノード(anode)であってよい。
【0067】
以下では、図5A図5Hを参照して本発明の膜-電極アセンブリーの製造方法を具体的に説明する。
【0068】
まず、図5Aに例示するように、第1凹パターン(recess pattern)11を有する第1離型フィルム10を準備する。前記第1凹パターン11は、前記第1離型フィルム10の面と平行な方向に延長された少なくとも一つの溝(groove)を含むことができ、前記溝の深さは1~50μmであってよい。
【0069】
次に、図5Bに例示するように、前記第1凹パターン11を有する前記第1離型フィルム10の面上に、マスクフィルム21を付着させる。そして、前記マスクフィルム21の開口(opening)から露出されている前記第1離型フィルム10の部分(すなわち、前記第1凹パターン11が形成されている部分)上に、第1触媒分散液1210’を塗布する。前記第1触媒分散液1210’が前記第1凹パターン11に流入した後、後続の乾燥工程により、第2パターン化された構造1212の凸パターン1212aを形成する。
【0070】
燃料電池用電極の製造に使用可能な任意の触媒分散液が本発明で使用されてよい。例えば、前記第1触媒分散液1210’は、触媒、イオノマー、及び分散媒を含むことができる。
【0071】
前記触媒は、担体、及び該担体上に分散されている多数の金属粒子を含むことができる。
【0072】
前記担体は、(i)炭素系担体、(ii)ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、及びセリアのような多孔性無機酸化物担体、又は(iii)ゼオライト担体であってよい。前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーP(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube,CNT)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素(active carbon)、カーボンナノファイバー(carbon nanofiber)、カーボンナノワイヤー(carbon nanowire)、カーボンナノボール(carbon nanoball)、カーボンナノホーン(carbon nanohorn)、カーボンナノケージ(carbon nanocage)、カーボンナノリング(carbon nanoring)、規則性ナノ多孔性炭素(ordered nano-/meso-porous carbon)、カーボンエアロゲル(carbon aerogel)、メソポーラスカーボン(mesoporous carbon)、グラフェン(graphene)、安定化カーボン(stabilized carbon)、活性化カーボン(activated carbon)、又はそれらの2以上の組合せであってよい。
【0073】
前記金属粒子は、白金(Pt)粒子又は白金系合金粒子であってよい。前記白金系合金は、Pt-Pd、Pt-Mn、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Ru-Ir-Ni、Pt-Co、Pt-Co-Mn、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、又はPt-Cr-Irであってよいが、それらに限定されない。
【0074】
前記触媒と共に前記分散媒に分散されるイオノマーは、水素イオン伝達のためのものであり、電極と高分子電解質膜との接着力の向上のためのバインダーとしての機能も有する。前記イオノマーは、フッ素系イオノマー又は炭化水素系イオノマーであってよく、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、及びスルホン酸フルオリド基からなる群から選ばれる一つ以上のイオン伝導性基を有してよい。
【0075】
例えば、前記イオノマーは、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)などのようなフッ素系イオノマーであってよい。
【0076】
代案として、前記イオノマーは、スルホン化したポリイミド(sulfonated polyimide:S-PI)、スルホン化したポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone:S-PAES)、スルホン化したポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone:SPEEK)、スルホン化したポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole:SPBI)、スルホン化したポリスルホン(sulfonated polysulfone:S-PSU)、スルホン化したポリスチレン(sulfonated polystyrene:S-PS)、スルホン化したポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化したポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化したポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化したポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化したポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化したポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化したポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化したポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化したポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化したポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化したポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)などのような炭化水素系イオノマーであってよい。
【0077】
前記分散媒はエタノール、蒸留水、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、又はこれらの2以上の混合物であってよいが、それらに制限されるものではない。
【0078】
次に、図5Cに例示するように、塗布された前記第1触媒分散液1210’を第2離型フィルム30で覆う。本発明の前記第2離型フィルム30は、第2凹パターン又は複数のホールを有する。
【0079】
例えば、前記第2離型フィルム30は、前記第1離型フィルム10の前記第1凹パターン11と異なる第2凹パターンを有してよい。
【0080】
代案として、図5Cに例示するように、前記第2離型フィルム30は、前記第1触媒分散液1210’と接触することになる領域全体にわたって散在している複数のホール31を有してよい。前記ホール31を通じて、後続の乾燥工程中に前記第1触媒分散液1210’の分散媒を容易に除去することができる。前記第2離型フィルム30は、10~100μmの厚さ(すなわち、前記ホール31の深さ)を有してよく、前記ホール31は10~1000μmの直径を有してよい。前記第1触媒分散液1210’が毛細管現象によって前記ホール31に流入した後、後続の乾燥工程により、第1パターン化された構造1211の凸部1211aを形成する。
【0081】
次に、図5Dに例示するように、前記第1触媒分散液1210’の少なくとも表面を乾燥させて第1電極1210を形成し、前記第2離型フィルム30及びマスクフィルム21を除去する。
【0082】
前記第1触媒分散液1210’を完全乾燥させた後に前記第2離型フィルム30及びマスクフィルム21を除去してもよいが、第1電極1210がその形態を維持できる程度に前記第1触媒分散液1210’の表面だけを乾燥させた後に前記第2離型フィルム30及びマスクフィルム21を除去し、その後、前記第1電極1210をさらに乾燥させてその中の分散媒を完全に除去することが、乾燥工程の効率面で好ましいだろう。
【0083】
このように形成された第1電極1210は、露出されている第1パターン化された構造1211、及び前記第1離型フィルム10と接触している第2パターン化された構造1212を有する。
【0084】
第1パターン化された構造1211が高分子電解質膜1100と接触するように前記第1電極1210を前記高分子電解質膜1100上に積層した後、熱圧着(hot pressing)工程を行うことによって前記第1電極1210を前記高分子電解質膜1100上に転写(transfer)し、その後、前記第1離型フィルム10を除去できる。
【0085】
ただし、第1及び第2電極1210,1220を高分子電解質膜1100に同時に転写することがより一般的である。
【0086】
すなわち、図5Eに例示するように、第3離型フィルム40上にマスクフィルム22を付着させた後、前記マスクフィルム22の開口から露出されている前記第3離型フィルム40の部分上に第2触媒分散液1220’を塗布する。前記第2触媒分散液1220’は、前記第1触媒分散液1210’と同じ組成物でよく、それに関する具体的説明は省略する。
【0087】
次に、図5Fに例示するように、前記第2触媒分散液1220’を完全乾燥させて第2電極1220を形成した後、マスクフィルム22を除去する。
【0088】
次に、図5Gに例示するように、第1パターン化された構造1211が高分子電解質膜1100と接触するように前記第1電極1210を前記高分子電解質膜1100の第1面上に積層し、前記第2電極1220を前記高分子電解質膜1100の第2面上に積層する。
【0089】
前記高分子電解質膜1100は、イオノマーで形成された単一膜タイプ(single membrane type)、又はイオノマーで含浸された多孔性支持体を含む強化複合膜タイプ(reinforced composite membrane type)であってよい。両タイプの高分子電解質膜1100とも、上述した第1又は第2触媒分散液1210’,1220’のイオノマーが使用されてよい。前記高分子電解質膜1100のイオノマーと前記第1及び第2電極1210,1220のイオノマーとが同じ種類のイオノマーであることが好ましいが、本発明はこれに制限されず、異なる種類のイオノマーが前記高分子電解質膜1100及び前記第1及び第2電極1210,1220の製造にそれぞれ使用されてもよい。
【0090】
次に、図5Hに例示するように、得られた積層体を熱圧着することによって前記第1及び第2電極1210,1220を前記高分子電解質膜1100の第1及び第2面の上にそれぞれ転写(transfer)した後、前記第1及び第3離型フィルム10,40を除去することによって本発明の膜-電極アセンブリー1000を得ることができる。
【0091】
以下では、図6を参照して本発明の燃料電池を具体的に説明する。
【0092】
図6に示すように、本発明の燃料電池は、上述した本発明の膜-電極アセンブリー1000、及び前記第1電極1210の前記第2パターン化された構造1212上に配置される第1分離板1510を含む。
【0093】
本実施例において、前記第2パターン化された構造1212は、前記第1電極1210の前記第1及び第2面と平行な方向に延長された少なくとも一つの凸パターン1212a、及び該凸パターン1212aに接している凹パターン1212bを含む。
【0094】
前記第1分離板1510は、前記膜-電極アセンブリー1000に向く第3面及びその反対側の第4面を有し、前記第3面は流路(fluid path)として機能する溝形態(groove-shaped)の第1チャネル部分1511、及び第1非チャネル部分1512を含む。
【0095】
前述したように、前記第1分離板1510を前記膜-電極アセンブリー1000に加圧して締め付ける際に、前記第1非チャネル部分1512に対応する前記第1電極1210の部分が圧縮してしまい、流体(例えば、酸素、水素、水など)の移動を妨害する問題が発生する。
【0096】
本発明によれば、前記第1非チャネル部分1512が前記第2パターン化された構造1212の前記凹パターン1212bに対応するように前記膜-電極アセンブリー1000と前記第1分離板1510とを整列させることにより、前記第1分離板1510の圧縮締付の際に前記第1電極1210の圧縮変形を最小化させ、膜-電極アセンブリー1000の流体管理能力を向上させることにより、燃料電池の性能及び耐久性を増加させることができる。特に、前記第1電極1210がカソードである場合に、カソード内酸素伝達抵抗が最小化し、カソード内における水管理能力が向上し得る。
【0097】
上のような本発明の効果を極大化するために、前記第2パターン化された構造1212が、前記第1分離板1510の第1チャネル部分1511に対応する形態及び大きさの凸パターン1212aを含むことが好ましいだろう。例えば、前記第2パターン化された構造1212の前記凸パターン1212aは、前記第1分離板1510の前記第1チャネル部分1511と同じ形態を有してよく、前記凸パターン1212aの幅は、前記第1チャネル部分1511の幅よりも大きくてよい。
【0098】
図6に例示するように、本発明の燃料電池は、前記第2電極1220上に配置される第2分離板1520をさらに含むことができる。前記第2分離板1520も、前記膜-電極アセンブリー1000に向く面に第2チャネル部分1521及び第2非チャネル部分1522を含むことができる。
【0099】
図6に示すように、本発明の燃料電池は、前記高分子電解質膜1100の前記第1面上に配置されて前記第1電極1210を取り囲む第1サブガスケット1310、及び前記高分子電解質膜1100の前記第2面上に配置されて前記第2電極1220を取り囲む第2サブガスケット1320をさらに含むことができる。
【0100】
前記第1及び第2サブガスケット1310,1320は、(i)燃料電池の運転中における反復した膨潤及び収縮によって前記高分子電解質膜1100のエッジ部分が損傷することを防止し、(ii)極度に薄い高分子電解質膜1100による膜-電極アセンブリー1000の低い取扱性(handling)を改善し、(iii)ガス(すなわち、水素ガス及び空気)の漏れを防止する。前記第1及び第2サブガスケット1310,1320のそれぞれは、ポリイミド(PI)系化合物、ポリエチレン(PE)系化合物、ポリプロピレン(PP)系化合物、ポリエチレンテレフタレート(PET)系化合物、フルオロ化エチレンプロピレン(FEP)系化合物、又はこれらの2以上の混合物を含むフィルムでよいが、これに制限されるものではない。
【0101】
図6に例示するように、本発明の燃料電池は、前記第1電極1210と前記第1分離板1510との間の第1ガス拡散層1410、及び前記第2電極1220と前記第2分離板1520との間の第2ガス拡散層1420をさらに含むことができる。
【0102】
前記第1及び第2ガス拡散層1410,1420の主要機能は、(i)ガス(すなわち、水素ガス及び空気)が前記第1及び第2電極1210,1220で容易に且つ均一に供給され得るように、前記第1及び第2分離板1510,1520の前記第1及び第2チャネル部分1511,1521から前記第1及び第2電極1210,1220へのガス拡散経路をそれぞれ提供し、(ii)酸化還元反応の副産物である水が前記第1及び第2電極1210,1220の外に除去され得るようにすることによってフラッディング(flooding)を防止し、(iii)ある程度の水を保管することにより、前記高分子電解質膜1100の含水量が急に減少することを防止し、(iv)膜-電極アセンブリー1000に機械的強度を提供することである。
【0103】
前記第1及び第2ガス拡散層1410,1420のそれぞれは、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)、金属布(metal cloth)などのような電気伝導性多孔性部材(electrically conductive porous member)であってよい。
【0104】
以下、具体的な実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、それらに本発明の権利範囲が制限されてはならない。
【0105】
実施例1
【0106】
図5A図5Hに例示された工程にしたがって、図1に例示された膜-電極アセンブリー[両面パターン化された(double-sided patterned)カソード+通常のアノード]を、デカル転写法(decal transfer method)によって製造した。Pt/C触媒で前記カソード(0.4mgPt/cm)と前記アノード(0.1mgPt/cm)をそれぞれ形成したし、18μm厚のフッ素系高分子電解質膜を使用した。
【0107】
比較例1
【0108】
通常のカソード及び通常のアノードをデカル転写法によって高分子電解質膜の両面にそれぞれ形成することによって膜-電極アセンブリーを得た。Pt/C触媒で前記カソード(0.4mgPt/cm)と前記アノード(0.1mgPt/cm)をそれぞれ形成したし、18μm厚のフッ素系高分子電解質膜を使用した。
【0109】
比較例2
【0110】
単面パターン化された(single-sided patterned)カソード及び通常のアノードをデカル転写法によって高分子電解質膜の両面にそれぞれ形成することによって膜-電極アセンブリーを得た。前記カソードのパターン化された面が前記高分子電解質膜と接触した。Pt/C触媒で前記カソード(0.4mgPt/cm)と前記アノード(0.1mgPt/cm)をそれぞれ形成したし、18μm厚のフッ素系高分子電解質膜を使用した。
【0111】
比較例3
【0112】
互いに離隔した複数個のサブ電極からなるカソード及び通常のアノードを高分子電解質膜の両面にそれぞれ形成することによって膜-電極アセンブリーを得た。Pt/C触媒で前記カソード(0.4mgPt/cm)と前記アノード(0.1mgPt/cm)をそれぞれ形成したし、18μm厚のフッ素系高分子電解質膜を使用した。
【0113】
[出力性能(power performance)評価]
【0114】
膜-電極アセンブリーのI-V測定によって出力性能を評価した。具体的に、実際の燃料電池運転条件で出力性能を確認するために、膜-電極アセンブリーを燃料電池単位セル評価装置に締め付け、温度を65℃に維持させた。アノードとカソードに水素(100%RH)と空気(100%RH)をStoichiometry 1.2/2.0に応じた量でそれぞれ供給した。0.1A/cm、1A/cm、及び2A/cmの電流密度がそれぞれ印加された際の電圧をそれぞれ測定し、その結果を下表1に示した。測定された電圧が高いほど優れた出力性能を示している。
【0115】
また、開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)を測定し、その結果を下表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
比較例2では、カソードと高分子電解質膜との界面面積が増加することにより、活性化領域(電流密度:0.1A/cm)及びオーミック領域(1A/cm)において出力性能が比較例1に比べて改善していることが確認できる。比較例3では、互いに離隔した複数個のサブ電極でカソードが形成されることにより、物質伝達抵抗領域(2A/cm)において出力性能が比較例1に比べて改善していることが確認できた。しかし、残りの領域(すなわち、0.1A/cm及び1A/cmの電流密度)では比較例1と大差はなかった。また、比較例3は比較例1に比して低いOCVを示したが、これは、サブ電極の間で高分子電解質膜の露出によって水素透過度が増加したためである。
【0118】
実施例1では、比較例2及び比較例3の肯定的効果を全て有しながらも、低い気体透過度によって最も高いOCVを示していることを確認した。
【0119】
[CV(Cyclic Voltammetry)及びLSV(Linear Sweep Voltammetry)]
【0120】
CV(Cyclic Voltammetry)から得られたCV曲線において水素が吸・脱着される領域の面積値を用いて膜-電極アセンブリーのカソードの電気化学的反応表面積(Electrochemical Surface Area:ECA)を計算し、その結果を下表2に示した。また、LSV(Linear Sweep Voltammetry)を用いて水素透過度を間接的に確認し、その結果を下表2に示した。
【0121】
【表2】
【0122】
比較例2では、カソードと高分子電解質膜との界面面積が増加することにより、電気化学的反応表面積(ECA)が比較例1に比べて改善したが、水素透過度は比較例1に比べて増加していることが確認できる。
【0123】
比較例3では、互いに離隔した複数個のサブ電極でカソードが形成されることにより、電気化学的反応表面積(ECA)が比較例1に比べて減少していることが確認できた。そのうえ、比較例3は、比較例1に比して遥かに高い水素透過度を示した。
【0124】
実施例1では、電気化学的反応表面積(ECA)が比較例1に比べて最も多く改善されているだけでなく、比較例1に比べて水素透過度が少ししか増加していないことが確認できる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図6
【国際調査報告】