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特表2023-501808研削機の被加工物保持アセンブリおよび研削方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】研削機の被加工物保持アセンブリおよび研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20230112BHJP
   B24B 5/18 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B24B41/06 J
B24B5/18 D
B24B41/06 K
B24B5/18 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528347
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 GB2020052877
(87)【国際公開番号】W WO2021094756
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】1916639.6
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2016217.8
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522190605
【氏名又は名称】フィブ・ランディス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FIVES LANDIS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】カムリー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ストッカー,マーク
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034BB79
3C043AA01
3C043AA08
3C043AB07
3C043CC03
3C043DD01
3C043DD03
3C043DD05
(57)【要約】
被加工物保持アセンブリ(20)は、磁気チャック(22)と、環状被加工物(40,60)の外周面と係合するためのワークレストの別々の第1のおよび第2のセットとを備える。ワークレストは、被加工物(40,60)の外周面が一方向に回転するチャックで研削される場合、外周面はワークレストの第1のセット(26,28)のみに接触するように付勢され、かつ、チャックの回転方向が逆の状態で当該被加工物の内周面が研削される場合、外周面はワークレストの第2のセット(30,32)のみに接触するように付勢されるように構成可能である。このような被加工物保持アセンブリを用いた研削方法についても説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削機の被加工物保持アセンブリであって、
被加工物中心軸を中心として同心円状に設けられた外周面と内周面とを有する被加工物を保持するための磁気チャックと、
研削中にチャック回転軸を中心として前記チャックを回転させるためのチャック駆動装置と、
横側面が前記チャックと係合している状態で、前記チャックによって保持される環状被加工物の前記外周面と係合するためのワークレストの別々の第1のおよび第2のセットとを備え、
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットは、
前記チャックがチャック回転方向に回転している状態で、前記被加工物の前記外周面が研削砥石回転方向に回転している研削砥石によって研削される場合、前記外周面は前記ワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの前記第1のセットのみに接触するように付勢されるように、かつ、
前記チャックの前記回転方向が前記外周面の研削中の前記チャック回転方向に対して逆の状態で、前記被加工物の内周面が前記研削砥石回転方向に回転している研削砥石によって研削される場合、前記外周面は前記ワークセットの第1のおよび第2のセットのうちの前記第2のセットのみに接触するように付勢されるように構成可能である、アセンブリ。
【請求項2】
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットの前記ワークレストは、前記被加工物の前記外周面および前記内周面を研削するステップの間、前記チャック回転軸に対して同じ位置にある、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの少なくとも1つのセットの前記ワークレストは、他方のセットの前記ワークレストとは独立して前記チャック回転軸に対して移動可能な可動式ワークレストである、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの少なくとも1つのセットの前記ワークレストの各々は、前記ワークレストを、前記チャック回転軸に対する事前に定められた前進位置と後退位置との間で切替える結合部を介して、前記アセンブリに結合されている、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
各可動式ワークレストはそれぞれのワークレスト支持部に結合され、ワークレストアクチュエータが各可動式ワークレストと関連付けて設けられ、各ワークレストアクチュエータは、そのワークレスト支持部に対して前記それぞれのワークレストを移動させるように動作可能である、請求項3または4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
各ワークレストアクチュエータは、前記それぞれのワークレストをその前進位置と後退位置との間で切替えるように動作可能である、請求項4に従属する場合の請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
各ワークレストアクチュエータは、前記それぞれのワークレストをそのワークレスト支持部に対して線形に移動させるように動作可能である、請求項5または6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
各ワークレストアクチュエータは、線形基準軸に沿って前記それぞれのワークレストを移動させるように動作可能であり、各ワークレストアクチュエータは、前記ワークレストに結合された被駆動部材を有する駆動アセンブリを含み、前記線形基準軸は、前記被駆動部材および前記ワークレストを通って延在する、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
各ワークレストアクチュエータは駆動アセンブリを含み、前記駆動アセンブリは、前記ワークレストに結合され、かつ、前進位置と後退位置との間でアクチュエータ本体に対して摺動可能な被駆動部材を有し、前記被駆動部材および前記アクチュエータ本体は、前記被駆動部材がその前進位置にあるときに互いに係合する補完的な円錐台面を画定する、請求項7または8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記円錐台面の中心基準軸が前記線形基準軸と一致する、請求項8に従属する場合の請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
各ワークレストアクチュエータは、そのワークレスト支持部に対して回転する態様で前記それぞれのワークレストを移動させるように動作可能である、請求項5または6に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットの各々のセットは、2つのワークレストからなる、先行する請求項のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
機台と、前記機台によって支えられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の被加工物保持アセンブリとを備える、研削機。
【請求項14】
CBN材料からなる研削面を有する研削砥石を含む、請求項13に記載の研削機。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の外周面および内周面を有する被加工物を保持する被加工物保持アセンブリを用いて、前記被加工物を研削する方法であって、
研削砥石が研削砥石回転方向に回転している状態で、前記外周面の研削中に第1の被加工物回転方向に前記被加工物を回転させるステップと、
前記研削砥石が前記研削砥石回転方向に回転している状態で、前記内周面の研削中に前記第1の被加工物回転方向と反対の第2の被加工物回転方向に前記被加工物を回転させるステップとを備える、方法。
【請求項16】
前記研削砥石は、前記外周面の研削中に前記第1の被加工物回転方向と反対の方向に回転し、
前記研削砥石は、前記内周面の研削中に前記第1の被加工物回転方向と同じ方向に回転する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記研削砥石は、前記外周面の研削中に前記第1の被加工物回転方向と同じ方向に回転し、
前記研削砥石は、前記内周面の研削中に前記第1の被加工物回転方向と反対の方向に回転する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記被加工物中心軸が前記チャック回転軸と同軸である状態で前記被加工物が位置する場合、各ワークレストは、前記被加工物の前記外周面によって画定される軌跡から径方向に間隔をおいて設けられた被加工物係合面を有する、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットの前記ワークレストは、前記被加工物の前記外周面および前記内周面を研削するステップの間、前記チャックに対して同じ位置にある、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの少なくとも1つのセットの前記ワークレストはそれぞれ、前記被加工物の前記外周面および前記内周面を研削するステップの間、前記チャックに対して異なる位置にある、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、研削機の被加工物保持アセンブリに関し、特に、研削中に環状被加工物を保持するのに適したアセンブリに関する。また、被加工物を保持するこのようなアセンブリを用いる研削方法についても説明する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薄い環状被加工物は、その直径全体にわたって本質的に剛性でない場合がある。径方向に過度に変形させることなく、研削中に被加工物をワークスピンドルに固定する必要がある。このような形状の被加工物は、スクロールチャック、拡張マンドレルおよびコレットチャックを用いて把持することができる。この部分を保持するために使用される力の大きさは、変形を最小限にするために低減可能であるが、被加工物の脱落を防ぐために切削力を制限する必要があるため、加工サイクル時間が犠牲になる可能性がある。
【0003】
磁気面板またはチャックは、平面研削プロセスと回転研削プロセスとの両方で使用される。これらは特に、被加工物の片面をあらかじめ平坦に加工しておき、磁気チャックによる機械的な歪みが、完成品に要求される精度よりも著しく小さい場合に適している。
【0004】
シューまたはマイクロセントリック研削は、被加工物をロボットで搭載し、外周面と内周面との両方で加工することができる被加工物保持方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、研削機の被加工物保持アセンブリを提供し、アセンブリは、
被加工物中心軸を中心として同心円状に設けられた外周面と内周面とを有する被加工物を保持するための磁気チャックと、
研削中にチャック回転軸を中心としてチャックを回転させるためのチャック駆動装置と、
横側面がチャックと係合している状態で、チャックによって保持される環状被加工物の外周面と係合するためのワークレストの別々の第1のおよび第2のセットとを備え、
ワークレストの第1のおよび第2のセットは、
チャックがチャック回転方向に回転している状態で、被加工物の外周面が研削砥石回転方向に回転している研削砥石によって研削される場合、外周面はワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの第1のセットのみに接触するように付勢されるように、かつ、
チャックの回転方向が外周面の研削中のチャック回転方向に対して逆の状態で、被加工物の内周面が研削砥石回転方向に回転している研削砥石によって研削される場合、外周面はワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの第2のセットのみに接触するように付勢されるように構成可能である。
【0006】
このように、被加工物の外周面と内周面とを研削する間に発生する研削力は、ワークレストのそれぞれ別のセットによる抵抗を受ける。これにより、アセンブリは、各研削時に被加工物を正確かつ強固に拘束することができる。これはさらに、研削と研削との間に被加工物を取外す、または研摩機を再構成することなく達成することができ、それによって、かかる時間を最小限に抑え、加工プロセスの精度を向上させることができる。
【0007】
このようなアセンブリ構成により、大きな研削力に対して被加工物を確実に拘束できる可能性がある。そのため、超砥粒砥石(研削面が立方晶窒化ホウ素(CBN)材料からなる砥石など)を用いて外周面と内周面との両方を研削することが可能になる場合がある。高付加価値で小ロットのオーダーメイド部品は、部品の作業面を仕上げるために生成された経路または軌跡を辿るように汎用プロファイル(小半径など)でドレッシング可能な超砥粒砥石の使用が有効である。高い研削比(すなわち、体積材料除去量/体積砥石損失量)も、超砥粒砥石を用いた小ロット生産に有益である。
【0008】
内周面の研削、特に超砥粒砥石を使用した研削では、被加工物を安全に保持するための磁気チャックの強度が不十分な場合があるため、既知の構成のワークレストから部品を押し退ける方向に、はるかに大きな力が発生する可能性がある。
【0009】
いくつかの実装例では、ワークレストの第1のおよび第2のセットのワークレストは、被加工物の外周面および内周面を研削するステップの間、チャック回転軸に対して同じ位置にある。この構成では、被加工物の外周面および内周面の研削中、ワークレスト位置がチャック回転軸に対して固定されるので、この研削工程が簡略化される。
【0010】
ワークレストの第1のおよび第2のセットの各セットの少なくとも1つは、他方のワークレストとは独立してチャック回転軸に対して移動可能な可動式ワークレストでもよい。
【0011】
ワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの少なくとも1つのセットのワークレストは、他方のセットのワークレストとは独立してチャック回転軸に対して移動可能な可動式ワークレストでもよい。これにより、被加工物の異なるサイズおよび比率に合わせて、可動式ワークレストの位置を適宜調整することができ、より汎用性の高い被加工物保持アセンブリを提供することができる。被加工物中心軸をチャック回転軸からどの程度横方向にずらすかは、研削作業中の所与の被加工物の必要に応じて変更することができる。また、保持アセンブリによる被加工物の保持の安定性を向上させることも可能である。好ましい構成では、ワークレストの第1および第2のセットの両方のセットのワークレストは、他方のセットのワークレストから独立してチャック回転軸に対して移動可能な可動式ワークレストである。
【0012】
各可動式ワークレストは、他のワークレストと独立して、チャック回転軸に対して移動可能でもよい。
【0013】
1つ以上の可動式ワークレストの位置は、異なる研削作業の間で調整することができる。たとえば、被加工物の外周面を研削するステップと内周面を研削するステップ(またはその逆)との間に、位置を調整することができる。
【0014】
ワークレストの第1のおよび第2のセットのうちの少なくとも1つのセットのワークレストの各々は、ワークレストをチャック回転軸に対して事前に定められた前進位置と後退位置との間で切替えることができる(それぞれのまたは共有の)結合部を介して、加工物保持アセンブリに結合されてもよい。ワークレスト(またはワークレストのセット)は、それぞれの機械的な結合部によってアセンブリに結合されてもよく、それぞれの機械的な結合部は、工作機械の制御システムの制御下で動作して、対応するワークレスト(またはワークレストのセット)を、2つの位置の間で切替えてもよい。
【0015】
いくつかの研削手順では、被加工物の外周面を研削するステップと内周面を研削するステップ(またはその逆)との間に、ワークレストの1つまたは両方のセットの位置が調整される。たとえば、セットの一方をチャック回転軸から遠ざかるように後退させる、またはセットのうちの一方をチャック回転軸に向かって前進させることができる。さらに他の例では、被加工物の外周面を研削するステップと内周面を研削するステップ(またはその逆)との間に、セットのうちの一方がチャック回転軸から遠ざかるように後退させられ、他方のセットがチャック回転軸に向かって前進させられる。
【0016】
各可動式ワークレスト(またはワークレストのセット)は、それぞれのワークレスト支持部に結合されてもよく、ワークレストアクチュエータが各可動式ワークレスト(またはワークレストのセット)と関連付けて設けられてもよく、各ワークレストアクチュエータは、そのワークレスト支持部に対してそれぞれのワークレスト(またはワークレストのセット)を移動させるように動作可能である。各ワークレスト支持部の位置は、被加工物保持アセンブリの支持構造に対して固定されてもよく、調整不可能でもよい。
【0017】
各ワークレストアクチュエータは、それぞれのワークレスト(またはワークレストのセット)を事前に定義された前進位置と後退位置との間で切替えるように動作可能でもよい。
【0018】
各アクチュエータは、他の中間位置の選択を可能にすることなく、2つの位置のうちの一方から他方へ、またはその逆へ、それぞれのワークレスト(またはワークレストのセット)の切替えのみを容易にするように構成されてもよい。
【0019】
いくつかの実装例では、各ワークレストアクチュエータは、そのワークレスト支持部に対して線形にそれぞれのワークレスト(またはワークレストのセット)を移動させるように動作可能である。
【0020】
各ワークレストアクチュエータは、線形基準軸に沿ってそれぞれのワークレストを移動させるように動作可能でもよく、各ワークレストアクチュエータは、ワークレストに結合された被駆動部材を有する駆動アセンブリを含んでもよく、線形基準軸は、被駆動部材およびワークレストを通って延在してもよい。
【0021】
駆動アセンブリが被駆動部材に与える力の線とワークレストとを一致させることにより、より剛性の高いワークレストアクチュエータを提供することができる。駆動アセンブリは、たとえば、油圧式、空気圧式または電磁気式に作動させることができる。
【0022】
好ましくは、各ワークレストアクチュエータは駆動アセンブリを含み、駆動アセンブリは、ワークレストに結合され、かつ、前進位置と後退位置との間でアクチュエータ本体に対して摺動可能な被駆動部材を有する。被駆動部材およびアクチュエータ本体は、支持部材が前進位置にあるときに互いに係合する補完的な円錐台面を画定してもよい。円錐台面は、ワークレストに向かう方向で内側にテーパー状でもよい。補完的な面は、被駆動部材とアクチュエータ本体との間に運動学的な結合部をもたらして、それぞれのワークレストが前進位置にあるときに、それぞれのワークレストの信頼性の高い正確な位置を確保することができる。
【0023】
円錐台面の中心基準軸が線形基準軸と一致するように設けられてもよい。被駆動部材、円錐台面およびワークレストを共通の線形基準軸に沿って配列することで、ワークレストを並進させ、ワークレストを前進位置に保持するための剛性の精密な機構がもたらされる。
【0024】
または、各ワークレストアクチュエータは、そのワークレスト支持部に対して回転する態様でそれぞれのワークレスト(またはワークレストのセット)を移動させるように動作可能である。
【0025】
いくつかの好ましい例では、ワークレストの第1のおよび第2のセットの各々は、2つのワークレストからなる。
【0026】
一実施形態では、被加工物保持アセンブリは、4つのワークレストのみを含み得る。
ワークレストの第1のセット(被加工物の外周面を研削する際に使用)は、研削砥石がチャックに保持された被加工物と接触する、チャック回転軸に対する周方向位置から140~160°(好ましくは150°前後)の位置に、一つのワークレストを含み得る(時計回りまたは反時計回りで測定)。第2のセットは、研削砥石がチャックに保持された被加工物に接触する、チャック回転軸に対する周方向位置から50~70°(好ましくは60°前後)の位置に、別のワークレストを含み得る(時計方向または反時計方向で測定、ただし、ワークレストと同じ意味)。
【0027】
第2のワークレストセット(被加工物の内周面を研削中に使用)は、使用の際にチャックが保持する被加工物に研削砥石が接触する、チャック回転軸に対する周方向位置から170~190°(好ましくは180°前後)の位置にワークレストを含み得る。第2のセットは、チャックに保持された被加工物に研削砥石が接触する、回転軸に対する周方向位置から80°~100°(好ましくは90°前後)の位置に、別のワークレストを含み得る(時計回りまたは反時計回りで測定)。
【0028】
磁気チャックは、被加工物の平面と係合するためのチャック係合平面を画定してもよい。磁気チャックに対するワークレストの位置は調整可能であり、選択された位置で個別に固定されてもよい。
【0029】
本発明はさらに、機台と、機台によって支えられる、本明細書で説明するような被加工物保持アセンブリとを備える研削機を提供する。機械は、研削砥石軸を中心として研削砥石を回転させるための砥石駆動装置を含んでもよく、研削砥石軸は、機台の上方でチャック回転軸と実質的に同じ高さにある。
【0030】
研削機は、CBN材料からなる研削面を有する研削砥石を含み得る。
本発明はさらに、外周面および内周面を有する被加工物を保持する、本明細書で説明する被加工物保持アセンブリを用いて、被加工物を研削する方法を提供し、この方法は、
研削砥石が研削砥石回転方向に回転している状態で、外周面の研削中に第1の被加工物回転方向に被加工物を回転させるステップと、
研削砥石が研削砥石回転方向に回転している状態で、内周面の研削中に第1の被加工物回転方向と反対の第2の被加工物回転方向に被加工物を回転させるステップとを備える。
【0031】
いくつかの実施形態では、研削砥石は、外周面の研削中の第1の被加工物回転方向と反対の方向に回転し、研削砥石は、内周面の研削中に第1の被加工物回転方向と同じ方向に回転する。このように、下向き研削(climb grinding)が実行されてもよく、被加工物および研削砥石面は同じ方向に移動する。
【0032】
さらに他の実施形態では、研削砥石は、外周面の研削中の第1の被加工物回転方向と同じ方向に回転し、研削砥石は、内周面の研削中に第1の被加工物回転方向と反対の方向に回転する。このように、アップカット研削プロセスが実行されてもよく、被加工物および砥石面は反対方向に移動する。
【0033】
研削砥石と被加工物回転方向とのさらに他の組合わせも実施可能である。研削砥石と被加工物との接触点の位置を被加工物の周囲の周方向で調整して、被加工物保持アセンブリによって被加工物を保持する信頼性を向上させることも可能である。
【0034】
被加工物中心軸がチャック回転軸と同軸である状態で被加工物が設けられている場合に、各ワークレストは、被加工物の外周面によって画定される軌跡から径方向に間隔をおいて設けられた(ずらされた)被加工物係合面を有してもよい。これらのずれは、ワークレストの一方のセットと係合するように移動されると、被加工物を、ワークセットの他方のセットから遠ざかるように移動させるように選択可能である。
【0035】
被加工物が第1のセットのワークレストと係合し、かつ、チャックがチャック回転方向に回転する場合に、ワークレストの第1のセットに向かって被加工物を付勢するような合成力が被加工物にかかるように、第1のセットのワークレストがずらされている場合がある。被加工物が第2のセットのワークレストと係合し、かつ、チャックがチャック回転方向に回転する場合に、ワークレストの第2のセットに向かって被加工物を付勢するような合成力が被加工物にかかるように、第2のセットのワークレストがずらされている場合がある。
【0036】
ワークレストの第1のおよび第2のセットのワークレストは、被加工物の外周面および内周面を研削するステップ間、チャックに対して同じ位置にあってもよい。
【0037】
または、ワークセットの第1のおよび第2のセットのうちの少なくとも1つのセットのワークレストはそれぞれ、被加工物の外周面および内周面を研削するステップの間、チャックに対して異なる位置にあってもよい。
【0038】
本明細書に記載されたアセンブリおよび方法は、被加工物中心軸に垂直な平面において円形の断面を有する内周面および外周面を有するさまざまな被加工物の研削での使用に適している場合がある。たとえば、被加工物は、転がり要素軸受の軸受軌道のような薄いリングまたはスリーブの形態でもよい。外周面は、被加工物中心軸に対して径方向外側に面していてもよい。内周面は、被加工物中心軸に対して径方向内側に面していてもよい。
【0039】
以下において、添付の概略図を参照して、本発明の実施の形態を例示して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】公知の転がり要素軸受の構成部品を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリを示す側面図である。
図3】環状被加工物の外周面を研削する場合の本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリを示す側面図である。
図4】環状被加工物の内周面を研削する場合の本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリを示す側面図である。
図5】ワークレストの下側または上側の対と係合したときの被加工物のずれ位置を説明するための、本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリを示す側面図である。
図6】ワークレストと研削機構との干渉の可能性を説明するための図である。
図7】ワークレストと研削機構との干渉の可能性を説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリのある構成を示す側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリのある構成を示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリのさらに他の構成を示す側面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリのさらに他の構成を示す側面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリの代替的なワークレスト構成を示す側面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリの代替的なワークレスト構成を示す側面図である。
図14】リニアワークレスト作動アセンブリを示す斜視図である。
図15】リニアワークレスト作動アセンブリを示す横断面図である。
図16】代替的なリニアワークレスト作動アセンブリを示す平面断面図である。
図17】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリにおけるあるワークレスト構成を示す図である。
図18】本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリにおけるあるワークレスト構成を示す図である。
図19】ある方向の回転式ワークレスト作動アセンブリを示す平面図である。
図20】ある方向の回転式ワークレスト作動アセンブリを示す平面図である。
図21図18および図19に示すワークレスト作動アセンブリのワークレスト支持部を示す平面図である。
図22図19および図20に示すワークレストアセンブリを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面の詳細な説明
公知の転がり要素軸受の構成部品を図1に示す。組立てられた軸受では、軸受2の位置は軸受保持器4によって拘束されている。軸受は、外輪8の内部で内輪6の周囲を転がる。シール10および12は、軸受の反対側に位置する。振動および発熱を最小限に抑えるために、内周面および外周面の表面仕上げ、真円度および同心度の観点で、完成した内輪6および外輪8の寸法精度が高いことが望まれる。内周面と外周面との一方を研削するために他方の面を研削した後で被加工物を他の機械に搬送することなく両方の面を加工可能である場合、両方の面を加工する時間を最小限に抑えることができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る被加工物保持アセンブリ20を図2に示す。被加工物保持アセンブリ20は、磁気チャック22と、図面の平面に垂直なチャック回転軸24を中心としてチャックを回転させるための駆動装置(図示せず)とを含む。磁気チャック駆動装置は、アセンブリの支持構造を提供するアセンブリ本体21によって支えられている。使用時に、アセンブリ本体は工作機械(図示せず)の機台に取付けられる。
【0043】
図3および図4は、研削砥石42を用いた環状被加工物40の研削を模式的に示す。
ワークレストの第1のセットは、第1のおよび第2の下側ワークレスト26、28からなり、ワークレストの第2のセットは、第1のおよび第2の上側ワークレスト30、32からなる。ワークレストは、指支持部の形態でもよい。これらのワークレストは、磁気チャックに対して選択的に位置を固定することができる。各ワークレストは、磁気チャックに対する各ワークレストの被加工物係合面の位置の微調整を容易にするために、調整可能なスライドを含んでもよい。
【0044】
図2に示す構成では、ワークレスト26の位置が水平方向(すなわち、機台の基準面に平行な方向)にそのスライドによって調整可能になるように、ワークレストが配置されている。ワークレスト28,30および32は、それぞれのスライドを用いて、チャック回転軸に対して径方向に調整可能である。
【0045】
ワークレストの第1のセットは、被加工物保持アセンブリが研削機に取付けられている場合に、使用時にチャック回転軸よりも低い位置にある2つの下側ワークレストからなる。好ましくは、第1の下側ワークレスト26は、チャック回転軸24に対して、チャック回転軸から延在する垂直基準線から周方向に測定して120~180°の範囲の径方向位置に設けられている。好ましくは、第1の下側ワークレストは、垂直基準線から150°前後の径方向位置に設けられている。
【0046】
好ましくは、第2の下側ワークレスト28は、チャック回転軸から延在する垂直基準線から同じ周方向に測定して210~270°の範囲の、チャック回転軸に対する径方向位置に設けられている。第2の下側ワークレストは、基準線から240°前後の径方向位置に設けられていてもよい。
【0047】
ワークレストの第2セットは、使用時に2つの下側ワークレストより高い位置にある2つの上側ワークレスト30,32からなる。
【0048】
好ましくは、第1の上側ワークレスト30は、チャック回転軸から延在する垂直基準線から同じ周方向に測定して240~300°の範囲の、チャック回転軸に対する径方向位置に設けられている。より詳細には、第1のワークレストは、垂直基準線から270°前後の径方向位置に設けられてもよい。
【0049】
好ましくは、第2の上側ワークレスト32は、チャック回転軸から延在する垂直基準線から同じ周方向に測定して330~30°の範囲の、チャック回転軸に対する径方向位置に設けられている。より好ましくは、第2の上側ワークレストは、垂直基準線を中心とする径方向位置に設けられてもよい。
【0050】
下側ワークレストは、磁気チャック回転軸24に対しておおよそ5時の位置とおおよそ8時の位置とに設けられてもよい。上側ワークレストのペアは、磁気チャックに対しておおよそ9時の位置とおおよそ12時の位置とに設けられてもよい。ワークレストの径方向の向きは、チャック回転軸を通る垂直または水平の対称面を通って反射された場合、これらの位置に代替的に対応し得ることが理解されるであろう。
【0051】
各ワークレストは、被加工物係合面を提供するために、耐摩耗インサート34の形態の先端またはシューを含んでもよい。インサートは、炭化タングステン、またはセラミック材料、多結晶ダイヤモンド、もしくは硬質コーティング鋼などの類似の物理的特性を有する別の材料で形成されてもよい。適切な位置に固定されると、ワークレストは、磁気チャックに対してそれらの先端のある程度の揺動運動を許容可能である。
【0052】
このアセンブリを使用する場合、ワークレストは、ワークレストの被加工物係合面または先端が、研削される被加工物の中心軸がチャック回転軸と同軸の場合に、その外周面によって画定される軌跡から径方向に、たとえば0.6~0.8mmだけずれるように、磁気チャックに対して調整される。このために、仕上がり寸法に研削されたマスター部品を、磁気チャックによりチャック回転軸24に対して中心に把持し、ワークレスト設定を規定する位置までずらすことができる。ワークレストの下側ペアの調整スライドのクランプを緩めて、ずらしたマスター部品に接触するまでそれらの先端を移動できるようにする。先端の下側のペアが部品に接触するように設定されると、調整スライドは適切な場所にしっかりとクランプされている。マスター部品の若干変更されたずれ位置を用いて、同様の作業をワークレストの上側ペアについて行う。
【0053】
次に、被加工物が4つのワークレスト内のほぼ中央に搭載され、磁気チャックによって把持される。被加工物40は、その中心軸がチャック回転軸24から、次の研削作業で接触すべきワークレストのペアに概ね向かう方向にわずかに変位した位置に搭載される。次に、ワークヘッドは、後続の研削作業に依存する方向に磁気チャックを回転させるように設定される。被加工物は、ずれている被加工物に対する遠心作用により、磁気保持力に抗してチャックの面を横切って移動し、回転する研削砥石が被加工物に接触するための準備中に、ワークレストシューのペアのうちの一方に接触する。さらに、研削砥石が被加工物に与える研削力によって、被加工物はワークレストのペアと接触するように固定される。
【0054】
研削作業において、研削砥石は、被加工物の外周面に接触させられてもよい。被加工物に対する別の研削作業では、研削砥石を被加工物の内周面に接触させてもよい。これらの研削作業の一方においてチャックの回転方向を他方に対して逆にすることによって(研削砥石の回転方向は逆転させない)、各研削作業において被加工物をワークレストの異なるセットに接触させることができる。
【0055】
ワークレストは、チャックの回転方向を逆にすることで、他の介入を必要とせずに被加工物が研削と研削との間に、自動的にワークレストの一方のセットから他方のセットに移動するように構成されてもよい。これにより、被加工物の内面と外面との研削を切替えるプロセスが簡略化され、2つの研削の切替えにかかる時間を短縮することができる。
【0056】
図3に示す実装例では、研削砥石は被加工物の外周面を加工している。被加工物は、矢印44で示すように、磁気チャック22によって時計回りに回転される。研削砥石42は、矢印46で示すように反時計回りに回転される。被加工物は下側ワークレスト26および28に接触するように付勢される。研削砥石の中心軸を被加工物の中心軸より上に設けることにより、材料を除去する間に研削力が発生する。これにより、被加工物が下側ワークレストに向かって付勢される。この例では、被加工物が下向き研削によって加工されて、被加工物と砥石面とが同じ方向に移動する。
【0057】
図4は、被加工物40の内周面を研削する作業を示す図である。被加工物をワークレスト30,32に接触するように移動させるように、被加工物を、矢印50で示すように(図4で見て)反時計回りに回転させる。研削砥石42を、被加工物の内周面に接触させる。研削砥石42は、ワークレスト30の径方向において被加工物の反対側に設けられている。研削砥石を、矢印52で示すように、反時計回りに回転させる。研削砥石の中心軸は、被加工物をワークレスト30および32に係合させる被加工物の中心軸よりも下方に位置している。内周面が下向き研削で研削されて、被加工物と砥石面とが同方向に移動する。
【0058】
そうではなく、内周面を外周面の前に研削してもよい。両面が仕上がりサイズに研削されて終了すると、被加工物を磁気チャックから解放し、取外し機構によって取出すことができる。他の実装例では、被加工物の内周面と外周面とがアップカットで研削されて、研削被加工物と砥石面とが反対方向に移動する。
【0059】
ワークレストの2つのセットの間のチャック面を横切る被加工物の変位が図5に示されている。円60は、被加工物の中心軸がチャック回転軸24と一致する場合に被加工物が占める位置を示す。外周面を研削するとき、被加工物はチャックによって時計回りに回転され、ワークレスト26および28の下側セットに接触している。この位置で、被加工物は、円60の位置から円60’の位置(図5に示すように見たときにチャックの中心軸に対して4時前後に相当する径方向)へ変位される。内周面を研削する場合、被加工物は反時計方向に回転され、ワークレスト30および32の上側セットに接触している。この位置で、被加工物は、円60の位置から円60’’の位置(図5に示すように見たときにチャックの中心軸に対しておおよそ2時に相当する径方向)へ変位される。このようにずらすことにより、上記のようにチャックを回転させると、被加工物が被加工物のそれぞれのセットに向かって付勢される。
【0060】
多くの被加工物の内周面と外周面との両方を、ワークレスト用の単一の機構を用いて、本明細書に記載の被加工物保持アセンブリを使用して研削できることが見出された。これらの状況では、最初にワークレストの位置を固定し、その後、ワークレストの位置を変更することなく、内周面と外周面との両方の研削を実施することが可能である。
【0061】
しかしながら、被加工物の形状によっては、内面研削と外面研削との一方または両方に望ましいワークレスト位置が、他方の研削について意図された被加工物の位置と干渉する可能性がある。この問題を図6および図7に示す。
【0062】
図6では、被加工物40は、その内周面の研削について意図した位置に示されている。この研削を実行するために、被加工物40は、上側ワークレスト30および32によって支持されている。しかしながら、図面に記された領域70では、下側ワークレスト28(被加工物の外周面を研削する際に望ましい位置にある)が、被加工物の所望の意図された位置決めに干渉することが分かる。
【0063】
この問題が発生する可能性のある他の状況を図7に示す。図7の概略図に描かれたワークレストの構成は、ワークレストの第1のセットのワークレスト32が先行する図面に示されたものと正反対の位置にある点で、先行する図面のものと異なる。被加工物40は、その内周面および外周面の研削中に望まれる2つのずれ位置にあることが示されている。ワークレストのこのようなずれおよびそれに伴う変位は、この図面では説明のために誇張されている。実際には、ずれは非常に小さい場合がある。研削砥石80によるその内周面の研削中に被加工物40がワークレスト30および32と係合する場合、ワークレスト28がその所望の位置と干渉することが分かる。同様に、被加工物がワークレスト26および28と係合している状態、または研削砥石82によるその外周面の研削では、他方のセットのワークレスト32は、被加工物の所望の位置と干渉する。
【0064】
図6および図7を参照して説明した干渉の問題に対処するために、本開示に係る被加工物保持アセンブリは、前進位置と後退位置との間で切替え可能な1つ以上のワークレストを含んでもよい。したがって、ワークレストは、被加工物に係合するように意図されると研削中は前進位置で保持され、その後、被加工物から離れることが意図されると後退位置に切り替わることができる。前進位置と後退位置との間で必要とされる変位の大きさは、たとえば1ミリメートル未満でもよい。
【0065】
図8および図9は、そのワークレストが2つの異なる構成にある被加工物保持アセンブリを示す。図8では、ワークレストは、その内周面の研削中に被加工物40を保持するのに適した構成である。ワークレスト30および32は前進位置にあり、被加工物に接触している。ワークレスト26および28は後退位置にあり、被加工物の外周面から間隔をあけて設けられている(この例では6mm前後)。図9では、ワークレストは、外周面の研削中に被加工物40を保持するのに適した構成である。この場合、ワークレスト30および32は後退位置にあり、外周面の被加工物から間隔をあけて設けられている(この例では約6mm)。ワークレスト26,28は前進位置にあり、被加工物に接触している。
【0066】
図10および図11は、図8および図9と同様の態様で、そのワークレストが2つの異なる構成にある被加工物保持アセンブリを示す。図10および図11の例では、ワークレスト32は、図8および図9のものと正反対の代替的な位置に示されている。図10および図11に示される構成の各々において、研削砥石の中心軸は、被加工物をそれぞれのワークレストに向けて駆動するように、被加工物の中心軸よりも上方に設けられていることが好ましい。これらの図に示す研削砥石およびチャックの回転方向によって、被加工物の下向き研削が行われる。砥石またはチャックの回転方向を逆にして、アップカット研削を行うこともできる。
【0067】
その内周面および外周面の研削中に被加工物を支持するのにも適したワークレストの周方向配置の他の変形例を説明するために、さらに他の被加工物保持アセンブリを図12および図13に示す。図12に示す配置は、チャック回転軸24を通って延在する水平面において反射された場合、図10の配置に相当する。図13に示す配置は、チャック回転軸24を通って延在する垂直面において反射された場合、図12の配置に相当する。図12および図13の配置は、たとえば工作機械の他の部品との衝突を避けるために、被加工物保持アセンブリの下部領域から離してワークレストを設けることが有利である工作機械構成において好ましい場合がある。
【0068】
図12および図13に示す構成の各々において、研削砥石の中心軸は、被加工物の内面と外面との両方の研削中に、被加工物を各研削中にそれぞれのワークレストに向けて駆動するように、被加工物の中心軸よりも下方に位置することが好ましい。研削砥石は、図12では右から左へ、図13では左から右へ移動して、被加工物を研削する。
【0069】
研削中に被加工物中心軸が磁気チャック回転軸からずれる方向は、チャックの回転方向と共に、研削時に被加工物に対する合成力の方向を決定する。チャックを(被加工物搭載側から見て)時計回りに回転させると、右にずれた被加工物は下向きの力に、左にずれた被加工物は上向きの力に、上方のずれは右向きの力に、下方のずれには左向きの力になる。チャックを(被加工物搭載側から見て)反時計回りに回転させると、左側にずれた被加工物は下向きの力に、右側にずれた被加工物は上向きの力に、上方のずれは左向きの力に、下方のずれは右向きの力になる。各セットのワークレストは、所望のオフセットに対応し、かつ被加工物への関連する合成力を打ち消すように、適宜位置決めすることができる。
【0070】
図12において、被加工物の内面の研削時に、チャックを時計方向に回転させ、被加工物を下および左にずらすと、被加工物がシュー30および32のペアに向けて駆動される。被加工物の外面の研削時に、チャックを反時計回りに回転させ、被加工物を上および右にずらすと、被加工物がシュー26および28のペアに向けて駆動される。
【0071】
図13において、被加工物の内面の研削時に、チャックを反時計回りに回転させ、被加工物を下および右にずらすと、被加工物がシュー30および32のペアに向けて駆動される。被加工物の外面の研削時に、チャックを時計周りに回転させ、被加工物を上および左にずらすと、被加工物はシュー26および28のペアに向けて駆動される。
【0072】
図14および図15は、前進位置と後退位置との間でワークレストを線形方向に機械的に切換えるためのワークレスト作動アセンブリ90を示す。このアセンブリは、ワークレストフィンガ(図示せず)をその間にクランプするためのシューアームクランプブロック92のペアを含む。シューアームクランプブロックは、支持部材94に取付けられている。アクチュエータハウジング96は、支持部材94をそれに対して相対的に移動させるための作動機構を含む。アクチュエータハウジングは、被加工物保持アセンブリの支持面に固定するための下側キャリッジ98を含む。支持部材94を下側キャリッジ98に対して駆動するために、油圧ピストン100が設けられている。ピストンは、研削中に関連するワークレストをその前進位置で確実に保持するために、たとえば最大で5トンの力をかけることができる。
【0073】
作動アセンブリは、後退したワークレスト位置に対応する構成で図14および図15に示されている。ピストン100は、支持部材94を図15の右側に向かって、前進したワークレスト位置に対応する構成に駆動するように動作可能である。作動機構は、支持部材94を下側キャリッジ98に対してその前進位置に正確に位置決めするための装置を含む。たとえば、この装置は、運動学的取付け部102の形態でもよい。1つ以上のさらに他の運動学的取付け部104も含まれてもよい。運動学的取付け部は、たとえば、3V運動学的取付け部の形態でもよい。ピストンは、戻しばね106に対して作用する。運動学的取付け部およびばねは、ベロー108によって囲まれている。
【0074】
図16は、前進位置と後退位置との間でワークレストを線形方向に機械的に切替えるための、別のワークレスト作動アセンブリ130を示す。駆動部品132が、ピストン136に結合されている。作動アセンブリは、ピストンを前進位置に向けて駆動するように動作可能な油圧式ピストン駆動アセンブリ134を含む。ピストンは、戻しばね133に対して作用する。ピストン駆動アセンブリによってピストンに作用する力が緩和されると、駆動部品は、戻しばねによってその後退位置に戻される。
【0075】
駆動部品132の反対側の端部は、ピボット140を介してワークレスト142に枢動可能に結合されている。ピストンの作動によって、駆動部品132がアクチュエータ本体144に対して移動する。回転防止ピン154が、アクチュエータ本体に取付けられており、駆動部品と摺動可能に係合している。これらのピンは、アクチュエータ本体に対する駆動部品(およびワークレスト142)の回転を防止する役割を果たす。
【0076】
前進構成のアセンブリ130が図16に示されている。この構成では、駆動部品132によって画定される円錐台面146は、アクチュエータ本体によって画定される補完的な面148と係合している。この境界面は、アクチュエータ本体に対する駆動部品の運動学的位置を提供する。円錐台面146は、中心軸150を有する。この軸はまた、ピストン136およびワークレスト142の中心を通って延在する。ピストンが及ぼす力を円錐台面146およびワークレストと整合させることは、前進構成の作動アセンブリの剛性を高めるのに役立つ。
【0077】
図17および図18は、図8に示されるものと同様のワークレストの周方向の配置を有する被加工物保持アセンブリを示す。この例では、ワークレストは、回転する態様で動作するワークレスト作動アセンブリを使用して、後退位置と前進位置との間で移動可能である。
【0078】
図17に示す構成では、ワークレスト26および28は、被加工物の外周面の研削を実施するために前進位置にある。ワークレスト30および32は、被加工物の外周面から間隔をあけた後退位置に枢動している。逆に、図18では、ワークレスト30および32は、被加工物の内周面の研削を実施するために、前進位置にある。ワークレスト26および28は、後退位置に枢動している。
【0079】
図19図22は、図17および図18によって図示されるような前進位置と後退位置との間でワークレストを回転する態様で機械的に切替えるためのワークレスト作動アセンブリ110に関する。アセンブリ110は、ワークレスト指支持部(図示せず)をその間でクランプするためのシューアームクランプブロック112のペアを含む。シューアームクランプブロックは、上側シュー支持板114に搭載されている。アセンブリはまた、下側支持板116を含む。使用時には、アセンブリは、固定ボルト118を用いて支持面に固定される。
【0080】
上側支持板114は、ピボット120によって下側支持板116に枢動可能に結合されている。図20では、上側支持板は、ピボット120を中心に下側支持板に対して枢動している。アセンブリは、上側支持板をその枢動位置と非枢動位置との間で駆動するための3つの旋回作動ピストン122を含む。ピストンは、空気圧式または油圧式で作動させることができる。
【0081】
本明細書に記載の実施形態において、「約」、「実質的に」および「前後」は、記載値のプラスもしくはマイナス5%または5°を意味する場合がある。
【0082】
本明細書での垂直または平行な相対的な向きなどの言及は、実用的な許容範囲内で構成要素間の垂直または平行な関係を定義していると解釈されることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】