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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】仮想3次元構造モデル作成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20230112BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230112BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230112BHJP
   B29C 64/20 20170101ALI20230112BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20230112BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230112BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230112BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20230112BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/02
B33Y80/00
B29C64/20
B29C64/40
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528350
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020082656
(87)【国際公開番号】W WO2021099451
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】102019131243.4
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019135526.5
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522190708
【氏名又は名称】ケーティーエム テクノロジーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KTM TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】St. Leonharder Strasse 10, 5081 Salzburg/Anif(AT)
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マルシャル, ダーヴィト
(72)【発明者】
【氏名】リップル, ヘルベルト
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AM23
4F213AR06
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR13
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL62
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、ボディ(5)の仮想3次元構造モデル(19)を作成する方法と装置に関し、ボディ(5)の幾何学モデル(16)から外殻形状(25)と基本体積(26)を確認するステップ、外殻形状(25)、基本体積(26)を考慮してボディ(5)の数値モデル(18)を作成するステップ、数値モデル(18)に変数(27)を作用させ、数値モデル(18)に基づいてボディ(5)の目標特性(30)を確立するステップ、ボディ(5)の現実特性(32)を定義する構造モデル(19)を作成するステップ、現実特性(32)を目標特性(30)と調整させるために構造モデル(19)を反復的に最適化するステップを含む。構造モデル(19)の反復最適化の間に構造モデル(19)のパラメータ(11、12、13)を修正することによって、ボディ(5)の機械的、熱的、空気力学的な現実特性(32)が、ボディ(5)のこれらの目標特性(30)に適合される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ(5)の仮想3次元構造モデル(19)を作成する方法であって、
ボディ(5)の幾何学モデル(16)から外殻形状(25)および基本体積(26)を確認するステップ、
前記外殻形状(25)および/または前記基本体積(26)を考慮して前記ボディ(5)の少なくとも1つの数値モデル(18)を作成するステップ、
前記数値モデル(18)に少なくとも1つの変数(27)を作用させ、かつ、前記少なくとも1つの変数(27)が作用する前記数値モデル(18)に基づいて前記ボディ(5)の目標特性(30)を確立するステップ、
前記ボディ(5)の現実特性(32)を定義する構造モデル(19)を作成するステップ、および
前記現実特性(32)を前記目標特性(30)に調整させるために前記構造モデル(19)を繰り返し最適化するステップ、
を有し、
構造モデル(19)の前記繰り返し最適化の間に、前記ボディ(5)の機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性(32)が、前記構造モデル(19)の少なくとも1つのパラメータ(11、12、13)を修正することによって前記ボディ(5)の機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性(30)に適合される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記数値モデル(18)および/または前記構造モデル(19)が外殻形状(25)に適応されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造モデル(19)は、前記数値モデル(18)の構造均衡(33)に基づいて作成されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記構造モデル(19)が、互いに連結された複数の構造要素(9)、特に表面要素および/または格子要素を含む、複数のセル(7)から形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの単一の構造要素(9)の少なくとも1つの構造パラメータ(11)が修正されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの単一の構造要素(9)が、これが機械的、熱的、および/または空気力学的に異方性の特性を有するように修正されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの構造パラメータ(11)が、前記構造要素(9)の長手方向および/または横断方向で修正されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記構造パラメータ(11)として、前記構造要素(9)の材料パラメータ(12)および/または幾何学パラメータ(13)が修正されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記材料パラメータ(12)として、前記構造要素(9)の密度、硬度、強度、弾力性、延性、材料の減衰、熱膨張、熱伝導率、耐熱性、比熱容量、および/または低温靭性が修正されることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記幾何学パラメータ(13)として、前記構造要素(9)の厚さ、長さ、断面形状、および/または輪郭が修正されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
同一の前記セル(7)の少なくとも2つの構造要素(9)の少なくとも1つの構造パラメータ(11)が互いに異なるように設計されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記構造モデル(19)の前記繰返しの最適化において、付加製造装置(3)の少なくとも1つの製造パラメータ(28)が考慮されることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記製造パラメータ(28)として、前記製造装置(3)の製造空間(8)の内部の温度分布および/または前記製造空間(8)の前記内部の温度変化が考慮されることを特徴とする請求項の1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記構造モデル(19)の少なくとも1つのパラメータ、特に少なくとも1つの単一の構造要素(9)の少なくとも1つの構造要素パラメータ(11)が製造パラメータ(28)に応じて修正されることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの方法ステップ、特に前記構造モデルの前記繰返しの最適化が、人工知能を有するように好ましくは設計された処理ユニット(2)によって実行されることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ボディ(5)を造形するための付加製造方法、特に3Dプリントプロセスであって、
前記ボディ(5)の仮想3次元構造モデル(19)を作成するステップ、
前記仮想3次元構造モデル(19)に基づいて付加製造装置(3)用の製造データを作成するステップ、および
前記製造データに基づいて前記付加製造装置(3)で前記ボディ(5)を製造するステップ、
を有し、
前記ボディ(5)の前記仮想3次元構造モデル(19)が請求項1~15のいずれか1の方法で作成される
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
ボディ(5)の仮想3次元構造モデル(19)を作成するためのおよび/または前記ボディ(5)を製造するための装置(1)であって、
前記ボディ(5)の前記仮想3次元構造モデル(19)を作成するための処理ユニット(2)、および/または、
前記ボディ(5)を製造するための付加製造装置(3)、
を備え、
前記処理ユニット(2)が、請求項1~16のいずれかの1の方法に従って前記ボディ(5)の前記仮想3次元構造モデル(19)がこの処理ユニット(2)で作成され得るように設計されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
ボディ(5)、特にコンポーネントであって、
複数の構造要素(9)、特に互いに連結される表面要素および/または格子要素を含む複数のセル(7)から形成される構造(6)を有し、
前記ボディ(5)が、請求項1~16のいずれか1の方法に従って造形されたものである、
ことを特徴とするボディ。
【請求項19】
フォームロック方式および/または一体方式で前記構造が連結さている支持要素を含むことを特徴とする請求項18に記載のボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディの仮想3次元構造モデルを作成する方法に関する。さらに、本発明は、ボディを造形するための付加製造方法、特に3Dプリンティングプロセスに関する。さらに、本発明は、ボディの仮想3次元構造モデルを作成しおよび/またはボディを製造するための装置に関する。さらに、本発明は、この方法で造形されるボディに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開第2017/123268号は、付加製造によって形成される部分の形状に適合した格子構造を作成するシステムおよび方法を説明する。その方法は、部分のコンピュータモデルを作成し有限要素メッシュを生成することを含む。また、複数のセル状の格子コンポーネントを含む格子構造が生成されてもよい。有限要素メッシュのメッシュ要素の一部は、有限要素メッシュが部分の全体的な形状に適合するように変形されてもよい。そして、格子構造は、有限要素メッシュの有限要素に対応するセル周期を持つように変形されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/123268号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって解決される課題は、先行技術から知られている欠点を解消すること、特に、複数のセルから形成されるボディの構造の機械的、熱的、および/または空気力学的な特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、独立請求項の特徴によって解決される。さらなる有利な実施形態が従属請求項および図面から得られる。
【0006】
本発明は、ボディの仮想3次元構造モデルを作成する方法に関する。「構造」という用語は、特に、格子構造および/または表面構造を指すものと解釈される。構造は、複数のセルから形成され得る。これらのセルは、互いに連結される複数の構造要素、特に表面要素および/または格子要素を含むことができる。
【0007】
その方法において、外殻形状および基本体積が最初に幾何学モデルから確認される。幾何学モデルは、例えば、CADモデルであり得る。外殻形状は、仮想ボディの外殻を形成する。基本体積は、外殻形状によって囲まれる体積を形成する。したがって、基本体積は、外殻形状によって少なくとも部分的に囲まれている。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0008】
その後、本発明による方法において、外殻形状および/または基本体積を考慮してボディの少なくとも1つの数値モデルが作成される。数値モデルは、FEモデル(有限要素モデル)および/またはFVモデル(有限体積モデル)であり得る。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0009】
数値モデルには、少なくとも1つの変数が作用する。「変数」という用語は、本質的に、ボディの意図された使用の最中にボディに作用する影響変数および/または負荷変数を指すものと解釈される。数値モデルには、少なくとも1つの機械的、熱的、および/または空気力学的な変数が作用する。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0010】
そして、少なくとも1つの変数が作用する数値モデルに基づいて、ボディの目標特性が確立される。これは、好ましくは、ユーザによって、確立されおよび/または予め定義される。加えてまたは代わりに、これは、処理ユニットによる自動化された手法で、確立されおよび/または予め定義され得る。この場合、少なくとも1つの機械的、熱的、および/または空気力学的な変数が作用する数値モデルに基づいて、ボディの機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性が確立される。ここで、ボディの目標特性は、好ましくは、機械的、熱的、および/または空気力学的に異方的であるように確立される。これは、ボディが、好ましくは方向に依存した機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性を有することを、意味する。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0011】
その後、構造モデルが作成される。「構造モデル」という用語は、複数のセルから構成される、ボディの仮想モデルを指すものと、解釈される。セルは、複数の構造要素、特に表面要素および/または格子要素から形成され得るものであり、これらは互いに連結されている。構造モデルは、ボディの少なくとも1つの現実特性を定義する。構造モデルは、ボディの機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性を定義する。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0012】
好ましくは、数値モデルおよび/または構造モデルは、外殻形状に適応される。「適応した」という用語は、外殻形状に隣接する数値モデルおよび/または構造モデルのセルが外殻形状によって切断されまたは分割されるのではなく、セルが外殻形状と同一平面上で終了するようにその寸法が外殻形状に正確に適合されるものと、解釈される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0013】
構造モデルは、現実特性を目標特性に適合させるために繰り返し最適化される。その際に、ボディの少なくとも1つの機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性が、構造モデルの少なくとも1つのパラメータを修正することによってボディの機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性に適合される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。有利なことに、その結果、改善された機械的、熱的、および/または空気力学的な特性によって区別される構造モデルが作成され得る。
【0014】
数値モデルの構造均衡を考慮しおよび/またはそれに基づいて構造モデルが作成されるのが有利である。「構造均衡」という用語は、数値モデルの数値メッシュそれらのパラメータであって数値メッシュの個々のセルの均衡を定義するものを指すと解釈される。構造均衡は、特に数値モデルの数値メッシュの角点、特にその座標であり得る。好ましくは、構造モデルは、数値モデルのこれらの構造均衡に基づいて作成される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0015】
少なくとも1つの特性テンソル、特に剛性テンソルによって目標特性および/または現実特性が再現されるのが有利である。
【0016】
構造モデルの機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性が数値モデルに基づいて確認されるのが有利である。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0017】
また、ボディの修正された機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性が数値モデルに基づいて機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性に調整していることが有利である。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0018】
本発明の1つの有利な拡張された実施形態において、構造モデルは、複数のセルから形成され、これらのセルは、互いに連結されている複数の構造要素、特に表面要素および/または格子要素を含む。格子要素は、例えば、ロッドであり得、これらは、好ましくは節点で互いに連結されている。
【0019】
構造モデルの最適化のレベルを上げるために、少なくとも1つの、特に単一の、構造要素、特にセルの少なくとも1つの構造要素パラメータが修正されると有利である。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。したがって、影響されかつ最適化されるのは、セル全体ではなく、1つ下の詳細レベル、少なくとも1つの、特に単一のセルの構造要素である。その結果、機械的、熱的、および/または空気力学的に最適化された異方的な挙動を有するセルが有利に作成され得る。
【0020】
少なくとも1つの、特に単一の、構造要素それ自体が機械的、熱的、および/または空気力学的に異方的な特性を有するように修正されるのが、有利である。その結果、有利なことに、セルの異方的な挙動がさらに正確に影響され確立されることができる。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0021】
この点で、少なくとも1つのパラメータ、特に構造要素パラメータが、構造要素の1つの長手方向および/またはその2つの横断方向のうちの1つにおいて修正されるのが、有利である。したがって、構造要素は、好ましくは、その機械的、熱的、および/または空気力学的な特性がその3つの空間方向のうちの少なくとも1つにおいて、特にコンスタントにまたは可変的に変化するように設計され得る。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0022】
構造要素パラメータとして、構造要素の材料パラメータおよび/または幾何学パラメータが、特にその3つの空間方向のうちの1つにおいて修正されるのが、有利である。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。この点に関して、材料パラメータとして、構造要素の密度、硬度、強度(特に引張の強度および/または圧縮の強度)、弾力性、延性、材料の減衰、熱膨張、熱伝導率、耐熱性、比熱容量、および/または低温靭性が、特にその3つの空間方向の1つにおいて修正されるのが、有利である。さらに、この点に関して、幾何学パラメータとして、構造要素の厚さ、長さ、断面形状、および/または輪郭が、特にその3つの空間方向のうちの1つにおいて修正されるのが有利である。
【0023】
本発明の1つの有利な拡張された実施形態では、構造要素は、これが特にその長さにわたって可変の厚さを有するように修正される。したがって、構造要素、特にロッド要素は、複数の領域で先細りになりおよび/または厚くなることができる。
【0024】
同じセルの少なくとも2つの構造要素のうちの、特に機械的、熱的、および/または空気力学的な特性が影響する、少なくとも1つの構造パラメータが、互いに異なるように設計されているのが、有利である。その結果、セルの機械的、熱的、および/または空気力学的な特性を異方的に設計され得る。しかも、セルのこの異方的な挙動が高精度に設定され得る。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0025】
付加製造(付加造形)の範囲内で利用される材料の材料特性は、製造工程(造形工程)の中で変化する温度条件により変わり得る。例えば、付加製造装置の製造空間は、付加製造中に徐々に温まる。その結果、利用される材料は、製造工程の最後よりも製造工程の最初のほうが速く冷える。冷却時間の違いにより、付加製造に利用される最初の材料の材料特性が変わり得る。これは、付加製造されたボディの機械的、熱的、および/または空気力学的な特性に影響する。このため、構造モデルの反復最適化において、付加製造装置の少なくとも1つ特に少なくとも1つの、構造要素が影響する製造パラメータが考慮されるのが、有利である。この点に関して、ボディの現実特性および/または目標特性が、この製造パラメータに応じておよび/または考慮されて適合されるのが有利である。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0026】
製造装置の製造空間の内部の温度分布が製造パラメータとして考慮されるのが有利である。加えてまたは代わりに、特にボディの製造中の、製造空間の内部の温度変化が考慮されるのが、有利である。温度分布および/または温度変化は、例えば、経験的に確認され得る。
【0027】
1つの有利な拡張された実施形態において、構造モデルの少なくとも1つのパラメータ、特に、少なくとも単一の構造要素の少なくとも1つの構造要素パラメータは、製造パラメータに応じて変化する。その結果、製造工程の中で変化する温度条件が、造形されたボディの材料特性に悪影響しないことが、保証され得る。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0028】
前述の方法ステップの少なくとも1つ特に構造モデルの反復最適化が、好ましくは人工知能を有するように設計された処理ユニットによって少なくとも部分的に実行されることが、有利である。
【0029】
また、本発明は、ボディを造形するための付加製造方法、特に3Dプリントプロセスに関する。この造形方法では、ボディの仮想3次元構造モデルが作成される。好ましくは、ボディの仮想3次元構造モデルを作成するための方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。さらに、製造データが仮想3次元構造モデルに基づいて付加製造装置のために生成される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。その後、ボディが製造データに基づいて付加製造装置で製造される。本発明によると、ボディの仮想3次元構造モデルは、先の説明による仮想3次元構造モデルの作成方法で作成され、前述の特徴は、個別にまたは任意の組合せで存在することが可能である。
【0030】
さらに、本発明は、ボディの仮想3次元構造モデルを作成するためおよび/またはボディを製造するための装置に関する。装置は、ボディの仮想3次元構造モデルを作成するための処理ユニットを含む。加えてまたは代わりに、装置は、ボディを製造するための付加製造装置を含む。装置の処理ユニットは、ボディの仮想3次元構造モデルがこの処理ユニットの補助により先の説明による方法で作成され得るように設計されており、前述の特徴は、個別にまたは任意の組合せで存在し得、および/または、前述の方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0031】
また、本発明は、互いに連結された複数の構造要素、特に表面要素および/または格子要素を含む複数のセルから形成される構造を有するボディ、特に、コンポーネントに関する。ボディは、先の説明による方法で造形され、前述の特徴は、個別にまたは任意の組合せで存在することができ、および/または前述の方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニットによって自動化された手法で実行される。
【0032】
ボディが、フォームロック方式および/または一体式で構造が連結される支持要素を含むのが、有利である。好ましくは、構造は、フォームロック方式で支持要素にクリップされる。加えてまたは代わりに、支持要素は、好ましくは支持要素および/または構造の同じ材料からなる連結材料を介して一体的に接合され得る。
【0033】
本発明のさらなる利点は、以下の例示的な実施形態に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、ボディの仮想3次元構造モデルを作成しボディを製造するための装置の概略図を示す。
図2図2は、構造の単一のセルを示す。
図3図3は、セルの単一の構造要素を示す。
図4図4は、特に処理ユニットを用いてボディの仮想3次元構造モデルを作成しおよび/または特に付加製造装置を用いてこのボディを付加製造する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、ボディ5の仮想3次元構造モデル19を作成するための処理ユニット2を示す。処理ユニット2の動作モードは、以下の説明、特に図4において詳細に論じられ、そこに示される方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行され得る。さらに、図1は、付加製造装置(付加造形装置)3を示し、ボディ5が付加製造装置3を用いて付加製造方法で造形され得る。製造装置(造形装置)3は、製造空間(造形空間)8を含み、その内部でボディ5が造形される。付加製造装置3は、ボディ5を造形するための製造ユニット4を含む。処理ユニット2および付加製造装置3は共に、仮想3次元構造モデル19を作成しボディ5を付加製造するための装置1を形成する。ボディ5は、図1に単に示されかつ複数のセル7から形成される構造6を有する。
【0036】
これらの孤立したセル7の1つが例として図2に表わされる。これらのセル7のそれぞれは、互いに連結された複数の構造要素9から形成される。構造要素9は、図2に表されるように、格子要素であり得る。しかし、代わりに、構造要素9は、表面要素としても形成され得る。ノード10を介して構造要素9が連結され得、それらのうちの1つだけが、明確のために図2において参照文字で提供される。
【0037】
図3は、セル7の単一の構造要素9を示す。本構造要素9は、これが異方的な特性を有するように設計されている。その結果、構造要素9は、方向によって異なる特性を有する。この目的のために、構造要素9の少なくとも1つの構造要素パラメータ11が修正される。構造要素パラメータ11は、材料パラメータ12および/または幾何学パラメータ13とすることができる(図4参照)。材料パラメータ12は、例えば、密度、硬度、強度、弾力性、延性、材料減衰、熱膨張、熱伝導率、耐熱性、比熱容量、および/または低温靭性であり得る。したがって、構造要素9は、例えば、第2セクション15より第1セクション14において他の材料パラメータ12を有することができる。この例では、したがって、材料パラメータ12は、構造要素9の横断方向で変化する。しかしながら、代わりに、構造要素パラメータ11は、構造要素9の長手方向にも変化し得る。本例示的な実施形態では、幾何学パラメータ13が変化する。幾何学パラメータ13は、構造要素9の厚さ、長さ、断面形状、および/または輪郭であり得る。図3が示すように、本構造要素9では、構造要素9の厚さがその長さ全体で変化する。
【0038】
図4は、ボディ5を造形するための造形方法のためのフローチャートを示す。さらに、図4は、ボディ5の仮想3次元構造モデルを作成するための方法を示す。この方法は、図1に示される処理ユニット2で実行される。好ましくは、前述の方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。特に、処理ユニット2が、ユーザによって入力されなければならずかつその後処理ユニット2によって処理される入力データに依存することが起こり得る。付加製造の続きのステップは、図1で表される付加製造装置3を用いて行われる。
【0039】
付加製造装置3の製造パラメータ(造形パラメータ)28が本方法において考慮される。これらの製造パラメータ28は、製造装置3の製造空間8における温度分布であり得る。製造パラメータは、好ましくは、センサーを介して検出されおよび/またはユーザによって手動で入力され得る。さらに、造形工程中の製造空間8の内部の温度変化は、製造パラメータ28として考慮され得る。製造空間8には様々な温度が存在し、また、製造工程中に変化する。付加製造されたボディ5の1つの領域は、製造空間8の1つの領域内でのほうが製造空間8の他の領域でよりも速く冷え得る。そのため、ボディ5の材料特性は、冷却の進行に伴って変化する。そこで、製造装置3のこの効果を考慮できるようにするために、材料データ収集17が実行される。製造装置3の製造パラメータ28に伴う材料特性の効果は、試験製造およびその後の材料試験の範囲内で経験的に確認される。これらの製造関連材料データ(造形関連材料データ)29は、材料特性の制限値でありおよび/または材料特性の制限値を含むことも可能である。材料データ収集17の範囲内で確認される製造関連材料データ29は、以下で詳細に説明するように、異なるポイントで組み込まれる。
【0040】
ボディ5の仮想3次元構造モデル19を作成するために、ボディ5の幾何学モデル16が最初に作成される。外殻形状25および基本体積26が幾何学モデル16に基づいて確認される。外殻形状25は、ボディ5の外殻を形成する。したがって、基本体積26は、外殻形状25によって囲まれる。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。
【0041】
その後、ボディ5の第1数値モデル18が作成される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。事前に確認された外殻形状25および/または基本体積26は、数値モデル18の作成中に考慮される。数値モデル18は、数値メッシュを含み、この数値メッシュは、好ましくは、数値要素および/またはこれらの数値要素を互いに連結する角点から形成される。数値モデル18、特にその数値メッシュは、外殻形状25に適応される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。その結果、数値モデル18の数値メッシュは、外殻形状25から突出するのではなく、これに対して直接載置されるようにそこに適応する。そのため、数値メッシュの端部領域に位置する数値セルは、外殻形状25によって切断されるのではなく、すべて完全でありおよび/または閉じた状態である。
【0042】
数値モデル18は、FEモデル(有限要素モデル)および/またはFVモデル(有限体積モデル)であり得る。数値モデル18には、少なくとも1つの変数27および/または複数の変数(ロードコレクティブ)が作用する。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。これらは、ボディ5の意図的な使用中にボディ5に作用する影響力のある変数であり得る。変数27は、好ましくは、機械的、熱的、および/または空気力学的な変数27である。さらに、製造パラメータ28がこのステップで考慮され得る。これは、製造関連材料データ29を介して行われる。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。ボディ5の目標特性30は、適用変数27および/または製造関連材料データ29の考慮の下で第1数値モデル18に基づいて確立される。これは、経験値に基づいてユーザによって手動で実行されるのが望ましい。しかしながら、代わりに、これは、好ましくはこの目的のために人工知能を有し得る処理ユニット2によって完全に自動化された手法で実行されることもできる。目標特性30は、機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性30である。したがって、これらの機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性30は、確認されるべきボディ5の構造6が有するべき基準値を形成する。
【0043】
第1数値モデル18は、構造均衡33を有する。「構造均衡」という用語は、数値モデル18の第1数値メッシュのそれらのパラメータであって数値メッシュの個々のセルの均衡を定義するものを指すと、解釈される。構造均衡33は、例えば、数値モデル18の第1数値メッシュの角点、特にその座標とすることができる。
【0044】
構造6を確認するために、第1構造モデル19が最初に作成される。これは、数値モデル18の構造均衡33に基づいて行われる。この目的のために、構造均衡33は、第1構造モデル19へ転送される。構造モデル19は、構造均衡33の利用によって外殻形状25に適応する。あるいは、外殻形状25への構造モデル19の適応がこのステップで実行され得る。その結果、構造モデル19の構造は、外殻形状25から突出するのではなく、これに対して直接寄りかかるようにそこに適応する。そのため、構造の端部領域に位置するセル7は、外殻形状25によって切断されるのではなく、すべて完全でありおよび/または閉じた状態である。構造モデル19は、少なくとも1つの現実特性テンソル31を生じる。構造モデル19のこの少なくとも1つの現実特性テンソル31によって、数学的モデルの機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性32が定義される。これらの現実特性32をチェックするために、構造モデル19の少なくとも1つの現実特性テンソル31は、第2数値モデル20へ転送される。また、材料データ収集17の製造関連材料データ29は、この第2数値モデル20において考慮され得る。好ましくは、前述の方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。
【0045】
その後、構造モデル19または第2数値モデル20の現実特性32が第1数値モデル18の予め確立された目標特性30に対応しているか否かを判断するためにチェックが実行される。これは、目標-実際比較21の範囲内で行われる。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。
【0046】
機械的、熱的、および/または空気力学的な現実特性32が、機械的、熱的、および/または空気力学的な目標特性30から依然として過度に大きく外れている場合に、構造モデル19の反復最適化が実行される。この反復最適化の範囲内で、現実特性32は、これらが十分な程度に一致するまで目標特性30と何度も調整される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。
【0047】
現実特性32を修正するために、パラメータ適合22が実行される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。構造モデル19の少なくとも1つのパラメータ、特に構造要素パラメータ11が修正される。「構造要素パラメータ」という用語は、単一の構造要素9のパラメータを指すものと解釈される。したがって、セル7の少なくとも単一の構造要素9の少なくとも1つの構造要素パラメータ11が修正される(図2参照)。構造要素9は、例えば、図3に表されるように、修正され得る。少なくとも1つの単一の構造要素9は、これが機械的、熱的、および/または空気力学的に異方的な特性を有するように修正される。少なくとも1つの構造要素パラメータ11は、構造要素9の1つの空間方向において可変的に設計され得る。構造要素パラメータ11は、構造要素9の材料パラメータ12および/または幾何学パラメータ13であり得る。その結果、構造モデル19は、したがって、同じセル7の少なくとも2つの構造要素9の少なくとも1つの構造要素パラメータ11が互いに異なるように設計されている少なくとも1つのセル7を有することができる。
【0048】
修正された構造要素パラメータ11によって適合された構造モデル19の機械的、熱的、および/または空気力学的な特性は、少なくとも1つの現実特性テンソル31を介して第2数値モデル20へ転送される。その後、再度、目標-実際比較21が実行される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。
【0049】
現実特性32が目標特性30と十分よく対応する場合に、製造データ生成(造形データ生成)23が実行される。このステップにおいて、付加製造装置3に適した製造データが生成される。好ましくは、この方法ステップは、ユーザによって少なくとも部分的に手動でおよび/または処理ユニット2によって自動化された手法で実行される。また、製造関連材料データ29は、製造データ生成23において考慮され得る。その結果、製造装置3の製造空間8において造形されたボディ5の正確な位置決めがなされる。そして、最後のステップで製造(造形)24が製造装置3において行われる。
【0050】
本発明は、表現しかつ説明された例示的な実施形態に限定されない。特許請求の範囲内の変更も可能であり、それらが異なる例示的な実施形態で表現されかつ説明されているとしても、特徴の任意の組合せがそのまま適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 装置
2 処理ユニット
3 付加製造装置(付加造形装置)
4 製造ユニット
5 ボディ
6 構造
7 セル
8 製造空間(造形空間)
9 構造要素
10 ノード
11 構造要素パラメータ
12 材料パラメータ
13 幾何学パラメータ
14 第1セクション
15 第2セクション
16 幾何学モデル
17 材料データ収集
18 第1数値モデル
19 構造モデル
20 第2数値モデル
21 目標-実際比較
22 パラメータ適合
23 製造データ生成(造形データ生成)
24 製造(造形)
25 外殻形状
26 基本体積
27 変数
28 製造パラメータ(造形パラメータ)
29 製造関連材料データ(造形関連材料データ)
30 ボディの目標特性
31 現実特性テンソル
32 ボディの現実特性
33 構造均衡
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】